JP2005221263A - タンパク質とdnaとの複合体の結合の強さを定量的に解析する方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】タンパク質−DNA複合体の結合の強さを定量的に解析する方法及び装置。
【解決手段】1.DNA-タンパク質複合体(複合体)の調製工程、2.コーン電圧(V)を変化させるESI-MS法によるスペクトル測定工程、3.スペクトルから相対強度比をVに対してプロットし、気相での複合体の解離曲線を得る工程、4.異なる配列を有するDNA又はタンパク質との複合体の少なくとも1種類について、工程1〜3を繰り返す工程、5.工程1〜4で得られた解離曲線から「気相での50%の複合体の解離を示すV(Vg(50%))」を求める工程、6.基準となる複合体の複合体形成に伴う自由エネルギー変化量(ΔG)を基準値とする、Vg(50%)と溶液における複合体形成に伴うΔGの基準値との差との関係を表す較正曲線を作成する工程、7.工程6で得られた較正曲線を用いて、他の複合体について、Vg(50%)から解離定数を決定する工程。
【選択図】 図10

Description

本発明は、タンパク質とDNAとの複合体の結合の強さを定量的に解析する方法及び装置に関する。
DNA の遺伝情報が RNA に転写される過程は生命現象において重要なプロセスであり、遺伝子の発現制御は、転写調節因子が DNA に結合・解離することによって行われる。したがって、転写の制御機構を理解するには、転写因子に代表されるタンパク質とDNA の結合の強さを調べることが重要である。
これまで、タンパク質と DNA の結合の強さの解析には、カロリメトリーやフィルターバインディングアッセイなどの方法が用いられてきた。これらは優れた方法であるが、カロリメトリーでは多くの試料量が必要であること、フィルターバインディングアッセイでは放射性同位体を用いなければならないなどの問題点がある。一方、質量分析(MS)は、10-12モル程度の微量試料で短時間(10分以内)に情報を得ることができ、精製が難しい試料や競合条件における測定も可能であるという特徴がある。2つの化合物からなる複合体の溶液での解離定数と、MS で求められる気相(溶液中ではない)でのそれとは、ある程度の相関が認められることが、タンパク質-薬物や RNA-薬物などの系で示されている。
本発明は、微量の試料で、短時間に、タンパク質とDNAとの複合体の結合の強さを定量的に解析する方法及び装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、溶液での解離定数が既に求められているタンパク質-DNA 複合体(転写因子 c-Myb DNA 結合ドメインと22 塩基対からなる二重鎖 DNA)の系において、その結合の強さについてエレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)を用いて解析する方法を検討した。その結果、溶液での複合体の解離定数とエレクトロスプレーイオン源部のパラメータについて相関を明らかにし、較正曲線を作成することにより、解離定数未知の DNA−タンパク質複合体の結合の強さについて、ESI-MSを用いて解析する方法を発明するに至った。
すなわち、本発明は、タンパク質とDNAとの複合体の結合の強さを定量的に解析する方法であって、以下の工程を含む前記方法を提供する。
(i)DNA-タンパク質複合体を調製する工程、
(ii)(i)で調製したDNA-タンパク質複合体について、エレクトロスプレーイオン化質量分析法により、コーン電圧を変化させてスペクトルを測定する工程、
(iii)(ii)の工程で測定したスペクトルから、DNA-タンパク質複合体の相対強度比をコーン電圧に対してプロットし、気相でのDNA-タンパク質複合体の解離の様子を表す解離曲線を得る工程、
(iv)異なる配列を有するDNA又はタンパク質との複合体の少なくとも1種類について、(i)〜(iii)の工程を繰り返す工程、
(v)(i)〜(iv)の工程で得られた解離曲線から、気相での50%のDNA-タンパク質複合体の解離を示すコーン電圧を求める工程、
(vi) 基準となるDNA-タンパク質複合体の複合体形成に伴う自由エネルギー変化量を基準値とする、気相での50%のDNA-タンパク質複合体の解離を示すコーン電圧と溶液におけるDNA-タンパク質複合体形成に伴う自由エネルギー変化量の基準値との差との関係を表す較正曲線を作成する工程、及び
(vii)(vi)の工程で得られた較正曲線を用いることにより、他のDNA-タンパク質複合体について、気相での50%のDNA-タンパク質複合体の解離を示すコーン電圧から解離定数を決定する工程
また、本発明は、タンパク質とDNAとの複合体の結合の強さを定量的に解析する装置であって、
エレクトロスプレーイオン化質量分析計と、
基準となるDNA-タンパク質複合体の複合体形成に伴う自由エネルギー変化量を基準値とする、気相での50%のDNA-タンパク質複合体の解離を示すコーン電圧と溶液におけるDNA-タンパク質複合体形成に伴う自由エネルギー変化量の基準値との差との関係が記憶されている記憶手段と、
気相での50%のDNA-タンパク質複合体の解離を示すコーン電圧と溶液におけるDNA-タンパク質複合体形成に伴う自由エネルギー変化量の基準値との差との関係に従って、他のDNA-タンパク質複合体について、気相での50%のDNA-タンパク質複合体の解離を示すコーン電圧から解離定数を決定する手段と
を備える前記解析装置を提供する。
本明細書において、「エレクトロスプレーイオン化質量分析法」とは、試料溶液を供給するキャピラリー先端に 3 〜4 kV の高電圧を印加するとともに霧状に噴霧し、試料をイオン化させ、このイオンを質量数/電荷数(m/z)に従って分離し、各イオンの相対強度を測定する方法をいう。
「DNA-タンパク質複合体の相対強度比」とは、DNA-タンパク質複合体のイオン強度と(DNA-タンパク質複合体のイオン強度+解離したタンパク質のイオン強度)との比である。すなわち、DNA-タンパク質複合体の相対強度比=DNA-タンパク質複合体のイオン強度/(DNA-タンパク質複合体のイオン強度+解離したタンパク質のイオン強度)となる。
「コーン電圧」とは、エレクトロスプレーイオン化質量分析計のイオン源にあるサンプルコーンとエクストラクトコーンの間にかかる電圧をいう(図1を参照のこと)。
「サンプルコーン」とは、イオン源の大気と真空の境目にあるイオン取り込み部をいう。
「エクストラクトコーン」とは、イオン源と質量分離部の境目にあるイオン取り込み部をいう。
「解離曲線」とは、DNA-タンパク質複合体の相対強度比とコーン電圧との関係を表すものであって、グラフに描かれた線、コンピュータに記憶されたデータなどが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
「較正曲線」とは、気相での50%のDNA-タンパク質複合体の解離を示すコーン電圧と溶液におけるDNA-タンパク質複合体形成に伴う自由エネルギー変化量の基準値との差との関係を表すものであって、グラフに描かれた線、コンピュータに記憶されたデータなどが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
本発明により、溶液で複合体の結合の強さを解析する従来の方法に比べ、微量の試料で短時間に複合体の結合の強さを解析することができるようになった。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の方法において、まず、DNA-タンパク質複合体を調製する。
DNA-タンパク質複合体を形成させるには、タンパク質含有溶液とDNA含有溶液を混合すればよい。この混合液が試料溶液である。DNA-タンパク質複合体の形成は、ゲルシフトアッセイ、エレクトロスプレーイオン化質量分析法などにより確認することができる。
DNA-タンパク質複合体を形成させた試料溶液が、エレクトロスプレーイオン化質量分析法による測定が可能な溶液組成である場合には、そのまま、次のエレクトロスプレーイオン化質量分析法による測定に用いればよいが、エレクトロスプレーイオン化質量分析法による測定が可能な溶液組成でない場合には、エレクトロスプレーイオン化質量分析法による測定が可能な揮発性溶媒(例えば、酢酸アンモニウム緩衝液など)に溶液組成を置換するとよい。
次に、調製したDNA-タンパク質複合体について、エレクトロスプレーイオン化質量分析法により、コーン電圧を変化させてスペクトルを測定する。後述の実施例においては、コーン電圧を50Vから100Vまで変化させてスペクトルを測定した。
上記のスペクトルから、DNA-タンパク質複合体の相対強度比(すなわち、DNA-タンパク質複合体のイオン強度/(DNA-タンパク質複合体のイオン強度+解離したタンパク質のイオン強度))をコーン電圧に対してプロットし、気相でのDNA-タンパク質複合体の解離の様子を表す解離曲線を得る。
後述の実施例においては、DNA-タンパク質複合体の相対強度をR、DNA-タンパク質複合体のイオン強度をA、解離したタンパク質のイオン強度をBで示す(図7)。気相でのDNA-タンパク質複合体の解離の様子を表す解離曲線は図8に示されている。
次に、異なる配列を有するDNA又はタンパク質との複合体の少なくとも1種類について、上記の工程を繰り返す。
後述の実施例においては、異なる配列を有するDNAとの複合体(タンパク質は同じ)について、上記の工程を繰り返し、解離曲線をプロットした(図9)。
次に、上記の工程で得られた解離曲線から、気相での50%のDNA-タンパク質複合体の解離を示すコーン電圧を求める。
次いで、気相での50%のDNA-タンパク質複合体の解離を示すコーン電圧と溶液におけるDNA-タンパク質複合体形成に伴う自由エネルギー変化量の基準値との差との関係を表す較正曲線を作成する。ここで、基準値とは、基準となるDNA-タンパク質複合体の複合体形成に伴う自由エネルギー変化量である。
後述の実施例においては、気相での50%のDNA-タンパク質複合体の解離を示すコーン電圧を50%コーン電圧、溶液におけるDNA-タンパク質複合体形成に伴う自由エネルギー変化量の基準値との差をΔΔGと記す(図10)。ΔΔGは、基準となるDNA-タンパク質複合体(後述の実施例では、野生型のDNAとc-Myb R23の複合体)の複合体形成に伴う自由エネルギー変化量に対して、別のDNAとタンパク質からなる複合体(後述の実施例では、変異を入れた DNAとc-Myb R23の複合体)の複合体形成に伴う自由エネルギー変化量との差である。
気相での50%のDNA-タンパク質複合体の解離を示すコーン電圧(以下、「50%コーン電圧」と記すこともある)は、上記の工程でプロットした解離曲線(図9)から求めることができる。相対強度比0.5に対応するコーン電圧が50%コーン電圧である。
溶液におけるDNA-タンパク質複合体形成に伴う自由エネルギー変化量の基準値との差(以下、「ΔΔG」と記すこともある)は、放射性同位体(RI、例えばP32など)を使ったフィルターバインディングアッセイで求めることができる(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.90, pp.9320-9324, October 1993, Biochemistry)。RIでラベルした野生型DNAとc-Mybとの複合体を例にとり、溶液における野生型DNA-c-Myb複合体形成に伴う自由エネルギー変化量をフィルターバインディングアッセイで求める方法について簡単に説明する。
RIでラベルした様々な量の野生型 DNAとc-Mybを100μLの緩衝液(100mM KPB (pH7.5), 20mM KCl, 0.1M EDTA, BSA 500 μG/mL, 5% glycerol (v/v), 10mM DTT)中で、0℃、10-15分間インキュベーションした後、0.45μmのニトロセルロースフィルターで吸引ろ過をする。ニトロセルロースフィルターを乾かした後、液体シンチレーションカウンターで放射活性を測定する。様々な量の DNA で行った実験結果をもとに、binding titration curve を求める。このカーブから解離定数(Kd)を求める。他の変異 DNA についてもフィルターバインディングアッセイの実験を行い、ΔΔG と 野生型DNA配列を用いた時の解離定数(Kd(wt))および点変異のDNA配列を用いた時の解離定数(Kd(m))の関係式から、ΔΔG を求める。
後述の実施例において、較正曲線は図10に示されている。
次に、上記の較正曲線を用いることにより、他のDNA-タンパク質複合体について、気相での50%のDNA-タンパク質複合体の解離を示すコーン電圧(50%コーン電圧)から解離定数を決定する。他のDNA-タンパク質複合体は、先の工程で用いた複合体を形成するタンパク質とタンパク質は同じで、DNAの配列が異なるものでもよいし、DNAは同じで、タンパク質のアミノ酸配列が異なるもの(例えば、変異体タンパク質など)でもよい。
後述の実施例においては、複合体を形成するタンパク質は同じで、DNAの配列の方を変えて、本発明の方法を実施したが、複合体を形成するDNAは同じで、タンパク質のアミノ酸配列の方を変えて、本発明の方法を実施することもできる。
本発明の方法において、較正曲線をコンピュータに記憶させておけば、スペクトルの測定から解離定数の決定までを自動化することができる。
本発明は、タンパク質とDNAとの複合体の結合の強さを定量的に解析する装置であって、
エレクトロスプレーイオン化質量分析計と、
気相での複合体の解離のしやすさと溶液における複合体形成に伴う自由エネルギー変化量の基準値との差との関係が記憶されている記憶手段と、
基準となるDNA-タンパク質複合体の複合体形成に伴う自由エネルギー変化量を基準値とする、気相での50%のDNA-タンパク質複合体の解離を示すコーン電圧と溶液におけるDNA-タンパク質複合体形成に伴う自由エネルギー変化量の基準値との差との関係に従って、他のDNA-タンパク質複合体について、気相での50%のDNA-タンパク質複合体の解離を示すコーン電圧から解離定数を決定する手段と
を備える前記解析装置を提供する。
本発明の装置において、エレクトロスプレーイオン化質量分析計は、イオン源、質量分離部、検出器、読み取り器を備えているものであるとよい。これらの構成要素を備えたエレクトロスプレーイオン化質量分析計は市販されている。例えば、後述の実施例では、エレクトロスプレーイオン化質量分析計として、micromass社のESI-Q-Tof2を用いた。記憶手段及び解離定数決定手段としては、コンピュータを利用することができ、これらの2つの手段は1台のコンピュータに内蔵されていてもよいし、別々のコンピュータに内蔵されていてもよい。
本発明の装置の一例を図1に示す。試料溶液は、イオン源1にある金属キャピラリーを介してイオン源1に導入される。このとき、金属キャピラリー先端にスプレー電圧14を印加するとともに霧状に噴霧することで、試料をイオン化する。生成したイオンは、コーン電圧13によって生じる電位差により、サンプルコーン11、エクストラクトコーン12を通過して、質量分離部2に導入される。質量分離部2においては、六重極イオンガイド15を通過した後、四重極質量分離部16を経てコリジョンセル18内の六重極17においてコリジョンガス(アルゴン)によりクーリングされ、後に続く飛行時間型質量分離部23での分解能の高い測定が可能な状態のイオンとなる。続いて六重極イオンガイド19を通過した後、プッシャー20で飛行時間型質量分離部23へ電気的に押し出され、m/z に対応した飛行時間の後に検出器3であるマイクロチャンネルプレート21に到達しイオンとして検出される。イオン化の過程において、サンプルコーン11に印加するコーン電圧13を調節することにより、イオンの内部エネルギーを変化させることができる。DNA-タンパク質複合体の場合、高いコーン電圧を印加した結果、複合体の一部がタンパク質と DNA に解離して、複合体の分子量関連イオンとともに、遊離したタンパク質の分子量関連イオンが読み取り器4に観測される。検出器3からの出力は読み取り器4によって読み取られ、コンピュータ5に入力され、コンピュータ5では、その入力値から、気相での複合体の解離のしやすさと溶液における複合体形成に伴う自由エネルギー変化量の基準値との差との関係に従って、DNA-タンパク質複合体の解離定数が決定される。コンピュータ5で行われた処理の結果はディスプレー6に表示される。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、これらの実施例は、本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
『実験方法』
〈1〉試料の説明
原癌遺伝子産物c-Mybは、細胞増殖に必須な転写活性化因子であり、その構造はN末端側からDNA結合ドメイン、転写活性化ドメイン、転写抑制ドメインの順で構成されている。DNA結合ドメインは、αへリックス三本からなる50残基程度の繰り返し配列3つ(R1,R2,R3)から構成されている。これまでに、R2,R3だけからなるDNA結合ドメイン(R23)のみでも二重鎖DNAに対する十分な結合能が確認されているので、本実施例ではR23を実験に用いた。また、c-MybのconsensusなDNA配列は、AACXGである。この配列が含まれる22merの二重鎖DNA(図2)と点変異二重鎖DNA15種(表1)の計16種類のDNAを用いて実験を行った。c-MybのconsensusなDNA配列が含まれる22merの二重鎖DNA(図2)の+鎖の配列を配列番号3に示す。c-MybのconsensusなDNA配列が含まれる22merの二重鎖DNA(図2)の−鎖の配列を配列番号4に示す。c-MybのconsensusなDNA配列が含まれる22merの二重鎖DNAの+鎖に変異を導入したものの配列(表1)を配列番号5〜25に示す。
Figure 2005221263
〈2〉試料調製
R23は、R23をコードする遺伝子が組み込まれたプラスミドpAR2156NcoIを大腸菌BL21(DE3)株に形質転換し、大量発現させた。次に培養菌体を超音波破砕し、陽イオン交換カラム、ゲル濾過カラム、疎水性カラムを用いてSDS-PAGE上で単一バンドとなるまで精製した。二重鎖DNAは、1Mの酢酸アンモニウム緩衝液中でアニ−リングした。R23とDNAを1:1で混合し、R23-DNA複合体が形成された事をゲルシフトアッセイとMSで確認した。R23のDNA配列とアミノ酸配列をそれぞれ配列番号1及び2に示す。
〈3〉質量分析(ESI-Q-Tof2(micromass社))
試料をESI-MS測定用に限外濾過によりbuffer交換した。
コーン電圧を変化させイオンに与えるエネルギーを調節して、解離定数既知の複合体が気相で解離する様子が見られるESI-マススペクトルを得た。
そのマススペクトルから、相対強度比={複合体のイオン強度/(複合体のイオン強度+解離したタンパク質のイオン強度)}をコーン電圧に対してプロットし、気相での解離の様子を表す曲線(解離曲線)を得た。
得られた気相での解離曲線と液相でのΔΔGとの関係について考察した。
『結果と考察』
〈1〉測定条件の最適化
まず、脱溶媒ガス(デソルベーションガス)温度を30℃〜210℃の範囲で条件検討し120℃で最もイオン強度が強かったので120℃を測定条件とした。
次に、測定に用いる緩衝液中の酢酸アンモニウム濃度について、ConsensusなDNA配列(m22)との複合体(M22)と、最も結合が弱い点変異DNA(m14)との複合体(M14)で検討した(図3〜6)。10mM〜800mMまでの酢酸アンモニウム緩衝液について検討した結果、500mMを以降の測定条件とした。
塩濃度を上げることで解離し易くなったのは、塩濃度(400〜600mM)を上げる事でDNAとタンパク質との静電相互作用が弱まったためと考えられる。
最適化した条件で測定したところ、M14,M22共にコーン電圧を上げる事で解離の様子が観察できたので、コーン電圧に対する相対強度比をプロットした。ここでは、M22について図示する(図7,8)。図7のRは相対強度比、Aは複合体のイオン強度、Bは解離したタンパク質のイオン強度を表す。
〈2〉様々な点変異DNAとの複合体の解離曲線とその解析
表1に示す様々な点変異DNA15種(○で囲まれたもの)を用いて同様に実験を行い、そのうち6種とM22から解離曲線を求めた。それらを図9に示す。
得られた7種の解離曲線(図9)の直線部分を、相関係数が0.985以上になるように一次近似した。解離定数はタンパク質と複合体がほぼ等モルで存在する際の濃度を示す。複合体の気相での解離の様子を解析するESIマススペクトルにおいて、複合体のイオン強度と解離したタンパク質のそれとがほぼ一致する相対強度比0.5の点と、溶液での解離定数とが関連すると仮定し、相対強度比0.5に対応するコーン電圧(50%コーン電圧)を求めた。それを既に報告されているΔΔG(表1 Tanikawa et.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90(1993))に対してプロットし、一次近似してΔΔGと50%コーン電圧での較正曲線(図10)を得た。
その結果、50%コーン電圧とΔΔGの関係を示す較正曲線の相関係数は0.739となり、ΔΔGと50%コーン電圧との間で相関関係がみられた。
本発明の方法及び装置は、DNA-タンパク質複合体の結合の強さを定量的に解析するために利用することができる。
本発明の解析装置の一例を示す概略図である。 c-MybのconsensusなDNA配列を示す。 c-MybのDNA結合ドメイン(R23)とconsensusなDNA配列(m22)との複合体(M22)の塩濃度の検討結果を示す。 400mMAcONH4でのM22,M14の解離曲線を示す。 500mMAcONH4でのM22,M14の解離曲線を示す。 600mMAcONH4でのM22,M14の解離曲線を示す。 M22の解離を表すESI-MSスペクトルである。 M22の解離曲線を示す。 様々のDNAを用いた時の複合体の解離曲線を示す。 50%コーン電圧とΔΔGの関係を示す較正曲線を示す。
符号の説明
1…イオン源
2…質量分離部
3…検出器
4…読み取り器
5…コンピュータ
6…ディスプレー
11…サンプルコーン
12…エクストラクトコーン
13…コーン電圧
14…スプレー電圧
15…六重極イオンガイド(もしくはヘキサポールイオンガイド)
16…四重極質量分離部
17…六重極(ヘキサポール)
18…コリジョンセル(もしくは衝突活性化室)
19…六重極イオンガイド(もしくはヘキサポールイオンガイド)
20…プッシャー
21…マイクロチャンネルプレート
23…飛行時間型質量分離部
<配列番号1>
配列番号1は、c-MybのDNA結合ドメイン(R23)をコードする遺伝子の配列を示す。
<配列番号2>
配列番号2は、c-MybのDNA結合ドメイン(R23)のアミノ酸配列を示す。
<配列番号3>
c-MybのconsensusなDNA配列が含まれる22merの二重鎖DNA(図2)の+鎖の配列を示す。
<配列番号4>
c-MybのconsensusなDNA配列が含まれる22merの二重鎖DNA(図2)の−鎖の配列を示す。
<配列番号5〜25>
c-MybのconsensusなDNA配列が含まれる22merの二重鎖DNAの+鎖に変異を導入したものの配列(表1)を示す。

Claims (2)

  1. タンパク質とDNAとの複合体の結合の強さを定量的に解析する方法であって、以下の工程を含む前記方法。
    (i)DNA-タンパク質複合体を調製する工程、
    (ii)(i)で調製したDNA-タンパク質複合体について、エレクトロスプレーイオン化質量分析法により、コーン電圧を変化させてスペクトルを測定する工程、
    (iii)(ii)の工程で測定したスペクトルから、DNA-タンパク質複合体の相対強度比をコーン電圧に対してプロットし、気相でのDNA-タンパク質複合体の解離の様子を表す解離曲線を得る工程、
    (iv)異なる配列を有するDNA又はタンパク質との複合体の少なくとも1種類について、(i)〜(iii)の工程を繰り返す工程、
    (v)(i)〜(iv)の工程で得られた解離曲線から、気相での50%のDNA-タンパク質複合体の解離を示すコーン電圧を求める工程、
    (vi)基準となるDNA-タンパク質複合体の複合体形成に伴う自由エネルギー変化量を基準値とする、気相での50%のDNA-タンパク質複合体の解離を示すコーン電圧と溶液におけるDNA-タンパク質複合体形成に伴う自由エネルギー変化量の基準値との差の関係を表す較正曲線を作成する工程、及び
    (vii)(vi)の工程で得られた較正曲線を用いることにより、他のDNA-タンパク質複合体について、気相での50%のDNA-タンパク質複合体の解離を示すコーン電圧から解離定数を決定する工程
  2. タンパク質とDNAとの複合体の結合の強さを定量的に解析する装置であって、
    エレクトロスプレーイオン化質量分析計と、
    基準となるDNA-タンパク質複合体の複合体形成に伴う自由エネルギー変化量を基準値とする、気相での50%のDNA-タンパク質複合体の解離を示すコーン電圧と溶液におけるDNA-タンパク質複合体形成に伴う自由エネルギー変化量の基準値との差との関係が記憶されている記憶手段と、
    気相での50%のDNA-タンパク質複合体の解離を示すコーン電圧と溶液におけるDNA-タンパク質複合体形成に伴う自由エネルギー変化量の基準値との差との関係に従って、他のDNA-タンパク質複合体について、気相での50%のDNA-タンパク質複合体の解離を示すコーン電圧から解離定数を決定する手段と
    を備える前記解析装置。

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