JP2005213590A - 高炉への固体燃料吹き込み方法及び吹き込みランス - Google Patents
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Abstract
【課題】 微粉炭や木片などの粉体状固体燃料を高炉内に吹き込む際に、吹き込まれる固体燃料の高炉内における燃焼率を向上させる方法及び吹き込みランスを提供する。
【解決手段】 羽口6に接続するブローパイプ5に設置された固体燃料吹き込みランス4を介して固体燃料を搬送用ガスと共に高炉1内に吹き込む際に、固体燃料吹き込みランスの先端位置4aで、固体燃料吹き込みランスの内壁面の接線方向に向けてノズルを設置し、このノズルを介して固体燃料吹き込みランスの内壁面の接線方向に向けて気体を供給し、当該気体の旋回流を形成させながら、固体燃料を搬送用ガスと共に高炉内に吹き込む。
【選択図】 図1
【解決手段】 羽口6に接続するブローパイプ5に設置された固体燃料吹き込みランス4を介して固体燃料を搬送用ガスと共に高炉1内に吹き込む際に、固体燃料吹き込みランスの先端位置4aで、固体燃料吹き込みランスの内壁面の接線方向に向けてノズルを設置し、このノズルを介して固体燃料吹き込みランスの内壁面の接線方向に向けて気体を供給し、当該気体の旋回流を形成させながら、固体燃料を搬送用ガスと共に高炉内に吹き込む。
【選択図】 図1
Description
本発明は、微粉炭や木片などの粉体状固体燃料の高炉内への吹き込み方法及び吹き込みランスに関し、詳しくは、吹き込まれる固体燃料の燃焼率を向上させることが可能な吹き込み方法及び吹き込みランスに関するものである。
高炉への微粉炭吹き込みは、コークスや重油との価格差に基づくコストメリットが大きいことから、多くの高炉で採用され、経済性向上に大きく寄与している。近年はコークス炉の炉命延長の観点からも、その重要性が再認識され、益々微粉炭の大量吹き込みが指向されるようになった。
微粉炭は、一般に、熱風を高炉内に供給するためのブローパイプに設置された吹き込みランスを介して搬送用ガスと共にブローパイプ内に吹き込まれ、次いで、ブローパイプ内を通過する熱風と共にブローパイプの先端に接続される羽口から高炉内に吹き込まれる。吹き込まれた微粉炭は、ブローパイプ内、並びに羽口先端のレースウェイと呼ばれる燃焼空間で燃焼し、コークスの代替となる。しかしながら、レースウェイには、多量のコークスが存在するため、熱風中の酸素濃度は急激に減少する。しかも、ブローパイプ内及び羽口内のガス流速は一般に200m/秒と極めて高速であるため、吹き込まれた微粉炭が熱風中の酸素と反応可能な時間、即ち微粉炭の燃焼可能な時間は極めて短く、20マイクロ秒程度といわれている。
微粉炭をコークスの代替として有効活用するためには、この短時間の期間で微粉炭を燃焼させる必要があるが、微粉炭の吹き込み量を増していくと、微粉炭の燃焼率が低下して、レースウェイに至るまでに微粉炭が燃焼しきれずに、未燃焼の未燃チャーとして炉内に残留する。この未燃チャーは、ソルーションロス反応により炉内で消費されるが、炉内消費量には自ずと限界値が存在し、そのため、消費限界値以上に未燃チャーが発生すると、ダストとして炉頂から排出されて燃料比の上昇を招き、更には、未燃チャーが炉芯や溶融帯に蓄積すると、通気性や通液性が阻害され、炉況不安定や生産性低下の原因となる。
この問題を解決するために、微粉炭の燃焼率を向上させる方法が多数提案されている。例えば、特許文献1には、ブローパイプ内における熱風と微粉炭との混合効率を向上させ、微粉炭の昇熱速度の上昇ひいては燃焼速度の上昇を図るべく、ブローパイプの側壁に同心二重管構造の吹き込みランスを複数個設け、吹き込みランスの内管と外管との間から微粉炭及び搬送用ガスを吹き込み、内管内部から空気、酸素またはこれらの混合ガスを吹き込む方法が開示されている。特許文献2には、補助燃料の燃焼熱を利用して微粉炭の燃焼率を向上させるべく、ブローパイプから供給される熱風温度を810℃以上に調整すると共に、微粉炭吹き込みランスと平行して燃料ガス吹き込み管を配置し、微粉炭と燃料ガスとの混燃を行わせつつ、微粉炭を吹き込む方法が開示され、また、特許文献3には、同様に補助燃料の燃焼熱を利用する方法として、微粉炭吹き込みランスが設置されたブローパイプ内に補助燃料及び酸素を吹き込み、この補助燃料が燃焼して形成される1400℃以上で且つ酸素濃度が21%以上の雰囲気中に微粉炭を吹き込む方法が開示されている。特許文献1〜3によれば、微粉炭の大量吹き込み操業においても、高い燃焼率を得ることができるとしている。
特開平8−157916号公報
特公平1−29847号公報
特開平8−269509号公報
しかしながら、上記従来技術には、幾つかの問題点があり、その主たるものを挙げれば、以下の如くである。即ち、特許文献1では、単管ランスの場合に比較すれば微粉炭と熱風との混合が促進されるものの十分とはいい難く、十分に温度が上昇しないまま炉内に吹き込まれる場合が発生する。そのため、微粉炭の燃焼率は十分に高いとはいえず、更なる改善の余地がある。また、特許文献2では、微粉炭は吹き込みランスの先端部以降で燃料ガスと混燃されるので、微粉炭の昇熱時期が遅れ、十分に温度が上昇しないまま炉内に吹き込まれる場合が発生し、補助燃料を利用している割には、微粉炭の燃焼率が十分に高いとはいえず、更なる改善の余地があり、特許文献3では、高い燃焼率は得られるものの、ブローパイプに、微粉炭吹き込みランスを配置した上に、更に、補助燃料吹き込み管及び酸素吹き込み管を設置する必要があり、設備が煩雑になり、ランニングコストの面からも改善の余地がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ブローパイプに設置された固体燃料吹き込みランスを介して、微粉炭や木片などの粉体状固体燃料を高炉内に吹き込む際に、吹き込まれる固体燃料の高炉内における燃焼率を向上させることが可能な吹き込み方法及び吹き込みランスを提供することである。
上記課題を解決するための第1の発明に係る高炉への固体燃料吹き込み方法は、羽口に接続するブローパイプに設置された固体燃料吹き込みランスを介して固体燃料を搬送用ガスと共に高炉内に吹き込む際に、前記固体燃料吹き込みランスの先端位置で固体燃料吹き込みランス内に気体を供給し、当該気体の旋回流を形成させながら固体燃料を搬送用ガスと共に吹き込むことを特徴とするものである。
第2の発明に係る高炉への固体燃料吹き込み方法は、第1の発明において、前記気体を、固体燃料吹き込みランスの内壁面の接線方向に向けて設置されたノズルを介して前記内壁面の接線方向に向けて供給することを特徴とするものである。
第3の発明に係る高炉への固体燃料吹き込み方法は、第1または第2の発明において、前記気体を、予め予熱した後に固体燃料吹き込みランス内に供給することを特徴とするものである。
第4の発明に係る高炉への固体燃料吹き込み方法は、第1ないし第3の発明の何れかにおいて、前記気体が、燃料ガス及び酸素含有ガスであることを特徴とするものである。
第5の発明に係る高炉への固体燃料吹き込み方法は、第1ないし第4の発明の何れかにおいて、前記気体の供給量または気体の温度を、固体燃料の吹き込み量または固体燃料の搬送用ガスの供給量に応じて調整することを特徴とするものである。
第6の発明に係る高炉への固体燃料吹き込みランスは、羽口に接続するブローパイプに設置され、固体燃料を搬送用ガスと共に高炉内に吹き込むための固体燃料吹き込みランスであって、当該固体燃料吹き込みランスの先端位置には、固体燃料吹き込みランス内に気体を吹き込むための、固体燃料吹き込みランスの内壁面の接線方向に向けて配置されたノズルが備えられ、当該ノズルから固体燃料吹き込みランス内に供給された気体は旋回流を形成することを特徴とするものである。
第7の発明に係る高炉への固体燃料吹き込みランスは、羽口に接続するブローパイプに設置され、固体燃料を搬送用ガスと共に高炉内に吹き込むための固体燃料吹き込みランスであって、当該固体燃料吹き込みランスの先端位置には、固体燃料吹き込みランス内に燃料ガスを吹き込むための、固体燃料吹き込みランスの内壁面の接線方向に向けて配置されたノズルと、固体燃料吹き込みランス内に酸素含有ガスを吹きこむための、固体燃料吹き込みランスの内壁面の接線方向に向けて配置されたノズルと、が備えられ、これらのノズルから固体燃料吹き込みランス内に供給された燃料ガス及び酸素含有ガスは旋回流を形成することを特徴とするものである。
本発明によれば、固体燃料吹き込みランス内に供給される気体によって形成された旋回流により、当該ランスから供給される微粉炭や木片などの固体燃料がブローパイプ中に分散されるので、固体燃料とブローパイプ内の熱風との混合が促進され、単位質量当りの固体燃料の利用できる熱風の顕熱及び酸素の絶対量が増大し、固体燃料の昇温速度並びに燃焼速度が上昇するため、固体燃料のブローパイプ内及び高炉内における燃焼率が上昇する。その結果、微粉炭や木片などの固体燃料の吹き込み量を従来レベルよりも多くすることが可能になり、高価なコークスの使用量を削減可能であり、また、微粉炭や木片などの固体燃料の吹き込み量を従来レベルと同等に保った場合にも、微粉炭や木片などの固体燃料の燃焼率が増加した分に相当するだけのコークス使用量を削減することができ、工業上有益な効果がもたらされる。
また、旋回流を形成する気体として、燃料ガス及び酸素含有ガスを使用した場合には、燃料ガスの燃焼熱によって固体燃料が加熱されるので、より一層固体燃料の燃焼率を向上させることができる。しかも、燃料ガス及び酸素含有ガスは、固体燃料吹き込みランス内に供給されるので、ブローパイプには固体燃料吹き込みランスのみを設置すればよく、設備が簡素化され、取り扱いが容易になる。
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図1〜図3は、本発明の実施の形態を示す図であって、図1は、本発明に係る固体燃料吹き込みランスが設置された高炉羽口部の概略図、図2は、本発明に係る固体燃料吹き込みランスの概略図、図3は、図2のX−X’矢視による概略図である。
図1に示すように、高炉1の側壁部には、高炉1内に熱風を送りこむための羽口6が設置されている。羽口6は、高炉鉄皮2及び耐火物3を貫通して設置された羽口受金物8及び大羽口7により支持され、且つ、ブローパイプ5と接続されている。ブローパイプ5は熱風炉(図示せず)と接続しており、熱風炉で加熱された空気若しくは酸素富化空気が、ブローパイプ5を経由して羽口6から熱風として高炉1内に供給される。熱風の温度は、通常1000℃以上であり、高い場合には1300℃を越えることもある。
ブローパイプ5には、微粉炭や木片などの炭素を含有する粉体状固体燃料を高炉1内に吹き込むための、本発明に係る固体燃料吹き込みランス4が、その先端4aをブローパイプ5のガス流路に突出させて、ブローパイプ5に設置されたガイドパイプ9内に設置されている。図1は粉体状固体燃料として微粉炭を用いた例を示している。この場合、固体燃料吹き込みランス4は、粉体状固体燃料を搬送用ガスによって供給し搬送する供給・搬送装置(図示せず)に接続されており、粉体状固体燃料は、搬送用ガスによって固体燃料吹き込みランス4内を搬送される。この供給・搬送装置としては、特段の装置は必要でなく、固体燃料切り出し装置及び搬送用ガス供給装置などから構成される慣用の供給・搬送装置で十分である。搬送用ガスとしては、可燃物である微粉炭などを搬送するため、窒素などの非酸化性ガスまたはArガスなどの不活性ガスが好ましい。
固体燃料吹き込みランス4は、図2及び図3に示すように、内管12と外管13とからなる二重管で構成され、内管12の内部が、微粉炭や木片などの粉体状固体燃料の搬送用ガスによる搬送流路となり、内管12と外管13との間隙が、空気、酸素、窒素、炭酸ガス、Arガスなどの不活性ガスなど、またはこれらの混合ガス、或いは、燃料ガス及び酸素含有ガスの流路となっている。図2は、燃料ガスと酸素含有ガスとを供給する例を示している。内管12と外管13との間には、境界壁12a,12aが設けられており、燃料ガス及び酸素含有ガスを供給した場合でも、燃料ガスと酸素含有ガスとは二重管部では混合しないようになっている。
そして、内管12の先端には、内管12の内壁面に沿った旋回流を形成するための、内管12の内壁面の接線方向に向けて開口するスリットが2箇所に設けられ、それぞれ、ノズル14及びノズル15となっている。また、外管13には、上記の気体を導入するための導入口10及び導入口11が設置されている。
導入口10及び導入口11から吹き込む気体としては、空気、酸素、窒素、炭酸ガス、Arガスなどの不活性ガスなど、または、これらの混合ガスを使用することができる。更に、LPGやコークス炉ガスなどの燃料ガスと、この燃料ガスを燃焼するための酸素含有ガスとを組合せて使用することもできる。
空気、酸素、窒素、炭酸ガス、Arガスなどの不活性ガスなど、または、これらの混合ガスを使用する場合には、導入口10及び導入口11の両方から吹き込む必要はなく、どちらかの一方から吹き込んでもよい。従って、空気、酸素、窒素、炭酸ガス、Arガスなどの不活性ガスなど、またはこれらの混合ガスを供給する場合には、導入口10及び導入口11はどちらか一箇所でもよく、境界壁12aは不要であり、ノズル14及びノズル15もどちらかの1つとしてもよい。
燃料ガスと酸素含有ガスとを組合わせて吹き込む場合には、燃料ガスと酸素含有ガスとを別々に供給しても、また、燃料ガスと酸素含有ガスとを予め混合して供給してもよい。燃料ガスを外管13の内部で燃焼させない場合には、一方の導入口から燃料ガスを吹きこみ、他方の導入口から酸素含有ガスを吹き込み、境界壁12aで燃料ガスと酸素含有ガスとを分離する必要がある。一方、外管13の内部で予め酸素含有ガスと混合した燃料ガスを燃焼させる場合には境界壁12aは不要であり、また、燃料ガスと酸素含有ガスとを別の導入口から供給し、且つ外管13の内部で燃焼させる場合には、境界壁12aは撤去する必要がある。それぞれの条件に応じて境界壁12aの設置を考慮する必要がある。また、図2では、固体燃料吹き込みランス4の内管12の内壁面に沿った旋回流を形成するためのスリット状のノズルは2つであるが、供給する気体の種類と、外管13内で分離するか混合するかとによって、1つとするか或いは3つ以上としてもよい。それに応じて、導入口の設置数も変更することとする。酸素含有ガスとしては、空気、酸素富化空気及び純酸素などを用いることが好ましい。
内管12の内壁面に沿った旋回流を形成する気体は、固体燃料の昇温速度を高め、ひいては固体燃料の燃焼効率を高めるために、予め予熱してから固体燃料吹き込みランス4に供給することが好ましい。
尚、図1では、固体燃料吹き込みランス4がブローパイプ5に1本のみ配置されているが、固体燃料の吹き込み量に応じて固体燃料吹き込みランス4を複数設置してもよく、また、固体燃料吹き込みランス4がブローパイプ5に接続されたガイドパイプ9内に設置されているが、ガイドパイプ9を設置せず、固体燃料吹き込みランス4をブローパイプ5に直接取り付ける構造であってもよい。更に、固体燃料吹き込みランス4の先端部は、ブローパイプ5の軸心方向に合致させるために曲がっているが、必ずしも曲げる必要はない。
このような構成の本発明に係る固体燃料吹き込みランス4を用いて、高炉1の操業中、導入口10及び導入口11から上記の気体を外管13内に供給し、内管12の先端のノズル14,15を介して内管12の内壁面に沿って吹き込み、内管12の先端位置で内管12の内壁面に沿った旋回流を形成させながら、微粉炭などの粉体状固体燃料を搬送用ガスにより供給する。この場合、燃料ガスを使用した場合と使用しない場合とで、作用・効果が若干異なるので、以下に別々に説明する。
先ず、燃料ガスを使用せず、空気、酸素、窒素、炭酸ガス、Arガスなどの不活性ガスなど、またはこれらの混合ガスを使用した場合について説明する。
この場合、固体燃料吹き込みランス4の外管13から内管12の内部にノズル14,15を介して供給された空気、酸素、窒素、炭酸ガス、Arガスなどの不活性ガスなど、またはこれらの混合ガスからなる気体は、内管12の内壁面に沿う旋回流を形成しつつ、固体燃料の一部を旋回流内に取込みながら、固体燃料吹き込みランス4の先端4aからブローパイプ5内に流出する。この旋回流はブローパイプ5内で直ちに消滅することはなく、ブローパイプ5内を通過する熱風中に旋回しながら混入する。この旋回流に乗って固体燃料も熱風内に流出するので、旋回流の旋回方向に分散しながら熱風中に供給される。
その結果、固体燃料と熱風との混合が促進され、単位質量当りの固体燃料が利用できる熱風の顕熱及び酸素の絶対量が増大し、固体燃料の昇温速度並びに燃焼速度が上昇するため、固体燃料のブローパイプ5からレースウェイに至るまでの燃焼率が上昇する。旋回させる気体を予熱した場合には、固体燃料がこの気体によって予熱されることで、より一層燃焼率を向上させることができる。
このように、本発明によれば、固体燃料の燃焼率が上昇するため、微粉炭や木片などの固体燃料の吹き込み量を従来レベルよりも多くすることが可能になり、高価なコークス使用量を削減可能となる。また、微粉炭や木片などの固体燃料の吹き込み量を従来レベルと同等に保った場合にも、微粉炭や木片などの固体燃料の燃焼率が増加した分に相当するだけのコークス使用量を削減することができる。即ち、燃料比を低減させることができる。
次に、燃料ガスを使用した場合について説明する。燃料ガスを使用する場合でも、外管13の内部で燃料ガスを燃焼させる場合とさせない場合があるので、別々に説明する。
先ず、外管13の内部で燃料ガスを燃焼する場合について説明する。この場合、導入口10及び導入口11から外管13の内部に供給した燃料ガス及び酸素含有ガスを、着火装置(図示せず)などによって外管13の内部で燃焼させる。この燃焼により発生する燃焼熱が内管12に伝達され、内管12内に供給された固体燃料及び搬送用ガスは伝達された熱によって加熱される。
次いで、燃料ガスと酸素ガスとが燃焼して生成した高温の燃焼排ガスは、内管12の先端位置でノズル14及びノズル15を介して内管12の内部に供給される。ノズル14,15を通って外管13から内管12の内部に供給された燃焼排ガスは、内管12の内壁面に沿う旋回流を形成し、固体燃料の一部を旋回流内に取込みながら、固体燃料吹き込みランス4の先端4aからブローパイプ5内に流出する。この旋回流はブローパイプ5内で直ちに消滅することはなく、ブローパイプ5内を通過する熱風中に旋回しながら混入する。この旋回流に乗って固体燃料も熱風内に流出するので、旋回流の旋回方向に分散しながら熱風中に供給される。その結果、固体燃料は高温の燃焼排ガスと直接接触することにより加熱されると同時に、固体燃料と熱風との混合が促進され、単位質量当りの固体燃料が利用できる熱風の顕熱及び酸素の絶対量が増大し、固体燃料の昇温速度並びに燃焼速度が上昇する。
次ぎに、外管13の内部では燃料ガスを燃焼させない場合について説明する。この場合、ノズル14及びノズル15を介して燃料ガス及び酸素含有ガスがそれぞれ独立して外管13から内管12へ吹き込まれる。内管12の内部に供給された燃料ガス及び酸素含有ガスは、内管12の内壁面に沿って旋回流を形成しつつ混合し、ブローパイプ5を通過する熱風により加熱される、或いは着火装置によって、旋回流を形成した状態で燃焼する。燃料ガスが燃焼すると、固体燃料吹き込みランス4の内部のガスが密度差によって分離され、火炎の両側に密度の異なるガス層が形成される。即ち、旋回速度の遅い軸心側には、高温の燃焼排ガスが存在し、旋回速度の速い内壁面側には、未燃焼のガスが存在するようになる。この場合、内壁面近傍では、旋回速度が火炎伝播速度を上回っているため、火炎は内壁面近傍に継続して存在することはできず、そのため、固体燃料吹き込みランス4の内部には、火炎が管状の形になって生成される。本発明では、この火炎を「管状火炎」と称す。
吹き込まれる粉体状固体燃料は、この管状火炎によって加熱され、加熱された後、前述したように旋回流により、固体燃料吹き込みランス4の先端4aから旋回流の旋回方向に分散しながら熱風中に供給される。即ち、固体燃料は高温の管状火炎によって加熱されると同時に、固体燃料と熱風との混合が促進され、単位質量当りの固体燃料が利用できる熱風の顕熱及び酸素の絶対量が増大し、固体燃料の昇温速度並びに燃焼速度が上昇する。
ところで、微粉炭や木片のように、加熱するとタールを生成する固体燃料の場合には、このタールに起因して固体燃料吹き込みランス4やブローパイプ5の内部に堆積し、円滑な操業を阻害する恐れもあるので、タールが生成されない温度範囲で固体燃料を加熱することが好ましい。即ち、タールは400℃程度で発生するので、350℃以下の範囲で加熱することが好ましい。一方、加熱温度が低すぎると、加熱の効果が低減するため好ましくない。従って、導入口10または導入口11から供給する燃料ガスの供給量は、吹き込まれる粉体状固体燃料が200℃〜350℃となるように、その供給量を決めることが好ましい。酸素含有ガスの供給量は、燃料ガスをほぼ完全燃焼させる程度の流量でよい。但し、酸素含有ガスを多少過剰に加えても、また、少量の燃料ガスが未燃焼のまま残留する程度であっても構わない。
このタールの生成による問題は、燃料ガスを使用せず、空気、酸素、窒素、炭酸ガス、Arガスなどの不活性ガスまたはこれらの混合ガスを、予熱して使用する場合についても同様に生ずるので、粉体状固体燃料が350℃を超えることがないように、これらの気体の供給量または温度を調整することが好ましい。
このタールの問題に対処する方法として、例えば次の2つの方法がある。1つの方法は、固体燃料の吹き込み量、固体燃料の比熱やサイズ、更には搬送用ガス流量などによって、上記の所定の温度範囲に加熱或いは昇温するために必要な気体の供給量及び気体の温度は異なってくるので、予め加熱試験などを実施し、必要な供給量及び温度を把握しておき、高炉1の操業条件の変化に応じて供給量及び温度を調整する方法である。この場合、固体燃料の吹き込み量は、例えば固体燃料の貯蔵ホッパー(図示せず)に設置した荷重センサーにより固体燃料の一定時間当たりの変化信号から測定することができ、固体燃料の搬送用ガスの供給量は流量計によって測定することができる。
しかしながら、実際の高炉1の操業条件は、製造する溶銑などの変化に応じて、固体燃料の吹き込み量、固体燃料の搬送用ガスの供給量、固体燃料と搬送用ガスの比率(固気比)、吹き込まれる固体燃料の種類が様々に変更されるため、全ての条件を予め想定することは実質的には不可能であり、上記の方法では対処できない場合が発生する。
これに対して、他の1つの方法は、固体燃料が通過する雰囲気の温度をオンラインで測定し、この雰囲気の温度が200℃〜350℃となるように、導入口10及び導入口11から供給する気体の供給量及びその温度をオンラインで調整する方法である。この方法では、予め加熱試験などを実施する必要がなく、全ての操業条件に対処することができる。
導入口10及び導入口11から供給する気体の供給量及びその温度が一定であっても、固体燃料の吹き込み量や固体燃料の搬送用ガスの供給量の増減などの操業条件の変化に対応して、固体燃料の通過する雰囲気の温度が上下に変化する。従って、固体燃料の通過する雰囲気の温度を温度計で連続的に測定し、その変化状況に応じて導入口10及び導入口11から供給する気体の供給量または温度を調整する方法である。
図4に、固体燃料の通過する雰囲気の温度に応じて燃料ガス及び酸素含有ガスの供給量を制御するための構成の1例を概略図で示す。図4に示すように、固体燃料吹き込みランス4の先端近傍のブローパイプ5中には熱電対16aが設置され、熱電対16aの測定信号は温度計16に入力され、温度計16により固体燃料の通過する雰囲気の温度が測定される。温度計16の信号は、温度制御装置17に入力され、温度制御装置17は、測定された温度が200℃〜350℃の範囲にあるか否かを判定する。測定された温度が200℃〜350℃の範囲外にある場合、温度制御装置17は流量調整弁18の開度を調整して燃料ガスの供給量を増加または減少させる。流量計19は、燃料ガスの流量を測定し、その測定値を流量制御装置21に送信する。流量制御装置21は、燃料ガスの流量に応じて燃料ガス/酸素含有ガスの比が所定の値になるように酸素含有ガスの流量を制御する装置であり、従って、流量制御装置21は、流量計19の測定値に応じて流量調整弁22の開度を調整して酸素含有ガスの供給量を制御する。流量計20は、酸素含有ガスの流量を測定する装置であり、その測定結果は流量制御装置21に入力されており、酸素含有ガスの供給量がフィードバック制御されるようになっている。即ち、熱電対16aを備えた温度計16によって測定された、固体燃料の通過する雰囲気の温度に基づき、燃料ガス及び酸素含有ガスの供給量がオンラインで調整され、固体燃料の通過する雰囲気の温度が200℃〜350℃の範囲内に制御されるようになっている。
尚、図4は燃料ガスの供給量を制御する装置であるが、予熱された気体の流量を制御する場合には、温度制御装置17の出力を流量調整弁18と同時に流量調整弁22にも送信し、流量調整弁18及び流量調整弁22の開度を温度制御装置17で制御することにより行うことができる。要は、流量調整弁18及び/又は流量調整弁22で流量を制御し、形成される旋回流が適切な温度や流量(流速)に維持される制御であればよく、単一の気体によって実施するものであれば図中16〜19の構成のみによって十分な機能を発揮させることも可能である。また、固体燃料の通過する雰囲気の温度を測定する場合、この雰囲気中に設置する熱電対16aは、固体燃料の衝突により摩耗する恐れがあるので、耐摩耗性に優れ且つ正確に温度が測定できる専用の保護管の内部に設置し、その保護管を固体燃料の通過する雰囲気中に設置することが好ましい。
ところで、例えば常温の窒素、炭酸ガス、Arガスなどの酸素を含有しないガスを導入口10及び導入口11から供給する場合のように、導入口10及び導入口11から供給した気体によって固体燃料を予熱することなく、単にこれら非酸化性ガス或いは不活性ガスの旋回流のみを形成した状態で固体燃料の吹き込み量を変化させる場合には、旋回流による固体燃料と熱風との混合促進に基づく固体燃料の燃焼率上昇効果よりも、固体燃料と熱風中の酸素との接触による燃焼反応が非酸化性ガス或いは不活性ガスの旋回流によって阻害されたり、また、旋回流を形成するこれらの気体は予熱されていないので、この旋回流により、固体燃料の通過する雰囲気の温度が低下し、固体燃料の燃焼率が低下する現象が起こり得るので、このような場合は、導入口10及び導入口11から供給する気体の種類を代え、固体燃料と熱風中の酸素との接触を確保することや、固体燃料の通過する雰囲気の温度を確保することが望ましい。例えば、旋回流領域における雰囲気中の酸素濃度を検知するようにして、温度を維持しながら、旋回流領域の雰囲気が一定の酸素濃度となるように、旋回付与用不活性ガスの流量と酸素含有ガスの流量とを相互に調整することも考えらる。
このようにして、微粉炭や木片などの固体燃料を高炉1内に吹き込むことにより、固体燃料は、旋回流によって熱風中に分散供給され、更に、燃焼した燃料ガスによって加熱されるので、固体燃料のブローパイプ5からレースウェイに至るまでの燃焼率が上昇し、その結果、微粉炭や木片などの固体燃料の吹き込み量を従来レベルよりも多くすることが可能になり、高価なコークス使用量を削減可能となる。また、微粉炭や木片などの固体燃料の吹き込み量を従来レベルと同等に保った場合にも、微粉炭や木片などの固体燃料の燃焼率が増加した分に相当するだけのコークス使用量を削減することができる。即ち、燃料比を低減させることができる。
尚、本発明は上記説明に限るものではなく、種々の変更が可能である。例えば、固体燃料吹き込みランス4の外周に、冷却水を循環させる流路を設置してもよく、また、燃料ガス及び酸素含有ガスを供給するノズルをそれぞれ2つ以上設置してもよい。更に、固体燃料吹き込みランス4を二重管にする必要はなく、内管12の外部にガス供給流路を設置した構成としてもよい。要は、固体燃料吹き込みランス4の先端位置で、固体燃料吹き込みランス4の内壁面に沿った旋回流を形成可能であるならば、その構造はどのようであってもよい。
図2に示す固体燃料吹き込みランスを用い、図1に示す構成の高炉設備において固体燃料を燃料ガス及び酸素含有ガスと共に高炉内に吹き込む試験を実施した。燃料ガス及び酸素含有ガスは別々に供給し、固体燃料吹き込みランスの外管の内部では燃焼させずに供給した。この固体燃料吹き込みランスには、図4に示す流量の制御設備が備えられている。この試験操業における固体燃料の通過雰囲気の目標温度は300℃に設定した。
固体燃料としては、微粉炭と木片を粉砕した木片粉との混合物を用い、搬送用ガスとしては純窒素を用い、その流量を15Nm3 /hrとして700kg/hrの微粉炭及び木片粉の混合物を吹き込んだ。燃料ガスにはLPGを用い、酸素含有ガスとしては空気を用いた。固体燃料の通過雰囲気の目標温度を300℃に設定したことで、LPGの供給量は約3.0Nm3 /hr、空気の供給量は約72Nm3 /hrとなった。この条件下で固体燃料の通過雰囲気の温度は、ほぼ300℃の一定に制御された。
この試験操業中、高炉の操業条件の変化により、搬送用ガスである純窒素の流量を15Nm3 /hrの一定のままで、微粉炭及び木片粉の混合物の吹き込み量を400kg/hrとする場合が発生したが、固体燃料吹き込みランスの先端近傍に設置した熱電対を測温位置とする温度計の測定値に基づく温度制御装置の出力信号により、LPG及び空気の流量を制御するそれぞれの流量調整弁の開度が自動的に調整され、LPG及び空気の供給量が自動的に変更され、固体燃料の通過雰囲気の温度は、ほぼ300℃の一定値に制御された。因みに、搬送用ガスである純窒素の流量が15Nm3 /hrで、微粉炭及び木片粉の混合物の吹き込み量が400kg/hrの時には、LPGの供給量は約2.0Nm3 /hr、空気の供給量は約48.0Nm3 /hrとなった。
このようにして微粉炭及び木片粉の混合物の吹き込みを続け、炉頂からダストとして排出される排ガス中の未燃チャーを回収し、高炉内における微粉炭及び木片粉の燃焼率を算出した。また、比較のために、前述した特許文献2による方法を用いて、微粉炭及び木片粉を吹き込む試験も実施した(従来例)。
この試験操業における微粉炭及び木片粉の燃焼率の調査結果を図5に示す。図5に示すように、本発明例では従来例に比較して、微粉炭及び木片粉共に燃焼率が約10%上昇した。尚、図5に示す燃焼率とは、燃焼率が1の場合に吹き込まれた微粉炭及び木片粉が全て燃焼したことを表している。
また、表1は、微粉炭の吹き込み量を溶銑1トン当たり200kgの一定として、本発明例と従来例とでコークス比を調査した結果である。表1からも明らかなように、本発明例では従来例に比較して微粉炭の燃焼率が高くなるため、その分に該当するコークス量が削減され、燃料比を溶銑1トン当たり20kg削減することができた。
1 高炉
2 高炉鉄皮
3 耐火物
4 固体燃料吹き込みランス
5 ブローパイプ
6 羽口
7 大羽口
8 羽口受金物
9 ガイドパイプ
10 導入口
11 導入口
12 内管
13 外管
14 ノズル
15 ノズル
16 温度計
17 温度制御装置
18 流量調整弁
19 流量計
20 流量計
21 流量制御装置
22 流量調整弁
2 高炉鉄皮
3 耐火物
4 固体燃料吹き込みランス
5 ブローパイプ
6 羽口
7 大羽口
8 羽口受金物
9 ガイドパイプ
10 導入口
11 導入口
12 内管
13 外管
14 ノズル
15 ノズル
16 温度計
17 温度制御装置
18 流量調整弁
19 流量計
20 流量計
21 流量制御装置
22 流量調整弁
Claims (7)
- 羽口に接続するブローパイプに設置された固体燃料吹き込みランスを介して固体燃料を搬送用ガスと共に高炉内に吹き込む際に、前記固体燃料吹き込みランスの先端位置で固体燃料吹き込みランス内に気体を供給し、当該気体の旋回流を形成させながら固体燃料を搬送用ガスと共に吹き込むことを特徴とする、高炉への固体燃料吹き込み方法。
- 前記気体を、固体燃料吹き込みランスの内壁面の接線方向に向けて設置されたノズルを介して前記内壁面の接線方向に向けて供給することを特徴とする、請求項1に記載の高炉への固体燃料吹き込み方法。
- 前記気体を、予め予熱した後に固体燃料吹き込みランス内に供給することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の高炉への固体燃料吹き込み方法。
- 前記気体が、燃料ガス及び酸素含有ガスであることを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れか1つに記載の高炉への固体燃料吹き込み方法。
- 前記気体の供給量または気体の温度を、固体燃料の吹き込み量または固体燃料の搬送用ガスの供給量に応じて調整することを特徴とする、請求項1ないし請求項4の何れか1つに記載の高炉への固体燃料吹き込み方法。
- 羽口に接続するブローパイプに設置され、固体燃料を搬送用ガスと共に高炉内に吹き込むための固体燃料吹き込みランスであって、当該固体燃料吹き込みランスの先端位置には、固体燃料吹き込みランス内に気体を吹き込むための、固体燃料吹き込みランスの内壁面の接線方向に向けて配置されたノズルが備えられ、当該ノズルから固体燃料吹き込みランス内に供給された気体は旋回流を形成することを特徴とする、高炉への固体燃料吹き込みランス。
- 羽口に接続するブローパイプに設置され、固体燃料を搬送用ガスと共に高炉内に吹き込むための固体燃料吹き込みランスであって、当該固体燃料吹き込みランスの先端位置には、固体燃料吹き込みランス内に燃料ガスを吹き込むための、固体燃料吹き込みランスの内壁面の接線方向に向けて配置されたノズルと、固体燃料吹き込みランス内に酸素含有ガスを吹きこむための、固体燃料吹き込みランスの内壁面の接線方向に向けて配置されたノズルと、が備えられ、これらのノズルから固体燃料吹き込みランス内に供給された燃料ガス及び酸素含有ガスは旋回流を形成することを特徴とする、高炉への固体燃料吹き込みランス。
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---|---|---|---|
JP2004021820A JP2005213590A (ja) | 2004-01-29 | 2004-01-29 | 高炉への固体燃料吹き込み方法及び吹き込みランス |
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JP (1) | JP2005213590A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010014319A (ja) * | 2008-07-02 | 2010-01-21 | Jfe Steel Corp | 竪型溶解炉および溶銑製造方法 |
CN111620551A (zh) * | 2020-06-12 | 2020-09-04 | 株洲醴陵旗滨玻璃有限公司 | 一种具有0#氧枪的浮法玻璃熔窑及着色玻璃生产方法 |
CN112577322A (zh) * | 2020-12-11 | 2021-03-30 | 交城义望铁合金有限责任公司 | 一种用于水冷炉盖的加料搅拌装置 |
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2004
- 2004-01-29 JP JP2004021820A patent/JP2005213590A/ja active Pending
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