JP2005206478A - 樹状細胞膜分子−IgFc融合ポリペプチドまたはそれに対する抗体を含む医薬組成物 - Google Patents

樹状細胞膜分子−IgFc融合ポリペプチドまたはそれに対する抗体を含む医薬組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 ヒト樹状細胞膜分子−IgFcまたはそれに対する抗体が、樹状細胞とT細胞の相互作用を介するT細胞の活性化を促進または抑制することによって活性化樹状細胞および活性化T細胞の機能制御の異常に起因する病気の治療または予防に有用であることを提供する。
【解決手段】 配列番号2に示されるアミノ酸配列22〜331のヒト樹状細胞膜分子の細胞外領域ポリペプチド、または該ポリペプチドと本質的に同等の生物学的活性をもち且つそのアミノ酸配列中1もしくは複数のアミノ酸残基の変異をもつその変異体と、ヒト免疫グロブリン重鎖の定常領域ポリペプチドまたはその断片とからなる融合ポリペプチド、あるいは、該融合ポリペプチドに対する抗体であって該ヒト樹状細胞膜分子細胞外領域ポリペプチドと結合する抗体、を含む、樹状細胞とT細胞の相互作用を介するT細胞の活性化を促進または抑制することによって活性化樹状細胞と活性化T細胞の機能制御の異常に起因する病気もしくは障害の治療または予防に使用するための医薬組成物。
【選択図】 図7

Description

本発明は、ヒト樹状細胞膜分子−免疫グロブリン定常領域(IgFc)融合ポリペプチドまたはそれに対する抗体を含有してなる、樹状細胞とT細胞の相互作用を介するT細胞の活性化を促進または抑制することによって活性化樹状細胞および活性化T細胞の機能制御の異常に起因する病気の治療または予防に使用するための医薬組成物に関する。
樹状細胞(dendritic cell ; 以下DCともいう)は、生体内では骨髄に存在するCD34陽性細胞を前駆細胞として分化・成熟し、抗原提示細胞(antigen-presenting cells ; 以下APCともいう)として、免疫応答の誘導、維持、拡大、調節において重要な役割を担っていることが知られている。1990年代に入って、DCを前駆細胞からサイトカインで分化・誘導できるようになり、大量のDCを扱えるようになって分子・細胞・生体レベルにおいてDCの免疫応答における役割の重要性が明らかになってくると共に、免疫制御の標的として注目されるようになった。
これまでの生物学的研究成果から、ヒト単球(monocyte)をGM-CSF及びIL-4存在下で培養することによりDC(monocyte-derived DC)を誘導することが可能であることが明らかとなっている[J. Leucocyte Biol.、59巻、208-218頁(1996年)(非特許文献1という)]。このインビトロ分化誘導系は人工的な部分があるものの、実際にDCとしての機能を有することが明らかとなってきた。DCの重要な機能は、抗原の細胞内への取り込み作用(食作用)及びその抗原の情報をT細胞に伝えてT細胞を刺激活性化することである。また、DCは分化の段階によって未成熟DC(Immature DC)と成熟DC(Mature DC)の二つに分別することができる。未成熟DC内に取りこまれた抗原は細胞内でプロセシングを受け、抗原由来のペプチドとしてDC表面のMHCクラスII分子上に提示される。CD4陽性の抗原特異的ヘルパーT細胞は、抗原受容体で抗原由来のペプチドとMHCクラスII分子の複合体を認識し、副刺激分子からの刺激なども加わり、感作、活性化される。このステップでは抗原提示細胞の活性化にはCD40刺激が特に重要である。T細胞受容体(TCR)刺激を受けたT細胞はCD154(CD40リガンド)を発現し、CD154によるDC上のCD40を介した刺激ならびにDCの成熟化の促進、IL-12を始めとしたサイトカインの産生が見られる。また、DCにより外来性に取り込まれた抗原が、通常のMHCクラスI抗原提示経路に乗ることにより、MHCクラスI分子を介してCD8陽性の細胞障害性T細胞(Cytotoxic T Lymphocyte ; CTL)も刺激、活性化できることが報告されている(クロスプライミング)。
抗原提示細胞が抗原特異的T細胞を活性化するためには、T細胞上の抗原特異的なT細胞受容体を介したシグナルに加えて種々の細胞表面分子間を介した副刺激が必要であることが知られている。副刺激には活性型副刺激と抑制型副刺激があり、活性型では抗原特異的な細胞のクローン拡大のための増殖、サイトカイン分泌によるヘルパーT細胞(Th1、Th2)への分化、さらにはCTLやメモリーT細胞分化を誘導し、免疫応答を起こす。一方、異物の排除が終了し免疫応答を終息に導く際、あるいはTCRの特異性が自己抗原に向けられた場合、また腫瘍細胞が細胞性免疫から逃れる機構として、抑制型副刺激が誘導されて抗原特異的なT細胞のアポトーシス、不応答性(アナジー)などにより免疫応答が抑制される。
現在までに、この副刺激シグナルを誘導する多くの分子が見つかっているが、なかでもAPC上のB7-1(CD80)およびB7-2(CD86)はT細胞上のCD28分子との相互作用により、T細胞に活性化シグナルを伝達し、多くのサイトカインの産生を誘導するなど、T細胞の増殖および活性化に決定的な役割を果たしている。一方、CTLA-4(cytotoxic T lymphocyte antigen-4)はCD28と同じB7-1とB7-2をリガンドとして共有するが、T細胞に抑制性シグナルを伝達し、T細胞の活性化終息に中心的な役割を担っていることが示唆されている[Immunol. Rev.、153巻、5-26頁 (1996年)(非特許文献2という)、Annu. Rev. Immunol.、14巻、233-258頁、(1996年)(非特許文献3という)]。このB7-CD28/CTLA-4の系の発現や機能をコントロールすることによる免疫療法の可能性が動物実験により示されている。例えば、B7-1/B7-2分子の癌細胞への遺伝子導入やCTLA-4に対する中和抗体の投与により免疫機能を賦活化し、抗腫瘍免疫応答を誘導することができる。または、B7-1/B7-2に対する中和抗体や可溶化型CTLA-4(CTLA-4-Ig)の投与によりB7-CD28経路を遮断することで、自己免疫疾患、移植片対宿主病(graft-versus-host disease ; GVHD)の発症、臓器移植片拒絶を抑制することができる。ヒトへの臨床応用では、前立腺癌や悪性黒色腫に対する抗CTLA-4ヒト化抗体投与、乾癬や慢性関節リウマチを対象としたCTLA-4-Igの投与、乾癬を対象としたヒト型化B7-1抗体投与などの治験が進行中である。また、最近になってB7ファミリー分子とそのカウンターレセプターのCD28ファミリー分子が相次いで報告されている[Nat. Rev. Immunol.、2巻、116-126頁(2002年)(非特許文献4という)、Annu. Rev. Immunol.、20巻、29-53頁(2002年)(非特許文献5という)、Immunity、18巻、849-873頁(2003年)(非特許文献6という)]。
B7ファミリー分子と同様に、DC上に発現するTNFファミリーに属するOX40リガンド(OX40L)、4-1BBリガンド(4-1BBL)やLIGHTもT細胞上のそれぞれの受容体と相互作用することによりT細胞に活性化シグナルを伝達する。OX40LのレセプターであるOX40はナイーブT細胞では発現しておらず、活性化T細胞上で発現が認められる。CD28からの副刺激シグナルが活性化初期におけるT細胞の増殖とIL-2産生に重要であるのに対して、OX40からの副刺激シグナルはCD4陽性T細胞の持続的な増殖の維持とエフェクターT細胞の機能発現に重要であることが示唆されている。また可溶化型OX40(OX40-Ig)の投与によりOX40副刺激シグナルを抑制することによって、ヒト多発性硬化症のマウスモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の発症が抑制できること、またこの抑制効果はCTLA-4-Igと相乗的に働くことが示されている[J. Immunol.、162巻、1818-1826頁(1999年)(非特許文献7という)]。4-1BBLのレセプターである4-1BBはおもに活性化CD4およびCD8陽性T細胞に発現している。4-1BBからの副刺激シグナルはCD28と同様にIL-2の産生を誘導し、CD8陽性T細胞の増殖、機能発現、生存に重要な働きをしている。マウスモデルにおいて、4-1BBに対するアゴニスティック抗体の投与によりGVHDにおける細胞障害性T細胞の誘導の促進と心臓移植、皮膚移植モデルでの同種移植片の拒絶が増強されることが報告されている[J. Exp. Med.、186巻、47-55頁(1997年)(非特許文献8という)]。LIGHTのレセプターであるHVEM(herpes virus entry mediator)は、T細胞以外にB細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球および内皮細胞でも発現が認められるが、LIGHTとHVEMの相互作用を阻害するHVEM-Igはマウス心移植においてシクロスポリンAとの併用により移植片の生着延長効果を示す。この経路はCD28非依存的な副刺激シグナルであり、カルシニューリン阻害剤により効果が阻害されない[J. Exp. Med.、195巻、795-800頁(2002年)(非特許文献9という)]。
DCに発現する細胞接着分子であるCD58とICAM-1(intercellular adhesion molecule-1)は、T細胞上に発現するCD2とLFA-1(lymphocyte function-associated antigen-1)にそれぞれ相互作用することでT細胞の抗原認識を補助することが知られている。マウス心臓移植モデルにおいて、心移植後抗ICAM-1抗体と抗LFA-1抗体を短期間投与すると、マウスは移植心を永久に受け入れることができる。しかも、この免疫抑制は移植された同種抗原に特異的であり、T細胞の抗原刺激時にICAM-1とLFA-1の相互作用を阻害することにより、抗原特異的免疫寛容が誘導できることを示している[Science、255巻、1125-1127頁(1992年)(非特許文献10という)]。また、乾癬を対象としたヒト型化LFA-1抗体投与の治験が実施されている[N. Engl. J. Med.、349巻、2004-2013頁(2003年)(非特許文献11という)]。
免疫系細胞上に発現する他の膜分子として、細胞外領域にimmunoglobulin variable domain(IgV)とimmunoglobulin constant-2 domain(IgC2)を一つずつ有するI型膜蛋白質で、所謂イムノグロブリン(Ig) スーパーファミリーに属する膜蛋白質が知られている。このIgスーパーファミリーの中で、特にCD2との構造上の相同性が高い膜蛋白質はCD2サブグループ(CD2ファミリー)に分類される。CD2ファミリーに属する分子としては、CD2、CD48、CD58、CD84、SLAM(CD150)、Ly9(CD229)、2B4(CD244)、NTB-A、B lymphocyte activator macrophage expressed(BLAME)、CS-1/19A/CRACC(CD2-like receptor-activating cytotoxic cells)が知られており、CD2、CD84、SLAM、2B4、NTB-AおよびCRACCについてはT細胞やNK細胞の増殖、細胞接着、サイトカイン産生または細胞障害活性等に関与していることが報告されている[J. Immunol.、171巻、2485-2495頁(2003年)(非特許文献12という)]。CD2ファミリーに属する分子のこれまでに明らかにされているリガンドもまたCD2ファミリーに属することが知られている。ヒトではCD2はCD58、CD48は2B4と結合し、CD84とSLAMに関しては同一分子同士がホモフィリックに結合することが報告されている。
CD2はT細胞、NK細胞に発現しており、T細胞においては、APCとの初期における一時的な相互作用に重要な接着分子である[Nature、339巻、312-314頁(1989年)(非特許文献13という)]。MHCと抗原の複合体によりT細胞受容体を介して活性化されると、SH(Src homology)3ドメインを有するアダプター分子CD2APがCD2の細胞内末端(cytoplasmic tail)のプロリンに富む配列に結合し、免疫シナプス(immunological synapse)を形成する[Cell、94巻、667-677頁(1998年)(非特許文献14という)]。一方同じ結合ドメインを有するCD2BP1が結合するとCD2を介した接着がダウンレギュレーションされることが知られている[EMBO J.、17巻、7320-7336頁(1998年)(非特許文献15という)]。CD2のリガンドであるCD58は血球系、非血球系双方に広範に発現が見られる。
2B4とSLAMの細胞内領域は、CD2には存在しないtyrosine-based motif(TxYxxV/I)があり、細胞内蛋白質であるSAP(SLAM-associated protein)とSHP-2(SH2-domain-containing protein tyrosine phosphatase-2)が競合的に結合し、細胞内シグナルを伝える。2B4はナチュラル キラー(NK)細胞、CD8陽性T細胞、γδ陽性T細胞に発現が見られる。NK細胞上の2B4が標的細胞上のリガンド(CD48)に結合すると2B4からのシグナルによりNK細胞の細胞障害活性が増強する。一方CD8陽性T細胞上の2B4にリガンドが結合しても細胞障害活性は誘導されないが、CD8陽性2B4陽性細胞はMHC非拘束性の細胞障害能を有する[Immunology、96巻、491-497頁(1999年)(非特許文献16という)]。SLAMは活性化T細胞、B細胞に発現し、SLAMに対するアゴニスティック抗体により活性化T細胞の増殖を促進できる。またSLAMからのシグナルは、T細胞からのIFN-γの産生を誘導する。B細胞ではSLAMからのシグナルにより、B細胞の増殖とIg産生が見られる。
NTB-Aは、ヒトNK細胞、T細胞およびB細胞上に発現する膜蛋白質として報告された [J. Exp. Med.、194巻、235-246頁(2001年)(非特許文献17という)、国際公開WO03/008449(特許文献1という)]。この膜蛋白質は、NK細胞上に発現するnatural cytotoxicity receptors(NCRs)とともにNK細胞の細胞障害能に関わる受容体として機能しており、NCRsを発現するNK細胞上のNTB-Aを抗NTB-A抗体で架橋することにより、NK細胞の細胞障害活性が促進される。NTB-Aの細胞内領域には、2つのtyrosine-based motif(TxYxxV/I)と1つのimmuno-receptor tyrosine-based inhibitory motif(ITIM)(I/V/L/SxYxxL/V)が存在し、リン酸化されたTxYxxV/I配列には、細胞内蛋白質であるSH2D1A/SAP(Src homology 2 domain-containing protein/SLAM-associated protein)、またはSHP-2(SH2-domain-containing protein tyrosine phosphatase-2)が結合し、ITIMにはSHP-1(SH2-domain-containing protein tyrosine phosphatase-1)が結合して細胞内にシグナルを伝える。SH2D1Aの遺伝子に変異があるX染色体連鎖性リンパ球増殖症候群(XLP ; X-linked lymphoproliferative syndrome)患者由来のNK細胞では、NTB-Aからのシグナルは細胞障害能の促進ではなく、逆に抑制的に働く。
NTB-Aと同一の蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列は、国際公開WO01/79454(特許文献2という)、WO01/90304(特許文献3という)、WO01/55336(特許文献4という)、EP1223218A1(特許文献5という)などにも記載されている。また、DC上でのNTB-Aの発現はWO02/077173(特許文献6という)、特開2003-52374(特許文献7という)に開示されている。
生体は常に「自己」(self)と「非自己」(non-self)とを識別し、「自己」に対しては過剰な免疫応答が起こらないように調節している。このような識別は胸腺の中で行われる。胸腺の中で「自己」に反応するクローンが死滅し、「非自己」と反応するクローンのみが生き残ることをクローン選択と呼び、生体が「自己」に反応しなくなった状態を自己寛容(self tolerance)という。しかし、自己に対する免疫応答は全く起こらないわけではなく、正常の個体においても、常に微量の自己抗体(autoantibody)や自己抗原(autoantigen)を認識する感作リンパ球は存在している。このような反応を自己免疫(autoimmunity)と呼ぶ。すなわち、自己免疫とは生体内において常に起こっている生理的な反応である。一方、遺伝的要因や環境要因などによって自己寛容が破綻すると、自己に対する過剰な免疫応答が起こり、このために大量の自己抗体が産生されたり、あるいは自己感作リンパ球クローンの増幅が起こり、病的状態が引き起こされる。このように、免疫調節機構が攪乱されることにより生じた病態が自己免疫疾患である。
自己免疫疾患のうち、問題の自己抗原が特定の臓器あるいは組織・細胞に限局して存在するような場合には、その臓器のみが傷害されることになり臓器特異的自己免疫疾患という。一方、DNAなど全身に普遍的な自己抗原に対する自己抗体が証明され、血管炎など全身性の病変が生じているものは全身的自己免疫疾患という。臓器特異的自己免疫疾患の例としては、自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia)、突発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura)、自己免疫性甲状腺炎(autoimmune thyroiditis)、I型糖尿病(type 1 diabetes mellitus)、重症筋無力症(myasthenia gravis)、多発性硬化症(multiple sclerosis)などの疾患があげられる。これらの疾患では、病変臓器の抗原成分に対する自己抗体が認められ、病理組織学的にはリンパ球、形質細胞、組織球の浸潤、胚中心の形成などがみられる。全身的自己免疫疾患としては、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus ; SLE)、慢性関節リウマチ(rheumatoid arthritis ; RA)などがあげられ、SLEでは抗核(DNA)抗体、RAではリウマトイド因子が出現する。リウマトイド因子は、IgGのFc部分に対する自己抗体である。
自己免疫疾患の治療には、1.副腎皮質ステロイド薬、2.免疫抑制薬[1)アルキル化薬(シクロホスファミド)、2)代謝拮抗薬(メトトレキセート、アザチオプリンなど)、3)アルカロイド系薬(ビンクリスチン、エトポシドなど)、4)抗生物質(マイトマイシン、ブレオマイシン、シクロスポリン、タクロリムス)]、3.モノクローナル抗体(抗CD3抗体、抗TNF-a抗体など)、4.可溶化型サイトカイン受容体(可溶化型TNF-α受容体)などが使用されている。副腎皮質ステロイド薬は、IL-1、TNF-αなどの炎症性サイトカイン産生を抑制する他、T細胞の増殖反応、B細胞からの抗体産生を強く抑制する。また、E-セレクチンやICAM-1などの接着分子発現抑制を介して炎症性細胞浸潤も強く抑制する。抗生物質の内、シクロスポリンとタクロリムスはともにイムノフィリンと総称される細胞内の受容体と結合する。イムノフィリンと結合した薬剤は、さらにカルシウム依存性ホスファターゼであるカルシニューリンと複合体を形成することにより、そのホスファターゼ活性を阻害する。その結果、転写因子であるNFAT(nuclear factor of activated T cell)の脱リン酸化ができなくなり、NFATは細胞内から核内に移行することができなくなり、IL-2などのサイトカイン遺伝子の転写が阻害される。抗TNF-αモノクローナル抗体は、慢性関節リウマチおよびクローン病(Crohn disease)の病変局所において炎症反応に関わるサイトカインであるTNF-αを中和することで炎症反応を抑制する。またRAにおける患者の機能的予後を左右する関節の骨破壊の進行を抑制する。可溶化型TNF-α受容体は、TNF-α受容体のp75分子の細胞外領域とヒトIgG1のFc部分を融合させ、2量体としてCHO(chinese hamster ovary)細胞で発現させた生物学的製剤であり、抗TNF-αモノクローナル抗体と同様にTNF-αを標的とした治療に使用されている。
移植免疫における急性拒絶反応の主体はT細胞による細胞性免疫であり、移植抗原として最も重要なのは同種MHC(allogeneic major histocompatibility complex)分子である。T細胞による同種抗原認識経路は2つあり、自己の抗原提示細胞に提示された移植片由来の同種MHCを認識(間接認識)する経路と、移植片に存在する非自己抗原提示細胞上の同種MHC分子を認識(直接認識)する経路である。レシピエントのCD4陽性T細胞が同種抗原を認識して活性化するとIL-2、IFN-γなどのさまざまなサイトカインを産生する。IL-2により細胞障害性T細胞、NK細胞などが活性化され、標的細胞障害を起こす。IFN-γは、マクロファージの食作用、催炎症作用を増強し、またIFN-γ自身、IL-1、TNF-αの合成を増加させることで、ドナー細胞上の接着分子、MHC分子の発現を増強させる。これにより抗原認識、エフェクター細胞による細胞障害が効率的に行われることになる。
臓器移植は臓器不全に陥った患者に他個体の正常な臓器を移植してその機能の改善を図る治療法である。シクロスポリンやタクロリムスといったカルシニューリン阻害剤の導入により臓器移植の成功率は向上したものの、患者は生涯にわたってこれらの免疫抑制剤を投与され続けなければならず、その結果、腎機能障害、高血糖といった薬剤自身による毒性に加え、日和見感染や癌などの二次的な病的状態を引き起こすリスクが高まることになる。また既存の免疫抑制剤では免疫寛容の誘導に至る症例はほとんどなく、慢性拒絶を制御できないため、長期での成績は満足のいく結果に至っていない。
骨髄移植は造血器系の疾患、特に白血病などの悪性腫瘍、先天性免疫不全症などで行われる造血器系細胞の移植である。健康なドナーから移植を行う同種骨髄移植と、患者本人の骨髄を冷凍保存し、のちに移植する自家骨髄移植とがある。同種移植の場合のドナーはHLA抗原が一致する同胞(sibling donor)が理想であるが、そのような同胞ドナーが見いだせない患者には、HLA抗原部分一致の血縁者やHLA表現型一致の非血縁者からの移植も試みられている。移植され生着したドナー由来の免疫担当細胞が宿主に対して起こす移植免疫反応によって引き起こされる疾患が移植片対宿主病(GVHD)である。骨髄移植が行われる場合、宿主は放射線照射や化学療法による前処置により免疫不全状態にあり、宿主の組織にある組織適合抗原が、移植細胞中のT細胞により攻撃される。GVHDは、急性と慢性に分けられ、急性GVHDは皮膚、肝臓、消化管を侵し、皮疹、黄疸、下痢などの症状を来たす。移植骨髄中のヘルパーT細胞によって形成されたキラーT細胞がエフェクターとして働くと考えられている。慢性GVHDは膠原病に類似した多臓器疾患で、皮膚、口腔、眼球、呼吸器、消化管、肝臓などに線維化と萎縮を主体とした傷害が発生する。ヘルパーT細胞から産生される種々のサイトカインが宿主の免疫系を賦活化して、自己免疫的機序で全身の臓器障害が惹起されると考えられている。GVHDは一旦発症すると予後不良であり、骨髄移植時に計画的に予防することが重要である。予防法として、シクロスポリン、タクロリムス、メトトレキセートなどの免疫抑制剤の投与や移植する骨髄中から成熟T細胞を除去する方法が行われている。
WO03/008449 WO01/79454 WO01/90304 WO01/55336 EP1223218A1 WO02/077173 特開2003-52374 J. Leucocyte Biol.、59巻、208-218頁(1996年) Immunol. Rev.、153巻、5-26頁 (1996年) Annu. Rev. Immunol.、14巻、233-258頁、(1996年) Nat. Rev. Immunol.、2巻、116-126頁(2002年) Annu. Rev. Immunol.、20巻、29-53頁(2002年) Immunity、18巻、849-873頁(2003年) J. Immunol.、162巻、1818-1826頁(1999年) J. Exp. Med.、186巻、47-55頁(1997年) J. Exp. Med.、195巻、795-800頁(2002年) Science、255巻、1125-1127頁(1992年) N. Engl. J. Med.、349巻、2004-2013頁(2003年) J. Immunol.、171巻、2485-2495頁(2003年) Nature、339巻、312-314頁(1989年) Cell、94巻、667-677頁(1998年) EMBO J.、17巻、7320-7336頁(1998年) Immunology、96巻、491-497頁(1999年) J. Exp. Med.、194巻、235-246頁(2001年)
DC上に発現する膜分子とT細胞上の受容体との結合を介したT細胞の活性化や機能制御の解明、並びにそのメカニズムに関与する既知または未知の分子の同定およびその性状解析は、何らかの免疫疾患の治療または予防において有用な医薬品を開発し、提供することを可能とするかもしれない。そこで本発明者らは、DC上に発現しT細胞の活性化や機能制御に関わる膜分子を同定するとともに、その構造的および生物学的な性状を明らかにし、有用な医薬の開発を目的として研究を行ってきた。
DC上に発現しT細胞の活性化や機能制御に関わる膜分子を同定するために、まずDC上に発現する膜蛋白質を網羅的に解析(proteomics)することから始めた。発現量が微量な膜蛋白質をプロテオミクス(proteomics)により分子同定するためには、解析に供することのできる十分な膜蛋白質を確保することが必須となるが、インビトロ(in vitro)において誘導できるDCであるヒト単球由来樹状細胞(monocyte derived DC)は、インビボ(in vivo)/インビトロ(in vitro)においてT細胞への抗原提示能、T細胞活性化能を含めて、種々の免疫応答を担えることが実証されており、また比較的大量に細胞の調製が可能であることから、未熟なヒト単球由来DCとLPS(lipopolysaccharide)で成熟させたヒト単球由来DCの膜分子を標的としてプロテオミクス解析を行った。解析の結果、LPSの成熟刺激によりヒト単球由来DCにおいてその発現が上昇する膜蛋白質として、CD2分子と相同性を有する免疫グロブリンスーパーファミリー(immunoglobulin superfamily)に属する膜分子(以下単に、該膜分子と称する)を同定した。該膜分子をコードする遺伝子の塩基配列を決定した結果、それは既に特許文献1〜7、非特許文献17において開示されたcDNA配列と一致することが判明した。
特に特許文献5には、本発明で使用する該膜分子と同じアミノ酸配列をもつ、主にリンパ組織(脾臓、リンパ節および胸腺)に発現される分子が開示されているが、この分子が存在する細胞の種類は特定されていない。さらに同文献では、この分子がIgドメインとIg様ドメインをもつこと、また免疫グロブリンとの融合蛋白質を想定し、これが細胞受容体とリガンドとの相互作用を阻害しシグナル伝達を抑制するための医薬に使用できること、が記載されているが、この分子および融合蛋白質の生物学的および薬理学的実証データはない。またこの文献および他のいずれの文献、特許および特許出願にも、DC上で発現される該膜分子のはたらきやT細胞との作用、並びに活性化樹状細胞と活性化T細胞の機能制御の異常に起因する病気もしくは障害に対する治療可能性、については具体的に実証された報告がないため実際不明であった。
このような状況にあって、本発明者らは、ヒト樹状細胞膜分子−IgFc融合ポリペプチドまたはそれに対する抗体が、樹状細胞とT細胞の相互作用を介するT細胞の活性化を促進または抑制することによって、かような病気もしくは障害の治療または予防に有用であることを見出し、本発明を完成させた。
該膜分子の機能を解析するために、該膜分子をコードするcDNAをクローニングし、該膜分子の細胞外領域とヒト免疫グロブリンのFc領域からなる融合ポリペプチド(以下、単に該膜分子-IgFcともいう)をチャイニーズハムスター卵巣由来細胞株(CHO細胞)に発現させて作製した(実施例1)。この融合ポリペプチド(配列番号4)は、SDS-PAGE分析において、還元条件下で約70kDa、非還元条件下で約200kDaであったことから、糖鎖を含む二量体構造(図1)を有することが推定された。また、この融合ポリペプチドをウサギに免疫することにより、該膜分子に対するポリクローナル抗体を作製した。作製したポリクローナル抗体を用いて、ヒト末梢血細胞における該膜分子の発現分布を解析したところ、該膜分子はDCに加えて、すでに報告されているとおりT細胞、B細胞、NK細胞および単球にも発現していることが確認された。
次に、該膜分子の融合ポリペプチド(該膜分子-IgFc)を用いたT細胞への結合実験を行い、未刺激のT細胞には結合性を示さないが、PHA(phytohemagglutinin)により活性化させたT細胞(たとえばCD4陽性およびCD8陽性T細胞)には結合することから、活性化したT細胞上に該膜分子と結合するカウンターレセプターが発現していることを見出した。
さらに、抗CD3抗体とともに細胞培養容器に固相化した該膜分子の融合ポリペプチド(該膜分子-IgFc)が、T細胞を有意に増殖させること、またT細胞からのサイトカイン(たとえばINF-γ, TNF-α, IL-2, IL-4, IL-5,IL-10)産生を促進させること、たとえばCD4陽性T細胞からのTh1およびTh2サイトカイン産生を促進させること、したがって該膜分子がT細胞活性化における副刺激活性を有することを見出した。これまで、CD2ファミリーに属する分子の中で副刺激分子としてT細胞の活性化に関わっている分子はCD2、CD150 、CD84のみであった(Semin、Immunol.、12巻、149−157頁(2000年)、非特許文献12)。また、抗CD3抗体とともに細胞培養容器に固相化した該膜分子の融合ポリペプチドのT細胞増殖活性、サイトカイン産生促進活性は、ウサギで作製した該膜分子に対するポリクローナル抗体により強く阻害されることから、このポリクローナル抗体が該膜分子からT細胞への副刺激シグナルを中和もしくは阻害する活性を有する抗体であることを明らかにした。この副刺激シグナルの阻害は特異的であり、代表的な既知の副刺激シグナルであるB7-1/CD28経路には影響しなかった(図7、図8)。
次に、中和活性を有する該膜分子に対するポリクローナル抗体をヒト単球由来DCと同種異系T細胞を用いたリンパ球混合反応に添加すると、T細胞の増殖には影響を与えないが、分泌されるサイトカインが有意に抑制されること、したがって該膜分子に対する抗体が、DCを介したT細胞活性化および機能発現の制御に有用であることを見出した。さらに、中和活性を有する該膜分子に対するポリクローナル抗体をヒト単球由来DCと同種抗原反応性もしくは同種異系のCD8陽性T細胞またはCD4陽性T細胞を用いたリンパ球混合反応に添加すると、同種抗原反応性のCD4陽性またはCD8陽性T細胞の増殖は抑制しないが、一方同種異系リンパ球混合反応液中ではサイトカイン産生が抑制されたこと(図9、図10)、また同種抗原特異的な細胞障害性T細胞(CTL)の誘導が有意に抑制されること(図11)を知見し、細胞障害性T細胞、炎症性サイトカインが病因に関わっている種々の免疫疾患(たとえば同種移植片拒絶反応、移植片対宿主病、自己免疫疾患など)の治療および予防に該膜分子に対する抗体が有用であることを見出した。
さらに、該膜分子を強制発現させたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に対して、該膜分子の融合ポリペプチド(該膜分子-IgFc)が結合すること、すなわち該膜分子同士がホモフィリックに結合することを見出した。該膜分子自体も、CHO細胞に発現させ細胞内局在を調べた実験において、細胞同士が接触する場合にその接触面に該膜分子が集積することから、該膜分子同士がホモフィリック(同種親和的)に結合することを見出した(図14)。CD2ファミリーに属する接着分子のうち分子同士がホモフィリックに結合することが知られている分子はCD84とCD150のみであった[CD84:J.Immunol.、167巻、3668-3676頁(2001年);CD150:J.Biol.Chem.、275巻、28100-28109頁(2000年)]。
さらに、抗CD3抗体とともに細胞培養用プレートに固相化した、該膜分子に対するポリクローナル抗体が、T細胞を有意に増殖させること、したがって該膜分子に対する抗体を用いたT細胞の活性化制御、特にex vivoでの癌などの免疫療法への応用、が可能であることを見出した。
上記の知見に基づき、本発明は、上述のようにして単離、同定された該膜分子に関係する該膜分子‐IgFc融合ポリペプチドまたはそれに対する抗体を有効成分とする医薬組成物を提供する。具体的には、本発明は以下に記載される発明に関する。
本発明は、
配列番号2に示されるアミノ酸配列22〜331のヒト樹状細胞膜分子の細胞外領域ポリペプチド、または該ポリペプチドと本質的に同等の生物学的活性をもち且つそのアミノ酸配列中1もしくは複数のアミノ酸残基の変異をもつその変異体と、ヒト免疫グロブリン重鎖の定常領域ポリペプチドまたはその断片とからなる融合ポリペプチド、
あるいは、
該融合ポリペプチドに対する抗体であって該ヒト樹状細胞膜分子細胞外領域ポリペプチドと結合する抗体、
を含む、樹状細胞とT細胞の相互作用を介するT細胞の活性化を促進または抑制することによって活性化樹状細胞と活性化T細胞の機能制御の異常に起因する病気もしくは障害の治療または予防に使用するための医薬組成物に関する。
第1の実施態様において、前記融合ポリペプチドは配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるものである。
第2の実施態様において、前記抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モザイク抗体またはペプチド抗体である。
第3の実施態様において、前記融合ポリペプチドが多量体(二量体など)であるかまたは多量体を形成しうる。
第4の実施態様において、前記融合ポリペプチドがN結合糖鎖またはO結合糖鎖を含む。
第5の実施態様において、前記融合ポリペプチドは免疫原抑制性分子と結合されていてもよい。また、そのような免疫原抑制性分子としてポリエチレングリコールまたはその誘導体が例示される。
第6の実施態様において、前記融合ポリペプチドまたは前記抗体は可溶化もしくは固相化されている。
第7の実施態様において、本発明の医薬組成物はin vivoまたはex vivoでのT細胞の増殖または増殖抑制に使用するためのものである。
第8の実施態様において、本発明の医薬組成物はin vivoまたはex vivoでのT細胞からのサイトカイン産生の促進または抑制に使用するためのものである。
第9の実施態様において、前記病気もしくは障害が自己免疫疾患、アレルギー性疾患、炎症性疾患、移植または癌である。
第8の実施態様において、前記病気もしくは障害がTh1またはTh2細胞に起因するものである。
第10の実施態様において、前記病気もしくは障害が慢性関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、1型糖尿病、自己免疫性甲状腺炎、特発性炎症性ミオパチーまたはアレルギー性接触皮膚炎である。
第11の実施態様において、前記病気もしくは障害は細胞障害性T細胞に起因するもの、好ましくは移植片対宿主病または同種移植片拒絶反応である。
本発明の該膜分子‐IgFc融合ポリペプチドまたは該膜分子を認識する抗体は、樹状細胞とT細胞の相互作用を介するT細胞の活性化を促進または抑制することによって活性化樹状細胞と活性化T細胞の機能制御の異常に起因する病気もしくは障害、特に種々の自己免疫疾患、アレルギー性疾患、炎症性疾患、移植および癌、の治療または予防に有用であることを示している。
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
1.樹状細胞膜分子
本発明のDCに発現する該膜分子は、ヒト末梢血の単球から分化誘導したDC(非特許文献1参照)をリポ多糖(LPS)で刺激し、その可否に基づいて成熟DCを得たのち、細胞膜を調製し、その可溶性蛋白質についてコンカナバリンAセファロースクロマトグラフィー、小麦胚アグルチニンセファロースクロマトグラフィー、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動などの手法を用いて膜蛋白質を分画し、LC/MS(特にThermoquest社製LCQ)による微量分析にかけて同定した。さらにLC/MS法で同定された複数の部分アミノ酸配列に基づくプライマーを合成し、成熟DC由来cDNAライブラリーを鋳型にしてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い該膜分子の遺伝子断片を増幅し取得し、この遺伝子断片をプローブとしてコロニーハイブリダイゼーションにより該膜分子の遺伝子を含むクローンを選抜し、その塩基配列およびアミノ酸配列を決定した。
該膜分子は、配列番号1に示される塩基配列によってコードされる331アミノ酸残基からなるアミノ酸配列(配列番号2)を有する、Ig スーパーファミリーに属するI型膜蛋白質である。ハイドロパシープロット解析から、21アミノ酸残基のシグナル配列(配列番号2のアミノ酸残基1〜21)、205アミノ酸残基の細胞外領域(配列番号2のアミノ酸残基22〜226)、22アミノ酸残基の膜貫通領域(配列番号2のアミノ酸残基227〜248)、83アミノ酸残基の細胞内領域(配列番号2のアミノ酸残基249〜331)から構成されており、成熟配列は、配列番号2のアミノ酸残基22〜331からなる。特に該膜分子の細胞外領域は配列番号2の配列中22番目〜226番目のアミノ酸残基からなる。
2.樹状細胞膜分子細胞外領域ポリペプチドの変異体
本発明で使用されうる該膜分子細胞外領域ポリペプチド変異体は、該ポリペプチドと本質的に同等の生物学的活性をもちながら、その配列中に1もしくは複数(たとえば1もしくは数個)のアミノ酸の置換、付加、挿入、欠失、またはこれらの組合せを含むことができる。ここで数個とは、2〜10の任意の数を意味する。また置換とは、該配列の1以上のアミノ酸が除去され、その位置で1以上の他のアミノ酸と置き換わることを意味する。付加とは、該配列の末端部に1以上のアミノ酸が共有結合されることを意味する。挿入とは、該配列中の隣接するある特定のアミノ酸残基間に1以上のアミノ酸が挿入されることを意味する。欠失とは、該配列中の1以上のアミノ酸が除去されることを意味する。置換、付加または挿入するアミノ酸は20種の天然アミノ酸およびその他のアミノ酸(たとえばD-アミノ酸および修飾アミノ酸)である。本発明における変異体は、該膜分子の細胞外領域が本来もつ生物学的活性(もしくは機能)と本質的に同等の活性(もしくは機能)を保持するものであれば、いかなる突然変異もしくは人為的変異も含み得るものであると理解される。ここで本質的とは、該膜分子細胞外領域の天然の活性(もしくは機能)が必ずしも完全に保持される必要がないことを意味し、たとえば活性(もしくは機能)の定量的レベルが低下してもよいし、逆に向上してもよく、あるいは生体に悪影響を及ぼさない限り定性的レベルで該活性(もしくは機能)の一部が失われたり新たな活性(もしくは機能)が追加されてもよい。
3.該膜分子の融合ポリペプチド
本発明の融合ポリペプチド(該膜分子‐IgFc)の製法は、以下のものに限定されないが、該融合ポリペプチドをコードするDNAを既知の遺伝子工学技術(たとえばSambrookら、Molecular Cloning A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press)により、適当なベクター(プラスミド、ウイルスベクターなど)に組込み、原核もしくは真核生物細胞(たとえば大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞など)に導入して、それを形質転換またはトランスフェクションし、適当な培地中で融合ポリペプチドを発現させることによって該ポリペプチドを得ることができる。好ましくは、該DNAを動物細胞発現ベクターに組込み、動物細胞(好ましくはヒト細胞、ヒト継代培養細胞を含む哺乳動物細胞)にトランスフェクションし、培地から目的物を既知の方法を単独かまたは組合わせて回収する。また別の製法は、融合ポリペプチドの各パートナーを別個に作製したのち、両パートナー同士をペプチド合成法などの公知の技術を用いて共有結合させて該ポリペプチドを得ることを含む。
本発明の融合ポリペプチドを発現させる形態として、融合ポリペプチド単独でもよいし、複合体の形態を有するポリペプチドでもよい。ここで「複合体」は、2種類以上の物質を単に混ぜ合わせた混合物ではなく、1種類もしくは2種類以上のポリペプチドが共有結合を含む結合様式によって形成されるポリペプチド、コンジュゲートまたはコンプレックス等の総称である。そのような複合体の作成例として、ヒト免疫グロブリンの定常(Fc)領域との融合ポリペプチドとして発現させてFc領域のヒンジ部分によるジスルフィド結合を介した多量体(たとえば二量体)として発現させる方法(実施例1、2)や、リンカーとしてFLAG配列(AspTyrLysAspAspAspAspLys)を有する融合ポリペプチドとして発現させて抗FLAG抗体を用いて複合体を形成させる方法、さらにはビオチン化配列を有する融合ポリペプチドとして発現させてビオチンを導入し、アビジンもしくはストレプトアビジンを用いて多量体を形成させる方法が挙げられる。本発明でいう多量体は、2個以上の同一の融合ポリペプチドが、たとえばジスルフィド結合、抗体、アビジン類を介して形成された多量体(たとえば2〜5量体)である、と定義することができる。免疫系の抗原提示細胞とT細胞の相互作用では、抗原提示細胞のMHCとT細胞受容体の結合面に複数の細胞接着分子や副刺激分子が集積し、いわゆる免疫シナプスを形成することによって抗原特異的なT細胞の活性化が起こることが知られている[Molecular Medicine、39巻、1134-1141頁(2002年)]。In vitroでこのような免疫シナプスを再現させる方法として、たとえば後述の実施例に記載するように、培養プレートやビーズなどの固相に抗CD3抗体と該膜分子-IgFcを結合させ固相面にこれらの分子の多量体を形成させることでT細胞に活性シグナルを入れることができる。あるいは可能な別の方法として、可溶化型の抗CD3抗体と該膜分子-IgFcをT細胞に結合させた後に抗CD3抗体のFc領域と該膜分子-IgFcに対する抗体を用いてT細胞に結合したこれらの分子を架橋して多量体を形成させることでT細胞にシグナルを入れることが可能である。また、このような多量体の形成がシグナルの伝達に必要な分子をin vivoに投与する場合に、Fc領域を融合させることにより、該分子が生体内で標的細胞に発現する受容体に結合した後、もともと生体内に存在しているIgに結合するFcγ受容体陽性細胞(単球、マクロファージ、B細胞、DCなど)によりFc部分が架橋されてシグナルを伝達することも知られている[最新医学、58巻、2820-2826頁(2003年)]。
本発明で使用される融合ポリペプチドのパートナーはヒト免疫グロブリン重鎖のFc領域もしくはその断片であるが、このヒト免疫グロブリンは、IgG1, IgG2, IgG3, IgG4の1もしくは2以上のサブタイプ、好ましくは単一のサブタイプ、特にIgG1およびIgG3、特に好ましくはIgG1である。免疫グロブリンFc部分を結合することによって、融合ポリペプチドまたは複合体は、精製が容易であり、また固相化やin vivo使用の際に多量体の形成(multimerization)が可能となる、という利点がある。
本発明で使用される融合ポリペプチドはさらに、該膜分子部分だけでなく免疫グロブリンFc領域またはその断片にも上記のような変異を含んでいてもよいが、該膜分子細胞外領域の本来の生物学的活性もしくは機能を本質的に保持するとともにたとえば免疫グロブリンFc部分間のジスルフィド結合形成や固相化やin vivo使用の際に多量体の形成を可能とすべきである。自己免疫疾患である多発性硬化症、ギラン・バレー症候群(Guillain-Barre syndrome)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy ; CIDP)、特発性血小板減少性紫斑病において免疫グロブリン静注療法(intravenous immunoglobulin ; IVIg)による治療効果が認められているが、静注免疫グロブリンのFc部分と単球、マクロファージのFc受容体の結合を介した免疫応答の制御が作用機序の一つとして考えられている。本発明で使用される融合ポリペプチドのパートナーである免疫グロブリンFc自体も生体内においてFc受容体発現細胞を介して何らかの治療上の効果をもつことも可能である。
本発明で使用されうる融合ポリペプチドはさらに適当な修飾剤または糖鎖で修飾されてもよい。このような修飾体は、該ポリペプチドを、化学的および/または酵素的修飾法、翻訳後修飾などによって修飾して得ることができ、熱安定化、胃腸管内安定化、血中半減期の延長化または免疫原抑制性となるように修飾されたものが好ましいが、これらに限定されない。修飾の例には、PEG化、アセチル化、アシル化、アミド化などが含まれる。好適な修飾は、生体内で該ポリペプチドの免疫原性、すなわち生体内での該ポリペプチドに対する抗体の産生、による拒絶反応を抑制しうるものであり、そのような修飾剤の例は、種々の分子量のポリエチレングリコール(PEG)またはその誘導体、たとえばClin. Ther.、24巻、1363-1383頁(2002年)やAdv. Drug. Deliv. Rev.、55巻、1315-1336頁(2003年)に記載されるような誘導体である。糖修飾においては、糖鎖は、Ser/Thr-X-Asn配列のアスパラギン残基に結合するN結合型糖鎖、またはセリンもしくはトレオニン残基に結合するO結合型糖鎖である。動物細胞、好ましくはヒト、サル、チャイニーズハムスター、マウスなどの哺乳動物由来の細胞または継代培養細胞、特に好ましくはヒト由来の細胞または継代培養細胞、で発現される糖蛋白質の糖鎖が好ましい。本膜分子の細胞外領域には7ヶ所のN結合型糖鎖結合可能部位が存在し、一方IgFc領域には複数のO結合型糖鎖結合可能部位が存在する。上記のような動物細胞に該膜分子-IgFc融合ポリペプチドを発現させるときには、糖鎖修飾が起こり得る。
さらにまた、可溶化型の該膜分子の融合ポリペプチド(該膜分子‐IgFc)を用いれば、該膜分子の生理活性探索が可能である。該膜分子は、ヒト単球由来DCおよび末梢血中のT細胞、B細胞、NK細胞、単球に発現が認められる。これらの細胞を分離し、あるいは各種細胞株を利用して、該膜分子‐IgFcを作用させることにより、in vitroの生理活性探索が可能である。また、このアッセイ系を応用すれば、該膜分子の作用を阻害する低分子物質のスクリーニングが可能である。
また、可溶化型の該膜分子の融合ポリペプチドは細胞医療への適応として培養容器やポリエチレンビーズ、ラテックスビーズ等の固相への結合が可能である。固相化の方法としては該膜分子の融合ポリペプチドのアミノ基、カルボキシル基を利用したり、適当なスペーサーを用いたり、架橋剤を用いたりして、培養容器に該膜分子を共有結合させることができる。実施例9では、該膜分子とヒト免疫グロブリンのFc領域からなる融合ポリペプチド(該膜分子-IgFc)をプラスチック細胞培養容器に固相化することで、抗CD3抗体の共存下の条件においてCD4陽性T細胞またはCD8陽性T細胞の増殖およびサイトカイン産生を促進させ得ることが確認された。
さらに、該膜分子の可溶化型融合ポリペプチドを用いてヒト末梢血細胞や各種細胞株に対する結合能を調べることにより、該膜分子のカウンターレセプターを発現する細胞の探索が可能である。実施例8では、該膜分子とヒト免疫グロブリンのFc領域からなる融合ポリペプチド(該膜分子-IgFc)が活性化T細胞に結合性を示し、活性化T細胞上に該膜分子のカウンターレセプターが発現していることが示された。実施例14では、該膜分子とヒト免疫グロブリンのFc領域からなる融合ポリペプチド(該膜分子-IgFc)がCHO細胞に発現させた膜結合型の該膜分子に結合性を示し、該膜分子のカウンターレセプターの少なくとも一つが該膜分子自身であり、該膜分子同士がホモフィリックに結合し得ることが明らかとなった。さらに、カウンターレセプターが発現している細胞のcDNAライブラリーを用い発現クローニング法などにより、該膜分子のカウンターレセプターをコードするcDNAを単離することも可能である。可溶化型該膜分子カウンターレセプターは直接該膜分子に作用し、該膜分子を介したシグナルを制御し得る。また、該膜分子のカウンターレセプターと該膜分子の相互作用をモジュレートできる低分子物質や該膜分子のカウンターレセプターおよび該膜分子に関わる細胞内シグナル経路をモジュレートする低分子物質もシグナルの制御に有用である。
4.抗体
該膜分子細胞外領域ポリペプチドと結合する(好ましくは該ポリペプチドを特異的に認識する)抗体は下記の方法により作製することができる。
目的の抗体を得るための抗原エピトープは、該膜分子細胞外領域のアミノ酸配列において抗原性の高い領域、表在性がある領域、二次構造をとらない可能性のある領域、他の蛋白質(特にCD2ファミリーの他の蛋白質)とホモロジーがないか又は低い領域から選択され得る。ここで抗原性の高い領域は、Parkerらの方法[Biochemistry、25巻、5425-5432頁(1986年)]によって推定可能である。表在性がある領域は、例えばハイドロパシーインデックスを計算しプロットすることによって推定可能である。二次構造をとらない可能性のある領域は、例えば、ChouとFasmanの方法[Adv Enzymol Relat Areas Mol Biol.、47巻、45-148頁(1978年)]によって推定可能である。さらに、特にCD2ファミリーの他の蛋白質とホモロジーがないか又は低い領域は、該膜分子のアミノ酸配列と他の蛋白質のアミノ酸配列との相同性比較によって推定可能である。
上記の手法で推定された該膜分子細胞外領域の部分アミノ酸配列を基に、ペプチド合成法を利用することによって該アミノ酸配列からなるペプチドを合成することができる。目的のペプチドは、例えば、R.B. Merrifield[Science、232巻、341-347頁(1986年)]によって開発された固相ペプチド合成に基づいた市販のペプチド合成機を使用して合成し、保護基を脱離後、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等を単独もしくは組合わせた方法により精製する。得られた精製ペプチドはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)やアルブミンなどのキャリヤ蛋白質と結合し免疫原として使用することができる。
さらに、遺伝子組換え該膜分子−IgFcまたは該膜分子細胞外領域を免疫原として該膜分子細胞外領域と結合する、好ましくは該領域を特異的に認識する、ポリクローナル抗体(下記の実施例では、抗該膜分子抗体または抗該膜分子ポリクローナル抗体と称する)あるいはモノクローナル抗体を公知の手法により作製することもできる。この場合、該膜分子−IgFcもしくは該膜分子細胞外領域、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または他の蛋白質に関して用いられる「組換え」という用語は、これらの蛋白質が宿主細胞内で組換えDNAによって生産されたものであることを意味する。宿主細胞としては、原核生物(例えば大腸菌のような細菌)および真核生物(例えば酵母、CHO細胞、昆虫細胞等)のいずれも使用され得る。
本発明の「抗体」はペプチド抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体いずれでもよい。「抗体」は、マウスまたは他の適した宿主動物(たとえばウサギ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、げっ歯類など)を免疫に用いられた蛋白質に特異的に結合するであろう抗体を産生するか、産生するであろうリンパ球を引き出すために、皮下、腹腔内、または筋肉内の経路によって、抗原あるいは抗原発現細胞により免疫化することによって得られる。さらに宿主動物としてはヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原または抗原発現細胞を投与し、所望のヒト化抗体を取得してもよい[Proc. Natl. Acad. Sci. USA、97巻、722-727頁(2000年)、国際公開WO96/33735、WO97/07671、WO97/13852、WO98/37757参照]。そのかわりに、リンパ球をインビトロで免疫化してもよい。宿主動物から得られた血清から、抗原に結合する画分を集め、精製することにより、ポリクローナル抗体を取得することができる。また、ハイブリドーマ細胞を形成するために、ポリエチレングリコールのような適当な融合試薬を用いて、リンパ球を骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体を作製することができる[Goding, Monoclonal Antibodies: Principals and Practice、59-103頁、Academic press、(1986年)]。例えば本発明のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法[Nature、256巻、495頁(1975年)]を用いても、組換えDNA法(Cabillyら、米国特許第4816567号)を用いても作製することができる。
抗原蛋白質は、先述したように、該膜分子−IgFcまたは該膜分子細胞外領域の蛋白質の全てまたは部分配列をコードするDNAを、大腸菌や酵母、昆虫細胞、動物細胞などで発現させることにより調製することができる。遺伝子組換え該膜分子−IgFcまたは該膜分子細胞外領域は、アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等を単独もしくは組合わせた方法により精製し、この精製標品を免疫原として用いる。
また、本発明の抗体は、無傷の抗体であってもよいし、あるいは(Fab’)2やFabなどの抗体断片であってもよい。
また、定常領域をヒトの定常領域に置き換えたキメラ抗体やモザイク抗体[例えばマウス-ヒトキメラ抗体;Cabillyら、米国特許4816567およびMorrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻、6851頁 (1984年)]、定常領域および超可変領域(または、Complementary-determining region;CDR)を除く全ての可変領域をヒトの配列に置き換えたヒト化抗体[Carterら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻、4285頁(1992年)およびCarterら、BioTechnology、10巻、163頁、(1992年)]も本発明の抗体に含まれる。ヒトに使用した場合、異種抗原に対する抗体、たとえばヒト抗マウス抗体(human antimouse monoclonal antibody; HAMA)などの出現が起こらないようにするために、キメラ抗体やモザイク抗体もしくはヒト化抗体の使用が好ましく、最も好ましくは完全ヒト抗体である。
また、このようにして得られた本発明の抗体に対する抗体、すなわち抗イディオタイプ抗体もまた本発明に含まれる。
このようにして得られた本発明の該膜分子−IgFcに対する各種抗体は、その特徴を生かすことができる様々な用途に使用可能である。本抗体を蛍光性物質(ローダミン、フルオレサミンなど)で直接標識することにより、または本抗体を認識する蛍光標識された二次抗体を用いることにより、さらには本抗体をビオチン標識し蛍光標識ストレプトアビジンを用いることにより、周知のFACSを用いて該膜分子を細胞表面に発現する目的の細胞を検出・分離することができる。実施例3では、該膜分子の融合ポリペプチドのウサギへの免疫により得られたポリクローナル抗体が、CHO細胞に発現させた膜結合型の該膜分子を検出できることを示している。また、実施例6、7では、上記ポリクローナル抗体を用いることにより、末梢血中のCD3陽性T細胞、CD19陽性B細胞、CD56陽性NK細胞、CD14陽性単球および単球由来DCにおける該膜分子の細胞表面での発現を検出した。該膜分子の検出に関しては、FACSでの検出にとどまるものではない。例えばウェスタンブロッティングにおいて本抗体一次抗体として作用させることにより検出可能であることが予想されるし、蛋白質レベルでの発現確認を行うことができる。実施例3では、上記ポリクローナル抗体を用いることにより、CHO細胞で発現し精製した該膜分子とヒト免疫グロブリンのFc領域からなる融合ポリペプチド(該膜分子-IgFc)をウェスタンブロッティングにより検出できることを示している。また本抗体を固相(たとえばポリスチレンビーズ、マイクロタイターウエル表面、ラテックスビーズなど)に結合して不均一系で、あるいは均一系で、免疫学的反応を行って相同な膜分子を検出、定量(蛍光抗体法、ELISA、ラジオイムノアッセイなどの方法使用)することができる。この場合、免疫学的反応は競合反応であってもよいし非競合反応であってもよい。また2つ以上の抗体(モノクローンまたはポリクローン)を用いるサンドイッチ法による反応も使用できる。上記における検出、定量のためには、当業界で公知のいずれの免疫学的手法も用いることができる。
その他、本発明の抗体は該膜分子の機能を評価する用途にも使用可能である。成熟DCは強力なAPCであり、MHCクラスII分子を介したCD4陽性T細胞を刺激活性化およびMHCクラスI分子を介したCD8陽性細胞障害性T細胞を刺激活性化することが知られている。これら機能を制御し得るか否かを確認するために、同種異系リンパ球混合反応の機能を抑制し得るか否かの確認、抗原特異的にCTLを誘導した場合にその機能を抑制し得るか否かの確認、さらにDCの抗原提示に関わる分子か否かの確認等のインビトロでのアッセイにも使用可能である。
該膜分子−IgFc、したがって該膜分子は、前述したとおり、副刺激に関与する分子で、T細胞の活性化に関わる分子である。このため、本発明の抗体が該膜分子とT細胞上のカウンターレセプターとの結合を阻害する抗体であればT細胞活性化を抑制することが期待される。
実施例11では、該膜分子細胞外領域を認識するポリクローナル抗体が、細胞培養容器に固相化した該膜分子の融合ポリペプチド(該膜分子-IgFc)と抗CD3抗体によるT細胞の増殖とサイトカイン産生を強く阻害した。このことは、該ポリクローナル抗体が該膜分子からT細胞への副刺激シグナルを中和する活性を有する抗体であることを示すものである。実施例12では、該ポリクローナル抗体をヒト単球由来DCと同種異系CD4陽性またはCD8陽性T細胞を用いたリンパ球混合反応に添加すると、T細胞の増殖には影響を与えないが、分泌されるサイトカインが有意に抑制された。このことは、該ポリクローナル抗体が、DCによるCD4陽性およびCD8陽性T細胞の活性化を抑制できることを示すものである。さらに実施例13では、該ポリクローナル抗体をヒト単球由来DCと同種異系CD8陽性T細胞を用いたリンパ球混合反応に添加すると、同種抗原特異的な細胞障害性T細胞の誘導が有意に抑制された。この結果は、細胞障害性T細胞が病因に関わっている種々の疾患の治療および予防に該膜分子−IgFcに対する抗体が有用であることを示すものである。
一方、実施例15では、抗該膜分子ポリクローナル抗体を培養容器に固相化することにより、抗CD3抗体の共存下の条件においてCD4陽性T細胞およびCD8陽性T細胞の増殖を促進させ得ることが確認された。このことは、該膜分子−IgFcに対する抗体を培養容器やポリエチレンビーズ、ラテックスビーズ等の固相へ結合させることにより、細胞医療に適応できることを示すものである。
本発明の抗体はさらに、インビボ(in vivo)で免疫応答を制御するために使用することもできる。このように該膜分子の機能制御可能な抗体を作用させることでDCの機能さらにはT細胞の機能を制御することにより免疫応答を制御し得ることができる。
5.医薬組成物
本発明の抗体類または該膜分子-IgFc融合ポリペプチドの可溶化型もしくは固相化型分子は、DCとT細胞の相互作用を介するT細胞の活性化を促進または抑制することによって活性化DCおよび活性化T細胞の機能制御の異常に起因する種々の病気もしくは障害、たとえば自己免疫疾患、アレルギー性疾患、炎症性疾患、移植および癌の治療または予防に、直接的または間接的に適用が可能である。該疾患としては、慢性関節リウマチ(rheumatoid arthritis ; RA)、多発性硬化症(multiple sclerosis ; MS)、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus ; SLE)、1型糖尿病(type 1 diabetes mellitus)[Nature、414巻、792-798頁(2001年)]、自己免疫性甲状腺炎(autoimmune thyroiditis)、特発性炎症性ミオパチー(idiopathic inflammatory myopathy)、アレルギー性接触皮膚炎(allergic contact dermatitis)、移植片に対する拒絶反応および移植片対宿主病(graft-versus-host disease ; GVHD)などが挙げられる。具体的には本発明の可溶化型抗体は、病変部位で認識し得る自己抗原に反応し、活性化したCD4陽性T細胞が種々のサイトカインを産生することにより組織が傷害され発症、増悪する病気(例えば多発性硬化症など)、または病変部位に遊走され浸潤してきた活性化CD4陽性T細胞の産生するサイトカインにより活性化されたマクロファージなどの炎症細胞が病態に関与している病気(例えば慢性関節リウマチなど)、または自己抗原反応性のCD8陽性T細胞が病変部位の組織障害に関与している病気(例えばI型糖尿病、多発性筋炎、橋本病など)、さらには同種抗原反応性のCD4陽性T細胞やCD8陽性T細胞のサイトカイン産生、細胞障害活性がエフェクターとして関与している病気(例えば移植片対宿主病、同種移植片拒絶反応など)に有用である。また、本発明の固相化型抗体または固相化型もしくは可溶化型融合ポリペプチドは、in vivoまたはex vivoでのT細胞の増殖または増殖抑制やT細胞からのサイトカイン産生の促進または抑制に使用でき、たとえばex vivoで増殖または活性化されたT細胞を点滴等により体内に戻すことによって免疫力の増強を引き起こし癌などの病気の免疫療法に有用となる。本発明により有意に産生が促進または抑制されるサイトカインは、INF-γ、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-5、IL-10などである。
CD4陽性T細胞は、IL-2、IFN-γ、TNF-βなどを産生するTh1と、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-13などを産生するTh2の2種類のサブセットに分類される。Th1細胞は細胞性免疫を誘導し、細胞内感染病原体の排除に重要であり、Th2細胞は液性免疫を誘導して細胞外感染病原体の排除などの免疫反応を担う。Th1細胞とTh2細胞は互いにバランスをとりながら生体防御機構において中心的な役割を担っている。しかし一方では、感染症、自己免疫疾患、アレルギー疾患などにおいてTh1とTh2のバランスの偏りが認められており、Th1とTh2のバランスの破綻がこれらの疾患の発症や病態形成に深く関与していると考えられている[Nature、383巻、787-793頁(1996年)]。本発明の可溶化型抗体は、DCによる刺激下のCD4陽性T細胞からのTh1およびTh2サイトカインの産生を抑制することから、生体内でのTh1とTh2のバランスが破綻してTh細胞の活性化やサイトカイン産生の異常が病態に関与している疾患の治療および予防において、本発明の可溶化型抗体は有効な医薬品となり得ることが期待される。
多発性硬化症(MS)は中枢神経の多発性、散在性の脱髄を来たす疾患であり、寛解と再発の症候を繰り返す。病理学的特長や動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の解析から、MSは髄鞘蛋白質抗原を標的とするCD4陽性T細胞による自己免疫疾患と考えられている。また、EAEはTh1細胞により惹起されること、MSの再発時はTh1優位であることから、脱髄に直接関与するのはTh1細胞と考えられている。T細胞活性化の副刺激シグナルであるCD28-B7-1/B7-2経路やCD40/CD40L経路を中和抗体等によりin vivoで阻害することによりEAEの発症や症状の進行を抑制することが可能である[J. Immunol.、154巻、1481-1490頁(1995年)、Proc. Natl. Acad. Sci USA、93巻、2499-2504頁(1996年)]。
慢性関節リウマチ(RA)は、関節滑膜を病変の主坐とする炎症性疾患であり、関節炎が進行すると軟骨、骨の破壊によって関節変形や機能低下が起こる。炎症の一連の過程には、滑膜組織に浸潤してきたCD4陽性T細胞、好中球、マクロファージなどの活性化とそれらの細胞から産生されるTNF-α、IL-1、IL-6などの炎症性サイトカインが関与している。副刺激シグナルであるCD28-B7-1/B7-2経路、CD40/CD40L経路またはOX40/OX40L経路を中和抗体等により阻害することで動物モデルおよび臨床試験においてRA治療に対する有効性が示されている[Arthritis Rheum.、46巻、1470-1479頁(2002年)、Science、261巻、1328-1330頁(1993年)、Eur. J. Immunol.、30巻、2815-2823頁]。
臓器移植における移植片拒絶反応や骨髄移植における移植片対宿主病(GVHD)は、同種抗原を認識し活性化したCD4陽性のヘルパーT細胞およびCD8陽性の細胞障害性T細胞が協調しながらエフェクターとして働き組織を傷害する疾患である。動物モデルにおいてCD28-B7-1/B7-2経路、CD40/CD40L経路を阻害する中和抗体等を用いた治療実験により、これらのT細胞活性化副刺激シグナルの阻害が移植片拒絶反応やGVHDの治療および予防に有効であることが示されている[臨床免疫、40巻、529-535頁(2003年)、Molecular Medicine、39巻、1150-1156頁(2002年)]。
本発明の該膜分子-IgFc融合ポリペプチドは、後述の実施例で証明されるとおり、T細胞に対してT細胞受容体からのシグナル(第1シグナル)とともに活性型副刺激シグナル(第2シグナル)を伝える分子であることが分かった。T細胞とDCなどの抗原提示細胞との相互作用による抗原特異的なT細胞の活性化または抑制には、T細胞受容体とMHC/ペプチド複合体との相互作用とともに副刺激分子による第2シグナルが必要であること、またこの第2シグナルによって多様な免疫応答が惹起されることが知られており[例えば臨床免疫、40巻、642-648頁(2003年)]、本発明の融合ポリペプチドはこのような副刺激分子として作用するものであり、代表的な副刺激シグナルであるCD28-B7-1/B7-2経路とは異なる経路で働く副刺激分子であると推定される(実施例11)。従って、本発明の融合ポリペプチドおよびそれに対する抗体は、上記に挙げた自己免疫疾患、移植片拒絶反応などの疾患に対する治療または予防においてCD28-B7-1/B7-2経路とは異なる経路で作用する医薬となり得るだろう。
本発明の抗体類または該膜分子-IgFcの可溶化型分子の種々疾患症状の治療効果については、常法に従って、既知の疾患モデル動物に投与することにより試験、検討することができる。例えば、慢性関節リウマチのモデルとしてはアジュバンド関節炎(adjuvant-induced arthritis)やコラーゲン関節炎(collagen induced arthritis)、多発性硬化症のモデルとしては実験的自己免疫性脳脊髄炎(experimental autoimmune encephalomyelitis ; EAE)、全身性エリテマトーデスのモデルとしてはNZB(New Zealand Black)マウスとNZW(New Zealand White)との一代雑種であるNZB/WF1マウス、MRL/lprマウスおよびBXSBマウス、1型糖尿病のモデルとしてはNOD(non-obese diabetes)マウス、急性GVHDのモデルとしてC57BL/6マウス脾臓細胞を放射線照射したBDF1(C57BL/6 x DBA/2)マウスに移植する系やヒト末梢血をSCID(severe combined immunodeficiency)マウスに移植する系、自己免疫性甲状腺炎のモデルとしては実験的自己免疫性甲状腺炎(experimental autoimmune thyroiditis;EAT)を用いることが可能である。
本発明の「医薬組成物」は、上記のとおり、直接または間接的に生体内で使用することができる。間接的に生体内で使用する場合、該医薬組成物は、生体から取り出された血液、リンパ液等の体液から遠心等で濃縮されたリンパ球液と、適当な動物細胞培養液の存在中で無菌的に接触させてT細胞を増殖させたりT細胞を活性化させたりした後、増殖もしくは活性化T細胞を生体内に戻す、いわゆるex vivo法で使用される。一方、直接的に生体内で使用する場合、該医薬組成物は、本発明の抗体類または該膜分子‐IgFcの可溶化型分子類と薬学的に許容され得る担体を含むことができる。ここで「薬学的に許容され得る担体」とは、賦形剤、希釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等が挙げられる。そのような担体の一つ以上を用いることにより、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、注射剤、液剤、カプセル剤、トローチ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、経鼻投与用噴霧剤、あるいはシロップ剤等の形態の医薬組成物を調製することができる。これらの医薬組成物は、経口あるいは非経口的に投与することができる。非経口投与のためのその他の形態としては、一つまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される外用液剤、腸溶内投与のための坐剤およびペッサリーなどが含まれる。製剤化については、たとえばRemington: The Science and Practice of Pharmacy、Philadelphia College of Pharmacy and Scienceを参照することができる。
投与量は、患者の年齢、性別、体重および症状、治療効果、投与方法、処理時間、あるいは該医薬組成物に含有される活性成分(上記抗体類や該膜分子−IgFcポリペプチドなど)の種類により異なるが、通常成人一人当たり、一回につき10μg〜1,000mgの範囲で投与することができる。しかしながら、投与量は種々の条件により変動するため、上記投与量より少ない量で十分な場合もあり、また上記の範囲を越える投与量が必要な場合もある。またex vivoで使用する場合には、活性成分の使用量はnM(ナノモル)オーダーからmM(ミリモル)オーダーの量であるがこの範囲に限定されない。
注射剤の場合には、生理食塩水あるいは市販の注射用蒸留水等の非毒性の薬学的に許容され得る担体中に溶解または懸濁することにより製造することができる。投与の形態としては、静脈内注射、皮下注射、皮内注射、筋肉注射あるいは腹腔内注射のような医療上適当な投与形態により処方することができる。好ましくは静脈内注射である。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例によって限定的に解釈されるべきでない。
CHO細胞による該膜分子組換え体の発現
該膜分子の組換え体について次の(i)、(ii)の2種類についてCHO細胞に発現させた。(i)該膜分子の細胞外領域とヒトIgG1のFc領域の融合蛋白質を細胞外に分泌される可溶化型蛋白質として発現させたもの(該膜分子-IgFc)。(ii)該膜分子の全領域とそのC末端側にGFP(Green fluorescence protein)を融合させ膜結合型蛋白質として発現させたもの。動物細胞発現ベクターpTracerCMV(Invitrogen社製)のマルチクローニングサイトに該膜分子-IgFcをコードする遺伝子断片(配列番号3;リンカー部分としてFLAG配列をコードする配列を含む)を、あるいは動物細胞発現ベクターpEAK8(Edge BioSystems社製)のマルチクローニングサイトに該膜分子全領域(配列番号2)とGFP[Science、263巻、802-805頁(1994年)]をコードする遺伝子断片を、それぞれ組み込み、組換え大腸菌を作製し、大量にプラスミドを調製した。調製したプラスミドをトランスフェクション試薬IT-LT1(Mirus社製)を用いてOPTI-MEM培地(GIBCO BRL社製)中でCHO(Chinese hamster ovary)細胞に遺伝子導入を行った。該膜分子発現細胞はGFPの発現を指標として、セルソーター(FACS Vantage ; Becton Dickinson社製)を用いて1細胞/ウェルで96ウェル培養皿(Falcon #3072)にクローンソーティングを行なった後、(i)はZeocin(Invitrogen社製)により、(ii)はPuromycin(BD Biosciences Clontech社製)により薬剤耐性クローンを取得した。高発現株の選抜は、(i)は無血清DF培地中で3日間培養した上清について抗ヒトIgG抗体(DAKO社製)を用いたウエスタン解析により、(ii)は細胞内GFPの発現強度をFCAS解析することにより行った。
該膜分子-IgFcの精製
無血清DF培養上清を限外濾過膜(YM10、Millipore社製)を用いて10倍まで濃縮し、ProteinGセファロース(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて該膜分子-IgFc(配列番号4)のみを特異的に結合させ、PBSにより洗浄後、0.1Mグリシン塩酸(pH2.8)により結合した該膜分子-IgFcを溶出した。溶出液は1Mトリス塩酸(pH7.5)を加えることで速やかに中和した。次に溶出した該膜分子-IgFcフラクションを20mM Tris-HCl(pH8.0)に置換し、DEAE-5PW(東ソー社製)を用いた陰イオン交換クロマトグラフィーにより分画した。さらにDEAE-5PW精製画分を濃縮後、20mMトリス塩酸(pH6.8)、1.5M硫酸アンモニウムに置換し、Phenyl-5PW(東ソー社製)を用いた疎水クロマトグラフィーにより分画した。最後にPhenyl-5PW精製画分をSuperose 6(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いたゲル濾過クロマトグラフィーによりPBSに置換し、精製標品とした。該膜分子-IgFc標品はSDS-PAGEにおいて還元条件下で約70kDa、非還元条件下で約200kDaに検出された(図1)。
該膜分子-IgFcは、抗ヒトIgG抗体および実施例3で得られた抗該膜分子ポリクローナル抗体を用いたウエスタン解析により特異的に染色が見られること(図1)、さらにアミノ酸配列分析装置(Mode1377、Perkin Elmer社製)を用いたN末端アミノ酸配列分析とAccQ Tag(Waters社製)を用いたアミノ酸組成分析により目的の可溶化型組換え体であることを確認した。
該膜分子−IgFcに対するポリクローナル抗体の作製と精製
該膜分子-IgFc(50 μg)を免疫原として8回繰り返しウサギに免疫し、抗該膜分子ポリクローナル抗体を作製した。免疫したウサギの抗血清は該膜分子-IgFcに対する力価が1x106倍以上に上昇した。該ウサギ抗血清をProteinGセファロース(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いてIgGのみを特異的に結合させ、PBSにより洗浄後、0.1Mグリシン塩酸(pH2.8)により結合したIgGを溶出した。溶出液は1Mトリス塩酸(pH7.5)を加えることで速やかに中和した。中和したIgGフラクションは濃縮後、Superdex 200pg(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いたゲル濾過クロマトグラフィーによりPBSに置換し、精製標品とした。以下、「抗該膜分子抗体」または「抗該膜分子ポリクローナル抗体」と称する。
同時にコントロール抗体として正常ウサギより血清を得、同様の精製手順によりIgGフラクションを調製し、精製標品とした。以下、正常ウサギIgGと称する。
作製した抗該膜分子抗体は、実施例2で示したようにウェスタン解析で該膜分子を検出することが可能であり、またフローサイトメーターを用いて細胞表面に発現する該膜分子の検出も可能であった(図2)。
抗該膜分子抗体のF(ab’)2フラグメントおよびビオチン標識抗該膜分子抗体のF(ab’)2フラグメントの調製
実施例3で得られた抗該膜分子抗体並びに正常ウサギIgGをペプシンで消化することによりF(ab’)2フラグメントを得た。20mM酢酸ナトリウム(pH4.5)中で抗該膜分子抗体あるいは正常ウサギIgGを1mg/ml、ペプシンを0.1mg/mlとし、37℃で一夜中消化した。この操作より得られた抗該膜分子抗体のF(ab’)2フラグメント(以下、抗該膜分子抗体F(ab’)2と称す)あるいは正常ウサギIgGのF(ab’)2フラグメント(以下、正常ウサギIgG F(ab’)2と称す)は濃縮後、Superdex 200pg(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いたゲル濾過クロマトグラフィーによりPBSに置換するとともに未消化並びに他の消化断片、ペプシンを除去し、抗該膜分子抗体F(ab’)2および正常ウサギIgG F(ab’)2の標品とした。
抗該膜分子抗体F(ab’)2および正常ウサギIgG F(ab’)2は、ビオチン化試薬を反応させることで標識することができる。10mM HEPES-NaOH(pH8.5)に置換した抗該膜分子抗体F(ab’)2あるいは正常ウサギIgG F(ab’)2(2mg/ml、1ml)に10mM Biotin-AC5 Sulfo-Osu(同仁科学研究所製)を2 μl加え、氷冷下、1時間反応させた後、Superdex 200pg(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いたゲル濾過クロマトグラフィーによりPBSに置換し、ビオチン標識抗該膜分子抗体F(ab’)2(以下、抗該膜分子抗体F(ab’)2-biotinと称する)およびビオチン標識正常ウサギIgG F(ab’)2(以下、正常ウサギIgG F(ab’)2-biotinと称する)標品とした。
健常人末梢血単核細胞の分離
健常人より採取した末梢血は、凝固しないようにCPD液含有の採血バック(TERUMO社)に採血後、遠心(600G、室温、5分)により血漿と血球画分を分離した。血漿を除いた血球画分をPBSで稀釈してから、Ficoll-Paque(Amersham Pharmacia Biotech社)に重層し、比重遠心(400G、室温、30分間)により単核細胞を分離した。単核細胞に混入した赤血球は、塩化アンモニウム緩衝液(0.83% NH4Cl-Tris HCl 20mM, pH6.8)で室温2分間処理して溶血し、5% FCS含有PBS(PBS-FCS)で単核細胞を洗浄した。この細胞集団を健常人末梢血単核細胞として用いた。
フローサイトメーターによる該膜分子の末梢血単核細胞での発現解析
末梢血単核細胞をPBS-FCSで洗浄後、5% FCS、10mM EDTA、0.05% アジ化ナトリウムを含むPBS(PBS-FCS-EDTA-NaN3)1mlに懸濁した。100 μgのヒトIgGを添加し、氷冷下、10分間放置した後、抗該膜分子抗体F(ab’)2-biotin 20 μgを添加し、氷冷下、30分間放置した。対照群の細胞には正常ウサギIgG F(ab’)2-biotin 20 μgを添加し、氷冷下、30分間放置した。細胞をPBS-FCS-EDTA-NaN3で洗浄後、PE(Phycoerythrin)結合streptavidin(BD Biosciences社製)を添加し、氷冷下、30分間放置した。細胞をPBS-FCS-EDTA-NaN3で洗浄後、ヒト分化血球に特異的な抗原に対するFITC(fluorescein isothiocyanate)またはAPC(Alophicocyanine)標識抗体すなわち、CD3、CD14、CD19、CD56に対する抗体(BD Biosciences社製)を添加し氷冷下、20分間インキュベーションの後、フローサイトメーター(Becton Dickinson社製)により該膜分子とヒト分化血球に特異的な抗原の発現を解析した。該膜分子は、末梢血単核細胞中のCD3、CD14、CD19、CD56をそれぞれ発現する細胞集団(それぞれT細胞、単球、B細胞、NK細胞)において発現が認められた(図3)。
ヒト単球由来DCにおける該膜分子の発現分布の解析
健常人末梢血からFicoll-Paqueを用いた密度勾配遠心法により分離した単核細胞を1x108個/mlとなるように2% ヒト血漿を含むPBS(PBS-plasma)に浮遊し、抗ヒトCD14抗体結合磁性マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社製)を添加し氷冷下、30分間放置した。細胞をPBS-plasmaで洗浄後、マグネットによる磁場内に設置した分離カラムLS+(Miltenyi Biotec社製)に供してCD14陽性細胞を分離した。ヒト単球を含むCD14陽性細胞を1x106 個/mlとなるように10% FCS含有RPMI 1640培地に浮遊し、50 ng/ml組換え体ヒトGM-CSF(キリンビール社製)と100 ng/ml組換え体ヒトIL-4(R&D systems社製)を添加し、6ウェル培養皿(#3046、Falcon社製)で培養を行なった。5日間培養した細胞をヒト単球由来の未成熟DC(Immature DC)とし、培養5日目の細胞に10 ng/ml LPS(SIGMA社製)または10 ng/ml LPSと100 ng/ml組換え体IFN-γ(R&D systems社製)を添加してさらに1日間培養した細胞をヒト単球由来の成熟DC(Mature DC)とした。ヒト単球由来DCの成熟度合いは、HLA-DRとCD86の発現上昇をフローサイトメーターで解析することで確認した。
成熟または未成熟のヒト単球由来DCをPBS-FCS-EDTA-NaN31mlに懸濁した。100 μgのヒトIgGを添加し、氷冷下、10分間放置した後、抗該膜分子抗体 10 μgを添加し、氷冷下、30分間放置した。対照群の細胞には正常ウサギIgG 10 μgを添加し、氷冷下、30分間放置した。細胞をPBS-FCS-EDTA-NaN3で洗浄後、PE標識抗ウサギIgG抗体F(ab’)2フラグメント(Southern Biotechnology Associates社製)を添加し、氷冷下、30分間放置した。細胞をPBS-FCS-EDTA-NaN3で洗浄後、フローサイトメーターにより該膜分子の発現を解析した。該膜分子は、組換え体GM-CSFと組換え体IL-4存在下でヒト単球より誘導した未成熟DCおよびLPS(Lipopolysaccharides;SIGMA社)刺激またはLPSと組換え体IFN-γ刺激により成熟させたDCにおいて発現が認められた(図3)。
活性化T細胞に発現する該膜分子カウンターレセプターの解析
実施例2に記載の該膜分子-IgFcを用いてT細胞上のカウンターレセプターの発現解析を行なった。健常人末梢血からFicoll-Paqueを用いた密度勾配遠心法により単核細胞を分離し、Pan T Cell Isolation Kit(Miltenyi Biotec社製)を用いて、T細胞以外の細胞を除去するネガティブセレクション法により純度99%以上のCD3陽性T細胞を調製した。T細胞を活性化する目的で、分離したCD3陽性T細胞を2x106cells/mlとなるように10% FCSを含むRPMI 1640培地に浮遊し、5 μg/ml PHA(phytohemagglutinin)(生化学工業製)を添加して、20または40時間培養を行なった。末梢血から分離直後およびPHAにより活性化させたT細胞を回収しPBS-FCSで洗浄後、3% FCS、0.02% アジ化ナトリウムを含むPBS(PBS-FCS-NaN3)に懸濁し、50 μg/mlの該膜分子-IgFcを添加して4℃、1時間放置した。対照群として、50 μg/mlの精製されたヒトIgG1(キリンビール社製)を添加し同様にインキュベーションを行なった。細胞をPBS-FCS-NaN3で洗浄後、ビオチン化抗ヒトIgG抗体F(ab’)2フラグメント(Southern Biotechnology Associates社製)を添加し、4℃、30分間放置した。細胞をPBS-FCS-EDTA-NaN3で洗浄後、APC(Alophicocyanine)結合streptavidin(BD Biosciences社製)を添加し、4℃、30分間放置した。さらに細胞をPBS-FCS-EDTA-NaN3で洗浄後、FITC標識抗ヒトCD8抗体とPE標識抗ヒトCD4抗体を添加し、4℃、30分間放置した。細胞をPBS-FCS-EDTA-NaN3で洗浄後、フローサイトメーターにより該膜分子-IgFcのT細胞への結合を解析した。該膜分子-IgFcは、末梢血より分離直後のT細胞には結合しないが、PHA存在下20時間または40時間培養し活性化されたCD4陽性およびCD8陽性T細胞への結合を示した。以上の結果から、該膜分子カウンターレセプターは活性化されたT細胞上に発現していることが示された(図4)。
該膜分子-IgFcのT細胞増殖促進作用
該膜分子が副刺激分子としてT細胞活性化の制御に関わる分子であるかどうかをインビトロでのT細胞増殖試験を用いて調べた。具体的には、平底96ウェル培養皿(#1172、Falcon社製)に50mM 重炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)で250 ng/mlの濃度に稀釈した抗CD3抗体(BD Biosciences社製)を50 μl/ウェルで分注し、4℃、一晩放置することで抗体を培養皿に固相化した。培養皿を洗浄後、50mM 重炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)で段階稀釈した該膜分子-IgFc、対照群として精製ヒトIgG1を分注して、37℃、4時間放置して固相化した。抗体および該膜分子-IgFcを固相化した培養皿は、PBSで洗浄後T細胞増殖試験に用いた。T細胞増殖試験は、健常人末梢血から単核細胞を分離し、Pan T Cell Isolation Kit(Miltenyi Biotec社製)により精製した純度99%以上のCD3陽性T細胞を用いた。10% FCSを含むRPMI 1640培地(GIBCO BRL社製)に浮遊させたT細胞を、1.5x105 cells/ウェル/200 μlずつ上記の固相化培養皿に播種し、37℃、3日間、5% CO2存在下で培養した。培養3日目の培養皿に3Hチミジン(Amersham Pharmacia Biotech社製)を0.25 μCi/ウェルとなるように添加し、さらに37℃、18〜20時間、5% CO2存在下で静置した。Micro 96 well plate harvester(SKATRON社製)を用いて、Printed Filtermat A(Wallac社製)へ細胞に取り込まれた3Hチミジンを回収し、乾燥後Betap;Scint(Wallac社製)によく浸し、パッケージング後、b線量を1205 BETAPLATE液体シンチレーションカウンター(Wallac社製)で活性測定した。固相化した該膜分子-IgFcは、抗CD3抗体刺激下のT細胞に対して、増殖促進作用を示した(図5)。ここで抗CD3抗体は、T細胞受容体を介して細胞内にシグナルを入れるはたらきがある。
該膜分子-IgFcのCD4陽性T細胞からのサイトカイン産生促進作用
抗CD3抗体と該膜分子-IgFcの刺激によるCD4陽性T細胞からのサイトカイン産生を調べた。実施例9の方法に従い平底96ウェル培養皿に250 ng/mlに稀釈した抗CD3抗体(BD Biosciences社製)を50 μl/ウェルで分注し、4℃、一晩放置することで抗体を固相化した。培養皿を洗浄後、5 μg/mlに希釈した該膜分子-IgFcまたは対照群として5 μg/mlに希釈した精製ヒトIgG1を分注して、37℃、4時間放置して固相化した。抗体および該膜分子-IgFcを固相化した培養皿は、PBSで洗浄後CD4陽性T細胞からのサイトカイン産生試験に用いた。CD4陽性T細胞は、健常人末梢血から単核細胞を分離し、CD4+T Cell Isolation Kit(Miltenyi Biotec社製)により精製した純度95%以上のCD4陽性T細胞を用いた。10% FCSを含むRPMI 1640培地(GIBCO BRL社製)に浮遊させたT細胞を、2.0x105 cells/ウェル/200 μlずつ上記の固相化培養皿に播種し、37℃、3日間、5% CO2存在下で培養した。培養開始24、48および72時間後の培養上清を回収し、培養上清中に分泌されたIFN-γ、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-5、IL-10をCytometric Bead Array Kit(BD Biosciences社製)を用い、プロトコールに従って測定した。固相化した該膜分子-IgFcは、抗CD3抗体刺激下のCD4陽性T細胞からのTh1およびTh2サイトカインの産生に対して、促進作用を示した(図6)。
抗該膜分子ポリクローナル抗体の該膜分子シグナルの阻害作用
実施例3で作製した抗該膜分子ポリクローナル抗体が、該膜分子からT細胞への活性化シグナルを阻害する活性を有しているかどうかを調べた。実施例9の方法に従い平底96ウェル培養皿に250 ng/mlに稀釈した抗CD3抗体(BD Biosciences社製)を50 μl/ウェルで分注し、4℃、一晩放置することで抗体を固相化した。培養皿を洗浄後、段階希釈した該膜分子-IgFcまたは対照群として段階希釈したヒトB7-1-IgFc(R&D systems社製)を分注して、37℃、4時間放置して固相化した。抗体および該膜分子-IgFcを固相化した培養皿は、PBSで洗浄後、実施例9と同様の方法で分離したCD3陽性T細胞を1.0x105cells/ウェル/200 μlずつ、10% FCSを含むRPMI 1640培地(GIBCO BRL社製)を用いて播種した。さらに、抗該膜分子ポリクローナル抗体または対照群として正常ウサギIgGを最終濃度20 μg/mlとなるように添加し、37℃、3日間、5% CO2存在下で培養し、T細胞の増殖を実施例9の方法に従い、また培養上清中に分泌されたサイトカインを実施例10の方法に従い測定した。該膜分子に対するポリクローナル抗体は、細胞培養容器に固相化した該膜分子-IgFcと抗CD3抗体によるT細胞の増殖とサイトカイン産生を強く阻害した。このことは、抗該膜分子ポリクローナル抗体が、該膜分子からT細胞への副刺激シグナルを阻害する活性を有する抗体であることを示すものである。一方、抗該膜分子ポリクローナル抗体は、細胞培養容器に固相化したヒトB7-1-IgFcと抗CD3抗体によるT細胞の増殖とサイトカイン産生には影響を与えなかったことから、該ポリクローナル抗体による阻害作用は、代表的な副刺激シグナルであるB7-1/CD28経路には影響を与えず、該膜分子の副刺激シグナルを特異的に阻害することが示された(図7、図8)。
同種異系リンパ球混合反応に対する抗該膜分子ポリクローナル抗体の作用
主要組織適合抗原(MHC)の異なる同種異系の移植においては、T細胞が非自己(組織不適合)のMHC分子複合体(同種抗原)を認識することで活性化し拒絶反応を引き起こす。ヒトのMHCはHLA(human leukocyte antigen)と呼ばれ、HLA-A, B, Cの属するクラスI抗原と、HLA-DP, DQ, DRの属するクラスII抗原があり、さらにそれぞれの分子が多型性を有するため、ヒトのHLAの組み合せは数千通り可能となり、他人の間では組織不適合になる可能性がきわめて高くなっている。現在臨床的には臓器移植時の拒絶反応の抑制には、シクロスポリンAやFK506といった免疫抑制剤が用いられているが、これらの免疫抑制剤の問題点は免疫反応を非特異的に抑制してしまうため副作用が強く、またT細胞に免疫寛容を誘導することができないため、慢性拒絶には効果が弱い。一方、副刺激分子を介するシグナルの制御によってT細胞に免疫寛容を誘導したり、慢性拒絶を抑制できることがマウスの移植モデルの実験から明らかとなってきており[Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻、 11102-11105頁(1992年)、Science、257巻、789-792頁(1992年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、93巻、13967-13972頁(1996年)、Nature、381巻、434-438頁(1996年)、Nature Immunol.、2巻、591-596頁(2001年)]、該膜分子を介するシグナルの制御による免疫拒絶反応の抑制や免疫寛容の誘導が期待される。同種異系リンパ球混合反応は、組織適合抗原の異なる(以下便宜上ドナーA、ドナーBという)リンパ球を混合培養することで、同種抗原に反応するT細胞の増殖をインビトロにおいて調べる試験であるが、さらに、ドナーAの末梢血からインビトロで誘導した単球由来DCとドナーBの末梢血から分離したT細胞のみを混合培養することでも同様の同種抗原に対するT細胞の反応性を調べることができる。
そこで、実施例11で中和活性を示した抗該膜分子ポリクローナル抗体存在下において、単球由来DCと同種異系T細胞を用いた混合培養を行ない、T細胞の同種抗原反応性に対する抗該膜分子ポリクローナル抗体の作用を調べた。具体的には、実施例7の方法でドナーAの末梢血単球より未成熟DCを誘導し、LPSで活性化させた成熟DCを5x104cells/mlとなるように10% ヒト血漿を含むRPMI 1640培地(RPMI-plasma)に浮遊させた。また、実施例10と同様の方法でドナーBの末梢血より分離した純度95%以上のCD4陽性T細胞を1x106cells/mlとなるようにRPMI-plasmaに浮遊させた。単球由来DC浮遊液とCD4陽性T細胞浮遊液各々100 μlずつをU底96ウェル培養皿(#3077、Falcon社製)で混合し、さらに抗該膜分子ポリクローナル抗体または対照群として正常ウサギIgGまたは抗ヒトB7-2抗体(BD Bioscience社製)を終濃度0.2、2、20 μg/mlとなるように添加して、37℃、4日間、5% CO2存在下で培養した後、実施例9の方法と同様にして、3Hチミジンの細胞への取り込みによりT細胞の増殖を測定した。また、上記混合培養に抗該膜分子ポリクローナル抗体または比較対照の抗体を終濃度20 μg/mlとなるように添加し、培養開始48、72および96時間後の培養上清を回収し、実施例10の方法と同様にして培養上清中に分泌されたサイトカインを測定した。この結果、同種異系リンパ球混合反応において、B7-2/CD28副刺激経路を阻害する抗ヒトB7-2抗体は同種抗原反応性のCD4陽性T細胞の増殖を抑制したが、抗該膜分子ポリクローナル抗体は20 μg/mlの添加濃度においてもCD4陽性T細胞増殖を抑制しなかった。一方、同種異系リンパ球混合反応中のサイトカイン産生に関しては、抗ヒトB7-2抗体と同様に、抗該膜分子ポリクローナル抗体の添加によりIFN-γ、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-5の産生が抑制された(図9)。
同様にして、単球由来DCと同種異系CD8陽性T細胞を用いたリンパ球混合反応に対する抗該膜分子ポリクローナル抗体の作用を調べた。CD8陽性T細胞は、健常人末梢血から単核細胞を分離し、CD8+T Cell Isolation Kit(Miltenyi Biotec社製)により精製した純度90%以上のCD8陽性T細胞を用いた。この結果、CD4陽性T細胞を用いたリンパ球混合反応の結果と同様に、抗該膜分子ポリクローナル抗体は、同種抗原反応性のCD8陽性T細胞の増殖は抑制しないが、同種異系リンパ球混合反応中のIFN-γおよびIL-2の産生を抑制した(図10)。
以上の結果は、DCによる抗原特異的なT細胞の活性化に該膜分子が関与していることを示しており、該膜分子を認識し且つ該膜分子を介したDCとT細胞の相互作用を阻害する活性を有する抗体が、DCによる抗原特異的なCD4陽性およびCD8陽性T細胞の活性化を制御できることを示すものである。この知見から、本抗体は、ヘルパーT細胞(Th1、Th2)がエフェクター細胞として病態に関する病気(たとえば慢性関節リウマチ、多発性硬化症などの免疫疾患)に有用であり、一方本発明の該膜分子−IgFcもまた、実施例9や10での結果をも考慮すると、免疫力増強を要する癌もしくは悪性腫瘍、免疫系の異常に伴う病気、特に活性化DCおよび活性化T細胞の機能制御の異常に起因する病気、などに有用である。
同種抗原特異的なCTL誘導に対する抗該膜分子ポリクローナル抗体の作用
細胞障害性T細胞は、細菌やウイルスに感染した自己の細胞や腫瘍化した細胞を排除することにより個体の免疫学的監視機構を担っている。一方で、同種移植片拒絶反応(allograft rejection)や移植片対宿主病(graft-versus-host disease)における主要なエフェクター細胞として、標的細胞の障害に関わっている。CD8陽性T細胞がMHC(major histocompatibility complex)主要組織適合遺伝子複合体)クラスI分子に提示された抗原エピトープを認識し、T細胞抗原受容体からのシグナルが入るとCTL応答が誘導される。ナイーブなCD8陽性T細胞が初めて遭遇する抗原に対して細胞障害性を獲得するためには、DCなどの抗原提示細胞のMHCクラスI分子により抗原を提示されると同時に副刺激シグナルを受けること、およびCD4陽性T細胞によるヘルパー機能を享受することが必要である。MHCクラスI分子により提示されるペプチドは基本的にその細胞自身の中で合成された自己蛋白質またはウイルスや腫瘍由来のものであるが、APCにより外来性に取り込まれた抗原が、通常のMHCクラスI抗原提示経路に乗ることによりCD8陽性T細胞に抗原を提示されるクロスプレゼンテーションという機構が知られている[標準免疫学、第2版、医学書院、130-132頁(2002年)]。抗原特異的CTLはインビトロで抗原刺激をすることによって誘導することができる。例えば、特定のMHCクラスIにより提示されることが知られている癌特異的なペプチド抗原をDCにパルスして、自己のT細胞と培養することで該癌抗原特異的なCTLが誘導できるし、DCと同種異系のT細胞の培養により同種抗原特異的なCTLを誘導することができる。また、マウスでもヒトでもCD4陽性T細胞の存在なしにCTLをインビトロで誘導できることが知られている[J. Exp. Med.、171巻、1315-1332頁(1990年)]。
そこで、ヒト単球由来DCと同種異系CD8陽性T細胞を用いたインビトロCTL誘導に対する抗該膜分子ポリクローナル抗体の作用を調べた。具体的には、実施例7の方法でドナーAの末梢血単球より未成熟DCを誘導し、LPSで活性化させた成熟DCを3000 radsの放射線照射により増殖を止めた後、3x105 cells/mlとなるように10% ヒト血漿を含むRPMI 1640培地(RPMI-plasma)に浮遊させた。また、実施例12と同様の方法でドナーBの末梢血より分離した純度90%以上のCD8陽性T細胞を3x106cells/mlとなるようにRPMI-plasmaに浮遊させた。単球由来DC浮遊液とCD8陽性T細胞浮遊液各々500 μlずつを平底24ウェル培養皿(#3526、Corning社製)で混合し、さらに抗該膜分子ポリクローナル抗体または対照群として正常ウサギIgGを終濃度20 μg/mlとなるように添加して、37℃、5% CO2存在下で培養した。培養開始7日目に細胞を回収し、Lymphoprep(NYCOMED PHARMA社製)に重層し比重遠心(400G、室温、15分間)により死細胞を除き、回収された生細胞を同種抗原特異的CTL画分として標的細胞に対する細胞障害活性を測定した。標的細胞としては、ドナーA(Allogeneic ; 同種異系)およびドナーB(Syngeneic ; 同系)の末梢血単球またはCD14陰性画分を4 μg/ml ConA(concanavalin A)存在下で48時間培養したConA blastを用いた。各標的細胞2x106cells/15 μl FCSに50 μCiのNa2 51CrO3を加えて、37℃、5% CO2存在下で1時間静置し、RPMI 1640培地で3回洗浄後、10% FCS含有RPMI 1640培地に2x105 cells/mlとなるように浮遊させ、51Cr標識標的細胞とした。U底96ウェル培養にCTL/標的細胞の数の比が50:1、25:1、12.5:1、6.25:1となるように、CTLを100 μl/ウェルで播種し、そこに51Cr標識標的細胞を2x103cells/10 μl/ウェルずつ加えて、37℃、5% CO2存在下で4時間静置した。また標的細胞からの51Cr放出のバックグラウンドとしてCTLを加えないウェル(spontaneous release)と、標的細胞からの最大の51Cr放出として標的細胞に1% Tween 20(BIO-RAD社製)を加えて細胞を溶解させたウェル(maximal release)を用意した。インキュベーション後、培養皿を遠心し、各ウェルから上清60 μlを採ってLuma plate-96(Packard社製)に移し、乾燥後、γ線量をTop Countマイクロプレートシンチレーションカウンター(Packard社製)で測定した。それぞれのグループの平均値とstandard errorを計算し、CTLによる標的細胞からの特異的51Cr放出活性(% specific release)は、以下の計算式に従って算出した。% specific release=[(experimental release)−(spontaneous release)]÷[(maximal release)−(spontaneous release)]×100、% standard error=(standard error)÷[(maximal release)−(spontaneous release)]×100。
上記アッセイの結果、ヒト単球由来DCと同種異系CD8陽性T細胞の混合培養による同種抗原特異的CTLの誘導が、抗該膜分子ポリクローナル抗体の添加により有意に抑制された(図11)。このことは、同種移植片拒絶反応や移植片対宿主病、またはCTLがエフェクター機構として関与している自己免疫疾患、たとえば1型糖尿病[Nature、414巻、792-798頁(2001年)]、橋本病(Hashimoto’s Disease)[Clin.Immunol.Immunopathol.、36巻、40-48頁(1985年);Eur.J.Immunol.、29巻、1342-1352頁(1999年)]、多発性筋炎(polymyositis)[J.Neuroimmunol.、117巻、108-115頁(2001年)]等の、治療または予防において、該膜分子に対する抗体が有用であることを示している。
該膜分子のホモフィリック結合の解析
該膜分子が属するCD2ファミリー分子群には、ヒトCD2とヒトCD58、ヒト2B4とヒトCD48のようにCD2ファミリーに属する分子同士がそれぞれレセプター/リガンドの関係になっていたり、ヒトSLAM(CD150)やCD84のように自分と同じ分子を認識するホモフィリック結合を示すものがある。そこで、該膜分子同士がホモフィリックに結合するかどうかの解析を行った。
CHO細胞または、実施例1で作製した膜結合型の該膜分子を発現するCHO細胞をPBS-FCSで洗浄後、PBS-FCS-NaN3に懸濁し、50 μg/mlの該膜分子-IgFcを添加して4℃、1時間放置した。対照群として、50 μg/mlの精製されたヒトIgG1(キリンビール社製)を添加し同様にインキュベーションを行なった。細胞をPBS-FCS-NaN3で洗浄後、ビオチン化抗ヒトIgG抗体F(ab’)2フラグメント(Southern Biotechnology Associates社製)を添加し、4℃、30分間放置した。細胞をPBS-FCS-EDTA-NaN3で洗浄後、APC結合streptavidin(BD Biosciences社製)を添加し、4℃、30分間放置した。細胞をPBS-FCS-EDTA-NaN3で洗浄後、フローサイトメーターにより該膜分子-IgFcの結合を解析した。その結果、該膜分子-IgFcが、膜結合型の該膜分子を発現するCHO細胞に結合性を示し、該膜分子同士がホモフィリックに結合することが示された(図12)。このことは、DC上の該膜分子がリガンドとなってT細胞上の受容体としての該膜分子とホモフィリックに分子結合しT細胞の活性化に導くことを示唆している。
T細胞増殖に対する固相化抗該膜分子ポリクローナル抗体の作用
実施例14において該膜分子同士がホモフィリックに結合することが示されたことから、実施例8および実施例9で示された該膜分子-IgFcの活性化T細胞への結合や固相化該膜分子-IgFcによるT細胞増殖促進作用は、活性化T細胞膜上に発現する該膜分子を介したものであると考えられる。そこで、T細胞上の該膜分子を抗該膜分子抗体により架橋することでT細胞に副刺激シグナルを入れられるかどうかを調べた。
平底96ウェル培養皿に50mM 重炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)で250 ng/mlの濃度に稀釈した抗CD3抗体(BD Biosciences社製)を50 μl/ウェルで分注し、4℃、一晩放置することで抗体を培養皿に固相化した。培養皿を洗浄後、50mM 重炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)で段階稀釈した抗該膜分子ポリクローナル抗体、対照群として正常ウサギIgGを分注して、37℃、4時間放置して固相化した。抗CD3抗体および抗該膜分子抗体を固相化した培養皿は、PBSで洗浄後T細胞増殖試験に用いた。T細胞増殖試験は、健常人末梢血から単核細胞を分離し、CD4+T Cell Isolation KitまたはCD8+ T Cell Isolation Kit(ともにMiltenyi Biotec社製)により精製したCD4陽性T細胞またはCD8陽性T細胞を用いた。10% FCSを含むRPMI 1640培地に浮遊させたT細胞を、2.0x105 cells/ウェル/200 μlずつ上記の固相化培養皿に播種し、37℃、3日間、5% CO2存在下で培養した後、実施例9の方法と同様にして、3Hチミジンの細胞への取り込みによりT細胞の増殖を測定した。その結果、固相化した抗該膜分子ポリクローナル抗体は、抗CD3抗体刺激下のCD4陽性およびCD8陽性T細胞に対して、増殖促進作用を示した(図13)。
膜結合型該膜分子の細胞内局在の解析
実施例1で作製した膜結合型の該膜分子を発現するCHO細胞を用い、該膜分子のC末端側に融合して発現させたGFPを指標にして該膜分子の細胞内における局在を調べた。対照群としてAPC上に発現する膜分子として報告されているB7-H3[Nat. Immunol.、2巻、269-274頁(2001年)、J. Immunol.、168巻、6294-6297頁(2002年)]とGFPの融合蛋白質を実施例1と同様の方法(pEAK8)を用いてCHO細胞に発現させ、その局在を該膜分子と比較した。平底6ウェル培養皿(#3046、Falcon社製)の底に24×24mmの角カバーグラス(松浪硝子工業社製)を敷き、そこに10%FCS含有α-MEM培地に懸濁した膜結合型の該膜分子またはB7-H3を発現するCHO細胞を播種し、37℃、5%CO2存在下で培養した。24時間培養後、カバーグラスを取り出し、カバーグラスに付着した細胞をCoverWell(Schleicher & Cchuell社製)を用いてPBSで封入し、共焦点レーザースキャン顕微鏡(Confocal Laser Scanning Microscope、Carl Zeiss社製)により該膜分子GFP融合蛋白質の局在を解析した。CHO細胞が単独で存在している場合には、GFPはCHO細胞の細胞膜に添って均一に観察されることから、該膜分子は細胞膜に均一に発現していることがわかった。一方、CHO細胞同士が接触している状態では、GFPは細胞接触面に集積して存在していることが観察され、該膜分子が細胞間接着に関与していること、また該膜分子同士がホモフィリックに結合し得ることが示唆された。一方、対照群のB7-H3とGFPの融合蛋白質は、CHO細胞が単独で存在している状態およびCHO細胞同士が接触している状態においても常にCHO細胞の細胞膜に均一に存在しており、CHO細胞接着面へのB7-H3分子の集積は認められなかった(図14)。
図1は、該膜分子の細胞外領域とヒト免疫グロブリンのFc領域からなる融合ポリペプチド(該膜分子-IgFc)の模式図と還元条件および非還元条件下でのSDS-PAGE、ウエスタン解析の結果を示す。 図2は、該膜分子のcDNAで形質転換したCHO細胞の細胞表面での該膜分子の発現を抗該膜分子ポリクローナル抗体により検出した結果を示す。 図3は、末梢血単核球および単球由来DCにおける該膜分子の発現分布の解析結果を示す。 図4は、活性化T細胞に発現する該膜分子のカウンターレセプターの解析結果を示す。 図5は、T細胞増殖に対する、固相化した該膜分子-IgFcの副刺激活性を示す。 図6は、CD4陽性T細胞からのサイトカイン産生に対する、固相化した該膜分子-IgFcの副刺激活性を示す。 図7は、固相化該膜分子-IgFcのT細胞増殖活性に対する、抗該膜分子ポリクローナル抗体の阻害作用を示す。 図8は、固相化該膜分子-IgFcのT細胞からのサイトカイン産生促進活性に対する、抗該膜分子ポリクローナル抗体の阻害作用を示す。 図9は、CD4陽性T細胞を用いた同種異系リンパ球混合反応中のサイトカイン産生に対する、抗該膜分子ポリクローナル抗体の抑制作用を示す。 図10は、CD8陽性T細胞を用いた同種異系リンパ球混合反応中のサイトカイン産生に対する、抗該膜分子ポリクローナル抗体の抑制作用を示す。 図11は、同種抗原特異的CTL誘導に対する、抗該膜分子ポリクローナル抗体の抑制作用を示す。 図12は、CHO細胞に発現させた膜結合型該膜分子に対する該膜分子-IgFcのホモフィリック結合を示す。 図13は、T細胞増殖に対する、固相化した抗該膜分子ポリクローナル抗体の副刺激活性を示す。 図14は、CHO細胞に発現させた膜結合型該膜分子GFP融合蛋白質の細胞内局在を示す。
配列番号3:融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列
配列番号4:融合ポリペプチド

Claims (16)

  1. 配列番号2に示されるアミノ酸配列22〜331のヒト樹状細胞膜分子の細胞外領域ポリペプチド、または該ポリペプチドと本質的に同等の生物学的活性をもち且つそのアミノ酸配列中1もしくは複数のアミノ酸残基の変異をもつその変異体と、ヒト免疫グロブリン重鎖の定常領域ポリペプチドまたはその断片とからなる融合ポリペプチド、
    あるいは、
    該融合ポリペプチドに対する抗体であって該ヒト樹状細胞膜分子細胞外領域ポリペプチドと結合する抗体、
    を含む、樹状細胞とT細胞の相互作用を介するT細胞の活性化を促進または抑制することによって活性化樹状細胞と活性化T細胞の機能制御の異常に起因する病気もしくは障害の治療または予防に使用するための医薬組成物。
  2. 前記融合ポリペプチドが配列番号4に示されるアミノ酸配列からなる、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 前記融合ポリペプチドが多量体であるかまたは多量体を形成しうる、請求項1または2に記載の医薬組成物。
  4. 前記多量体が二量体である、請求項3に記載の医薬組成物。
  5. 前記抗体がポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モザイク抗体またはペプチド抗体である、請求項1に記載の医薬組成物。
  6. 前記融合ポリペプチドがN結合糖鎖またはO結合糖鎖を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  7. 前記融合ポリペプチドが免疫原抑制性分子と結合されている、請求項1〜4および6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  8. 前記免疫原抑制性分子がポリエチレングリコールまたはその誘導体である、請求項7に記載の医薬組成物。
  9. 前記融合ポリペプチドまたは前記抗体が、可溶化もしくは固相化されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  10. in vivoまたはex vivoでのT細胞の増殖または増殖抑制に使用するためのものである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  11. in vivoまたはex vivoでのT細胞からのサイトカイン産生の促進または抑制に使用するためのものである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  12. 前記病気もしくは障害が自己免疫疾患、アレルギー性疾患、炎症性疾患、移植または癌である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  13. 前記病気もしくは障害がTh1またはTh2細胞に起因するものである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  14. 前記病気もしくは障害が慢性関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、1型糖尿病、自己免疫性甲状腺炎、特発性炎症性ミオパチーまたはアレルギー性接触皮膚炎である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  15. 前記病気もしくは障害が細胞障害性T細胞に起因するものである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  16. 前記病気もしくは障害が移植片対宿主病または同種移植片拒絶反応である、請求項15に記載の医薬組成物。
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