JP2005178132A - インクジェットヘッド及び画像記録装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】樹脂と顔料を含有する記録液を吐出するノズルが配置されているノズル面は、記録液に対して撥インク性、滑インク性を有する吸着防止層が形成される。吸着防止層のはじき性は、記録液25μlにおける転落角が20°以下とすることにより、記録液の液離れが良く、被記録媒体の表面を汚すことがない。また、ノズル面に対するワイピングブレードの押し当て圧力を抑え磨耗を防止し、ワイピング耐久性を確保する。
【選択図】なし
Description
従来技術として、このようなインクジェットヘッドのノズル面に対してインクの付着・吸着を防ぐために、ノズル面に撥インク性を有する吸着防止層を備える技術が知られている。
また、別の吸着防止層としては、ノズル面を固体表面張力の低い高分子でコーティングする、もしくはノズル面を形成する基材自体を固体表面張力の小さい高分子とする方法がある。代表的な固体表面張力の低い材料として、フッ素系樹脂、Ni−PTFE共析メッキ、シリコーン系樹脂が一般的に知られている。シリコーン樹脂は、撥水、発油性に優れるものの、それのみでは硬度が低い等の理由から、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等他の樹脂系との併用、または変性した材料を用いることが多い。
しかし、インクジェットヘッドとは別に撥水膜を有していることから、ノズル孔に残る記録液とノズル面上の記録液が連通していることによるアンカー効果が考慮されておらず、さらに記録液に遠心力が加わる要素があるにもかかわらず、始めに記録液が置かれる回転の中心からの距離が規定されていない等、ノズル面のインクの除去しやすさを純粋に表したパラメータとするには不十分である。
また、記録液の液離れが良いインクジェットヘッドを搭載することによって、インクジェットヘッドのノズル面にインクが付着することなく、被記録媒体の表面を汚すことのないインクジェットヘッド及び画像記録装置を提供することを目的とする。
更に、インクジェットヘッドのノズル面に対するワイピングブレードの押し当て圧力を低く抑え、ワイピング耐久性を確保し、また磨耗や擦傷といった問題を解決することを目的とする。
また、記録液の液離れが良いインクジェットヘッドを搭載することによって、インクジェットヘッドのノズル面にインクが付着することなく、被記録媒体の表面を汚すことのないインクジェットヘッド及び画像記録装置を提供することが可能となる。
図1に示すインクジェット記録装置1は、本体筐体2の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ3、キャリッジ3に搭載した本発明を実施したインクジェットヘッド4、インクジェットヘッドへインクを供給するインクカートリッジ5等で構成される印字機構部等を収納する。本体筐体2の下方部には前方側から多数枚の記録用紙を積載可能な給紙カセットを抜き差し自在に装着することができ、また記録用紙を手差しで給紙するための手差しトレイを開倒することができ、給紙カセット或いは手差しトレイから給送される記録用紙を取り込み、印字機構部によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイに排紙する。
記録時には、キャリッジ3を移動させながら画像信号に応じてインクジェットヘッド4を駆動することにより、停止している記録用紙にインク滴を吐出して1行分を記録し、記録用紙を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または記録用紙の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ記録用紙を排紙する。
インクカートリッジ5を構成するカートリッジ筐体21には、インクが充填された多孔質体からなる液吸収体22が収容され、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッドへ供給されるインクをわずかな負圧に維持するように上蓋26によって密封される。カートリッジ筐体21の底部にはインクジェットヘッドへインクを供給する液供給口23が形成されており、カートリッジ筐体21の底部に嵌合するキャップ部材33に形成された液漏れ防止突部34がシールリング25を介して液供給口23を封止している。上蓋26には、大気開放口27が形成され、上蓋26に形成された溝28とシール部材29とによって、カートリッジ筐体21内の空間Aと外気間を適当な連通路で連通させて、使用時に空間Aが過度に負圧となることを防止する。
図4に示すインクジェットヘッド4は、ブラックBkのインクを吐出するノズル41Bkを有するインクジェットヘッド41と、ブラックBkのインクを吐出するノズル47Bk、イエローYのインクを吐出するノズル47Y、マゼンタMのインクを吐出するノズル47M、シアンCのインクを吐出するノズル47Cが主走査方向に並列したインクジェットヘッド42とが副走査方向に一体的に結合したインクジェットヘッドの例である。
図4に示したインクジェットヘッドは、ブラックBk、イエローY、マゼンタM、シアンCの4色インクを用いた例であるが、淡マゼンタLM、淡シアンLC等を含め、より多色であっても同様に適用できる。
図5に示すインクジェットヘッド4は、ブラックBkのインクを吐出するノズル47Bk、イエローYのインクを吐出するノズル47Y、マゼンタMのインクを吐出するノズル47M、淡マゼンタLMのインクを吐出するノズル47LM、シアンCのインクを吐出するノズル47C、淡シアンLCのインクを吐出するノズル47LCが主走査方向に並列したインクジェットヘッドの例で、階調性に優れた、高品質の記録が可能となる。ノズルプレートの表面には吐出したインク滴が付着することがないように、インクに対しはじき性を有する吸着防止層が形成されている
転落角とは、ある一定量の液滴を付着させたプレートの傾斜角度θを、水平0°から垂直90°に徐々に傾けていったとき、液滴が滑落する角度θのことである。より小さい転落角で液滴が滑落するプレートほど、液滴をプレートに対して平行な方向の力(mgsinθ)が小さくても動かせることを示すため、より小さい力で液滴を除くことができることを表す指標になる。転落角を指標とすることにより、測定装置を容易に小型化することができ、なおかつ、直接インクジェットヘッドを評価できる評価方法とすることができる。以後、液離れの良さの度合いをそれぞれ、水、油、記録液に対して滑水、滑油、滑インク性と表す。
また、滑水性が高い材料は弱い力で容易に付着した記録液を除くことができるため、弱いワイピング押し当て圧力で記録液を拭き取ることができる。したがって、非常に高い滑水性を有する吸着防止層であれば、硬度が低くてもワイピング耐久性を確保することが可能である。
本発明におけるワイピング耐久性の確保とは、あるワイピング押し当て圧力で2000回のワイピングを行ってもインクを拭き残し無く拭き取れることを指している。無論、転落角が20°以下となるような吸着防止層でインクジェットヘッドのノズル面を形成することは、ノズル面の耐久性を確保する上で、色材の種類によらず、染料であっても良いし、樹脂を含まなくても有効である。
シリコーンポリマーは硬いものほど撥インク性は乏しくなり、柔らかい物では撥インク性が十分でも強度的に弱い傾向がある。シリコーンゴムと呼称されるものからシリコーンレジンと呼称される比較的柔らかいシリコーンが特に有用である。硬度はHMで25[N/mm2]以上であることが望ましい。
また、シリコーンオイル・フッ素オイルを焼き付けることでも優れた撥インク性を示す皮膜を得ることができる。
図7は、高分子成分が重合する際の重合の形態を示す図である。
重合の形態は、図7(A)に示すような直鎖に近いブロック型に重合した高分子、図7(B)に示すような簾状のグラフト型に重合した高分子、図7(C)に示すようなこれらが組み合わさったブロック・グラフト型に重合した高分子であっても良い。さらには、図7(D)に示すように複雑に網状に架橋した構造の高分子であっても良い。
図8は、パーフルオロアルキル基がシロキサンに簾状にグラフト重合するときの構造を示している。
あるいは、水酸基及びシリル基をシリコーン樹脂に持たせUV硬化型とすることで、高い硬度を得ることもできる。
有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラツク、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
(a)酸性染料及び食用染料として
C.I.アシッド・イエロー 17,23,42,44,79,142
C.I.アシッド・レッド 1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289
C.I.アシッド・ブルー 9,29,45,92,249
C.I.アシッド・ブラック 1,2,7,24,26,94
C.I.フード・イエロー 3,4
C.I.フード・レッド 7,9,14
C.I.フード・ブラック 1,2
C.I.ダイレクト・イエロー 1,12,24,26,33,44,50,86,120,132,142,144
C.I.ダイレクト・レッド 1,4,9,13,17,20,28,31,39,80,81,83,89,225,227
C.I.ダイレクト・オレンジ 26,29,62,102
C.I.ダイレクト・ブルー 1,2,6,15,22,25,71,76,79,86,87,90,98,163,165,199,202
C.I.ダイレクト・ブラック 19,22,32,38,51,56,71,74,75,77,154,168,171
C.I.ベーシック・イエロー 1,2,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,40,41,45,49,51,53,63,64,65,67,70,73,77,87,91
C.I.ベーシック・レッド 2,12,13,14,15,18,22,23,24,27,29,35,36,38,39,46,49,51,52,54,59,68,69,70,73,78,82,102,104,109,112
C.I.ベーシック・ブルー 1,3,5,7,9,21,22,26,35,41,45,47,54,62,65,66,67,69,75,77,78,89,92,93,105,117,120,122,124,129,137,141,147,155
C.I.ベーシック・ブラック 2,8
C.I.リアクティブ・ブラック 3,4,7,11,12,17
C.I.リアクティブ・イエロー 1,5,11,13,14,20,21,22,25,40,47,51,55,65,67
C.I.リアクティブ・レッド 1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97
C.I.リアクティブ・ブルー 1,2,7,14,15,23,32,35,38,41,63,80,95等が使用できる。
防腐防黴剤としては、ベンゾトリアゾール、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、イソチアゾリン系化合物、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が使用できる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が使用できる。
その他、本発明の記録液は必要に応じ、消泡剤、コロイダルシリカ、糖類、アクリルモノ等を含有することができる。
(1)樹脂被覆型ブラック分散体の製造方法
a.ポリマー溶液の調製
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下漏斗を備えたフラスコ(容積1L)内を窒素ガスで十分置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー(東亜合成(株)製、商品名:AS−6)4.0g、及びメルカプトエタノール0.4gを仕込み、65℃に昇温した。
ポリマー溶液の一部を乾燥し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(標準:ポリスチレン、溶媒:テトラヒドロフラン)で測定したところ、ポリマーの重量平均分子量は15000であった。
上記aで得られたポリマー溶液22.2g、カーボンブラック26.0g、1mol/Lの水酸化リチウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g及びイオン交換水30gを十分に攪拌した後、3本ロールミル〔(株)ノリタケカンパニー製、商品名:NR−84A〕を用いて20回混練した。得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、十分に攪拌した後、エパポレーターを用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、固形分量が20.0重量%の樹脂被覆型ブラック顔料分散体160gを得た。
以下に示す成分を混合、攪拌後、テフロン(R)フィルタ(0.8μm)にてろ過して、記録液を製造した。
<記録液A>
樹脂被覆ブラック顔料分散体 50部(ブラック顔料固
形分濃度10部)
グリセリン 25部
界面活性剤 FS−300 ((株)Du Pont) 2部
2−ピロリドン 2部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2部
チオ硫酸ナトリウム 0.2部
防腐防黴剤(アビシア社製、PROXEL LV(s)) 0.4部
消泡剤(信越化学社製、KM−72F) 0.1部
イオン交換水 残量
なお、上記配合液を更にLiOH水溶液でpH10.5に調整して用いた。
樹脂被覆ブラック顔料分散体 50部(ブラック顔料固
形分濃度10部)
グリセリン 25部
2−ピロリドン 2部
オレフィンSTG(信越化学製) 2.0部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2部
チオ硫酸ナトリウム 0.2部
防腐防黴剤(アビシア社製、PROXEL LV(s)) 0.4部
消泡剤(信越化学社製、KM−72F) 0.1部
イオン交換水 残量
なお、上記配合液を更にLiOH水溶液でpH10.5に調整して用いた。
樹脂被覆ブラック顔料分散体 50部(ブラック顔料固
形分濃度10部)
グリセリン 25部
2−ピロリドン 2部
オレフィンE1010 2.0部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2部
チオ硫酸ナトリウム 0.2部
防腐防黴剤(アビシア社製、PROXEL LV(s)) 0.4部
消泡剤(信越化学社製、KM−72F) 0.1部
イオン交換水 残量
なお、上記配合液を更にLiOH水溶液でpH10.5に調整して用いた。
樹脂被覆ブラック顔料分散体 50部(ブラック顔料固
形分濃度10部)
グリセリン 25部
2−ピロリドン 2部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2部
チオ硫酸ナトリウム 0.2部
防腐防黴剤(アビシア社製、PROXEL LV(s)) 0.4部
消泡剤(信越化学社製、KM−72F) 0.1部
イオン交換水 残量
なお、上記配合液を更にLiOH水溶液でpH10.5に調整して用いた。
以下に示すポリマーをUV硬化性樹脂で作成したノズルプレートフィルムに塗布して、ノズルプレートA〜Lを作成した。塗布方法はスピンコート[3000rpm 15秒間]で行った。また、塗布後それぞれのポリマーの硬化条件に合わせて硬化を行った。
シリコーンレジン(ポリシラン)
ポリマー〔シリコーン〕:SR2316〔(株)東レ・ダウコーニング〕
硬化条件:25℃/24時間
上記シリコーンレジンの原液を表面を親水化処理したUV硬化性樹脂で作成したノズルプレート上にノズル孔をマスキングしてスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。また、塗布後に硬化条件:25℃/24時間で硬化を行い撥インク性を示す皮膜を得た。その後マスキング剤の除去を行った。
フッ素樹脂
ポリマー〔フッ素樹脂〕:デムナムDSX(ダイキン工業製)
硬化条件:25℃/30秒
上記フッ素樹脂溶液の原液を表面を親水化処理したUV硬化性樹脂で作成したノズルプレート上にノズル孔をマスキングしてスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。また、塗布後に硬化条件:25℃/30秒で硬化を行い、撥インク性を示す皮膜を得た。その後マスキング剤の除去を行った。
混合物重量分立(シリコーン/フッ素ポリマー/相溶化剤):(8/1/1)
ポリマー〔シリコーン〕:SR2316〔(株)東レ・ダウコーニング〕
ポリマー〔フッ素ポリマー〕:PFE((株)ダイキン)
ポリマー〔相溶化剤〕:X−22−822((株)信越化学)
上記シリコーン、フッ素ポリマー、相溶化剤を重量費8:1:1でフッ素系溶剤HFE−7100((株)住友3M)に固形分濃度10%となるように溶解して溶解液を作成した。概溶解液で表面を親水化処理したUV硬化性樹脂で作成したノズルプレート上にノズル孔をマスキングしてスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。また、塗布後に硬化条件:25℃/30分で硬化を行い、撥インク性を示す皮膜を得た。その後マスキング剤の除去を行った。
混合物重量分立(シリコーン/アクリルポリマー/相溶化剤):(8/1/1)
ポリマー〔シリコーン〕:SR2316〔(株)東レ・ダウシリコーン〕
ポリマー〔アクリルポリマー〕:スミペックス(PMMA)〔(株)住友化学〕
ポリマー〔相溶化剤〕:KF−413〔(株)信越化学〕
硬化条件:25℃/30分
上記シリコーン、アクリルポリマー、相溶化剤を重量費8:1:1でフッ素系溶剤HFE−7100((株)住友3M)に溶解して溶解液を作成した。概溶解液で表面を親水化処理したUV硬化性樹脂で作成したノズルプレート上にノズル孔をマスキングしてスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。また、塗布後に硬化条件:25℃/10分で硬化を行い、撥インク性を示す皮膜を得た。その後マスキング剤の除去を行った。
混合物重量分立(フッ素ポリマー/アクリルポリマー/相溶化剤):(5/5/4)
ポリマー〔シリコーン〕:スミペックス(PMMA)〔(株)住友化学〕
ポリマー〔フッ素樹脂〕:PTFE((株)ダイキン)
ポリマー〔相溶化剤〕:ETFE((株)ダイキン)
硬化条件:25℃/30分
上記フッ素ポリマー、アクリルポリマー、相溶化剤を重量費5:5:4でフッ素系溶剤HFE−7100((株)住友3M)に溶解して溶解液を作成した。概溶解液で表面を親水化処理したUV硬化性樹脂で作成したノズルプレート上にノズル孔をマスキングしてスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。また、塗布後に硬化条件:25℃/30分で硬化を行い、撥インク性を示す皮膜を得た。その後マスキング剤の除去を行った。
ポリマー(シリコーン・フッ素ポリマー重合樹脂):ZX−007c〔(株)富士化成工業〕
架橋剤〔イソシアネ−ト〕:MF−B60X〔(株)旭化成〕
硬化条件:140℃/30分
上記シリコーン・フッ素ポリマー重合樹脂と架橋剤が含まれた溶液を混合し、キシレンで希釈して固形分濃度35%に調整した溶解液を作成した。このときのイソシアネートのイソシアネート基とシリコーンのOH基の割合がNCO/OH=1.2/1.0となる混合比で混合を行った。前記溶解液で表面を親水化処理したUV硬化性樹脂で作成したノズルプレート上にノズル孔をマスキングしてスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。また、塗布後に25℃で30分間放置し、溶剤を十分に蒸発させた後、硬化条件140℃/30分で硬化を行い、撥インク性を示す皮膜を得た。その後マスキング剤の除去を行った。
ポリマー(シリコーン・アクリルポリマー重合樹脂):ACS−1064(日本ペイント)
硬化条件:UV硬化 600mJ/cm2
上記ACS−1064(日本ペイント)の原液を表面を親水化処理したUV硬化性樹脂で作成したノズルプレート上にノズル孔をマスキングしてスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。塗布後に25℃で60分間放置し、溶剤を十分に蒸発させた後、UV照射装置(120w/m,500rpm)を用いて600mJ/cm2の照射エネルギーを加えて十分に硬化させた。
ポリマー(フッ素樹脂・アクリル樹脂重合樹脂):ルミフロン((株)旭硝子)
硬化条件:常温硬化/48時間
上記フッ素ポリマー・アルキルポリマー重合樹脂を含む溶剤を表面に親水化処理したUV硬化性樹脂で作成したノズルプレート上にノズル孔をマスキングしてスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。塗布後に25℃で48時間放置し、十分な乾燥を行った。
ポリマー〔シリコーン〕:ZX−022〔(株)富士化成工業〕
硬化条件:25℃/24時間
上記シリコーンレジンを表面に親水化処理したUV硬化性樹脂で作成したノズルプレート上にノズル孔をマスキングしてスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。また、塗布後に硬化条件:25℃/30分で放置し、十分な乾燥を行い溶剤を蒸発させた後、120℃/2時間の硬化条件で加熱硬化を行い、撥水性を示す皮膜を得た。その後マスキング剤の除去を行った。
Ni−PTFE共析メッキ
UV硬化性樹脂で作成したノズルプレートフィルムにNi無電解メッキした薄膜に対してNi−PTFE電鋳メッキをメッキ処理するにより撥水性を示す皮膜を得た。
ポリマー〔親水性アルキルポリマー〕:ハイドロテクト〔(株)TOTO〕
硬化条件:25℃/24時間
上記親水性アルキルポリマーをUV硬化性樹脂で作成したノズルプレートフィルムにスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。親水性を示す滑水性の高い皮膜を得た。その後マスキング剤の除去を行った。
ポリマー〔シリコーン〕:HC2000〔(株)東レ・ダウコーニング〕
硬化条件:25℃/24時間
上記シリコーンレジンの原液を表面を親水化処理したUV硬化性樹脂で作成したノズルプレート上にノズル孔をマスキングしてスピンコート[3000rpm 15秒間]で塗布を行った。また、塗布後に硬化条件:25℃/24時間で硬化を行い撥水性を示す皮膜を得た。その後マスキング剤の除去を行った。
25μlの記録液AをノズルプレートAを用いたインクジェットヘッドのノズル面に滴下し、転落角を測定した。記録液の滴下はインクジェットヘッドには記録液Aが十分に充填されており、メニスカスが形成されている状態で行った。
次に、同様に25μlの記録液をノズル面に滴下し、硬度10〜100のゴムブレードで拭き取りを硬度の低いものから行ったとき、前記ノズルプレートから記録液の拭き取りが可能であった最小のゴムブレードの硬度を得た。
次に、前記記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードで拭き取りを行い、200回ゴムブレードで拭き取りを行うたびに前記と同様に転落角の測定を行い、2000回まで繰り返して転落角の値を得た。
ノズルプレートBを用いたインクジェットヘッドを使用する他は実施例1と同様にして測定を行い、ノズルプレートBにおける記録液の転落角、ノズルプレートBから記録液の拭き取りが可能であった最小のゴムブレードの硬度、記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードでワイピングを繰り返したときの転落角の値を得た。
ノズルプレートCを用いたインクジェットヘッドを使用する他は実施例1と同様にして測定を行い、ノズルプレートCにおける記録液の転落角、ノズルプレートCから記録液の拭き取りが可能であった最小のゴムブレードの硬度、記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードでワイピングを繰り返したときの転落角の値を得た。
ノズルプレートDを用いたインクジェットヘッドを使用する他は実施例1と同様にして測定を行い、ノズルプレートDにおける記録液の転落角、ノズルプレートDから記録液の拭き取りが可能であった最小のゴムブレードの硬度、記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードでワイピングを繰り返したときの転落角の値を得た。
ノズルプレートEを用いたインクジェットヘッドを使用する他は実施例1と同様にして測定を行い、ノズルプレートEにおける記録液の転落角、ノズルプレートEから記録液の拭き取りが可能であった最小のゴムブレードの硬度、記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードでワイピングを繰り返したときの転落角の値を得た。
ノズルプレートFを用いたインクジェットヘッドを使用する他は実施例1と同様にして測定を行い、ノズルプレートFにおける記録液の転落角、ノズルプレートFから記録液の拭き取りが可能であった最小のゴムブレードの硬度、記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードでワイピングを繰り返したときの転落角の値を得た。
ノズルプレートGを用いたインクジェットヘッドを使用する他は実施例1と同様にして測定を行い、ノズルプレートGにおける記録液の転落角、ノズルプレートGから記録液の拭き取りが可能であった最小のゴムブレードの硬度、記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードでワイピングを繰り返したときの転落角の値を得た。
ノズルプレートHを用いたインクジェットヘッドを使用する他は実施例1と同様にして測定を行い、ノズルプレートHにおける記録液の転落角、ノズルプレートHから記録液の拭き取りが可能であった最小のゴムブレードの硬度、記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードでワイピングを繰り返したときの転落角の値を得た。
ノズルプレートIを用いたインクジェットヘッドを使用する他は、実施例1と同様にして測定を行い、ノズルプレートIにおける記録液の転落角、ノズルプレートから記録液の拭き取りが可能であった最小のゴムブレードの硬度、記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードでワイピングを繰り返したときの転落角の値を得た。
ノズルプレートJを用いたインクジェットヘッドを使用する他は、実施例1と同様にして測定を行い、ノズルプレートJにおける記録液の転落角、ノズルプレートJから記録液の拭き取りが可能であった最小のゴムブレードの硬度、記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードでワイピングを繰り返したときの転落角の値を得た。
図9は、表1の結果をグラフ化して示す図で、付着防止剤によって転落が異なるとともに転落角がワイピング回数とともに変化する様子を示す。
ノズルプレートAを用いたインクジェットヘッドにおいて、記録液Aの印写評価を行った。
また、実施例1と同様にして測定を行い、さらにノズルプレートLにおける記録液A 25μlの転落角、及び記録液の拭き取りが可能であった最小の硬度のゴムブレードで2000回のワイピングを繰り返したときの転落角の値を測定した。
ノズルプレートKを用いたインクジェットヘッドを用いる他は実施例9と同様にして、記録液Aの印写評価を行った。
表2は、実施例9と比較例3の結果を示す。
(実施例10)
実施例9に加えて、更に実施例1のノズルプレートAの鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度の測定基準はJIS−K−5400に準拠し、ノズルプレートに対して45°の角度で鉛筆を当て、荷重750gの負荷をかけたとき、傷が付く最小の硬度を測定した。また、ノズルプレートAを備えたインクジェットヘッドを搭載した、IPSIO JET300 〔(株)リコー製〕の改造機を用いて普通紙Type6200〔(株)リコー製〕を折り曲げた意図的に紙詰まりが発生する用紙で印刷を行ったとき、紙詰まり後のノズル口の傷を原因とする噴射異常(吐出不良,吐出曲がり)の有無(噴射異常なし…○,噴射異常あり…×)を検査する紙ジャム試験を行った。
ノズルプレートLを用いた他は実施例10と同様にして、転落角、拭き取りが可能な最小のワイパー強度、ワイピング性、ワイピング耐久性、後退接触角〔後退し始め〕、鉛筆硬度、紙ジャム試験による噴射異常の有無を確認した。
表3に示すノズルプレートA及びノズルプレートLの鉛筆硬度の印写評価の比較から、吸着防止層の硬度が鉛筆硬度H未満の場合、ワイピング耐久性があっても、紙詰まりにより傷が付くことで噴射異常が生ずることが分かる。ワイピング耐久性は、吸着防止層の硬度の他にワイパーとノズルプレートの摩擦係数の大きさも関わっており、すべり性が良い材料ならば、柔らかい材料でもワイピング耐久性を確保でき得る。しかし、紙詰まりは、折れた紙の角でノズル面が引っかかれるため、たとえすべり性が良くても柔らかくて脆い材料では傷が付きやすい。
紙詰まりは、インクジェットプリンタにおいて安定動作を妨げる原因となるものであって、その発生を極力回避しなければならないが、市場において折れた紙を装填してしまうこと等を原因とする十分起こりうる事故であるため、これを回避するためノズルプレートの鉛筆硬度はH以上であることが望ましい。
ノズルプレートAを吸着防止層に有するインクジェットヘッドを搭載したIPSIO JET300改造機を用い、記録液Aでベタと、文字と、ブラック(Bk)のベタ中にMの文字を印刷した記録物を作成し、(1)画像濃度画質、(2)カラーブリード、(3)フェザリングを前記記録物から測定した。
評価方法、評価基準、及びブラックインクの処方は、次に示すとおりである。
記録液Aでベタのパッチパターンを(株)リコーの普通紙Type6200に印字して印字サンプルを作成した。前記パッチパターンに対し、X−Riteで画像濃度の計測を行った。
プリンタを用い、ブラックインクのベタ中にMS明朝体のフォントでMの文字が記録液Aで印字されたパターンを(株)リコーの普通紙Type6200に印字して印字サンプルを作成した。前記パターンに対して境界線滲みについて目視で評価を行った。
評価基準は以下のとおりである。
◎:色の境界線の滲みは視認できない。
○:色の境界線滲みは一部で滲んでいるが、目立たない。
×:色の境界線がはっきりしないほど文字は滲んでいる。
プリンタを用いて記録液Aで印字したで文字が入ったパターンを(株)リコーの普通紙Type6200に印字して印字サンプルを作成した。前記文字の滲みについて目視で評価を行った。
評価基準は以下のとおりである。
◎:文字の境界線の滲みは視認できない。
○:文字の境界線滲みは一部で滲んでいるが、目立たない。
×:文字の境界線がはっきりしないほど文字は滲んでいる。
キャボジェット300(キャボット社製、樹脂分散型顔料) 10.0部
1,3―ブタンジオール 22.5部
グリセリン 7.5部
界面活性剤 1.0部
2−ピロリドン 2.0部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2部
チオ流酸ナトリウム 0.2部
水 残量
実施例11と記録液Bを用いる他は実施例11と同様にして記録液Bの画像濃度、フェザリング、及び、カラーブリードの評価を行った。
実施例11と記録液Cを用いる他は実施例11と同様にして記録液Bの画像濃度、フェザリング、及び、カラーブリードの評価を行った。
実施例11と記録液Dを用いる他は実施例11と同様にして記録液Bの画像濃度、フェザリング、及び、カラーブリードの評価を行った。
実施例11とノズルプレートIを用いる他は実施例11と同様にして記録液Aの画像濃度、フェザリング、及び、カラーブリードの評価を行った。
実施例12とノズルプレートIを用いる他は実施例12と同様にして記録液Bの画像濃度、フェザリング、及び、カラーブリードの評価を行った。
比較例5とノズルプレートIを用いる他は比較例5と同様にして記録液Cの画像濃度、フェザリング、及び、カラーブリードの評価を行った。
比較例6とノズルプレートIを用いる他は比較例6と同様にして記録液Dの画像濃度、フェザリング、及び、カラーブリードの評価を行った。
実施例11,12及び比較例5、6の結果の比較から、表面張力の低い記録液ほど転落角が高くなることが分かる。あるいは、表面張力15mN/cm2以下の記録液Cを用いた場合、文字滲みが生じるため好ましくない。また、表面張力30mN/cm2以下の記録液Cを用いた場合、記録液の埋まりが悪いため、画像濃度が低くなってしまう。
したがって好ましい記録液の表面張力は15mN/cm2〜30mN/cm2であるといえる。ただし、比較例7〜10の評価結果のように、ノズルプレートと記録液の組み合わせが転落角が21°以上となるような撥インク性を示す場合、ノズル面の撥インク性を十分に確保することができないため、ノズル面が濡れてしまってノズル口での記録液のメニスカスの確保ができなくなるため、前記のような好ましい表面張力の記録液を安定して印字できなくなる。
Claims (14)
- 樹脂と顔料を含有する記録液を吐出するインクジェットヘッドであって、前記記録液を吐出するノズルが配置されているノズル面は、前記記録液25μlにおける転落角が20°以下であることを特徴とするインクジェットヘッド。
- 前記ノズルが配置されているノズル面は、前記記録液に対してはじき性を有する吸着防止層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
- 前記ノズルは、樹脂ノズルであることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットヘッド。
- 前記記録液を加熱する発熱体を有することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記吸着防止層は、シリコーン高分子またはフッ素樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記吸着防止層は、シリコーン高分子とフッ素樹脂と相溶化剤の混合物、またはシリコーン高分子とアクリル樹脂と相溶化剤の混合物、またはフッ素樹脂とアクリル樹脂と相溶化剤の混合物からなることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記吸着防止層は、フッ素樹脂/シロキサングラフト重合型ポリマー、またはアクリル樹脂/シロキサングラフト重合型ポリマーからなることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記吸着防止層は、フッ素樹脂/シロキサンブロック重合型ポリマー、またはアクリル樹脂/シロキサンブロック重合型ポリマーからなることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記吸着防止層は、鉛筆硬度H以上であることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記吸着防止層は、動摩擦係数μが0.3以下であることを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記吸着防止層における前記記録液の後退接触角は、30°以上であることを特徴とする請求項1乃至10いずれかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記記録液の表面張力は、15〜30mN/mであることを特徴とする請求項1乃至11いずれかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記記録液は、界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1乃至12いずれかに記載のインクジェットヘッド。
- 請求項1乃至13いずれかに記載のインクジェットヘッドを搭載したことを特徴とする画像記録装置。
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