JP2005121164A

JP2005121164A - シール装置

Info

Publication number: JP2005121164A
Application number: JP2003358339A
Authority: JP
Inventors: Shunichi Yabe; 俊一矢部; Toshimi Takagi; 敏己高城
Original assignee: NSK Ltd
Current assignee: NSK Ltd
Priority date: 2003-10-17
Filing date: 2003-10-17
Publication date: 2005-05-12

Abstract

【課題】密封空間の内部と外部との間に圧力差が生じやすい環境下で使用されても、圧力差が生じにくく、優れた密封性を有するシール装置を提供する。
【解決手段】自動車用ハブユニットの外輪１の内周面と内輪相当部材３の外周面との間に形成され転動体１０，１０が配置された空間１４を、シール装置１２及びシールリング１３により密封した。シール装置１２の芯金１５には貫通孔３０が設けられていて、貫通孔３０の開口は含フッ素重合体組成物による被覆処理が施された延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム３１により塞がれている。
【選択図】図２

Description

本発明はシール装置に関する。

転がり軸受等に使用されるゴムシール装置には、内圧の調整を目的として外径部側等に切り欠き状の空気穴を設けたものも存在するが、液体の内部への侵入を防止するため空気穴を有していないものが一般的になりつつある。
特開平５−３２０２５５号公報特開平７−１２６４２８号公報特開平１１−５１１９２号公報

しかしながら、空気穴を有していないゴムシール装置は、一定の密封性を有するものの、急激な温度変化が生じる場合等のように、ゴムシール装置により密封される空間の内部と外部との間に圧力差が生じる環境で使用されると、瞬間的にゴムリップ部が変形したり、最悪の場合にはゴムリップ部が捲れ上がって、隙間が発生するおそれがあった。そうすると、水，塵埃等の異物が密封空間内部に徐々に侵入し、内部の部材（例えば転がり軸受）に悪影響を与え、最悪の場合には不具合を引き起こすおそれがあった。
そこで、本発明は、上記のような従来のシール装置が有する問題点を解決し、密封される空間の内部と外部との間に圧力差が生じることを防止し、密封空間内部への異物の侵入を抑制する密封性に優れたシール装置を提供することを課題とする。

前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明に係る請求項１のシール装置は、二つの空間の間に配置され、一方の空間を他方の空間から遮断して密封するシール装置において、前記二つの空間を連通する貫通孔を設け、気体は通過し液体は通過しない性質を有する通気材で前記貫通孔を塞いだことを特徴とする。
また、本発明に係る請求項２のシール装置は、請求項１に記載のシール装置において、密封を行うゴム材料組成物製のシール部材と、前記シール部材に一体的に接合され前記シール部材を補強する補強部材と、を備え、この補強部材に設けられた前記貫通孔が多孔質な前記通気材で塞がれていることを特徴とする。

さらに、本発明に係る請求項３のシール装置は、請求項１又は請求項２に記載のシール装置において、前記通気材をポリテトラフルオロエチレン製のフィルムとしたことを特徴とする。
さらに、本発明に係る請求項４のシール装置は、請求項３に記載のシール装置において、前記ポリテトラフルオロエチレン製のフィルムは、延伸されたフィルムであるとともに、ポリテトラフルオロエチレンで構成された繊維状物の多数が集合又は連結することにより多孔質構造をなしており、前記繊維状物は、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体１質量部と、ポリフルオロアルキル基を有する含フッ素重合体０．０１質量部以上１００質量部以下と、からなる含フッ素重合体組成物で被覆されていることを特徴とする。

このような構成であれば、シール装置により密封される空間の内部と外部とが貫通孔により連通されているので、密封空間の内部と外部との間に圧力差が生じやすい環境下（例えば急激な温度変化が生じる場合）で使用されても、圧力差が生じにくい。よって、圧力差によりシール装置に変形が生じて隙間が発生するおそれがほとんどなく、優れた密封性が維持されるので、水，塵埃等の異物が密封空間内部に侵入したり、密封空間内部に封入された潤滑剤が外部に漏出したりすることが生じにくい。また、貫通孔は、気体は通過し液体は通過しない性質を有する通気材で塞がれているので、水，油等の液体や塵埃等の固形物が貫通孔を通じて密封空間内部に侵入することはない。

本発明のシール装置は、密封空間の内部と外部との間に圧力差が生じやすい環境下で使用されても、圧力差が生じにくく、優れた密封性を有している。

まず、本発明のシール装置に使用される通気材について説明する。通気材の種類は、気体は通過し液体は通過しない性質を有するものであれば、特に限定されるものではない。多孔質体が特に好ましいが、織布状のものや不織布状のものでもよい。また、その材質も特に限定されるものではなく、樹脂やセラミック等が好適である。
ここで、通気材として特に好ましく用いられる延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムについて詳細に説明する。延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムは、テトラフルオロエチレン（ＰＴＦＥ）のファインパウダーと成形助剤とを混合したペーストを成形し、得られた成形体から成形助剤を除去した後、高温，高速度で延伸し、さらに焼成することにより得られるものである。

一軸延伸の場合には、ノード（折畳み結晶）が延伸方向に対して直角に伸びる細い島状となっていて、このノード間を繋ぐようにすだれ状にフィブリル（折畳み結晶が延伸により解けて引き出された直鎖状の分子束）が延伸方向に配向している。これにより、フィブリル間又はフィブリルとノードとで画された空間が空孔を形成する微細な網目構造となっている。また、二軸延伸の場合には、フィブリルが放射状に広がり、フィブリルを繋ぐノードが島状に点在して、フィブリルとノードとで画された空間が多数存在するクモの巣状の微細な網目構造となっている。延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムは、一軸延伸及び二軸延伸のいずれの方法により製造されたものでも、通気材として使用することができる。

延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムが有する空孔の平均孔径は、延伸倍率により適宜設定できるが、０．１μｍ以上１５μｍ以下が好ましい。空孔の平均孔径が１５μｍを超えると、通気性は優れるものの、防水性が低下するおそれがある。また、空孔の平均孔径が０．１μｍ未満であると、空孔が小さすぎて、フィルムのような薄い膜厚のものを精度良く製造することが難しくなる上、製造時の延伸が不十分となるために安定した繊維配向が得られず、品質が安定しない。このような不都合を生じにくくするためには、平均孔径は０．５μｍ以上２μｍ以下がより好ましい。

また、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムの空孔率は、延伸倍率に応じて１０％以上９０％以下の範囲内で適宜設定できるが、フィルムの強度，耐久性等を考慮すると、３０％以上８５％以下の範囲が好ましい。
延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムは、前述したフィブリルとノード（両者は本発明の構成要件である繊維状物に相当する）が連結してなる微細な網目構造によって多孔質構造となっているが、このフィブリル及びノードの表面を、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体１質量部と、ポリフルオロアルキル基を有する含フッ素重合体０．０１質量部以上１００質量部以下と、からなる含フッ素重合体組成物で被覆すると、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムの耐水性，撥油性，及び耐油性が向上するため好ましい。

被覆材料として使用する含フッ素重合体組成物は、撥水撥油性に優れるポリフルオロアルキル基を有する含フッ素重合体と、造膜性に優れる含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体とを混合したものであるので、形成された被膜は耐久性及び撥水撥油性が優れたものとなり、よって延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムの耐久性及び撥水撥油性が向上する。

主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体としては、含フッ素脂肪族環構造を有するモノマーを重合して得られる重合体や、少なくとも２つの重合性二重結合を有する含フッ素モノマーを環化重合して得られる主鎖に環構造を有する重合体が好適である。含フッ素脂肪族環構造を有するモノマーを重合して得られる重合体の具体例としては、パーフルオロ（２，２−ジメチル−１，３−ジオキソール）等の含フッ素脂肪族環構造を有するモノマーの単独重合体や、該モノマーとテトラフルオロエチレン等のラジカル重合性モノマーとの共重合体などがあげられる。また、少なくとも２つの重合性二重結合を有する含フッ素モノマーを環化重合して得られる主鎖に環構造を有する重合体の具体例としては、パーフルオロ（アリルビニルエーテル），パーフルオロ（ブテニルビニルエーテル）等のモノマーの環化重合体や、該モノマーとテトラフルオロエチレン等のラジカル重合性モノマーとの共重合体などがあげられる。

含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体は、主鎖に環構造を有する重合体が好適であるが、繰返し単位中に環構造を２０モル％以上含有するものが、撥水撥油性及び機械的特性の面から好ましい。含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体の分子量は、極限粘度で０．０１ｄｌ／ｇ以上３．０ｄｌ／ｇ以下が好適である。極限粘度が０．０１ｄｌ／ｇ未満であると成膜性が劣り、３．０ｄｌ／ｇ超過であると溶媒への溶解度が悪くなり、浸漬処理による被覆処理が困難になる。

また、ポリフルオロアルキル基を有する含フッ素重合体としては、ポリフルオロアルキル基を有するα, β−不飽和単量体をラジカル重合した単独重合体や、前記ポリフルオロアルキル基を有するα, β−不飽和単量体とラジカル重合性の不飽和単量体との共重合体が好適である。ポリフルオロアルキル基を有するα, β−不飽和単量体は、ポリフルオロアルキル基が直接又は２価の結合基を介して重合性の不飽和基と結合した構造を有する。ポリフルオロアルキル基としては、通常の場合は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基やアルケニル基等の炭化水素基中の水素原子がフッ素原子に置換されたものがあげられるが、エーテル基を有する構造であってもよい。ポリフルオロアルキル基の炭素数は、通常の場合は１〜２０個であり、好ましくは４〜１６個である。

ポリフルオロアルキル基を有するα, β−不飽和単量体としては、重合性が良好であることから、アクリレート系の単量体及びメタアクリレート系の単量体が好適である。また、前述のラジカル重合性の不飽和単量体としては、２−エチルヘキシルメタアクリレート，ステアリルメタアクリレート，シクロヘキシルメタアクリレート，メタアクリルアミド，フッ化ビニル，ブタジエン等があげられる。

ポリフルオロアルキル基を有するα, β−不飽和単量体と前述のラジカル重合性の不飽和単量体との共重合においては、前者の割合が６０質量％以上であることが好ましく、８０質量％以上であることがより好ましい。
また、ポリフルオロアルキル基を有する含フッ素重合体の数平均分子量は、１０００以上１００００００以下が好ましく、溶媒への溶解性等を考慮すると１０００以上２０００００以下が特に好ましい。

さらに、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体とポリフルオロアルキル基を有する含フッ素重合体との割合は、通常の場合は、前者１質量部に対して後者を０．０１質量部以上１００質量部以下とすることが好ましい。後者が０．０１質量部未満であると、撥油性が不十分となる不都合があり、１００質量部超過であると造膜性が不十分で被膜の耐久性が低下するという不都合がある。このような不都合を生じにくくするためには、前者１質量部に対して後者を０．５質量部以上２０質量部以下とすることがより好ましい。

さらに、両者の混合物からなる含フッ素重合体組成物を、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムに被覆する際には、この含フッ素重合体組成物を溶解した溶液を、浸漬，噴霧等の方法により、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムに接触させるとよい。そうすれば、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムの通気性を損なうことなく被覆処理を行うことが可能である。溶液中の含フッ素重合体組成物の濃度は、通常の場合は０．０１〜５質量％程度であり、溶媒の種類はパーフルオロヘキサン等のフッ素系溶媒が好ましい。なお、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムに溶液を接触させた後に、風乾又は５０〜２００℃程度の温度で熱処理することにより溶媒を除去してもよい。

延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムに対して撥油性を付与する被覆材料としては、前述の含フッ素重合体組成物以外に、下記の非晶性フッ素樹脂があげられる。すなわち、主鎖に含フッ素脂肪族エーテル環構造を有する重合体であり、具体的には、パーフルオロ（アリルビニルエーテル）やパーフルオロ（ブテニルビニルエーテル）等のアルケニルビニルエーテルからなるモノマーを環化重合したり、又は、これらのモノマーとテトラフルオロエチレン，クロロトリフルオロエチレン，パーフルオロ（メチルビニルエーテル）等のラジカル重合性モノマーとを共重合することによって得られるものである。この非晶性フッ素樹脂は、基材との接着性を向上させるために、カルボキシル基等の官能基を末端等に導入したものが好ましい。

この非晶性フッ素樹脂は、パーフルオロ（２−ブチルテトラヒドロフラン）等のパーフルオロ溶媒に溶解する性質を有しているので、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムに被覆処理を施す際には、パーフルオロ溶媒に非晶性フッ素樹脂を１〜１０質量％程度の濃度で溶解させた溶液に、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムを浸漬し乾燥するとよい。

前述の含フッ素重合体組成物や非晶性フッ素樹脂の被膜の厚さは、溶液濃度に依存するので、所望の厚さが得られるように適宜濃度調整を行う。十分な撥油性を付与するためには、被膜の膜厚は０．０１μｍ以上１μｍ以下が好ましい。膜厚が０．０１μｍ未満の場合は、安定した厚さの被膜を成膜することが難しく、十分な撥油性を確保することが困難である。一方、膜厚が１μｍを超えても、撥油性はそれ以上向上しないばかりか、均一な厚さの被膜を成膜することが困難である。さらに、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムの通気性を阻害するおそれもある。このような不都合を生じにくくするためには、被膜の膜厚は０．１μｍ以上０．５μｍ以下がより好ましい。
なお、被膜と基材との接着性（密着性) を向上させるために、１００〜１２０℃程度で０．５〜２時間程度の熱処理を行ったり、基材にプライマー処理を行うとさらに好適である。

以下に、本発明に係るシール装置の実施の形態を詳細に説明する。
〔第一実施形態〕
本発明のシール装置を備える転がり軸受の一例である自動車用ハブユニットについて、図１，２を参照しながら説明する。
このハブユニットは、自動車の車輪を懸架装置に対し回転自在に支持するものである。静止側部材である外輪１は、その外周面に形成された取付部２によって懸架装置に支持固定され、自動車の使用時にも回転しない。このような外輪１の内径側には、回転側部材である内輪相当部材３が外輪１と同心に配されており、自動車の使用時に内輪相当部材３が回転するようになっている。この内輪相当部材３はハブ４と内輪５とで構成されており、ハブ４の外端部外周面には取付フランジ７が形成されていて、この取付フランジ７に車輪が固定されるようになっている。なお、第一実施形態においては、説明の便宜上、ハブユニットを車両に取り付けた状態において、車両の幅方向外側（図１，２においては左側）を向いた端部を「外端」と称し、車両の幅方向中央側（図１，２においては右側）を向いた端部を「内端」と称する。

また、外輪１の内周面には複列の外輪軌道８，８が形成され、ハブ４の中間部外周面及び内輪５の外周面には内輪軌道９，９が形成されている。そして、これら各外輪軌道８，８と内輪軌道９，９との間には、転動体１０，１０がそれぞれ複数個ずつ配置されていて、内輪相当部材３を回転自在としている。なお、各転動体１０，１０は、それぞれ保持器１１，１１により、転動自在に保持されている。また、図１の例では転動体１０として玉を使用しているが、重量が嵩む車両用のハブユニットの場合には、転動体としてテーパころを使用する場合もある。

さらに、外輪１の内端部内周面と内輪５の内端部外周面との間にシール装置１２が取り付けられ、外輪１の外端部内周面とハブ４の中間部外周面との間にシールリング１３が取り付けらている。そして、これらシール装置１２及びシールリング１３により、外輪１の内周面と内輪相当部材３の外周面との間に形成され各転動体１０，１０が配置された空間１４の両端開口部が塞がれている。

空間１４の外端開口部を塞ぐシールリング１３は、それぞれが円環状に形成された芯金２６及びシール部材２７からなる。このうち芯金２６は、低炭素鋼板等の金属板にプレス加工等の打ち抜き加工及び塑性加工を施すことにより、一体成形されている。また、シール部材２７は、ゴムのようなエラストマー等の弾性材により構成されている。このようなシール部材２７は、芯金２６を成形型のキャビティ内にセットした状態でモールド成形することにより、芯金２６に接合される。シール部材２７は、シール部材２７に設けた各シールリップ２８ａ，２８ｂ，２８ｃの先端縁を、それぞれハブ４の表面に直接摺接させることにより、空間１４の外端開口部を密封している。

一方、空間１４の内端開口部を塞ぐシール装置１２は、図２に示すように、それぞれが円環状に形成された芯金１５（本発明の構成要件である補強部材に相当する）及びシール部材１６からなるシールリング１７と、同じく円環状に形成されたスリンガ１８と、を備えている。
このうちスリンガ１８は、ステンレス鋼板等の優れた耐食性を有する金属板に、プレス加工等の打ち抜き加工及び塑性加工を施すことにより、一体成形されている。このようなスリンガ１８は、内輪５の内端部外周面に外嵌固定自在な内径側円筒部２１と、この内径側円筒部２１の内端縁（図２における右端縁）から径方向外方に折れ曲がった外側円輪部２２とを備えた断面Ｌ字形であり、全体が円環状となっている。

また、シールリング１７を構成する芯金１５は、低炭素鋼板等の金属板にプレス加工等の打ち抜き加工及び塑性加工を施すことにより、一体成形されている。なお、芯金１５は、樹脂材料やセラミックスで構成されたものでもよい。このような芯金１５は、外輪１の内端部内周面に内嵌固定自在な外径側円筒部１９と、この外径側円筒部１９の軸方向外端縁（図２における左端縁）から径方向内方に折れ曲がった内側円輪部２０とを備えた断面略Ｌ字形であり、全体が円環状となっている。

さらに、図２に示すように、芯金１５には例えば直径２ｍｍの貫通孔３０が設けられていて、貫通孔３０の内端側の開口が、前述の含フッ素重合体組成物による被覆処理が施された延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム３１（ジャパンゴアテックス株式会社製の商品名ゴアテックスオレオベントフィルターパッチタイプ）により塞がれている。この延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム３１は、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体１質量部と、ポリフルオロアルキル基を有する含フッ素重合体０．０１質量部以上１００質量部以下と、からなる含フッ素重合体組成物を被覆する被覆処理が施されたものである。なお、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム３１で、貫通孔３０の外端側の開口を塞いでもよいし、両側の開口を塞いでもよい。

この延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム３１は、その外周部に環状に塗布された粘着剤３２により芯金１５に接着されており、粘着剤３２が塗布されていない中心円部が貫通孔３０の開口を覆うように配されている。なお、粘着剤３２が塗布されていない中心円部の直径は２．５ｍｍ、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム３１の厚さは０．２５ｍｍ、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム３１が有する空孔の平均孔径は３μｍである。

さらに、芯金１５には予めフェノール系のゴム用加硫接着剤が焼き付けられており、未加硫のゴム（例えばニトリルゴム）と一緒に金型中で加硫接着することにより、ゴムからなるシール部材１６と芯金１５とが一体的に接合されている。この時、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム３１の外周部がゴムで覆われるようにすれば、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム３１の脱落が防止される。

シール部材１６は、外側，中間，内側の３本のシールリップ２３，２４，２５を備え、芯金１５にその基端部が固定されている。そして、空間１４の内外方向に関して、最も外側に位置する外側シールリップ２３の先端縁を、スリンガ１８の外側円輪部２２の内側面に摺接させ、中間シールリップ２４及び内側シールリップ２５の先端縁を、スリンガ１８の内径側円筒部２１の外周面に摺接させることにより、空間１４内からのグリースの漏洩を防止するとともに、外部から空間１４内に、水，泥水，油，塵挨等の異物が侵入することを防止している。

自動車の使用時には、自動車用ハブユニットが回転して発熱が生じ、シール装置１２及びシールリング１３で密封された空間１４と自動車用ハブユニットの外部空間との間に圧力差が生じやすいが、空間１４と自動車用ハブユニットの外部空間とは貫通孔３０により連通されていて、しかも延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム３１は通気性を有しているので、発熱が生じても圧力差は生じにくい。

よって、圧力差によりシール装置１２に変形が生じて隙間が発生するおそれがほとんどなく、優れた密封性が維持されるので、水，塵埃等の異物が空間１４に侵入したり、空間１４に封入された潤滑剤が外部空間に漏出したりすることが生じにくい。また、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム３１は、通気性は有しているものの液体は通過しない性質を有しているので、水，油等の液体や塵埃等の固形物が貫通孔３０を通じて空間１４に侵入することはない。したがって、自動車用ハブユニットは、耐久性等の各種性能が優れている。

〔第二実施形態〕
本発明のシール装置を備える転がり軸受が組み込まれたウォータポンプについて、図３と図３のＡ部を拡大して示した図４とを参照しながら説明する。なお、第二実施形態におけるシール装置の構成及び作用・効果のうち、前述の第一実施形態と同様の部分については、その説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
図３のウォータポンプ１０１は、自動車用エンジンの冷却水を循環するためのものである。なお、図３は、このウォータポンプ１０１と、冷却水の放熱を行なうラジエータに送風するための冷却ファン１０２とを、単一の回転軸１０３により回転駆動する駆動機構を示している。

ウォータポンプ１０１の回転軸１０３は、軸受ユニット１０４により回転自在に支持されている。すなわち、回転軸１０３は、ウォータポンプ１０１のハウジング１０５に支持された軸受ユニット１０４によって、その中間部を回転自在に支持されている。また、回転軸１０３の端部のうちハウジング１０５内に位置する端部（図３における右端部）には、インペラ１０６が取り付けられ、同じくハウジング１０５外に位置する端部（図３における左端部）には、従動プーリ１０７が取り付けられている。そして、この従動プーリ１０７と、図示しないクランクシャフトの端部に固定された駆動プーリとの間に無端ベルト１０８を掛け渡して、エンジンの運転時に回転軸１０３が回転駆動されるようになっている。

また、従動プーリ１０７を回転軸１０３の端部に固定するための内側ハブ１０９に、転がり軸受１１０及び流体継手１１１を介して冷却ファン１０２が支持されている。一方、回転軸１０３の一部でインペラ１０６と軸受ユニット１０４との間の部分と、ハウジング１０５との間には、ハウジング１０５内を流通する冷却水が軸受ユニット１０４側に入り込むことを防止するメカニカルシール１１２が設けられており、さらに、メカニカルシール１１２を越えて軸受ユニット１０４側に侵入した冷却水が軸受ユニット１０４内に侵入することを防止すべく、軸受ユニット１０４のインペラ側（図３，４における右側）開口部に、図４に示すようなシール装置１１３が設けられている。

このシール装置１１３は、それぞれが円環状に形成された芯金１１５（本発明の構成要件である補強部材に相当する）とシール部材１１６とからなるシールリング１１７と、同じく円環状に形成されたスリンガ１１８と、を備えている。
このうちのスリンガ１１８は、前述の第一実施形態で説明したスリンガ１８と同様に、ステンレス鋼板やステンレス鋼板に耐食メッキを施したもの、又は冷間圧延鋼板に耐食メッキを施したもの等、水，油，泥水等による腐食に対して優れた耐食性を有する金属板により構成されている。このようなスリンガ１１８は、回転側部材である回転軸１０３の外周面に外嵌固定自在な内径側円筒部１２１と、この内径側円筒部１２１のインペラ側端縁（図４における右端縁）から直径方向外方に折れ曲がった外側円輪部１２２と、この外側円輪部１２２の外端縁から軸方向反インペラ側（図４における左方）にほぼ直角に折れ曲がった第二の内径側円筒部１２６とを備えた断面略Ｕ字形であり、全体が円環状となっている。

また、シールリング１１７を構成する芯金１１５は、低炭素鋼板等の金属板にプレス加工等の打ち抜き加工及び塑性加工を施すことにより、円環状に形成されている。なお、芯金１１５は、樹脂材料やセラミックスで構成されたものでもよい。この芯金１１５には、第一実施形態の場合と同様に貫通孔１３０が設けられていて、貫通孔１３０のインペラ側の開口が、第一実施形態の場合と同様に粘着剤１３２で接着された延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム１３１により塞がれている。さらに、芯金１１５には、第一実施形態の場合と同様に、予めフェノール系のゴム用加硫接着剤が焼き付けられており、未加硫のゴム（例えばニトリルゴム）と一緒に金型中で加硫接着することにより、ゴムからなるシール部材１１６と芯金１１５とが一体的に接合されている。この時、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム１３１の外周部がゴムで覆われるようにすれば、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム１３１の脱落が防止される。

このようなシール部材１１６は、軸受ユニット１０４を構成する静止側部材である外輪１１９の端部内周面に全周にわたって設けられた係止溝１１９ａに、その外周縁を全周にわたって隙間なく係止されている。そして、シール部材１１６は、２本の外側シールリップ１２３，１２４及び１本の内側シールリップ１２５を備えており、３本のシールリップ１２３，１２４，１２５のうちの第二の外側シールリップ１２４及び内側シールリップ１２５を、スリンガ１１８の内径側円筒部１２１及び回転軸１０３の外周面に摺接させるとともに、第一の外側シールリップ１２３を第二の内径側円筒部１２６の外周面に摺接させている。

〔第三実施形態〕
本発明のシール装置を備える転がり軸受が組み込まれたエアコンディショナ用電磁クラッチについて、図５，６を参照しながら説明する。なお、第三実施形態におけるシール装置の構成及び作用・効果のうち、前述した第一実施形態と同様の部分については、その説明を省略し、異なる部分のみ説明する。

図５のエアコンディショナ用電磁クラッチは、エアコンディショナ用コンプレッサ２０１に装着され、図示しないエンジンの動力をコンプレッサ２０１の駆動軸２０２に伝達するようになっている。すなわち、コンプレッサ２０１の駆動軸２０２を覆うようにコンプレッサ２０１のハウジングから突出する円筒部２０３には、複列アンギャラ玉軸受２１０を介して電磁クラッチプーリ２０５が回転可能に支持されており、エンジンの動力がクランクプーリ及びベルト（共に図示せず）を介して電磁クラッチプーリ２０５に伝達されるようになっている。そして、電磁クラッチプーリ２０５の端部に配された摩擦板２０６を電磁コイル２０７の電磁力で電磁クラッチプーリ２０５に吸着させることにより、伝達されたエンジンの動力はコンプレッサ２０１に伝達され、該コンプレッサ２０１が駆動されるようになっている。

このようなエアコンディショナ用電磁クラッチに組み込まれた複列アンギャラ玉軸受２１０には、軸受内部空間を密封するシール装置２１２が装着されている。図６は、複列アンギャラ玉軸受２１０の片列のみを拡大して示した拡大断面図である。このシール装置２１２の構成は、転がり軸受に一般的に使用される接触形のゴムシール装置とほぼ同様であり、補強部材である芯金２１５とゴム材料組成物からなるシール部材２１６とで構成されているが、前述の第一及び第二実施形態の場合と同様に、芯金２１５には貫通孔２３０が設けられ、その開口が延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム２３１で塞がれている。

よって、エアコンディショナ用電磁クラッチの使用により発熱が生じて、複列アンギャラ玉軸受２１０の軸受内部空間と外部との間に圧力差が生じやすい状況になっても、圧力差は生じにくく、優れた密封性が維持される。
なお、前述の各実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではない。例えば、第一〜第三実施形態においては、貫通孔の開口を通気材で覆うことにより貫通孔を塞いだが、貫通孔内の一部又は全体に通気材を充填することにより貫通孔を塞いでもよい。また、第一〜第三実施形態においては、通気材はフィルム状であったが、シート状等の他の形状でもよい。

〔密封性試験について〕
図６に示す複列アンギュラ玉軸受（内径３５ｍｍ，外径４５ｍｍ，幅２０ｍｍ）を用い、電磁クラッチでの使用環境を想定して静止注水試験を行った。すなわち、１００℃で１時間軸受を加熱した後に、２０℃の水を注水量５００ｍｌ／ｍｉｎで５分間シール部に吹き付けて軸受を急冷するという、軸受内部空間が負圧になるよりも厳しい条件で試験を行った。そして、軸受内部への水の侵入量を、試験後の軸受の質量増加量により測定し、この質量増加量によりシール装置の密封性を評価した。なお、シール装置のシールリップ（シール部材）は、アクリルゴムで構成した。

図６に示す複列アンギュラ玉軸受は、シール装置に貫通孔が設けてあり、この貫通孔が延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムで塞がれているので、貫通孔を空気が通過することができる（水は通過しない）。よって、前述の試験において急冷されても、圧力が調整されて軸受内部空間が負圧とならないため、シールリップの瞬間的な捲れ上がりが生じることはなく、軸受内部空間への水の侵入は全く起こらなかった。

これに対して、一般的なシール装置（すなわち貫通孔を有していないシール装置）が装着されていることを除いては、図６に示す複列アンギュラ玉軸受と全く同じ構成の複列アンギュラ玉軸受を用いて前述と同様の静止注水試験を行ったところ、急冷された時点で軸受内部空間が負圧となり、シールリップの瞬間的な捲れ上がりが生じて、軸受内部空間へ水が僅かに（２０ｍｇ）侵入した。

本発明のシール装置は、転がり軸受用シール装置やオイルシールとして好適であり、特に、車両ホイール用転がり軸受や電磁クラッチ用転がり軸受等に使用可能である。

自動車用ハブユニットの構造を示す断面図である。図１の自動車用ハブユニットに組み込まれたシール装置の拡大断面図である。ウォータポンプの構造を示す断面図である。図３のウォータポンプに組み込まれたシール装置の拡大断面図である。エアコンディショナ用電磁クラッチの構造を示す断面図である。図５のエアコンディショナ用電磁クラッチに組み込まれた複列アンギャラ玉軸受の拡大断面図である。

符号の説明

１２，１１３，２１２シール装置
１４空間
１５，１１５，２１５芯金
１６，１１６，２１６シール部材
３０，１３０，２３０貫通孔
３１，１３１，２３１延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルム

Claims

二つの空間の間に配置され、一方の空間を他方の空間から遮断して密封するシール装置において、前記二つの空間を連通する貫通孔を設け、気体は通過し液体は通過しない性質を有する通気材で前記貫通孔を塞いだことを特徴とするシール装置。
密封を行うゴム材料組成物製のシール部材と、前記シール部材に一体的に接合され前記シール部材を補強する補強部材と、を備え、この補強部材に設けられた前記貫通孔が多孔質な前記通気材で塞がれていることを特徴とする請求項１に記載のシール装置。
前記通気材をポリテトラフルオロエチレン製のフィルムとしたことを特徴とする請求項１又は請求項２に記載のシール装置。
前記ポリテトラフルオロエチレン製のフィルムは、延伸されたフィルムであるとともに、ポリテトラフルオロエチレンで構成された繊維状物の多数が集合又は連結することにより多孔質構造をなしており、前記繊維状物は、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体１質量部と、ポリフルオロアルキル基を有する含フッ素重合体０．０１質量部以上１００質量部以下と、からなる含フッ素重合体組成物で被覆されていることを特徴とする請求項３に記載のシール装置。