JP2005116038A - 相変化型光記録媒体、その製造方法及びそれに用いる保護層形成用スパッタリングターゲット - Google Patents
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Abstract
【課題】光特性と耐候性の良好な膜特性を有する保護層を形成してなる高速記録に好適でかつ耐候性の良好な相変化型光記録媒体、その保護層を工業的に十分な成膜速度で形成する製造方法及びそれに用いる保護層形成用スパッタリングターゲットを提供する。
【解決手段】透明基板上に、保護層、記録層、保護層および反射層を順次積層してなる相変化型光記録媒体であって、前記記録層と反射層との間に形成される保護層は、非晶質の酸化タンタル、非晶質の酸化ニオブ及びガラス質を含む混合体からなり、混合体中のガラス質の含有量は10〜30モル%であり、かつ可視光領域で透明性であることを特徴とする相変化型光記録媒体などによって提供。
【選択図】なし
【解決手段】透明基板上に、保護層、記録層、保護層および反射層を順次積層してなる相変化型光記録媒体であって、前記記録層と反射層との間に形成される保護層は、非晶質の酸化タンタル、非晶質の酸化ニオブ及びガラス質を含む混合体からなり、混合体中のガラス質の含有量は10〜30モル%であり、かつ可視光領域で透明性であることを特徴とする相変化型光記録媒体などによって提供。
【選択図】なし
Description
本発明は、相変化型光記録媒体、その製造方法及びそれに用いる保護層形成用スパッタリングターゲットに関し、さらに詳しくは、光特性と耐候性の良好な膜特性を有する保護層を形成してなる高速記録に好適でかつ耐候性の良好な相変化型光記録媒体、その保護層を工業的に十分な成膜速度で形成する製造方法及びそれに用いる保護層形成用スパッタリングターゲットに関する。
近年、相変化型光記録媒体は書き換え可能な光記録ディスクとして、盛んに研究開発がなされており、書き換え可能なDVDに応用されている。相変化型光記録媒体は、単層記録膜で光変調オーバーライトが可能であり、相変化に伴う反射率の変化により信号を読み取るので、CD−ROM等の既存の光ディスクとの互換性が高い等の特徴を有する。
相変化型光記録媒体は、透明基板上に、保護層、記録層、保護層及び反射層が順次積層され、構成される。ここで、情報の記録および消去は、前記記録層の可逆的な相変化、例えば、結晶とアモルファス(非晶質)間の相変化によって行なわれる。すなわち、レーザービーム等を照射することによって、記録層に結晶相と非晶質相の相変化を生じさせる。一般に、相変化は、レーザービームの強弱にともなう記録層の温度変化を利用して行なわれる。レーザの強い時に、非晶質相の記録マークを形成し、弱い時に結晶相を形成することによって記録を行ない、結晶相と非晶質相との反射率の差を検出することによって再生信号を得る。ここで、非晶質相を形成する際には、レーザ光照射により溶解した記録層が臨界結晶化速度よりも速く冷却されることが必要となる。また、結晶相を形成する際には、非晶質相が融点以下の温度で結晶化することが必要である。
このように、相変化型光記録媒体では、非晶質化及び結晶化に際して、記録層の最高温度と温度変化率を制御することが重要である。そのために、相変化型光記録媒体を構成する各層の熱伝導率と熱容量を最適化することが不可欠である。また、前記光記録媒体を用いて高速記録を行うためには、記録層を急熱急冷構造にすることが重要であり、そのためには、反射層を高熱伝導率化することが望まれている。
従来、高熱伝導率を有する反射層材料としてAgが用いられており、また、相変化型光記録媒体の保護層としては、屈折率が高く可視光領域で吸収が小さく透明な膜特性が求められ、通常、[ZnS+SiO2](ZnSとSiO2の混合物)層等のZnS系の硫化物を含む層が使われている(例えば、特許文献1参照)。そのため、反射層のAgが硫化され、光反射率が低下するという問題があった。この解決策として、Agの耐硫化性を向上させるため、Agに希土類元素を添加する提案(例えば、特許文献2参照)がある。ところが、耐硫化性が改善される程度まで希土類元素を添加すると、熱伝導率及び反射率の低下などの問題が生じ、高熱伝導率かつ高反射率であるAgの反射層として性能が失われる。
また、ZnS系以外の保護層としては、相変化型光記録ディスクより以前に実用化されている光記録光磁気ディスクでは、SiNX、Ta2O5等の窒化物または酸化物が検討されていた。例えば、光磁気ディスクへTa2O5−Nb2O5系酸化物(例えば、特許文献3参照)が提案されている。しかしながら、保護層の成膜法として一般に用いられるスパッタリング法で酸化物を成膜すると、ZnS系よりも成膜速度が遅く、生産効率が悪くなるという問題があった。
一方、光用に用いられる高屈折率の透明膜として、Ta、Nb、Mo、W、Zr及びHfからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物、又はNb2O5−SiO2を還元処理して導電性を持たせたターゲットを用いて、RF(高周波)スパッタリングよりも成膜速度の大きいDC(直流)スパッタリングで成膜する方法(例えば、特許文献4または5参照)が提案されている。しかしながら、化学量論的組成より酸素が不足しているスパッタリングターゲットを用いて、透明な酸化物層を成膜する際には、スパッタリングガス中に酸素を添加して反応性スパッタリングを行うが、酸素を添加するほど成膜速度が低下してしまい、DCスパッタリングでの成膜速度向上の効果が薄れて成膜速度が遅く、生産性が悪いという問題点があった。また、SiNXは、記録層が相変化する500℃から600℃の温度で安定でないので相変化型光記録媒体の保護層には使用できない。
以上の状況から、光特性が良好な、すなわち屈折率が高く、可視光領域で吸収が小さく透明で、かつ硫化物による反射層の特性劣化を起こさない耐候性の良好な膜特性を有し、さらに高い成膜速度で形成できる保護層を形成してなる相変化型光記録媒体が望まれていた。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、光特性と耐候性の良好な膜特性を有する保護層を形成してなる高速記録に好適でかつ耐候性の良好な相変化型光記録媒体、その保護層を工業的に十分な成膜速度で形成する製造方法及びそれに用いる保護層形成用スパッタリングターゲットを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、相変化型光記録媒体において記録層と反射層の間に形成される保護層について、鋭意研究を重ねた結果、該保護層として、特定の組成の酸化物保護層を形成したところ、光特性と耐候性の良好な膜特性を有すること、また特定の条件で成膜したところ、工業的に十分な成膜速度が得られること、さらに、これを用いた相変化型光記録媒体は高速記録に好適でかつ耐候性が良好であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、透明基板上に、保護層、記録層、保護層および反射層を順次積層してなる相変化型光記録媒体であって、
前記記録層と反射層との間に形成される保護層は、非晶質の酸化タンタル、非晶質の酸化ニオブ及びガラス質を含む混合体からなり、混合体中のガラス質の含有量は10〜30モル%であり、かつ可視光領域で透明性であることを特徴とする相変化型光記録媒体が提供される。
前記記録層と反射層との間に形成される保護層は、非晶質の酸化タンタル、非晶質の酸化ニオブ及びガラス質を含む混合体からなり、混合体中のガラス質の含有量は10〜30モル%であり、かつ可視光領域で透明性であることを特徴とする相変化型光記録媒体が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記記録層と反射層の間に形成される保護層の屈折率は、2.1〜2.3であること特徴とする相変化型光記録媒体が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、前記ガラス質は、二酸化ケイ素及び/又は一酸化ケイ素であることを特徴とする相変化型光記録媒体が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3いずれかの発明において、前記反射層は、Ag単独、又はそれにPd、Cu、Au、Nd及びBiからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を0.5モル%以下の濃度で添加したAg合金から形成されることを特徴とする相変化型光記録媒体が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、透明基板上に保護層、記録層、保護層および反射層を順次積層して相変化型光記録媒体を製造する方法であって、
前記記録層と反射層の間に保護層を形成するに当たり、酸化タンタル、酸化ニオブ及びガラス質を含むターゲットを用い、かつ0.003〜0.010Paの酸素分圧下でスパッタリングすることを特徴する相変化型光記録媒体の製造方法が提供される。
前記記録層と反射層の間に保護層を形成するに当たり、酸化タンタル、酸化ニオブ及びガラス質を含むターゲットを用い、かつ0.003〜0.010Paの酸素分圧下でスパッタリングすることを特徴する相変化型光記録媒体の製造方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、酸化タンタル、酸化ニオブ及びガラス質を含む混合焼結体からなることを特徴とする第5の発明の製造方法に用いられる保護層形成用スパッタリングターゲットが提供される。
本発明の相変化型光記録媒体は、光特性と耐候性の良好な膜特性を有する酸化物保護層を形成してなる高速記録に好適でかつ耐候性の良好な光記録媒体であり、その製造方法は、酸化物保護層を工業的に十分な成膜速度で形成することができ、さらに保護層形成用スパッタリングターゲットはそれに好適に用いることができるターゲットであり、その工業的価値は極めて大きい。
以下、本発明の相変化型光記録媒体、その製造方法及びそれに用いる保護層形成用スパッタリングターゲットを詳細に説明する。
本発明の相変化型光記録媒体は、透明基板上に、保護層、記録層、保護層および反射層を順次積層してなる相変化型光記録媒体であって、前記記録層と反射層との間に形成される保護層は、非晶質の酸化タンタル、非晶質の酸化ニオブ及びガラス質を含む混合体からなり、混合体中のガラス質の含有量は10〜30モル%であり、かつ可視光領域で透明性である。
本発明の相変化型光記録媒体において、前記記録層と反射層との間に形成される保護層が、非晶質の酸化タンタル(Ta2O5)、非晶質の酸化ニオブ(Nb2O5)及びガラス質を含む3種の化合物の混合体であることが重要な意義を持つ。これによって、光特性が良好な、すなわち屈折率が高く、可視光領域で吸収が小さく透明で、かつ硫化物による特性劣化のない耐候性の良好な膜特性を有し、さらに工業的に十分な成膜速度で形成される酸化物保護層が得られる。
一般に、記録層と反射層の間に形成される保護層としては、干渉特性と薄膜厚化のために屈折率が2.0以上が好ましく、2.2以上がより好ましいが、上記非晶質の酸化タンタル、非晶質の酸化ニオブ及びガラス質を含む混合体で所望の屈折率が達成される。
これに対して、従来の酸化物保護層では、屈折率、透明性又は成膜速度のいずれかに問題がある。例えば、非晶質の酸化ニオブ層をスパッタリング法で成膜した場合、スパッタリング中の酸素分圧が0.003〜0.010Paであるとき得られる膜の屈折率は2.3以上となる。これは、膜組成としてNb2O5とNbOの混合物が形成されためと思われる。しかしながら、前記酸素分圧が、0.003Pa未満では可視光領域で光吸収率が増加するので好ましくない。前記酸素分圧が、0.010Paを超えると、屈折率は2.1〜2.2になるが成膜速度が低下するので好ましくない。
また、例えば、非晶質の酸化タンタル層をスパッタリング法で成膜した場合、非晶質の酸化タンタル層の屈折率は2.1〜2.2で、その酸素分圧依存性は小さい。しかしながら、熱容量が高く、記録消去に要するレーザパワーが増加するので好ましくない。
また、非晶質の酸化ニオブと非晶質の酸化タンタルを同時にスパッタリング法で成膜した場合、得られる非晶質の酸化ニオブと非晶質の酸化タンタルからなる酸化物保護層は、耐候性が改善され、また、非晶質の酸化タンタル含有量が30モル%以下では熱容量の増加が抑えられる。
また、非晶質の酸化ニオブと非晶質の酸化タンタルを同時にスパッタリング法で成膜した場合、得られる非晶質の酸化ニオブと非晶質の酸化タンタルからなる酸化物保護層は、耐候性が改善され、また、非晶質の酸化タンタル含有量が30モル%以下では熱容量の増加が抑えられる。
しかしながら、成膜速度を上げるためRFスパッタリングでパワーを増加させて、投入パワーを3W/cm2以上まで大きくすると、得られる膜の透過率が低下する問題が生じる。すなわち、非晶質の酸化タンタルと非晶質の酸化ニオブは、スパッタリング中にプラズマで還元されやすいので、得られる膜組成が化学量論的組成より酸素が不足して透明性が低下するためである。
本発明の相変化型光記録媒体において記録層と反射層の間に形成される保護層のガラス質の含有量は、非晶質の酸化タンタル、非晶質の酸化ニオブ及びガラス質を含む混合体の10〜30モル%であり、10〜25モル%がより好ましい。すなわち、前記含有量が10モル%未満では、膜の透過率の向上が小さい。一方、前記含有量が30モル%を超えると、膜の屈折率が2.1未満に低下する。
上記ガラス質の材質は、特に限定されるものではなく、膜の透過率を高めることができるガラス質が用いられるが、この中で、特に二酸化ケイ素(SiO2)及び/又は一酸化ケイ素(SiO)が好ましい。
上記保護層の膜厚は、特に限定されるものではなく、多層膜の光学的設計から50〜150nmが好ましく、70〜120nmがより好ましい。
上記保護層の膜厚は、特に限定されるものではなく、多層膜の光学的設計から50〜150nmが好ましく、70〜120nmがより好ましい。
以上より明らかなように、本発明の相変化型光記録媒体に設けられる記録層と反射層の間に形成される保護層は、非晶質の酸化タンタル、非晶質の酸化ニオブ及びガラス質を含む混合体からなり、屈折率が2.1〜2.3で、可視光領域で吸収がほとんどなく透明で、かつ硫化物による反射層の特性劣化を起こさない耐候性の良好な保護膜である。
上記相変化型光記録媒体で用いる透明基板としては、特に限定されるものではなく、ガラス板、プラスチックフィルム等の絶縁性基板が用いられるが、特に、加工性、光学特性等から溝付ポリカーボネイト基板が好ましい。
上記相変化型光記録媒体で用いる透明基板表面上の保護層としては、特に限定されるものではなく、一般的に用いられる[ZnS+SiO2]膜が形成される。この膜厚は、特に限定されるものではなく、例えば、50〜150nmの間で、相変化型光記録媒体の光学的な干渉が最適になるように選ばれる。すなわち、膜厚が50nm未満では、ポリカーボネイト基板を使用した場合に熱的な劣化及び長期保管での記録層の劣化が起こりやすくなる。一方、膜厚が150nmを超えると、成膜時間が長くなり生産性が落ちる。
上記相変化型光記録媒体で用いる記録層としては、特に限定されるものではなく、相変化材料が用いられるが、この中で、用途に応じて、AgInSbTe系、GeSbTe系、GaSb系などが用いられる。この膜厚は、特に限定されるものではなく、100〜500nmが好ましい。すなわち、膜厚が100nm未満では、反射率が低くなりすぎて信号強度が不足する。一方、膜厚が500nmを超えると、記録消去に要するレーザ出力が大きくなりすぎるためコスト高となる。
上記相変化型光記録媒体で用いる反射層としては、特に限定されるものではなく、Al、Al合金、Au、Ag又はPd、Cu、Au、Nd及びBiからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むAg合金が用いられるが、この中で、特に、相変化型光記録媒体を急熱急冷構造とするために熱伝導率が高い材料であるAg又は添加元素の濃度が0.5モル%以下であるAg合金が選ばれる。これによって、高速記録に好適な相変化型光記録媒体が得られる。この膜厚は、特に限定されるものではなく、50〜150nmが好ましい。すなわち、膜厚が50nm未満では、厚みが薄いため平面方向の熱伝導が不十分で、レーザ照射後の急冷効果が小さく信号マーク(非晶質相)の形成が難しい。一方、膜厚が150nmを超えると、熱伝導が大きくなりすぎて記録感度が低下して記録できなくなる。
以上より明らかなように、上記相変化型光記録媒体の耐候性は、上記酸化物保護層を用いることで大きく上昇するので、反射率の経時変化が小さくなる。また、さらに上記組成の反射層を用いることで、高速記録に好適である。
本発明の相変化型光記録媒体の製造方法は、透明基板上に保護層、記録層、保護層および反射層を順次積層して相変化型光記録媒体を形成する方法において、前記記録層と反射層の間に保護層を形成するに当たり、酸化タンタル、酸化ニオブ及びガラス質を含むターゲットを用い、かつ0.003〜0.010Paの酸素分圧下でスパッタリングする方法である。これによって、硫化物による反射層の特性劣化のない酸化物保護層を工業的に十分な成膜速度で形成することができる。
すなわち、酸素分圧が0.003〜0.010Paでスパッタリングすることで、従来の[ZnS+SiO2]層を形成する場合の30%程度の工業的に十分な成膜速度が確保できる。なお、酸素分圧が0.003Pa未満では、得られた酸化物保護層の可視光領域での光吸収率が増加し透明性が低下する。一方、酸素分圧が0.010Paを超えると、成膜速度が低下し生産性が落ちる。
上記製造方法で酸化物保護層を形成する際に用いるスパッタリング装置としては、特に限定されるものではなく、RFスパッタリング装置が用いられる。上記スパッタリング方法は、特に限定されるものではないが、例えば、酸化タンタル、酸化ニオブ及びガラス質を含むターゲットを前記スパッタリング装置に取り付けた後、装置内を真空処理し所定の酸素分圧とアルゴンガス分圧の真空中でスパッタリングして、基板上に既に積層された記録層の表面上に保護膜を所定の膜厚で成膜する。
上記製造方法で用いる、酸化タンタル、酸化ニオブ及びガラス質を含むターゲットとしては、特に限定されるものではなく、所定の組成の酸化物保護層が形成することができる酸化物が用いられるが、この中で、特に、酸化タンタル、酸化ニオブ及びガラス質を上記酸化物保護層の組成に調製して得られる混合焼結体が好ましい。
前記混合焼結体の製造方法としては、特に限定されるものではなく、酸化物粉末を原料として焼結体を製造する種々の方法が用いられるが、この中で、特に、所望の密度及び強度を有する焼結体を得るため、ホットプレス(高温高圧プレス)法が好ましい。ホットプレス法としては、例えば、市販のTa2O5粉末、Nb2O5粉末及びSiO2粉末を所定の組成割合に配合された原料を、蒸留水を分散剤として粉砕装置で混合し乾燥した後、ホットプレス用型に充填し、ホットプレス装置を用いて、真空下所定温度と所定圧力で焼結を行う。
前記ホットプレスに用いる原料粉末の粒度は、特に限定されるものではなく、レーザ散乱法(マイクロトラック X100)による平均粒径0.5〜30μmが好ましい。また、その条件は、特に限定されるものではなく、温度としては、800〜1300℃、また、圧力としては、15〜50MPaが好ましい。得られた焼結体から所定の寸法に機械加工され、ターゲットが得られる。さらに、ターゲットは割れの防止のため、銅製のバッキングプレートにメタルボンディングされて用いられる。
以上より明らかなように、上記相変化型光記録媒体の製造方法によって酸化物保護層を形成することで、屈折率が2.1〜2.3と高く、可視光領域で透明な保護層を工業的に十分な成膜速度で作成することができる。
また、上記製造方法において、透明基板上に保護層、記録層、保護層及び反射層を順次積層する方法としては、特に限定されるものではなく、各層をスパッタリング法で順次行う方法が好ましい。前記透明基板上の保護層、記録層及び反射層の形成に用いるスパッタリング装置としては、特に限定されるものではなく、RFスパッタリング装置、DCスパッタリング装置等が用いられる。
前記スパッタリング法としては、特に限定されるものではなく、例えば、所定の膜組成を形成することができるターゲットを前記スパッタリング装置に取り付けた後、装置内を真空処理し所定の雰囲気下でスパッタリングして、所定の膜厚で成膜することで行える。
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた金属の分析方法、及び酸化物保護層の屈折率と光学的吸収率の評価方法は、以下の通りである。
(1)金属の分析:ICP発光分析法で行った。
(2)酸化物保護層の屈折率の測定:エリプソメーター(溝尻光学製)を用いて、波長633nmの光で行った。
(3)酸化物保護層の光学的吸収率の評価:膜の透過率と反射率を分光光度計(島津製作所製 UV−4000)を用いて波長250〜1000nmの間で測定した。
(4)成膜速度の評価:所定時間での膜厚を触針式の表面粗さ計(東京精密製 SURFCOM)を用いて測定し算出した。
(1)金属の分析:ICP発光分析法で行った。
(2)酸化物保護層の屈折率の測定:エリプソメーター(溝尻光学製)を用いて、波長633nmの光で行った。
(3)酸化物保護層の光学的吸収率の評価:膜の透過率と反射率を分光光度計(島津製作所製 UV−4000)を用いて波長250〜1000nmの間で測定した。
(4)成膜速度の評価:所定時間での膜厚を触針式の表面粗さ計(東京精密製 SURFCOM)を用いて測定し算出した。
また、実施例及び比較例では、下記の原料配合によって作製したターゲットを用いた。
[ターゲットの原料配合]
A:Nb2O5粉末60モル%、Ta2O5粉末20モル%、SiO2粉末20モル%
B:Nb2O5粉末65モル%、Ta2O5粉末25モル%、SiO2粉末10モル%
C:Nb2O5粉末70モル%、Ta2O5粉末7モル%、SiO2粉末23モル%
D:Nb2O5粉末35モル%、Ta2O5粉末50モル%、SiO2粉末15モル%
E:Nb2O5粉末53モル%、Ta2O5粉末7モル%、SiO2粉末40モル%
F:Nb2O5粉末70モル%、Ta2O5粉末30モル%
G:ZnS粉末にSiO2粉末を30モル%配合。
なお、Nb2O5粉末は多木化学製(平均粒径3μm)、Ta2O5粉末は多木化学製(平均粒径0.8μm)、SiO2粉末は旭ガラス製(商品名SILDEX−H121、平均粒径12μm)、及びZnS粉末は堺化学製(平均粒径0.75μm)のそれぞれ市販品を用いた。
[ターゲットの原料配合]
A:Nb2O5粉末60モル%、Ta2O5粉末20モル%、SiO2粉末20モル%
B:Nb2O5粉末65モル%、Ta2O5粉末25モル%、SiO2粉末10モル%
C:Nb2O5粉末70モル%、Ta2O5粉末7モル%、SiO2粉末23モル%
D:Nb2O5粉末35モル%、Ta2O5粉末50モル%、SiO2粉末15モル%
E:Nb2O5粉末53モル%、Ta2O5粉末7モル%、SiO2粉末40モル%
F:Nb2O5粉末70モル%、Ta2O5粉末30モル%
G:ZnS粉末にSiO2粉末を30モル%配合。
なお、Nb2O5粉末は多木化学製(平均粒径3μm)、Ta2O5粉末は多木化学製(平均粒径0.8μm)、SiO2粉末は旭ガラス製(商品名SILDEX−H121、平均粒径12μm)、及びZnS粉末は堺化学製(平均粒径0.75μm)のそれぞれ市販品を用いた。
(実施例1)
所定組成のターゲットを作製し、これを用いて成膜を行い、その後得られた酸化物膜の膜特性を評価した。
(1)ターゲットの作製
上記原料配合Aの割合で原料を配合し、蒸留水を分散剤としてボールミルで混合後、乾燥した。次に、この乾燥物をカーボン製のホットプレス用型に充填し、ホットプレス装置中で真空下1000℃にて1時間保持して焼結した。このときのホットプレス圧力は200kg/cm2(19.6MPa)であった。このとき得られた焼結体の密度は3.46g/cm3であった。
得られた焼結体を直径102mm、厚さ5mmの寸法に機械加工し、ターゲットを作製した。ターゲットは銅製のバッキングプレートにボンディングした。
所定組成のターゲットを作製し、これを用いて成膜を行い、その後得られた酸化物膜の膜特性を評価した。
(1)ターゲットの作製
上記原料配合Aの割合で原料を配合し、蒸留水を分散剤としてボールミルで混合後、乾燥した。次に、この乾燥物をカーボン製のホットプレス用型に充填し、ホットプレス装置中で真空下1000℃にて1時間保持して焼結した。このときのホットプレス圧力は200kg/cm2(19.6MPa)であった。このとき得られた焼結体の密度は3.46g/cm3であった。
得られた焼結体を直径102mm、厚さ5mmの寸法に機械加工し、ターゲットを作製した。ターゲットは銅製のバッキングプレートにボンディングした。
(2)成膜
つぎに、前記ターゲットをマグネトロンRFスパッタリング装置(アネルバ製 SPF210H)に取り付けて、成膜を行った。スパッタリング条件としては、投入電力が250W(3.2W/cm2)、到達真空度が8×10−4Pa、酸素分圧を0.005Paとして残りはアルゴンを入れてスパッタリング全圧力が0.12Paであった。
基板として、スライドガラス(MATUNAMI製 S−1111)を用い、基板に対しての意図的な加熱は行わなかった。なお、得られる酸化物膜の膜厚が約100nmとなるまで成膜を行った。
つぎに、前記ターゲットをマグネトロンRFスパッタリング装置(アネルバ製 SPF210H)に取り付けて、成膜を行った。スパッタリング条件としては、投入電力が250W(3.2W/cm2)、到達真空度が8×10−4Pa、酸素分圧を0.005Paとして残りはアルゴンを入れてスパッタリング全圧力が0.12Paであった。
基板として、スライドガラス(MATUNAMI製 S−1111)を用い、基板に対しての意図的な加熱は行わなかった。なお、得られる酸化物膜の膜厚が約100nmとなるまで成膜を行った。
(3)酸化物膜の評価
その後、得られた酸化物膜の屈折率、光学的吸収率、及び成膜速度を求めた。結果を表1に示す。なお、成膜速度は、ZnSにSiO2を30モル%配合して得られたターゲットを用いて、酸素を添加しないでスパッタリングを行った以外は上記と同様に行って得られた成膜速度を1として相対値で表す。
その後、得られた酸化物膜の屈折率、光学的吸収率、及び成膜速度を求めた。結果を表1に示す。なお、成膜速度は、ZnSにSiO2を30モル%配合して得られたターゲットを用いて、酸素を添加しないでスパッタリングを行った以外は上記と同様に行って得られた成膜速度を1として相対値で表す。
(実施例2)
ターゲットの作製において原料の配合を上記原料配合Bの割合とした以外は実施例1と同様に行い、得られた酸化物膜の屈折率、光学的吸収率、及び成膜速度を求めた。結果を表1に示す。
ターゲットの作製において原料の配合を上記原料配合Bの割合とした以外は実施例1と同様に行い、得られた酸化物膜の屈折率、光学的吸収率、及び成膜速度を求めた。結果を表1に示す。
(実施例3)
ターゲットの作製において原料の配合を上記原料配合Cの割合とした以外は実施例1と同様に行い、得られた酸化物膜の屈折率、光学的吸収率、及び成膜速度を求めた。結果を表1に示す。
ターゲットの作製において原料の配合を上記原料配合Cの割合とした以外は実施例1と同様に行い、得られた酸化物膜の屈折率、光学的吸収率、及び成膜速度を求めた。結果を表1に示す。
(実施例4)
ターゲットの作製において原料の配合を上記原料配合Dの割合とした以外は実施例1と同様に行い、得られた酸化物膜の屈折率、光学的吸収率、及び成膜速度を求めた。結果を表1に示す。
ターゲットの作製において原料の配合を上記原料配合Dの割合とした以外は実施例1と同様に行い、得られた酸化物膜の屈折率、光学的吸収率、及び成膜速度を求めた。結果を表1に示す。
(比較例1)
ターゲットの作製において原料の配合を上記原料配合Eの割合とした以外は実施例1と同様に行い、得られた酸化物膜の屈折率、光学的吸収率、及び成膜速度を求めた。結果を表1に示す。
ターゲットの作製において原料の配合を上記原料配合Eの割合とした以外は実施例1と同様に行い、得られた酸化物膜の屈折率、光学的吸収率、及び成膜速度を求めた。結果を表1に示す。
(比較例2)
ターゲットの作製において原料の配合を上記原料配合Fの割合とした以外は実施例1と同様に行い、得られた酸化物膜の屈折率、光学的吸収率、及び成膜速度を求めた。結果を表1に示す。
ターゲットの作製において原料の配合を上記原料配合Fの割合とした以外は実施例1と同様に行い、得られた酸化物膜の屈折率、光学的吸収率、及び成膜速度を求めた。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜4では、保護層とその形成方法が本発明に従っているので、光特性の良好な膜特性を有し、かつ工業的に十分な成膜速度で形成することができる酸化物保護層であることが分かる。すなわち、相変化型光記録媒体の記録層と反射層との間に形成される保護層として好適であることが分かる。これに対して、比較例1又は2では、保護層の組成がこれらの条件に合わないため、保護層の屈折率又は光学的吸収率のいずれかに満足すべき結果が得られないものであることが分かる。
(比較例3〜6)
成膜においてスパッタリングの酸素分圧を0.001Pa未満にしたこと以外は、それぞれ実施例1〜4と同様に行い、得られた酸化物膜の光学的吸収率を求めた。結果を表2に示す。
成膜においてスパッタリングの酸素分圧を0.001Pa未満にしたこと以外は、それぞれ実施例1〜4と同様に行い、得られた酸化物膜の光学的吸収率を求めた。結果を表2に示す。
表2から明らかなように、比較例3〜6では、成膜においてスパッタリングの酸素分圧が低いので、保護膜は800nm付近からの吸収が増加することが分かる。
(実施例5〜8)
耐候性評価として特に反射層と保護層との反応による性能劣化を評価するため、完全なバリア層としてガラスを用いて、その上に所定組成の反射層を成膜しさらに所定組成の保護層を成膜して得られた試料を用いて耐候性試験を行った。
まず、マグネトロンRFスパッタリング装置(アネルバ製 SPF210H)に直径102mmのAgターゲット取り付けて、スライドガラス(MATUNAMI製 S−1111)上に膜厚100nmに成膜して反射層を作成した。次に、上記原料配合A、B、C、Dの酸化物保護層用スパッタリングターゲットを取り付けて、この表面上に膜厚100nmに保護層を成膜した。その後、得られた試料を恒温恒湿槽に入れて、温度80℃、湿度80%の条件で500時間保持して、保持前後の反射率を測定し保持後の反射率から保持前の反射率を引いた差を求めた。結果を表3に示す。
耐候性評価として特に反射層と保護層との反応による性能劣化を評価するため、完全なバリア層としてガラスを用いて、その上に所定組成の反射層を成膜しさらに所定組成の保護層を成膜して得られた試料を用いて耐候性試験を行った。
まず、マグネトロンRFスパッタリング装置(アネルバ製 SPF210H)に直径102mmのAgターゲット取り付けて、スライドガラス(MATUNAMI製 S−1111)上に膜厚100nmに成膜して反射層を作成した。次に、上記原料配合A、B、C、Dの酸化物保護層用スパッタリングターゲットを取り付けて、この表面上に膜厚100nmに保護層を成膜した。その後、得られた試料を恒温恒湿槽に入れて、温度80℃、湿度80%の条件で500時間保持して、保持前後の反射率を測定し保持後の反射率から保持前の反射率を引いた差を求めた。結果を表3に示す。
(実施例9〜12)
反射層の成膜において濃度0.1モル%AuのAg合金ターゲットを用いた以外は、それぞれ実施例5〜8と同様に行い、その後、恒温恒湿保持前後の反射率を測定しその差を求めた。結果を表3に示す。
反射層の成膜において濃度0.1モル%AuのAg合金ターゲットを用いた以外は、それぞれ実施例5〜8と同様に行い、その後、恒温恒湿保持前後の反射率を測定しその差を求めた。結果を表3に示す。
(実施例13〜16)
反射層の成膜において濃度0.1モル%PdのAg合金ターゲットを用いた以外は、それぞれ実施例5〜8と同様に行い、その後、恒温恒湿保持前後の反射率を測定しその差を求めた。結果を表3に示す。
反射層の成膜において濃度0.1モル%PdのAg合金ターゲットを用いた以外は、それぞれ実施例5〜8と同様に行い、その後、恒温恒湿保持前後の反射率を測定しその差を求めた。結果を表3に示す。
(比較例7)
保護層として原料配合Gのターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例5と同様に行い、その後、恒温恒湿保持の前後の反射率を測定し、その差を求めた。結果を表3に示す。
保護層として原料配合Gのターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例5と同様に行い、その後、恒温恒湿保持の前後の反射率を測定し、その差を求めた。結果を表3に示す。
(比較例8)
保護層として原料配合Gのターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例9と同様に行い、その後、恒温恒湿保持の前後の反射率を測定し、その差を求めた。結果を表3に示す。
保護層として原料配合Gのターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例9と同様に行い、その後、恒温恒湿保持の前後の反射率を測定し、その差を求めた。結果を表3に示す。
(比較例9)
保護層として原料配合Gのターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例13と同様に行い、その後、恒温恒湿保持の前後の反射率を測定し、その差を求めた。結果を表3に示す。
保護層として原料配合Gのターゲットを用いて成膜したこと以外は、実施例13と同様に行い、その後、恒温恒湿保持の前後の反射率を測定し、その差を求めた。結果を表3に示す。
表3から明らかなように、実施例5〜16では、Ag又は所定組成のAg合金の反射膜を形成し、かつ保護層が本発明に従っているとき、反射率の低下は0.5%以下と小さいことが分かる。すなわち、相変化型光記録媒体の記録層と反射層との間に形成される保護層、また反射層として好適であることが分かる。これに対して、比較例7〜9では、保護膜がこれらの条件に合わないため、反射率の低下が大きく耐候性に劣り、満足すべき結果が得られないことが分かる。
Claims (6)
- 透明基板上に、保護層、記録層、保護層および反射層を順次積層してなる相変化型光記録媒体であって、
前記記録層と反射層との間に形成される保護層は、非晶質の酸化タンタル、非晶質の酸化ニオブ及びガラス質を含む混合体からなり、混合体中のガラス質の含有量は10〜30モル%であり、かつ可視光領域で透明性であることを特徴とする相変化型光記録媒体。 - 前記記録層と反射層の間に形成される保護層の屈折率は、2.1〜2.3であること特徴とする請求項1に記載の相変化型光記録媒体。
- 前記ガラス質は、二酸化ケイ素及び/又は一酸化ケイ素であることを特徴とする請求項1に記載の相変化型光記録媒体。
- 前記反射層は、Ag単独、又はそれにPd、Cu、Au、Nd及びBiからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を0.5モル%以下の濃度で添加したAg合金から形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の相変化型光記録媒体。
- 透明基板上に保護層、記録層、保護層および反射層を順次積層して相変化型光記録媒体を製造する方法であって、
前記記録層と反射層の間に保護層を形成するに当たり、酸化タンタル、酸化ニオブ及びガラス質を含むターゲットを用い、かつ0.003〜0.010Paの酸素分圧下でスパッタリングすることを特徴する相変化型光記録媒体の製造方法。 - 酸化タンタル、酸化ニオブ及びガラス質を含む混合焼結体からなることを特徴とする、請求項5に記載の製造方法に用いられる保護層形成用スパッタリングターゲット。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003347745A JP2005116038A (ja) | 2003-10-07 | 2003-10-07 | 相変化型光記録媒体、その製造方法及びそれに用いる保護層形成用スパッタリングターゲット |
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2003
- 2003-10-07 JP JP2003347745A patent/JP2005116038A/ja active Pending
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