JP2005089328A - Dna合成酵素及びdnaトポイソメラーゼ阻害性組成物 - Google Patents

Dna合成酵素及びdnaトポイソメラーゼ阻害性組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】DNA合成酵素阻害性及びDNAトポイソメラーゼ阻害性を介した癌細胞の増殖能の抑制により、腫瘍及び免疫疾患の領域において治療効果をもたらす、DNA合成酵素阻害性組成物及びDNAトポイソメラーゼ阻害性組成物を利用した医薬組成物を提供すること。
【解決手段】ポリコ酸A (化合物1)、ポリコ酸B (化合物2)、ポリコ酸G (化合物3)、ポリコ酸H (化合物4)、デヒドロエブリコン酸 (化合物5)、ツムロシン酸 (化合物6)、デヒドロツムロシン酸 (化合物7)及び3−エピデヒドロツムロシン酸(化合物8)からなる群から選んだ少なくとも1種のトリテルペン化合物を有効成分とすることを特徴とする、DNA合成酵素及びDNAトポイソメラーゼ阻害性組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、DNA合成酵素及びDNAトポイソメラーゼ阻害性組成物に関する。ここに、DNA合成酵素及びDNAトポイソメラーゼ阻害性組成物というのは、DNA合成酵素阻害性及びDNAトポイソメラーゼ阻害性を併せ有する組成物のことである。さらに詳しくは、本発明は、DNA合成酵素阻害作用とりわけα、β型DNA合成酵素阻害作用及びDNAトポイソメラーゼ阻害作用とりわけII型DNAトポイソメラーゼ阻害作用を併せて有し、癌、エイズ治療剤及び免疫抑制剤等として有用な組成物に関する。
DNA合成酵素群及びDNAトポイソメラーゼ群が細胞の増殖、***、分化等に関与していることは、すでに知られている。そこで、DNA合成酵素及びDNAトポイソメラーゼ阻害性組成物は、例えば癌の場合には癌細胞の増殖抑制作用、エイズの場合にはHIV由来逆転写酵素に対する阻害作用、さらに免疫抑制作用の場合には抗原に対する特異的抗体産生抑制作用を有すると考えられている。このため、DNA合成酵素及びDNAトポイソメラーゼ阻害性組成物には、癌、エイズ及び免疫疾患の、治療効果のある医薬組成物の開発が期待される。
DNA合成酵素阻害群は、癌やエイズ等の疾病や、免疫担当細胞による抗体産生等において重要な要因の一つであることが報告されている(例えば、特許文献1参照。)。DNA合成酵素阻害性組成物としては、ジデオキシTTP(ddTTP)、N−メチルマレイミド、ブチルフェニル−dGTP等が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。また、植物由来の糖脂質であるスルホキノボシルアシルグリセリドにも、DNA合成酵素阻害作用が見出されている(例えば、特許文献2参照。)。DNAトポイソメラーゼは、DNAの複製、転写、組換え等、あらゆるDNA代謝に関わる重要な酵素であり、その阻害性組成物は、ヒト癌の治療において、イリノテカン、エトポシド等多くの重要な抗癌剤として使用されている。
特開平11-106395号公報 特開平2000-143516号公報 Annual Rev. Biochem.、60巻、513頁(1991)
本発明の課題は、DNA合成酵素及びDNAトポイソメラーゼ阻害性を介した癌細胞の増殖能の抑制により、腫瘍及び免疫疾患の領域において治療効果をもたらす、DNA合成酵素及びDNAトポイソメラーゼ阻害性組成物を利用した医薬組成物を提供することである。
本発明の医薬組成物は、癌及びエイズの治癒作用、また臓器移植時の免疫抑制作用をねらいとして利用するものであれば、それを使用する上で何ら制限を受けることなく適用されるが、とりわけ抗癌剤、抗ウイルス剤及び免疫抑制剤として有効である。また、これら疾患の予防のためにも使用することができる。
本発明者等は、ポリコ酸A (以下、「化合物1」ということがある。)、ポリコ酸B (以下、「化合物2」ということがある。)、ポリコ酸G (以下、「化合物3」ということがある。)、ポリコ酸H (以下、「化合物4」ということがある。)、デヒドロエブリコン酸 (以下、「化合物5」ということがある。)、ツムロシン酸 (以下、「化合物6」ということがある。)、デヒドロツムロシン酸 (以下、「化合物7」ということがある。)及び3−エピデヒドロツムロシン酸(以下、「化合物8」ということがある。)からなる群から選んだ少なくとも1種のトリテルペン化合物を有効成分とする、DNA合成酵素及びDNAトポイソメラーゼ阻害性組成物が、前記課題の解決につながることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、癌及びエイズの治癒作用、また臓器移植時等の免疫抑制作用に極めて有用なDNA合成酵素及びDNAトポイソメラーゼ阻害性組成物が提供される。該当阻害性組成物は単独作用により、癌細胞を死滅させる機能を有する。また、本発明によれば、特に化合物5(デヒドロエブリコン酸)は癌、エイズ、免疫疾患に対する治療のための医薬組成物として活用され得る。
本発明に係るDNA合成酵素及びDNAトポイソメラーゼ阻害性組成物の有効成分、ポリコ酸A (化合物1)、ポリコ酸B (化合物2)、ポリコ酸G (化合物3)、ポリコ酸H (化合物4)、デヒドロエブリコン酸 (化合物5)、ツムロシン酸 (化合物6)、デヒドロツムロシン酸 (化合物7)及び3−エピデヒドロツムロシン酸(化合物8)は、図1に示した構造式で表される。これらの化合物は、以下に述べるような方法により、茯苓、好ましくは茯苓皮より効率よく抽出されるものである。
このDNA合成酵素及びDNAトポイソメラーゼ阻害性組成物は、例えば、茯苓若しくは茯苓皮から、メタノール等の水溶性溶媒を用いて抽出し、抽出物をクロロホルム等の非水系溶媒と水とで溶剤分別後、非水系溶媒画分、若しくは茯苓若しくは茯苓皮からクロロホルム等の非水系溶媒で直接抽出した抽出物から得ることができる。
本発明に係るDNA合成酵素及びDNAトポイソメラーゼ阻害性組成物の製造方法は、茯苓若しくは茯苓皮からメタノール等の水溶性溶媒を用いて抽出し、抽出物をクロロホルム等の非水系溶媒と水とで溶剤分別後、非水系溶媒画分、若しくは茯苓若しくは茯苓皮からクロロホルム等の非水系溶媒で直接抽出した抽出物から、DNA合成酵素及びDNAトポイソメラーゼ阻害性組成物を得ることを特徴とする。
本発明者等が茯苓及び茯苓皮から単離・精製した化合物群は、前述のように、抗癌剤、抗ウイルス剤及び免疫抑制剤として医薬組成物等への応用が可能であり、その薬理上許容される塩についても同様に医薬組成物等への応用が可能である。
なお、本発明における「その薬理上許容される塩」の塩としては、フッ化水素酸塩、塩酸塩等のハロゲン化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、スルホン酸塩、有機酸塩、及び、アミノ酸塩が挙げられ、好適には塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩を挙げることができる。
医薬組成物としての利用には、本発明の化合物を医薬組成物開発過程におけるリード化合物として利用することも含まれる。なお、本発明の化合物を体内投与する際は経口投与よりも非経口投与が好ましく、またリポソーム等の運搬体に封入して投与することが好ましい。このとき癌細胞を特異的に認識する運搬体等を利用すれば、標的部位(病変部位)に本発明の化合物を効率よく運ぶことができ効果的である。
また、本発明の組成物は、医薬組成物への利用以外に、飲食品へ添加・配合することにより抗癌剤、抗ウイルス剤及び免疫抑制剤としての効果をもった健康食品として利用することも可能である。
次に、本発明の組成物として、医薬用組成物及び食用組成物について説明する。本発明の組成物からなる抗癌剤、抗ウイルス剤及び免疫抑制剤は、これをそのまま、あるいは慣用の医薬製剤担体とともに医薬用組成物となし、動物及びヒトに投与することができる。医薬用組成物の剤形は、特に制限されるものではなく、必要に応じて適宜選択すればよいが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の経口剤、注射剤、坐剤等の非経口剤が挙げられ、好適には非経口剤を挙げることができる。
錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤としての経口剤は、例えば、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を用いて常法に従って製造される。これら製剤中の配合量は、特に限定されるものではなく、適宜設計できる。この種の製剤には、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を適宜に含有させることができる。
ここに、結合剤としてデンプン、デキストリン、アラビアゴム末、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等を例示できる。崩壊剤としてはデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース等を例として挙げることができる。界面活性剤の例としてラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等を挙げることができる。滑沢剤では、タルク、ロウ類、水素添加植物油、蔗糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリエチレングリコール等を例示できる。流動性促進剤では、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等を例として挙げることができる。また、本発明の化合物は懸濁液、エマルション剤、シロップ剤、エリキシル剤としても投与することができ、これらの各種剤形には、矯味矯臭剤、着色剤を含有させてもよい。
非経口剤として、本発明の所望の効果を発現せしめるには、患者の年齢、体重、疾患の程度により異なるが、通常、成人で本発明の化合物の重量として1日あたり1〜60mgの静注、点滴静注、皮下注射、筋肉注射が適当である。この非経口投与剤は常法に従って製造され、希釈剤として一般に注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、ラッカセイ油、大豆油、トウモロコシ油、プロピレングリコール等を用いることができる。さらに必要に応じて、殺菌剤、防腐剤、安定剤を加えてもよい。また、この非経口剤は安定性の点から、バイアル等に充填後冷凍し、通常の凍結乾燥処理により水分を除き、使用直前に凍結乾燥物から液剤を再調製することもできる。さらに必要に応じて、等張化剤、安定剤、防腐剤、無痛化剤を加えてもよい。これら製剤中の本発明の化合物の配合量は特に限定されるものではなく任意に設定できる。その他の非経口剤の例として、外用液剤、軟膏等の塗布剤、直腸内投与のための坐剤等が挙げられ、これらも常法に従って製造される。
本発明の好適な態様としては、食用組成物も挙げられる。すなわち、化合物1〜8の少なくとも1種を、そのまま液状、ゲル状あるいは固形状の食品、例えばジュース、清涼飲料、茶、スープ、豆乳、サラダ油、ドレッシング、ヨーグルト、ゼリー、プリン、ふりかけ、育児用粉乳、ケーキミックス、粉末状または液状の乳製品、パン、クッキー等に添加したり、必要に応じてデキストリン、乳糖、澱粉等の賦形剤や香料、色素等とともにペレット、錠剤、顆粒等に加工したり、またゼラチン等で被覆してカプセルに成形加工して健康食品や栄養補助食品等として利用できる。
次に、実施例に基づき、本発明について詳細に説明する。
茯苓皮は中国・雲南省医薬保険品進出口公司より入手した。乾燥茯苓皮(1kg)を粉砕後抽出フラスコに入れ、水 (2 L)を加え、加熱還流下3時間抽出を行った。同様な抽出操作は全部で3回繰り返し行った。熱水抽出残渣は、続いてメタノール(2L)で加熱還流下3時間抽出を行った。このメタノール抽出は再度繰り返した。ロータリーエバポレーターを用いて抽出液からメタノールを留去し抽出エキスを得た(5.9 g)。エキス中に混在する水溶性多糖類を取り除くためにエキスを水(3L)に懸濁させ、クロロホルム(3L)で3回抽出を行った。得られたクロロホルム層は飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、続いて5%水酸化ナトリウム水溶液で抽出した。アルカリ水溶液抽出物は、6M塩酸でpHを3〜4に調整し、再度クロロホルムで抽出した。本操作により、炭酸水素ナトリウム抽出物からは画分I(85mg)、一方、水酸化ナトリウム抽出物からは画分II(108mg)を得た。
画分Iについて、分取逆層HPLC [カラム:Pegasil ODS (25cm x 内径10mm);溶離液:メタノール/水/酢酸(80:20:0.1);溶離液流速:1.8mL/分]を行い、化合物1(5.0mg;溶出保持時間46.5分)、化合物2(4.2mg;27.0分)、化合物3(3.3mg;50.8分)、化合物4(2.8mg;68.3分)、及び化合物7(2.1mg;33.0分)を得た。
一方、画分IIからは、同様な分取HPLCにより、化合物6(2.5mg;保持時間37.6分)、化合物7(6.3mg)、及び化合物8(2.9mg;67.3分)を単離した。
上記記載の乾燥茯苓皮(1kg)を粉砕後抽出フラスコに入れ、メタノール (3L)を加え、加熱還流下3時間抽出を行った。同様な抽出操作は全部で3回繰り返し行い、ロータリーエバポレーターを用いて抽出液からメタノールを留去し抽出エキスを得た(96g)。混在する水溶性多糖類を取り除くためにエキスをクロロホルム‐水系で溶剤分別を行った。得られたクロロホルム層は5%水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、中性クロロホルム層を得、溶媒を留去後中性のクロロホルム可溶画分(6.9g)を得た。
上記クロロホルム可溶画分はシリカゲル(200g)を担体とし、展開溶媒としてヘキサン/酢酸エチル(0:1 →1:0)を用いたカラムクロマトグラフィーによって9つの画分 (Fr.A 〜 Fr.I)に分画した。ヘキサン/酢酸エチル(7:3)で溶出した画分F(0.65g)はメタノールから結晶化を行い、メタノール不溶部(0.15g)と可溶部 (0.48g)を得た。次いで不溶部の分取HPLC [カラム:Pegasil ODS (25cm x 内径10mm);溶離液:メタノール/水(90:10);溶離液流速:2.0mL/分] を行い、化合物5(81mg;保持時間:32.5分)を得た。
DNA合成酵素阻害活性の検証
上記実施例で得た化合物1〜8のDNA合成酵素群に対する活性を以下の方法で測定した。DNA合成酵素として哺乳動物由来のDNA合成酵素α、βについて試験を行った。DNA合成酵素αは、牛胸腺から常法により抽出精製した標品を、DNA合成酵素βは、ラット由来の該当遺伝子を通常の遺伝子組み換え法により大腸菌に組み込み、生産させた標品を用いた。
これらのDNA合成酵素に対する化合物1〜8の阻害作用の測定には、一般的なDNA合成酵素反応系(日本生化学会編、新生化学実験講座2、核酸IV、東京化学同人、63頁〜66頁)を用いた。すなわち、放射性同位元素で標識した[3H]-TTPを含む系においてDNA合成反応を行い、放射比活性を生成物(合成DNA鎖)量の指標とするものである。
阻害率は、(a)コントロールでの合成DNA量、(b) 被検物質存在下での合成DNA量について、
(a - b) / a x 100 = 阻害率(%)
として評価した。得られた結果は50%阻害濃度(μM)として表1に示した。
(表1)
各化合物のDNA合成酵素阻害における50%阻害濃度(μM)

化合物 DNA合成酵素
α β
化合物1 112 >200
化合物2 83 180
化合物3 97.1 >200
化合物4 106 >200
化合物5 29.8 36.6
化合物6 94.0 167
化合物7 127 147
化合物8 112 138
表1に示したように、化合物1〜8の全てが哺乳動物のDNA合成酵素αを阻害した[50%阻害濃度(IC50)30〜127μM]。一方、化合物2、5〜8の5種の化合物がDNA合成酵素βを阻害した(IC5037〜180μM)。これらの内、デヒドロエブリコン酸(化合物5)のIC50は29.8μM(α)及び36.6μM(β)であり、最も高い阻害活性を示した。
DNA合成酵素αは複製型のDNA合成酵素であるため、癌細胞のような細胞***がさかんな細胞や組織に対してのみ本酵素活性が高い。従って、化合物1〜8、特に化合物5は抗癌剤としての作用を有することが期待される。DNA合成酵素には、このα型の他にβ型、γ型、δ型及びε型のものがあることが知られている。これらのDNA合成酵素のうち、δ型及びε型は、α型のものと生化学的類型にあると考えられている。ここで、生化学的類型とは、次のような酵素機能としての共通性を有することを指す。(1)特定の化合物に対する感受性の有無・・・例えばこれら3種のDNA合成酵素は共に、N−メチルマレイミド及びブチルフェニル−dGTPに対する感受性を持つが、ジデオキシTTP (ddTTP)に対する感受性を持たない。(2)忠実度(fidelity)・・・鋳型DNAに対するDNA合成の高い正確さを持つ。(3)反応の場・・・これら3種のDNA合成酵素は共に細胞***と連動するDNA複製に直接的に関与している。DNA合成酵素α型(δ型及びε型も生化学的類型として含む)は、一般に細胞周期に応じてDNA合成を司ると考えられている。従って、DNA合成酵素α(δ型及びε型も生化学的類型として含む)に対する阻害活性を有する化合物1〜8、特に化合物5は、連続的かつ急激に細胞増殖を生じている癌細胞に対する増殖抑制能を有し得るものと考えることができる。本発明者らは、これら8種の化合物はα型のDNA合成酵素の他に、δ型及びε型のDNA合成酵素に対する阻害活性も有すると考えている。
一方、DNA合成酵素βは、免疫反応のDNA再構成において抗原特異的に反応する抗体あるいはレセプター分子を作り出す根源に関与するとともに、変異による抗体の多様性に一定の役割を果たしているともいわれている。これらのことから、DNA合成酵素βは、免疫反応に密接に関与し、DNA合成酵素βを抑制することは、免疫反応の抑制につながると推測される。従って、化合物2、5〜8の5種の化合物、特に化合物5は免疫抑制剤としての作用を有することも期待される。
DNAトポイソメラーゼ阻害活性の検証
上記実施例で得た化合物1〜8のDNAトポイソメラーゼ群に対する活性を以下の方法で測定した。I型及びII型DNAトポイソメラーゼは組換えヒト由来の市販標品(TopoGEN Inc., USA)を用いた。
文献[水品ら, Biochem. J.、350巻、757(2002)]に記載の方法に従い、 I型DNAトポイソメラーゼ活性はカンプトテシン(camptothecin, CPT)を、II型DNAトポイソメラーゼはエトポシド(etoposide, VP-16)を陽性対照として、スーパーコイル(超ラセン, フォームI)を持った環状プラスミドDNAの弛緩(relaxation, フォームII)反応で酵素活性を測定した。反応後、反応液について平板アガロースゲル電気泳動を行い、ゲルを臭化エチジウム染色後、反応生成物のDNA量の変化から、50%阻害濃度 (IC50) を求めた。得られた結果を表2に示す。
(表2)
各化合物のDNAトポイソメラーゼ阻害における50%阻害濃度(μM)

化合物 DNAトポイソメラーゼ
I型 II型
化合物1 >200 >200
化合物2 >200 >200
化合物3 >200 >200
化合物4 >200 >200
化合物5 >200 4.6
化合物6 >200 >200
化合物7 >200 >200
化合物8 >200 >200
表2の結果より、化合物1〜8のうち、化合物5のみがII型のDNAトポイソメラーゼを阻害した。何れの化合物もI型のDNAトポイソメラーゼは阻害しなかった。化合物5の50%阻害濃度(IC50)はII型DNAトポイソメラーゼの方がDNA合成酵素群よりも低いことから、II型DNAトポイソメラーゼによる阻害効果の方がより有効であることが期待される。II型DNAトポイソメラーゼはDNAの二本鎖を切断・再結合させることによりねじれを解消させる、DNAのトポロジーを変化させる酵素である。細胞***の進行においてこのトポロジー変化は必須であることから、ヒトII型DNAトポイソメラーゼに対する阻害物質は、抗癌剤としての応用が期待できる。
細胞増殖阻害活性の検証
化合物1〜8の癌細胞増殖抑制効果を次の方法を用いて評価した。
本実験に用いた細胞は、ヒト胃癌由来NUGC-3細胞である。培地としてはRPMI1640培地(日水製薬(株)製)に、牛胎児血清10%(v/v)を添加したものを用いた。培養は、5%CO2インキュベーターにて37℃で行った。
上記に示した培地に、最終濃度が100μMになるように化合物1〜8を溶解した。ただしこれらの化合物は水に難溶であるため、一度DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解し、そのものを上記の培地に溶かした。なお、培地中の培地内に存在するDMSOの終濃度は、すべての試験区で1%以下になっており、本測定例で用いたNUGC-3細胞の増殖の抑制にDMSOが関わる可能性は否定できる状態である。
本試験のための培養は、96穴マイクロプレートで行った。各ウエルに3.0 x 105個の細胞を植え込み、1つの試験濃度に対し3ウエルずつ与えた。またポジティブコントロールとして培地に1%のDMSOを含むものを用いた。
化合物を添加後は、5%CO2インキュベーター内、37℃で24時間培養し、各試験区の細胞生存率の判定を行った。生存率の判定は、文献[「Rapid Colorimetric Assay for Cellular Growth and Surviva 1: Application to Proliferation and Cytotoxicity Assays」、Tim Mosmann, J. Immunol. Methods、65巻、55頁(1983)]に記載されているMTTアッセイ法を用いた。すなわち、上記24時間後テトラゾリウム塩MTTを添加し、更に4時間培養した。生細胞による還元を経て生産するホルマザン量を生細胞に比例するとみなし、570nmの光学密度(O.D.)で定量した。
細胞生存率は次の式により算出した。
細胞生存率(%) = 試験区のO.D. [570 nm] / 対照区のO.D. [570 nm]
得られた結果を図2に示す。なお図2に示すデータは3ウエルの平均値である。
化合物5のみ有意にNUGC-3細胞に対する増殖阻害を示した。そこで、0Mから100μMにおける化合物5のヒト胃癌細胞増殖抑制について調査した。得られた結果を図3に示す。なお、図3に示すデータは、3ウエルの平均値である。
化合物5は癌細胞の増殖を濃度依存的に阻害した。図3の結果から、化合物5の50%増殖阻害濃度(LD50)は38.4μMであった。
細胞死誘導活性の検証
化合物5の癌細胞死(アポトーシス)誘導活性結果を以下の方法を用いて評価した。
ヒト胃癌由来NUGC-3細胞を用いて前述と同じ方法で培養した。上記に示した方法で、化合物5をDMSOに溶解して最終濃度が38.4μMになるように癌細胞への添加を行った。アポトーシス誘導の判定は、文献[Herrmannら、Nucleic Acids Res., 22巻、5506(1994)]に記載されているアガロースゲル電気泳動法を用いた。すなわち、各時間後の細胞からDNAを抽出して、DNAの断片化を臭化エチジウムで染色することにより可視化した。
図4は、細胞死誘導活性の検証結果を示す。
図4の結果より、化合物5は添加後6時間でDNAの断片化が起こることから、アポトーシスを誘導することが分かった。
化合物1〜8の化学構造式を示す。 化合物1〜8のヒト胃癌細胞NUGC−3に対する細胞増殖阻害効果を示す図である。 化合物5のヒト胃癌細胞NUGC−3に対する細胞増殖阻害効果を示す図である。 細胞死誘導活性の検証結果を示す。

Claims (7)

  1. ポリコ酸A (化合物1)、ポリコ酸B (化合物2)、ポリコ酸G (化合物3)、ポリコ酸H (化合物4)、デヒドロエブリコン酸 (化合物5)、ツムロシン酸 (化合物6)、デヒドロツムロシン酸 (化合物7)及び3−エピデヒドロツムロシン酸(化合物8)からなる群から選んだ少なくとも1種のトリテルペン化合物を有効成分とすることを特徴とする、DNA合成酵素及びDNAトポイソメラーゼ阻害性組成物。
  2. デヒドロエブリコン酸 (化合物5)を有効成分とすることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
  3. ヒト胃癌細胞増殖抑制剤であることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
  4. 癌細胞死(アポトーシス)誘導剤であることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
  5. 茯苓若しくは茯苓皮から抽出されたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 茯苓及び茯苓皮をメタノール等の有機溶媒で抽出し、抽出物をクロロホルム等の水不溶性有機溶媒と水とで溶剤分別を行い、有機溶媒可溶性画分から、シリカゲルカラムクロマトグラフィー及び逆相HPLCを行うことにより得られることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
  7. 茯苓若しくは茯苓皮からメタノール等の水溶性溶媒を用いて抽出し、抽出物をクロロホルム等の非水系溶媒と水とで分別後、非水系溶媒画分、若しくは茯苓若しくは茯苓皮からクロロホルム等の非水系溶媒で直接抽出することを特徴とする、請求項5に記載の組成物の製造方法。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US20140065174A1 (en) * 2003-05-16 2014-03-06 Sinphar Pharmaceutical Co., Ltd. Pharmaceutical composition for enhanching immunity, and extract of poria
WO2017193900A1 (zh) * 2016-05-10 2017-11-16 杏辉天力(杭州)药业有限公司 茯苓皮部萃取物、茯苓新酸a、及茯苓新酸b于调节血糖的用途
CN114099489A (zh) * 2021-12-03 2022-03-01 武汉润歌生物科技有限公司 一种组合物在制备p38-MAPK信号通路激活剂中的应用

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