JP2005039407A - 分波器 - Google Patents
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Abstract
【課題】分波器の特性を向上させると共に回路設計の自由度を高める。
【解決手段】互いに異なる帯域中心周波数を有する複数の弾性表面波フィルタ12,13を積層基板21に実装すると共に、該フィルタ12,13同士のインピーダンスを整合させる整合回路を導体線路34により形成した分波器で、導体線路のうちの少なくとも一つの導体線路を、積層基板の複数の内層に亘って分割して形成し、該分割形成した導体線路の間に導体層35を設けた。導体層35をグランドに接続する。弾性表面波フィルタの下部領域の積層基板内に導体線路34を配し、該導体線路と弾性表面波フィルタとの間に導体層36を設ける。
【選択図】 図2A
【解決手段】互いに異なる帯域中心周波数を有する複数の弾性表面波フィルタ12,13を積層基板21に実装すると共に、該フィルタ12,13同士のインピーダンスを整合させる整合回路を導体線路34により形成した分波器で、導体線路のうちの少なくとも一つの導体線路を、積層基板の複数の内層に亘って分割して形成し、該分割形成した導体線路の間に導体層35を設けた。導体層35をグランドに接続する。弾性表面波フィルタの下部領域の積層基板内に導体線路34を配し、該導体線路と弾性表面波フィルタとの間に導体層36を設ける。
【選択図】 図2A
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は分波器に係り、特に携帯電話機等の小型移動体通信機器に好適な弾性表面波フィルタを用いた分波器デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
弾性表面波フィルタ(以下、SAWフィルタという)を用いた分波器デバイスは、小型・高機能化に適するため、携帯電話機を中心とした移動体通信機器に近年使用されており、その使用帯域は例えば800MHz〜1GHz帯、1.5〜2.0GHz帯、さらには2.0〜6.0GHz帯と多岐に亘っている。
【0003】
かかる分波器は、信号の送受信を行うRF部(高周波部)内の一構成部品であって一般に送信用フィルタと受信用フィルタとを備え、これら送・受信両フィルタのインピーダンスを整合させて送信信号と受信信号との干渉を防ぐための整合回路を有する。整合回路は、例えば各フィルタの中心周波数に対応した長さの導体線路により形成される。
【0004】
図8Aから図9は、従来のSAWフィルタを用いた分波器を示すものである。これらの図に示すように、この種の分波器は、積層基板1にSAWフィルタ2をワイヤボンディング実装(図8A,8B)あるいはフリップチップ実装し(図9)、基板内にインピーダンス整合回路用の導体線路4を複数層に亘って分割(4a,4b)して配置したパッケージモジュールとして構成される。整合回路用の線路を分割して設けるのは、分波器デバイスを小型化するためである。
【0005】
また、このような分波器を開示するものとして下記特許文献がある。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−320260号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2000−68785号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、整合回路用の導体線路を複数層に分割して設ける従来の構造では、デバイスの小型化は可能となるものの、上下に配置した線路間に容量結合が生じ、このため位相回転量が意図する設計値から外れ、あるいは十分な位相回転量が得られないという問題があった。
【0009】
一方、このような不都合を解消するため、前記特許文献1に記載の分波器デバイスでは、上下の線路パターンの形状を変えることにより(例えば一方を直線パターン、他方をミアンダパターンとする)、上下で線路が重なり合わないように線路を配置する。
【0010】
ところが、このように線路パターンを層間で異なるものとすることは、当該デバイスの製造工程を複雑にするだけでなく、デバイス設計上のルールを増やし、回路設計の自由度を損なう結果を招く。さらに、線路の形状パターンを変えただけでは、線路間の影響を完全に遮断することは難しい。特に、近時の携帯電話機等の薄型化に応えるには分波器デバイスを低背化する必要があり、線路間の影響はより顕著なものとなって所定のフィルタ特性(設計値通りの位相回転量)を安定して得ることは困難である。また、前記特許文献2もこのような問題を解決できる手段を開示するものではない。
【0011】
そこで本発明の目的は、分波器(特に整合回路用の導体線路を複数層に亘って分割形成するタイプの分波器)の特性をより一層向上させるとともに、回路設計の自由度を高めることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成して課題を解決するため、本発明に係る分波器(請求項1)は、互いに異なる帯域中心周波数を有する複数の弾性表面波フィルタを積層基板に実装するとともに、該複数の弾性表面波フィルタ同士のインピーダンスを整合させる整合回路を導体線路により形成した分波器であって、前記導体線路のうちの少なくとも一つの導体線路を、前記積層基板の複数の内層に亘って分割して形成し、該分割して形成した導体線路の間に導体層を設けたことを特徴とする。
【0013】
本発明の分波器では、基板複数層に亘って分割形成したインピーダンス整合回路の線路間に導体層を設けるが、この導体層が当該線路間に従来発生することがあった電磁的あるいは静電的結合を遮断し、上下線路パターン同士の影響を排除する。したがって、上下線路パターン間の容量結合に起因する位相回転量の減少を防ぎ、設計通りの安定したフィルタ特性を得ることが可能となる。
【0014】
また、上下層に導体線路を分割するときに、そのパターン形状を変えるよう考慮する必要がないから、設計ルール上の制約が生じることがなく、回路設計の自由度が高まる。したがって、本発明によれば、当該整合回路の導体線路を、前記従来の構造(図8A,図9)のように積層方向について同一のパターン形状で同位置に重なり合うよう配置することも出来るし、異なるパターン形状としても勿論構わない。また同時に、インピーダンス整合回路を複数層に分割するから、分波器を小型化することが可能となる。
【0015】
前記導体層は、上下線路間の遮断性を高めるため、グランドに接続することが好ましい(請求項2)。
【0016】
また、本発明の分波器では、弾性表面波フィルタの下部領域の積層基板内に前記導体線路を配し、該導体線路と弾性表面波フィルタとの間に導体層を設けることがある(請求項3)。
【0017】
弾性表面波フィルタの下部領域の積層基板内に前記導体線路を配することにより、当該分波器パッケージ内の実装密度を高め、当該デバイスのより一層の小型化を図ることが可能となる。また、導体線路と弾性表面波フィルタとの間に導体層を設けることで、これら導体線路と弾性表面波フィルタと間の電磁的・静電的結合を防ぎ、分波器の電気的特性を向上させることが出来る。
【0018】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の本発明の実施の形態および実施例の説明により明らかにする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1から図3は、本発明の一実施形態(以下、本実施形態という)に係る分波器を示すものである。図1に示すように、この分波器11は、2つの帯域通過フィルタ12,13と、1つのインピーダンス整合回路14とを備え、アンテナに接続される共通端子15と、外部端子に接続される入出力端子16,17とを有する。
【0021】
フィルタ12,13は、小型化および高機能化が可能なSAWフィルタ(弾性表面波フィルタ)を使用する。整合回路14は、これら2つのSAWフィルタ12,13間の干渉を防ぎ、所定のフィルタ特性を得るために共通端子15と一方のフィルタ13との間に挿入する。尚、整合回路14は、他方のフィルタ12と共通端子15との間、あるいは共通端子15と各フィルタ12,13との間にそれぞれ設けても良いが、分波器の小型化の観点から、本実施形態のように一方のフィルタと共通端子との間のみに設けることが望ましい。
【0022】
図2Aおよび図2Bは、本実施形態の分波器11の断面構造と導体線路の形成層をそれぞれ示すものである。これらの図に示すように、分波器11は、6層の積層基板21の表面(最上層)にSAWフィルタ12,13をワイヤボンディングにより実装し、このSAWフィルタ12,13をキャップ22で覆って封止したものである。基板21の下面(最下層)には、グランド電極23と外部端子に接続するための入出力端子24とを形成し、基板側面には、層間接続用のサイドキャステレーション25を設けてある。
【0023】
一方、基板内部には、インピーダンス整合回路14を構成する導体線路34を形成する。この導体線路34は、SAWフィルタ12,13の中心周波数に対応した所定の線路長を有し、上下2層に分割して形成してある。この上下層に分割して形成した整合回路の上側の線路部34aと下側の線路部34bとの間には、導体層35を配し、この導体層35を基板側面に設けたサイドキャステレーション25を通じて基板下面のグランド電極23と接続する。さらに、該上側線路部34aの上部(上側線路部34aとSAWフィルタ12,13との間)にも、同様に導体層36を設け、該導体層36もサイドキャステレーション25を介して基板下面のグランド電極23に接続する。尚、図2Bにおいて符号50は、SAWフィルタの下部領域を示す。
【0024】
これら導体層35,36によって、整合回路の上下導体線路34a,34b同士間、並びにSAWフィルタ12,13と整合回路用導体線路34との間の電磁的・静電的(容量的)結合を防ぐことが出来る。尚、各導体層35,36は、導電性を有する材料により構成すれば良く、例えば銅箔により形成することが可能である。また、基板21は、樹脂基板あるいはセラミック基板とすることができ、さらに、樹脂に無機フィラーを混入した複合材料(例えば樹脂に誘電体セラミック粉末を添加した高誘電率複合材料)によって形成した複合材料基板とすることも可能である。
【0025】
SAWフィルタ12,13は、基板21の表面にフリップチップ実装することも出来る。図3はこの例を示すもので、SAWフィルタ12,13をはんだバンプ26で基板最上層の配線パターンに接続することにより基板21にフリップチップ実装してある。尚、基板21の構造(整合回路用導体線路34および導体層35,36等)は、前記図2A,2Bに示す例と同様である。
【0026】
本実施形態の整合回路構造(上下2層に亘って分割した導体線路間に導体層を設けた場合)と、従来の整合回路構造(上下導体線路間に導体層がない場合)とを比較するシミュレーションを行った。
【0027】
図4は、該シミュレーションにおける本実施形態の線路構造を示すもので、上下2枚の導体層37,38の間に整合回路用の導体線路34a,34bを2層に分けて上下方向に重なるように設け、これら上下導体線路部34a,34bの間に導体層35を形成した。ここで、上部導体層37と上側線路部34aとの間の距離をL1、上下線路部間に設けた導体層35と上側線路部34aとの距離をL2、該導体層35と下側線路部34bとの距離をL3、下側線路部34bと下部導体層38との距離をL4とすると、L1=100μm、L2=L3=50μm、L4=100μmとした。また、上側線路部34aおよび下側線路部34bの幅wは共に70μmであり、基板の誘電率εrは4.7である。
【0028】
一方、図6は、比較対照としての従来の線路構造を示すものである。この構造は、上記本実施形態の線路構造と同様に上下2枚の導体層37,38の間に整合回路用の導体線路4a,4bを2層に分けて上下方向に重なるように設けたものであるが、両線路部4a,4bの間に導体層を設けていない。また、上部導体層37と上側線路部4aとの間の距離をL5、上側線路部4aと下側線路部4bとの距離をL6、下側線路部4bと下部導体層38との距離をL7とすると、L5=L6=L7=100μmであり、前記実施形態と同様に上下線路部4a,4bの幅wは共に70μm、基板の誘電率εrは4.7である。
【0029】
図5は上記本実施形態の線路構造(図4)によって得られる位相回転量を示すスミスチャートとデバイス通過特性を示す線図であり、図7は従来の線路構造(図6)による場合である。
【0030】
これらの図に示すように、位相回転量(660〜1060MHz帯)について、従来構造では123.6°の回転量しか得られないのに対して本実施形態の構造によれば、155.2°の位相回転量を得ることが可能となった。また、フィルタF1の通過帯域における減衰量が、従来構造では824MHzで−3.37dB、849MHzで−2.25dBであるのに対し、本実施形態の構造によれば824MHzで−2.46dB、849MHzで−1.91dBであり、フィルタ特性(相手側フィルタの通過帯域における減衰量)を改善することが出来る。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。例えば、前記実施形態では、インピーダンス整合回路を構成する導体線路34を2層に分けて形成したが、これを3層あるいはそれ以上の層に分けて形成することも可能である。この場合、各線路部間に導体層を配置して各線路部間の干渉を防止すれば良い。また、弾性表面波フィルタ(SAWフィルタ)についても、前記実施形態は2個のフィルタ12,13を備えるが、3個以上のフィルタを備えた分波器を構成しても良く、これらも本発明の範囲に含まれる。また、前記導体層35,36は、サイドキャステレーション25を介してグランド電極に接続を行ったが、スルーホールあるいはビアホールによって接続を行うようにしても構わない。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、分波器(特に整合回路用の導体線路を複数層に亘って分割形成する分波器)の特性をより一層向上させるとともに、回路設計の自由度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る分波器の一例を示すブロック図である。
【図2A】本発明に係る分波器の一例を示す断面図である。
【図2B】前記図2Aの分波器における基板の内層(導体線路の形成層)を示す平面図である。
【図3】本発明に係る分波器の別の例を示す断面図である。
【図4】本発明に係る分波器の整合回路における導体線路の配置例を示す図である。
【図5】(a)は前記図4の構造による位相回転量を示すスミスチャートであり、(b)はデバイス通過特性を示す線図である。
【図6】従来の分波器の整合回路における導体線路の配置例を示す図である。
【図7】(a)は前記図6の構造による位相回転量を示すスミスチャートであり、(b)はデバイス通過特性を示す線図である。
【図8A】従来の分波器の一例を示す断面図である。
【図8B】前記図8Aの分波器における基板の内層(導体線路の形成層)を示す平面図である。
【図9】従来の分波器の別の例を示す断面図である。
【符号の説明】
11 分波器
12,13 SAWフィルタ(弾性表面波フィルタ)
14 インピーダンス整合回路
15 アンテナ接続用共通端子
16,17,24 入出力端子
21 基板
22 封止用キャップ
23 グランド電極
25 サイドキャステレーション
4,34 整合回路用導体線路
4a,34a 整合回路の上側線路部
4b,34b 整合回路の下側線路部
35,36,37,38 導体層
50 SAWフィルタの下部領域
【発明の属する技術分野】
本発明は分波器に係り、特に携帯電話機等の小型移動体通信機器に好適な弾性表面波フィルタを用いた分波器デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
弾性表面波フィルタ(以下、SAWフィルタという)を用いた分波器デバイスは、小型・高機能化に適するため、携帯電話機を中心とした移動体通信機器に近年使用されており、その使用帯域は例えば800MHz〜1GHz帯、1.5〜2.0GHz帯、さらには2.0〜6.0GHz帯と多岐に亘っている。
【0003】
かかる分波器は、信号の送受信を行うRF部(高周波部)内の一構成部品であって一般に送信用フィルタと受信用フィルタとを備え、これら送・受信両フィルタのインピーダンスを整合させて送信信号と受信信号との干渉を防ぐための整合回路を有する。整合回路は、例えば各フィルタの中心周波数に対応した長さの導体線路により形成される。
【0004】
図8Aから図9は、従来のSAWフィルタを用いた分波器を示すものである。これらの図に示すように、この種の分波器は、積層基板1にSAWフィルタ2をワイヤボンディング実装(図8A,8B)あるいはフリップチップ実装し(図9)、基板内にインピーダンス整合回路用の導体線路4を複数層に亘って分割(4a,4b)して配置したパッケージモジュールとして構成される。整合回路用の線路を分割して設けるのは、分波器デバイスを小型化するためである。
【0005】
また、このような分波器を開示するものとして下記特許文献がある。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−320260号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2000−68785号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、整合回路用の導体線路を複数層に分割して設ける従来の構造では、デバイスの小型化は可能となるものの、上下に配置した線路間に容量結合が生じ、このため位相回転量が意図する設計値から外れ、あるいは十分な位相回転量が得られないという問題があった。
【0009】
一方、このような不都合を解消するため、前記特許文献1に記載の分波器デバイスでは、上下の線路パターンの形状を変えることにより(例えば一方を直線パターン、他方をミアンダパターンとする)、上下で線路が重なり合わないように線路を配置する。
【0010】
ところが、このように線路パターンを層間で異なるものとすることは、当該デバイスの製造工程を複雑にするだけでなく、デバイス設計上のルールを増やし、回路設計の自由度を損なう結果を招く。さらに、線路の形状パターンを変えただけでは、線路間の影響を完全に遮断することは難しい。特に、近時の携帯電話機等の薄型化に応えるには分波器デバイスを低背化する必要があり、線路間の影響はより顕著なものとなって所定のフィルタ特性(設計値通りの位相回転量)を安定して得ることは困難である。また、前記特許文献2もこのような問題を解決できる手段を開示するものではない。
【0011】
そこで本発明の目的は、分波器(特に整合回路用の導体線路を複数層に亘って分割形成するタイプの分波器)の特性をより一層向上させるとともに、回路設計の自由度を高めることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成して課題を解決するため、本発明に係る分波器(請求項1)は、互いに異なる帯域中心周波数を有する複数の弾性表面波フィルタを積層基板に実装するとともに、該複数の弾性表面波フィルタ同士のインピーダンスを整合させる整合回路を導体線路により形成した分波器であって、前記導体線路のうちの少なくとも一つの導体線路を、前記積層基板の複数の内層に亘って分割して形成し、該分割して形成した導体線路の間に導体層を設けたことを特徴とする。
【0013】
本発明の分波器では、基板複数層に亘って分割形成したインピーダンス整合回路の線路間に導体層を設けるが、この導体層が当該線路間に従来発生することがあった電磁的あるいは静電的結合を遮断し、上下線路パターン同士の影響を排除する。したがって、上下線路パターン間の容量結合に起因する位相回転量の減少を防ぎ、設計通りの安定したフィルタ特性を得ることが可能となる。
【0014】
また、上下層に導体線路を分割するときに、そのパターン形状を変えるよう考慮する必要がないから、設計ルール上の制約が生じることがなく、回路設計の自由度が高まる。したがって、本発明によれば、当該整合回路の導体線路を、前記従来の構造(図8A,図9)のように積層方向について同一のパターン形状で同位置に重なり合うよう配置することも出来るし、異なるパターン形状としても勿論構わない。また同時に、インピーダンス整合回路を複数層に分割するから、分波器を小型化することが可能となる。
【0015】
前記導体層は、上下線路間の遮断性を高めるため、グランドに接続することが好ましい(請求項2)。
【0016】
また、本発明の分波器では、弾性表面波フィルタの下部領域の積層基板内に前記導体線路を配し、該導体線路と弾性表面波フィルタとの間に導体層を設けることがある(請求項3)。
【0017】
弾性表面波フィルタの下部領域の積層基板内に前記導体線路を配することにより、当該分波器パッケージ内の実装密度を高め、当該デバイスのより一層の小型化を図ることが可能となる。また、導体線路と弾性表面波フィルタとの間に導体層を設けることで、これら導体線路と弾性表面波フィルタと間の電磁的・静電的結合を防ぎ、分波器の電気的特性を向上させることが出来る。
【0018】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の本発明の実施の形態および実施例の説明により明らかにする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1から図3は、本発明の一実施形態(以下、本実施形態という)に係る分波器を示すものである。図1に示すように、この分波器11は、2つの帯域通過フィルタ12,13と、1つのインピーダンス整合回路14とを備え、アンテナに接続される共通端子15と、外部端子に接続される入出力端子16,17とを有する。
【0021】
フィルタ12,13は、小型化および高機能化が可能なSAWフィルタ(弾性表面波フィルタ)を使用する。整合回路14は、これら2つのSAWフィルタ12,13間の干渉を防ぎ、所定のフィルタ特性を得るために共通端子15と一方のフィルタ13との間に挿入する。尚、整合回路14は、他方のフィルタ12と共通端子15との間、あるいは共通端子15と各フィルタ12,13との間にそれぞれ設けても良いが、分波器の小型化の観点から、本実施形態のように一方のフィルタと共通端子との間のみに設けることが望ましい。
【0022】
図2Aおよび図2Bは、本実施形態の分波器11の断面構造と導体線路の形成層をそれぞれ示すものである。これらの図に示すように、分波器11は、6層の積層基板21の表面(最上層)にSAWフィルタ12,13をワイヤボンディングにより実装し、このSAWフィルタ12,13をキャップ22で覆って封止したものである。基板21の下面(最下層)には、グランド電極23と外部端子に接続するための入出力端子24とを形成し、基板側面には、層間接続用のサイドキャステレーション25を設けてある。
【0023】
一方、基板内部には、インピーダンス整合回路14を構成する導体線路34を形成する。この導体線路34は、SAWフィルタ12,13の中心周波数に対応した所定の線路長を有し、上下2層に分割して形成してある。この上下層に分割して形成した整合回路の上側の線路部34aと下側の線路部34bとの間には、導体層35を配し、この導体層35を基板側面に設けたサイドキャステレーション25を通じて基板下面のグランド電極23と接続する。さらに、該上側線路部34aの上部(上側線路部34aとSAWフィルタ12,13との間)にも、同様に導体層36を設け、該導体層36もサイドキャステレーション25を介して基板下面のグランド電極23に接続する。尚、図2Bにおいて符号50は、SAWフィルタの下部領域を示す。
【0024】
これら導体層35,36によって、整合回路の上下導体線路34a,34b同士間、並びにSAWフィルタ12,13と整合回路用導体線路34との間の電磁的・静電的(容量的)結合を防ぐことが出来る。尚、各導体層35,36は、導電性を有する材料により構成すれば良く、例えば銅箔により形成することが可能である。また、基板21は、樹脂基板あるいはセラミック基板とすることができ、さらに、樹脂に無機フィラーを混入した複合材料(例えば樹脂に誘電体セラミック粉末を添加した高誘電率複合材料)によって形成した複合材料基板とすることも可能である。
【0025】
SAWフィルタ12,13は、基板21の表面にフリップチップ実装することも出来る。図3はこの例を示すもので、SAWフィルタ12,13をはんだバンプ26で基板最上層の配線パターンに接続することにより基板21にフリップチップ実装してある。尚、基板21の構造(整合回路用導体線路34および導体層35,36等)は、前記図2A,2Bに示す例と同様である。
【0026】
本実施形態の整合回路構造(上下2層に亘って分割した導体線路間に導体層を設けた場合)と、従来の整合回路構造(上下導体線路間に導体層がない場合)とを比較するシミュレーションを行った。
【0027】
図4は、該シミュレーションにおける本実施形態の線路構造を示すもので、上下2枚の導体層37,38の間に整合回路用の導体線路34a,34bを2層に分けて上下方向に重なるように設け、これら上下導体線路部34a,34bの間に導体層35を形成した。ここで、上部導体層37と上側線路部34aとの間の距離をL1、上下線路部間に設けた導体層35と上側線路部34aとの距離をL2、該導体層35と下側線路部34bとの距離をL3、下側線路部34bと下部導体層38との距離をL4とすると、L1=100μm、L2=L3=50μm、L4=100μmとした。また、上側線路部34aおよび下側線路部34bの幅wは共に70μmであり、基板の誘電率εrは4.7である。
【0028】
一方、図6は、比較対照としての従来の線路構造を示すものである。この構造は、上記本実施形態の線路構造と同様に上下2枚の導体層37,38の間に整合回路用の導体線路4a,4bを2層に分けて上下方向に重なるように設けたものであるが、両線路部4a,4bの間に導体層を設けていない。また、上部導体層37と上側線路部4aとの間の距離をL5、上側線路部4aと下側線路部4bとの距離をL6、下側線路部4bと下部導体層38との距離をL7とすると、L5=L6=L7=100μmであり、前記実施形態と同様に上下線路部4a,4bの幅wは共に70μm、基板の誘電率εrは4.7である。
【0029】
図5は上記本実施形態の線路構造(図4)によって得られる位相回転量を示すスミスチャートとデバイス通過特性を示す線図であり、図7は従来の線路構造(図6)による場合である。
【0030】
これらの図に示すように、位相回転量(660〜1060MHz帯)について、従来構造では123.6°の回転量しか得られないのに対して本実施形態の構造によれば、155.2°の位相回転量を得ることが可能となった。また、フィルタF1の通過帯域における減衰量が、従来構造では824MHzで−3.37dB、849MHzで−2.25dBであるのに対し、本実施形態の構造によれば824MHzで−2.46dB、849MHzで−1.91dBであり、フィルタ特性(相手側フィルタの通過帯域における減衰量)を改善することが出来る。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。例えば、前記実施形態では、インピーダンス整合回路を構成する導体線路34を2層に分けて形成したが、これを3層あるいはそれ以上の層に分けて形成することも可能である。この場合、各線路部間に導体層を配置して各線路部間の干渉を防止すれば良い。また、弾性表面波フィルタ(SAWフィルタ)についても、前記実施形態は2個のフィルタ12,13を備えるが、3個以上のフィルタを備えた分波器を構成しても良く、これらも本発明の範囲に含まれる。また、前記導体層35,36は、サイドキャステレーション25を介してグランド電極に接続を行ったが、スルーホールあるいはビアホールによって接続を行うようにしても構わない。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、分波器(特に整合回路用の導体線路を複数層に亘って分割形成する分波器)の特性をより一層向上させるとともに、回路設計の自由度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る分波器の一例を示すブロック図である。
【図2A】本発明に係る分波器の一例を示す断面図である。
【図2B】前記図2Aの分波器における基板の内層(導体線路の形成層)を示す平面図である。
【図3】本発明に係る分波器の別の例を示す断面図である。
【図4】本発明に係る分波器の整合回路における導体線路の配置例を示す図である。
【図5】(a)は前記図4の構造による位相回転量を示すスミスチャートであり、(b)はデバイス通過特性を示す線図である。
【図6】従来の分波器の整合回路における導体線路の配置例を示す図である。
【図7】(a)は前記図6の構造による位相回転量を示すスミスチャートであり、(b)はデバイス通過特性を示す線図である。
【図8A】従来の分波器の一例を示す断面図である。
【図8B】前記図8Aの分波器における基板の内層(導体線路の形成層)を示す平面図である。
【図9】従来の分波器の別の例を示す断面図である。
【符号の説明】
11 分波器
12,13 SAWフィルタ(弾性表面波フィルタ)
14 インピーダンス整合回路
15 アンテナ接続用共通端子
16,17,24 入出力端子
21 基板
22 封止用キャップ
23 グランド電極
25 サイドキャステレーション
4,34 整合回路用導体線路
4a,34a 整合回路の上側線路部
4b,34b 整合回路の下側線路部
35,36,37,38 導体層
50 SAWフィルタの下部領域
Claims (3)
- 互いに異なる帯域中心周波数を有する複数の弾性表面波フィルタを積層基板に実装するとともに、該複数の弾性表面波フィルタ同士のインピーダンスを整合させる整合回路を導体線路により形成した分波器であって、
前記導体線路のうちの少なくとも一つの導体線路を、前記積層基板の複数の内層に亘って分割して形成し、
該分割して形成した導体線路の間に導体層を設けた
ことを特徴とする分波器。 - 前記導体層がグランドに接続されている請求項1に記載の分波器。
- 前記弾性表面波フィルタの下部領域の積層基板内に前記導体線路を配し、
該導体線路と弾性表面波フィルタとの間に導体層を設けた
請求項1または2に記載の分波器。
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- 2003-07-17 JP JP2003198326A patent/JP2005039407A/ja active Pending
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