JP2005009024A - ホウ化物微粒子含有繊維およびこれを用いた繊維製品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ホウ化物微粒子と分散媒と微粒子分散用分散剤とを混合し、分散処理を行ない、さらに乾燥させて分散粉を得た。得られた分散粉を、熱可塑性樹脂ペレットに添加し、均一混合の後、溶融混練し、熱線吸収成分含有マスターバッチを得た。この熱線吸収成分含有マスターバッチを、同じ方法で調製した無機微粒子が添加されていないマスターバッチと混合して溶融紡糸し、続いて延伸を行ない、マルチフィラメント糸を製造し、これを切断してステープルを作製し、これから熱線吸収効果を有する紡績糸を製造した。この紡績糸を用いて保温性を有するニット製品を得た。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱線吸収成分を含有している繊維、および当該繊維を加工して得られた繊維製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維分野において、様々な特殊機能を持った繊維が要望されている。その一つとして保温性が付与された繊維がある。一般的に、繊維製品の保温性を高めるためには、生地を厚くする、目を細かくする、あるいは色を濃くするといった方法が採られてきた。
【0003】
特許文献1には、シリカまたは硫酸バリウム等の無機微粒子の1種または2種以上へ、熱伝導率が0.3kcal/m2sec℃以上の金属および金属イオンの少なくとも1種を含有させた熱線放射特性を有する無機微粒子を含有させた熱線放射性繊維を使用し、繊維の保温性を向上させる技術が記載されている。
【0004】
特許文献2には、繊維中に、繊維重量に対して0.1〜20重量%の遠赤外線放射能力を有するセラミック微粒子を含有せしめて、優れた保温性を発揮させることが記載されている。当該文献には、前記セラミック微粒子として、光吸収熱変換能を有する微粒子と酸化アルミニウム微粒子とを含有せしめて保温性を発揮させることが記載されている。
【0005】
特許文献3には、アミノ化合物からなる赤外線吸収剤と、所望により用いられる紫外線吸収剤及び各種安定剤を含むバインダー樹脂とを分散、固着させてなる赤外線吸収加工繊維製品が提案されている。
【0006】
特許文献4には、直接染料、反応染料、ナフトール染料、バット染料の中から選定される、近赤外線領域の吸収が黒色染料よりも大きい特性を持つ染料と、他の染料とを組み合わせて繊維を染色することにより、波長750から1500nmの近赤外線範囲内で、生地の分光反射率が65%以下と低いセルロース系繊維構造物の近赤外線吸収加工方法が提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−279830号公報
【特許文献2】
特開平5−239716号公報
【特許文献3】
特開平8−3870号公報
【特許文献4】
特開平9−291463号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述した、従来の技術に係る保温性が付与された繊維は、繊維に対する添加剤の必要添加量が多いことにより、繊維の比重が高くなりこの繊維で作製された衣服等が重くなったり、溶融した紡糸中へ均一に分散させることが極めて困難になったりする等の問題があった。
また、有機材料や染料を用いた場合、用いられている赤外線吸収剤が、有機材料もしくは黒色染料等のため、熱や湿度による劣化が著しく、耐候性に劣るという問題を有している。さらに、これらの材料を繊維に付与することで繊維が濃色に着色されるため、淡色の製品には使用できず、使用可能分野が限定されるという問題があった。
【0009】
以上、説明した方法以外にも、アルミニウムやチタン等の金属粉末を、繊維に固着させたり、蒸着等により付着させたりして、輻射反射効果を持たせ保温性を向上させる技術も知られている。しかし、固着や蒸着加工による繊維の色の変化が大きいため用途が限定されたり、蒸着加工に伴うコストアップ、蒸着加工前の準備工程における布帛の微妙な取扱いによる蒸着斑の発生や,洗濯あるいは着用時の摩擦に起因する蒸着金属の脱落による保温性能の低下等、種々の問題があった。
【0010】
本発明は上述の背景を基に成されたものであり、透明性および耐候性に優れ、熱線を効率良く吸収する熱線吸収成分を含有した繊維と、当該繊維を用い、優れた保温性を有しながら意匠性を損なうことのない繊維製品とを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者らが研究を重ねた結果、上述の課題を解決できる熱線吸収成分として、一般式XBm(但し、Xは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Ca、Yから選ばれた少なくとも1種以上の元素。)で表されるホウ化物微粒子を見出した。当該ホウ化物微粒子は自由電子を多量に保有しているが、これを微粒子化することにより、材料そのものの特性として、可視光領域に透過率の極大を持つとともに、近赤外域に強い吸収を発現して透過率の極小を持つようになる現象を見出した。そして、当該ホウ化物微粒子を繊維の表面および/または内部に含有させ、前記近赤外域の強い吸収を発現させることで、繊維に保温性を付与することができることを見出し本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、課題を解決するための第1の手段は、
熱線吸収成分として、一般式XBm(但し、Xは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Ca、Yから選ばれた少なくとも1種以上の元素。)で表されるホウ化物微粒子を含有する繊維であって、
前記繊維の表面および/または内部に、前記微粒子が、前記繊維の固形分に対して0.001重量%〜30重量%含有されていることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維である。
【0013】
第2の手段は、第1の手段に記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
更に遠赤外線放射物質を含有し、
前記繊維の表面および/または内部に、前記遠赤外線放射物質が、前記繊維の固形分に対して0.001重量%〜30重量%含有されていることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維である。
【0014】
第3の手段は、第2の手段に記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
前記遠赤外線放射物質が、ZrO2微粒子であることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維である。
【0015】
第4の手段は、第1から第3の手段のいずれかに記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
前記ホウ化物微粒子の粒子径が800nm以下であることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維である。
【0016】
第5の手段は、第1から第4の手段のいずれかに記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
前記ホウ化物微粒子の表面が、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種類以上の元素を含む化合物で被覆されていることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維である。
【0017】
第6の手段は、第5の手段に記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
前記化合物が酸化物であることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維である。
【0018】
第7の手段は、第1から第6の手段のいずれかに記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
前記繊維が、合成繊維、半合成繊維、天然繊維、再生繊維、無機繊維、あるいはこれらの混紡、合糸、混繊等による混合糸のいずれかであることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維である。
【0019】
第8の手段は、第7の手段に記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
前記合成繊維が、ポリウレタン繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエーテルエステル系繊維から選ばれるいずれか1種以上の合成繊維であることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維である。
【0020】
第9の手段は、第7の手段に記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
前記半合成繊維が、セルロース系繊維、タンパク質系繊維、塩化ゴム、塩酸ゴムから選ばれるいずれか1種以上の半合成繊維であることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維である。
【0021】
第10の手段は、第7の手段に記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
前記天然繊維が、植物繊維、動物繊維、鉱物繊維から選ばれるいずれか1種以上の天然繊維であることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維である。
【0022】
第11の手段は、第7の手段に記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
前記再生繊維が、セルロース系繊維、タンパク質系繊維、アルギン繊維、ゴム繊維、キチン繊維、マンナン繊維から選ばれるいずれか1種以上の再生繊維であることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維である。
【0023】
第12の手段は、第7の手段に記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
前記無機繊維が、金属繊維、炭素繊維、けい酸塩繊維から選ばれるいずれか1種以上の無機繊維であることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維である。
【0024】
第13の手段は、第1から第12の手段のいずれかに記載のホウ化物微粒子含有繊維を加工してなる繊維製品である。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明に係る保温性を付与された繊維は、熱線吸収用成分として一般式XBmで表され、XB4、XB6、XB12等で表されるホウ化物微粒子を、所望の繊維の表面および/または内部に含有させることで作製される。
ここで、熱線吸収用成分として好ましいホウ化物微粒子について説明する。
まず、熱線吸収用成分としては、上述した一般式XBmにおいて4≦m<6.3であることが好ましい。すなわち、ホウ化物微粒子としては、上記ホウ化物の内XB4、XB6が主体となっていることが好ましく、さらに一部XB12を含んでいても良い。ここで、mとは、得られたホウ化物微粒子を含む粉体を化学分析し、X元素の1原子に対するBの原子数比を示すものである。
【0026】
通常の場合、ホウ化物微粒子を含む粉体は、実際には、XB4、XB6、XB12等の混合物である。例えば、代表的なホウ化物微粒子である6ホウ化物の場合において、X線回折の結果から単一相であると判断されても、実際には5.8<m<6.2となり、微量に他相を含んでいると考えられる。ここで、m≧4となる場合は、XB、XB2などの生成が抑制されており、理由は不明であるが、熱線吸収特性が向上する。一方、m<6.3となる場合は、ホウ化物微粒子以外に酸化ホウ素粒子が発生することが抑制される。酸化ホウ素粒子は吸湿性があるため、ホウ化物粉体中に酸化ホウ素粒子が混入すると、ホウ化物粉体の耐湿性が低下し、熱線吸収特性の経時劣化が大きくなってしまう。そこで、m<6.3として、酸化ホウ素粒子の発生を抑制することが好ましい。
【0027】
以下の説明においては、ホウ化物としてm=6の場合の6ホウ化物を例として説明する。
本発明の保温性を有する繊維は、熱線吸収用成分として6ホウ化物XB6(Xは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Ca、Yから選ばれた少なくとも1種以上)微粒子を、該繊維の表面および/または内部に含有させることで作製される。
本発明に使用される6ホウ化物には、LaB6、CeB6、PrB6、NdB6、SmB6、EuB6、GdB6、TbB6、DyB6、HoB6、ErB6、TmB6、YbB6、LuB6、SrB6、CaB6およびYB6が挙げられる。
【0028】
本発明に使用される6ホウ化物微粒子は、その表面が酸化していないことが好ましいが、通常は僅かに酸化していることが多く、また微粒子の分散工程で表面の酸化が起こることはある程度避けられない。しかしその場合でも日射吸収効果を発現する有効性に変わりはない。またこれらの微粒子は、結晶としての完全性が高いほど大きい日射吸収効果が得られるが、結晶性が低くX線回折でブロードな回折ピークを生じるようなものであっても、微粒子内部の基本的な結合が立方晶CaB6タイプの構造を有するものであるならば日射吸収効果を発現する。加えて、6ホウ化物微粒子は無機物質のため耐候性にも優れている。
【0029】
これらの6ホウ化物微粒子は、暗い青紫色や緑色などの粉末であるが、可視光波長に比べて粒径を十分小さくし、この小さな粒径を有する微粒子を繊維の表面および/または内部に分散して含有させた状態においては、可視光透過性が生じるが、熱線吸収能は十分強く保持できる。これは、6ホウ化物微粒子中の自由電子の量が多く、当該微粒子内部および表面の自由電子によるプラズモン吸収およびバンド間間接遷移の吸収エネルギーが、ちょうど可視〜近赤外光の付近にあるために、この波長領域の熱線が選択的に反射・吸収されるためであると考えられる。実験によれば、これら6ホウ化物微粒子を十分細かく且つ均一に分散した膜では、透過率が波長400〜700nmの間に極大値をもち、且つ波長700〜1800nmの間に極小値をもつことが判明した。そこで、当該6ホウ化物微粒子を繊維の表面および/または内部に含有した繊維においても、同様の透過率の波長特性を得ることができる。
ここで、人間の可視光波長が380〜780nmであり、視感度が550nm付近をピークとする釣鐘型であることを考慮すると、このような6ホウ化物微粒子を含有した繊維では可視光を有効に透過し、それ以外の熱線を有効に反射・吸収することが理解される。
【0030】
また、6ホウ化物微粒子の単位重量あたりの熱線吸収能力は非常に高く、ITOやATOと比較して、40〜100分の1以下の使用量でその効果を発揮することができる。したがって、所望の繊維への微粒子の添加量が少なくても充分な熱線吸収能を確保することができるので、繊維の物性を損なうことが無いという利点を有する。勿論、所望により大量に添加することも可能であり、繊維の表面および/または内部での6ホウ化物微粒子の含有量は、繊維の固形分に対して、0.001重量%〜30重量%の範囲で選択することができる。更に、6ホウ化物微粒子添加後の繊維の重量や原料コストを考慮した観点からは、好ましくは0.005重量%〜15重量%の範囲、さらに好ましくは0.005重量%〜10重量%の範囲で選択すると良い。添加量が0.001重量%以上であれば、生地が厚くても十分な熱線吸収効果を得ることができ、30重量%未満であれば紡糸工程でフィルターへの目塞がりや糸切れ等による可紡性の低下を回避でき、15重量%未満であれば可紡性をさらに安定化でき、10重量%未満であればさらに好ましい。
【0031】
また、6ホウ化物微粒子と伴に、遠赤外線を放射する能力を有する物質の微粒子を繊維の表面および/または内部に含有させるのも好ましい構成である。当該遠赤外線放射物質の微粒子として例えば、ZrO2、SiO2、TiO2、Al2O3、MnO2、MgO、Fe2O3、CuO等の金属酸化物、ZrC、SiC、TiC等の炭化物、ZrN、Si3N4、AlN等の窒化物等を挙げることができる。
【0032】
6ホウ化物微粒子は、波長0.3〜2μmの太陽光等の光エネルギーを吸収する性質を持っており、特に波長1μm付近の近赤外領域の光を選択的に吸収して、再輻射するか、もしくは熱に変換する。上述した遠赤外線放射物質の微粒子は、6ホウ化物微粒子が吸収したエネルギーを受け取って、中・遠赤外線波長の熱エネルギーに転換し、放射する能力を有している。例えば、ZrO2微粒子は、6ホウ化物微粒子によって吸収された熱を、波長2〜20μmの熱エネルギーに転換し放射する。従って、吸収したエネルギーを微粒子間で交換し効率良く放射するため、より効果的な保温がなされる。
【0033】
遠赤外線放射物質の微粒子の、繊維表面および/または内部中の含有量は、繊維の固形分に対して、0.001重量%〜30重量%の間で使用されることが好ましい。0.001重量%以上の使用量があれば、生地が厚くても十分な熱エネルギー放射効果を得ることができ、30重量%以下であれば紡糸工程でフィルターへの目塞がりや糸切れ等により可紡性が低下するのを回避することができる。
【0034】
次に、6ホウ化物微粒子および遠赤外線放射物質の微粒子の、好ましい粒径について説明する。
一般的に、繊維に含有される無機微粒子の粒径は、紡糸、延伸などの繊維化工程時に問題が生じないことが重要であり、この観点からは、平均粒径が5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることが更に好ましい。平均粒径が5μm以下であれば、紡糸工程でフィルターへの目塞がりや糸切れ等による可紡性の低下等の問題を回避することができる上、延伸工程での糸切れ等の問題も回避することができる。さらに、平均粒径が5μm以下であれば、無機微粒子を紡糸原料中へ容易に均一混合、分散させることができる。
【0035】
さらに、衣料等繊維資材の染色性等の意匠性の観点からは、透明性を保持したまま近赤外線の効率良い遮蔽を行なうことが求められる。ところが、無機微粒子の粒子径が大きいと、幾何学散乱もしくは回折散乱によって400〜780nmの可視光領域の光を散乱して曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が得にくくなる。そこで、本発明に係る6ホウ化物微粒子の粒子径を800nmよりも小さくした場合、可視光を遮蔽しないので、可視光領域の透明性を保持したまま効率良く近赤外線を遮蔽することができる。
さらに、無機微粒子径が200nm以下になると、上記散乱が低減してミー散乱もしくはレイリー散乱領域になる。特に、レイリー散乱領域まで粒子径が減少すると、散乱光は分散粒子径の6乗に反比例して低減するため、粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上する。更に100nm以下になると散乱光は非常に少なくなり好ましい。そこで、特に可視光領域の透明性を重視する場合には、無機微粒子径は200nm以下がよく、さらに好ましくは100nm以下がよい。
【0036】
さらに加えて、6ホウ化物微粒子の耐候性を向上させるために、当該微粒子の表面を、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムから選ばれる元素を1種類以上含む化合物で被覆することも好ましい構成である。これらの化合物は基本的に透明であり、6ホウ化物微粒子を被覆したことで可視光透過率を低下させることがないため、繊維の意匠性を損なうことがない。また、これらの化合物は酸化物であることが好ましい。これらの酸化物は、遠赤外線放射能力が高いため、保温効果も向上する。
【0037】
本発明に使用される繊維は、用途に応じて各種選択可能であり、合成繊維、半合成繊維、天然繊維、再生繊維、無機繊維、あるいはこれらの混紡、合糸、混繊等による混合糸のいずれを使用してもかまわない。そして、6ホウ化物微粒子や遠赤外線放射物質の微粒子といった無機微粒子を、簡便な方法で繊維内に含有させることや、保温持続性の観点からは、合成繊維が好ましい。
合成繊維は、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエーテルエステル系繊維等が挙げられる。
ここで、ポリアミド系繊維としては、例えば、ナイロン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン610、ナイロン612、芳香族ナイロン、アラミド等が挙げられる。
また、アクリル系繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−塩化ビニル共重合体、モダクリル等が挙げられる。
また、ポリエステル系繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
また、ポリオレフィン系繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。
また、ポリビニルアルコール系繊維としては、例えば、ビニロン等が挙げられる。
また、ポリ塩化ビニリデン系繊維としては、例えば、ビニリデン等が挙げられる。
また、ポリ塩化ビニル系繊維としては、例えば、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
また、ポリエーテルエステル系繊維としては、例えば、レクセ、サクセス等が挙げられる。
【0038】
本発明に使用される繊維が半合成繊維である場合は、例えば、セルロース系繊維、タンパク質系繊維、塩化ゴム、塩酸ゴム等が挙げられる。
また、セルロース系繊維としては、例えば、アセテート、トリアセテート、酸化アセテート等が挙げられる。
ここで、タンパク質繊維としては、例えば、プロミックス等が挙げられる。
【0039】
本発明に使用される繊維が天然繊維である場合は、例えば、植物繊維、動物繊維、鉱物繊維等が挙げられる。
ここで、植物繊維としては、例えば、綿、カポック、亜麻、***、黄麻、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、羅布麻、やし、いぐさ、麦わら等が挙げられる。
また、動物繊維としては、例えば、羊毛、やぎ毛、モヘヤ、カシミヤ、アルパカ、アンゴラ、キャメル、ビキューナ等のウール、シルク、ダウン、フェザー等が挙げられる。
また、鉱物繊維としては、例えば、石綿、アスベスト等が挙げられる。
【0040】
本発明に使用される繊維が再生繊維である場合は、例えば、セルロース系繊維、タンパク質系繊維、アルギン繊維、ゴム繊維、キチン繊維、マンナン繊維等が挙げられる。
ここで、セルロース系繊維としては、例えば、レーヨン、ビスコースレーヨン、キュプラ、ポリノジック、銅アンモニアレーヨン等が挙げられる。
また、タンパク質系繊維としては、例えば、カゼイン繊維、落花生タンパク繊維、とうもろこしタンパク繊維、大豆タンパク繊維、再生絹糸等が挙げられる。
【0041】
本発明に使用される繊維が無機繊維である場合は、例えば、金属繊維、炭素繊維、けい酸塩繊維等が挙げられる。
ここで、金属繊維としては、例えば、金属繊維、金糸、銀糸、耐熱合金繊維等が挙げられる。
また、けい酸塩繊維としては、例えば、ガラス繊維、鉱さい繊維、岩石繊維等が挙げられる。
【0042】
本発明に使用される繊維の断面形状は、特に限定されないが、例えば、円形、三角形、中空状、偏平状、Y型、星型等が挙げられる。繊維の表面および/または内部への微粒子の含有は、種々の形態で可能であり、例えば、芯鞘型の繊維の場合、微粒子を当該繊維の芯部に含有させても、鞘部に含有させてもかまわない。また、本発明に使用される繊維の形状は、フィラメント(長繊維)であっても、ステープル(短繊維)であってもかまわない。
【0043】
また、本発明に使用される繊維へ、所望により、性能を損なわない範囲内で、酸化防止剤、難燃剤、消臭剤、防虫剤、抗菌剤、紫外線吸収剤等を添加することも好ましい構成である。
【0044】
次に、本発明に使用される繊維の表面および/または内部に、6ホウ化物微粒子や遠赤外線放射物質の微粒子といった無機微粒子を、均一に含有させる方法について説明する。
繊維の表面および/または内部に、無機微粒子を均一に含有させる方法は、特に限定されないが、例えば、以下のような方法がある。
(1)合成繊維の原料ポリマーへ、前記無機微粒子を直接混合して紡糸する方法。
(2)あらかじめ原料ポリマーの一部へ前記無機微粒子を高濃度に含有せしめたマスターバッチを製造し、このマスターバッチを、紡糸時に所定の濃度に希釈調整してから紡糸する方法。
(3)前記無機微粒子を、あらかじめ原料モノマーまたはオリゴマー溶液中に均一に分散させておき、この分散溶液を用いて目的とする原料ポリマーを合成すると同時に、当該無機微粒子を均一に原料ポリマー中に分散せしめた後、紡糸する方法。
(4)前記無機微粒子を、予め紡糸して得られた所望の繊維の表面へ、結合剤などを用いて付着させる方法。
【0045】
ここで、上記(2)で説明した、マスターバッチを製造し、これを紡糸時に希釈調整してから紡糸する方法の好ましい例について、さらに詳細に説明する。
上記マスターバッチの製造方法は特に限定されないが、例えば、6ホウ化物微粒子分散液と、熱可塑性樹脂の粉粒体またはペレットと、必要に応じて他の添加剤とを、リボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機、およびバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、一軸押出機、二軸押出機等の混練機を使用して溶剤を除去しながら均一に溶融混合することで、熱可塑性樹脂に微粒子を均一に分散した混合物を調整することができる。
【0046】
さらに、6ホウ化物微粒子分散液の溶剤を公知の方法で除去し、得られた粉末と熱可塑性樹脂の粉粒体またはペレット、および必要に応じて他の添加剤を均一に溶融混合する方法を用いて熱可塑性樹脂に微粒子を均一に分散した混合物を調整することもできる。そのほか、6ホウ化物微粒子の粉末を、直接、熱可塑性樹脂に添加し、均一に溶融混合する方法を用いることもできる。
【0047】
上述した方法により得られた混合物を、ベント式一軸もしくは二軸の押出機で混練し、ペレット状に加工することにより、熱線吸収成分含有マスターバッチを得ることができる。
【0048】
ここで、上述した本発明に使用される繊維に無機微粒子を均一に含有させる(1)〜(4)の方法について、具体的に例を挙げて説明する。
(1)、(2)の方法:例えば、繊維としてポリエステル繊維を用いる場合、熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットに6ホウ化物微粒子分散液を添加し、ブレンダーで均一に混合して溶媒を除去した後、二軸押出機で溶融混練し、6ホウ化物微粒子含有マスターバッチを調製する。この6ホウ化物微粒子含有マスターバッチと、微粒子無添加のポリエチレンテレフタレートよりなるマスターバッチの目的量とを、樹脂の溶融温度付近で溶融混合し、常法にしたがって紡糸する。
(3)の方法:例えば、繊維としてウレタン繊維を用いる場合、6ホウ化物微粒子を含有した高分子ジオールと有機ジイソシアネートとを、二軸押出機で反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを合成した後、ここへ鎖伸長剤を反応させてポリウレタン溶液(原料ポリマー)を作製する。それを常法にしたがって紡糸する。
(4)の方法:例えば、天然繊維の表面に無機微粒子を付着させるためには、6ホウ化物微粒子をアクリル・エポキシ・ウレタン・ポリエステルから選ばれた少なくとも1種のバインダー樹脂と、水などの溶媒とを混合した処理液を調製し、当該天然繊維を浸漬させるか、パディング、印刷又はスプレー等で前記処理液を当該天然繊維へ含浸させ、乾燥することで、当該天然繊維に6ホウ化物微粒子を付着させることができる。
【0049】
尚、6ホウ化物微粒子や遠赤外線放射物質の微粒子といった無機微粒子の分散方法は、無機微粒子が均一に液体中に分散するのであれば、いかなる方法でもよく、例えば、媒体攪拌ミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散などの方法がある。無機微粒子の分散媒は、特に限定されるものではなく、混合する繊維に合わせて選択可能である。例えば、水、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、芳香族化合物などの一般的な有機溶媒の各種が使用可能である。また、所望の繊維やその原料となるポリマーに直接混合してもかまわない。また必要に応じて酸やアルカリを添加してpHを調整しても良い。更に微粒子の分散安定性を一層向上させるために、各種の界面活性剤、カップリング剤などを添加することも好ましい構成である。
【0050】
以上詳述したように、本発明によれば、熱線吸収成分として6ホウ化物微粒子を用い、さらに所望により遠赤外線を放射する微粒子を併用して、繊維へ含有させることにより、無機微粒子の添加量が少なくても保温性に優れた繊維を提供することを可能とした。また、無機微粒子の添加量が少ないため、繊維の強度や伸度などの繊維の基本的な物性を損なうことも回避できた。そして、本発明に係る繊維は、保温性を必要とする防寒用衣料、スポーツ用衣料、ストッキング、カーテン等の繊維資材、その他産業用繊維資材等の種々の用途に使用することができる。
【0051】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
ホウ化物微粒子としてLaB6微粒子(比表面積30m2/g)200g、分散媒としてトルエン730g、および微粒子分散用分散剤70gを混合し、媒体攪拌ミルで分散処理を行ない、LaB6微粒子の分散液を1kg調製し(A液)とした。さらにスプレードライヤーを用いて(A液)のトルエンを除去し、LaB6分散粉である(A粉)を得た。
得られた(A粉)を、熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットに添加し、ブレンダーで均一に混合した後、二軸押出機で溶融混練し、押出されたストランドをペレット状にカットし、熱線吸収成分であるLaB6微粒子を30重量%含有するマスターバッチを得た。
このLaB6微粒子を30重量%含有したポリエチレンテレフタレートのマスターバッチを、同じ方法で調製した無機微粒子を添加していないポリエチレンテレフタレートのマスターバッチと、重量比1:1で混合した。LaB6微粒子の平均粒径は、TEM(透過型電子顕微鏡)を用い、単独回折リングで結像した暗視野像から20nmと観測された(以下、暗視野法と記載する。)
このLaB6微粒子を15重量%含有した混合マスターバッチを溶融紡糸し、続いて延伸を行ない、ポリエステルマルチフィラメント糸を製造した。得られたマルチフィラメント糸を切断してポリエステルステープルを作製し、これを用いて紡績糸を製造した。この紡績糸を用いて保温性を有するニット製品を得た。
作製されたニット製品の分光特性を、日立製作所製の分光光度計を用いて波長200〜2100nmの光の透過率により測定し、JIS A 5759に従って日射吸収率を算出した。(ここで、日射反射率はどのサンプルも8%とし、日射吸収率(%)=100%−日射透過率(%)−日射反射率(%)から、算出した。)日射吸収率は40.45%であった。
次に、作製されたニット製品の生地裏面の温度上昇効果を、以下のようにして測定した。
20℃、60%RH環境下において、太陽光線近似スペクトルランプ(セリック(株)製ソーラーシミュレータXL−03E50改)を、当該生地から30cmの距離より照射し、一定時間毎(0秒、30秒、60秒、180秒、360秒、600秒)の、当該生地裏面の温度を放射温度計(ミノルタ(株)製HT−11)にて測定した。この結果を、太陽光近似光の照射時間毎におけるニット製品の生地裏面の温度測定結果一覧表である図1に示す。また、図1には、実施例2〜実施例7、比較例1で得られたニット製品の生地裏面の温度上昇効果についても併せて示す。
【0053】
(実施例2)
LaB6微粒子とZrO2微粒子とを1:1.5の割合で10重量%含有したポリエチレンテレフタレートのマスターバッチを、実施例1と同様の方法で作製した。LaB6微粒子とZrO2微粒子の平均粒径は、TEMを用い、暗視野法により各々20nm、30nmと観測された。
上記2種の微粒子を含有したマスターバッチを用い、実施例1と同様の方法でマルチフィラメント糸を製造した。得られたマルチフィラメント糸を切断してポリエステルステープルを作製し、実施例1と同様の方法で紡績糸を製造した。この紡績糸を用いてニット製品を得た。
作製されたニット製品の分光特性を、実施例1と同様の方法で測定した。日射吸収率は43.38%であった。また、生地裏面の温度上昇効果を、実施例1と同様の方法で測定した。この結果を図1に示す。
【0054】
(実施例3)
CeB6微粒子とZrO2微粒子とを1:1.5の割合で30重量%含有したポリエチレンテレフタレートのマスターバッチを実施例1と同様の方法で作製した。CeB6微粒子とZrO2微粒子の平均粒径は、TEMを用い、暗視野法により各々25nm、30nmと観測された。
上記2種の微粒子を含有したマスターバッチを用い、実施例1と同様の方法でマルチフィラメント糸を製造した。得られたマルチフィラメント糸を切断してポリエステルステープルを作製し、実施例1と同様の方法で紡績糸を製造した。この紡績糸を用いてニット製品を得た。
作製されたニット製品の分光特性を、実施例1と同様の方法で測定した。日射吸収率は39.21%であった。また、生地裏面の温度上昇効果を、実施例1と同様の方法で測定した。この結果を図1に示す。
【0055】
(実施例4)
PrB6微粒子とZrO2微粒子とを1:1.5の割合で30重量%含有したポリエチレンテレフタレートのマスターバッチを実施例1と同様の方法で作製した。PrB6微粒子とZrO2微粒子の平均粒径は、TEMを用い、暗視野法を用いて各々25nm、30nmと観測された。
上記2種の微粒子を含有したマスターバッチを用いて実施例1と同様の方法でマルチフィラメント糸を製造した。得られたマルチフィラメント糸を切断してポリエステルステープルを作製し、実施例1と同様の方法で紡績糸を製造した。この紡績糸を用いてニット製品を得た。
作製されたニット製品の分光特性を、実施例1と同様の方法で測定した。日射吸収率は32.95%であった。また、生地裏面の温度上昇効果を、実施例1と同様の方法で測定した。この結果を図1に示す。
【0056】
(比較例1)
実施例1で説明した無機微粒子を添加していないポリエチレンテレフタレートのマスターバッチを用いて、実施例1と同様の方法でマルチフィラメント糸を製造した。得られたマルチフィラメント糸を切断してポリエステルステープルを作製し、実施例1と同様の方法で紡績糸を製造した。この紡績糸を用いてニット製品を得た。
作製されたニット製品の分光特性を、実施例1と同様の方法で測定した。日射吸収率は3.74%であった。また、生地裏面の温度上昇効果を、実施例1と同様の方法で測定した。この結果を図1に示す。
【0057】
(実施例5)
熱可塑性樹脂としてナイロン樹脂ペレットを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、LaB6微粒子とZrO2微粒子とを1:3の割合で10重量%含有したナイロン6のマスターバッチを調製し、同じ方法で調製した無機微粒子を添加していないナイロン6のマスターバッチと重量比1:1で混合した。LaB6微粒子とZrO2微粒子の平均粒径は、TEMを用い、暗視野法を用いて各々20nm、30nmと観測された。
このLaB6微粒子とZrO2微粒子とを5重量%含有した混合マスターバッチを溶融紡糸し、続いて延伸を行ない、ナイロンマルチフィラメント糸を製造した。得られたマルチフィラメント糸を切断してナイロンステープルを作製し、これを用いて紡績糸を製造した。この紡績糸を用いて保温性を有するナイロン繊維製品を得た。
作製されたナイロン繊維製品の分光特性を、実施例1と同様の方法で測定した。日射吸収率は44.01%であった。また、生地裏面の温度上昇効果を、実施例1と同様の方法で測定した。この結果を図1に示す。
【0058】
(実施例6)
熱可塑性樹脂としてアクリル樹脂ペレットを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、LaB6微粒子とZrO2微粒子とを1:3の割合で20重量%含有したポリアクリロニトリルのマスターバッチを作製し、同じ方法で調製した無機微粒子を添加していないポリアクリロニトリルのマスターバッチと重量比1:1で混合した。LaB6微粒子とZrO2微粒子の平均粒径は、TEMを用い、暗視野法を用いて各々20nm、30nmと観測された。
このLaB6微粒子とZrO2微粒子とを10重量%含有した混合マスターバッチを紡糸し、続いて延伸を行ない、アクリルマルチフィラメント糸を製造した。得られたマルチフィラメント糸を切断してアクリルステープルを作製し、これを用いて紡績糸を製造した。この紡績糸を用いて保温性を有するアクリル繊維製品を得た。
作製されたアクリル繊維製品の分光特性を、実施例1と同様の方法で測定した。日射吸収率は42.57%であった。また、生地裏面の温度上昇効果を、実施例1と同様の方法で測定した。この結果を図1に示す。
【0059】
(実施例7)
LaB6微粒子とZrO2微粒子とを1:1.5の割合で10重量%含有したポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTG2000)と、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを調製した。次に、当該プレポリマーへ、鎖伸長剤として、1,4−ブタンジオールと3−メチル−1,5−ペンタンジオールを反応させて重合を行ない、熱可塑性ポリウレタン溶液を製造した。LaB6微粒子とZrO2微粒子の平均粒径は、TEMを用い、暗視野法を用いて各々20nm、30nmと観測された。
得られたポリウレタン溶液を紡糸原液として紡糸し、続いて延伸を行ない、ポリウレタン弾性繊維を得た。この繊維を用いて保温性を有するウレタン繊維製品を得た。
作製されたウレタン繊維製品の分光特性を、実施例1と同様の方法で測定した。日射吸収率は43.02%だった。また、生地裏面の温度上昇効果を、実施例1と同様の方法で測定した。この結果を図1に示す。
【0060】
(評価)
実施例1〜実施例7と比較例1とを比較すると、各種の繊維へ6ホウ化物微粒子とZrO2微粒子とを含有させることで、当該繊維より作製された生地の裏面温度は、30秒経過以降、比較例に較べて平均で14℃以上も高くなり、優れた保温性を付与されたことが判明した。
以上のことから、各種の繊維へ、6ホウ化物微粒子、および所望により遠赤外線放射物質を含有させることにより、透明性に優れ、耐候性が良く、低コストであり、しかも少ない微粒子添加量で、太陽光などからの熱線を効率良く吸収し、保温性を有する繊維と、当該繊維から作製される優れた保温性を有しながら意匠性を損なうことのない繊維製品とを得ることができた。
そして、上記繊維とこれを用いた繊維製品とは、その優れた特性から、保温性を必要とする防寒用衣料、スポーツ用衣料、ストッキング、カーテン等の繊維資材、その他産業用繊維資材等の、種々の用途に使用することができる。
【0061】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明に係る、熱線吸収成分として、一般式XBm(但し、Xは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Ca、Yから選ばれた少なくとも1種以上の元素。)で表されるホウ化物微粒子を含有する繊維であって、
前記繊維の表面および/または内部へ、前記微粒子が前記繊維の固形分に対して0.001重量%〜30重量%含有させることで、透明性に優れていながら、熱線を効率良く吸収するホウ化物微粒子含有繊維を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】太陽光近似光の照射時間毎における、ニット製品の生地裏面の温度測定結果一覧表である。
Claims (13)
- 熱線吸収成分として、一般式XBm(但し、Xは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Ca、Yから選ばれた少なくとも1種以上の元素。)で表されるホウ化物微粒子を含有する繊維であって、
前記繊維の表面および/または内部に、前記微粒子が、前記繊維の固形分に対して0.001重量%〜30重量%含有されていることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維。 - 請求項1に記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
更に遠赤外線放射物質を含有し、
前記繊維の表面および/または内部に、前記遠赤外線放射物質が、前記繊維の固形分に対して0.001重量%〜30重量%含有されていることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維。 - 請求項2に記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
前記遠赤外線放射物質が、ZrO2微粒子であることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維。 - 請求項1から3のいずれかに記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
前記ホウ化物微粒子の粒子径が800nm以下であることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維。 - 請求項1から4のいずれかに記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
前記ホウ化物微粒子の表面が、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムから選ばれる少なくとも1種類以上の元素を含む化合物で被覆されていることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維。 - 請求項5に記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
前記化合物が酸化物であることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維。 - 請求項1から6のいずれかに記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
前記繊維が、合成繊維、半合成繊維、天然繊維、再生繊維、無機繊維、あるいはこれらの混紡、合糸、混繊等による混合糸のいずれかであることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維。 - 請求項7に記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
前記合成繊維が、ポリウレタン繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエーテルエステル系繊維から選ばれるいずれか1種以上の合成繊維であることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維。 - 請求項7に記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
前記半合成繊維が、セルロース系繊維、タンパク質系繊維、塩化ゴム、塩酸ゴムから選ばれるいずれか1種以上の半合成繊維であることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維。 - 請求項7に記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
前記天然繊維が、植物繊維、動物繊維、鉱物繊維から選ばれるいずれか1種以上の天然繊維であることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維。 - 請求項7に記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
前記再生繊維が、セルロース系繊維、タンパク質系繊維、アルギン繊維、ゴム繊維、キチン繊維、マンナン繊維から選ばれるいずれか1種以上の再生繊維であることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維。 - 請求項7に記載のホウ化物微粒子含有繊維であって、
前記無機繊維が、金属繊維、炭素繊維、けい酸塩繊維から選ばれるいずれか1種以上の無機繊維であることを特徴とするホウ化物微粒子含有繊維。 - 請求項1から12のいずれかに記載のホウ化物微粒子含有繊維を加工してなる繊維製品。
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