JP2005007258A - 塗布方法および塗布ライン - Google Patents

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Abstract

【課題】ウェブ表面に凹凸ムラが存在していても塗布膜の塗布ムラの発生を抑制する。
【解決手段】送り出し機11からウェブ10を平滑化処理室12に送り込む。加熱ゾーン13に設けられた50〜125℃の温度範囲の加熱ローラ15によりウェブ10を加熱する。この際に、温風機16から30〜125℃の温風が加熱ゾーン13に送風される。ウェブ10は、さらに冷却ゾーン14に送り込まれ冷却ローラ18により冷却される。冷却ローラ18の温度は、平滑化処理室12の下流側に配置している温度センサ21によりウェブ10の表面温度が測定され、温度制御機22により制御される。ウェブ10の塗布前温度を25〜45℃に制御することで、ウェブ表面を平滑化でき塗布装置30によって良好な塗布膜35を形成することができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱現像感光材料、感熱材料等の製造において連続走行する帯状支持体(以下、ウェブと称する)に各種液状組成物を塗布する際の塗布方法および塗布ラインに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ウェブ上に各種液状組成物(以下、塗布液と称する)を塗布する際、ウェブの表面状態が均一でなければ、均一な塗布面質を得ることはできない。例えば、ウェブの表面が静電気を帯びておりその帯電量に分布がある場合には、塗布液のウェブへの濡れやすさが一定では無くなるために、塗布液とウェブが接触する位置(以下、動的接触線と称する)が帯電量の変化に対応して上下に変化する。この動的接触線の位置変化について図4を用いて説明する。図4に示すように、塗布ダイ70からウェブ71に塗布液72が塗布される際に、ビード部72aでの塗布液流入量と流出量の収支を変化させるために、動的接触線73が移動し塗布ムラを引き起こすことになる。このように問題を回避するため、特許文献1に開示されているように、ウェブの塗布面を加湿して表面抵抗を低下させ、帯電ムラのレベリングにより塗布ムラを抑制する方法が取られてきた。この方法は、塗布ムラの根本原因が帯電ムラである場合には、原因を取り除くことが可能であり非常に有効な塗布前処理技術である。
【0003】
【特許文献】
特開平4−244263号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、塗布ムラの主原因が帯電では無く、ウェブの凹凸ムラである場合には、この方法には効果が無いという問題がある。例えば、図5に示すようにウェブ80は、巻芯81に巻かれたバルクロール82と称する巻き物で、通常は供給搬送される。そして、複数のバルクロール82が接合テープで接続され、連続塗布される。しかし、接合部直前のウェブ80は図6に示すように、ウェブの端面の段差や巻芯81近傍の強い面圧の影響により巻芯81の周期で5〜10巻分が塑性変型(以下、切り口映り83と称する)している。また、巻芯81近傍のウェブ80が塑性変形した切り口映り83は、バルクロール82(図5参照)の外周部からの強い巻き圧により、他と比較して大きな凹凸になる。なお、図6(b)のバルクロール82は、その一部のみを示している。このため図7に示すように、ウェブ90、91を接合テープ92で接合した近傍は、接合テープ92による段差と、切り口映り93の凹凸により、ウェブ90、91の表面は、非常に乱れたものになっている。そして、このような微視的な凹凸であっても塗布液を塗布する際には、非常に大きな外乱になり、この切り口映りの箇所には塗布ムラが発生しやすいという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、ウェブ表面に凹凸ムラが存在していても塗布ムラを発生させない塗布方法および塗布ラインを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ウェブを塗布前に加熱し牽引することにより切り口映りをはじめとするウェブの塑性変形を回復させ、さらに塗布時の背面減圧、ダイのリップとウェブとの距離、塗布液の温度を最適化することにより、塗布ムラを抑制することにある。
【0007】
本発明の塗布方法は、熱現像感光材料の製造工程で、ダイから塗布液を連続走行するウェブに塗布する塗布方法において、塗布前に前記ウェブの表面を平滑化処理する。前記平滑化処理が、前記ウェブを加熱する加熱工程と、前記ウェブを冷却する冷却工程とを含むことが好ましい。
【0008】
前記加熱工程が、50〜125℃の温度範囲の加熱ローラにより前記ウェブを加熱する工程と、30〜125℃の温度範囲の風を送り込む工程と、のうち少なくとも1つの工程を含むことが好ましい。また、前記冷却工程が、冷却ローラにより前記ウェブを25〜45℃に冷却する工程であることが好ましい。さらに、前記冷却工程が、前記ウェブの温度より低い温度の風を送り込むことが好ましい。
【0009】
前記加熱ローラが前記ウェブを牽引する際のドロー率を、+0.2〜+2.0%の範囲にすることが好ましい。なお、本発明においてドロー率とは、前記ウェブを静止した状態での単位長さ(L0)と、走行している際の単位長さ(L1)との比(=(L1−L0)/L0)×100(%)を意味している。
【0010】
前記冷却工程後から前記ウェブに前記塗布液を塗布する前に、前記ウェブの塗布前温度を測定し、その塗布前温度に基づいて、前記加熱工程と前記冷却工程とにおける前記ウェブの温度を制御することが好ましい。この場合において、前記ウェブの塗布前温度が、25〜45℃の温度範囲であることがより好ましく、最も好ましくは30〜40℃である。
【0011】
前記加熱ローラが複数設けられたものであって、下流側の加熱ローラの温度を、上流側の加熱ローラの温度より高くすることが好ましい。また、最も上流側の加熱ローラと最も下流側の加熱ローラとの温度差が10〜50℃であることがより好ましい。
【0012】
前記冷却ローラが複数設けられたものであって、下流側の冷却ローラの温度を、上流側の冷却ローラの温度より低くすることが好ましい。また、最も上流側の冷却ローラと最も下流側の冷却ローラとの温度差が10〜50℃であることがより好ましい。
【0013】
前記加熱工程には、前記加熱ローラと前記ウェブを走行させるための搬送ローラとのうち少なくとも1つのローラが設けられたものであって、前記ローラに巻き回された前記ウェブのラップ角度が、30〜240度の範囲であることが好ましく、より好ましくは90〜200度であり、最も好ましくは160〜200度である。
【0014】
前記塗布方法が、前記ダイから前記塗布液を供給し、ビードを形成して連続走行するウェブに塗布するスライドビード塗布方法であって、前記塗布液の塗布速度をU(m/s)、前記ダイのリップと前記ウェブの距離をd(m)、剪断速度=U/dにおける粘度を実効粘度としたときに、前記ウェブに隣接する塗布液の実効粘度が15〜30mPa・sであることが好ましい。
【0015】
前記ビードの背面の減圧度を300〜1000Paの範囲とすることが好ましい。また、前記ダイのリップと前記ウェブとの距離dを140〜300μmの範囲とすることが好ましい。さらに、前記塗布液の温度を34〜42℃の範囲とすることが好ましい。さらには、前記ビードの背面の減圧度を300〜1000Paの範囲とし、前記ダイのリップと前記ウェブとの距離dを140〜300μmの範囲とし、前記塗布液の温度を34〜42℃の範囲とすることがより好ましい。
【0016】
本発明の塗布ラインは、ダイから塗布液を連続走行するウェブに塗布する塗布装置を備えた塗布ラインにおいて、塗布装置の上流側に前記ウェブの表面を平滑化する装置を備えている。
【0017】
前記表面平滑化装置が、前記ウェブを加熱する加熱部と、前記ウェブを冷却する冷却部とから構成されていることが好ましい。また、前記加熱部が、50〜125℃の温度範囲の加熱ローラと、30〜125℃の温度範囲の風を吹き付ける送風手段とのいずれか1つが備えられていることが好ましい。さらに、前記冷却部には、20〜50℃の温度範囲の冷却ローラが備えられていることが好ましい。さらには、前記加熱ローラが前記ウェブを牽引する際のドロー率を、+0.2〜+2.0%の範囲にするウェブ走行手段を備えていることが好ましい。
【0018】
前記冷却部から前記塗布装置の間に、前記ウェブの塗布前温度を測定する測定手段を備え、その塗布前温度に基づいて、前記加熱部と前記冷却部とにおける前記ウェブの温度を制御する制御手段が備えられていることが好ましい。前記制御手段は、前記ウェブの塗布前温度が25〜45℃の温度範囲になるように制御する制御手段であることがより好ましく、最も好ましくは30〜40℃の温度範囲に制御することである。
【0019】
前記加熱部には、前記加熱ローラが複数設けられ、下流側の加熱ローラの温度が、上流側の加熱ローラの温度より高く備えられていることが好ましい。また、前記冷却部には、前記冷却ローラが複数設けられ、下流側の冷却ローラの温度が、上流側の冷却ローラの温度より低く備えられていることが好ましい。前記加熱部は、前記加熱ローラと前記ウェブを走行させるための搬送ローラとのうち少なくとも1つが備えられ、前記ローラに巻き回された前記ウェブのラップ角度が、30〜240度の範囲になるように、前記ローラが配置されていることが好ましい。また、前記ラップ角度は、90〜200度がより好ましく、最も好ましくは160〜200度である。
【0020】
前記塗布装置が、前記ダイから前記塗布液を供給し、ビードを形成して連続走行するウェブに塗布するスライドビード塗布装置であって、前記ウェブに隣接する塗布液の所定の剪断速度の実効粘度が15〜30mPa・sになるように、前記塗布液の塗布速度をU(m/s)とする塗布手段と、前記ダイのリップと前記ウェブの距離をd(m)とが備えられ、前記所定の剪断速度が、U/dであることが好ましい。
【0021】
前記ビードの背面の減圧度を300〜1000Paの範囲とすることが好ましい。また、前記ダイのリップと前記ウェブとの距離dを140〜300μmの範囲とすることが好ましい。さらに、前記塗布液の温度を34〜42℃の範囲とすることが好ましい。さらには、前記ビードの背面の減圧度を300〜1000Paの範囲とし、前記ダイのリップと前記ウェブとの距離dを140〜300μmの範囲とし、前記塗布液の温度を34〜42℃の範囲とすることがより好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の塗布方法の好ましい実施形態について説明する。本発明に係る塗布方法に用いられる塗布ラインを図1に、塗布装置の要部拡大図を図2に示して説明する。図では塗布液を3層塗布するスライドビード塗布方法を説明するが、本発明は、ウェブに塗布液を塗布する塗布方法のいずれの方法にも適用可能である。また、塗布液の液層は何層であっても適用可能である。
【0023】
図1に示した塗布ラインでは、ウェブ10は送り出し機11から送り出され、平滑化処理室12に送られる。平滑化処理室12には、加熱ゾーン13と冷却ゾーン14とが備えられている。送られたウェブ10は、始めに平滑化処理室12の加熱ゾーン13で搬送されながら、加熱される。ウェブ10の加熱は、加熱ローラ15により行なわれる。加熱ローラ15の温度が50〜125℃の温度範囲であると、ウェブ10の切り口映りを消去するために好ましい。また、ウェブ10の加熱は、加熱ゾーン13に温風機16を取り付け、その温風機16から加熱ゾーン13に温風を送風して行なっても良い。温風機16からの温風によりウェブ10を加熱することで、切り口映りの消去ができる。さらに、加熱ゾーン13でのウェブ10の加熱は、前述した加熱ローラ15による加熱と、温風機16から送風される温風による加熱を同時に行なっても良い。なお、温風機16から送風される温風の温度は30〜125℃の温度範囲であることが、ウェブ10の切り口映りを消去するために好ましい。
【0024】
さらに、加熱ゾーン13中で加熱ローラ15、搬送ローラ17により走行しているウェブ10のドロー率が、正となるように搬送されることが、ウェブ10表面の切り口映りを消去するために好ましい。すなわち、ドロー率を正とすることで、静止状態の単位長さのウェブより、走行状態のウェブの単位長さの方が長くなり、ウェブ10は、加熱ローラ15や搬送ローラ17により引っ張られて搬送されていることになる。このように、加熱ゾーン13で、ウェブ10を加熱しながら、引っ張ることでウェブ10表面の切り口映りはより効率良く消去される。本発明において、ドロー率を+0.2〜+2.0%の範囲とすることが好ましい。ドロー率が+0.2%未満であると、ウェブを引っ張る効果が発現しにくく、また、+2.0%以上であるとウェブの搬送中に切断されるおそれがある。なお、図1では、加熱ゾーン13に設けられたローラは、加熱ローラ15と搬送ローラ17との2種類が備えられたものを示した。しかしながら、本発明では図示した形態に限定されず、いずれか1種類が設けられていればよい。もっとも、加熱ゾーン13に搬送ローラ17のみが設けられている場合には、加熱手段として温風機16が取り付けられている必要がある。
【0025】
また、加熱ゾーン13に設けられたローラ(加熱ローラ15または搬送ローラ17)は、ウェブ10を巻き回しながら搬送するが、その際のラップ角が30〜240度の範囲であると、ウェブ10の切り口映りを消去する張力がかかるために好ましい。ラップ角は、より好ましくは、90〜200度、最も好ましくは160〜200度である。ラップ角については、図3を用いて説明する。本発明においてラップ角とは、図3(a)に示すように、ラップ前にローラ60に近づくウェブ61aの進行方向の延長線62aと、ローラ60から離れるウェブ61bの進行方向に対して逆方向の延長線62bとが交差して形成される角度の補角θ1を意味している。しかしながら、図3(b)に示すようなローラ63、64、65配置の場合には、前述した補角θ1では、定義せずに以下に説明する角度をラップ角として定義する。例えばローラ65に対するウェブ66のラップ角は、ローラ65に近づくウェブ66aの進行方向の延長線67aと、ローラ65から離れるウェブ66bの進行方向の延長線67bとが交差してなす角θ2から定義される。さらに、ローラに近づくウェブと離れるウェブとが平行の場合には、ラップ角は180度と定義される。なお、前述の説明においてローラとは、加熱ローラ15と搬送ローラ17との両方を包含した意味で用いている。
【0026】
さらに、加熱ゾーン13に多数の加熱ローラ15が設けられた場合には、下流側の加熱ローラの温度を、上流側の加熱ローラの温度より高くすることで、加熱ゾーン13内でウェブ10を徐々に加熱することができるため、ウェブ10表面の切り口映り消去のために好ましい。この場合、最も下流側の加熱ローラの温度と、最も上流側の加熱ローラの温度との差が、10〜50℃であれば、ウェブ10の切り口映りの消去を効率良く行なうことができる。
【0027】
以上に説明したように、加熱ゾーン13において、ローラ(加熱ローラ15または搬送ローラ17)とウェブ10とのラップ角を30〜240度にし、ドロー率を正とすることでウェブに表面を平滑化することができる。この平滑化をアイロン効果と称する。アイロン効果が現れるより有効な条件は、ウェブを加熱状態に長く滞在させ昇温させる事と、ウェブのローラへの接触面積を大きくし加圧を長時間行なう事である。したがって、ある容積の加熱ゾーンでアイロン効果を有効にするためには、加熱ゾーン内の搬送ローラを多くすることが効果的である。一定の加熱ゾーン内に搬送ローラを多く設けるには、必然的にラップ角が大きくなり、これはウェブの搬送ローラへの接触面積を大きくする。ウェブのローラへの接触面積が大きくなると、ウェブが加圧される時間が長くなるために、アイロン効果が相乗的に大きくなる。
【0028】
次に、加熱ゾーン13から冷却ゾーン14に送り込まれたウェブ10は、冷却ゾーン14に設けられた冷却ローラ18により搬送されながら、冷却される。冷却ローラ18の温度は、20〜50℃の温度範囲であると、加熱ゾーン13で塑性変形したウェブ10を再度平滑にするために好ましい。さらに、冷却ゾーン14でのウェブ10の冷却は、前述した冷却ローラ18による冷却方法に限られない。例えば、冷却ゾーン14に冷風機19を取り付け、その冷風機からの冷風によってウェブ10を冷却しても良い。この場合の冷風温度は、ウェブ10の温度より低い温度になるが、その温度は20〜30℃であることが、ウェブ10の急激な冷却を抑制し、ウェブ10に無理な変形を起こさせないために好ましい。
【0029】
さらに、冷却ゾーン14に多数の冷却ローラ18が設けられた場合には、下流側の冷却ローラの温度を、上流側の加熱ローラの温度より低くすることで、冷却ゾーン14内でウェブ10を徐々に冷却でき、ウェブ10表面の平滑化のために好ましい。この場合、最も下流側の冷却ローラの温度と、最も上流側の冷却ローラの温度との差が、10〜50℃であれば、ウェブ10の塑性変形が効率良く行なわれ、表面が良質に平滑化される。
【0030】
なお、加熱ローラ15、冷却ローラ18の表面はハードクロム鍍金を施したステンレス製のものが好ましいが、125℃で溶融などにより変化しない材質であれば特に限定されない。また、加熱ローラ15、冷却ローラ18の表面は平坦なものが好ましいが、溝きりがあっても良い。例えばマットローラや、ディンプルローラが挙げられるがこれらに限定されない。さらに本発明において、加熱ローラ15と冷却ローラ18とが、それぞれのゾーン13、14に設けらる本数は、特に限定されない。また、加熱ローラ15の温度制御方式は電熱線による方法、温水を通水する方法、温かい空気を通風する方法など公知のいずれの方法を用いても良い。さらに、冷却ローラ18の温度制御方式も冷水を通水する方法、冷たい空気を通風する方法などの公知のいずれの方法を用いても良い。
【0031】
そして、平滑化処理室12から送り出されたウェブ10は、多数の搬送ローラ20により搬送されながら塗布装置30に送られる。この際、ウェブ10に塗布液を塗布する前のウェブ10の温度(以下、ウェブの塗布前温度と称する)が、25〜45℃の範囲であることが、塗布装置30によって塗布液の塗布を均一に行なうために好ましく、より好ましくは30〜40℃の温度範囲である。ウェブの塗布前温度の測定は、塗布装置30の上流側に配置されている温度センサ21により行なわれる。温度センサ21により測定されたウェブの塗布前温度の値は、温度制御機22に送信され、温度制御機22は、その値に基づいて加熱ゾーン13の加熱ローラ15と温風機16、冷却ゾーン14の冷却ローラ18と冷風機19の温度制御を行ない、ウェブの塗布前温度が好ましい温度範囲になるようにする。また、ウェブ10に塗布液を塗布する前に帯電器(図示しない)により、ウェブ10表面に電荷を帯電させると塗布液を塗布しやすくなり好ましいが、本発明においては、ウェブ10に塗布液を塗布する前に、ウェブの表面に電荷を帯電させることは必ずしも必要ではない。
【0032】
平滑化処理室12により表面が平滑化処理されたウェブ10は、塗布装置30により塗布液が塗布される。塗布装置30には、塗布ダイ(以下、ダイと称する)31と背面減圧室32とウェブ10を巻き回しながら走行するバックアップローラ33と塗布液の温度調節するためにダイ31に取り付けられた温度調節機34とが備えられている。塗布装置30によりウェブ10上に塗布された塗布液から塗布膜35が形成され、搬送ローラ36によって乾燥装置(図示しない)に搬送され、フイルムが製造される。なお、バックアップローラ33は金属ローラか、特開平2−251266号公報にあるような表面を薄くセラミックコーティングされ電荷漏洩を防いだローラとすることが好ましいが、公知のいずれをも用いることができる。また、本発明において塗布装置30には、背面減圧室32、塗布液の温度調節機35は必ずしも取り付けられている必要はない。
【0033】
図2を参考に本発明に係る塗布方法についてさらに説明する。ダイ31は、3個のダイブロック40、41、42が一体として備えられている。また、ダイ31の上面はスライド面43が形成され、このスライド面43は、バックアップローラ33に向かうに従い低くなるように傾斜面になっている。ダイブロック40、41、42には、ウェブ10に塗布される3層の塗布液44、45、46が図示しないそれぞれの塗布液タンクから送液量可変の送液ポンプによりマニホールド47、48、49に供給される。塗布液44、45、46の供給はマニホールド47、48、49の幅方向中央からなされても良いし、マニホールド47、48、49の片側端部から供給されても良い。本発明においてマニホールドの形状は公知のいずれのものを用いても良い。
【0034】
マニホールド47、48、49に供給された塗布液44、45、46は、各スロット50、51、52を通ってスライド面43に押しだされる。スライド面43に押しだされた塗布液44、45、46はスライド面43上で多層液膜53を形成した後に、ダイ31の先端であるリップ54からウェブ10に塗布される。本発明において、リップ54とウェブ10の距離dは、140〜300μm(すなわち、1.4×10−4〜3.0×10−4m)であることが好ましく、より好ましくは180〜240μm(=1.8×10−4〜2.4×10−4m)である。また、多層液膜53を塗布する際の塗布速度U(m/s)は、0.2〜6m/sが好ましく、より好ましくは1〜4m/sである。
【0035】
本発明において、塗布膜35の最下層を形成する塗布液44の塗布量は5〜20ml/mが好ましいが、特にこの範囲に限定されるものではない。また、この塗布液44の粘度は、前述した塗布速度Uと、リップ49とウェブ10との距離dとにおける剪断速度(U/d)における実効粘度が、15〜30mPa・sの範囲であることが、ウェブの表面に帯電ムラが生じていても、塗布ムラの発生を抑制でき高品位の塗布膜を製造できる。この剪断速度(U/d)における塗布液の粘度を実効粘度と称する。本発明において、剪断速度は、(U/d)の関係式より1700〜43000(1/s)の範囲となることが好ましい。流体の粘度は、剪断速度が小さい場合には、分子量30万以上の高分子を除いた溶液の粘度とほぼ同じ値と見なせ、本発明においては静的粘度と定義する。また、剪断速度が大きい場合には、ほぼ一定の粘度になり、この値を究極粘度と定義する。しかしながら、剪断速度がその中間の値では、剪断速度の増加に伴って、流体の粘度は低下する。このため、所定の剪断速度における流体の粘度を実効粘度と規定して、その実効粘度を調整することで、本発明の塗布方法を実施することができる。なお、最下層の塗布液の実効粘度の調整は、塗布速度Uの変更、ウェブとダイ先端リップとの距離dの変更以外にも、塗布液44調製時にその溶液粘度を調整することでも行なえる。
【0036】
背面減圧室32は、多層液膜53のウェブ10に塗布される面(以下、背面と称する)を減圧にするために取り付けられている。多層液膜53の背面を減圧にすることで、空気同伴現象の発生を抑制できることが知られている。本発明においては、多層液膜53の表面の大気圧Pと背面の圧力Pb との差(P−Pb )である背面減圧度が、300〜1000Paであることが好ましく、より好ましくは400〜700Paである。
【0037】
ウェブ10に塗布液44、45、46を塗布する際の塗布液44、45、46の温度は、特に限定されないが34〜42℃の範囲であると、ウェブ10上に多層液膜53が塗布されやすく、また多層液膜53中の溶媒の急激な揮発を抑制することができる。なお、図2では各塗布液44、45、46の温度を調整するためにダイブロック40、41、42に温度調節機34を取り付けた実施形態を示した。しかしながら、本発明において塗布液44、45、46の温度の制御は、図示した形態に限定されず、例えば各塗布液44、45、46をあらかじめ温度調整した後に、各ダイブロック40、41、42に送液するものであっても良い。
【0038】
本発明の塗布装置としては、スライドビード方式のものが好ましいが、エクストルージョンビード方式であってもスライドカーテン方式でもスライドエクストルージョン方式であっても良い。
【0039】
次に、本発明における好ましい熱現像感光材料の態様の詳細を説明する。
【0040】
熱現像感光材料に用いることのできる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は銀イオンを還元できる源を含む任意の有機物質であってよい。このような非感光性の有機銀塩については、特開平10−62899号の段落番号0048〜0049、欧州特許公開第0803764A1 号の第18ページ第24行〜第19ページ第37行、欧州特許公開第0962812A1 号に記載されている。有機酸の銀塩、特に( 炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の) 長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。有機銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、これらの混合物などを含む。本発明においては、これら有機銀塩の中でも、ベヘン酸銀含有率75モル%以上の有機酸銀を用いることが好ましい。
【0041】
熱現像感光材料に用いることができる有機銀塩の形状としては特に制限はなく、針状、棒状、平板状、りん片状でもよい。
【0042】
本発明においてはりん片状の有機銀塩が好ましい。本明細書において、りん片状の有機銀塩とは、次のようにして定義する。有機酸銀塩を電子顕微鏡で観察し、有機酸銀塩粒子の形状を直方体と近似し、この直方体の辺を一番短かい方からa、b、cとした(cはbと同じであってもよい。)とき、短い方の数値a、bで計算し、次のようにしてxを求める。
【0043】
x=b/a
このようにして200個程度の粒子についてxを求め、その平均値x(平均)としたとき、x(平均)≧1.5の関係を満たすものをりん片状とする。好ましくは30≧x(平均)≧1.5、より好ましくは20≧x(平均)≧2.0である。因みに針状とは1≦x(平均)<1.5である。
【0044】
りん片状粒子において、aはbとcを辺とする面を主平面とした平板状粒子の厚さとみることができる。aの平均は0.01μm 以上0.23μm が好ましく0.1μm 以上0.20μm 以下がより好ましい。c/bの平均は好ましくは1以上6以下、より好ましくは1.05以上4以下、さらに好ましくは1.1以上3以下、特に好ましくは1.1以上2以下である。
【0045】
有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の100 分率が好ましくは100%以下、より好ましくは80% 以下、更に好ましくは50% 以下である。有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率( 変動係数) が好ましくは100%以下、より好ましくは80% 以下、更に好ましくは50% 以下である。測定方法としては例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ( 体積加重平均直径) から求めることができる。
【0046】
本発明に用いられる有機酸銀の製造及びその分散法は、公知の方法を適用することができる。例えば上記の特開平10−62899号、欧州特許公開第0803763A1 、欧州特許公開第0962812A1 号を参考にすることができる。
【0047】
なお、有機銀塩の分散時に、感光性銀塩を共存させると、カブリが上昇し、感度が著しく低下するため、分散時には感光性銀塩を実質的に含まないことがより好ましい。本発明は、分散される水分散液中での感光性銀塩量は、その液中の有機酸銀塩1mol に対し0.1mol%以下であり、積極的な感光性銀塩の添加は行わないものである。
【0048】
本発明において有機銀塩水分散液と感光性銀塩水分散液を混合して感光材料を製造することが可能であるが、有機銀塩と感光性銀塩の混合比率は目的に応じて選べるが、有機銀塩に対する感光性銀塩の割合は1 〜30モル% の範囲が好ましく、更に3 〜20モル% 、特に5 〜15モル% の範囲が好ましい。混合する際に2 種以上の有機銀塩水分散液と2 種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましく用いられる方法である。
【0049】
本発明に用いられる有機銀塩は所望の量で使用できるが、銀量として0.1 〜5g/mが好ましく、さらに好ましくは1 〜3g/mである。
【0050】
本発明には有機銀塩のための還元剤を含むことが好ましい。有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質( 好ましくは有機物質) であってよい。このような還元剤は、特開平11−65021号の段落番号0043〜0045や、欧州特許公開第0803764A1 号の第7ページ第34行〜第18ページ第12行に記載されている。本発明においては特にビスフェノール類還元剤(例えば、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール))が好ましい。還元剤の添加量は0.01〜5.0 g/mであることが好ましく、0.1 〜3.0 g/mであることがより好ましく、画像形成層を有する面の銀1 モルに対しては5 〜50モル% 含まれることが好ましく、10〜40モル% で含まれることがさらに好ましい。還元剤は画像形成層に含有させることが好ましい。
【0051】
還元剤は溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
【0052】
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
【0053】
また、固体微粒子分散法としては、還元剤の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作成する方法が挙げられる。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることができる。
【0054】
本発明では、現像促進剤として特願平11−73951号明細書に記載の式(A)で表されるフェノール誘導体が好ましく用いられる。
【0055】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、ハロゲン組成として特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀を用いることができる。粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/ シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を好ましく用いることができる。構造として好ましいものは2 〜5 重構造であり、より好ましくは2 〜4 重構造のコア/ シェル粒子を用いることができる。また塩化銀または塩臭化銀粒子の表面に臭化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0056】
感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており、例えば、リサーチディスクロージャー1978年6 月の第17029 号、および米国特許第3,700,458 号に記載されている方法を用いることができるが、具体的にはゼラチンあるいは他のポリマー溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製し、その後で有機銀塩と混合する方法を用いる。また、特開平11−119374 号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法、特願平11−98708号、同11−84182号記載の方法も好ましい。
【0057】
感光性ハロゲン化銀の粒子サイズは、画像形成後の白濁を低く抑える目的のために小さいことが好ましく具体的には0.20μm以下、より好ましくは0.01μm 以上0.15μm 以下、更に好ましくは0.02μm以上0.12μm以下がよい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる正常晶である場合、その他正常晶でない場合、例えば球状粒子、棒状粒子等の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいい、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には主表面の投影面積と同面積の円像に換算したときの直径をいう。
【0058】
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができるが、本発明においては特に立方体状粒子が好ましい。ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い{100 }面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50% 以上が好ましく、65% 以上がより好ましく、80% 以上が更に好ましい。ミラー指数{100 }面の比率は増感色素の吸着における{111 }面と{100 }面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29、165(1985年) に記載の方法により求めることができる。
【0059】
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表(第1〜18族までを示す)の第8族〜第10族の金属または金属錯体を含有する。周期律表の第8族〜第10族の金属または金属錯体の中心金属として好ましくは、ロジウム、ルテニウム、イリジウムである。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属及び異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1 ×10−9モルから1 ×10−3モルの範囲が好ましい。これらの重金属や金属錯体及びそれらの添加法については特開平7−225449号、特開平11−65021号段落番号0018〜0024、特開平11−119374 号段落番号0227〜0240に記載されている。
【0060】
本発明においてはその中でもハロゲン化銀粒子中にイリジウム化合物を含有させることが好ましい。イリジウム化合物としては、例えば、ヘキサクロロイリジウム、ヘキサアンミンイリジウム、トリオキザラトイリジウム、ヘキサシアノイリジウム等が挙げられる。これらのイリジウム化合物は、水あるいは適当な溶媒に溶解して用いられるが、イリジウム化合物の溶液を安定化させるために一般によく行われる方法、すなわち、ハロゲン化水素水溶液(例えば塩酸、臭酸、フッ酸等)、あるいはハロゲン化アルカリ(例えばKCl 、NaCl、KBr 、NaBr等)を添加する方法を用いることができる。水溶性イリジウムを用いる代わりにハロゲン化銀調製時に、あらかじめイリジウムをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させることも可能である。これらイリジウム化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当たり1×10−8モル〜1×10−3モルの範囲が好ましく、1×10−7モル〜5×10−4モルの範囲がより好ましい。
【0061】
さらに本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に含有することのできる金属原子(例えば[Fe(CN)4− )、ハロゲン化銀乳剤の脱塩法や化学増感法については特開平11−84574号段落番号0046〜0050、特開平11−65021号段落番号0025〜0031、特開平11−119374 号段落番号0242〜0250に記載されている。
【0062】
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀乳剤に含有されるゼラチンとしては、種々のゼラチンが使用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持するために、分子量は、500〜60,000の低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。これらの低分子量ゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、脱塩処理後の分散時に使用することが好ましい。
【0063】
本発明に適用できる増感色素としてはハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので、露光光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。増感色素及び添加法については、特開平11−65021号の段落番号0103〜0109、特開平10−186572 号一般式(II)で表される化合物、特開平11−119374 号一般式(I) で表される色素及び段落番号0106、米国特許第5,510,236 号、同第3,871,887 号実施例5に記載の色素、特開平2−96131 号、特開昭59−48753号に開示されている色素、欧州特許公開第0803764A1 号の第19ページ第38行〜第20ページ第35行に記載されている。これらの増感色素は単独で用いてもよく、2種以上組合せて用いてもよい。本発明において増感色素をハロゲン化銀乳剤中に添加する時期は、脱塩工程後、塗布までの時期が好ましく、より好ましくは脱塩後から化学熟成の開始前までの時期である。
【0064】
本発明における増感色素の添加量は、感度やカブリの性能に合わせて所望の量にすることができるが、感光性層のハロゲン化銀1モル当たり10−6〜1モルが好ましく、さらに好ましくは10−4〜10−1モルである。
【0065】
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、硫黄増感法、セレン増感法もしくはテルル増感法にて化学増感されていることが好ましい。硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法に好ましく用いられる化合物としては公知の化合物、例えば特開平7−128768号等に記載の化合物等を使用することができる。特に、本発明においてはテルル増感法が好ましく、特開平11−65021号段落番号0030に記載の文献に記載の化合物、特開平5−3132841 号中の一般式(II)、(III )、(IV)で示される化合物がより好ましい。
【0066】
本発明においては、化学増感は粒子形成後で塗布前であればいかなる時期でも可能であり、脱塩後、(1)分光増感前、(2)分光増感と同時、(3)分光増感後、(4)塗布直前等があり得る。特に分光増感後に行われることが好ましい。
【0067】
本発明で用いられる硫黄、セレン及びテルル増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10−8〜10−2モル、好ましくは10−7〜10−3モル程度を用いる。本発明における化学増感の条件としては特に制限はないが、pHとしては5〜8、pAgとしては6〜11、温度としては40〜95°C程度である。
【0068】
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開第293,917 号公報に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。
【0069】
本発明に用いられる感光材料中の感光性ハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)併用してもよい。感度の異なる感光性ハロゲン化銀を複数種用いることで階調を調節することができる。これらに関する技術としては特開昭57−119341 号、同53−106125 号、同47−3929 号、同48−55730号、同46−5187 号、同50−73627号、同57−150841 号などが挙げられる。感度差としてはそれぞれの乳剤で0.2logE 以上の差を持たせることが好ましい。
【0070】
感光性ハロゲン化銀の添加量は、感材1m当たりの塗布銀量で示して、0.03〜0.6g/mであることが好ましく、0.05〜0.4g/mであることがさらに好ましく、0.1 〜0.4g/mであることが最も好ましく、有機銀塩1 モルに対しては、感光性ハロゲン化銀は0.01モル以上0.5 モル以下が好ましく、0.02モル以上0.3 モル以下がより好ましい。
【0071】
別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法及び混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。また、混合する際に2種以上の有機銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましい方法である。
【0072】
本発明におけるハロゲン化銀の画像形成層塗布液中への好ましい添加時期は、塗布する180 分前から直前、好ましくは60分前から10秒前にであるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards 、A.W.Nienow著、高橋幸司訳“液体混合技術”( 日刊工業新聞社刊、1989年) の第8 章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0073】
本発明の有機銀塩含有層のバインダーはいかなるポリマーであってもよく、好適なバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーは水又は有機溶媒またはエマルションから被覆形成してもよい。
【0074】
本発明においては、有機銀塩含有層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布し、乾燥して形成される場合に、さらに有機銀塩含有層のバインダーが水系溶媒( 水溶媒) に可溶または分散可能で、特に25℃60%RH での平衡含水率が2 質量%以下のポリマーのラテックスからなる場合に向上する。最も好ましい形態は、イオン伝導度が2.5mS/cm以下になるように調製されたものであり、このような調製法としてポリマー合成後分離機能膜を用いて精製処理する方法が挙げられる。
【0075】
ここでいう前記ポリマーが可溶または分散可能である水系溶媒とは、水または水に70質量%以下の水混和性の有機溶媒を混合したものである。水混和性の有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系、酢酸エチル、ジメチルホルミアミドなどを挙げることができる。
【0076】
なお、ポリマーが熱力学的に溶解しておらず、いわゆる分散状態で存在している系の場合にも、ここでは水系溶媒という言葉を使用する。
【0077】
また「25℃60%RH における平衡含水率」とは、25℃60%RH の雰囲気下で調湿平衡にあるポリマーの重量W1と25℃で絶乾状態にあるポリマーの重量W0を用いて以下のように表すことができる。
【0078】
25℃60%RH における平衡含水率= {(W1−W0)/W0}×100(質量%)
含水率の定義と測定法については、例えば高分子工学講座14、高分子材料試験法( 高分子学会編、地人書館) を参考にすることができる。
【0079】
本発明のバインダーポリマーの25℃60%RH における平衡含水率は2 質量%以下であることが好ましいが、より好ましくは0.01質量%以上1.5 質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以上1質量%以下が望ましい。
【0080】
本発明においては水系溶媒に分散可能なポリマーが特に好ましい。分散状態の例としては、水不溶な疎水性ポリマーの微粒子が分散しているラテックスやポリマー分子が分子状態またはミセルを形成して分散しているものなどがあるが、いずれも好ましい。分散粒子の平均粒径は1〜50000nm 、より好ましくは5〜1000nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限は無く、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
【0081】
本発明において水系溶媒に分散可能なポリマーの好ましい態様としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ゴム系樹脂( 例えばSBR 樹脂) 、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂等の疎水性ポリマーを好ましく用いることができる。これらポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでもまた架橋されたポリマーでもよいし、単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種類以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでも、ブロックコポリマーでもよい。これらポリマーの分子量は数平均分子量で5000〜1000000 、好ましくは10000 〜200000がよい。分子量が小さすぎるものは乳剤層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く好ましくない。
【0082】
好ましいポリマーラテックスの具体例としては以下のものを挙げることができる。以下では原料モノマーを用いて表し、括弧内の数値は質量%、分子量は数平均分子量である。
【0083】
P−1;−MMA(70)−EA(27)−MAA(3)− のラテックス( 分子量37000)、
P−2;−MMA(70)−2EHA(20)−St(5)−AA(5)−のラテックス( 分子量40000)、
P−3;−St(50)−Bu(47)−MAA(3)−のラテックス( 分子量45000)、
P−4;−St(68)−Bu(29)−AA(3)− のラテックス( 分子量60000)、
P−5;−St(70)−Bu(27)−IA(3)− のラテックス( 分子量120000) 、
P−6;−St(75)−Bu(24)−AA(1)− のラテックス( 分子量108000) 、
P−7;−St(60)−Bu(35)−DVB(3)−MAA(2)− のラテックス( 分子量150000) 、
P−8;−St(70)−Bu(25)−DVB(2)−AA(3)−のラテックス( 分子量280000) 、
P−9;−VC(50)−MMA(20)−EA(20)−AN(5)−AA(5)− のラテックス( 分子量80000)、
P−10;−VDC(85)−MMA(5)−EA(5)−MAA(5)−のラテックス( 分子量67000)、
P−11;−Et(90)−MAA(10)− のラテックス( 分子量12000)、
P−12;−St(70)−2EHA(27)−AA(3) のラテックス(分子量130000) 、
P−13;−MMA(63)−EA(35)−AA(2)のラテックス(分子量33000)、
上記構造の略号は以下のモノマーを表す。MMA ;メチルメタクリレート,EA;エチルアクリレート、MAA ;メタクリル酸,2EHA;2 エチルヘキシルアクリレート,St;スチレン,Bu;ブタジエン,AA;アクリル酸,DVB ;ジビニルベンゼン,VC;塩化ビニル,AN;アクリロニトリル,VDC ;塩化ビニリデン,Et;エチレン,IA;イタコン酸。
【0084】
以上に記載したポリマーラテックスは市販もされていて、以下のようなポリマーが利用できる。アクリル樹脂の例としては、セビアンA−4635,46583,4601( 以上ダイセル化学工業( 株) 製) 、Nipol Lx811 、814 、821 、820 、857(以上日本ゼオン( 株) 製) など、ポリエステル樹脂の例としては、FINETEX ES650 、611 、675 、850(以上大日本インキ化学( 株) 製) 、WD−size 、WMS(以上イーストマンケミカル製) など、ポリウレタン樹脂の例としては、HYDRAN AP10 、20、30、40( 以上大日本インキ化学( 株) 製) など、ゴム系樹脂の例としては、LACSTAR 7310K 、3307B 、4700H 、7132C(以上大日本インキ化学( 株) 製) 、Nipol Lx416 、410 、438C、2507( 以上日本ゼオン( 株) 製) など、塩化ビニル樹脂の例としては、G351、G576( 以上日本ゼオン( 株) 製) など、塩化ビニリデン樹脂の例としては、L502、L513( 以上旭化成工業( 株) 製) など、オレフィン樹脂の例としては、ケミパールS120、SA100(以上三井石油化学( 株) 製) などを挙げることができる。
【0085】
これらのポリマーラテックスは単独で用いてもよいし、必要に応じて2 種以上ブレンドしてもよい。
【0086】
本発明に用いられるポリマーラテックスとしては、特に、スチレン− ブタジエン共重合体のラテックスが好ましい。スチレン− ブタジエン共重合体におけるスチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との重量比は40:60 〜95:5であることが好ましい。また、スチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との共重合体に占める割合は60〜99質量%であることが好ましい。好ましい分子量の範囲は前記と同様である。
【0087】
本発明に用いることが好ましいスチレン− ブタジエン共重合体のラテックスとしては、前記のP−3 〜P−8 、市販品であるLACSTAR−3307B 、7132C 、Nipol Lx416 等が挙げられる。
【0088】
本発明の感光材料の有機銀塩含有層には必要に応じてゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は有機銀塩含有層の全バインダーの30質量%以下、より好ましくは20質量%以下が好ましい。
【0089】
本発明の有機銀塩含有層(即ち、画像形成層)は、ポリマーラテックスとを用いて形成されたものが好ましい。有機銀塩含有層のバインダーの量は、全バインダー/ 有機銀塩の重量比が1/10〜10/1、更には1/5 〜4/1 の範囲が好ましい。
【0090】
また、このような有機銀塩含有層は、通常、感光性銀塩である感光性ハロゲン化銀が含有された感光性層( 乳剤層) でもあり、このような場合の、全バインダー/ ハロゲン化銀の重量比は400 〜5 、より好ましくは200 〜10の範囲が好ましい。
【0091】
本発明の画像形成層の全バインダー量は0.2 〜30g/m、より好ましくは1 〜15g/mの範囲が好ましい。本発明の画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
【0092】
本発明において感光材料の有機銀塩含有層塗布液の溶媒( ここでは簡単のため、溶媒と分散媒をあわせて溶媒と表す) は、水を30質量%以上含む水系溶媒である。水以外の成分としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなど任意の水混和性有機溶媒を用いてよい。塗布液の溶媒の水含有率は50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が好ましい。好ましい溶媒組成の例を挙げると、水の他、水/ メチルアルコール=90/10、水/ メチルアルコール=70/30 、水/ メチルアルコール/ ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/ メチルアルコール/ エチルセロソルブ=85/10/5、水/ メチルアルコール/ イソプロピルアルコール=85/10/5 などがある(数値は質量%)。
【0093】
本発明に用いることのできるカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体特開平10−62899号の段落番号0070、欧州特許公開第0803764A1 号の第20ページ第57行〜第21ページ第7行に記載の特許のものが挙げられる。また、本発明に好ましく用いられるカブリ防止剤は有機ハロゲン化物であり、これらについては、特開平11−65021号の段落番号0111〜0112に記載の特許に開示されているものが挙げられる。特に特願平11−87297号の式(P) で表される有機ハロゲン化合物、特開平10−339934 号の一般式(II)で表される有機ポリハロゲン化合物(具体的にはトリブロモメチルナフチルスルホン、トリブロモメチルフェニルスルホン、トリブロモメチル(4−(2,4,6−トリメチルフェニルスルホニル)フェニル)スルホン等)が好ましい。
【0094】
本発明のカブリ防止剤を感光材料に含有せしめる方法としては、前記還元剤の含有方法に記載の方法が挙げられ、有機ポリハロゲン化合物についても固体微粒子分散物で添加することが好ましい。
【0095】
その他のカブリ防止剤としては特開平11−65021号段落番号0113の水銀(II)塩、同号段落番号0114の安息香酸類、特願平11−87297号の式(Z) で表されるサリチル酸誘導体、特願平11−23995号の式(S) で表されるホルマリンスカベンジャー化合物が挙げられる。
【0096】
本発明における熱現像感光材料はカブリ防止を目的としてアゾリウム塩を含有しても良い。アゾリウム塩としては、特開昭59−193447 号記載の一般式(XI)で表される化合物、特公昭55−12581号記載の化合物、特開昭60−153039 号記載の一般式(II)で表される化合物が挙げられる。アゾリウム塩は感光材料のいかなる部位に添加しても良いが、添加層としては感光性層を有する面の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。アゾリウム塩の添加時期としては塗布液調製のいかなる工程で行っても良く、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でも良いが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。アゾリウム塩の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行っても良い。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加しても良い。本発明においてアゾリウム塩の添加量としてはいかなる量でも良いが、銀1 モル当たり1 ×10−6モル以上2 モル以下が好ましく、1 ×10−3モル以上0.5 モル以下がさらに好ましい。
【0097】
本発明には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができ、特開平10−62899号の段落番号0067〜0069、特開平10−186572 号の一般式(I) で表される化合物及びその具体例として段落番号0033〜0052、欧州特許公開第0803764A1 号の第20ページ第36〜56行、特願平11−273670 号等に記載されている。中でもメルカプト置換複素芳香族化合物が好ましい。
【0098】
本発明においては、ホスホリル基を有する化合物を用いることが好ましく、ホスフィンオキシド類が特に好ましい。具体的には、トリフェニルホスフィンオキシド、トリ−(4−メチルフェニル)ホスフィンオキシド、トリ−(4−メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、トリ−(t−ブチル−フェニル)ホスフィンオキシド、トリ−(3−メチルフェニル)ホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド等が挙げられる。本発明のホスホリル基を有する化合物は、還元剤、ポリハロゲン化合物と同様な方法で感材中に導入することができる。本発明のホスホリル基を有する化合物は還元剤の添加量比(モル比)に対して0.1 〜10の範囲が好ましく、0.1 〜2.0 の範囲がより好ましい。さらに好ましくは0.2 〜1.0 の範囲である。
【0099】
本発明の熱現像感光材料では色調剤の添加が好ましく、色調剤については、特開平10−62899号の段落番号0054〜0055、欧州特許公開第0803764A1 号の第21ページ第23〜48行、特願平10−213487 号に記載されており、特に、フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩、または4−(1− ナフチル) フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロ−1,4− フタラジンジオンなどの誘導体;フタラジノンとフタル酸誘導体( 例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など) との組合せ;フタラジン類(フタラジン、フタラジン誘導体もしくは金属塩、または4−(1− ナフチル) フタラジン、6−イソプロピルフタラジン、6−t−ブチルフラタジン、6−クロロフタラジン、5,7−ジメトキシフタラジンおよび2,3−ジヒドロフタラジンなどの誘導体);フタラジン類とフタル酸誘導体( 例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など) との組合せが好ましく、特にフタラジン類とフタル酸誘導体の組合せが好ましい。
【0100】
本発明の感光性層に用いることのできる可塑剤および潤滑剤については特開平11−65021号段落番号0117、超硬調画像形成のための超硬調化剤については、同号段落番号0118、特開平11−223898 号段落番号0136〜0193、特願平11−87297号の式(H) 、式(1) 〜(3) 、式(A) 、(B) の化合物、特願平11−91652号記載の一般式(III )〜(V)の化合物(具体的化合物:化21〜化24)、硬調化促進剤については特開平11−65021号段落番号0102、特開平11−223898 号段落番号0194〜0195に記載されている。造核剤の添加方法や量については特開平11−223898 号段落番号0182〜0183に記載されている。
【0101】
蟻酸や蟻酸塩を強いかぶらせ物質として用いるには、感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層を有する側に銀1モル当たり5ミリモル以下、さらには1ミリモル以下で含有することが好ましい。
【0102】
本発明の熱現像感光材料で造核剤を用いる場合には五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩を併用して用いることが好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどがある。
【0103】
五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩の使用量(感光材料1mあたりの塗布量)は感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1〜500mg/mが好ましく、0.5 〜100mg/mがより好ましい。
【0104】
本発明における熱現像感光材料は画像形成層の付着防止などの目的で表面保護層を設けることができる。表面保護層については、特開平11−65021号段落番号0119〜0120に記載されている。
【0105】
本発明の表面保護層のバインダーとしてはゼラチンが好ましいがポリビニルアルコール(PVA)を用いることも好ましい。PVAとしては、完全けん化物のPVA−105、部分けん化物のPVA−205,PVA−335、変性ポリビニルアルコールのMP−203(以上、クラレ(株)製の商品名)などが挙げられる。保護層(1層当たり)のポリビニルアルコール塗布量(支持体1m当たり)としては0.3 〜4.0g/mが好ましく、0.3 〜2.0g/mがより好ましい。
【0106】
特に寸法変化が問題となる印刷用途に本発明の熱現像感光材料を用いる場合には、保護層やバック層にもポリマーラテックスを用いることが好ましい。このようなポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などにも記載され、具体的にはメチルメタクリレート(33.5 質量%)/エチルアクリレート(50 質量%)/メタクリル酸(16.5 質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(47.5 質量%)/ブタジエン(47.5 質量%)/イタコン酸(5質量%)コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(58.9 質量%)/2−エチルヘキシルアクリレート(25.4 質量%)/スチレン(8.6質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.1質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(64.0 質量%)/スチレン(9.0質量%)/ブチルアクリレート(20.0 質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.0質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックスなどが挙げられる。さらに、保護層用のバインダーとして、特願平11−6872 号明細書のポリマーラテックスの組み合わせ、特願平11−143058 号明細書の段落番号0021〜0025に記載の技術、特願平11−6872 号明細書の段落番号0027〜0028に記載の技術、特願平10−199626 号明細書の段落番号0023〜0041に記載の技術を適用してもよい。保護層のポリマーラテックスの比率は全バインダーの10質量%以上90質量%以下が好ましく、特に20質量%以上80質量%以下が好ましい。
【0107】
保護層(1層当たり)の全バインダー(水溶性ポリマー及びラテックスポリマーを含む)塗布量(支持体1m当たり)としては0.3 〜5.0g/mが好ましく、0.3 〜2.0g/mがより好ましい。
【0108】
特に寸法変化が問題となる印刷用途に本発明の熱現像感光材料を用いる場合には、保護層やバック層にもポリマーラテックスを用いることが好ましい。このようなポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などにも記載され、具体的にはメチルメタクリレート(33.5 質量%)/エチルアクリレート(50 質量%)/メタクリル酸(16.5 質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(47.5 質量%)/ブタジエン(47.5 質量%)/イタコン酸(5質量%)コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(58.9 質量%)/2−エチルヘキシルアクリレート(25.4 質量%)/スチレン(8.6質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.1質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(64.0 質量%)/スチレン(9.0質量%)/ブチルアクリレート(20.0 質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.0質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックスなどが挙げられる。さらに、保護層用のバインダーとして、特願平11−6872 号明細書のポリマーラテックスの組み合わせ、特願平11−143058 号明細書の段落番号0021〜0025に記載の技術、特願平11−6872 号明細書の段落番号0027〜0028に記載の技術、特願平10−199626 号明細書の段落番号0023〜0041に記載の技術を適用してもよい。保護層のポリマーラテックスの比率は全バインダーの10質量%以上90質量%以下が好ましく、特に20質量%以上80質量%以下が好ましい。
【0109】
保護層(1層当たり)の全バインダー(水溶性ポリマー及びラテックスポリマーを含む)塗布量(支持体1m当たり)としては0.3 〜5.0g/mが好ましく、0.3 〜2.0g/mがより好ましい。
【0110】
本発明の画像形成層塗布液の調製温度は30℃以上65℃以下がよく、さらに好ましい温度は35℃以上60℃未満、より好ましい温度は35℃以上55℃以下である。また、ポリマーラテックス添加直後の画像形成層塗布液の温度が30℃以上65℃以下で維持されることが好ましい。また、ポリマーラテックス添加前に還元剤と有機銀塩が混合されていることが好ましい。
【0111】
本発明における有機銀塩含有流体または熱画像形成層塗布液は、いわゆるチキソトロピー流体であることが好ましい。チキソトロピー性とは剪断速度の増加に伴い、粘度が低下する性質を言う。本発明の粘度測定にはいかなる装置を使用してもよいが、レオメトリックスファーイースト株式会社製RFS フルードスペクトロメーターが好ましく用いられ25℃で測定される。ここで、本発明における有機銀塩含有流体もしくは熱画像形成層塗布液は剪断速度0.1S−1における粘度は400mPa・s 以上100,000mPa・s 以下が好ましく、さらに好ましくは500mPa・s 以上20,000mPa ・s 以下である。また、剪断速度1000S−1 においては1mPa・s 以上200mPa・s 以下が好ましく、さらに好ましくは5mPa・s 以上80mPa ・s 以下である。
【0112】
チキソトロピー性を発現する系は各種知られており高分子刊行会編「講座・レオロジー」、室井、森野共著「高分子ラテックス」(高分子刊行会発行)などに記載されている。流体がチキソトロピー性を発現させるには固体微粒子を多く含有することが必要である。また、チキソトロピー性を強くするには増粘線形高分子を含有させること、含有する固体微粒子の異方形でアスペクト比を大きくすること、アルカリ増粘、界面活性剤の使用などが有効である。
【0113】
本発明における熱現像写真用乳剤は、支持体上に一またはそれ以上の層で構成される。一層の構成は有機銀塩、ハロゲン化銀、現像剤およびバインダー、ならびに色調剤、被覆助剤および他の補助剤などの所望による追加の材料を含まなければならない。二層の構成は、第1 乳剤層( 通常は支持体に隣接した層) 中に有機銀塩およびハロゲン化銀を含み、第2 層または両層中にいくつかの他の成分を含まなければならない。しかし、全ての成分を含む単一乳剤層および保護トップコートを含んでなる二層の構成も考えられる。多色感光性熱現像写真材料の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928 号に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。多染料多色感光性熱現像写真材料の場合、各乳剤層は、一般に、米国特許第4,460,681 号に記載されているように、各感光性層の間に官能性もしくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
【0114】
本発明の感光性層には色調改良、レーザー露光時の干渉縞発生防止、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料(例えばC.I.Pigment Blue 60 、C.I.Pigment Blue 64 、C.I.Pigment Blue 15:6 )を用いることができる。これらについてはWO98/36322号、特開平10−268465 号、同11−338098 号等に詳細に記載されている。
【0115】
本発明における熱現像感光材料においては、アンチハレーション層を感光性層に対して光源から遠い側に設けることができる。
【0116】
熱現像感光材料は一般に、感光性層に加えて非感光性層を有する。非感光性層は、その配置から(1)感光性層の上(支持体よりも遠い側)に設けられる保護層、(2)複数の感光性層の間や感光性層と保護層の間に設けられる中間層、(3)感光性層と支持体との間に設けられる下塗り層、(4)感光性層の反対側に設けられるバック層に分類できる。フィルター層は、(1)または(2)の層として感光材料に設けられる。アンチハレーション層は、(3)または(4)の層として感光材料に設けられる。
【0117】
アンチハレーション層については特開平11−65021号段落番号0123〜0124、特開平11−223898 号、同9−230531号、同10−36695号、同10−104779 号、同11−231457 号、同11−352625 号、同11−352626 号等に記載されている。
【0118】
アンチハレーション層には、露光波長に吸収を有するアンチハレーション染料を含有する。露光波長が赤外域にある場合には赤外線吸収染料を用いればよく、その場合には可視域に吸収を有しない染料が好ましい。
【0119】
可視域に吸収を有する染料を用いてハレーション防止を行う場合には、画像形成後には染料の色が実質的に残らないようにすることが好ましく、熱現像の熱により消色する手段を用いることが好ましく、特に非感光性層に熱消色染料と塩基プレカーサーとを添加してアンチハレーション層として機能させることが好ましい。これらの技術については特開平11−231457 号等に記載されている。
【0120】
消色染料の添加量は、染料の用途により決定する。一般には、目的とする波長で測定したときの光学濃度(吸光度)が0.1 を越える量で使用する。光学濃度は、0.2 〜2であることが好ましい。このような光学濃度を得るための染料の使用量は、一般に0.001 〜1g/m程度である。
【0121】
なお、このように染料を消色すると、熱現像後の光学濃度を0.1以下に低下させることができる。二種類以上の消色染料を、熱消色型記録材料や熱現像感光材料において併用してもよい。同様に、二種類以上の塩基プレカーサーを併用してもよい。
【0122】
このような消色染料と塩基プレカーサーを用いる熱消色においては、特開平11−352626 号に記載のような塩基プレカーサーと混合すると融点を3℃(deg)以上降下させる物質(例えば、ジフェニルスルフォン、4−クロロフェニル(フェニル)スルフォン)を併用することが熱消色性等の点で好ましい。
【0123】
本発明においては、銀色調、画像の経時変化を改良する目的で300 〜450nm に吸収極大を有する着色剤を添加することができる。このような着色剤は、特開昭62−210458 号、同63−104046 号、同63−103235 号、同63−208846 号、同63−306436 号、同63−314535 号、特開平01−61745号、特願平11−276751 号などに記載されている。
【0124】
このような着色剤は、通常、0.1mg/m〜1g/mの範囲で添加され、添加する層としては感光性層の反対側に設けられるバック層が好ましい。
【0125】
本発明における熱現像感光材料は、支持体の一方の側に少なくとも1 層のハロゲン化銀乳剤を含む感光性層を有し、他方の側にバック層を有する、いわゆる片面感光材料であることが好ましい。
【0126】
本発明において、搬送性改良のためにマット剤を添加することが好ましく、マット剤については、特開平11−65021号段落番号0126〜0127に記載されている。マット剤は感光材料1m当たりの塗布量で示した場合、好ましくは1 〜400mg/mより好ましくは5 〜300mg/mである。
【0127】
また、乳剤面のマット度は星屑故障が生じなければいかようでも良いが、ベック平滑度が30秒以上2000秒以下が好ましく、特に40秒以上1500秒以下が好ましい。ベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119 「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI 標準法T479により容易に求めることができる。
【0128】
本発明においてバック層のマット度としてはベック平滑度が1200秒以下10秒以上が好ましく、800 秒以下20秒以上が好ましく、さらに好ましくは500 秒以下40秒以上である。
【0129】
本発明において、マット剤は感光材料の最外表面層もしくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。
【0130】
本発明に適用することのできるバック層については特開平11−65021号段落番号0128〜0130に記載されている。
【0131】
本発明における熱現像感光材料は、熱現像処理前の膜面pHが6.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは5.5以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸、アンモニアなどの揮発性の塩基を用いることが、膜面pHを低減させるという観点から好ましい。特にアンモニアは揮発しやすく、塗布する工程や熱現像される前に除去できることから低膜面pHを達成する上で好ましい。なお、膜面pHの測定方法は、特願平11−87297号明細書の段落番号0123に記載されている。
【0132】
本発明の感光性層、保護層、バック層など各層には硬膜剤を用いても良い。硬膜剤の例としてはT.H.James 著“THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS FOURTH EDITION ”(Macmillan Publishing Co.,Inc.刊、1977年刊)77 頁から87頁に記載の各方法があり、同書78頁など記載の多価金属イオン、米国特許4,281,060 号、特開平6−208193号などのポリイソシアネート類、米国特許4,791,042 号などのエポキシ化合物類、特開昭62−89048号などのビニルスルホン系化合物類が好ましく用いられる。
【0133】
硬膜剤は溶液として添加され、この溶液の保護層塗布液中への添加時期は、塗布する180 分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards 、A.W.Nienow著、高橋幸司訳“液体混合技術”( 日刊工業新聞社刊、1989年) の第8 章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0134】
本発明に適用できる界面活性剤については特開平11−65021号段落番号0132、溶剤については同号段落番号0133、支持体については同号段落番号0134、帯電防止又は導電層については同号段落番号0135、カラー画像を得る方法については同号段落番号0136に、滑り剤については特開平11−84573号段落番号0061〜0064や特願平11−106881 号段落番号0049〜0062記載されている。
【0135】
透明支持体は二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。医療用の熱現像感光材料の場合、透明支持体は青色染料(例えば、特開平8−240877号実施例記載の染料−1)で着色されていてもよいし、無着色でもよい。支持体には、特開平11−84574号の水溶性ポリエステル、同10−186565 号のスチレンブタジエン共重合体、特願平11−106881 号段落番号0063〜0080の塩化ビニリデン共重合体などの下塗り技術を適用することが好ましい。また、帯電防止層若しくは下塗りについて特開昭56−143430 号、同56−143431 号、同58−62646号、同56−120519 号、特開平11−84573号の段落番号0040〜0051、米国特許第5,575,957 号、特開平11−223898 号の段落番号0078〜0084に記載の技術を適用することができる。
【0136】
熱現像感光材料は、モノシート型(受像材料のような他のシートを使用せずに、熱現像感光材料上に画像を形成できる型)であることが好ましい。
【0137】
熱現像感光材料には、さらに、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤あるいは被覆助剤を添加してもよい。各種の添加剤は、感光性層あるいは非感光性層のいずれかに添加する。それらについてWO98/36322号、EP803764A1号、特開平10−186567 号、同10−18568号等を参考にすることができる。
【0138】
本発明における熱現像感光材料はいかなる方法で塗布されても良い。具体的には、エクストルージョンコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、ナイフコーティング、フローコーティング、または米国特許第2,681,294 号に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを含む種々のコーティング操作が用いられ、Stephen F.Kistler 、Petert M.Schweizer著“LIQUID FILM COATING ”(CHAPMAN & HALL 社刊、1997年)399頁から536 頁記載のエクストルージョンコーティング、またはスライドコーティング好ましく用いられ、特に好ましくはスライドコーティングが用いられる。スライドコーティングに使用されるスライドコーターの形状の例は同書427 頁のFigure 11b.1にある。また、所望により同書399 頁から536 頁記載の方法、米国特許第2,761,791 号および英国特許第837,095 号に記載の方法により2 層またはそれ以上の層を同時に被覆することができる。
【0139】
本発明における熱現像感光材料に用いることのできる技術としては、EP803764A1号、EP883022A1号、WO98/36322号、特開昭56−62648号、同58−62644号、特開平9−281637、同9−297367号、同9−304869号、同9−311405号、同9−329865号、同10−10669号、同10−62899号、同10−69023号、同10−186568 号、同10−90823号、同10−171063 号、同10−186565 号、同10−186567 号、同10−186569 号〜同10−186572 号、同10−197974 号、同10−197982 号、同10−197983 号、同10−197985 号〜同10−197987 号、同10−207001 号、同10−207004 号、同10−221807 号、同10−282601 号、同10−288823 号、同10−288824 号、同10−307365 号、同10−312038 号、同10−339934 号、同11−7100 号、同11−15105号、同11−24200号、同11−24201号、同11−30832号、同11−84574号、同11−65021号、同11−109547 号、同11−125880 号、同11−129629 号、同11−133536 号〜同11−133539 号、同11−133542 号、同11−133543 号、同11−223898 号も挙げられる。
【0140】
本発明の熱現像感光材料はいかなる方法で現像されても良いが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。好ましい現像温度としては80〜250 ℃であり、さらに好ましくは100 〜140 ℃である。現像時間としては1 〜180 秒が好ましく、10〜90秒がさらに好ましく、10〜40秒が特に好ましい。
【0141】
熱現像の方式としてはプレートヒーター方式が好ましい。プレートヒーター方式による熱現像方式とは特開平11−133572 号に記載の方法が好ましく、潜像を形成した熱現像感光材料を熱現像部にて加熱手段に接触させることにより可視像を得る熱現像装置であって、前記加熱手段がプレートヒータからなり、かつ前記プレートヒータの一方の面に沿って複数個の押えローラが対向配設され、前記押えローラと前記プレートヒータとの間に前記熱現像感光材料を通過させて熱現像を行うことを特徴とする熱現像装置である。プレートヒータを2〜6段に分けて先端部については1〜10℃程度温度を下げることが好ましい。このような方法は特開昭54−30032号にも記載されており、熱現像感光材料に含有している水分や有機溶媒を系外に除外させることができ、また、急激に熱現像感光材料が加熱されることでの熱現像感光材料の支持体形状の変化を押さえることもできる。
【0142】
本発明の感光材料はいかなる方法で露光されても良いが、露光光源としてレーザー光が好ましい。本発明によるレーザー光としては、ガスレーザー(Ar+、He−Ne)、YAG レーザー、色素レーザー、半導体レーザーなどが好ましい。また、半導体レーザーと第2高調波発生素子などを用いることもできる。好ましくは赤〜赤外発光のガス若しくは半導体レーザーである。
【0143】
露光部及び熱現像部を備えた医療用のレーザーイメージャーとしては富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DPLを挙げることができる。FM−DPLに関しては、Fuji Medical Review No.8,page 39〜55に記載されており、それらの技術は本発明の熱現像感光材料のレーザーイメージャーとして適用することは言うまでもない。また、DICOM 規格に適応したネットワークシステムとして富士メディカルシステムが提案した「AD network」の中でのレーザーイメージャー用の熱現像感光材料としても適用することができる。
【0144】
本発明における熱現像感光材料は、銀画像による黒白画像を形成し、医療診断用の熱現像感光材料、工業写真用熱現像感光材料、印刷用熱現像感光材料、COM用の熱現像感光材料として使用されることが好ましい。
【0145】
(PET 支持体の作成)テレフタル酸とエチレングリコ−ルを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66(フェノ−ル/ テトラクロルエタン=6/4(重量比)中25℃で測定)のPET を得た。これをペレット化した後130 ℃で4 時間乾燥し、300 ℃で溶融後T 型ダイから押し出して急冷し、熱固定後の膜厚が175 μm になるような厚みの未延伸フィルムを作成した。
【0146】
これを、周速の異なるロ−ルを用い3.3 倍に縦延伸、ついでテンタ−で4.5 倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110 ℃、130 ℃であった。この後、240 ℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンタ−のチャック部をスリットした後、両端にナ−ル加工を行い、4kg/cmで巻き取り、厚み175 μm のロ−ルを得た。
【0147】
(表面コロナ処理)ピラー社製ソリッドステートコロナ処理機6KVAモデルを用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV ・A ・分/mの処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランスは1.6mm であった。
【0148】
(1)下塗層塗布液の作成
処方▲1▼(感光層側下塗り層用)
高松油脂( 株) 製ペスレジンA−515GB(30質量%溶液) :234 g、ポリエチレングリコールモノノニルフェニルエーテル( 平均エチレンオキシド数=8.5)10質量%溶液:21.5g、綜研化学( 株) 製MP−1000(ポリマー微粒子、平均粒径0.4 μm):0.91g 、蒸留水:744ml
処方▲2▼(バック面第1層用)
ブタジエン−スチレン共重合体ラテックス(固形分40質量%、ブタジエン/スチレン重量比=32/68 ):158 g、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジンナトリウム塩8質量%水溶液:20g 、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液:10ml、蒸留水:854ml
処方▲3▼(バック面側第2層用)
SnO2/SbO(9/1重量比、平均粒径0.038 μm 、17質量%分散物):84g、ゼラチン(10%水溶液) :89.2g、信越化学( 株) 製メトローズTC−5(2% 水溶液) :8.6g、綜研化学( 株) 製MP−1000(ポリマー微粒子) :0.01g 、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液:10ml、NaOH(1%):6ml 、プロキセル(ICI社製):1ml 、蒸留水:805ml
( 下塗り支持体の作成)
上記厚さ175μm の2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体の両面それぞれに、上記コロナ放電処理を施した後、片面(感光性層面)に下塗り塗布液処方▲1▼をワイヤーバーでウエット塗布量が6.6ml/m(片面当たり)になるように塗布して180 ℃で5分間乾燥し、ついでこの裏面(バック面)に下塗り塗布液処方▲2▼をワイヤーバーでウエット塗布量が5.7ml/mになるように塗布して180 ℃で5分間乾燥し、更に裏面(バック面)に下塗り塗布液処方▲3▼をワイヤーバーでウエット塗布量が7.7ml/mになるように塗布して180 ℃で6 分間乾燥して下塗り支持体を作成した。
【0149】
(バック面塗布液の調製)
(塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a) の調製)塩基プレカーサー化合物11を64g 、ジフェニルスルフォンを28g および花王(株)製界面活性剤デモールN10gを蒸留水220ml と混合し、混合液をサンドミル(1/4Gallon サンドグラインダーミル、アイメックス(株)製)を用いてビーズ分散し、平均粒子径0.2 μmの、塩基プレカーサー化合物の固体微粒子分散液(a) を得た。
【0150】
(染料固体微粒子分散液の調製)シアニン染料化合物13を9.6gおよびP−ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム5.8gを蒸留水305ml と混合し、混合液をサンドミル(1/4Gallon サンドグラインダーミル、アイメックス(株)製)を用いてビーズ分散して平均粒子径0.2 μmの染料固体微粒子分散液を得た。
【0151】
(ハレーション防止層塗布液の調製)ゼラチン17g 、ポリアクリルアミド9.6g、上記塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)70g、上記染料固体微粒子分散液56g 、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒子サイズ6.5 μm)1.5g、ベンゾイソチアゾリノン0.03g 、ポリエチレンスルフォン酸ナトリウム2.2g、青色染料化合物14を0.2g、黄色染料化合物15を3.9g、水を844ml 混合し、ハレーション防止層塗布液を調製した。
【0152】
(バック面保護層塗布液の調製)容器を40℃に保温し、ゼラチン50g 、ポリスチレンスルフォン酸ナトリウム0.2g、N,N−エチレンビス(ビニルスルフォンアセトアミド)2.4g 、t−オクチルフェノキシエトキシエタンスルフォン酸ナトリウム1g、ベンゾイソチアゾリノン30mg、N−パーフルオロオクチルスルフォニル−N− プロピルアラニンカリウム塩37mg、ポリエチレングリコールモノ(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N− プロピル−2− アミノエチル)エーテル[ エチレンオキサイド平均重合度15]0.15g、C17SOK32mg 、C17SON(C)(CHCHO)(CH−SONa64mg 、アクリル酸/エチルアクリレート共重合体(共重合重量比5 /95)8.8g、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)0.6g、流動パラフィン乳化物を流動パラフィンとして1.8g、水を950ml 混合してバック面保護層塗布液とした。
【0153】
《ハロゲン化銀乳剤1の調製》蒸留水1421mlに1 質量%臭化カリウム溶液3.1ml を加え、さらに1mol/L濃度の硫酸を3.5ml 、フタル化ゼラチン31.7g を添加した液をチタンコートしたステンレス製反応壺中で攪拌しながら、34℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え95.4mlに希釈した溶液Aと臭化カリウム15.9g を蒸留水にて容量97.4mlに希釈した溶液Bを一定流量で45秒間かけて全量添加した。その後3.5 質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンツイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加え317.5ml に希釈した溶液Cと臭化カリウム45.8g を蒸留水にて容量400ml に希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で20分間かけて全量添加し、溶液DはpAg を8.1 に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。銀1 モル当たり1 ×10−4モルになるよう六塩化イリジウム(III) 酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5 秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1 モル当たり3 ×10−4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8 に調整し、攪拌を止め、沈降/ 脱塩/ 水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9 に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作成した。
【0154】
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3− オンのメタノール溶液を5ml 加え、40分後に分光増感色素Aのメタノール溶液を銀1 モル当たり1 ×10−3モル加え、1分後に47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1 モルに対して7.6 ×10−5モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Bをメタノール溶液で銀1 モル当たり1.9 ×10−4モル加えて91分間熟成した。N,N’− ジヒドロキシ−N”−ジエチルメラミンの0.8 質量%メタノール溶液1.3ml を加え、さらに4 分後に、5−メチル−2− メルカプトベンヅイミダゾールをメタノール溶液で銀1 モル当たり3.7 ×10−3モル及び1−フェニル−2− ヘプチル−5− メルカプト−1,3,4− トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して4.9 ×10−3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤1を作成した。
【0155】
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.046 μm 、球相当径の変動係数20% の純臭化銀粒子であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。この粒子の{100 }面比率は、クベルカムンク法を用いて80% と求められた。
【0156】
《ハロゲン化銀乳剤2の調製》ハロゲン化銀乳剤1の調製において、粒子形成時の液温34℃を49℃に変更し、溶液Cの添加時間を30分にして、六シアノ鉄(II)カリウムを除去した以外は同様にして、ハロゲン化銀乳剤2の調製を行った。ハロゲン化銀乳剤1と同様に沈殿/脱塩/水洗/分散を行った。更に分光増感色素Aの添加量を銀1 モル当たり7.5 ×10−4モル、テルル増感剤Bの添加量を銀1 モル当たり1.1 ×10−4モル、1−フェニル−2− ヘプチル−5− メルカプト−1,3,4− トリアゾールを銀1モルに対して3.3 ×10−3モルに変えた以外は乳剤1と同様にして分光増感、化学増感及び5−メチル−2− メルカプトベンヅイミダゾール、1−フェニル−2− ヘプチル−5− メルカプト−1,3,4− トリアゾールの添加を行い、ハロゲン化銀乳剤2を得た。ハロゲン化銀乳剤2の乳剤粒子は、平均球相当径0.080 μm 、球相当径の変動係数20% の純臭化銀立方体粒子であった。
【0157】
《ハロゲン化銀乳剤3の調製》ハロゲン化銀乳剤1の調製において、粒子形成時の液温34℃を27℃に変更する以外は同様にして、ハロゲン化銀乳剤3の調製を行った。また、ハロゲン化銀乳剤1と同様に沈殿/脱塩/水洗/分散を行った。分光増感色素Aの固体分散物( ゼラチン水溶液) の添加量を銀1 モル当たり6 ×10−3モル、テルル増感剤Bの添加量を銀1 モル当たり5.2 ×10−4モルに変えた以外は乳剤1と同様にして、ハロゲン化銀乳剤3を得た。ハロゲン化銀乳剤3の乳剤粒子は、平均球相当径0.038 μm 、球相当径の変動係数20% の純臭化銀立方体粒子であった。
【0158】
《塗布液用混合乳剤A の調製》ハロゲン化銀乳剤1を70質量% 、ハロゲン化銀乳剤2を15質量%、ハロゲン化銀乳剤3を15質量% 溶解し、ベンゾチアゾリウムヨーダイドを1質量%水溶液にて銀1 モル当たり7 ×10−3モル添加した。
【0159】
《りん片状脂肪酸銀塩の調製》ヘンケル社製ベヘン酸(製品名Edenor C22−85R)87.6kg、蒸留水423L、5N−NaOH 水溶液49.2L 、tert− ブタノール120Lを混合し、75℃にて1 時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液を得た。別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2L(pH4.0 )を用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30L のtert−ブタノールを入れた反応容器を30℃に保温し、撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ62分10秒と60分かけて添加した。このとき、硝酸銀水溶液添加開始後7分20秒間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後9分30秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、スチームトレースにより保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるようにスチーム開度を調製した。また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調製した。
【0160】
ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、25℃に降温した。その後、遠心濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が100 μS/cmになるまで水洗した。こうして脂肪酸銀塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
【0161】
得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均値でa=0.14μm 、b=0.4 μm 、c=0.6 μm 、平均アスペクト比5.2 、平均球相当径0.52μm 、球相当径の変動係数15%のりん片状の結晶であった(a,b,c は本文の規定)。
【0162】
乾燥固形分100 g相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217)7.4 gおよび水を添加し、全体量を385 gとしてからホモミキサーにて予備分散した。
【0163】
次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−110S−EH、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、G10Zインタラクションチャンバー使用)の圧力を1750kg/cmに調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
【0164】
《還元剤の25質量%分散物の調製》1,1−ビス(2− ヒドロキシ−3,5− ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ( 株) 製、ポバールMP203 )の20質量%水溶液10kgに、水16kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mm のジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2 :アイメックス(株)製) にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製し、還元剤分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.42μm 、最大粒子径2.0 μm 以下であった。得られた還元剤分散物は孔径10.0μm のポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0165】
《メルカプト化合物の10質量%分散物の調製》1−フェニル−2− ヘプチル−5− メルカプト−1,3,4− トリアゾールを5kg と変性ポリビニルアルコール(クラレ( 株) 製ポバールMP203 )の20質量%水溶液5kg に、水8.3kg を添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mm のジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2 :アイメックス(株)製) にて6時間分散したのち、水を加えてメルカプト化合物の濃度が10質量%になるように調製し、メルカプト分散物を得た。こうして得たメルカプト化合物分散物に含まれるメルカプト化合物粒子はメジアン径0.40μm 、最大粒子径2.0 μm 以下であった。得られたメルカプト化合物分散物は孔径10.0μm のポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。また、使用直前に再度孔径10μm のポリプロピレン製フィルターにてろ過した。
【0166】
《有機ポリハロゲン化合物の20質量%分散物−1の調製》トリブロモメチルナフチルスルホン5kg と変性ポリビニルアルコール(クラレ( 株) 製ポバールMP203 )の20質量%水溶液2.5kg と、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液213gと、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mm のジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2 :アイメックス(株)製) にて5 時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が20質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.36μm 、最大粒子径2.0 μm 以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0 μm のポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0167】
《有機ポリハロゲン化合物の25質量%分散物−2の調製》有機ポリハロゲン化合物の20質量%分散物−1と同様に、但し、トリブロモメチルナフチルスルホン5kg の代わりにトリブロモメチル(4−(2,4,6−トリメチルフェニルスルホニル)フェニル)スルホン5kg を用い、分散し、この有機ポリハロゲン化合物が25質量%となるように希釈し、ろ過を行った。こうして得た有機ポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.38μm 、最大粒子径2.0 μm 以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0 μm のポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0168】
《有機ポリハロゲン化合物の30質量%分散物−3の調製》有機ポリハロゲン化合物の20質量%分散物−1と同様に、但し、トリブロモメチルナフチルスルホン5kg の代わりにトリブロモメチルフェニルスルホン5kg を用い、20質量%MP203 水溶液を5kg とし、分散し、この有機ポリハロゲン化合物が30質量%となるように希釈し、ろ過を行った。こうして得た有機ポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.41μm 、最大粒子径2.0 μm 以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0 μm のポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。また、収納後、使用までは10℃以下で保管した。
【0169】
《フタラジン化合物の5 質量%溶液の調製》8Kg のクラレ(株)製変性ポリビニルアルコールMP203 を水174.57Kgに溶解し、次いでトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.15Kgと6−イソプロピルフタラジンの70質量%水溶液14.28Kg を添加し、6−イソプロピルフタラジンの5 質量%液を調製した。
【0170】
《顔料の20質量%分散物の調製》C.I.Pigment Blue 60 を64g と花王( 株) 製デモールN を6.4gに水250gを添加し良く混合してスラリーとした。平均直径0.5mm のジルコニアビーズ800 gを用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4 Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて25時間分散し顔料分散物を得た。こうして得た顔料分散物に含まれる顔料粒子は平均粒径0.21μm であった。
【0171】
《SBR ラテックス40質量%の調製》限外濾過(UF)精製したSBR ラテックスは以下のように得た。
【0172】
下記のSBR ラテックスを蒸留水で10倍に希釈したものをUF− 精製用モジュールFS03−FC−FUY03A1(ダイセン・メンブレン・システム( 株))を用いてイオン伝導度が1.5mS/cmになるまで希釈精製し、三洋化成(株)製サンデット−BL を0.22質量%になるよう添加した。更にNaOHとNH4OH を用いてNa+ イオン:NH4+イオン=1:2.3 (モル比)になるように添加し、pH8.4 に調整した。この時のラテックス濃度は40質量%であった(SBRラテックス:−St(68)−Bu(29)−AA(3)− のラテックス) 。
【0173】
《乳剤層(感光性層)塗布液の調製》先ず、調整・脱気装置の攪拌槽に、上記で得た顔料の20質量%水分散物を5.5kg を送液した後、攪拌槽内における送液管の出口位置を、最初に送液された顔料水分散物の液面より約3cm下方に設定して、有機酸銀分散物515kg 添加した。続いて、ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ( 株) 製) の20質量%水溶液25kg、上記25質量%還元剤分散物125kg 、有機ポリハロゲン化合物分散物−1,−2,−3を5:1:3 (重量比)で総量81.5kg、メルカプト化合物10% 分散物31kg、限外濾過(UF)精製しpH調整したSBR ラテックス40質量%を530kg、フタラジン化合物の5 質量%溶液を90L をそれぞれ添加して塗布液用母液を調製した。この場合、ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ( 株) 製) の20質量%水溶液の塗布液構成液における送液管の出口位置は、液面の約20cm下方に位置するようにスライドさせた。攪拌槽は、内径160cm を使用すると共に、攪拌翼は直径40cmのタービン翼を使用した。攪拌槽はジャケット付きであり、保温水を循環することによりタンク内を35°C に保った。塗布液構成液を全て攪拌槽に送液した後、攪拌槽内の圧力を絶対圧で30kPa に減圧し、タービン翼の回転数100rpmで180 分攪拌混合及び減圧脱泡した。
【0174】
次に、塗布液母液をインライン混合器へ送液す流入管の混合容器直前において、添加ラインからハロゲン化銀混合乳剤A を50kg送液添加し、インライン混合器で混合し、乳剤層塗布液を調製した。
【0175】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれらに限定されない。また、説明において実施例1及び実施例9で実験条件を詳細に説明し、実施例2〜8、10〜12及び比較例1〜11は、実施例1及び実施例9と同じ条件については説明を省略している。
【0176】
<実験1>
切り口映り起因の塗布ムラを塗布前の熱処理と塗布操作因子の最適化により解消するための実験を実施例1〜7として行なった。また、比較実験を比較例1〜4として行なった。
【0177】
[ウェブの面質と塗布面質の評価]
それぞれの実験において、ウェブの面質と塗布面質の評価を行ない、後にまとめて表1に示す。評価方法は、ウェブの面質は、目視により行ない、擦り傷が見られず良好(○)と擦り傷が見られた(×)との2段階評価により行なった。また、塗布面質の評価は、塗布膜表面に全く問題が無い(○)、切り口映り上に塗布ムラが生じたが実用上問題が無い(△)、耳端部に厚塗りが発生し、製品として問題がある(×1)、風ムラが生じ製品として問題がある(×2)の3段階評価で行なった。
【0178】
[実施例1]
塗布装置としてスライドビード塗布装置を用い、上記した《乳剤層(感光性層)塗布液の調製》で調製した塗布液を含む複数種類の塗布液を塗布速度120m/分で重層同時塗布を行った。ダイのリップ54とウェブ10との距離dは220μmに設定した。加熱ローラは、加熱風を循環可能な加熱ゾーン内に3本設置した。表1中の加熱ローラ温度は、最下流の加熱ローラ温度であり、60℃の場合、上流側から1本目が30℃、2本目が45℃、3本目が60℃である。また、加熱ゾーンにおけるウェブのドロー率は+0.4%とし、これら加熱ローラにおけるウェブのラップ角は180°とした。加熱ゾーンを経由した後に、ウェブは冷却ゾーンに送り込まれる。ここでは30℃の風が循環されている。また冷却ゾーン内には冷却ロールが設置されており、加熱ゾーンで昇温したウェブの温度はここで降温する。冷却ゾーンと塗布装置との間には、非接触の遠赤外温度センサが設置され、ウェブの塗布前温度が測定される。冷却ローラの温度は、塗布前温度の目標に応じて温度センサからの値が温度制御機にフィードバックされ、冷却ローラの温度が調整される。本実施例では、ウェブの塗布前温度が35℃になるように制御した。このようにして、ウェブの表面平滑化処理をした後に、背面減圧度を490Paとして、前述した塗布液の塗布を行ない、フイルムを製造した。
【0179】
得られたフイルムを乾燥後に、ウェブを接合した直前部で塗布前には切り口映りが存在した箇所の塗布ムラを目視にて観察した所、塗布ムラは見られなかった(○)。また、ウェブの擦り傷も見られなかった(○)。
【0180】
[実施例2ないし実施例6]
実施例2ないし実施例6の各実験条件については、表1にまとめて示す。なお、表1中の加熱ローラの温度が90℃とは、上流側から1本目が65℃、2本目が80℃、3本目が90℃であることを意味している。表1に記載した以外の実験条件は実施例1と同じ条件で行なった。結果は、表1にまとめて示す。
【0181】
[実施例7]
実施例7の実験では、加熱ゾーンにおけるウェブの加熱を行なわなかった。それ以外の条件は、実施例1と同じ条件で行なった。結果は、表1にまとめて示す。
【0182】
[比較例1ないし比較例4]
比較例1ないし比較例4の各実験条件については、表1にまとめて示す。なお、それ以外の実験条件は、実施例1と同じ条件で行なった、結果は、表1にまとめて示す。
【0183】
【表1】
Figure 2005007258
【0184】
表1から、ウェブに塗布液を塗布する前に平滑化処理を行なえば、良好な塗布面質の塗布膜が得られることが分かる。実施例7から、その平滑化処理は必ずしもウェブを加熱する工程を経る必要が無いことも分かる。
【0185】
<実験2>
ウェブ表面の帯電ムラに起因する塗布ムラを抑制する実験を実験2とし、実施例8ないし実施例11として行なった。また、比較実験として、比較例5と比較例6の実験も行なった。
【0186】
[ウェブの搬送性と塗布面質の評価]
そのぞれの実験において、ウェブの搬送性と塗布膜の塗布面質の評価を行ない、後に示す表2にまとめて示す。評価方法は、ウェブの搬送性に問題が無い(○)と、ウェブのスプライン部が塗布装置に接触してしまい切断の問題が生じた(×)との2段階評価で行なった。また、塗布面質の評価は、塗布膜表面に全く問題が無い(◎)、塗布膜表面に問題が無い(○)、塗布膜表面に若干の塗布ムラが生じたが製品の種類によっては使用可能である(△)、帯電ムラ模様のムラが生じて、製品として使用不可能であった(×3)、木目状のムラが生じ、製品として使用不可能であった(×4)の4段階評価で行なった。
【0187】
[実施例8]
塗布装置としてスライドビード塗布装置を用い、上記した《乳剤層(感光性層)塗布液の調製》で調製した塗布液を含む複数種類の塗布液を塗布速度120m/分で重層同時塗布を行った。また、塗布直前に帯電器により、ウェブの塗布面側に電荷を400±100V帯電させ、帯電ムラを発生させた。帯電は、10mm間隔でビニールテープを張り付けたローラにより、塗布面側に100μmのタングステンワイヤによるコロナ放電で行なった。この条件下で、塗布速度Uを3(m/s)、リップとウェブとの距離dを180μm(=1.8×10−4)とした。この場合の剪断速度(U/d)は、16700(1/s)となり、最下層の塗布液の実効粘度は15mPa・sであった。また、ウェブの温度は35℃、塗布液の温度は36℃、背面減圧度は490Paにして、塗布液を塗布した。ウェブの搬送性と塗布膜の塗布ムラを目視で観測した。この条件下では、帯電ムラの搬送性の問題無し(○)に帯電ムラ起因の塗布ムラを排除でき、塗布面質にも問題が生じなかった(○)。
【0188】
[実施例9ないし実施例11]
実施例9ないし実施例11の各実験条件については、表2にまとめて示した。なお、それ以外の実験条件は実施例8と同じ条件で行なった。結果は、表2にまとめて示す。
【0189】
[比較例5と比較例6]
比較例5と比較例6の各実験条件については、表2にまとめて示した。なお、それ以外の実験条件は、実施例8と同じ条件で行なった。結果は、表2にまとめて示す。
【0190】
【表2】
Figure 2005007258
【0191】
表2から、最下層の塗布液の実効粘度を15〜30mPa・sの範囲にした実験(実施例8ないし実施例11)では、塗布面質が良好なものが得られることが分かる。特に、最下層の塗布液の実効粘度を30mPa・sにした実施例9、背面減圧度を686Paにした実施例10の各実験結果からは、塗布面質が全く問題が無い(◎)塗布膜が形成されたことが分かる。
【0192】
【発明の効果】
本発明の塗布方法によれば、ダイから塗布液を連続走行するウェブに塗布する塗布方法において、塗布前に前記ウェブの表面を平滑化処理するから、帯電ムラのみならずウェブ表面に凹凸ムラが存在する場合でも塗布ムラを解消することが可能となった。
【0193】
また、前記平滑化処理は、加熱工程と冷却工程とを含み、前記加熱工程が、50〜125℃の温度範囲の加熱ローラにより前記ウェブを加熱し、かつ30〜125℃の温度範囲の風を送り込む工程であり、前記冷却工程が、冷却ローラにより前記ウェブを25〜45℃に冷却する工程であれば、ウェブ表面の凹凸を平滑化する効果がより得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る塗布ラインの概略図
【図2】図1に示した塗布ラインを構成する塗布装置の要部拡大図
【図3】ラップ角を説明するための図
【図4】動的接触線を説明するための図
【図5】バルクロールを説明するための図
【図6】切り口映りを説明するための図
【図7】切り口映りを説明するための図
【符号の説明】
10…ウェブ、12…平滑化処理室、13…加熱ゾーン、14…冷却ゾーン、15…加熱ローラ、16…温風機、17、20…搬送ローラ、18…冷却ローラ、19…冷風機、21…温度センサ、22…温度制御機、30…塗布装置、31…ダイ、32…背面減圧室、33…バックアップローラ、35…塗布膜、44…塗布液、54…リップ、60、63、64、65…ローラ、61、66…ウェブ、62a、62b、67a、67b…延長線

Claims (14)

  1. 熱現像感光材料の製造工程で、ダイから塗布液を連続走行するウェブに塗布する塗布方法において、
    塗布前に前記ウェブの表面を平滑化処理することを特徴とする塗布方法。
  2. 前記平滑化処理が、
    前記ウェブを加熱する加熱工程と、
    前記ウェブを冷却する冷却工程と、
    を含むことを特徴とする請求項1記載の塗布方法。
  3. 前記加熱工程が、
    50〜125℃の温度範囲の加熱ローラにより前記ウェブを加熱する工程と、
    30〜125℃の温度範囲の風を送り込む工程と、
    のうち少なくとも1つの工程を含むことを特徴とする請求項2記載の塗布方法。
  4. 前記冷却工程が、
    冷却ローラにより前記ウェブを25〜45℃に冷却する工程であることを特徴とする請求項2または3記載の塗布方法。
  5. 前記冷却工程が、
    前記ウェブの温度より低い温度の風を送り込むことを特徴とする請求項2ないし4いずれか1つ記載の塗布方法。
  6. 前記加熱ローラが前記ウェブを牽引する際のドロー率を、
    +0.2〜+2.0%の範囲にすることを特徴とする請求項3ないし5いずれか1つ記載の塗布方法。
  7. 前記冷却工程後から前記ウェブに前記塗布液を塗布する前に、
    前記ウェブの塗布前温度を測定し、
    その塗布前温度に基づいて、前記加熱工程と前記冷却工程とにおける前記ウェブの温度を制御することを特徴とする請求項2ないし6いずれか1つ記載の塗布方法。
  8. 前記ウェブの塗布前温度が、25〜45℃の温度範囲にすることを特徴とする請求項7記載の塗布方法。
  9. 前記加熱ローラが複数設けられたものであって、
    下流側の加熱ローラの温度を、上流側の加熱ローラの温度より高くすることを特徴とする請求項3ないし8いずれか1つ記載の塗布方法。
  10. 前記冷却ローラが複数設けられたものであって、
    下流側の冷却ローラの温度を、上流側の冷却ローラの温度より低くすることを特徴とする請求項4ないし9いずれか1つ記載の塗布方法。
  11. 前記加熱工程には、前記加熱ローラと前記ウェブを走行させるための搬送ローラとのうち少なくとも1つのローラが設けられたものであって、
    前記ローラに巻き回された前記ウェブのラップ角度が、
    30〜240度の範囲であることを特徴とする請求項2ないし10いずれか1つ記載の塗布方法。
  12. 前記塗布方法が、前記ダイから前記塗布液を供給し、ビード形成して連続走行するウェブに塗布するスライドビード塗布方法であって、
    前記塗布液の塗布速度をU(m/s)、前記ダイのリップと前記ウェブの距離をd(m)、剪断速度=U/dにおける粘度を実効粘度としたときに、
    前記塗布液の実効粘度が15〜30mPa・sであることを特徴とする請求項1ないし11いずれか1つ記載の塗布方法。
  13. 前記ビードの背面の減圧度を300〜1000Paの範囲とし、
    前記ダイのリップと前記ウェブとの距離dを140〜300μmの範囲とし、
    前記塗布液の温度を34〜42℃の範囲としたことを特徴とする請求項12記載の塗布方法。
  14. ダイから塗布液を連続走行するウェブに塗布する塗布装置を備えた塗布ラインにおいて、
    塗布装置の上流側に前記ウェブの表面を平滑化する装置を備えたことを特徴とする塗布ライン。
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