JP2005005071A - メタルマスク及びその取付方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】メタルマスク1の周縁のクランプ領域1bに粗面を形成しておき、そのクランプ領域をクランプで把持して引っ張る際にクランプがメタルマスクに対して滑らないようにし、メタルマスクに所望の張力を付与してメタルマスクをゆがみやたるみの無い状態にできるようにする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷用メタルマスク、蒸着用メタルマスクのように、額縁状のフレームに固定して使用するメタルマスク及びそのメタルマスクのフレームへの取付方法に関し、特に、有機EL素子製造における蒸着工程に用いるのに好適なメタルマスク及びそのメタルマスクのフレームへの取付方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】実用新案登録第3082805号公報
従来より、基板に対する印刷や蒸着のためにメタルマスクが使用されており、多くの場合、そのメタルマスクは額縁状のフレームに固定して使用されている。メタルマスクをフレームに固定する方式としては、接着剤を用いた方式、溶接を用いた方式等がある(特許文献1参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年メタルマスクに形成しているパターンを微細化し且つメタルマスクの板厚自体も薄くすることが要望されている。例えば、有機EL素子の有機層又はカソード電極の形成のための真空蒸着に用いるメタルマスクとして、多数のスリットを一定間隔で平行に配列したパターン部を備えたものが使用されているが、そのスリット幅及びスリット間隔を微小とし且つ板厚を薄くすることが要望されている。ところが、このように微細なパターンを備えた薄いメタルマスクを額縁状のフレームに固定する際、単にメタルマスクをフレーム上に置いて接着剤により或いは溶接によって固定しただけでは、メタルマスクにゆがみやたるみが生じた状態となってしまい、所望のパターンが得られないことが判明した。そこで、本発明者等はメタルマスクに生じるゆがみやたるみを防止すべく検討の結果、メタルマスクをフレームに取り付けるに先立って、メタルマスクに縦横両方向の張力を付与してメタルマスクを平坦に引き伸ばし且つその際の付加張力をメタルマスクの各辺内において局部的に調整可能とすることにより、メタルマスクのゆがみやたるみを防止して所望の微細なパターンを高精度で確保でき、この状態でメタルマスクをフレームに溶接固定することで、メタルマスクに程度な張力が残り、メタルマスクがゆがみやたるみの無い平坦な状態に保持され、高精度で所定の微細なパターンを確保できることを見出した。
【0004】
ところが、メタルマスクに張力を付与する際に新たな問題点のあることが判明した。すなわち、メタルマスクに張力を付与するには、メタルマスクの各辺を適当なクランプではさんで保持し、そのクランプをエアシリンダ等によって引っ張れば良いが、メタルマスクにゆがみやたるみの無い状態に引っ張るにはかなりの張力を必要とする場合があり、その場合、メタルマスクとクランプの接触箇所において滑りが生じることがあり、これによって所望の張力を付与した状態に保持できないことがあるという問題が生じた。滑りを生じることなくメタルマスクの各辺を引っ張るには、メタルマスクの各辺にピン穴を開け、そのピン穴にピンを差し込み、そのピンをエアシリンダ等によって引っ張れば良いと考えられる。しかしながら、ピン穴とピンの嵌合を用いて張力を付与する方式では、主としてピン穴とピンの嵌合した狭い領域に張力が加わり、ピン穴のある領域と無い領域との張力差が大きく、この張力差によってしわ状のたわみが生じることがあり、所望の微細なパターンを確保することがきわめて困難である。また、場合によっては、ピン穴とピンの嵌合した狭い領域に過大な張力が加わってメタルマスクのパターン部を傷つける恐れもあった。
【0005】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたもので、メタルマスクの周縁部分を滑りを生じることなくクランプしてメタルマスクに所望の張力をかけることを可能とするメタルマスク並びにそのメタルマスクをフレームに取り付ける方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のメタルマスクは、額縁状のフレームに対して固定すべき領域よりも外側にクランプ領域を形成しておき、そのクランプ領域をクランプでつかんで引っ張った時に滑りが生じないようにするため、前記クランプ領域の表裏の少なくとも一方の表面に粗面を形成し、クランプに対する摩擦抵抗を大きくするという構成としたものである。
【0007】
ここで、前記粗面は、ハーフエッチングによって形成することが好ましい。一般にメタルマスクのパターニングにはエッチングが用いられるので、そのパターンのエッチングと同時にクランプ領域に粗面をハーフエッチングによって形成することで、メタルマスクの製造工程を簡略化できる。
【0008】
また、前記メタルマスクには、フレームに固定して使用する有効領域を取り囲む位置に易切断線を形成しておくことが好ましい。このように、有効領域を取り囲む位置に易切断線を設けておくと、このメタルマスクをフレームに固定した後、易切断線を利用して、その外側にあるクランプ領域を含む不要部分を容易に切断、除去することができる。
【0009】
本発明のメタルマスクの用途は、任意の印刷、蒸着等に用いることができるが、特に好適な用途として、有機EL素子の有機層又はカソード電極の蒸着を挙げることができる。この用途ではきわめて微細なパターンが要求されるので、本発明適用の効果が大きい。また、その際、メタルマスクには複数のパターン部を設けておくことが好ましく、それによって、多面付けの蒸着を行うことが可能となり、生産性を上げることができる。
【0010】
本発明のメタルマスクの取付方法は、上記したメタルマスクを、その周縁に形成しているクランプ領域の粗面をクランプによって把持し、該クランプによって前記メタルマスクに張力を加えてゆがみやたるみの無い状態に保持し、その状態で前記フレームに固定するという構成としたものであり、これによって、微細なパターンを備えた薄いメタルマスクであっても、そのメタルマスクをゆがみやたるみのない平坦な状態としてフレームに固定することができ、所定の微細のパターンを高精度で確保できる。
【0011】
この方法において、前記メタルマスクをフレームに固定した後、前記クランプ領域を含む不要部分を除去することが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、有機EL素子製造工程における蒸着に用いる多面付けのメタルマスクを例にとって本発明の好適な実施の形態を説明する。図1は本発明の実施の形態に係るメタルマスク及びそれを取り付けるフレームの概略斜視図、図2はメタルマスクをフレームに固定した状態で示す概略斜視図、図3はメタルマスクの一部を拡大して示す概略平面図である。図1〜図3において、1はメタルマスク、2はそのメタルマスク1を支持するための額縁状のフレームである。メタルマスク1は、インバー材、ステンレスなどの金属薄板で形成され、多数の微細なスリットを平行に並べて形成したパターン部3を複数個備えている。更に、図1に示すように、フレーム2に取り付ける前のメタルマスク1は、その4辺の側縁部分1bを適当なクランプでつかんで張力を加えた状態で、フレーム2の上に乗せてスポット溶接することができるよう、フレーム2よりも縦横両方向ともに大きいサイズに作っている。以下、クランプで把持される側縁部分1bをクランプ領域という。また、メタルマスク1は、そのメタルマスク1をフレーム2に固定して残す有効領域1aを取り囲む位置に易切断線4を形成している。この易切断線4は、メタルマスク1をこの易切断線4に沿って折り曲げることなどにより容易に切断しうるものであり、ハーフカット、ミシン目などで形成されている。易切断線4として、ハーフカットを用いる場合、パターン部3のエッチングと同時にハーフエッチングを行って形成することが好ましい。なお、易切断線4は、メタルマスク1に加える引張力には耐え得る強度は備えている。更に、メタルマスク1のクランプ領域1bの表裏の少なくとも一方の表面は、クランプで把持した時に滑りにくくするため粗面としている。粗面の形態は任意であり、例えば、多数の独立した突起或いは凹みを備えたもの、多数の平行な溝或いは凸条を備えたもの、多数の溝或いは凸状を交叉して配置したもの等を例示できる。粗面の形成方法は任意であるが、ハーフエッチングにより形成することが、パターン部3のエッチングと同時に形成できるので好ましい。粗面の表面粗さは、クランプに対して極力滑りを生じないように定めればよく、例えば、粗面をハーフエッチングで形成する場合には、ハーフエッチング深さがメタルマスクの厚さの60%程度とすることが好ましい。
【0013】
フレーム2は、メタルマスク1の多数のパターン部3を形成した領域を包含する大きさの開口部5を備えた額縁状のものである。更に、フレーム2は張力を加えた状態のメタルマスク1を固定した後においても、そのメタルマスク1の張力によってたわんでメタルマスクにゆがみやたるみが生じることがないよう、また、保管時、蒸着機への取付時、蒸着操作時などの取り扱い時においても常にメタルマスク1を平坦な状態に保持しうるよう、大きい剛性を備えたものであり、その剛性を付与するため、フレーム2には十分な厚さ及び幅を持たせている。フレーム2の材料としては、通常、ステンレス、インバー材などの金属材が使用される。
【0014】
メタルマスク1の厚さ、パターン部3の寸法、それに形成したスリットの寸法等は特に限定するものではないが、代表的なものとして、メタルマスク1の厚さは30〜200μm、パターン部3の寸法は長さが50〜70mm、幅が30〜50mm、スリットの幅は50〜100μm、スリットを構成する金属細線の幅は100〜150μm等を例示できる。また、フレーム2の厚さとしては、2mm〜30mm程度を例示でき、幅(開口部5の内周面とフレーム外周面との距離)としては、5mm〜50mm程度を例示できる。
【0015】
次に、メタルマスク1のフレーム2に対する取り付け方法を説明する。図4はフレームに対してメタルマスクを取り付けるために使用するメタルマスク取付装置を概略的に示すものである。図4において、まずフレーム2(図示は省略)を、メタルマスク取付装置の支持台上の所定位置に位置決めして固定し、次いでそのフレーム2の上にメタルマスク1を乗せ、そのメタルマスク1の4辺のクランプ領域1bのそれぞれを、複数のクランプ11で把持させ、各クランプ11に連結しているエアシリンダ等の駆動手段12を作動させて、各クランプ11を矢印で示すように縦横方向に引っ張り、メタルマスク1に引張力を加える。ここで、メタルマスク1の4辺にそれぞれ設けている複数のクランプ11は、パターン部3の列と、パターン部の無い領域とに合わせて配置しており、従って、メタルマスク1のパターン部3を形成した領域と、パターン部の無い領域とをそれぞれ別個のクランプ11で引っ張ることが可能であり、これによって、メタルマスク1の剛性の異なる領域をそれぞれ別個のクランプ11で引っ張って張力調整することができ、剛性の異なる領域を備えたメタルマスク1をゆがみやたるみのない平坦な状態で且つパターン部3のスリットが平行に引き揃えられた状態に調整できる。また、この際、クランプ11はメタルマスク1のクランプ領域1bに形成されている粗面を把持しているため滑りを生じることがなく、駆動手段12による引っ張り力を正しくメタルマスク1に伝達してメタルマスク1に所望の張力を付与できる。次いで、このメタルマスク1をクランプ11による張力を付した状態で、フレーム2に対して縦横方向の所定位置となるように位置決めし、スポット溶接機(図示せず)によってレーザ照射によるスポット溶接を行う(図中、符号20はスポット溶接跡を示す)。これにより、メタルマスク1をフレーム2に対して溶接固定する。その後、クランプ11を外し、メタルマスク1の不要な部分を易切断線4を利用して除去する。以上により、図2に示すように、フレーム2にメタルマスク1を固定した蒸着用のマスク組立体9が形成される。
【0016】
得られたマスク組立体9では、メタルマスク1がゆがみやたるみの無い状態で且つパターン部3のスリットが正確に平行に揃った状態に保たれている。その後、このマスク組立体9を用いて、所定の蒸着操作を行う。すなわち、このマスク組立体9に被蒸着基板を取り付け、蒸着機にセットし、有機EL素子の有機層又はカソード電極の蒸着を行う。これにより、微細なパターンの蒸着を高精度で行うことができ、高品質の有機層又はカソード電極を形成できる。
【0017】
なお、上記した実施の形態では、メタルマスク1をフレーム2に固定する際に、メタルマスク1の4辺をそれぞれ、パターン部3に対応する領域とパターン部のない領域に対応して設けた複数のクランプ11で把持して引張っているが、メタルマスク1を引っ張る手段はこの構成に限らず、メタルマスク1をゆがみやたるみの無い平坦な状態に引っ張り、且つパターン部のスリットを平行に引き揃えることができれば、適宜変更可能である。例えば、メタルマスク1の各辺に設ける複数のクランプの個数やクランプの幅を変更するとか、メタルマスク1の各角部を対角線方向に引っ張る等の変更を加えても良い。更に、上記の実施形態では、メタルマスク1に縦横両方向の張力を付与しているが、メタルマスクによっては縦方向或いは横方向の一方向のみに張力を付与することで、ゆがみやたるみの無い状態に保持できる場合もあり、その場合には表面を粗面としたクランプ領域を必ずしもメタルマスクの4辺に設ける必要はなく、所望の対向した2辺に設ければ良い。
【0018】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明は、メタルマスクの、クランプで把持するためのクランプ領域に粗面を形成するという構成としたことにより、メタルマスクをフレームに対して取り付けるに当たって、そのクランプ領域をクランプでつかんで滑りを生じることなく引っ張ることができ、このため、メタルマスクに所望の張力を加えてメタルマスクにたわみやたるみの無い平坦な状態としてフレームに固定することができる。このため、このメタルマスクをフレームに固定して作ったマスク組立体では、メタルマスクがゆがみやたるみのない平坦な状態で且つパターン部のパターンが正確に所定のパターンに保たれており、高精度で印刷や蒸着を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るメタルマスク及びそれを取り付ける対象のフレームを示す概略斜視図
【図2】フレームにメタルマスクを固定した構造のメタルマスク組立体の概略斜視図
【図3】メタルマスクの一部を拡大して示す概略平面図
【図4】メタルマスク取付装置において、メタルマスクをフレームに取り付ける状態を示す概略平面図
【符号の説明】
1 メタルマスク
1a 有効領域
1b クランプ領域
2 フレーム
3 パターン部
4 易切断線
5 開口部
9 マスク組立体
11 クランプ
12 駆動手段(エアシリンダ)
20 スポット溶接跡
Claims (6)
- 額縁状のフレームに固定して使用するメタルマスクであって、前記フレームに対して固定すべき領域よりも外側に位置するクランプ領域を備え、該クランプ領域の表裏の少なくとも一方の表面に粗面を形成したことを特徴とするメタルマスク。
- 前記粗面が、ハーフエッチングによって形成されていることを特徴とする請求項1記載のメタルマスク。
- 前記メタルマスクが更に、前記フレームに固定して使用する有効領域を取り囲む位置に形成された易切断線を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載のメタルマスク。
- 前記メタルマスクが、有機EL素子の有機層又はカソード電極の蒸着用の複数のパターン部を備えた多面付けメタルマスクであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のメタルマスク。
- 請求項1から4のいずれか1項に記載のメタルマスクを、額縁状のフレームに取り付けるに当たって、前記メタルマスクのクランプ領域をクランプによって把持し、該クランプによって前記メタルマスクに縦横両方向の張力を加えてゆがみやたるみの無い状態に保持し、その状態で前記フレームに固定することを特徴とするメタルマスクの取付方法。
- 前記メタルマスクをフレームに固定した後、前記クランプ領域を含む不要部分を除去することを特徴とする請求項5記載のメタルマスクの取付方法。
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