JP2005003794A - 光ファイバ、及びそれを用いた光伝送線路 - Google Patents
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Abstract
【課題】波長1530〜1625nmの範囲で分散の値が最適値をとり曲げ損失が小さく製造性に優れた光ファイバの開発が望まれていた。
【解決手段】波長1550nmにおけるコア有効断面積が70μm2以上、波長1530nm以上1625nm以下の波長帯における分散が2.0ps/nm/km以上で11.0ps/nm/km以下、直径20mmに曲げたときの光伝送損失が10dB/km以下であり、かつ、22mの長さにおけるカットオフ波長が1300nmより大きく1530nm以下であることを特徴とする。これにより、波長1530〜1625nmの範囲で大きなコア有効断面積と小さな分散な値を持つため、非線形効果が小さくWDMの光伝送を可能にする
【選択図】 図1
【解決手段】波長1550nmにおけるコア有効断面積が70μm2以上、波長1530nm以上1625nm以下の波長帯における分散が2.0ps/nm/km以上で11.0ps/nm/km以下、直径20mmに曲げたときの光伝送損失が10dB/km以下であり、かつ、22mの長さにおけるカットオフ波長が1300nmより大きく1530nm以下であることを特徴とする。これにより、波長1530〜1625nmの範囲で大きなコア有効断面積と小さな分散な値を持つため、非線形効果が小さくWDMの光伝送を可能にする
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光通信システムの構築に用いられる光ファイバとそれを用いた光伝送線路に関し、波長分割多重(WDM)光伝送方式のシステム構築に好適なものに係る。
【0002】
【従来の技術】
情報化社会の発展により、通信情報量は飛躍的に増大する傾向にあり、そのことに伴って、光伝送方式では光伝送容量を増大させるための研究が活発に行われている。
【0003】
この際、光伝送線路となる光ファイバは、使用波長において、その光信号をシングルモードで伝送できることが必要とされる。複数のモードが光ファイバ内を伝搬すると、各伝搬モードごとの群速度の差により不可避的にモード分散が発生し、信号波形の劣化を招くからである。
【0004】
このようなことから、まず波長1300nm付近に雰分散波長を有するシングルモードファイバ(Single Mode Fiber:SMF)が光伝送線路として使用された。このSMFを用いると、波長1300nm付近では、光伝送の距離を100km以上にすることができ、しかも光伝送容量を数百Mbpsにすることが可能になった。
【0005】
一方、光ファイバの光伝送損失は、波長1550nm付近で最も小さくなる。そのため、光伝送損失の関係では、1550nm帯域で光伝送をすることが好ましいことになる。
【0006】
このような要求に応える光ファイバとして、波長1550nm付近に雰分散波長を持つ分散シフトファイバ(Dispersion Shifted Fiber:DSF)が開発された。このDSFは、その断面における屈折率プロファイルが段階型になっているものである。このDSFの開発により、現在では、波長1550nm付近において、光伝送容量を数Gbpsにすることが可能になった。
【0007】
また、最近では、光伝送容量の更なる増大を目的として、1本の光ファイバに複数の波長の光信号を伝送させる波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)による光伝送方式の研究が進められている。
【0008】
このWDM光伝送方式で用いられる光ファイバには次のような特性が要求される。
まず、非線形現象の1つである例えば四光波混合(Four Wave Mixing:FWM)の発生を防止するため、使用波長帯域に雰分散波長が存在しないという特性である。
【0009】
このような要求に応える光ファイバとして、使用波長帯域で雰分散波長を持たないノンゼロ分散シフトファイバ(Non−Zero Dispersion Shifted Fiber:NZDSF)が開発されている。そして、このNZDSFを用いると、FWMは殆ど起こらないので、現在では、WDM光伝送方式における最適の光ファイバとして評価されている。
【0010】
また、分散が大きいと信号波形の劣化が生ずるので、分散が小さいことも、WDM光伝送方式で用いる光ファイバにとっては重要な特性である。
【0011】
更には、光ファイバに高パワーを導入すると、自己位相変調や相互位相変調のような非線形現象が起こり易くなる。それを抑制するために、光ファイバのモードフィール径(Mode Field Diameter:MFD)が大きいことも要求される。
【0012】
しかし、非線形効果を抑制するためにMFDを大きくした場合、光ファイバを曲げたときに生じる曲げ損失が大きくなる傾向にある。光ファイバはケーブル化されたときにねじりによる曲がりを受けたり、ケーブル内で側圧を受けたりする。このため、ケーブルの製造の観点からは曲げに対して光伝送損失が増加しないことが非常に重要である。
【0013】
また、MFDを大きくした場合には、分散の傾き(分散勾配)が大きくなる傾向もある。分散勾配が大きいと使用波長帯の上限の波長と下限の波長との分散の偏差が大きくなり、使用波長帯や伝送距離に制約を受けることがあった。
【0014】
このような背景から、過去においていくつかの特許出願がなされている(例えば特許文献1〜3)。
【0015】
【特許文献1】
米国特許第6396987号
【特許文献2】
米国特許第6301422号
【特許文献3】
米国特許第6493495号
【0016】
特許文献1では、波長1550nmにおける分散が6ps/nm/km以上で10ps/nm/km以下、分散勾配の絶対値が0.07ps/nm2/km以下、コア有効断面積が60μm2以上の光ファイバが開示されている。
【0017】
また、特許文献2では、1500nm以上の波長領域でコア有効断面積が70μm2以上、分散勾配が0.09ps/nm2/km以下である光ファイバが開示されている。
【0018】
また、特許文献3では、1550nmにおけるコア有効断面積が70μm2以上、分散勾配が0.09ps/nm2/km以下でカットオフ波長が1564〜1628nmにあるファイバが開示されている。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1の場合、分散勾配が0.07ps/nm2/km以下のため、広い波長帯域で使用することが可能である。しかし、コア有効断面積が60μm2以上となっているため、特許文献2に対して非線形効果を起こし易い。逆に特許文献2は前者に比べて、分散勾配が大きいため、広い波長範囲で使用することは困難である。
【0020】
また、特許文献3では、零分散波長の値に関しては記述があるものの特定の波長での分散値と曲げ損失に関する記述はない。
【0021】
特許文献2では、特に分散とカットオフ波長の値については、最も大きな値が1300nmであるが22mにおけるカットオフ波長を1300nmより大きすることの思想がない。また、特許文献3では、零分散波長の位置に関しては記述があるものの特定の波長での分散値と曲げ損失には記述がない。
【0022】
このように、光ファイバの構造の設計は、分散、分散勾配、MFD、曲げ損失などのバランスを考慮して、目的にあった屈折率プロファイルを選択することが重要である。
【0023】
そこで、波長1530〜1625nmの範囲で分散が最適な値をとるように、1550nmでの分散を4ps/nm/km程度、零分散波長を1500nm以下にした光ファイバは、本発明者らが詳細に調査したところ、ケーブル化に耐えうる曲げ損失を得ることができる屈折率プロファイルの範囲が非常に狭く、製造に適しているとは言い難いことがわかった。
【0024】
本発明は、1550nmでのコア有効断面積が70μm2以上で波長1530〜1625nmの範囲で分散の値が最適値をとり曲げ損失が小さく製造性に優れた光ファイバを提供することを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明においては、波長1550nmにおけるコア有効断面積が70μm2以上、波長1530nm以上1625nm以下の波長帯における分散が2.0ps/nm/km以上で11.0ps/nm/km以下、直径20mmに曲げたときの光伝送損失が10dB/km以下であり、かつ、22mの長さにおけるカットオフ波長が1300nmより大きく1530nm以下であることを特徴とする光ファイバが提供される。
【0026】
また、光ファイバ長が2mにおけるカットオフ波長は1500nmより大きく1700nm以下であることを特徴とする。
【0027】
さらに、1530nm以上1625nm以下の全ての波長帯において分散が2.6ps/nm/km以上10.5ps/nm/km以下であることが望ましい。
このときの、波長1550nmにおける分散勾配は0.09ps/nm2/km以下である。
さらに、1530nm以上1625nm以下の波長帯域における光伝送損失は0.3dB/km以下である。
【0028】
これらの特性を得るためには、光ファイバは、その軸心に配置されたセンタコアとその外側に配置された第1サイドコアとその外側に配置された第2サイドコアとその外側に配置されたクラッドの構造を有し、且つセンタコアはクラッドの屈折率よりも屈折率が高く、第2サイドコアは第1サイドコアの屈折率よりも屈折率が高く且つセンタコアの屈折率よりも屈折率が低く構成されていることを特徴とする。
【0029】
それらの領域のうち、センターコアは、その最も屈折率の高い部分の比屈折率差がクラッドの屈折率に対して0.75%以上で0.9%以下である。また、第1サイドコアは、その最も屈折率の低い部分の比屈折率がクラッドの屈折率に対して負であることを特徴とする。さらに、第2サイドコアは、その最も屈折率の高い部分の比屈折率差が前記クラッドの屈折率に対して0.4%以下であることを特徴とする。また、センターコアの屈折率分布パラメータ(α)は、3未満であることを特徴とする。
【0030】
更に本発明においては、上記した光ファイバのいずれかを含む光伝送路に、1530〜1625nmの波長帯域で負の分散と負の分散勾配を有する分散補償ファイバが接続されていることを特徴とする光伝送システムが提供される。
【0031】
【発明の実施の形態】
シングルモード光ファイバに重要な特性の一つに、カットオフ波長がある。このカットオフ波長より長波長側の光信号は、光ファイバ中を1つのモードでのみ伝搬し、モード毎に伝搬速度が異なることにより発生する光信号の劣化はなくなる。このため、カットオフ波長は光ファイバの使用波長帯より小さい値をとる必要がある。
【0032】
光ファイバの曲げ損失とカットオフ波長は相互に関係があり、一般には曲げ損失が小さい光ファイバはカットオフ波長が大きい傾向にある。また、カットオフ波長は測定する光ファイバの測定長に依存し、測定長が長くなると値が小さくなる傾向にある。通常のカットオフ波長の測定は2mの光ファイバで行われる。しかし、実際の線路はこれよりも長いため、2mの光ファイバの測定値が使用波長帯の値より大きくても、使用波長帯で実質的にシングルモード動作をすれば使用上問題はない。
【0033】
コア有効断面積が大きい光ファイバは、分散勾配が大きくなるので、広い波長帯でのWDMによる光伝送が難しくなる。このため、特定の波長領域に絞って最適化を行えば、製造の容易さおよび歩留まりの良い光ファイバが得られるはずである。
【0034】
具体的に述べると、前記特許文献2に開示されているようなMFDが大きく1550nm付近の分散が0でなく小さな値を持つ光ファイバでは、波長1300nmでの分散値の絶対値は大きくなり、1300nm帯を使用した長距離の光伝送には適さない。また、波長1460〜1530nmのSバンド帯には零分散波長が存在するため、WDMの光伝送には不適である。このため、実用的な使用波長帯は1530nm以上で1625nm以下のCバンドおよびLバンドとなる。したがって、これらの波長域で実質的にシングルモード動作がてきる上限までカットオフ波長を大きくすれば、曲げ損失が小さくMFDが大きい光ファイバを得ることができる。
【0035】
この点を念頭に置いて、本発明者らは、開発目標の光ファイバに関しては以下のような特性目標を設定した。
【0036】
(1)まず、非線形効果を抑制するために、波長1550nmにおけるコア有効断面積を最低でも70μm2にすること。
【0037】
(2)次に分散に関しては、波長1530nm〜1625nmの範囲でWDMの光伝送をするためには、この波長範囲が0でない小さな分散を持つ必要がある。具体的には2.0ps/nm/km以上11.0ps/nm/km以下であることが必要で、2.6ps/nm/km以上10.5ps/nm/km以下であることがより好ましい。また、この分散の値から波長1550nmにおける分散勾配は0.09ps/nm2/km以下に制限される。
【0038】
(3)曲げ損失は直径20mmの径に巻き付けたときに、10dB/m以下であることが必要である。好ましくは5dB/m以下、より好ましくは2dB/m以下である。これは、光ファイバをケーブル化したときや、敷設時あるいは敷設後に掛かる側圧による光伝送損失の増加、もしくは機器の中で光ファイバを小さい半径で取り回したときの光伝送損失の増加を防ぐために重要な規格である。
【0039】
(4)カットオフ波長については、使用波長帯において光ファイバ中を伝搬する光信号がシングルモード動作をする必要があるため、1530nm以下でなければならない。しかし、前述したように、カットオフ波長には条長依存性がある。図4は本発明の光ファイバに対してカットオフ波長の条長依存性を調査したものである。光ファイバ長22mにおける測定値は2mの測定値に対して約200nm小さくなる傾向にある。実際の線路ではさらに長い距離を光伝送するので、実際のファイバのカットオフ波長は更に小さくなるはずである。しかし、実際の光伝送線路の長さは様々であるので、22mでの値で代表させることにする。このため、本発明では、このデータから光ファイバ長2mで測定したカットオフ波長の上限を、若干の余裕を見て1700nmと考えることができる。
【0040】
(5)カットオフ波長の下限については、曲げ損失の関係から制約を受ける。図5は、波長1550nmでのコア有効断面積が70μm2以上、かつ分散が4ps/nm/km以上で5ps/nm/km以下の特性を持つ場合の、2mのファイバで測定したカットオフ波長と曲げ損失の関係を計算で求めたものである。若干のばらつきはあるものの、曲げ損失を10dB/m以下に抑えるにはカットオフ波長を1500nmより大きな値にする必要がある。これは光ファイバ長22mでの値に換算すると1300nmより大きいことになる。
【0041】
(6)光伝送損失については、他のファイバと同様に1530nm以上1625nm以下の波長帯域における光伝送損失が0.3dB/km以下であることが必要である
【0042】
本発明者らは、このような観点から上記した目標特性を満たすべく、その他の諸特性を考察し、その上で、屈折率プロファイルを探索し、図1で示したようなプロファイルが好適であることを見出した。
【0043】
図1に示す屈折率プロファイルAは、センターコア1とその外側に円環形状に配置された第1サイドコア2と、その外側に円環形状に配置された第2サイドコア3、さらにその外側に円環形状に配置されたクラッド6を有している。そして、センターコア1のクラッド6に対する比屈折率差と、第1サイドコア2のクラッド6に対する比屈折率差、第2サイドコア3のクラッド6に対する比屈折率差は、それぞれ、Δ1(%)、Δ2(%)、Δ3(%)に、半径はr1(μm)、r2(μm)、r3(μm)なっている。
【0044】
ここで、r1、r2は屈折率プロファイルのセンターコアと第1サイドコアをつなぐ線、第1サイドコアと第2サイドコアをつなぐ線のそれぞれがクラッドの屈折率と等しくなる点の位置で定義する。また、r3は第2サイドコアの最大値より外側の部分で屈折率プロファイルの傾きが最も大きい部分の接線がクラッドの屈折率と等しくなる点の位置で定義する。
ただし、図2のように第2サイドコア3に隣接した部分にクラッド6より屈折率の低いトレンチ層5が存在する場合は、r1と同様に第2サイドコア3とトレンチ層5をつなぐ線がクラッド6の屈折率と等しくなる点をr3とする。
【0045】
これらのプロファイルにおいて、屈折率分布パラメータαの値は小さく設定されていることが好ましい。より好ましい範囲は3未満である。本発明のような光ファイバの場合、コア有効断面積を大きくするために、センターコアの光の閉じ込めを弱くして、センターコアの外に漏れる光を第2サイドコアで広げるようにする。屈折率分布パラメータαが大きい場合、コアの閉じ込め効果が強くなるので、コア有効断面積が小さくなる傾向がある。このため、屈折率分布パラメータαは小さい方が望ましい。
【0046】
上記したΔ1値は0.75%以上0.9%以下に設定されていることが好ましい。より好ましい範囲は、0.8%以上0.85%以下である。一般に、このΔ1値を大きくすると、分散とコア有効断面積が小さくなり、逆にΔ1値を小さくすると、コア有効断面積は大きくなるが分散も大きくなり、適正な値にならなくなる。コア有効断面積と分散に関する前記した設計目標を同時に満たすためには、Δ1値は上記範囲内にあることが好ましい。
【0047】
また、Δ3が大きくなると、分散と分散勾配が大きくなり、所望の分散の範囲に収まらなくなる傾向がある。このため、Δ3は0.4%以下に制限される。
【0048】
さらに、Δ2に関しては、負であること、望ましくは−0.05%以下である必要がある。これ以上であると、カットオフ波長が大きくなり、使用波長帯でシングルモード動作をしなくなることがある。
【0049】
本発明のファイバでは、1550nmにおけるコア有効断面積は70μm2以上に設定されるため、曲げ損失が小さく非線形現象の発現が抑制できる。そして、1530nmでの分散が2.6ps/nm/km以上、1625nmでの分散が10.5ps/nm/km以下であるため、CバンドおよびLバンドでFWMが抑制できると共にDWM光伝送に適したファイバが提供できる。
【0050】
以上の特性は、図1で示した屈折率分布のプロファイルにおいて、基本的には、中心のセンターコア1と第1サイドコア2、第2サイドコア3の形状とそれら3つの層の外径にあたる2r3で規定されている。
【0051】
したがって、本発明の光ファイバにおける屈折率分布のプロファイルは、図1で示したものに限定されるわけではなく、上記した特性を発現するものであれば、例えば図2に示す屈折率プロファイル、図3に示す屈折率プロファイルであってもよい。図3の屈折率プロファイルは、図1に示す構造のクラッド6の中にトレンチ層5を持つものが示されている。
【0052】
しかしながら、光ファイバは、プロファイル構造が簡単であり、その製造も容易で製造歩留を高くできるという点で、図1で示したプロファイルであることが好ましい。
【0053】
本発明の光ファイバは、例えばVAD法やMCVD法で光ファイバ母材を製造し、それを透明ガラス化したのち線引きして製造することができる。
【0054】
また、本発明の光ファイバは波長1530〜1625nmの帯域で正の分散勾配を有しているが、この光ファイバで構築した光伝送線路に、負の分散勾配を有する分散補償器を接続することにより、分散補償線路を構成することができる。
【0055】
【実施例】
図1〜3で示した屈折率プロファイル(A)〜(C)(実施例1〜3)を有する各種の光ファイバを製造し、その特性を調査した。屈折率プロファイルの構造パラメータとその特性とを、比較例1〜5とともに一括して以下の表1に示した。
【0056】
【表1】
【0057】
ここで、カットオフ波長は光ファイバ長2mでの測定値である。なお、実施例2は、表1に示す構造パラメータを持つ屈折率プロファイル(A)の外側に比屈折率差−0.1%、半径13.4μmのトレンチを設けた図2の屈折率プロファイル(B)の構造を持つもので、実施例3は、表1に示す構造パラメータを持つ屈折率プロファイル(A)のクラッド内に比屈折率差−0.05%、半径13.1μmから20.6μmの間にトレンチを設けた図3の屈折率プロファイル(C)の構造を持つものである。
【0058】
表1から明らかなように、実施例1〜3の光ファイバは、いずれも、WDMの光伝送方式で使用可能な特性を備えているが、比較例1〜5の光ファイバは下記の点で各実施例に比べて劣っている。
【0059】
屈折率分布パラメータα値が大きい比較例1は、分散はほぼ所望の値であるものの、コア有効断面積が66.6μm2と小さく非線形効果を起こしやすい。Δ1値が大きい比較例2は、コア有効断面積が比較例1同様に小さく、さらに分散の値が小さいため、四光波混合を起こす可能性が高い。比較例3はΔ1値が小さいために、分散が大きく信号波形の劣化が大きい。比較例4はΔ2が0であるために、カットオフ波長が大きく測定不能となった。このため、使用波長帯でシングルモード光伝送ができない。さらに、比較例5はΔ3が大きいため分散と分散勾配が大きく、信号の劣化が大きい。
【0060】
次ぎに、実施例1の光ファイバと、図6で示す負の分散と負の分散勾配とを有する分散補償光ファイバを接続した光伝送線路を構成した。後者の光ファイバ長は、前者の光ファイバ長の1/25である。
【0061】
これにより得られた光伝送線路の分散特性を図7に示す。図6から明らかなように、1530〜1625nmの波長帯域で、残留する分散は−1.5〜1.5ps/nm/kmの範囲にあり、形成された光伝送線路では実施例1の光ファイバ単体に比べて分散の絶対値を小さくすることができる。
【0062】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の光ファイバは、波長1530〜1625nmの範囲で大きなコア有効断面積と小さな分散な値を持つため、非線形効果が小さくWDMの光伝送を可能にする優れた特性を備えている。
【0063】
従って、前記光ファイバと分散補償光ファイバとを縦続接続して構成した光伝送線路は非線形効果が優れ、光伝送容量の大きな光伝送システムの構築に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例における屈折率プロファイル。
【図2】本発明の第2の実施例における屈折率プロファイル。
【図3】本発明の第3の実施例における屈折率プロファイル。
【図4】3種の光ファイバの光ファイバ長に対するカットオフ波長を示す特性図。
【図5】光ファイバ長2mのカットオフ波長と曲げ損失の関係を示す特性図。
【図6】本発明で用いられる分散補償光ファイバの波長に対する分散の特性図。
【図7】本発明の第1実施例と、それを用いて構成された光伝送線路との波長に対する分散を示す特性図。
【符号の説明】
1 センターコア
2 第1サイドコア
3 第2サイドコア
4 クラッド
5 トレンチ層
6 クラッド
【発明の属する技術分野】
本発明は光通信システムの構築に用いられる光ファイバとそれを用いた光伝送線路に関し、波長分割多重(WDM)光伝送方式のシステム構築に好適なものに係る。
【0002】
【従来の技術】
情報化社会の発展により、通信情報量は飛躍的に増大する傾向にあり、そのことに伴って、光伝送方式では光伝送容量を増大させるための研究が活発に行われている。
【0003】
この際、光伝送線路となる光ファイバは、使用波長において、その光信号をシングルモードで伝送できることが必要とされる。複数のモードが光ファイバ内を伝搬すると、各伝搬モードごとの群速度の差により不可避的にモード分散が発生し、信号波形の劣化を招くからである。
【0004】
このようなことから、まず波長1300nm付近に雰分散波長を有するシングルモードファイバ(Single Mode Fiber:SMF)が光伝送線路として使用された。このSMFを用いると、波長1300nm付近では、光伝送の距離を100km以上にすることができ、しかも光伝送容量を数百Mbpsにすることが可能になった。
【0005】
一方、光ファイバの光伝送損失は、波長1550nm付近で最も小さくなる。そのため、光伝送損失の関係では、1550nm帯域で光伝送をすることが好ましいことになる。
【0006】
このような要求に応える光ファイバとして、波長1550nm付近に雰分散波長を持つ分散シフトファイバ(Dispersion Shifted Fiber:DSF)が開発された。このDSFは、その断面における屈折率プロファイルが段階型になっているものである。このDSFの開発により、現在では、波長1550nm付近において、光伝送容量を数Gbpsにすることが可能になった。
【0007】
また、最近では、光伝送容量の更なる増大を目的として、1本の光ファイバに複数の波長の光信号を伝送させる波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)による光伝送方式の研究が進められている。
【0008】
このWDM光伝送方式で用いられる光ファイバには次のような特性が要求される。
まず、非線形現象の1つである例えば四光波混合(Four Wave Mixing:FWM)の発生を防止するため、使用波長帯域に雰分散波長が存在しないという特性である。
【0009】
このような要求に応える光ファイバとして、使用波長帯域で雰分散波長を持たないノンゼロ分散シフトファイバ(Non−Zero Dispersion Shifted Fiber:NZDSF)が開発されている。そして、このNZDSFを用いると、FWMは殆ど起こらないので、現在では、WDM光伝送方式における最適の光ファイバとして評価されている。
【0010】
また、分散が大きいと信号波形の劣化が生ずるので、分散が小さいことも、WDM光伝送方式で用いる光ファイバにとっては重要な特性である。
【0011】
更には、光ファイバに高パワーを導入すると、自己位相変調や相互位相変調のような非線形現象が起こり易くなる。それを抑制するために、光ファイバのモードフィール径(Mode Field Diameter:MFD)が大きいことも要求される。
【0012】
しかし、非線形効果を抑制するためにMFDを大きくした場合、光ファイバを曲げたときに生じる曲げ損失が大きくなる傾向にある。光ファイバはケーブル化されたときにねじりによる曲がりを受けたり、ケーブル内で側圧を受けたりする。このため、ケーブルの製造の観点からは曲げに対して光伝送損失が増加しないことが非常に重要である。
【0013】
また、MFDを大きくした場合には、分散の傾き(分散勾配)が大きくなる傾向もある。分散勾配が大きいと使用波長帯の上限の波長と下限の波長との分散の偏差が大きくなり、使用波長帯や伝送距離に制約を受けることがあった。
【0014】
このような背景から、過去においていくつかの特許出願がなされている(例えば特許文献1〜3)。
【0015】
【特許文献1】
米国特許第6396987号
【特許文献2】
米国特許第6301422号
【特許文献3】
米国特許第6493495号
【0016】
特許文献1では、波長1550nmにおける分散が6ps/nm/km以上で10ps/nm/km以下、分散勾配の絶対値が0.07ps/nm2/km以下、コア有効断面積が60μm2以上の光ファイバが開示されている。
【0017】
また、特許文献2では、1500nm以上の波長領域でコア有効断面積が70μm2以上、分散勾配が0.09ps/nm2/km以下である光ファイバが開示されている。
【0018】
また、特許文献3では、1550nmにおけるコア有効断面積が70μm2以上、分散勾配が0.09ps/nm2/km以下でカットオフ波長が1564〜1628nmにあるファイバが開示されている。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1の場合、分散勾配が0.07ps/nm2/km以下のため、広い波長帯域で使用することが可能である。しかし、コア有効断面積が60μm2以上となっているため、特許文献2に対して非線形効果を起こし易い。逆に特許文献2は前者に比べて、分散勾配が大きいため、広い波長範囲で使用することは困難である。
【0020】
また、特許文献3では、零分散波長の値に関しては記述があるものの特定の波長での分散値と曲げ損失に関する記述はない。
【0021】
特許文献2では、特に分散とカットオフ波長の値については、最も大きな値が1300nmであるが22mにおけるカットオフ波長を1300nmより大きすることの思想がない。また、特許文献3では、零分散波長の位置に関しては記述があるものの特定の波長での分散値と曲げ損失には記述がない。
【0022】
このように、光ファイバの構造の設計は、分散、分散勾配、MFD、曲げ損失などのバランスを考慮して、目的にあった屈折率プロファイルを選択することが重要である。
【0023】
そこで、波長1530〜1625nmの範囲で分散が最適な値をとるように、1550nmでの分散を4ps/nm/km程度、零分散波長を1500nm以下にした光ファイバは、本発明者らが詳細に調査したところ、ケーブル化に耐えうる曲げ損失を得ることができる屈折率プロファイルの範囲が非常に狭く、製造に適しているとは言い難いことがわかった。
【0024】
本発明は、1550nmでのコア有効断面積が70μm2以上で波長1530〜1625nmの範囲で分散の値が最適値をとり曲げ損失が小さく製造性に優れた光ファイバを提供することを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明においては、波長1550nmにおけるコア有効断面積が70μm2以上、波長1530nm以上1625nm以下の波長帯における分散が2.0ps/nm/km以上で11.0ps/nm/km以下、直径20mmに曲げたときの光伝送損失が10dB/km以下であり、かつ、22mの長さにおけるカットオフ波長が1300nmより大きく1530nm以下であることを特徴とする光ファイバが提供される。
【0026】
また、光ファイバ長が2mにおけるカットオフ波長は1500nmより大きく1700nm以下であることを特徴とする。
【0027】
さらに、1530nm以上1625nm以下の全ての波長帯において分散が2.6ps/nm/km以上10.5ps/nm/km以下であることが望ましい。
このときの、波長1550nmにおける分散勾配は0.09ps/nm2/km以下である。
さらに、1530nm以上1625nm以下の波長帯域における光伝送損失は0.3dB/km以下である。
【0028】
これらの特性を得るためには、光ファイバは、その軸心に配置されたセンタコアとその外側に配置された第1サイドコアとその外側に配置された第2サイドコアとその外側に配置されたクラッドの構造を有し、且つセンタコアはクラッドの屈折率よりも屈折率が高く、第2サイドコアは第1サイドコアの屈折率よりも屈折率が高く且つセンタコアの屈折率よりも屈折率が低く構成されていることを特徴とする。
【0029】
それらの領域のうち、センターコアは、その最も屈折率の高い部分の比屈折率差がクラッドの屈折率に対して0.75%以上で0.9%以下である。また、第1サイドコアは、その最も屈折率の低い部分の比屈折率がクラッドの屈折率に対して負であることを特徴とする。さらに、第2サイドコアは、その最も屈折率の高い部分の比屈折率差が前記クラッドの屈折率に対して0.4%以下であることを特徴とする。また、センターコアの屈折率分布パラメータ(α)は、3未満であることを特徴とする。
【0030】
更に本発明においては、上記した光ファイバのいずれかを含む光伝送路に、1530〜1625nmの波長帯域で負の分散と負の分散勾配を有する分散補償ファイバが接続されていることを特徴とする光伝送システムが提供される。
【0031】
【発明の実施の形態】
シングルモード光ファイバに重要な特性の一つに、カットオフ波長がある。このカットオフ波長より長波長側の光信号は、光ファイバ中を1つのモードでのみ伝搬し、モード毎に伝搬速度が異なることにより発生する光信号の劣化はなくなる。このため、カットオフ波長は光ファイバの使用波長帯より小さい値をとる必要がある。
【0032】
光ファイバの曲げ損失とカットオフ波長は相互に関係があり、一般には曲げ損失が小さい光ファイバはカットオフ波長が大きい傾向にある。また、カットオフ波長は測定する光ファイバの測定長に依存し、測定長が長くなると値が小さくなる傾向にある。通常のカットオフ波長の測定は2mの光ファイバで行われる。しかし、実際の線路はこれよりも長いため、2mの光ファイバの測定値が使用波長帯の値より大きくても、使用波長帯で実質的にシングルモード動作をすれば使用上問題はない。
【0033】
コア有効断面積が大きい光ファイバは、分散勾配が大きくなるので、広い波長帯でのWDMによる光伝送が難しくなる。このため、特定の波長領域に絞って最適化を行えば、製造の容易さおよび歩留まりの良い光ファイバが得られるはずである。
【0034】
具体的に述べると、前記特許文献2に開示されているようなMFDが大きく1550nm付近の分散が0でなく小さな値を持つ光ファイバでは、波長1300nmでの分散値の絶対値は大きくなり、1300nm帯を使用した長距離の光伝送には適さない。また、波長1460〜1530nmのSバンド帯には零分散波長が存在するため、WDMの光伝送には不適である。このため、実用的な使用波長帯は1530nm以上で1625nm以下のCバンドおよびLバンドとなる。したがって、これらの波長域で実質的にシングルモード動作がてきる上限までカットオフ波長を大きくすれば、曲げ損失が小さくMFDが大きい光ファイバを得ることができる。
【0035】
この点を念頭に置いて、本発明者らは、開発目標の光ファイバに関しては以下のような特性目標を設定した。
【0036】
(1)まず、非線形効果を抑制するために、波長1550nmにおけるコア有効断面積を最低でも70μm2にすること。
【0037】
(2)次に分散に関しては、波長1530nm〜1625nmの範囲でWDMの光伝送をするためには、この波長範囲が0でない小さな分散を持つ必要がある。具体的には2.0ps/nm/km以上11.0ps/nm/km以下であることが必要で、2.6ps/nm/km以上10.5ps/nm/km以下であることがより好ましい。また、この分散の値から波長1550nmにおける分散勾配は0.09ps/nm2/km以下に制限される。
【0038】
(3)曲げ損失は直径20mmの径に巻き付けたときに、10dB/m以下であることが必要である。好ましくは5dB/m以下、より好ましくは2dB/m以下である。これは、光ファイバをケーブル化したときや、敷設時あるいは敷設後に掛かる側圧による光伝送損失の増加、もしくは機器の中で光ファイバを小さい半径で取り回したときの光伝送損失の増加を防ぐために重要な規格である。
【0039】
(4)カットオフ波長については、使用波長帯において光ファイバ中を伝搬する光信号がシングルモード動作をする必要があるため、1530nm以下でなければならない。しかし、前述したように、カットオフ波長には条長依存性がある。図4は本発明の光ファイバに対してカットオフ波長の条長依存性を調査したものである。光ファイバ長22mにおける測定値は2mの測定値に対して約200nm小さくなる傾向にある。実際の線路ではさらに長い距離を光伝送するので、実際のファイバのカットオフ波長は更に小さくなるはずである。しかし、実際の光伝送線路の長さは様々であるので、22mでの値で代表させることにする。このため、本発明では、このデータから光ファイバ長2mで測定したカットオフ波長の上限を、若干の余裕を見て1700nmと考えることができる。
【0040】
(5)カットオフ波長の下限については、曲げ損失の関係から制約を受ける。図5は、波長1550nmでのコア有効断面積が70μm2以上、かつ分散が4ps/nm/km以上で5ps/nm/km以下の特性を持つ場合の、2mのファイバで測定したカットオフ波長と曲げ損失の関係を計算で求めたものである。若干のばらつきはあるものの、曲げ損失を10dB/m以下に抑えるにはカットオフ波長を1500nmより大きな値にする必要がある。これは光ファイバ長22mでの値に換算すると1300nmより大きいことになる。
【0041】
(6)光伝送損失については、他のファイバと同様に1530nm以上1625nm以下の波長帯域における光伝送損失が0.3dB/km以下であることが必要である
【0042】
本発明者らは、このような観点から上記した目標特性を満たすべく、その他の諸特性を考察し、その上で、屈折率プロファイルを探索し、図1で示したようなプロファイルが好適であることを見出した。
【0043】
図1に示す屈折率プロファイルAは、センターコア1とその外側に円環形状に配置された第1サイドコア2と、その外側に円環形状に配置された第2サイドコア3、さらにその外側に円環形状に配置されたクラッド6を有している。そして、センターコア1のクラッド6に対する比屈折率差と、第1サイドコア2のクラッド6に対する比屈折率差、第2サイドコア3のクラッド6に対する比屈折率差は、それぞれ、Δ1(%)、Δ2(%)、Δ3(%)に、半径はr1(μm)、r2(μm)、r3(μm)なっている。
【0044】
ここで、r1、r2は屈折率プロファイルのセンターコアと第1サイドコアをつなぐ線、第1サイドコアと第2サイドコアをつなぐ線のそれぞれがクラッドの屈折率と等しくなる点の位置で定義する。また、r3は第2サイドコアの最大値より外側の部分で屈折率プロファイルの傾きが最も大きい部分の接線がクラッドの屈折率と等しくなる点の位置で定義する。
ただし、図2のように第2サイドコア3に隣接した部分にクラッド6より屈折率の低いトレンチ層5が存在する場合は、r1と同様に第2サイドコア3とトレンチ層5をつなぐ線がクラッド6の屈折率と等しくなる点をr3とする。
【0045】
これらのプロファイルにおいて、屈折率分布パラメータαの値は小さく設定されていることが好ましい。より好ましい範囲は3未満である。本発明のような光ファイバの場合、コア有効断面積を大きくするために、センターコアの光の閉じ込めを弱くして、センターコアの外に漏れる光を第2サイドコアで広げるようにする。屈折率分布パラメータαが大きい場合、コアの閉じ込め効果が強くなるので、コア有効断面積が小さくなる傾向がある。このため、屈折率分布パラメータαは小さい方が望ましい。
【0046】
上記したΔ1値は0.75%以上0.9%以下に設定されていることが好ましい。より好ましい範囲は、0.8%以上0.85%以下である。一般に、このΔ1値を大きくすると、分散とコア有効断面積が小さくなり、逆にΔ1値を小さくすると、コア有効断面積は大きくなるが分散も大きくなり、適正な値にならなくなる。コア有効断面積と分散に関する前記した設計目標を同時に満たすためには、Δ1値は上記範囲内にあることが好ましい。
【0047】
また、Δ3が大きくなると、分散と分散勾配が大きくなり、所望の分散の範囲に収まらなくなる傾向がある。このため、Δ3は0.4%以下に制限される。
【0048】
さらに、Δ2に関しては、負であること、望ましくは−0.05%以下である必要がある。これ以上であると、カットオフ波長が大きくなり、使用波長帯でシングルモード動作をしなくなることがある。
【0049】
本発明のファイバでは、1550nmにおけるコア有効断面積は70μm2以上に設定されるため、曲げ損失が小さく非線形現象の発現が抑制できる。そして、1530nmでの分散が2.6ps/nm/km以上、1625nmでの分散が10.5ps/nm/km以下であるため、CバンドおよびLバンドでFWMが抑制できると共にDWM光伝送に適したファイバが提供できる。
【0050】
以上の特性は、図1で示した屈折率分布のプロファイルにおいて、基本的には、中心のセンターコア1と第1サイドコア2、第2サイドコア3の形状とそれら3つの層の外径にあたる2r3で規定されている。
【0051】
したがって、本発明の光ファイバにおける屈折率分布のプロファイルは、図1で示したものに限定されるわけではなく、上記した特性を発現するものであれば、例えば図2に示す屈折率プロファイル、図3に示す屈折率プロファイルであってもよい。図3の屈折率プロファイルは、図1に示す構造のクラッド6の中にトレンチ層5を持つものが示されている。
【0052】
しかしながら、光ファイバは、プロファイル構造が簡単であり、その製造も容易で製造歩留を高くできるという点で、図1で示したプロファイルであることが好ましい。
【0053】
本発明の光ファイバは、例えばVAD法やMCVD法で光ファイバ母材を製造し、それを透明ガラス化したのち線引きして製造することができる。
【0054】
また、本発明の光ファイバは波長1530〜1625nmの帯域で正の分散勾配を有しているが、この光ファイバで構築した光伝送線路に、負の分散勾配を有する分散補償器を接続することにより、分散補償線路を構成することができる。
【0055】
【実施例】
図1〜3で示した屈折率プロファイル(A)〜(C)(実施例1〜3)を有する各種の光ファイバを製造し、その特性を調査した。屈折率プロファイルの構造パラメータとその特性とを、比較例1〜5とともに一括して以下の表1に示した。
【0056】
【表1】
【0057】
ここで、カットオフ波長は光ファイバ長2mでの測定値である。なお、実施例2は、表1に示す構造パラメータを持つ屈折率プロファイル(A)の外側に比屈折率差−0.1%、半径13.4μmのトレンチを設けた図2の屈折率プロファイル(B)の構造を持つもので、実施例3は、表1に示す構造パラメータを持つ屈折率プロファイル(A)のクラッド内に比屈折率差−0.05%、半径13.1μmから20.6μmの間にトレンチを設けた図3の屈折率プロファイル(C)の構造を持つものである。
【0058】
表1から明らかなように、実施例1〜3の光ファイバは、いずれも、WDMの光伝送方式で使用可能な特性を備えているが、比較例1〜5の光ファイバは下記の点で各実施例に比べて劣っている。
【0059】
屈折率分布パラメータα値が大きい比較例1は、分散はほぼ所望の値であるものの、コア有効断面積が66.6μm2と小さく非線形効果を起こしやすい。Δ1値が大きい比較例2は、コア有効断面積が比較例1同様に小さく、さらに分散の値が小さいため、四光波混合を起こす可能性が高い。比較例3はΔ1値が小さいために、分散が大きく信号波形の劣化が大きい。比較例4はΔ2が0であるために、カットオフ波長が大きく測定不能となった。このため、使用波長帯でシングルモード光伝送ができない。さらに、比較例5はΔ3が大きいため分散と分散勾配が大きく、信号の劣化が大きい。
【0060】
次ぎに、実施例1の光ファイバと、図6で示す負の分散と負の分散勾配とを有する分散補償光ファイバを接続した光伝送線路を構成した。後者の光ファイバ長は、前者の光ファイバ長の1/25である。
【0061】
これにより得られた光伝送線路の分散特性を図7に示す。図6から明らかなように、1530〜1625nmの波長帯域で、残留する分散は−1.5〜1.5ps/nm/kmの範囲にあり、形成された光伝送線路では実施例1の光ファイバ単体に比べて分散の絶対値を小さくすることができる。
【0062】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の光ファイバは、波長1530〜1625nmの範囲で大きなコア有効断面積と小さな分散な値を持つため、非線形効果が小さくWDMの光伝送を可能にする優れた特性を備えている。
【0063】
従って、前記光ファイバと分散補償光ファイバとを縦続接続して構成した光伝送線路は非線形効果が優れ、光伝送容量の大きな光伝送システムの構築に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例における屈折率プロファイル。
【図2】本発明の第2の実施例における屈折率プロファイル。
【図3】本発明の第3の実施例における屈折率プロファイル。
【図4】3種の光ファイバの光ファイバ長に対するカットオフ波長を示す特性図。
【図5】光ファイバ長2mのカットオフ波長と曲げ損失の関係を示す特性図。
【図6】本発明で用いられる分散補償光ファイバの波長に対する分散の特性図。
【図7】本発明の第1実施例と、それを用いて構成された光伝送線路との波長に対する分散を示す特性図。
【符号の説明】
1 センターコア
2 第1サイドコア
3 第2サイドコア
4 クラッド
5 トレンチ層
6 クラッド
Claims (11)
- 波長1550nmにおけるコア有効断面積が70μm2以上、波長1530nmから1625nmの全ての波長帯における分散が2.0ps/nm/kmから11.0ps/nm/km、直径20mmに曲げたときの曲げ損失が10dB/km以下であり、かつ、長さ22mにおけるカットオフ波長が1300nmより大きく1530nm以下であることを特徴とする光ファイバ。
- 長さ2mにおけるカットオフ波長が1500nmより大きく1700nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
- 波長1530nmから1625nmの全ての波長帯における分散が2.6ps/nm/km以上10.5ps/nm/km以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光ファイバ。
- 波長1550nmにおける分散勾配が0.09ps/nm2/km以下である請求項1ないし請求項3のいずれか1に記載の光ファイバ。
- 波長1530nmから1625nmの全ての波長帯域における光伝送損失が0.3dB/km以下である請求項1ないし請求項4のいずれか1に記載の光ファイバ。
- 少なくとも中心に配置されたセンタコアとその外側に配置された第1サイドコアとその外側に配置された第2サイドコアとその外側に配置されたクラッドとからなり、センタコアはクラッドの屈折率よりも屈折率が高く、第2サイドコアは第1サイドコアの屈折率よりも屈折率が高く且つセンタコアの屈折率よりも屈折率が低く構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1に記載の光ファイバ。
- センターコアの中心軸に位置する最も高い屈折率の比屈折率差がクラッドの屈折率に対して0.75%以上0.9%以下であることを特徴とする請求項6に記載の光ファイバ。
- センタコアの屈折率分布パラメータ(α)が、3未満であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の光ファイバ。
- 第1サイドコア内の最も低い屈折率がクラッドの屈折率よりも低いことを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか1に記載の光ファイバ。
- 第2サイドコアの最も高い屈折率の比屈折率差がクラッドの屈折率に対して0.4%以下であることを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれか1に記載の光ファイバ。
- 請求項1ないし請求項10のいずれか1に記載の光ファイバに、1530〜1625nmの全ての波長帯域で負の分散と負の分散勾配を有する分散補償光ファイバが接続されて構成されたことを特徴とする光伝送線路。
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JP2003165208A JP2005003794A (ja) | 2003-06-10 | 2003-06-10 | 光ファイバ、及びそれを用いた光伝送線路 |
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JP (1) | JP2005003794A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011170347A (ja) * | 2010-02-01 | 2011-09-01 | Draka Comteq Bv | 短いカットオフ波長を有するノンゼロ分散シフト光ファイバ |
US8896822B2 (en) | 2011-04-07 | 2014-11-25 | Fujikura Ltd. | Method of measuring cut-off wavelength of optical fiber |
-
2003
- 2003-06-10 JP JP2003165208A patent/JP2005003794A/ja active Pending
Cited By (2)
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---|---|---|---|---|
JP2011170347A (ja) * | 2010-02-01 | 2011-09-01 | Draka Comteq Bv | 短いカットオフ波長を有するノンゼロ分散シフト光ファイバ |
US8896822B2 (en) | 2011-04-07 | 2014-11-25 | Fujikura Ltd. | Method of measuring cut-off wavelength of optical fiber |
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