JP2005001927A - 酸化物誘電体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】TiO2−ZrO2−SnO2系の酸化物誘電体の不純物を低減することで、Q値、誘電率、温度安定性が高い酸化物誘電体を提供することと、該酸化物誘電体を、低コストで得る製造方法を提供すること
【解決手段】ジルコニウム、チタン、スズの硝酸塩とアミノ酸を含む溶液を加熱して、TiO2−ZrO2−SnO2系の酸化物粉末を調製し、これを焼結に供することで、酸化物誘電体を得る。この方法で得られる酸化物は、原料の高純度化が比較的容易なことと、溶液中の均一系反応で生成するので、高純度で均一性が高く、粒度分布の狭い微細な粉末として得られる。このため、この酸化物粉末の焼結で得られる酸化物誘電体は、優れた特性を発現する。
【選択図】 なし
【解決手段】ジルコニウム、チタン、スズの硝酸塩とアミノ酸を含む溶液を加熱して、TiO2−ZrO2−SnO2系の酸化物粉末を調製し、これを焼結に供することで、酸化物誘電体を得る。この方法で得られる酸化物は、原料の高純度化が比較的容易なことと、溶液中の均一系反応で生成するので、高純度で均一性が高く、粒度分布の狭い微細な粉末として得られる。このため、この酸化物粉末の焼結で得られる酸化物誘電体は、優れた特性を発現する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化物誘電体と、その製造方法に関し、特に、移動体通信端末や無線LANなどの誘電体フィルタなどに好適な酸化物誘電体と、その製造方法に関わるものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の移動体通信端末や無線LANなどの普及に伴い、マイクロ波、ミリ波帯域を利用した機器への、高性能化、小型化の要求は、留まるところがないのが現状である。マイクロ波帯域を利用する機器においては、誘電体が、誘電体共振器、誘電体基板、マイクロ波用チップコンデンサとして活用されている。
【0003】
また、衛星通信においては、10GHz以上の帯域が使用され、これに対応する民生用の機器には、小型で安価、しかも温度安定性が高く、高誘電率で誘電体損失の少ない、即ち、Q値が大きい誘電体フィルタが要求されている。
【0004】
誘電体フィルタに用いられる材料の、組成や組み合わせに関する技術は、数多く提案されている。既知のこのような材料の一つとして、TiO2−ZrO2−SnO2系酸化物誘電体が挙げられるが、この材料は、結晶中への不純物の混入などに起因するQの低下が著しいという問題がある。
【0005】
これに対処する技術の一つとして、特許文献1には、99.9%以上の純度を有する、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズを原料として用いることが開示されている。その製造工程は、たとえば上記の原料を、所定量秤量して16時間湿式混合し、次いで脱水乾燥し、2.5MPaの圧力で成形し、1500〜1600℃の温度で4時間焼結する、というものである。
【0006】
しかしながら、この工程にあっては、湿式粉砕混合であるため、例えばボールミルを用いる場合には、ボールを構成するアルミナやシリカなどの不純物が混入する虞がある。さらに、粉砕、混合に16時間もの長時間を要すること、900〜1100℃での予焼を要すること、予焼後に微粉砕工程を要すること、焼結温度に1500〜1600℃の高温を要することなどから、設備コスト、ランニングコストの低減が困難で、経済的でないという欠点を有する。
【0007】
また、高純度の金属酸化物を得る方法として、ゾル・ゲル法が挙げられ、これを誘電体に応用した技術が、多数開示されている。ゾル・ゲル法は、原料としてアルコキシ金属を用いることから、原料を高純度に精製するのが比較的容易で、ボールミルなどの粉砕装置を用いる必要がないので、不純物に起因する特性低下のない誘電体が得られるなどの利点があり、これをチタン酸ジルコン酸鉛に応用した例が、特許文献2に開示されている。
【0008】
しかし、ゾル・ゲル法は、アルコキシ金属の縮合反応で得られるゾルを成膜し、これをゲル化させた後、焼成するという方法なので、形状的な制約が大きいものである。しかも、含まれる金属が異なるアルコキシ金属を混合して、ゾルを調製する場合は、それぞれのアルコキシ金属の反応性が異なるため、均一なゾルが得られないことがある。
【0009】
一方で、本発明者は、特許文献3において、バリウム及び鉛の硝酸塩と、アミノ酸を含む水溶液から、BaPbO3なる式で示される、強誘電体用電極材料を得る技術を開示している。しかしながら、この場合は、対象となる材料が異なることと、ペーストから得られる塗膜を乾燥焼成して酸化物を生成するので、高純度の酸化物電極材料が容易に得られるが、膜状以外の形状に適用するのが困難であるという問題がある。
【0010】
【特許文献1】
特開昭58−18808号公報
【特許文献2】
特開2000−91657号公報
【特許文献3】
特開平9−320888号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、TiO2−ZrO2−SnO2系の酸化物誘電体の不純物を低減することで、Q値、誘電率、温度安定性が高い酸化物誘電体を提供することと、該酸化物誘電体が、低コストで得られる製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、金属の硝酸塩とアミノ酸の溶液から、酸化物誘電体の粉末を調製し、これを焼結に供することを検討した結果なされたものである。
【0013】
即ち、本発明は、ジルコニウム、スズ、チタンの硝酸塩、及び少なくとも1種のアミノ酸を含む溶液の加熱で得られる粉末の焼結体からなることを特徴とする酸化物誘電体である。
【0014】
また、本発明は、ジルコニウム、スズ、チタンの硝酸塩、及び少なくとも1種のアミノ酸を溶解した溶液を、該溶液の溶媒の沸点以上、600℃以下の温度で加熱し、得られる粉末を焼結することを特徴とする酸化物誘電体の製造方法である。
【0015】
また、本発明は、ジルコニウム、スズ、チタンの硝酸塩の合計量に対する、アミノ酸の合計量の比率が、モル比で、0.5以上、2以下であることを特徴とする、前記の酸化物誘電体の製造方法である。
【0016】
アミノ酸は、狭義ではL型α−アミノ酸のことであり、一般式RCH(NH2)COOHで表され、ある種のイオンと錯体を形成することが知られている。ジルコニウム、スズ、チタンの硝酸塩とアミノ酸を溶解した溶液の加熱で、高純度で均一なTiO2−ZrO2−SnO2系の酸化物の粉末が得られるのは、原料としての硝酸塩が純度を確保するのが比較的容易であることと、酸化物の生成が、従来行われている、原料の仮焼、焼結のような固相の不均一系の反応と異なり、溶液中の均一系反応によるからである。
【0017】
また、硝酸は酸化剤であることから、溶液を加熱することで、溶媒を除くと同時に、アミノ酸を燃焼により除くことができる。従って、この粉末を焼結した酸化物誘電体は、高誘電率、低誘電体損失、高い温度安定性を有する。
【0018】
さらに、仮焼工程が不要であり、高純度で粒度分布が狭い微粉末が得られるので、従来より低い焼結温度でも十分に緻密化し、製造コストを低減することができる。しかも、このようにして得られた焼結体は、均一な組織を有し、高特性発現に繋がる。
【0019】
また、本発明においては、粉末物性のみで、焼結温度を低下できることから、組成を変化させることで、必要な誘電特性が得られ、用途に適した誘電体フィルターを容易に製造できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
本発明に用いられる、硝酸塩とアミノ酸を溶解する溶媒としては、有機溶媒を含めると様々な種類が挙げられるが、コストや環境への負荷などを考慮すると水が好ましい。また、使用できるアミノ酸としては、グリシン、アラニン、プロリン、アルギニン、トレオニンなどが挙げられるが、硝酸塩に含有される金属と錯体を形成するアミノ酸であればよく、これらに限定されるものではない。また、アミノ酸は2種以上を同時に用いてもよい。
【0022】
本発明において、ジルコニウム、スズ、チタンの硝酸塩の合計量と、アミノ酸の合計量の比率を、モル比で、0.5以上、2以下とした理由は、種々の検討の結果、この混合量範囲のみで、微細で均一な酸化物粉末を得ることができることが判明したからである。即ち、硝酸塩の総モル数を1モルとしたとき、0.5モル未満のアミノ酸を用いた場合、溶液の溶媒を除いても燃焼が起こらず、また2モルを超えた場合には、得られる酸化物粉末の粒径が大きくなってしまうからである。
【0023】
また、本発明において、ジルコニウム、スズ、チタンの硝酸塩とアミノ酸を含む溶液を加熱する温度を、この溶液を構成する溶媒の沸点以上、600℃以下とした理由は、加熱はこの程度の温度で十分であり、これを超える温度であっても何ら利点もなく、設備コスト、エネルギーコストが増加するだけであり、さらに得られる酸化物粉末の平均粒径が大きくなってしまい、低温焼結に適さなくなるからである。
【0024】
また、さらに特性を向上するために、酸化ランタン、酸化ニッケル、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化コバルトなどの添加が有効であることが知られている。これらを使用する場合においても、主成分を構成する各元素の硝酸塩とアミノ酸との溶液を調製する際に、添加元素それぞれの硝酸塩を加えることで、添加元素が微量であっても、主成分全体に均一分布させることができ、効果的に特性の向上を図ることができる。
【0025】
【実施例】
次に、具体的な実施例を挙げ、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0026】
(実施例1)
純度が99.9%以上の、硝酸スズ、硝酸ジルコニウム、硝酸チタンを、(Zr0.8Sn0.2)TiO4の組成となるように、かつ全量が100gとなるように秤量し、純水に溶解した。この溶液にグリシンを上記硝酸塩の総モル数に対して、同モル数となるように秤量して添加し、十分撹枠混合して溶解させた。
【0027】
次に、この溶液を400℃に加熱し、水分を蒸発させた。水分蒸発後、残留物は燃焼を起こし、これにより粉末状の酸化物が得られた。この粉末をX線回折により評価したところ、従来の製造法による(Zr0.8Sn0.2)TiO4粉末と同様の結晶構造を有することが確認できた。
【0028】
また、この粉末の粒径をX線回折式粒度分布測定装置にて測定したところ、D50値が0.10μmであり、粒度分布は非常に狭いものであった。続いてバインダー混合、加圧成形し、1150℃、1200℃、1250℃、1300℃、1350℃、1400℃の温度で、それぞれ2時間焼結した。
【0029】
(実施例2)
アミノ酸として、アラニンを用いた以外は、実施例1と同様にして、酸化物粉末を調製した。X線回折による結晶構造の評価結果は、従来製法の酸化物と差がなく、D50値は0.12μmであり、粒度分布は実施例1とほぼ同一であった。この酸化物粉末についても、バインダー混合、加圧成形を行い、1200℃で2時間焼結した。
【0030】
(実施例3)
純度が99.9%以上の、硝酸スズ、硝酸ジルコニウム、硝酸チタンを、(Zr0.8Sn0.2)TiO4の組成となるように、かつ全量が100gとなるように秤量し、純水に溶解した。また、これに添加元素として硝酸ランタン、硝酸ニッケル、硝酸タンタルを酸化物に換算した量で、(Zr0.8Sn0.2)TiO4に対して、それぞれ0.3重量%添加されるように秤量し、上記溶液中に溶解した。
【0031】
この溶液にグリシンを上記硝酸塩の総モル数に対して、同モル数となるように秤量して添加し、十分撹枠混合して溶解させた。その後は、実施例1と同様にして、酸化物粉末を得た。この粉末をX線回折により評価したところ、従来の製造法による(Zr0.8Sn0.2)TiO4粉末と同様の結晶構造が確認できた。
【0032】
またこの粉末の粒度分布を、X線回折式粒度分布測定装置にて測定したところ、D50値が0.11μmであり、実施例1と同様、粒度分布は非常に狭いものであった。続いてこの酸化物粉末を、実施例1と同様にバインダー混合、成形し、1200℃で2時間焼結した。
【0033】
(比較例1)
純度が99.9%以上の、硝酸スズ、硝酸ジルコニウム、硝酸チタンを、(Zr0.8Sn0.2)TiO4の組成となるように秤量し、ボールミルを用いて20時間混合し、100℃で仮焼を施した。続いて、仮焼粉をボールミルで40時間粉砕し、平均粒径が0.7μmの酸化物粉末を得た。この酸化物粉末を、実施例1と同様に、バインダー混合、成形し、1150℃、1200℃、1250℃、1300℃、1350℃、1400℃の温度で、それぞれ2時間焼結した。
【0034】
(比較例2)
仮焼後のボールミルによる粉砕を80時間行い、酸化物粉末の平均粒径を、0.5μmとした他は、比較例1と同様にして、酸化物誘電体を調製した。
【0035】
このようにして得た、実施例、比較例の酸化物誘電体について、焼結体の密度、及び1200℃で得られた焼結体の平均の結晶粒径、比誘電率εr、Qf値、共振周波数の温度係数τfをそれぞれ評価した。図1は、実施例、比較例1、比較例2における、焼結温度と焼結体の密度の関係をまとめて示した。また、表1は、実施例、比較例の結晶粒径、εr、Qf、τfをまとめて示したものである。
【0036】
【表1】
【0037】
図1に示した結果を見ると、実施例1の酸化物粉末は、1200℃の焼結温度で、焼結体密度が飽和に近い状態になっているのに対し、比較例はいずれも実施例1の85%以下の密度であり、焼結に供する酸化物粉末の平均粒径の差が、そのまま現れている。また、表1に示した結晶粒径にも、酸化物粉末の平均粒径の影響が顕著であり、比較例は実施例の4倍以上となっている。
【0038】
一方、誘電体としての特性を見ると、εr、Qf、τfのいずれについても、実施例は、比較例よりも、優れた特性を発現していることが明らかである。
【0039】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、ジルコニウム、スズ、チタンの硝酸塩とアミノ酸を含む溶液を、この溶液を構成する溶媒の沸点以上、600℃以下の温度で加熱して生成する酸化物粉末を用いることで、従来と比べ極めて低温での焼結でも、十分に級密化し、比誘電率εr、Qf値、共振周波数の温度係数τfなどの特性が優れた、酸化物誘電体の焼結体が得られる。これを用いることで、高特性の誘電体フィルタの製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1、比較例1、比較例2における、焼結温度と焼結体密度の関係を示す図。
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化物誘電体と、その製造方法に関し、特に、移動体通信端末や無線LANなどの誘電体フィルタなどに好適な酸化物誘電体と、その製造方法に関わるものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の移動体通信端末や無線LANなどの普及に伴い、マイクロ波、ミリ波帯域を利用した機器への、高性能化、小型化の要求は、留まるところがないのが現状である。マイクロ波帯域を利用する機器においては、誘電体が、誘電体共振器、誘電体基板、マイクロ波用チップコンデンサとして活用されている。
【0003】
また、衛星通信においては、10GHz以上の帯域が使用され、これに対応する民生用の機器には、小型で安価、しかも温度安定性が高く、高誘電率で誘電体損失の少ない、即ち、Q値が大きい誘電体フィルタが要求されている。
【0004】
誘電体フィルタに用いられる材料の、組成や組み合わせに関する技術は、数多く提案されている。既知のこのような材料の一つとして、TiO2−ZrO2−SnO2系酸化物誘電体が挙げられるが、この材料は、結晶中への不純物の混入などに起因するQの低下が著しいという問題がある。
【0005】
これに対処する技術の一つとして、特許文献1には、99.9%以上の純度を有する、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズを原料として用いることが開示されている。その製造工程は、たとえば上記の原料を、所定量秤量して16時間湿式混合し、次いで脱水乾燥し、2.5MPaの圧力で成形し、1500〜1600℃の温度で4時間焼結する、というものである。
【0006】
しかしながら、この工程にあっては、湿式粉砕混合であるため、例えばボールミルを用いる場合には、ボールを構成するアルミナやシリカなどの不純物が混入する虞がある。さらに、粉砕、混合に16時間もの長時間を要すること、900〜1100℃での予焼を要すること、予焼後に微粉砕工程を要すること、焼結温度に1500〜1600℃の高温を要することなどから、設備コスト、ランニングコストの低減が困難で、経済的でないという欠点を有する。
【0007】
また、高純度の金属酸化物を得る方法として、ゾル・ゲル法が挙げられ、これを誘電体に応用した技術が、多数開示されている。ゾル・ゲル法は、原料としてアルコキシ金属を用いることから、原料を高純度に精製するのが比較的容易で、ボールミルなどの粉砕装置を用いる必要がないので、不純物に起因する特性低下のない誘電体が得られるなどの利点があり、これをチタン酸ジルコン酸鉛に応用した例が、特許文献2に開示されている。
【0008】
しかし、ゾル・ゲル法は、アルコキシ金属の縮合反応で得られるゾルを成膜し、これをゲル化させた後、焼成するという方法なので、形状的な制約が大きいものである。しかも、含まれる金属が異なるアルコキシ金属を混合して、ゾルを調製する場合は、それぞれのアルコキシ金属の反応性が異なるため、均一なゾルが得られないことがある。
【0009】
一方で、本発明者は、特許文献3において、バリウム及び鉛の硝酸塩と、アミノ酸を含む水溶液から、BaPbO3なる式で示される、強誘電体用電極材料を得る技術を開示している。しかしながら、この場合は、対象となる材料が異なることと、ペーストから得られる塗膜を乾燥焼成して酸化物を生成するので、高純度の酸化物電極材料が容易に得られるが、膜状以外の形状に適用するのが困難であるという問題がある。
【0010】
【特許文献1】
特開昭58−18808号公報
【特許文献2】
特開2000−91657号公報
【特許文献3】
特開平9−320888号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、TiO2−ZrO2−SnO2系の酸化物誘電体の不純物を低減することで、Q値、誘電率、温度安定性が高い酸化物誘電体を提供することと、該酸化物誘電体が、低コストで得られる製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、金属の硝酸塩とアミノ酸の溶液から、酸化物誘電体の粉末を調製し、これを焼結に供することを検討した結果なされたものである。
【0013】
即ち、本発明は、ジルコニウム、スズ、チタンの硝酸塩、及び少なくとも1種のアミノ酸を含む溶液の加熱で得られる粉末の焼結体からなることを特徴とする酸化物誘電体である。
【0014】
また、本発明は、ジルコニウム、スズ、チタンの硝酸塩、及び少なくとも1種のアミノ酸を溶解した溶液を、該溶液の溶媒の沸点以上、600℃以下の温度で加熱し、得られる粉末を焼結することを特徴とする酸化物誘電体の製造方法である。
【0015】
また、本発明は、ジルコニウム、スズ、チタンの硝酸塩の合計量に対する、アミノ酸の合計量の比率が、モル比で、0.5以上、2以下であることを特徴とする、前記の酸化物誘電体の製造方法である。
【0016】
アミノ酸は、狭義ではL型α−アミノ酸のことであり、一般式RCH(NH2)COOHで表され、ある種のイオンと錯体を形成することが知られている。ジルコニウム、スズ、チタンの硝酸塩とアミノ酸を溶解した溶液の加熱で、高純度で均一なTiO2−ZrO2−SnO2系の酸化物の粉末が得られるのは、原料としての硝酸塩が純度を確保するのが比較的容易であることと、酸化物の生成が、従来行われている、原料の仮焼、焼結のような固相の不均一系の反応と異なり、溶液中の均一系反応によるからである。
【0017】
また、硝酸は酸化剤であることから、溶液を加熱することで、溶媒を除くと同時に、アミノ酸を燃焼により除くことができる。従って、この粉末を焼結した酸化物誘電体は、高誘電率、低誘電体損失、高い温度安定性を有する。
【0018】
さらに、仮焼工程が不要であり、高純度で粒度分布が狭い微粉末が得られるので、従来より低い焼結温度でも十分に緻密化し、製造コストを低減することができる。しかも、このようにして得られた焼結体は、均一な組織を有し、高特性発現に繋がる。
【0019】
また、本発明においては、粉末物性のみで、焼結温度を低下できることから、組成を変化させることで、必要な誘電特性が得られ、用途に適した誘電体フィルターを容易に製造できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
本発明に用いられる、硝酸塩とアミノ酸を溶解する溶媒としては、有機溶媒を含めると様々な種類が挙げられるが、コストや環境への負荷などを考慮すると水が好ましい。また、使用できるアミノ酸としては、グリシン、アラニン、プロリン、アルギニン、トレオニンなどが挙げられるが、硝酸塩に含有される金属と錯体を形成するアミノ酸であればよく、これらに限定されるものではない。また、アミノ酸は2種以上を同時に用いてもよい。
【0022】
本発明において、ジルコニウム、スズ、チタンの硝酸塩の合計量と、アミノ酸の合計量の比率を、モル比で、0.5以上、2以下とした理由は、種々の検討の結果、この混合量範囲のみで、微細で均一な酸化物粉末を得ることができることが判明したからである。即ち、硝酸塩の総モル数を1モルとしたとき、0.5モル未満のアミノ酸を用いた場合、溶液の溶媒を除いても燃焼が起こらず、また2モルを超えた場合には、得られる酸化物粉末の粒径が大きくなってしまうからである。
【0023】
また、本発明において、ジルコニウム、スズ、チタンの硝酸塩とアミノ酸を含む溶液を加熱する温度を、この溶液を構成する溶媒の沸点以上、600℃以下とした理由は、加熱はこの程度の温度で十分であり、これを超える温度であっても何ら利点もなく、設備コスト、エネルギーコストが増加するだけであり、さらに得られる酸化物粉末の平均粒径が大きくなってしまい、低温焼結に適さなくなるからである。
【0024】
また、さらに特性を向上するために、酸化ランタン、酸化ニッケル、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化コバルトなどの添加が有効であることが知られている。これらを使用する場合においても、主成分を構成する各元素の硝酸塩とアミノ酸との溶液を調製する際に、添加元素それぞれの硝酸塩を加えることで、添加元素が微量であっても、主成分全体に均一分布させることができ、効果的に特性の向上を図ることができる。
【0025】
【実施例】
次に、具体的な実施例を挙げ、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0026】
(実施例1)
純度が99.9%以上の、硝酸スズ、硝酸ジルコニウム、硝酸チタンを、(Zr0.8Sn0.2)TiO4の組成となるように、かつ全量が100gとなるように秤量し、純水に溶解した。この溶液にグリシンを上記硝酸塩の総モル数に対して、同モル数となるように秤量して添加し、十分撹枠混合して溶解させた。
【0027】
次に、この溶液を400℃に加熱し、水分を蒸発させた。水分蒸発後、残留物は燃焼を起こし、これにより粉末状の酸化物が得られた。この粉末をX線回折により評価したところ、従来の製造法による(Zr0.8Sn0.2)TiO4粉末と同様の結晶構造を有することが確認できた。
【0028】
また、この粉末の粒径をX線回折式粒度分布測定装置にて測定したところ、D50値が0.10μmであり、粒度分布は非常に狭いものであった。続いてバインダー混合、加圧成形し、1150℃、1200℃、1250℃、1300℃、1350℃、1400℃の温度で、それぞれ2時間焼結した。
【0029】
(実施例2)
アミノ酸として、アラニンを用いた以外は、実施例1と同様にして、酸化物粉末を調製した。X線回折による結晶構造の評価結果は、従来製法の酸化物と差がなく、D50値は0.12μmであり、粒度分布は実施例1とほぼ同一であった。この酸化物粉末についても、バインダー混合、加圧成形を行い、1200℃で2時間焼結した。
【0030】
(実施例3)
純度が99.9%以上の、硝酸スズ、硝酸ジルコニウム、硝酸チタンを、(Zr0.8Sn0.2)TiO4の組成となるように、かつ全量が100gとなるように秤量し、純水に溶解した。また、これに添加元素として硝酸ランタン、硝酸ニッケル、硝酸タンタルを酸化物に換算した量で、(Zr0.8Sn0.2)TiO4に対して、それぞれ0.3重量%添加されるように秤量し、上記溶液中に溶解した。
【0031】
この溶液にグリシンを上記硝酸塩の総モル数に対して、同モル数となるように秤量して添加し、十分撹枠混合して溶解させた。その後は、実施例1と同様にして、酸化物粉末を得た。この粉末をX線回折により評価したところ、従来の製造法による(Zr0.8Sn0.2)TiO4粉末と同様の結晶構造が確認できた。
【0032】
またこの粉末の粒度分布を、X線回折式粒度分布測定装置にて測定したところ、D50値が0.11μmであり、実施例1と同様、粒度分布は非常に狭いものであった。続いてこの酸化物粉末を、実施例1と同様にバインダー混合、成形し、1200℃で2時間焼結した。
【0033】
(比較例1)
純度が99.9%以上の、硝酸スズ、硝酸ジルコニウム、硝酸チタンを、(Zr0.8Sn0.2)TiO4の組成となるように秤量し、ボールミルを用いて20時間混合し、100℃で仮焼を施した。続いて、仮焼粉をボールミルで40時間粉砕し、平均粒径が0.7μmの酸化物粉末を得た。この酸化物粉末を、実施例1と同様に、バインダー混合、成形し、1150℃、1200℃、1250℃、1300℃、1350℃、1400℃の温度で、それぞれ2時間焼結した。
【0034】
(比較例2)
仮焼後のボールミルによる粉砕を80時間行い、酸化物粉末の平均粒径を、0.5μmとした他は、比較例1と同様にして、酸化物誘電体を調製した。
【0035】
このようにして得た、実施例、比較例の酸化物誘電体について、焼結体の密度、及び1200℃で得られた焼結体の平均の結晶粒径、比誘電率εr、Qf値、共振周波数の温度係数τfをそれぞれ評価した。図1は、実施例、比較例1、比較例2における、焼結温度と焼結体の密度の関係をまとめて示した。また、表1は、実施例、比較例の結晶粒径、εr、Qf、τfをまとめて示したものである。
【0036】
【表1】
【0037】
図1に示した結果を見ると、実施例1の酸化物粉末は、1200℃の焼結温度で、焼結体密度が飽和に近い状態になっているのに対し、比較例はいずれも実施例1の85%以下の密度であり、焼結に供する酸化物粉末の平均粒径の差が、そのまま現れている。また、表1に示した結晶粒径にも、酸化物粉末の平均粒径の影響が顕著であり、比較例は実施例の4倍以上となっている。
【0038】
一方、誘電体としての特性を見ると、εr、Qf、τfのいずれについても、実施例は、比較例よりも、優れた特性を発現していることが明らかである。
【0039】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、ジルコニウム、スズ、チタンの硝酸塩とアミノ酸を含む溶液を、この溶液を構成する溶媒の沸点以上、600℃以下の温度で加熱して生成する酸化物粉末を用いることで、従来と比べ極めて低温での焼結でも、十分に級密化し、比誘電率εr、Qf値、共振周波数の温度係数τfなどの特性が優れた、酸化物誘電体の焼結体が得られる。これを用いることで、高特性の誘電体フィルタの製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1、比較例1、比較例2における、焼結温度と焼結体密度の関係を示す図。
Claims (3)
- ジルコニウム、スズ、チタンの硝酸塩及び少なくとも1種のアミノ酸を含む溶液の加熱で得られる粉末の焼結体からなることを特徴とする酸化物誘電体。
- ジルコニウム、スズ、チタンの硝酸塩、及び少なくとも1種のアミノ酸を溶解した溶液を、該溶液の溶媒の沸点以上、600℃以下の温度で加熱し、得られる粉末を焼結することを特徴とする酸化物誘電体の製造方法。
- ジルコニウム、スズ、チタンの硝酸塩の合計量に対する、アミノ酸の合計量の比率が、モル比で、0.5以上、2以下であることを特徴とする、請求項2に記載の酸化物誘電体の製造方法。
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