JP2004537037A - 特異的rna構造モチーフと結合する小分子を同定する方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
1. 序
本発明は予め選択した標的リボ核酸(「RNA」)と結合する試験化合物をスクリーニングしかつ同定する方法に関する。直接的非競合結合アッセイを有利に利用し、予め選択した標的RNAと選択的に結合する化合物について化合物のライブラリーをスクリーニングする。標的RNA分子と特定の試験化合物との結合は、試験化合物と結合した標的RNAの物理的特性の変化を測定するいずれかの物理的方法を利用して検出する。本発明の方法は、化合物のライブラリーをハイスループット(high-throughput)スクリーニングにより医薬リード化合物を同定するための簡単で感度の良いアッセイを提供する。
【背景技術】
【0002】
2. 発明の背景
タンパク質-核酸相互作用は、転写、RNAスプライシング、mRNA崩壊、およびmRNA翻訳を含む多数の細胞機能に関わる。1本鎖または2本鎖核酸の特定配列と高アフィニティで結合することができる、容易にアクセス可能な合成分子は、これらの相互作用を制御可能な方法で妨害する可能性を有するので、分子生物学および医学用のツールとして魅力的である。標的核酸の機能をブロックするのに成功した方法としては、二重鎖を形成するアンチセンスオリゴヌクレオチド(Miller, 1996, Progress in Nucl. Acid Res. & Mol. Biol. 52:261-291;Ojwang & Rando, 1999, 「タイプI腫瘍壊死因子受容体を用いて、N7改変2'-デオキシグアノシンを含有するオリゴデオキシヌクレオチドによるアンチセンス抑制の達成、方法(Achieving antisense inhibition by oligodeoxynucleotides containing N7 modified 2'-deoxyguanosine using tumor necrosis factor receptor type 1, METHODS)」:A Companion to Methods in Enzymology 18:244-251)およびワットソン-クリック塩基対合を経由して核酸と結合するペプチド核酸(「PNA」)(Nielsen, 1999, Current Opinion in Bioteclmology 10:71-75)の利用が挙げられる。三重鎖を形成する抗遺伝子オリゴヌクレオチド(Pingら, 1997, RNA 3:850-860;Aggarwalら, 1996, Cancer Res. 56:5156-5164;米国特許第5,650,316号)、ならびに二重らせんの主および副溝(major and minor grooves)に対してそれぞれ特異的であるピロール-イミダゾールポリアミドオリゴマー(Gottesfeldら, 1997, Nature 387 :202-205;Whiteら, 1998, Nature 391:468-471)を設計することもできる。
【0003】
合成核酸(すなわち、アンチセンス、リボザイム、および三重らせん形成分子)に加えて、転写または翻訳などのデオキシリボ核酸(「DNA」)またはRNAプロセスを妨害する天然産物の例がある。例えば、ある特定の炭水化物に基づく宿主細胞因子であるカリケアマイシン(calicheamicin)オリゴ糖は、転写因子とDNAとの配列特異的結合を妨害してin vivo転写を抑制する(Hoら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:9203-9207;Liuら, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:940-944)。ある特定の抗生物質のクラスは特性決定が行われていて、RNAと相互作用することが見出された。例えば、抗生物質チオストレプトン(thiostreptone)はリボソームRNA由来の60量体と強固に結合する(Cundliffeら, 1990, in 「リボソーム:構造、機能および進化(The Ribosome:Structure, Function & Evolution)」 (Schlessingerら, 編) American Society for Microbiology, Washington, D.C. pp.479-490)。様々な抗生物質に対する細菌耐性はしばしば特定のrRNA部位におけるメチル化に関わる(Cundliffe, 1989, Ann. Rev. Microbiol. 43:207-233)。アミノグリコシジックアミノシクリトール(アミノグリコシド)抗生物質およびペプチド抗生物質は、RNAの特定領域と結合することによりグループIイントロンスプライシングを抑制することが知られる(von Ahsenら, 1991, Nature (London) 353:368-370)。複数のこれらの前記アミノグリコシドはまた、ハンマーヘッドリボザイム機能を抑制することも見出されている(Stageら, 1995, RNA 1:95-101)。さらに、ある特定のアミノグリコシドおよび他のタンパク質合成インヒビターは16S rRNAの特定塩基と相互作用することが見出されている(Woodcockら, 1991, EMBO J. 10:3099-3103)。16S rRNAのオリゴヌクレオチド類似体も、ある特定のアミノグリコシドと相互作用することが示されている(Purohitら, 1994, Nature 370:659-662)。アミノグリコシドに対する過感受性の、ある分子的基礎はミトコンドリアrRNAの単一塩基変化に位置することが見出されている(Hutchinら, 1993, Nucleic Acids Res. 21:4174-4179)。アミノグリコシドはまた、特定の構造RNAモチーフとその対応するRNA結合タンパク質との間の相互作用を抑制することも示されている。Zappら(Cell, 1993, 74:969-978)は、アミノグリコシドのネオマイシンB、リビドマイシンA、およびトブラマイシンが、Rev(ウイルス遺伝子発現のために必要なウイルス調節タンパク質)とHIV RNAのIIB(またはRRE)領域のウイルス認識エレメントとの結合をブロックすることができるのを実証している。このブロックは、抗生物質とRRE RNA構造モチーフとの直接的な競合結合の結果であると思われる。
【0004】
RNAの1本鎖セクションは、ループ、バルジ(bulge)、シュードノット(pseudoknot)、グアノシン四重分子(guanosine quartet)およびターンなどの局所モチーフからなる複雑な三次構造にフォールドすることができる(Chastain & Tinoco, 1991, Progress in Nucleic Acid Res. & Mol. Biol. 41:131-177;Chow & Bogdan, 1997, Chemical Reviews 97:1489-1514;Rando & Hogan, 1998, 「グアノシン四重分子を形成するオリゴヌクレオチドの生物学的活性(Biologic activity of guanosine quartet forming oligonucleotides)」 in 「応用アンチセンスオリゴヌクレオチド技術(Applied Antisense Oligonucleotide Technology)」 Stein. & Krieg (編) John Wiley and Sons, New York, 335-352頁)。かかる構造は、核酸の活性に対して極めて重要であってmRNA転写、安定性、または翻訳の制御などの機能に影響を与えうる(Weeks & Crothers, 1993, Science 261:1574-1577)。これらの機能は1本鎖の核酸の自然3次元構造モチーフに依存するので、アンチセンスおよびリボザイム型分子の設計に使用される二重および三重らせん核酸形成の一般的でかつ簡単に使用できる配列特異的認識規則を用いて、これらのモチーフと結合する合成薬を同定または設計することは困難である。スクリーニング手法は一般的に、標的RNAと、特定の標的RNAと特異的に相互作用することを予め同定しておいた生理学的宿主細胞因子との間の相互作用を破壊する化合物を同定するように設計した競合アッセイに関わる。一般的に、かかるアッセイは標的RNAの機能に必要と思われる宿主細胞因子の同定および特性決定を必要とする。アッセイにおいて、標的RNAおよびその予め選択した宿主細胞結合パートナーの両方を競合フォーマットで使用し、これら2成分を破壊または妨害する化合物を同定する。
【0005】
本出願の第2節におけるいずれかの参照の引用または確認は、かかる参照が本発明に対して先行する技術として利用しうることを承認するものではない。
【発明の開示】
【0006】
3. 発明の概要
本発明は、限定されるものでないが、特定のRNA配列、RNA構造モチーフ、及び/またはRNA構造エレメントを含む予め選択した核酸の標的エレメントと結合する化合物を同定する方法に関する。特定の標的RNA配列、RNA構造モチーフ及び/またはRNA構造エレメントを標的として用いて小分子をスクリーニングし、そしてこれらの特定の配列、モチーフ、及び/または構造エレメントと結合する小分子を同定する。例えば、検出可能な標識を有する予め選択した標的RNAを用いて、好ましくは生理条件下で、試験化合物のライブラリーをスクリーニングする方法を記載する。標的RNAとライブラリーのメンバーとの間で形成されるいずれかの複合体を、試験化合物と結合した標的RNAの物理的特性の変化を検出する物理学的方法を用いて同定する。特に、本発明は、検出可能な標識を有する標的RNAを用いて、標識した試験管内のまたはマイクロタイタープレート内の、またはマイクロアレイ内の、溶液中に遊離した試験化合物のライブラリーをスクリーニングする方法に関する。標識された標的RNAと結合するライブラリー中の化合物は検出可能な複合体を形成するであろう。次いで検出可能に標識された複合体を、ライブラリー中の非複合で無標識の試験化合物からおよび非複合で標識された標的RNAから、複合体形成した標的RNAの、限定されるものでないが電気泳動、クロマトグラフィ、または熱安定特性の変化を識別する方法を含む様々な方法により、同定しかつ除去することができる。かかる方法としては、限定されるものでないが、電気泳動、蛍光分光、表面プラズモン共鳴、質量分析、シンチレーション近接アッセイ、NMR分光による構造活性相関(「SAR」)、サイズ排除クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、およびナノ粒子凝集が挙げられる。次いで標識したRNAと結合した試験化合物の構造を決定する。その方法は、部分的に、スクリーニングされるライブラリーの性質に依存しうる。例えば、それぞれがアドレスまたは識別子(identifier)を有する試験化合物のアレイまたはマイクロアレイは、例えば、陽性サンプルを個々の試験アッセイに適用した元の化合物リストを参照することにより解明することができる。試験化合物を同定する他の方法としては、質量分析計または核磁気共鳴(「NMR」)を用いる試験化合物の新規(de novo)構造決定が挙げられる。同定された試験化合物は、例えば、アッセイ方法、診断方法、細胞ソーティングにおいて、標的分子機能のインヒビターとして、プローブとして、隔離剤などとして結合反応物を利用しうるいずれの目的に対しても有用である。さらに、標的RNA分子と特異的に相互作用する小有機分子は、治療薬開発のリード化合物として有用でありうる。
【0007】
本明細書に記載した、特定の予め選択した標的RNAと直接結合する化合物を同定する方法は、ハイスループットスクリーニングに好適である。本発明の直接結合法は、天然RNA結合タンパク質:標的RNA複合体の形成を抑制する競合物を求める薬剤スクリーニングシステム;すなわち競合アッセイを上回る利点を提供する。本発明の直接結合法は、迅速でありかつ、例えば技術者により、ハイスループットスクリーニングに適合させることにより、容易に実施に備えることができる。本発明の方法はまた、標的RNAの活性と生理学的関連を有しえない予め選択した宿主細胞因子の使用を必要とする競合薬剤スクリーニングシステムに固有のバイアスを排除する。その代わりに、本発明の方法は、好ましくは生理条件下で、特定の標的RNA配列、RNA構造モチーフ及び/またはRNA構造エレメントと、直接結合しうるいずれかの化合物を同定するために利用される。結果として、こうして同定された化合物は、標的RNAとin vivoでRNA活性に必要とされるいずれかの1以上の自然の(既知または未知の)宿主細胞因子との相互作用を抑制することができる。
【0008】
本発明は、限定するものでない本発明の実施形態を説明することを意図する詳細な説明および実施例を参照することによりさらに詳しく理解されるであろう。
【0009】
3.1. 定義
本明細書に使用される用語「標的核酸」は、RNA、DNA、またはそれらの化学的に改変された変異体を意味する。好ましい実施形態においては、標的核酸はRNAである。標的核酸はまた、限定されるものでないが、ループ、バルジ(bulge)、シュードノット(pseudoknot)、グアノシン四重分子(quartet)およびターンなどの核酸の三次構造も意味する。標的核酸はまた、限定されるものでないが、HIV TARエレメント、内部リボソームエントリー部位(internal ribosome entry site)、「スリッパリー部位(slippery site)」、不安定性エレメント、およびアデニル酸ウリジル酸リッチエレメントなどのRNAエレメントも意味し、これらは第5.1.節に記載する。標的核酸の限定するものでない例は、第5.1節および第6節に報じる。
【0010】
本明細書に使用される用語「ライブラリー」は、標的核酸分子と接触させる複数の試験化合物を意味する。ライブラリーは、コンビナトリアルライブラリー、例えばコンビナトリアル化学技術を用いて合成した試験化合物のコレクション、またはそれぞれユニークな三次元空間を占める低分子量(1000ダルトン未満)のユニークな化学品のコレクションであってもよい。
【0011】
本明細書に使用される用語「標識」または「検出可能な標識」は、分光学、光化学、生物化学、免疫化学、または化学的方法により、直接的または間接的に検出可能である組成を意味する。例えば、有用な標識としては、放射性同位体(例えば、32P、35S、および3H)、染料、蛍光染料、高電子密度試薬、酵素およびそれらの基質(例えば、酵素結合イムノアッセイに通常使用される、例えば、アルカリホスファターゼおよび西洋わさびペルオキシダーゼ(horse radish peroxidase))、ビオチン-ストレプトアビジン、ジゴキシゲニン、または、それらに対する抗血清もしくはモノクローナル抗体を入手しうるハプテンおよびタンパク質が挙げられる。さらに、標識もしくは検出可能な部分としては、標的核酸とカップリングして試験化合物もしくは化合物ライブラリーとインキュベートすると、標的核酸と一緒に標的核酸と結合した分子のアフィニティ捕獲を可能にする「アフィニティタグ」が挙げられる。当業者であれば、標的核酸と結合したアフィニティタグは、定義により、その捕獲を可能にする固体支持体とカップリングした相補的リガンドを有することを理解するであろう。例えば、有用なアフィニティタグおよび相補的パートナーとしては、限定されるものでないが、ビオチン-ストレプトアビジン、相補的核酸断片(例えば、オリゴdT-オリゴdA、オリゴT-オリゴA、オリゴdG-オリゴdC、オリゴG-オリゴC)、アプタマー(aptamer)、またはその抗血清もしくはモノクローナル抗体を入手しうるハプテンおよびタンパク質が挙げられる。標識または検出可能部分は典型的には、リンカーもしくは化学結合を通して共有結合により、またはイオン性、ファンデルワースまたは水素結合を通して検出すべき分子と結合している。
【0012】
本明細書に使用される用語「染料」は、照射に曝すと、目視によりまたは通常の分光学的手段を介して検出可能なレベルにて照射を放出する分子を意味する。本明細書に使用される用語「可視染料」は、スペクトルの可視領域(すなわち、約400nm〜約700nmの波長)において照射を吸収する発色団を有し、透過した可視領域の照射が目視もしくは通常の分光法により検出しうる分子を意味する。本明細書に使用される用語「紫外染料」は、スペクトルの紫外領域(すなわち、約30nm〜約400nmの波長)において照射を吸収する発色団を有する分子を意味する。本明細書に使用される用語「赤外染料」は、スペクトルの赤外領域(すなわち、約700nm〜約3,000nmの波長)において照射を吸収する発色団を有する分子を意味する。「発色団」は、照射に曝すと、目視によりまたは通常の分光法を介して検出可能なレベルにて照射を放出する染料の原子のネットワークである。当業者であれば、染料はスペクトルの一領域で照射を吸収するが、スペクトルの他の領域で照射を放出しうることを容易に理解するであろう。例えば、紫外染料はスペクトルの可視領域で照射を放出しうる。当業者はまた、染料は蛍光またはリン光を介して照射を放出しうることも容易に理解するであろう。
【0013】
本明細書において使用される成句「製薬上許容される塩」は、限定されるものでないが、本発明の方法を用いて同定した試験化合物中に存在しうる酸性または塩基性基の塩を含む。天然において塩基性である試験化合物は、様々な無機および有機酸と様々な塩を形成することができる。製薬上許容されるかかる塩基性化合物の酸付加塩を調製するために使用しうる酸は、無毒の酸付加塩、すなわち製薬上許容される陰イオンを含有する塩を形成するものであり、それらの塩としては、限定されるものでないが、硫酸、クエン酸、マレイン酸、酢酸、蓚酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、硫酸水素、リン酸、酸性リン酸、イソニコチン、酢酸、乳酸、サリチル酸、クエン酸、酸性クエン酸、酒石酸、オレイン酸、タンニン酸、パントテン酸、酒石酸水素、アスコルビン酸、コハク酸、マレイン酸、ゲニチシン酸、フマル酸、グルコン酸、グルカロネート(glucaronate)、サッカレート(saccharate)、蟻酸、安息香酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸およびパモ酸(pamoate)(すなわち、1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))塩を含む。アミノ部分を含む試験化合物は、上記の酸に加えて様々なアミノ酸と製薬上もしくは化粧上許容される塩を形成しうる。天然において酸性である試験化合物は、様々な製薬上もしくは化粧上許容される陽イオンと塩を形成することができる。かかる塩の例としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、そして特にカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウム、および鉄塩が挙げられる。
【0014】
本明細書に使用される「実質的に1つのタイプの試験化合物」は、アッセイが、ある点で、それぞれの反応に1つの化合物しか用いる必要がなく、もしその結果が標的RNA分子と試験化合物との間に結合事象が起こることを示せば、その試験化合物は容易に同定されうる方法で実施できることを意味する。
【0015】
4. 図面の説明
図面の簡単な説明については、以下参照。
【発明を実施するための最良の手段】
【0016】
5. 発明の詳細な説明
本発明は、限定されるものでないが、予め選択した標的RNAの配列決定構造モチーフ(sequencing structural motif)、または構造エレメント(structural element)を含む予め選択した核酸、特にRNAの標的エレメントと結合する化合物を同定する方法に関する。検出可能な標識を有する予め選択した標的RNAを用いて試験化合物のライブラリーをスクリーニングする方法を記載する。標的RNAとライブラリーのメンバーとの間に形成されるいずれかの複合体を、試験化合物と結合した標的RNAの物理的特性の変化を検出する物理学的方法を用いて同定する。標的RNAまたは試験化合物と比較したRNA-試験化合物複合体の物理的特性の変化は、限定されるものでないが、質量の変化による移動度の変化、電荷の変化、または熱安定性の変化を検出する方法などの方法により測定することができる。かかる方法としては、限定されるものでないが、電気泳動、蛍光分光分析、表面プラズモン共鳴、質量分析、シンチレーション近接アッセイ、NMR分光法による構造活性相関(「SAR」)、サイズ排除クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、およびナノ粒子凝集が挙げられる。特に、本発明は、検出可能な標識を有する標的RNAを利用して、標識された試験管内のまたはマイクロタイタープレート内の、またはマイクロアレイ内の、溶液中に遊離した試験化合物のライブラリーをスクリーニングする方法に関する。標識された標的RNAと結合するライブラリー中の化合物は検出可能に標識された複合体を生成するであろう。検出できるように標識された複合体は、次いで複合体形成した標的RNAの物理的特性の変化を識別できる様々な方法により同定しかつ、ライブラリー中の無標識の複合体形成していない試験化合物から取り出すことができる。標識されたRNAと結合した試験化合物の構造も決定する。使用する方法は、部分的に、スクリーニングするライブラリーの性質に依存しうる。例えば、それぞれが番地または識別子を有する試験化合物のアレイまたはマイクロアレイは、例えば、陽性サンプルを個々の試験アッセイに適用された元の化合物リストと交差参照することにより解明することができる。試験化合物を同定する他の方法としては、質量分析または核磁気共鳴(「NMR」)を用いる試験化合物の新規(de novo)構造決定が挙げられる。
【0017】
従って、本発明の方法は、予め選択した標的核酸と特異的に結合するライブラリーの試験化合物をライブラリーの非結合のメンバーから容易に識別することを特徴とする、試験化合物のライブラリーをハイスループットスクリーニングするための簡単で感度の良いアッセイを提供する。結合分子の構造は、使用するライブラリーのタイプに依存する方法によって、入力ライブラリーから解読される。このようにして同定した試験化合物は、結合反応を利用するいずれの目的に対しても有用であり、例えば、アッセイ方法、診断方法、細胞ソーティングにおいて、標的分子機能のインヒビターとして、プローブとして、封鎖剤および治療薬開発のリード化合物として、などに有用である。標的RNA分子と特異的に相互作用することが同定された小有機化合物は、特に、治療薬開発のリード化合物として魅力的な候補化合物である。
【0018】
本発明のアッセイは、標的RNAに対する結合パートナーとして(恐らくRNA機能をモジュレートするために必須な)宿主細胞因子の同定と使用を必要とする競合結合アッセイにより導入されるバイアスを減少する。本発明のアッセイは、好ましくは生理学的条件下で、標的RNAと結合するいずれかの化合物または薬剤を検出するように設計される。次いでかかる薬剤を、どの宿主細胞因子が標的RNAの機能及び/または活性をモジュレートするために必要であるかを確立または推定することなしに、生物学的活性について試験することができる。
【0019】
第5.1節は、様々な細胞機能に重要であるタンパク質-RNA相互作用、および試験化合物を同定するために利用しうる複数の標的RNAエレメントの例を記載する。RNAと結合することによりこれらの相互作用を抑制しかつRNAと内因的に結合する天然タンパク質または宿主細胞因子と成功裏に競合する化合物は、例えば、感染または野放し増殖(unchecked growth)などの疾患もしくは異常な症状を治療または予防する上で重要でありうる。第5.2節は、本発明の方法に有用である標的核酸に対する検出可能な標識を記載する。第5.3節は、試験化合物のライブラリーを記載する。第5.4節は、本発明の方法を利用して、標識された標的RNAを試験化合物と結合させ、試験化合物と結合するRNAを検出するための条件を提供する。第5.5節は、試験化合物と結合した標的RNAの複合体を非結合のRNAから分離する方法を提供する。第5.6節は、標的RNAと結合した試験化合物を同定する方法を記載する。第5.7節は、in vivoで試験化合物の効果を試験する本発明の方法により同定した試験化合物の二次、生物学的スクリーニングを記載する。第5.8節は、本発明の方法により同定した試験化合物の、哺乳類動物における疾患または異常症状を治療または予防するための利用を記載する。
【0020】
5.1. 生物学的に重要な RNA- 宿主細胞因子相互作用
核酸、特にRNAは、バルジ(bulge)、ループ、三重らせんおよびシュードノット(pseudoknot)を含む複雑な三次構造にフォールディングすることができて、タンパク質などの宿主細胞因子および他のRNAに対する結合部位を提供しうる。RNA-タンパク質およびRNA-RNA相互作用は、転写、RNAスプライシング、RNA安定性および翻訳を含む様々な細胞機能に重要である。さらに、かかる宿主細胞因子とRNAとの結合は、かかるRNAの安定性および翻訳効率を改変し、従って続く翻訳に影響を与えうる。例えば、複数の疾患はタンパク質過剰産生またはタンパク質機能の低下に関連する。この事例では、RNA安定性および翻訳効率をモジュレートする化合物の同定が、かかる疾患を治療および予防するために有用でありうる。
【0021】
本発明の方法は、溶液中の試験化合物のライブラリーのハイスループットスクリーニングアッセイにおいて、標的RNAエレメントと結合する試験化合物を同定するために有用である。特に、本発明の方法は、in vivoで標的RNA エレメントと結合しかつそのRNAと1種以上の宿主細胞因子との相互作用を抑制する試験化合物を同定するために有用である。本発明の方法により同定した分子は、in vivoで特定の結合したRNA:宿主細胞因子複合体の形成を抑制するために有用である。
【0022】
複数の実施形態においては、本発明の方法で同定した試験化合物は、mRNAの5'非翻訳領域、3'非翻訳領域、またはコード領域内の1以上の調節エレメントと結合することにより、メッセンジャーRNA(「mRNA」)の翻訳、例えばタンパク質産生を増加または減少するために有用である。mRNAと結合する化合物は、とりわけ、mRNAプロセシング速度を増加または減少し、細胞を通してのmRNAの輸送を改変し、mRNAのリボソーム、サプレッサータンパク質またはエンハンサータンパク質との結合を阻止もしくは増強し、またはmRNA安定性を改変することができる。従って、mRNA翻訳を増加または減少する化合物は、疾患を治療または予防するために利用することができる。例えば、アミロイド症などのタンパク質過剰産生に関連する、またはRasなどの突然変異体タンパク質の産生に関連する疾患は、過剰産生タンパク質をコードするmRNAの翻訳を減少して、タンパク質の産生を抑制することにより治療または予防することができる。逆に、血友病などのタンパク質機能の低下に関連する疾患の症状は、機能の低下したタンパク質、例えば、複数の形態の血友病における第IX因子をコードするmRNAの翻訳を増加することにより治療することができる。
【0023】
本発明の方法を利用して、哺乳類動物の疾患の進行に関連する様々なタンパク質をコードするmRNAと結合する化合物を同定することができる。これらのmRNAとしては、限定されるものでないが、アミロイドタンパク質およびアミロイド前駆体タンパク質;アンギオスタチン、エンドスタチン、METH-1およびMETH-2などの抗血管形成タンパク質(anti-angiogenic proteins);サービビン(survivin)などのアポトーシスインヒビタータンパク質、第IX因子、第VIII因子などの血液凝固因子および血液凝固カスケードのその他の因子;コラーゲン;サイクリン依存性キナーゼ、サイクリンD1、サイクリンE、WAF1、cdk4インヒビター、およびMTS1などのサイクリンおよびサイクリンインヒビター;嚢胞性線維症細胞膜貫通コンダクタンス調節因子遺伝子(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator : CFTR);IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17およびその他のインターロイキンなどのサイトカイン;エリスロポイエチン(Epo)などの造血成長因子;G-CSF、GM-CSF、M-CSF、SCFおよびトロンボポイエチンなどのコロニー刺激因子;BNDF、BMP、GGRP、EGF、FGF、GDNF、GGF、HGF、IGF-1、IGF-2、KGF、ミオトロフィン(myotrophin)、NGF、OSM、PDGF、ソマトトロフィン(somatotrophin)、TGF-β、TGF-αおよびVEGFなどの成長因子;インターフェロンなどの抗ウイルス性サイトカイン、インターフェロンにより誘導される抗ウイルス性タンパク質、TNF-α、およびTNF-β;カテプシンK、シトクロムP-450およびその他のシトクロム、ファルネシルトランスフェラーゼ、グルタチオン−Sトランスフェラーゼ、ヘパラナーゼ、HMG CoA合成酵素、N-アセチルトランスフェラーゼ、フェニルアニリンヒドロキシラーゼ、ホスホジエストラーゼ、rasカルボキシル末端プロテアーゼ、テロメラーゼおよびTNF変換酵素などの酵素;カドヘリン、例えば、N-カドヘリンおよびE-カドヘリンなどの糖タンパク質;細胞接着分子;セレクチン;CD40などの膜貫通糖タンパク質;熱ショックタンパク質;5-αレダクターゼ、心房性ナトリウム利尿因子、カルシトニン、コルチコトロピン放出因子、利尿ホルモン、グルカゴン、性腺刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、ソマトトロピン、インスリン、レプチン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、副甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモン、および甲状腺刺激ホルモンなどのホルモン;抗体、CTLA4、赤血球凝集素、MHCタンパク質、VLA-4、およびカリクレイン−キニノーゲン−キニン系を含む免疫応答に関わるタンパク質;CD4などのリガンド;sis、hst、タンパク質チロシンキナーゼ受容体、ras、abl、mos、myc、fos、jun、H-ras、ki-ras、c-fms、bcl-2、L-myc、c-myc、gip、gsp、およびHER-2などの発癌遺伝子産物;ボンベシン受容体、エストロゲン受容体、GABA受容体、EGFR、PDGFR、FGFR、およびNGFRを含む成長因子受容体、GTP-結合調節タンパク質、インターロイキン受容体、イオンチャネル受容体、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト、リポタンパク質受容体、オピオイド疼痛受容体、サブスタンスP受容体、レチノイン酸およびレチノイド受容体、ステロイド受容体、T細胞受容体、甲状腺ホルモン受容体、TNF受容体などの受容体;組織プラスミノーゲンアクチベーター;膜貫通受容体;カルシウムポンプ、プロトンポンプ、Na/Ca交換体、MRP1、MRP2、P170、LRP、およびcMOATなどの膜貫通輸送系;トランスフェリン;ならびにAPC、brca1、brca2、DCC、MCC、MTS1、NF1、NF2、nm23、p53およびRbなどの癌抑制遺伝子産物、をコードするmRNAが挙げられる。以上に掲げた真核生物遺伝子に加えて、本発明を用いて、記載のように、ウイルス、細菌または真菌の転写または翻訳効率を妨害する分子を規定し、従って新規の抗感染性疾患治療薬の基礎を作ることができる。その他の標的遺伝子としては、限定されるものでないが、第5.1および第6節に開示した遺伝子が挙げられる。
【0024】
本発明の方法を利用して、タンパク質の産生を増加または減少するmRNA結合試験化合物を同定し、それによって前記タンパク質の産生の減少または増加と関連する疾患をそれぞれ治療または予防することができる。本発明の方法は、ネコ、イヌ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、霊長類およびヒトを含む哺乳類動物の疾患を治療または予防する試験化合物を同定するために有用でありうる。かかる疾患としては、限定されるものでないが、アミロイド症、血友病、アルツハイマー病、アテローム硬化症、癌、巨人症、小人症、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、炎症、嚢胞性線維症、自己免疫障害、糖尿病、加齢、肥満、神経変性障害、およびパーキンソン病が挙げられる。他の疾患としては、限定されるものでないが、第5.1節に記載の疾患および実施例6に開示した遺伝子の異常発現により発症する疾患が挙げられる。以上に掲げた真核生物遺伝子に加えて、本発明を用いて、記載のように、ウイルス、細菌または真菌の転写または翻訳効率を妨害する分子を規定し、従って新規の抗感染性疾患治療薬の基礎を作ることができる。
【0025】
他の実施形態においては、本発明の方法により同定した試験化合物は、トランスファーRNA(「tRNA」)、酵素RNAまたはリボソームRNA(「rRNA」)などのRNAとタンパク質とのまたは他のRNAとの相互作用を防止し、かくして、例えば、細胞の生存に必須であるin vivoタンパク質-RNAまたはRNA-RNA複合体のアセンブリーを防止するために有用である。本明細書に使用される用語「酵素RNA」は、例えば、RNアーゼP、テロメラーゼまたは小分子核内リボ核タンパク質粒子におけるように、自己スプライシングするか、または1以上のタンパク質と会合して酵素を形成するRNA分子を意味する。例えば、rRNAと1以上のリボソームタンパク質との間の相互作用の抑制は、リボソームのアセンブリーを抑制し、タンパク質を合成することができない細胞をもたらしうる。さらに、前駆体rRNAと、前駆体rRNAをプロセシングするリボヌクレアーゼまたはリボ核タンパク質複合体(RNアーゼPなど)との相互作用の抑制は、rRNAの成熟およびそのリボソームへのアセンブリーを阻止する。同様に、tRNA:tRNA合成酵素複合体が本発明の方法により同定した試験化合物により抑制され、tRNA分子はアミノ酸を運ばないようになりうる。かかる相互作用としては、限定されるものでないが、rRNAとリボソームタンパク質との相互作用、tRNAとtRNA合成酵素との相互作用、RNアーゼPタンパク質とRNアーゼP RNAとの相互作用、およびテロメラーゼタンパク質とテロメラーゼRNAとの相互作用が挙げられる。
【0026】
他の実施形態においては、本発明の方法により同定される試験化合物は、ウイルス、細菌、原虫、または真菌感染を治療または予防するために有用である。例えば、ヒト免疫不全ウイルス1型(「HIV-1」)の遺伝子の転写アップレギュレーションは、HIV Tatタンパク質とHIVトランス活性化応答領域RNA(「TAR RNA」)との結合を必要とする。HIV TAR RNAは59塩基ステム-ループ構造で、全ての新生HIV-1転写物の5'末端に位置する(Jones & Peterlin, 1994, Annu. Rev. Biochem. 63:717-43)。Tatタンパク質はTAR RNAのステムのバルジ(bulge)領域のウラシル23と相互作用することが知られている。従って、TAR RNAは、TAR RNAのバルジ(bulge)領域と結合してHIV-1アップレギュレーションに関わるTat-TAR RNA複合体の形成を抑制する小ペプチドおよびペプチド類似体などの試験化合物に対する潜在的な結合標的である(Hwangら, 1999 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:12997-13002を参照)。従って、TAR RNAと結合する試験化合物は、抗HIV治療薬として有用であり(Hamyら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:3548-3553;Hamyら, 1998, Biochemistry 37:5086-5095;Meiら, 1998, Biochemistry 37:14204-14212)、従って、AIDSを治療または予防するために有用である。
【0027】
本発明の方法を利用して、患者のウイルス、細菌、原虫または真菌の感染を治療または予防する試験化合物を同定することができる。複数の実施形態においては、本発明の方法は、以上に記載したように、mRNAと相互作用することにより微生物遺伝子の翻訳を減少させる化合物を同定するために、またはウイルスまたは微生物の生存にとって必須である微生物RNAとタンパク質または他のリガンドとの相互作用を抑制する化合物を同定するために有用である。本発明において抗ウイルス、抗細菌、抗原虫および抗真菌化合物を同定するために有用な微生物標的RNAの例としては、限定されるものでないが、INFα、INFγ、RNアーゼL、RNアーゼLインヒビタータンパク質、PKR、腫瘍壊死因子、インターロイキン1〜15、およびIMPデヒドロゲナーゼのmRNAなどの一般的な抗ウイルスおよび抗炎症標的;内部リボソームエントリー部位;HIV-1 CTリッチドメインおよびRNアーゼH mRNA;(HCV mRNAの翻訳を指令するために必要な)HCV内部リボソームエントリー部位、およびHCVゲノムの3'-非翻訳尾部;ロタウイルスmRNA翻訳に必要とされるタンパク質NSP3と結合するロタウイルスNSP3結合部位;HBV-εドメイン;デング熱ウイルスのIRESを含む5'および3'非翻訳領域;INFα、IFNβおよびINFγ;熱帯熱マラリア原虫(plasmodium falciparum)mRNA;細菌のRNアーゼPの16SリボソームサブユニットリボソームRNAおよびRNA成分;ならびに真菌および癌細胞のテロメラーゼのRNA成分、が挙げられる。他の標的ウイルスおよび細菌mRNAとしては、限定されるものでないが、第6節に開示したものが挙げられる。
【0028】
当業者は、かかる標的RNAが様々な種(例えば、酵母からヒトまで)において機能的に保存されているが、それらはヌクレオチド配列および構造の多様性を示すことを理解するであろう。従って、例えば、本発明の方法により同定した抗真菌化合物による酵母テロメラーゼの抑制は、ヒトテロメラーゼおよび正常なヒト細胞増殖を妨害しないかもしれない。
【0029】
そこで、本発明の方法を用いて、細胞増殖または生存にとって重要な、またはウイルス、細菌、原虫または真菌のライフサイクルに必須である1以上の標的RNAと宿主細胞因子との相互作用を妨害する試験化合物を同定してもよい。所望の生物学的および薬理学的活性を示すかかる試験化合物および/または同属種(congener)を、ウイルス、細菌、原虫、または真菌感染により引き起こされる疾患を治療または予防する目的で、それを必要とする患者に投与することができる。かかる疾患としては、限定されるものでないが、HIV感染、AIDS、ヒトT細胞白血病、SIV感染、FIV感染、ネコ白血病、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、デング熱、マラリア、ロタウイルス感染、重度の急性胃腸炎、下痢、脳炎、出血熱、梅毒、レジオネラ、百日咳、淋病、敗血症、インフルエンザ、肺炎、白癬感染、カンジダ感染、および髄膜炎が挙げられる。
【0030】
遺伝子発現の調節、すなわち、mRNA安定性、翻訳開始を経由する翻訳効率およびリボソームアセンブリーなどに関わるRNAエレメントの例としては、限定されるものでないが、次に考察する、HIV TARエレメント、内部リボソームエントリー部位、「スリッパリー部位(slippery site)」、不安定性エレメント、およびアデニル酸ウリジル酸リッチエレメントが挙げられる。
【0031】
5.1.1. HIV TAR エレメント
ヒト免疫不全ウイルス1型(「HIV-1」)の遺伝子の転写アップレギュレーションは、HIV Tatタンパク質と、全ての新生HIV-1転写物の5'末端に位置する59塩基のステム-ループ構造であるHIVトランス活性化応答領域RNA(「TAR RNA」)との結合を必要とする(Jones & Peterlin, 1994, Annu. Rev. Biochem. 63:717-43)。Tatタンパク質はTAR RNAのステムのバルジ(bulge)領域のウラシル23と相互作用することが知られている。従って、TAR RNAは、TAR RNAのバルジ(bulge)領域と結合してHIV-1アップレギュレーションに関わるTat-TAR RNA複合体の形成を抑制する小ペプチドおよびペプチド類似体などの試験化合物に対する有用な結合標的である(Hwangら, 1999 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:12997-13002を参照)。従って、TAR RNAと結合する試験化合物は、抗HIV治療薬として有用でありうり(Hamyら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:3548-3553;Hamyら, 1998, Biochemistry 37:5086-5095;Meiら, 1998, Biochemistry 37:14204-14212)、それ故に、AIDSを治療または予防するために有用である。
【0032】
5.1.2. 内部リボソームエントリー部位(「 IRES 」)
内部リボソームエントリー部位(「IRES」)は、複数のmRNAの5'非翻訳領域(「5'UTR」)に見出され、翻訳効率の調節に関わると考えられる。IRESエレメントが翻訳停止コドンのmRNA下流に存在すると、これはリボソーム再エントリーを指令し(Ghattasら, 1991, Mol. Cell. Biol. 11:5848-5959)、第2のオープンリーディングフレームの出発点における翻訳の開始を可能にする。
【0033】
Jangらの総説によれば、長さでほぼ400ヌクレオチドの大セグメントの5'非翻訳領域は、ピコルナウイルスmRNA(そのゲノムがmRNAとして作用する哺乳類のプラス鎖RNAウイルス)の非キャップ構造5'末端から独立して、リボソームの内部エントリーを促進する。この400ヌクレオチドセグメント(IRES)は、5'末端から下流ほぼ200nt下流にマップし高度に構造化している。様々なピコルナウイルスのIRESエレメントは、機能的にin vitroおよびin vivoで類似しているが、配列または構造は同一でない。しかし、一方では、エンテロおよびライノウイルスのIRESエレメントが、かつ他方では、カーディオおよびアフトウイルスのIRESエレメントが系統的血縁に対応する類似性を示す。全てのIRESエレメントは保存されたYn-Xm-AUG単位(Y、ピリミジン;X、ヌクレオチド)を含有し、これがIRES機能に必須であると思われる。カーディオ、エンテロおよびアフトウイルスのIRES エレメントは、細胞タンパク質、p57と結合する。カーディオウイルスの場合、IRESの特定のステム-ループの間の相互作用がin vitroでの翻訳に必須である。エンテロおよびカーディオウイルスのIRESエレメントも細胞タンパク質p52とも結合するが、この相互作用の意味はまだわかってない。細胞代謝におけるp57またはp52の機能は未知である。ピコルナウイルスIRESエレメントはin vivoでいずれのウイルス遺伝子産物の不在のもとでも機能するので、IRES様エレメントは特定の細胞mRNAにも存在してそれらをキャップ構造依存性翻訳から解放すると推測される(Jangら, 1990, Enzyme 44(1-4):292-309)。
【0034】
5.1.3. 「スリッパリー部位」
リボソームが1つの翻訳リーディングフレームから他の1つにシフトして単一のウイルスmRNAから2つのウイルスタンパク質を合成するときに、プログラムされたまたは指令されたリボソームのフレームシフトが「スリッパリー部位」と呼ばれるウイルスmRNA中のユニークな部位により指令される。スリッパリー部位は、−1または+1方向のリボソームフレームシフトを指令してリボソームを5'方向に1塩基だけスリップさせ、それによりリボソームを新しいリーディングフレームに配置して新しいタンパク質を産生する。
【0035】
プログラムされたまたは指令されたリボソームフレームシフトは、そのプラス鎖をパッケージするウイルスにとって特に価値があり、それによって、それらのmRNAをスプライスする必要を無くし、欠陥ゲノムをパッケージするリスクを減少しかつ合成されるウイルスタンパク質の比を調節する。プログラムされた翻訳フレームシフト(+1および−1シフトの両方)の例は、ScV系(Lopinskiら, 2000, Mol. Cell. Biol. 20(4):1095-103)、レトロウイルス(Falkら, 1993, J. Virol. 67:273-6277;Jacks & Varmus, 1985, Science 230:1237-1242;Morikawa & Bishop, 1992, Virology 186:389-397;Namら, 1993, J. Virol. 67:196-203);コロナウイルス(Brierleyら, 1987, EMBO J. 6:3779-3785;Herold & Siddell, 1993, Nucleic Acids Res. 21:5838-5842);トティウイルス科(Totiviridae)のメンバーでもあるジアルジアウイルス(giardiavirus)(Wangら, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:8595-8599);2種の細菌遺伝子(Blinkowa & Walker, 1990, Nucleic Acids Res., 18:1725-1729;Craigen & Caskey, 1986, Nature 322:273);バクテリオファージ遺伝子(Condronら, 1991, Nucleic Acids Res. 19:5607-5612);アストロウイルス(astrovirus)(Marczinkeら, 1994, J. Virol. 68:5588-5595);酵母EST3遺伝子(Lundblad & Morris, 1997, Curr. Biol. 7:969-976);ならびにラット、マウス、アフリカツメガエル、およびショウジョウバエのオルニチンデカルボキシラーゼ抗酵素(Matsufujiら, 1995, Cell 80:51-60);ならびに多数の細胞遺伝子(Herold & Siddell, 1993, Nucleic Acids Res. 21:5838-5842)において確認されている。
【0036】
リボソームフレームシフトを標的とする薬物はウイルス薬物耐性の問題を最小化する。何故なら、このストラテジーは、ウイルスにより細胞中に導入するよりむしろ宿主細胞プロセスを標的とするからであり、ウイルスの薬物耐性突然変異体に進化する能力を最小化する。プログラムされたフレームシフトの調節に関わるRNAエレメントを標的とする化合物は、複数の利点を有するはずであり、それらとしては、(a)薬物に適合するための宿主細胞翻訳機構に対するいずれの選択圧も、数百万年のオーダーである宿主進化タイムスケールでしか存在しないこと、(b)リボソームフレームシフトはいずれかの宿主タンパク質を発現するために利用されないこと、および(c)宿主タンパク質の活性をモジュレートすることによるウイルスのフレームシフト効率の改変は、ウイルスがそれ自身のゲノムの突然変異によりかかる抑制に対する耐性を獲得しうる可能性を最小化することが挙げられる。
【0037】
5.1.4. 不安定性エレメント
「不安定性エレメント(Instability element)」は、細胞ターンオーバー機構により不安定なmRNAの認識を促進する特定の配列エレメントと定義することができる。不安定性エレメントはmRNAタンパク質コード領域ならびに非翻訳領域内に見出されている。
【0038】
正常なmRNAの安定性の制御を改変すると疾患をもたらしうる。mRNA安定性の改変は、限定されるものでないが、癌、免疫障害、心疾患、および線維症障害などの疾患において示唆されている。
【0039】
不安定性エレメントを欠失し、次いでmRNAの安定化をもたらし、その結果、癌の発症に関わりうる複数例の突然変異がある。バーキット(Burkitt)リンパ腫においては、c-mycプロトオンコジーンの一部分がIg遺伝子座に転座し、5倍以上安定である型のc-myc mRNAを生じる(例えば、Kapsteinら, 1996, J. Biol. Chem. 271 (31):18875-84を参照)。高度に発がん性のv-fos mRNAは、より不安定でかつ発癌性の弱いc-fos mRNAに見出される3’UTRアデニル酸ウリジル酸リッチエレメント(「ARE」)を欠く(例えば、Schiaviら, 1992, Biochim Biophys Acta. 1114 (2-3):95-106を参照)。組込まれていない環状ヒトパピローマウイルス16型によりもたらされる良性子宮頚病変と3'UTR AREを欠きかつ子宮頸癌に関連するその組込まれた型との間の相違は、発がん性タンパク質をコードするE6/E7転写物の安定化の結果でありうる。ウイルスの組込みは、ARE不安定エレメントの欠失をもたらし、前記転写物を安定化しかつ前記タンパク質を過剰発現する(例えば、Jeon & Lambert, 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (5):1654-8を参照)。IL-2およびIL-3遺伝子の3'UTR由来のAREの欠失は、これらのmRNAの安定性の増加、これらのタンパク質の高度発現を促進し、そして癌細胞の形成に導く(例えば、Stoecklinら, 2000, Mol. Cell. Biol. 20(11):3753-63を参照)。
【0040】
mRNAターンオーバーに関わるトランス作用因子の突然変異も癌を促進しうる。単球の腫瘍においては、mRNAターンオーバー速度を制御するトランス作用因子の発癌性病変の結果として、リンホカインGM-CSF mRNAが特異的に安定化される。さらに、通常不安定なIL-3転写物がマスト腫瘍細胞中で不適当に長命である。同様に、不安定なGM-CSF mRNAが、膀胱癌細胞中では非常に安定化される。例えば、Bickelら, 1990, J. Immunol. 145(3):840-5を参照。
【0041】
免疫系は、免疫応答を活性化または抑制する多数の調節性分子により調節される。これらのタンパク質をコードする転写物の安定性が高度に調節されていることが、今や明らかに実証されている。これらの分子の調節の改変はこのプロセスの誤調節に導き、強烈な医学的結果をもたらしうる。例えば、トランスジェニックマウスを用いる最近の研究結果は、重要なモジュレーターTNFα mRNAの安定性の誤調節が、限定されるものでないが、慢性関節リウマチおよびクローン(Crohn)病様肝臓病などの疾患に導くことを示している。例えば、Clark, 2000, Arthritis Res. 2 (3):172-4を参照。
【0042】
心臓の平滑筋はβ-アドレナリン作動性受容体によりモジュレートされ、これは順に交感神経伝達物質のノルエピネフリンおよび副腎ホルモンのエピネフリンに応答する。慢性心疾患は平滑筋細胞の障害により特徴づけられ、部分的に、β-アドレナリン作動性受容体mRNAのより急速な崩壊に由来する。例えば、Ellis & Frielle, 1999, Biochem. Biophys. Res. Commun. 258(3):552-8を参照。
【0043】
多数の疾患はコラーゲンの過剰発現に由来する。例えば、肝硬変は癌、ウイルス感染、またはアルコール乱用の結果としての肝臓の損傷に由来する。かかる損傷は、大きなコラーゲン沈着の形成をもたらすコラーゲン発現の誤調節が原因である。最近の研究結果は、コラーゲン発現のかなり大きい増加がほとんどそのmRNAの安定化に起因することを示す。例えば、Lindquistら, 2000, Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol. 279(3):G471-6を参照。
【0044】
5.1.5. アデニル酸ウリジル酸リッチエレメント(「 ARE 」)
アデニル酸ウリジル酸リッチエレメント(「ARE」)は、複数のmRNAの3'非翻訳領域(「3'UTR」)に見出され、限定されるものでないが、転写因子、サイトカインおよびリンホカインのようにmRNAのターンオーバーに関わる。AREは、安定化および不安定化の両方のエレメントとして機能しうる。ARE mRNAは、配列に依って5グループに分類される(Bakheetら, 2001, Nucl. Acids Res. 29(1):246-254)。参照によりその全文が組み入れられるウエブサイトhttp://rc.kfshrc.edu.sa/aredの現行データベースは、AREを含有するmRNAおよびそれらのクラスターグループを含有する。AREモチーフは次の通り分類される:
グループIクラスター (AUUUAUUUAUUUAUUUAUUUA) 配列番号1
グループIIクラスター (AUUUAUUUAUUUAUUUA)ストレッチ 配列番号2
グループIIIクラスター (WAUUUAUUUAUUUAW)ストレッチ 配列番号3
グループIVクラスター (WWAUUUAUUUAWW)ストレッチ 配列番号4
グループVクラスター (WWWWAUUUAWWWW)ストレッチ 配列番号5
ARE-mRNAを、5、4、3および2個の5量体反復配列を含有するが、最後のグループは13bp AREパターン内に1つの5量体しか含有しない5グループにクラスター化した。徹底した文献調査を用いて、炎症、免疫応答、発生/分化のカテゴリーに加えてNCBI-COG機能注釈(Tatusovら, 2001, Nucleic Acids Research, 29(1):22-28)に従い、可能な限り、機能カテゴリーを割り当てた。
【0045】
グループIは、造血および免疫細胞の増殖に影響を与えるGM-CSF、IL-1、IL-11、IL-12およびGro-βを含む多数の分泌タンパク質を含有する(Witsell & Schook, 1992, Proc. Natl Acad. Sci. USA, 89:4754-4758)。TNFαは炎症誘発性および抗腫瘍タンパク質の両方であるが、ある特定の白血病とリンパ腫において増殖因子として作用しうる実験的確証がある(Liuら, 2000, J. Biol. Chem. 275:21086-21093)。
【0046】
グループIと異なり、グループII〜Vは免疫応答、細胞周期および増殖、炎症および凝血、血管形成、代謝、エネルギー、DNA結合および転写、栄養分輸送およびイオン性ホメオスタシス、タンパク質合成、細胞生物発生、シグナル伝達、ならびにアポトーシスを含んでなる機能的に多様な遺伝子ファミリーを含有する(Bakheetら, 2001, Nucl. Acids Res. 29(1):246-254)。
【0047】
複数の研究グループはARE-mRNA安定性に影響を与えるARE結合タンパク質を記載している。よく特性決定されたタンパク質の中には、AUF1、HuRおよびHe1-N2を含むELAV(胚性致死異常視覚)(embryonic lethal abnormal vision)タンパク質の哺乳類相同体がある(Zhangら, 1993, Mol. Cell. Biol. 13:7652-7665;Levineら, 1993, Mol. Cell. Biol. 13:3494-3504;Maら, 1996, J. Biol. Chem. 271:8144-8151)。ジンクフィンガータンパク質トリステトラプロリンは、TNFα、IL-3およびGM-CSF mRNAに対する不安定化活性をもつ他のARE結合タンパク質として同定されている(Stoecklinら, 2000, Mol. Cell. Biol. 20:3753-3763;Carballoら, 2000, Blood 95:1891-1899)。
【0048】
限定されるものでないが、細胞増殖および外因性薬剤に対する応答を調節する複数の初期応答遺伝子を含む、AREを含有する遺伝子は生物系において明らかに重要であるので、1以上のAREクラスターと結合しかつ潜在的に標的RNAの安定性をモジュレートする化合物の同定は治療学として潜在的に価値がありうる。
【0049】
5.2. 検出可能に標識された標的 RNA
本発明の方法に有用である、限定されるものでないが、RNAおよびDNAを含む標的核酸は、通常の分光法手段またはラジオグラフィ手段を介して検出可能である標識を有する。好ましくは、標的核酸を、共有結合した色素分子を用いて標識する。有用な色素分子標識としては、限定されるものでないが、蛍光色素、リン光色素、紫外色素、赤外色素、および可視色素が挙げられる。好ましくは、色素は可視色素である。
【0050】
本発明に有用な標識としては、限定されるものでないが、蛍光色素などの分光学的標識(例えば、フルオレセインおよびフルオレセインイソチオシアネート(FITC)とオレゴングリーン(Oregon Green)TMなどの誘導体、ローダミンおよび誘導体(例えば、テキサスレッド、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン(BODIPY(登録商標))および誘導体、など)、ジゴキシゲニン、ビオチン、フィコエリトリン、AMCA、CyDyeTM、など)、放射能標識(例えば、3H、125I、35S、14C、32P、33P、など)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、コロイド状金または着色ガラスまたはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズなどの分光学的比色標識、または0.1〜1000nmの規定された次元をもつナノ粒子-無機イオンのナノクラスターを挙げることができる。有用なアフィニティタグおよび相補的パートナーとしては、限定されるものでないが、ビオチン-ストレプトアビジン、相補的核酸断片(例えば、オリゴdT-オリゴdA、オリゴT-オリゴA、オリゴdG-オリゴdC、オリゴG-オリゴC)、アプタマー-ストレプトアビジン、またはそれに対する抗血清またはモノクローナル抗体を利用しうるハプテンおよびタンパク質が挙げられる。標識は、検出アッセイの成分(例えば、検出試薬)と、当技術分野で周知の方法によって、直接的または間接的にカップリングさせることができる。必要とされる感度、化合物との結合の容易さ、安定性要件、利用しうる計器、および処分規定(disposal provision)に依存する標識を選択して、様々な標識を利用することができる。
【0051】
一実施形態においては、1以上の特定の位置に標識した核酸を、ホスホロアミダイトまたは他の溶液もしくは固相法を用いて化学的に合成する。ホスホロアミダイト法によりポリヌクレオチドを作製するために利用する化学の詳細は周知である(例えば、Caruthersら、米国特許第4,458,066号および第4,415,732号;Caruthersら, 1982, Genetic Engineering 4:1-17;ユーザーマニュアル(Users Manual)「モデル392および394ポリヌクレオチド合成機(Model 392 and 394 Polynucleotide Synthesizers)」), 1990, 6-1〜6-22頁, Applied Biosystems, Part No.901237;Ojwangら, 1997, Biochemistry, 36:6033-6045を参照)。ポリヌクレオチド合成のホスホロアミダイト法は、効率的かつ迅速なカップリングおよび出発物質の安定性の故に、好ましい方法である。合成は固相支持体に結合したポリヌクレオチド鎖の成長によって実施し、一般的に液相にある過剰の試薬は洗浄、デカント、及び/またはろ過により除去することができるので、合成サイクルの間に精製ステップの必要性がない。
【0052】
以下に、ホスホロアミダイト法を用いる典型的なポリヌクレオチド合成サイクルを説明するステップを簡単に記載する。最初に、保護したヌクレオシドモノマーの3'末端を結合させた固相支持体を酸、例えばトリクロロ酢酸を用いて処理し、5'-ヒドロキシル保護基を外して遊離ヒドロキシル基とし、次のカップリング反応に備える。支持体と結合したヌクレオシドを、保護したヌクレオシドホスホロアミダイトモノマーおよび弱酸、例えばテトラゾールと接触させることによりカップリング反応が完了した後、活性化中間物が形成される。弱酸はホスホロアミダイトの窒素原子をプロトン化して反応性中間物を生成する。ヌクレオシド添加は一般的に30秒内で完了する。次に、キャップ化ステップを実施して、ヌクレオシド付加が起こらなかったポリヌクレオチド鎖の末端を終結させる。キャップ化は好ましくは無水酢酸および1-メチルイミダゾールを用いて実施する。次いでヌクレオチド間連鎖の亜リン酸基を好ましい酸化剤としてヨウ素および酸素ドナーとして水を用いて酸化により、さらに安定なリン酸トリエステルに転化する。酸化後に、新しく付加したヌクレオシドのヒドロキシル保護基をプロトン酸、例えばトリクロロ酢酸またはジクロロ酢酸を用いて外す。そしてこのサイクルを1回以上、鎖の伸張が完成するまで繰り返す。合成後、ポリヌクレオチド鎖を支持体から、塩基、例えば水酸化アンモニウムまたはt-ブチルアミンを用いて切断する。切断反応はまた、いずれのリン酸保護基も、例えば、シアノエチルを除去する。最終的に、塩基の環外アミンの保護基および色素上のいずれの保護基も、ポリヌクレオチド溶液を塩基中で高温、例えば約55℃にて処理することにより除去する。好ましくは、様々な保護基は、水酸化アンモニウムまたはt-ブチルアミンを用いて除去する。
【0053】
ヌクレオシドホスホロアミダイトモノマーのいずれも、標準のホスホロアミダイト化学の方法を用いて標識することができる(Hwangら, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96(23):12997-13002;Ojwangら, 1997, Biochemistry. 36:6033-6045およびそれらに引用された参考文献)。ホスホロアミダイトと共有結合するのに有用な色素分子は、好ましくは、色素の発色団の一部でない第一級ヒドロキシ基を含む。色素分子の例としては、限定されるものでないが、分散色素CAS 4439-31-0、分散色素CAS 6054-58-6、分散色素CAS 4392-69-2(Sigma-Aldrich、St. Louis、MO)、分散レッド、および1-ピレンブタノール(Molecular Probes、Eugene、OR)が挙げられる。フルオレセイン、cy3、およびcy5蛍光色素などのホスホロアミダイトと結合するのに有用な他の色素は、当業者には明らかであり、例えばSigma-Aldrich、St. Louis、MOまたはMolecular Probes, Inc.、Eugene、ORから購入することができる。
【0054】
他の実施形態においては、色素標識された標的RNA分子を酵素によりin vitro転写を利用して合成する(Hwangら, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96(23):12997-13002およびこれに引用された参考文献)。この実施形態においては、テンプレートDNAを約90℃にて加熱することにより変性し、そして、例えば、変性したテンプレートとプライマーの混合物を約90℃から室温まで徐々に冷却することにより、オリゴヌクレオチドプライマーをテンプレートDNAにアニーリングする。プライミングされたテンプレートのテンプレート指向性酵素伸長を支持することができる1以上の色素標識したリボヌクレオチド(Sigma-Aldrich、St. Louis、MO)を含む、リボヌクレオシド-5'-三リン酸の混合物(例えば、GTP、ATP、CTP、およびUTPを含む混合物)を、プライミングされたテンプレートに加える。次に、ポリメラーゼ酵素を、当業者が周知する、ポリメラーゼ酵素が活性を有する条件下で前記混合物に加える。ポリメラーゼが媒介する鎖合成中に、標識されたリボヌクレオチドの組込みにより標識されたポリヌクレオチドが作製される。
【0055】
本発明のさらに他の実施形態においては、核酸分子は、合成後に末端標識される。オリゴヌクレオチドの5'末端を標識する方法としては、限定されるものでないが、(i)5'対5'結合したリボヌクレオチドの過ヨウ素酸酸化と、その後のアミン反応性標識を用いる反応(Heller & Morisson, 1985, in 「感染症薬の迅速検出と同定(Rapid Detection and Identification of Infectious Agents)」, D. T. Kingsbury and S. Falkow, 編, pp.245-256, Academic Press);(ii)エチレンジアミンと5'-リン酸化ポリヌクレオチドとの縮合と、その後のアミン反応性標識との反応(Morrison、欧州特許出願232 967);(iii)固相DNA合成におけるアミノヘキシルホスファイト試薬を用いる脂肪族アミン置換基の導入と、その後のアミン反応性標識との反応(Cardulloら, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8790-8794);ならびに(iv)ホスファターゼ処理と次いでATP-?Sおよびキナーゼを用いて末端標識することにより、核酸の5'末端に、マレイミド標識した蛍光色素と特異的かつ効率的に反応するチオリン酸基の導入(Czworkowskiら, 1991, Biochem. 30:4821-4830)が挙げられる。
【0056】
共有結合した標識が存在すると立体的または化学的にこの部位における試験化合物の結合を妨害しうるので、検出可能な標識を試験化合物が結合すると思われる特定の結合部位において標的核酸に組み込んではならない。従って、宿主細胞因子と結合する標的核酸の領域が既知であれば、検出可能な標識は、好ましくは、結合領域から空間的または配列的に離れた1以上の位置において核酸分子中に組み込まれる。
【0057】
合成後に標識された標的核酸は、当業者に公知の標準技術を利用して精製することができる(Hwangら, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96(23):12997-13002およびそれに引用された参考文献を参照)。標的核酸の長さとその合成法に依存して、かかる精製技術としては、限定されるものでないが、逆相高性能液体クロマトグラフィ(「逆相HPLC」)、高速性能液体クロマトグラフィ(「FPLC」)、およびゲル精製が挙げられる。精製の後、標的RNAを、バッファー、例えば、約50mM トリス-HCI、pH 8および100mM NaClを含むバッファー中で、好ましくは、ほぼ85〜95℃に加熱しかつ室温まで徐々に冷却することにより、その本来のコンフォメーションにリフォールディングさせる。
【0058】
他の実施形態においては、標的核酸を放射能標識することもできる。標的核酸の合成後または合成中に加えられる、限定されるものでないが、リン、硫黄、または水素の同位体などの放射能標識を、ヌクレオチド中に組み込んでもよい。放射能標識された核酸の合成および精製の方法は当業者に周知である。例えば、本明細書に参照によりその全文が組み入れられる、Sambrookら, 1989, in 「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning :A Laboratory Manual)」, pp10.2-10.70, Cold Spring Harbor Laboratory Press、およびそれらに引用された文献を参照。
【0059】
他の実施形態においては、標的核酸を無機ナノ粒子に結合することができる。ナノ粒子は、限定されるものでないが、Ag2S、ZnS、CdS、CdTe、Au、またはTiO2を含む金属、金属酸化物、または半導体からなる、0.1〜1000nmの制御されたサイズをもつイオンのクラスターである。ナノ粒子は、バルク材料と比較してユニークな光学的、電子的かつ触媒的特性を有し、前記特性は粒子のサイズによって調節することができる。核酸の結合方法は、当業者に周知である(例えば、その開示が本明細書に参照によりその全文が組み入れられる、Niemeyer, 2001, Angew. Chem. Int. Ed. 40:4129-4158、国際特許公開WO/0218643、およびそれらに引用された参考文献を参照)。
【0060】
5.3. 小分子のライブラリー
本発明の方法を用いてスクリーニングするライブラリーは様々なタイプの試験化合物を含むものであってよい。複数の実施形態においては、試験化合物は、核酸またはペプチド分子である。限定されるものでない例においては、ペプチド分子はファージディスプレイライブラリー中に存在してもよい。他の実施形態においては、試験化合物のタイプとしては、限定されるものでないが、(非天然アミノ酸、例えばD-アミノ酸、α-アミノリン酸およびα-アミノリン酸などのアミノ酸のリン類似体、または非ペプチド結合を有するアミノ酸を含んでなるペプチドを含む)ペプチド類似体、ホスホロチオアートおよびPNAなどの核酸類似体、ホルモン、抗原、合成もしくは天然薬物、オピエート、ドーパミン、セロトニン、カテコールアミン、トロンビン、アセチルコリン、プロスタグランジン、有機分子、フェロモン、アデノシン、スクロース、グルコース、ラクトースならびにガラクトースが挙げられる。ポリペプチドまたはタンパク質のライブラリーも利用することができる。
【0061】
好ましい実施形態においては、コンビナトリアルライブラリーは、限定されるものでないが、ベンゾジアゼピン、イソプレノイド、チアゾリジノン、メタチアザノン、ピロリジン、モルホリノ化合物、およびジアゼピンジオンなどの小有機分子ライブラリーである。他の実施形態においては、コンビナトリアルライブラリーは、ペプトイド;ランダムバイオオリゴマー;ヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチドなどのダイバーソマー(diversomer);ビニローグポリペプチド;非ペプチド性ペプチドミメチック(peptidomimetics);オリゴカーバメート;ペプチジルホスホネート;ペプチド核酸ライブラリー;抗体ライブラリー;または炭水化物ライブラリーを含む。コンビナトリアルライブラリーはそれ自身が市販されている(例えば、Advanced ChemTech Europe Ltd.、Cambridgeshire、UK;ASINEX、Moscow Russia;BioFocus plc、Sittingbourne、UK;Bionet Research(Key Organics Limitedの一部門)、Camelford、UK;ChemBridge Corporation、San Diego、California;ChemDiv Inc、San Diego、California;ChemRx Advanced Technologies、South San Francisco、California;ComGenex Inc.、Budapest、Hungary;Evotec OAI Ltd、Abingdon、UK;IF LAB Ltd.、Kiev、Ukraine;Maybridge plc、Cornwall、UK;PharmaCore、Inc.、North Carolina;SIDDCO Inc、Tucson、Arizona;TimTec Inc、Newark、Delaware;Tripos Receptor Research Ltd、Bude、UK;Toslab、Ekaterinburg、Russiaを参照)
一実施形態においては、本発明の方法に対するコンビナトリアル化合物ライブラリーを合成してもよい。薬理学的、生物学的またはその他の活性についてスクリーニングしうる小有機化合物の大きなコレクション、またはライブラリーの作製に向けられた合成方法は非常に重要である(Dolle, 2001, J. Comb. Chem. 3:477-517;Hallら, 2001, J. Comb. Chem. 3:125-150;Dolle, 2000, J. Comb. Chem. 2:383-433;Dolle, 1999, J. Comb. Chem. 1:235-282)。膨大なコンビナトリアルライブラリーを作製するために応用される合成法は、液中でまたは固相、すなわち固体支持体上で実施される。固相合成は、過剰の試薬を容易に加えかつそれぞれの反応ステップ後に洗浄除去することができるので、多ステップ反応を実施しかつ反応を完了まで高収率で駆動するのをより容易にする。固相コンビナトリアル合成はまた、単離、精製およびスクリーニングを改良することが多い。しかし、より伝統的な溶液相化学は固相化学よりさらに多様な有機反応を支持する。コンビナトリアルライブラリーの合成に対する方法およびストラテジーは、「コンビナトリアル化学の実用的手引き(A Practical Guide to Combinatorial Chemistry)」, A. W. CzarnikおよびS. H. Dewitt, 編, American Chemical Society, 1997;「コンビナトリアルインデックス(The Combinatorial Index)」, B. A. Bunin, Academic Press, 1998;「固相での有機合成(Organic Synthesis on Solid Phase)」, F. Z. Dorwald, Wiley-VCH, 2000;および「固相有機合成(Solid-Phase Organic Syntheses)」, Vol. 1, A. W. Czarnik, 編, Wiley Interscience, 2001に見出すことができる。
【0062】
本発明のコンビナトリアル化合物ライブラリーは、本明細書に参照によりその全文が組み入れられる、Frisinaらへの米国特許第6,358,479号、Kilcoinらへの米国特許第6,190,619号、Gallupらへの米国特許第6,132,686号、Zuelligらへの米国特許第6,126,904号、Harnessらへの米国特許第6,074,613号、Stanchfieldらへの米国特許第6,054,100号、Saneiiらへの米国特許第5,746,982号に記載の装置を利用して合成することができる。これらの特許は、多数の個々の化合物の平行合成のためのまたは化合物のコンビナトリアルライブラリーのための複数の反応容器を収容することができる合成装置を記載する。
【0063】
一実施形態においては、コンビナトリアル化合物ライブラリーを溶液中で合成することができる。本明細書に参照によりその全文が組み入れられるBogerらへの米国特許第6,194,612号に開示された方法は、コンビナトリアルライブラリーの溶液相合成に対するテンプレートとして有用な化合物を特長としている。テンプレートは、液/液または固/液抽出を用いて、反応生成物を未反応の反応物から容易に精製できるように設計されている。テンプレートを用いてコンビナトリアル合成により生産される化合物は、好ましくは小有機分子であろう。ライブラリー中の複数の化合物は非ペプチドまたはペプチドの作用を模倣してもよい。コンビナトリアル化合物ライブラリーの固相合成とは対照的に、液相合成は、多ステップ固相合成の個々のステップをモニターする特別なプロトコルの使用を必要としない(Egner ら, 1995, J. Org. Chem. 60:2652;Anderson ら, 1995, J. Org. Chem. 60:2650;Fitchら, 1994, J. Org. Chem. 59:7955;Lookら, 1994, J. Org. Chem. 49:7588;Metzgerら, 1993, Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 32:894;Youngquistら, 1994, Rapid Commun. Mass Spect. 8:77;Chuら, 1995, J. Am. Chem. Soc. 117:5419;Brummelら, 1994, Science 264:399;Stevanovicら, 1993, Bioorg. Med. Chem. Lett. 3:431)。
【0064】
本発明の方法に有用なコンビナトリアル化合物ライブラリーを固体支持体上で合成することができる。一実施形態においては、分割合成法(合成中に固体支持体を分離しそして混合するプロトコル)を利用して固体支持体上で化合物のライブラリーを合成する(Lamら, 1997, Chem. Rev. 97:41-448;Ohlmeyerら, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10922-10926およびそれらに引用された参考文献を参照)。最終ライブラリー中のそれぞれの固体支持体はその表面に結合した実質的に1つのタイプの試験化合物を有する。1つの生成物がそれぞれの支持体と結合する固体支持体上のコンビナトリアルライブラリーを合成する他の方法は、当業者に公知であろう(例えば、本明細書に参照によりその全文が組み入れられる、Nefziら, 1997, Chem. Rev. 97:449-472およびCargillらへの米国特許第6,087,186号を参照)。
【0065】
本明細書に使用される用語「固体支持体」は、特定のタイプの固体支持体に限定されるものでない。どちらかといえば多数の支持体が利用可能でありかつ当業者に公知である。固体支持体としては、シリカゲル、樹脂、誘導体化プラスチックフィルム、ガラスビーズ、木綿、プラスチックビーズ、ポリスチレンビーズ、アルミナゲル、および多糖類が挙げられる。好適な固体支持体は、所望の最終用途および様々な合成プロトコルに対する適性に基づいて選択することができる。例えば、ペプチド合成用の固体支持体は、p-メチルベンズヒドリルアミン(pMBHA)樹脂(Peptides International、Louisville、KY)、クロロメチルポリスチレン、ヒドロキシメチルポリスチレンおよびアミノメチルポリスチレンを含むポリスチレン(例えば、Bachem Inc.、Peninsula Laboratoriesから入手されるPAM-樹脂など)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)-グラフトスチレンコ-ジビニル-ベンゼン(例えば、Aminotech、Canadaから入手されるPOLYHIPE樹脂)、ポリアミド樹脂(Peninsula Laboratoriesから入手される)、ポリエチレングリコールを用いてグラフトしたポリスチレン樹脂(例えば、TENTAGELまたはARGOGEL、Bayer、Tubingen、Germany)、ポリジメチルアクリルアミド樹脂(Milligen/Biosearch、Californiaから入手される)、またはSepharose(Pharmacia、Sweden)などの樹脂であってもよい。
【0066】
一実施形態においては、固相支持体がin vivo用途に好適であり、すなわち、試験化合物を患者に投与する担体または支持体として役立ちうる(例えば、TENTAGEL、Bayer、Tubingen、Germany)。特定の実施形態においては、固体支持体は味がよくおよび/または経口摂取可能である。
【0067】
本発明の複数の実施形態においては、化合物をリンカー経由で固体支持体と結合してもよい。リンカーは固体支持体と一体でかつその一部であってもよいし、または一体でなく、固体支持体上で合成したかまたは合成後に結合したものであってもよい。リンカーは試験化合物が固体支持体と結合する点を提供するためだけでなく、リンカーの性質に依存して異なる条件下で異なるグループの分子が固体支持体から切断されることを可能にするためにも有用である。例えば、リンカーは、とりわけ、求電子的に切断され、求核的に切断され、光切断可能であり、酵素的に切断され、金属により切断され、還元条件下で切断され、または酸化条件下で切断されうる。
【0068】
他の実施形態においては、コンビナトリアル化合物ライブラリーは、参照によりその全文が組み入れられるLehnへの欧州特許出願1,118,359 Al;Huc & Nguyen, 2001, Comb. Chem. High Throughput. Screen. 4:53-74;LehnおよびEliseev, 2001, Science 291:2331-2332;Cousinsら 2000, Curr. Opin. Chem. Biol. 4:270-279;ならびにKaran & Miller, 2000, Drug. Disc. Today 5:67-75に記載のように、動的コンビナトリアル化学を利用してin situで構築することができる。
【0069】
動的コンビナトリアル化学は、限定されるものでないが、タンパク質、RNA、またはDNAを含む標的生物分子との非共有結合的相互作用が、生物分子の存在のもとで混合物として存在する構成サブユニットの組み合わせである最も強く結合する分子のアセンブリーに有利に働くことを利用する。熱力学の法則に従えば、分子のコレクションは、溶液中で可逆的化学反応を通して平衡で結合しかつ再結合可能であるとき、テンプレートの生物分子と最も強く結合する分子、好ましくは1つの分子は、他の全ての可能な組み合わせより多量に存在しうる。可逆的化学反応としては、限定されるものでないが、カルボニル含有化合物とアミン、ヒドラジン、またはアルコールとの間のイミン、アシル-ヒドラゾン、アミド、アセタール、またエステル形成;ジスルフィド間のチオール交換;ホウ酸エステルにおけるアルコール交換;Diels-Alder反応;熱もしくは光誘導されるシグマトロピーもしくは環状電子転位;またはマイケル(Michael)反応が挙げられる。
【0070】
この技術の好ましい実施形態においては、動的コンビナトリアル化合物ライブラリーの構成成分を標的RNAの不在のもとで組合せて平衡に到達させ、次いで標的RNAの存在のもとで好ましくは生理学的条件で第2の平衡に到達するまでインキュベートする。第2の摂動した平衡(いわゆる「テンプレート化混合物(templated mixture)」)は、必ずしも必要でないが、限定されるものでないが、還元、酸化、加水分解、酸性化、または塩基化を含むさらなる化学変換により固定して、動的コンビナトリアル化合物ライブラリーを標的RNAから分離したときに元の平衡の回復を防止してもよい。
【0071】
この技術の好ましい実施形態においては、テンプレート化した動的コンビナトリアルライブラリーの主要生成物を微量生成物から分離して直接同定することができる。他の実施形態においては、主要生成物の同一性を、参照によりその全文が組み入れられる欧州特許出願1,118,359 Alに記載の誘導体動的コンビナトリアルライブラリーの調製に関わる解明ストラテジーにより同定することができるのであって、ここで、混合物のそれぞれの成分は、グループとしてでもよいが、好ましくは1つづつ、混合物からとり出して、化学平衡において誘導体ライブラリー混合物の標的RNAと結合する能力を測定する。とり除いたときに、誘導体動的コンビナトリアルライブラリーの標的RNAと結合する能力を最も低下させる成分が、恐らく、元の動的コンビナトリアルライブラリー中の主要生成物の成分である。
【0072】
5.4. ライブラリースクリーニング
限定されるものでないが、RNAまたはDNAなどの標的核酸を標識しかつ試験化合物ライブラリーを合成もしくは購入または両方を実施した後に、標識された標的核酸を用いてライブラリーをスクリーニングし、核酸と結合する試験化合物を同定する。スクリーニングは、標識された標的核酸を化合物ライブラリーの個々のまたは小グループの成分と接触させることを含んでなる。接触は、好ましくは水溶液中で、そして最も好ましくは生理学的条件下で行う。水溶液は、試験化合物の結合を妨害することなく、好ましくは標識された標的核酸を安定化しかつ核酸の変性または分解を防止する。水溶液は、標的RNAとその対応する宿主細胞因子(もし既知であれば)との間の複合体をin vitroで形成する溶液と同様であってもよい。例えば、Tatタンパク質-TAR RNA複合体をin vitroで形成するために通常利用されるTKバッファーを、本発明の方法において、試験化合物ライブラリーをTAR RNA結合化合物についてスクリーニングする水溶液として使用することができる。
【0073】
試験化合物のライブラリーをスクリーニングするための本発明の方法は、好ましくは、水溶液の存在のもとで試験化合物を標的核酸と接触させることを含むものであり、前記水溶液は好ましくは生理学的条件に近似するまたは模倣するバッファーおよび塩類の組み合わせを含んでなる。水溶液は、場合によってはさらに、限定されるものでないが、DNA;酵母tRNA;サケ***DNA;限定されるものでないが、ポリIC、ポリA、ポリU、およびポリCなどのホモリボポリマー;ならびに非特異的RNAなどの、非特異的核酸を含有する。非特異的RNAは、その結合部位に突然変異を有する無標識の標的核酸で、そのためにその部位で試験化合物と相互作用することができない無標識の核酸であってもよい。例えば、もし色素標識したTAR RNAを用いてライブラリーをスクリーニングすれば、ウラシル23/シトシン24バルジ(bulge)領域に突然変異を有する無標識TAR RNAが水溶液中に存在してもよい。いずれの理論にも束縛されることなく、結合部位における突然変異を除いて色素標識された標的RNAと本質的に同一である無標識RNAの添加は、色素標識された標的RNAの他の領域と試験化合物または固体支持体との相互作用を最小化して誤陽性結果を防止しうる。
【0074】
溶液はさらに、バッファー、塩類の組み合わせ、および場合によっては、洗剤または界面活性剤を含有する。溶液のpHは典型的には、約5〜約8、好ましくは約6〜約8、最も好ましくは約6.5〜約8の範囲にある。様々なバッファーを用いて所望のpHを達成してもよい。適切なバッファーとしては、限定されるものでないが、トリス(Tris)、Mes、ビス-トリス(Bis-Tris)、Ada、Aces、Pipes、Mopso、ビス-トリスプロパン、Bes、Mops、Tes、Hepes、Dipso、Mobs、Tapso、Trizma、Heppso、Popso、TEA、Epps、トリシン、Gly-Gly、ビシン、およびリン酸ナトリウム-カリウムが挙げられる。緩衝剤は、約10mM〜約100mM、好ましくは約25mM〜約75mM、最も好ましくは約40mM〜約60mM緩衝剤を含むものである。水溶液のpHは、使用する標的RNAおよびライブラリーの試験化合物のタイプに依存し、様々なスクリーニング反応に対して最適化することができる、従って、溶液中で使用するバッファーのタイプおよび量は、スクリーニングごとに変化しうる。好ましい実施形態においては、水溶液は約7.4のpHを有し、これは約50mM トリスバッファーを用いて達成することができる。
【0075】
適当なバッファーに加えて、水溶液はさらに、約0mM〜約100mM KCl、約0mM〜約1M NaCl、および約0mM〜約200mM MgCl2の塩類の組み合わせを含有する。好ましい実施形態においては、塩類の組み合わせは約100mM KCl、500mM NaCl、および10mM MgCl2である。いずれの理論にも束縛されることなく、本出願人は、スクリーニング反応の過程全体にわたって、KCl、NaCl、およびMgCl2の組み合わせが標的RNAを安定化し、その結果、ほとんどのRNAが変性または消化されないことを見出した。水溶液中で使用されるそれぞれの塩の最適濃度は特に使用する標的RNAに依存し、日常の実験を利用して決定することができる。
【0076】
溶液は、場合によっては約0.01%〜約0.5%(w/v)の洗剤または界面活性剤を含有する。いずれの理論にも束縛されることなく、溶液中の少量の洗剤または界面活性剤は標的RNAの固体支持体との非特異的結合を減少し、標的RNA分子の凝集を制御しかつ安定性を増加しうる。本発明の方法に有用な典型的な洗剤としては、限定されるものでないが、デオキシコール酸、1-ヘプタンスルホン酸、N-ラウリルサルコシン、ラウリル硫酸、1-オクタンスルホン酸およびタウロコール酸の塩などの陰イオン洗剤;塩化ベンザルコニウム、セチルピリジニウム、塩化メチルベンゼトニウム、および臭化デカメトニウムなどの陽イオン洗剤;CHAPS、CHAPSO、アルキルベタイン、アルキルアミドアルキルベタイン、N-ドデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート、およびホスファチジルコリンの双性イオン性洗剤;ならびにn-デシルa-D-グルコピラノシド、n-デシルβ-D-マルトピラノシド、n-ドデシルβ-D-マルトシド、n-オクチルβ-D-グルコピラノシド、ソルビタンエステル、n-テトラデシルβ-D-マルトシド、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Nonidet P-40)、ノニルフェノキシポリエトキシエタノール(NP-40)、およびトリトン(triton)などの非イオン性洗剤が挙げられる。好ましくは、洗剤は、もし存在するのであれば、非イオン性洗剤である。本発明の方法に有用である典型的な界面活性剤としては、限定されるものでないが、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリエチレングリコール、ブチルグルコシド、デシルグルコシド、ポリソルベート80(Polysorbate 80)、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミチン酸カリウム、ウンデカン酸、ラウリルベタイン、およびラウリルアルコールが挙げられる。さらに好ましくは、洗剤は、もし存在するのであれば、Triton X-100であって、約0.1%(w/v)の量で存在する。
【0077】
標識された標的核酸と試験化合物との非特異的結合は、結合反応を1種以上のブロッキング剤を用いて処理することにより、さらに最小化することができる。一実施形態においては、結合反応物をブロッキング剤、例えばウシ血清アルブミン(「BSA」)を用いて処理した後に、標識された標的核酸と接触させる。他の実施形態においては、結合反応物を少なくとも2種の異なるブロッキング剤を用いて逐次的に処理する。このブロッキングステップは、好ましくは、室温にて約0.5〜約3時間実施する。次のステップにおいて、反応混合物をさらに、結合部位に突然変異を有する無標識RNAを用いて処理する。このブロッキングステップを、色素標識された標的RNAを添加する前に、好ましくは、約4℃にて約12〜約36時間実施する。好ましくは、1以上のブロッキングステップで使用する溶液は、色素標識された標的RNAを用いてライブラリーをスクリーニングするために使用する水溶液と、例えば、pHおよび塩濃度が実質的に同様である。
【0078】
標識された標的核酸と試験化合物の混合物を接触させると、約1日〜約5日、好ましくは約2日〜約3日、絶えず攪拌して、好ましくは4℃に維持する。標識された標的核酸との結合が起こった反応物を確認するために、インキュベーション時間帯の後に、結合した化合物を遊離した化合物から、以下の電気泳動技術(第5.5.1節を参照)、または以下の第5.5節に開示いずれかの方法を用いて決定する。他の実施形態においては、もし結合した標的核酸と非結合の標的核酸を識別する技術(すなわち分光法)を利用するのであれば、複合体形成した標的核酸を遊離した標的核酸から分離する必要はない。
【0079】
標識した核酸と結合した小分子を同定する方法は、標的核酸上の標識のタイプとともに変わりうる。例えば、もし標的RNAが可視性の蛍光色素を用いて標識されれば、標的RNA複合体は、個々の反応物を用いて、電気泳動またはサイズ示差技術により結合した標的を遊離した標的から分離するクロマトグラフィ技術を利用して同定することが好ましい。複合体形成したRNAの移動の変化に対応する反応物を、前記反応物に加えた小分子化合物と交差参照することができる。あるいは、複合体形成した標的RNAをまとめて(en masse)スクリーニングしてもよく、次いで電気泳動またはサイズ示差技術を用いて遊離した標的RNAから分離し、得られる複合体形成した標的を次いで質量分析技術を用いて分析する。この方法で、結合した小分子をその分子量に基づいて同定することができる。この反応においては、ライブラリー内の全化合物の正確な分子量が予めわかっている。他の実施形態においては、限定されるものでないが、分光法などの技術を利用するのであれば、標的核酸と結合した試験化合物を非結合標的核酸から分離する必要がない場合がある。
【0080】
5.5. 試験化合物をスクリーニングするための分離法
試験化合物と複合体形成した標的核酸の物理的特性の、非結合の標的核酸からの変化を検出するいずれの方法を、複合体形成した標的核酸と複合体形成していない標的核酸の分離に利用してもよい。複合体形成した標的RNAを非結合の標的RNAから物理的に分離するために利用しうる方法としては、限定されるものでないが、電気泳動、蛍光分光分析、表面プラズモン共鳴、質量分析、シンチレーション近接アッセイ、NMR分光法による構造活性相関(「SAR」)、サイズ排除クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、およびナノ粒子凝集が挙げられる。
【0081】
5.5.1. 電気泳動
試験化合物と結合した標的RNAの複合体を非結合のRNAから分離する方法は、いずれの電気泳動分離の方法を含むものであってもよく、前記方法としては、限定されるものでないが、変性および非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動、尿素ゲル電気泳動、ゲルろ過、パルスフィールドゲル電気泳動、二次元ゲル電気泳動、連続流電気泳動、ゾーン電気泳動、アガロースゲル電気泳動、およびキャピラリー電気泳動が挙げられる。
【0082】
好ましい実施形態においては、複数のキャピラリーチューブを有するキャピラリーカートリッジを含んでなる自動電気泳動システムを利用して、標的RNAと結合した試験化合物のハイスループットスクリーニングを行う。自動キャピラリーゲル電気泳動を実施するためのかかる装置は、米国特許第5,885,430号;第5,916,428号;第6,027,627号;および第6,063,251号に開示されていて、これらの開示は参照によりその全体が組み入れられる。
【0083】
参照によりその全体が組み入れられる米国特許第5,885,430号に開示された装置を使用すれば、サンプルを、標準サイズを有するマイクロタイタートレーから直接、複数のキャピラリーチューブ中に同時導入することができる。米国特許第5,885,430号は、電気泳動ランの間に洗浄することができる使い捨てキャピラリーカートリッジを開示し、該カートリッジは複数のキャピラリーチューブを有する。それぞれのキャピラリーチューブの第1の末端はマウントプレート中に保持され、それら第1の末端は集合してマウントプレートにおいてアレイを形成する。第1の末端同士の間隔は、標準サイズを有するマイクロタイタートレイのウエルの中心間の間隔に対応する。従って、キャピラリーチューブの第1の末端を同時に、トレイのウエル中に存在するサンプル中に漬けることができる。そのカートリッジに、キャピラリーチューブの第2の末端を保持する第2のマウントプレートを配置する。キャピラリーチューブの第2の末端は、マイクロタイタートレイ中のウエルに対応するアレイ状に配置されていて、そのためそれぞれのキャピラリーチューブはその隣接チューブから隔離されているので、それぞれの末端を個々のウエル中に漬けたときに交差汚染が起こらない。
【0084】
プレート孔をそれぞれのマウントプレートに設けて、キャピラリーチューブをこれらのプレート孔を通して挿入してもよい。かかる場合にはプレート孔を気密シールして、露出したキャピラリー末端を有するマウントプレートの面を加圧することができる。このマウントプレートのキャピラリー開口部付近に正圧を適用すると、電気泳動操作中に空気および液体の導入が可能になり、かつこれを利用して条件調整の際にキャピラリーチューブからゲルおよび他の物質を強制排出することもできる。キャピラリーチューブは、これらのプレート孔に配置するときに針を含むカニューレ及び/またはプラスチックチューブなどを使用することにより損傷しないよう保護してもよい。金属製カニューレなどを使用すると、それらは電気泳動の際、電流の電気的接点としてはたらきうる。第2のマウントプレートが存在する場合、第2のマウントプレートにプレート孔を設けて、その孔を通してキャピラリーチューブの第2の末端を突き出させる。この場合、第2のマウントプレートは圧力セルの圧力封じ込めメンバーとしてはたらき、キャピラリーチューブの第2の末端は圧力セルの内部空洞と連通する。圧力セルはまた、入口および出口を備えてもよい。ゲル、バッファー溶液、洗浄剤などを、入口を通して内部空洞中へ導入し、そしてこれらはそれぞれ同時にキャピラリーの第2の末端に進入することができる。
【0085】
他の好ましい実施形態においては、自動電気泳動システムは、複雑に設計された相互に連結したチャネルからなるチップシステムを含むものであってよく、そのシステムは極く小さい連続的に操作する電気泳動器材として設計されたチャネルの部分を利用して酵素反応を実施し分析するものであり、かつ、その部分において1サンプルとの反応がチップの1領域で進行する一方、他のサンプルの生成物の電気泳動分離がチップの異なる部分で行われる。かかるシステムは、米国特許第5,699,157号;第5,842,787号;第5,869,004号;第5,876,675号;第5,942,443号;第5,948,227号;第6,042,709号;第6,042,710号;第6,046,056号;第6,048,498号;第6,086,740号;第6,132,685号;第6,150,119号;第6,150,180号;第6,153,073号;第6,167,910号;第6,171,850号;第6,186,660号に開示されており、これらの開示は参照によりその全体が組み入れられる。
【0086】
本明細書に参照によりその全体が組み入れられる米国特許第5,699,157号に開示されたシステムは、化学、生化学、バイオテクノロジー、分子生物学および多数の他領域の分野に応用するための対象物質の高速電気泳動分析用のミクロ流体システムを提供する。システムは器材中のチャネル、光源および受光器を有する。チャネルは対象物質を電場内の液中に保持するので、物質はチャネルを通って移動し、化学種に応じてバンドに分離する。光源は、化学種バンドにおいて蛍光を励起し、そして受光器はバンドからの蛍光を受けるように配置されている。システムはさらにチャネルをマスキングする手段を有するので、受光器はチャネルに沿った周期的に間隔をおいた領域でだけ蛍光を受けることができる。システムはまた、受光器が受けた光強度の変調周波数を解析するために接続されたユニットも有するので、チャネルに沿ったバンドの速度を決定してそれにより物質の分析を可能にする。
【0087】
米国特許第5,699,157号に開示されたシステムはまた、対象物質の高速電気泳動分析を実施する方法であって、ミクロ流体システムのチャネル内の溶液中に対象物質を保持するステップ;前記物質に電場をかけて、対象物質をチャネルを通って移動させかつ化学種バンドに分離させるステップ;光をチャネルに対して向けるステップ;チャネルに沿った周期的に間隔をおいた領域からの光を同時に受けるステップ;および受けた光の光強度の周波数を解析してチャネルに沿ったバンドの速度を決定し前記物質を分析することができるステップ、を含んでなる前記方法も提供する。化学種バンドの速度の決定により、その化学種の電気泳動移動度を決定しかつその化学種を同定する。
【0088】
本明細書に参照によりその全体が組み入れられる米国特許第5,842,787号は、先に記載されたもの(米国特許第5,699,157号に開示されたデバイスなど)よりも大きく変化した深さを少なくとも部分的に有するチャネルを使用するデバイスおよびシステムに、全体として関わるものであり、ここで前記チャネルの深さは、限定されるものでないが、サンプル摂動の減少、拡散による非特異的なサンプル混合の減少、および分解能の向上などの多数の有益かつ予期し得ない結果を提供する。
【0089】
他の実施形態においては、電気泳動分離法はポリアクリルアミドゲル電気泳動を含む。好ましい実施形態においては、ポリアクリルアミドゲル電気泳動は非変性型であって、試験化合物と結合した標的RNAの移動度を遊離した標的RNAから識別することができる。ポリアクリルアミドゲル電気泳動が変性型である場合には、標的RNA:試験化合物複合体は、電気泳動前に架橋して、電気泳動中の標的RNAの試験化合物からの解離を阻止しなければならない。かかる技術は当業者に周知である。
【0090】
本発明の方法の一実施形態においては、試験化合物と標的核酸との結合は、好ましくは自動化した方法で、妨害フットプリント(interference footprinting)のゲル電気泳動分析により検出することができる。RNAを特定塩基部位において分解することができ、その方法としては、リボヌクレアーゼA、U2、CL3、T1、Phy M、およびセレウス菌(B. cereus)などの酵素的方法、またはジエチルピロカルボネート、水酸化ナトリウム、ヒドラジン、蟻酸ピペリジン、硫酸ジメチル、[2,12-ジメチル-3,7,11,17-テトラアザシクロ[l1.3.1]ヘプタデカ-1(17),2,11,13,15-ペンタエナト]ニッケル(II)(NiCR)、塩化コバルト(II)、またはエチレンジアミン四酢酸鉄(II)(Fe-EDTA)などの化学的方法が挙げられ、これらは、例えば、参照により本明細書にその全体が組み入れられるZhengら、1999, Biochem. 37:2207-2214;Latham & Cech, 1989, Science 245:276-282;およびSambrookら, 2001, 「分子クローニング:研究室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」に収載, pp 12.61-12.73, Cold Spring Harbor Laboratory Press、ならびにそれらに引用された参考文献に記載されている。切断部位の特異的パターンは、切断を引き起こすために使用する試薬に対する特定塩基の接近し易さ(accessibility)により決定され、従って、例えばRNAの三次元構造により、決定される。
【0091】
小分子と標的核酸との相互作用は、標的核酸のコンフォメーション変化を引き起こすことによっても、または結合界面の塩基を覆うことによっても、これらの切断試薬に対する塩基の接近し易さを変更することができる。試験化合物が核酸と結合して切断試薬に対する塩基の接近し易さが変わると、観察される切断パターンが変化する。この方法を利用して、例えば、Prudentら, 1995, J. Am. Chem. Soc. 117:10145-10146およびMeiら, 1998, Biochem. 37:14204-14212に記載のように、小分子とRNAとの結合を同定しかつ特性決定することができる。
【0092】
この技術の好ましい実施形態においては、検出可能に標識された標的核酸を、個々の試験化合物とともにインキュベートし、次いで酵素切断試薬もしくは化学切断試薬を用いる処理にかける。反応混合物を、好ましくは直接試験するか、またはさらに核酸を単離しかつ濃縮する処理をすればよい。作製された断片を電気泳動により分離し、切断パターンを、試験化合物の不在のもとで実施した切断反応と比較することができる。切断パターンの変化は直接、試験化合物が標的核酸と結合することを示す。複数の試験化合物を平行しておよび連続しての両方で試験することができる。
【0093】
電気泳動分離の他の実施形態としては、限定されるものでないが、尿素ゲル電気泳動、ゲルろ過、パルスフィールドゲル電気泳動、二次元ゲル電気泳動、連続流電気泳動、ゾーン電気泳動およびアガロースゲル電気泳動が挙げられる。
【0094】
5.5.2. 蛍光分光法
好ましい実施形態においては、蛍光偏光分光法、すなわち、溶液中の結合したかまたは非結合のいずれかの蛍光分子(例えば、本発明の標識された標的核酸)の割合を識別することができる光学的検出法を利用して、サンプルの電気泳動分離なしに反応結果を読みとることができる。米国特許第5,699,157号;第5,842,787号;第5,869,004号;第5,876,675号;第5,942,443号;第5,948,227号;第6,042,709号;第6,042,710号;第6,046,056号;第6,048,498号;第6,086,740号;第6,132,685号;第6,150,119号;第6,150,180号;第6,153,073号;第6,167,910号;第6,171,850号;第6,186,660号(これらの開示は参照によりその全体が組み入れられる)に開示されたチップシステムにおいて、蛍光偏光分光法を利用して反応結果を読みとることができる。上記で列挙した米国特許に開示されたチップシステムへの蛍光偏光分光法の適用は、迅速で、効率的であり、かつハイスループットスクリーニングによく適合する。
【0095】
他の実施形態においては、標的核酸と結合する試験化合物をスクリーニングするために、目的の標的核酸に対してアフィニティを有する化合物を、蛍光団を用いて標識することができる。例えば、96ウエルプレート様式での蛍光クエンチ技術を利用するスクリーニングにおいて、ピレンを含有するアミノグリコシド類似体を用いて、原核生物16S rRNA A部位(アミノグリコシド抗生物質の自然標的を含有する)と結合するアンタゴニストが、正確にモニターされた(Hamasaki & Rando, 1998, Anal. Biochem. 261 (2):183-90)。
【0096】
他の実施形態においては、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を利用して標的核酸と結合する試験化合物をスクリーニングすることができる。蛍光の特徴的な変化となるFRETは、オーバーラップする発光波長バンドおよび励起波長バンドをもつ2つの蛍光団を、例えば結合事象により、近接して一緒に保持するときに起こる。好ましい実施形態においては、標的核酸上の蛍光団と試験化合物上の蛍光団とがオーバーラップする励起スペクトルおよび発光スペクトルを有し、その結果、一方の蛍光団(ドナー)がその発光エネルギーを転移させて他方の蛍光団(アクセプター)を励起する。アクセプターは好ましくは基底状態への緩和時に異なる波長の光を発するか、または非放射的に緩和して蛍光をクエンチする。FRETは2つの蛍光団の間の距離に対して非常に感度がよく、10nm未満の分子距離の測定が可能である。例えば、参照によりその全体が組み入れられるArenasらへの米国特許第6,337,183号には、FRETを用いて試験化合物の標的RNA分子の安定性に対する効果を測定する、RNAと結合する化合物のスクリーニングが記載され、そのスクリーニングでは蛍光アクセプター分子およびドナー分子の両方を用いて標的RNAを標識し、FRETにより決定した2つの蛍光団の間の距離によってRNAのフォールド構造を計測する。Matsumotoら(2000, Bioorg. Med. Chem. Lett. 10:1857-1861)は、HIV-1 TAR RNAと結合するペプチドの一方の末端をフルオレセイン蛍光団を用いて標識しかつ他方の末端をテトラメチルローダミンを用いて標識するシステムを記載している。RNAと結合する際のペプチドのコンフォメーションの変化が、TAR RNAと結合した化合物をスクリーニングするためのFRETシグナルを与えた。
【0097】
好ましい実施形態においては、標的核酸と、目的の標的核酸にアフィニティを有する化合物との両方を、オーバーラップする発光スペクトルおよび励起スペクトルをもつ蛍光団(ドナーおよびアクセプター)を用いて標識するが、前記蛍光団としては、限定されるものでないが、フルオレセインおよび誘導体、ローダミンおよび誘導体、シアニン色素および誘導体、ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン(BODIPY(登録商標))および誘導体、ピレン、ナノ粒子、または非蛍光クエンチング分子が挙げられる。標識された試験化合物と標的核酸との結合は、FRETの結果として観察可能な蛍光の変化により同定することができる。
【0098】
標的核酸をドナー蛍光団により標識する場合には、試験化合物はアクセプター蛍光団により標識する。逆に、標的核酸をアクセプター蛍光団により標識する場合には、試験化合物はドナー蛍光団により標識する。必要な感度、当該化合物との結合の容易さ、安定性の要件、利用しうる計器、および廃棄規定に依存して標識を選択しつつ、様々な標識を使用することができる。標的核酸上の蛍光団は、試験化合物の結合部位に近接していなければならないが、標的核酸中での試験化合物が結合すると思われる特異的結合部位には組込まれてはならない。これは、共有結合した標識の存在が、この部位における試験化合物の結合を立体的または化学的に妨害する可能性があるためである。
【0099】
さらに他の実施形態においては、ランタニドイオン錯体から適当なアクセプター化学種への時間分解エネルギー転移に基づく、均一時間分解蛍光(「HTRF」)技術を、RNAタンパク質複合体のインヒビターに対するハイスループットスクリーニングに適合させることができる(Hemmila, 1999, J. Biomol. Screening 4:303-307;Mathis, 1999, J. Biomol. Screening 4:309-313)。HTRFは通常の有機色素対を利用する蛍光共鳴エネルギー転移に類似するが、感度および効率の増加、およびバックグラウンド排除などの複数の利点を有する(Xavierら, 2000, Trends Biotechnol. 18(8):349-356)。
【0100】
蛍光分光法は伝統的にDNA-タンパク質およびタンパク質-タンパク質相互作用の特性決定に利用されているが、蛍光分光法はRNA-タンパク質相互作用の特性決定にはあまり利用されていない。その理由はRNAヌクレオチドの吸収がタンパク質の内因性トリプトファン蛍光を妨害するからである(Xavierら, 2000, Trends Biotechnol. 18(8):349-356)。しかし、蛍光分光法は、Revタンパク質のアルギニンリッチRNA結合ドメイン内の単一トリプトファン残基、およびRREとのその相互作用を、時間分解蛍光研究で研究するのに利用されている(Kwon & Carson, 1998, Anal. Biochem. 264:133-140)。このように、本発明においては、試験化合物またはペプチドまたはタンパク質が内因性トリプトファン蛍光を持つのであれば、蛍光分光法はあまり好ましくない。しかし、蛍光分光法は内因性蛍光を持たない試験化合物に対しては利用することができる。
【0101】
5.5.3. 表面プラズモン共鳴(「 SPR 」)
表面プラズモン共鳴(「SPR」)を利用して、「リアルタイム」で会合投影(associate project)を追跡することにより、高分子相互作用の運動速度定数および平衡定数を決定することができる(Schuck, 1997, Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 26:541-566)。
【0102】
SPRの原理は、Xavierら (Trends Biotechnol., 2000, 18(8):349-356)が以下のように総括している。異なる屈折率をもつ2つの物質間の境界で全内部反射が起こる。入射光の電磁場はエバネッセント波として界面を越えて染み出し、表面を越えて媒質中に数百ナノメートル広がる。界面に金の薄箔を挿入すると、金属の遊離電子雲(プラズモン)によるエバネッセント波からのエネルギーの吸収のためにSPRを生じる。この吸収の結果として、特定の入射角において反射光の強度に低下が起こる。エバネッセント波プロフィールは精査する媒質の屈折率に精密に依存する。従って、吸収が起こる角度は外部媒質の屈折率変化に対して非常に高感受性である。全てのタンパク質および核酸は、そのアミノ酸またはヌクレオチド組成に関係なく、単位質量当たり同程度だけ水の屈折率を変えることが公知である(屈折率変化はタンパク質と核酸で異なる)。センサーにおける層のタンパク質または核酸含量が変化すると、屈折率も変化する。典型的には、フローセル(Biacore AB、Uppsala、Sweden)または攪拌キュベット(Affinity Sensors、Santa Fe、New Mexico)のいずれかにおいて、複合体の一方のメンバーをデキストラン層に固定し、次いで他方のメンバーをその溶液中に導入する。タンパク質または核酸の表面濃度と共鳴角のシフトとの間には線形相関のあることが確認されていて、これを利用して運動速度定数及び/または平衡定数を計測することができる。
【0103】
本発明においては、標的RNAをストレプトアビジン-ビオチン結合によりセンサー表面に固定してもよく、その結合はCrouchら(Methods Mol. Biol., 1999, 118:143-160)によって開示されている。RNAのビオチン化は、合成中または合成後のいずれかに、RNAの3'末端リボヌクレオシドの反応性遊離アミノ基への変換を経てまたはT7ポリメラーゼにより組み入れられる5'末端のグアノシンモノホスホロチオアートを利用して行う。SPRを利用して、HIV Revタンパク質とRREとの間(Van Ryk & Venkatesan, 1999, J. Biol. Chem. 274:17452-17463)およびRREを有するアミノグリコシド抗生物質と16SリボソームA部位由来のモデルRNAとの間(Hendrixら, 1997, J. Am. Chem. Soc. 119:3641-3648;Wongら, 1998, Chem. Biol. 5:397-406)のそれぞれの相互作用の化学量論およびアフィニティが決定されている。
【0104】
本発明の一実施形態においては、標的核酸をセンサー表面に(例えば、ストレプトアビジン-ビオチン結合により)固定し、そしてSPRを利用して(a)標的RNAが試験化合物と結合するかどうかを決定しかつ、(b)さらに本発明の標的核酸と試験化合物との結合の特性を決定することができる。
【0105】
5.5.4. 質量分析
数千の成分を含有する複雑な混合物を分析することができてかつバックグラウンドノイズ、多重荷電ピークおよび原子同位体ピークを較正することができる、質量分析計データを解析する自動化された方法が、本明細書に参照によりその全体が組み入れられる米国特許第6,147,344号に記載されている。米国特許第6,147,344号に開示されたシステムは質量分析計データを解析する方法であって、この方法では、対照サンプル測定を実施してバックグラウンドノイズチェックを行う。それぞれのm/z比率におけるピーク高と幅の値を時間の関数としてメモリーに保存する。分析すべき材料に対して質量分析計操作を実施し、そしてそれぞれのm/z比率におけるピーク高および幅の値 対 時間を第2のメモリー場所に保存する。分析すべき材料の質量分析計操作を一定の回数だけ繰返し、そしてそれぞれの時間増分におけるそれぞれのm/z比率レベルでの保存された対照サンプル値を、それぞれの対応する操作ランの値から差引き、こうしてそれぞれの時間増分における複数ランのそれぞれに対するそれぞれの質量比における差値を得る。MS値からバックグラウンドノイズを差引いた値が予め設定した値を超えなければ、m/z比率データポイントは記録されず、こうして質量分析計データからバックグラウンドノイズ、化学ノイズおよび偽陽性ピークが排除される。次いで、複数ランのそれぞれに対して保存したデータをそれぞれのm/z比率において予め決定した値と比較し、(既にバックグラウンドを超えることが確認されている)得られた一連のピークを、ピークが有意であるm/z点に保存する。
【0106】
ハイスループットスクリーニングにおいて質量分析を利用する可能性の1つは、SPRと質量分析の統合である。試みられている研究手法は、センサーチップ上に保持された検体の直接分析および溶出した検体の質量分析である(Sonksenら, 1998, Anal. Chem. 70:2731-2736;Nelson & Krone, 1999, J. Mol. Recog. 12:77-93)。質量分析計と組み合わせたSPRを用いて、生物分子の相互作用を分析しかつ小分子インヒビターに対する標的をスクリーニングするハイスループット法を確立するためには、特に、センサーチップと質量分析計とのインターフェース接続およびセンサーチップの再利用においてさらなる開発が必要である(Xavierら, 2000, Trends Biotechnol. 18(8):349-356)。
【0107】
本発明の一実施形態においては、試験化合物と複合体形成した標的核酸を、上記のように処理される質量分析法のいずれかにより測定することができる。さらに、質量分析法を利用して、試験化合物の構造を解明することもできる。
【0108】
5.5.5. シンチレーション近接アッセイ(「 SPA 」)
シンチレーション近接アッセイ(「SPA」)は、標的RNAと結合する小分子をスクリーニングするために利用しうる方法である。SPAは、標的RNAまたは試験化合物のいずれかを放射標識し、次いでシンチラントを含浸したビーズまたは表面上の他のメンバーとの結合を定量することを含む(Cook, 1996, Drug Discov. Today 1:287-294)。現在、ハイスループットスクリーニングには蛍光に基づく技術が好まれている(Popeら, 1999, Drug Discov. Today 4:350-362)。
【0109】
Tatペプチド:TAR RNAの相互作用を阻害する小分子のスクリーニングがSPAを用いて実施されていて、その相互作用のインヒビターが単離されかつ特性決定された(Meiら, 1997, Bioorg. Med. Chem. 5:1173-1184;Meiら, 1998, Biochemistry 37:14204-14212)。同様の手法を利用して、予め選択した標的RNAエレメントと直接結合しかつ本発明に用いることができる小分子を同定することができる。
【0110】
シンチラントがマイクロタイターウエルのプラスチック中に直接組み込まれたマイクロプレートを利用できるなら、SPAをハイスループットスクリーニングに適合させることができる(Nakayamaら, 1998, J. Biomol. Screening 3:43-48)。従って、本発明の一実施形態は、(a)標的核酸を放射標識または蛍光標識を用いて標識すること;(b)それぞれの試験化合物がシンチラントを用いて被覆されたマイクロタイターウエル内に置かれかつそのマイクロタイターウエルにつながれている状況のもとで、標識された核酸をそれらの試験化合物と接触させること;および(c)試験化合物をマイクロプレート中の位置により同定することを特徴としたSPAを利用して、標的核酸と結合した試験化合物を同定し定量すること、を含んでなる。
【0111】
5.5.6. NMR 分光法による構造活性相関( SAR )
NMR分光法は、化学シフトの変化を、具体的には緩和効果を利用して測定した距離から定性的に決定することによって、複合体形成した標的核酸を同定する有用な技術であり、NMRに基づく手法はタンパク質薬物標的となる小分子結合体の同定に利用されている(Xavierら, 2000, Trends Biotechnol. 18(8):349-356)。NMRによる構造活性相関(「SAR」)の決定がNMRについて最初に記載された手法であり、この方法において、隣接サブサイトと結合する小分子が標的タンパク質の二次元1H-15Nスペクトルより同定された(Shukerら, 1996, Science 274:1531-1534)。結合した分子からのシグナルは、ラインブロードニング(line broadening)、転移NOE、およびパルスフィールド勾配拡散測定を用いてモニターする(Moore, l999, Curr. Opin. Biotechnol. 10:54-58)。小分子のライブラリーを用いるNMRによるリード生成の戦略が最近報告されている(Fejzoら, 1999, Chem. Biol. 6:755-769)。
【0112】
本発明の一実施形態においては、試験化合物と複合体形成した標的核酸は、NMRによるSARにより確認することができる。さらにNMRによるSARを利用して試験化合物の構造を解明することもできる。
【0113】
5.5.7. サイズ排除クロマトグラフィ
本発明の別の実施形態においては、サイズ排除クロマトグラフィを利用して化合物の複雑な混合物から、標的核酸と結合した試験化合物を精製することができる。サイズ排除クロマトグラフィは、分子をそのサイズに基づいて分離するものであり、特定のサイズ分布を有するビーズからなるゲルベースの媒質を使用する。この媒質をカラムに適用すると、沈降して高密度充填されたマトリックスとなり、複雑な細孔のアレイを形成する。分離はこれらの細孔による分子の取り込みまたは排除により、分子サイズに基づいて達成される。小さい分子は細孔中に取り込まれ、その結果、マトリックスを通過するそれらの移動は、溶出するまでに通らねばならない距離が増加することによって遅延する。大きい分子は、マトリックスに適用されると、細孔から締め出されて空隙容量とともに移動する。本発明においては、標的核酸を溶液中に遊離した試験化合物の混合物とインキュベートして、平衡に到達させる。サイズ排除カラムに適用すると、溶液中の遊離した試験化合物はカラムにより保持され、標的核酸と結合した試験化合物はカラムを通過する。好ましい実施形態においては、核酸の「脱塩」に通常利用されるスピンカラムを用いて、結合した試験化合物を非結合の試験化合物から分離する(例えば、BIO-RADが製造するBio-Spinカラム)。他の実施形態においては、サイズ排除マトリックスをマルチウエルプレート中に充填して、混合物のハイスループット分離を可能にする(例えば、Milliporeが製造するPLASMID 96ウエルSECプレート)。
【0114】
5.5.8. アフィニティクロマトグラフィ
本発明の一実施形態においては、アフィニティ捕捉を利用し、アフィニティタグにより標識された標的核酸と結合した試験化合物を、化合物の複雑な混合物から精製する。これを実施するためには、アフィニティタグにより標識された標的核酸を溶液中の遊離した試験化合物の混合物とインキュベートし、次いでいったん平衡が確立されてから固体支持体に捕捉させるか、あるいは、最初にアフィニティタグにより標識された標的核酸を固体支持体に捕捉させて、次いで試験化合物の混合物と平衡に到達させる。
【0115】
固体支持体は、典型的には、限定されるものでないが、アフィニティタグに対するリガンドを結合させた架橋アガロースビーズからなる。あるいは、固体支持体は、標的核酸上のアフィニティタグに対するリガンドを共有結合して有するかもしくは前記タグに対して固有のアフィニティを有する自己アセンブル単層(self-assembled monolayer)(SAM)をもつかまたはもたないガラス、珪素、金属、または炭素、プラスチック(ポリスチレン、ポリプロピレン)表面であってもよい。
【0116】
標的核酸と試験化合物との間の複合体がいったん平衡に到達し捕捉されてしまえば、固体支持体を大過剰の結合反応バッファーを用いて洗浄することにより、結合した化合物を保持し非結合の化合物を除去することは容易に実施しうることを、当業者は理解するであろう。さらに、高アフィニティ化合物の保持と低アフィニティ化合物の除去は、洗浄のストリンジェンシーを増加させるさまざまな方法により実施することができる。このような方法としては、限定されるものでないが、洗浄の回数と時間の増加、洗浄バッファーの塩濃度の増加、洗剤もしくは界面活性剤の洗浄バッファーへの添加、および非特異的競合物の洗浄バッファーへの添加が挙げられる。
【0117】
一実施形態においては、試験化合物自身を、蛍光色素、放射性同位体、またはナノ粒子を用いて検出可能に標識する。試験化合物を、空間的に番地付けした方法で(例えば、96ウエルマイクロプレートの別々のウエルに)捕捉した標的核酸に対して適用し、試験化合物と標的核酸との間の結合を、試験化合物上の検出可能な標識の存在により蛍光を用いて確認することができる。
【0118】
非結合の化合物を除去した後、標的核酸と高アフィニティで結合した化合物を、固定した標的核酸から溶出させて分析することができる。試験化合物の溶出は、標的核酸と化合物との間の非共有相互作用を破壊するいずれの方法により達成してもよい。溶出の方法としては、限定されるものでないが、pHの変更、塩濃度の変更、有機溶媒の適用、および結合したリガンドと競合する分子の適用が挙げられる。好ましい実施形態においては、溶出に使用する方法は、標的RNAから化合物を遊離させるが、アフィニティタグと固体支持体との間の相互作用に影響を与えず、それにより試験化合物の選択的溶出を達成しうる。さらに、好ましい実施形態では、揮発性であって、その後の溶出した化合物の凍結乾燥による濃縮を可能にする溶出バッファー(例えば、0M〜5M酢酸アンモニウム)を用いる。
【0119】
5.5.9. ナノ粒子凝集
本発明の一実施形態においては、標的核酸と試験化合物の両方をナノ粒子を用いて標識する。ナノ粒子は、0.1〜1000nmの管理されたサイズをもつイオンのクラスターであり、限定されるものでないが、Ag2S、ZnS、CdS、CdTe、Au、またはTiO2を含む金属、金属酸化物、または半導体からなる。核酸および小分子をナノ粒子に結合する方法は、当業者に周知である(Niemeyer, 2001, Angew. Chem. Int. Ed. 40:4129-4158に総括されている。同文献に引用された参考文献は本明細書に参照によりその全体が組み入れられる)。特に、例えば、Mitchelら 1999, J. Am. Chem. Soc. 121:8122-8123が記載するように、標的核酸の複数コピーが単一のナノ粒子に結合していてかつ試験化合物の複数コピーが別のナノ粒子に結合している場合には、試験化合物と標的化合物との間の相互作用がナノ粒子の凝集を誘導する。凝集物を吸光度または蛍光スペクトルの変化により検出して、濾過または遠心分離により、非結合成分から物理的に分離することができる。
【0120】
5.6. 標的核酸と結合した試験化合物を同定または特性決定する方法
ライブラリーが試験化合物のアレイまたはマイクロアレイを含んでなり、かつそれぞれの試験化合物が番地または識別子を有する場合には、その試験化合物は、陽性サンプルを個々の試験アッセイに適用した元の化合物リストに対して相互参照することにより解析することができる。
【0121】
ライブラリーがペプチドまたは核酸ライブラリーである場合には、試験化合物の配列は、ペプチドまたは核酸の直接配列決定により決定することができる。かかる方法は、当業者に周知である。
【0122】
標的と結合した試験化合物の新規(de novo)特性決定には、さまざまな物理化学的技術を用いることができる。
【0123】
5.6.1. 質量分析
質量分析(例えば、エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)およびマトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FT-ICR」))を、標的RNAと結合する試験化合物のハイスループットスクリーニングおよび試験化合物の構造の解明の両方に利用することができる。そして、質量分光法の一例では、結合した複合体および非結合の複合体の分離、ならびに試験化合物の構造解明を単一ステップで実施することができる。
【0124】
MALDIは、イオン脱離用のパルスレーザーおよび飛行時間分析計を用いるものであり、非共有結合複合体のtRNA:アミノ-アシル-tRNA合成酵素複合体の検出に使用されている(Gruic-Sovuljら, 1997, J. Biol. Chem. 272:32084-32091)。しかし、非共有結合はMALDIプロセス中に解離しうるので、検出には標的核酸と試験化合物との間の共有結合架橋が必要である。
【0125】
ESI質量分析(「ESI-MS」)は、非共有結合性の分子相互作用を研究するのに非常に有用とされている。何故なら、MALDI法と異なり、ESI-MSは、ほとんどまたは全くフラグメント化を伴わずに分子イオンを発生するからである(Xavierら, 2000, Trends Biotechnol. 18(8):349-356)。ESI-MSを用いて、HIV Tatペプチドおよびタンパク質とTAR RNAとにより形成される複合体について研究されている(Sannes-Loweryら, 1997, Anal. Chem. 69:5130-5135)
フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FT-ICR」)質量分析は、高分解能スペクトル、同位体に分解された前駆体イオン選択、および正確な質量割当てを与える(Xavierら, 2000, Trends Biotechnol. 18(8):349-356)。FT-ICRを用いて、アミノグリコシド抗生物質とコグネイトおよび非コグネイトRNAとの相互作用について研究されている(Hofstadlerら, 1999, Anal. Chem. 71:3436-3440;Griffeyら, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:10129-10133)。本明細書で考察した全ての質量分析法について言えるように、FT-ICRは標的RNAまたは試験化合物の標識を必要としない。
【0126】
質量分光法の利点は試験化合物の構造の解明だけでなく、予め選択した標的RNAと結合した試験化合物の構造も決定できることである。かかる情報は、予め選択した標的RNAと特異的に結合する試験化合物のコンセンサス構造の発見を可能にする。
【0127】
5.6.2. NMR 分光法
上記のように、NMR分光法は化学シフトの変化を、具体的には緩和効果を利用して測定した距離から定性的に決定することにより、標的核酸中の結合部位を同定する技術である。本発明に利用しうるNMRの例としては、限定されるものでないが、一次元NMR、二次元NMR、相関分光法(COSY)、および核オーバーハウザー効果(「NOE」)分光法が挙げられる。試験化合物を構造決定するためのかかる方法は、当業者に周知である。
【0128】
質量分光法と同様に、NMRの利点は、試験化合物の構造の解明だけでなく、予め選択した標的RNAと結合した試験化合物の構造も決定できることである。かかる情報は、予め選択した標的RNAと特異的に結合する試験化合物のコンセンサス構造の発見を可能にしうる。
【0129】
5.6.3. 振動分光法
振動分光法(例えば、赤外(IR)分光法またはラマン分光法)を利用して、単離したビーズ上の試験化合物の構造を解明することができる。
【0130】
赤外分光法は、光の吸収が当該分子の電気双極子モーメントの変化を引き起こすことを必要とする量子力学選択則に従う振動モードの励起の結果として、試験化合物により吸収される赤外光(波長100〜10,000nm)の周波数を測定する。いずれの分子の赤外スペクトルもさまざまな強度の吸収波長をユニークなパターンで有し、それらは化合物を同定するための分子フィンガープリントとしてみなすことができる。
【0131】
赤外スペクトルは、走査モードで、混合周波数の赤外光源から周波数を分離する格子によりもたらされた個々の周波数の光の試験化合物による吸収を、標準強度(二重ビーム計器)または予め測定した(「ブランク」)強度(単一ビーム計器)と比較して計測することにより、測定することができる。好ましい実施形態においては、赤外スペクトルをパルスモード(FT-IR)で測定し、その際、干渉計により生成した全ての赤外光周波数の混合ビームを試験化合物に通過させるかまたは反射させる。こうして得られる干渉図(interferogram)(これには、電子シグナルの無作為なノイズを平均化する際にシグナル強度を増加させる目的でその後のパルスからの干渉図を加えても加えなくてもよい)は、フーリエ変換または高速フーリエ変換アルゴリズムを用いて数学的にスペクトルに変換する。
【0132】
ラマン分光法は、入射ビームと比較して、赤外周波数の吸収による可視散乱光または紫外光の周波数の差を測定する。通常単一レーザー周波数である入射単色光ビームは、実際は試験化合物により吸収されないが、電場と一時的に相互作用する。サンプルから散乱した光のほとんどに変化はない(レイリー散乱)が、散乱光の一部分は入射周波数と分子振動周波数との和または差である周波数を有しうる。ラマン(非弾性)散乱の選択則は、分子の分極率の変化を必要とする。一部の振動遷移は赤外およびラマン分光分析の両方において観察可能であるが、どちらかの技術を用いてだけ観察可能であるものもあるはずである。いずれの分子のラマンスペクトルもさまざまな強度の吸収波長をユニークなパターンで有し、それらは化合物を同定するための分子フィンガープリントとしてみなすことができる。
【0133】
ラマンスペクトルは、単色光をサンプルに通過させるかまたは好ましくは反射させるように照射し、レイリー散乱光をフィルターにかけ、そしてラマン散乱光の周波数を検出することにより、測定する。改良ラマン分光計は、本明細書に参照により組み入れられる、Finkらへの米国特許第5,786,893号に記載されている。
【0134】
振動顕微鏡分析法では、可視顕微鏡と分光計の統合により、単一ビーズを番地付けするように空間的に区分した様式で測定することができる。顕微赤外分光計は、本明細書に参照によりその全体が組み入れられる、Reffnerらへの米国特許第5,581,085号に記載されている。サンプルの顕微赤外分析および顕微ラマン分析を同時に行う計器は、本明細書に参照によりその全体が組み入れられる、Sostekらへの米国特許第5,841,139号に記載されている。
【0135】
好ましい実施形態においては、試験化合物は、試験化合物のIRスペクトルまたはラマンスペクトルと、コンビナトリアルライブラリー中のそれぞれの化合物に対して予め取得した振動(IRまたはラマン)スペクトルのデータセットとの一致により同定することができる。この方法により、既知構造をもつ化合物のスペクトルを記録して、RNA結合実験から単離されたときにこれらのスペクトルとの比較により化合物を再び同定できるようにする。
【0136】
5.7. 二次生物学的スクリーニング
機能的読出しシステム(functional radout system)と結合した標的RNAエレメントを含有するかまたは含有するように遺伝子操作した宿主細胞を用いて、結合アッセイで同定した試験化合物(便宜上、本明細書では「リード(lead)」化合物と呼ぶ)を生物学的活性について試験することができる。例えば、リード化合物を、レポーター遺伝子の発現を制御する標的RNAエレメントを含有するように遺伝子操作した宿主細胞において試験することができる。この例においては、リード化合物を標的RNAの存在または不在のもとでアッセイする。あるいは、表現型読出しまたは生理学的読出しを利用してリード化合物の存在および不在のもとでの標的RNAの活性を評価することができる。
【0137】
一実施形態においては、限定されるものでないが、β-ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、およびβ-ラクタマーゼなどのレポーター遺伝子の発現を制御する標的RNAエレメントを含有するように遺伝子操作した宿主細胞において試験することができる。好ましい実施形態においては、標的エレメントをコードするcDNAはレポーター遺伝子の上流に融合されていて、この場合、リード化合物が標的RNAと結合するとレポーター遺伝子の翻訳は抑制される。言い換えれば、リード化合物と標的RNAとの結合により生じる立体障害がレポーター遺伝子の翻訳を抑制する。翻訳抑制アッセイ法(「TRAP」)と呼ばれるこの方法は、大腸菌(E.coli)およびS.セレビシエ(S. cerevisiae)で実証されている(Jain & Belasco, 1996, Cell 87(1):115-25;Huang & Schreiber, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:13396-13401)。
【0138】
他の実施形態においては、表現型読出しまたは生理学的読出しを利用して、リード化合物の存在および不在のもとでの標的RNAの活性を評価することができる。例えば、標的RNAを、内因的に標的RNAを発現する細胞において過剰発現させてもよい。標的RNAが細胞増殖または生存度に関わる遺伝子産物の発現を制御する場合、リード化合物のin vivo効果は、標的細胞の細胞増殖または生存度を測定することによりアッセイすることができる。あるいは、レポーター遺伝子を標的RNA配列の下流に融合させてもよく、リード化合物のレポーター遺伝子発現に対する効果をアッセイすることができる。
【0139】
あるいは、結合アッセイで同定したリード化合物を、目的の疾患、疾病状態、または症候に対する動物モデルを用いて生物学的活性について試験することができる。これらの動物モデルとしては、トランスジェニックマウスなどの機能的読出しシステムと結合した標的RNAエレメントを含有するように遺伝子操作した動物が挙げられる。動物モデル系を利用して、安全性と有効性を実証することもできる。
【0140】
所望の生物学的活性を示す化合物はリード化合物であると考えられ、有用な薬理学的活性および生理学的プロフィールを持つ同属体または類似体の設計に利用しうる。リード化合物を同定した後、合成研究と併せて有用であることが証明されている分子モデリング技術を用いて、さらに有効でありうるリードの変種を設計することができる。これらの利用としては、限定されるものでないが、ファルマコフォアモデリング(Pharmacophore Modeling)(Lamothe,ら 1997, J. Med. Chem. 40:3542;Mottolaら 1996, J. Med. Chem. 39:285;Beusenら 1995, Biopolymers 36:181;P. Fossaら 1998, Comput. Aided Mol. Des. 12:361を参照)、QSAR開発(Siddiquiら 1999, J. Med. Chem. 42:4122;Barrecaら 1999 Bioorg. Med. Chem. 7:2283 ;Kroemerら 1995, J. Med. Chem. 38:4917;Schaalら 2001, J. Med. Chem. 44:155;Buolamwini & Assefa 2002, J. Mol. Chem. 45:84を参照)、バーチャルドッキングおよびスクリーニング/スコアリング(Virtual docking and screening/scoring)(Anziniら 2001, J. Med. Chem. 44:1134;Faalandら 2000, Biochem. Cell. Biol. 78:415;Silvestriら 2000, Bioorg. Med. Chem. 8:2305;J. Leeら 2001, Bioorg. Med. Chem. 9:19を参照)、ならびに、限定されるものでないが、mFold(Zukerら 「RNA二次構造予測のためのアルゴリズムと熱力学:RNA生化学およびバイオテクノロジーの実用ガイド(Algorithms and Thermodynamics for RNA Secondary Structure Prediction:A Practical Guide in RNA Biochemistry and Biotechnology)」 pp.11-43, J. Barciszewski & B. F. C. Clark, 編(NATO ASI Series, Kluwer Academic Publishers, 1999)およびMathewsら 1999 J. Mol. Biol. 288:911-940に記載);RNAモチーフ(RNAmotif)(Mackeら 2001, Nucleic Acids Res. 29:4724-4735;およびVienna RNAパッケージ(Hofackerら 1994, Monatsh. Chem. 125:167-188)を含むRNA構造プログラムを用いる構造予測が挙げられる。
【0141】
かかる技術を利用したさらなる例は複数の総説論文に見出すことができる。それらの論文としては、Rotivinenら, 1988, Acta Pharmaceutical Fennica 97:159-166;Ripka, 1998, New Scientist 54-57;McKinaly & Rossmann, 1989, Annu. Rev. Pharmacol. Toxiciol. 29:111-122;Perry & Davies, 「QSAR:薬物設計における定量的構造活性相関(QSAR:Quantitative Structure-Activity Relationships in Drug Design)」 pp.189-193 (Alan R. Liss, Inc. 1989);Lewis & Dean, 1989, Proc. R. Soc. Lond. 236:125-140および141-162;Askewら, 1989, J. Am. Chem. Soc. 111:1082-1090などが挙げられる。使用される分子モデリングツールとしては、Tripos, Inc., St. Louis, Missouri(例えば, Sybyl/UNITY、CONCORD、DiverseSolutions)、Accelerys, San Diego, California(例えば、Catalyst、Wisconsin Package{BLASTその他})、Schrodinger, Portland, Oregon(例えば、QikProp、QikFit、Jaguar)またはその他の販売業者(例えばBioDesign, Inc.(Pasadena, California)、Allelix, Inc.(Mississauga, Ontario, Canada)、およびHypercube, Inc.(Cambridge, Ontario, Canada)など)から販売されている分子モデリングツールが挙げられ、また私的に設計されたおよび/または「アカデミック」なソフトウエア(例えば RNAMotif, mFOLD)が挙げられる。これらのアプリケーション・スーツおよびプログラムは、薬物様分子、タンパク質、およびDNAまたはRNAに対する構造モデルならびにそれらの潜在的相互作用の原子論的構築と解析のためのツールを含む。これらはまた、溶解度計算、透過性測定、および分子の「薬物作用能(druggability)」(例えば、Lipinskiら 1997, Adv. Drug Delivery Rev. 23:3-25に記載の「Lipinski Rule of 5」)の実験的測定などの、重要な物理的特性の計算も提供する。最も重要なことには、これらは、上記の二次スクリーニングプロトコルから得た結果により決定されるように所望の物理的特性を改善する一方、さらに効果的な臨床開発候補物質の合成を手引きするために利用される、定量的構造活性相関(QSAR)を開発する上で適切な測定法および統計モデリング能(米国特許第6,240,374号および第6,185,506号に記載された、特許を付与されているSylbylのCoMFA技術など)を提供する。
【0142】
5.8. 同定された、 RNA と結合する化合物の、疾患の治療/予防への使用
本発明の方法を用いて同定した生物学的活性化合物または製薬上許容されるそれらの塩は、その進行が標的RNA:宿主細胞因子のin vivo相互作用と関係する疾患を患う患者、好ましくは哺乳類動物、さらに好ましくはヒトに投与することができる。ある特定の実施形態においては、かかる化合物またはその製薬上許容される塩を、RNA:宿主細胞因子のin vivo相互作用と関係する疾患に対する予防処置として、患者、好ましくは哺乳類動物、さらに好ましくはヒトに投与する。
【0143】
一実施形態においては、「治療」または「治療する」は、疾患の改善、または少なくとも1つの確認しうるその症状の改善を意味する。他の実施形態においては、「治療」または「治療する」は、少なくとも1つの測定し得る物理的パラメーター(患者が必ずしも認識しうるものではない)の改善を意味する。さらに他の実施形態においては、「治療」または「治療する」は、疾患の進行を、身体的に抑制(例えば、確認しうる症状の安定化)するか、または生理学的に抑制(例えば物理的パラメーターの安定化)するか、あるいはそれらの両方において抑制することを意味する。さらに他の実施形態においては、「治療」または「治療する」は、発病の遅延を意味する。
【0144】
ある特定の実施形態においては、化合物またはその製薬上許容される塩を、患者、好ましくは哺乳類動物、さらに好ましくはヒトに、RNA:宿主細胞因子のin vivo相互作用に関係する疾患に対する予防処置として投与する。本明細書に使用される用語「予防」または「予防する」は、疾患に罹るリスクの減少を意味する。一実施形態においては、化合物またはその製薬上許容される塩を、患者に予防処置として投与する。この実施形態においては、患者は、その疾患の家族歴などの疾患に対する遺伝的素因、またはその疾患に対する非遺伝的素因を有しうる。従って、化合物とその製薬上許容される塩を、疾患の一の徴候の治療および他の徴候の予防に使用してもよい。
【0145】
患者に投与するとき、化合物またはその製薬上許容される塩を、好ましくは、場合によっては製薬上許容されるビヒクルを含んでなる組成物の成分として投与する。該組成物を、経口でまたはいずれかの他の好都合な経路により、例えば、輸液またはボーラス注射により、上皮または粘膜皮膚ライニング(例えば、口腔粘膜、直腸、および腸粘膜など)を通した吸収により、投与してもよいし、他の生物学的活性薬と一緒に投与してもよい。投与は全身的であっても局部的であってもよい。様々な送達系、例えば、リポソーム内封入、ミクロ粒子、マイクロカプセル、カプセルなどが公知であり、それを化合物およびその製薬上許容される塩を投与するために利用することができる。
【0146】
投与方法としては、限定されるものでないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、鼻腔内、脳内、腟内、経皮、経直腸、吸入により、または局所に、特に耳、鼻、眼、もしくは皮膚へが挙げられる。投与様式は医師の判断にまかされる。ほとんどの場合、投与は、化合物またはその製薬上許容される塩の血流中への放出をもたらしうる。
【0147】
特定の実施形態においては、化合物またはその製薬上許容される塩を局部的に投与することが望ましいであろう。これは、例えば、限定されるものでないが、外科手術中の局所注入、例えば、外科手術後の創傷包帯と併せた局所への適用により、注射により、カテーテルの使用により、座薬の使用により、またはシアラスチック(sialastic)膜などの膜もしくは繊維を含む、多孔質、無孔質もしくはゼラチン質材料であるインプラントの使用により、達成することができる。
【0148】
ある特定の実施形態においては、化合物またはその製薬上許容される塩を、中枢神経系中に、脳室内注入、くも膜下腔内注入および硬膜外注入を含むいずれかの適当な経路により導入することが望ましいであろう。脳室内注入は、例えばオンマヤ・リザーバー(Ommaya reservoir)などの容器に取り付けられた脳室内カテーテルにより容易に実施しうる。
【0149】
肺投与も、例えば、吸入器または噴霧器の使用、およびエーロゾル剤との製剤化により、またはフルオロカーボンもしくは合成肺表面活性物質中での灌流により、利用することができる。ある特定の実施形態においては、化合物とその製薬上許容される塩を、伝統的な結合剤およびトリグリセリドなどのビヒクルとともに、座薬として製剤化することができる。
【0150】
他の実施形態においては、化合物とその製薬上許容される塩を、小胞、特にリポソームに入れて送達することができる(Langer, 1990, Science 249:1527-1533;Treatら,「感染性疾患および癌の治療法におけるリポソーム(Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer)」に収載, Lopez-Berestein and Fidler (編), Liss, New York, pp.353-365 (1989);Lopez-Berestein, 同上, pp.317-327を参照;全体として同上を参照)。
【0151】
さらに他の実施形態においては、化合物とその製薬上許容される塩を、制御放出系で送達することができる(例えば、Goodson,「制御放出の医学的応用(Medical Applications of Controlled Release)」に収載, 前掲 vol.2, pp.115-138 (1984)を参照)。Langer, 1990, Science 249:1527-1533の総説で考察されている他の制御放出系を利用してもよい。一実施形態においては、ポンプを利用することができる(Langer, 前掲;Sefton, 1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201;Buchwaldら, 1980, Surgery 88:507;Saudekら, 1989, N. Engl. J. Med. 321:574を参照)。他の実施形態においては、ポリマー材料を利用することができる(「制御放出の医学的応用(Medical Applications of Controlled Release)」, Langer and Wise (編), CRC Pres., Boca Raton, Florida (1974);「制御された薬物バイオアベイラビリティ、医薬品設計と成果(Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance)」, Smolen and Ball (編), Wiley, New York (1984);Ranger and Peppas, 1983, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61を参照;またLevyら, 1985, Science 228:190;Duringら, 1989, Ann. Neurol. 25:351;Howardら, 1989, J. Neurosurg. 71:105も参照)。さらに他の実施形態においては、制御放出系を、化合物またはその製薬上許容される塩の標的RNAに近接して配置し、全身用量と比べてわずかな量しか必要としないようにすることができる。
【0152】
化合物またはその製薬上許容される塩を含んでなる組成物(「化合物組成物」)はさらに、患者への適切な投与のための剤形を提供するように、適切な量の製薬上許容されるビヒクルを含んでもよい。
【0153】
特定の実施形態においては、用語「製薬上許容される」は、動物、哺乳類、そしてさらに特にヒトにおける使用について、連邦政府もしくは州政府の規制当局により承認されているかまたは米国薬局方または他の一般的に認められた薬局方に掲載されていることを意味する。用語「ビヒクル」は、本発明の化合物と一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、または担体を意味する。かかる製薬ビヒクルは、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などの、石油、動物、植物もしくは合成起源のものを含む水および油などの液体であってもよい。製薬ビヒクルは、生理食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素などであってもよい。さらに、補助剤、安定剤、増粘剤、滑沢剤および着色剤を使用してもよい。患者に投与するとき、製薬上許容されるビヒクルは好ましくは無菌である。本発明の化合物を静脈内に投与するときは、水が好ましいビヒクルである。生理食塩水ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液も、液体担体として、特に注射溶液として利用することができる。適当な製薬ビヒクルとしてはまた、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸リン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどの賦形剤が挙げられる。化合物組成物は、もし所望であれば、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含有してもよい。
【0154】
化合物組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、ピル、ペレット、カプセル、液を含有するカプセル、粉剤、徐放製剤、座薬、エマルジョン、エーロゾル、スプレー、懸濁液の剤形、または使用に適した他の剤形をとることができる。一実施形態においては、製薬上許容されるビヒクルはカプセルである(米国特許第5,698,155号を参照)。適当な製薬ビヒクルの他の例は、参照により本明細書に組み入れられる「レミントンの製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」, Alfonso R. Gennaro, 編, Mack Publishing Co. Easton, PA, 第19版, 1995, pp.1447〜1676に記載されている。
【0155】
好ましい実施形態においては、化合物またはその製薬上許容される塩を、日常的方法に従ってヒトに経口投与するように適合させた医薬組成物として製剤化する。経口送達用組成物は、例えば、錠剤、トローチ剤、水性もしくは油性懸濁剤、顆粒剤、粉剤、乳剤、カプセル剤、シロップ剤、またはエリキシル剤の剤形であってもよい。経口投与する組成物は、製剤上口当たりのよい調製物を提供するために、1種以上の薬剤、例えば、フラクトース、アスパルテーム、またはサッカリンなどの甘味剤;ペパーミント、ウインターグリーンオイル、またはチェリーなどの香料;着色剤;および保存剤を含有してもよい。さらに、錠剤またはピル剤形であれば、組成物を被覆して消化管内における崩壊および吸収を遅延させることにより長い時間にわたり作用が持続するようにしてもよい。浸透圧により能動的に推進する化合物を囲んだ選択的透過膜も、経口投与組成物に適している。これらの後者のプラットフォームにおいては、カプセルを囲む環境からの液体が推進化合物により吸収され、それは膨潤して薬剤または薬剤組成物を開口部を通して移動させる。これらの送達プラットフォームは、直接放出製剤のスパイクしたプロフィールとは反対に、本質的にゼロオーダーの送達プロフィールを提供することができる。モノステアリン酸グリセロールまたはステアリン酸グリセロールなどの時間遅延物質を使用してもよい。経口組成物としては、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準ビヒクルが挙げられる。かかるビヒクルは、製薬品質のものであることが好ましい。典型的には、静脈投与用組成物は無菌等張水性バッファーを含んでなる。もし必要であれば、組成物はまた可溶化剤を含んでもよい。
【0156】
他の実施形態においては、化合物またはその製薬上許容される塩を静脈投与用に製剤化することができる。静脈投与用組成物は場合によっては、注射部位の痛みを軽減するためにリグノカインなどの局部麻酔薬を含む。一般的に、その成分は、単位剤形で別々にまたは一緒に混合して、例えば、活性薬の量を示すアンプルまたは小袋などの密封した容器に入った乾燥凍結粉末または無水濃縮物として供給される。化合物またはその製薬上許容される塩を輸液により投与する場合、それを、例えば、無菌の製薬品質の水または生理食塩水を含有する輸液ボトルを用いて調剤してもよい。化合物またはその製薬上許容される塩を注射により投与する場合、無菌の注射用水または生理食塩水のアンプルを提供して、諸成分を混合した後に投与してもよい。
【0157】
特定の疾患の治療に有効でありうる化合物またはその製薬上許容される塩の量は、疾患の性質に依存し、また標準的な臨床技術により決定することができる。さらに、場合によっては、in vitroまたはin vivoアッセイを用いて最適な投与量範囲の決定の助けとしてもよい。採用する正確な用量はまた、投与経路および疾患の重篤度にも依存し、また医師の判断およびそれぞれの患者の状況に従って決定されるべきである。しかし、経口投与の適当な投与量範囲は、一般的に体重1キログラム当たり1日当たり約0.001ミリグラム〜約200ミリグラムの化合物またはその製薬上許容される塩である。本発明の特定の好ましい実施形態においては、経口用量は、体重1キログラム当たり1日当たり約0.01ミリグラム〜約100ミリグラム、さらに好ましくは、体重1キログラム当たり1日当たり約0.1ミリグラム〜約75ミリグラム、さらに好ましくは、体重1キログラム当たり1日当たり約0.5ミリグラム〜約5ミリグラムである。本明細書に記載の投与量は、投与される合計量を意味する。すなわち、1種以上の化合物を投与するか、または化合物を治療薬とともに投与する場合には、その好ましい投与量は投与される合計量に相当する。経口用組成物は、好ましくは重量で約10%〜約95%の活性成分を含有する。
【0158】
静脈内(i.v.)投与の適当な投与量範囲は、体重1キログラム当たり1日当たり約0.01ミリグラム〜約100ミリグラム、体重1キログラム当たり1日当たり約0.1ミリグラム〜約35ミリグラム、および体重1キログラム当たり1日当たり約1ミリグラム〜約10ミリグラムである。鼻腔内投与の適当な投与量範囲は、一般的に体重1キログラム当たり1日当たり約0.01pg〜約1mgである。座剤は、一般的に体重1キログラム当たり1日当たり約0.01ミリグラム〜約50ミリグラムの本発明の化合物を含有しかつ活性成分を重量で約0.5%〜約10%の範囲で含有する。
【0159】
皮内、筋肉内、腹腔内、皮下、硬膜外、舌下、脳内、膣内、経皮投与または吸入による投与のための推奨投与量は、体重1キログラム当たり1日当たり約0.001ミリグラム〜約200ミリグラムの範囲である。局所投与用の適当な用量は、投与面積に依存して、約0.001ミリグラム〜約1ミリグラムの範囲である。有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験系から得られた用量応答曲線から外挿することができる。かかる動物モデルおよび系は当技術分野では周知である。
【0160】
化合物とその製薬上許容される塩は、ヒトでの使用に先立って、所望の治療または予防活性について、好ましくはin vitroおよびin vivoでアッセイする。例えば、in vitroアッセイを利用して、化合物、その製薬上許容される塩、および/または他の治療薬を投与することが好ましいかどうかを確認する。動物モデル系を利用して安全性と有効性を実証してもよい。
【0161】
様々な化合物を利用して哺乳類動物の疾患を治療または予防することができる。化合物のタイプとしては、限定されるものでないが、ペプチド、非天然アミノ酸(例えばD-アミノ酸、α-アミノホスホン酸およびα-アミノホスフィン酸などのアミノ酸のリン類似体、または非ペプチド結合を有するアミノ酸を含む)を含有するペプチドを含むペプチド類似体、核酸、ホスホロチオアートもしくはペプチド核酸(「PNA」)などの核酸類似体、ホルモン、抗原、合成もしくは天然薬物、オピエート、ドーパミン、セロトニン、カテコールアミン、トロンビン、アセチルコリン、プロスタグランジン、有機分子、フェロモン、アデノシン、スクロース、グルコース、ラクトースならびにガラクトースが挙げられる。
【実施例】
【0162】
6. 実施例:治療標的
本明細書に報じた治療標的は例示であって、本発明は本明細書に記載した標的により限定されるものでない。本明細書にDNA配列として報じられた治療標的がRNA配列に変換されうることは、当業者により理解される。
【0163】
6.1. 腫瘍壊死因子α(「 TNF- α」)
GenBankアクセッション番号X01394:
(配列番号6)
【0164】
一般標的領域:
(1) 5'非翻訳領域-nts 1-152
(2) 3'非翻訳領域-nts 852-1643
初期特異的標的モチーフ:
3'非翻訳領域のグループI AU-リッチエレメント(ARE)クラスター
5' AUUUAUUUAUUUAUUUAUUUA 3'(配列番号1)
6.2. 顆粒球 - マクロファージコロニー刺激因子(「 GM-CSF 」)
GenBankアクセッション番号NM_000758:
(配列番号7)
【0165】
GenBankアクセッション番号XM_003751:
(配列番号8)
【0166】
一般標的領域:
(1) 5'非翻訳領域-nts 1-32
(2) 3'非翻訳領域-nts 468-78
初期特異的標的モチーフ:
3'非翻訳領域のグループIAU-リッチエレメント(ARE)クラスター
5' AUUUAUUUAUUUAUUUAUUUA 3'(配列番号1)
6.3. インターロイキン2(「 IL-2 」)
GenBankアクセッション番号U25676:
(配列番号9)
【0167】
一般標的領域:
(1) 5'非翻訳領域-nts 1-47
(2) 3'非翻訳領域-nts 519-825
初期特異的標的モチーフ:
3'非翻訳領域のグループIII AU-リッチエレメント(ARE)クラスター
5'NAUUUAUUUAUUUAN 3' (配列番号10)
6.4. インターロイキン6(「 IL-6 」)
GenBankアクセッション番号NM_000600:
(配列番号11)
【0168】
一般標的領域:
(1) 5'非翻訳領域-nts 1-62
(2) 3'非翻訳領域-nts 699-1125
初期特異的標的モチーフ:
3'非翻訳領域のグループIIIAU-リッチエレメント(ARE)クラスター
5'NAUUUAUUUAUUUAN 3' (配列番号10)
6.5. 血管内皮増殖因子(「 VEGF 」)
GenBankアクセッション番号AF022375:
(配列番号12)
【0169】
一般標的領域:
(1) 5'非翻訳領域-nts 1-701
(2) 3'非翻訳領域-nts 1275-3166
初期特異的標的モチーフ:
(1) 5'非翻訳領域 nts 513-704中の内部リボソームエントリー部位(IRES)
(配列番号13)
【0170】
(2) 3'非翻訳領域のグループIII AU-リッチエレメント(ARE)クラスター
5'NAUUUAUUUAUUUAN 3' (配列番号10)
6.6. ヒト免疫不全ウイルス(「 HIV-1 」)
GenBankアクセッション番号NC_001802:
(配列番号14)
【0171】
初期特異的標的モチーフ:
(1) トランス活性化応答領域/Tatタンパク質結合部位-TAR RNA-nts 1-60
「最小限」TAR RNA エレメント
5' GGCAGAUCUGAGCCUGGGAGCUCUCUGCC 3'(配列番号15)
(2) Gag/Polフレームシフト部位-「最小限」フレームシフト エレメント
5' UUUUUUAGGGAAGAUCUGGCCUUCCUACAAGGGAAGGCCAGGGAAUUUUCUU 3'(配列番号16)
6.7. C型肝炎ウイルス(「 HCV 」 - 遺伝子型 la および lb )
GenBankアクセッション番号NC_001433:
(配列番号17)
【0172】
一般標的領域:
5'非翻訳領域nts 1-328 - 内部リボソームエントリー部位(IRES)
(配列番号18)
【0173】
初期特異的標的モチーフ:
(1) HCV IRES内のサブドメインIIIc-nts 213-226
5'AUUUGGGCGUGCCC3'(配列番号19)
(2) HCV IRES内のサブドメインIIId-nts 241-267
5'GCCGAGUAGUGUUGGGUCGCGAAAGGC3'(配列番号20)
6.8. リボヌクレアーゼP RNA (「 RN アーゼ P 」)
GenBankアクセッション番号
X15624 ホモサピエンス(Homo sapiens)RNアーゼP H1 RNA:
(配列番号21)
【0174】
U64885 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)RNアーゼP(rrnB)RNA:
(配列番号22)
【0175】
M17569 大腸菌(Escherichia coli)リボヌクレアーゼP(rnpB)遺伝子のRNA成分(M1 RNA):
(配列番号23)
【0176】
Z70692 ヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)RNアーゼP(rnpB)RNA:
(配列番号24)
【0177】
6.9. アポトーシスタンパク質のX連鎖インヒビター(「 XIAP 」)
GenBankアクセッション番号U45880:
(配列番号25)
【0178】
一般標的領域:
5'非翻訳領域の内部リボソームエントリー部位(IRES):
(配列番号26)
【0179】
初期特異的標的モチーフ:
XIAP IRES内のRNPコア結合部位
5'GGAUUUCCUAAUAUAAUGUUCUCUUUUU3'(配列番号27)
6.10. サービビン( Survivin )
GenBankアクセッション番号NM_001168:
(配列番号28)
【0180】
7. 実施例:低分子量化合物と結合した染料標識標的 RNA の同定
本実施例に報じた結果は、ゲル移動度シフトアッセイ(gel mobility shift assay)を利用してTatペプチドおよびゲンタマイシンなどの小分子とそれらのそれぞれの標的RNAとの結合を検出できるのを示す。
【0181】
7.1. 材料および方法
7.1.1. バッファー
トリス-塩化カリウム(TK)バッファーは、50mM トリス-HCl pH7.4、20mM KC1、0.1%Triton X-100、および0.5mM MgCl2からなる。トリス-ホウ酸-EDTA(TBE)バッファーは、45mM トリス-ホウ酸 pH 8.0、および1mM EDTAからなる。トリス-塩化カリウムマグネシウム(TKM)バッファーは、50mM トリス-HCl pH7.4、20mM KC1、0.1% Triton X-100および5mM MgCl2からなる。
【0182】
7.1.1. ゲルシフト分析( gel retardation analysis )
RNAオリゴヌクレオチドは、Dharmacon Inc.(Lafayette, CO)から購入した。5'フルオレセイン標識した16S rRNA A部位に対応するオリゴヌクレオチド(5'-GGCGUCACACCUUCGGGUGAAGUCGCC-3'(配列番号29);Moazed & Noller, 1987, Nature 327:389-394;Woodcockら, 1991, EMBO J. 10:3099-3103;Yoshizawaら, 1998, EMBO J. 17:6437-6448)、または5'フルオレセイン標識したHIV-1 TARエレメントTAR RNAに対応するオリゴヌクレオチド(5'-GGCGUCACACCUUCGGGUGAAGUCGCC-3'(配列番号30);Huqら, 1999, Nucleic Acids Research. 27:1084-1093;Hwangら, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:12997-13002)のいずれかの500 pmolを、5'-32Pシチジン3',5'-二リン酸(NEN)およびT4 RNAリガーゼ(NEBiolabs)を用いて10%DMSO中で、製造業者の指示の通り、3'標識した。標識したオリゴヌクレオチドを、G-25 セファデックス(Sephadex)カラム(Boehringer Mannheim)を用いて精製した。Tat-TARゲルシフト反応(gel retardation reaction)については、Huqらの方法(Nucleic Acids Research, 1999,27:1084-1093)を利用し、0.5mM MgCl2および12量体のTatペプチド(YGRKKRRQRRRP(配列番号31);一文字アミノ酸コード)を含有するTKバッファーを用いた。16S rRNA-ゲンタマイシン反応については、Huqらの方法を利用し、TKMバッファーを用いた。20μl反応容積内で、32Pシチジン標識したオリゴヌクレオチド50pmolと硫酸ゲンタマイシン(Sigma)または短かいTatペプチド(Tat47-58)をTKまたはTKMバッファー中で90℃にて2分間加熱し、そして室温(ほぼ24℃)にて2時間にわたって冷却させた。次いで、30%グリセロール10μlをそれぞれの反応チューブに加え、そして全サンプルをTBE非変性ポリアクリルアミドゲル上に供給し、1200-1600ボルト-時間、4℃にて電気泳動した。ゲルを増感スクリーンに曝し、放射能をTyphoonホスホルイメージャー(Molecular Dynamics)を用いて定量した。
【0183】
7.2. 背景
小分子とリボソームなどの天然RNA構造との相互作用を実証するために利用される1つの方法は、化学フットプリントまたはトウプリント(toe printing)と呼ばれる方法である(Moazed & Noller, 1987, Nature 327:389-394;Woodcockら, 1991, EMBO J. 10:3099-3103;Yoshizawaら, 1998, EMBO J. 17:6437-6448)。本明細書では、RNA-小分子相互作用をモニターするための、ゲル移動度シフトアッセイの利用を記載する。この手法は、RNA単独と小分子-RNA複合体とを対比してその移動度の差に基づいて、小分子-RNA相互作用の高速可視化を可能にする。この手法を確証するために、よく特性決定されている16S rRNA上のゲンタマイシン結合部位に対応するRNAオリゴヌクレオチド(Moazed & Noller, 1987, Nature 327 :389-394)および同じくよく特性決定されているHIV-1 TAR エレメント上のHIV-1 TAT タンパク質結合部位(Huqら, 1999, Nucleic Acids Res. 27:1084-1093)を選んだ。これらの実験の目的は、薬物発見のためにマイクロキャピラリー電気泳動などのハイスループット方式のクロマトグラフィ技術を利用する基礎を築くことにある。
【0184】
7.3. 結果
ゲルシフトアッセイを、Tat47-58ペプチドおよびTAR RNAオリゴヌクレオチドを用いて実施した。図1に示したように、生成物を12%非変性ポリアクリルアミドゲル上で分離すると、Tatペプチドの存在のもとでは明確なシフトが見られる。ペプチドを欠く反応では、遊離RNAだけが見られる。これらの観察は、他のTatペプチドを用いて行われた今までの報告を確認するものである(Hamyら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:3548-3553;Huqら, 1999, Nucleic Acids Res. 27:1084-1093)。
【0185】
図1の結果に基づいて、小分子とのRNA相互作用も、この方法を用いて可視化しうるという仮説をたてた。図2に示したように、様々な濃度のゲンタマイシンを16S rRNA A部位に対応するRNAオリゴヌクレオチドに添加すると、移動度シフトを生じる。これらの結果は、小分子ゲンタマイシンの溶液中の規定された構造を有するRNAオリゴヌクレオチドとの結合は、この手法を利用してモニターできることを実証する。さらに、図2に示したように、10ng/mlの低いゲンタマイシンの濃度が移動度シフトを生じる。
【0186】
さらに低い濃度のゲンタマイシンでもゲルシフトを生じるのに十分であるかどうかを確認するために、ゲンタマイシンの濃度が100ng/ml〜10pg/mlの範囲であることを除くと図2に示したのと同様である実験を実施した。図3に示したように、ゲル移動度シフトは、ゲンタマイシン濃度が10pg/mlまで低いときでも生じる。さらに、図3に示した結果はシフトが16S rRNAオリゴヌクレオチドに特異的であることを実証し、HIV TAR RNAエレメントに対応する無関係なオリゴヌクレオチドを使用すると10pg/mlゲンタマイシンとインキュベートしてもゲル移動度シフトを生じない。さらに、もし10pg/mlの低濃度のゲンタマイシンがゲル移動度シフトを生じるのであれば、少量の化合物を多様な化合物のライブラリーからこの方式でスクリーニングすると、RNA構造モチーフに対する変化を検出することが可能であるに違いない。
【0187】
ゲンタマイシン-RNA相互作用のさらなる解析は、相互作用がMgおよび温度に依存性であることを示した。図4に示したように、MgCl2が存在しないとき(TK バッファー)、ゲルシフトを生じるためには、反応液に1mg/mlのゲンタマイシンを加えなければならない。
【0188】
同様に、ゲンタマイシンを加えるときの反応温度も重要である。変性/再生サイクル全体においてゲンタマイシンが反応液に存在すると、すなわち、ゲンタマイシンを90℃または85℃に加えると、ゲルシフトが見られる(データは示してない)。対照的に、ゲンタマイシンを再生ステップが75℃まで進行した後に加えると、移動度シフトは生じない。これらの結果は、ゲンタマイシンが再生プロセスの初期に形成されるRNA構造を認識しかつそれと相互作用しうるという考えと一致する。
【0189】
8. 実施例:キャピラリー電気泳動による、小分子化合物と結合した染料標識標的 RNA の同定
本実施例に報じた結果は、TatペプチドとTAR RNAのようなペプチドとその標的RNAの間の相互作用は、自動キャピラリー電気泳動システムのゲルシフトアッセイによりモニターすることができることを示す。
【0190】
8.1. 材料と方法
8.1.1. バッファー
トリス-塩化カリウム(TK)バッファーは、50mM トリス-HCl pH7.4、20mM KC1、0.1% Triton X-100、および0.5mM MgCl2からなる。トリス-ホウ酸-EDTA(TBE)バッファーは、45mM トリス-ホウ酸 pH 8.0、および1mM EDTAからなる。トリス-塩化カリウムマグネシウム(TKM)バッファーは、50mM トリス-HCl pH7.4、20mM KC1、0.1% Triton X-100および5mM MgCl2からなる。
【0191】
8.1.1. キャピラリー電気泳動を用いるゲルシフト分析
RNAオリゴヌクレオチドは、Dharmacon Inc.(Lafayette, CO)から購入した。5'フルオレセイン標識したHIV-1 TARエレメントTAR RNA(5'-GGCGUCACACCUUCGGGUGAAGUCGCC-3'(配列番号30);Huqら, 1999, Nucleic Acids Research. 27:1084-1093;Hwangら, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:12997-13002)に対応するオリゴヌクレオチド500pmolを用いた。Tat-TARゲルシフト反応については、Huqらの方法(Nucleic Acids Research, 1999,27:1084-1093)を利用し、0.5mM MgCl2および12量体のTatペプチド(YGRKKRRQRRRP(配列番号31);一文字アミノ酸コード)を含有するTKバッファーを用いた。20μl反応容積内で、標識したオリゴヌクレオチド50pmolと短かいTatペプチド(Tat47-58)とをTKまたはTKMバッファー中で90℃にて2分間加熱し、そして室温(ほぼ24℃)に2時間にわたって冷却させた。反応液をSCE9610自動キャピラリー電気泳動装置(SpectruMedix; State College, Pennsylvania)上に供給した。
【0192】
8.2. 結果
先の第7節の実施例において報じたように、ペプチドとRNAとの間の相互作用は、ゲルシフトアッセイによりモニターすることができる。ペプチドとRNAとの間の相互作用は、ゲルシフトアッセイにより自動キャピラリー電気泳動システムによりモニターしうるという仮説をたてた。この仮説を試験するために、自動キャピラリー電気泳動システムによるゲルシフトアッセイを、Tat47-58ペプチドとTAR RNAオリゴヌクレオチドを用いて実施した。図5に示したように、Tatペプチドの存在のもとでキャピラリー電気泳動システムを用いて、添加するTatペプチドの濃度が増加すると明確なシフトが見られる。ペプチドを欠く反応物においては、遊離RNAに対応するピークだけが観察される。これらの観察は、Tatペプチドを用いて行われた今までの報告を確証した(Hamyら, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:3548-3553;Huqら, 1999, Nucleic Acids Res. 27:1084-1093)。
【0193】
本発明は本明細書に記載の特定の実施例により範囲が限定されるものでない。実際、当業者には、これらの記載に加えて上記の説明と添付図面から、本発明の様々な改変が明らかであろう。かかる改変は添付した請求の範囲内に入ると意図している。
【0194】
様々な出版物を本明細書に引用したが、これらの開示は参照によりその全文が組み入れられる
本発明は以下の番号を付したパラグラフに挙げられた次の実施形態により説明することができる。
【0195】
1. 標的RNA分子と結合する試験化合物を同定する方法であって、(a)検出可能に標識された標的RNA分子と試験化合物のライブラリーを、標識された標的RNAと試験化合物のライブラリーのメンバーとの直接結合を可能にする条件下で接触させて、検出可能に標識された標的RNA:試験化合物複合体を形成するステップ;(b)ステップ(a)において形成した検出可能に標識された標的RNA:試験化合物複合体を、複合体形成していない標的RNA分子および試験化合物から分離するステップ;ならびに(c)RNA:試験化合物複合体中のRNAと結合した試験化合物の構造を決定するステップを含んでなる前記方法。
【0196】
2. 標的RNA分子がHIV TARエレメント、内部リボソームエントリー部位、「スリッパリー部位」、不安定性エレメント、またはアデニル酸ウリジル酸リッチエレメントを含有する、パラグラフ1の方法。
【0197】
3. RNA分子が、腫瘍壊死因子α(「TNF-α」)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、インターロイキン2(「IL-2」)、インターロイキン6(「IL-6」)、血管内皮増殖因子(「VEGF」)、ヒト免疫不全ウイルスI(「HIV-1」)、C型肝炎ウイルス(「HCV」-遺伝子型1aおよび1b)、リボヌクレアーゼP RNA(「RNアーゼP」)、アポトーシスタンパク質のX連鎖インヒビター(「XIAP」)、またはサービビンに対するmRNAから誘導されたエレメントである、パラグラフ1の方法。
【0198】
4. 検出可能に標識されたRNAが蛍光染料、リン光染料、紫外染料、赤外染料、可視染料、放射能標識、酵素、分光比色標識、アフィニティタグ、またはナノ粒子を用いて標識された、パラグラフ1の方法。
【0199】
5. 試験化合物がペプトイド;ランダムバイオオリゴマー;ヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチドなどのダイバーソマー(diversomer);ビニログポリペプチド;非ペプチド性ペプチドミメチック;オリゴカーバメート;ペプチジルホスホネート;ペプチド核酸ライブラリー;抗体ライブラリー;または炭水化物ライブラリー;ならびに、限定されるものでないが、ベンゾジアゼピン、イソプレノイド、チアゾリジノン、メタチアザノン、ピロリジン、モルホリノ化合物、またはジアゼピンジオンなどのライブラリーを含む小有機分子ライブラリーを含んでなるコンビナトリアルライブラリーから選択される、パラグラフ1の方法。
【0200】
6. 試験化合物のライブラリーのスクリーニングが、試験化合物を、好ましくは生理条件を近似するかまたは模倣するバッファーと塩類の組み合わせを含む水溶液の存在のもとで標的核酸と接触させることを含んでなる、パラグラフ1の方法。
【0201】
7. 前記水溶液が場合によってはさらに、DNA、酵母tRNA、サケ***DNA、ホモリボポリマー、および非特異的RNAを含む非特異的核酸を含んでなる、パラグラフ6の方法。
【0202】
8. 前記水溶液がさらにバッファー、塩類の組み合わせ、および場合によっては、洗剤または界面活性剤を含んでなる、パラグラフ6の方法。他の実施形態においては、前記水溶液はさらに、約0mM〜約100mM KCl、約0mM〜約1M NaCl、および約0mM〜約200mM MgCl2の塩類の組み合わせを含んでなる。好ましい実施形態においては、塩類の組み合わせは約100mM KCl、約500mM NaCl、および約10mM MgCl2である。他の実施形態においては、前記溶液は、場合によっては、約0.01%〜約0.5%(w/v)の洗剤または界面活性剤を含んでなる。
【0203】
9. 試験化合物と複合体形成した標的核酸の物理的特性の非結合標的核酸からの改変を検出するいずれの方法を利用して、パラグラフ1の方法における複合体形成した標的核酸と複合体形成していない標的核酸の分離を行ってもよい。好ましい実施形態においては、電気泳動を利用して複合体形成した標的核酸と複合体形成していない標的核酸の分離を行う。好ましい実施形態においては、電気泳動は、キャピラリー電気泳動である。他の実施形態においては、蛍光分光法、表面プラズモン共鳴、質量分析、シンチレーション近接アッセイ、NMR分光法による構造活性相関(「SAR」)、サイズ排除クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、およびナノ粒子凝集を利用して複合体形成した標的核酸と複合体形成していない標的核酸の分離を行う。
【0204】
10. パラグラフ1のRNA:試験化合物複合体の試験化合物の構造を、部分的に、試験化合物のライブラリーのタイプにより決定する。コンビナトリアルライブラリーが小有機分子ライブラリーである好ましい実施形態においては、質量分析、NMR、または振動分光法を利用して試験化合物の構造を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】図1は、ペプチド-RNA相互作用を検出するためのゲルシフト分析を示す。TKバッファー中で、増加する濃度(0.1μM、0.2μM、0.4μM、0.8μM、1.6μM)のTat47-58ペプチドを含有する20μl反応液に、50pmol TAR RNAオリゴヌクレオチドを加えた。次いで反応混合物を90℃にて2分間加熱し、徐々に24℃まで冷却した。30%グリセロール10mlをそれぞれのサンプルに加え、12%無変性ポリアクリルアミドゲルに適用した。ゲルをTBEバッファー中で4℃にて1200ボルト-時間の条件で電気泳動した。電気泳動の後に、ゲルを乾燥しかつ放射能をホスホルイメージャーを用いて定量した。加えたペプチドの濃度をそれぞれのレーンの上方に示した。
【図2】図2は、ゲンタマイシンが16S rRNAに対応するオリゴヌクレオチドと相互作用することを示す。TKMバッファー中で、増加する濃度(1ng/ml、10ng/ml、100ng/ml、1μg/ml、10μg/ml、50μg/ml、500μg/ml)のゲンタマイシンを含有する20μl反応液を、RNAオリゴヌクレオチド50pmolに加え、90℃にて2分間加熱し、徐々に24℃まで冷却した。次いで30%グリセロール10mlをそれぞれのサンプルに加え、13.5%無変性ポリアクリルアミドゲルに適用した。ゲルをTBEバッファー中で4℃にて1200ボルト-時間の条件で電気泳動した。電気泳動の後に、ゲルを乾燥しかつ放射能をホスホルイメージャーを用いて定量した。加えたゲンタマイシンの濃度をそれぞれのレーンの上方に示した。
【図3】図3は、ゲンタマイシン10pg/mlの存在が16S rRNAオリゴヌクレオチドの存在でのゲル移動度シフトを生じることを示す。増加する濃度(100ng/ml、10ng/ml、1ng/ml、100pg/ml、および10pg/ml)のゲンタマイシンを含有する20μl反応液を、TKMバッファー中のRNAオリゴヌクレオチド50pmolに加え、図2に記載のように処理した。
【図4】図4は、MgCl2の不在のもとでは、ゲンタマイシンと16S rRNAオリゴヌクレオチドとの結合が弱いことを示す。ゲンタマイシン(1mg/ml、100μg/ml、10μg/ml、1μg/ml、0.1μg/ml、および10ng/ml)を含有する反応混合物を、TKMバッファーがMgCl2を含有しないことを除いて、図2に記載したように処理した。
【図5】図5は、ペプチド-RNA相互作用を検出するためのゲルシフト分析である。TKバッファー中で、増加する濃度(0.1μM、0.2μM、0.4μM、0.8μM、1.6μM)のTat47-58ペプチドを含有する反応液に、TAR RNAオリゴヌクレオチド50pmolを加えた。次いで反応混合物を90℃にて2分間加熱し、徐々に24℃まで冷却した。反応液をSCE9610自動キャピラリー電気泳動装置(SpectruMedix;State College、Pennsylvania)に供給した。ピークは遊離TAR RNA(「TAR」)またはTat-TAR複合体(「Tat-TAR」)の量に対応する。加えたペプチドの濃度をそれぞれのレーンの下方に示した。
Claims (1)
- 標的RNA分子と結合する試験化合物を同定する方法であって、
(a) 検出可能に標識された標的RNA分子と試験化合物のライブラリーを、標識された標的RNAと試験化合物のライブラリーのメンバーとの直接結合を可能にする条件下で接触させて、検出可能に標識された標的RNA:試験化合物複合体を形成するステップ;
(b) ステップ(a)において形成した検出可能に標識された標的RNA:試験化合物複合体を、複合体形成していない標的RNA分子および試験化合物からキャピラリーゲル電気泳動により分離するステップ;ならびに
(c) RNA:試験化合物複合体中のRNAと結合した試験化合物の構造を質量分光法により決定するステップを含んでなる前記方法。
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