JP2004535776A - ラット毒性関連遺伝子及びその使用 - Google Patents

ラット毒性関連遺伝子及びその使用 Download PDF

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ヒッケン、サミュエル、エイチ
ファー、スペンサー、ビー
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フェイズ − 1 モレキュラー トクシコロジー、インコーポレイテッド
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Abstract

本発明は、毒性学的応答を決定するのに有用である一組の毒性学的に関連あるラット遺伝子を提供する。

Description

【技術分野】
【0001】
本願は、2001年1月29日及び2001年7月26日にそれぞれ出願された米国仮出願第60/264,933号及び第60/308,161号の優先権を主張するものであり、これらを共に参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、毒性学の分野に関する。より詳細には本発明は、様々な作用物質に対する毒性学的応答を評価するのに有用な、1組のラット遺伝子配列を提供する。
【背景技術】
【0003】
毎年、多くの新たな薬物及び化合物が発見され、生成され、公有財産として取り入れられている。米国食品医薬品局(FDA)により示された指針では、新たな薬物又は化合物のヒトに対する使用を認可する前に、毒性試験を実施することを求めている。毒性学的試験は薬物開発の重要な部分であるが、毒性試験は従来から、動物モデルとヒトの両方を使用した長期にわたる臨床試験を必要とし、実施にかかるコストがかなり頻繁に高くなる。ラットを用いた2年間にわたる毒性試験は、約800,000ドルかかる可能性がある。例えば、Casarett及びDoullの毒性学(Casarett and Doull’s Toxicology)、第4版、M.O.Amdur他編、Pergamon Press、ニューヨーク、N.Y.第37頁(1991)を参照されたい。さらに、コンビナトリアルケミカルライブラリーのハイスループットスクリーニングから得られた非常に多くの化合物があるので、従来の毒性学試験は、薬物又は化合物の毒性を評価するのにもはや十分ではない。さらに、従来の毒性学的方法では、毒性の分子メカニズムがほとんど明らかにされず、動物モデルからの毒性の結果をヒトに当てはめて推定することが困難である。さらに、従来の毒性方法では、薬物の開発の次の段階及び発売後にしばしば非常に数多くの不首尾が生じている。
【0004】
近年、薬物又は化合物に対する毒性学的応答を、例えば差次的遺伝子発現などの分子レベルで調査する、新たな分野の毒性遺伝学が台頭してきた。毒性遺伝学の1つの主な焦点は、化学又は環境ストレスに対する応答として誘発される差次的遺伝子発現の研究である。ほとんどの応用毒性学試験の1つの主な目的は、薬物又はその他の環境要因に曝されることで損傷をうけた1つ又は複数の器官、1つ又は複数の系を識別することである。いくつかの主な毒性標的の器官の例には、肝臓、腎臓、膵臓、心臓、肺、脳、胸腺、及び視床下部が含まれるが、これらに限定されない。主な毒性標的の系の例には、免疫系、神経系、消化器系、及び循環系が含まれるが、これらに限定されない。遺伝子発現のパターンを調べることによって、毒性学者は化学物性毒性の基本的なメカニズムを非常に詳細に知ることができる。さらに、遺伝子発現を測定することにより、健康上のリスクがほとんどない閾値濃度を特定することが可能である。
【0005】
毒性を決定するためのいくつかの方法及びキットが報告されている。例えば、WO00/47761、米国特許第5,585,232号、第5,589,337号、及び第5,811,231号と、係属中の米国仮特許出願第60/220,057号、及び第60/254,232号を参照されたい。しかし毒性遺伝学によって、器官及び系の毒性メカニズムをよりよく理解できるようになり、労力及び時間をさらに費やして検出する前に、有害な結果を予測することが容易になった。器官レベルで明らかにされる毒性が、関連する遺伝子の発現の変化によってもたらされる場合、遺伝子発現の変化の検出は、次に生ずる有害な結果を早期に警告する役割を果たすことができる。遺伝子発現の変化は、その結果が器官又は系に現れるまで、数週間、数カ月、又は数年もかかる。早期の遺伝子発現の変化と遅れて現れる毒性との間に因果関係があることが示される限り、遅れて顕在化する毒性の観察に対する依存度を、遺伝子発現の変化を測定することによって低減することができる。毒性遺伝学により分子のメカニズムをよりよく理解することで、動物モデルからヒトへの、またin vitro系からin vivo状態への予測精度も改善することができる。毒性学に対する分子による手法では、時間、金、及び動物資源を節約することができる。
【0006】
分子及び組換え技術の出現に伴い、遺伝子及び分子の分析により、毒性を測定することができる別の方法が提供される。差次的遺伝子発現の技術は、様々な刺激に曝された細胞の遺伝子発現の変化を検出することを含む。この刺激は、増殖因子、受容体−リガンド結合、転写因子、又は薬物や化学物質、医薬品化合物などの外来因子の形をとるものでよい。
【0007】
差次的遺伝子発現を検出するためのいくつかの方法が報告されている。ある方法では、例えば完全長cDNAが正確に配列決定されている遺伝子や、ランダムcDNAクローンのハイスループットシングルパス配列決定によって規定される遺伝子を含む、ポリヌクレオチドアレイを使用して、発現配列タグ(EST)を生成する。個々のmRNAの発現の変化を検出することに焦点を当てる研究者は、遺伝子発現の変化を検出するのに種々の方法、例えばマイクロアレイやゲル電気泳動法などを使用することができる。その他の方法は、タグを画定し差次的に発現した遺伝の検出を試みるために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び/又は逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を使用することに焦点を当てていた。多くのグループは、種々の組織で遺伝子発現を比較するのに使用できると考えられるmRNA配列タグのデータベースを確立するために、PCR法を使用してきた(Williams,J.G.K.、Nucl.Acids Res.18:6531、1990;Welsh,J.他、Nucl.Acids Res.、18:7213、1990;Woodward,S.R.、Mamm.Genome、3:73、1992;Nadeau,J.H.、Mamm.Genome 3:55、1992)。この方法は、mRNAディフェレンシャルディスプレイ法と呼ばれるプロセスでmRNA集団を比較するのにも応用されている。
【0008】
薬物や化学物質などの刺激に曝された細胞又は組織からmRNAを単離し、ゲル電気泳動法により発現を分析するプロセスは、労力を要し冗長なものとなる可能性がある。その目的のために、マイクロアレイの技術により、差次的遺伝子発現を検出する、より速くより効率的な方法が提供される。マイクロアレイによる差次的遺伝子発現の分析は、基質に固定化したヌクレオチドを必要とし、刺激に曝された細胞からのヌクレオチドを固定化したヌクレオチドに接触させてハイブリダイゼーションパターンを生成することができる。このマイクロアレイ技術は、分泌及び膜関連遺伝子生成物の検出、癌に関する薬理学的情報の収集、熱帯熱マラリア原虫によるマラリアでの段階特異的な遺伝子発現、真核生物での翻訳生成物、及びいくつかのその他の科学的調査に使用されてきた。例えば、Diehn M他のNat Genet.25(1):58〜62(1993);Scherf,U.他のNat Genet.24(3)236〜44(1993);Heyward,R.E.他のMol Microbiol 35(1):6〜14(1993);Johannes G.他のProc Natl Acad Sci USA 96(23)13118〜23(1993)を参照されたい。マイクロアレイ技術は、ヒト型結核菌での遺伝子発現において、薬物で誘発される変化について調査するのにも使用されてきた。例えばWilson M.他のProc Natl Acad Sci.96(22):12833〜8(1999)を参照されたい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
素早く効率的で費用効果があり大量の毒性学的データを生成することができ、実験室での試験に用いられる多くの動物を節約することのできる方法が求められている。また、試験される作用物質と毒性学的に関連があり、細胞、器官、又は系レベルの毒性を予測することのできる遺伝子を、効果的に選択する方法も求められている。また、試験される1種又は複数の作用物質に関する情報を得ることができ、その作用物質が特定の器官又は系にどのように影響するかという情報を得ることができる毒性学的情報データベースと、毒性学的に関連ある遺伝子を特定し、作用物質と標的遺伝子との間の相関する毒性を特定するのに使用できるアルゴリズムも求められている。
【0010】
分子毒性学的分析又は毒性遺伝学は、毒性学的分析に有用と考えられる毒性学的応答データの収集から、データベースの形で莫大な量の情報を提供することができる。本明細書に示される本発明及びその実施形態は、前述の必要性を満たすものである。
【0011】
本明細書で引用した全ての特許、特許出願、及び刊行物の開示は、その全体を参照により本明細書に援用する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、毒性応答遺伝子とその使用を提供する。
【0013】
一態様で、本発明は、(a)作用物質に試験動物を曝すこと、(b)その作用物質に応答する、試験動物における表6、7、8、9、及び10の部分遺伝子配列に対応する遺伝子から選択された1つ又は複数の毒性応答遺伝子の発現を測定し、それによって試験発現プロファイルを生成すること、及び(c)試験発現プロファイルと、毒性を示す参照発現プロファイルとを比較することによって作用物質の毒性を評価する方法であって、試験発現プロファイルと参照発現プロファイルとの間に有意な相関関係が存在するかどうかを決定することによりその作用物質の毒性を評価する方法を提供する。一実施形態で、部分遺伝子配列に対応する遺伝子の群は、腎臓、肝臓、脾臓、心臓、肺、精巣、又は脳で応答する。別の実施形態で、試験動物はラット、イヌ、ヒト以外の霊長類、又はヒトである。別の実施形態で、作用物質は、様々な用量で又は様々な時間で投与される。
【0014】
別の態様で、本発明は、(a)作用物質に試験動物を曝すこと、(b)その作用物質に応答する、試験動物における表6、7、及び8の部分遺伝子配列に対応する遺伝子から選択された1つ又は複数の毒性応答遺伝子の発現を測定し、それによって試験発現プロファイルを生成すること、及び(c)試験発現プロファイルと、毒性を示す参照発現プロファイルとを比較することによって作用物質の毒性を評価する方法であって、試験発現プロファイルと参照発現プロファイルとの間に有意な相関関係が存在するかどうかを決定することによりその作用物質の毒性を評価する方法を提供する。一実施形態で、部分遺伝子配列に対応する遺伝子の群は、腎臓、肝臓、脾臓、心臓、肺、精巣、又は脳で応答する。別の実施形態で、試験動物はラット、イヌ、ヒト以外の霊長類、又はヒトである。別の実施形態で、作用物質は、様々な用量で又は様々な時間で投与される。
【0015】
別の態様で、本発明は、(a)作用物質に試験動物を曝すこと、(b)その作用物質に応答する、試験動物における表4の部分遺伝子配列に対応する遺伝子から選択された1つ又は複数の毒性応答遺伝子の発現を測定し、それによって試験発現プロファイルを生成すること、及び(c)試験発現プロファイルと、毒性を示す参照発現プロファイルとを比較することによって作用物質の毒性を評価する方法であって、試験発現プロファイルと参照発現プロファイルとの間に有意な相関関係が存在するかどうかを決定することによりその作用物質の毒性を評価する方法を提供する。一実施形態で、毒性学的に関連のある遺伝子の組は、少なくとも25個の遺伝子からなる。別の実施形態で、毒性学的に関連のある遺伝子の組は、少なくとも50個の遺伝子からなる。別の実施形態で、毒性学的に関連のある遺伝子の組は、少なくとも100個の遺伝子からなる。
【0016】
別の態様で、本発明は、表6、7、8、9、及び10の部分遺伝子配列に対応する遺伝子又はその少なくとも20ヌクレオチドの断片から選択された、1つ又は複数のポリヌクレオチドを含むアレイを提供する。一実施形態で、部分遺伝子配列に対応する遺伝子の群は、腎臓、肝臓、脾臓、心臓、肺、精巣、又は脳で応答する。
【0017】
別の態様で、本発明は、表6、7、及び8の部分遺伝子配列に対応する遺伝子又はその少なくとも20ヌクレオチドの断片から選択された、1つ又は複数のポリヌクレオチドを含むアレイを提供する。一実施形態で、部分遺伝子配列に対応する遺伝子の群は、腎臓、肝臓、脾臓、心臓、肺、精巣、又は脳で応答する。
【0018】
別の態様で、本発明は、表4の部分遺伝子配列に対応する遺伝子又はその少なくとも20ヌクレオチドの断片からなる群から選択された、1つ又は複数のポリヌクレオチドを含むアレイを提供する。一実施形態で、毒性応答遺伝子の組は、少なくとも25個の遺伝子からなる。別の実施形態で、毒性応答遺伝子の組は、少なくとも50個の遺伝子からなる。別の実施形態で、毒性応答遺伝子の組は、少なくとも100個の遺伝子からなる。
【0019】
別の態様で、本発明は、表6、7、及び8の部分遺伝子配列に対応する遺伝子から選択された1組の毒性応答遺伝子に実質的に相同な、長さが少なくとも20ヌクレオチドに相当するポリヌクレオチドの組を含むアレイを提供する。
【0020】
別の態様で、本発明は、表6、7、及び8の部分遺伝子配列に対応する遺伝子又はその少なくとも20ヌクレオチドの断片から選択された1つ又は複数のポリヌクレオチドを含むアレイに含有されたポリヌクレオチドに相同な、1つ又は複数のポリヌクレオチドを含むアレイを提供する。一実施形態で、ポリヌクレオチドは、ヒト、ネズミ、ヒト以外の霊長類、又はイヌの遺伝子に対応する。
【0021】
表1は、いくつかの個体で非常に高い毒性応答を潜在的に引き起し得る医薬品物質のリストである。
【0022】
表2は、いくつかの個体で非常に高い毒性応答を潜在的に引き起し得る工業用薬品のリストである。
【0023】
表3は、表7、8、9、及び10に示したデータを生成するのに使用した薬物及び化学物質のリストである。これらの化合物は、下記の病態を誘発するその能力に応じて選択した。すなわち、肝臓の変性/壊死、肝細胞肥大、肝細胞空胞、腎細管の変性/壊死、腎糸球体壊死、心筋の変性、心筋の炎症、脾臓リンパ球枯渇/アポトーシス、脾臓リンパ球過形成、神経毒性、骨格筋の変性及び炎症、多重組織壊死及び炎症、修復であって、増殖を含むものである。
【0024】
表4は、毒性応答遺伝子と決定された700個のラット遺伝子及び/又は遺伝子配列のリストである。
【0025】
表は、3つのセクションに分れている。第1のセクションは、遺伝子をGenBankデータベースで検索した場合に既知の完全なラット遺伝子に一致する、17,241個の遺伝子の組からの実験的なデータを使用して発見された遺伝子を列挙している。第2のセクションは、遺伝子をNCBI GenBankデータベースで検索した場合に既知の完全なラット遺伝子に一致しない、17,241個の遺伝子の組からの実験的なデータを使用して発見された遺伝子を列挙している。これらの遺伝子を、フェーズ1 RCTナンバーによって番号順に列挙する。第1及び第2のセクションにおける遺伝子のクローンは、pT7T3D−PACベクターを使用する。この表の遺伝子配列は、配列にベクターの小さい部分を含んでよい。下記のベクター配列の部分は、表4に列挙された配列に含めることができるものであり、また遺伝子又は遺伝子配列そのものを参照する場合には含めるべきではないものである。M13リバースプライマーを使用する配列は、
TAATACGACTCACTATAGGGAATTTGGCCCTCGAGGCCAAGAATTC(配列番号701)があり、その後にインサートを入れることができ、その後に
GCGGCCGCAAGCTTATTCCCTTTAGTGAGGGTTAAT(配列番号702)も続けることができるものを含む。相補鎖の配列は下記の通りであり:
ATTAACCCTCACTAAAGGGAATAAGCTTGCGGCCGC(配列番号703)があり、その後にインサートを入れることができ、その後に
GAATTCTTGGCCTCGAGGGCCAAATTCCCTATAGTGAGTCGTATTA(配列番号704)も続けることができるものである。
【0026】
この表の遺伝子の第3の組は、重要な細胞経路での可能性ある役割及び実験データの毒性応答性に基づいて選択された遺伝子を指す。この第3の組の遺伝子に関するクローンは、pCRII−TOPOベクターを使用した。この表4の遺伝子配列は、配列にベクターの小さい部分を含んでよい。下記のベクター配列の部分は、表4に列挙された配列に含めることができるものであり、また遺伝子又は遺伝子配列そのものを参照する場合には含めるべきではないものである。プライマーとしてT7プロモーターを使用する配列は、ATATCTGCAGAATTCGCCCTT(配列番号705)を含み、その後にインサートがあり、その後にAAGGGCGAATTCCAGCACACT(配列番号706)を続けることができるものを含む。逆相補鎖の配列は、AGTGTGCTGGAATTCGCCCTT(配列番号707)を含み、その後にインサートを入れることができ、その後にAAGGGCGAATTCTGCAGATAT(配列番号708)も続けることができるものを含む。「フェーズ1 RCT」と示される遺伝子を、表5にさらに詳細に示す。
【0027】
表5は、フェーズ1 RCT遺伝子とそのホモロジーのリストであり、既知の遺伝子(ラット、マウス、ヒト)がNCBI GenBankのBLASTサーチによって識別されたものである。「既知の完全な遺伝子に対して有意なホモロジーが見出されない」という文言は、BLASTサーチによって、任意の既知の完全な遺伝子に対して有意な(>97%)ホモロジーが明らかにされなかったことを示す。
【0028】
表6は、17,241遺伝子マイクロアレイ上で17,241個の遺伝子を試験することによって発見された遺伝子と、各遺伝子を選択する根拠を提供した応答データのリストである。これら400個の遺伝子は、許容可能な誘導倍率値(>2)、変異係数(COV、<30)、及び蛍光値(fluor、>400)に関して全ての遺伝子データを最初にフィルタリングした後に選択し、次いでこれらの基準を満たす遺伝子を、遺伝子が応答する実験の数、二枚のスライド間のCOV、及び誘導倍率によってランク付けした。遺伝子の名称の後に、許容可能な応答を誘発する化合物(フィルタを通過したもの)と、評価した組織、薬物又は化学物質の用量、及びその化合物を腹腔内注射した後に動物を殺した時点に関する詳細のリストを続けた。
【0029】
表7は、17,241個の遺伝子の組から実験により選択された毒性学的遺伝子の、組織に特異的な応答を示すリストである。この組織応答に関して評価したデータは、表3に列挙した化合物をラットに投与し、次いで差次的遺伝子発現を決定することによって得られ、それによって約2500回の実験によるデータベースが構築される(すなわち、1つのマイクロアレイからのデータ)。組織応答は、肝臓及び腎臓に関する特定の組織では実験の1%で2倍よりも大きく、心臓、肺、脾臓、精巣、及び脳に関する特定の組織では実験の2%で2倍よりも大きい。この表は、各遺伝子に関するデータによってまとめられる。
【0030】
表8は、表7の毒性学的遺伝子の、組織に特異的な応答を、その組織ごとに示すリストである。
【0031】
表9は、重要な細胞経路でのその役割の詳細によって選択された毒性学的遺伝子の、組織に特異的な応答を示すリストである。この組織応答に関して評価したデータは、表3に列挙した化合物をラットに投与し、差次的遺伝子発現を決定することによって得られ、それによって約2500回の実験によるデータベースが構築される。組織応答は、肝臓及び腎臓に関する特定の組織では実験の1%で2倍よりも大きく、心臓、肺、脾臓、精巣、及び脳に関する特定の組織では実験の2%で2倍よりも大きい。この表は、各遺伝子に関するデータによってまとめられる。
【0032】
表10は、表9の毒性学的遺伝子の、組織に特異的な応答を、その組織ごとに示すリストである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、薬物、化学物質、及び/又は化合物に対する毒性応答を評価するのに使用することができる、毒性学的に関連のある1組のラット遺伝子を提供する。
【0034】
I.一般的な技法
本発明を実施する際、他に特に示さない限り、分子生物学(組換え技法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、及び免疫学の従来の技法であって当業者の技術範囲に包含される技法を使用する。そのような技法は、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、第2版(Sambrook他、1989)及び分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、第3版(Sambrook及びRussel、2001)、(合わせて本明細書では「Sambrook」と呼ぶ);分子生物学における現行プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)(F.M.Ausubel他編、1987、2001年までの増補版を含む);PCR:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:The Polymerase Chain Reaction)、(Mullis他編、1994);Harlow and Lane(1988)抗体、実験室マニュアル(Antibodies、A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Publications、New York、及びHarlow and Lane(1999)抗体を使用して:実験室マニュアル(Using Antibodies:A Laboratory Manual)Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY(合わせて本明細書では「Harlow and Lane」と呼ぶ)、Beaucage他編、核酸化学における現行プロトコル(Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry)John Wiley & Sons,Inc.New York、2000などの文献で十分に述べられている。
【0035】
II.定義
本明細書で使用する「毒性」は、低用量又は平均用量の作用物質に対する細胞、組織、器官、又は系の、強調された微視的又は巨視的応答を指す。これらの応答は、眩暈又は悪心などの観察可能な症状に至り、また中毒症状ももたらす可能性がある。毒性はしばしば、その程度又は種類において、推奨される用量での大多数の個体の応答とは異なる有害な副作用をもたらす。
【0036】
「明白な毒性」は、肉眼で応答を観察することができる毒性を指す。明白な毒性応答の例には、臨床観察、血清化学値、血液学的検査値、尿検査値、病理組織検査結果、又は剖検での組織及び器官の肉眼所見が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
「毒性学的応答」は、作用物質に曝露したときの細胞、組織、器官、又は系レベルでの応答を指し、そのような遺伝子のアップレギュレーション及びダウンレギュレーションの両方を包含する遺伝子及び/又はタンパク質の差次的発現;細胞障害の修復又は制御に関連するタンパク質をコードする遺伝子のアップレギュレーション又はダウンレギュレーション;又は作用物質の存在に応答する遺伝子の制御を含むが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用する「毒性遺伝子」、「毒性学的に関連ある遺伝子」、及び「毒性応答遺伝子」という用語は、互いに置き換えて使用可能である。これらの用語は、そのメッセージ又はタンパク質レベルが有害な刺激を受けることによって変化する遺伝子と定義することができる。細胞が誘発する特定の遺伝子の組は、とりわけその作用物質によって引き起こされる損傷又は有毒な危険性のタイプと、どの器官が最も脅かされるかによって様々である。
【0039】
本明細書で使用する「毒性学的応答を示す遺伝子発現」は、毒性遺伝子又は毒性応答遺伝子の相対的な発現レベルを指す。遺伝子発現プロファイルのプロファイルは、様々な細胞タイプ、種々の組織、種々の器官、又は流体(例えば血液や尿、脊髄液、血清)を含むサンプルなどのサンプル中で測定することができる。これらのプロファイルは、「試験発現プロファイル」及び「参照発現プロファイル」を含むことができる。
【0040】
「実質的に相同な」又は「実質的に同一な」は、下記の配列比較アルゴリズムの1つを使用して測定又は目視検査によって、最大対応箇所を比較しそれに合わせて並べた場合に、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%のヌクレオチド又はアミノ酸残基が一致している配列ホモロジーを指す。2つの配列(アミノ酸又はヌクレオチド)は、その完全長全体を比較することができる(例えばそれらが大幅に異なる長さである場合は、2つのうち短いほうの長さ)。配列の比較では、一般に1つの配列が基準配列としての役割をし、それと試験配列とを比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び基準配列をコンピュータに入力し、部分列座標を指定し、必要なら配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。次いで配列比較アルゴリズムを用い、基準配列に対する試験配列の同一性パーセントを、指定されたプログラムパラメータに基づいて計算する。比較に最適な配列位置合わせは、例えばSmith & Waterman、Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所ホモロジーアルゴリズムによって、Needleman & Wunsch、J.Mol.Biol.48:443(1970)のホモロジー位置合わせアルゴリズムによって、Pearson & Lipman、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性探索方法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化による実現によって(GAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA、Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WI)、又は目視検査(一般に前掲の、Ausubel他による分子生物学における現行プロトコル(Current Protocols In Molecular Biology)、Greene Publishing and Wiley Interscience、New York参照)によって行うことができる。前述のアルゴリズムのいずれかを使用する場合、ウィンドウの長さやギャップペナルティなどのデフォルトパラメータを使用する。また、2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であることは、第1のポリペプチド(例えば第1の核酸によってコードされたポリペプチド)が、第2のポリペプチド(例えば第2の核酸によってコードされたポリペプチド)に対して免疫学的に交差反応性を有することを示している。このためポリペプチドは一般に、2つのペプチドが同類置換によってのみ異なる場合、第2のポリペプチドと実質的に同一である。
【0041】
本明細書で使用する「遺伝子」という用語は、タンパク質生成物をコードしてRNA、mRNA、cDNA、1本鎖DNA、2本鎖DNA、相補的な鎖、及びこれらの断片を包含するポリヌクレオチド配列を指す。遺伝子は、イントロン及びエクソンを含むことができる。
【0042】
「遺伝子配列」という用語は、遺伝子、完全長遺伝子、又はこれらの一部を指す。
【0043】
本明細書で使用する「アレイ」及び「マイクロアレイ」は相互に置き換えて使用可能であり、中心位置でヌクレオチド配列を集めたものの配列を指す。アレイは、スライドガラスなど固体の基体上、又はニトロセルロース膜など半固体の基体上に配置することができる。ヌクレオチド配列は、DNA、RNA、これらの任意の並べ替えでよく、ヌクレオチド類似体を含む。ヌクレオチド配列は、遺伝子の部分配列、プライマー、全遺伝子配列、非コード配列、コード配列、公表された配列、既知の配列、又は新規の配列でもよい。
【0044】
個体が毒性学的応答を示すことのできる「作用物質」には、例えば薬物や医薬品化合物、家庭用化学物質、工業用化学物質、環境化学物質、並びに個体を曝露することができるその他の化学物質及び化合物を含めることができる。吸入や環境曝露など、作用物質への曝露によって物理的接触並びに二次接触が生じる。
【0045】
本明細書で使用する「差次的発現」は、作用物質に曝露したときの、細胞、組織、器官、又は系における遺伝子及び/又は前記遺伝子でコードされたタンパク質の発現レベルの変化を指す。本明細書で使用する差次的遺伝子発現は、差次的な転写及び翻訳、並びにメッセージの安定化を含む。差次的遺伝子発現は、遺伝子発現のアップレギュレーション及びダウンレギュレーションの両方を包含する。
【0046】
「ラット」という用語はRattus属の哺乳類を指し、かなり大きいサイズで構造上の詳細(例えば歯のサイズ)も関連するマウスとは異なる数多くの齧歯類(Rattus及び関連する属)のいずれか1種を含むことができる。使用することができるラットの系統には、Sprague−Dawley、Wistar、及びFisherが含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書で使用する「サンプル」という用語は、個体によって供給される物質を指す。サンプルには、細胞、組織、組織の一部、器官、器官の一部、又は流体(例えば血液や尿、血清)を含めることができる。サンプルは、少なくとも2個の異なる遺伝子を含むことによって好ましい実施形態で特徴付けられ、多細胞タイプからの遺伝子を含んでもよい。サンプルには、真核、哺乳動物、又はヒト由来のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
「タンパク質」、「ポリペプチド」、及び「ペプチド」という用語は本明細書で互いに置き換えて使用可能であり、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは線状でも分岐状でもよく、修飾アミノ酸を含むことができ、非アミノ酸によって分断される。また、自然に又は介入によって、ジスルフィド結合形成やグリコシル化、ミリスチル化、アセチル化、アルキル化、リン酸化、脱リン酸化によって修飾することもできる。また、この定義には、1つ又は複数のアミノ酸類似体(例えば非天然のアミノ酸を含む)を含有するポリペプチド、並びに当技術分野で知られるその他の変形例も含まれる。
【0049】
本明細書で使用する「有意な相関関係」という用語は、当技術分野での通常の意味を有し、偶然に生じる観察される相違の可能性(p値)(又は「同様の」測定値の場合は、観察される相違が見られない可能性)が、およそ所定のレベル未満であり、すなわちp値<0.05であり、好ましくはp値<0.01であり、より好ましくはp値<0.001であることを意味する。様々な適切な統計的手法が当業者に周知であり、統計的有意性の測定に使用することができる(例えばスチューデントのt検定{2つのサンプルの比較用}やANOVA{分散分析}、信頼区間分析などの標準的な統計方法;SASシステム バージョン8(SAS Institute Inc.、Cary、NC、USA)などのソフトウェアを分析に使用することができる)。
【0050】
「個体」は脊椎動物であり、好ましくは哺乳類であり、より好ましくはヒトである。哺乳類には、家畜、競技用動物、ペット、霊長類、マウス、及びラットが含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
III.毒性学的に関連ある1組の遺伝子の同定
毒性学的に関連ある1組の遺伝子の同定は、いくつかの方法によって実現することができる。使用することができる1つの方法は、前述のように遺伝子をクローニングして、毒性学的に潜在的な関連性があるようにすることである。例えば文献やGenBankにより公表されている配列を使用して、プライマーを作製し、次いでこれを使用して、関連あるライブラリーからPCR増幅し、問題となっている毒性学的に関連ある候補遺伝子を得ることができ、次いでこれを、所望の用途に応じてプラスミド又は発現ベクターにクローニングすることができる。遺伝子配列(完全又は部分)は、以下に開示するハイスループット試験のため、マイクロアレイ中の、その他の毒性学的に関連ある遺伝子の間に配置することができる。
【0052】
あるいは、コピー数が高くなるよう複製するために、プラスミドを使用して、問題となっている毒性学的に関連ある候補遺伝子のコピー数を増大させ、次いでこれを任意の市販のキット(例えばQiagenやPromega製)で精製することができる。精製された、毒性学的に関連ある候補遺伝子を使用してマイクロアレイに「スポット」し、あるいは、その後精製した核酸を発現ベクターに挿入し、哺乳動物の細胞、例えばラットの細胞にトランスフェクトして、その細胞を化合物に曝露し、毒性学的応答を観察することができる。明白な毒性は、顕微鏡下での試験によって決定することができる細胞の形態又は細胞骨格の再配列変化を観察することによって、あるいは細胞アポトーシス又は細胞壊死を観察することによって、確認することができる。別の代替例では、以下に詳細に述べる「トランスクリプトームプロファイリング」を使用することができるが、この場合、曝露された細胞と曝露されていない細胞の両方から核酸を単離して、どのレベルの化合物が、問題となっている毒性学的に関連ある遺伝子のアップレギュレーション又はダウンレギュレーションを引き起こすのか決定するよう試験をすることができる。
【0053】
毒性学的に関連ある1組の遺伝子を同定するのに使用することができる別の方法は、約17,421個の既知のラット遺伝子が存在する入手可能なラット遺伝子の試験を行い、ラットの毒性試験からの組織を使用して遺伝子の応答を調べ、差次的発現をするものを選択することである。差次的発現は、任意の数の方法によって評価することができる。使用することができる1つの方法は、マイクロアレイ分析によるものである。本明細書では、差次的遺伝子発現を決定するのにマイクロアレイ分析を使用する方法を示す。差次的遺伝子発現を決定する別の方法は、逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)であり、例えばTaqman(登録商標)の技術である。本明細書では、Taqman(登録商標)技術を使用する方法を示す。差次的遺伝子発現の検出に使用できる別の方法は、Third Waveからの、商用として利用可能なInvader(登録商標)技術である。差次的発現の決定に使用できる別の方法は、ノーザンブロット分析である。使用することができるその他の方法には、AFLP及びSAGEを含めることができる(Klein,P.E.他、Genome Res.10(6):789〜807(2000);Wang,X.及びFeuerstein,G.Z.、Cardiovasc Res.35(3):414〜21(1997))Feuerstein,G.Z.及びWang X.Can J.Physiol Pharmacol.75(6):731〜4(1997);Hough,C.D.他、Cancer Res.60(22):6281〜7(2000);Ye,S.Q.他、Anal Biochem.287(1):144〜52(2000))。
【0054】
毒性学的に関連ある1組の遺伝子を同定するのに使用することができる1つの方法は、対照ラットの遺伝子発現プロファイルと、作用物質で処理したラットの遺伝子発現プロファイルとを比較するのに「オープンシステム」を使用し、それによって応答遺伝子が選択されるようにすることである。あるいは、対照ラット細胞(又はラット細胞系)からの遺伝子発現プロファイルと、作用物質で処理したラット細胞(又はラット細胞系)からの遺伝子発現プロファイルとの比較を使用して、応答遺伝子を選択することができる。これを、本明細書では「トランスクリプトームプロファイリング」と呼ぶ。この方法は、差次的遺伝子発現を分析することによって、どの遺伝子が毒性学的に関連あるものか実験を行って決定する。一実施形態では、実験用ラットを2つのグループに分ける。一方のグループは、1種又は複数の作用物質に、種々の濃度で種々の時間にわたって曝露する。他方のラットのグループはいかなる作用物質にも曝露せず、対照群としての役割を果たす。次いでラットを殺し、肝臓や脾臓、腎臓、精巣、心臓、肺、胸腺などの器官を採取してそこから細胞を得、遺伝子発現の分子分析を行う。さらに、循環血液中の血清タンパク質を分析して別の測定値を得ることができ、曝露していないラットと比較することができる。
【0055】
実験群を少なくとも1種の作用物質に曝露してから、両群のRNAを単離し、PCR反応で逆転写してcDNAを生成し、これを増幅して2本鎖DNAを生成する。PCRは放射性DNA基質の存在下で行い、これは2本鎖DNAに組み込まれる。ポリアクリルアミドゲル上では、処理された細胞から得られたDNAを、未処理の個体群から得られたDNAの隣で、長さによって分離する。得られた1つ又は複数のバンドの強度を、処理済みの細胞群と未処理の細胞群との間で比較する。異なる放射性強度を示すバンドをゲルから切り取り、PCRで増幅し、クローニングし、配列決定する。その配列を、GenBankなどの公開されているデータベースの既知の遺伝子配列と比較する。このようにして、類似性の程度が様々な既知のラット遺伝子の他、毒性学的に関連ある新規のラット遺伝子が発見され同定される。本明細書で開示する実施例は、本発明のこの態様を当業者がどのように実施できるかを例示する。
【0056】
公に利用可能な任意の遺伝子配列データベースに一致しないラット遺伝子の部分配列が発見された場合、当業者が利用可能な技術、テキスト(下記のSambrook他参照)、及び情報源によって、必要以上に実験を行うことなく、遺伝子の残りの配列を決定して完全長の遺伝子を得ることが可能である。一実施形態で、完全長遺伝子は、プライマーとなることが知られているラット遺伝子配列の一部を使用することによって得られるが、このプライマーは、ラットcDNAライブラリーとのPCR反応でランダムプライマーと組み合わせて使用する。PCR反応は標準のアガロースゲル上で行い、増幅したバンドを特定し、ゲルから切り取って配列決定をする。
【0057】
これらの方法のそれぞれを、以下により詳細に開示する。毒性学的に関連ある遺伝子を同定する際に考慮されるその他のファクタには、1種又は複数の作用物質の選択と、投与される用量と、投与経路が含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
IV.作用物質の選択
試験される作用物質は、異なる基準に基づいて選択することができる。一態様で、試験をする化合物の基準は、特定の器官で観察される損傷である。一実施形態では、腎尿細管上皮性細胞障害を引き起こすことが観察されることからシスプラチン、アンホテリシンB、及びゲンタマイシンを選択する。別の実施形態では、肝臓ペルオキシソームの増殖がクロフィブレート、ゲムフィブロジル、及びWY14643の影響を受けることが観察されることから、クロフィブレート、ゲムフィブロジル、及びWY14643を選択する。別の態様で、選択の基準は機能である。例えば、シスプラチンはアポトーシス及び反応性酸素種を引き起こし、アンホテリシンBはイオンに対する細胞膜の透過性を増大させかつ腎性血管収縮を引き起こし、ゲンタマイシンはリソソームでリン脂質の蓄積を引き起こす。
【0059】
その他の毒素は一般に器官に影響を及ぼし、例えばいくつかの腎臓毒素にはシスプラチンやゲンタマイシン、プロマイシン、アンホテリシンBが含まれるがこれらに限定されない。肝臓毒素にはクロルプロマジン、クロフィブレート、ジフルニサル、テトラサイクリン、エリスロマイシン、及びエタノールが含まれるが、これらに限定されない。免疫毒素にはサイクロスポリンA、リポ多糖(LPS)、ヒドロキシ尿素、フェニルヒドラジン、デキサメタゾン、エストラジオール、及びタモキシフェンが含まれるがこれらに限定されない。心臓毒素にはドキソルビシンが含まれるがこれらに限定されない。多器官の毒素にはメトトレキセート及び塩化カドミウムが含まれるがこれらに限定されない。
【0060】
試験される作用物質を選択するその他の基準は、処方等又は市販薬によってその環境で定期的に個体が曝露されるそれらの作用物質を選択することである。作用物質の試験をする別の基準は、FDAの認可を得るためあるいは例えば前臨床試験又は臨床試験におけるその他の毒性要件のため、毒性に関して試験をする必要がある作用物質である。表1及び2に、上記基準により選択することができるいくつかの作用物質を列挙する。
【0061】
V.用量の決定
ラットの実験で使用する作用物質の用量は、いくつかの方法を使用して決定することができる。一態様では、報告されている用量を出発点として使用し、その報告された用量から徐々に増やしまた徐々に減らして投与する。増分は、少なくとも約±1%、5%、10%、25%、35%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%である。血清化学値及び血液学的検査値を含むがこれらに限定されない値を含む血液中のマーカーのアップレギュレーション又はダウンレギュレーションを使用して、毒性に達したかどうか決定することができる。別の態様では、特に、問題となっている化合物に特異的な標的である器官の組織病態を検査して、化合物の投与に応答して病態変化が生じたかどうかを決定することができる。一実施形態で、病態変化には、肝臓の変性/壊死、肝細胞肥大、肝細胞空胞、腎細管の変性/壊死、腎糸球体壊死、心筋の変性、心筋の炎症、脾臓リンパ球枯渇/アポトーシス、脾臓リンパ球過形成、神経毒性、骨格筋の変性及び炎症、多重組織壊死及び炎症、修復であって、増殖を含むものが含まれる。一実施形態で、別の態様では、種々の用量の1種又は複数の作用物質の投与に応答した分子変化は、そのような作用物質への曝露に伴う遺伝子発現を分析することによって決定される。
【0062】
細胞培養を使用した実験による用量決定は、作用物質の性質やその効力、作用機序、作用物質の標的である細胞のタイプ、細胞の数といった多くのファクタの影響を受ける。実験で必要とされる用量を決定するには、低用量レベルの作用物質を加え、次いで段階的にその用量を増大させると共に、作用物質への曝露時間も長くする。作用物質が親油性であり容易に細胞の脂質二重層を透過する場合は、より低い初期濃度を使用することができ、かつ/又は作用物質に対する曝露時間をより短くすることができる。作用物質が細胞障壁を容易に透過できずまた細胞膜を透過して能動的に又は受動的に輸送される必要がある場合は、わずかに高い初期濃度を使用することができ、かつ/又は作用物質に対する曝露時間をより長くすることができる。毒性学的応答及び細胞の形態をモニタしながら段階的に用量を増やすことによって、当業者は、細胞死の速度及び増殖パターンから、毒性学的応答が生じるときの用量を決定することができる。しかし、細胞の物理構造及び完全性(例えばモルホロジーや増殖パターンなど)を含めるがこれらに限定されない目に見える変化である毒性学的応答が生じることに留意されたい。例えば細胞毒性応答並びに分子毒性応答をモニタすると、差次的遺伝子発現によって、好ましい用量を見出す可能性が増大する。
【0063】
遺伝子発現の変化は、処理を取りやめ又は少なくしてももはや正常の状態には戻らないときの用量、すなわち化合物で処理する前に存在した細胞、器官、又は系の状態に戻らない用量で、毒性学的に有意になる。ある用量又は時間を超えた処理によって、細胞は毒性学的に関連あるものになる。この中毒量は、その中毒量よりも少ない用量で観察されるパターンとは全く異なる識別可能な遺伝子発現パターンによって示される。遺伝子発現を分析してどのように遺伝子発現データとの相関をとるかという方法について、以下に述べる。
【0064】
VI.作用物質の投与
問題となっている作用物質の投与は、様々な経路で行うことができる。その経路は様々でよく、腹腔内、静脈内、皮下、経皮的(transcutaneously)、筋肉内、経腸的、経皮的(transdermally)、経粘液的、徐放性ポリマー組成物(例えばラクチドポリマーやコポリマー微粒子又はインプラント)、潅流、肺(例えば吸入)、鼻、経口などによって行うことができることが、当業者に容易に理解されよう。注射可能な物質は、溶液又は懸濁液、溶液又は懸濁液に適する固体の形であって、注射前に液体に溶かすもの、又はエマルジョンなど、従来の形に調製することができる。作用物質は、医薬品として許容される形、例えば賦形剤と共に投与することができる。適切な賦形剤には、例えば水や生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノールなどが含まれる。1種又は複数の作用物質を非経口的に、また経口的に送達するための製剤は当技術分野で知られており、Remington:薬剤の科学及び実施(The Science and Practice of Pharmacy)、Mack Publishing(2000)に、より詳細に記載されている。
【0065】
作用物質を投与するのに担体を使用する場合、その担体は、試験される作用物質に対して相溶性があり、かつ処理されるラットに有害ではない(すなわち害を与えない)という意味で、受け入れられるものでなければならない。固体組成物の場合、従来の無毒性担体には、例えばマンニトールや乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、スクロース、ペクチン、デキストリン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどが含まれ、これらと同様のものを使用することができる。上記定義した活性化合物は、例えばポリアルキレングリコールを使用し、担体として例えばプロピレングリコールを使用することにより、坐薬として配合することができる。
【0066】
一態様で、投与する作用物質は、分子レベル又は生理的レベルで、ラットにある種の毒性学的応答をもたらすのに十分な量の作用物質を含有することが好ましい。
【0067】
VII.既知のラット遺伝子を使用した、毒性学的に関連ある遺伝子を同定する方法
一態様では、当技術分野又は公に利用可能なデータベース、例えばGenBankにおいて、毒性学的に関連ある候補遺伝子であるラット遺伝子について述べた。毒性学的に関連ある候補ラット配列を使用して、プライマーを設計し、これをPCR反応で使用して、cDNAライブラリーからラット遺伝子を増幅する。cDNAライブラリーは、生体外で得られ又は商業上の供給元、例えばAmerican Type Culture Collection(ATCC)から得られた種々のラット細胞から作製することができる。cDNAの生成は、単離したRNAの逆転写を伴い、これは当技術分野で周知である(例えば前掲のSambrook他参照)。PCRによって増幅されたラット遺伝子断片を、数多くの商業上の供給元(例えばPromega、InVitrogen、New England BioLabsなど)から得ることができる任意の標準的なプラスミド発現ベクターにクローニングし、配列決定する。次いで得られた配列情報をGenBankデータベースと比較し、クローニングしたDNAが、特定のラット遺伝子、すなわちその遺伝子に適うようプライマーが設計された特定のラット遺伝子であることを確認する。配列が明らかに確認されたら、増幅した遺伝子を遺伝子のパネルに加えてアレイに含める。
【0068】
別の態様では、毒性学的に関連ある候補遺伝子である非ラット(例えばヒト)遺伝子の配列に付いて述べた。これらの毒性学的に関連ある非ラット遺伝子に対するプライマーを設計し、合成し、引き続きラットcDNAライブラリーとのPCR反応で使用して、相同なラット遺伝子を増幅する。相同なラット遺伝子は、プライマーがそれに合わせて設計された非ラット遺伝子に対して全く正確な配列であってもそうでなくてもよい。次いで増幅したラット遺伝子を遺伝子パネルに加えて、アレイに含める。
【0069】
別の態様では、毒性学的に関連があり又は毒性学的に関連ある候補遺伝子であるラット遺伝子又は遺伝子配列を使用して、他の齧歯類、例えばマウスでの毒性学的に関連ある遺伝子を決定する。ラットとマウスの遺伝子配列のホモロジーが高く、約97%であると考えられる場合、必要以上の実験を行わずに、非ラットの毒性学的関連性を高い信頼性で特定することができる。
【0070】
別の態様では、ラットアレイに含める標的配列を、例えばスライドガラスなどの基体上に固定化したヌクレオチドを新たに合成することによって得る。標的配列は、1種又は複数の毒性学的応答を示すことができる遺伝子からのものである。
【0071】
VII.(A)ディフェレンシャルディスプレイ法
いくつかのディフェレンシャルディスプレイ法を使用して、問題となっている遺伝子を同定することができる。差次的遺伝子発現は、ゲル電気泳動、及びポリヌクレオチドマイクロアレイ、又は商業的に利用可能な技術、例えばInvader(登録商標)又はTaqman(登録商標)を含む技法を使用して観察することができる。
【0072】
一態様では、処理されたラット及び対照ラット又はそれらの細胞系の組織から単離したmRNA(PCR前にcDNAに変換される)のPCR合成の結果を、ゲル電気泳動にかけ、これらmRNA集団によって生成されたバンドを比較する。1つのmRNA集団からの1つのゲルの画像に示されるバンドであって他には示されていないバンドは、1つの集団に特定のmRNAが存在しかつ他には存在しないことを示し、したがって差次的に発現し易い遺伝子が示される。対照ラット及び処理したラット又はこれらの細胞系から得られたメッセンジャーRNAは、5’プライマーとして10個のヌクレオチド(ランダム十量体)の任意のオリゴヌクレオチド配列を使用し、3’蛍光標識「アンカープライマー」としてポリAテールに相補的な1組の12個のオリゴヌクレオチドを使用することによって、比較することができる。次いでこれらのプライマーを使用して、デオキシリボヌクレオチドの付加と共にmRNAの部分配列を増幅する。次いで増幅したこれらの配列を配列決定ゲル上で分解し、各配列決定ゲルが、50〜100個のmRNA配列を有するようにする。次いでこれらの配列決定ゲルを互いに比較して、増幅させたどのセグメントが差次的に発現するかを決定する(Liang,P.他サイエンス(Science)257:967、1992;Welsh,J.他、Nucl.Acid Res.20:4965、1992;Liang,P.他、Nucleic Acids Res.21(14):3269〜75(1993))。
【0073】
VII(B)トランスクリプトームプロファイリング
オープンシステムを使用して、ラット細胞を薬物及び/又は化学物質に種々の濃度で曝露し、次いで種々の時点で採取することができる。ラット細胞は、組織サンプル、器官、血液、皮膚、生体液(例えば尿や脊髄液、***など)、細胞系を含むがこれらに限定されない様々な供給源から得ることができる。トランスクリプトームプロファイリングも生体内で投与されたラットで得ることができる。固定化した細胞系は、商業上の供給元、例えばGibco BRL Life Sciencesから得られ、又はその他の供給元、例えばAmerican Type Culture Collection(ATCC)から得られる。ラット細胞を得るその他の方法には、組織生検、血液、皮膚、又は生体液から得られた細胞であって、例えば生体内で投与されたラットからのものを単離することが含まれる。当業者に周知のように、組織サンプルからの細胞の単離は、任意の様々な技法を使用して行うことができる。
【0074】
細胞を得ることができる供給源は、肝臓、肺、心臓、精巣、腎臓、脾臓、胸腺、及び脳を含むがこれらに限定されない任意のいくつかの器官でよい。一実施形態では、毒性試験に肝臓細胞を使用することができ、この場合、投与される作用物質は既知のものであり、あるいは肝臓機能不全又は肝臓毒性を引き起こすと考えられるものである。他の実施形態では、作用物質によって送達される作用の標的がわかっている場合、標的器官から得られる細胞を使用することによって、組織をランダムに選択した場合よりも毒性学的応答に関してより有益な情報がもたらされる。試験される作用物質が未知の効果をもたらす別の実施形態では、種々の供給源から単離した細胞のパネルを使用することができる。代替例では、作用物質の作用標的に関する知識がない状態で肝臓細胞を使用することができるが、それは肝臓が多くの毒素を処理することが知られているからである。毒性学的応答は、作用物質の作用の標的組織を使用した場合に当業者が得ることのできる結果に比べて最も理想的なものでなくてよいが、肝臓細胞を使用する利点は、毒性学的に関連ある遺伝子を同定し、次いで引き続き他の器官に関して試験をして、他の器官における毒性を決定できること、あるいはどの器官が作用物質の標的か特定できることと考えられる。多くの組織供給源から細胞を単離するのではなく、1つの組織供給源(この状態では肝臓)からの細胞を試験することにより、時間が節約される。
【0075】
生体外で得られ、あるいは商業的又は非商業的な供給源から得られたラット細胞であって、剖検直後又は貯蔵用に冷凍した状態のものを使用し、実験時間中、培地で培養することができる。広く様々な基底細胞支持培地を使用して、液体のpHを、ラット細胞の生存を促進させる範囲内に保つことができる。非限定的な例には、F12/DMEM、Ham’s F10(Sigma)、CMRL−1066、Minimal essential medium(MEM、Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM、Sigma)、及びIscove’s Modified Eagle’s Medium(IMEM)が含まれる。さらに、Ham及びWallaceのMeth.Enz.、58:44(1979)、Barnes及びSatoのAnal.Biochem.、102:255(1980)に記載されている基礎栄養培地のいずれかも含まれる。細胞は、プレートで又はフラスコ内で増殖させることができる。細胞を増殖し、DNA又はRNAの単離に望ましくかつ必要なレベルまで増やす。細胞をプレート又はフラスコから取り出して、DNA又はRNAを単離する。細胞が付着している場合は、トリプシン又は別の同等なものを使用して、細胞をプレート又はフラスコから離すことができる。DNA及びRNAの供給源として、好ましくは少なくとも約1×102個の細胞、より好ましくは少なくとも約1×103個の細胞、より好ましくは少なくとも約1×104個の細胞、より好ましくは少なくとも約1×105個の細胞、より好ましくは少なくとも約1×106個の細胞、さらにより好ましくは少なくとも約1×107個の細胞を使用する。一実施形態では、ラットに投与して、中毒量の薬物/化学物質に生体内で曝露した後に組織を採取する(核酸を分離)。この実施形態については実施例でさらに述べる。
【0076】
次いで単離した核酸を増幅して、基体に付着することのできる生成物を生成する。好ましい実施形態で、基体は固体の基体である(例えばスライドガラス)。増幅プロセスは、プライマーの一端に反応基(例えばアミン基又はその誘導体)を有するプライマーを使用することを含み、このプライマーが増幅生成物に組み込まれる。使用することのできる反応性プライマーの一例は、Synthegenから得られるアミンプライマーである。スライドガラスに付着される遺伝子断片の長さは様々でよい。遺伝子のヌクレオチドがアレイ中に多く存在するほど、結合をより緊密にし、結合における特異性をより大きくすることができる。しかし、断片が長いほどその増幅が難しくなり、点突然変異又はその他の増幅に関連する誤りが含まれる可能性があることを考慮することが重要である。したがって、アレイに含まれる遺伝子又はその断片の所望の長さは、長い(例えば>1kb)遺伝子配列で得られた結合の高い特異性と、より長い断片に関連のある高い突然変異率とのバランスを考慮に入れるべきである。スライドガラスに付着させた遺伝子断片は、少なくとも約25塩基対(bp)の長さであり、少なくとも約50bpの長さであり、より好ましくは少なくとも約100bpの長さであり、より好ましくは少なくとも約200bpであり、さらに好ましくは少なくとも約300bpであり、さらに好ましくは少なくとも約400bpであり、さらに好ましくは少なくとも約500bpの長さである。好ましい実施形態で、遺伝子断片の長さは約500bpである。固体の基体に付着してアレイを生成するのに使用される遺伝子の領域は、遺伝子の任意の部分でよく、コード部分、非コード部分、5’末端、3’末端などでよい。好ましい実施形態では、毒性学的応答に関係するラット遺伝子の3’末端の約500塩基対を選択してアレイに含める。
【0077】
VII(C)マイクロアレイの作製
遺伝子又はその断片をスライドガラスなど固体の基体に付着させるいくつかの技法が当業者に周知である。1つの方法は、アミン基、アミン基の誘導体、正電荷を有する別の基、あるいは遺伝子又は遺伝子断片の増幅に使用されるプライマーの一端に反応する別の基を付着させてアレイに含めることである。次いで引き続きPCR生成物を増幅することにより、この反応性基が生成物の一端に組み込まれることになる。次いで増幅した生成物を、スライドガラスなど固体の基体に接触させるが、この基体は、アルデヒド、又は増幅したPCR生成物の反応性基と共有結合する別の基で被覆したものであり、したがってスライドガラスに共有結合するようになる。アミノプロプリルシリカン表面化学を使用するその他の方法及びマイクロアレイを作製するその他の方法が開示されている。例えば、Nuwaysir,E.F.他の分子発癌(Molecular Carcinogenesis)、24:153〜159(1999);Kane,M.D.他のNucleic Acids Res.28(22):4552〜7(2000);MacBeath G.及びSchreiber,S.L.のサイエンス(Science)289(5485):1760〜1763(2000);Lockhart,D.J.及びWinzeler,E.A.のネイチャー(Nature)405(6788):827〜836(2000);Cortese,J.D.のサイエンティスト(The Scientist)14(17):25(2000);及びCortese,J.D.のサイエンティスト(The Scientist)14(11):26、(2000)を参照されたい。本発明のその他の実施形態は、実施例でさらに述べる。
【0078】
アレイを使用するその他の方法が知られており、例えば固体の基体に固定化した核酸などのポリマーのアレイが、例えば米国特許第5,744,305号、第5,510,270号、第5,677,195号、第5,624,711号、第5,599,695号、第5,451,683号、第5,424,186号、第5,412,087号、第5,384,261号、第5,252,743号、及び第5,143,854号、並びにPCT WO92/10092、PCT WO93/09668、及びPCT WO97/10365に開示されている。各プローブ配列が支持体の非常に小さい部位、例えば数ミクロンを占めることのできるフォトリソグラフィ及び製作技法が、米国特許第5,631,734号に記載されている。ポリヌクレオチドのアレイが付着される表面を有する基体には、シリコン又はガラスが含まれる。例えば米国特許第5,545,531号に記載されるように、光を通し、光学検出が可能な基体を使用することができる。
【0079】
VIII.毒性学的に関連ある遺伝子の分析及び評価用アルゴリズム
ラット遺伝子、例えば17,421個の1組のラット遺伝子であって、本明細書では「17Kアレイ」と呼ばれる遺伝子からの候補遺伝子のランク付けでは、総合毒性(CT)アレイに含めることができるようにするため、多段階手法を使用することができる。第1に、17Kアレイを使用してどのような実験が行われようとも、個々の遺伝子の値に対して3つのカットオフ基準を定めることができる。すなわち1)誘導倍率/抑制レベル、2)複製スポットの平均蛍光レベル(発現レベルの反映)、及び3)複製スポットの変異係数である。この「カット」を得るための初期スクリーニングは、発現レベル及び測定品質に基づく。
【0080】
第2に、カットが得られる遺伝子の値を集めて全体的なスコアにし、各遺伝子ごとにランク付けしたが、これは6つのランキング基準に基づく。すなわち1)遺伝子がカットオフ基準を満たすスライドの数(NC)、2)スライド同士の一致性%(最初のスライドに対し、2枚目のスライド上で遺伝子の値がカットオフ基準を満たす回数の%)(CC)、3)遺伝子がカットオフ基準を満たす全ての場合での誘導倍率の平均の大きさ(絶対値)(FI)、4)これら誘導倍率スコアの変異係数(他の全てのランキング基準とは異なり、より低いものがより良いと考えられる)(CV)、5)遺伝子がカットオフ基準を満たす場合の全ての複製スポットの平均蛍光値(FL)、及び6)組織の一致性(遺伝子がカットオフ基準を満たす場合の何パーセントかが同じ組織内であった)(CT)。
【0081】
各遺伝子を、各ランキング基準ごとに0から100までのスコアに割り当てた。各ランキング基準スコアは、以下のように計算した。すなわち、全てのスコア中の最低値を最高値から差し引くことによって、全ての遺伝子の範囲を基準に合わせて計算した。次いで各遺伝子に対するスコアを、その遺伝子に対する値から、存在する最低値を差し引くことによって計算し、次いで上記範囲で割って100を掛けた。言い換えれば、各遺伝子に対するスコアは、存在する最小値の最大値に対する割合である。例えば遺伝子のスコアが、その基準での最大値と存在する最小値との差の4分の3である場合、そのスコアは75%になる。CVファクタ(誘導倍率の変異係数)の場合、より低い値がより良いと考えられるので、計算されるスコアを100から差し引いてパーセンテージに変換した。
【0082】
各遺伝子に対する最終ランキングは、6つのランキング基準に基づくそのスコアの重み付け組合せを介して計算することができる。スコアを特定の基準に合わせて計算できない場合、その基準の値全体を方程式から取り除き、したがってランキングは残りのファクタのみに基づいて行われる。
【0083】
IX.毒性学的に関連ある遺伝子を使用する方法
一態様で、本発明は、試験動物(例えばラット)を作用物質に曝露し、試験動物での毒性学的に関連ある1個又は複数の遺伝子の発現を測定することによって、特定の作用物質に対する毒性を決定する方法を提供する。このため、後に参照発現プロファイルと比較して作用物質の毒性を決定することのできる、試験発現プロファイルが生成される。これは、例えば試験発現プロファイルと参照発現プロファイルとの通常の統計的分析により、例えば有意な相関関係を決定することによって、行うことができる。一実施形態では、作用物質を表1又は2から選択する。別の実施形態で、作用物質は、薬物、薬物候補、又は医薬品化合物である。中毒量に達するのに必要とされる毒物投与量及び曝露時間は、本明細書で述べる方法を使用して決定する。別の実施形態で、試験発現プロファイルには、表4、6、7、8、9、又は10からの遺伝子又は遺伝子配列が含まれる。別の実施形態で、参照プロファイルには、例えば表4、6、7、8、9、又は10から実験により得られた1つ又は複数の発現プロファイルが含まれる。別の実施形態では、試験遺伝子発現プロファイルを、データベース、例えば総合毒性(CT)データベースに記憶された参照遺伝子発現プロファイルと比較することができる。別の実施形態で、遺伝子発現プロファイルは、特定の器官での応答性、例えば腎臓や肝臓、脾臓、心臓、肺、精巣、脳での応答性に関連付けられる。
【0084】
別の実施形態では、毒性学的に関連あるラット遺伝子を使用して、毒性学的に関連ある遺伝子の部分遺伝子配列に対応する遺伝子から選択されたポリヌクレオチドを含むアレイを得る。一実施形態で、アレイは、それぞれ少なくとも20個のヌクレオチドの遺伝子又は部分遺伝子配列を含む。別の実施形態で、アレイは、それぞれ少なくとも50個のヌクレオチド、少なくとも100個のヌクレオチド、少なくとも200個のヌクレオチド、少なくとも300個のヌクレオチド、又は少なくとも500個のヌクレオチドの遺伝子又は部分遺伝子配列を含む。別の実施形態で、アレイは、表4の部分遺伝子配列に対応する、毒性学的に関連ある遺伝子を含む。その他の実施形態で、アレイは、表6、7、8、9、又は10の部分遺伝子配列に対応する、毒性学的に関連ある遺伝子を含む。さらに別の実施形態で、アレイは、特定の器官での応答性、例えば腎臓や肝臓、脾臓、心臓、肺、精巣、脳での応答性に関連する部分遺伝子配列に対応した、毒性学的に関連ある遺伝子を含む。
【0085】
別の態様では、実質的に相同な配列を選択するため、本明細書で述べるアレイを使用することによって、ラット以外の動物(例えばヒトやイヌ、ヒト以外の霊長類)からの毒性学的に関連ある遺伝子配列を得ることができる。当業者に知られるように、上述の計算された配列アライメントを使用することによって、又はハイブリダイゼーション技法によって、ホモロジーを決定することができる。核酸ハイブリダイゼーションは、その相補性の程度やハイブリダイゼーション反応条件のストリンジェンシーなどのファクタに依存する。緊縮状態を使用して、相補性の程度が高い核酸二重鎖を同定することができる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーを調節する手段は当業者に周知である。例えば、Sambrook他の「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989;Ausubel他の「分子生物学における現行プロトコル(Current Protocols In Molecular Biology)」John Wiley & Sons、1996及び定期改訂版;及びHames他の「核酸ハイブリダイゼーション:実用的手法(Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach)」IRL Press,Ltd.、1985を参照されたい。一般に、ストリンジェンシーを増す条件(すなわちより緊密に一致する二重鎖を形成するため選択する)には、高温、低イオン強度、及び溶媒の有無が含まれ、より低いストリンジェンシーの場合は、温度を低くし、イオン強度を高くし、溶媒濃度を高くし又は低くする。その他の非ラット動物での、毒性学的に関連ある遺伝子の同定は、どの種が最も毒性応答を引き起こし易いか評価することによって、どの種が最も動物モデルに適するか決定するのを助けることができる。
【0086】
別の態様では、ある薬物を投与したときにラットの遺伝子発現プロファイルを比較することができ、別の薬物を投与したときには第2の遺伝子発現プロファイルと比較することができる。毒性学的に関連あるデータは、本明細書に開示するアルゴリズムを使用して相関関係をとることができる。薬物同士の相互作用の影響により、同様の組の遺伝子をアップレギュレートし又はダウンレギュレートすることができる。この作用は相加的又は相乗的でよい。別の実施形態では、薬物同士の相互作用の影響により、機能に関係ない異なる遺伝子の組を誘発することができる。別の実施形態では、本明細書に開示する方法及び毒性学的に関連ある遺伝子の組によって、表7、8、9、及び10に示されるように、標的器官及びその内部への中毒量を決定することが可能になる。これは、薬物が目的とする標的器官が1つであって多器官に毒性を及ぼさないものである場合の薬物設計に有用である。別の実施形態では、方法及び毒性学的に関連ある遺伝子の組を使用して、作用物質に対する毒性応答を予測することができるが、この場合、明白な毒性が現れる期間中繰り返し曝露する。そのような作用物質の例には、ワンヒット発癌性物質(例えばアフラトキシンB1、ジメチルニトロサミン、ENUなど)、又はマルチドーズ発癌性物質(例えばフェノバルビタールやWY14643)がある。これら発癌性物質に対する分子毒性応答は、これら作用物質への曝露に応答して生じる任意の巨視的変化に先んじて決定することができる。
【0087】
X.毒性学的データベースを生成するために毒性学的応答データを使用する方法
種々の投与量及び/又は種々の時点で1種又は複数の作用物質に応答してラットから細胞、組織、又は器官のデータを収集することにより、毒性学的応答に関する情報、例えば参照発現プロファイルを収集したデータベースを構築することができる。このデータベースでは、特定の作用物質又はそれらの組合せに対する毒性学的応答を評価することが可能になる。
【0088】
毒性遺伝学の1つの実用的な適用例は、遺伝子発現に基づいて一連の作用物質のランク付けを助けることである。初期ランク付けは、特定のストレス又は損傷、例えばDNA損傷を示す1組の遺伝子に関する最大変化の平均パーセントを決定することによって行われる(例えばwaf−1、DNA Pol β、c−abl、サイクリンG、Ape、及びMgmt)。
【0089】
リード作用物質の優先順位を付けるために遺伝子発現データを使用する別の方法は、問題となっている全ての遺伝子に関して完全な用量−応答曲線を構成することである。閾値レベルを超えて引き起こされる各遺伝子のEC50を決定する(EC50は、作用物質に対し、最大50%の遺伝子に応答が生じる濃度である)。次いで作用物質を、問題となっている遺伝子に関するEC50平均によってランク付けすることができる。EC50が最も低い作用物質は、より毒性が高いと考えられる。
【0090】
ラット遺伝子アレイは、ある特定の作用物質がどの経路に影響を及ぼすかといった、誘導効果を予測するのに使用できる情報も生成することができる。これは、差次的遺伝子発現を観察して、どの経路が毒物応答遺伝子を含みどの経路に遺伝子が影響を及ぼすかを分析することによって実現される。この情報は、組織応答、全器官応答、及び/又は系応答を予測するのに使用することができる。全器官応答を予測する能力は、薬物、医薬品化合物の開発、及び化学物質の使用においてさえ、非常に大きい可能性を有すると考えられる。
【0091】
下記の実施例は例示を目的とし、本発明をいかなる方法によっても限定するものではない。当業者なら、本発明の趣旨及び範囲を保持しつつ、修正が可能であることは明白であろう。
【実施例1】
【0092】
実験データによる、毒性学的に関連ある遺伝子の発見及び特徴付け
セクション1 調製及びマイクロアレイ上のプリント可能なラット遺伝子
a.ポリメラーゼ連鎖反応
17,241個のラット遺伝子を、M13フォワードプライマー及びM13リバースプライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。M13フォワードプライマーの配列はCTCAAGGCGATTAAGTTGGGTAAC(配列番号709)であり、M13リバースプライマーの配列はGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGC(配列番号710)であった。M13リバースプライマーは、PCR生成物のセンス鎖(5−3’)とガラスマイクロアレイスライドとの結合が確実になるよう結合されたC12アミン結合を有していた。アミンリンカーは、いくつかの任意の商業上の供給元、例えばシンセゲン(Synthegen)で、プライマーの合成中に付加することができる。
【0093】
PCR反応用に以下の成分を合わせた:H2O 21リットル、10×PCR緩衝液2.5リットル、10mM dNTP 0.12リットル、25ng/l M13フォワードプライマー 1リットル、25mg/l M13リバースプライマー 1リットル、グリセロールストックからのクローンのサンプル、及びTaqポリメラーゼ 0.5リットルを合わせて全体積を25リットルにした。この混合物の反応を95℃で5分間行い、次いで95℃で30秒間、45℃で30秒間、72℃で30秒間、その後72℃で5分間という条件下のサイクルを35回繰り返し、最後に、サンプルがサーモサイクラから除去されるまで4℃で行った。約4リットルのPCR生成物が除去され、1%アガロースゲル上で実施してPCR反応が確実に首尾良く行われるようにした。
【0094】
b.毒性学的に関連ある遺伝子のスライドガラスへの結合
増幅した生成物を、標準的なエタノール沈殿法によって、あるいは市販のPCRクリーンアップキット、例えばMillipore、Qiagenなどによって精製した。次いで清浄化したPCR生成物を、増幅生成物のアミン基と反応することができかつ共有結合を形成することができるスライドガラスに、固定化し又は「スポット」した。PCR生成物は、MDジェネレーションIIアレイスポッターを使用して被覆スライドガラス上にスポットした。この実施例で使用する用語及び装置は下記の通りであった。
スポッター:MDジェネレーションIIアレイスポッター主要機器
スポットチャンバ:ピン、プレート、トレイ、及びほとんどのスポッター機械類を収容する、ガラスに包封されたスポッターの領域
制御器:スポッターユニットの右側にある専用Dellコンピュータ及びモニタ
ピン:標的を持ち上げスポットする、スポッターユニット内の(6)本の微細なチューブ
スライド:片面に特殊コーティングが施された、標準サイズの顕微鏡用スライドガラス
プレート:スポットされる標的溶液を保持する、プラスチックの96ウェルプレート
標的:スポッターによってスライド上に付着される、PCR生成物溶液
N2タンク:「窒素、圧縮(Nitrogen、Compressed)」というラベルが付いた、高さ約1.5m(5フィート)の鋼製ガスタンク
N2:N2タンクからのN2ガス
空調装置:スポットチャンバの窓に設置されたKenmore空調装置
加湿装置1:窓に対するEssick2000蒸発冷却器
加湿装置2:スポッターユニット内への白色柔軟ダックを有するBemis Airflow
加湿装置3:壁面に対するBemis Airflow
加湿装置4:Kenmore QuietComfort 7
真空ポンプ:Gast Laboratory オイルレスピストン真空ポンプ
ダンプボックス:NaCl/水のスラリが入っているプラスチック封止可能容器
【0095】
試薬溶液に使用される材料は、Nanopure水、0.2M KCl(ストック2M KCLを水に溶かした1/10希釈液)、及び95%EtOHであった。温度制御は60°に調節した。スポッターチャンバは、相対湿度が39%よりも高くなるように、かつ65℃未満になるように調節した。スポットピンは、20サイクル予洗した。スライドガラスには、まずN2ガスをそれぞれ片面に約2秒間吹き付けた。このスライドを、アレイスポッター実行値に従ってスポッターに挿入した。清浄な細い棒をスライドの中央右端に合わせ、スライドが金属製のピンに対して垂直に配置されるまで、静かに左に押すことによって、スライドを位置合わせした。スライドを載せて真っ直ぐにした後、目視検査をして破片が落ちていないことを確認した。湿度については、相対湿度が39%よりも高いことを確認した。MDスポッターは、1回の操作で最大限16枚のプレートを認識し、8枚のプレートの後に自動的に休止する。またMDスポッターは、不変の順序でプレートを順次進んで行き、ただ1つのプレートを供給するスキームに対応するようプログラムされていない。したがって、ラットアレイに対してスポット操作を行うため、プレートを手動で回転(又はシャッフル)させることが重要であった。各スライド上に遺伝子(PCR生成物)を2回スポットし、合計で3000個の遺伝子を1枚のスライド上にプリントした(合計6000スポット)。17,241個の全ての遺伝子を含めるため、1組6枚のスライドを用いた。位相差顕微鏡を用い、品質管理の目的で、プリント(スポット)したマイクロアレイの試験を行い、スポットのモルホロジー及び全ての遺伝子の存在を評価した。
【0096】
c.ブロッキング(スポット後のスライド調製)
このブロッキング手順は、非特異的なバックグラウンド信号を低減するので重要である。このプロトコルで得られる量はスライド19枚分であるが、当業者なら適宜変更を加えることができるであろう。19枚よりも多いスライドをブロックする場合は、より多くの染色シャーレ及びスライドラックが必要になる。清浄なガラス容器を得て、Nanopure H20を満たした。その容器をホットプレート上に置き、高温に加熱した。500mLのブロッキング溶液ボトルに20%SDSを2.5ml添加することによって、ブロッキング溶液を作製した。ブロッキング溶液をマイクロ波で2.5分間温め、温度が50℃に達したかどうか決定するための確認をした。溶液の温度がまだ50℃ではない場合、所望の温度に達するまでその溶液をマイクロ波で10秒間隔で温めた。4×SSC溶液を入れたオービタルシェーカーに1個の染色シャーレを配置して、撹拌速度75rpmにした。スライドを金属ラックに置き、沸騰水に数分間(例えば2分)入れた。スライドを沸騰水から出して、短時間冷却した。次いでスライドを、4×SSC溶液が入っている染色容器に移し、オービタルシェーカー上に数分間(例えば2分)置き、染色容器内でナノピュア水で濯ぎ、次いで簡単に、ブロッキング溶液中に約15分間置いた。15分後、スライドをブロッキング溶液から出し、ナノピュア水が入っている3個の別々の容器にそれぞれ浸漬することによって3回濯いだ。スライドの上面に組織を軽く押し当て、そのスライドを約5分間、1000rpmの速度で遠心分離にかけた。
【0097】
セクション2 遺伝子の差次的発現を決定する試験のためのラットcDNAを得るための毒性試験
a.ラットの投与、及び生体内で中毒量の薬物/化学物質に曝露した後の組織の採取
約2.5カ月齢のSprague−Dawleyオスラットを使用して、毒性試験を実施した。中毒量の薬物/化学物質にラットを曝露する実験の設計には、毒物投与量及び化合物の投与経路を決定することが含まれる。ラットを、特定濃度の化合物を投与した処理済みのラットと、化合物を溶液又は懸濁液(例えば生理食塩水)に混合したビークルのみ投与した対照ラットに分ける。可能な場合は、生理食塩水をビークルとして使用した。体重1kg当たり10mlの体積の薬物、化合物、又は適切なビークルを、ラットの腹腔内に注射した。投与される各薬物又は化学物質の濃度は、毒性が従来の毒性学的方法(例えば組織病理学、血清化学、血液学)によって記録されている用量であり、第2の用量は中毒量の25%である。食物を与えずに10時間経過した後のラットに投与し、次いで6時間、24時間、及び72時間後に殺した。3匹の対照ラット及び3匹の処理済みラットを、各薬物ごとに各時点で安楽死させる。各ラットは、吸入によるCO2過剰摂取により非常に鎮静作用が効いており、次いで最大量の血液を抜いた。この血液を、血清単離用としてクロットチューブに分取し、血液リンパ球単離用としてヘパリン化チューブに分取する。この血液の抜き取りによるラットの瀉血によって、ラットを殺す。組織の採取方法は非常に重要であり、組織内のmRNAの品質が確実に保たれるようにする。次いでラットの体を切開し、何人かの解剖者により特定の器官/組織を素早く取り出して、すぐに液体窒素中に置く。血液リンパ球、血清、尿、肝臓、肺、心臓、精巣、脾臓、骨髄、脳、及び薬物/化学物質の特定の標的になり得るその他の標的を採取した。器官/組織の全てを動物が死んでから3分以内で完全に冷凍して、mRNAが確実に分解しないようにする。次いで器官/組織を、十分にラベルが付されたプラスチックフリーザークオリティバッグにパックし、器官/組織サンプルの一部からmRNAを単離する必要が生じるまで、−80度で保存する。
【0098】
血清化学的な変化は24時間と72時間で評価した。病理組織学的評価は、毒性評価のため72時間後に病理学者が実施した。血液学的検査及び尿の分析は72時間後に評価した。
【0099】
b.動物からの全RNAの単離
高品質及び高純度の全RNAを組織サンプルから単離するため、以下の材料、すなわちQiagenRNeasyミディキット、2−メルカプトエタノール、液体N2、組織ホモジナイザー、ドライアイスを使用する。
【0100】
RNaseによってRNAの分解が生じるというリスクを最小限に抑えるため、予防策をとることが重要である。サンプルは、指定された場合は氷上で保持すべきであり、常に作業領域内では手袋をはめ、装置はリボヌクレアーゼ阻害剤、例えばRNase Zap(Ambion(登録商標)Products、Austin、TX)で処理する。RNAの分解を防止するために、作業領域及びこの手順で使用される材料を清浄にし、リボヌクレアーゼを存在させないことが非常に好ましい。チップ及び遠心管をオートクレーブ処理してもリボヌクレアーゼは除去されない。下記のプロトコルは、最適な結果が得られるよう修正を加えたQiagen(登録商標)RNeasy(登録商標)ミディキットを基にする。この全RNA単離技法は、動物組織からRNAを単離するのに使用され、より小さいサンプルに適応するよう修正を加えることができる。
【0101】
組織を破壊する必要がある場合、少量の液体窒素を入れた秤量ボート内に配置した、2層のアルミニウム箔上に組織を置くことができる。アルミニウム箔を組織の周りに配置し、次いでその組織に、箔で包んだ小さいハンマで鈍い力を加えた。
【0102】
肝臓又は腎臓に関しては、約0.15〜0.20gの組織を計り取り、15mlのコニカルチューブに入れた。他のサンプルを計量しているときは、全ての組織をドライアイス上に保持した。
【0103】
RLT緩衝液約3.8mlを、サンプルが入っているチューブに添加した。QiagenのRLT緩衝液(登録商標)は、必要とされる溶解緩衝液各1.0mlにβメルカプトエタノール10μlを添加することにより、前もって調製することができる。組織は、ロータ−ステータホモジナイザーを45秒間使用して均質化した。S25N−10G吐出要素を備え速度4に設定したIKA Ultra Turrax T25ホモジナイザーを使用することができる。あるいは、Virtishear Cyclone 750W ローター/ステータホモジナイザー(Virtis製品#278077)を、7mmの極微小鋸歯軸及び発電器(長さ195mm、処理範囲0.25ml〜20ml、製品#372718)と共に使用することができる。均質化後、全てのサンプルが均質化されるまでサンプルを氷上で保存した。サンプル間で均質化チップを清浄にするため、チップをまず数秒間、95%エタノール中で作動させ、次いで新たに95%エタノールを吹き付けることによって濯いだ。このプロセスを、ナノピュア水で繰り返した。
【0104】
Beckman GS−6(又は同等のもの)遠心装置を用い、組織溶解産物を室温で10分間、3700〜3800rpmで遠心分離して、核を除去し、したがって、DNA汚染を低下させた。
【0105】
溶解産物の上澄みを、いかなるペレットもまたいかなる脂肪層も含まれないようにまた混合されないように慎重に、DEPC処理したH2Oに溶かした等体積の70%EtOHが入っている清浄な15mlのコニカルチューブに移した。サンプル約3.8mlを、15mlの遠心管内に配置したRNeasyスピンカラムに添加し、3000×g(3690〜3710rpm、Beckman GS−6)で5分間遠心分離した。素通り画分は廃棄した。残りのサンプルを適切なカラムに添加し、3000×gで5分間回転させ、その素通り画分を廃棄した。
【0106】
緩衝液RW1(Qiagen(登録商標))約4.0mlをカラムに添加し、以前のように回転させ、次いで緩衝液RPE(Qiagen(登録商標))約2.5mlをカラムに添加して3000×g(3690〜3710rpm、Beckman GS−6)で2分間回転させた。この実施例では、RPE緩衝液を濃縮液として供給し、したがって使用前に95%EtOHを4体積量添加した。ミディキットでは、95%EtOH約220mlをRPE 55mlに添加する。緩衝液RPE 2.5mlをさらに添加し、5分間回転させて、同様にカラムを完全に乾燥した。チップを含むカラムは、次の溶離ステップに向けて乾燥すべきである。
【0107】
溶離では、清浄な15mlのチューブに結合したRNAを有するカラムを移し、リボヌクレアーゼを含まない水200μlをそのカラムに添加して、1分間静置し、3000×g(3690〜3710rpm、Beckman GS−6)で3分間回転させた。このステップを、リボヌクレアーゼを含まない水200μlを用いる以外、同じチューブ内で繰り返した。
【0108】
c.汚染DNAの除去
単離したRNAサンプルは、定量のため吸光度の読取りを測定する前又は後に、下記の塩化リチウム(LiCl)プロセスを使用して沈殿させることができる。サンプルの体積を測定した。このため、Ambion製(カタログ#9480)の約1/3の体積のLiCl PPT溶液を添加し、チューブを逆さにすることによって混合した。LiClは溶解状態であるべきである。そうではない場合、pHを8.0に調節することが必要と考えられる。この溶液を、−20℃で30分間置き、4℃で10分間、13,000RPMで遠心分離した。目に見えるペレットがない場合、サンプルを一晩、−20℃に戻し、次いで遠心分離を繰り返すのに役立つ。上澄みを分離管に移し、DEPC処理した水に溶かして氷冷した70%エタノール1mlを添加することによって洗浄し、静かに逆さにした。次いでこのチューブを4℃で10分間遠心分離し、上澄みを廃棄し、ペレットを風乾した。ペレットをRNA貯蔵緩衝液(Ambionカタログ#7000)に再懸濁した。
【0109】
あるいは、Qiagen(登録商標)ミディキット手順に、このキットの取扱い説明書に記載されるようDNAseステップを組み込むことによって、汚染DNAを除去した。
【0110】
d.RNAの量の測定
収量を測定するため、260nmでO.D.を得て、約2.0μlのRNAを98μlのH2Oに添加した。下記の式を計算に使用した。
(吸光度)×(希釈係数)×(40)/1000=RNAの量μg/ml
サンプルの計算では、
吸光度=0.45
希釈係数=50
(0.45×50×40)/1000=RNA濃度μg/ml
【0111】
e.マイクロアレイ逆転写反応
上記開示したように、まず対照細胞及び処理済み細胞からRNAを単離することによって、トータル又はmRNAから、蛍光標識したファーストストランドcDNAプローブを作製した。毒性学的に関連ある遺伝子に特異的なDNAをスポットしたマイクロアレイのスライドに、このプローブをハイブリダイズする。この実施例を実施するのに必要な材料は、トータル又はメッセンジャーRNA、プライマー、Superscript II緩衝液、ジチオトレイトール(DTT)、ヌクレオチドミックス、Cy3又はCy5染料、Superscript II(RT)、酢酸アンモニウム、70%EtOH、PCR機、及び氷である。
【0112】
トータルRNA 20μg(又はmRNA 2μg)を含有する各サンプルの体積を計算した。各RNAサンプルの全体積を14μlにするのに必要なDEPC水の量も計算した。RNAを希釈しすぎた場合、スピードバック内で加熱せずにサンプルを濃縮して、14μl未満の体積にする。スピードバックは、サンプルをこれらの条件下で凍結乾燥できるように、0ミリトルの真空を発生させることができなければならない。十分な体積のDEPC水を添加して、各RNAサンプルの全体積を14μlにした。各PCRチューブに、サンプル又は対照反応の名称のラベルを付けた。適切な体積のDEPC水と、アンカーオリゴdTミックス(−20℃で保存)8μlを、各チューブに添加した。
【0113】
次いで適切な体積の各RNAサンプルを、ラベル付きのPCRチューブに添加した。サンプルをピペットで分取することによって混合した。次のステップに向けて全てのサンプルの準備ができるまで、チューブを氷上で保持した。チューブは、次のステップに進める状態になるまで氷上で保持することが好ましい。サンプルをPCR機内で10分間、70℃でインキュベートし、その後サンプルチューブを取り出すことができるようになるまで4℃でインキュベートした。サンプルチューブを少なくとも2分間、4℃で放置した。
【0114】
Cy染料は感光性であり、したがってCy染料を含有するいかなる溶液又はサンプルも、このプロセスのこの時点以降はできる限り光が届く範囲外に保つべきである(例えば箔で覆う)。十分な量のCy3及びCy5逆転写混合物を、下記の配合表に従い規模を拡大することによって、実際に行われるよりも1つ又は2つ多い反応に関して調製した。
Cy3で標識する場合
Superscript II用5×ファーストストランド緩衝液 8ul
0.1M DTT 4ul
ヌクレオチドミックス 2ul
Cy3の1:8希釈液(例えば0.125mM cy3dCTP) 2ul
Superscript II 2ul
Cy5で標識する場合
Superscript II用5×ファーストストランド緩衝液 8ul
0.1M DTT 4ul
ヌクレオチドミックス 2ul
Cy5の1:10希釈液(例えば0.1mM cy5dCTP) 2ul
Superscript II 2ul
【0115】
ピンク色のCy3混合物約18μlを各処理済サンプルに添加し、青色Cy5混合物18μlを各対照サンプルに添加した。各サンプルを、ピペットで分取することにより混合した。サンプルをPCR機内に45℃で2時間置き、その後、サンプルチューブを取り出す準備ができるまで4℃にした。エタノール沈殿混合物600μlが入っているエッペンドルフチューブにサンプルを移した。EtOH沈殿混合物の一部を使用してPCRチューブを濯いだ。このチューブを逆さにして混合した。サンプルを、−80℃の冷凍器内に少なくとも20〜30分間置いた。望むなら、サンプルを−20℃で一晩又は週末にかけて放置することができる。
【0116】
f.逆転写反応からの不純物の除去
所望のcDNA生成物の他、完全なRT反応は、除去しなければならない不純物を含有する。このような不純物には、過剰なプライマー、ヌクレオチド、及び染料が含まれる。不純物を除去する1つの方法は、QIAquick PCR精製キットの取扱い説明書(Qiagenカタログ#120016)に従って行った。
【0117】
あるいはエタノール沈殿及び樹脂ビーズ結合によって、完全なRT反応から不純物をなくした。サンプルを15分間、20800×g(エッペンドルフ型5417Cの場合は14000rpm)で遠心分離にかけ、上澄みを慎重にデカントした。目視可能なペレットが見えた(Cy3の場合はピンク/赤、Cy5の場合は青)。チューブは、固定位置で遠心分離にかけることが好ましく、したがってペレットは、チューブの既知の領域に存在することになる。ごくまれに、緊密なペレットではなくプローブがチューブの片側に広がっているのが見える。ペレットが白色か又は存在しない場合、反応は最大の効率で生じない。氷冷した70%EtOH(チューブ1本当たり約1ml)を使用してチューブを洗浄し、そのチューブを引き続き逆さにして、チューブ及びペレットを清浄にした。このチューブを10分間、20800×g(エッペンドルフ型5417Cの場合は14000rpm)で遠心分離にかけ、次いで上澄みを慎重にデカントした。チューブをフラッシュ回転させ、残っているEtOHの全てをピペットで除去した。光から保護した状態で、チューブを約5〜10分間風乾した。乾燥時間長さは、環境の自然の湿度に応じて異なる。例えばサンタフェの環境では、約2〜5分の乾燥時間が必要である。ペレットは乾燥しすぎないことが好ましい。ペレットを乾燥したら、そのペレットを80ulのナノピュア水に再懸濁する。cDNA/mRNAハイブリッドを、95℃のヒートブロック内で5分間加熱することにより変性させ、フラッシュ回転させた。次いで「Millipore MAHV N45」96ウェルプレートの蓋に、適切なサンプル番号を付けた。青色ガスケット及びウェイストプレート(V字底部96ウェル)を取着した。Wizard DNA結合樹脂(Promegaカタログ#A1151)を、再懸濁に使用する直前に振盪させた。Wizard DNA結合樹脂約160μlを、使用されるフィルタプレートの各ウェルに添加した。これをマルチチャネルピペットで行う場合は、詰まるのを防止するために、広いオリフィスピペットチップを使用する。フィルタの膜にはピペットチップが接触せず、又はピペットチップで穿刺されないことが非常に好ましい。結合樹脂が入っている適切なウェル(80μlのcDNAサンプル)にプローブを添加した。ピペットを1〜10回上下させることによって反応物を混合する。このステップでは、規定の、フィルタ処理されていないピペットチップを使用することが好ましい。プレートを、2500rpmで5分間、遠心分離にかけ(Beckman GS−6又は同等のもの)、次いで濾液をデカントした。80%イソプロパノール約200μlを添加し、プレートを2500rpmで5分間回転させ、濾液を廃棄した。次いで80%イソプロパノールによる洗浄及び回転ステップを繰り返した。フィルタプレートを清浄な収集プレート(v字底部96ウェル)上に配置し、ナノピュア水80μl(pH8.0〜8.5)を添加した。pHをNaOHで調節した。フィルタプレートを、テープで収集プレートに固定して、最終の回転中にプレートが確実に滑らないようにした。プレートを5分間静置し、2500rpmで7分間遠心分離にかけた。
【0118】
g.cDNAプローブの蛍光読取り及びマイクロアレイ上でのハイブリダイゼーション
任意選択で、cDNAプローブへの蛍光の取込みを、半定量的に評価する。この蛍光の取込みにより、清浄化されたRT生成物のcDNAに取り込まれた染料の量を測定することができ、酵素作用又は染料の取込みが失敗したかどうかの証拠を示すことができる。QIAquick PCR精製キット(Qiagenカタログ#120016)を使用して清浄化されたRT生成物の色を目視評価することは、RT反応が失敗したかどうかを判断する代替の方法である。
【0119】
読取りは体積によって変わるので、一貫した量のcDNAを、384ウェルの100μlアッセイプレート(Falcon Microtestカタログ#35−3980)プレートの各ウェルにピペットで分取することが好ましい。このステップでは、必要なら対照又は同一のサンプルを溜めるべきである。プローブを、Millipore96ウェルプレートから、384ウェルアッセイプレートのウェルに1つおきに移した。これは、マルチチャネルピペットを使用して行った。溜めた複製サンプルについては、60μlのアリコートをアッセイプレートのウェルに移した。384ウェルフォーマットでCy3−Cy−5を読み取るためにプログラムされたWallac Victor 1420マルチラベルカウンタワークステーションを使用して、Cy−3及びCy−5の蛍光を分析し、そのデータをディスクに保存した。Cy−3(20μg)の典型的な範囲は、250〜700,000蛍光単位である。Cy−5(20μg)の典型的な範囲は、100〜250,000蛍光単位である。Wallac 1420蛍光分析器の設定は下記の通りであった。
Cy3
CWランプエネルギー=30445
ランプフィルタ=P550スロットB3
エミッションフィルタ=D572ジスプロシウムスロットA4
エミッションアパーチャ=ノーマル
カウント時間=0.1秒
Cy5
CWランプエネルギー=30445
ランプフィルタ=D642サマリウムスロットB7
エミッションフィルタ=D670スロットA8
エミッションアパーチャ=ノーマル
カウント時間=0.1秒
【0120】
h.ドライダウンプロセス
cDNAプローブを適切な体積でハイブリダイゼーション緩衝液に再懸濁できるように、cDNAプローブの濃度がしばしば必要である。対照cDNA(Cy−5)のサンプルを各試験cDNA(Cy−3)と混合する。これは、処理済み及び適切な対照cDNAサンプルを同じマイクロアレイ上でハイブリダイゼーションすることが可能になるので、非常に重要である。エッペンドルフチューブに各試験サンプルごとにラベルを付け、混合したcDNAサンプルを適切なチューブに添加した。これらのチューブをスピードバック内に置き、スピードバックのどの窓も箔で覆った状態でドライダウンした。このとき、熱(45℃)を使用して乾燥プロセスを迅速化することができる。時間は機械により様々に変化する。乾燥プロセスは、150μlのサンプルをSavantで乾燥する場合、約1時間を要する。サンプルは、乾燥した形で、−20℃で最長14日間保存することができる。
【0121】
i.マイクロアレイハイブリダイゼーション
標識cDNAプローブを、スライドガラスマイクロアレイ上で1本鎖共有結合DNA標的遺伝子にハイブリダイズするために、下記の材料を使用した。すなわちホルムアミド、SSC、SDS、2μmのシリンジフィルタ、サケの***のDNA(Sigma、カタログ#D−7656)、ヒトCot−1 DNA(Life Technologies、カタログ#15279−011)、ポリA(40量体、Life Technologies、特注合成)、酵母tRNA(Life Technologies、カタログ#15401−04)、ハイブリダイゼーションチャンバ、インキュベータ、カバースリップ、パラフィン、ヒートブロックである。アレイを完全に覆って、適正なハイブリダイゼーションが確実に行われるようにすることが好ましい。
【0122】
ハイブリダイゼーション緩衝液を、1つのcDNAサンプル(対照ラットcDNAに処理済みのラットcDNAを加えたもの)当たり約30μl調製した。全ハイブリダイゼーションに対して作製される全体積約100μlは、濾過中に失われる可能性があるので、必要とされるよりもやや多く作製すべきである。
【0123】
0.2μmシリンジフィルタを用いて溶液を濾過し、次いでその体積を測定した。緩衝液100μl当たり、サケの***のDNAを約1μl(10mg/ml)添加した。
【0124】
あるいは、ハイブリダイゼーション緩衝液を以下のように作製した。
【0125】
0.2μmシリンジフィルタを用いて溶液を濾過し、次いでその体積を測定した。緩衝液100μl当たり、サケの***のDNA 1マイクロリットル(9.7mg/ml)、ヒトCot−1 DNA 0.5μl(5μg/μl)、ポリA 0.5μl(5μg/μl)、酵母tRNA 0.25μl(10μg/μl)を添加した。
【0126】
ハイブリダイゼーションに使用した材料は、2つのエッペンドルフチューブラック、ハイブリダイゼーションチャンバ(1つのチャンバ当たり2つのアレイ)、スライド、カバースリップ、及びパラフィルムであった。各ハイブリダイゼーションチャンバに、ナノピュア水を約30μl添加した。スライド及びカバースリップを、N2の流れを使用して清浄にした。ハイブリダイゼーション緩衝液約30μlを乾燥したプローブに添加し、5秒間静かに撹拌した。プローブを、暗所に室温で10〜15分間そのままにし、次いで数秒間静かに撹拌し、次いで微量遠心管でフラッシュ回転させた。プローブを5分間煮沸し、20800×g(14000rpm、エッペンドルフ型5417C)で3分間遠心分離にかけた。プローブを70℃のヒートブロック内においた。ハイブリダイゼーションの準備ができるまで、各プローブをこのヒートブロック内に残した。
【0127】
カバースリップ上に25μlをピペットで分取した。チューブの底部に材料が触れないようにし、気泡が生じないようにすることが非常に好ましい。これは、ピペットチップに約1μlが残ったままであることを意味する。スライドの表面を下に向けた状態で、サンプル上に静かに下ろし、アレイを含むスライド部分がカバースリップで覆われるようにした。スライドをハイブリダイゼーションチャンバ内に配置した(1つのチャンバ当たり2)。チャンバの蓋をパラフィルムで包み、スライドを、42℃のインキュベータ内にある42℃の湿度チャンバ内に配置した。プローブ又はスライドは、長期間にわたり室温にしないことが好ましい。スライドを、18〜24時間インキュベートした。
【0128】
j.ハイブリダイゼーション後の洗浄
アレイ上の標的cDNAのセンス鎖に緊密に結合している1本鎖cDNAプローブのみ得るには、全ての非特異的に結合しているcDNAプローブをアレイから除去すべきである。全ての非特異的に結合しているcDNAプローブの除去は、アレイを洗浄して、以下の材料、すなわちスライドホルダ、ガラス洗浄シャーレ、SSC、SDS、及びナノピュア水を使用することによって行った。標準的な洗浄条件下では、そのばらつきによってデータが大きく影響を受ける可能性があるので、慎重に行うことが非常に好ましい。
【0129】
6個のガラス緩衝チャンバ及びスライドガラスホルダは、2×SSC緩衝液を30〜34℃に加熱してガラスシャーレの3/4の体積を満たすように、又はマイクロアレイを浸すのに十分な体積を満たすように設定した。温度が35℃よりも高くなるとプローブが外れる可能性があるので、2×SSC緩衝液の加熱の際には注意を払うことが重要である。スライドをチャンバから取り出し、スライドガラスホルダに配置した。スライドは、完全に乾燥させないことが好ましい。スライドを2×緩衝液中に配置するが、スライドは、1つのシャーレに対して4枚以下にするとよい。カバースリップは、2〜4分以内に落とすべきである。カバースリップを2〜4分以内で落とさない場合は、非常に静かに撹拌を行えばよい。ステンレス鋼製スライドキャリアを第2のシャーレに配置し、2×SSC、0.1%SDSで満たした。次いでスライドをスライドガラスホルダから外し、2×SSC、0.1%SDS中に沈めたステンレス鋼ホルダに配置し、5分間浸漬した。ステンレス鋼スライドキャリア内のスライドを、0.1×SSC及び0.1%SDSが入っている次のガラスシャーレに5分間移した。次いでステンレス鋼キャリア内のスライドを、0.1×SSCが入っている次のガラスシャーレに5分間移した。依然としてスライドキャリア内にあるスライドを、ナノピュア水(18メガオーム)中に1秒間移した。スライドを乾燥させるため、下に折り畳んだペーパータオルを置いたマイクロキャリアプレート上に、ステンレス鋼スライドキャリアを配置した。スライドの上面に、組織を静かに押し当てた。次いでスライドを遠心機ベックマン(Beckman)GS−6又は同等のもの)に入れて、1000rpmで5分間回転させた。スライドを風乾するとバックグラウンドの増大につながるので、風乾ではなくスピン乾燥することが非常に重要である。
【0130】
セクション3 毒素に曝露したラットにおける17,241遺伝子の差次的発現の評価
a.毒性学的に関連あるラット遺伝子の同定
生後約2.5カ月のSprague−Dawleyオスラットを使用して、毒性試験をした。毒性試験のセクション(a)で述べたように、3匹のラットに対し、殺す時点に合わせてそれぞれの用量で薬物/化学物質を腹腔内注射し、別の3匹のラットを対照動物として使用した。17,241遺伝子アレイの試験用に投与された薬物/化学物質は、下記の通りであった。
【0131】
【0132】
ビークルを注射したラットの対応組織と共に上記表に示す組織サンプルを、セクション2で述べたように、染料を取り込ませてcDNA用に処理した。これらcDNAサンプルをハイブリダイズした6枚のマイクロアレイスライドの組は、セクション1で述べた通りであり、それらにスポット付けした標的は、17,421個の遺伝子からのPCR生成物であった。洗浄し乾燥したハイブリダイズ済みのスライドを、アキソン・インスツルメンツ社製(Axon Instruments Inc.)ジーンピクス(GenePix)4000Aマイクロアレイスキャナ上でスキャンし、このスキャンからの蛍光の読取りを、ジーンピクス(GenePix)ソフトウェアを使用してコンピュータで定量化ファイルに変換した。
【0133】
b.毒性学的に関連ある遺伝子を同定し、選択し、評価するアルゴリズムの使用
総合毒性(CT)アレイに含めることができるようにするため、本明細書では「17kアレイ」と呼ぶ約17,421個のラット遺伝子を含んだアレイからの候補遺伝子をランク付けする際、2段階手法を使用した。
【0134】
まず、17,421個のラット遺伝子の発現分析を含む実験から、個々の遺伝子の値に対して3つのカットオフ基準を定めた。その3つのカットオフ基準とは、誘導倍率/抑制レベル、発現レベルの計算に使用される複製スポットの平均蛍光、及び複製スポットの変異係数であった。誘導倍率/抑制レベルを計算するため、特定の実験で記録された遺伝子の誘導/抑制レベルを以下のように計算した。
【0135】
1)遺伝子に関する処理スコアの達成。処理スコアは、マイクロアレイスライドの相補的な標的DNAスポットに結合させた、処理済み供給源(例えば化合物を投与した実験室用動物)からのCy3標識cDNAの量で表した。Cy3標識cDNAの量は、波長532nmのマイクロアレイレーザスキャナで検出した。
【0136】
2)遺伝子に関する対照スコアの達成。対照スコアは、マイクロアレイスライドの相補的な標的DNAスポットに結合させた、未処理の供給源からのCy5標識cDNAの量で表した。Cy5標識cDNAの量は、波長635nmのマイクロアレイレーザスキャナで検出した。測定の単位は、マイクロアレイレーザスキャナから伝えられる、マイクロアレイスライド上の座標での画素強度又はいくつかの画素強度の平均であった。その位置での画素強度は、蛍光プローブで標識した標的DNAのスポットに、染料が感応する波長のレーザを照射したときの、光電子増倍管によって検出された光子の数に比例していた。これらの実験で使用したAxon Instruments Inc.のGenePix 4000Aマイクロアレイスキャナの場合、これらの値は0〜65535の間である。
【0137】
3)処理スコアを対照スコアで割ることによって、処理済みのものと対照との正規化していない比を計算する。
【0138】
4)非正規化状態の比を何らかの正規化因子で割ることによって、最終的な「正規化」誘導スコアを計算する。例えば、上記4ステップ手順を使用して、遺伝子Aの計算を以下のように行う。1)その処理済みのものに関する4つの生の値の組の平均を100,000とする。2)その対照に関する生の値の組の平均を25,000とする。3)したがって正規化していない比は4になり、最後に、4)正規化因子(環境要因を考慮に入れるよう設計された)が2になる場合、最終の正規化誘導スコア(しばしば誘導倍率と呼ばれる)は4を2で割ることによって得られ、すなわち2になる。この実施例で、遺伝子Aは2倍誘導された。本発明に関して実施された全ての実験では、各遺伝子に4つの複製物があり、各複製物は、処理値及び対照値を有していた。したがって、1つの実験で各遺伝子の発現レベルを計算する際、8個のデータポイントを総合することが必要である。
【0139】
発現レベルの計算に使用される複製スポットの平均蛍光レベルは、遺伝子の発現レベルを計算するために任意の実験で使用された4個の処理済み複製値の単純平均によって実現される。
【0140】
複製スポットの変異係数は、変動性に関する従来の測定値でありパーセントで表され、この場合は、4つの複製物の処理済のものと対照との比の標準偏差を、4つの複製された処理済みのものと対照との比の平均で割ることによって、導き出されたものである。後者の基準は、データ品質の有用な尺度を表す。したがって初期スクリーニングは、発現レベル及び測定品質に基づいている。
【0141】
アルゴリズムは、17KアレイからCTアレイに含められる遺伝子をランク付けする全プロセスが実行されるよう、特に書き込んだ。プログラムの初期部分では、上記3つの基準を一緒に「終わらせ」、したがって「第1のカット」を作製するために、遺伝子は3つの基準全てを満たさなければならないと考えられる。これは、プログラムの第1層と考えられた。
【0142】
基準は、アルゴリズム内で調整可能である。17Kアレイの実際のランク付けでは、以下の基準を使用した。すなわち、誘導/抑制レベル:2、蛍光レベル:400、及び変異係数:30%である。第1のカットを作製し、かつ潜在的な毒性学的に関連ある遺伝子として選択するには、遺伝子は、17Kデータウェアハウスに記憶された1つの実験において3つの基準を満たすだけでよい。同様に、遺伝子に関連する値は、異なる実験において基準を満たすたびに含められる。カットを作製した遺伝子に関するデータ(したがって潜在的な毒性学的に関連ある遺伝子として選択された)、及び遺伝子がカットを作製するごとに、ランク付けのための個別の一時的なデータテーブルに記憶した(プロセスの第2層)。遺伝子のデータは複数回、すなわち遺伝子が3つの基準を満たす各実験ごとに1回含めることができる。
【0143】
下記の表に列挙したファクタのそれぞれは、示されるように相対的な重み付けとして与えられた。
【0144】
【0145】
次に、カットを作製した遺伝子の値を総合的なスコアにまとめた。遺伝子の値が上述の3つのカットオフ基準を満たす各実験ごとに、特定の遺伝子に関するデータを含ませたので、遺伝子に関する潜在的な複数の値を総合的なスコアに「まとめる」ことが必要であった。総合的なスコアは、上記の表に示すように、6つのファクタごとにまとめ、6つのランク付け基準に基づいて各遺伝子ごとにランク付けした。1)遺伝子がカットオフ基準を満たすスライドの数(NC=化合物の数)。述べたように、遺伝子は、17Kウェアハウスに記憶された複数の実験で、上述の3つのカットオフ基準を満たすことができた。NCは、遺伝子が3つの基準を満たす種々の化合物の数を単純にカウントしたものであり(実験ではない。各化合物ごとに重複実験を行っている)、2)スライド間の一致性のパーセント(その初期スライドに関し、複製したスライド上で、遺伝子の値がカットオフ基準を満たした時間の%)(CC)。上述のように、各化合物ごとに重複実験を行った。CCは、重複して行った一組の実験の両方で、遺伝子がカットオフを作製した回数をカウントしたものである。したがって、遺伝子のNC(化合物の数)は3であるがCC(化合物の一致性)は2であり、これは、3つの化合物のうち2つについては重複実験のそれぞれでカットオフが作製され、残りの1つについてはカットオフが作製されなかったことを意味する。3)遺伝子がカットオフ基準を満たす、全ての場合に関する誘導倍率(FI)の平均の大きさ(絶対値)。これは、特定の遺伝子に関するデータ値の各組での発現/抑制レベルの大きさを、単純に平均したものである。4)これら誘導倍率スコアの変異係数(その他全てのランク付け基準とは異なり、より低い変異係数がより良いものと考えられる)(CV)。そのスコアの変動性を評価するために、特定の遺伝子に関する発現値の組に、変異係数を適用した。5)遺伝子がカットオフ基準を満たす場合の全ての複製スポットの平均蛍光(FL)。これは、カットを作製した遺伝子のそれぞれの場合に関する処理済みの値の蛍光レベルを単純に平均したものである。6)組織の一致性、すなわち遺伝子のカットオフを満たした場合の何パーセントが同じ組織内にあるか(CT)。発現レベルは、いくつかの化合物だけではなくいくつかの組織(肝臓や腎臓など)においても同様に測定した。同じ組織内で、カットオフを作製した遺伝子データ値を測定した時間のパーセンテージとして、CTを計算した。例えば、遺伝子が4回の実験でカットを作製した場合、すなわち肝臓で2回、腎臓で2回作製した場合、その組織の一致性は50%になる。
【0146】
CTアレイに含めるために遺伝子をランク付けする実際のプロセスでは、下記の重み付け、すなわちNC=3、CC=1、Fl=5、CV=0、FL=0、CT=0を使用した。したがって最後の3つの基準には、この場合重みが付けられていなかった。
【0147】
各ランク付け基準ごとに、0〜100のスコアを各遺伝子に割り当てた。各ランク付け基準のスコアは、以下のように計算した。全スコアの最低値を最高値から差し引くことによって、基準に対し、全ての遺伝子の値の範囲を計算した。17Kウェアハウスから作成された一時的なデータテーブルは、初期の3つのカットオフ基準を満たす各遺伝子のスコアを含んでいた。遺伝子は、3つのカットオフ基準を満たし又は超える各実験ごとの値が、そのテーブルに示される。次いでスコアを、各遺伝子の遺伝子出現から、上述の6つの基準のそれぞれに対してその遺伝子に関する総合的なスコアにまとめた。例えば遺伝子Aが3回の実験でカットを作製し、それぞれの誘導スコアが4、6、及び8であった場合、遺伝子Aに関してまとめた誘導スコアは6になる(3つの値の平均)。さらに、例えば誘導因子に関して最高の総合的スコアを有する遺伝子の総合的スコアが10であり、総合的スコアの最低値を2とする。この場合、そのスコアは最高値と最低値の中間になるので、遺伝子Aは、50%の格付けを得ることになる。次いで示される最低値をその遺伝子に関する値から差し引き、次いで範囲で割って、100を掛けることにより、各遺伝子ごとのスコアを計算した。言い換えれば、各遺伝子ごとのスコアは、最小値を0とし、最大値を100とした百分率である。例えば遺伝子のスコアが、その基準に関し、示される最小値と最大値の4分の3である場合、そのスコアはその基準に関して示される最小値と最大値の間になり、そのスコアは5%になる。CVファクタ(誘導倍率の変異係数)に関してはより低い値がより好ましいので、そのように計算されるスコアを100から差し引いて、そのパーセンテージの逆数をとった。
【0148】
各遺伝子ごとの最終ランク付けスコアは、6つのランク付け基準に関するそのスコアの重み付け組合せを介して計算した。特定の基準に対してスコアを計算することができない場合、その基準の全ての値を等式から外し、残りのファクタにのみ基づいてランク付けを行った。ランク付け基準のそれぞれは、0〜5の間に重み付けされ、その重み付けは相対的なものであり、したがって2:2:2:2:2:2は4:4:4:4:4:4などと同じである。重み付けがゼロであると、そのファクタは等式から外される。例えば遺伝子Aが、以下のスコア、すなわちNC:75%、CC:50%、FI:80%、CV:25%、FL:50%、及びCT:30%を有するとする。上述の重み付け(3、1、5、0、0)を使用すると、遺伝子Aに関する最終スコアは以下のように計算される。
(75×3+50×1+80×5+25×0+50×0+30×0)/9(注記:9は「重み付け」を合計した数、すなわち3+1+5である)
(225+50+400+0+0+0)/9
675/9
75が遺伝子Aの最終スコアになる。
【0149】
次いで遺伝子が初期カットを作製する1つ又は複数の実験からの、その遺伝子に関する個々の値をまとめることに基づいて、個別の各遺伝子ごとにスコアを計算した。次いで遺伝子のリストを、最終スコアに基づいてランク順に並べ替えた。CTアレイに付加するためにリストの上位からいくつの遺伝子を得るかという目標とされる決定は、遺伝子が応答を示す実験の数に基づいて行われた。ランク順に並べた遺伝子のリスト上で、遺伝子数450程度では、遺伝子が応答を示す実験の数は、しばしばわずか1回の実験又は1つの化合物から始まる。アレイ上のほとんどの遺伝子は、毒性の異なるメカニズム又は種々の組織の相違に応答することが望ましい。したがって、ランク順に並べた遺伝子リストの上位から選択された遺伝子の数は450であった。既に社内で確立済みの、ラット遺伝子の組(実施例2参照)に加えた重複遺伝子の数を最小限にしたいので、重複が原因で排除された50個の遺伝子がある。最終的に、特定の毒物による毒性及び特定の組織での毒性に対する応答をさらに評価するための新たな遺伝子として、マイクロアレイの17,241個のラット遺伝子の組から400個の遺伝子を、実験により選択した。これら400個の遺伝子を表4に列挙する。
【0150】
セクション4 17,241個の遺伝子の組から発見された、部分配列に対応するラット遺伝子の、特定の組織応答に関する実験データの評価
a.実験により発見された遺伝子のさらなる評価のための毒性試験
材料及び方法に関するセクション2の記述に従って、オスのSpraque−Dawleyラットを表3に列挙した薬物及び化学物質に曝露し、組織を採取し、さらにcDNAサンプルを調製して、ハイブリダイズした。
【0151】
b.マイクロアレイ
材料及び方法に関するセクション1の、PCR及びスライドのスポット付けに関する記述に従って、実験により発見された400個の遺伝子をマイクロアレイにプリントした。洗浄し乾燥してハイブリダイズしたスライドを、Axon Instruments Inc.のGenePix 4000Aマイクロアレイスキャナでスキャンし、このスキャナから得られた蛍光の読取りを、GenePixソフトウェアを使用してコンピュータの定量化ファイルに変換した。
【0152】
c.毒性学的に関連ある遺伝子を評価するための、定量化ファイルの分析
定量化ファイルを、差次的遺伝子発現データの分析用に設計されたフェーズ1Matrix Expressソフトウェアに取り込んだ。同じスライド上にハイブリダイズした処理済み及び対照のcDNAサンプルの蛍光値の比を、各スポットごとに決定し、誘導倍率の値を定めた(遺伝子応答の誘導に関しては正の値、遺伝子応答の抑制に関しては不の値)。次いで誘導倍率を、中心誘導倍率値で正規化した。各遺伝子に関する誘導倍率は、各遺伝子に関するスライド上の4つのスポットの、誘導倍率の平均である。4つのスポットの変異係数が50%よりも大きい場合、その遺伝子のデータをスライド上の遺伝子には入れない。Matrix Expressソフトウェアによって、複数の実験から(マイクロアレイ)誘導倍率データを含んだウェアハウスを開発することが可能になる。ウェアハウスは、定量化ファイルを取り込んで、表3に列挙する薬物及び化学物質で処理したラットの誘導倍率を分析することによって構築した。さらに、ほとんどのサンプルを二重にハイブリダイズし、2枚の高品質スライドから得られたデータをアウェアハウス内で平均した。どの化合物で処理したラットも、肝臓及び腎臓を処理して遺伝子発現に関して評価した。脾臓、心臓、精巣、肺のサンプルでは、多器官毒素に関して評価した。脾臓は、全ての免疫毒素及び5つの非免疫毒素について評価し、心臓サンプルは、全ての心臓毒素について評価し、精巣は、フルタミド及び全てのステロイド化合物について評価し、肺は、全ての肺毒素について評価し、脳は、全ての脳毒素について評価した。このウェアハウスは、遺伝子の、組織に特異的な応答を評価するとき、約2500の最終実験(1回の最終実験を行うのに主に平均2回同じ実験をする)を含んでいた。
【0153】
遺伝子は、肝臓サンプルに対する実験の1%を超える実験において誘導倍率が2の場合に(刺激又は抑制)、肝臓で応答すると判断した。同様に遺伝子は、腎臓サンプルに対する実験の1%を超える実験において誘導倍率が2の場合に、腎臓で応答すると判断した。これらの器官を全ての毒素(非肝性又は腎性の毒素を含む)に関して評価したので、1%のカットオフは、肝臓及び腎臓では十分なカットオフであった。心臓、脾臓、肺、精巣、又は脳については、それぞれの器官に対する実験の2%を超える実験で誘導倍率が2である場合に、遺伝子はこれらの器官に応答すると判断した。心臓、脾臓、肺、精巣、及び脳のカットオフは、1%に比べて2%のほうが高かったが、その理由は、これらの器官のそれぞれに対するウェアハウスでの全実験数が少ないからであり、また、このように少数の実験を取り扱う場合にはカットオフが高いと偽陽性結果が最小限に抑えられるからである。
【0154】
結果
400の毒性応答遺伝子の発見
特定の毒素による毒性及び特定の組織での毒性に対する応答をさらに評価するための新たな遺伝子として、マイクロアレイの17,241ラット遺伝子の組から400個の遺伝子を実験により選択した。これら400個の遺伝子を表4に列挙する。
【0155】
特異的な組織応答を実証するデータベースを形成するための、400個の毒性学的に応答する遺伝子の使用
毒性学データベースは、遺伝子の、組織に特異的な応答を評価するときに、表3に列挙した化合物に基づいて約2500の最終実験を含んでいた(1回の最終実験を行うのに主に平均2回同じ実験を行う)。表7は、各遺伝子に関して実証された17,242個の遺伝子の組から実験により選択された毒性学的遺伝子の、組織に特異的な応答を示し、表8は、表7からの同様の情報であって、組織に特異的な応答をする遺伝子を、組織ごとに示したものである。図1から6までは、この毒性学データベースからの毒性化合物を投与したラットの差次的遺伝子発現を示す。時間に対する複製マイクロアレイ同士、器官同士、異なる化合物同士の差次的発現がこれらの図で実証されており、一組の毒性学的に関連ある遺伝子がラットの毒性試験を実施する力を示している。
【実施例2】
【0156】
毒性応答に対する既知の遺伝子の生成及び特徴付け
セクション1 クローンの生成
a.ラット又はヒトのデータベースからの、毒性学的に関連ある遺伝子の同定及び単離
ラットアレイに含めるために毒性学的に関連ある遺伝子を同定しかつ単離するのに使用した1つの方法は、公のデータベース(例えばGenBank)を検索して、クリティカルな細胞経路(例えば代謝やDNA合成)の一部として識別された遺伝子を探すことであった。これらの遺伝子を識別した後、プライマーを設計して、ラットの肝臓細胞から作製されたcDNAライブラリーとの増幅プロセスに使用した。増幅生成物を発現ベクターにクローニングし、配列決定して、その配列が、GenBankから得られた遺伝子配列情報に一致しており、又は実質的に同様であることを確認した。次いで確認された増幅遺伝子生成物を、実施例1のセクション1で述べた方法を使用してラットアレイに組み込んだ。このように同定し単離した、潜在的な毒性学的に関連ある遺伝子を、表4に含める。
【0157】
b.新規プライマーを使用した遺伝子の同定及び単離
クリティカルな細胞経路での役割に関する何らかの証拠に基づいて遺伝子を同定し単離するのに使用した別の方法は、最初に公のデータベース(例えばジーンバンク(GenBank))で配列を見つけることであり、これらの遺伝子に対応する配列を新規に合成し、増幅反応に使用した。増幅した生成物を発現ベクトルにクローニングし、配列決定して、その配列がGenBankから得られた遺伝子配列情報に一致し又は実質的に同様であることを確認した。次いで確認された増幅遺伝子生成物を、本明細書で開示した方法を使用してラットアレイに組み込んで、遺伝子生成物又は標的配列を、スライドガラスに固定化した。
【0158】
セクション2 既知の遺伝子の特異的な組織応答に関する実験データの評価
a.実験により発見された遺伝子をさらに評価するための毒性試験
材料及び方法に関する実施例1、セクション2の記述に従って、オスのスプラクー・ドーリー(Spraque−Dawley)ラットを表3に列挙した薬物及び化学物質に曝露し、組織を採取し、cDNAサンプルを調製し、ハイブリダイズした。
【0159】
b.マイクロアレイ
マイクロアレイに、この実施例2の材料及び方法のセクション1で述べたように生成した300個の遺伝子をプリントした。洗浄し乾燥してハイブリダイズしたスライドを、アキソン・インスツルメンツ社製(Axon Instruments Inc.)ジーンピクス(GenePix)4000Aマイクロアレイスキャナでスキャンし、このスキャナから得られた蛍光読取りを、ジーンピクス(GenePix)ソフトウェアを使用してコンピュータの定量化ファイルに変換した。
【0160】
c.潜在的な毒性学的に関連ある遺伝子を評価するための、定量化ファイルの分析
表3の、中毒用量の薬物及び化学物質に曝露したラットからの組織サンプルから生成された、約2500の実験のウェアハウスにおける実験の分析は、実験1のセクション4で述べたものと同様である。
【0161】
結果
このように同定し単離された、潜在的な毒性学的に関連ある遺伝子を、表4に含める。表9は、各遺伝子ごとに実証されたクリティカルな細胞経路での潜在的な役割を有する遺伝子の、組織に特異的な応答を示し、表10は、表9からの情報と同様であって、組織に特異的な応答をする遺伝子を組織ごとに列挙したものを示す。図1から6までは、この毒性学的データベースからの毒性化合物を投与したラットの、差次的遺伝子発現を示す。時間に対する複製マイクロアレイ同士、器官同士、異なる化合物同士の差次的発現がこれらの図で実証されており、一組の毒性学的に関連ある遺伝子がラットの毒性試験を実施する力を示している。
【実施例3】
【0162】
トランスクリプトームプロファイリングによる新規な毒性応答遺伝子の発見
セクション1 遺伝子の同定及び単離
a.RNA単離のための、処理済み及び対照の組織サンプルの加工
中毒量のアフラトキシンB1(1mg/kg)を腹腔内注射した24時間後に殺したラットからの肝臓組織と、生理食塩水を注射したビークル対照ラットからの適切な肝臓組織を使用して、肝臓毒素(アフラトキシン)に曝露したラットで差次的に発現した遺伝子を決定した。キアゲン(Qiagen)製RNA単離キット(RNeasy Midiキット)を使用し、その後、Genhnter(登録商標)製Messageclean(登録商標)キットを使用して、両方の肝臓サンプルからRNAを単離した。MessageClean(登録商標)キットからのプロトコルに修正を加えて、DNA汚染物質を除去するのにより最適な条件を生成した。次いでこれらの成分、すなわちトータルRNA 50リットル、10×反応緩衝液5.7リットル、DNase I 1.0リットル(10ユニット/l)を加えて全体積を56.7リットルにした。これらの成分を十分混合し、摂氏37度で30分間インキュベートした。次いでフェノール/クロロホルム混合物(1:1体積)40リットルを添加し、その混合物を30秒間撹拌して、氷上に10分間静置した。次いでこの混合物を入れたチューブを、4度で5分間、最大速度でエッペンドルフ遠心器で回転させた。上相を収集して新しいチューブに移し、3M NaOAc 5リットルと95%エタノール200リットルをこの上相に添加した。混合物を少なくとも1時間、−80℃で静置し、次いで約10分間、4℃で回転させた。上澄みを除去し、RNAを数分間乾燥させた。その後、RNAを、DEPC H2O 11リットルに懸濁した。1リットルを、H2O 50リットル中でA260/280を測定するのに使用した。RNAを、−80℃で1〜2gのアリコートとして保存した。ディフェレンシャルディスプレイの直前に、適切な量のRNAを、DEPC H2Oで0.1g/lに希釈した。希釈したRNAを凍結融解サイクル後に使用することは避けることが重要である。
【0163】
RNAimage(登録商標)キットを使用し、RNAimage(登録商標)キットからのプロトコルに修正を加えて、より成果の上がるmRNAディフェレンシャルディスプレイを最適なものとした。以下のセクションでは、これを実現した方法について述べる。
【0164】
b.逆転写
チューブ内で、以下の成分、すなわちdH2O 9.4リットル、15×RT緩衝液4.0リットル、dNTP(250M)1.6リットル、DNaseを含まない0.1g/lの新たに希釈したトータルRNA 2.0リットル、H−T11M(2M)2.0リットルを添加して、全体積を19リットルにした。これらの成分を十分混合して、65℃で5分間、37℃で60分間、75℃で5分間インキュベートし、4℃で保持した。チューブを37℃で10分間保持した後、Super Script II逆転写酵素(ライフ・テクノロジー社製(Life Technologies Inc.))1リットルを各反応に添加し、チューブを指で軽く叩いて素早く混合し、その後、インキュベーションを続けた。逆転写の終わりに、チューブを短時間回転させて、凝縮物を収集した。PCRを行うためにチューブを氷上にセットし、又は後で使用するためにチューブを−20℃で保存した。
【0165】
c.ポリメラーゼ連鎖反応
以下の成分、すなわちdH2O 10リットル、10×PCR緩衝液2リットル、dNTP(25M)1.6リットル、2M H−APプライマー 2リットル、2M H−T11M 2リットル、上述のRT−ミックス(PCR用に同じH−T11Mを含有しなければならない)2リットル、α−33P dATP(2000Ci/mmol)0.2リットル、PEバイオシステムズ(PE Biosystems)製のTaq DNAポリメラーゼ0.2リットルを合わせて全体積を20リットルにし、これを用いてPCR反応を行った。ピペットを上下させることによって、これらの成分全てを入れたチューブを十分に混合し、95℃のサーモサイクラ内に5分間配置し、次いで94℃で30秒間、40℃で2分間、72℃で30秒間という条件下で40サイクル実行して増幅し、最後に、サンプルをサーモサイクラから取り出すまで4℃で保持した。
【0166】
d.ゲル電気泳動
TBEに溶かした6%変性ポリアクリルアミドゲルを調製し、使用前に少なくとも2時間重合した。次いでゲルを約30分間流し、その後、任意のサンプルを導入した。ウェルに任意のサンプルを導入する前に、ゲルの全てのサンプルウェルをフラッシュして全ての尿素を除去することが重要である。各サンプル約3.5リットルを、導入した染料2リットルと混合して、80℃で2分間インキュベートした直後に、6%ゲル上に導入した。この実施例で、導入した染料はキシレンであり、数回行ったPCRから得られたサンプルをゲルに導入した後、キシレン染料がゲルの底部から約15cm(約6インチ)になるまで、そのゲルを定電力60ワットで流した。電力を止めた後、1枚の大きな露光済みオートラジオグラフフィルム上にゲルをブロットした。ゲルをプラスチックラップで覆い、暗所条件下で、向きを示す印を付けた1枚の新しい未露光フィルムを備えた大型のオートラジオグラフカセット内にゲルを配置し、−80℃でフィルムをゲルに曝露した。曝露時間は、一晩から72時間の間であればどの程度でもよい。フィルムを現像した後、現像済みフィルムとのアライメント操作を行うことによって、問題となっているバンドを同定し、その後、清浄なメスを用いてポリアクリルアミドゲルから問題となっているバンドを切り出すことによって、単離した。単離したバンドを水100リットル中に入れ、95%で5分間沸騰させた。
【0167】
e.ゲルバンドを増幅するためのPCR
ゲルバンドを増幅するためにPCRを設定した。再増幅は、dNTP濃度を20Mにすること以外、同じプライマーの組及びPCR条件を使用して行うべきである。PCR反応を行うため、以下の成分、すなわちH2O 20.4リットル、10×緩衝液4リットル、250M dNTP 3.2リットル、2MのH−APプライマー 4リットル、2MのH−T11M 4リットル、テンプレート(ゲルバンドを含有する100リットルから)4リットル、Taqポリメラーゼ0.5リットルを合わせて全体積を40リットルにした。これらの成分を95℃で5分間加熱し、次いで94℃で30秒間、40℃で2分間、72℃で30秒間という条件下で40サイクル繰り返し、最後に、サーモサイクラからサンプルを取り出すまで4℃で保持した。PCR反応物約4リットルを取り出し、1%アガロースゲル上に流して、PCR反応が上首尾に行われたことを確認した。
【0168】
セクション2 増幅した断片のクローニング及びコロニーのスクリーニング
a.増幅した断片のクローニング
増幅した断片をクローニングするには、種々の供給元(例えばGenHunterやIn Vitrogen)から得られた製品を使用して、所望のクローニング生成物を実現すればよい。この実施例では、In VirtrogenのTOPO TA Cloning Kit(登録商標)を使用し、以下の材料、すなわち新たに流すPCR生成物2リットル、滅菌H2O 2リットル、PCR−TOPOベクター 1リットルをチューブ内で合わせて最終体積を5リットルにした。合わせた成分を静かに混合して、室温で5分間インキュベートした。次いで6×TOPOクローニング停止溶液1リットルを添加し、合わせた全ての成分を室温で約10秒間混合し、次いで氷上に設置した。One Shot(商標)細胞を氷上で融解した。TOPOクローニング反応物2リットルをOne Shot(商標)細胞に添加し、混合し、氷上で30分間インキュベートした。細胞に、振盪することなく42℃で30秒間熱ショックを与え、氷上で2分間インキュベートした。次いで熱ショックを与えた細胞に、室温のSOC 250リットルを添加し、混合した。次いで細胞を30分間37℃にした。100g/mlのアンピシリン及びX−galを載せた2枚のXYTプレート上に、細胞約50〜100リットルを塗布した。これらのプレートを37℃で一晩インキュベートし、翌朝、3つの白色コロニーを選択して分析にかけた。
【0169】
b.正しい組換えプラスミドのためのコロニーのスクリーニング
PCRを使用して、選択された白色コロニーが正しい組換えプラスミドを含んでいるかどうか確かめた。PCR反応を行うため、以下の成分、すなわちH2O 21リットル、10×PCR緩衝液2.5リットル、10mM dNTP 0.12リットル、25ng/l T7プライマー 1リットル、25ng/lの遺伝子特異的左又は右プライマー 1リットル、テンプレート(形質転換プレートからチューブにコロニーを移すのに楊枝を使用し、その際、反応混合物中で楊枝をさっと動かして行った)、及びTaqポリメラーゼ0.5リットルを合わせて、全体積を25リットルにした。反応混合物を95℃で5分間流し、次いで95℃で30秒間、45℃で30秒間、72℃で30秒間、その後72℃で5分間という条件下で35回繰り返し、最後に、サーモサイクラからサンプルを取り出すまで4℃で保持した。PCR生成物約4リットルを取り出し、1%アガロースゲル上に流して、PCR反応が上首尾に行われたことを確かめた。肯定的なPCR結果をもたらしたコロニーに対応する細菌コロニーを、100g/lのアンピシリンを含有するLB培地で一晩、37℃で振盪しながら増殖させた。プラスミドDNAを、一晩培養したものから単離し、T7プライマーを使用して配列決定した。次いで配列を、GenBankデータベース中の配列と比較して、正しい遺伝子断片がクローニングされたことを確認した。次いで遺伝子断片を、プラスミドDNAからPCRにより増幅した。組み込まれていないプライナー及びdNTPを除去し、フェーズ1分子毒性学的マイクロアレイ製品を使用して差次的遺伝子発現を測定するために、得られた遺伝子断片をスライドガラス上に並べた。
【0170】
結果
RCT−289及びRCT−290は、この実施例で開示した方法を使用して同定された毒性学的に関連ある2個の遺伝子である。遺伝子配列を表4に列挙する。
【実施例4】
【0171】
実時間PCR反応
材料及び方法
実施例1、セクション3に列挙した毒性化合物を投与したラットの組織及び/又は器官から、トータルRNAを単離し、次いでこのトータルRNA内のmRNAを、トータルRNA 3μg及びランダムヘキサマープライマー 1.5μlを使用してcDNAに変換した。70℃で10分間インキュベートした後、反応混合物に以下の成分、すなわち5×ファーストストランド緩衝液6μl、0.1 DTT 3μl、10mM dNTP 1.5μl、Superscript酵素1.5μl、及びDEPC処理水6.5μlを添加した。反応物を45℃で2時間インキュベートし、この反応物1μlを使用して実時間PCR(RT−PCR)アッセイを行った。RT−PCRアッセイでは、Rnaseを含まない水、Taqman(登録商標)Universal PCR Master Mix(Applied Biosystemから入手可能)、標的、及び対照プライマー/プローブ、及びcDNAを用いて50μlの反応物を調製した。この方法では、二重標識蛍光原プローブを用いてPCR生成物の蓄積を測定する。プローブは、5’末端を6−FAMで、3’末端をTAMRAで標識した。TAMRAは消光染料である。このアッセイでは、Taqポリメラーゼの5’−3’エキソヌクレアーゼの性質を活用する。プローブをその標的にハイブリダイズする場合、レポーター染料(FAM)をTaqポリメラーゼの5’エキソヌクレアーゼ活性によって切断し、蛍光信号を放出することができる。増幅サイクルが増大するにつれ、より多くの信号が放出され、ABI 7700配列検出器を使用して検出される。各遺伝子ごとに、2個のプライマー及び蛍光原プローブの一組を設計し合成する。mRNAの定量化では、プローブ及びプライマーを最適に設計するために、プライマーをエクソン−イントロン接合部上に位置決めする必要がある。このステップでは、汚染ゲノムDNAの増幅を不可能にする。本発明者等の研究では、本明細書で「総合的毒性アレイ」又は「CTアレイ」とも呼ばれる毒性学的に関連ある700のラット遺伝子アレイの一部である、16個の遺伝子用に、プライマーとプローブの組を設計した。これらの遺伝子は、生体内で曝露したラット又は培養で曝露したラット細胞で、毒性薬物/化学物質によりアップレギュレーション又はダウンレギュレーションがなされた。プローブとプライマーの組を、そのゲノムDNA増幅能力に関して試験した。ゲノムDNAが増幅された場合、その特定の遺伝子に対するプローブ及びプライマーを、RT−PCRアッセイに使用しなかった。
【0172】
結果
CTアレイ調査に使用された様々な毒性化学物質/薬物を投与した、同じラットからのRNAを使用して、実時間PCR分析を行った。図7、8、及び9は、42種の毒性学物質/薬物に関するTaqMan対CTアレイデータの線形回帰分析結果を示す。シトクロムP450 1A2に関するTaqManデータとCTアレイデータとの間には、優れた相関関係(r=0.97395)がある(図7)。脂肪酸シンターゼに関するTaqMan及びCTアレイデータの分析では、相関関係が0.86346であることを示している(図8)。多剤耐性タンパク質−1に関するTaqManデータとCTアレイデータの比較では、0.73414の相関関係が生成された(図9)。
【実施例5】
【0173】
付着培養細胞からのトータルRNAの単離
高品質高純度のトータルRNAを、Qiagen RNeasyミディキット及び2−メルカプトエタノールを使用して、培養細胞から単離した。リボヌクレアーゼによってRNAの分解が生じるというリスクを最小限に抑えるため、手袋をはめ、作業領域及び装置を例えばRNase Zap(Ambion(登録商標)Products、Austin、TX)などのリボヌクレアーゼ阻害剤で処理し、サンプルを氷上で保持することによって、予防措置をとった。このトータルRNA単離技法は、Qiagen(登録商標)RNeasy(登録商標)ミディキットをベースにしたものであり、若干の修正を加えて、HepG2(ヒト肝細胞)細胞に関してはT−75フラスコ内で、細胞のマキシキットRNA単離に関してはT−175フラスコ内で使用した。
【0174】
細胞を顕微鏡下でチェックして、それらが生存可能であることを確認した。細胞が60〜80%集密状態に達した場合、その細胞に、薬物、化学物質、又は医薬品組成物などの薬剤を投与した。100%の集密状態に達したフラスコからはRNAを単離しないことが好ましい。
【0175】
付着細胞では、培地を廃棄して、1×の低温PBSで2回フラスコを洗浄した(T−75フラスコの場合は20ml次いで10ml;T−175フラスコの場合は40ml次いで20ml)。2回目のPBS洗浄後、残っているPBSをピペットで除去した。新たに調製したRLT緩衝液(RLT緩衝液は、RLT 1.0mlごとに、10μlのβメルカプトエタノールを添加する必要がある)を細胞培養フラスコに直接添加した。T−75フラスコには3mlのRLT緩衝液を入れ、T−175フラスコには5.0mlのRLT緩衝液を入れた。この時点で、フラスコを軽く撹拌することが好ましい。フラスコを軽く撹拌してRLT緩衝液を分散させ、細胞をゲル状の層にする。細胞を4分間静置し、次いで流体を引き抜いて、RNaseを含まないチューブに入れる。等体積の70%エタノールを各チューブに添加し、撹拌して均等に分散させた。ストリング状の外観を有する沈殿物が形成される場合は、このストリング状の沈殿物を除去し廃棄してよい。流体をスピンカラムに加え、Backman GS−6を用いて3650rpmで5分間回転させた。素通り画分は廃棄した。RW1緩衝液約4ml又は15ml(それぞれT−75又はT−175)を加え、3650RPMで5分間回転させた。素通り画分は廃棄した。RPE緩衝液約2.5ml(中カラム)又はRPE緩衝液10ml(大カラム)を加え、3分間遠心分離にかけた。素通り画分は廃棄した。緩衝液RPEをさらに2.5ml又は10ml加え、5分間遠心分離にかけてカラムを完全に乾燥した後、溶離ステップに進めた。チップを含めたカラムは、次のステップに向けて乾燥すべきである。
【0176】
溶離を行うため、RNAが結合しているカラムを清浄なチューブに移した。次いでRNaseを含まない水150μlを中カラムに添加し、RNaseを含まない水500μlをカラムに添加して、2〜4分間静置し、3000×gで3分間回転させた(3690〜3710rpm、Beckman GS−6又は同様の遠心器)。RNaseを含まない水をさらに150μl又は500μl同じチューブに入れて、溶離を繰り返した。溶離液は、実施例2に例示されるLiCl沈殿プロトコルを使用して沈殿させ、RNA貯蔵緩衝液に再懸濁した。
【0177】
収量を測定するため、O.D.の読取りを260nmで行った。約2.0μlのRNAを98μlのH2Oに添加し、O.D.の読取りを行って以下のように計算した。
(吸光度)×(希釈係数)×(40)/1000=RNAの量μg/ml
例:吸光度=0.45
希釈係数=50
(0.45×50×40)=RNA濃度μg/ml
収量は、T−75フラスコからのトータルRNAが、集密度50%超で200〜400μgの間にあるべきである。このサンプルを、−80℃の冷凍器内で保存した。
【0178】
【表1−1】
【表1−2】
【表1−3】
【表1−4】
【表1−5】
【0179】
【表2】
【0180】
【表3】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
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【図面の簡単な説明】
【0446】
【図1】表4に列挙した700個のラット遺伝子をスポットした2つのマイクロアレイでの、差次的遺伝子応答の一致性を示す。差次的発現として、72時間にわたり1mg/kgでアフラトキシンに曝露したラットの肝臓からのcDNA標本をスライドとハイブリダイズさせ、スライド上に同時にハイブリダイズした適切な対照ラットからのcDNA標本と比較した。示される9個の遺伝子のそれぞれについて、1つの棒グラフは1つのマイクロアレイからのものであり、2番目の棒グラフは第2のマイクロアレイからのデータである。
【図2】曝露6時間後のリポ多糖類(LPS)で処理したラットの同じ処理をした2匹のラットからの、2つの異なる器官における同様の差次的遺伝子発現応答を示す。示したデータは、2匹のラットから得られた肝臓データであり(第1及び第2の棒グラフはそれぞれの遺伝子に関するもの)及び2匹のラットから得られた腎臓データである(第3及び第4の棒グラフはそれぞれの遺伝子に関するもの)。示した5個の遺伝子のうち2個については、差次的発現が肝臓よりも腎臓で増大し、これらの遺伝子のうち3個については、差次的発現が腎臓よりも肝臓で増大した。
【図3】ラットの肝臓の、毒性誘発型差次的遺伝子発現の経時的な進行を示す。ラットを、1回の腹腔内注射によってリポ多糖類で処理した(8mg/kg)。示したデータは、6時間後に殺した2匹(第1及び第2の棒グラフはそれぞれの遺伝子に関する)、24時間後に殺した2匹(第3及び第4の棒グラフはそれぞれの遺伝子に関する)、72時間後に殺した2匹(第5及び第6の棒グラフはそれぞれの遺伝子に関する)からのものである。示した5個の遺伝子に関し、差次的発現は、肝臓の場合24時間後よりも6時間後に多く、72時間後には差次的発現がほとんどない。
【図4】ラットの心臓の、毒性誘発型差次的遺伝子発現の経時的な進行を示す。ラットを、1回の腹腔内注射によってリポ多糖類で処理した(8mg/kg)。示したデータは、6時間後に殺した2匹(第1及び第2の棒グラフはそれぞれの遺伝子に関する)、24時間後に殺した2匹(第3及び第4の棒グラフはそれぞれの遺伝子に関する)、72時間後に殺した2匹(第5及び第6の棒グラフはそれぞれの遺伝子に関する)からのものである。示した13個の遺伝子に関し、差次的発現は、心臓の場合24時間後よりも6時間後に多く、72時間後には差次的発現がほとんどない。
【図5】ラットの、エリスロマイシンエストレート及びテトラサイクリンでin vivo処理したラットのこれらの作用物質処理した肝臓の相関関係を示す。白い四角形は、実験同士の相関関係が最も高い領域を示している。ラットにエリスロマイシンエストレートを投与した実験同士での相関関係が高く(白い四角形)、ラットにテトラサイクリンを投与した実験同士での相関関係が高かった。1つの化合物の実験ともう一方の化合物の実験の相関関係はそれほど高くなく(濃灰色及びボックス)、これら2種の毒素に曝露されたラットの肝臓で発現した700個の遺伝子は異なるものであることが示された。これは、エリスロマイシンとテトラサイクリンが異なる肝臓毒性メカニズムを有することから予測される。
【図6】メカニズムから4種に分類される毒性化合物の相関関係マトリックスを示す。ラットの肝臓で試験をしたラットCTアレイからの遺伝子発現データを、逐次対合遺伝子同定によって識別した。白いボックスの領域は、相関関係がより高いことを示す。略語は下記の通りである:PAH:ポリ芳香族炭化水素、TCDD、ベンゾ(a)ピレン、ジメチルベンズアントラセン;PP:ペルオキシソーム増殖剤、ゲムフィブロジル、ジエチルヘキシルフタレート、Wy14,643;CS:コルチコステロイド、プレドニゾン、トリアムシノロン;NM:ナイトロジェンマスタード、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、クロラムブシル。
【図7】マイクロアレイプラットフォーム(記号O及び破線)及びTacMan実時間PCRプラットフォーム(記号及び実線)を使用した、遺伝子シトクロムP450 1A2の、非常に類似している応答を示す。
【図8】マイクロアレイプラットフォーム(記号O及び破線)及びTacMan実時間PCRプラットフォーム(記号及び実線)を使用した、遺伝子脂肪酸シンターゼの、非常に類似している応答を示す。
【図9】マイクロアレイプラットフォーム(記号O及び破線)及びTacMan実時間PCRプラットフォーム(記号及び実線)を使用した、遺伝子多剤耐性型タンパク質−1の、非常に類似している応答を示す。

Claims (61)

  1. 作用物質の毒性を評価する方法であって、
    (a)作用物質に試験動物を曝露するステップ、
    (b)作用物質に応答する、試験動物における表6、7、8、9及び10の部分遺伝子配列に対応する遺伝子からなる群から選択された1つ又は複数の毒性応答遺伝子の発現を測定し、それによって試験発現プロファイルを生成するステップ、及び
    (c)試験発現プロファイルと、毒性を示す参照発現プロファイルとを比較するステップであって、試験発現プロファイルと参照発現プロファイルとの間に有意な相関関係が存在するかどうかを決定することによって、作用物質の毒性を評価するステップ、
    を含む上記方法。
  2. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が腎臓で応答する請求項1記載の方法。
  3. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が肝臓で応答する請求項1記載の方法。
  4. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が脾臓で応答する請求項1記載の方法。
  5. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が心臓で応答する請求項1記載の方法。
  6. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が脳で応答する請求項1記載の方法。
  7. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が肺で応答する請求項1記載の方法。
  8. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が精巣で応答する請求項1記載の方法。
  9. 試験動物がラットである請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 試験動物がイヌである請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  11. 試験動物がヒト以外の霊長類である請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  12. 試験動物がヒトである請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  13. 作用物質を、様々な投与量で又は様々な時間で投与する請求項1記載の方法。
  14. 作用物質の毒性を評価する方法であって、
    (a)作用物質に試験動物を曝露するステップ、
    (b)作用物質に応答する、試験動物における表6、7及び8の部分遺伝子配列に対応する遺伝子からなる群から選択された1つ又は複数の毒性応答遺伝子の発現を測定し、それによって試験発現プロファイルを生成するステップ、及び
    (c)試験発現プロファイルと、毒性を示す参照発現プロファイルとを比較するステップであって、試験発現プロファイルと参照発現プロファイルとの間に有意な相関関係が存在するかどうかを決定することによって、作用物質の毒性を評価するステップ、
    を含む上記方法。
  15. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が腎臓で応答する請求項14記載の方法。
  16. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が肝臓で応答する請求項14記載の方法。
  17. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が脾臓で応答する請求項14記載の方法。
  18. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が心臓で応答する請求項14記載の方法。
  19. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が脳で応答する請求項14記載の方法。
  20. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が肺で応答する請求項14記載の方法。
  21. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が精巣で応答する請求項14記載の方法。
  22. 試験動物がラットである請求項14〜21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 試験動物がイヌである請求項14〜21のいずれか一項に記載の方法。
  24. 試験動物がヒト以外の霊長類である請求項14〜21のいずれか一項に記載の方法。
  25. 試験動物がヒトである請求項14〜21のいずれか一項に記載の方法。
  26. 作用物質を、様々な投与量で又は様々な時間で投与する請求項14記載の方法。
  27. 作用物質の毒性を評価する方法であって、
    (a)作用物質に試験動物を曝露するステップ、
    (b)作用物質に応答する、試験動物における表4の部分遺伝子配列に対応する遺伝子からなる群から選択された一組の毒性応答遺伝子の発現を測定し、それによって試験発現プロファイルを生成するステップ、
    (c)試験発現プロファイルと、毒性を示す参照発現プロファイルとを比較するステップであって、試験発現プロファイルと参照発現プロファイルとの間に有意な相関関係が存在するかどうかを決定することによって、作用物質の毒性を評価するステップ、
    を含む上記方法。
  28. 一組の毒性応答遺伝子が少なくとも25個の遺伝子からなる請求項27記載の方法。
  29. 一組の毒性応答遺伝子が少なくとも50個の遺伝子からなる請求項27記載の方法。
  30. 一組の毒性応答遺伝子が少なくとも100個の遺伝子からなる請求項27記載の方法。
  31. 表6、7、8、9及び10の部分遺伝子配列に対応する遺伝子又はそれらの少なくとも20ヌクレオチドの断片からなる群から選択された1つ又は複数のポリヌクレオチドを含むアレイ。
  32. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が腎臓で応答する請求項31記載のアレイ。
  33. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が肝臓で応答する請求項31記載のアレイ。
  34. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が脾臓で応答する請求項31記載のアレイ。
  35. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が心臓で応答する請求項31記載のアレイ。
  36. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が脳で応答する請求項31記載のアレイ。
  37. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が肺で応答する請求項31記載のアレイ。
  38. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が精巣で応答する請求項31記載のアレイ。
  39. 表6、7及び8の部分遺伝子配列に対応する遺伝子又はそれらの少なくとも20ヌクレオチドの断片からなる群から選択された1つ又は複数のポリヌクレオチドを含むアレイ。
  40. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が腎臓で応答する請求項39記載のアレイ。
  41. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が肝臓で応答する請求項39記載のアレイ。
  42. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が脾臓で応答する請求項39記載のアレイ。
  43. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が心臓で応答する請求項39記載のアレイ。
  44. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が脳で応答する請求項39記載のアレイ。
  45. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が肺で応答する請求項39記載のアレイ。
  46. 部分遺伝子配列に対応する遺伝子が精巣で応答する請求項39記載のアレイ。
  47. 表4の部分遺伝子配列に対応する遺伝子又はそれらの少なくとも20ヌクレオチドの断片からなる群から選択された1つ又は複数のポリヌクレオチドを含むアレイ。
  48. 一組の毒性応答遺伝子が少なくとも25個の遺伝子からなる請求項47記載のアレイ。
  49. 一組の毒性応答遺伝子が少なくとも50個の遺伝子からなる請求項47記載の方法。
  50. 一組の毒性応答遺伝子が少なくとも100個の遺伝子からなる請求項47記載のアレイ。
  51. 表6、7及び8の部分遺伝子配列に対応する遺伝子からなる群から選択された一組の毒性応答遺伝子に実質的に相同な、長さが少なくとも20ヌクレオチドに相当するポリヌクレオチドの組を含むアレイ。
  52. 請求項31記載のアレイのポリヌクレオチドに相同である、1つ又は複数のポリヌクレオチドを含むアレイ。
  53. ポリヌクレオチドがヒト遺伝子に対応する請求項52記載のアレイ。
  54. ポリヌクレオチドがネズミ遺伝子に対応する請求項52記載のアレイ。
  55. ポリヌクレオチドがヒト以外の霊長類遺伝子に対応する請求項52記載のアレイ。
  56. ポリヌクレオチドがイヌ遺伝子に対応する請求項52記載のアレイ。
  57. 請求項39記載のアレイのポリヌクレオチドに相同である、1つ又は複数のポリヌクレオチドを含むアレイ。
  58. ポリヌクレオチドがヒト遺伝子に対応する請求項57記載のアレイ。
  59. ポリヌクレオチドがネズミ遺伝子に対応する請求項57記載のアレイ。
  60. ポリヌクレオチドがヒト以外の霊長類遺伝子に対応する請求項57記載のアレイ。
  61. ポリヌクレオチドがイヌ遺伝子に対応する請求項57記載のアレイ。
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