JP2004506683A - α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)は、ヒト前立腺におけるポリアミンレベルを抑制する - Google Patents
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Abstract
本発明は、患者において前立腺癌を処置および/または阻害するための方法を提供し、この方法は、過形成細胞により生成されるポリアミンの量を安定化させるかまたは減少させるに十分な量および期間、α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)を投与する工程を包含し、ここで、このポリアミンは、スペルミン、スペルミジン、またはスペルミンとスペルミジンとの組み合わせである。本出願において、投与の方法、調薬方法、および併用療法が、記載される。
Description
【0001】
(発明の背景)
本出願は、米国仮特許出願第60/227,714号(2000年8月24日出願)に対する優先権を主張し、この出願の内容は、本明細書中で参考として援用される。米国政府は、公衆衛生局からの助成金番号P30CA62203U19および国立癌研究所、国立衛生研究所、厚生省からの助成金番号CA81886に従って、本発明における権利を所有し得る。
【0002】
(I.発明の分野)
本発明は、一般に、癌治療の分野に関する。より詳細には、本発明は、ポリアミンの生合成経路の不可逆的な酵素インヒビターであるDFMO(α−ジフルオロメチルオルニチン)の、前立腺癌の治療における使用に関する。
【0003】
(II.関連技術の説明)
迅速に増殖する細胞の成長を伴う疾患状態は、世界中に広まり、有意な割合の人口に影響していることから、これらは、集中的な研究努力のテーマとなってきている。残念ながら、かかる努力にも関わらず、かつ、いくつかの成功にも関わらず、これらの疾患の全般の制御は、満足できるものではない。しかし、近年、かかる疾患状態の処置のための有望な治療方法が、細胞成長に必要なポリアミンの生合成に関与する酵素の不可逆的なインヒビターを利用することにより開発されている。特に有用な酵素インヒビターは、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)のインビボでの不可逆的阻害を生じるものであり、この酵素は、オルニチンのプトレシンへの脱炭酸を触媒する。
【0004】
α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)は、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)の不可逆的インヒビターであり、プトレシンおよびその誘導体スペルミジンの細胞内濃度の減少を引き起こす(Pegg、1988)。スペルミジン由来のスペルミンのレベルは、酵素阻害によって著しくは影響されない。DFMOは、最初、抗癌治療用途のために合成されたが、おそらく悪性脳腫瘍の治療に中程度の活性を示すこと(Levinら、1987)を除き、ヒトの癌に対する化学療法試験において活性な細胞傷害性の薬剤であることが見出されなかった(McCannおよびPegg、1992)。一般に、この化合物は、聴覚障害の有意な例外を除いて、無毒性であり、薬物治療を中止した後には可逆的であった(Meyskensら、1986)。聴覚障害の発症は、総蓄積用量に関連し得る(Croghanら、1991)。
【0005】
実験動物モデルでは、DFMOが、結腸の上皮癌を含む、発癌性物質誘発性の多くの器官の上皮癌の予防に特に活性のある、発癌の強力なインヒビターであることが見出されている(Weeksら、1982、Thompsonら、1985、Nowelsら、1986、Nigroら、1987)。DFMOは、動物における腫瘍促進段階の後期で作用するが、それがポリープおよび癌の発達を阻害する正確な機構は知られていない。オルニチンデカルボキシラーゼおよびポリアミンによる、細胞のトランスフォーメーション、浸潤、および血管形成への作用が、報告されている(Auvinen, 1997)。例えば、ODCの過剰発現は、細胞のトランスフォーメーションおよび浸潤を増強する(Kubotaら、1997)。
【0006】
この現象を説明する分子機構は、マイトジェン活性化プロテイン(MAP)キナーゼ活性の活性化、マトリクスメタロプロテイナーゼの分泌(Wallonら、1994; Kubotaら、1997)、および癌遺伝子(c−mycおよびras)を有する経路(Meyskensら、1999; Cliffordら、1995)を含む。ポリアミンの潜在的な細胞相互作用の包括的な概説が、最近提示されている(Auvinen、1997)。
【0007】
前立腺癌は、米国男性において最も一般的に診断される悪性疾患であり、米国において男性の癌死亡の、上から2番目の原因である(Feuerら、1999)。前立腺癌の発生率は年齢とともに上昇するので、前立腺癌と診断されることになる男性の数は、医療および全般的な健康が向上するにつれて、増加する。このように、前立腺癌の予防は、国民的な医療問題である。前立腺癌の予防のための現在のストラテジーは、前立腺中のホルモン環境の変化(Proscar)、あるいは抗酸化剤(セレンおよびビタミンE)またはレチノイドの食物への添加に焦点が当てられてきた。別のアプローチは、前立腺中のポリアミンレベルを抑制することであり、これは、ポリアミン経路の第1の酵素であるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)がヒト前立腺癌組織中で過剰発現されることを示す研究により提案される手法である(Mohanら、1999)。
【0008】
ODC活性およびポリアミン含有量は、他の哺乳動物組織と比較して、前立腺組織においてより高い(Dunzendorfer、1978)。1979年に、Danzinらは、ラットをDFMOで2週間処置し、4〜6週間以内でベースライン活性の10%までの前立腺ODCの最大の阻害を見出し、研究の間中、ベースライン活性の50%までの抑制を持続した。前立腺は、精巣、胸腺、脾臓または肝臓よりもDFMOに対してより感受性があり、前立腺および胸腺は、器官重量の減少を示した。Danzinら(1979)はまた、去勢後の外因性のテストステロンを用いる前立腺の再成長に対するDFMOの効果に注目した。去勢後、前立腺は、ポリアミン含有量と同様に、サイズにおいて減少した。アンドロゲンの補充により、前立腺の萎縮は即座に反転し、ポリアミン含有量は上昇した。DFMOは、アンドロゲン処置の間、前立腺(腹側葉)の重量増を顕著に遅らせた。
【0009】
Hestonら(1982)は、インビトロおよびインビボ(ラットの側腹部中に腫瘍細胞を接種して粗大な腫瘍を産生した後)での、前立腺癌細胞系に対するDFMOの抑制効果を測定した。インビトロでのODC活性は、2つのアンドロゲン非依存性前立腺癌細胞株において最も高く、次いで、腹側葉、ゆっくりと成長する癌細胞株、そして背側葉において高かった。DFMOで腹腔的に18日間処置したインビボでの前立腺腫瘍を有する動物は、全身毒性を伴わずに、非処置コントロールの半分の湿重量を有する腫瘍を発達させた。別の研究では、総ポリアミン抑制(無ポリアミン食、DFMO、ポリアミンオキシダーゼの第2のインヒビターおよび腸管洗浄から構成される処置)が、ラットの側腹部中に移植したMAT−LyLu前立腺癌細胞株の成長について評価された(Movlinouxら、1991)。ヒト被験者については、前立腺癌を有する患者のPSA力価の減少を導くポリアミン欠乏についての報告が、Kergozien(1996)によって解説された。
【0010】
1999年に、Messingらは、ヒト前立腺ポリアミンレベルに対する2週間の経口DFMOの結果を発表した。彼らの研究では、無作為に選択した男性に、根治的な前立腺切除または膀胱前立腺全摘出の前に、2週間のDFMO(0.5gm/m2)(n=15)またはプラシーボ(n=10)のいずれかを与えた。外科手術の時点で、ポリアミン分析用の組織を、エキソビボコア生検を用いて、前立腺の外科的除去後に採取した。触診可能な場合、疑われしい前立腺癌小節を、サンプリングした。採取した前立腺コアの数は、1被験者あたり2〜6個の範囲であったが、癌の領域をサンプリングしようとする研究者らの努力に反して、これらのコアの大半は、癌を示さなかった。ODC活性およびポリアミンレベルを、これらのコアにおいて測定した。加えて、各被験者の血漿テストステロン、血清PSA、および前立腺酸ホスファターゼレベル、ならびに手掌上腕皮膚パンチ生検からのODC活性を、測定した。14人の男性が、毒性を伴わずに、2週間のDFMOを完了した。平均プトレシンレベルは、DFMO処置群では統計的により低かった(1.43対1.95、p=0.03)。有意なことに、彼らの研究で測定されたODC活性、スペルミジンレベルおよびスペルミンレベルにおいて、差異は存在しなかった(Messingら、1999)。
【0011】
これらの結果を鑑みると、DFMOが、前立腺癌を有する患者(特に、スペルミンレベルに対するいかなる効果も伴わない患者)の処置に有用であることは、不明確なままである。
【0012】
(発明の要旨)
従って、本発明は、ヒト前立腺細胞中のスペルミンレベルおよび/またはスペルミジンレベルを減少させる方法を意図し、この方法は、上記細胞中の上記レベルを減少させるのに十分な量および期間、DFMOを上記細胞中に投与する工程を包含する。前立腺は、他の器官と比較して、高レベルのポリアミンを有する。前立腺はまた、本発明の方法を用いたDFMOに対する曝露時のスペルミンの量および減少%において、他の器官と異なる。
【0013】
好ましい実施形態では、ヒト前立腺細胞は、癌細胞、非癌性細胞または良性過形成細胞である。上記細胞は、DFMO投与中の患者中にあってもよく、用いられるDFMOは、L−鏡像異性体を実質的に含まないものか、または、D−異性体とL−異性体との50/50ラセミ体混合物と比べて、D−鏡像異性体が富化されていてもよい。
【0014】
好ましい実施形態では、DFMOは、約3、4、5、6、8、10または12週間投与される。DFMOの投与期間は、これよりも長くてよく、2、3、4、5、6、8、10ヶ月の間または12ヶ月を超える間、継続されてもよい。DFMO投与期間は、2、3、4、5、10、15、20、25、30、40または50年間であってもよく、患者の一生にわたってもよい。好ましい実施形態では、DFMOの投与量は、約0.1〜2.0gm/m2/日、またはより好ましくは、約0.5gm/m2/日である。DFMO量は、約0.1〜2g/日、またはより好ましくは、0.25〜1.5g/日、またはさらにより好ましくは、0.5〜1.0g/日であり得る。DFMOは、任意の一般的な経路を介して投与されてもよい。好ましい実施形態では、DFMOは、経口的に投与される。
【0015】
好ましい実施形態では、スペルミンレベルが、減少される。この減少は、好ましくは、上記処置の前の上記細胞中のスペルミジンレベルと比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%または80%である。好ましい実施形態では、スペルミジンレベルが、減少される。この減少は、好ましくは、上記処置の前の上記細胞中のスペルミジンレベルと比較して、約30%、45%、55%、65%、75%、85%、95%または99%である。別の好ましい実施形態では、上記細胞のスペルミジン/スペルミン比が、減少される。さらに別の実施形態では、プトレシンレベルが、約50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%減少される。
【0016】
本発明はまた、前立腺癌に罹患しているヒト被験者を処置する方法に関し、この方法は、上記被験者の前立腺細胞中のスペルミンレベル、スペルミジンレベル、またはスペルミジン/スペルミン比を減少させるのに十分な量および期間、被験者にDFMOを投与する工程を包含する。
【0017】
なお別の実施形態は、第2の治療を包含し、この第2の治療は、ジヒドロキシテストステロンを減少させること、食餌抗酸化剤(例えば、セレン、ビタミンEまたはその両方)を投与すること、レチノイドを投与すること、前立腺切除、低ポリアミン食、ポリアミンオキシダーゼを阻害すること、放射線療法またはホルモン療法(例えば、ルペロン(luperon)、ゾルデックス(zoledex)、フルタミドまたはカサデックス(casadex))を、単独でか、または組み合わせて、包含する。
【0018】
さらなる実施形態では、本発明に従うDFMO治療の効果は、診断方法によって前立腺癌の処置において決定され得、この診断方法は、前立腺特異抗原(PSA)の分析、前立腺生検、直腸検診、またはPSAの分析および直腸検診を包含するが、これらに限定されない。
【0019】
他の実施形態は、危険性のある被験者において前立腺癌の発達を阻害するための方法、原発性前立腺癌を有する被験者における前立腺癌の転移を阻害するための方法、ステージ1またはステージ2の前立腺癌を有する被験者における前立腺癌の進行を阻害するための方法、切除不可能な前立腺癌腫瘍を切除可能にするための方法、および前立腺癌腫瘍の成長を阻害するための方法を包含する。これらの方法は、ヒト被験者の前立腺細胞中のスペルミンレベルおよび/またはスペルミジンレベルを減少するのに十分な量および期間、その被験者にDFMOを投与する工程を包含する。
【0020】
良性前立腺過形成に罹患しているヒト被験者において良性前立腺過形成を処置する方法もまた、本発明の範囲内にあり、この方法は、その過形成細胞により生成されるポリアミンの量を安定化または減少させるのに十分な量および期間、その被験体にDFMOを投与する工程を包含し、ここで、上記ポリアミンは、スペルミン、スペルミジン、またはスペルミンとスペルミジンとの組み合わせである。過形成細胞により生成される前立腺特異抗原(PSA)のレベルもまた、DFMOでの処置において安定化または減少され得る。
【0021】
本発明のさらなる実施形態は、良性前立腺過形成に罹患しているヒト被験者において良性前立腺過形成を処置するための方法を包含し、この方法は、その過形成細胞によって生成されるポリアミン(スペルミンまたはスペルミジン)レベルの減少または安定化によって測定されるような、治療有効量のDFMOを、十分な期間、以下から選択される治療有効量の第2の治療薬剤と一緒に、投与する工程を包含する:α−1アドレナリン作用性レセプター遮断薬(例えば、テラゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン、インドラミン、タムスロシン(tamsulosin)、プラジシン(prazicin)およびアルフゾシン(alfuzosin));5−α−レダクターゼ酵素遮断薬(例えば、フィナステリド(finasteride));アザステロイド誘導体;α−1アドレナリン作用性レセプター遮断薬と5−α−レダクターゼ酵素遮断薬との組み合わせ;カリウムチャネル開放薬(opener)(例えば、ミノキシジル);またはレチノイン酸誘導体。好ましい実施形態において、第2の治療薬剤は、ノコギリパルメット抽出物である。
【0022】
(例示的な実施形態の説明)
(I.本発明)
本発明は、ヒト前立腺中のポリアミンレベルを減少するための方法としての、DFMO(α−ジフルオロメチルオルニチン)の使用を記載する。DFMOは、28日間経口的にDFMOが与えられた男性被験者の前立腺中のプトレシン、スペルミジン(Spd)およびスペルミン(Spm)のレベルを有意に減少させ得る。従って、DFMOは、前立腺癌の治療における治療用途として利用され得る。驚くべきことに、DFMOの投与に伴う前立腺中のスペルミンレベルの量および減少%は、DFMOが、このような減少を引き起こすのに十分な量および期間、投与される場合、DFMO治療を受けている患者の他の組織中におけるそれらよりも高い。
【0023】
(II.DFMO(α−ジフルオロメチルオルニチン))
多くの高度増殖型癌は、血中および尿中のポリアミン(プトレシン、スペルミジンおよびスペルミン)レベルの上昇に関連している。研究により、これは、律速酵素オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)によるポリアミン合成の増大に関連することが示されている。本出願において特に興味が向けられたのは、前立腺癌である。
【0024】
ポリアミン合成の経路は、L−オルニチンで開始される。この天然のアミノ酸は、通常はタンパク質に含まれないが、アルギニンをオルニチンと尿素とに代謝する尿素サイクルの一部である。オルニチンは、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)によりプトレシンとCO2とに変換され、これがポリアミン産生の律速段階である。S−アデノシルメチオニンから与えられるプロピルアミンの付加により、プトレシンはスペルミジンに変換される。スペルミジンは、その後、再びS−アデノシルメチオニンの脱炭酸に関連して、スペルミンシンテターゼによりスペルミンに変換される。プトレシン、スペルミジンおよびスペルミンは、哺乳動物組織中の、3つの主要なポリアミンを表わす。ポリアミンは、動物組織および微生物中に見出され、細胞の成長および増殖に重要な役割を果たすことが知られている。細胞の成長および増殖におけるポリアミンの役割の正確な機構は知られていないが、ポリアミンは、DNA、RNA、またはタンパク質合成のような高分子プロセスを促進し得ると思われる。ポリアミンレベルは、精巣、腹側前立腺および胸腺において、乾癬性皮膚病変において、ならびに、急速な成長プロセスを起こしている他の細胞において、高いことが知られている。
【0025】
また、腫瘍組織の急速増殖は、ポリアミンレベルの異常な上昇により特徴付けられることも十分に知られている。すなわち、ポリアミンはまた、腫瘍の成長の維持において重要な役割を果たし得る。このため、DFMOのようなODCインヒビターは、ポリアミンの形成を遮断することによりその治療的効果を発揮し、これにより、腫瘍組織の増殖および転移を、遅らせるか、中断させるか、または阻止し得る。
【0026】
DFMO(α−ジフルオロメチルオルニチン、エフロルニチン(Eflornithine)、Ornidyl(登録商標))は、アミノ酸L−オルニチンの構造アナログであり、以下のC6H12N2O2F2の化学構造を有する。
【0027】
【化1】
DFMOは、本発明の方法において、D−鏡像異性体およびL−鏡像異性体のラセミ(50/50)混合物として、または好ましくは、D−異性体がL−異性体と比べて富化された(例えば、L−異性体と比べて、70重量%、80重量%、または90重量%以上のD−異性体)D−異性体およびL−異性体の混合物として、用いられ得る。最も好ましくは、使用されるDFMOは、L−鏡像異性体を実質的に含まない。
【0028】
(III.DFMOの抗腫瘍特性および毒性)
DFMOは、腫瘍中のプトレシン合成の阻害を生じさせるものの、宿主に対しては比較的無毒である。ヒトにおける経口的DFMOは、耳毒性(聴覚障害)を伴い、これは、化学的予防のための推奨用量を、一日当り一回の0.5gm/m2の付与用量に制限する。DFMOの用量を制限する他の毒性作用は、血小板減少症(血中の血小板が異常に少ないこと)(これは、患者の約50%に生じる)、白血球減少症(白血球が異常に少ないこと)または貧血である。DFMOの別の副作用は、悪心および嘔吐であり、これは、患者の90%までにおいて生じる。これら全ての毒性作用は、比較的無害かつ可逆的であり、薬物の使用を中止によって停止する。
【0029】
急速に増殖する腫瘍組織の成長速度の制御のためのODCインヒビターの効果は、標準動物腫瘍モデルにおいて評価されている。例えば、DFMOの抗腫瘍効果は、以下の動物腫瘍モデルにおいて実証されている:マウスのL1210白血病、Balb/CマウスのEMT6腫瘍、ラットの7,12−ジメチルベンズアントラセン誘導性(DMBA誘導性)哺乳動物腫瘍、およびバッファローラットのDFMO Morris 7288Cまたは5123ヘパトーム。加えて、種々の細胞傷害性薬剤と組み合わせたDFMOの抗腫瘍効果は、以下のように実証されている:(a)マウスのL1210白血病、バッファローラットのMorris 7288Cヘパトーム、およびマウスのEMT6腫瘍における、ビンデシンまたはアドリアマイシンとの組み合わせ、(b)マウスのL1210白血病における、シトシンアラビノシドとの組み合わせ、(c)マウスのL1210白血病における、メトトレキサートとの組み合わせ、(d)マウスのEMT6腫瘍およびマウスのDMBA誘導性腫瘍における、シクロホスファミドとの組み合わせ、(e)マウスの神経膠腫26脳腫瘍における、BCNUとの組み合わせ、および(f)マウスのL1210白血病、バッファローラットのMorris 7288Cヘパトーム、マウスのP388リンパ球性白血病、およびマウスのS−180肉腫における、MGBGとの組み合わせ。
【0030】
DFMOは、腫瘍のプトレシン生合成を効果的に遮断し得、得られる抗腫瘍効果は、細胞増殖抑制性であり、細胞傷害性ではない。例えば、DFMOは、MCA肉腫の成長速度を減少させるが、腫瘍の退行を生じさせない。この知見は、DFMOが細胞増殖抑制性因子であることを示す他の研究者の報告と一致する。しかし、研究により、重要な役割がDFMO薬剤に関して存在し得ることが示され、これは、DFMOを含む、併用化学療法レジメンの将来的な開発を可能とする。
【0031】
種々の新形成の処置での使用における治療的ODCインヒビターとしてのDFMOの最初の見込みは、幾分薄れてきたが、これは、米国特許第4,925,835号に記載されているように、DFMOが、実際に、ODC活性を不可逆的に阻害するが、DFMOでインビボにて処置された細胞が、外因性プトレシンの取り込みを有意に増加するからである。その細胞の細胞間輸送機構は、細胞外環境からのプトレシンの移入によって、DFMOによって損なわれたODC活性の「回避(end run)」を行う。従って、インビボでのDFMOの効果は、インビトロにおけるよりはるかに低い。よって、DFMO処置が、細胞内プトレシン新生を効果的に阻害し、一方、これはまた、細胞外プトレシンの取り込みを増大し、それによって、そのODC阻害効果は相殺される。
【0032】
この問題は、プトレシンが多くの一般的な食物(例えば、オレンジジュース(約400ppmのプトレシンを含有))中に存在するという事実によって、より深刻となる。このことは、プトレシンを含まない栄養的に十分な食餌を患者に提供することを事実上不可能とする。従って、DFMOで処置した細胞は、細胞***を支持するのに十分な量の細胞外プトレシンを移入し得る。
【0033】
DFMOをヒト患者にとってより受容可能とするためのストラテジーが、米国特許第4,859,452号(参考として援用される)に記載されている。DFMOの処方物が記載されており、これは、DFMO誘導性の毒性の減少を補助するために、必須アミノ酸を、アルギニンまたはオルニチンのいずれかと組み合わせて含む。
【0034】
表面的病変へのこの薬物の局所適用は、ヒトにおける全身的取り込みが最小または有意でない、化学防御的癌治療を可能とする。本発明の1つの目的は、しばしば前癌性であるゆうぜいおよび表面的肛門性器HPV病変に対する、持続性の局所的化学的予防薬剤として使用され得る、軟膏剤を提供する。この軟膏剤はまた、肛門性器領域の癌性病変に直接塗布してもよい。DFMOの5%溶液の局所適用により、マウス表皮のDNA合成が遮断されることが、当該分野で公知である。インビトロでのプトレシンレベルは、コントロールの25%まで減少したが、スペルミンレベルおよびスペルミジンレベルは、影響を受けなかった(米国特許第4,859,452号)。さらに、乾癬を患う10人の患者に10%DFMOクリームを塗布したところ、乾癬病変の周縁の回復とともに、皮膚のスペルミンレベルが66%減少されることが示された。
【0035】
(IV.D−DFMO)
DFMOの毒性は、DFMOのD−鏡像異性体によって、または、D−異性体が異性体混合物の少なくとも60重量%、好ましくは90重量%以上を含むように、D−異性体含量について富化されている、D−異性体とL−異性体との混合物によって、大きく減少され得る。D−DFMOは、なおODCのインヒビターであるが、動物モデルにおいてより低い毒性(耳毒性を含む)を有する。モルモットの研究では、DFMOの鏡像異性体は、有意な毒性は示さなかった。DFMOのD−型は、複合活動電位または蝸牛マイクロホン作用のいずれにも有意な効果を及ぼさないことが見出された。聴覚機能の評価から、DFMOのL−型は、正常な蝸牛電位の有意な崩壊を生じることが見出された。
【0036】
D−DFMOまたは富化D−異性体混合物の使用は、ラセミ(50/50)D,L−DFMOの使用に関連する多くの問題を克服し得る。D−DFMOまたは冨化D−DMFO異性体混合物は、D鏡像異性体に関連する予期される毒性が低いことに起因して、ラセミ混合物よりも高い投与量で投与され得る。0.6μM〜80μMの濃度範囲のD−DFMO、L−DFMO、およびD,L−DFMOを用いる3つの個別の研究において、ODC活性の50%を阻害する各々の有効濃度レベル(Ki)を決定した。両方の鏡像異性体およびラセミ混合物が、抑制性であった。D−DFMOのKiは、L−型よりも4倍低く、混合物よりも3倍低かった(「D−enantiomer of DFMO and methods of use therefor」との表題の米国特許出願、2000年7月1日出願)。
【0037】
(V.DFMOおよびヒト前立腺)
DFMOおよび良性前立腺過形成の処置におけるその使用が、米国特許第4,413,141号および第4,330,559号に記載されている。米国特許第4,413,141号は、インビトロおよびインビボの両方における、ODCのインヒビターとしてのDFMOを記載している。報告によれば、DFMOの投与は、ポリアミンが正常に活性に産生される細胞中の、プトレシンおよびスペルミジン濃度を減少させる。加えて、DFMOは、標準腫瘍モデルで試験した場合に、腫瘍性の細胞増殖を遅らせることが可能であることが示された。米国特許第4,330,559号は、良性前立腺過形成の処置のためのDFMOおよびDFMO誘導体の使用を記載している。良性前立腺過形成は、急速な細胞増殖によって特徴付けられる多くの疾患状態と同様に、ポリアミン濃度の異常な上昇を伴う。この参考文献に記載されている処置は、患者に経口的または非経口的に投与され得る。しかし、上記で指摘したように、Messingら(1999)によるより最近の研究では、2週間にわたるDFMOの0.5gm/m2での経口投与を伴う処置後に、癌性前立腺中のスペルミジンレベルまたはスペルミンレベルのいかなる減少も検出することはできなかった。
【0038】
最近、前立腺癌中のポリアミンの役割が再考されている。Mohanら(1999)は、同一の患者からの良性組織および悪性組織におけるODC活性を測定し、癌性部分が良性組織の部分のほぼ3倍のレベルを有することを見出した(1142+100対427+51)。加えて、彼らは、マッサージにより得られた前立腺液のODC活性を評価し、良性肥大を有する男性と比較した、前立腺癌を有する男性における、より高いレベルを見出した(3847+162対2742+67)。
【0039】
前立腺癌の化学的予防は、ホルモン性薬剤および抗酸化性薬剤の両方を用いて研究されている。前立腺癌に関する最初の大規模な化学的予防研究が、1993年にSouthwest Oncology Group(SWOG)により開始され、18,000人の男性が無作為に選択され、フィナステリド(Proscar)またはプラシーボを7年間与えられた。試験される仮説は、5−α−レダクターゼによるDHTへのテストステロンの変換をブロックすることによる、前立腺中のジヒドロテストステロン(DHT)レベルの減少が、前立腺癌を減少させるということであった。結果は、2004年に利用可能となると予想される。より小規模の研究では、Proscar処置または非処置のゼロ時および1年後の代理エンドマーカー(surrogate end marker)に注目した(Coteら、1998)。研究する群には、PSAが上昇し、かつ、陰性の前立腺針生検を有する男性が含まれた。この研究は、Proscarについての男性の1年の経過観察生検後に診断された癌の増大を示した(非処置での25人中1人に対し、27人中8人(p=0.025))。前立腺癌の危険性が高い22人の男性における、経口フェンレチニド(fenretinide)の小規模の第II相試験が、Pientaら(1997)により行われた。この試験は、研究前の生検で陰性だった8人の男性が、研究が行われている間に悪性腫瘍を示した、初期の時点で中止された。目的の薬剤からの保護効果を実証し得なかったこれら2つの小規模の研究では、DMFOのような種々の薬剤に関して、前立腺癌の化学的予防における役割が存在するはずである。
【0040】
(VI.前立腺癌の診断)
前立腺癌に関する最も広く一般に用いられる現在の試験は、直腸指診(digital rectal examination)(DRE)、および、血清前立腺特異抗原(PSA)の分析である。PSAは、前立腺組織に特異的であるが、これは、正常および良性ならびに悪性の前立腺上皮によって産生され、これが、前立腺癌の検出について高い割合の偽陽性を生じる(Partin & Oesterling、1994)。
【0041】
前立腺癌検出用に用いられている他のマーカーには、前立腺酸ホスファターゼ(PAP)および前立腺分泌タンパク質(PSP)が含まれる。PAPは、ホルモンの制御下で前立腺細胞により分泌される(Brawnら、1996)。PAPは、PSAが有するよりも、低い特異性および感度を有する。結果として、今ではほとんど用いられないが、PAPは、初期治療に失敗した転移患者をモニターするためのいくつかの用途を依然として有し得る。一般に、PSPは、PAPよりも高感度の生体マーカーであるが、PSAと同程度の高感度ではない(Huangら、1993)。PSAと同様に、PSPレベルは、BPHを有する患者だけでなく、前立腺癌を有する患者においても、しばしば上昇する。
【0042】
前立腺疾患に関連する別の血清マーカーは、前立腺特異的膜抗原(PSMA)である(Horoszewiczら、1987;Carterら、1996;Murphyら、1996)。PSMAは、II型細胞膜タンパク質であり、葉酸ヒドロラーゼ(FAH)として同定されている(Carterら、1996)。PSMAに対する抗体は、正常な前立腺組織および前立腺癌組織の両方と反応する(Horoszewiczら、1987)。Murphyら(1995)は、ELISAを用いて、進行した前立腺癌中の血清PSMAを検出した。血清試験として、PSMAレベルは、前立腺癌の比較的弱い指標である。しかし、PSMAは特定の状況で有用性を有し得る。PSMAは、転移性の前立腺腫瘍の毛細血管床において発現され(Silverら、1997)、そして転移癌患者の血液中でより豊富であることが報告されている(Murphyら、1996)。PSMAメッセンジャーRNA(mRNA)は、5−α−ジヒドロキシテストステロン(DHT)に対する曝露後のLNCaP前立腺癌細胞株において、8〜10倍ダウンレギュレートされる(Israeliら、1994)。
【0043】
上記のように、DFMOは、上皮発癌の腫瘍促進段階の後期で作用する。DFMOによる結腸発癌の阻害についての機構には、マトリクスメタロプロテイナーゼマトリリシン(matrilysin)(Wallonら、1994)の抑制であって、これは、腫瘍の浸潤に関与する分泌プロテアーゼである。DFMOはまた、LNCaPヒト前立腺癌由来細胞中のインターロイキン−1β(IL−1β)誘導性マトリリシン発現を抑制するので、この機構は、前立腺癌において機能的である。
【0044】
前立腺癌についての比較的新しい潜在的生体マーカーは、ヒトカリクレイン2(human kallekrein 2)(HK2)である(Piironenら、1996)。HK2は、前立腺により分泌されるカリクレインファミリーのメンバーである。理論的には、HK2の血清濃度は、前立腺癌の検出または診断において有用であり得るが、このマーカーの有用性は、依然評価されている。
【0045】
(VII.癌の処置方法)
特定の局面において、本発明は、前立腺癌の処置のための方法を提供する。治療方法は、DFMOを含む治療有効量の治療組成物で個体を処置する工程を包含する。有効量は、一般に、疾患またはその症状の程度を、検出可能にかつ繰り返して、改善、減少、最小化または制限するのに、十分な量として説明される。疾患の排除、根絶または治癒を含む、より厳密な定義が、適用され得る。
【0046】
DFMOは、約0.05〜約20.0gm/m2/日の用量で投与され得る。投与されるべきDFMOの好ましい用量は、約0.1〜約15.0gm/m2/日、または約0.1〜12gm/m2/日、または約0.1〜10gm/m2/日、または約0.1〜8gm/m2/日、または約0.1〜6gm/m2/日、または約0.1〜4gm/m2/日、または約0.1〜2gm/m2/日、または約0.1〜1gm/m2/日または約0.1〜0.5gm/m2/日、または約0.5gm/m2/日である。DFMOはまた、約0.1〜2.0g/日の用量で、または約0.25〜1.5g/日の用量で、またはより好ましくは約0.5〜1.0g/日の用量で投与され得る。
【0047】
細胞を死滅させ、細胞増殖を阻害し、転移を阻害し、腫瘍サイズを減少させ、さもなければ腫瘍細胞の悪性の表現型を反転または低減させるため、本発明の方法および組成物を用いて、一般的に、「標的」細胞をこの治療組成物に接触させる。これは、癌の処置に効果的な他の薬剤を含む組成物と組み合わせ得る。これらの組成物は、細胞を死滅させるかまたは細胞増殖を阻害するために有効な、組合せ量で提供される。このプロセスは、DFMOおよび薬剤または因子と細胞を同時に接触させること包含し得る。これは、両薬剤を含む単一の組成物または単一の薬理学的処方物と細胞を同時に接触させることにより、または、一方の組成物がDFMOを含みかつ他方が第2の薬剤を含む2つの別個の組成物または処方物と細胞を同時に接触させることにより、達成され得る。
【0048】
患者への、本発明の治療的DFMO組成物の投与は、もしあるならば、DFMOの毒性を考慮に入れつつ、化学療法剤の投与に関する一般的なプロトコルに従う。処置サイクルは必要なだけ繰り返されることが予想される。種々の標準的な治療、ならびに外科的介入が、記載された治療と組合せて適用され得ることもまた、企図される。
【0049】
DFMO治療の臨床的適用が企図される場合には、意図される適用のために適切な薬学的組成物としてこの複合体を調製することが必要である。一般的に、これは、発熱物質と、ヒトまたは動物に有害であり得る他の不純物とを実質的に含まない、薬学的組成物を調製することを包含する。また、この複合体に安定性を付与し、かつ、この複合体を標的細胞により取り込み可能とするため、適切な塩および緩衝液を用いることが、一般的に望まれる。
【0050】
本発明の水性組成物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは水性媒体に溶解または分散された、有効量の化合物を含む。このような組成物はまた、接種材料とも呼ばれ得る。句「薬学的に受容可能または薬理学的に受容可能」とは、動物またはヒトに適切に投与された際に、有害な反応、アレルギー性反応、または他の不適当な反応を生じない、分子実体および組成物を指す。本明細書中で用いられる場合、「薬学的に受容可能なキャリア」は、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延薬剤などを包含する。薬学的活性物質に関するこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性成分と不適合である場合を除き、治療組成物におけるその使用が企図される。補助活性成分も、この組成物に組み込まれ得る。
【0051】
本発明の組成物は、従来の薬学的調製物を含み得る。同様に、分散物を、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物中、ならびに油中に調製し得る。通常の保存および使用の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための保存料を含有する。
【0052】
特定の癌に依存して、本発明による治療組成物の投与は、標的組織がその経路を介して利用可能である限り、任意の一般的な経路を介される。これは、経口経路、経鼻腔経路、口腔経路、経直腸経路、経膣経路、または局所経路を包含する。局所投与は、皮膚癌の処置に特に有利である。あるいは、投与は、同所注射、皮内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、または静脈内注射による。このような組成物は、通常、生理学的に受容可能なキャリア、緩衝液または他の賦形剤を含む、薬学的に受容可能な組成物として投与される。
【0053】
特定の実施形態では、エキソビボ治療もまた企図される。エキソビボ治療は、患者からの標的細胞の除去を含む。細胞は、患者の体外で処置され、その後で戻される。
【0054】
処置は、種々の「単位用量」を包含し得る。単位用量は、その投与(すなわち、適切な経路および処置レジメン)に従って所望の応答を生じるように計算された、所定量の治療組成物を含有するものとして定義される。投与されるべき量、ならびに特定の経路および処方は、臨床分野の当業者の技術範囲内にある。同様に重要なことは、処置される被験体、特に、被験体の状態および望まれる防御である。単位用量は、一回の注射として投与される必要はなく、一定期間にわたる連続的な注入を含み得る。
【0055】
本発明の好ましい実施形態の一つは、DFMO治療組成物の、特定の標的癌細胞についての使用を含む。特に興味深いのは、前立腺癌細胞である。
【0056】
本発明によれば、DFMOまたはアナログ組成物を腫瘍に直接注射することにより、癌を処置し得る。あるいは、腫瘍は、任意の適切な送達ビヒクルを用い、組成物を注入され得るか、または灌流され得る。腫瘍についての局所的投与または領域的投与もまた、企図される。最終的には、全身的投与を行い得る。適切な場合、例えば、腫瘍を切除し、残った微視的な疾患を排除するためこの腫瘍床を処置する場合には、連続的投与もまた、適用され得る。シリンジを介する送達またはカテーテル法が好ましい。このような連続的灌流は、処置の開始後、約1〜2時間から、約2〜6時間まで、約6〜12時間まで、約12〜24時間まで、約1〜2日間まで、約1〜2週間まで、またはこれより長く、行われ得る。一般的に、連続的灌流を介する治療組成物の用量は、一回または多数回の注射により与えられ、灌流が起きる期間中に調節される用量と等しい。4cmを超える腫瘍について、投与されるべき量は、約4〜10ml(好ましくは10ml)であり、一方、4cm未満の腫瘍については、約1〜3ml(好ましくは3ml)が用いられる。一回の用量として送達される複数回の注射は、約0.1〜約0.5mlの用量から構成される。ウイルス粒子は、約1cm間隔で配置される、腫瘍への多数回注射を投与することにより、有利に接触され得る。
【0057】
特定の実施形態では、処置される腫瘍は、少なくとも初期においては、切除可能でないかもしれない。治療的DFMO組成物での処置は、縁での収縮により、または、ある特定の浸潤部分の排除により、腫瘍の切除可能性を高め得る。処置後、切除が可能であり得る。切除後の付加的処置は、腫瘍部位での微視的残余疾患を排除するのに役立つ。
【0058】
DNA損傷を引き起こしかつ広範に用いられてきた他の因子は、γ線、X線、および/または腫瘍細胞への放射性同位体の誘導された送達として一般に知られるものを含む。DNA損傷因子の他の形態(例えば、マイクロ波およびUV照射)もまた、企図される。これらの因子の全ては、DNA、DNA前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の集合および維持に対して、広範な損傷をもたらす可能性が非常に高い。X線の投与範囲は、一日当り用量50〜200レントゲンで長期間(3〜4週間)から、2000〜6000レントゲンの一回用量までの範囲にある。放射性同位体の投与範囲は、広く変化し、同位体の半減期、放出される放射線の強さおよび種類、ならびに新形成細胞による取り込みに依存する。
【0059】
(VIII.DFMOを用いた併用治療)
本発明は、DFMOが他の治療と組合せて用いられ得ることを企図する。アスピリン、およびいくつかの他のNSAIDは、結腸直腸癌に対して化学予防的作用を発揮し、多分、胃癌、食道癌(Thunら、1993)およびさらには膀胱癌(Earnestら、1992)にも発揮することを示唆する、増加する一連の実験データおよび疫学的データが存在する。アスピリン、イブプロフェン、ピロキシカム(Reddyら、1990、Singhら、1994)、インドメタシン(Narisawa,1981)、およびスリンダク(Piazzaら、1997、Raoら、1995)は、アゾキシメタンAOM処置ラットモデルにおける結腸癌発生を効果的に阻害する。フルルビプロフェンは、APC(Min)+マウスモデルにおける抗腫瘍効果を実証した(Wechterら、1997)。NSAIDは、活性化Ki−rasを保有する腫瘍の発生も阻害する(SinghおよびReddy,1995)。DFMOをアスピリンと組合せて、AOM処置ラットにおけるその化学予防的効果を評価する研究が行われている。アスピリンとDFMOとの組合せが、AOMが相乗的であることが見出された後に投与された(Liら、1999)。その結果は、アスピリンとDFMOとの組合せは、AOM後に投与された場合に、結腸癌を予防し得ることを示した(Liら、1999)。
【0060】
DFMOと、化学療法薬剤ピロキシカムとの組合せは、直腸癌発生のAOM処置ラットモデルにおいて相乗的化学予防効果を有することが示されている(Reddyら、1990)が、DFMOは、各薬剤が個別に投与された場合に、Ki−ras突然変異および腫瘍発生に対して、ピロキシカムよりも高い抑制効果を示した(Singhら、1993、Reddyら、1990、Kulkarniら、1992)。ある研究では、AOM処置ラットへのDFMOまたはピロキシカムの投与は、Ki−ras変異を有する腫瘍の数を、90%から、それぞれ36%および25%まで低減させた(Singhら、1994)。Apc変異MinマウスモデルをピロキシカムおよびDFMOの試験に用い、この併用処置が、いずれかの薬剤単独よりもはるかに効果的であり、いかなる腸腺腫も全く有さない有意な数のマウスが得られたことが確認された(Jacobyら、2000)。DFMOとピロキシカムとの両方はまた、既存の腫瘍における生化学的に活性なp21 rasの量を低減させた(Singhら、1993)。モデル系における薬剤の成功にもかかわらず、この組合せで行われたフェーズI試験は、一定範囲の有害な副作用を生じた(Carboneら、1998)。
【0061】
DFMOはODCの効果的なインヒビターであるので、研究者の中には、インターフェロンと組合せた共同的処置の一部としてDFMOを用いることを試みているものもいる。米国特許第4,499,072号は、ODCインヒビターと組み合わせてインターフェロンを使用することによる、ODCインヒビター(DFMOを含む)のポリアミン除去効果の向上を記載している。さらに、この特許は、メトトレキサートのような既知の細胞傷害性薬剤と組み合わせた、ODCインヒビターとインターフェロンの両方の使用を記載している。米国特許第5,002,879号は、ODCインヒビター(好ましくはDFMO)を、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞とインターロイキン−2と組み合わせて用いる、同様の共同的治療を記載している。
【0062】
癌治療はまた、化学療法および放射線ベースの治療の両方を伴う、DMFOの種々の併用治療を含む。化学療法の組み合わせには、例えば、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロルエタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン(bisulfan)、ニトロソ尿素類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(plicomycin)、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、タキソール、トランスプラチナ(transplatinum)、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトトレキサートあるいはこれらの任意のアナログまたは誘導改変体が含まれる。良性前立腺過形成のような前癌性状態に関して、テラゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン、ブナゾシン、インドラミン、タムスロシン、プラジシン(prazicin)またはアルフゾシンのような、α−1アドレナリン作用性レセプター遮断薬;フィナステリドまたはアザステロイド誘導体のような、5−α−レダクターゼ酵素遮断薬;α−1アドレナリン作用性レセプター遮断薬と5−α−レダクターゼ酵素遮断薬との組み合わせ;ミノキシジルのようなカリウムチャネル開放薬;およびレチノイン酸誘導体から、第2の治療薬剤が選択された。好ましい実施形態では、第2の治療薬剤は、ノコギリパルメット(saw palmetto)抽出物である。
【0063】
種々の組み合わせ(例えば、DFMO組成物は「A」であり、放射線療法、化学療法または他の治療薬剤は「B」である場合)が、使用され得る:
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A。
「接触された」および「曝露された」との用語は、細胞に用いられる場合には、治療組成物および化学療法または放射線治療薬剤が標的細胞に送達されるプロセス、または、標的細胞の直接近位に配置されるプロセスを記載するために、本明細書中で用いられる。細胞の死滅または静止を達成するため、両薬剤は、細胞を死滅させるかまたは細胞が***するのを防ぐのに効果的な、組み合わせ量で細胞に送達される。
【0064】
DFMO治療は、数分から数週の範囲の間隔で、もう一方の薬剤による処置の前または後に行われ得る。もう一方の薬剤およびDFMOが細胞に個別に適用される実施形態では、各送達の間に有意な期間が満了しなかった結果、その薬剤およびDFMOが、細胞に対して有利な組合せ効果を依然として発揮可能であることが、一般的に保証される。このような場合、互いに約12〜24時間内に、より好ましくは、互いに約6〜12時間内に、最も好ましくは約12時間だけ遅れさせて、両方の治療適用を細胞に接触させることが、企図される。しかし、いくつかの状況において、各投与の間に数日(2日、3日、4日、5日、6日または7日)から数週間(1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間または8週間)が経過する場合に、処置の期間を有意に延長することが望ましくあり得る。
【0065】
(IX.薬学的組成物)
本発明の水性組成物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは薬学的に受容可能な水性媒体中に溶解または分散された、有効量のDFMOを含む。句「薬学的に受容可能または薬理学的に受容可能」とは、動物またはヒトに適切に投与された場合に、有害な反応、アレルギー反応、または他の不適当な反応を生じない、分子実体または組成物を指す。
【0066】
本明細書で用いられる場合「薬学的に受容可能なキャリア」は、任意かつ全ての、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを包含する。薬学的活性物質に関するこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性成分と不適合性でない限り、この薬学的組成物におけるその使用が、企図される。補助活性成分もまた、この組成物に組込まれ得る。ヒトへの投与に関して、調製物は、FDA Office of Biologicsの基準により要求される、滅菌性の基準、発熱原性の基準、一般的安全性の基準および純度の基準を満たすべきである。
【0067】
生物学的材料は、望ましくない低分子量分子を除去するために徹底的に透析され、かつ/または、適切な場合には、所望のビヒクル中により容易に処方するために凍結乾燥されるべきである。次いで、活性化合物は、一般的に、非経口投与のために処方され、例えば、静脈内経路、筋肉内経路、皮下経路、病変内経路、またはさらに腹腔内経路を介した注射のために、処方される。活性構成成分または活性成分としてのヘッドピン(headpin)薬剤を含有する水性組成物の調製は、本発明の開示を考慮すれば、当業者により知られる。代表的には、このような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして、注射可能物質として調製され得る。注射前の液体の添加の際に溶液または懸濁液を調製するための使用に適切な固体形態もまた、調製され得る。そして、この調製物はまた、乳化され得る。
【0068】
注射可能な使用に適した薬学的形態としては、滅菌水溶液または滅菌分散液;ゴマ油、落花生油または水性プロピレングリコールを含む、処方物;ならびに、滅菌注射可能溶液および滅菌注射可能分散液の即時調製物用の、滅菌粉末が、挙げられる。全ての場合において、その形態は、滅菌されていなければならず、かつ、簡単にシリンジで注入可能な程度に、液状でなければならない。その形態は、製造条件および保存条件下で安定でなければならず、かつ、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。
【0069】
遊離塩基または薬学的に受容可能な塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と適切に混合された水中で、調製され得る。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物中、ならびに油の中で、調製され得る。通常の保存条件および通常の使用条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐ保存薬を含有する。
【0070】
本発明のDFMOは、中性形態または塩の形態で組成物に処方され得る。薬学的に受容可能な塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)を含み、これは、例えば、塩酸またはリン酸のような無機酸と、あるいは、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と、形成される。遊離カルボキシル基と形成された塩はまた、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化鉄(III)のような、無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリエチルアミン、ヒスチヂン、プロカインなどのような、有機塩基に由来し得る。
【0071】
キャリアはまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、これらの適切な混合物、ならびに植物油を含有する、溶媒または分散媒であり得る。例えば、レシチンのようなコーティングの使用により、分散液の場合には必要とされる粒子サイズの維持により、および、界面活性剤の使用により、適切な流動性が、維持され得る。微生物作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどにより、達成され得る。多くの場合、等張剤(例えば、糖または塩化ナトリウム)を含むことが、好ましい。注射可能組成物の長期の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を組成物中に用いることにより、達成され得る。
【0072】
滅菌注射可能溶液は、活性化合物を必要量、上記で列挙した種々の他の成分とともに適切な溶媒中に組み込むことより、そして必要な場合、その後濾過滅菌することにより、調製される。一般的に、分散液は、ベースとなる分散媒と、上記で列挙したもの以外の必要な他の成分とを含有する滅菌ビヒクル中に、種々の滅菌された活性成分を組み込むことにより、調製される。滅菌注射可能溶液を調製するための滅菌粉末の場合、その好ましい調製方法は、前もって滅菌濾過された溶液から、活性物質および他の望ましい任意の成分の粉末を得る、真空乾燥技術および凍結乾燥技術である。より濃縮された、または高度に濃縮された、直接注射用溶液の調製もまた企図され、ここで、溶媒としてのDMSOの使用が、非常に急速な浸透をもたらし、これにより高濃度の活性薬剤が小さな領域に送達されることが、想像される。
【0073】
処方の際、溶液は、投薬処方物に適合した様式で、かつ、治療上有効である量で、投与される。この処方物は、上記した注射可能溶液の種類のような、種々の投薬形態で容易に投与されるが、薬剤放出カプセルなどもまた、利用され得る。
【0074】
水溶液での非経口投与に関し、例えば、その溶液は、必要な場合は適切に緩衝化されるべきであり、そして液体希釈剤は、十分な生理食塩水またはグルコースでまず等張性にされるべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与および腹腔内投与に特に適している。これに関して、利用され得る滅菌水性媒体は、本発明の開示を鑑みて、当業者に知られる。例えば、1回分の投薬量が、1mlの等張性NaCl溶液に溶解され得、そして1000mlの皮下注入流体に添加されるかまたは計画された注入部位に注射されるかのいずれかであり得る(例えば、”Remington’s Pharmaceutical Sciences”15th Edition,1035−1038頁および1570−1580頁を参照のこと)。投薬におけるいくつかの変更が、処置される被験体の状態に応じて必然的に発生する。投与の責任者が、いかなる場合でも、個々の被験体にとって適切な用量を決定する。
【0075】
静脈内または筋肉内注射のような非経口投与用に処方された化合物に加えて、他の薬学的に受容可能な形態としては、例えば、錠剤または経口投与用の他の固体;リポソーム処方物;徐放性カプセル;およびクリームを含む現在用いられている任意の他の形態が挙げられる。
【0076】
また、本発明において、鼻腔用の溶液あるいはスプレー、エアロゾルまたは吸入剤を用い得る。鼻腔用溶液は、通常、滴薬またはスプレーで鼻孔に投与されるように設計された、水溶液である。鼻腔用溶液は、鼻腔分泌物と多くの点で類似するように、通常の線毛の動作が維持されるように、調製される。このため、この鼻腔用水溶液は、通常、等張性であり、かつ、pH5.5〜6.5を維持するようにわずかに緩衝化されている。さらに、必要な場合、眼用調製物において使用されているのと同様の抗菌性保存剤および適切な薬剤安定化剤が、処方物中に含まれ得る。種々の市販の鼻腔用調製物が公知であり、それらは、例えば、抗生物質および抗ヒスタミン剤を含み、喘息の予防に用いられている。
【0077】
他の方式の投与に適した付加的な処方物としては、膣用坐剤および膣坐薬(pessary)が挙げられる。直腸用坐薬(pessary)または直腸用坐剤もまた、使用され得る。坐剤は、通常薬用の、直腸、膣または尿道内への挿入用の、種々の重量および形状を有する、固体投薬形態である。挿入後、坐剤は、腔内の流体中で軟化、溶融または溶解される。概して、坐剤に関し、伝統的な結合剤およびキャリアは、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含み得る。このような坐剤は、有効成分を0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲で含有する、混合物から形成され得る。
【0078】
経口処方物には、例えば、薬学的等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような、通常利用される賦形剤が含まれる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性処方物または粉末の形態を取る。ある定義された実施形態では、経口薬学的組成物は、不活性な希釈剤または同化可能な食用キャリアを含む。または、これらは、硬質または軟質の殻のゼラチンカプセル中に封入され得る。または、これらは、治療食の食物に直接組み込まれ得る。経口治療投与のため、活性化合物は、賦形剤に組み込まれ得、摂取可能な錠剤、口腔用錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、カシェ剤などの形態で用いられ得る。このような組成物および調製物は、少なくとも0.1%の活性化合物を含有するべきである。この組成物および調製物の割合は、当然変更され得、そして好都合には、単位重量の約2〜約75%、または好ましくは25〜60%であり得る。このような治療に有用な組成物中の活性化合物の量は、適切な投薬が得られるようなものである。
【0079】
錠剤、トローチ、丸薬、カプセルなどはまた、以下を含み得る:トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチまたはゼラチンのような、結合剤;リン酸二カルシウムのような、賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などのような、崩壊剤(disintegrating agent);ステアリン酸マグネシウムのような、滑剤;スクロース、ラクトースまたはサッカリンのような、甘味料;あるいは、ペパーミント、ウインターグリーン油またはサクランボフレーバーのような、矯味矯臭剤。投薬の単位形態がカプセルである場合には、上記種類の材料に加えて、そのカプセルは、液体キャリアを含有し得る。種々の他の材料が、コーティングとして、またはそうでなければ投薬単位の物理形態を修正するために、存在し得る。例えば、錠剤、丸薬、またはカプセルは、セラック、糖またはその両方でコートされ得る。エリキシルのシロップは、活性化合物である、甘味料としてのスクロース、および保存料としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、染料、ならびにサクランボフレーバーおよびオレンジフレーバーのような矯味矯臭剤を、含有し得る。
【0080】
特定の実施形態では、リポソームおよび/またはナノ粒子の使用が、DFMOまたはそのアナログの処方および投与に関して企図される。リポソームの処方および使用は、一般的に当業者には公知であり、そしてまた以下に記載されている。
【0081】
ナノカプセルは、一般的に、化合物を安定かつ再生可能な方法で含み得る。分子内のポリマーの過剰負荷による副作用を避けるため、このような超微細粒子(サイズ約0.1μm)は、インビボで分解され得るポリマーを用いて設計されるべきである。これらの要件を満たす生分解性ポリアルキル−シアノアクリレートナノ粒子が、本発明での使用に企図され、そしてこのような粒子は、容易に作製され得る。
【0082】
リポソームは、水性媒体中に分散し、多層の同心円状二重膜小胞(多重膜リポソーム(MLV)とも呼ばれる)を自発的に形成する、リン脂質から形成される。MLVは、一般的に、25nm〜4μmの直径を有する。MLVの超音波処理により、中心に水性溶液を含有する、200〜500Åの範囲の直径を有する小さな単膜リポソーム(SUV)が形成される。
【0083】
以下の情報もまた、リポソーム処方物の生成にも利用され得る。リン脂質は、水中に分散された場合に、脂質と水とのモル比に応じて、リポソーム以外の種々の構造を形成し得る。低い比では、そのリポソームは、好ましい構造である。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度および二価カチオンの存在に依存する。リポソームは、イオン性物質および極性物質に対して低い透過性を示し得るが、高い温度では、その透過性を顕著に変化させる相転移が生じる。この相転移は、ゲル状態として知られる、緊密に密集した秩序だった構造から、流体状態として知られる、緩く密集した低秩序構造への変化を含む。これは、特徴的な相転移温度で生じ、イオン、糖および薬物に対する透過性の上昇をもたらす。
【0084】
リポソームは、以下の4つの異なる機構を介して細胞と相互作用する。マクロファージおよび好中球のような細網内皮系の食細胞によるエンドサイトーシス。非特異的な弱い疎水性力または静電気力、あるいは細胞と表面構成要素との特異的相互作用のいずれかによる、細胞表面への吸着。細胞質中へのリポソーム内容物の同時放出を伴う、形質膜へのリポソームの脂質二重膜の挿入による形質細胞膜との融合。リポソーム内容物を全く伴わない、細胞膜または亜細胞成分膜へのリポソーム脂質の移入。その逆方向への移入。リポソーム処方物を変えることにより、働く機構を変更し得るが、1つより多くの機構が同時に働き得る。
【0085】
(X.実施例)
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれる。以下の実施例に開示された技術は、本発明の実施において十分に機能することが本発明者らにより発見された技術を表わすこと、よって、本発明の実施のための好ましい形態を構成すると見なされ得ることが、当業者によって理解されるべきである。しかし、本開示を鑑みて、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、開示された特定の実施形態において多くの変更をなしかつ依然として類似するかまたは同様の結果を得ることが可能であることを、当業者は理解するべきである。
【0086】
(実施例1 実験)
本プロトコルは、University of California IrvineおよびLong Beach Veterans Administration Medical Centerの治験委員会(investigational review board)により承認された。PSAの上昇または直腸検査の異常のいずれかのために経直腸前立腺針生検を受けている50歳〜85歳の男性が、定期的な現行の生検時に末梢域の4つのさらなるコア針生検を受けるための書面による同意にサインした。さらなる4つの生検は、液体窒素で即時に凍結し、−70℃のフリーザー中に保存した。6つ一組の(sextent)生検を、定期分析のために病理部に送った。患者が、(1)前立腺癌のための根治的な外科手術、(2)出口閉塞のための経尿道的切除、または(3)異型性の診断に起因する第2の生検、を選択した場合、その患者に、治験への参加を継続し、第2の手順前28日間および第2の手順の日にDFMO 0.5gm/m2を経口摂取するよう依頼した。質問表および問診技術を使用して副作用について患者をモニターした。凝固パラメータを、手術前に注意深く評価した。外科手順の直前に手術室にて、末梢域の4つの経直腸コア生検を、採取し、そして凍結させた。組織学的分析およびポリアミン分析のため、DFMO前後の標本を、ドライアイス上に載せて共にアリゾナに送った。根治的な前立腺切除標本を、TMN(1997年更新)病期分類システム(American Joint Committee on Cancer 1997)により病期分類した。
【0087】
前立腺コアのポリアミン含有量を決定するため、まず、コアを解凍し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄し、重量を量った。次に、サンプルを0.2N過塩素酸中で細分化し、超音波処理して細胞物質を破砕した。次いで、サンプルを2,000Xgで5分間遠心分離させ、酸溶解画分と酸不溶画分とに分離した。他に記載されているように(Gerner et al. 1994、Meyskens et al. 1994、Meyskins et al. 1998)、逆相イオン対高速流体クロマトグラフィー(PHLC)法を用いて、酸溶解画分をポリアミン含有量について評価した。簡潔には、ポリアミンは、C18B Ondapakカラムで分離され、分離後にo−フタルデヒド(o−pthaldehyde)で誘導体化され、この誘導体化した物質の750nmでの吸収により検出される。
【0088】
ポリアミンレベルの平均、メジアン、および範囲は、nmol/mgタンパク質で報告される。本発明者らの方法の検出限界は、0.01nmol/mgである。
【0089】
慣用的6つ一組の生検および外科標本は、Long Beach Veterans Administration Medical Centerの病理学部により確立されたプロトコルに従って処理され、報告された。
【0090】
組織構造の変化を、明視野顕微鏡法により評価した。DFMO前後のポリアミン値は、ウィルコクソン符号付き順位和検定(Wilcoxon matched−pairs signed rank test)を用いて比較した。このため、各患者について、本発明者らは、DFMOによるポリアミン変化の大きさおよび方向の両方を考慮に入れることができた。
【0091】
(実施例2 結果)
人口統計:49人の男性が、本研究の参加同意書にサインした。22人は、6つ一組の生検の時に、4つの付加的なコアの第1の組を有した。慣用的生検の結果および同意した患者に基づき、10人の男性がDFMOを開始した。9人の男性が、生検の第2の組を有した。1人の男性は、DFMOの開始後、その前立腺癌のための処置を全く受けないことを選択した。参加者およびその慣用的生検の組織病理の結果の詳細な統計を、表1に示す。
【0092】
試験を全うした男性の平均年齢は、65.6歳であった(メジアン66歳、範囲56〜73歳)。群の人種は、白人(3)、ラテンアメリカ人(3)、黒人(1)、アジア人(1)、および白人/アジア人混血(1)であった。生検についての徴候は、PSAの上昇(5)、直腸指診の数値異常(3)または両方(1)であった。9人の患者の第1の生検前の平均PSAは、9.4ng/ml(メジアン5.1ng/ml、範囲1.7〜47.2)であり、DFMOは、平均28.2日間(メジアン28日間、範囲21〜35日間)与えられた。コンプライアンスは、文書およびインタビューにより測定されたように、100%であった。第2の手順は、根治的恥骨前立腺切除(RRR)(4)、生検の繰返し(4)、および前立腺の経尿道切除(TURP)(1)であった。
【0093】
副作用:副作用は、4人の男性に報告された。2人の男性は、軽い臨床的な聴覚障害(純音聴覚学によっては確認されない)、吐き気、下痢、ならびに1人の男性においては倦怠感、およびもう1人の男性においては突発性の一時的衰弱を含む、グレード0の副作用を有した。1人の男性は、グレード1のめまい、これと共に、吐き気および上胃部の痛みを有した。血小板数、あるいはDFMOを伴うプロタイム(protime)の臨床的に有意な変化は無かった。外科手術の前に出血時間を調べたが、DFMOによっては変化しなかった。
【0094】
病理:(表1)第1の生検についての慣用的病理診断は、異型性(2)、炎症を伴う異型性(3)、グリーソン和5(1)、グリーソン和6(2)、グリーソン和7(1)(計9)であった。第2の処置の時の慣用的病理標本は、BPH(1)を実証した。BPHおよび炎症(1)、炎症(1)、異型性(1)、グリーソン和6(1)、Pt2Aグリーソン和6(1)、pT2bグリーソン和6(1)、pT3aグリーソン和6(1)、pT4グリーソン和8(1)(計9)。
【0095】
【表1】
コア組織構造:DFMO処置の前後で得たコア生検サンプルにおいては、組織構造の主要な変化は無かった(RB Nagle、個人的連絡、データ示さず)。
【0096】
PSA:(表1)9人の患者についての第1の生検前の平均PSAは、9.4ng/ml(メジアン5.1ng/ml、範囲1.7〜47.2)であった。最終的に良性の病理を有する4人の患者について、本発明者らは、生検前PSAまたはDFMO前PSAを、DFMO適用中に抽出したPSAと比較した。PSAは、各患者において減少した(患者1、4、5、7)。PSAは、悪性の病理を有する患者の5人のうち3人において上昇した(患者3、8、9)。これら3人の男性の中で、1人の男性のPSAは非常に変わりやすいが(患者8)、別の男性のPSAは6週間の生検内で抽出されており、よってPSAは生検から不正確に上昇した可能性がある(患者9)。
【0097】
ポリアミンレベル:図1は、経口的DFMOの前後に行われた生検を有する9人の男性における、プトレシン、スペルミジン、スペルミン、およびスペルミジン/スペルミン比の値を比較している。治療前のプトレシンは、6人の男性においてはDFMO前で検出可能であり、3人の男性においては検出可能ではなかった(0.01nmol/mg未満)。平均プトレシンレベルは、0.42nmol/mg(メジアン0.27、検出不可範囲〜0.94)であった。全ての男性が、DFMO後、検出不可能なレベルのプトレシンを有していた。0.01以上のDFMO前プトレシンレベルを有する6人の男性について、基線からの平均減少量は、97.6%(p=0.031)であった。スペルミジンは、DFMO前の全標本において測定可能であった。平均の処置前レベルは、1.21nmol/mg(メジアン0.81、範囲0.49〜3.82)であり、DFMO後、全標本において減少した。治療後の平均スペルミジンの平均レベルは0.32(メジアン0.21、範囲検出不可〜1.18)であり、2つの標本においてはそのレベルは検出不可能であった。基線からの平均減少%は、73.6%(p=0.004)であった。DFMO前のスペルミンレベルは、試験した全ポリアミンの中で最も高かった。DFMO前の平均スペルミンレベルは29.14nmol/mg(メジアン28.85、範囲9.88〜53.66)であり、DFMO後、全標本において平均スペルミンレベル14.33(メジアン17.40、範囲3.24〜25.28)まで減少した。基線からの平均減少率は、50.8%(p=0.004)であった。スペルミジン/スペルミン比を各標本について算出した。9人中8人の患者において、DFMOが与えられた後、この比は減少していた。基線からの平均減少率は、50%(メジアン52%、範囲−25.3〜97%)(p=0.019)であった。関節包外前立腺癌を有する2人の患者では、基線からの減少率は最も小さく、または、DFMOでの処置後、スペルミジン/スペルミン比は実際に上昇した(患者2および8)。
【0098】
(実施例3. 考察)
この短期の試験において、本発明者らは、28日間毎日のDFMO0.5gm/m2の経口投与後における、前立腺ポリアミン(プトレシン、スペルミジンおよびスペルミン)およびスペルミジン/スペルミン比の有意な低減を実証することができた。プトレシンは98%(n=6、p=0.031)、スペルミジンは74%(n=9、p=0.004)、およびスペルミンは51%(n=9、p=0.004)基線から減少した。特に興味深いのは、スペルミンの大きな低減が実証されたことである。スペルミンレベルに対するDFMOのこの効果は、DFMOが与えられる患者の他の組織において観察されておらず、また、DFMO治療を受ける患者の他の組織において観察されていない(Gernerら、1994、Meyskensら、1994、Meyskensら、1998)。
【0099】
本発明者らの試験設計についての、および、上述したMessingら(1999)についての簡単な検討から、2つの研究間の一致しない結果の原因となり得る研究の違いが指摘される。本研究の利点は、DFMO前後の同一の男性からのサンプルを使用することにより、ポリアミン抑制に関する自身のコントロールとして各男性を使用することを、本発明者らが選択したことである。加えて、このサンプルは、サンプルがバッチでの違いを避けるためにともに試行され得る前後両方まで、試行されなかった。データは、操作前の被験者間のポリアミンレベルの広い可変性を示し、プトレシンが試験したポリアミンの中で最も変化が小さいことを実証する(Put(検出不可能範囲(0.01未満検出不可能)〜0.94)、Spd(範囲0.49〜3.82)、およびSpm(範囲9.96〜53.7))。この可変性により、少量のコントロールと処置群との違いを評価することが困難となり、なぜ可変性が最も小さいプトレシンのみがMessingの試験で有意に変化したかの答えとなり得る。本研究者らの試験では、各男性が自身のコントロールであり、よってDFMOの効果はより容易に測定された。ポリアミンレベルの可変性の有する同様の困難さは、Mitchellら(1997)により検討されている。彼らは、正常頸部組織と比較した頸部癌中のポリアミンレベルについて報告し、特に、ポリアミンレベルを中間体マーカーとして用いる可能性を検討している。組織のこれらの種類の間にはポリアミンレベルの違いはあったが、著者らは、ポリアミンレベルの可変性のため、多数の被験者が有意な結果を見るために必要とされると結論している。
【0100】
これら2つの研究の間には、組織を管理する様式に関連する処理問題もある。ODC活性は異なったラット前立腺葉において異なっており(これらは背面葉と比較したときに腹葉においてより高い)、かつ、これらの同一の相違がヒト前立腺の帯域中に観察されるかどうかは既知ではなかったので(Hestonら、1982)、本発明者らは前立腺の末梢検体に特定している。加えて、DFMOの28日後、外科手術直前に得られた生検は、外科手術中の前立腺の焼灼または脈管遮断(devasularization)を発生させ得る、いかなるあり得るポリアミンの分解または変化をも回避するため、まず経直腸的にかつ凍結されたように行われた。全身的に脈管遮断されかつ除去されたとき、1〜2時間の虚血の前立腺への影響がどれほどのものであるのかは知られていない。この操作の未知の効果は、最終的な外科手術の前にコアを取ることにより、研究では未然に回避される。
【0101】
本発明者らの研究とMessingら(1999)のそれとの間の別の違いは、処置の長さである。被験者は、4週間のDFMOを受けた(2週間に対して)。Danzinにより発表されたラット前立腺に関する論文は、DFMOの腹腔注射(12時間毎に100mg/kg)による、コントロール値の10%までの最も有意なODC阻害が4〜6時間後に見られたことを示している。阻害は、24時間までコントロールと比較して50%低減まで上昇した。8日間の研究の残りの間中、阻害は、コントロールから30%〜50%の範囲にあり、定常状態には到達しなかった。同じ論文中で、Danzinは、処置2週間後のポリアミンレベルを測定し、低用量DFMO(100mg/kg)でのプトレシンおよびスペルミンレベルの、ならびに、より高用量(1gm/kg)でのスペルミジンレベルの有意な低減を見出した(Danzinら、1979)。100mg/kgDFMOの2週間後の、プトレシンの202±37から4±4nmol/gへの低減は、さらに2週間処置したときのプトレシンについての任意のさらなる影響を推測することを困難にする。しかし、100mg/kgDFMOを用いた2週間後では、スペルミジンにそれほどの低減はなく(7334±193から1188±289)、スペルミンには有意な低減はなかった(2968±293から2741±346)。これら後者の2つのポリアミンは、DFMOを用いた低減を見るのに、より長い処置時間を要する場合がある(Danzin et al. 1979)
ポリアミンレベルを、人種、年齢、病理、およびこの小系列で記した明白な傾向を全く伴わない阻害の日数に関して評価した。前立腺外癌を有する男性においてDFMOに伴うスペルミジン/スペルミン比の低減が明らかに存在しないことは非常に興味深い。前立腺癌を有する5人の男性のうち、2人の男性は、前立腺の外側に前立腺癌を有し(関節包外および膀胱頸部浸潤T3およびT4)、これらの2人の男性(患者2および8)においては、DFMOに伴うスペルミジン/スペルミン比はほとんど上昇しないか、または、実際に上昇することがわかった。一方で、腺(T2、限定された器官)に限定された前立腺癌の標本は、良性前立腺疾患を有するものに見られるように、スペルミジン/スペルミン比における同様の低減を示した(図2)。関節包外および膀胱頸部浸潤とともに見られるように、腫瘍はより攻撃的になり、代替的なポリアミン合成またはポリアミンの脱調節(dysregulation)が発生する可能性がある。より大きいコホートにおいてこの観察を追跡することは、非常に興味深い。ポリアミンの脱制御は、予後の悪さの予測に用いられることが可能であり、ポリアミンの脱制御の測定は、どの患者がより積極的な様式で処置される必要があるか、または、ただ観察される必要があるのか、の決定に用いられることが可能である。さらなる研究は、他の組織内への浸潤とポリアミンの脱制御のいずれが最初に発生するのかを決定する助けとなる。前立腺外癌の拡張前に、ポリアミンの脱制御を測定する時間があることも考えられる。
【0102】
(参考文献)
以下の参考文献は、本明細書中に示される手順等の詳細を補足する例示的手順等をこれらが提供する程度に、本明細書中に参考として特に援用される。
【0103】
【表2】
【図面の簡単な説明】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の局面をさらに説明するために含まれる。本発明は、本明細書中に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの1以上の図面を参照することによって、よりよく理解され得る。
【図1A】図1は、DFMOの前(斜線棒)および28日後(白棒)のコア生検により得られた前立腺組織中のポリアミン含有量。図1A.プトレシン含有量;図1B.スペルミジン含有量;図1C.スペルミン含有量。
【図1B】図1は、DFMOの前(斜線棒)および28日後(白棒)のコア生検により得られた前立腺組織中のポリアミン含有量。図1A.プトレシン含有量;図1B.スペルミジン含有量;図1C.スペルミン含有量。
【図1C】図1は、DFMOの前(斜線棒)および28日後(白棒)のコア生検により得られた前立腺組織中のポリアミン含有量。図1A.プトレシン含有量;図1B.スペルミジン含有量;図1C.スペルミン含有量。
【図2】図2は、DFMOの前(黒棒)および28日後(白棒)のコア生検により得られた前立腺組織中のスペルミジン/スペルミン比。
(発明の背景)
本出願は、米国仮特許出願第60/227,714号(2000年8月24日出願)に対する優先権を主張し、この出願の内容は、本明細書中で参考として援用される。米国政府は、公衆衛生局からの助成金番号P30CA62203U19および国立癌研究所、国立衛生研究所、厚生省からの助成金番号CA81886に従って、本発明における権利を所有し得る。
【0002】
(I.発明の分野)
本発明は、一般に、癌治療の分野に関する。より詳細には、本発明は、ポリアミンの生合成経路の不可逆的な酵素インヒビターであるDFMO(α−ジフルオロメチルオルニチン)の、前立腺癌の治療における使用に関する。
【0003】
(II.関連技術の説明)
迅速に増殖する細胞の成長を伴う疾患状態は、世界中に広まり、有意な割合の人口に影響していることから、これらは、集中的な研究努力のテーマとなってきている。残念ながら、かかる努力にも関わらず、かつ、いくつかの成功にも関わらず、これらの疾患の全般の制御は、満足できるものではない。しかし、近年、かかる疾患状態の処置のための有望な治療方法が、細胞成長に必要なポリアミンの生合成に関与する酵素の不可逆的なインヒビターを利用することにより開発されている。特に有用な酵素インヒビターは、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)のインビボでの不可逆的阻害を生じるものであり、この酵素は、オルニチンのプトレシンへの脱炭酸を触媒する。
【0004】
α−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)は、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)の不可逆的インヒビターであり、プトレシンおよびその誘導体スペルミジンの細胞内濃度の減少を引き起こす(Pegg、1988)。スペルミジン由来のスペルミンのレベルは、酵素阻害によって著しくは影響されない。DFMOは、最初、抗癌治療用途のために合成されたが、おそらく悪性脳腫瘍の治療に中程度の活性を示すこと(Levinら、1987)を除き、ヒトの癌に対する化学療法試験において活性な細胞傷害性の薬剤であることが見出されなかった(McCannおよびPegg、1992)。一般に、この化合物は、聴覚障害の有意な例外を除いて、無毒性であり、薬物治療を中止した後には可逆的であった(Meyskensら、1986)。聴覚障害の発症は、総蓄積用量に関連し得る(Croghanら、1991)。
【0005】
実験動物モデルでは、DFMOが、結腸の上皮癌を含む、発癌性物質誘発性の多くの器官の上皮癌の予防に特に活性のある、発癌の強力なインヒビターであることが見出されている(Weeksら、1982、Thompsonら、1985、Nowelsら、1986、Nigroら、1987)。DFMOは、動物における腫瘍促進段階の後期で作用するが、それがポリープおよび癌の発達を阻害する正確な機構は知られていない。オルニチンデカルボキシラーゼおよびポリアミンによる、細胞のトランスフォーメーション、浸潤、および血管形成への作用が、報告されている(Auvinen, 1997)。例えば、ODCの過剰発現は、細胞のトランスフォーメーションおよび浸潤を増強する(Kubotaら、1997)。
【0006】
この現象を説明する分子機構は、マイトジェン活性化プロテイン(MAP)キナーゼ活性の活性化、マトリクスメタロプロテイナーゼの分泌(Wallonら、1994; Kubotaら、1997)、および癌遺伝子(c−mycおよびras)を有する経路(Meyskensら、1999; Cliffordら、1995)を含む。ポリアミンの潜在的な細胞相互作用の包括的な概説が、最近提示されている(Auvinen、1997)。
【0007】
前立腺癌は、米国男性において最も一般的に診断される悪性疾患であり、米国において男性の癌死亡の、上から2番目の原因である(Feuerら、1999)。前立腺癌の発生率は年齢とともに上昇するので、前立腺癌と診断されることになる男性の数は、医療および全般的な健康が向上するにつれて、増加する。このように、前立腺癌の予防は、国民的な医療問題である。前立腺癌の予防のための現在のストラテジーは、前立腺中のホルモン環境の変化(Proscar)、あるいは抗酸化剤(セレンおよびビタミンE)またはレチノイドの食物への添加に焦点が当てられてきた。別のアプローチは、前立腺中のポリアミンレベルを抑制することであり、これは、ポリアミン経路の第1の酵素であるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)がヒト前立腺癌組織中で過剰発現されることを示す研究により提案される手法である(Mohanら、1999)。
【0008】
ODC活性およびポリアミン含有量は、他の哺乳動物組織と比較して、前立腺組織においてより高い(Dunzendorfer、1978)。1979年に、Danzinらは、ラットをDFMOで2週間処置し、4〜6週間以内でベースライン活性の10%までの前立腺ODCの最大の阻害を見出し、研究の間中、ベースライン活性の50%までの抑制を持続した。前立腺は、精巣、胸腺、脾臓または肝臓よりもDFMOに対してより感受性があり、前立腺および胸腺は、器官重量の減少を示した。Danzinら(1979)はまた、去勢後の外因性のテストステロンを用いる前立腺の再成長に対するDFMOの効果に注目した。去勢後、前立腺は、ポリアミン含有量と同様に、サイズにおいて減少した。アンドロゲンの補充により、前立腺の萎縮は即座に反転し、ポリアミン含有量は上昇した。DFMOは、アンドロゲン処置の間、前立腺(腹側葉)の重量増を顕著に遅らせた。
【0009】
Hestonら(1982)は、インビトロおよびインビボ(ラットの側腹部中に腫瘍細胞を接種して粗大な腫瘍を産生した後)での、前立腺癌細胞系に対するDFMOの抑制効果を測定した。インビトロでのODC活性は、2つのアンドロゲン非依存性前立腺癌細胞株において最も高く、次いで、腹側葉、ゆっくりと成長する癌細胞株、そして背側葉において高かった。DFMOで腹腔的に18日間処置したインビボでの前立腺腫瘍を有する動物は、全身毒性を伴わずに、非処置コントロールの半分の湿重量を有する腫瘍を発達させた。別の研究では、総ポリアミン抑制(無ポリアミン食、DFMO、ポリアミンオキシダーゼの第2のインヒビターおよび腸管洗浄から構成される処置)が、ラットの側腹部中に移植したMAT−LyLu前立腺癌細胞株の成長について評価された(Movlinouxら、1991)。ヒト被験者については、前立腺癌を有する患者のPSA力価の減少を導くポリアミン欠乏についての報告が、Kergozien(1996)によって解説された。
【0010】
1999年に、Messingらは、ヒト前立腺ポリアミンレベルに対する2週間の経口DFMOの結果を発表した。彼らの研究では、無作為に選択した男性に、根治的な前立腺切除または膀胱前立腺全摘出の前に、2週間のDFMO(0.5gm/m2)(n=15)またはプラシーボ(n=10)のいずれかを与えた。外科手術の時点で、ポリアミン分析用の組織を、エキソビボコア生検を用いて、前立腺の外科的除去後に採取した。触診可能な場合、疑われしい前立腺癌小節を、サンプリングした。採取した前立腺コアの数は、1被験者あたり2〜6個の範囲であったが、癌の領域をサンプリングしようとする研究者らの努力に反して、これらのコアの大半は、癌を示さなかった。ODC活性およびポリアミンレベルを、これらのコアにおいて測定した。加えて、各被験者の血漿テストステロン、血清PSA、および前立腺酸ホスファターゼレベル、ならびに手掌上腕皮膚パンチ生検からのODC活性を、測定した。14人の男性が、毒性を伴わずに、2週間のDFMOを完了した。平均プトレシンレベルは、DFMO処置群では統計的により低かった(1.43対1.95、p=0.03)。有意なことに、彼らの研究で測定されたODC活性、スペルミジンレベルおよびスペルミンレベルにおいて、差異は存在しなかった(Messingら、1999)。
【0011】
これらの結果を鑑みると、DFMOが、前立腺癌を有する患者(特に、スペルミンレベルに対するいかなる効果も伴わない患者)の処置に有用であることは、不明確なままである。
【0012】
(発明の要旨)
従って、本発明は、ヒト前立腺細胞中のスペルミンレベルおよび/またはスペルミジンレベルを減少させる方法を意図し、この方法は、上記細胞中の上記レベルを減少させるのに十分な量および期間、DFMOを上記細胞中に投与する工程を包含する。前立腺は、他の器官と比較して、高レベルのポリアミンを有する。前立腺はまた、本発明の方法を用いたDFMOに対する曝露時のスペルミンの量および減少%において、他の器官と異なる。
【0013】
好ましい実施形態では、ヒト前立腺細胞は、癌細胞、非癌性細胞または良性過形成細胞である。上記細胞は、DFMO投与中の患者中にあってもよく、用いられるDFMOは、L−鏡像異性体を実質的に含まないものか、または、D−異性体とL−異性体との50/50ラセミ体混合物と比べて、D−鏡像異性体が富化されていてもよい。
【0014】
好ましい実施形態では、DFMOは、約3、4、5、6、8、10または12週間投与される。DFMOの投与期間は、これよりも長くてよく、2、3、4、5、6、8、10ヶ月の間または12ヶ月を超える間、継続されてもよい。DFMO投与期間は、2、3、4、5、10、15、20、25、30、40または50年間であってもよく、患者の一生にわたってもよい。好ましい実施形態では、DFMOの投与量は、約0.1〜2.0gm/m2/日、またはより好ましくは、約0.5gm/m2/日である。DFMO量は、約0.1〜2g/日、またはより好ましくは、0.25〜1.5g/日、またはさらにより好ましくは、0.5〜1.0g/日であり得る。DFMOは、任意の一般的な経路を介して投与されてもよい。好ましい実施形態では、DFMOは、経口的に投与される。
【0015】
好ましい実施形態では、スペルミンレベルが、減少される。この減少は、好ましくは、上記処置の前の上記細胞中のスペルミジンレベルと比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%または80%である。好ましい実施形態では、スペルミジンレベルが、減少される。この減少は、好ましくは、上記処置の前の上記細胞中のスペルミジンレベルと比較して、約30%、45%、55%、65%、75%、85%、95%または99%である。別の好ましい実施形態では、上記細胞のスペルミジン/スペルミン比が、減少される。さらに別の実施形態では、プトレシンレベルが、約50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%減少される。
【0016】
本発明はまた、前立腺癌に罹患しているヒト被験者を処置する方法に関し、この方法は、上記被験者の前立腺細胞中のスペルミンレベル、スペルミジンレベル、またはスペルミジン/スペルミン比を減少させるのに十分な量および期間、被験者にDFMOを投与する工程を包含する。
【0017】
なお別の実施形態は、第2の治療を包含し、この第2の治療は、ジヒドロキシテストステロンを減少させること、食餌抗酸化剤(例えば、セレン、ビタミンEまたはその両方)を投与すること、レチノイドを投与すること、前立腺切除、低ポリアミン食、ポリアミンオキシダーゼを阻害すること、放射線療法またはホルモン療法(例えば、ルペロン(luperon)、ゾルデックス(zoledex)、フルタミドまたはカサデックス(casadex))を、単独でか、または組み合わせて、包含する。
【0018】
さらなる実施形態では、本発明に従うDFMO治療の効果は、診断方法によって前立腺癌の処置において決定され得、この診断方法は、前立腺特異抗原(PSA)の分析、前立腺生検、直腸検診、またはPSAの分析および直腸検診を包含するが、これらに限定されない。
【0019】
他の実施形態は、危険性のある被験者において前立腺癌の発達を阻害するための方法、原発性前立腺癌を有する被験者における前立腺癌の転移を阻害するための方法、ステージ1またはステージ2の前立腺癌を有する被験者における前立腺癌の進行を阻害するための方法、切除不可能な前立腺癌腫瘍を切除可能にするための方法、および前立腺癌腫瘍の成長を阻害するための方法を包含する。これらの方法は、ヒト被験者の前立腺細胞中のスペルミンレベルおよび/またはスペルミジンレベルを減少するのに十分な量および期間、その被験者にDFMOを投与する工程を包含する。
【0020】
良性前立腺過形成に罹患しているヒト被験者において良性前立腺過形成を処置する方法もまた、本発明の範囲内にあり、この方法は、その過形成細胞により生成されるポリアミンの量を安定化または減少させるのに十分な量および期間、その被験体にDFMOを投与する工程を包含し、ここで、上記ポリアミンは、スペルミン、スペルミジン、またはスペルミンとスペルミジンとの組み合わせである。過形成細胞により生成される前立腺特異抗原(PSA)のレベルもまた、DFMOでの処置において安定化または減少され得る。
【0021】
本発明のさらなる実施形態は、良性前立腺過形成に罹患しているヒト被験者において良性前立腺過形成を処置するための方法を包含し、この方法は、その過形成細胞によって生成されるポリアミン(スペルミンまたはスペルミジン)レベルの減少または安定化によって測定されるような、治療有効量のDFMOを、十分な期間、以下から選択される治療有効量の第2の治療薬剤と一緒に、投与する工程を包含する:α−1アドレナリン作用性レセプター遮断薬(例えば、テラゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン、インドラミン、タムスロシン(tamsulosin)、プラジシン(prazicin)およびアルフゾシン(alfuzosin));5−α−レダクターゼ酵素遮断薬(例えば、フィナステリド(finasteride));アザステロイド誘導体;α−1アドレナリン作用性レセプター遮断薬と5−α−レダクターゼ酵素遮断薬との組み合わせ;カリウムチャネル開放薬(opener)(例えば、ミノキシジル);またはレチノイン酸誘導体。好ましい実施形態において、第2の治療薬剤は、ノコギリパルメット抽出物である。
【0022】
(例示的な実施形態の説明)
(I.本発明)
本発明は、ヒト前立腺中のポリアミンレベルを減少するための方法としての、DFMO(α−ジフルオロメチルオルニチン)の使用を記載する。DFMOは、28日間経口的にDFMOが与えられた男性被験者の前立腺中のプトレシン、スペルミジン(Spd)およびスペルミン(Spm)のレベルを有意に減少させ得る。従って、DFMOは、前立腺癌の治療における治療用途として利用され得る。驚くべきことに、DFMOの投与に伴う前立腺中のスペルミンレベルの量および減少%は、DFMOが、このような減少を引き起こすのに十分な量および期間、投与される場合、DFMO治療を受けている患者の他の組織中におけるそれらよりも高い。
【0023】
(II.DFMO(α−ジフルオロメチルオルニチン))
多くの高度増殖型癌は、血中および尿中のポリアミン(プトレシン、スペルミジンおよびスペルミン)レベルの上昇に関連している。研究により、これは、律速酵素オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)によるポリアミン合成の増大に関連することが示されている。本出願において特に興味が向けられたのは、前立腺癌である。
【0024】
ポリアミン合成の経路は、L−オルニチンで開始される。この天然のアミノ酸は、通常はタンパク質に含まれないが、アルギニンをオルニチンと尿素とに代謝する尿素サイクルの一部である。オルニチンは、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)によりプトレシンとCO2とに変換され、これがポリアミン産生の律速段階である。S−アデノシルメチオニンから与えられるプロピルアミンの付加により、プトレシンはスペルミジンに変換される。スペルミジンは、その後、再びS−アデノシルメチオニンの脱炭酸に関連して、スペルミンシンテターゼによりスペルミンに変換される。プトレシン、スペルミジンおよびスペルミンは、哺乳動物組織中の、3つの主要なポリアミンを表わす。ポリアミンは、動物組織および微生物中に見出され、細胞の成長および増殖に重要な役割を果たすことが知られている。細胞の成長および増殖におけるポリアミンの役割の正確な機構は知られていないが、ポリアミンは、DNA、RNA、またはタンパク質合成のような高分子プロセスを促進し得ると思われる。ポリアミンレベルは、精巣、腹側前立腺および胸腺において、乾癬性皮膚病変において、ならびに、急速な成長プロセスを起こしている他の細胞において、高いことが知られている。
【0025】
また、腫瘍組織の急速増殖は、ポリアミンレベルの異常な上昇により特徴付けられることも十分に知られている。すなわち、ポリアミンはまた、腫瘍の成長の維持において重要な役割を果たし得る。このため、DFMOのようなODCインヒビターは、ポリアミンの形成を遮断することによりその治療的効果を発揮し、これにより、腫瘍組織の増殖および転移を、遅らせるか、中断させるか、または阻止し得る。
【0026】
DFMO(α−ジフルオロメチルオルニチン、エフロルニチン(Eflornithine)、Ornidyl(登録商標))は、アミノ酸L−オルニチンの構造アナログであり、以下のC6H12N2O2F2の化学構造を有する。
【0027】
【化1】
DFMOは、本発明の方法において、D−鏡像異性体およびL−鏡像異性体のラセミ(50/50)混合物として、または好ましくは、D−異性体がL−異性体と比べて富化された(例えば、L−異性体と比べて、70重量%、80重量%、または90重量%以上のD−異性体)D−異性体およびL−異性体の混合物として、用いられ得る。最も好ましくは、使用されるDFMOは、L−鏡像異性体を実質的に含まない。
【0028】
(III.DFMOの抗腫瘍特性および毒性)
DFMOは、腫瘍中のプトレシン合成の阻害を生じさせるものの、宿主に対しては比較的無毒である。ヒトにおける経口的DFMOは、耳毒性(聴覚障害)を伴い、これは、化学的予防のための推奨用量を、一日当り一回の0.5gm/m2の付与用量に制限する。DFMOの用量を制限する他の毒性作用は、血小板減少症(血中の血小板が異常に少ないこと)(これは、患者の約50%に生じる)、白血球減少症(白血球が異常に少ないこと)または貧血である。DFMOの別の副作用は、悪心および嘔吐であり、これは、患者の90%までにおいて生じる。これら全ての毒性作用は、比較的無害かつ可逆的であり、薬物の使用を中止によって停止する。
【0029】
急速に増殖する腫瘍組織の成長速度の制御のためのODCインヒビターの効果は、標準動物腫瘍モデルにおいて評価されている。例えば、DFMOの抗腫瘍効果は、以下の動物腫瘍モデルにおいて実証されている:マウスのL1210白血病、Balb/CマウスのEMT6腫瘍、ラットの7,12−ジメチルベンズアントラセン誘導性(DMBA誘導性)哺乳動物腫瘍、およびバッファローラットのDFMO Morris 7288Cまたは5123ヘパトーム。加えて、種々の細胞傷害性薬剤と組み合わせたDFMOの抗腫瘍効果は、以下のように実証されている:(a)マウスのL1210白血病、バッファローラットのMorris 7288Cヘパトーム、およびマウスのEMT6腫瘍における、ビンデシンまたはアドリアマイシンとの組み合わせ、(b)マウスのL1210白血病における、シトシンアラビノシドとの組み合わせ、(c)マウスのL1210白血病における、メトトレキサートとの組み合わせ、(d)マウスのEMT6腫瘍およびマウスのDMBA誘導性腫瘍における、シクロホスファミドとの組み合わせ、(e)マウスの神経膠腫26脳腫瘍における、BCNUとの組み合わせ、および(f)マウスのL1210白血病、バッファローラットのMorris 7288Cヘパトーム、マウスのP388リンパ球性白血病、およびマウスのS−180肉腫における、MGBGとの組み合わせ。
【0030】
DFMOは、腫瘍のプトレシン生合成を効果的に遮断し得、得られる抗腫瘍効果は、細胞増殖抑制性であり、細胞傷害性ではない。例えば、DFMOは、MCA肉腫の成長速度を減少させるが、腫瘍の退行を生じさせない。この知見は、DFMOが細胞増殖抑制性因子であることを示す他の研究者の報告と一致する。しかし、研究により、重要な役割がDFMO薬剤に関して存在し得ることが示され、これは、DFMOを含む、併用化学療法レジメンの将来的な開発を可能とする。
【0031】
種々の新形成の処置での使用における治療的ODCインヒビターとしてのDFMOの最初の見込みは、幾分薄れてきたが、これは、米国特許第4,925,835号に記載されているように、DFMOが、実際に、ODC活性を不可逆的に阻害するが、DFMOでインビボにて処置された細胞が、外因性プトレシンの取り込みを有意に増加するからである。その細胞の細胞間輸送機構は、細胞外環境からのプトレシンの移入によって、DFMOによって損なわれたODC活性の「回避(end run)」を行う。従って、インビボでのDFMOの効果は、インビトロにおけるよりはるかに低い。よって、DFMO処置が、細胞内プトレシン新生を効果的に阻害し、一方、これはまた、細胞外プトレシンの取り込みを増大し、それによって、そのODC阻害効果は相殺される。
【0032】
この問題は、プトレシンが多くの一般的な食物(例えば、オレンジジュース(約400ppmのプトレシンを含有))中に存在するという事実によって、より深刻となる。このことは、プトレシンを含まない栄養的に十分な食餌を患者に提供することを事実上不可能とする。従って、DFMOで処置した細胞は、細胞***を支持するのに十分な量の細胞外プトレシンを移入し得る。
【0033】
DFMOをヒト患者にとってより受容可能とするためのストラテジーが、米国特許第4,859,452号(参考として援用される)に記載されている。DFMOの処方物が記載されており、これは、DFMO誘導性の毒性の減少を補助するために、必須アミノ酸を、アルギニンまたはオルニチンのいずれかと組み合わせて含む。
【0034】
表面的病変へのこの薬物の局所適用は、ヒトにおける全身的取り込みが最小または有意でない、化学防御的癌治療を可能とする。本発明の1つの目的は、しばしば前癌性であるゆうぜいおよび表面的肛門性器HPV病変に対する、持続性の局所的化学的予防薬剤として使用され得る、軟膏剤を提供する。この軟膏剤はまた、肛門性器領域の癌性病変に直接塗布してもよい。DFMOの5%溶液の局所適用により、マウス表皮のDNA合成が遮断されることが、当該分野で公知である。インビトロでのプトレシンレベルは、コントロールの25%まで減少したが、スペルミンレベルおよびスペルミジンレベルは、影響を受けなかった(米国特許第4,859,452号)。さらに、乾癬を患う10人の患者に10%DFMOクリームを塗布したところ、乾癬病変の周縁の回復とともに、皮膚のスペルミンレベルが66%減少されることが示された。
【0035】
(IV.D−DFMO)
DFMOの毒性は、DFMOのD−鏡像異性体によって、または、D−異性体が異性体混合物の少なくとも60重量%、好ましくは90重量%以上を含むように、D−異性体含量について富化されている、D−異性体とL−異性体との混合物によって、大きく減少され得る。D−DFMOは、なおODCのインヒビターであるが、動物モデルにおいてより低い毒性(耳毒性を含む)を有する。モルモットの研究では、DFMOの鏡像異性体は、有意な毒性は示さなかった。DFMOのD−型は、複合活動電位または蝸牛マイクロホン作用のいずれにも有意な効果を及ぼさないことが見出された。聴覚機能の評価から、DFMOのL−型は、正常な蝸牛電位の有意な崩壊を生じることが見出された。
【0036】
D−DFMOまたは富化D−異性体混合物の使用は、ラセミ(50/50)D,L−DFMOの使用に関連する多くの問題を克服し得る。D−DFMOまたは冨化D−DMFO異性体混合物は、D鏡像異性体に関連する予期される毒性が低いことに起因して、ラセミ混合物よりも高い投与量で投与され得る。0.6μM〜80μMの濃度範囲のD−DFMO、L−DFMO、およびD,L−DFMOを用いる3つの個別の研究において、ODC活性の50%を阻害する各々の有効濃度レベル(Ki)を決定した。両方の鏡像異性体およびラセミ混合物が、抑制性であった。D−DFMOのKiは、L−型よりも4倍低く、混合物よりも3倍低かった(「D−enantiomer of DFMO and methods of use therefor」との表題の米国特許出願、2000年7月1日出願)。
【0037】
(V.DFMOおよびヒト前立腺)
DFMOおよび良性前立腺過形成の処置におけるその使用が、米国特許第4,413,141号および第4,330,559号に記載されている。米国特許第4,413,141号は、インビトロおよびインビボの両方における、ODCのインヒビターとしてのDFMOを記載している。報告によれば、DFMOの投与は、ポリアミンが正常に活性に産生される細胞中の、プトレシンおよびスペルミジン濃度を減少させる。加えて、DFMOは、標準腫瘍モデルで試験した場合に、腫瘍性の細胞増殖を遅らせることが可能であることが示された。米国特許第4,330,559号は、良性前立腺過形成の処置のためのDFMOおよびDFMO誘導体の使用を記載している。良性前立腺過形成は、急速な細胞増殖によって特徴付けられる多くの疾患状態と同様に、ポリアミン濃度の異常な上昇を伴う。この参考文献に記載されている処置は、患者に経口的または非経口的に投与され得る。しかし、上記で指摘したように、Messingら(1999)によるより最近の研究では、2週間にわたるDFMOの0.5gm/m2での経口投与を伴う処置後に、癌性前立腺中のスペルミジンレベルまたはスペルミンレベルのいかなる減少も検出することはできなかった。
【0038】
最近、前立腺癌中のポリアミンの役割が再考されている。Mohanら(1999)は、同一の患者からの良性組織および悪性組織におけるODC活性を測定し、癌性部分が良性組織の部分のほぼ3倍のレベルを有することを見出した(1142+100対427+51)。加えて、彼らは、マッサージにより得られた前立腺液のODC活性を評価し、良性肥大を有する男性と比較した、前立腺癌を有する男性における、より高いレベルを見出した(3847+162対2742+67)。
【0039】
前立腺癌の化学的予防は、ホルモン性薬剤および抗酸化性薬剤の両方を用いて研究されている。前立腺癌に関する最初の大規模な化学的予防研究が、1993年にSouthwest Oncology Group(SWOG)により開始され、18,000人の男性が無作為に選択され、フィナステリド(Proscar)またはプラシーボを7年間与えられた。試験される仮説は、5−α−レダクターゼによるDHTへのテストステロンの変換をブロックすることによる、前立腺中のジヒドロテストステロン(DHT)レベルの減少が、前立腺癌を減少させるということであった。結果は、2004年に利用可能となると予想される。より小規模の研究では、Proscar処置または非処置のゼロ時および1年後の代理エンドマーカー(surrogate end marker)に注目した(Coteら、1998)。研究する群には、PSAが上昇し、かつ、陰性の前立腺針生検を有する男性が含まれた。この研究は、Proscarについての男性の1年の経過観察生検後に診断された癌の増大を示した(非処置での25人中1人に対し、27人中8人(p=0.025))。前立腺癌の危険性が高い22人の男性における、経口フェンレチニド(fenretinide)の小規模の第II相試験が、Pientaら(1997)により行われた。この試験は、研究前の生検で陰性だった8人の男性が、研究が行われている間に悪性腫瘍を示した、初期の時点で中止された。目的の薬剤からの保護効果を実証し得なかったこれら2つの小規模の研究では、DMFOのような種々の薬剤に関して、前立腺癌の化学的予防における役割が存在するはずである。
【0040】
(VI.前立腺癌の診断)
前立腺癌に関する最も広く一般に用いられる現在の試験は、直腸指診(digital rectal examination)(DRE)、および、血清前立腺特異抗原(PSA)の分析である。PSAは、前立腺組織に特異的であるが、これは、正常および良性ならびに悪性の前立腺上皮によって産生され、これが、前立腺癌の検出について高い割合の偽陽性を生じる(Partin & Oesterling、1994)。
【0041】
前立腺癌検出用に用いられている他のマーカーには、前立腺酸ホスファターゼ(PAP)および前立腺分泌タンパク質(PSP)が含まれる。PAPは、ホルモンの制御下で前立腺細胞により分泌される(Brawnら、1996)。PAPは、PSAが有するよりも、低い特異性および感度を有する。結果として、今ではほとんど用いられないが、PAPは、初期治療に失敗した転移患者をモニターするためのいくつかの用途を依然として有し得る。一般に、PSPは、PAPよりも高感度の生体マーカーであるが、PSAと同程度の高感度ではない(Huangら、1993)。PSAと同様に、PSPレベルは、BPHを有する患者だけでなく、前立腺癌を有する患者においても、しばしば上昇する。
【0042】
前立腺疾患に関連する別の血清マーカーは、前立腺特異的膜抗原(PSMA)である(Horoszewiczら、1987;Carterら、1996;Murphyら、1996)。PSMAは、II型細胞膜タンパク質であり、葉酸ヒドロラーゼ(FAH)として同定されている(Carterら、1996)。PSMAに対する抗体は、正常な前立腺組織および前立腺癌組織の両方と反応する(Horoszewiczら、1987)。Murphyら(1995)は、ELISAを用いて、進行した前立腺癌中の血清PSMAを検出した。血清試験として、PSMAレベルは、前立腺癌の比較的弱い指標である。しかし、PSMAは特定の状況で有用性を有し得る。PSMAは、転移性の前立腺腫瘍の毛細血管床において発現され(Silverら、1997)、そして転移癌患者の血液中でより豊富であることが報告されている(Murphyら、1996)。PSMAメッセンジャーRNA(mRNA)は、5−α−ジヒドロキシテストステロン(DHT)に対する曝露後のLNCaP前立腺癌細胞株において、8〜10倍ダウンレギュレートされる(Israeliら、1994)。
【0043】
上記のように、DFMOは、上皮発癌の腫瘍促進段階の後期で作用する。DFMOによる結腸発癌の阻害についての機構には、マトリクスメタロプロテイナーゼマトリリシン(matrilysin)(Wallonら、1994)の抑制であって、これは、腫瘍の浸潤に関与する分泌プロテアーゼである。DFMOはまた、LNCaPヒト前立腺癌由来細胞中のインターロイキン−1β(IL−1β)誘導性マトリリシン発現を抑制するので、この機構は、前立腺癌において機能的である。
【0044】
前立腺癌についての比較的新しい潜在的生体マーカーは、ヒトカリクレイン2(human kallekrein 2)(HK2)である(Piironenら、1996)。HK2は、前立腺により分泌されるカリクレインファミリーのメンバーである。理論的には、HK2の血清濃度は、前立腺癌の検出または診断において有用であり得るが、このマーカーの有用性は、依然評価されている。
【0045】
(VII.癌の処置方法)
特定の局面において、本発明は、前立腺癌の処置のための方法を提供する。治療方法は、DFMOを含む治療有効量の治療組成物で個体を処置する工程を包含する。有効量は、一般に、疾患またはその症状の程度を、検出可能にかつ繰り返して、改善、減少、最小化または制限するのに、十分な量として説明される。疾患の排除、根絶または治癒を含む、より厳密な定義が、適用され得る。
【0046】
DFMOは、約0.05〜約20.0gm/m2/日の用量で投与され得る。投与されるべきDFMOの好ましい用量は、約0.1〜約15.0gm/m2/日、または約0.1〜12gm/m2/日、または約0.1〜10gm/m2/日、または約0.1〜8gm/m2/日、または約0.1〜6gm/m2/日、または約0.1〜4gm/m2/日、または約0.1〜2gm/m2/日、または約0.1〜1gm/m2/日または約0.1〜0.5gm/m2/日、または約0.5gm/m2/日である。DFMOはまた、約0.1〜2.0g/日の用量で、または約0.25〜1.5g/日の用量で、またはより好ましくは約0.5〜1.0g/日の用量で投与され得る。
【0047】
細胞を死滅させ、細胞増殖を阻害し、転移を阻害し、腫瘍サイズを減少させ、さもなければ腫瘍細胞の悪性の表現型を反転または低減させるため、本発明の方法および組成物を用いて、一般的に、「標的」細胞をこの治療組成物に接触させる。これは、癌の処置に効果的な他の薬剤を含む組成物と組み合わせ得る。これらの組成物は、細胞を死滅させるかまたは細胞増殖を阻害するために有効な、組合せ量で提供される。このプロセスは、DFMOおよび薬剤または因子と細胞を同時に接触させること包含し得る。これは、両薬剤を含む単一の組成物または単一の薬理学的処方物と細胞を同時に接触させることにより、または、一方の組成物がDFMOを含みかつ他方が第2の薬剤を含む2つの別個の組成物または処方物と細胞を同時に接触させることにより、達成され得る。
【0048】
患者への、本発明の治療的DFMO組成物の投与は、もしあるならば、DFMOの毒性を考慮に入れつつ、化学療法剤の投与に関する一般的なプロトコルに従う。処置サイクルは必要なだけ繰り返されることが予想される。種々の標準的な治療、ならびに外科的介入が、記載された治療と組合せて適用され得ることもまた、企図される。
【0049】
DFMO治療の臨床的適用が企図される場合には、意図される適用のために適切な薬学的組成物としてこの複合体を調製することが必要である。一般的に、これは、発熱物質と、ヒトまたは動物に有害であり得る他の不純物とを実質的に含まない、薬学的組成物を調製することを包含する。また、この複合体に安定性を付与し、かつ、この複合体を標的細胞により取り込み可能とするため、適切な塩および緩衝液を用いることが、一般的に望まれる。
【0050】
本発明の水性組成物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは水性媒体に溶解または分散された、有効量の化合物を含む。このような組成物はまた、接種材料とも呼ばれ得る。句「薬学的に受容可能または薬理学的に受容可能」とは、動物またはヒトに適切に投与された際に、有害な反応、アレルギー性反応、または他の不適当な反応を生じない、分子実体および組成物を指す。本明細書中で用いられる場合、「薬学的に受容可能なキャリア」は、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延薬剤などを包含する。薬学的活性物質に関するこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性成分と不適合である場合を除き、治療組成物におけるその使用が企図される。補助活性成分も、この組成物に組み込まれ得る。
【0051】
本発明の組成物は、従来の薬学的調製物を含み得る。同様に、分散物を、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物中、ならびに油中に調製し得る。通常の保存および使用の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための保存料を含有する。
【0052】
特定の癌に依存して、本発明による治療組成物の投与は、標的組織がその経路を介して利用可能である限り、任意の一般的な経路を介される。これは、経口経路、経鼻腔経路、口腔経路、経直腸経路、経膣経路、または局所経路を包含する。局所投与は、皮膚癌の処置に特に有利である。あるいは、投与は、同所注射、皮内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、または静脈内注射による。このような組成物は、通常、生理学的に受容可能なキャリア、緩衝液または他の賦形剤を含む、薬学的に受容可能な組成物として投与される。
【0053】
特定の実施形態では、エキソビボ治療もまた企図される。エキソビボ治療は、患者からの標的細胞の除去を含む。細胞は、患者の体外で処置され、その後で戻される。
【0054】
処置は、種々の「単位用量」を包含し得る。単位用量は、その投与(すなわち、適切な経路および処置レジメン)に従って所望の応答を生じるように計算された、所定量の治療組成物を含有するものとして定義される。投与されるべき量、ならびに特定の経路および処方は、臨床分野の当業者の技術範囲内にある。同様に重要なことは、処置される被験体、特に、被験体の状態および望まれる防御である。単位用量は、一回の注射として投与される必要はなく、一定期間にわたる連続的な注入を含み得る。
【0055】
本発明の好ましい実施形態の一つは、DFMO治療組成物の、特定の標的癌細胞についての使用を含む。特に興味深いのは、前立腺癌細胞である。
【0056】
本発明によれば、DFMOまたはアナログ組成物を腫瘍に直接注射することにより、癌を処置し得る。あるいは、腫瘍は、任意の適切な送達ビヒクルを用い、組成物を注入され得るか、または灌流され得る。腫瘍についての局所的投与または領域的投与もまた、企図される。最終的には、全身的投与を行い得る。適切な場合、例えば、腫瘍を切除し、残った微視的な疾患を排除するためこの腫瘍床を処置する場合には、連続的投与もまた、適用され得る。シリンジを介する送達またはカテーテル法が好ましい。このような連続的灌流は、処置の開始後、約1〜2時間から、約2〜6時間まで、約6〜12時間まで、約12〜24時間まで、約1〜2日間まで、約1〜2週間まで、またはこれより長く、行われ得る。一般的に、連続的灌流を介する治療組成物の用量は、一回または多数回の注射により与えられ、灌流が起きる期間中に調節される用量と等しい。4cmを超える腫瘍について、投与されるべき量は、約4〜10ml(好ましくは10ml)であり、一方、4cm未満の腫瘍については、約1〜3ml(好ましくは3ml)が用いられる。一回の用量として送達される複数回の注射は、約0.1〜約0.5mlの用量から構成される。ウイルス粒子は、約1cm間隔で配置される、腫瘍への多数回注射を投与することにより、有利に接触され得る。
【0057】
特定の実施形態では、処置される腫瘍は、少なくとも初期においては、切除可能でないかもしれない。治療的DFMO組成物での処置は、縁での収縮により、または、ある特定の浸潤部分の排除により、腫瘍の切除可能性を高め得る。処置後、切除が可能であり得る。切除後の付加的処置は、腫瘍部位での微視的残余疾患を排除するのに役立つ。
【0058】
DNA損傷を引き起こしかつ広範に用いられてきた他の因子は、γ線、X線、および/または腫瘍細胞への放射性同位体の誘導された送達として一般に知られるものを含む。DNA損傷因子の他の形態(例えば、マイクロ波およびUV照射)もまた、企図される。これらの因子の全ては、DNA、DNA前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の集合および維持に対して、広範な損傷をもたらす可能性が非常に高い。X線の投与範囲は、一日当り用量50〜200レントゲンで長期間(3〜4週間)から、2000〜6000レントゲンの一回用量までの範囲にある。放射性同位体の投与範囲は、広く変化し、同位体の半減期、放出される放射線の強さおよび種類、ならびに新形成細胞による取り込みに依存する。
【0059】
(VIII.DFMOを用いた併用治療)
本発明は、DFMOが他の治療と組合せて用いられ得ることを企図する。アスピリン、およびいくつかの他のNSAIDは、結腸直腸癌に対して化学予防的作用を発揮し、多分、胃癌、食道癌(Thunら、1993)およびさらには膀胱癌(Earnestら、1992)にも発揮することを示唆する、増加する一連の実験データおよび疫学的データが存在する。アスピリン、イブプロフェン、ピロキシカム(Reddyら、1990、Singhら、1994)、インドメタシン(Narisawa,1981)、およびスリンダク(Piazzaら、1997、Raoら、1995)は、アゾキシメタンAOM処置ラットモデルにおける結腸癌発生を効果的に阻害する。フルルビプロフェンは、APC(Min)+マウスモデルにおける抗腫瘍効果を実証した(Wechterら、1997)。NSAIDは、活性化Ki−rasを保有する腫瘍の発生も阻害する(SinghおよびReddy,1995)。DFMOをアスピリンと組合せて、AOM処置ラットにおけるその化学予防的効果を評価する研究が行われている。アスピリンとDFMOとの組合せが、AOMが相乗的であることが見出された後に投与された(Liら、1999)。その結果は、アスピリンとDFMOとの組合せは、AOM後に投与された場合に、結腸癌を予防し得ることを示した(Liら、1999)。
【0060】
DFMOと、化学療法薬剤ピロキシカムとの組合せは、直腸癌発生のAOM処置ラットモデルにおいて相乗的化学予防効果を有することが示されている(Reddyら、1990)が、DFMOは、各薬剤が個別に投与された場合に、Ki−ras突然変異および腫瘍発生に対して、ピロキシカムよりも高い抑制効果を示した(Singhら、1993、Reddyら、1990、Kulkarniら、1992)。ある研究では、AOM処置ラットへのDFMOまたはピロキシカムの投与は、Ki−ras変異を有する腫瘍の数を、90%から、それぞれ36%および25%まで低減させた(Singhら、1994)。Apc変異MinマウスモデルをピロキシカムおよびDFMOの試験に用い、この併用処置が、いずれかの薬剤単独よりもはるかに効果的であり、いかなる腸腺腫も全く有さない有意な数のマウスが得られたことが確認された(Jacobyら、2000)。DFMOとピロキシカムとの両方はまた、既存の腫瘍における生化学的に活性なp21 rasの量を低減させた(Singhら、1993)。モデル系における薬剤の成功にもかかわらず、この組合せで行われたフェーズI試験は、一定範囲の有害な副作用を生じた(Carboneら、1998)。
【0061】
DFMOはODCの効果的なインヒビターであるので、研究者の中には、インターフェロンと組合せた共同的処置の一部としてDFMOを用いることを試みているものもいる。米国特許第4,499,072号は、ODCインヒビターと組み合わせてインターフェロンを使用することによる、ODCインヒビター(DFMOを含む)のポリアミン除去効果の向上を記載している。さらに、この特許は、メトトレキサートのような既知の細胞傷害性薬剤と組み合わせた、ODCインヒビターとインターフェロンの両方の使用を記載している。米国特許第5,002,879号は、ODCインヒビター(好ましくはDFMO)を、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞とインターロイキン−2と組み合わせて用いる、同様の共同的治療を記載している。
【0062】
癌治療はまた、化学療法および放射線ベースの治療の両方を伴う、DMFOの種々の併用治療を含む。化学療法の組み合わせには、例えば、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロルエタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン(bisulfan)、ニトロソ尿素類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(plicomycin)、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、タキソール、トランスプラチナ(transplatinum)、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトトレキサートあるいはこれらの任意のアナログまたは誘導改変体が含まれる。良性前立腺過形成のような前癌性状態に関して、テラゾシン、ドキサゾシン、プラゾシン、ブナゾシン、インドラミン、タムスロシン、プラジシン(prazicin)またはアルフゾシンのような、α−1アドレナリン作用性レセプター遮断薬;フィナステリドまたはアザステロイド誘導体のような、5−α−レダクターゼ酵素遮断薬;α−1アドレナリン作用性レセプター遮断薬と5−α−レダクターゼ酵素遮断薬との組み合わせ;ミノキシジルのようなカリウムチャネル開放薬;およびレチノイン酸誘導体から、第2の治療薬剤が選択された。好ましい実施形態では、第2の治療薬剤は、ノコギリパルメット(saw palmetto)抽出物である。
【0063】
種々の組み合わせ(例えば、DFMO組成物は「A」であり、放射線療法、化学療法または他の治療薬剤は「B」である場合)が、使用され得る:
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A。
「接触された」および「曝露された」との用語は、細胞に用いられる場合には、治療組成物および化学療法または放射線治療薬剤が標的細胞に送達されるプロセス、または、標的細胞の直接近位に配置されるプロセスを記載するために、本明細書中で用いられる。細胞の死滅または静止を達成するため、両薬剤は、細胞を死滅させるかまたは細胞が***するのを防ぐのに効果的な、組み合わせ量で細胞に送達される。
【0064】
DFMO治療は、数分から数週の範囲の間隔で、もう一方の薬剤による処置の前または後に行われ得る。もう一方の薬剤およびDFMOが細胞に個別に適用される実施形態では、各送達の間に有意な期間が満了しなかった結果、その薬剤およびDFMOが、細胞に対して有利な組合せ効果を依然として発揮可能であることが、一般的に保証される。このような場合、互いに約12〜24時間内に、より好ましくは、互いに約6〜12時間内に、最も好ましくは約12時間だけ遅れさせて、両方の治療適用を細胞に接触させることが、企図される。しかし、いくつかの状況において、各投与の間に数日(2日、3日、4日、5日、6日または7日)から数週間(1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間または8週間)が経過する場合に、処置の期間を有意に延長することが望ましくあり得る。
【0065】
(IX.薬学的組成物)
本発明の水性組成物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは薬学的に受容可能な水性媒体中に溶解または分散された、有効量のDFMOを含む。句「薬学的に受容可能または薬理学的に受容可能」とは、動物またはヒトに適切に投与された場合に、有害な反応、アレルギー反応、または他の不適当な反応を生じない、分子実体または組成物を指す。
【0066】
本明細書で用いられる場合「薬学的に受容可能なキャリア」は、任意かつ全ての、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを包含する。薬学的活性物質に関するこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性成分と不適合性でない限り、この薬学的組成物におけるその使用が、企図される。補助活性成分もまた、この組成物に組込まれ得る。ヒトへの投与に関して、調製物は、FDA Office of Biologicsの基準により要求される、滅菌性の基準、発熱原性の基準、一般的安全性の基準および純度の基準を満たすべきである。
【0067】
生物学的材料は、望ましくない低分子量分子を除去するために徹底的に透析され、かつ/または、適切な場合には、所望のビヒクル中により容易に処方するために凍結乾燥されるべきである。次いで、活性化合物は、一般的に、非経口投与のために処方され、例えば、静脈内経路、筋肉内経路、皮下経路、病変内経路、またはさらに腹腔内経路を介した注射のために、処方される。活性構成成分または活性成分としてのヘッドピン(headpin)薬剤を含有する水性組成物の調製は、本発明の開示を考慮すれば、当業者により知られる。代表的には、このような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして、注射可能物質として調製され得る。注射前の液体の添加の際に溶液または懸濁液を調製するための使用に適切な固体形態もまた、調製され得る。そして、この調製物はまた、乳化され得る。
【0068】
注射可能な使用に適した薬学的形態としては、滅菌水溶液または滅菌分散液;ゴマ油、落花生油または水性プロピレングリコールを含む、処方物;ならびに、滅菌注射可能溶液および滅菌注射可能分散液の即時調製物用の、滅菌粉末が、挙げられる。全ての場合において、その形態は、滅菌されていなければならず、かつ、簡単にシリンジで注入可能な程度に、液状でなければならない。その形態は、製造条件および保存条件下で安定でなければならず、かつ、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。
【0069】
遊離塩基または薬学的に受容可能な塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と適切に混合された水中で、調製され得る。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物中、ならびに油の中で、調製され得る。通常の保存条件および通常の使用条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐ保存薬を含有する。
【0070】
本発明のDFMOは、中性形態または塩の形態で組成物に処方され得る。薬学的に受容可能な塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)を含み、これは、例えば、塩酸またはリン酸のような無機酸と、あるいは、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と、形成される。遊離カルボキシル基と形成された塩はまた、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化鉄(III)のような、無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリエチルアミン、ヒスチヂン、プロカインなどのような、有機塩基に由来し得る。
【0071】
キャリアはまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、これらの適切な混合物、ならびに植物油を含有する、溶媒または分散媒であり得る。例えば、レシチンのようなコーティングの使用により、分散液の場合には必要とされる粒子サイズの維持により、および、界面活性剤の使用により、適切な流動性が、維持され得る。微生物作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどにより、達成され得る。多くの場合、等張剤(例えば、糖または塩化ナトリウム)を含むことが、好ましい。注射可能組成物の長期の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を組成物中に用いることにより、達成され得る。
【0072】
滅菌注射可能溶液は、活性化合物を必要量、上記で列挙した種々の他の成分とともに適切な溶媒中に組み込むことより、そして必要な場合、その後濾過滅菌することにより、調製される。一般的に、分散液は、ベースとなる分散媒と、上記で列挙したもの以外の必要な他の成分とを含有する滅菌ビヒクル中に、種々の滅菌された活性成分を組み込むことにより、調製される。滅菌注射可能溶液を調製するための滅菌粉末の場合、その好ましい調製方法は、前もって滅菌濾過された溶液から、活性物質および他の望ましい任意の成分の粉末を得る、真空乾燥技術および凍結乾燥技術である。より濃縮された、または高度に濃縮された、直接注射用溶液の調製もまた企図され、ここで、溶媒としてのDMSOの使用が、非常に急速な浸透をもたらし、これにより高濃度の活性薬剤が小さな領域に送達されることが、想像される。
【0073】
処方の際、溶液は、投薬処方物に適合した様式で、かつ、治療上有効である量で、投与される。この処方物は、上記した注射可能溶液の種類のような、種々の投薬形態で容易に投与されるが、薬剤放出カプセルなどもまた、利用され得る。
【0074】
水溶液での非経口投与に関し、例えば、その溶液は、必要な場合は適切に緩衝化されるべきであり、そして液体希釈剤は、十分な生理食塩水またはグルコースでまず等張性にされるべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与および腹腔内投与に特に適している。これに関して、利用され得る滅菌水性媒体は、本発明の開示を鑑みて、当業者に知られる。例えば、1回分の投薬量が、1mlの等張性NaCl溶液に溶解され得、そして1000mlの皮下注入流体に添加されるかまたは計画された注入部位に注射されるかのいずれかであり得る(例えば、”Remington’s Pharmaceutical Sciences”15th Edition,1035−1038頁および1570−1580頁を参照のこと)。投薬におけるいくつかの変更が、処置される被験体の状態に応じて必然的に発生する。投与の責任者が、いかなる場合でも、個々の被験体にとって適切な用量を決定する。
【0075】
静脈内または筋肉内注射のような非経口投与用に処方された化合物に加えて、他の薬学的に受容可能な形態としては、例えば、錠剤または経口投与用の他の固体;リポソーム処方物;徐放性カプセル;およびクリームを含む現在用いられている任意の他の形態が挙げられる。
【0076】
また、本発明において、鼻腔用の溶液あるいはスプレー、エアロゾルまたは吸入剤を用い得る。鼻腔用溶液は、通常、滴薬またはスプレーで鼻孔に投与されるように設計された、水溶液である。鼻腔用溶液は、鼻腔分泌物と多くの点で類似するように、通常の線毛の動作が維持されるように、調製される。このため、この鼻腔用水溶液は、通常、等張性であり、かつ、pH5.5〜6.5を維持するようにわずかに緩衝化されている。さらに、必要な場合、眼用調製物において使用されているのと同様の抗菌性保存剤および適切な薬剤安定化剤が、処方物中に含まれ得る。種々の市販の鼻腔用調製物が公知であり、それらは、例えば、抗生物質および抗ヒスタミン剤を含み、喘息の予防に用いられている。
【0077】
他の方式の投与に適した付加的な処方物としては、膣用坐剤および膣坐薬(pessary)が挙げられる。直腸用坐薬(pessary)または直腸用坐剤もまた、使用され得る。坐剤は、通常薬用の、直腸、膣または尿道内への挿入用の、種々の重量および形状を有する、固体投薬形態である。挿入後、坐剤は、腔内の流体中で軟化、溶融または溶解される。概して、坐剤に関し、伝統的な結合剤およびキャリアは、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含み得る。このような坐剤は、有効成分を0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲で含有する、混合物から形成され得る。
【0078】
経口処方物には、例えば、薬学的等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような、通常利用される賦形剤が含まれる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性処方物または粉末の形態を取る。ある定義された実施形態では、経口薬学的組成物は、不活性な希釈剤または同化可能な食用キャリアを含む。または、これらは、硬質または軟質の殻のゼラチンカプセル中に封入され得る。または、これらは、治療食の食物に直接組み込まれ得る。経口治療投与のため、活性化合物は、賦形剤に組み込まれ得、摂取可能な錠剤、口腔用錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、カシェ剤などの形態で用いられ得る。このような組成物および調製物は、少なくとも0.1%の活性化合物を含有するべきである。この組成物および調製物の割合は、当然変更され得、そして好都合には、単位重量の約2〜約75%、または好ましくは25〜60%であり得る。このような治療に有用な組成物中の活性化合物の量は、適切な投薬が得られるようなものである。
【0079】
錠剤、トローチ、丸薬、カプセルなどはまた、以下を含み得る:トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチまたはゼラチンのような、結合剤;リン酸二カルシウムのような、賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などのような、崩壊剤(disintegrating agent);ステアリン酸マグネシウムのような、滑剤;スクロース、ラクトースまたはサッカリンのような、甘味料;あるいは、ペパーミント、ウインターグリーン油またはサクランボフレーバーのような、矯味矯臭剤。投薬の単位形態がカプセルである場合には、上記種類の材料に加えて、そのカプセルは、液体キャリアを含有し得る。種々の他の材料が、コーティングとして、またはそうでなければ投薬単位の物理形態を修正するために、存在し得る。例えば、錠剤、丸薬、またはカプセルは、セラック、糖またはその両方でコートされ得る。エリキシルのシロップは、活性化合物である、甘味料としてのスクロース、および保存料としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、染料、ならびにサクランボフレーバーおよびオレンジフレーバーのような矯味矯臭剤を、含有し得る。
【0080】
特定の実施形態では、リポソームおよび/またはナノ粒子の使用が、DFMOまたはそのアナログの処方および投与に関して企図される。リポソームの処方および使用は、一般的に当業者には公知であり、そしてまた以下に記載されている。
【0081】
ナノカプセルは、一般的に、化合物を安定かつ再生可能な方法で含み得る。分子内のポリマーの過剰負荷による副作用を避けるため、このような超微細粒子(サイズ約0.1μm)は、インビボで分解され得るポリマーを用いて設計されるべきである。これらの要件を満たす生分解性ポリアルキル−シアノアクリレートナノ粒子が、本発明での使用に企図され、そしてこのような粒子は、容易に作製され得る。
【0082】
リポソームは、水性媒体中に分散し、多層の同心円状二重膜小胞(多重膜リポソーム(MLV)とも呼ばれる)を自発的に形成する、リン脂質から形成される。MLVは、一般的に、25nm〜4μmの直径を有する。MLVの超音波処理により、中心に水性溶液を含有する、200〜500Åの範囲の直径を有する小さな単膜リポソーム(SUV)が形成される。
【0083】
以下の情報もまた、リポソーム処方物の生成にも利用され得る。リン脂質は、水中に分散された場合に、脂質と水とのモル比に応じて、リポソーム以外の種々の構造を形成し得る。低い比では、そのリポソームは、好ましい構造である。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度および二価カチオンの存在に依存する。リポソームは、イオン性物質および極性物質に対して低い透過性を示し得るが、高い温度では、その透過性を顕著に変化させる相転移が生じる。この相転移は、ゲル状態として知られる、緊密に密集した秩序だった構造から、流体状態として知られる、緩く密集した低秩序構造への変化を含む。これは、特徴的な相転移温度で生じ、イオン、糖および薬物に対する透過性の上昇をもたらす。
【0084】
リポソームは、以下の4つの異なる機構を介して細胞と相互作用する。マクロファージおよび好中球のような細網内皮系の食細胞によるエンドサイトーシス。非特異的な弱い疎水性力または静電気力、あるいは細胞と表面構成要素との特異的相互作用のいずれかによる、細胞表面への吸着。細胞質中へのリポソーム内容物の同時放出を伴う、形質膜へのリポソームの脂質二重膜の挿入による形質細胞膜との融合。リポソーム内容物を全く伴わない、細胞膜または亜細胞成分膜へのリポソーム脂質の移入。その逆方向への移入。リポソーム処方物を変えることにより、働く機構を変更し得るが、1つより多くの機構が同時に働き得る。
【0085】
(X.実施例)
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれる。以下の実施例に開示された技術は、本発明の実施において十分に機能することが本発明者らにより発見された技術を表わすこと、よって、本発明の実施のための好ましい形態を構成すると見なされ得ることが、当業者によって理解されるべきである。しかし、本開示を鑑みて、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、開示された特定の実施形態において多くの変更をなしかつ依然として類似するかまたは同様の結果を得ることが可能であることを、当業者は理解するべきである。
【0086】
(実施例1 実験)
本プロトコルは、University of California IrvineおよびLong Beach Veterans Administration Medical Centerの治験委員会(investigational review board)により承認された。PSAの上昇または直腸検査の異常のいずれかのために経直腸前立腺針生検を受けている50歳〜85歳の男性が、定期的な現行の生検時に末梢域の4つのさらなるコア針生検を受けるための書面による同意にサインした。さらなる4つの生検は、液体窒素で即時に凍結し、−70℃のフリーザー中に保存した。6つ一組の(sextent)生検を、定期分析のために病理部に送った。患者が、(1)前立腺癌のための根治的な外科手術、(2)出口閉塞のための経尿道的切除、または(3)異型性の診断に起因する第2の生検、を選択した場合、その患者に、治験への参加を継続し、第2の手順前28日間および第2の手順の日にDFMO 0.5gm/m2を経口摂取するよう依頼した。質問表および問診技術を使用して副作用について患者をモニターした。凝固パラメータを、手術前に注意深く評価した。外科手順の直前に手術室にて、末梢域の4つの経直腸コア生検を、採取し、そして凍結させた。組織学的分析およびポリアミン分析のため、DFMO前後の標本を、ドライアイス上に載せて共にアリゾナに送った。根治的な前立腺切除標本を、TMN(1997年更新)病期分類システム(American Joint Committee on Cancer 1997)により病期分類した。
【0087】
前立腺コアのポリアミン含有量を決定するため、まず、コアを解凍し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄し、重量を量った。次に、サンプルを0.2N過塩素酸中で細分化し、超音波処理して細胞物質を破砕した。次いで、サンプルを2,000Xgで5分間遠心分離させ、酸溶解画分と酸不溶画分とに分離した。他に記載されているように(Gerner et al. 1994、Meyskens et al. 1994、Meyskins et al. 1998)、逆相イオン対高速流体クロマトグラフィー(PHLC)法を用いて、酸溶解画分をポリアミン含有量について評価した。簡潔には、ポリアミンは、C18B Ondapakカラムで分離され、分離後にo−フタルデヒド(o−pthaldehyde)で誘導体化され、この誘導体化した物質の750nmでの吸収により検出される。
【0088】
ポリアミンレベルの平均、メジアン、および範囲は、nmol/mgタンパク質で報告される。本発明者らの方法の検出限界は、0.01nmol/mgである。
【0089】
慣用的6つ一組の生検および外科標本は、Long Beach Veterans Administration Medical Centerの病理学部により確立されたプロトコルに従って処理され、報告された。
【0090】
組織構造の変化を、明視野顕微鏡法により評価した。DFMO前後のポリアミン値は、ウィルコクソン符号付き順位和検定(Wilcoxon matched−pairs signed rank test)を用いて比較した。このため、各患者について、本発明者らは、DFMOによるポリアミン変化の大きさおよび方向の両方を考慮に入れることができた。
【0091】
(実施例2 結果)
人口統計:49人の男性が、本研究の参加同意書にサインした。22人は、6つ一組の生検の時に、4つの付加的なコアの第1の組を有した。慣用的生検の結果および同意した患者に基づき、10人の男性がDFMOを開始した。9人の男性が、生検の第2の組を有した。1人の男性は、DFMOの開始後、その前立腺癌のための処置を全く受けないことを選択した。参加者およびその慣用的生検の組織病理の結果の詳細な統計を、表1に示す。
【0092】
試験を全うした男性の平均年齢は、65.6歳であった(メジアン66歳、範囲56〜73歳)。群の人種は、白人(3)、ラテンアメリカ人(3)、黒人(1)、アジア人(1)、および白人/アジア人混血(1)であった。生検についての徴候は、PSAの上昇(5)、直腸指診の数値異常(3)または両方(1)であった。9人の患者の第1の生検前の平均PSAは、9.4ng/ml(メジアン5.1ng/ml、範囲1.7〜47.2)であり、DFMOは、平均28.2日間(メジアン28日間、範囲21〜35日間)与えられた。コンプライアンスは、文書およびインタビューにより測定されたように、100%であった。第2の手順は、根治的恥骨前立腺切除(RRR)(4)、生検の繰返し(4)、および前立腺の経尿道切除(TURP)(1)であった。
【0093】
副作用:副作用は、4人の男性に報告された。2人の男性は、軽い臨床的な聴覚障害(純音聴覚学によっては確認されない)、吐き気、下痢、ならびに1人の男性においては倦怠感、およびもう1人の男性においては突発性の一時的衰弱を含む、グレード0の副作用を有した。1人の男性は、グレード1のめまい、これと共に、吐き気および上胃部の痛みを有した。血小板数、あるいはDFMOを伴うプロタイム(protime)の臨床的に有意な変化は無かった。外科手術の前に出血時間を調べたが、DFMOによっては変化しなかった。
【0094】
病理:(表1)第1の生検についての慣用的病理診断は、異型性(2)、炎症を伴う異型性(3)、グリーソン和5(1)、グリーソン和6(2)、グリーソン和7(1)(計9)であった。第2の処置の時の慣用的病理標本は、BPH(1)を実証した。BPHおよび炎症(1)、炎症(1)、異型性(1)、グリーソン和6(1)、Pt2Aグリーソン和6(1)、pT2bグリーソン和6(1)、pT3aグリーソン和6(1)、pT4グリーソン和8(1)(計9)。
【0095】
【表1】
コア組織構造:DFMO処置の前後で得たコア生検サンプルにおいては、組織構造の主要な変化は無かった(RB Nagle、個人的連絡、データ示さず)。
【0096】
PSA:(表1)9人の患者についての第1の生検前の平均PSAは、9.4ng/ml(メジアン5.1ng/ml、範囲1.7〜47.2)であった。最終的に良性の病理を有する4人の患者について、本発明者らは、生検前PSAまたはDFMO前PSAを、DFMO適用中に抽出したPSAと比較した。PSAは、各患者において減少した(患者1、4、5、7)。PSAは、悪性の病理を有する患者の5人のうち3人において上昇した(患者3、8、9)。これら3人の男性の中で、1人の男性のPSAは非常に変わりやすいが(患者8)、別の男性のPSAは6週間の生検内で抽出されており、よってPSAは生検から不正確に上昇した可能性がある(患者9)。
【0097】
ポリアミンレベル:図1は、経口的DFMOの前後に行われた生検を有する9人の男性における、プトレシン、スペルミジン、スペルミン、およびスペルミジン/スペルミン比の値を比較している。治療前のプトレシンは、6人の男性においてはDFMO前で検出可能であり、3人の男性においては検出可能ではなかった(0.01nmol/mg未満)。平均プトレシンレベルは、0.42nmol/mg(メジアン0.27、検出不可範囲〜0.94)であった。全ての男性が、DFMO後、検出不可能なレベルのプトレシンを有していた。0.01以上のDFMO前プトレシンレベルを有する6人の男性について、基線からの平均減少量は、97.6%(p=0.031)であった。スペルミジンは、DFMO前の全標本において測定可能であった。平均の処置前レベルは、1.21nmol/mg(メジアン0.81、範囲0.49〜3.82)であり、DFMO後、全標本において減少した。治療後の平均スペルミジンの平均レベルは0.32(メジアン0.21、範囲検出不可〜1.18)であり、2つの標本においてはそのレベルは検出不可能であった。基線からの平均減少%は、73.6%(p=0.004)であった。DFMO前のスペルミンレベルは、試験した全ポリアミンの中で最も高かった。DFMO前の平均スペルミンレベルは29.14nmol/mg(メジアン28.85、範囲9.88〜53.66)であり、DFMO後、全標本において平均スペルミンレベル14.33(メジアン17.40、範囲3.24〜25.28)まで減少した。基線からの平均減少率は、50.8%(p=0.004)であった。スペルミジン/スペルミン比を各標本について算出した。9人中8人の患者において、DFMOが与えられた後、この比は減少していた。基線からの平均減少率は、50%(メジアン52%、範囲−25.3〜97%)(p=0.019)であった。関節包外前立腺癌を有する2人の患者では、基線からの減少率は最も小さく、または、DFMOでの処置後、スペルミジン/スペルミン比は実際に上昇した(患者2および8)。
【0098】
(実施例3. 考察)
この短期の試験において、本発明者らは、28日間毎日のDFMO0.5gm/m2の経口投与後における、前立腺ポリアミン(プトレシン、スペルミジンおよびスペルミン)およびスペルミジン/スペルミン比の有意な低減を実証することができた。プトレシンは98%(n=6、p=0.031)、スペルミジンは74%(n=9、p=0.004)、およびスペルミンは51%(n=9、p=0.004)基線から減少した。特に興味深いのは、スペルミンの大きな低減が実証されたことである。スペルミンレベルに対するDFMOのこの効果は、DFMOが与えられる患者の他の組織において観察されておらず、また、DFMO治療を受ける患者の他の組織において観察されていない(Gernerら、1994、Meyskensら、1994、Meyskensら、1998)。
【0099】
本発明者らの試験設計についての、および、上述したMessingら(1999)についての簡単な検討から、2つの研究間の一致しない結果の原因となり得る研究の違いが指摘される。本研究の利点は、DFMO前後の同一の男性からのサンプルを使用することにより、ポリアミン抑制に関する自身のコントロールとして各男性を使用することを、本発明者らが選択したことである。加えて、このサンプルは、サンプルがバッチでの違いを避けるためにともに試行され得る前後両方まで、試行されなかった。データは、操作前の被験者間のポリアミンレベルの広い可変性を示し、プトレシンが試験したポリアミンの中で最も変化が小さいことを実証する(Put(検出不可能範囲(0.01未満検出不可能)〜0.94)、Spd(範囲0.49〜3.82)、およびSpm(範囲9.96〜53.7))。この可変性により、少量のコントロールと処置群との違いを評価することが困難となり、なぜ可変性が最も小さいプトレシンのみがMessingの試験で有意に変化したかの答えとなり得る。本研究者らの試験では、各男性が自身のコントロールであり、よってDFMOの効果はより容易に測定された。ポリアミンレベルの可変性の有する同様の困難さは、Mitchellら(1997)により検討されている。彼らは、正常頸部組織と比較した頸部癌中のポリアミンレベルについて報告し、特に、ポリアミンレベルを中間体マーカーとして用いる可能性を検討している。組織のこれらの種類の間にはポリアミンレベルの違いはあったが、著者らは、ポリアミンレベルの可変性のため、多数の被験者が有意な結果を見るために必要とされると結論している。
【0100】
これら2つの研究の間には、組織を管理する様式に関連する処理問題もある。ODC活性は異なったラット前立腺葉において異なっており(これらは背面葉と比較したときに腹葉においてより高い)、かつ、これらの同一の相違がヒト前立腺の帯域中に観察されるかどうかは既知ではなかったので(Hestonら、1982)、本発明者らは前立腺の末梢検体に特定している。加えて、DFMOの28日後、外科手術直前に得られた生検は、外科手術中の前立腺の焼灼または脈管遮断(devasularization)を発生させ得る、いかなるあり得るポリアミンの分解または変化をも回避するため、まず経直腸的にかつ凍結されたように行われた。全身的に脈管遮断されかつ除去されたとき、1〜2時間の虚血の前立腺への影響がどれほどのものであるのかは知られていない。この操作の未知の効果は、最終的な外科手術の前にコアを取ることにより、研究では未然に回避される。
【0101】
本発明者らの研究とMessingら(1999)のそれとの間の別の違いは、処置の長さである。被験者は、4週間のDFMOを受けた(2週間に対して)。Danzinにより発表されたラット前立腺に関する論文は、DFMOの腹腔注射(12時間毎に100mg/kg)による、コントロール値の10%までの最も有意なODC阻害が4〜6時間後に見られたことを示している。阻害は、24時間までコントロールと比較して50%低減まで上昇した。8日間の研究の残りの間中、阻害は、コントロールから30%〜50%の範囲にあり、定常状態には到達しなかった。同じ論文中で、Danzinは、処置2週間後のポリアミンレベルを測定し、低用量DFMO(100mg/kg)でのプトレシンおよびスペルミンレベルの、ならびに、より高用量(1gm/kg)でのスペルミジンレベルの有意な低減を見出した(Danzinら、1979)。100mg/kgDFMOの2週間後の、プトレシンの202±37から4±4nmol/gへの低減は、さらに2週間処置したときのプトレシンについての任意のさらなる影響を推測することを困難にする。しかし、100mg/kgDFMOを用いた2週間後では、スペルミジンにそれほどの低減はなく(7334±193から1188±289)、スペルミンには有意な低減はなかった(2968±293から2741±346)。これら後者の2つのポリアミンは、DFMOを用いた低減を見るのに、より長い処置時間を要する場合がある(Danzin et al. 1979)
ポリアミンレベルを、人種、年齢、病理、およびこの小系列で記した明白な傾向を全く伴わない阻害の日数に関して評価した。前立腺外癌を有する男性においてDFMOに伴うスペルミジン/スペルミン比の低減が明らかに存在しないことは非常に興味深い。前立腺癌を有する5人の男性のうち、2人の男性は、前立腺の外側に前立腺癌を有し(関節包外および膀胱頸部浸潤T3およびT4)、これらの2人の男性(患者2および8)においては、DFMOに伴うスペルミジン/スペルミン比はほとんど上昇しないか、または、実際に上昇することがわかった。一方で、腺(T2、限定された器官)に限定された前立腺癌の標本は、良性前立腺疾患を有するものに見られるように、スペルミジン/スペルミン比における同様の低減を示した(図2)。関節包外および膀胱頸部浸潤とともに見られるように、腫瘍はより攻撃的になり、代替的なポリアミン合成またはポリアミンの脱調節(dysregulation)が発生する可能性がある。より大きいコホートにおいてこの観察を追跡することは、非常に興味深い。ポリアミンの脱制御は、予後の悪さの予測に用いられることが可能であり、ポリアミンの脱制御の測定は、どの患者がより積極的な様式で処置される必要があるか、または、ただ観察される必要があるのか、の決定に用いられることが可能である。さらなる研究は、他の組織内への浸潤とポリアミンの脱制御のいずれが最初に発生するのかを決定する助けとなる。前立腺外癌の拡張前に、ポリアミンの脱制御を測定する時間があることも考えられる。
【0102】
(参考文献)
以下の参考文献は、本明細書中に示される手順等の詳細を補足する例示的手順等をこれらが提供する程度に、本明細書中に参考として特に援用される。
【0103】
【表2】
【図面の簡単な説明】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の局面をさらに説明するために含まれる。本発明は、本明細書中に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの1以上の図面を参照することによって、よりよく理解され得る。
【図1A】図1は、DFMOの前(斜線棒)および28日後(白棒)のコア生検により得られた前立腺組織中のポリアミン含有量。図1A.プトレシン含有量;図1B.スペルミジン含有量;図1C.スペルミン含有量。
【図1B】図1は、DFMOの前(斜線棒)および28日後(白棒)のコア生検により得られた前立腺組織中のポリアミン含有量。図1A.プトレシン含有量;図1B.スペルミジン含有量;図1C.スペルミン含有量。
【図1C】図1は、DFMOの前(斜線棒)および28日後(白棒)のコア生検により得られた前立腺組織中のポリアミン含有量。図1A.プトレシン含有量;図1B.スペルミジン含有量;図1C.スペルミン含有量。
【図2】図2は、DFMOの前(黒棒)および28日後(白棒)のコア生検により得られた前立腺組織中のスペルミジン/スペルミン比。
Claims (99)
- ヒト前立腺細胞におけるスペルミンレベルおよび/またはスペルミジンレベルを減少させるための方法であって、該細胞におけるスペルミンレベルおよび/またはスペルミジンレベルを減少させるに十分な量および期間、該細胞にα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)を投与する工程を包含する、方法。
- 前記前立腺細胞が、癌細胞である、請求項1に記載の方法。
- 前記前立腺細胞が、非癌性細胞である、請求項1に記載の方法。
- 前記前立腺細胞が、良性過形成細胞である、請求項1に記載の方法。
- 前記細胞が患者中にある、請求項1に記載の方法。
- 前記DFMOが、L−鏡像異性体を実質的に含まない、請求項1に記載の方法。
- 前記期間が、約3〜8週間である、請求項5に記載の方法。
- 前記期間が、2〜6ヶ月である、請求項5に記載の方法。
- 前記期間が、少なくとも6ヶ月である、請求項5に記載の方法。
- 前記期間が、少なくとも1年である、請求項5に記載の方法。
- 前記期間が、少なくとも10年である、請求項5に記載の方法。
- 前記期間が、少なくとも20年である、請求項5に記載の方法。
- 前記期間が、少なくとも40年である、請求項5に記載の方法。
- 前記量が、約0.1〜2.0g/m2/日である、請求項5に記載の方法。
- 前記量が、少なくとも約0.5g/m2/日である、請求項5に記載の方法。
- 前記量が、約0.5g/m2/日である、請求項5に記載の方法。
- 前記量が、約0.1〜2.0g/日である、請求項5に記載の方法。
- 前記量が、約0.25〜1.5g/日である、請求項5に記載の方法。
- 前記量が、約0.5〜1.0g/日である、請求項5に記載の方法。
- 前記DFMOが、経口投与される、請求項5に記載の方法。
- 前記スペルミンレベルが、減少される、請求項1に記載の方法。
- 前記スペルミンレベルが、前記処置の前の前記細胞におけるスペルミジンレベルと比較して約20%減少される、請求項21に記載の方法。
- 前記スペルミンレベルが、前記処置の前の前記細胞におけるスペルミジンレベルと比較して約30%減少される、請求項21に記載の方法。
- 前記スペルミンレベルが、前記処置の前の前記細胞におけるスペルミジンレベルと比較して約40%減少される、請求項21に記載の方法。
- 前記スペルミンレベルが、前記処置の前の前記細胞におけるスペルミジンレベルと比較して約50%減少される、請求項21に記載の方法。
- 前記スペルミンレベルが、前記処置の前の前記細胞におけるスペルミジンレベルと比較して約60%減少される、請求項21に記載の方法。
- 前記スペルミンレベルが、前記処置の前の前記細胞におけるスペルミジンレベルと比較して約70%減少される、請求項21に記載の方法。
- 前記スペルミジンレベルが、減少される、請求項1に記載の方法。
- 前記スペルミジンレベルが、前記処置の前の前記細胞におけるスペルミジンレベルと比較して約30%減少される、請求項28に記載の方法。
- 前記スペルミジンレベルが、前記処置の前の前記細胞におけるスペルミジンレベルと比較して約45%減少される、請求項28に記載の方法。
- 前記スペルミジンレベルが、前記処置の前の前記細胞におけるスペルミジンレベルと比較して約55%減少される、請求項28に記載の方法。
- 前記スペルミジンレベルが、前記処置の前の前記細胞におけるスペルミジンレベルと比較して約65%減少される、請求項28に記載の方法。
- 前記スペルミジンレベルが、前記処置の前の前記細胞におけるスペルミジンレベルと比較して約75%減少される、請求項28に記載の方法。
- 前記スペルミジンレベルが、前記処置の前の前記細胞におけるスペルミジンレベルと比較して約85%減少される、請求項28に記載の方法。
- 前記スペルミジンレベルが、前記処置の前の前記細胞におけるスペルミジンレベルと比較して約99%減少される、請求項28に記載の方法。
- 前記細胞のスペルミジン/スペルミン比もまた、減少される、請求項1に記載の方法。
- 前記スペルミジンレベルが、前記処置の前の前記細胞におけるスペルミジンレベルと比較して約99%減少される、請求項36に記載の方法。
- 少なくとも50%のプトレシンレベルの減少をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
- 少なくとも70%のプトレシンレベルの減少をさらに包含する、請求項38に記載の方法。
- 少なくとも90%のプトレシンレベルの減少をさらに包含する、請求項39に記載の方法。
- 前立腺癌に罹患しているヒト被験体を処置する方法であって、該被験体の前立腺細胞におけるスペルミンレベルおよび/またはスペルミジンレベルを減少するために十分な量および期間、該被験体にDFMOを投与する工程を包含する、方法。
- 前記DFMOが、L−鏡像異性体を実質的に含まない、請求項41に記載の方法。
- 前記期間が、約3〜8週間である、請求項5に記載の方法。
- 前記期間が、2〜6ヶ月である、請求項5に記載の方法。
- 前記期間が、少なくとも6ヶ月である、請求項5に記載の方法。
- 前記期間が、少なくとも1年である、請求項5に記載の方法。
- 前記期間が、少なくとも10年である、請求項5に記載の方法。
- 前記期間が、少なくとも20年である、請求項5に記載の方法。
- 前記期間が、少なくとも40年である、請求項5に記載の方法。
- 前記量が、約0.1〜2.0g/m2/日である、請求項41に記載の方法。
- 前記量が、少なくとも約0.5g/m2/日である、請求項41に記載の方法。
- 前記量が、約0.5g/m2/日である、請求項41に記載の方法。
- 前記量が、約0.1〜2.0g/日である、請求項5に記載の方法。
- 前記量が、約0.25〜1.5g/日である、請求項5に記載の方法。
- 前記量が、約0.5〜1.0g/日である、請求項5に記載の方法。
- 前記DFMOが、経口投与される、請求項41に記載の方法。
- 第2の治療をさらに含む、請求項41に記載の方法。
- 前記第2の治療が、ジヒドロキシテストステロンを減少させることを包含する、請求項57に記載の方法。
- 前記第2の治療が、食事性抗酸化薬を含む、請求項57に記載の方法。
- 前記食事性抗酸化薬が、セレン、ビタミンE、またはこれらの両方である、請求項59に記載の方法。
- 前記第2の治療が、レチノイドを含む、請求項57に記載の方法。
- 前記第2の治療が、前立腺切除を包含する、請求項57に記載の方法。
- 前記第2の治療が、低ポリアミン食を含む、請求項57に記載の方法。
- 前記第2の治療が、ポリアミンオキシダーゼのインヒビターを含む、請求項57に記載の方法。
- 前記第2の治療が、照射を包含する、請求項57に記載の方法。
- 前記第2の治療が、ホルモン療法を包含する、請求項57に記載の方法。
- 前記ホルモン療法が、ルペロンを使用することを包含する、請求項66に記載の方法。
- 前記ホルモン療法が、ゾルデックスを使用することを包含する、請求項66に記載の方法。
- 前記ホルモン療法が、フルタミドを使用することを包含する、請求項66に記載の方法。
- 前記ホルモン療法が、カサデックスを使用することを包含する、請求項66に記載の方法。
- 前記スペルミンレベルが、減少される、請求項41に記載の方法。
- 前記スペルミジンレベルが、減少される、請求項41に記載の方法。
- 前記スペルミジン/スペルミン比もまた、減少される、請求項41に記載の方法。
- 診断をさらに包含する、請求項41に記載の方法。
- 前記診断が、前立腺特異抗原(PSA)の分析を含む、請求項74に記載の方法。
- 前記診断が、前立腺生検を包含する、請求項74に記載の方法。
- 前記診断が、直腸検査を包含する、請求項74に記載の方法。
- 前記診断が、PSA分析および直腸検査を包含する、請求項74に記載の方法。
- ヒト被験体における前立腺癌の発症を阻害するための方法であって、該被験体の前立腺細胞におけるスペルミンレベルおよび/またはスペルミジンレベルを減少させるために十分な量および期間、該被験体にDFMOを投与する工程を包含する、方法。
- 原発性前立腺癌を有するヒト被験体において前立腺癌転移を阻害するための方法であって、該被験体の前立腺細胞におけるスペルミンレベルおよび/またはスペルミジンレベルを減少させるために十分な量および期間、該被験体にDFMOを投与する工程を包含する、方法。
- ステージ1またはステージ2の前立腺癌を有するヒト被験体において前立腺癌の進行を阻害するための方法であって、該被験体の前立腺細胞におけるスペルミンレベルおよび/またはスペルミジンレベルを減少させるために十分な量および期間、該被験体にDFMOを投与する工程を包含する、方法。
- ヒトの切除不可能な前立腺癌腫瘍を切除可能にする方法であって、該被験体の前立腺細胞におけるスペルミンレベルおよび/またはスペルミジンレベルを減少させるために十分な量および期間、該被験体にDFMOを投与する工程を包含する、方法。
- ヒト被験体における前立腺癌腫瘍の増殖を阻害する方法であって、該被験体の前立腺細胞におけるスペルミンレベルおよび/またはスペルミジンレベルを減少させるために十分な量および期間、該被験体にDFMOを投与する工程を包含する、方法。
- 良性前立腺過形成に罹患しているヒト該被験体において良性前立腺過形成を処置する方法であって、該過形成細胞により生成されるポリアミンの量を安定化させるかまたは減少させるために十分な量および期間、該被験体にDFMOを投与する工程を包含し、該ポリアミンは、スペルミン、スペルミジン、またはスペルミンとスペルミジンとの組み合わせである、方法。
- 前記ポリアミンが、スペルミンである、請求項84に記載の方法。
- 前記ポリアミンが、スペルミジンである、請求項84に記載の方法。
- 前記過形成細胞により生成される前立腺特異抗原(PSA)のレベルもまた、DFMOを用いた処置により安定化されるかまたは減少される、請求項84に記載の方法。
- 良性前立腺過形成に罹患しているヒト被験体において良性前立腺過形成を処置するための方法であって、該過形成細胞により生成されるポリアミンレベルの減少または安定化により測定される、治療上有効な量のDFMOを、十分な期間の間、治療上有効な量の第2の治療薬剤とともに投与する工程を包含し、該第2の治療薬剤は、α−1アドレナリン作用性レセプター遮断薬、5−α−レダクターゼ酵素遮断薬、およびα−1アドレナリン作用性レセプター遮断薬と5−α−レダクターゼ酵素遮断薬との組み合わせから、選択される、方法。
- 前記ポリアミンが、スペルミンである、請求項88に記載の方法。
- 前記ポリアミンが、スペルミジンである、請求項88に記載の方法。
- 前記第2の薬剤が、α−1アドレナリン作用性レセプター遮断薬である、請求項88に記載の方法。
- 前記α−1アドレナリン作用性レセプター遮断薬が、テラゾシン、ドキサゾシン、タムスロシン、プラジシン、またはアルフゾシンである、請求項91に記載の方法。
- 前記第2の薬剤が、5−α−レダクターゼ酵素遮断薬である、請求項88に記載の方法。
- 前記5−α−レダクターゼ酵素遮断薬が、フィナステリドである、請求項93に記載の方法。
- 前記第2の薬剤が、ホルモンである、請求項88に記載の方法。
- 良性前立腺過形成に罹患しているヒト被験体において良性前立腺過形成を処置するための方法であって、該過形成細胞により生成されるポリアミンレベルの減少または安定化により測定される、治療上有効な量のDFMOを、十分な期間にわたって、治療上有効な量のノコギリパルメット抽出物と一緒に投与する工程を包含する、方法。
- 前記ポリアミンが、スペルミンである、請求項96に記載の方法。
- 前記ポリアミンが、スペルミジンである、請求項96に記載の方法。
- スペルミンレベルおよびスペルミジンレベルの両方が、減少されるかまたは安定化される、請求項96に記載の方法。
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