JP2004502721A - Dnaワクチン送達のためのミクロスフェアおよびアジュバント - Google Patents
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Abstract
1つの系における、高いカプセル化率、迅速な放出速度、およびDNAの超らせん形態における保存の組み合わせを提供する、核酸送達系が提供される。核酸送達系は、生分解性ミクロスフェア中にカプセル化された、デオキシリボ核酸(DNA)などの核酸分子を含み、DNAワクチンの送達に特に適している。本発明は、核酸分子をミクロスフェア中にカプセル化するための方法をさらに提供する。本発明はさらに、本発明の方法によって産生されたミクロスフェア中にカプセル化された核酸分子を含む組成物、および核酸分子を被験者に送達するための方法を提供する。本発明は、アミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)を含む、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアの免疫刺激有効性を調節するためのアジュバントをさらに提供する。本発明はまた、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアの免疫刺激有効性を調節するための方法を提供する。
Description
【0001】
本出願は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、2000年7月7日に出願された、米国特許仮出願第60/216,604号の恩典を主張する。
【0002】
本出願を通して、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、本発明が属する技術の様子をより完全に説明するために、その全体が本明細書において参照として組み入れられる。
【0003】
発明の技術分野
本発明は、ワクチンの送達のために使用できる製剤、組成物および方法に関連する。とりわけ、本発明は、より効率的な、およびより有効な、DNAワクチンの送達のためのミクロスフェアおよびアジュバントに関連する。
【0004】
発明の背景
癌および慢性感染性疾患の予防および治療のために、新しいワクチンが開発されつつある。最も有効なワクチンは、Tヘルパー反応および抗体に加えて、CTL反応を惹起すると考えられうる。DNAワクチンは、ヒトにおける使用のためにはさらなる改善が必要であるが、マウスにおけるCTL反応の発生の際に十分に作用することが見出されている。DNAワクチン送達のためのビヒクル(vehicle)としてミクロスフェアを開発する試みは、カプセル化率の低いこと、およびDNAのニック形成、および付随する超らせん構造の喪失によって制限されてきた。これらの制限を克服するための努力により、放出速度(kinetics)が遅すぎ、カプセル化の間にDNAの分解が起こってしまうようなミクロスフェアが作製された。
【0005】
より効率的でより効果的なDNAワクチン送達手段、特に、高いカプセル化率を、DNA超らせんの保存および迅速な放出速度と組み合わせる方法が、なおも必要とされている。
【0006】
発明の概要
本発明は、1つの系において、驚くべきことに、高いカプセル化率、迅速な放出速度、およびDNAの超らせん形態における保存の組み合わせを提供する、核酸送達系を提供する。本発明の核酸送達系は、生分解性のミクロスフェア中にカプセル化された、デオキシリボ核酸(DNA)などの核酸分子を含む。好ましい態様において、ミクロスフェア中の少なくとも50%のDNAが超らせんDNAを含み、少なくとも50%のDNAが、約37℃において7日後にミクロスフェアから放出される。ある態様において、少なくとも70%のDNAが、約37℃において7日後にミクロスフェアから放出される。好ましくは、ミクロスフェアは、少なくとも約40%のカプセル化率を有する。ある態様において、少なくとも約90%のミクロスフェアは、直径約1μm〜約10μmである。このサイズ範囲内のミクロスフェアは、抗原提示細胞によって貪食されるのに十分適しており、これにより有効なT細胞刺激がもたらされる。
【0007】
本発明のミクロスフェアは、好ましくは、ポリ(ラクト−コ−グリコリド)(PLG)、ポリ(ラクチド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、および/またはそれらの共重合体などの生分解性重合体を含む。または、ミクロスフェアは、その他の壁形成材料を含み得る。適した壁形成材料には、これらに限定されるわけではないが、ポリ(ブタジエン)などのポリ(ジエン);ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリ(アルケン);ポリ(アクリル酸) などのポリ(アクリル);ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート) などのポリ(メタクリル);ポリ(ビニルエーテル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(ビニルケトン);ポリ(塩化ビニル) などのポリ(ハロゲン化ビニル);ポリ(ビニルニトリル);ポリ(酢酸ビニル) などのポリ(ビニルエステル);ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(5−メチル−2−ビニルピリジン) などのポリ(ビニルピリジン);ポリ(スチレン);ポリ(カーボネート);ポリ(エステル);ポリ(オルトエステル);ポリ(エステルアミド);ポリ(無水物);ポリ(ウレタン);ポリ(アミド);メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースエーテル;酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース(cellulose acetate phthalate)、酢酸酪酸セルロース(cellulose acetate butyrate)などのセルロースエステル;多糖類、タンパク質、ゼラチン、デンプン、ゴム、樹脂などが含まれる。これらの物質を、単独で、物理的混合物(混成物)として、または共重合体として使用してよい。核酸送達系は、アジュバント、好ましくはアミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)をさらに含み得る。
【0008】
本発明の核酸送達系は、DNAワクチンの送達のために特に適している。好ましい態様において、ミクロスフェア中にカプセル化されるDNAは、癌または感染性疾患に関連する抗原をコードする。ある態様において、抗原は、自己免疫疾患に関連する内因性の抗原に由来する。癌の例には、これらに限定されるわけではないが、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮癌、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、神経膠星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、網膜芽腫、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、およびH鎖病が含まれる。癌抗原の例の一つは、乳癌抗原であるHer−2/neuである。
【0009】
感染性疾患に関連する抗原は、病原体、ウイルス、細菌、真菌または寄生生物を含む、様々な感染性物質のいずれかに由来してよい。ウイルスの例には、これらに限定されるわけではないが、B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、水痘ウイルス、アデノウイルス、単純疱疹ウイルスI型またはII型、牛疫ウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、RSウイルス、パピローマウイルス、パポーバウイルス、サイトメガロウイルス、echinovirus、アルボウイルス、ハンタウイルス、コクサッキーウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス、ヒト免疫不全ウイルスI型またはII型が含まれる。細菌の例には、これらに限定されるわけではないが、結核菌(M. tuberculosis)、マイコバクテリウム属、マイコプラズマ属、ナイセリア属およびレジオネラ属が含まれる。寄生生物の例には、これらに限定されるわけではないが、リケッチア属およびクラミジア属が含まれる。感染性疾患抗原のある例は、結核抗原である、TbH9(Mtb39Aとしても知られる)である。その他の結核抗原には、これらに限定されるわけではないが、DPV(Mtb8.4としても知られる)、38−1、Mtb41、Mtb40、Mtb32A、Mtb9.9A、Mtb9.8、Mtb16、Mtb72f、Mtb59f、Mtb88f、Mtb71f、Mtb46fおよびMtb31f(「f」とは、それが融合体または2つ以上のタンパク質であることを指す)が含まれる。
【0010】
本発明は、核酸分子をミクロスフェア中にカプセル化するための方法をさらに提供する。本方法は、以下の段階を含む:重合体を溶媒に溶解させ、重合体溶液を形成する段階;核酸分子を含む水溶液を重合体溶液に加え、一次乳剤を形成する段階;一次乳剤を均質化する段階;一次乳剤を、安定化剤を含む加工媒質と混合し、二次乳剤を形成する段階;および溶媒を二次乳剤から抽出し、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアを形成する段階。典型的に、これらの方法の段階は、氷上で、好ましくは、凍結温度より高く37℃未満に温度を維持しながら実行される。ある態様において、溶液および媒質は約2℃〜約35℃に維持される。その他の態様において、溶液および媒質は約4℃〜約25℃に維持される。ミクロスフェア調製の一次乳化段階および二次乳化段階中に、材料を37℃未満に保つことにより、DNAのニック形成を減少できる。より多くのDNAを超らせん形態に保存することにより、細胞のより効率的なトランスフェクションが容易になる。本方法は、その後の、ミクロスフェアの洗浄段階、凍結段階および凍結乾燥段階をさらに含み得る。
【0011】
好ましい態様において、重合体はPLGを含む。いくつかの態様において、PLGはエステル末端基またはカルボン酸末端基を含むことができ、約4 kDa〜約120 kDaの分子量、または好ましくは、約8 kDa〜約65 kDaの分子量を有する。溶媒は例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、または酢酸エチルを含み得る。いくつかの態様において、重合体溶液は、陽イオン脂質および/またはMPLなどのアジュバントをさらに含む。安定化剤の例には、これらに限定されるわけではないが、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、またはそれらの混合物が含まれる。安定化剤は選択的に、陽イオン脂質をさらに含み得る。いくつかの態様において、安定化剤は、約0%〜約10%の加工媒質、または好ましくは、約1%〜約5%の加工媒質を含む。いくつかの態様において、溶媒は、約0.001%〜約0.5%の内部水容積を含み、かつ/または、水溶液は、約0%〜約75%(v/v)のエタノール含量を含む。
【0012】
核酸分子は、好ましくはDNAを含む。ある態様において、水溶液は、約0.2 mg/ml〜約12 mg/mlのDNAを含む。水溶液は、選択的に、BSA、HSAもしくは糖などの安定化剤、またはQS21などのアジュバントをさらに含み得る。ある態様において、DNAは、約2 kb〜約12 kbのプラスミド、好ましくは約3 kb〜約9 kbのプラスミドを含む。
【0013】
好ましくは、少なくとも50%のDNAは、抽出段階を通して、より好ましくは、その後の、凍結乾燥などの全ての段階を通して、超らせん構造を保持する。カプセル化率が少なくとも約40%であり、かつ/または、ミクロスフェアが、37℃での水性環境のような望ましい送達環境との接触後約7日以内に、少なくとも約50%の核酸分子を放出するような方法もまた好ましい。より好ましい態様において、ミクロスフェアは、少なくとも約50%の核酸分子を約4日以内に放出する。少なくとも約90%のミクロスフェアが、約1μm〜約10μmであるような方法もまた好ましい。
【0014】
本発明は、本発明の方法によって産生されたミクロスフェア中にカプセル化された核酸分子を含む組成物をさらに提供する。好ましくは、組成物は、アミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)などのアジュバントをさらに含む。被験者に核酸分子を送達するための方法、被験者において免疫応答を惹起するための方法、および被験者において癌または感染性疾患を治療するおよび/または防御するための方法もまた提供される。これらの方法は、被験者に本発明の核酸送達系または組成物を投与する段階を含む。
【0015】
本発明は、アミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)を含む、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアの免疫刺激有効性を調節するためのアジュバントをさらに提供する。好ましい態様において、AGPは、水性製剤を含む。AGPアジュバントの例には、これらに限定されるわけではないが、517、527、547、557および568が含まれる。本発明はまた、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアの免疫刺激有効性を調節するための方法を提供する。本方法は、核酸分子をカプセル化したミクロスフェアの投与に対するアジュバントとしてAGPを投与する段階を含む。AGPを、ミクロスフェアと同時に投与することができる、または、ミクロスフェアの投与の前もしくは後に投与することができる。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、1つの系において、驚くべきことに、高いカプセル化率、迅速な放出速度、およびDNAの超らせん形態における保存の組み合せを提供する核酸送達系を提供する。本発明の核酸送達系は、生分解性のミクロスフェア中にカプセル化された、デオキシリボ核酸(DNA)などの核酸分子を含む。本発明に従って調製されたミクロスフェアは、インビトロにおいて、37℃で48時間後に、それらの含量の33%を上回って、4日後に50%を上回って、および7日後に70%を上回って放出することが示された。加えて、これらのミクロスフェアは、超らせんDNA対ニックDNAの高い比率を維持する一方、約40%〜約80%のカプセル化率を有する。本発明のミクロスフェアは、直径約1μm〜約10μmである。このサイズ範囲内のミクロスフェアは、抗原提示細胞によって貪食されるのに十分適しており、有効なT細胞刺激をもたらす。本発明の核酸送達系は、被験者において免疫応答を惹起するために、1つまたは複数の関心対象の抗原をコードする核酸分子を送達するために使用できる。
【0017】
本発明は、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアの免疫刺激有効性を調節するためのアジュバントをさらに提供する。アジュバントは、ミクロスフェア中にカプセル化されたDNAによってコードされる抗原に対して強い細胞性免疫応答を提供する、アミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)を含む。本発明はまた、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアの免疫刺激有効性を調節するための方法を提供する。本方法は、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアの投与に対するアジュバントとしてAGPを投与する段階を含む。
【0018】
定義
本出願において使用される全ての科学用語および技術用語は、特に指定されない限り、当技術分野において一般的に使用される意味を有する。本出願において使用される以下の用語は、所定の意味を有する。
【0019】
「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は、単鎖または二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの重合体を指し、かつ特に限定されない限り、天然のヌクレオチドと同様の様式で核酸にハイブリダイズする天然ヌクレオチドの既知の類似体を含む。
【0020】
本明細書において使用される「免疫応答」とは、抗体の産生、IFN−γなどの免疫調節因子の産生、およびCTL活性の誘導を含む。免疫応答の惹起とは、免疫応答の開始、刺激または増強を含む。
【0021】
本明細書において使用される、ある状態または疾患「を予防する」または「に対して防御する」とは、その状態または疾患の発症または進行を妨げる、軽減させる、または遅延させることを意味する。
【0022】
本明細書において使用される「抗原提示細胞」または「APC」とは、抗原を処理し、およびリンパ球に対して提示できる細胞を意味する。APCの例には、これらに限定されるわけではないが、マクロファージ、ランゲルハンス樹状細胞、濾胞内樹状細胞、B細胞、単球、線維芽細胞および線維細胞が含まれる。樹状細胞は、好ましい種類の抗原提示細胞である。樹状細胞は、多くの非リンパ系組織において見出されているが、求心性のリンパ経由または血流経由でリンパ系器官のT細胞依存性領域まで移動できる。樹状細胞は、非リンパ系器官においては、ランゲルハンス細胞および間質樹状細胞を含む。リンパおよび血液においては、求心性のリンパヴェール(veiled)細胞および血液樹状細胞を各々含む。リンパ系器官においては、リンパ系樹状細胞および交互嵌合(interdigitating)細胞を含む。
【0023】
本明細書において使用される、あるエピトープを提示するための「修飾型」とは、天然または組み換え的な方法によって、あるエピトープを提示するように操作された、抗原提示細胞(APC)を指す。例えば、単独で、もしくは混合物の一部として、単離された抗原に曝露することによって、ペプチド充填によって、または、1つもしくは複数のエピトープを含むポリペプチドを発現するようにAPCを遺伝学的に改変することによって、APCを修飾することができる。
【0024】
本明細書において使用される「薬学的に許容される塩」とは、親化合物の望ましい生物活性を維持し、望ましくない毒性的影響を全く与えない塩を指す。そのような塩類の例には、これらに限定されるわけではないが、(a)例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸などの無機酸で形成される酸付加塩類;および、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモ酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸などの有機酸で形成される塩類;(b)亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、カドミウムなどの多価金属陽イオンを有する塩類;または(c)N,N’−ジベンジルエチレンジアミンもしくはエチレンジアミンから形成される有機陽イオンで形成される塩類;または(d)例えば亜鉛タンニン酸塩など、(a)および(b)もしくは(c)の組み合わせなどが含まれる。好ましい酸付加塩類は、トリフルオロ酢酸塩および酢酸塩である。
【0025】
本明細書において使用される「薬学的に許容される担体」とは、活性成分と組み合わされた場合に、その成分の生物活性を維持させ、被験者の免疫系とは非反応性である、任意の材料を含む。例としては、これらに限定されるわけではないが、リン酸緩衝生理食塩水、水、水中油型乳剤などの乳剤、および様々な種類の湿潤剤などの、任意の標準薬学的担体が挙げられる。エアロゾルまたは非経口投与のための好ましい希釈剤は、リン酸緩衝生理食塩水または標準(0.9%)生理食塩水である。
【0026】
そのような担体を含む組成物は、既知の従来法によって製剤化される(例えば、「レミントンの薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、第43章、第14版、Mack Publishing Co、Easton PA 18042、USAを参照のこと)。
【0027】
本明細書において使用される「アジュバント」には、免疫応答の刺激を容易にするために当技術分野において一般的に使用されるアジュバントが含まれる。アジュバントの例には、これらに限定されるわけではないが、ヘルパーペプチド;水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)またはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩類;フロイント不完全アジュバントおよびフロイント完全アジュバント(Difco Laboratories、Detroit、MI);メルクアジュバント65(Merck Adjuvant 65)(Merck and Company, Inc.、Rahway、NJ);AS−2(Smith−Kline Beecham);QS−21(Aquilla);MPL(商標)免疫刺激剤または3d−MPL(Corixa Corporation);LEIF;カルシウム、鉄または亜鉛の塩類;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖類;陽イオン性または陰イオン性に誘導された多糖類;ポリホスファゲン;生分解性のミクロスフェア;モノホスホリルリピドAおよびquil A;ムラミルトリペプチドホスファチジルエタノールアミン、または、サイトカイン(例えばGM−CSFまたはインターロイキン−2、−7もしくは−12)および免疫刺激性DNA配列を含む免疫刺激複合体が挙げられる。ポリヌクレオチドワクチンの使用を伴うようないくつかの態様において、ヘルパーペプチドまたはサイトカインなどのアジュバントを、そのアジュバントをコードするポリヌクレオチドを経て提供することができる。
【0028】
本明細書において使用される「ある(aまたはan)」とは、他に明らかに示されない限り、少なくとも1つを意味する。
【0029】
核酸送達系
本発明は、生分解性のミクロスフェア中にカプセル化されたデオキシリボ核酸(DNA)を含む、核酸送達系を提供する。好ましい態様において、ミクロスフェア中の少なくとも50%のDNAが超らせんDNAを含み、かつ少なくとも50%のDNAが、約37℃において7日後にミクロスフェアから放出される。いくつかの態様において、少なくとも70%のDNAが、約37℃において7日後にミクロスフェアから放出される。好ましくは、ミクロスフェアは少なくとも約40%のカプセル化率を有する。ある態様において、少なくとも約90%のミクロスフェアが、直径約1μm〜約10μmである。このサイズ範囲内のミクロスフェアは、抗原提示細胞によって貪食されるのに十分適しており、有効なT細胞刺激をもたらす。
【0030】
本発明のミクロスフェアは、好ましくは、ポリ(ラクト−コ−グリコリド)(PLG)、ポリ(ラクチド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、および/またはそれらの共重合体などの生分解性重合体を含む。または、ミクロスフェアは、その他の壁形成材料を含み得る。適した壁形成材料には、これらに限定されるわけではないが、ポリ(ブタジエン) などのポリ(ジエン);ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリ(アルケン);ポリ(アクリル酸) などのポリ(アクリル);ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート) などのポリ(メタクリル);ポリ(ビニルエーテル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(ビニルケトン);ポリ(塩化ビニル) などのポリ(ハロゲン化ビニル);ポリ(ビニルニトリル);ポリ(酢酸ビニル) などのポリ(ビニルエステル);ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(5−メチル−2−ビニルピリジン) などのポリ(ビニルピリジン);ポリ(スチレン);ポリ(カーボネート);ポリ(エステル);ポリ(オルトエステル);ポリ(エステルアミド);ポリ(無水物);ポリ(ウレタン);ポリ(アミド);メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースエーテル;酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸酪酸セルロースなどのセルロースエステル;多糖類、タンパク質、ゼラチン、デンプン、ゴム、樹脂などが含まれる。これらの材料を、単独で、物理的混合物(混成物)として、または共重合体として使用してよい。核酸送達系は、アジュバントを、好ましくはアミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)をさらに含み得る。
【0031】
ミクロスフェア製剤
本発明は、核酸分子をミクロスフェア中にカプセル化するための方法を提供する。本方法は、重合体を溶媒に溶解させ、重合体溶液を形成する段階;核酸分子を含む水溶液を重合体溶液に添加し、一次乳剤を形成する段階;一次乳剤を均質化する段階;一次乳剤を、安定化剤を含む加工媒質と混合し、二次乳剤を形成する段階;および二次乳剤から溶媒を抽出し、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアを形成する段階を含む。典型的には、これらの方法の段階は、氷上で、好ましくは凍結温度より高く37℃未満に温度を維持しながら実行される。ある態様において、溶液および媒質は約2℃〜約35℃に維持される。別の態様において、溶液および媒質は、約4℃〜約25℃に維持される。ミクロスフェア調製の一次乳化段階および二次乳化段階の間、材料を37℃より低く維持することにより、DNAのニック形成を減少できる。より多くのDNAを超らせん形態に保存することにより、細胞のより効率的なトランスフェクションが容易になる。本方法は、その後のミクロスフェアの洗浄段階、凍結段階および凍結乾燥段階をさらに含み得る。
【0032】
好ましい態様において、重合体はPLGを含む。いくつかの態様において、PLGはエステル末端基またはカルボン酸末端基を含むことができ、約4 kDa〜約120 kDaの分子量、または好ましくは、約8 kDa〜約65 kDaの分子量を有する。溶媒は例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、または酢酸エチルを含み得る。いくつかの態様において、重合体溶液は、陽イオン脂質および/またはMPLなどのアジュバントをさらに含む。安定化剤の例には、これらに限定されるわけではないが、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、またはそれらの混合物が含まれる。安定化剤は選択的に、陽イオン脂質をさらに含み得る。いくつかの態様において、安定化剤は、約0%〜約10%の加工媒質、または好ましくは、約1%〜約5%の加工媒質を含む。いくつかの態様において、溶媒は、約0.001%〜約0.5%の内部水容積を含み、かつ/または、水溶液は、約0%〜約75%(v/v)のエタノール含量を含む。
【0033】
核酸分子は、好ましくはDNAを含む。ある態様において、水溶液は、約0.2 mg/ml〜約12 mg/mlのDNAを含む。水溶液は、選択的に、BSA、HSAもしくは糖などの安定化剤、またはQS21などのアジュバントをさらに含み得る。ある態様において、DNAは、約2 kb〜約12 kbのプラスミド、好ましくは約3 kb〜約9 kbのプラスミドを含む。
【0034】
好ましくは、少なくとも50%のDNAは、抽出段階を通して、より好ましくは、その後の、凍結乾燥などの全ての段階を通して、超らせん構造を保持する。カプセル化率が少なくとも約40%であり、かつ/または、ミクロスフェアが、37℃での水性環境のような望ましい送達環境との接触後約7日以内に、少なくとも約50%の核酸分子を放出するような方法もまた好ましい。より好ましい態様において、ミクロスフェアは、少なくとも約50%の核酸分子を約4日以内に放出する。少なくとも約90%のミクロスフェアが、約1μm〜約10μmであるような方法もまた好ましい。
【0035】
核酸分子のような水溶性の薬剤は、ラクチド/グリコリド共重合体のような疎水性壁形成材料を通して拡散しないため、徐放性適用のためにこれらの薬剤が外へ拡散できるよう、ミクロスフェア膜に孔(pore)を作製しなければならない。得られる多孔性には幾つかの要因が影響を与える。カプセル化される薬剤の量は、ミクロスフェアの多孔性に影響を及ぼす。より大きな薬物領域がミクロスフェア内に存在するため、明らかに、より多くの量を充填されたミクロスフェア(即ち、約20重量%を上回り、かつ好ましくは20重量%〜80重量%の間)は、少量の薬剤(即ち、約20重量%未満)を含むミクロスフェアよりも多孔性である。ミクロスフェアに取り込むことができる薬剤の壁形成材料に対する比率は、0.1%くらいの低さから80%くらいの高さまで可能である。
【0036】
壁形成材料を溶解させるのに使用される溶媒もまた、膜の多孔性に影響を与えると考えられる。酢酸エチルなどの溶媒から調製されるミクロスフェアは、クロロホルムから調製されるミクロスフェアより多孔性のものと考えられる。これは、酢酸エチル中ではクロロホルム中よりも水の可溶性が高いことに起因する。より具体的には、乳化段階中は、加工媒質が溶媒で飽和されるため、溶媒は微小滴(microdroplet)から除去されない。しかし、本過程の乳化段階中に、水を微小滴の溶媒中に溶解させることは可能である。適切な溶媒または共溶媒を選択することにより、微小滴中に溶解すると考えられる連続的な加工媒質量を調節でき、これはミクロスフェアの膜の最終的な多孔性および内部構造に影響すると考えられる。
【0037】
膜の多孔性に影響すると考えられるその他の要因は、溶媒中における壁材料/賦形剤の初期濃度である。溶媒中の壁材料が高濃度であれば、壁材料/賦形剤が低濃度の場合よりも、多孔性のより低い膜が生じる。また、溶媒中の壁材料/賦形剤が高濃度であれば、溶液の粘度がより高くなるため、水溶性化合物のカプセル化率が改善される。一般に、溶媒中の壁形成材料/賦形剤の濃度は、使用される壁形成材料および溶媒の分子量などの、壁材料/賦形剤の物理的/化学的な特性に依存して、約3%〜約40%の範囲にわたると考えられる。
【0038】
組成物
本発明は、核酸分子を送達するために有用な組成物を提供する。核酸分子は、癌または感染性疾患に関連する抗原をコードするものを含むことができ、癌または感染性疾患を治療および予防するための組成物を提供する。ある態様において、組成物は薬学的組成物である。組成物は、癌または感染性疾患に関連する1つまたは複数の抗原をコードまたは提示する、治療的または予防的有効量のポリヌクレオチド、組み換えウイルス、APCまたは免疫細胞を含み得る。有効な量とは、例えばT細胞を活性化することにより、免疫応答を惹起するまたは増大させるのに十分な量である。T細胞の活性化の測定法の一つは、下記の実施例において記載されるような、細胞傷害性アッセイまたはインターフェロン−γ放出アッセイである。いくつかの態様において、組成物はワクチンである。
【0039】
いくつかの態様において、治療または予防されるべき状態とは、癌または前癌状態(例えば、過形成、化生(metaplasma)、異形成)である。癌の例には、これらに限定されるわけではないが、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮癌、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、神経膠星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、網膜芽腫、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、およびH鎖病が含まれる。
【0040】
いくつかの態様において、治療または予防されるべき状態とは、感染性疾患である。感染性疾患の例には、これらに限定されるわけではないが、病原体、ウイルス、細菌、真菌または寄生生物への感染が含まれる。ウイルスの例には、これらに限定されるわけではないが、B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、水痘ウイルス、アデノウイルス、単純疱疹ウイルスI型またはII型、牛疫ウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、RSウイルス、パピローマウイルス、パポーバウイルス、サイトメガロウイルス、echinovirus、アルボウイルス、ハンタウイルス、コクサッキーウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス、ヒト免疫不全ウイルスI型またはII型が含まれる。細菌の例には、これらに限定されるわけではないが、結核菌(M. tuberculosis)、マイコバクテリウム属、マイコプラズマ属、ナイセリア属およびレジオネラ属が含まれる。寄生生物の例には、これらに限定されるわけではないが、リケッチア属およびクラミジア属が含まれる。
【0041】
組成物は選択的に、薬学的に許容される担体などの担体を含み得る。薬学的に許容される担体は、部分的に、投与される特定の組成物によって、および組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定される。したがって、本発明の薬学的組成物には広範な種類の最適な製剤が存在する。製剤は、例えば(関節における)関節内、静脈内、筋内、皮内、腹腔内、および皮下経路などの、非経口投与に適しており、担体は、抗酸化薬、緩衝液、静菌薬を含み得る水性等張滅菌注射溶液、および対象となるレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質、および懸濁化剤、可溶化剤、粘稠化剤、安定化剤、保存剤、リポソーム、ミクロスフェアおよび乳剤を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁液を含む。
【0042】
本発明の組成物は、1つまたは複数のアジュバントをさらに含み得る。アジュバントの例は、これらに限定されるわけではないが、ヘルパーペプチド、ミョウバン、フロイントのムラミルトリペプチドホスファチジルエタノールアミンまたはサイトカインを含む免疫刺激複合体を含む。ポリヌクレオチドワクチンの使用を伴うようないくつかの態様において、ヘルパーペプチドまたはサイトカインなどのアジュバントを、アジュバントをコードするポリヌクレオチドを経て提供できる。好ましいアジュバントはAGPである。
【0043】
ワクチン調製物については、例えばM.F.パウエル(Powell)およびM.J.ニューマン(Newman)編、「ワクチン設計(サブユニットおよびアジュバントのアプローチ)(Vaccine Design(the subunit and adjuvant approach))」、プレナム出版(Plenum Press)(NY、1995)において概要が記載されている。本発明の範囲内の薬学的組成物およびワクチンはまた、生物学的に活性または不活性でありうるその他の化合物を含み得る。
【0044】
担体として使用するための生分解性のミクロスフェア(例えば、ポリ乳酸塩ポリグリコール酸塩(polylactate polyglycolate))は、例えば米国特許第4,897,268号;同第5,075,109号;同第5,928,647号;同第5,811,128号;同第5,820,883号;同第5,853,763号;同第5,814,344号;同第5,407,609号;および同第5,942,252号において開示されており、その各々の開示は参照として本明細書に組み入れられている。特に米国特許第4,897,268号および同第5,407,609号などの、これらの特許は、様々な使用のための生分解性のミクロスフェアの産生について説明しているが、DNA送達のための、ミクロスフェアの製剤化および特性の最適化については開示していない。
【0045】
そのような組成物はまた、緩衝液(例えば、中性緩衝生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水)、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、ショ糖もしくはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチド、もしくはグリシンなどのアミノ酸、抗酸化薬、EDTAもしくはグルタチオンなどのキレート剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、および/または保存剤を含み得る。または、本発明の組成物は、凍結乾燥剤として製剤化されうる。化合物はまた、既知の技術を用いてリポソーム内にカプセル化されうる。
【0046】
アジュバント
本発明は、DNAワクチンと共に使用するための、特に、生分解性のミクロスフェア中にカプセル化されたDNAワクチンと共に使用するためのアジュバントをさらに提供する。そのようなアジュバントは、その開示の全体が参照として本明細書に組み入れられる、係属中の米国特許出願第08/853,826号および同第09/074,720号において記載されるものなどのように、アミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)を含む。
【0047】
本発明の組成物は、AGPアジュバントおよび/または付加的なアジュバントを含み得る。ほとんどのアジュバントは、抗原を急速な異化作用から保護するように設計された、水酸化アルミニウムまたはワセリンなどの物質、および、リピドAや、百日咳菌または結核菌(M. tuberculosis)由来のタンパク質などの免疫応答の刺激物質を含む。適したアジュバントは、例えば、フロイント不完全アジュバントおよびフロイント完全アジュバント(Difco Laboratories、Detroit、MI);メルクアジュバント65(Merck Adjuvant 65)(Merck and Company, Inc.、Rahway、NJ);水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)またはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩類;カルシウム、鉄または亜鉛の塩類;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖類;陽イオン性または陰イオン性に誘導された多糖類;ポリホスファゲン生分解性ミクロスフェア;モノホスホリルリピドAおよびquilAとして市販されている。GM CSFまたはインターロイキン−2、−7もしくは−12などのサイトカインもまた、アジュバントとして使用することができる。
【0048】
本明細書において提供されるワクチン内において、アジュバント組成物は好ましくは、主にTh1型の免疫応答を誘導するように設計される。高レベルのTh1型サイトカイン(例えば、IFN−γ、IL−2およびIL−12)は、投与された抗原に対する、細胞仲介型免疫応答の誘導を促進する傾向がある。対照的に、高レベルのTh2型サイトカイン(例えば、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10およびTNF−β)は、液性免疫応答の誘導を促進する傾向がある。本明細書において提供されるようなワクチンの適用後、患者は、Th1型およびTh2型の反応を含む免疫応答を確立すると考えられる。反応が主にTh1型であるような、ある好ましい態様内においては、Th1型サイトカインのレベルがTh2型サイトカインのレベルよりも著しく上昇する。これらのサイトカインのレベルは、標準アッセイを用いて容易に評価されうる。サイトカインファミリーの概要については、モスマン(Mosmann)およびコフマン(Coffman)、1989、Ann.Rev.Immunol. 7:145〜173を参照のこと。
【0049】
Th1型反応を主に惹起する際に使用するための好ましいアジュバントには、例えば、モノホスホリルリピドA、好ましくは3−デ−O−アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)の、アルミニウム塩との組み合わせが含まれる。MPLアジュバントは、リビイムノケムリサーチ社(RiBi ImmunoChem Research Inc.)(Hamilton、MT)から入手可能である(米国特許第4,436,727号;同第4,877,611号;同第4,866,034号および同第4,912,094号を参照のこと)。(CpGジヌクレオチドがメチル化されていない)CpG含有オリゴヌクレオチドもまた、主にTh1反応を誘導する。そのようなオリゴヌクレオチドはよく知られており、例えば、国際公開公報第96/02555号において記載されている。その他の好ましいアジュバントは、単独で、または他のアジュバントと組み合わせて使用されうる、サポニン、好ましくはQS21である。例えば、増強系は、国際公開公報第94/00153号において記載されたQS21と3D−MPLとの組み合わせのような、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体との組み合せを含む、または、国際公開公報第96/33739号において記載されるた、QS21がコレステロールによって抑制されるような、より反応原性(reactogenic)の低い組成物との組み合わせを含む。その他の好ましい製剤は、水中油型乳剤およびトコフェロールを含む。水中油型乳剤中のQS21、3D−MPLおよびトコフェロールを含む、特に強力なアジュバント製剤は、国際公開公報第95/17210号において記載される。使用されうるその他のアジュバントは、AS−2(Smith−Kline Beecham)である。本明細書において提供される任意のワクチンが、抗原、免疫応答増強剤および適した担体または賦形剤の組み合わせを生じるような既知の方法を用いて調製されうる。
【0050】
本明細書において記載される組成物を、徐放性製剤(即ち、投与後に化合物の遅延型の放出をもたらす、カプセルまたはスポンジなどの製剤)の一部として投与できる。そのような製剤を一般に、既知の技術を用いて調製でき、例えば、口、直腸、もしくは皮下への移植によって、または望ましい標的部位における移植によって投与できる。徐放性製剤は、担体マトリクス中に分散されている、および/または速度制御膜に囲まれたリザバー(reservoir)内に含まれる、ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体を含み得る。そのような製剤内での使用のための担体は、生体適合性であり、また生分解性であってもよい。好ましくは、製剤は比較的一定のレベルの活性成分の放出を提供する。徐放性製剤内に含まれる活性化合物の量は、移植部位、放出の速度および予想持続期間、ならびに治療または予防される状態の性質に依存する。
【0051】
方法
本発明は、被験者に核酸分子を送達するための方法を提供する。本発明は、被験者において免疫応答を惹起するための方法、および、被験者における癌または感染性疾患に対する治療および/または防御のための方法を付加的に提供する。本方法は、本発明の核酸送達系または組成物を被験者に投与する段階を含む。投与を、上記に記載されるように実行することができる。ある態様において、癌は乳癌である。この態様において、好ましい核酸送達系は、乳癌抗原であるher2/neuをコードする核酸分子を含む。その他の態様において、感染性疾患は結核である。この態様において、好ましい核酸送達系は、結核抗原であるTbH9をコードする核酸分子を含む。
【0052】
本発明はまた、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアの免疫刺激有効性を調節するための方法を提供する。本発明は、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアの投与に対するアジュバントとしてAGPを投与する段階を含む。AGPを、ミクロスフェアと同時に、または、ミクロスフェア投与の前もしくは後に投与することができる。AGPをミクロスフェア内にDNAと共にカプセル化してもよく、ミクロスフェアと共に組成物に含ませてもよく、または、ミクロスフェアとは別の組成物内に投与してもよい。本発明の方法の典型的な態様において、AGPは、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアによって惹起される免疫応答を増強する。
【0053】
本発明の送達ビヒクルを、癌性細胞または感染細胞を標的とする抗原特異的な免疫応答の発生を容易にするために使用してもよい。本発明のある好ましい態様では、樹状細胞またはその前駆細胞を抗原提示細胞(APC)として使用する。樹状細胞は非常に強力なAPCであり(BanchereauおよびSteinman、Nature 392: 245〜251、1998)、予防的または治療的な免疫性を惹起するための生理学的アジュバントとして有効であることが示されている(TimmermanおよびLevy、Ann. Rev. Med. 50: 507〜529、1999を参照のこと)。一般に、樹状細胞を、それらの典型的な形状に基づいて(インサイチューにおいては星状であり、インビトロでは目に見える明らかな細胞質の突起(樹状突起)を有する)、および、標準アッセイを用いて決定される、B細胞の分化マーカー(CD19およびCD20)、T細胞の分化マーカー(CD3)、単球の分化マーカー(CD14)、およびナチュラルキラー細胞の分化マーカー(CD56)の欠如に基づいて同定できる。樹状細胞は、当然のことながら、インビボまたはエクスビボにおいて、樹状細胞上では一般に見出されない特定の細胞表面受容体またはリガンドを発現するよう操作されうり、そのように修飾された樹状細胞は、本発明によって意図されるものである。樹状細胞の代替物として、分泌小胞抗原充填樹状細胞(secreted vesicles antigen−loaded dendric cell)(エキソソーム(exosome)と呼ばれる)を、ワクチン内にて使用することができる(Zitvogelら、1998、Nature Med. 4:594〜600)。
【0054】
樹状細胞および前駆細胞は、末梢血、骨髄、腫瘍浸潤細胞、腫瘍周囲組織浸潤細胞、リンパ節、脾臓、皮膚、臍帯血または任意の他の適切な組織もしくは体液から得られる。例えば、GM−CSF、IL−4、IL−13および/またはTNFαなどのサイトカインの組み合わせを、末梢血から収集された単球の培養物にエクスビボにおいて加えることにより、樹状細胞を分化させることが可能である。または、GM−CSF、IL−3、TNFα、CD40リガンド、LPS、flt3リガンドおよび/もしくは、樹状細胞の成熟および増殖を誘導する他の化合物の組み合わせを培養媒質に加えることにより、末梢血、臍帯血または骨髄から収集されたCD34陽性細胞を、樹状細胞に分化させることができる。
【0055】
樹状細胞は便宜上、「未熟な」細胞および「成熟した」細胞に分類されており、それにより、2つの十分特徴付けられた表現型の識別が簡単になる。しかし、この命名法は、全ての潜在的な分化の中間段階を除外するものと解釈されるべきではない。未熟な樹状細胞は、Fcγ受容体、マンノース受容体およびDEC−205マーカーの高発現と相関する、抗原の取り込みおよびプロセシングの高い能力を有するAPCとして特徴付けられる。成熟表現型は、これらのマーカーは低発現であるが、I型およびII型のMHC、接着分子(例えば、CD54およびCD11)、ならびに共刺激分子(例えば、CD40、CD80およびCD86)などの、T細胞活性化の原因となる細胞表現分子は高発現であることにより、典型的には特徴付けられる。APCがDNAを取り込み、細胞表面上にて発現されるポリペプチドまたはその免疫原性部分を発現できるように、APCを、本発明のミクロスフェア中にカプセル化されたポリヌクレオチドと組み合わせることができる。そのようなトランスフェクションは、エクスビボにて行われうり、本明細書において記載されるように、そのようなトランスフェクションされた細胞を含む組成物またはワクチンを、その後、治療目的のために使用することができる。または、樹状細胞または他の抗原提示細胞を標的とする遺伝子送達ビヒクルを患者に投与してもよく、その結果、インビボにおけるトランスフェクションが起こる。インビボおよびエクスビボにおける樹状細胞のトランスフェクションは、例えば、国際公開公報第97/24447号において記載されるもの、またはマーヴィ(Mahvi)ら、1997、Immunology and Cell Biology 75:456〜460に記載された遺伝子銃アプローチなどの、当技術分野において既知の任意の方法を用いて一般に行われうる。樹状細胞の抗原充填は、カプセル化されたDNAまたはRNAと共に樹状細胞または前駆細胞をインキュベートすることによって達成できる。T細胞の援助を提供する免疫学的パートナー(例えば担体分子)を用いて、樹状細胞を感作してもよい。
【0056】
組成物の投与
治療法には、予防および治療が含まれる。予防または治療は、一回または複数の時点における、単回の直接注射によって達成できる。また投与を、ほぼ同時に複数部位に対して行うことができる。患者または被験者には、ヒト、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ、およびヒツジなどの哺乳動物が含まれる。好ましくは、患者または被験者はヒトである。
【0057】
組成物はインビボにおいて典型的に、非経口(例えば、静脈内、皮下、および筋内)経路を介して、または、口腔内/舌下、直腸、経口、点鼻、局所的(経皮用および眼性など)、膣、肺、動脈内、腹腔内、眼内、または鼻内の経路などの、その他の従来的な直接経路を介して投与され、あるいは特定の組織へ直接投与される。筋内投与が好ましい。
【0058】
本発明の状況において、患者に投与される用量は、経時的に患者において有益な治療反応をもたらすのに十分、または、感染もしくは感染による疾患を阻害するのに十分でなければならない。したがって、特定の抗原に対する有効な免疫応答を惹起するのに十分な量、ならびに/または、疾患または感染由来の症状および/もしくは合併症を緩和、軽減、治癒もしくは少なくとも部分的に停止もしくは少なくとも部分的に予防するのに十分な量の組成物が患者に投与される。これを達成するのに十分な量は、「治療的に有効な用量」と定義される。
【0059】
産生される組成物の活性、および患者の状態、ならびに治療される患者の体重または体表面積によって、用量が決定されると考えられる。用量サイズはまた、特定の患者における特定の組成物の投与に伴う、任意の有害副作用の存在、性質、および程度によっても決定されると考えられる。疾患の治療または予防において投与されるべき組成物の有効量の決定の際、医師は、病原体に対する免疫応答の発生、疾患の進行、および任意の治療関連性の毒性について評価することを必要とする。
【0060】
免疫細胞を含む組成物を、その組成物が投与される被験者から得られる免疫細胞から調製するのが好ましい。または、免疫細胞を、HLA適合性ドナーから調製することができる。免疫細胞は、当技術分野において既知の従来技術を用いて被験者またはドナーから得られ、本発明のエピトープを提示するように修飾されたAPCに曝露され、エクスビボにおいて増殖し、被験者に投与される。エクスビボ治療のためのプロトコールは、ローゼンバーグ(Rosenberg)ら、1990、New England J. Med. 9:570〜578において記載されている。
【0061】
本明細書において記載されるように、インビトロにおける増殖による養子免疫療法のために十分な量の免疫細胞を一般に得ることが可能である。単一の抗原特異的エフェクター細胞を、インビボにおける抗原認識を保持したまま数十億個まで増殖させるための培養条件は、当技術分野においてはよく知られている。そのようなインビトロの培養条件では典型的に、しばしば(IL−2などの)サイトカインおよび非***フィーダー細胞の存在下において、抗原による間欠的な刺激が用いられる。上記のように、免疫療法のために十分な数の細胞を産生するために、本明細書において提供される免疫反応性ポリペプチドを用いて抗原特異的T細胞培養物を富栄養化して迅速に増殖させることができる。特に、樹状細胞、マクロファージ、単球、線維芽細胞および/またはB細胞などの抗原提示細胞を、免疫反応性ポリペプチドで感作できる、または、当技術分野において既知の標準技術を用いて1つまたは複数のポリヌクレオチドでトランスフェクションできる。例えば、抗原提示細胞を、組み換えウイルスまたはその他の発現系における発現増加のために適したプロモーターを有するポリヌクレオチドでトランスフェクションできる。治療において使用するための培養エフェクター細胞は、増殖および広範な分布が可能でなければならず、かつ、インビボにおいて長期間生存できなければならない。IL−2添加抗原を用いた反復刺激によって、インビボにおいて増殖し、かつ実質的な数が長期間生存するように、培養エフェクター細胞を誘導できることが、研究によって示された(例えば、Cheeverら、1997、Immunological Reviews 157:177を参照のこと)。
【0062】
本明細書において記載された、またはさもなくば当技術分野において既知の多くの投与経路を介した投与は、針、カテーテルまたは関連装置を用いた、一回または複数の時点における直接的な投与によって、簡単に達成されうる。
【0063】
実施例
以下の実施例は、本発明を説明するために、および当業者がこれを作製および使用することを助けるために示される。本実施例は、本発明の範囲を特に制限することを決して意図するものではない。
【0064】
実施例 1 : PLG ミクロスフェア中にカプセル化された DNA は、 CTL 反応を生じる
本実施例は、所望のインビトロ特性を有するDNA PLGミクロスフェア製剤について説明する。特に、そのDNA内容物を1週間に渡って放出することが可能な直径1μm〜10μmのミクロスフェアを、高いカプセル化率(60%〜80%)およびDNA超らせん状態の高い保持率(70%)をもたらすような過程を用いて調製した。マウスにおいてこれらのミクロスフェアが、感染性疾患(結核)および癌の双方に関するタンパク質抗原をコードするプラスミドに対する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)反応を生じることを見出したら、最も強く最も安定したCTL反応を生じる原因となる要因を解明するために一連の実験を行った。筋内および腹腔内における免疫化が、免疫化の最も有効な経路であった。ミクロスフェア再懸濁緩衝液も重要なパラメータであることが見出され、PBSは塩非含有緩衝液と比べてCTL反応を阻害した。さらに、幾つかのアミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)アジュバントが、これらのDNAミクロスフェアと共にCTL反応を増強することが見出された。
【0065】
材料および方法
二重乳剤技術(J.H. Eldridgeら、Mol Immunol、28:287〜294、1991;S. Cohenら、Pharm Res、8:713〜720、1991)の変法を用いて、抗原性タンパク質をコードするDNAを含むPLGミクロスフェアが調製された。特に、Tris−EDTA緩衝液(10 mM;pH 8)中のプラスミドDNA(10 mg〜30 mg)、エタノール0.38 mlを組み合わせ、Tris−EDTA緩衝液(10 mM;pH 8)を用いて、容積を5.1 mlまで調整した。これは内部(水)相である。1200 mgのポリ(ラクチド−コ−グリコリド)重合体を、13.9 mlのジクロロメタン(DCM)に溶解させ、氷上に置いた。内部水性相をPLG溶液に加え、Polytron組織ホモジナイザーを用いて、氷上に置いたまま30 mlシリンジ中で20秒間混合し、一次乳剤(油中水型)を形成した。二次乳剤は、氷上で、1.4% カルボキシメチルセルロース(w/v)または加工媒質280 mlを含むビーカーに一次乳剤を添加し、氷上に置いたままSilversonミキサーで4500 rpmにて75秒間混合することにより調製した。二次乳剤を約5リットルのMiliQ水を用いて希釈し、その後、ミクロスフェアからジクロロメタンを抽出してミクロスフェアを硬化するために、オーバーヘッドスターラーを用いて約20分間混合した。
【0066】
得られたミクロスフェアを、MiliQ水および遠心分離法を用いて2〜3回洗浄した。洗浄後、濃縮ミクロスフェアにマンニトールを加え、凍結および凍結乾燥した。凍結乾燥されたミクロスフェアをその後、サイズ分布、DNA含量(コア充填(core−loading);この値から、カプセル化率が計測された)、放出速度、およびカプセル化されたDNAの超らせん含量についてアッセイした。
【0067】
粒子サイズ決定は、MIE光散乱を用いて行われた。コア充填は、塩化メチレン中にミクロスフェアを溶解し、水性緩衝液を用いてDNAを抽出することにより決定された。その後、PicoGreen蛍光アッセイを用いてDNA濃度を測定した。アガロースゲルのデジタルUV画像解析によって、プラスミドの形態を決定した。本研究においては2つのプラスミド、一方は結核抗原TbH9をコードするもの、およびもう一方は乳癌抗原Her−2/neuをコードするものを使用した。
【0068】
水性緩衝液中に分散されたDNAミクロスフェアを用いてマウスを免疫化した。2週間間隔をあけて3×20μgによりマウスを免疫化することによって、筋内、腹腔内および皮下を含む幾つかの投与経路について試験を行った。過去の研究では、複数回の免疫化およびより高用量のカプセル化DNAによって、より強いCTL反応が得られることが示された。選択されたアミノアルキルグルコサミニド4−リン酸アジュバントとミクロスフェアとの組み合わせは、10μgのアジュバントと共に、最適以下の(sub−optimal)免疫化スケジュールを用いることによって、すなわちPBS中に分散されたカプセル化DNAの10μgの単回用量を用いることによって調べられた。最後に、PBSまたは塩化ナトリウム非含有リン酸緩衝液(PB)のいずれかの中に分散されたカプセル化DNAの10μgの単回用量をマウスに投与することにより、再懸濁緩衝液の影響を調べた。
【0069】
マウスから収集された脾細胞を用いて、CTL反応を測定した。関心対象の抗原でトランスフェクションしたAPC系を用いた免疫脾細胞の培養によって、CTL系を作製した。系を一週間毎に刺激し、インビトロにおける刺激の6日後、標準クロム51放出アッセイにおいてCTL活性を評価した。
【0070】
結果
本過程によって、小型で(直径約1μm〜10μm)、放出速度が迅速で、カプセル化率が高く(40%〜80%)、かつ超らせんDNAのの保持に優れたミクロスフェアが得られた。33%を上回るミクロスフェア内容物が、インビトロにおいて、37℃にて48時間後に放出された;50%を上回る内容物が、4日後に放出された;かつ70%を上回る内容物が、7日後に放出された。ミクロスフェアから抽出されたプラスミドについての超らせんDNA対ニックDNAの比率は、入力DNAの比の50%を上回った。
【0071】
図1は、本発明のDNAミクロスフェアの、小型で多孔性という性質を示す、走査型電子顕微鏡写真である。ミクロスフェアは、多孔性に加え、高い表面積対体積比、および特徴的な短い拡散距離を有し、それらが、カプセル化されたDNAの10日間に渡る比較的迅速な放出を容易にしている。バーは5μmを表し、倍率は3,000×である。
【0072】
図2は、本発明に従って製剤化されたDNAミクロスフェアの典型的な粒子サイズ分布を示すグラフである。ミクロスフェアの直径は1μm〜10μmの範囲に渡り、このため、抗原提示細胞によって貪食されるのに十分適したものとなっている。
【0073】
図3Aは、ミクロスフェア製剤において使用されるDNA量(mg)の関数としてカプセル化率を示すグラフである。
【0074】
図3Bは、製剤において使用されるDNA量(mg)の関数としてミクロスフェアのコア充填を示すグラフである。DNA量の増加に伴う、コア充填における直線的な増加により、カプセル化率が約72%で本質的に一定に維持される可能性が示唆される。約1.2%のコア充填においてミクロスフェアはDNAで飽和されており、より多くの量のDNAを加えるとカプセル化率が低くなる。
【0075】
図4は、カプセル化されていないDNA(レーン2)およびPLGミクロスフェアから抽出されたDNA(レーン3〜8)のアガロースゲル電気泳動の結果を示す。レーン1は、分子量マーカーを含む。DNAの最小のニック形成(上方のバンド)は、ミクロスフェアの調製中に生じた。具体的には、デンシトメーター解析により測定されたように、カプセル化および抽出の後、初期DNAの超らせん含量の81%(±3%)が保持されていた。裸のDNAの89%、および、カプセル化され抽出されたDNAの72%が超らせん状態にあった。
【0076】
図5は、本発明のミクロスフェアを用いた、10日間に渡る、DNA放出速度を示すグラフである。データは、時間(日数)の関数として、DNA放出率(%)としてプロットされる。ミクロスフェア製剤はDNAを比較的迅速に放出し、ほぼ全てのDNAが10日目までに放出された。そのような速い放出速度は、部分的には、ミクロスフェア内におけるDNAの分解がより長期間に渡って起こらないということによって、遅い放出(例えば30+日)よりも有利である。
【0077】
図6は、PBS中に再懸濁されたカプセル化Her−2/neu DNA 20μgを用いた免疫化に2週間の間隔で3回供されたマウス由来の培養T細胞の、細胞溶解活性を示すグラフである。細胞溶解活性は、標準51Crアッセイを用いて測定された。データは、エフェクター:標的の比率の関数として、溶解率(%)としてプロットされる。マウスを腹腔内(丸)、筋内(三角)、または皮下(四角)にて免疫化した。黒および白の記号は、特異的または非特異的な標的をそれぞれ表す。各群は5個体のマウスを含み、反応の平均が示されている。腹腔内および筋内における免疫化の双方で、一貫してより強い反応が生じた一方、皮下における免疫化では、典型的にはより弱い反応が生じた。
【0078】
図7は、TbH9 DNAの10μg単回用量を筋内にて与えられたマウス由来の培養T細胞の細胞溶解活性を示すグラフである。細胞溶解活性は、標準51Crアッセイを用いて測定された。データは、エフェクター:標的の比率の関数として、特異的な溶解率(%)としてプロットされる。マウスには、DNAミクロスフェア単独(下方の丸)、AGPアジュバント10μgを加えたDNAミクロスフェア(517、527、547および568という印が付けられた線)、裸のDNA(下方の四角)または生理食塩水(下方の三角)が投与された。各群はマウス4個体を含み、反応の平均が示される。この最適以下の免疫化スケジュール(即ち、PBSを緩衝液として用いた1×10μgによる免疫化)下において、裸のDNA、またはミクロカプセル化されたDNA単独のいずれかを用いて免疫化されたマウス群は、実質的なCTL反応を生じなかった。対照的に、AGP−568、AGP−517、またはAGP−547と組み合わせたミクロスフェアを用いて免疫化されたマウスは、強いCTL反応を生じることができた。AGP−527は、本アッセイにおいては抑制性であると考えられた。
【0079】
図8は、DNAミクロスフェアに関連して評価された、アミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)の分子構造を示す。これらの合成分子は、エナンチオ選択的過程を用いて調製された。
【0080】
図9は、PBS(三角)、または塩化ナトリウム非含有等張リン酸緩衝液(丸)のいずれかに再懸濁されたTbH9 DNAの10μg単回用量を与えられたマウス由来の培養T細胞の、細胞溶解活性を示すグラフである。四角は生理食塩水を用いて免疫化されたマウスを示す。細胞溶解活性は、標準51Crアッセイを用いて測定された。データは、エフェクター:標的の比率の関数として、特異的な溶解率(%)としてプロットされる。各群はマウス4個体を含み、反応の平均が示される。この最適以下の免疫化スケジュール(即ち、1×10μgによる免疫化)下において、PBS中に分散した、ミクロカプセル化されたDNAを用いて免疫化されたマウス群は、実質的なCTL反応を生じなかった。対照的に、等張リン酸緩衝液(即ち、塩化ナトリウム非含有)中に分散したミクロスフェアを用いて免疫化されたマウスは、強いCTL反応を生じた。
【0081】
ミクロスフェアの基本的な特性を実質的に変化させることなく、上記に記載された過程に対する多数の改変が行われた。これらの改変は以下を含む。
【0082】
内部水相:
エタノール含量を、0%から75%(v/v)まで変化させた。容積を、0.1 mlから6.6 mlまで変化させた。QS21を含むアジュバントが加えられた。ウシ血清アルブミン(BSA)を含む安定化剤が添加された。
【0083】
DNA:
DNA量を、1 mgから60 mgまで変化させた。内部水相におけるDNA濃度を、0.2 mg/mlから12 mg/mlまで変化させた。プラスミドのサイズを、約3 kbから約9 kbの間で変化させた。her−2/neuおよびTbH9などの、プラスミドによってコードされる抗原もまた変化させた。
【0084】
重合体:
PLG重合体上の末端基を、エステル末端基とカルボン酸末端基の間で変化させた。PLG重合体の分子量を、約8 kDaから65 kDaまで変化させた。いくつかの場合において、陽イオン脂質(DOTAP)を重合体溶液に加え、0.5 mgから5 mgまで変化させた。PLG重合体の量を、150 mgから3000 mgの間で変化させた。MPLを含むアジュバントが、重合体溶液に加えられた。
【0085】
溶媒:
溶媒を、ジクロロメタン、クロロホルムおよび酢酸エチルの間で変化させた。内部水容積の溶媒容積に対する比率を、0.01から0.48まで変化させた。PLGの溶媒に対する濃度比を、11から217の間で変化させた。
【0086】
安定化剤:
加工媒質中における安定化剤を、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)および、CMCとPVAの混合物の間で変化させた。加工媒質中の安定化剤の含量を、1%と5%の間で変化させた。陽イオン脂質(DOTAP)を安定化剤に加えた。
【0087】
混合条件:
30 mlのシリンジおよび20 mlのシリンジの両方を、一次乳剤のための混合容器として試験した。Silversonミキサー上の様々な混合ヘッドについても試験を行った。
【0088】
要約
放出が迅速で、効率が高く、多孔性の、1μm〜10μmのDNAミクロスフェア製剤を開発し、試験を行った。2つの抗原、Her−2/neuおよびTbH9に対するCTL反応が、これらのDNAミクロスフェアを用いて生じた。さらに、Her−2/neuまたはTbH9 DNA免疫化によって作製されたT細胞が、対応する抗原を発現しているヒト腫瘍を認識し、殺すことが示された。筋内および腹腔内の経路は、CTL惹起のために最適であることが証明された。幾つかのAGPは、DNAミクロスフェアに実質的なCTLアジュバント活性を提供した。塩化ナトリウムは、DNAミクロスフェアに対するCTL発生を阻害した。
【0089】
実施例 2 : AGP アジュバントは DNA ミクロスフェアの有効性を増強する
本実施例においては、水性製剤中のAGP10μgを、PBS懸濁液中のPLGミクロスフェアの中にカプセル化された10μgのDNAに加えた。二重乳剤技術、CMC 安定化剤および「5.1」法を使用し、503H重合体を用いてミクロスフェアを調製し、直径約1μm〜10μmのミクロスフェアを得た。4個体のC57B1/6マウス群において、ミクロスフェアを筋内に注射した。免疫化の3〜4週間後、脾臓を収集し、単一細胞懸濁液に加工した。TbH9遺伝子を安定に発現しているEL−4細胞を用いて、脾細胞をインビトロにて刺激した。標準プロトコールによってCTL活性をアッセイした。新しい脾細胞をまた、5μg/mlの組み換えTbH9を用いてインビトロにて刺激し、IFN−γの分泌について、ELISAによって上清をアッセイした。AGPアジュバントが、ミクロスフェア中にカプセル化されたDNAによりコードされる抗原に対する、アジュバントなしで生じるものを上回る、強い細胞性免疫応答を提供できることが結果により示された。
【0090】
図10は、PLGミクロスフェア中にカプセル化されたTbH9 DNAをAGPと共に用いた免疫化の3〜4週間後に、マウスから収集された脾細胞を用いてアッセイされた、組み換えTbH9を用いたインビトロ刺激に応答したIFN−γ分泌(pg/ml)を示す棒グラフである。
【0091】
図11は、AGPを加えたPLGミクロスフェア中にカプセル化されたTbH9 DNAを用いて免疫化されたマウスから収集された脾細胞の、TbH9遺伝子を安定に発現するEL−4細胞を用いた、インビトロにおける単回刺激後の平均CTL活性を示すグラフである。グラフは、生理食塩水(黒菱形)、裸のDNA(濃い四角)、DNA−PLG(下方の三角)、および、AGP−517(薄い×)、AGP−522(星印)、AGP−525(丸)、AGP−527(+)、AGP−529(点線)、AGP−540(−)、AGP−544(白菱形)、AGP−547(薄い四角)、AGP−557(上方の三角)、またはAGP−578(濃い×)を加えたDNA−PLGを含む、免疫化条件に関する、エフェクター:標的の比率の関数として、特異的溶解率の平均を示す。
【0092】
図12Aは、TbH9 DNA−PLG単独(白四角)、AGP−527(黒四角)、AGP−544(濃い菱形)、AGP−557(黒丸)との併用、または裸のDNA(白丸)もしくは生理食塩水(三角)を用いて免疫化されたマウスに由来する脾細胞の、インビトロにおける第2回目の刺激後の平均CTL活性を示す。
【0093】
図12Bは、TbH9 DNA−PLGとAGP−517(黒四角)、AGP−547(濃い菱形)、AGP−568(濃い三角)との併用、または裸のDNAを用いて(×)免疫化されたマウスに由来する脾細胞の、インビトロにおける第2回目の刺激後の平均CTL活性を示す。
【0094】
実施例 3 :カプセル化された DNA により、サルにおいて惹起された免疫応答
本実施例は、裸のTbH9−VR1012 DNA、または本発明に従って調製されたミクロスフェア内にカプセル化されたTbH9−VR1012 DNAのいずれかを用いた、1ヶ月間隔の3回の免疫化の後、アカゲザルにおいて惹起された免疫応答を説明する。プラスミド 3.3 mgおよびRC527−AF 40μgからなる裸のDNAを用い、皮内および筋内の経路によって免疫化を行った。プラスミド 3 mgおよびRC 568−AF 50μgからなるミクロスフェアDNAは、筋内にて送達された。各群には4個体が含まれた。図13から15において示される結果により、ミクロスフェア中にカプセル化されたDNAが、裸のDNAを用いた場合に見出されたものよりも強い免疫応答を惹起したことが示されている。
【0095】
図13A〜図13Bは、ミクロスフェア中にカプセル化され、筋内に投与され(図13A)、または裸のDNAとして皮内または筋内経路を経て送達された(図13B)、TbH9を用いた第3回目の免疫化の4週間後における、アカゲザルのTbH9に対する血清抗体価を示すグラフである。各グラフにおいて示された4つの線は、個々の被験者を表す。
【0096】
図14は、生理食塩水、組み換えTbH9(rTbH9)、TbH9をコードする裸のDNA、またはTbH9をコードするDNAをカプセル化するミクロスフェアを用いた、第3回目の免疫化の4週間後における、サルのPBMCからの、抗原誘導性のγインターフェロン(IFN−γ)の産生を示す棒グラフである。個々のバーは、個々の被験者を示す。
【0097】
図15A〜図15Bは、TbH9をコードする、ミクロカプセル化された(図15A)または裸の(図15B)DNAを用いた第3回目の免疫化の2ヶ月後における、サルのCTL反応を示すグラフである。特異的な溶解率(%)は、エフェクター:標的の比率の関数としてプロットされる。丸は、TbH9標的細胞を表す。対照標的には、非感染細胞(四角)、および、非特異的標的であるEGFP(蛍光タンパク質)細胞(三角)が含まれる。
【0098】
当業者には、前述の説明において開示される概念および特定の態様が、本発明の同じ目的を実行するためにその他の態様を改変または設計するための基礎として容易に利用されうることが理解されよう。当業者にはまた、そのような同等の態様が、添付の特許請求の範囲に記載された、本発明の精神および範囲から逸脱しないことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のDNAミクロスフェアの、小型で多孔性という性質を示す、走査型電子顕微鏡写真である。ミクロスフェアは、多孔性に加え、高い表面積対体積比、および特徴的な短い拡散距離を有し、それらが、カプセル化されたDNAの10日間に渡る比較的迅速な放出を容易にしている。バーは5μmを表し、倍率は3,000×である。
【図2】本発明に従って製剤化されたDNAミクロスフェアの典型的な粒子サイズ分布を示すグラフである。ミクロスフェアの直径は1μm〜10μmの範囲に渡り、このため、抗原提示細胞によって貪食されるのに十分適したものとなっている。
【図3A】ミクロスフェア製剤において使用されるDNA量(mg)の関数としてカプセル化率を示すグラフである。
【図3B】製剤において使用されるDNA量(mg)の関数としてミクロスフェアのコア充填を示すグラフである。DNA量の増加に伴う、コア充填における直線的な増加により、カプセル化率が約72%で本質的に一定に維持される可能性が示唆される。約1.2%のコア充填においてミクロスフェアはDNAで飽和されており、より多くの量のDNAを加えるとカプセル化率が低くなる。
【図4】カプセル化されていないDNA(レーン2)およびPLGミクロスフェアから抽出されたDNA(レーン3〜8)のアガロースゲル電気泳動の結果を示す。レーン1は、分子量マーカーを含む。DNAの最小のニック形成(上方のバンド)は、ミクロスフェアの調製中に生じた。具体的には、デンシトメーター解析により測定されたように、カプセル化および抽出の後、初期DNAの超らせん含量の81%(±3%)が保持されていた。裸のDNAの89%、および、カプセル化され抽出されたDNAの72%が超らせん状態にあった。
【図5】本発明のミクロスフェアを用いた、10日間に渡る、DNA放出速度を示すグラフである。データは、時間(日数)の関数として、DNA放出率(%)としてプロットされる。ミクロスフェア製剤はDNAを比較的迅速に放出し、ほぼ全てのDNAが10日目までに放出された。そのような速い放出速度は、部分的には、ミクロスフェア内におけるDNAの分解がより長期間に渡って起こらないということによって、遅い放出(例えば30+日)よりも有利である。
【図6】PBS中に再懸濁されたカプセル化Her−2/neu DNA 20μgを用いた免疫化に2週間の間隔で3回供されたマウス由来の培養T細胞の、細胞溶解活性を示すグラフである。細胞溶解活性は、標準51Crアッセイを用いて測定された。データは、エフェクター:標的の比率の関数として、溶解率(%)としてプロットされる。マウスを腹腔内(丸)、筋内(三角)、または皮下(四角)にて免疫化した。黒および白の記号は、特異的または非特異的な標的をそれぞれ表す。各群は5個体のマウスを含み、反応の平均が示されている。腹腔内および筋内における免疫化の双方で、一貫してより強い反応が生じた一方、皮下における免疫化では、典型的にはより弱い反応が生じた。
【図7】TbH9 DNAの10μg単回用量を筋内にて与えられたマウス由来の培養T細胞の細胞溶解活性を示すグラフである。細胞溶解活性は、標準51Crアッセイを用いて測定された。データは、エフェクター:標的の比率の関数として、特異的な溶解率(%)としてプロットされる。マウスには、DNAミクロスフェア単独(下方の丸)、AGPアジュバント10μgを加えたDNAミクロスフェア(517、527、547および568という印が付けられた線)、裸のDNA(下方の四角)または生理食塩水(下方の三角)が投与された。各群はマウス4個体を含み、反応の平均が示される。この最適以下の免疫化スケジュール(即ち、PBSを緩衝液として用いた1×10μgによる免疫化)下において、裸のDNA、またはミクロカプセル化されたDNA単独のいずれかを用いて免疫化されたマウス群は、実質的なCTL反応を生じなかった。対照的に、AGP−568、AGP−517、またはAGP−547と組み合わせたミクロスフェアを用いて免疫化されたマウスは、強いCTL反応を生じることができた。AGP−527は、本アッセイにおいては抑制性であると考えられた。
【図8Aから図8D】DNAミクロスフェアに関連して評価された、アミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)の分子構造を示す。これらの合成分子は、エナンチオ選択的過程を用いて調製された。
【図9】PBS(三角)、または塩化ナトリウム非含有等張リン酸緩衝液(丸)のいずれかに再懸濁されたTbH9 DNAの10μg単回用量を与えられたマウス由来の培養T細胞の、細胞溶解活性を示すグラフである。四角は生理食塩水を用いて免疫化されたマウスを示す。細胞溶解活性は、標準51Crアッセイを用いて測定された。データは、エフェクター:標的の比率の関数として、特異的な溶解率(%)としてプロットされる。各群はマウス4個体を含み、反応の平均が示される。この最適以下の免疫化スケジュール(即ち、1×10μgによる免疫化)下において、PBS中に分散した、ミクロカプセル化されたDNAを用いて免疫化されたマウス群は、実質的なCTL反応を生じなかった。対照的に、等張リン酸緩衝液(即ち、塩化ナトリウム非含有)中に分散したミクロスフェアを用いて免疫化されたマウスは、強いCTL反応を生じた。
【図10】PLGミクロスフェア中にカプセル化されたTbH9 DNAをAGPと共に用いた免疫化の3〜4週間後に、マウスから収集された脾細胞を用いてアッセイされた、組み換えTbH9を用いたインビトロ刺激に応答したIFN−γ分泌(pg/ml)を示す棒グラフである。
【図11】AGPを加えたPLGミクロスフェア中にカプセル化されたTbH9 DNAを用いて免疫化されたマウスから収集された脾細胞の、TbH9遺伝子を安定に発現するEL−4細胞を用いた、インビトロにおける単回刺激後の平均CTL活性を示すグラフである。グラフは、生理食塩水(黒菱形)、裸のDNA(濃い四角)、DNA−PLG(下方の三角)、および、AGP−517(薄い×)、AGP−522(星印)、AGP−525(丸)、AGP−527(+)、AGP−529(点線)、AGP−540(−)、AGP−544(白菱形)、AGP−547(薄い四角)、AGP−557(上方の三角)、またはAGP−578(濃い×)を加えたDNA−PLGを含む、免疫化条件に関する、エフェクター:標的の比率の関数として、特異的溶解率の平均を示す。
【図12】Aは、TbH9 DNA−PLG単独(白四角)、AGP−527(黒四角)、AGP−544(濃い菱形)、AGP−557(黒丸)との併用、または裸のDNA(白丸)もしくは生理食塩水(三角)を用いて免疫化されたマウスに由来する脾細胞の、インビトロにおける第2回目の刺激後の平均CTL活性を示す。Bは、TbH9 DNA−PLGとAGP−517(黒四角)、AGP−547(濃い菱形)、AGP−568(濃い三角)との併用、または裸のDNAを用いて(×)免疫化されたマウスに由来する脾細胞の、インビトロにおける第2回目の刺激後の平均CTL活性を示す。
【図13】ミクロスフェア中にカプセル化され、筋内に投与され(図13A)、または裸のDNAとして皮内または筋内経路を経て送達された(図13B)、TbH9を用いた第3回目の免疫化の4週間後における、アカゲザルのTbH9に対する血清抗体価を示すグラフである。各グラフにおいて示された4つの線は、個々の被験者を表す。
【図14】生理食塩水、組み換えTbH9(rTbH9)、TbH9をコードする裸のDNA、またはTbH9をコードするDNAをカプセル化するミクロスフェアを用いた、第3回目の免疫化の4週間後における、サルのPBMCからの、抗原誘導性のγインターフェロン(IFN−γ)の産生を示す棒グラフである。個々のバーは、個々の被験者を示す。
【図15】TbH9をコードする、ミクロカプセル化された(図15A)または裸の(図15B)DNAを用いた第3回目の免疫化の2ヶ月後における、サルのCTL反応を示すグラフである。特異的な溶解率(%)は、エフェクター:標的の比率の関数としてプロットされる。丸は、TbH9標的細胞を表す。対照標的には、非感染細胞(四角)、および、非特異的標的であるEGFP(蛍光タンパク質)細胞(三角)が含まれる。
本出願は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、2000年7月7日に出願された、米国特許仮出願第60/216,604号の恩典を主張する。
【0002】
本出願を通して、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、本発明が属する技術の様子をより完全に説明するために、その全体が本明細書において参照として組み入れられる。
【0003】
発明の技術分野
本発明は、ワクチンの送達のために使用できる製剤、組成物および方法に関連する。とりわけ、本発明は、より効率的な、およびより有効な、DNAワクチンの送達のためのミクロスフェアおよびアジュバントに関連する。
【0004】
発明の背景
癌および慢性感染性疾患の予防および治療のために、新しいワクチンが開発されつつある。最も有効なワクチンは、Tヘルパー反応および抗体に加えて、CTL反応を惹起すると考えられうる。DNAワクチンは、ヒトにおける使用のためにはさらなる改善が必要であるが、マウスにおけるCTL反応の発生の際に十分に作用することが見出されている。DNAワクチン送達のためのビヒクル(vehicle)としてミクロスフェアを開発する試みは、カプセル化率の低いこと、およびDNAのニック形成、および付随する超らせん構造の喪失によって制限されてきた。これらの制限を克服するための努力により、放出速度(kinetics)が遅すぎ、カプセル化の間にDNAの分解が起こってしまうようなミクロスフェアが作製された。
【0005】
より効率的でより効果的なDNAワクチン送達手段、特に、高いカプセル化率を、DNA超らせんの保存および迅速な放出速度と組み合わせる方法が、なおも必要とされている。
【0006】
発明の概要
本発明は、1つの系において、驚くべきことに、高いカプセル化率、迅速な放出速度、およびDNAの超らせん形態における保存の組み合わせを提供する、核酸送達系を提供する。本発明の核酸送達系は、生分解性のミクロスフェア中にカプセル化された、デオキシリボ核酸(DNA)などの核酸分子を含む。好ましい態様において、ミクロスフェア中の少なくとも50%のDNAが超らせんDNAを含み、少なくとも50%のDNAが、約37℃において7日後にミクロスフェアから放出される。ある態様において、少なくとも70%のDNAが、約37℃において7日後にミクロスフェアから放出される。好ましくは、ミクロスフェアは、少なくとも約40%のカプセル化率を有する。ある態様において、少なくとも約90%のミクロスフェアは、直径約1μm〜約10μmである。このサイズ範囲内のミクロスフェアは、抗原提示細胞によって貪食されるのに十分適しており、これにより有効なT細胞刺激がもたらされる。
【0007】
本発明のミクロスフェアは、好ましくは、ポリ(ラクト−コ−グリコリド)(PLG)、ポリ(ラクチド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、および/またはそれらの共重合体などの生分解性重合体を含む。または、ミクロスフェアは、その他の壁形成材料を含み得る。適した壁形成材料には、これらに限定されるわけではないが、ポリ(ブタジエン)などのポリ(ジエン);ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリ(アルケン);ポリ(アクリル酸) などのポリ(アクリル);ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート) などのポリ(メタクリル);ポリ(ビニルエーテル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(ビニルケトン);ポリ(塩化ビニル) などのポリ(ハロゲン化ビニル);ポリ(ビニルニトリル);ポリ(酢酸ビニル) などのポリ(ビニルエステル);ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(5−メチル−2−ビニルピリジン) などのポリ(ビニルピリジン);ポリ(スチレン);ポリ(カーボネート);ポリ(エステル);ポリ(オルトエステル);ポリ(エステルアミド);ポリ(無水物);ポリ(ウレタン);ポリ(アミド);メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースエーテル;酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース(cellulose acetate phthalate)、酢酸酪酸セルロース(cellulose acetate butyrate)などのセルロースエステル;多糖類、タンパク質、ゼラチン、デンプン、ゴム、樹脂などが含まれる。これらの物質を、単独で、物理的混合物(混成物)として、または共重合体として使用してよい。核酸送達系は、アジュバント、好ましくはアミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)をさらに含み得る。
【0008】
本発明の核酸送達系は、DNAワクチンの送達のために特に適している。好ましい態様において、ミクロスフェア中にカプセル化されるDNAは、癌または感染性疾患に関連する抗原をコードする。ある態様において、抗原は、自己免疫疾患に関連する内因性の抗原に由来する。癌の例には、これらに限定されるわけではないが、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮癌、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、神経膠星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、網膜芽腫、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、およびH鎖病が含まれる。癌抗原の例の一つは、乳癌抗原であるHer−2/neuである。
【0009】
感染性疾患に関連する抗原は、病原体、ウイルス、細菌、真菌または寄生生物を含む、様々な感染性物質のいずれかに由来してよい。ウイルスの例には、これらに限定されるわけではないが、B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、水痘ウイルス、アデノウイルス、単純疱疹ウイルスI型またはII型、牛疫ウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、RSウイルス、パピローマウイルス、パポーバウイルス、サイトメガロウイルス、echinovirus、アルボウイルス、ハンタウイルス、コクサッキーウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス、ヒト免疫不全ウイルスI型またはII型が含まれる。細菌の例には、これらに限定されるわけではないが、結核菌(M. tuberculosis)、マイコバクテリウム属、マイコプラズマ属、ナイセリア属およびレジオネラ属が含まれる。寄生生物の例には、これらに限定されるわけではないが、リケッチア属およびクラミジア属が含まれる。感染性疾患抗原のある例は、結核抗原である、TbH9(Mtb39Aとしても知られる)である。その他の結核抗原には、これらに限定されるわけではないが、DPV(Mtb8.4としても知られる)、38−1、Mtb41、Mtb40、Mtb32A、Mtb9.9A、Mtb9.8、Mtb16、Mtb72f、Mtb59f、Mtb88f、Mtb71f、Mtb46fおよびMtb31f(「f」とは、それが融合体または2つ以上のタンパク質であることを指す)が含まれる。
【0010】
本発明は、核酸分子をミクロスフェア中にカプセル化するための方法をさらに提供する。本方法は、以下の段階を含む:重合体を溶媒に溶解させ、重合体溶液を形成する段階;核酸分子を含む水溶液を重合体溶液に加え、一次乳剤を形成する段階;一次乳剤を均質化する段階;一次乳剤を、安定化剤を含む加工媒質と混合し、二次乳剤を形成する段階;および溶媒を二次乳剤から抽出し、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアを形成する段階。典型的に、これらの方法の段階は、氷上で、好ましくは、凍結温度より高く37℃未満に温度を維持しながら実行される。ある態様において、溶液および媒質は約2℃〜約35℃に維持される。その他の態様において、溶液および媒質は約4℃〜約25℃に維持される。ミクロスフェア調製の一次乳化段階および二次乳化段階中に、材料を37℃未満に保つことにより、DNAのニック形成を減少できる。より多くのDNAを超らせん形態に保存することにより、細胞のより効率的なトランスフェクションが容易になる。本方法は、その後の、ミクロスフェアの洗浄段階、凍結段階および凍結乾燥段階をさらに含み得る。
【0011】
好ましい態様において、重合体はPLGを含む。いくつかの態様において、PLGはエステル末端基またはカルボン酸末端基を含むことができ、約4 kDa〜約120 kDaの分子量、または好ましくは、約8 kDa〜約65 kDaの分子量を有する。溶媒は例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、または酢酸エチルを含み得る。いくつかの態様において、重合体溶液は、陽イオン脂質および/またはMPLなどのアジュバントをさらに含む。安定化剤の例には、これらに限定されるわけではないが、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、またはそれらの混合物が含まれる。安定化剤は選択的に、陽イオン脂質をさらに含み得る。いくつかの態様において、安定化剤は、約0%〜約10%の加工媒質、または好ましくは、約1%〜約5%の加工媒質を含む。いくつかの態様において、溶媒は、約0.001%〜約0.5%の内部水容積を含み、かつ/または、水溶液は、約0%〜約75%(v/v)のエタノール含量を含む。
【0012】
核酸分子は、好ましくはDNAを含む。ある態様において、水溶液は、約0.2 mg/ml〜約12 mg/mlのDNAを含む。水溶液は、選択的に、BSA、HSAもしくは糖などの安定化剤、またはQS21などのアジュバントをさらに含み得る。ある態様において、DNAは、約2 kb〜約12 kbのプラスミド、好ましくは約3 kb〜約9 kbのプラスミドを含む。
【0013】
好ましくは、少なくとも50%のDNAは、抽出段階を通して、より好ましくは、その後の、凍結乾燥などの全ての段階を通して、超らせん構造を保持する。カプセル化率が少なくとも約40%であり、かつ/または、ミクロスフェアが、37℃での水性環境のような望ましい送達環境との接触後約7日以内に、少なくとも約50%の核酸分子を放出するような方法もまた好ましい。より好ましい態様において、ミクロスフェアは、少なくとも約50%の核酸分子を約4日以内に放出する。少なくとも約90%のミクロスフェアが、約1μm〜約10μmであるような方法もまた好ましい。
【0014】
本発明は、本発明の方法によって産生されたミクロスフェア中にカプセル化された核酸分子を含む組成物をさらに提供する。好ましくは、組成物は、アミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)などのアジュバントをさらに含む。被験者に核酸分子を送達するための方法、被験者において免疫応答を惹起するための方法、および被験者において癌または感染性疾患を治療するおよび/または防御するための方法もまた提供される。これらの方法は、被験者に本発明の核酸送達系または組成物を投与する段階を含む。
【0015】
本発明は、アミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)を含む、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアの免疫刺激有効性を調節するためのアジュバントをさらに提供する。好ましい態様において、AGPは、水性製剤を含む。AGPアジュバントの例には、これらに限定されるわけではないが、517、527、547、557および568が含まれる。本発明はまた、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアの免疫刺激有効性を調節するための方法を提供する。本方法は、核酸分子をカプセル化したミクロスフェアの投与に対するアジュバントとしてAGPを投与する段階を含む。AGPを、ミクロスフェアと同時に投与することができる、または、ミクロスフェアの投与の前もしくは後に投与することができる。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、1つの系において、驚くべきことに、高いカプセル化率、迅速な放出速度、およびDNAの超らせん形態における保存の組み合せを提供する核酸送達系を提供する。本発明の核酸送達系は、生分解性のミクロスフェア中にカプセル化された、デオキシリボ核酸(DNA)などの核酸分子を含む。本発明に従って調製されたミクロスフェアは、インビトロにおいて、37℃で48時間後に、それらの含量の33%を上回って、4日後に50%を上回って、および7日後に70%を上回って放出することが示された。加えて、これらのミクロスフェアは、超らせんDNA対ニックDNAの高い比率を維持する一方、約40%〜約80%のカプセル化率を有する。本発明のミクロスフェアは、直径約1μm〜約10μmである。このサイズ範囲内のミクロスフェアは、抗原提示細胞によって貪食されるのに十分適しており、有効なT細胞刺激をもたらす。本発明の核酸送達系は、被験者において免疫応答を惹起するために、1つまたは複数の関心対象の抗原をコードする核酸分子を送達するために使用できる。
【0017】
本発明は、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアの免疫刺激有効性を調節するためのアジュバントをさらに提供する。アジュバントは、ミクロスフェア中にカプセル化されたDNAによってコードされる抗原に対して強い細胞性免疫応答を提供する、アミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)を含む。本発明はまた、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアの免疫刺激有効性を調節するための方法を提供する。本方法は、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアの投与に対するアジュバントとしてAGPを投与する段階を含む。
【0018】
定義
本出願において使用される全ての科学用語および技術用語は、特に指定されない限り、当技術分野において一般的に使用される意味を有する。本出願において使用される以下の用語は、所定の意味を有する。
【0019】
「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は、単鎖または二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの重合体を指し、かつ特に限定されない限り、天然のヌクレオチドと同様の様式で核酸にハイブリダイズする天然ヌクレオチドの既知の類似体を含む。
【0020】
本明細書において使用される「免疫応答」とは、抗体の産生、IFN−γなどの免疫調節因子の産生、およびCTL活性の誘導を含む。免疫応答の惹起とは、免疫応答の開始、刺激または増強を含む。
【0021】
本明細書において使用される、ある状態または疾患「を予防する」または「に対して防御する」とは、その状態または疾患の発症または進行を妨げる、軽減させる、または遅延させることを意味する。
【0022】
本明細書において使用される「抗原提示細胞」または「APC」とは、抗原を処理し、およびリンパ球に対して提示できる細胞を意味する。APCの例には、これらに限定されるわけではないが、マクロファージ、ランゲルハンス樹状細胞、濾胞内樹状細胞、B細胞、単球、線維芽細胞および線維細胞が含まれる。樹状細胞は、好ましい種類の抗原提示細胞である。樹状細胞は、多くの非リンパ系組織において見出されているが、求心性のリンパ経由または血流経由でリンパ系器官のT細胞依存性領域まで移動できる。樹状細胞は、非リンパ系器官においては、ランゲルハンス細胞および間質樹状細胞を含む。リンパおよび血液においては、求心性のリンパヴェール(veiled)細胞および血液樹状細胞を各々含む。リンパ系器官においては、リンパ系樹状細胞および交互嵌合(interdigitating)細胞を含む。
【0023】
本明細書において使用される、あるエピトープを提示するための「修飾型」とは、天然または組み換え的な方法によって、あるエピトープを提示するように操作された、抗原提示細胞(APC)を指す。例えば、単独で、もしくは混合物の一部として、単離された抗原に曝露することによって、ペプチド充填によって、または、1つもしくは複数のエピトープを含むポリペプチドを発現するようにAPCを遺伝学的に改変することによって、APCを修飾することができる。
【0024】
本明細書において使用される「薬学的に許容される塩」とは、親化合物の望ましい生物活性を維持し、望ましくない毒性的影響を全く与えない塩を指す。そのような塩類の例には、これらに限定されるわけではないが、(a)例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸などの無機酸で形成される酸付加塩類;および、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモ酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸などの有機酸で形成される塩類;(b)亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、カドミウムなどの多価金属陽イオンを有する塩類;または(c)N,N’−ジベンジルエチレンジアミンもしくはエチレンジアミンから形成される有機陽イオンで形成される塩類;または(d)例えば亜鉛タンニン酸塩など、(a)および(b)もしくは(c)の組み合わせなどが含まれる。好ましい酸付加塩類は、トリフルオロ酢酸塩および酢酸塩である。
【0025】
本明細書において使用される「薬学的に許容される担体」とは、活性成分と組み合わされた場合に、その成分の生物活性を維持させ、被験者の免疫系とは非反応性である、任意の材料を含む。例としては、これらに限定されるわけではないが、リン酸緩衝生理食塩水、水、水中油型乳剤などの乳剤、および様々な種類の湿潤剤などの、任意の標準薬学的担体が挙げられる。エアロゾルまたは非経口投与のための好ましい希釈剤は、リン酸緩衝生理食塩水または標準(0.9%)生理食塩水である。
【0026】
そのような担体を含む組成物は、既知の従来法によって製剤化される(例えば、「レミントンの薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、第43章、第14版、Mack Publishing Co、Easton PA 18042、USAを参照のこと)。
【0027】
本明細書において使用される「アジュバント」には、免疫応答の刺激を容易にするために当技術分野において一般的に使用されるアジュバントが含まれる。アジュバントの例には、これらに限定されるわけではないが、ヘルパーペプチド;水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)またはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩類;フロイント不完全アジュバントおよびフロイント完全アジュバント(Difco Laboratories、Detroit、MI);メルクアジュバント65(Merck Adjuvant 65)(Merck and Company, Inc.、Rahway、NJ);AS−2(Smith−Kline Beecham);QS−21(Aquilla);MPL(商標)免疫刺激剤または3d−MPL(Corixa Corporation);LEIF;カルシウム、鉄または亜鉛の塩類;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖類;陽イオン性または陰イオン性に誘導された多糖類;ポリホスファゲン;生分解性のミクロスフェア;モノホスホリルリピドAおよびquil A;ムラミルトリペプチドホスファチジルエタノールアミン、または、サイトカイン(例えばGM−CSFまたはインターロイキン−2、−7もしくは−12)および免疫刺激性DNA配列を含む免疫刺激複合体が挙げられる。ポリヌクレオチドワクチンの使用を伴うようないくつかの態様において、ヘルパーペプチドまたはサイトカインなどのアジュバントを、そのアジュバントをコードするポリヌクレオチドを経て提供することができる。
【0028】
本明細書において使用される「ある(aまたはan)」とは、他に明らかに示されない限り、少なくとも1つを意味する。
【0029】
核酸送達系
本発明は、生分解性のミクロスフェア中にカプセル化されたデオキシリボ核酸(DNA)を含む、核酸送達系を提供する。好ましい態様において、ミクロスフェア中の少なくとも50%のDNAが超らせんDNAを含み、かつ少なくとも50%のDNAが、約37℃において7日後にミクロスフェアから放出される。いくつかの態様において、少なくとも70%のDNAが、約37℃において7日後にミクロスフェアから放出される。好ましくは、ミクロスフェアは少なくとも約40%のカプセル化率を有する。ある態様において、少なくとも約90%のミクロスフェアが、直径約1μm〜約10μmである。このサイズ範囲内のミクロスフェアは、抗原提示細胞によって貪食されるのに十分適しており、有効なT細胞刺激をもたらす。
【0030】
本発明のミクロスフェアは、好ましくは、ポリ(ラクト−コ−グリコリド)(PLG)、ポリ(ラクチド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、および/またはそれらの共重合体などの生分解性重合体を含む。または、ミクロスフェアは、その他の壁形成材料を含み得る。適した壁形成材料には、これらに限定されるわけではないが、ポリ(ブタジエン) などのポリ(ジエン);ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリ(アルケン);ポリ(アクリル酸) などのポリ(アクリル);ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート) などのポリ(メタクリル);ポリ(ビニルエーテル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(ビニルケトン);ポリ(塩化ビニル) などのポリ(ハロゲン化ビニル);ポリ(ビニルニトリル);ポリ(酢酸ビニル) などのポリ(ビニルエステル);ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(5−メチル−2−ビニルピリジン) などのポリ(ビニルピリジン);ポリ(スチレン);ポリ(カーボネート);ポリ(エステル);ポリ(オルトエステル);ポリ(エステルアミド);ポリ(無水物);ポリ(ウレタン);ポリ(アミド);メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースエーテル;酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸酪酸セルロースなどのセルロースエステル;多糖類、タンパク質、ゼラチン、デンプン、ゴム、樹脂などが含まれる。これらの材料を、単独で、物理的混合物(混成物)として、または共重合体として使用してよい。核酸送達系は、アジュバントを、好ましくはアミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)をさらに含み得る。
【0031】
ミクロスフェア製剤
本発明は、核酸分子をミクロスフェア中にカプセル化するための方法を提供する。本方法は、重合体を溶媒に溶解させ、重合体溶液を形成する段階;核酸分子を含む水溶液を重合体溶液に添加し、一次乳剤を形成する段階;一次乳剤を均質化する段階;一次乳剤を、安定化剤を含む加工媒質と混合し、二次乳剤を形成する段階;および二次乳剤から溶媒を抽出し、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアを形成する段階を含む。典型的には、これらの方法の段階は、氷上で、好ましくは凍結温度より高く37℃未満に温度を維持しながら実行される。ある態様において、溶液および媒質は約2℃〜約35℃に維持される。別の態様において、溶液および媒質は、約4℃〜約25℃に維持される。ミクロスフェア調製の一次乳化段階および二次乳化段階の間、材料を37℃より低く維持することにより、DNAのニック形成を減少できる。より多くのDNAを超らせん形態に保存することにより、細胞のより効率的なトランスフェクションが容易になる。本方法は、その後のミクロスフェアの洗浄段階、凍結段階および凍結乾燥段階をさらに含み得る。
【0032】
好ましい態様において、重合体はPLGを含む。いくつかの態様において、PLGはエステル末端基またはカルボン酸末端基を含むことができ、約4 kDa〜約120 kDaの分子量、または好ましくは、約8 kDa〜約65 kDaの分子量を有する。溶媒は例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、または酢酸エチルを含み得る。いくつかの態様において、重合体溶液は、陽イオン脂質および/またはMPLなどのアジュバントをさらに含む。安定化剤の例には、これらに限定されるわけではないが、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、またはそれらの混合物が含まれる。安定化剤は選択的に、陽イオン脂質をさらに含み得る。いくつかの態様において、安定化剤は、約0%〜約10%の加工媒質、または好ましくは、約1%〜約5%の加工媒質を含む。いくつかの態様において、溶媒は、約0.001%〜約0.5%の内部水容積を含み、かつ/または、水溶液は、約0%〜約75%(v/v)のエタノール含量を含む。
【0033】
核酸分子は、好ましくはDNAを含む。ある態様において、水溶液は、約0.2 mg/ml〜約12 mg/mlのDNAを含む。水溶液は、選択的に、BSA、HSAもしくは糖などの安定化剤、またはQS21などのアジュバントをさらに含み得る。ある態様において、DNAは、約2 kb〜約12 kbのプラスミド、好ましくは約3 kb〜約9 kbのプラスミドを含む。
【0034】
好ましくは、少なくとも50%のDNAは、抽出段階を通して、より好ましくは、その後の、凍結乾燥などの全ての段階を通して、超らせん構造を保持する。カプセル化率が少なくとも約40%であり、かつ/または、ミクロスフェアが、37℃での水性環境のような望ましい送達環境との接触後約7日以内に、少なくとも約50%の核酸分子を放出するような方法もまた好ましい。より好ましい態様において、ミクロスフェアは、少なくとも約50%の核酸分子を約4日以内に放出する。少なくとも約90%のミクロスフェアが、約1μm〜約10μmであるような方法もまた好ましい。
【0035】
核酸分子のような水溶性の薬剤は、ラクチド/グリコリド共重合体のような疎水性壁形成材料を通して拡散しないため、徐放性適用のためにこれらの薬剤が外へ拡散できるよう、ミクロスフェア膜に孔(pore)を作製しなければならない。得られる多孔性には幾つかの要因が影響を与える。カプセル化される薬剤の量は、ミクロスフェアの多孔性に影響を及ぼす。より大きな薬物領域がミクロスフェア内に存在するため、明らかに、より多くの量を充填されたミクロスフェア(即ち、約20重量%を上回り、かつ好ましくは20重量%〜80重量%の間)は、少量の薬剤(即ち、約20重量%未満)を含むミクロスフェアよりも多孔性である。ミクロスフェアに取り込むことができる薬剤の壁形成材料に対する比率は、0.1%くらいの低さから80%くらいの高さまで可能である。
【0036】
壁形成材料を溶解させるのに使用される溶媒もまた、膜の多孔性に影響を与えると考えられる。酢酸エチルなどの溶媒から調製されるミクロスフェアは、クロロホルムから調製されるミクロスフェアより多孔性のものと考えられる。これは、酢酸エチル中ではクロロホルム中よりも水の可溶性が高いことに起因する。より具体的には、乳化段階中は、加工媒質が溶媒で飽和されるため、溶媒は微小滴(microdroplet)から除去されない。しかし、本過程の乳化段階中に、水を微小滴の溶媒中に溶解させることは可能である。適切な溶媒または共溶媒を選択することにより、微小滴中に溶解すると考えられる連続的な加工媒質量を調節でき、これはミクロスフェアの膜の最終的な多孔性および内部構造に影響すると考えられる。
【0037】
膜の多孔性に影響すると考えられるその他の要因は、溶媒中における壁材料/賦形剤の初期濃度である。溶媒中の壁材料が高濃度であれば、壁材料/賦形剤が低濃度の場合よりも、多孔性のより低い膜が生じる。また、溶媒中の壁材料/賦形剤が高濃度であれば、溶液の粘度がより高くなるため、水溶性化合物のカプセル化率が改善される。一般に、溶媒中の壁形成材料/賦形剤の濃度は、使用される壁形成材料および溶媒の分子量などの、壁材料/賦形剤の物理的/化学的な特性に依存して、約3%〜約40%の範囲にわたると考えられる。
【0038】
組成物
本発明は、核酸分子を送達するために有用な組成物を提供する。核酸分子は、癌または感染性疾患に関連する抗原をコードするものを含むことができ、癌または感染性疾患を治療および予防するための組成物を提供する。ある態様において、組成物は薬学的組成物である。組成物は、癌または感染性疾患に関連する1つまたは複数の抗原をコードまたは提示する、治療的または予防的有効量のポリヌクレオチド、組み換えウイルス、APCまたは免疫細胞を含み得る。有効な量とは、例えばT細胞を活性化することにより、免疫応答を惹起するまたは増大させるのに十分な量である。T細胞の活性化の測定法の一つは、下記の実施例において記載されるような、細胞傷害性アッセイまたはインターフェロン−γ放出アッセイである。いくつかの態様において、組成物はワクチンである。
【0039】
いくつかの態様において、治療または予防されるべき状態とは、癌または前癌状態(例えば、過形成、化生(metaplasma)、異形成)である。癌の例には、これらに限定されるわけではないが、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原生癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮癌、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、神経膠星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、網膜芽腫、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、およびH鎖病が含まれる。
【0040】
いくつかの態様において、治療または予防されるべき状態とは、感染性疾患である。感染性疾患の例には、これらに限定されるわけではないが、病原体、ウイルス、細菌、真菌または寄生生物への感染が含まれる。ウイルスの例には、これらに限定されるわけではないが、B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、水痘ウイルス、アデノウイルス、単純疱疹ウイルスI型またはII型、牛疫ウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、RSウイルス、パピローマウイルス、パポーバウイルス、サイトメガロウイルス、echinovirus、アルボウイルス、ハンタウイルス、コクサッキーウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス、ヒト免疫不全ウイルスI型またはII型が含まれる。細菌の例には、これらに限定されるわけではないが、結核菌(M. tuberculosis)、マイコバクテリウム属、マイコプラズマ属、ナイセリア属およびレジオネラ属が含まれる。寄生生物の例には、これらに限定されるわけではないが、リケッチア属およびクラミジア属が含まれる。
【0041】
組成物は選択的に、薬学的に許容される担体などの担体を含み得る。薬学的に許容される担体は、部分的に、投与される特定の組成物によって、および組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定される。したがって、本発明の薬学的組成物には広範な種類の最適な製剤が存在する。製剤は、例えば(関節における)関節内、静脈内、筋内、皮内、腹腔内、および皮下経路などの、非経口投与に適しており、担体は、抗酸化薬、緩衝液、静菌薬を含み得る水性等張滅菌注射溶液、および対象となるレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質、および懸濁化剤、可溶化剤、粘稠化剤、安定化剤、保存剤、リポソーム、ミクロスフェアおよび乳剤を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁液を含む。
【0042】
本発明の組成物は、1つまたは複数のアジュバントをさらに含み得る。アジュバントの例は、これらに限定されるわけではないが、ヘルパーペプチド、ミョウバン、フロイントのムラミルトリペプチドホスファチジルエタノールアミンまたはサイトカインを含む免疫刺激複合体を含む。ポリヌクレオチドワクチンの使用を伴うようないくつかの態様において、ヘルパーペプチドまたはサイトカインなどのアジュバントを、アジュバントをコードするポリヌクレオチドを経て提供できる。好ましいアジュバントはAGPである。
【0043】
ワクチン調製物については、例えばM.F.パウエル(Powell)およびM.J.ニューマン(Newman)編、「ワクチン設計(サブユニットおよびアジュバントのアプローチ)(Vaccine Design(the subunit and adjuvant approach))」、プレナム出版(Plenum Press)(NY、1995)において概要が記載されている。本発明の範囲内の薬学的組成物およびワクチンはまた、生物学的に活性または不活性でありうるその他の化合物を含み得る。
【0044】
担体として使用するための生分解性のミクロスフェア(例えば、ポリ乳酸塩ポリグリコール酸塩(polylactate polyglycolate))は、例えば米国特許第4,897,268号;同第5,075,109号;同第5,928,647号;同第5,811,128号;同第5,820,883号;同第5,853,763号;同第5,814,344号;同第5,407,609号;および同第5,942,252号において開示されており、その各々の開示は参照として本明細書に組み入れられている。特に米国特許第4,897,268号および同第5,407,609号などの、これらの特許は、様々な使用のための生分解性のミクロスフェアの産生について説明しているが、DNA送達のための、ミクロスフェアの製剤化および特性の最適化については開示していない。
【0045】
そのような組成物はまた、緩衝液(例えば、中性緩衝生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水)、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、ショ糖もしくはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチド、もしくはグリシンなどのアミノ酸、抗酸化薬、EDTAもしくはグルタチオンなどのキレート剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、および/または保存剤を含み得る。または、本発明の組成物は、凍結乾燥剤として製剤化されうる。化合物はまた、既知の技術を用いてリポソーム内にカプセル化されうる。
【0046】
アジュバント
本発明は、DNAワクチンと共に使用するための、特に、生分解性のミクロスフェア中にカプセル化されたDNAワクチンと共に使用するためのアジュバントをさらに提供する。そのようなアジュバントは、その開示の全体が参照として本明細書に組み入れられる、係属中の米国特許出願第08/853,826号および同第09/074,720号において記載されるものなどのように、アミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)を含む。
【0047】
本発明の組成物は、AGPアジュバントおよび/または付加的なアジュバントを含み得る。ほとんどのアジュバントは、抗原を急速な異化作用から保護するように設計された、水酸化アルミニウムまたはワセリンなどの物質、および、リピドAや、百日咳菌または結核菌(M. tuberculosis)由来のタンパク質などの免疫応答の刺激物質を含む。適したアジュバントは、例えば、フロイント不完全アジュバントおよびフロイント完全アジュバント(Difco Laboratories、Detroit、MI);メルクアジュバント65(Merck Adjuvant 65)(Merck and Company, Inc.、Rahway、NJ);水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)またはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩類;カルシウム、鉄または亜鉛の塩類;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖類;陽イオン性または陰イオン性に誘導された多糖類;ポリホスファゲン生分解性ミクロスフェア;モノホスホリルリピドAおよびquilAとして市販されている。GM CSFまたはインターロイキン−2、−7もしくは−12などのサイトカインもまた、アジュバントとして使用することができる。
【0048】
本明細書において提供されるワクチン内において、アジュバント組成物は好ましくは、主にTh1型の免疫応答を誘導するように設計される。高レベルのTh1型サイトカイン(例えば、IFN−γ、IL−2およびIL−12)は、投与された抗原に対する、細胞仲介型免疫応答の誘導を促進する傾向がある。対照的に、高レベルのTh2型サイトカイン(例えば、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10およびTNF−β)は、液性免疫応答の誘導を促進する傾向がある。本明細書において提供されるようなワクチンの適用後、患者は、Th1型およびTh2型の反応を含む免疫応答を確立すると考えられる。反応が主にTh1型であるような、ある好ましい態様内においては、Th1型サイトカインのレベルがTh2型サイトカインのレベルよりも著しく上昇する。これらのサイトカインのレベルは、標準アッセイを用いて容易に評価されうる。サイトカインファミリーの概要については、モスマン(Mosmann)およびコフマン(Coffman)、1989、Ann.Rev.Immunol. 7:145〜173を参照のこと。
【0049】
Th1型反応を主に惹起する際に使用するための好ましいアジュバントには、例えば、モノホスホリルリピドA、好ましくは3−デ−O−アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)の、アルミニウム塩との組み合わせが含まれる。MPLアジュバントは、リビイムノケムリサーチ社(RiBi ImmunoChem Research Inc.)(Hamilton、MT)から入手可能である(米国特許第4,436,727号;同第4,877,611号;同第4,866,034号および同第4,912,094号を参照のこと)。(CpGジヌクレオチドがメチル化されていない)CpG含有オリゴヌクレオチドもまた、主にTh1反応を誘導する。そのようなオリゴヌクレオチドはよく知られており、例えば、国際公開公報第96/02555号において記載されている。その他の好ましいアジュバントは、単独で、または他のアジュバントと組み合わせて使用されうる、サポニン、好ましくはQS21である。例えば、増強系は、国際公開公報第94/00153号において記載されたQS21と3D−MPLとの組み合わせのような、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体との組み合せを含む、または、国際公開公報第96/33739号において記載されるた、QS21がコレステロールによって抑制されるような、より反応原性(reactogenic)の低い組成物との組み合わせを含む。その他の好ましい製剤は、水中油型乳剤およびトコフェロールを含む。水中油型乳剤中のQS21、3D−MPLおよびトコフェロールを含む、特に強力なアジュバント製剤は、国際公開公報第95/17210号において記載される。使用されうるその他のアジュバントは、AS−2(Smith−Kline Beecham)である。本明細書において提供される任意のワクチンが、抗原、免疫応答増強剤および適した担体または賦形剤の組み合わせを生じるような既知の方法を用いて調製されうる。
【0050】
本明細書において記載される組成物を、徐放性製剤(即ち、投与後に化合物の遅延型の放出をもたらす、カプセルまたはスポンジなどの製剤)の一部として投与できる。そのような製剤を一般に、既知の技術を用いて調製でき、例えば、口、直腸、もしくは皮下への移植によって、または望ましい標的部位における移植によって投与できる。徐放性製剤は、担体マトリクス中に分散されている、および/または速度制御膜に囲まれたリザバー(reservoir)内に含まれる、ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体を含み得る。そのような製剤内での使用のための担体は、生体適合性であり、また生分解性であってもよい。好ましくは、製剤は比較的一定のレベルの活性成分の放出を提供する。徐放性製剤内に含まれる活性化合物の量は、移植部位、放出の速度および予想持続期間、ならびに治療または予防される状態の性質に依存する。
【0051】
方法
本発明は、被験者に核酸分子を送達するための方法を提供する。本発明は、被験者において免疫応答を惹起するための方法、および、被験者における癌または感染性疾患に対する治療および/または防御のための方法を付加的に提供する。本方法は、本発明の核酸送達系または組成物を被験者に投与する段階を含む。投与を、上記に記載されるように実行することができる。ある態様において、癌は乳癌である。この態様において、好ましい核酸送達系は、乳癌抗原であるher2/neuをコードする核酸分子を含む。その他の態様において、感染性疾患は結核である。この態様において、好ましい核酸送達系は、結核抗原であるTbH9をコードする核酸分子を含む。
【0052】
本発明はまた、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアの免疫刺激有効性を調節するための方法を提供する。本発明は、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアの投与に対するアジュバントとしてAGPを投与する段階を含む。AGPを、ミクロスフェアと同時に、または、ミクロスフェア投与の前もしくは後に投与することができる。AGPをミクロスフェア内にDNAと共にカプセル化してもよく、ミクロスフェアと共に組成物に含ませてもよく、または、ミクロスフェアとは別の組成物内に投与してもよい。本発明の方法の典型的な態様において、AGPは、核酸分子をカプセル化するミクロスフェアによって惹起される免疫応答を増強する。
【0053】
本発明の送達ビヒクルを、癌性細胞または感染細胞を標的とする抗原特異的な免疫応答の発生を容易にするために使用してもよい。本発明のある好ましい態様では、樹状細胞またはその前駆細胞を抗原提示細胞(APC)として使用する。樹状細胞は非常に強力なAPCであり(BanchereauおよびSteinman、Nature 392: 245〜251、1998)、予防的または治療的な免疫性を惹起するための生理学的アジュバントとして有効であることが示されている(TimmermanおよびLevy、Ann. Rev. Med. 50: 507〜529、1999を参照のこと)。一般に、樹状細胞を、それらの典型的な形状に基づいて(インサイチューにおいては星状であり、インビトロでは目に見える明らかな細胞質の突起(樹状突起)を有する)、および、標準アッセイを用いて決定される、B細胞の分化マーカー(CD19およびCD20)、T細胞の分化マーカー(CD3)、単球の分化マーカー(CD14)、およびナチュラルキラー細胞の分化マーカー(CD56)の欠如に基づいて同定できる。樹状細胞は、当然のことながら、インビボまたはエクスビボにおいて、樹状細胞上では一般に見出されない特定の細胞表面受容体またはリガンドを発現するよう操作されうり、そのように修飾された樹状細胞は、本発明によって意図されるものである。樹状細胞の代替物として、分泌小胞抗原充填樹状細胞(secreted vesicles antigen−loaded dendric cell)(エキソソーム(exosome)と呼ばれる)を、ワクチン内にて使用することができる(Zitvogelら、1998、Nature Med. 4:594〜600)。
【0054】
樹状細胞および前駆細胞は、末梢血、骨髄、腫瘍浸潤細胞、腫瘍周囲組織浸潤細胞、リンパ節、脾臓、皮膚、臍帯血または任意の他の適切な組織もしくは体液から得られる。例えば、GM−CSF、IL−4、IL−13および/またはTNFαなどのサイトカインの組み合わせを、末梢血から収集された単球の培養物にエクスビボにおいて加えることにより、樹状細胞を分化させることが可能である。または、GM−CSF、IL−3、TNFα、CD40リガンド、LPS、flt3リガンドおよび/もしくは、樹状細胞の成熟および増殖を誘導する他の化合物の組み合わせを培養媒質に加えることにより、末梢血、臍帯血または骨髄から収集されたCD34陽性細胞を、樹状細胞に分化させることができる。
【0055】
樹状細胞は便宜上、「未熟な」細胞および「成熟した」細胞に分類されており、それにより、2つの十分特徴付けられた表現型の識別が簡単になる。しかし、この命名法は、全ての潜在的な分化の中間段階を除外するものと解釈されるべきではない。未熟な樹状細胞は、Fcγ受容体、マンノース受容体およびDEC−205マーカーの高発現と相関する、抗原の取り込みおよびプロセシングの高い能力を有するAPCとして特徴付けられる。成熟表現型は、これらのマーカーは低発現であるが、I型およびII型のMHC、接着分子(例えば、CD54およびCD11)、ならびに共刺激分子(例えば、CD40、CD80およびCD86)などの、T細胞活性化の原因となる細胞表現分子は高発現であることにより、典型的には特徴付けられる。APCがDNAを取り込み、細胞表面上にて発現されるポリペプチドまたはその免疫原性部分を発現できるように、APCを、本発明のミクロスフェア中にカプセル化されたポリヌクレオチドと組み合わせることができる。そのようなトランスフェクションは、エクスビボにて行われうり、本明細書において記載されるように、そのようなトランスフェクションされた細胞を含む組成物またはワクチンを、その後、治療目的のために使用することができる。または、樹状細胞または他の抗原提示細胞を標的とする遺伝子送達ビヒクルを患者に投与してもよく、その結果、インビボにおけるトランスフェクションが起こる。インビボおよびエクスビボにおける樹状細胞のトランスフェクションは、例えば、国際公開公報第97/24447号において記載されるもの、またはマーヴィ(Mahvi)ら、1997、Immunology and Cell Biology 75:456〜460に記載された遺伝子銃アプローチなどの、当技術分野において既知の任意の方法を用いて一般に行われうる。樹状細胞の抗原充填は、カプセル化されたDNAまたはRNAと共に樹状細胞または前駆細胞をインキュベートすることによって達成できる。T細胞の援助を提供する免疫学的パートナー(例えば担体分子)を用いて、樹状細胞を感作してもよい。
【0056】
組成物の投与
治療法には、予防および治療が含まれる。予防または治療は、一回または複数の時点における、単回の直接注射によって達成できる。また投与を、ほぼ同時に複数部位に対して行うことができる。患者または被験者には、ヒト、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ、およびヒツジなどの哺乳動物が含まれる。好ましくは、患者または被験者はヒトである。
【0057】
組成物はインビボにおいて典型的に、非経口(例えば、静脈内、皮下、および筋内)経路を介して、または、口腔内/舌下、直腸、経口、点鼻、局所的(経皮用および眼性など)、膣、肺、動脈内、腹腔内、眼内、または鼻内の経路などの、その他の従来的な直接経路を介して投与され、あるいは特定の組織へ直接投与される。筋内投与が好ましい。
【0058】
本発明の状況において、患者に投与される用量は、経時的に患者において有益な治療反応をもたらすのに十分、または、感染もしくは感染による疾患を阻害するのに十分でなければならない。したがって、特定の抗原に対する有効な免疫応答を惹起するのに十分な量、ならびに/または、疾患または感染由来の症状および/もしくは合併症を緩和、軽減、治癒もしくは少なくとも部分的に停止もしくは少なくとも部分的に予防するのに十分な量の組成物が患者に投与される。これを達成するのに十分な量は、「治療的に有効な用量」と定義される。
【0059】
産生される組成物の活性、および患者の状態、ならびに治療される患者の体重または体表面積によって、用量が決定されると考えられる。用量サイズはまた、特定の患者における特定の組成物の投与に伴う、任意の有害副作用の存在、性質、および程度によっても決定されると考えられる。疾患の治療または予防において投与されるべき組成物の有効量の決定の際、医師は、病原体に対する免疫応答の発生、疾患の進行、および任意の治療関連性の毒性について評価することを必要とする。
【0060】
免疫細胞を含む組成物を、その組成物が投与される被験者から得られる免疫細胞から調製するのが好ましい。または、免疫細胞を、HLA適合性ドナーから調製することができる。免疫細胞は、当技術分野において既知の従来技術を用いて被験者またはドナーから得られ、本発明のエピトープを提示するように修飾されたAPCに曝露され、エクスビボにおいて増殖し、被験者に投与される。エクスビボ治療のためのプロトコールは、ローゼンバーグ(Rosenberg)ら、1990、New England J. Med. 9:570〜578において記載されている。
【0061】
本明細書において記載されるように、インビトロにおける増殖による養子免疫療法のために十分な量の免疫細胞を一般に得ることが可能である。単一の抗原特異的エフェクター細胞を、インビボにおける抗原認識を保持したまま数十億個まで増殖させるための培養条件は、当技術分野においてはよく知られている。そのようなインビトロの培養条件では典型的に、しばしば(IL−2などの)サイトカインおよび非***フィーダー細胞の存在下において、抗原による間欠的な刺激が用いられる。上記のように、免疫療法のために十分な数の細胞を産生するために、本明細書において提供される免疫反応性ポリペプチドを用いて抗原特異的T細胞培養物を富栄養化して迅速に増殖させることができる。特に、樹状細胞、マクロファージ、単球、線維芽細胞および/またはB細胞などの抗原提示細胞を、免疫反応性ポリペプチドで感作できる、または、当技術分野において既知の標準技術を用いて1つまたは複数のポリヌクレオチドでトランスフェクションできる。例えば、抗原提示細胞を、組み換えウイルスまたはその他の発現系における発現増加のために適したプロモーターを有するポリヌクレオチドでトランスフェクションできる。治療において使用するための培養エフェクター細胞は、増殖および広範な分布が可能でなければならず、かつ、インビボにおいて長期間生存できなければならない。IL−2添加抗原を用いた反復刺激によって、インビボにおいて増殖し、かつ実質的な数が長期間生存するように、培養エフェクター細胞を誘導できることが、研究によって示された(例えば、Cheeverら、1997、Immunological Reviews 157:177を参照のこと)。
【0062】
本明細書において記載された、またはさもなくば当技術分野において既知の多くの投与経路を介した投与は、針、カテーテルまたは関連装置を用いた、一回または複数の時点における直接的な投与によって、簡単に達成されうる。
【0063】
実施例
以下の実施例は、本発明を説明するために、および当業者がこれを作製および使用することを助けるために示される。本実施例は、本発明の範囲を特に制限することを決して意図するものではない。
【0064】
実施例 1 : PLG ミクロスフェア中にカプセル化された DNA は、 CTL 反応を生じる
本実施例は、所望のインビトロ特性を有するDNA PLGミクロスフェア製剤について説明する。特に、そのDNA内容物を1週間に渡って放出することが可能な直径1μm〜10μmのミクロスフェアを、高いカプセル化率(60%〜80%)およびDNA超らせん状態の高い保持率(70%)をもたらすような過程を用いて調製した。マウスにおいてこれらのミクロスフェアが、感染性疾患(結核)および癌の双方に関するタンパク質抗原をコードするプラスミドに対する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)反応を生じることを見出したら、最も強く最も安定したCTL反応を生じる原因となる要因を解明するために一連の実験を行った。筋内および腹腔内における免疫化が、免疫化の最も有効な経路であった。ミクロスフェア再懸濁緩衝液も重要なパラメータであることが見出され、PBSは塩非含有緩衝液と比べてCTL反応を阻害した。さらに、幾つかのアミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)アジュバントが、これらのDNAミクロスフェアと共にCTL反応を増強することが見出された。
【0065】
材料および方法
二重乳剤技術(J.H. Eldridgeら、Mol Immunol、28:287〜294、1991;S. Cohenら、Pharm Res、8:713〜720、1991)の変法を用いて、抗原性タンパク質をコードするDNAを含むPLGミクロスフェアが調製された。特に、Tris−EDTA緩衝液(10 mM;pH 8)中のプラスミドDNA(10 mg〜30 mg)、エタノール0.38 mlを組み合わせ、Tris−EDTA緩衝液(10 mM;pH 8)を用いて、容積を5.1 mlまで調整した。これは内部(水)相である。1200 mgのポリ(ラクチド−コ−グリコリド)重合体を、13.9 mlのジクロロメタン(DCM)に溶解させ、氷上に置いた。内部水性相をPLG溶液に加え、Polytron組織ホモジナイザーを用いて、氷上に置いたまま30 mlシリンジ中で20秒間混合し、一次乳剤(油中水型)を形成した。二次乳剤は、氷上で、1.4% カルボキシメチルセルロース(w/v)または加工媒質280 mlを含むビーカーに一次乳剤を添加し、氷上に置いたままSilversonミキサーで4500 rpmにて75秒間混合することにより調製した。二次乳剤を約5リットルのMiliQ水を用いて希釈し、その後、ミクロスフェアからジクロロメタンを抽出してミクロスフェアを硬化するために、オーバーヘッドスターラーを用いて約20分間混合した。
【0066】
得られたミクロスフェアを、MiliQ水および遠心分離法を用いて2〜3回洗浄した。洗浄後、濃縮ミクロスフェアにマンニトールを加え、凍結および凍結乾燥した。凍結乾燥されたミクロスフェアをその後、サイズ分布、DNA含量(コア充填(core−loading);この値から、カプセル化率が計測された)、放出速度、およびカプセル化されたDNAの超らせん含量についてアッセイした。
【0067】
粒子サイズ決定は、MIE光散乱を用いて行われた。コア充填は、塩化メチレン中にミクロスフェアを溶解し、水性緩衝液を用いてDNAを抽出することにより決定された。その後、PicoGreen蛍光アッセイを用いてDNA濃度を測定した。アガロースゲルのデジタルUV画像解析によって、プラスミドの形態を決定した。本研究においては2つのプラスミド、一方は結核抗原TbH9をコードするもの、およびもう一方は乳癌抗原Her−2/neuをコードするものを使用した。
【0068】
水性緩衝液中に分散されたDNAミクロスフェアを用いてマウスを免疫化した。2週間間隔をあけて3×20μgによりマウスを免疫化することによって、筋内、腹腔内および皮下を含む幾つかの投与経路について試験を行った。過去の研究では、複数回の免疫化およびより高用量のカプセル化DNAによって、より強いCTL反応が得られることが示された。選択されたアミノアルキルグルコサミニド4−リン酸アジュバントとミクロスフェアとの組み合わせは、10μgのアジュバントと共に、最適以下の(sub−optimal)免疫化スケジュールを用いることによって、すなわちPBS中に分散されたカプセル化DNAの10μgの単回用量を用いることによって調べられた。最後に、PBSまたは塩化ナトリウム非含有リン酸緩衝液(PB)のいずれかの中に分散されたカプセル化DNAの10μgの単回用量をマウスに投与することにより、再懸濁緩衝液の影響を調べた。
【0069】
マウスから収集された脾細胞を用いて、CTL反応を測定した。関心対象の抗原でトランスフェクションしたAPC系を用いた免疫脾細胞の培養によって、CTL系を作製した。系を一週間毎に刺激し、インビトロにおける刺激の6日後、標準クロム51放出アッセイにおいてCTL活性を評価した。
【0070】
結果
本過程によって、小型で(直径約1μm〜10μm)、放出速度が迅速で、カプセル化率が高く(40%〜80%)、かつ超らせんDNAのの保持に優れたミクロスフェアが得られた。33%を上回るミクロスフェア内容物が、インビトロにおいて、37℃にて48時間後に放出された;50%を上回る内容物が、4日後に放出された;かつ70%を上回る内容物が、7日後に放出された。ミクロスフェアから抽出されたプラスミドについての超らせんDNA対ニックDNAの比率は、入力DNAの比の50%を上回った。
【0071】
図1は、本発明のDNAミクロスフェアの、小型で多孔性という性質を示す、走査型電子顕微鏡写真である。ミクロスフェアは、多孔性に加え、高い表面積対体積比、および特徴的な短い拡散距離を有し、それらが、カプセル化されたDNAの10日間に渡る比較的迅速な放出を容易にしている。バーは5μmを表し、倍率は3,000×である。
【0072】
図2は、本発明に従って製剤化されたDNAミクロスフェアの典型的な粒子サイズ分布を示すグラフである。ミクロスフェアの直径は1μm〜10μmの範囲に渡り、このため、抗原提示細胞によって貪食されるのに十分適したものとなっている。
【0073】
図3Aは、ミクロスフェア製剤において使用されるDNA量(mg)の関数としてカプセル化率を示すグラフである。
【0074】
図3Bは、製剤において使用されるDNA量(mg)の関数としてミクロスフェアのコア充填を示すグラフである。DNA量の増加に伴う、コア充填における直線的な増加により、カプセル化率が約72%で本質的に一定に維持される可能性が示唆される。約1.2%のコア充填においてミクロスフェアはDNAで飽和されており、より多くの量のDNAを加えるとカプセル化率が低くなる。
【0075】
図4は、カプセル化されていないDNA(レーン2)およびPLGミクロスフェアから抽出されたDNA(レーン3〜8)のアガロースゲル電気泳動の結果を示す。レーン1は、分子量マーカーを含む。DNAの最小のニック形成(上方のバンド)は、ミクロスフェアの調製中に生じた。具体的には、デンシトメーター解析により測定されたように、カプセル化および抽出の後、初期DNAの超らせん含量の81%(±3%)が保持されていた。裸のDNAの89%、および、カプセル化され抽出されたDNAの72%が超らせん状態にあった。
【0076】
図5は、本発明のミクロスフェアを用いた、10日間に渡る、DNA放出速度を示すグラフである。データは、時間(日数)の関数として、DNA放出率(%)としてプロットされる。ミクロスフェア製剤はDNAを比較的迅速に放出し、ほぼ全てのDNAが10日目までに放出された。そのような速い放出速度は、部分的には、ミクロスフェア内におけるDNAの分解がより長期間に渡って起こらないということによって、遅い放出(例えば30+日)よりも有利である。
【0077】
図6は、PBS中に再懸濁されたカプセル化Her−2/neu DNA 20μgを用いた免疫化に2週間の間隔で3回供されたマウス由来の培養T細胞の、細胞溶解活性を示すグラフである。細胞溶解活性は、標準51Crアッセイを用いて測定された。データは、エフェクター:標的の比率の関数として、溶解率(%)としてプロットされる。マウスを腹腔内(丸)、筋内(三角)、または皮下(四角)にて免疫化した。黒および白の記号は、特異的または非特異的な標的をそれぞれ表す。各群は5個体のマウスを含み、反応の平均が示されている。腹腔内および筋内における免疫化の双方で、一貫してより強い反応が生じた一方、皮下における免疫化では、典型的にはより弱い反応が生じた。
【0078】
図7は、TbH9 DNAの10μg単回用量を筋内にて与えられたマウス由来の培養T細胞の細胞溶解活性を示すグラフである。細胞溶解活性は、標準51Crアッセイを用いて測定された。データは、エフェクター:標的の比率の関数として、特異的な溶解率(%)としてプロットされる。マウスには、DNAミクロスフェア単独(下方の丸)、AGPアジュバント10μgを加えたDNAミクロスフェア(517、527、547および568という印が付けられた線)、裸のDNA(下方の四角)または生理食塩水(下方の三角)が投与された。各群はマウス4個体を含み、反応の平均が示される。この最適以下の免疫化スケジュール(即ち、PBSを緩衝液として用いた1×10μgによる免疫化)下において、裸のDNA、またはミクロカプセル化されたDNA単独のいずれかを用いて免疫化されたマウス群は、実質的なCTL反応を生じなかった。対照的に、AGP−568、AGP−517、またはAGP−547と組み合わせたミクロスフェアを用いて免疫化されたマウスは、強いCTL反応を生じることができた。AGP−527は、本アッセイにおいては抑制性であると考えられた。
【0079】
図8は、DNAミクロスフェアに関連して評価された、アミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)の分子構造を示す。これらの合成分子は、エナンチオ選択的過程を用いて調製された。
【0080】
図9は、PBS(三角)、または塩化ナトリウム非含有等張リン酸緩衝液(丸)のいずれかに再懸濁されたTbH9 DNAの10μg単回用量を与えられたマウス由来の培養T細胞の、細胞溶解活性を示すグラフである。四角は生理食塩水を用いて免疫化されたマウスを示す。細胞溶解活性は、標準51Crアッセイを用いて測定された。データは、エフェクター:標的の比率の関数として、特異的な溶解率(%)としてプロットされる。各群はマウス4個体を含み、反応の平均が示される。この最適以下の免疫化スケジュール(即ち、1×10μgによる免疫化)下において、PBS中に分散した、ミクロカプセル化されたDNAを用いて免疫化されたマウス群は、実質的なCTL反応を生じなかった。対照的に、等張リン酸緩衝液(即ち、塩化ナトリウム非含有)中に分散したミクロスフェアを用いて免疫化されたマウスは、強いCTL反応を生じた。
【0081】
ミクロスフェアの基本的な特性を実質的に変化させることなく、上記に記載された過程に対する多数の改変が行われた。これらの改変は以下を含む。
【0082】
内部水相:
エタノール含量を、0%から75%(v/v)まで変化させた。容積を、0.1 mlから6.6 mlまで変化させた。QS21を含むアジュバントが加えられた。ウシ血清アルブミン(BSA)を含む安定化剤が添加された。
【0083】
DNA:
DNA量を、1 mgから60 mgまで変化させた。内部水相におけるDNA濃度を、0.2 mg/mlから12 mg/mlまで変化させた。プラスミドのサイズを、約3 kbから約9 kbの間で変化させた。her−2/neuおよびTbH9などの、プラスミドによってコードされる抗原もまた変化させた。
【0084】
重合体:
PLG重合体上の末端基を、エステル末端基とカルボン酸末端基の間で変化させた。PLG重合体の分子量を、約8 kDaから65 kDaまで変化させた。いくつかの場合において、陽イオン脂質(DOTAP)を重合体溶液に加え、0.5 mgから5 mgまで変化させた。PLG重合体の量を、150 mgから3000 mgの間で変化させた。MPLを含むアジュバントが、重合体溶液に加えられた。
【0085】
溶媒:
溶媒を、ジクロロメタン、クロロホルムおよび酢酸エチルの間で変化させた。内部水容積の溶媒容積に対する比率を、0.01から0.48まで変化させた。PLGの溶媒に対する濃度比を、11から217の間で変化させた。
【0086】
安定化剤:
加工媒質中における安定化剤を、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)および、CMCとPVAの混合物の間で変化させた。加工媒質中の安定化剤の含量を、1%と5%の間で変化させた。陽イオン脂質(DOTAP)を安定化剤に加えた。
【0087】
混合条件:
30 mlのシリンジおよび20 mlのシリンジの両方を、一次乳剤のための混合容器として試験した。Silversonミキサー上の様々な混合ヘッドについても試験を行った。
【0088】
要約
放出が迅速で、効率が高く、多孔性の、1μm〜10μmのDNAミクロスフェア製剤を開発し、試験を行った。2つの抗原、Her−2/neuおよびTbH9に対するCTL反応が、これらのDNAミクロスフェアを用いて生じた。さらに、Her−2/neuまたはTbH9 DNA免疫化によって作製されたT細胞が、対応する抗原を発現しているヒト腫瘍を認識し、殺すことが示された。筋内および腹腔内の経路は、CTL惹起のために最適であることが証明された。幾つかのAGPは、DNAミクロスフェアに実質的なCTLアジュバント活性を提供した。塩化ナトリウムは、DNAミクロスフェアに対するCTL発生を阻害した。
【0089】
実施例 2 : AGP アジュバントは DNA ミクロスフェアの有効性を増強する
本実施例においては、水性製剤中のAGP10μgを、PBS懸濁液中のPLGミクロスフェアの中にカプセル化された10μgのDNAに加えた。二重乳剤技術、CMC 安定化剤および「5.1」法を使用し、503H重合体を用いてミクロスフェアを調製し、直径約1μm〜10μmのミクロスフェアを得た。4個体のC57B1/6マウス群において、ミクロスフェアを筋内に注射した。免疫化の3〜4週間後、脾臓を収集し、単一細胞懸濁液に加工した。TbH9遺伝子を安定に発現しているEL−4細胞を用いて、脾細胞をインビトロにて刺激した。標準プロトコールによってCTL活性をアッセイした。新しい脾細胞をまた、5μg/mlの組み換えTbH9を用いてインビトロにて刺激し、IFN−γの分泌について、ELISAによって上清をアッセイした。AGPアジュバントが、ミクロスフェア中にカプセル化されたDNAによりコードされる抗原に対する、アジュバントなしで生じるものを上回る、強い細胞性免疫応答を提供できることが結果により示された。
【0090】
図10は、PLGミクロスフェア中にカプセル化されたTbH9 DNAをAGPと共に用いた免疫化の3〜4週間後に、マウスから収集された脾細胞を用いてアッセイされた、組み換えTbH9を用いたインビトロ刺激に応答したIFN−γ分泌(pg/ml)を示す棒グラフである。
【0091】
図11は、AGPを加えたPLGミクロスフェア中にカプセル化されたTbH9 DNAを用いて免疫化されたマウスから収集された脾細胞の、TbH9遺伝子を安定に発現するEL−4細胞を用いた、インビトロにおける単回刺激後の平均CTL活性を示すグラフである。グラフは、生理食塩水(黒菱形)、裸のDNA(濃い四角)、DNA−PLG(下方の三角)、および、AGP−517(薄い×)、AGP−522(星印)、AGP−525(丸)、AGP−527(+)、AGP−529(点線)、AGP−540(−)、AGP−544(白菱形)、AGP−547(薄い四角)、AGP−557(上方の三角)、またはAGP−578(濃い×)を加えたDNA−PLGを含む、免疫化条件に関する、エフェクター:標的の比率の関数として、特異的溶解率の平均を示す。
【0092】
図12Aは、TbH9 DNA−PLG単独(白四角)、AGP−527(黒四角)、AGP−544(濃い菱形)、AGP−557(黒丸)との併用、または裸のDNA(白丸)もしくは生理食塩水(三角)を用いて免疫化されたマウスに由来する脾細胞の、インビトロにおける第2回目の刺激後の平均CTL活性を示す。
【0093】
図12Bは、TbH9 DNA−PLGとAGP−517(黒四角)、AGP−547(濃い菱形)、AGP−568(濃い三角)との併用、または裸のDNAを用いて(×)免疫化されたマウスに由来する脾細胞の、インビトロにおける第2回目の刺激後の平均CTL活性を示す。
【0094】
実施例 3 :カプセル化された DNA により、サルにおいて惹起された免疫応答
本実施例は、裸のTbH9−VR1012 DNA、または本発明に従って調製されたミクロスフェア内にカプセル化されたTbH9−VR1012 DNAのいずれかを用いた、1ヶ月間隔の3回の免疫化の後、アカゲザルにおいて惹起された免疫応答を説明する。プラスミド 3.3 mgおよびRC527−AF 40μgからなる裸のDNAを用い、皮内および筋内の経路によって免疫化を行った。プラスミド 3 mgおよびRC 568−AF 50μgからなるミクロスフェアDNAは、筋内にて送達された。各群には4個体が含まれた。図13から15において示される結果により、ミクロスフェア中にカプセル化されたDNAが、裸のDNAを用いた場合に見出されたものよりも強い免疫応答を惹起したことが示されている。
【0095】
図13A〜図13Bは、ミクロスフェア中にカプセル化され、筋内に投与され(図13A)、または裸のDNAとして皮内または筋内経路を経て送達された(図13B)、TbH9を用いた第3回目の免疫化の4週間後における、アカゲザルのTbH9に対する血清抗体価を示すグラフである。各グラフにおいて示された4つの線は、個々の被験者を表す。
【0096】
図14は、生理食塩水、組み換えTbH9(rTbH9)、TbH9をコードする裸のDNA、またはTbH9をコードするDNAをカプセル化するミクロスフェアを用いた、第3回目の免疫化の4週間後における、サルのPBMCからの、抗原誘導性のγインターフェロン(IFN−γ)の産生を示す棒グラフである。個々のバーは、個々の被験者を示す。
【0097】
図15A〜図15Bは、TbH9をコードする、ミクロカプセル化された(図15A)または裸の(図15B)DNAを用いた第3回目の免疫化の2ヶ月後における、サルのCTL反応を示すグラフである。特異的な溶解率(%)は、エフェクター:標的の比率の関数としてプロットされる。丸は、TbH9標的細胞を表す。対照標的には、非感染細胞(四角)、および、非特異的標的であるEGFP(蛍光タンパク質)細胞(三角)が含まれる。
【0098】
当業者には、前述の説明において開示される概念および特定の態様が、本発明の同じ目的を実行するためにその他の態様を改変または設計するための基礎として容易に利用されうることが理解されよう。当業者にはまた、そのような同等の態様が、添付の特許請求の範囲に記載された、本発明の精神および範囲から逸脱しないことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のDNAミクロスフェアの、小型で多孔性という性質を示す、走査型電子顕微鏡写真である。ミクロスフェアは、多孔性に加え、高い表面積対体積比、および特徴的な短い拡散距離を有し、それらが、カプセル化されたDNAの10日間に渡る比較的迅速な放出を容易にしている。バーは5μmを表し、倍率は3,000×である。
【図2】本発明に従って製剤化されたDNAミクロスフェアの典型的な粒子サイズ分布を示すグラフである。ミクロスフェアの直径は1μm〜10μmの範囲に渡り、このため、抗原提示細胞によって貪食されるのに十分適したものとなっている。
【図3A】ミクロスフェア製剤において使用されるDNA量(mg)の関数としてカプセル化率を示すグラフである。
【図3B】製剤において使用されるDNA量(mg)の関数としてミクロスフェアのコア充填を示すグラフである。DNA量の増加に伴う、コア充填における直線的な増加により、カプセル化率が約72%で本質的に一定に維持される可能性が示唆される。約1.2%のコア充填においてミクロスフェアはDNAで飽和されており、より多くの量のDNAを加えるとカプセル化率が低くなる。
【図4】カプセル化されていないDNA(レーン2)およびPLGミクロスフェアから抽出されたDNA(レーン3〜8)のアガロースゲル電気泳動の結果を示す。レーン1は、分子量マーカーを含む。DNAの最小のニック形成(上方のバンド)は、ミクロスフェアの調製中に生じた。具体的には、デンシトメーター解析により測定されたように、カプセル化および抽出の後、初期DNAの超らせん含量の81%(±3%)が保持されていた。裸のDNAの89%、および、カプセル化され抽出されたDNAの72%が超らせん状態にあった。
【図5】本発明のミクロスフェアを用いた、10日間に渡る、DNA放出速度を示すグラフである。データは、時間(日数)の関数として、DNA放出率(%)としてプロットされる。ミクロスフェア製剤はDNAを比較的迅速に放出し、ほぼ全てのDNAが10日目までに放出された。そのような速い放出速度は、部分的には、ミクロスフェア内におけるDNAの分解がより長期間に渡って起こらないということによって、遅い放出(例えば30+日)よりも有利である。
【図6】PBS中に再懸濁されたカプセル化Her−2/neu DNA 20μgを用いた免疫化に2週間の間隔で3回供されたマウス由来の培養T細胞の、細胞溶解活性を示すグラフである。細胞溶解活性は、標準51Crアッセイを用いて測定された。データは、エフェクター:標的の比率の関数として、溶解率(%)としてプロットされる。マウスを腹腔内(丸)、筋内(三角)、または皮下(四角)にて免疫化した。黒および白の記号は、特異的または非特異的な標的をそれぞれ表す。各群は5個体のマウスを含み、反応の平均が示されている。腹腔内および筋内における免疫化の双方で、一貫してより強い反応が生じた一方、皮下における免疫化では、典型的にはより弱い反応が生じた。
【図7】TbH9 DNAの10μg単回用量を筋内にて与えられたマウス由来の培養T細胞の細胞溶解活性を示すグラフである。細胞溶解活性は、標準51Crアッセイを用いて測定された。データは、エフェクター:標的の比率の関数として、特異的な溶解率(%)としてプロットされる。マウスには、DNAミクロスフェア単独(下方の丸)、AGPアジュバント10μgを加えたDNAミクロスフェア(517、527、547および568という印が付けられた線)、裸のDNA(下方の四角)または生理食塩水(下方の三角)が投与された。各群はマウス4個体を含み、反応の平均が示される。この最適以下の免疫化スケジュール(即ち、PBSを緩衝液として用いた1×10μgによる免疫化)下において、裸のDNA、またはミクロカプセル化されたDNA単独のいずれかを用いて免疫化されたマウス群は、実質的なCTL反応を生じなかった。対照的に、AGP−568、AGP−517、またはAGP−547と組み合わせたミクロスフェアを用いて免疫化されたマウスは、強いCTL反応を生じることができた。AGP−527は、本アッセイにおいては抑制性であると考えられた。
【図8Aから図8D】DNAミクロスフェアに関連して評価された、アミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)の分子構造を示す。これらの合成分子は、エナンチオ選択的過程を用いて調製された。
【図9】PBS(三角)、または塩化ナトリウム非含有等張リン酸緩衝液(丸)のいずれかに再懸濁されたTbH9 DNAの10μg単回用量を与えられたマウス由来の培養T細胞の、細胞溶解活性を示すグラフである。四角は生理食塩水を用いて免疫化されたマウスを示す。細胞溶解活性は、標準51Crアッセイを用いて測定された。データは、エフェクター:標的の比率の関数として、特異的な溶解率(%)としてプロットされる。各群はマウス4個体を含み、反応の平均が示される。この最適以下の免疫化スケジュール(即ち、1×10μgによる免疫化)下において、PBS中に分散した、ミクロカプセル化されたDNAを用いて免疫化されたマウス群は、実質的なCTL反応を生じなかった。対照的に、等張リン酸緩衝液(即ち、塩化ナトリウム非含有)中に分散したミクロスフェアを用いて免疫化されたマウスは、強いCTL反応を生じた。
【図10】PLGミクロスフェア中にカプセル化されたTbH9 DNAをAGPと共に用いた免疫化の3〜4週間後に、マウスから収集された脾細胞を用いてアッセイされた、組み換えTbH9を用いたインビトロ刺激に応答したIFN−γ分泌(pg/ml)を示す棒グラフである。
【図11】AGPを加えたPLGミクロスフェア中にカプセル化されたTbH9 DNAを用いて免疫化されたマウスから収集された脾細胞の、TbH9遺伝子を安定に発現するEL−4細胞を用いた、インビトロにおける単回刺激後の平均CTL活性を示すグラフである。グラフは、生理食塩水(黒菱形)、裸のDNA(濃い四角)、DNA−PLG(下方の三角)、および、AGP−517(薄い×)、AGP−522(星印)、AGP−525(丸)、AGP−527(+)、AGP−529(点線)、AGP−540(−)、AGP−544(白菱形)、AGP−547(薄い四角)、AGP−557(上方の三角)、またはAGP−578(濃い×)を加えたDNA−PLGを含む、免疫化条件に関する、エフェクター:標的の比率の関数として、特異的溶解率の平均を示す。
【図12】Aは、TbH9 DNA−PLG単独(白四角)、AGP−527(黒四角)、AGP−544(濃い菱形)、AGP−557(黒丸)との併用、または裸のDNA(白丸)もしくは生理食塩水(三角)を用いて免疫化されたマウスに由来する脾細胞の、インビトロにおける第2回目の刺激後の平均CTL活性を示す。Bは、TbH9 DNA−PLGとAGP−517(黒四角)、AGP−547(濃い菱形)、AGP−568(濃い三角)との併用、または裸のDNAを用いて(×)免疫化されたマウスに由来する脾細胞の、インビトロにおける第2回目の刺激後の平均CTL活性を示す。
【図13】ミクロスフェア中にカプセル化され、筋内に投与され(図13A)、または裸のDNAとして皮内または筋内経路を経て送達された(図13B)、TbH9を用いた第3回目の免疫化の4週間後における、アカゲザルのTbH9に対する血清抗体価を示すグラフである。各グラフにおいて示された4つの線は、個々の被験者を表す。
【図14】生理食塩水、組み換えTbH9(rTbH9)、TbH9をコードする裸のDNA、またはTbH9をコードするDNAをカプセル化するミクロスフェアを用いた、第3回目の免疫化の4週間後における、サルのPBMCからの、抗原誘導性のγインターフェロン(IFN−γ)の産生を示す棒グラフである。個々のバーは、個々の被験者を示す。
【図15】TbH9をコードする、ミクロカプセル化された(図15A)または裸の(図15B)DNAを用いた第3回目の免疫化の2ヶ月後における、サルのCTL反応を示すグラフである。特異的な溶解率(%)は、エフェクター:標的の比率の関数としてプロットされる。丸は、TbH9標的細胞を表す。対照標的には、非感染細胞(四角)、および、非特異的標的であるEGFP(蛍光タンパク質)細胞(三角)が含まれる。
Claims (56)
- カプセル化前に、DNAが凍結温度より高く37℃未満に維持され、少なくとも50%のDNAが超らせんDNAを含み、少なくとも50%のDNAが約37℃にて7日後にミクロスフェアから放出される、生分解性重合体のミクロスフェア(biodegradable polymeric microsphere)中にカプセル化されたデオキシリボ核酸(DNA)を含む核酸送達系。
- ミクロスフェアが少なくとも約40%のカプセル化率を有する、請求項1記載の核酸送達系。
- 少なくとも約70%のDNAが、約37℃において7日後にミクロスフェアから放出される、請求項1または2記載の核酸送達系。
- 少なくとも約90%のミクロスフェアが直径約1μmから約10μmである、請求項1から3のいずれか一項記載の核酸送達系。
- ミクロスフェアがポリ(ラクト−コ−グリコリド)(PLG)を含む、請求項1から4のいずれか一項記載の核酸送達系。
- アジュバントをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項記載の核酸送達系。
- アジュバントがアミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)を含む、請求項6記載の核酸送達系。
- DNAが癌または感染性疾患に関連する抗原をコードする、請求項1から7のいずれか一項記載の核酸送達系。
- 癌が乳癌である、請求項8記載の核酸送達系。
- 抗原がher2/neuである、請求項9記載の核酸送達系。
- 感染性疾患が結核である、請求項8記載の核酸送達系。
- 抗原がTbH9である、請求項11記載の核酸送達系。
- ミクロスフェア中に核酸分子をカプセル化するための方法であり、以下の段階を含む方法:
(a)溶媒中で重合体を溶解させ、重合体溶液を形成する段階;
(b)核酸分子を含む水溶液を重合体溶液に加え、一次乳剤(emulsion)を形成する段階;
(c)一次乳剤を均質化する段階;
(d)安定化剤を含む加工媒質と一次乳剤を混合し、二次乳剤を形成する段階;および
(e)抽出前に、核酸分子が凍結温度より高く37℃未満に維持される、二次乳剤から溶媒を抽出し、核酸分子をカプセル化しているミクロスフェアを形成する段階。 - 重合体がPLGを含む、請求項13記載の方法。
- PLGがエステル末端基またはカルボン酸末端基を含む、請求項14記載の方法。
- PLGが約8 kDa〜約65 kDaの分子量を有する、請求項14または15記載の方法。
- 抽出前に、核酸分子が約2℃から約35℃に維持される、請求項13から16のいずれか一項記載の方法。
- 抽出前に、核酸分子が約4℃から約25℃に維持される、請求項17記載の方法。
- 溶媒がジクロロメタン、クロロホルム、または酢酸エチルを含む、請求項13から18のいずれか一項記載の方法。
- 重合体溶液が陽イオン脂質をさらに含む、請求項13から19のいずれか一項記載の方法。
- 重合体溶液がアジュバントをさらに含む、請求項13から20のいずれか一項記載の方法。
- アジュバントがMPLを含む、請求項21記載の方法。
- 安定化剤がカルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、またはCMCとPVAの混合物を含む、請求項13から22のいずれか一項記載の方法。
- 安定化剤が陽イオン脂質をさらに含む、請求項23記載の方法。
- 安定化剤が約1%から約5%の加工媒質を含む、請求項13から24のいずれか一項記載の方法。
- 溶媒が約0.001%から約0.5%の内部水容積(internal water volume)を含む、請求項13から25のいずれか一項記載の方法。
- 水溶液が約0%から約75%(v/v)のエタノール含量を含む、請求項13から26のいずれか一項記載の方法。
- 核酸分子がDNAを含む、請求項13から27のいずれか一項記載の方法。
- 水溶液が約0.2 mg/mlから約12 mg/mlのDNAを含む、請求項28記載の方法。
- DNAが約3 kbから約9 kbのプラスミドを含む、請求項28または29記載の方法。
- 水溶液がアジュバントをさらに含む、請求項13から30のいずれか一項記載の方法。
- アジュバントがQS21を含む、請求項31記載の方法。
- 水溶液が安定化剤をさらに含む、請求項13から32のいずれか一項記載の方法。
- 安定化剤がウシ血清アルブミンを含む、請求項33記載の方法。
- 抽出段階を通して、少なくとも50%のDNAが超らせん構造を保持する、請求項13から34のいずれか一項記載の方法。
- カプセル化率が少なくとも約40%である、請求項13から35のいずれか一項記載の方法。
- ミクロスフェアが、少なくとも約50%の核酸分子を約7日以内に放出する、請求項13から36のいずれか一項記載の方法。
- ミクロスフェアが、少なくとも約50%の核酸分子を約4日以内に放出する、請求項37記載の方法。
- 少なくとも約90%のミクロスフェアが約1μmから約10μmである、請求項13から38のいずれか一項記載の方法。
- 請求項13から39のいずれか一項記載の方法によって産生されたミクロスフェア中にカプセル化された核酸分子を含む、薬学的組成物。
- アジュバントをさらに含む、請求項40記載の組成物。
- アジュバントがアミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)を含む、請求項41記載の組成物。
- DNAが癌または感染性疾患に関連する抗原をコードする、請求項40から42のいずれか一項記載の組成物。
- 癌が乳癌である、請求項43記載の組成物。
- 抗原がher2/neuである、請求項44記載の組成物。
- 感染性疾患が結核である、請求項43記載の組成物。
- 抗原がTbH9である、請求項46記載の組成物。
- 被験者への核酸分子送達用の組成物の調製のための、請求項1記載の核酸送達系の使用。
- 被験者における抗原に対する免疫応答惹起用の組成物の調製のための、請求項8記載の核酸送達系の使用。
- 被験者におけるher2/neu抗原に関連する癌の治療用または予防用の組成物の調製のための、請求項10記載の核酸送達系の使用。
- 被験者における結核の治療用または予防用の組成物の調製のための、請求項12記載の核酸送達系の使用。
- 核酸分子をカプセル化するミクロスフェアの免疫刺激有効性の増強用のアジュバントの調製のための、アミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)の使用。
- AGPが水性製剤を含む、請求項52記載の使用。
- AGPが517、527、547、557または568を含む、請求項52または53記載の使用。
- AGPがミクロスフェアと同時に投与される、請求項52から54のいずれか一項記載の使用。
- AGPがミクロスフェアの投与の前または後に投与される、請求項52から54のいずれか一項記載の使用。
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