JP2004500084A - 新規ヒトニューレキシン様タンパク質及び該タンパク質をコードするポリヌクレオチド - Google Patents
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Abstract
療法、診断及び薬理ゲノミクス適用に使用できる、新規ヒトポリヌクレオチド及びポリペプチド配列を開示する。
Description
【0001】
本出願は、2000年1月26日に提出された米国特許出願第60/178,557号、及び2000年4月25日に提出された米国特許出願第60/199,513号の優先権の利益を主張し、これらは本明細書にその全体が援用される。
1.序論
本発明は、動物ニューレキシンタンパク質及びコンタクチン結合タンパク質と配列相同性を共有するタンパク質をコードする、新規ヒトポリヌクレオチドの発見、同定及び性質決定に関する。本発明は、記載されるポリヌクレオチド、宿主細胞発現系、コードされるタンパク質、融合タンパク質、ポリペプチド及びペプチド、コードされるタンパク質及びペプチドに対する抗体、並びに開示された配列を欠失するか又は過剰発現する遺伝的に操作された動物、該タンパク質のアンタゴニスト及びアゴニスト、並びに診断、薬剤スクリーニング、臨床試験モニタリング、疾患及び障害の治療、又は美容若しくは栄養価のある薬剤への応用に使用できる、開示された配列にコードされるタンパク質の発現又は活性を調節する他の化合物を含む。
2.発明の背景
ニューレキシンは、とりわけ、神経突起(process)の介在、発作、シグナル伝達、エキソサイトーシス、がん及び発生に関連する。ニューレキシンはラトロトキシンの受容体として働くこともできる。
3.発明の概要
本発明は、新規ヒトタンパク質をコードするヌクレオチド及びこれらのタンパク質の対応するアミノ酸配列の発見、同定及び性質決定に関する。本明細書に初めて記載される新規ヒトタンパク質(NHP)は、ニューレキシンタンパク質と構造的相同性を共有する。
【0002】
本明細書に記載される新規ヒト核酸配列は、長さ1,307、1,259、35、250、279、582、534、745、697、839、791、1,298、及び1,175アミノ酸(それぞれ、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24及び26を参照されたい)のタンパク質/オープンリーディングフレーム(ORF)のいずれかをコードする。
【0003】
本発明はまた、記載されるNHPのアゴニスト及びアンタゴニスト(天然NHPと競合する小型分子、大型分子、変異体NHP、又はその一部を含む)、ペプチド、及び抗体、並びに記載されるNHPの発現を阻害するのに使用できるヌクレオチド配列(例えばアンチセンス及びリボザイム分子、並びに遺伝子又は制御配列置換構築物)、又は記載されるNHP配列の発現を促進させるのに使用できるヌクレオチド配列(例えば記載される配列を強力なプロモーター系の制御下に置く発現構築物)、並びにNHP導入遺伝子を発現するトランスジェニック動物、又は機能するNHPを発現しない「ノックアウト」(条件的であってもよい)を含む。
【0004】
さらに、本発明はまた、記載されるNHP及び/又はNHP産物の精製された調製物、あるいはNHPを発現する細胞を利用して、NHP発現及び/又はNHP活性を調節する化合物、すなわちアゴニスト又はアンタゴニストとして作用する化合物を同定するための方法にも関する。こうした化合物は、生物学的障害又は平衡異常に関連する非常に多様な症状のいずれの治療用の療法剤としても使用できる。
4.配列表及び図面の説明
配列表は、記載されるNHPアミノ酸配列をコードする、記載されるNHP ORFの配列を提供する。配列番号27は、NHP ORF及びフランキング領域を記載する。
5.発明の詳細な説明
本明細書に初めて記載されるNHPは、とりわけ、ヒト細胞株、ヒト胎児大脳、大脳、小脳、精巣、副腎、脊髄、小腸、視床下部及びジーントラップされたヒト細胞で発現する新規タンパク質である。
【0005】
本発明は、配列表に提示されるヌクレオチド、こうしたヌクレオチドを発現する宿主細胞、こうしたヌクレオチドの発現産物、及び:(a)記載される配列の哺乳動物相同体(記載されるNHP及びNHP産物を含む)をコードするヌクレオチド;(b)機能性ドメインに相当するNHPの1つ以上の部分をコードするヌクレオチド、及びそれらのヌクレオチド配列に特定されるポリペプチド産物(活性ドメインの新規領域が含まれるが、これらに限定されない);(c)前記NHPの少なくとも1つのドメインの全部又は一部が欠失又は置換した遺伝子工学的に操作した変異体又は天然変異体をコードする単離ヌクレオチド、及びそれらのヌクレオチド配列により特定されるポリペプチド産物、これらにはシグナル配列の全部又は一部が欠失した可溶性タンパク質及びペプチドが含まれるが、これらに限定されない;(d)別のペプチド又はポリペプチドに融合した、NHPのコード領域の全部又は一部、あるいはそのドメインの1つ(例えば受容体又はリガンド結合ドメイン、アクセサリータンパク質/自己結合ドメインなど)を含む、キメラ融合タンパク質をコードするヌクレオチド;又は(e)記載されるポリヌクレオチドの療法的又は診断的誘導体、例えば配列表に初めて開示された配列を含むオリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、dsRNA、又は遺伝子治療構築物を含む。
【0006】
上に論じられるように、本発明は:(a)配列表に提示されるヒトDNA配列(及び該配列を含むベクター)を含み、そしてさらに、配列表に提示されるDNA配列の相補体に、非常にストリンジェントな条件下、例えば、0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中、65℃でのフィルター結合DNAへのハイブリダイゼーション、及び0.1×SSC/0.1%SDS中、68℃での洗浄(Ausubel F.M. et al. eds., 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. I, Green Publishing Associates, Inc.,及びJohn Wiley & Sons, Inc., New York, p.2.10.3)という条件下でハイブリダイズし、そして機能的に同等な遺伝子産物をコードする、隣接するNHPオープンリーディングフレーム(ORF)をコードするあらゆるヌクレオチド配列を意図する。さらに意図されるのは、配列表に提示されるアミノ酸配列をコードしそして発現するDNA配列の相補体に、中程度にストリンジェントな条件下、例えば0.2×SSC/0.1%SDS中、42℃での洗浄(Ausubel et al., 1989、上記)でハイブリダイズし、しかも機能的に同等なNHP産物をコードする、あらゆるヌクレオチド配列である。NHPの機能的同等物は、他の種に存在する天然NHP、及び天然に存在するか又は操作されている(部位特異的突然変異誘発、遺伝子シャッフリング、例えば本明細書にその全体が援用される米国特許第5,837,458号及び第5,723,323号に記載されるような定方向進化による)突然変異NHPを含む。本発明はまた、開示されたNHPポリヌクレオチド配列の縮重核酸変異体も含む。
【0007】
さらに意図されるのは、NHP ORFをコードするポリヌクレオチド、又は配列表のヌクレオチド配列の対応する領域に約99、95、90又は約85パーセント相同又は同一であるポリヌクレオチド配列(例えば標準デフォルト設定を用いたGCG配列解析パッケージ(ウィスコンシン州、マディソン)を用いた、BLAST配列比較解析で測定されるようなもの)にコードされる、その機能的同等物である。
【0008】
本発明はまた、記載されるNHPヌクレオチド配列にハイブリダイズし、したがってその相補体である、核酸分子、好ましくはDNA分子も含む。こうしたハイブリダイゼーション条件は、上述のように、非常にストリンジェントであっても、又はそれほど非常にストリンジェントでなくてもよい。核酸分子がデオキシオリゴヌクレオチド(「DNAオリゴ体」)である場合、それらの分子は本明細書の配列表に初めて開示した配列の連続領域を含む、一般に約16〜約100塩基、約20〜約80塩基、若しくは約34〜約45塩基の長さのもの、又はここに示すサイズの任意の変更又は組み合わせである。それらのオリゴヌクレオチドをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と組み合わせて用いて、ライブラリーのスクリーニング、クローンの単離、並びにクローニングテンプレート及び配列決定テンプレートの調製などを行うことができる。
【0009】
あるいは、こうしたNHPオリゴヌクレオチドは、ライブラリーをスクリーニングし、そして(特に、マイクロアレイ又は高処理「チップ」形式を用いて)遺伝子発現パターンを評価するためのハイブリダイゼーションプローブとして使用できる。さらに、一連の記載されるNHPオリゴヌクレオチド配列、又はその相補体を、記載されるNHP配列の全部又は一部を提示するのに使用できる。配列番号1〜27のうち1つ以上の配列の少なくとも一部に初めて開示されたオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列は、固体支持マトリックス/基板(樹脂、ビーズ、膜、プラスチック、ポリマー、金属又は金属被覆基板、結晶性基板又は多結晶質基板など)と共にハイブリダイゼションプローブとして用いることができる。特に注目されるのは、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド又は対応するオリゴペプチド及びポリペプチドの空間的にアドレス可能なアレイ(即ち、遺伝子チップ、マイクロタイタープレートなど)であり、空間的にアドレス可能なアレイ上に存在する少なくとも1つのバイオポリマーは、配列番号1〜27のうち少なくとも1つの配列に初めて開示されたオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列、又はそれらにコードされるアミノ酸配列を含む。バイオポリマーを固体支持マトリックスに付着させる方法又は固体支持マトリックス上で合成する方法、及びその上で結合研究を実施する方法は、とりわけ米国特許第5,700,637号、5,556,752号、5,744,305号、4,631,211号、5,445,934号、5,252,743号、4,713,326号、5,424,186号及び4,689,405号に開示されており、これらの開示は本明細書にその全体が援用される。
【0010】
配列番号1〜27に初めて開示された配列を含むアドレス可能なアレイを用いて、遺伝子の時間的且つ組織特異的発現を同定し、性質決定することができる。これらアドレス可能なアレイは、生産技術の限度内であるが、所望の特異性を付与するのに十分な長さのオリゴヌクレオチド配列を取り込む。これらプローブの長さは、約8〜約2000ヌクレオチドの範囲内である。好ましくはプローブは配列番号1〜27に初めて開示された配列由来の60ヌクレオチドから成り、より好ましくは25ヌクレオチドから成る。
【0011】
例えば、一連の記載されるオリゴヌクレオチド配列又はその相補体をチップ形式で用いて記載される配列の全部又は一部を再現することができる。オリゴヌクレオチド、典型的には長さ約16〜約40(又はこの範囲内のいかなる整数でもよい)のヌクレオチドは、互いに部分的に重複していてもよく、及び/又は配列は、重複しないオリゴヌクレオチドを用いて提示されてもよい。したがって、記載されるポリヌクレオチド配列は、典型的には、各々、本明細書の配列表に初めて開示された、少なくとも長さ約8ヌクレオチドのうち、少なくとも約2又は3の別個のオリゴヌクレオチド配列を含むはずである。こうしたオリゴヌクレオチド配列は、配列表の配列内に存在するいかなるヌクレオチドから始まることもでき、そして記載される配列に関して、センス(5’から3’)方向、又はアンチセンス方向、いずれにも進行することができる。
【0012】
マイクロアレイに基づく解析により広範なパターンの遺伝子活性の発見が可能となり、遺伝子機能の新たな理解を提供し、転写過程及び生物機構についての新規且つ予想外の洞察を生ずる。配列番号1〜27に初めて開示された配列を含むアドレス可能なアレイの使用は、特定経路に伴う転写の変化について詳細な情報を提供し、潜在的に新規成分又は遺伝子機能の同定をもたらして新規表現型としてそれら自体を明らかにする。
【0013】
配列番号1〜27に初めて開示された配列から成るプローブを用いて薬剤発見のための新規分子標的の同定、選択及び確認をすることもできる。これら非反復配列の使用により、薬剤標的の直接の確認、及び薬剤が意図する標的とは異なる経路を介して調節される遺伝子発現における薬剤依存的変化の認識が可能となる。したがって、これら非反復配列もまた薬剤作用及び毒性を明確にしモニタリングする上で有用である。
【0014】
有用性の例として、配列番号1〜27に初めて開示された配列をマイクロアレイ又は他のアッセイ形式に用いて、特定の病状を有する患者からの遺伝子材料の採集物をスクリーニングすることができる。配列番号1〜27に初めて開示された配列を用いて、当該技術分野において公知のコンピュータソフトウエアで以前に採集した遺伝子のデータベースと開示配列とを比較することにより、in silicoでこうした調査を実施することもできる。
【0015】
したがって、配列番号1〜27に初めて開示された配列を、特定の疾患に関連する変異を同定するために、及び診断又は予後アッセイとして用いることができる。
【0016】
現在記載されている配列はヌクレオチド配列を用いて明確に記載されているが、各配列を、種々の付加的な構造特性のいずれか又はそれらの組合せを用いて独自に記載することができることを認識すべきである。例えば、所定の配列を、その配列の所定の領域内に存在するヌクレオチドの最終的な組成物により、配列番号1〜27に初めて開示された1つ以上の特定のオリゴヌクレオチドの存在と共に記載することができる。あるいは、制限酵素による消化部位の相対的な位置を特定する制限地図、又は種々のパリンドローム配列若しくは他の特定オリゴヌクレオチド配列を用いて所定の配列を構造的に記載することができる。このような制限地図は、典型的には広く有用なコンピュータプログラム(例えば、ウィスコンシン大学GCG配列解析パッケージ、SEQUENCHER3.0、Gene Codes Corp.、ミシガン州アナーバーなど)により作られるが、所望により、1つ以上の更なる配列又は開示配列中に存在する1つ以上の制限部位に対する、配列の相対位置により、記載することができる配列中に存在する1つ以上の不連続のヌクレオチド配列と共に用いることができる。
【0017】
オリゴヌクレオチドプローブに関しては、非常にストリンジェントな条件は、例えば、6×SSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム中、37℃(14塩基オリゴ)、48℃(17塩基オリゴ)、55℃(20塩基オリゴ)、及び60℃(23塩基オリゴ)での洗浄を指す。これらの核酸分子は、例えばNHP遺伝子制御に有用な、NHP遺伝子アンチセンス分子をコードしていてもよく、又はアンチセンス分子として作用してもよい(NHP核酸配列の増幅反応におけるアンチセンスプライマーを得るため、及び/又は当該アンチセンスプライマーとして)。NHP遺伝子制御に関しては、生物学的機能を制御するのにこうした技術を使用できる。さらに、こうした配列は、やはりNHP遺伝子制御に有用であるリボザイム及び/又は三重らせん配列の一部として使用できる。
【0018】
阻害アンチセンス又は二本鎖オリゴヌクレオチドは、さらに、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルケオシン(queosine)、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルケオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、プソイドウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6−ジアミノプリンを含む群より選択される、少なくとも1つの修飾塩基部分を含むことができるが、これらに限定されるわけではない。
【0019】
アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、アラビノース、2−フルオロアラビノース、キシルロース、及びヘキソースを含む群より選択される、少なくとも1つの修飾糖部分も含むことができるが、これらに限定されるわけではない。
【0020】
さらに別の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミドチオエート、ホスホロアミデート、ホスホロジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、及びホルムアセタール又はそれらの類似体からなる群より選択される、少なくとも1つの修飾ホスフェート骨格を含むであろう。
【0021】
さらに別の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、α−アノマーオリゴヌクレオチドである。α−アノマーオリゴヌクレオチドは、相補的RNAと特異的な二本鎖ハイブリッドを形成し、該ハイブリッドでは、通常のβ−単位とは対照的に、鎖は互いに平行に走る(Gautier et al., 1987, Nucl. Acids Res. 15: 6625−6641)。オリゴヌクレオチドは、2’−O−メチルリボヌクレオチド(Inoue et al., 1987, Nucl. Acids Res. 15: 6131−6148)、又はキメラRNA−DNA類似体(Inoue et al., 1987, FEBS Lett. 215: 327−330)である。あるいは、二本鎖RNAを用い、標的NHPの発現及び機能を崩壊させることができる。
【0022】
本発明のオリゴヌクレオチドは、当該技術分野において公知の標準的な方法によって、例えば自動化DNA合成装置(例えばBiosearch、Applied Biosystemsなどから市販のもの)の使用によって合成できる。例えば、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、Stein et al.(1988, Nucl. Acids Res. 16: 3209)の方法によって合成でき、そしてメチルホスホネートオリゴヌクレオチドは、制御孔ガラスポリマー支持体の使用(Sarin et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85: 7448−7451)などによって調製できる。
【0023】
低ストリンジェント条件は、当業者に周知であり、そして予測可能であるように、ライブラリー及び標識配列が由来する特定の生物に応じて異なるであろう。こうした条件に関する手引きには、例えば、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual(及びその定期的な改訂版), Cold Springs Harbor Press, N.Y.;及びAusubel et al., 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y.を参照されたい。
【0024】
あるいは、適切に標識されたNHPヌクレオチドプローブを用いて、適切にストリンジェントな条件を用い、又はPCRによって、ヒトゲノムライブラリーをスクリーニングすることができる。ヒトゲノムクローンの同定及び性質決定は、多型(ヌクレオチド反復、マイクロサテライト対立遺伝子、一ヌクレオチド多型、又はコード一ヌクレオチド多型を含むが、これらに限定されるわけではない)を同定し、既定の遺伝子座/対立遺伝子のゲノム構造を決定し、そして診断試験を計画するのに役立つ。例えば、ヒト遺伝子のイントロン/エクソン境界に隣接する領域由来の配列を用いて、エクソン、イントロン、スプライシング部位(例えばスプライシングアクセプター及び/又はドナー部位)などの内部での突然変異を検出する増幅アッセイで用いるためのプライマーを設計することができ、診断法及び薬理ゲノミクスに使用できる。
【0025】
さらに、本明細書に開示されたNHP産物内のアミノ酸配列に基づいて設計された、2つの縮重又は「ゆらぎ」オリゴヌクレオチドプライマープールを用いてPCRを実行することにより、目的の生物由来の核酸からNHP遺伝子相同体を単離できる。反応のためのテンプレートは、NHP遺伝子の対立遺伝子を発現することが知られる、又は発現すると推測される、ヒト又は非ヒト細胞株又は組織から調製された、総RNA、mRNA、及び/又はmRNAの逆転写によって得られたcDNAであってもよい。
【0026】
PCR産物は、サブクローニングし、配列決定をして、増幅された配列が所望のNHP遺伝子の配列に相当することを確実にすることができる。その後、PCR断片を用いて、多様な方法によって、全長cDNAクローンを単離できる。例えば、増幅断片を標識し、バクテリオファージcDNAライブラリーなどのcDNAライブラリーをスクリーニングするのに使用できる。あるいは、標識断片を用いて、ゲノムライブラリーのスクリーニングを介し、ゲノムクローンを単離することができる。
【0027】
PCR技術はまた、全長cDNA配列を単離するのに使用できる。例えば、RNAは、標準的な方法にしたがい、適切な細胞又は組織供給源(すなわち、NHP配列を発現することが知られる、又は発現すると推測されるもの)から単離できる。逆転写(RT)反応は、第一鎖合成のプライミングのための、増幅断片の5’最末端に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、RNAに対して行うことが可能である。その後、生じたRNA/DNAハイブリッドは、標準的末端トランスフェラーゼ反応を用いて「テール化」し、ハイブリッドをRNaseHで消化し、そしてその後、第二鎖合成を相補的プライマーでプライミングすることができる。このように、増幅断片の上流のcDNA配列を単離することが可能である。使用できるクローニング戦略の概説には、例えばSambrook et al.,1989、上記を参照されたい。
【0028】
突然変異体NHP配列をコードするcDNAは、例えば、PCRを用いることによって単離することが可能である。この場合、第一のcDNA鎖は、突然変異体NHP対立遺伝子を有すると推定される個体において、発現されることが知られる又は発現されることが推測される組織から単離されたmRNAに、オリゴdTオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせ、そして逆転写酵素で新規鎖を伸長させることによって、合成することが可能である。その後、cDNAの第二鎖は、正常遺伝子の5’末端に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを用いて合成する。これらの2つのプライマーを用い、その後、PCRを介して産物を増幅し、所望により、適切なベクターにクローニングし、そして当業者に周知の方法を通してDNA配列解析に供する。突然変異体NHP対立遺伝子のDNA配列を、対応する正常NHP対立遺伝子と比較することによって、突然変異体NHP遺伝子産物の機能の損失又は改変に関与する、単数又は複数の突然変異を確かめることが可能である。
【0029】
あるいは、突然変異体NHP対立遺伝子を有すると推測される、又は有することが知られる個体(例えば、肥満、視力障害、高血圧、、抑うつ、発作、不妊などのNHP関連表現型を発現している個人)から得たDNAを用いて、ゲノムライブラリーを構築することができ、あるいは突然変異体NHP対立遺伝子を発現することが知られる、又は発現すると推測される組織由来のRNAを用いて、cDNAライブラリーを構築することができる。その後、正常NHP遺伝子、又はいかなるものでもよい適切なその断片を標識して、こうしたライブラリーにおいて、対応する突然変異体NHP対立遺伝子を同定するプローブとして用いることもできる。その後、突然変異体NHP遺伝子配列を含むクローンを精製して、当業者に周知の方法にしたがい配列解析に供することができる。
【0030】
さらに、例えば、突然変異体NHP対立遺伝子を有すると推測される、又は有することが知られる個体における、こうした突然変異対立遺伝子を発現することが知られる、又は発現すると推測される組織より単離したRNAから合成したcDNAを利用して、発現ライブラリーを構築することができる。この方式では、推定上の突然変異組織によって作製される遺伝子産物を発現させ、そして以下に記載されるように、正常NHP産物に対して作製された抗体と組み合わせた標準的抗体スクリーニング技術を用いてスクリーニングすることが可能である。(スクリーニング技術に関しては、例えば、Harlow E. and Lane, eds., 1988, “Antibodies: A Laboratory Manual”, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harborを参照されたい。)
さらに、スクリーニングは、例えばアルカリホスファターゼ−NHP融合タンパク質又はNHP−アルカリホスファターゼ融合タンパク質などの標識NHP融合タンパク質でスクリーニングすることにより達成することができる。NHP突然変異が、(例えばミスセンス又はフレームシフト突然変異の結果として)改変された機能を有する発現遺伝子産物を生じる場合、NHPに対するポリクローナル抗体は、対応する突然変異体NHP遺伝子産物と交差反応する可能性がある。こうした標識抗体との反応を介して検出されるライブラリークローンは、当該技術分野に周知の方法にしたがって精製し、そして配列解析に供することができる。
【0031】
本発明はまた、(a)前述のNHPコード配列及び/又はその相補体(すなわちアンチセンス)のいずれかを含むDNAベクター;(b)コード配列の発現を指示する制御配列と機能的に結合した前述のNHPコード配列のいずれかを含むDNA発現ベクター(例えば、本明細書に援用する米国特許第5,869,336号に記載されるようなバキュロウイルス);(c)宿主細胞において、コード配列の発現を指示する制御配列と機能的に結合した前述のNHPコード配列のいずれかを含む、遺伝的に操作された宿主細胞;及び(d)外因的に導入された制御配列の制御下に内因性NHP遺伝子を発現する(すなわち遺伝子活性化)、遺伝的に操作された宿主細胞、を含む。本明細書において、制御配列には、誘導性及び非誘導性プロモーター、エンハンサー、オペレーター、及び発現をドライブし、制御することが当業者に公知の他の配列が含まれるが、これらに限定されるわけではない。こうした制御配列には、サイトメガロウイルス(hCMV)極初期遺伝子、制御可能ウイルス配列(特にレトロウイルスLTRプロモーター)、SV40アデノウイルスの初期又は後期プロモーター、lac系、trp系、TAC系、TRC系、ラムダファージの主要オペレーター及びプロモーター領域、fdコートタンパク質の調節領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター、及び酵母α−接合因子のプロモーターが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0032】
本発明はまた、抗体及び抗イディオタイプ抗体(Fab断片を含む)、NHPのアンタゴニスト及びアゴニスト、並びにNHP遺伝子の発現を阻害する化合物若しくはヌクレオチド構築物(転写因子阻害剤、アンチセンス及びリボザイム分子、又は遺伝子若しくは制御配列置換構築物)、又はNHPの発現を促進させる化合物若しくはヌクレオチド構築物(例えばNHPコード配列が、プロモーター、プロモーター/エンハンサーなどの発現調節配列と機能的に結合した発現構築物)を含む。
【0033】
NHP又はNHPペプチド、NHP融合タンパク質、NHPヌクレオチド配列、抗体、アンタゴニスト及びアゴニストは、疾患の診断のため、突然変異体NHP又は不適切に発現されたNHPを検出するのに有用である可能性がある。NHPタンパク質又はペプチド、NHP融合タンパク質、NHPヌクレオチド配列、宿主細胞発現系、抗体、アンタゴニスト、アゴニスト、並びに遺伝的に操作された細胞及び動物は、体内で、NHPの正常機能を混乱させる症候的発現又は表現型発現の治療に効果的な薬剤のスクリーニング(又はコンビナトリアルライブラリーの高処理スクリーニング)に使用できる。操作された宿主細胞及び/又は動物の使用は、こうした系がNHPの内因性受容体に結合する化合物を同定できるだけでなく、NHP介在活性又は経路を誘発する化合物もまた同定できるという点で有利である。
【0034】
最後に、NHP産物は、療法剤として用いることが可能である。例えば、NHPに相当するNHPペプチド/ドメインのような可溶性誘導体、分泌型NHP、NHP融合タンパク質産物(特に、NHP−Ig融合タンパク質、すなわちIgFcへのNHP、又はNHPのドメインの融合体)、NHP抗体及び抗イディオタイプ抗体(Fab断片を含む)、アンタゴニスト又はアゴニスト(NHP介在経路中の下流標的を調節する又は該標的に作用する化合物を含む)を用い、疾患又は障害を直接治療することが可能である。例えば、有効量の可溶性NHP、又はNHP−IgFc融合タンパク質又はNHPを模倣する抗イディオタイプ抗体(又はそのFab)の投与は、内因性NHP受容体を活性化するか、又は効果的に中和することができる。こうしたNHP産物をコードするヌクレオチド構築物を用いて、宿主細胞がこうした産物をin vivoで発現するように遺伝的に操作することができ;これらの遺伝的に操作された細胞は、体内で「バイオリアクター」として機能し、NHP、NHPペプチド、又はNHP融合タンパク質を、連続した供給で、体に搬送する。機能するNHP、突然変異体NHP、並びにアンチセンス及びリボザイム分子をコードするヌクレオチド構築物はまた、NHP発現を調節するための「遺伝子治療」アプローチに使用することもできる。したがって、本発明はまた、生物学的障害を治療するための医薬製剤及び方法も含む。
【0035】
本発明の多様な態様は、以下のサブセクションにより詳細に記載される。
5.1.NHP配列
記載されるNHPのcDNA配列及び対応する推定アミノ酸配列を配列表に示す。NHPヌクレオチドは、密集したヒトのジーントラップされた配列、EST、及びヒト大脳、胎児大脳、小脳及び視床下部のcDNAライブラリー(Edge Biosystems、メリーランド州ゲーサーズバーグ)から単離されたcDNAから得た。記載される配列は、ニューレキシン(分泌型を含む)及びコンタクチン結合タンパク質を含むがこれらに限定されない種々のタンパク質と限定された構造類似性を共有する。例えば配列番号1の812番目のヌクレオチドに相当する位置にC又はTへの移行をもたらす多型を同定した。この多型は、例えば配列番号2の271番目のアミノ酸の位置に存在するSer又はLeuを生じさせる。
【0036】
5.2.NHP及びNHPポリペプチド
NHP、ポリペプチド、ペプチド断片、NHPの突然変異体、短鎖型、又は欠失型、及び/又はNHP融合タンパク質を、多様な使用のために調製することができる。これらの使用には、抗体の生成、診断アッセイの試薬としての使用、NHPに関連する他の細胞内遺伝子産物の同定のための使用、精神的、生物学的又は医学的障害及び疾患の療法措置に有用な医薬的試薬として使用できる化合物に関してスクリーニングするためのアッセイ試薬としての使用が含まれるが、これらに限定されるわけではない。相同性の情報や発現データが与えられれば、疾患を治療するために、又は治療剤の有効性を治療学的に増加させるために、記載されるNHPを(薬剤、オリゴ、抗体などにより)標的とすることができる。
【0037】
配列表は、記載されるNHP配列にコードされるアミノ酸配列を開示する。NHPは、典型的には、DNA配列背景において翻訳開始部位と一致するイニシエーターメチオニン、及び膜タンパク質又は分泌タンパク質に特有なシグナル配列を表示する。
【0038】
本発明のNHPアミノ酸配列は、配列表に提示されるアミノ酸配列、並びにその類似体及び誘導体を含む。さらに、他の種由来の対応するNHP相同体が本発明に含まれる。実際、上述のNHPヌクレオチド配列にコードされるいかなるNHPタンパク質も本発明の範囲内であり、配列表に提示されるアミノ酸配列のすべて又はいかなる新規部分をコードする、いかなる新規ポリヌクレオチド配列も同様である。遺伝暗号の縮重性が周知であり、したがって、配列表に提示される各アミノ酸は、該アミノ酸をコードすることが可能な周知の核酸「トリプレット」コドン、又は多くの場合、コドン類の一般的代表例である。こうしたものとして、本明細書において意図されるように、配列表に提示されるアミノ酸配列は、遺伝暗号と併せて考えた場合(例えば、本明細書に援用する“Molecular Cell Biology”, 1986, J. Darnell et al. eds., Scientific American Books, New York, NYの第109頁の表4−1を参照されたい)、こうしたアミノ酸配列をコードすることが可能な核酸配列の多様な順列及び組み合わせのすべてのうちの一般的代表例である。
【0039】
本発明はまた、いくつかの規準のうちのいずれかにより判断して、本明細書に記載されるヌクレオチド配列にコードされるNHPと機能的に同等であるタンパク質も包含し、これらの規準はNHPの基質に結合し該基質を切断する能力、あるいは同一の又は相補的下流経路を達成する能力、あるいは細胞内代謝(例えばタンパク質分解活性、イオン流動、チロシンリン酸化、輸送など)の変化を含むが、これらに限定されるわけではない。こうした機能的に同等なNHPタンパク質は、上述のNHPヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列内のアミノ酸残基の付加物又は置換物であるが、サイレント変化を生じ、したがって、機能的に同等な遺伝子産物を産生するものを含むが、これらに限定されるわけではない。アミノ酸置換は、関与する残基の極性、荷電、可溶性、疎水性、親水性及び/又は両親媒性の性質における類似性に基づいて行うことができる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニンが含まれ;極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンが含まれ;陽性荷電(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン及びヒスチジンが含まれ;そして陰性荷電(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれる。
【0040】
多様な宿主発現ベクター系を用いて、本発明のNHPヌクレオチド配列を発現させることが可能である。本発明の例におけるように、NHPペプチド又はポリペプチドが膜タンパク質であると考えられる場合、タンパク質の疎水性領域をタンパク質又は核酸レベル(即ち、例えば配列番号2のおおよそ約1,240番目のアミノ酸から約1,265番目のアミノ酸にわたる疎水性領域)で切除することができ、そして、得られる可溶性ペプチド又はポリペプチドを培地から回収することができる。こうした発現系はまた、NHP、又は機能的同等物をin situで発現する、操作された宿主細胞も含む。こうした発現系からのNHPの精製又は濃縮は、適切な界面活性剤及び脂質ミセル、並びに当業者に周知の方法を用いて達成することが可能である。しかしながら、こうした操作された宿主細胞自体は、NHPの構造的機能的特性を保持するだけでなく、生物学的活性を評価することが重要である状況、例えば薬剤スクリーニングアッセイで用いることが可能である。
【0041】
本発明の目的のため使用できる発現系には、NHPヌクレオチド配列を含む、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば大腸菌、枯草菌)などの微生物;NHPヌクレオチド配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えばサッカロミセス属、ピヒア属);NHP配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;NHPヌクレオチド配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染した、又は組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;あるいは哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えばメタロチオネインプロモーター)又は哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例えばアデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現構築物を有する哺乳動物細胞系(例えばCOS、CHO、BHK、293、3T3)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0042】
細菌系において、発現されるNHP産物に意図される使用に応じ、いくつかの発現ベクターを好適に選択することが可能である。例えば、NHPの医薬組成物又はNHPを含む医薬組成物の生成のために、あるいはNHPに対する抗体を作製するために、多量のこうしたタンパク質を産生しようとする場合、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を指示するベクターが望ましいことがある。こうしたベクターには、融合タンパク質が産生されるように、NHPコード配列を、個々に、lacZコード領域とインフレームでベクター内に連結することが可能である、大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther et al., 1983, EMBO J. 2: 1791);pINベクター(Inouye & Inouye, 1985, Nucleic Acids Res. 13: 3101−3109; Van Heeke & Schuster, 1989, J. Biol. Chem. 264: 5503−5509)などが含まれるが、これらに限定されるわけではない。pGEXベクター(Pharmacia又はAmerican Type Cuture Collection)もまた、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として、異種ポリペプチドを発現するのに使用できる。一般的に、こうした融合タンパク質は可溶性であり、そしてグルタチオン−アガロースビーズに吸着させ、続いて遊離グルタチオンの存在下で溶出させることによって、溶解された細胞から容易に精製することが可能である。pGEXベクターは、クローニングされた標的遺伝子産物が、GST部分から遊離できるように、トロンビン又はXa因子プロテアーゼ切断部位を含むよう設計されている。
【0043】
昆虫系においては、オートグラファ・カリフォルニカ核多角体ウイルス(AcNPV)が、異種遺伝子を発現するのにベクターとして用いられる。該ウイルスは、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞内で増殖する。NHPコード配列は、個々に、ウイルスの非必須領域(例えばポリヘドリン遺伝子)にクローニングし、AcNPVプロモーター(例えばポリヘドリンプロモーター)の制御下に置くことが可能である。NHPコード配列の挿入が成功すると、ポリヘドリン遺伝子の不活性化及び非閉塞性組換えウイルス(すなわちポリヘドリン遺伝子にコードされるタンパク質性コートを欠失するウイルス)の産生が生じるであろう。これらの組換えウイルスを、その後、スポドプテラ・フルギペルダ細胞を感染させるのに用い、該細胞において、挿入配列が発現される(例えば、Smith et al., 1983, J. Virol. 46: 584; Smith、米国特許第4,215,051号を参照されたい)。
【0044】
哺乳動物宿主細胞において、いくつかのウイルスに基づく発現系を利用できる。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合、目的のNHPヌクレオチド配列は、アデノウイルス転写/翻訳調節複合体、例えば後期プロモーター及び三分割(tripartite)リーダー配列に連結することができる。その後、このキメラ遺伝子を、in vitro又はin vivo組換えによって、アデノウイルスゲノムに挿入することができる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えばE1又はE3領域)における挿入は、生存可能であり、そして感染した宿主においてNHP産物を発現することが可能な組換えウイルスを生じるであろう(例えばLogan & Shenk, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 3655−3659を参照されたい)。特定の開始シグナルもまた、挿入されたNHPヌクレオチド配列の効率的な翻訳に必要とされる可能性がある。これらのシグナルには、ATG開始コドン及び隣接配列が含まれる。それ自体の開始コドン及び隣接配列を含む、全NHP遺伝子又はcDNAが、適切な発現ベクターに挿入される場合、さらなる翻訳調節シグナルは必要とされない可能性がある。しかしながら、NHPコード配列の一部のみが挿入される場合、おそらくATG開始コドンを含む、外因性翻訳調節シグナルが提供されなければならない。さらに、開始コドンは、全挿入物の翻訳を確実にするため、所望のコード配列のリーディングフレームと位相が同じでなければならない。これらの外因性翻訳調節シグナル及び開始コドンは、多様な起源のものでもよく、天然でも合成でもよい。発現効率は、適切な転写エンハンサー配列、転写ターミネーターなどを含むことによって、促進させることが可能である(Bitter et al., 1987, Methods in Enzymol. 153: 516−544を参照されたい)。
【0045】
さらに、挿入された配列の発現を調節するか、又は特定の望ましい方式で遺伝子産物を修飾し、そしてプロセシングする、宿主細胞株を選択することができる。タンパク質産物のこうした修飾(例えば糖鎖形成)及びプロセシング(例えば切断)は、タンパク質の機能に重要である可能性がある。異なる宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾のための特徴的且つ特異的な機構を有する。適切な細胞株又は宿主系を選択し、発現される異質のタンパク質の正しい修飾及びプロセシングを確実にすることができる。このために、一次転写物の適切なプロセシング、糖鎖形成及び遺伝子産物のリン酸化のための細胞機構を有する真核宿主細胞を使用できる。こうした哺乳動物宿主細胞には、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3、WI38及び特にヒト細胞株が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0046】
組換えタンパク質の長期の高収率産生のため、安定な発現が好ましい。例えば、上述のNHP配列を安定して発現する細胞株を設計することができる。ウイルス複製起点を含む発現ベクターを用いるよりむしろ、適切な発現調節配列(例えばプロモーター、エンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)によって調節されるDNA、及び選択可能マーカーで宿主細胞を形質転換することができる。異種DNAの導入後、操作された細胞を、栄養強化培地中で1〜2日間増殖させ、その後選択培地に移すことができる。組換えプラスミド中の選択可能マーカーは、選択に対する耐性を与え、そして細胞が染色体にプラスミドを安定して組み込み、そして増殖巣を形成するまで増殖することを可能にする。続いて該増殖巣を、クローニングし、そして細胞株へと発展させることができる。この方法は、NHP産物を発現する細胞株を操作するのに、好適に用いることが可能である。こうした操作細胞株は、NHP産物の内因性活性に影響を与える化合物をスクリーニングし、評価するのに、特に有用である可能性がある。
【0047】
いくつかの選択系を用いてもよく、選択系には単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al., 1977, Cell 11: 223)、ヒポキサンチン−グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, 1962, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48: 2026)、及びアデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., 1980, Cell 22: 817)遺伝子が含まれるが、これらに限定されるわけではない。これらの遺伝子はそれぞれ、tk−、hgprt−又はaprt−細胞で使用することができる。また、代謝拮抗剤耐性を、以下の遺伝子:メトトレキセートに対する耐性を与えるdhfr(Wigler et al., 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 3567; O’Hare et al., 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 1527);ミコフェノール酸に対する耐性を与えるgpt(Mulligan & Berg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 2072);アミノ配糖体G−418に対する耐性を与えるneo(Colberre−Garapin et al., 1981, J. Mol. Biol. 150: 1);及びハイグロマイシンに対する耐性を与えるhygro(Santerre et al., 1984, Gene 30: 147)に関する選択の基礎として使用することができる。
【0048】
あるいは、いかなる融合タンパク質も、発現される融合タンパク質に特異的な抗体を利用することによって、容易に精製することが可能である。例えば、Janknecht et al.により記載される系は、ヒト細胞株で発現される非変性融合タンパク質の容易な精製を可能にする(Janknecht et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 8972−8976)。この系では、遺伝子のオープンリーディングフレームが、翻訳された際に、6つのヒスチジン残基から成るアミノ末端タグに融合するように、目的の遺伝子をワクシニア組換えプラスミド中にサブクローニングする。組換えワクシニアウイルスに感染した細胞由来の抽出物を、Ni2+・ニトリロ酢酸−アガロースカラム上に装填し、ヒスチジンタグ化タンパク質を、イミダゾール含有緩衝液で選択的に溶出する。
【0049】
また、本発明に含まれるのは、NHPを標的器官に向け、及び/又は細胞膜を通る細胞質ゾルへの輸送を促進させる融合タンパク質である。NHPを抗体分子又はそのFab断片に結合させることにより、特定のエピトープを有する細胞を標的とするために用いることができる。適切なシグナル配列をNHPに付着させてもNHPは細胞内の所望の位置に輸送される。あるいは、NHP又はその核酸配列のターゲティングはリポソーム又は脂質複合体に基づく送達システムを用いて達成される。このような技術はLiposomes: A Practical Approach, New, RRC ed., Oxford University Press, New York並びに米国特許第4,594,595号、5,459,127号、5,948,767号及び6,110,490号に記載されており、それぞれの開示は本明細書にその全体が援用される。さらに包含されるのは遺伝子操作された新規タンパク質構築物である。この操作は、それらが標的部位又は所望の器官へのNHPの輸送を促進させるような方法でなされ、その際、それらはNHPがその機能活性を発現可能な細胞膜及び/又は核を通る。この目的は、NHPを、ターゲティング特異性を提供するサイトカイン又は他のリガンドに、及び/又は細胞膜の通過を促進させるためにタンパク質形質導入ドメイン(これら形質導入配列の例として本明細書に援用する米国特許出願第60/111,701号及び第60/056,713号を通常参照されたい。)にカップリングさせることにより達成することができる。また、随意、核局在配列を含むように遺伝子操作することもできる。
【0050】
5.3.NHP産物に対する抗体
NHPの1つ以上のエピトープ、又はNHPの保存された変異体のエピトープ、又はNHPのペプチド断片を特異的に認識する抗体もまた、本発明に含まれる。こうした抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、ヒト化抗体又はキメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、Fab発現ライブラリーによって産生される断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体及び上記のいずれかのエピトープ結合断片が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0051】
本発明の抗体は、例えば、生物学的試料におけるNHPの検出に使用でき、したがって、診断又は予後技術の一部として利用でき、それにより異常な量のNHPに関して患者を調べることができる。こうした抗体はまた、例えば、化合物スクリーニング計画と組み合わせて、NHP遺伝子産物の発現及び/又は活性に対する試験化合物の影響を評価するのに利用できる。さらに、こうした抗体は、遺伝子治療と組み合わせて、例えば、患者への導入前に、正常及び/又は操作NHP発現細胞を評価するのに使用できる。こうした抗体は、さらに、異常なNHP活性を阻害するための方法として使用できる。したがって、こうした抗体は、治療法の一部として利用できる。
【0052】
抗体の産生のため、多様な宿主動物を、NHP、NHPペプチド(例えばNHPの機能ドメインに相当するもの)、短鎖型NHPポリペプチド(1つ以上のドメインが欠失しているNHP)、NHPの機能的同等物又はNHPの突然変異体を注入することによって、免疫することができる。こうした宿主動物には、いくつかのみを挙げると、ブタ、ウサギ、マウス、ヤギ及びラットが含まれるが、これらに限定されるわけではない。宿主種に応じ、多様なアジュバントを用いて免疫応答を増加させることができる。アジュバントには、フロイントのアジュバント(完全及び不完全)、水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウムなどの無機塩、リゾレシチン、プルロニックポリオール(pluronic polyol)などの界面活性物質、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、並びにBCG(カルメット−ゲラン杆菌)及びコリネバクテリウム−パルブムのような潜在的に有用なヒトアジュバントが含まれるが、これらに限定されるわけではない。あるいは、キーホールリンペットヘモシアニン、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、オボアルブミン、コレラ毒素又はそれらの断片などの分子と組み合わせて、及び/又はカップリングすることによって、免疫反応を促進させることが可能である。ポリクローナル抗体は、免疫動物の血清由来の抗体分子の不均一な集団である。
【0053】
特定の抗原に対する抗体の均質な集団であるモノクローナル抗体は、連続して培養される細胞株による抗体分子の産生を提供するいかなる技術によっても得ることができる。これらには、Kohler及びMilsteinのハイブリドーマ技術(1975, Nature 256: 495−497;及び米国特許第4,376,110号)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosbor et al., 1983, Immunology Today 4: 72; Cole et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 2026−2030)、及びEBV−ハイブリドーマ技術(Cole et al., 1985, Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp.77−96)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。こうした抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgD及びそれらのいかなるサブクラスも含む、いかなる免疫グロブリンクラスであってもよい。本発明のmAbを産生するハイブリドーマは、in vitro又はin vivoで培養することができる。in vivoでmAbが高力価で産生されるため、この方法は現在好ましい産生法である。
【0054】
さらに、適切な生物学的活性を有するヒト抗体分子由来の遺伝子と共に、適切な抗原特異性を有するマウス抗体分子由来の遺伝子をスプライシングすることによる、「キメラ抗体」の産生のため開発された技術(Morrison et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci., 81: 6851−6855; Neuberger et al., 1984, Nature, 312: 604−608; Takeda et al., 1985, Nature, 314: 452−454)を使用できる。キメラ抗体は、異なる部分が、異なる動物種に由来する分子、例えばネズミmAb由来の可変領域及びヒト免疫グロブリン定常領域を有する分子である(本明細書にその全体を援用する、米国特許第6,075,181号及び第5,877,397号を参照されたい。)。また、本明細書にその全体を援用する米国特許第6,150,584号及びその開示に記載されるように、完全にヒト化したモノクローナル抗体を産生することも有用である。
【0055】
あるいは、一本鎖抗体の産生のために記載される技術(米国特許第4,946,778号;Bird, 1988, Science 242: 423−426; Huston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879−5883;及びWard et al., 1989, Nature 341: 544−546)を適応させ、NHP配列産物に対する一本鎖抗体を産生することができる。一本鎖抗体は、アミノ酸架橋を介してFv領域の重鎖及び軽鎖断片を連結し、一本鎖ポリペプチドを生じさせることによって形成される。
【0056】
特定のエピトープを認識する抗体断片を、既知の技術によって生成することができる。例えば、こうした断片には:抗体分子のペプシン消化によって産生することが可能であるF(ab’)2断片、及びF(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することによって生成することが可能であるFab断片が含まれるが、これらに限定されるわけではない。あるいは、Fab発現ライブラリーを構築し(Huse et al., 1989, Science, 246: 1275−1281)、所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速で容易な同定を可能にすることができる。
【0057】
NHPに対する抗体は、続いて、当業者に周知の技術を用いて、既定のNHPを「模倣する」抗イディオタイプ抗体を生成するのに利用できる(例えばGreenspan & Bona, 1993, FASEB J 7(5): 437−444;及びNissinoff, 1991, J. Immunol. 147(8): 2429−2438を参照されたい)。例えば、NHPドメインに結合し、コグネイト受容体へのNHPの結合を競合的に阻害する抗体を用いて、NHPを「模倣する」、したがって、受容体に結合して該受容体を活性化するか又は中和する抗イディオタイプ抗体を生成することができる。こうした抗イディオタイプ抗体又はこうした抗イディオタイプ抗体のFab断片は、NHP介在経路に関与する療法措置で使用できる。
【0058】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施態様による範囲に限定されるものではなく、この範囲は本発明の個々の態様の単なる例示として示したにすぎないのであって、機能的に同等の方法及び構成要素は、本発明の範囲内である。実際、当業者には、前述の説明から、本明細書に示されそして記載されるものの他に、本発明の多様な改変も明らかになるであろう。こうした修飾は、付随する請求項の範囲内に含まれるものと意図される。すべての引用される刊行物、特許、及び特許出願の全体を、本明細書に援用する。
本出願は、2000年1月26日に提出された米国特許出願第60/178,557号、及び2000年4月25日に提出された米国特許出願第60/199,513号の優先権の利益を主張し、これらは本明細書にその全体が援用される。
1.序論
本発明は、動物ニューレキシンタンパク質及びコンタクチン結合タンパク質と配列相同性を共有するタンパク質をコードする、新規ヒトポリヌクレオチドの発見、同定及び性質決定に関する。本発明は、記載されるポリヌクレオチド、宿主細胞発現系、コードされるタンパク質、融合タンパク質、ポリペプチド及びペプチド、コードされるタンパク質及びペプチドに対する抗体、並びに開示された配列を欠失するか又は過剰発現する遺伝的に操作された動物、該タンパク質のアンタゴニスト及びアゴニスト、並びに診断、薬剤スクリーニング、臨床試験モニタリング、疾患及び障害の治療、又は美容若しくは栄養価のある薬剤への応用に使用できる、開示された配列にコードされるタンパク質の発現又は活性を調節する他の化合物を含む。
2.発明の背景
ニューレキシンは、とりわけ、神経突起(process)の介在、発作、シグナル伝達、エキソサイトーシス、がん及び発生に関連する。ニューレキシンはラトロトキシンの受容体として働くこともできる。
3.発明の概要
本発明は、新規ヒトタンパク質をコードするヌクレオチド及びこれらのタンパク質の対応するアミノ酸配列の発見、同定及び性質決定に関する。本明細書に初めて記載される新規ヒトタンパク質(NHP)は、ニューレキシンタンパク質と構造的相同性を共有する。
【0002】
本明細書に記載される新規ヒト核酸配列は、長さ1,307、1,259、35、250、279、582、534、745、697、839、791、1,298、及び1,175アミノ酸(それぞれ、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24及び26を参照されたい)のタンパク質/オープンリーディングフレーム(ORF)のいずれかをコードする。
【0003】
本発明はまた、記載されるNHPのアゴニスト及びアンタゴニスト(天然NHPと競合する小型分子、大型分子、変異体NHP、又はその一部を含む)、ペプチド、及び抗体、並びに記載されるNHPの発現を阻害するのに使用できるヌクレオチド配列(例えばアンチセンス及びリボザイム分子、並びに遺伝子又は制御配列置換構築物)、又は記載されるNHP配列の発現を促進させるのに使用できるヌクレオチド配列(例えば記載される配列を強力なプロモーター系の制御下に置く発現構築物)、並びにNHP導入遺伝子を発現するトランスジェニック動物、又は機能するNHPを発現しない「ノックアウト」(条件的であってもよい)を含む。
【0004】
さらに、本発明はまた、記載されるNHP及び/又はNHP産物の精製された調製物、あるいはNHPを発現する細胞を利用して、NHP発現及び/又はNHP活性を調節する化合物、すなわちアゴニスト又はアンタゴニストとして作用する化合物を同定するための方法にも関する。こうした化合物は、生物学的障害又は平衡異常に関連する非常に多様な症状のいずれの治療用の療法剤としても使用できる。
4.配列表及び図面の説明
配列表は、記載されるNHPアミノ酸配列をコードする、記載されるNHP ORFの配列を提供する。配列番号27は、NHP ORF及びフランキング領域を記載する。
5.発明の詳細な説明
本明細書に初めて記載されるNHPは、とりわけ、ヒト細胞株、ヒト胎児大脳、大脳、小脳、精巣、副腎、脊髄、小腸、視床下部及びジーントラップされたヒト細胞で発現する新規タンパク質である。
【0005】
本発明は、配列表に提示されるヌクレオチド、こうしたヌクレオチドを発現する宿主細胞、こうしたヌクレオチドの発現産物、及び:(a)記載される配列の哺乳動物相同体(記載されるNHP及びNHP産物を含む)をコードするヌクレオチド;(b)機能性ドメインに相当するNHPの1つ以上の部分をコードするヌクレオチド、及びそれらのヌクレオチド配列に特定されるポリペプチド産物(活性ドメインの新規領域が含まれるが、これらに限定されない);(c)前記NHPの少なくとも1つのドメインの全部又は一部が欠失又は置換した遺伝子工学的に操作した変異体又は天然変異体をコードする単離ヌクレオチド、及びそれらのヌクレオチド配列により特定されるポリペプチド産物、これらにはシグナル配列の全部又は一部が欠失した可溶性タンパク質及びペプチドが含まれるが、これらに限定されない;(d)別のペプチド又はポリペプチドに融合した、NHPのコード領域の全部又は一部、あるいはそのドメインの1つ(例えば受容体又はリガンド結合ドメイン、アクセサリータンパク質/自己結合ドメインなど)を含む、キメラ融合タンパク質をコードするヌクレオチド;又は(e)記載されるポリヌクレオチドの療法的又は診断的誘導体、例えば配列表に初めて開示された配列を含むオリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、dsRNA、又は遺伝子治療構築物を含む。
【0006】
上に論じられるように、本発明は:(a)配列表に提示されるヒトDNA配列(及び該配列を含むベクター)を含み、そしてさらに、配列表に提示されるDNA配列の相補体に、非常にストリンジェントな条件下、例えば、0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中、65℃でのフィルター結合DNAへのハイブリダイゼーション、及び0.1×SSC/0.1%SDS中、68℃での洗浄(Ausubel F.M. et al. eds., 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. I, Green Publishing Associates, Inc.,及びJohn Wiley & Sons, Inc., New York, p.2.10.3)という条件下でハイブリダイズし、そして機能的に同等な遺伝子産物をコードする、隣接するNHPオープンリーディングフレーム(ORF)をコードするあらゆるヌクレオチド配列を意図する。さらに意図されるのは、配列表に提示されるアミノ酸配列をコードしそして発現するDNA配列の相補体に、中程度にストリンジェントな条件下、例えば0.2×SSC/0.1%SDS中、42℃での洗浄(Ausubel et al., 1989、上記)でハイブリダイズし、しかも機能的に同等なNHP産物をコードする、あらゆるヌクレオチド配列である。NHPの機能的同等物は、他の種に存在する天然NHP、及び天然に存在するか又は操作されている(部位特異的突然変異誘発、遺伝子シャッフリング、例えば本明細書にその全体が援用される米国特許第5,837,458号及び第5,723,323号に記載されるような定方向進化による)突然変異NHPを含む。本発明はまた、開示されたNHPポリヌクレオチド配列の縮重核酸変異体も含む。
【0007】
さらに意図されるのは、NHP ORFをコードするポリヌクレオチド、又は配列表のヌクレオチド配列の対応する領域に約99、95、90又は約85パーセント相同又は同一であるポリヌクレオチド配列(例えば標準デフォルト設定を用いたGCG配列解析パッケージ(ウィスコンシン州、マディソン)を用いた、BLAST配列比較解析で測定されるようなもの)にコードされる、その機能的同等物である。
【0008】
本発明はまた、記載されるNHPヌクレオチド配列にハイブリダイズし、したがってその相補体である、核酸分子、好ましくはDNA分子も含む。こうしたハイブリダイゼーション条件は、上述のように、非常にストリンジェントであっても、又はそれほど非常にストリンジェントでなくてもよい。核酸分子がデオキシオリゴヌクレオチド(「DNAオリゴ体」)である場合、それらの分子は本明細書の配列表に初めて開示した配列の連続領域を含む、一般に約16〜約100塩基、約20〜約80塩基、若しくは約34〜約45塩基の長さのもの、又はここに示すサイズの任意の変更又は組み合わせである。それらのオリゴヌクレオチドをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と組み合わせて用いて、ライブラリーのスクリーニング、クローンの単離、並びにクローニングテンプレート及び配列決定テンプレートの調製などを行うことができる。
【0009】
あるいは、こうしたNHPオリゴヌクレオチドは、ライブラリーをスクリーニングし、そして(特に、マイクロアレイ又は高処理「チップ」形式を用いて)遺伝子発現パターンを評価するためのハイブリダイゼーションプローブとして使用できる。さらに、一連の記載されるNHPオリゴヌクレオチド配列、又はその相補体を、記載されるNHP配列の全部又は一部を提示するのに使用できる。配列番号1〜27のうち1つ以上の配列の少なくとも一部に初めて開示されたオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列は、固体支持マトリックス/基板(樹脂、ビーズ、膜、プラスチック、ポリマー、金属又は金属被覆基板、結晶性基板又は多結晶質基板など)と共にハイブリダイゼションプローブとして用いることができる。特に注目されるのは、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド又は対応するオリゴペプチド及びポリペプチドの空間的にアドレス可能なアレイ(即ち、遺伝子チップ、マイクロタイタープレートなど)であり、空間的にアドレス可能なアレイ上に存在する少なくとも1つのバイオポリマーは、配列番号1〜27のうち少なくとも1つの配列に初めて開示されたオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列、又はそれらにコードされるアミノ酸配列を含む。バイオポリマーを固体支持マトリックスに付着させる方法又は固体支持マトリックス上で合成する方法、及びその上で結合研究を実施する方法は、とりわけ米国特許第5,700,637号、5,556,752号、5,744,305号、4,631,211号、5,445,934号、5,252,743号、4,713,326号、5,424,186号及び4,689,405号に開示されており、これらの開示は本明細書にその全体が援用される。
【0010】
配列番号1〜27に初めて開示された配列を含むアドレス可能なアレイを用いて、遺伝子の時間的且つ組織特異的発現を同定し、性質決定することができる。これらアドレス可能なアレイは、生産技術の限度内であるが、所望の特異性を付与するのに十分な長さのオリゴヌクレオチド配列を取り込む。これらプローブの長さは、約8〜約2000ヌクレオチドの範囲内である。好ましくはプローブは配列番号1〜27に初めて開示された配列由来の60ヌクレオチドから成り、より好ましくは25ヌクレオチドから成る。
【0011】
例えば、一連の記載されるオリゴヌクレオチド配列又はその相補体をチップ形式で用いて記載される配列の全部又は一部を再現することができる。オリゴヌクレオチド、典型的には長さ約16〜約40(又はこの範囲内のいかなる整数でもよい)のヌクレオチドは、互いに部分的に重複していてもよく、及び/又は配列は、重複しないオリゴヌクレオチドを用いて提示されてもよい。したがって、記載されるポリヌクレオチド配列は、典型的には、各々、本明細書の配列表に初めて開示された、少なくとも長さ約8ヌクレオチドのうち、少なくとも約2又は3の別個のオリゴヌクレオチド配列を含むはずである。こうしたオリゴヌクレオチド配列は、配列表の配列内に存在するいかなるヌクレオチドから始まることもでき、そして記載される配列に関して、センス(5’から3’)方向、又はアンチセンス方向、いずれにも進行することができる。
【0012】
マイクロアレイに基づく解析により広範なパターンの遺伝子活性の発見が可能となり、遺伝子機能の新たな理解を提供し、転写過程及び生物機構についての新規且つ予想外の洞察を生ずる。配列番号1〜27に初めて開示された配列を含むアドレス可能なアレイの使用は、特定経路に伴う転写の変化について詳細な情報を提供し、潜在的に新規成分又は遺伝子機能の同定をもたらして新規表現型としてそれら自体を明らかにする。
【0013】
配列番号1〜27に初めて開示された配列から成るプローブを用いて薬剤発見のための新規分子標的の同定、選択及び確認をすることもできる。これら非反復配列の使用により、薬剤標的の直接の確認、及び薬剤が意図する標的とは異なる経路を介して調節される遺伝子発現における薬剤依存的変化の認識が可能となる。したがって、これら非反復配列もまた薬剤作用及び毒性を明確にしモニタリングする上で有用である。
【0014】
有用性の例として、配列番号1〜27に初めて開示された配列をマイクロアレイ又は他のアッセイ形式に用いて、特定の病状を有する患者からの遺伝子材料の採集物をスクリーニングすることができる。配列番号1〜27に初めて開示された配列を用いて、当該技術分野において公知のコンピュータソフトウエアで以前に採集した遺伝子のデータベースと開示配列とを比較することにより、in silicoでこうした調査を実施することもできる。
【0015】
したがって、配列番号1〜27に初めて開示された配列を、特定の疾患に関連する変異を同定するために、及び診断又は予後アッセイとして用いることができる。
【0016】
現在記載されている配列はヌクレオチド配列を用いて明確に記載されているが、各配列を、種々の付加的な構造特性のいずれか又はそれらの組合せを用いて独自に記載することができることを認識すべきである。例えば、所定の配列を、その配列の所定の領域内に存在するヌクレオチドの最終的な組成物により、配列番号1〜27に初めて開示された1つ以上の特定のオリゴヌクレオチドの存在と共に記載することができる。あるいは、制限酵素による消化部位の相対的な位置を特定する制限地図、又は種々のパリンドローム配列若しくは他の特定オリゴヌクレオチド配列を用いて所定の配列を構造的に記載することができる。このような制限地図は、典型的には広く有用なコンピュータプログラム(例えば、ウィスコンシン大学GCG配列解析パッケージ、SEQUENCHER3.0、Gene Codes Corp.、ミシガン州アナーバーなど)により作られるが、所望により、1つ以上の更なる配列又は開示配列中に存在する1つ以上の制限部位に対する、配列の相対位置により、記載することができる配列中に存在する1つ以上の不連続のヌクレオチド配列と共に用いることができる。
【0017】
オリゴヌクレオチドプローブに関しては、非常にストリンジェントな条件は、例えば、6×SSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム中、37℃(14塩基オリゴ)、48℃(17塩基オリゴ)、55℃(20塩基オリゴ)、及び60℃(23塩基オリゴ)での洗浄を指す。これらの核酸分子は、例えばNHP遺伝子制御に有用な、NHP遺伝子アンチセンス分子をコードしていてもよく、又はアンチセンス分子として作用してもよい(NHP核酸配列の増幅反応におけるアンチセンスプライマーを得るため、及び/又は当該アンチセンスプライマーとして)。NHP遺伝子制御に関しては、生物学的機能を制御するのにこうした技術を使用できる。さらに、こうした配列は、やはりNHP遺伝子制御に有用であるリボザイム及び/又は三重らせん配列の一部として使用できる。
【0018】
阻害アンチセンス又は二本鎖オリゴヌクレオチドは、さらに、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルケオシン(queosine)、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルケオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、プソイドウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6−ジアミノプリンを含む群より選択される、少なくとも1つの修飾塩基部分を含むことができるが、これらに限定されるわけではない。
【0019】
アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、アラビノース、2−フルオロアラビノース、キシルロース、及びヘキソースを含む群より選択される、少なくとも1つの修飾糖部分も含むことができるが、これらに限定されるわけではない。
【0020】
さらに別の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミドチオエート、ホスホロアミデート、ホスホロジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、及びホルムアセタール又はそれらの類似体からなる群より選択される、少なくとも1つの修飾ホスフェート骨格を含むであろう。
【0021】
さらに別の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、α−アノマーオリゴヌクレオチドである。α−アノマーオリゴヌクレオチドは、相補的RNAと特異的な二本鎖ハイブリッドを形成し、該ハイブリッドでは、通常のβ−単位とは対照的に、鎖は互いに平行に走る(Gautier et al., 1987, Nucl. Acids Res. 15: 6625−6641)。オリゴヌクレオチドは、2’−O−メチルリボヌクレオチド(Inoue et al., 1987, Nucl. Acids Res. 15: 6131−6148)、又はキメラRNA−DNA類似体(Inoue et al., 1987, FEBS Lett. 215: 327−330)である。あるいは、二本鎖RNAを用い、標的NHPの発現及び機能を崩壊させることができる。
【0022】
本発明のオリゴヌクレオチドは、当該技術分野において公知の標準的な方法によって、例えば自動化DNA合成装置(例えばBiosearch、Applied Biosystemsなどから市販のもの)の使用によって合成できる。例えば、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、Stein et al.(1988, Nucl. Acids Res. 16: 3209)の方法によって合成でき、そしてメチルホスホネートオリゴヌクレオチドは、制御孔ガラスポリマー支持体の使用(Sarin et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85: 7448−7451)などによって調製できる。
【0023】
低ストリンジェント条件は、当業者に周知であり、そして予測可能であるように、ライブラリー及び標識配列が由来する特定の生物に応じて異なるであろう。こうした条件に関する手引きには、例えば、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual(及びその定期的な改訂版), Cold Springs Harbor Press, N.Y.;及びAusubel et al., 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y.を参照されたい。
【0024】
あるいは、適切に標識されたNHPヌクレオチドプローブを用いて、適切にストリンジェントな条件を用い、又はPCRによって、ヒトゲノムライブラリーをスクリーニングすることができる。ヒトゲノムクローンの同定及び性質決定は、多型(ヌクレオチド反復、マイクロサテライト対立遺伝子、一ヌクレオチド多型、又はコード一ヌクレオチド多型を含むが、これらに限定されるわけではない)を同定し、既定の遺伝子座/対立遺伝子のゲノム構造を決定し、そして診断試験を計画するのに役立つ。例えば、ヒト遺伝子のイントロン/エクソン境界に隣接する領域由来の配列を用いて、エクソン、イントロン、スプライシング部位(例えばスプライシングアクセプター及び/又はドナー部位)などの内部での突然変異を検出する増幅アッセイで用いるためのプライマーを設計することができ、診断法及び薬理ゲノミクスに使用できる。
【0025】
さらに、本明細書に開示されたNHP産物内のアミノ酸配列に基づいて設計された、2つの縮重又は「ゆらぎ」オリゴヌクレオチドプライマープールを用いてPCRを実行することにより、目的の生物由来の核酸からNHP遺伝子相同体を単離できる。反応のためのテンプレートは、NHP遺伝子の対立遺伝子を発現することが知られる、又は発現すると推測される、ヒト又は非ヒト細胞株又は組織から調製された、総RNA、mRNA、及び/又はmRNAの逆転写によって得られたcDNAであってもよい。
【0026】
PCR産物は、サブクローニングし、配列決定をして、増幅された配列が所望のNHP遺伝子の配列に相当することを確実にすることができる。その後、PCR断片を用いて、多様な方法によって、全長cDNAクローンを単離できる。例えば、増幅断片を標識し、バクテリオファージcDNAライブラリーなどのcDNAライブラリーをスクリーニングするのに使用できる。あるいは、標識断片を用いて、ゲノムライブラリーのスクリーニングを介し、ゲノムクローンを単離することができる。
【0027】
PCR技術はまた、全長cDNA配列を単離するのに使用できる。例えば、RNAは、標準的な方法にしたがい、適切な細胞又は組織供給源(すなわち、NHP配列を発現することが知られる、又は発現すると推測されるもの)から単離できる。逆転写(RT)反応は、第一鎖合成のプライミングのための、増幅断片の5’最末端に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、RNAに対して行うことが可能である。その後、生じたRNA/DNAハイブリッドは、標準的末端トランスフェラーゼ反応を用いて「テール化」し、ハイブリッドをRNaseHで消化し、そしてその後、第二鎖合成を相補的プライマーでプライミングすることができる。このように、増幅断片の上流のcDNA配列を単離することが可能である。使用できるクローニング戦略の概説には、例えばSambrook et al.,1989、上記を参照されたい。
【0028】
突然変異体NHP配列をコードするcDNAは、例えば、PCRを用いることによって単離することが可能である。この場合、第一のcDNA鎖は、突然変異体NHP対立遺伝子を有すると推定される個体において、発現されることが知られる又は発現されることが推測される組織から単離されたmRNAに、オリゴdTオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせ、そして逆転写酵素で新規鎖を伸長させることによって、合成することが可能である。その後、cDNAの第二鎖は、正常遺伝子の5’末端に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを用いて合成する。これらの2つのプライマーを用い、その後、PCRを介して産物を増幅し、所望により、適切なベクターにクローニングし、そして当業者に周知の方法を通してDNA配列解析に供する。突然変異体NHP対立遺伝子のDNA配列を、対応する正常NHP対立遺伝子と比較することによって、突然変異体NHP遺伝子産物の機能の損失又は改変に関与する、単数又は複数の突然変異を確かめることが可能である。
【0029】
あるいは、突然変異体NHP対立遺伝子を有すると推測される、又は有することが知られる個体(例えば、肥満、視力障害、高血圧、、抑うつ、発作、不妊などのNHP関連表現型を発現している個人)から得たDNAを用いて、ゲノムライブラリーを構築することができ、あるいは突然変異体NHP対立遺伝子を発現することが知られる、又は発現すると推測される組織由来のRNAを用いて、cDNAライブラリーを構築することができる。その後、正常NHP遺伝子、又はいかなるものでもよい適切なその断片を標識して、こうしたライブラリーにおいて、対応する突然変異体NHP対立遺伝子を同定するプローブとして用いることもできる。その後、突然変異体NHP遺伝子配列を含むクローンを精製して、当業者に周知の方法にしたがい配列解析に供することができる。
【0030】
さらに、例えば、突然変異体NHP対立遺伝子を有すると推測される、又は有することが知られる個体における、こうした突然変異対立遺伝子を発現することが知られる、又は発現すると推測される組織より単離したRNAから合成したcDNAを利用して、発現ライブラリーを構築することができる。この方式では、推定上の突然変異組織によって作製される遺伝子産物を発現させ、そして以下に記載されるように、正常NHP産物に対して作製された抗体と組み合わせた標準的抗体スクリーニング技術を用いてスクリーニングすることが可能である。(スクリーニング技術に関しては、例えば、Harlow E. and Lane, eds., 1988, “Antibodies: A Laboratory Manual”, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harborを参照されたい。)
さらに、スクリーニングは、例えばアルカリホスファターゼ−NHP融合タンパク質又はNHP−アルカリホスファターゼ融合タンパク質などの標識NHP融合タンパク質でスクリーニングすることにより達成することができる。NHP突然変異が、(例えばミスセンス又はフレームシフト突然変異の結果として)改変された機能を有する発現遺伝子産物を生じる場合、NHPに対するポリクローナル抗体は、対応する突然変異体NHP遺伝子産物と交差反応する可能性がある。こうした標識抗体との反応を介して検出されるライブラリークローンは、当該技術分野に周知の方法にしたがって精製し、そして配列解析に供することができる。
【0031】
本発明はまた、(a)前述のNHPコード配列及び/又はその相補体(すなわちアンチセンス)のいずれかを含むDNAベクター;(b)コード配列の発現を指示する制御配列と機能的に結合した前述のNHPコード配列のいずれかを含むDNA発現ベクター(例えば、本明細書に援用する米国特許第5,869,336号に記載されるようなバキュロウイルス);(c)宿主細胞において、コード配列の発現を指示する制御配列と機能的に結合した前述のNHPコード配列のいずれかを含む、遺伝的に操作された宿主細胞;及び(d)外因的に導入された制御配列の制御下に内因性NHP遺伝子を発現する(すなわち遺伝子活性化)、遺伝的に操作された宿主細胞、を含む。本明細書において、制御配列には、誘導性及び非誘導性プロモーター、エンハンサー、オペレーター、及び発現をドライブし、制御することが当業者に公知の他の配列が含まれるが、これらに限定されるわけではない。こうした制御配列には、サイトメガロウイルス(hCMV)極初期遺伝子、制御可能ウイルス配列(特にレトロウイルスLTRプロモーター)、SV40アデノウイルスの初期又は後期プロモーター、lac系、trp系、TAC系、TRC系、ラムダファージの主要オペレーター及びプロモーター領域、fdコートタンパク質の調節領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター、及び酵母α−接合因子のプロモーターが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0032】
本発明はまた、抗体及び抗イディオタイプ抗体(Fab断片を含む)、NHPのアンタゴニスト及びアゴニスト、並びにNHP遺伝子の発現を阻害する化合物若しくはヌクレオチド構築物(転写因子阻害剤、アンチセンス及びリボザイム分子、又は遺伝子若しくは制御配列置換構築物)、又はNHPの発現を促進させる化合物若しくはヌクレオチド構築物(例えばNHPコード配列が、プロモーター、プロモーター/エンハンサーなどの発現調節配列と機能的に結合した発現構築物)を含む。
【0033】
NHP又はNHPペプチド、NHP融合タンパク質、NHPヌクレオチド配列、抗体、アンタゴニスト及びアゴニストは、疾患の診断のため、突然変異体NHP又は不適切に発現されたNHPを検出するのに有用である可能性がある。NHPタンパク質又はペプチド、NHP融合タンパク質、NHPヌクレオチド配列、宿主細胞発現系、抗体、アンタゴニスト、アゴニスト、並びに遺伝的に操作された細胞及び動物は、体内で、NHPの正常機能を混乱させる症候的発現又は表現型発現の治療に効果的な薬剤のスクリーニング(又はコンビナトリアルライブラリーの高処理スクリーニング)に使用できる。操作された宿主細胞及び/又は動物の使用は、こうした系がNHPの内因性受容体に結合する化合物を同定できるだけでなく、NHP介在活性又は経路を誘発する化合物もまた同定できるという点で有利である。
【0034】
最後に、NHP産物は、療法剤として用いることが可能である。例えば、NHPに相当するNHPペプチド/ドメインのような可溶性誘導体、分泌型NHP、NHP融合タンパク質産物(特に、NHP−Ig融合タンパク質、すなわちIgFcへのNHP、又はNHPのドメインの融合体)、NHP抗体及び抗イディオタイプ抗体(Fab断片を含む)、アンタゴニスト又はアゴニスト(NHP介在経路中の下流標的を調節する又は該標的に作用する化合物を含む)を用い、疾患又は障害を直接治療することが可能である。例えば、有効量の可溶性NHP、又はNHP−IgFc融合タンパク質又はNHPを模倣する抗イディオタイプ抗体(又はそのFab)の投与は、内因性NHP受容体を活性化するか、又は効果的に中和することができる。こうしたNHP産物をコードするヌクレオチド構築物を用いて、宿主細胞がこうした産物をin vivoで発現するように遺伝的に操作することができ;これらの遺伝的に操作された細胞は、体内で「バイオリアクター」として機能し、NHP、NHPペプチド、又はNHP融合タンパク質を、連続した供給で、体に搬送する。機能するNHP、突然変異体NHP、並びにアンチセンス及びリボザイム分子をコードするヌクレオチド構築物はまた、NHP発現を調節するための「遺伝子治療」アプローチに使用することもできる。したがって、本発明はまた、生物学的障害を治療するための医薬製剤及び方法も含む。
【0035】
本発明の多様な態様は、以下のサブセクションにより詳細に記載される。
5.1.NHP配列
記載されるNHPのcDNA配列及び対応する推定アミノ酸配列を配列表に示す。NHPヌクレオチドは、密集したヒトのジーントラップされた配列、EST、及びヒト大脳、胎児大脳、小脳及び視床下部のcDNAライブラリー(Edge Biosystems、メリーランド州ゲーサーズバーグ)から単離されたcDNAから得た。記載される配列は、ニューレキシン(分泌型を含む)及びコンタクチン結合タンパク質を含むがこれらに限定されない種々のタンパク質と限定された構造類似性を共有する。例えば配列番号1の812番目のヌクレオチドに相当する位置にC又はTへの移行をもたらす多型を同定した。この多型は、例えば配列番号2の271番目のアミノ酸の位置に存在するSer又はLeuを生じさせる。
【0036】
5.2.NHP及びNHPポリペプチド
NHP、ポリペプチド、ペプチド断片、NHPの突然変異体、短鎖型、又は欠失型、及び/又はNHP融合タンパク質を、多様な使用のために調製することができる。これらの使用には、抗体の生成、診断アッセイの試薬としての使用、NHPに関連する他の細胞内遺伝子産物の同定のための使用、精神的、生物学的又は医学的障害及び疾患の療法措置に有用な医薬的試薬として使用できる化合物に関してスクリーニングするためのアッセイ試薬としての使用が含まれるが、これらに限定されるわけではない。相同性の情報や発現データが与えられれば、疾患を治療するために、又は治療剤の有効性を治療学的に増加させるために、記載されるNHPを(薬剤、オリゴ、抗体などにより)標的とすることができる。
【0037】
配列表は、記載されるNHP配列にコードされるアミノ酸配列を開示する。NHPは、典型的には、DNA配列背景において翻訳開始部位と一致するイニシエーターメチオニン、及び膜タンパク質又は分泌タンパク質に特有なシグナル配列を表示する。
【0038】
本発明のNHPアミノ酸配列は、配列表に提示されるアミノ酸配列、並びにその類似体及び誘導体を含む。さらに、他の種由来の対応するNHP相同体が本発明に含まれる。実際、上述のNHPヌクレオチド配列にコードされるいかなるNHPタンパク質も本発明の範囲内であり、配列表に提示されるアミノ酸配列のすべて又はいかなる新規部分をコードする、いかなる新規ポリヌクレオチド配列も同様である。遺伝暗号の縮重性が周知であり、したがって、配列表に提示される各アミノ酸は、該アミノ酸をコードすることが可能な周知の核酸「トリプレット」コドン、又は多くの場合、コドン類の一般的代表例である。こうしたものとして、本明細書において意図されるように、配列表に提示されるアミノ酸配列は、遺伝暗号と併せて考えた場合(例えば、本明細書に援用する“Molecular Cell Biology”, 1986, J. Darnell et al. eds., Scientific American Books, New York, NYの第109頁の表4−1を参照されたい)、こうしたアミノ酸配列をコードすることが可能な核酸配列の多様な順列及び組み合わせのすべてのうちの一般的代表例である。
【0039】
本発明はまた、いくつかの規準のうちのいずれかにより判断して、本明細書に記載されるヌクレオチド配列にコードされるNHPと機能的に同等であるタンパク質も包含し、これらの規準はNHPの基質に結合し該基質を切断する能力、あるいは同一の又は相補的下流経路を達成する能力、あるいは細胞内代謝(例えばタンパク質分解活性、イオン流動、チロシンリン酸化、輸送など)の変化を含むが、これらに限定されるわけではない。こうした機能的に同等なNHPタンパク質は、上述のNHPヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列内のアミノ酸残基の付加物又は置換物であるが、サイレント変化を生じ、したがって、機能的に同等な遺伝子産物を産生するものを含むが、これらに限定されるわけではない。アミノ酸置換は、関与する残基の極性、荷電、可溶性、疎水性、親水性及び/又は両親媒性の性質における類似性に基づいて行うことができる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニンが含まれ;極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンが含まれ;陽性荷電(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン及びヒスチジンが含まれ;そして陰性荷電(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれる。
【0040】
多様な宿主発現ベクター系を用いて、本発明のNHPヌクレオチド配列を発現させることが可能である。本発明の例におけるように、NHPペプチド又はポリペプチドが膜タンパク質であると考えられる場合、タンパク質の疎水性領域をタンパク質又は核酸レベル(即ち、例えば配列番号2のおおよそ約1,240番目のアミノ酸から約1,265番目のアミノ酸にわたる疎水性領域)で切除することができ、そして、得られる可溶性ペプチド又はポリペプチドを培地から回収することができる。こうした発現系はまた、NHP、又は機能的同等物をin situで発現する、操作された宿主細胞も含む。こうした発現系からのNHPの精製又は濃縮は、適切な界面活性剤及び脂質ミセル、並びに当業者に周知の方法を用いて達成することが可能である。しかしながら、こうした操作された宿主細胞自体は、NHPの構造的機能的特性を保持するだけでなく、生物学的活性を評価することが重要である状況、例えば薬剤スクリーニングアッセイで用いることが可能である。
【0041】
本発明の目的のため使用できる発現系には、NHPヌクレオチド配列を含む、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば大腸菌、枯草菌)などの微生物;NHPヌクレオチド配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えばサッカロミセス属、ピヒア属);NHP配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;NHPヌクレオチド配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染した、又は組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;あるいは哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えばメタロチオネインプロモーター)又は哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例えばアデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現構築物を有する哺乳動物細胞系(例えばCOS、CHO、BHK、293、3T3)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0042】
細菌系において、発現されるNHP産物に意図される使用に応じ、いくつかの発現ベクターを好適に選択することが可能である。例えば、NHPの医薬組成物又はNHPを含む医薬組成物の生成のために、あるいはNHPに対する抗体を作製するために、多量のこうしたタンパク質を産生しようとする場合、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を指示するベクターが望ましいことがある。こうしたベクターには、融合タンパク質が産生されるように、NHPコード配列を、個々に、lacZコード領域とインフレームでベクター内に連結することが可能である、大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther et al., 1983, EMBO J. 2: 1791);pINベクター(Inouye & Inouye, 1985, Nucleic Acids Res. 13: 3101−3109; Van Heeke & Schuster, 1989, J. Biol. Chem. 264: 5503−5509)などが含まれるが、これらに限定されるわけではない。pGEXベクター(Pharmacia又はAmerican Type Cuture Collection)もまた、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として、異種ポリペプチドを発現するのに使用できる。一般的に、こうした融合タンパク質は可溶性であり、そしてグルタチオン−アガロースビーズに吸着させ、続いて遊離グルタチオンの存在下で溶出させることによって、溶解された細胞から容易に精製することが可能である。pGEXベクターは、クローニングされた標的遺伝子産物が、GST部分から遊離できるように、トロンビン又はXa因子プロテアーゼ切断部位を含むよう設計されている。
【0043】
昆虫系においては、オートグラファ・カリフォルニカ核多角体ウイルス(AcNPV)が、異種遺伝子を発現するのにベクターとして用いられる。該ウイルスは、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞内で増殖する。NHPコード配列は、個々に、ウイルスの非必須領域(例えばポリヘドリン遺伝子)にクローニングし、AcNPVプロモーター(例えばポリヘドリンプロモーター)の制御下に置くことが可能である。NHPコード配列の挿入が成功すると、ポリヘドリン遺伝子の不活性化及び非閉塞性組換えウイルス(すなわちポリヘドリン遺伝子にコードされるタンパク質性コートを欠失するウイルス)の産生が生じるであろう。これらの組換えウイルスを、その後、スポドプテラ・フルギペルダ細胞を感染させるのに用い、該細胞において、挿入配列が発現される(例えば、Smith et al., 1983, J. Virol. 46: 584; Smith、米国特許第4,215,051号を参照されたい)。
【0044】
哺乳動物宿主細胞において、いくつかのウイルスに基づく発現系を利用できる。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合、目的のNHPヌクレオチド配列は、アデノウイルス転写/翻訳調節複合体、例えば後期プロモーター及び三分割(tripartite)リーダー配列に連結することができる。その後、このキメラ遺伝子を、in vitro又はin vivo組換えによって、アデノウイルスゲノムに挿入することができる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えばE1又はE3領域)における挿入は、生存可能であり、そして感染した宿主においてNHP産物を発現することが可能な組換えウイルスを生じるであろう(例えばLogan & Shenk, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 3655−3659を参照されたい)。特定の開始シグナルもまた、挿入されたNHPヌクレオチド配列の効率的な翻訳に必要とされる可能性がある。これらのシグナルには、ATG開始コドン及び隣接配列が含まれる。それ自体の開始コドン及び隣接配列を含む、全NHP遺伝子又はcDNAが、適切な発現ベクターに挿入される場合、さらなる翻訳調節シグナルは必要とされない可能性がある。しかしながら、NHPコード配列の一部のみが挿入される場合、おそらくATG開始コドンを含む、外因性翻訳調節シグナルが提供されなければならない。さらに、開始コドンは、全挿入物の翻訳を確実にするため、所望のコード配列のリーディングフレームと位相が同じでなければならない。これらの外因性翻訳調節シグナル及び開始コドンは、多様な起源のものでもよく、天然でも合成でもよい。発現効率は、適切な転写エンハンサー配列、転写ターミネーターなどを含むことによって、促進させることが可能である(Bitter et al., 1987, Methods in Enzymol. 153: 516−544を参照されたい)。
【0045】
さらに、挿入された配列の発現を調節するか、又は特定の望ましい方式で遺伝子産物を修飾し、そしてプロセシングする、宿主細胞株を選択することができる。タンパク質産物のこうした修飾(例えば糖鎖形成)及びプロセシング(例えば切断)は、タンパク質の機能に重要である可能性がある。異なる宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾のための特徴的且つ特異的な機構を有する。適切な細胞株又は宿主系を選択し、発現される異質のタンパク質の正しい修飾及びプロセシングを確実にすることができる。このために、一次転写物の適切なプロセシング、糖鎖形成及び遺伝子産物のリン酸化のための細胞機構を有する真核宿主細胞を使用できる。こうした哺乳動物宿主細胞には、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3、WI38及び特にヒト細胞株が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0046】
組換えタンパク質の長期の高収率産生のため、安定な発現が好ましい。例えば、上述のNHP配列を安定して発現する細胞株を設計することができる。ウイルス複製起点を含む発現ベクターを用いるよりむしろ、適切な発現調節配列(例えばプロモーター、エンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)によって調節されるDNA、及び選択可能マーカーで宿主細胞を形質転換することができる。異種DNAの導入後、操作された細胞を、栄養強化培地中で1〜2日間増殖させ、その後選択培地に移すことができる。組換えプラスミド中の選択可能マーカーは、選択に対する耐性を与え、そして細胞が染色体にプラスミドを安定して組み込み、そして増殖巣を形成するまで増殖することを可能にする。続いて該増殖巣を、クローニングし、そして細胞株へと発展させることができる。この方法は、NHP産物を発現する細胞株を操作するのに、好適に用いることが可能である。こうした操作細胞株は、NHP産物の内因性活性に影響を与える化合物をスクリーニングし、評価するのに、特に有用である可能性がある。
【0047】
いくつかの選択系を用いてもよく、選択系には単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al., 1977, Cell 11: 223)、ヒポキサンチン−グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, 1962, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48: 2026)、及びアデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., 1980, Cell 22: 817)遺伝子が含まれるが、これらに限定されるわけではない。これらの遺伝子はそれぞれ、tk−、hgprt−又はaprt−細胞で使用することができる。また、代謝拮抗剤耐性を、以下の遺伝子:メトトレキセートに対する耐性を与えるdhfr(Wigler et al., 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 3567; O’Hare et al., 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 1527);ミコフェノール酸に対する耐性を与えるgpt(Mulligan & Berg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 2072);アミノ配糖体G−418に対する耐性を与えるneo(Colberre−Garapin et al., 1981, J. Mol. Biol. 150: 1);及びハイグロマイシンに対する耐性を与えるhygro(Santerre et al., 1984, Gene 30: 147)に関する選択の基礎として使用することができる。
【0048】
あるいは、いかなる融合タンパク質も、発現される融合タンパク質に特異的な抗体を利用することによって、容易に精製することが可能である。例えば、Janknecht et al.により記載される系は、ヒト細胞株で発現される非変性融合タンパク質の容易な精製を可能にする(Janknecht et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 8972−8976)。この系では、遺伝子のオープンリーディングフレームが、翻訳された際に、6つのヒスチジン残基から成るアミノ末端タグに融合するように、目的の遺伝子をワクシニア組換えプラスミド中にサブクローニングする。組換えワクシニアウイルスに感染した細胞由来の抽出物を、Ni2+・ニトリロ酢酸−アガロースカラム上に装填し、ヒスチジンタグ化タンパク質を、イミダゾール含有緩衝液で選択的に溶出する。
【0049】
また、本発明に含まれるのは、NHPを標的器官に向け、及び/又は細胞膜を通る細胞質ゾルへの輸送を促進させる融合タンパク質である。NHPを抗体分子又はそのFab断片に結合させることにより、特定のエピトープを有する細胞を標的とするために用いることができる。適切なシグナル配列をNHPに付着させてもNHPは細胞内の所望の位置に輸送される。あるいは、NHP又はその核酸配列のターゲティングはリポソーム又は脂質複合体に基づく送達システムを用いて達成される。このような技術はLiposomes: A Practical Approach, New, RRC ed., Oxford University Press, New York並びに米国特許第4,594,595号、5,459,127号、5,948,767号及び6,110,490号に記載されており、それぞれの開示は本明細書にその全体が援用される。さらに包含されるのは遺伝子操作された新規タンパク質構築物である。この操作は、それらが標的部位又は所望の器官へのNHPの輸送を促進させるような方法でなされ、その際、それらはNHPがその機能活性を発現可能な細胞膜及び/又は核を通る。この目的は、NHPを、ターゲティング特異性を提供するサイトカイン又は他のリガンドに、及び/又は細胞膜の通過を促進させるためにタンパク質形質導入ドメイン(これら形質導入配列の例として本明細書に援用する米国特許出願第60/111,701号及び第60/056,713号を通常参照されたい。)にカップリングさせることにより達成することができる。また、随意、核局在配列を含むように遺伝子操作することもできる。
【0050】
5.3.NHP産物に対する抗体
NHPの1つ以上のエピトープ、又はNHPの保存された変異体のエピトープ、又はNHPのペプチド断片を特異的に認識する抗体もまた、本発明に含まれる。こうした抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、ヒト化抗体又はキメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、Fab発現ライブラリーによって産生される断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体及び上記のいずれかのエピトープ結合断片が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0051】
本発明の抗体は、例えば、生物学的試料におけるNHPの検出に使用でき、したがって、診断又は予後技術の一部として利用でき、それにより異常な量のNHPに関して患者を調べることができる。こうした抗体はまた、例えば、化合物スクリーニング計画と組み合わせて、NHP遺伝子産物の発現及び/又は活性に対する試験化合物の影響を評価するのに利用できる。さらに、こうした抗体は、遺伝子治療と組み合わせて、例えば、患者への導入前に、正常及び/又は操作NHP発現細胞を評価するのに使用できる。こうした抗体は、さらに、異常なNHP活性を阻害するための方法として使用できる。したがって、こうした抗体は、治療法の一部として利用できる。
【0052】
抗体の産生のため、多様な宿主動物を、NHP、NHPペプチド(例えばNHPの機能ドメインに相当するもの)、短鎖型NHPポリペプチド(1つ以上のドメインが欠失しているNHP)、NHPの機能的同等物又はNHPの突然変異体を注入することによって、免疫することができる。こうした宿主動物には、いくつかのみを挙げると、ブタ、ウサギ、マウス、ヤギ及びラットが含まれるが、これらに限定されるわけではない。宿主種に応じ、多様なアジュバントを用いて免疫応答を増加させることができる。アジュバントには、フロイントのアジュバント(完全及び不完全)、水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウムなどの無機塩、リゾレシチン、プルロニックポリオール(pluronic polyol)などの界面活性物質、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、並びにBCG(カルメット−ゲラン杆菌)及びコリネバクテリウム−パルブムのような潜在的に有用なヒトアジュバントが含まれるが、これらに限定されるわけではない。あるいは、キーホールリンペットヘモシアニン、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、オボアルブミン、コレラ毒素又はそれらの断片などの分子と組み合わせて、及び/又はカップリングすることによって、免疫反応を促進させることが可能である。ポリクローナル抗体は、免疫動物の血清由来の抗体分子の不均一な集団である。
【0053】
特定の抗原に対する抗体の均質な集団であるモノクローナル抗体は、連続して培養される細胞株による抗体分子の産生を提供するいかなる技術によっても得ることができる。これらには、Kohler及びMilsteinのハイブリドーマ技術(1975, Nature 256: 495−497;及び米国特許第4,376,110号)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosbor et al., 1983, Immunology Today 4: 72; Cole et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 2026−2030)、及びEBV−ハイブリドーマ技術(Cole et al., 1985, Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp.77−96)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。こうした抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgD及びそれらのいかなるサブクラスも含む、いかなる免疫グロブリンクラスであってもよい。本発明のmAbを産生するハイブリドーマは、in vitro又はin vivoで培養することができる。in vivoでmAbが高力価で産生されるため、この方法は現在好ましい産生法である。
【0054】
さらに、適切な生物学的活性を有するヒト抗体分子由来の遺伝子と共に、適切な抗原特異性を有するマウス抗体分子由来の遺伝子をスプライシングすることによる、「キメラ抗体」の産生のため開発された技術(Morrison et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci., 81: 6851−6855; Neuberger et al., 1984, Nature, 312: 604−608; Takeda et al., 1985, Nature, 314: 452−454)を使用できる。キメラ抗体は、異なる部分が、異なる動物種に由来する分子、例えばネズミmAb由来の可変領域及びヒト免疫グロブリン定常領域を有する分子である(本明細書にその全体を援用する、米国特許第6,075,181号及び第5,877,397号を参照されたい。)。また、本明細書にその全体を援用する米国特許第6,150,584号及びその開示に記載されるように、完全にヒト化したモノクローナル抗体を産生することも有用である。
【0055】
あるいは、一本鎖抗体の産生のために記載される技術(米国特許第4,946,778号;Bird, 1988, Science 242: 423−426; Huston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879−5883;及びWard et al., 1989, Nature 341: 544−546)を適応させ、NHP配列産物に対する一本鎖抗体を産生することができる。一本鎖抗体は、アミノ酸架橋を介してFv領域の重鎖及び軽鎖断片を連結し、一本鎖ポリペプチドを生じさせることによって形成される。
【0056】
特定のエピトープを認識する抗体断片を、既知の技術によって生成することができる。例えば、こうした断片には:抗体分子のペプシン消化によって産生することが可能であるF(ab’)2断片、及びF(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することによって生成することが可能であるFab断片が含まれるが、これらに限定されるわけではない。あるいは、Fab発現ライブラリーを構築し(Huse et al., 1989, Science, 246: 1275−1281)、所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速で容易な同定を可能にすることができる。
【0057】
NHPに対する抗体は、続いて、当業者に周知の技術を用いて、既定のNHPを「模倣する」抗イディオタイプ抗体を生成するのに利用できる(例えばGreenspan & Bona, 1993, FASEB J 7(5): 437−444;及びNissinoff, 1991, J. Immunol. 147(8): 2429−2438を参照されたい)。例えば、NHPドメインに結合し、コグネイト受容体へのNHPの結合を競合的に阻害する抗体を用いて、NHPを「模倣する」、したがって、受容体に結合して該受容体を活性化するか又は中和する抗イディオタイプ抗体を生成することができる。こうした抗イディオタイプ抗体又はこうした抗イディオタイプ抗体のFab断片は、NHP介在経路に関与する療法措置で使用できる。
【0058】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施態様による範囲に限定されるものではなく、この範囲は本発明の個々の態様の単なる例示として示したにすぎないのであって、機能的に同等の方法及び構成要素は、本発明の範囲内である。実際、当業者には、前述の説明から、本明細書に示されそして記載されるものの他に、本発明の多様な改変も明らかになるであろう。こうした修飾は、付随する請求項の範囲内に含まれるものと意図される。すべての引用される刊行物、特許、及び特許出願の全体を、本明細書に援用する。
Claims (5)
- 配列番号1に初めて記載されるヌクレオチド配列のうち少なくとも24の隣接する塩基を含む、単離核酸分子。
- (a)配列番号2に示されるアミノ酸配列をコードし;かつ(b)ストリンジェントな条件下で、配列番号1のヌクレオチド配列又はその相補体にハイブリダイズする、
ヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。 - 配列番号2に示されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
- 配列番号4に示されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
- 配列番号24に示されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
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