JP2004360215A - 定着金物付き鉄筋 - Google Patents
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Abstract
【課題】コンクリートに定着するための定着金物をコンパクトで単純な構造とし、建設現場や工場での加工が容易且つ短時間に行え、高価な設備や器材が不要なため低コストで、しかも定着強度の大きい定着金物付き鉄筋を提供する。
【解決手段】コンクリート10に埋め込まれた鉄筋1を定着させる金物2が付されており、鉄筋1が定着金物2の孔2aを貫通しており、鉄筋1と定着金物2の孔2aの空隙にテルミット反応によって生成した溶融金属3が充填固化されている。
【選択図】 図1
【解決手段】コンクリート10に埋め込まれた鉄筋1を定着させる金物2が付されており、鉄筋1が定着金物2の孔2aを貫通しており、鉄筋1と定着金物2の孔2aの空隙にテルミット反応によって生成した溶融金属3が充填固化されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリートに埋め込まれた鉄筋を定着させ、抜け防止のための金物が付された鉄筋、その定着金物付き鉄筋を製造する装置、および定着金物付き鉄筋を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄筋コンクリート構造に用いる鉄筋は、コンクリートから抜けることを防止するため、その端部をU字状或いはL字状等に曲げてコンクリートに埋め込まれていた。螺子鉄筋に雌螺子付定着板をねじ込んでおき、その定着板も鉄筋と共にコンクリートに埋め込んで固定する構成のものも知られていた。
【0003】
その他の例として、特許文献1に示されるように、鉄筋に定着部材を取り付けた構成で、定着部材の孔に鉄筋を通し、鉄筋の孔内に挿入された部分を増肉加工することで定着部材に嵌合させて固定した定着部材付き鉄筋がある。また特許文献2には、定着金物と鉄筋との間にモルタルやエポキシ樹脂等のグラウト材を充填したものが開示されている。またグラウト材として溶融金属を使用することが示唆されているが、具体的材質や手法は開示されていない。
【0004】
これらの従来の構造にはいずれにも問題があった。端部をU字等に曲げた構造の鉄筋は、多本数を束ねると収まりが悪く嵩張るため、輸送や保管のコストがかかる。また狭い現場での組立て施工が困難である。しかも地震などで大きな力が加わるとU字が伸びてしまうことがあった。雌螺子付定着板をねじ込んだ螺子鉄筋は、製造コストが高いうえに、雌螺子付定着板を螺子鉄筋にねじ込んで固定する際、両者の間に確実にモルタル等の充填材を注入しなければならず、作業性が悪い。
【0005】
特許文献2に記載のグラウト材を充填した定着金物付き鉄筋は、グラウト材の硬化に時間を要するのみならず、グラウト材の硬化後強度十分に出ない。また、グラウト材の滑りを防止する定着金物の内側の突起やリブで、定着金物自体の構造が複雑になり、コスト高になっていた。またグラウト材として示唆されている溶融金属は材質や生成手法が記載されていないことから、通常の手法であるガス溶接や電気溶接といった溶接技術の手方法が採用されていると考えられる。溶接技術は、各個人の技量により溶接強度がばらつき、時として未熟練者による作業によって強度不足のものが製造されることがあった。
【0006】
【特許文献1】特開平11−293850号公報
【特許文献2】特開2000−345654号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、コンクリートに定着するための定着金物をコンパクトで単純な構造とし、建設現場や工場での加工が容易且つ短時間に行え、高価な設備や器材が不要なため低コストで、しかも定着強度の大きい定着金物付き鉄筋、その定着金物付き鉄筋の製造装置、および定着金物付き鉄筋の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するためになされた本発明の定着金物付き鉄筋は、実施例に対応する図1に示すように、コンクリート10に埋め込まれた鉄筋1を定着させる金物2が付されており、鉄筋1が定着金物2の孔2aを貫通しており、鉄筋1と定着金物2の孔2aの空隙にテルミット反応によって生成した溶融金属3が充填固化されている。
【0009】
このように鉄筋1と定着金物2の孔2aの空隙に溶融金属3が充填固化されていることによって鉄筋と定着金物とが強固に接続される。
【0010】
鉄筋1は異形鉄筋であることが好ましい。図1に示すとおり、異形鉄筋1には節と呼ばれる凹凸部が形成されており、その凹部に溶融金属が回り込んで固化されるため、鉄筋の軸線方向の力に対する接続強度が優れている。
【0011】
定着金物2の孔2aの一方の口径が他方の口径より大きく、孔の内面にテーパー面が形成されていることで適切に実施できる。このようにテーパー面が形成されていることで溶融金属の充填時における流れが良くなる。さらに図1に示すように、鉄筋1は、定着金物2の孔2aの口径が大きい方を奥側にコンクリート10に埋め込まれると、抜け方向(矢印参照)の力が加わったとき、溶融金属3がテーパー面に当って受けられので、抜けに対する抵抗力が強化される。
【0012】
孔2aの最小口径は挿入する鉄筋を容易に挿入しうる大きさのものであればよく、鉄筋外径よりも0.2〜0.5mm程度以上大きいものが好ましい。また定着金物2の口径は、鉄筋外径の2から3倍、好ましくは2.5倍であれば、コンパクトで且つ十分な抜けに対する抵抗力をもたせることができる。
【0013】
定着金物2の孔2aの内面から外部にガス抜孔5が形成されていることが好ましい。
【0014】
同じく前記目的を達成するためになされた本発明の定着金物付き鉄筋製造装置は、実施例に対応する図2に示すように、鉄筋1が孔2aに貫通した定着金物2を保持する治具空間6と、その治具空間6の上方に配置され、金属を溶融するルツボ7とを有し、ルツボ7の底から治具空間6内の定着金物2の孔2aに向かって金属の溶融物が流れる湯道4が通じている。
【0015】
また本発明の定着金物付き鉄筋製造装置は、該金属の溶融がテルミット反応による溶融であって、ルツボ7が黒鉛またはセラミックで形成されていることが好ましい。
【0016】
同じく前記目的を達成するためになされた本発明の定着金物付き鉄筋製造方法は、定着金物2の孔2aに鉄筋1を挿入して貫通させ、鉄筋1と定着金物2の孔2aの空隙に溶融している金属を充填して固化させることを特徴としている。
【0017】
本発明の定着金物付き鉄筋製造方法は、該金属が鉄または銅であることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1に断面を示す本発明の定着金物付き鉄筋は、図2に断面を示す本発明の定着金物付き鉄筋の製造装置により、本発明の定着金物付き鉄筋の製造方法にしたがって製造される。以下、本発明を適用する好ましい実施の形態を、順に説明する。
【0019】
図2の製造装置は、治具空間6を有し、上方にルツボ7が配置されている。治具空間6は定着金物2の外形が嵌りこみ、長い鉄筋1がつきぬける構造で、鉄筋1が孔2aに貫通している状態の定着金物2を保持する。
【0020】
定着金物2は鋳鉄によって成形されており、中心孔2aが抜け、中心孔2aの内壁がテーパー形状になっている。一方の口径は鉄筋1が挿入できるだけの広さで、もう一方の口径は鉄筋1の外径の2.5倍程度である。鉄筋1と中心孔2aのテーパーでキャビティ(空隙)8が形成される。定着金物2のキャビティ8から外に向けてガス抜き孔5があけられている。鉄筋1は、外表面に網目模様の凸部が形成されている異形鉄筋である。
【0021】
ルツボ7には底孔が明けられており、底孔から治具空間6内に保持されている定着金物2のキャビティに向かって金属の溶融物が流れる湯道4が通じている。ルツボ7は黒鉛で形成されており、底孔は熱溶融部材からなるディスク9で塞がれている。ルツボ7には金属酸化物と還元剤とからなるテルミット剤12が収容される。この例では金属酸化物が酸化鉄と還元剤がアルミニウムである。テルミット剤12の上には点火剤13として酸化鉄、酸化銅、アルミニウムの混合微粉末が配置される。
【0022】
定着金物付き鉄筋は、以下のように製造される。
【0023】
鉄筋1を定着金物2に通してから製造装置の治具空間6に配置する。着火具15によって点火剤13に点火すると、点火剤13が燃焼してテルミット剤12の酸化還元反応が誘発されて進行する。酸化鉄は鉄に還元され、反応熱により溶融された溶融鉄と、アルミナを主成分とするスラグとが生成する。比重の軽いアルミナスラグは溶融鉄から浮き上がって比重の重い溶融鉄が沈降し分離する。溶融鉄は、その熱によりディスク5を溶融して底孔を抜けて湯道4を通り、鉄筋1と中心孔2aのテーパーで形成されるキャビティに流れ込み、ガス抜き孔5から残留空気が抜けながら、隙間なく充填される。それを自然冷却により固化すると、鉄筋1と定着金物2とが連結する。
【0024】
製造装置から外した定着金物付き鉄筋は、定着金物2の側をコンクリート型枠(不図示)の内部に配置し、コンクリートを充填して固化する。図1に示すように、定着金物付き鉄筋1は、定着金物2の周囲がコンクリート10に埋め込まれから強固に固定される。
【0025】
定着金物付き鉄筋が外された製造装置は、ルツボ7や湯道4に付着したスラグをウエスやブラシ等でこすり取ってから、同様な製造作業を繰り返す。
【0026】
定着金物2の形状は円筒形、多角筒形等任意であるが、加工しやすさから円筒形が好ましい。材質は、金属類が好ましく、例えば一般的な熱間圧延鋼材やダクタイル鋳鉄等の鋳物材が使用される。定着金物2は鋳物あるいは切削加工によりその形状に仕上げられる。鉄筋に対する定着金物2の取付位置は、通常、鉄筋1の端部近傍であるが、必要に応じ中間位置としてもよい。
【0027】
テルミット剤は、銅テルミットの場合、酸化銅粉とアルミニウム粉や銅・アルミニウム合金粉の混合粉である。さらにテルミット剤には溶融金属とスラグとを分離したり、ボイドの発生を防いだり、溶融金属やスラグの融点を下げるための添加剤を付加することができる。添加剤としてはスズ、硅化カルシウム、酸化亜鉛、氷晶石、フッ化カルシウム等が用いられる。
【0028】
テルミット剤は、鉄テルミットの場合、酸化鉄粉とアルミニウム粉の混合粉である。鉄テルミット剤にも溶融金属とスラグとを分離したり、ボイドの発生を防いだり、溶融金属やスラグの融点を下げるための添加剤を付加することができる。添加剤としては氷晶石、フッ化カルシウム、珪素等が用いられる。
【0029】
テルミット反応のルツボが黒鉛及び/又はセラミック製であると、溶融金属をルツボに付着させることなく効率よく定着金物のキャビティに充填させることができる。ルツボの下部に直径がφ5からφ10の範囲の湯道で連結された鉄筋及び定着金物の挿入部が形成されていると、スラグが良く分離された状態で溶融金属を定着金物のキャビティに充填させることができるため、スラグの混入による接続強度の低下のない定着金物付き鉄筋を製造することができる。ルツボを含む製造装置は黒鉛製であれば、繰り返し使用することが可能であるが、1回使用のセラミック製反応ルツボと組み合わせてもよい。この装置は例えば外形25mmの鉄筋に適用した場合、80×80×150程度の大きさで良く、ガス溶接等に必要な器材や設備に比べても非常にコンパクトである。
【0030】
本発明のようにテルミット反応を応用して定着金物付き鉄筋を製造するには、熟練や電気、ガス設備を要せず且つ加工時間も短いので、工場生産のみならず建設現場でも短時間に低コストで行うことができる。さらに、一般的なテルミット溶接のように、被溶接物に溶融金属を溶着させる必要性がないため、溶融金属の溶着を妨げる鉄筋の黒皮(酸化被膜)を除去する前処理が不必要であり、全作業工程にかかる時間が短縮される。
【0031】
【実施例】
以下、本発明にしたがって定着金物付き鉄筋を製造した例、およびその定着金物付き鉄筋の鉄筋と定着金物の接合強度(引張強度)を測定した例について記載する。
【0032】
鉄筋1は公称直径25mmの異形鉄筋である。定着金物2は、鋼材SS400製で外径の最大値がφ65mm、長さ40mmである。中心孔2aの小径側直径はφ28.2mm、最大径はφ44mmで深さ16mmまでテーパーで直径φ38mmとなり、その直径φ38mmの孔が深さ16mmまであり小径側に貫通している。ガス抜き孔3は直径φ5mmである。
【0033】
製造装置は全体が黒鉛製で、外形が幅100mm、奥行き100mm、高さ195mmの直方体である。上方のルツボ7は、上部内径φ80mm、下部内径φ65mm、深さ80mmの円錐台形の内空を有している。下方の治具空間6は直径φ65.5mm、深さ35mmの横穴であり、鉄筋1の突抜け部として直径φ29mmの孔が貫通している。ルツボ7の底孔は直径φ10mm、深さ20mmで垂直にあけられ、湯道4は直径φ5mmで45°に傾斜している。ディスク9は厚さ0.3mmの鉄製とした。テルミット剤12は主剤である酸化銅、銅−アルミニウム合金と、添加剤としてスズ、氷晶石、フッ化カルシウムの混合物を用いた。その上に点火剤13として酸化鉄、酸化銅、アルミニウムの混合微粉末をまぶした。
【0034】
点火剤に点火すると、溶融銅とスラグが生成され、スラグから分離した溶融銅は数秒でキャビティに充填された。その後15秒程度自然冷却したのち製造装置から定着金物付き鉄筋を取り外した。
【0035】
この定着金物付き鉄筋の定着金物と鉄筋の接合強度を油圧ジャッキとロードセルを利用した引張試験機で測定したところ、鉄筋の破断強度に達しても定着金物からはずれることはなかった。鉄筋の変位と油圧ジャッキにより加えた引張応力の関係を示す曲線を図3に示す。同一の仕様で作製した数本の定着金物付き鉄筋について引張試験機で測定し、殆ど同一の引張応力曲線が得られていることから、再現性のある性能の定着金物付き鉄筋が得られたことが分かった。
【0036】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の定着金物付き鉄筋は、従来の端部をU字状或いはL字状等に曲げた鉄筋よりもコンパクトとなり、鉄筋が直線のままなので、輸送量も多く現場で鉄筋を組むのも容易であり、鉄筋と定着金物の接合強度も十分に強い。製造装置もコンパクトである。そのため、現場や工場で製造することが容易で低コストである。テルミット反応は短時間に終了するため施工時間が非常に短くすむという効果も得られる。また、従来の定着金物と鉄筋との間にモルタルやエポキシ樹脂等のグラウト材を充填したものに比べても定着金物と鉄筋の接合強度が大きく、強度の大きい鉄筋コンクリート構造体を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する定着金物付き鉄筋の実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明を適用する定着金物付き鉄筋の製造装置の実施例を示す断面図である。
【図3】本発明を適用する定着金物付き鉄筋の鉄筋と定着金物の接合強度を示す応力−変位曲線図である。
【符号の説明】
1は鉄筋、2は定着金物、2aは中心孔、3は溶融金属、4は湯道、5はガス抜き孔、6は治具空間、7はルツボ、8はキャビティ、9はディスク、10はコンクリート、12はテルミット剤、13は点火剤、15は着火具である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリートに埋め込まれた鉄筋を定着させ、抜け防止のための金物が付された鉄筋、その定着金物付き鉄筋を製造する装置、および定着金物付き鉄筋を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鉄筋コンクリート構造に用いる鉄筋は、コンクリートから抜けることを防止するため、その端部をU字状或いはL字状等に曲げてコンクリートに埋め込まれていた。螺子鉄筋に雌螺子付定着板をねじ込んでおき、その定着板も鉄筋と共にコンクリートに埋め込んで固定する構成のものも知られていた。
【0003】
その他の例として、特許文献1に示されるように、鉄筋に定着部材を取り付けた構成で、定着部材の孔に鉄筋を通し、鉄筋の孔内に挿入された部分を増肉加工することで定着部材に嵌合させて固定した定着部材付き鉄筋がある。また特許文献2には、定着金物と鉄筋との間にモルタルやエポキシ樹脂等のグラウト材を充填したものが開示されている。またグラウト材として溶融金属を使用することが示唆されているが、具体的材質や手法は開示されていない。
【0004】
これらの従来の構造にはいずれにも問題があった。端部をU字等に曲げた構造の鉄筋は、多本数を束ねると収まりが悪く嵩張るため、輸送や保管のコストがかかる。また狭い現場での組立て施工が困難である。しかも地震などで大きな力が加わるとU字が伸びてしまうことがあった。雌螺子付定着板をねじ込んだ螺子鉄筋は、製造コストが高いうえに、雌螺子付定着板を螺子鉄筋にねじ込んで固定する際、両者の間に確実にモルタル等の充填材を注入しなければならず、作業性が悪い。
【0005】
特許文献2に記載のグラウト材を充填した定着金物付き鉄筋は、グラウト材の硬化に時間を要するのみならず、グラウト材の硬化後強度十分に出ない。また、グラウト材の滑りを防止する定着金物の内側の突起やリブで、定着金物自体の構造が複雑になり、コスト高になっていた。またグラウト材として示唆されている溶融金属は材質や生成手法が記載されていないことから、通常の手法であるガス溶接や電気溶接といった溶接技術の手方法が採用されていると考えられる。溶接技術は、各個人の技量により溶接強度がばらつき、時として未熟練者による作業によって強度不足のものが製造されることがあった。
【0006】
【特許文献1】特開平11−293850号公報
【特許文献2】特開2000−345654号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、コンクリートに定着するための定着金物をコンパクトで単純な構造とし、建設現場や工場での加工が容易且つ短時間に行え、高価な設備や器材が不要なため低コストで、しかも定着強度の大きい定着金物付き鉄筋、その定着金物付き鉄筋の製造装置、および定着金物付き鉄筋の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するためになされた本発明の定着金物付き鉄筋は、実施例に対応する図1に示すように、コンクリート10に埋め込まれた鉄筋1を定着させる金物2が付されており、鉄筋1が定着金物2の孔2aを貫通しており、鉄筋1と定着金物2の孔2aの空隙にテルミット反応によって生成した溶融金属3が充填固化されている。
【0009】
このように鉄筋1と定着金物2の孔2aの空隙に溶融金属3が充填固化されていることによって鉄筋と定着金物とが強固に接続される。
【0010】
鉄筋1は異形鉄筋であることが好ましい。図1に示すとおり、異形鉄筋1には節と呼ばれる凹凸部が形成されており、その凹部に溶融金属が回り込んで固化されるため、鉄筋の軸線方向の力に対する接続強度が優れている。
【0011】
定着金物2の孔2aの一方の口径が他方の口径より大きく、孔の内面にテーパー面が形成されていることで適切に実施できる。このようにテーパー面が形成されていることで溶融金属の充填時における流れが良くなる。さらに図1に示すように、鉄筋1は、定着金物2の孔2aの口径が大きい方を奥側にコンクリート10に埋め込まれると、抜け方向(矢印参照)の力が加わったとき、溶融金属3がテーパー面に当って受けられので、抜けに対する抵抗力が強化される。
【0012】
孔2aの最小口径は挿入する鉄筋を容易に挿入しうる大きさのものであればよく、鉄筋外径よりも0.2〜0.5mm程度以上大きいものが好ましい。また定着金物2の口径は、鉄筋外径の2から3倍、好ましくは2.5倍であれば、コンパクトで且つ十分な抜けに対する抵抗力をもたせることができる。
【0013】
定着金物2の孔2aの内面から外部にガス抜孔5が形成されていることが好ましい。
【0014】
同じく前記目的を達成するためになされた本発明の定着金物付き鉄筋製造装置は、実施例に対応する図2に示すように、鉄筋1が孔2aに貫通した定着金物2を保持する治具空間6と、その治具空間6の上方に配置され、金属を溶融するルツボ7とを有し、ルツボ7の底から治具空間6内の定着金物2の孔2aに向かって金属の溶融物が流れる湯道4が通じている。
【0015】
また本発明の定着金物付き鉄筋製造装置は、該金属の溶融がテルミット反応による溶融であって、ルツボ7が黒鉛またはセラミックで形成されていることが好ましい。
【0016】
同じく前記目的を達成するためになされた本発明の定着金物付き鉄筋製造方法は、定着金物2の孔2aに鉄筋1を挿入して貫通させ、鉄筋1と定着金物2の孔2aの空隙に溶融している金属を充填して固化させることを特徴としている。
【0017】
本発明の定着金物付き鉄筋製造方法は、該金属が鉄または銅であることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1に断面を示す本発明の定着金物付き鉄筋は、図2に断面を示す本発明の定着金物付き鉄筋の製造装置により、本発明の定着金物付き鉄筋の製造方法にしたがって製造される。以下、本発明を適用する好ましい実施の形態を、順に説明する。
【0019】
図2の製造装置は、治具空間6を有し、上方にルツボ7が配置されている。治具空間6は定着金物2の外形が嵌りこみ、長い鉄筋1がつきぬける構造で、鉄筋1が孔2aに貫通している状態の定着金物2を保持する。
【0020】
定着金物2は鋳鉄によって成形されており、中心孔2aが抜け、中心孔2aの内壁がテーパー形状になっている。一方の口径は鉄筋1が挿入できるだけの広さで、もう一方の口径は鉄筋1の外径の2.5倍程度である。鉄筋1と中心孔2aのテーパーでキャビティ(空隙)8が形成される。定着金物2のキャビティ8から外に向けてガス抜き孔5があけられている。鉄筋1は、外表面に網目模様の凸部が形成されている異形鉄筋である。
【0021】
ルツボ7には底孔が明けられており、底孔から治具空間6内に保持されている定着金物2のキャビティに向かって金属の溶融物が流れる湯道4が通じている。ルツボ7は黒鉛で形成されており、底孔は熱溶融部材からなるディスク9で塞がれている。ルツボ7には金属酸化物と還元剤とからなるテルミット剤12が収容される。この例では金属酸化物が酸化鉄と還元剤がアルミニウムである。テルミット剤12の上には点火剤13として酸化鉄、酸化銅、アルミニウムの混合微粉末が配置される。
【0022】
定着金物付き鉄筋は、以下のように製造される。
【0023】
鉄筋1を定着金物2に通してから製造装置の治具空間6に配置する。着火具15によって点火剤13に点火すると、点火剤13が燃焼してテルミット剤12の酸化還元反応が誘発されて進行する。酸化鉄は鉄に還元され、反応熱により溶融された溶融鉄と、アルミナを主成分とするスラグとが生成する。比重の軽いアルミナスラグは溶融鉄から浮き上がって比重の重い溶融鉄が沈降し分離する。溶融鉄は、その熱によりディスク5を溶融して底孔を抜けて湯道4を通り、鉄筋1と中心孔2aのテーパーで形成されるキャビティに流れ込み、ガス抜き孔5から残留空気が抜けながら、隙間なく充填される。それを自然冷却により固化すると、鉄筋1と定着金物2とが連結する。
【0024】
製造装置から外した定着金物付き鉄筋は、定着金物2の側をコンクリート型枠(不図示)の内部に配置し、コンクリートを充填して固化する。図1に示すように、定着金物付き鉄筋1は、定着金物2の周囲がコンクリート10に埋め込まれから強固に固定される。
【0025】
定着金物付き鉄筋が外された製造装置は、ルツボ7や湯道4に付着したスラグをウエスやブラシ等でこすり取ってから、同様な製造作業を繰り返す。
【0026】
定着金物2の形状は円筒形、多角筒形等任意であるが、加工しやすさから円筒形が好ましい。材質は、金属類が好ましく、例えば一般的な熱間圧延鋼材やダクタイル鋳鉄等の鋳物材が使用される。定着金物2は鋳物あるいは切削加工によりその形状に仕上げられる。鉄筋に対する定着金物2の取付位置は、通常、鉄筋1の端部近傍であるが、必要に応じ中間位置としてもよい。
【0027】
テルミット剤は、銅テルミットの場合、酸化銅粉とアルミニウム粉や銅・アルミニウム合金粉の混合粉である。さらにテルミット剤には溶融金属とスラグとを分離したり、ボイドの発生を防いだり、溶融金属やスラグの融点を下げるための添加剤を付加することができる。添加剤としてはスズ、硅化カルシウム、酸化亜鉛、氷晶石、フッ化カルシウム等が用いられる。
【0028】
テルミット剤は、鉄テルミットの場合、酸化鉄粉とアルミニウム粉の混合粉である。鉄テルミット剤にも溶融金属とスラグとを分離したり、ボイドの発生を防いだり、溶融金属やスラグの融点を下げるための添加剤を付加することができる。添加剤としては氷晶石、フッ化カルシウム、珪素等が用いられる。
【0029】
テルミット反応のルツボが黒鉛及び/又はセラミック製であると、溶融金属をルツボに付着させることなく効率よく定着金物のキャビティに充填させることができる。ルツボの下部に直径がφ5からφ10の範囲の湯道で連結された鉄筋及び定着金物の挿入部が形成されていると、スラグが良く分離された状態で溶融金属を定着金物のキャビティに充填させることができるため、スラグの混入による接続強度の低下のない定着金物付き鉄筋を製造することができる。ルツボを含む製造装置は黒鉛製であれば、繰り返し使用することが可能であるが、1回使用のセラミック製反応ルツボと組み合わせてもよい。この装置は例えば外形25mmの鉄筋に適用した場合、80×80×150程度の大きさで良く、ガス溶接等に必要な器材や設備に比べても非常にコンパクトである。
【0030】
本発明のようにテルミット反応を応用して定着金物付き鉄筋を製造するには、熟練や電気、ガス設備を要せず且つ加工時間も短いので、工場生産のみならず建設現場でも短時間に低コストで行うことができる。さらに、一般的なテルミット溶接のように、被溶接物に溶融金属を溶着させる必要性がないため、溶融金属の溶着を妨げる鉄筋の黒皮(酸化被膜)を除去する前処理が不必要であり、全作業工程にかかる時間が短縮される。
【0031】
【実施例】
以下、本発明にしたがって定着金物付き鉄筋を製造した例、およびその定着金物付き鉄筋の鉄筋と定着金物の接合強度(引張強度)を測定した例について記載する。
【0032】
鉄筋1は公称直径25mmの異形鉄筋である。定着金物2は、鋼材SS400製で外径の最大値がφ65mm、長さ40mmである。中心孔2aの小径側直径はφ28.2mm、最大径はφ44mmで深さ16mmまでテーパーで直径φ38mmとなり、その直径φ38mmの孔が深さ16mmまであり小径側に貫通している。ガス抜き孔3は直径φ5mmである。
【0033】
製造装置は全体が黒鉛製で、外形が幅100mm、奥行き100mm、高さ195mmの直方体である。上方のルツボ7は、上部内径φ80mm、下部内径φ65mm、深さ80mmの円錐台形の内空を有している。下方の治具空間6は直径φ65.5mm、深さ35mmの横穴であり、鉄筋1の突抜け部として直径φ29mmの孔が貫通している。ルツボ7の底孔は直径φ10mm、深さ20mmで垂直にあけられ、湯道4は直径φ5mmで45°に傾斜している。ディスク9は厚さ0.3mmの鉄製とした。テルミット剤12は主剤である酸化銅、銅−アルミニウム合金と、添加剤としてスズ、氷晶石、フッ化カルシウムの混合物を用いた。その上に点火剤13として酸化鉄、酸化銅、アルミニウムの混合微粉末をまぶした。
【0034】
点火剤に点火すると、溶融銅とスラグが生成され、スラグから分離した溶融銅は数秒でキャビティに充填された。その後15秒程度自然冷却したのち製造装置から定着金物付き鉄筋を取り外した。
【0035】
この定着金物付き鉄筋の定着金物と鉄筋の接合強度を油圧ジャッキとロードセルを利用した引張試験機で測定したところ、鉄筋の破断強度に達しても定着金物からはずれることはなかった。鉄筋の変位と油圧ジャッキにより加えた引張応力の関係を示す曲線を図3に示す。同一の仕様で作製した数本の定着金物付き鉄筋について引張試験機で測定し、殆ど同一の引張応力曲線が得られていることから、再現性のある性能の定着金物付き鉄筋が得られたことが分かった。
【0036】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の定着金物付き鉄筋は、従来の端部をU字状或いはL字状等に曲げた鉄筋よりもコンパクトとなり、鉄筋が直線のままなので、輸送量も多く現場で鉄筋を組むのも容易であり、鉄筋と定着金物の接合強度も十分に強い。製造装置もコンパクトである。そのため、現場や工場で製造することが容易で低コストである。テルミット反応は短時間に終了するため施工時間が非常に短くすむという効果も得られる。また、従来の定着金物と鉄筋との間にモルタルやエポキシ樹脂等のグラウト材を充填したものに比べても定着金物と鉄筋の接合強度が大きく、強度の大きい鉄筋コンクリート構造体を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する定着金物付き鉄筋の実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明を適用する定着金物付き鉄筋の製造装置の実施例を示す断面図である。
【図3】本発明を適用する定着金物付き鉄筋の鉄筋と定着金物の接合強度を示す応力−変位曲線図である。
【符号の説明】
1は鉄筋、2は定着金物、2aは中心孔、3は溶融金属、4は湯道、5はガス抜き孔、6は治具空間、7はルツボ、8はキャビティ、9はディスク、10はコンクリート、12はテルミット剤、13は点火剤、15は着火具である。
Claims (7)
- コンクリートに埋め込まれた鉄筋を定着させる金物の付された鉄筋であって、鉄筋が定着金物の孔を貫通しており、該鉄筋と該定着金物の孔の空隙に、テルミット反応によって生成した溶融金属が充填固化されていることを特徴とする定着金物付き鉄筋。
- 該定着金物の孔の一方の口径が他方の口径より大きく、孔の内面にテーパー面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着金物付き鉄筋。
- 前記定着金物の孔の内面から外部にガス抜孔が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の定着金物付き鉄筋。
- 鉄筋が孔に貫通した定着金物を保持する治具空間と、その治具空間の上方に配置され、金属を溶融するルツボとを有し、該ルツボの底から該治具空間内の定着金物の孔に向かって該金属の溶融物が流れる湯道が通じていることを特徴とする定着金物付き鉄筋の製造装置。
- 該金属の溶融がテルミット反応による溶融であって、該ルツボが黒鉛またはセラミックで形成されていることを特徴とする請求項4に記載の定着金物付き鉄筋の製造装置。
- 定着金物の孔に鉄筋を挿入して貫通させ、該鉄筋と該定着金物の孔の空隙に溶融している金属を充填して固化させることを特徴とする定着金物付き鉄筋の製造方法。
- 該金属が鉄または銅であることを特徴とする請求項6に記載の定着金物付き鉄筋の製造方法。
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JP2012041978A (ja) * | 2010-08-18 | 2012-03-01 | Kawasaki Heavy Ind Ltd | 作業機械の電液駆動システム |
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- 2003-06-02 JP JP2003156820A patent/JP2004360215A/ja active Pending
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