JP2004351520A - 光沢の優れた金属板 - Google Patents
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Abstract
【課題】 光沢の優れた金属板を提供する。
【解決手段】 圧延用ロールの研磨目が摺動した平滑化痕を表面に有するとともに、該平滑化痕の凸状の摺動終端が長手方向に対して互いに傾斜方向が反対であるものをそれぞれ複数有し、該複数の摺動終端の長手方向に対する傾斜角度が10〜75°である。
【選択図】 図5
【解決手段】 圧延用ロールの研磨目が摺動した平滑化痕を表面に有するとともに、該平滑化痕の凸状の摺動終端が長手方向に対して互いに傾斜方向が反対であるものをそれぞれ複数有し、該複数の摺動終端の長手方向に対する傾斜角度が10〜75°である。
【選択図】 図5
Description
本発明は、光沢の優れた金属板に関し、特に、光沢の優れた鋼板に関する。
従来、光沢の優れた金属板、特に、ステンレス鋼に代表される光沢の優れた鋼板を製造するには、冷間圧延に際して金属板表面の凹凸を極力生じないように冷間圧延を施すことが重要であるとされてきた。
そこで、従来、ステンレス鋼に代表される優れた光沢を要求される鋼板は、光沢低下の原因である、オイルピットの発生抑制上、径が50〜150mm 程度の小径ロールを組み込んだクラスタ型のリバース圧延機を用い、複数パスの冷間圧延を施して製造するのが一般的であった。オイルピットとは、圧延用ロールと被圧延金属板の間に供給される潤滑剤(圧延油ともいう)が、圧延時に作用する力により、金属板に押し込まれてできる微細散在状の凹みである。
ところで、リバース圧延機での冷間圧延は、生産能率アップに限界があることから、径が 200〜650mm 程度の大径ロールを複数スタンドに組み込んだタンデム圧延機を用い、高能率で高光沢金属板を製造することも試みられつつある。
一方、近年、リバース圧延機で製造する場合はもちろん、大径ロールで冷間圧延を行うために、一般に製品金属板の光沢が劣るとされるタンデム圧延機で製造する場合でも、製品鋼板の光沢に対する需要家の要求が強くなってきている。
本発明者らは、たとえば、先に特開2000-117311 号公報において、金属板を圧延する上下一対の圧延用ロールであって、クロス研磨目の傾斜角度及び/又は凹凸形状が上下の圧延用ロールで異なることを特徴とする圧延用ロール対を提案した。
この圧延用ロールに付与したクロス研磨目は、図4に示すようなものであって、クロス研磨目は、圧延用ロール円周方向に対して互いに傾斜方向が反対で、かつ交差した研磨目である。この研磨目は、回転砥石により圧延用ロールに付与した場合、砥石の砥粒による研磨痕であり、一方にθ+ 傾斜した研磨目と他方にθ- 傾斜した研磨目とは互いに交差している。
図4で、θ+ 、θ- は圧延用ロールに付与されたそれぞれの研磨目の一方の傾斜角度および他方の傾斜角度である。
このクロス研磨目を付与した圧延用ロールを用いて圧延を施すことにより、鋼板の光沢が向上する理由としては、ロール円周方向に対して互いに傾斜方向を反対とした研磨目により、ロールバイト内で鋼板表面を平滑化できること、圧延用ロールバイト内において、ロール円周方向に対して互いに傾斜方向を反対とした研磨目である溝を介して圧延油を鋼板表面から効果的に排出でき、オイルピットが鋼板表面に発生するのを抑制できることがあげられる。
ここで、特開2000-117311 号公報に記載の圧延方法は、鋼板の上下面の光沢度差を改善するために、上圧延用ロールには、クロス研磨目の一方に傾斜する研磨目の傾斜角度θ+ の平均値を5〜80°とし、かつ他方に傾斜する研磨目の傾斜角度θ- の平均値を5〜80°とした研磨目を付与するとともに、下圧延用ロールには、それぞれの研磨目の傾斜角度の平均値を10〜85°とした研磨目を付与して圧延を行うものである。
しかしながら、特開2000-117311 号公報に記載の圧延方法では、上圧延用ロールと下圧延用ロールに付与するクロス研磨目の傾斜角度の平均値を変えているだけであり、傾斜角度θ+ 、θ- について、平均値で5〜85°としたクロス研磨目を付与した圧延用ロールを用い、かつ冷間圧延条件に特に考慮を払わず、従来の圧延用ロールを用いた場合と同じ条件で冷間圧延を施していたので、得られる鋼板の光沢が不十分であるという問題があった。
特開2000-117311 号公報
そこで、本発明の目的は、前記のような従来技術の問題点を解消することにあり、光沢の優れた金属板を提供することにある。
本発明は、圧延用ロールの研磨目が摺動した平滑化痕を表面に有するとともに、該平滑化痕の凸状の摺動終端が長手方向に対して互いに傾斜方向が反対であるものをそれぞれ複数有し、該複数の摺動終端の長手方向に対する傾斜角度が10〜75°であることを特徴とする光沢の優れた金属板である。
以上説明した本発明によれば、光沢に優れる金属板とすることができる。
まず、本発明の冷間圧延方法に用いるクロス研磨目を付与した圧延用ロール(以下、単にロールという)について、図1を用いて説明する。
本発明に用いるロールは、中空円盤状砥石(以下、単に砥石と称する)2をロール研磨機(図示しない)の砥石回転機構に取り付けるとともに、同じロール研磨機にロール1を取り付け、ロール回転機構(図示しない)にて回転させ、砥石2を回転させつつ回転させたロール1に接触させ、ロール1の軸1A方向に相対的に移動させてロール1を研磨する際に、図1(a)、図1(b)、図1(c)に示すように、砥石2のオフセット量Xを0を超え砥石2の外径の1/2 未満とし、砥石2とロール1の接触域をロール軸1A方向に等分する線2Dの両側の砥石2の研磨面3L、3Rをロール1に接触させて、クロス研磨目を付与することができる。
なお、図1(a)、図1(b)、図1(c)は、本発明に用いるロールの研磨方法を説明する図で、それぞれ砥石とロールとの接触状態を示す部分平面図、図1(a)のB−B部分断面図、図1(a)のA−A断面図である。また、図2は、砥石とロールとの接触面における砥石の周速度ベクトルの方向を示す平面図である。
1はロール、1Aはロールの回転軸(以下単にロール軸又は軸と称する)、1Bはロールの回転方向、1Nはロールの法線、2は砥石、2Aは砥石の回転軸(以下単に砥石の軸又は軸と称する)、2Bは砥石の回転方向、2Cは砥石の移動方向、2Dは砥石2とロール1との接触域をロール軸1A方向に等分した線)、3L、3Rは砥石2とロール1との接触面、Xはオフセット量である。
ロールの円周を含む仮想的な面で砥石2を等分すると、等分線は丁度2Dのようになる。
砥石2は、図1(a)、図1(b)、図1(c)に示すように、中空円盤状であり、研磨面が軸2Aに対して直交するように設けてあり、ロール研磨機において、上記のように砥石2のオフセット量Xを0を超え砥石2の外径の1/2 未満とし、砥石2とロール1の接触域をロール軸1A方向に等分する線2Dの両側にて砥石2の研磨面をロール1に接触させるには、砥石2の研磨面をロール1に向けるとともに、砥石2の軸2Aをロール法線1Nに一致させた後、上記オフセット量Xだけ平行にずらせて、砥石2の研磨面をロール1に接触させるようにすればよい。
このように砥石とロールを接触させて研磨すると、図2に示すように、砥石2とロール1との接触面3L、3Rにおける砥石2の周速度ベクトルの方向は、ロール1の円周方向に対し互いに反対向きに傾斜するので、砥石2を少なくとも1回、ロール1の軸1A方向に相対的に移動させるだけで、図4(a)〜図4(d)に示すように、円周方向に対して互いに傾斜方向が反対で、かつ交差する研磨目をロール1の周面に付与できるのである。
なお、上述した方法によりクロス研磨目をロール1の周面に付与する場合には、図3に示すように、砥石2の移動方向2Cの前方における接触面3Lの面圧が砥石2の移動方向2Cの後方における接触面3Rの面圧より高くなるように、砥石2の軸2Aを移動方向2Cに向けてロール1の法線1Nに対して角αだけ傾斜させるのがよい。砥石2の軸2Aを移動方向2Cに向けてロール1の法線1Nに対して角αだけ傾斜させることにより、砥石2の移動方向2Cの前方における接触面3Lで付与された研磨目の、後方の接触面3Rで研磨された後での深さと、後方の接触面3Rで付与された研磨目の深さとをほぼ等しくでき、このロールで圧延された金属板に光沢むらが生ずるのを抑制できるからである。
ロール法線1Nに対する砥石の軸2Aの傾斜角度αは、砥石2が弾性変形により両側の接触面3L、3Rにおいて接触維持できる範囲で、かつ接触面3Lで付与された研磨目の深さと接触面3Rで付与された研磨目の深さとがほぼ等しくなるようにすればよく、傾斜角度αは、圧延ロール1の材質、砥石の粒度や砥石の材質等によって決めることができ、0.01〜0.5 °にすることができる。
なお、砥石2を相対的に移動させるというのは、ロール1を回転させ、回転する砥石2をロール1の軸1A方向に移動させるか若しくは、砥石2を回転させ、回転させたロール1を軸1A方向に移動させるか或いは、ロール1および砥石2の両者を互いに反対向きに移動させることであり、砥石2の相対的移動速度は、砥石2の外周速度に対して十分小さく設定すれば、クロス研磨目の傾斜角度θ+ 、θ- には大きな影響を与えない。
また、図1,図2に示すように、有限幅の中空円盤状の砥石を用い、ロールを有限速度で軸方向に移動させながら有限砥石回転数で研磨した場合には、原理的に図4(d)のように、左右異なる範囲で分布した研磨目となるが、砥石回転数を上げていくと、図4(b)のように左右の研磨目が円周方向に対してなす角度が対称な状態に近づけることが可能であり、また、図4(d)の状態から、砥石幅を狭くしていくと、図4(c)のように左右で角度は異なるが、研磨角度の分布が狭い状態に近づけることもできる。幅の狭い砥石を用いて砥石回転数を上げていくと、図4(a)のような状態に近づけることも可能である。
以上説明した研磨方法では、有限幅の砥石を用いて、有限砥石回転数で研磨するので、図4(d)に示す状態の研磨目となるが、光沢向上効果を得ることはできる。
ところで、上述した特開2000-117311 号公報に記載の圧延方法において、ロールに付与するクロス研磨目の傾斜角度θ+ 、θ- の平均値の下限を5°、上限を85°とする理由は、クロス研磨目の傾斜角度の平均値が5°未満ではロールのクロス研磨目による金属板表面の平滑化効果が不十分となって、得られる金属板の光沢が充分向上せず、一方、クロス研磨目の傾斜角度の平均値が85°を超えるとクロス研磨目による圧延油の排出効果が不十分となり、金属板表面にオイルピットが生じて、金属板の光沢が充分向上しないからであった。
しかし、上述したようにクロス研磨目の傾斜角度の平均値を限定した場合でも、図1、図2に示す方法でクロス研磨目をロールに付与し、このロールで冷間圧延を行って得られる金属板の光沢度が低いことがあり、この光沢向上効果が少ない原因を検討した。
この結果、図4(d)に示すように、傾斜角度のばらつきの大きい研磨目となる場合があるので、一段と光沢に優れる金属板を得るには、ロール円周方向に対し少なくとも一方に傾斜する研磨目の傾斜角度θ+ を10〜75°、さらに望ましくは他方に傾斜する研磨目の傾斜角度θ- も10〜75°としたクロス研磨目をロールに付与しなければならないことが、後述する結果から新たにわかった。
この理由は、クロス研磨目のうち、傾斜角度θ+ 、θ- が10°未満の研磨目は金属板表面の平滑化効果が不十分であり、一方、クロス研磨目のうち、傾斜角度θ+ 、θ- が75°を超える研磨目は圧延油の排出効果が不十分で、オイルピットが生じやすいからである。
そこで、得られる金属板の光沢を一段と向上させるためには、少なくとも一方に傾斜する研磨目の傾斜角度θ+ を全て10〜75°、さらに望ましくは他方に傾斜する研磨目の傾斜角度θ- も全て10〜75°としたクロス研磨目をロールに付与する。
なお、本発明に用いるロールにクロス研磨目を付与する方法は、図1,図2に示すような方法に限定されることはないが、この方法は簡単、かつ効率的で外観上も均一にムラなく仕上がるので、この方法によるのが望ましい。
次いで、上述のように限定したクロス研磨目を付与したロールを用いる、本発明の冷間圧延方法について説明する。
本発明の冷間圧延方法において、リバース圧延機の圧延スタンドに径が50〜150mm のロールを組み込んで金属板に圧延を施す理由は、リバース圧延機の圧延スタンドに組み込むロールの径が50mm未満では、圧延後の金属板の平坦度が悪化してしまい、一方、リバース圧延機の圧延スタンドに組み込むロールの径が150 mmを超えると圧延荷重が大きくなりすぎてリバース圧延機を破損してしまうおそれがあるためである。
さらに、リバース圧延機で施す複数の圧延パスのうち、あるパスとそれとは別のパスとでは、違うロールで圧延することもあるわけであり、少なくとも最終パスの圧延の際に、上述のようにロール円周方向に対する傾斜角度の範囲を限定したクロス研磨目を付与したロールを用いる理由は、複数パスのうち、少なくとも最終パスの圧延の際に、このクロス研磨目を付与したロールを用いれば、確実に光沢を向上できるからである。
さらに加えて、少なくとも最終パスの圧延の際に、摩擦係数を0.10〜0.15に調整する理由は、最終パスでの摩擦係数が0.10未満では、従来の円周方向に平行な研磨目を付与したロールを用いた場合よりもかえって金属板の光沢が低下してしまい、クロス研磨目による光沢向上効果が得られなくなるからであり、一方、最終パスでの摩擦係数が0.15を超えると、金属板とロールとの間で焼き付きが発生して、従来の円周方向に平行な研磨目を付与したロールを用いた場合よりもかえって金属板の光沢が低下してしまうためである。
本発明のリバース圧延機を用いる冷間圧延方法において、最終パスでの摩擦係数を0.10〜0.15に調整するには、適宜な組成の圧延油を用いて、圧下スケジュールを定めればよい。
なお、本発明で用いる摩擦係数は、実測圧延荷重と金属板の変形抵抗とからBland & Fordの荷重式(日本鉄鋼協会、圧延理論部会編、「板圧延の理論と実際」、第33頁、第2.168 式 〜2.183 式)により求めた値である。その際、ロールの扁平式にはHitchcock の式(同上第40頁、2.230 式)を用いている。
また、本発明の冷間圧延方法において、タンデム圧延機の複数スタンドにそれぞれ径が200 〜650 mmのロールを組み込んで金属板に圧延を施す理由は、タンデム圧延機の複数スタンドにそれぞれ組み込むロールの径が200mm 未満では、金属板の平坦度が悪化してしまい、一方、タンデム圧延機の複数スタンドにそれぞれ組み込むロールの径が650 mmを超えると圧延荷重が大きくなりすぎ、圧延機を破損してしまうおそれがあるためである。
さらに、タンデム圧延機の複数スタンドのうち、少なくとも最終スタンドに、上述のようにロール円周方向に対する傾斜角度範囲を限定したクロス研磨目を付与したロールを用いる理由は、複数スタンドのうち、少なくとも最終スタンドにこのクロス研磨目を付与したロールを用いれば、確実に光沢を向上できるからである。
さらに加えて、少なくとも最終スタンドにおいて、摩擦係数を0.08〜0.12に調整する理由は、最終スタンドでの摩擦係数が0.08未満では、従来の円周方向に平行な研磨目を付与したロールを用いた場合よりもかえって金属板の光沢が低下してしまい、クロス研磨目による光沢向上効果が得られなくなり、一方、最終スタンドでの摩擦係数が0.12を超えると、金属板とロールとの間で焼き付きが発生して、従来の円周方向に平行な研磨目を付与したロールを用いた場合よりもかえって金属板の光沢が低下してしまうためである。
本発明のタンデム圧延機を用いる冷間圧延方法において、最終スタンドでの摩擦係数を0.08〜0.12とするには、適宜な組成の圧延油を用いて、適宜な各スタンドでの圧下スケジュールを定めればよく、タンデム圧延機における摩擦係数はリバース圧延機における摩擦係数と同様な算出方法とした。
ここで、上述した本発明の冷間圧延方法で得られた金属板表面の一例のスケッチ図を図5(a)、図5(b)に示す。この図5(a)、図5(b)は、冷間圧延後の金属板表面の同じ部分を倍率を変えて電子顕微鏡で撮影した写真をスケッチしたものである。
図5(a)、図5(b)には、クロス研磨目を付与したロールを用い、圧延を施して得られた鋼板に特有の、ロールの研磨目により平滑にされた平滑化痕の凸状摺動終端20が一本観察される。
これらの図では、圧延方向に対して左斜め下から右斜め上方向にλ+ 傾斜した凸状摺動終端20を一本だけ示してあるが、本発明の冷間圧延方法で得られた金属板表面には、λ+ 傾斜した凸状摺動終端20は複数、鋼板表面に存在している。また、図で、λ+ 傾斜した凸状摺動終端20とは、圧延方向に対して傾斜方向が反対に右斜め下から左斜め上方向に傾斜した凸状摺動終端がもちろん複数存在する(ただし、図には示していない)。
本発明の冷間圧延方法で得られた各種の金属板について、0.1mm ×0.1mm の範囲10ヶ所を電子顕微鏡により観察することにより、圧延方向に対してλ+ 傾斜した凸状摺動終端20、および圧延方向に対してλ+ と反対方向にλ- 傾斜した凸状摺動終端、合計18本の傾斜角度をそれぞれ測定した。
その結果、各種の金属板表面におけるロールの研磨目により平滑にされた凸状摺動終端の圧延方向に対する傾斜角度λ+ 、λ- の範囲は、ロールに付与したクロス研磨目の傾斜角度θ+ 、θ- の範囲と一致することがわかった。
すなわち、平滑化痕の凸状の摺動終端が圧延方向に対して互いに傾斜方向が反対であるものをそれぞれ複数有し、この少なくとも片方に傾斜したものの複数の摺動終端の圧延方向に対する傾斜角度が全て10 〜75°である場合に、金属板の光沢が一段と優れていることが判明した。さらに反対側のものも、全て10〜75°であるとより望ましい。
ここで、凸状の摺動終端20は、図6に模式的に示すように、研磨溝を形成するロール1の回転方向前方の壁面10に当接して形成され、摺動終端20よりロール回転方向前方側の金属板30には圧延油が排出された痕跡40が認められている。凸状の摺動終端の最大高さHは、砥石の粒度、研磨条件等によって異なるが、後述する実施例2条件C10 の場合に約1.0 μm であった。
なお、図6で10A はロールの外周速度、30A は金属板の出側速度で、50はロールバイト出口である。
以下に本発明の冷間圧延方法および金属板について、図7に示す12段クラスター型のリバース圧延機および図8に示す5スタンドからなるタンデム圧延機を用いて、ステンレス鋼板を得る場合を例にして説明する。
図7、図8において、1はロール、73、83は補強ロール、76は中間ロールであり、74、84 は圧延油供給ノズル、75、85は圧延油である。
(実施例1)
図7に示す12段クラスタ型のリバース圧延機の圧延スタンドに径が50〜150mm のロールを組み込んで金属板に3パスでの冷間圧延を施した。
図7に示す12段クラスタ型のリバース圧延機の圧延スタンドに径が50〜150mm のロールを組み込んで金属板に3パスでの冷間圧延を施した。
その際、5mass%Cr鍛鋼製のロールに表1、2に示す研磨条件でクロス研磨目を付与し、このロールを複数パスのうち、少なくとも最終パスの圧延の際に組み込んで冷間圧延を行い、延べ圧延長さを記憶するとともに、得られた鋼板にさらに同一条件で焼鈍・酸洗・調質圧延を施した後、上記延べ圧延長さにおける鋼板の上下面の平均光沢度(GS 20 °)を測定し、摩擦係数は最終パスでの圧延荷重を測定して求めた。
なお、第1、2パスの圧延では、円周方向に平行な研磨目を付与した径が80mmの5mass%Cr鍛鋼製のロールを用いた。金属板としては、熱間圧延・焼鈍・酸洗後の素材厚2.0mm のSUS 430 フェライト系ステンレス鋼板を用い、各パスでの圧延速度を150m/minとして、厚み1.00mmに仕上げた。
また、ロールの粗さ毎に表3に示す圧延油をニートで供給し、表4に示す圧下スケジュールにした。
表1,2に研磨条件および研磨目の傾斜角度、研磨後のロール粗さ、圧延条件、最終パスでの線圧、最終パスでの摩擦係数、ロールと金属板との焼付きの有無、延べ圧延長さ並びにこの延べ圧延長さにおける鋼板の光沢度(GS 20 °)を合わせて示した。ロール粗さはJIS B0601 に規定する算術平均粗さを、ロールの軸方向に測定した。
発明例A01 〜A10 では、中空円盤状の砥石として、CBN ホイール(JIS B 4131の形状6A2 )を用い、一方に傾斜する研磨目の傾斜角度θ+ を10〜75°、かつ他方に傾斜する研磨目の傾斜角度θ- も10〜75°としたクロス研磨目をロールに付与し、このロールを最終パスの圧延の際、圧延スタンドに上下1対として組み込み金属板に圧延を施した。
比較例A11 、A12 では、発明例A01 、A02 と同じクロス研磨目を付与し、このロールを用いた最終パスでの圧下率を発明例A01 、A02 の場合より小さくするか、もしくは大きくなるように圧下スケジュールを変化させた。
比較例A13 、A14 では、一部の傾斜角度が10〜75°の範囲を外れたクロス研磨目をロールに付与し、このロールを用いた。従来例A15 では、円周方向に平行な研磨目をロールに付与し、このロールを用いた。
表2は、最終パスの圧延の際に圧延スタンドに組み込んだロールの径および研磨目の傾斜角度を表2に示すとおりに変えた場合の結果である。
総合評価は次のようにして行った。
鋼板の上下面の平均光沢度(GS 20 °)が900 を超え、かつロールと金属板との焼付き、金属板の形状不良、圧延荷重が許容荷重上限をオーバーする等のトラブルが発生しない場合には○、鋼板の上下面の平均光沢度(GS 20 °)が900 未満の場合、もしくはロールと金属板との焼付き、金属板の形状不良および圧延荷重が許容荷重上限をオーバーする等のいずれか一つのトラブルが発生した場合には×とした。
表1、2に示す圧延結果から、ロールの径を50〜150 mmとし、複数パスのうち、少なくとも最終パスの圧延の際に、少なくとも一方に傾斜する研磨目の傾斜角度を10〜75°、さらに望ましくは、他方に傾斜する研磨目の傾斜角度も10〜75°としたクロス研磨目を付与したロールを組み込んで、摩擦係数を0.10〜0.15に調整できた発明例A01 〜A10 では、鋼板の上下面の平均光沢度(GS 20 °)が900 を超え、比較例A11 、A13 、従来例A15 より光沢に優れる金属板が得られた。
一方、比較例A11 〜A14 では、最終パスにおける摩擦係数が0.10〜0.15の範囲を外れたためにどちらの場合においても鋼板の上下面の平均光沢度(GS 20 °)が900 未満となり、比較例A12 では焼付きが発生し、光沢が著しく低下した。
また、発明例B01 〜B08 の場合でも、鋼板の上下面の平均光沢度(GS 20 °)が900 を超え、比較例B10 、B11 、従来例B1の場合より光沢に優れる金属板が得られた。
比較例B10 、B11 ではどちらの場合でも鋼板の上下面の平均光沢度(GS 20 °)が900 未満となり、比較例B11 では、焼き付きが発生し、光沢が著しく低下した。また、比較例B12 では金属板の形状が悪化し圧延の継続が困難であり、比較.例B13 では圧延荷重が許容荷重上限をオーバーし、圧延の継続が困難であった。
ロールの研磨目により平滑にされた凸状摺動終端の圧延方向に対する傾斜角度の範囲は、ロールに付与したクロス研磨目の傾斜角度の範囲と一致することがわかっているので、平滑化痕の凸状の摺動終端が圧延方向に対して互いに傾斜方向が反対であるものをそれぞれ複数有し、この複数の摺動終端の圧延方向に対する傾斜角度が少なくとも一方について10〜75°、さらに望ましくは他方についても10〜75°である場合に、金属板の光沢が一段と優れている。
(実施例2)
図8に示すタンデム圧延機の5スタンドにそれぞれ径が200 〜650 mmのロールを組み込んで金属板に圧延を施した。
(実施例2)
図8に示すタンデム圧延機の5スタンドにそれぞれ径が200 〜650 mmのロールを組み込んで金属板に圧延を施した。
その際、冷間ダイス鋼製のロールに表5、6に示す研磨条件でクロス研磨目を付与し、このロールを複数スタンドのうち、少なくとも最終スタンドに組み込んで冷間圧延を行い、延べ圧延長さを記憶するとともに、得られた鋼板にさらに同一条件で焼鈍・酸洗・調質圧延を施した後、上記延べ圧延長さにおける鋼板の上下面の平均光沢度(GS 20 °)を測定し、摩擦係数は最終スタンドでの圧延荷重を測定して求めた。
なお、第1〜第4スタンドには、冷間ダイス鋼製の鏡面に研磨した径が500mm のロールを用いた。金属板として、熱間圧延・焼鈍・酸洗後の素材厚4.0mm のSUS 430 フェライト系ステンレス鋼板を用い、最終スタンドに組み込むロールの粗さ毎に表7に示す圧延油を5vol %エマルジョンで供給しつつ、表8に示す圧下スケジュールで圧延速度を300m/minとして、厚み1.5mm に仕上げた。
表5、6に研磨条件および研磨目の傾斜角度、研磨後のロール粗さ、圧延条件、最終パスでの線圧、最終パスでの摩擦係数、ロールと金属板との焼付きの有無、延べ圧延長さ並びにこの延べ圧延長さにおける鋼板の光沢度(GS 20 °)を合わせて示した。ロール粗さはJIS B0601 に規定する算術平均粗さをロールの軸方向に測定した。
表5、6に示す圧延結果から、複数スタンドにそれぞれ組み込むロールの径を200 〜650 mmとし、複数スタンドのうち、少なくとも最終スタンドに一方に傾斜する研磨目の傾斜角度を10〜75°、さらに好ましくは他方に傾斜する研磨目の傾斜角度も10〜75°としたクロス研磨目を付与したロールを組み込み、かつ摩擦係数を0.08〜0.12とした発明例C01 〜C10 および発明例D01 〜D08 の場合、鋼板の上下面の平均光沢度(GS 20 °)が900 を超え、比較例C11 〜C14 、従来例C15 または比較例D10 、D11 、従来例D14 より光沢に優れる金属板が得られた。
一方、比較例C11 、C12 では、最終スタンドにおける摩擦係数が0.08〜0.12の範囲を外れたためにどちらの場合においても鋼板の上下面の平均光沢度(GS 20 °)が900 未満となり、比較例C12 では焼付きが発生し、光沢が著しく低下した。
比較例C13 、C14 、D10 、D11 では、最終スタンドにおける摩擦係数が0.08〜0.12の範囲を外れたために、どちらの場合においても鋼板の上下面の平均光沢度(GS 20 °)が900 未満となり、比較例D11 では焼付きが発生し、光沢が著しく低下した。
また、比較例D12 では金属板の形状が悪化したので圧延の継続が困難であり、比較例D13 では圧延荷重が許容荷重をオーバーしたので圧延の継続が困難であった。
ロールの研磨目により平滑にされた凸状摺動終端の圧延方向に対する傾斜角度の範囲は、ロールに付与したクロス研磨目の傾斜角度の範囲と一致することがわかっているので、平滑化痕の凸状の摺動終端が圧延方向に対して互いに傾斜方向が反対であるものをそれぞれ複数有し、この複数の摺動終端の圧延方向に対する傾斜角度が少なくとも一方について10〜75°、さらに望ましくは他方についても10〜75°である場合に、金属板の光沢が一段と優れている。
1 圧延用ロール(ロール)
1A ロールの軸
1B ロールの回転方向
1N ロールの法線
2 中空円盤状の砥石(砥石)
2A 砥石の軸
2B 砥石の回転方向
2C 砥石の移動方向
O 砥石の研磨面の中心
2D 砥石の研磨面の中心を通り、ロールの円周を含む仮想的な面で砥石を等分 する線
3L、3R 砥石の研磨面とロールとの接触面
X オフセット量
θ1 、θ2 砥石とロールとの接触面における砥石の外周速度ベクトルおよび 内周速度ベクトルのロール円周方向となす角度
θ+ 、θ- ロール表面におけるクロス研磨目のロール円周方向に対する一方 の傾斜角度および他方の傾斜角度
λ+ 、λ- 凸状摺動終端の長手方向に対する角度
10 研磨溝を形成するロール回転方向前方の壁面
10A ロールの外周速度
20 凸状の摺動終端
H 凸状の摺動終端の最大高さ
30 金属板(ステンレス鋼板)
30A 金属板の出側速度
40 オイルピット
50 ロールバイト出口
73、83 補強ロール
74、84 圧延油供給ノズル
75、85 圧延油
76 中間ロール
1A ロールの軸
1B ロールの回転方向
1N ロールの法線
2 中空円盤状の砥石(砥石)
2A 砥石の軸
2B 砥石の回転方向
2C 砥石の移動方向
O 砥石の研磨面の中心
2D 砥石の研磨面の中心を通り、ロールの円周を含む仮想的な面で砥石を等分 する線
3L、3R 砥石の研磨面とロールとの接触面
X オフセット量
θ1 、θ2 砥石とロールとの接触面における砥石の外周速度ベクトルおよび 内周速度ベクトルのロール円周方向となす角度
θ+ 、θ- ロール表面におけるクロス研磨目のロール円周方向に対する一方 の傾斜角度および他方の傾斜角度
λ+ 、λ- 凸状摺動終端の長手方向に対する角度
10 研磨溝を形成するロール回転方向前方の壁面
10A ロールの外周速度
20 凸状の摺動終端
H 凸状の摺動終端の最大高さ
30 金属板(ステンレス鋼板)
30A 金属板の出側速度
40 オイルピット
50 ロールバイト出口
73、83 補強ロール
74、84 圧延油供給ノズル
75、85 圧延油
76 中間ロール
Claims (1)
- 圧延用ロールの研磨目が摺動した平滑化痕を表面に有するとともに、該平滑化痕の凸状の摺動終端が長手方向に対して互いに傾斜方向が反対であるものをそれぞれ複数有し、該複数の摺動終端の長手方向に対する傾斜角度が10〜75°であることを特徴とする光沢の優れた金属板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004223652A JP2004351520A (ja) | 2004-07-30 | 2004-07-30 | 光沢の優れた金属板 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004223652A JP2004351520A (ja) | 2004-07-30 | 2004-07-30 | 光沢の優れた金属板 |
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2000332211A Division JP3598966B2 (ja) | 2000-10-31 | 2000-10-31 | 光沢の優れた金属板の冷間圧延方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004351520A true JP2004351520A (ja) | 2004-12-16 |
Family
ID=34056432
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2004223652A Pending JP2004351520A (ja) | 2004-07-30 | 2004-07-30 | 光沢の優れた金属板 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004351520A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011143440A (ja) * | 2010-01-14 | 2011-07-28 | Jfe Steel Corp | 方向性電磁鋼板の製造方法 |
-
2004
- 2004-07-30 JP JP2004223652A patent/JP2004351520A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011143440A (ja) * | 2010-01-14 | 2011-07-28 | Jfe Steel Corp | 方向性電磁鋼板の製造方法 |
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