JP2004349795A - 局所空間拡声方法、局所空間拡声装置、局所空間拡声プログラム及びこのプログラムを記録した記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】
【解決手段】入力された信号を任意の複数個の周波数帯域に分割し、そのいずれかの帯域の信号を1次音源で再生し、この1次音源で再生した同じ帯域の信号を2次音源用の入力信号とし、任意の局所空間の境界に配置されたセンサからの出力信号に基づいて、2次音源の遅延と周波数特性を制御することにより、その境界外へ放出される音を消音すると共に複数の周波数帯域分割した他の周波数帯域の信号で超音波帯域の正弦波を振幅変調し、この振幅変調された超音波信号で超音波振動素子を励振して他の周波数帯域の信号を音として発生する局所空間拡声方法。
【選択図】 図1
【解決手段】入力された信号を任意の複数個の周波数帯域に分割し、そのいずれかの帯域の信号を1次音源で再生し、この1次音源で再生した同じ帯域の信号を2次音源用の入力信号とし、任意の局所空間の境界に配置されたセンサからの出力信号に基づいて、2次音源の遅延と周波数特性を制御することにより、その境界外へ放出される音を消音すると共に複数の周波数帯域分割した他の周波数帯域の信号で超音波帯域の正弦波を振幅変調し、この振幅変調された超音波信号で超音波振動素子を励振して他の周波数帯域の信号を音として発生する局所空間拡声方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する利用分野】
本発明は、局所空間内に可聴者を生成する局所空間拡声方法、及び局所空間拡声装置、局所拡声プログラム、及びこのプログラムを記録した記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
拡声装置を用いて音を放射する場合、再生に用いるスピーカの指向特性の影響はあるものの、概ねスピーカに対して全ての方向からその音を聴取することが可能である。そのため、ある特定の空間のみに音を再生し、その外側に音が漏れ出ない拡声方法、すなわち局所再生方法の構築を目指した場合、スピーカなどの拡声装置、或は再生方法を工夫する必要がある。例えば、この局所空間再生を実現するために、所望の方向だけに音を放射する指向性スピーカシステムを用いることが考えられる。このスピーカシステムとしては、ホーンスピーカを用いる、或は反射板の焦点にスピーカユニットを設置するといったように、ホーン或は反射板の幾何学的な形状によって指向性を実現する方法、或は複数のスピーカをアレイ状に配置することで指向性を形成する方法(例えば、非特許文献1)、超音波スピーカを用い、指向性の強い超音波である搬送波を可聴帯域の信号で振幅変調した音波を放出し、その自己復調により可聴帯域の音を再生する方法(特許文献1)等がある。
【0003】
このうち、幾何学的な形状によって指向性を実現する方法は、特に低い周波数において鋭い指向性を得るためには、ホーンの口径、或は反射板の面積が大きいものを用いる必要があり、大規模なシステムとなる。また、スピーカをアレイ状に配置した方法は、ホーン等を用いたシステムよりも小規模でありながらある程度の指向性は得られる。然し乍らまだその指向性は十分に良好なものでない。
一方、超音波スピーカを用いた方法は、搬送波となる超音波に応じた指向性が得られ、狭帯域の指向性を実現することが可能である。しかし、変調・復調のメカニズムの制約上、低周波数域において、十分な再生音圧を得ることができない。
【0004】
更にいずれの方法を採っても、局所的な空間のみに音を再生しようとする場合には、天井などにスピーカなどの拡声装置を取り付ける必要がある(上記非特許文献1)といったように、大掛かりな設備を構築する必要がある。
一方、再生手法によって局所空間再生を実現するための手段として、Kirchhoff−Helmholtzの積分方程式の性質を利用した音場制御手法(非特許文献2)が挙げられる。これは、ある任意の閉空間の境界面上での音圧と音圧傾度(粒子速度)を制御することで、別の場所にある同じ形状の閉空間内の原音場を忠実に再現できるという手法である。但しこの方法では、理論上、境界面上に音圧と音圧傾度(粒子速度)を観測するためのセンサを密に多数配置する必要があるなど大規模なシステムになりがちであり、実現は困難である。また、この手法は理論上全ての周波数帯域にわたって適応できるが、実際のシステムを稼動させた場合には、配置されるセンサの間隔との見合いによって制御可能な帯域は制限される。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−236730号公報
【非特許文献1】
2次元アレイ型指向性スピーカ、音響学会誌Vol.50、No.11、PP.948−950
【非特許文献2】
伊勢、音響学会誌Vol.53、No.9、PP.706−713、1997
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
局所空間内のみに音を再生することを実現しようとした場合には、指向性スピーカを用いる、或はKirchhoff−Helmholtzの積分方程式の性質を利用した音場制御を行なうことが合理的な実現方法として考がえられる。しかし、それぞれの場合、以下に記述する問題点が挙げられる。
まず、指向性スピーカを用いたシステムでは次に述べるような問題点がある。第一に、広い周波数帯域の音、特に低周波数域の音を十分な指向性を持たせて再生することは、現時点では困難である。第二に、このような指向性スピーカを用いた場合、局所的に音を再生しようとした場合、空間の天井にスピーカを設置する必要があるなど、極めて大規模な装置となる。このような大規模な装置にしない場合には、スピーカの持つ指向性の側方へ音を漏れないようにすることは可能であるが、音の到達距離の制御は不可能である。すなわち、ある特定の空間のみに音を再生し、その周りの空間には音を漏らさないという局所的な再生は不可能である。
【0007】
一方、Kirchhoff−Helmholtzの積分方程式の性質を利用した音場制御手法では、音の到着距離を含めて音の再生を制御することも可能である。しかし、これを広い周波数帯域に渡って厳密に適応するためには、音圧及び音圧傾度(粒子速度)を観測するためのセンサを多数設置する必要があり、その数に比例して2次音源の数も増大し実現が困難である。また、実際のシステムとして可動させた場合、制御可能な周波数帯域の上限が限られており、広帯域な音を再生することは現実的に困難である。すなわち、既存の技術では、広帯域な音を拡声することと、局所的な空間のみに拡声することを両立させることはできない。
【0008】
本発明の目的は、上記したこれらの点を改良し、既存の技術では両立できなかった局所空間への再生と広帯域な音の再生を、小規模でありながら実現させるための方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明の請求項1では入力された信号を任意の複数個の周波数帯域に分割し、そのいずれかの帯域の信号を1次音源で再生し、この1次音源で再生した同じ帯域の信号を2次音源用の入力信号とし、任意の局所空間の境界に配置されたセンサからの出力信号に基づいて、2次音源の遅延と周波数特性を制御することにより、その境界外へ放出される音を消音すると共に、周波数帯域分割した他の周波数帯域の信号で超音波帯域の正弦波を振幅変調し、この振幅変調された超音波信号で超音波振動素子を励振して他の周波数帯域の信号を音として再生する局所空間拡声方法を提案する。
【0010】
この発明の請求項2では請求項1記載の局所空間拡声方法において、分割された任意の周波数帯域の音を再生し、同時に再生すべき局所空間の境界面上に配置されたセンサの出力に基づいて、そのセンサの位置における音圧と音圧傾度を同時にゼロとするように2次音源から出力されるべき信号を生成し音として再生する局所空間拡声方法を提案する。
この発明の請求項3では請求項1記載の局所空間拡声方法において、超音波振動素子により再生する周波数帯域の音に対して、オーバーサンプリングして得られたサンプルの中の一部をゼロに置換することにより折り返し歪みを生じさせ、この折り返し歪み成分を含む信号から再生すべき帯域幅の帯域成分をろ波した信号で超音波振動素子を駆動する局所空間拡声方法を提案する。
【0011】
この発明の請求項4では入力された信号を任意の複数個の周波数帯域に分割する周波数分割部と、この周波数分割部で分割されたいずれかの帯域の信号を1次音源で音として再生し、この1次音源で再生した音と同じ周波数帯域の信号を2次音源の入力信号とし、音を再生すべき局所空間の境界に配置されたセンサからの出力信号に基づいて、2次音源の遅延と周波数特性を制御し、境界外へ放出される音を消音する低周波数域再生部と、低周波数域再生部で再生される音の周波数帯域と異なる周波数帯域の信号で超音波帯域の正弦波を振幅変調し、その振幅変調された超音波信号により超音波振動素子を励振し、音を再生する高周波数域再生部とによって構成した局所空間拡声装置を提案する。
【0012】
この発明の請求項5では請求項4記載の局所空間拡声装置において、低周波数域再生部は、周波数分割部で分割されたいずれかの周波数帯域の信号を音として再生する1次音源及び2次音源と、音場を再生すべき局所空間の境界面上に配置され、各配置点における音圧と音圧傾度を検出する複数のセンサと、複数のセンサが検出する検出信号によって前記2次音源に与える信号を制御し、複数のセンサが検出する各センサの配置点における音圧と音圧傾度が同時にゼロとする音を2次音源に再生させる適応フィルタとによって構成した局所空間拡声装置を提案する。
【0013】
この発明の請求項6では請求項4記載の局所空間拡声装置において、高周波数域再生部は複数の超音波振動素子を装備し、これら複数の超音波素子の各音が集束する焦点を低周波数域再生部が再生する局所空間音場内で一致させ、この焦点位置で高周波数域再生部の音を再生する局所空間拡声装置を提案する。
この発明の請求項7ではコンピュータが解読可能な符号列によって記述され、コンピュータに請求項1乃至3記載の局所空間拡声方法の少なくとも何れか一つを実行させ、1次音源と2次音源及び高周波数域再生部を構成する超音波振動素子に与える駆動信号を生成する局所空間拡声プログラムを提案する。
【0014】
この発明の請求項8ではコンピュータが読み取り可能な記録媒体で構成され、請求項7記載の局所空間拡声プログラムを記録した記録媒体を提案する。
作用
この発明によれば入力信号を帯域分割することで低周波数域と高周波数域とを個々に処理することが可能となる。その上で、低周波数域で局所再生が可能であるが高周波数域での制御が不可能であるKirchhoff−Helmholtzの積分方程式の性質を利用した音場制御手法と、高周波数域では十分な音圧で再生することが可能であるが、低周波数域で十分な音圧で再生することが不可能である超音波パラメトリックスピーカでの再生方法を個々の周波数帯域の信号について適応する。この方法により、局所的な空間への音の再生と、広帯域音の再生を両立させることが可能となる。
【0015】
具体的には、Kirchhoff−Helmholtzの積分方程式の性質を利用した音場制御手法では、任意の閉空間として再生スピーカ(1次音源)を含む空間を選び、その空間の境界面上での音圧と音圧傾度(粒子速度)が0となるように制御スピーカ(2次音源)の出力を適応的に制御することで、その閉空間のみで音を再生する。一方、超音波パラメトリックスピーカを用いた方法では、複数の超音波パラメトリックスピーカの焦点を一点に合致させることで、局所空間内の一点で可聴音を再生する。周波数帯域毎とに分割された信号を、こられ二つの方法で処理した後の同期させて再生することで、任意の局所空間に広帯域な音を再生させることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1にこの発明による局所空間所定間拡声装置の一実施例を示す。この発明による局所空間拡声装置は入力される音声信号を複数の周波数帯域信号に分割する周波数分割部10と、この周波数分割部で分割した複数の周波数帯域信号の中の低い周波数帯域の信号を処理する低周波数域処理部20と、この低周波数域処理部20で処理した低い周波数帯域(例えば数100Hz〜1kHz程度)の信号を音として再生する低周波数域再生部40と、
周波数分割部10で分割した複数の周波数帯域信号の中の比較的高い周波数帯域の信号を処理する高周波数域処理部30と、この高周波数域処理部30で処理した高い周波数帯域(1kHz〜20kHz)の信号を音として再生する高周波数域再生部50とによって構成した場合を示す。
【0017】
周波数分割部10で分割する周波数帯域信号の分割数は低い周波数側及び高い周波数側のそれぞれで任意であるが、ここでは説明を簡素化するために低い周波数帯域と高い周波数帯域の2分割した場合を説明する。
図2に低周波数域処理部20と低周波数域再生部40の具体的な実施例を示す。低周波数域処理部20は適応フィルタ21で構成することができ、低周波数域再生部40は1次音源41と、2次音源42と、音場を再生すべき局所空間の境界に設置した複数の音圧・音圧傾度センサ43とによって構成することができる。
【0018】
1次音源41と2次音源42は具体的にはスピーカで構成することができる。図2に示した実施例では1次音源41を1個のスピーカで構成し、2次音源42を複数のスピーカで構成した場合を示す。1次音源と2次音源の具体的な配置の例を図3に示す。図3に示す例では一つの1次音源からの音を、7つの2次音源と、6つの音圧・音圧傾度センサ43を用いて制御する構成とした場合を示す。音圧・音圧傾度センサ43に対して1次音源41を2次音源42よりも遠方に配置するもしくは1次音源に遅延を付加することで、2次音源に用いる適応フィルタの因果性を満たすことができる。尚、音圧・音圧傾度センサ43は一般に音響一電気信号変換器いわゆるマイクロホンで構成することができる。特に音圧傾度センサは一対のマイクロホンを近接して配置して構成され、これら一対のマイクロホンで検出する音の音圧差により音圧傾度を検出する。
【0019】
説明は再び図2に戻る。図2において、周波数分割部10からの入力x(t)が、適応フィルタ21の持つフィルタ係数W(t)と畳み込まれ、その結果であるy(t)が低周波数域再生部40に出力される。出力された音は、再生すべき局所空間の境界に設置された音圧・音圧傾度センサ43により境界面上での音圧及び音圧傾度が観測され、その値を用いて境界面上での音圧及び音圧傾度が0となるように、次の出力に用いる適応フィルタ21のフィルタ係数W(t+1)が求められる。この低周波数域処理部20は、再生すべき局所空間境界面上に配置した音圧・音圧傾度センサ43のセンサの数と、2次音源42のスピーカの数に応じた数だけ設置する。そのため、適応フィルタ21のフィルタ係数W(t+1)の更新には、例えばMEFX−LMSアルゴリズム(Elliot et.al,“A multiple error LMS algorithm and its application to active control of sound and vibration,”IEEE Trans.Acoust.Speech Signal Proc.,Vol.ASSP−35(10),pp.1423−1434,1987.)等を用いる。一般にMEFX−LMSアルゴリズムは、参照センサ数(適応フィルタの入力数)K、2次音源数L、制御点(エラーセンサ)数M、の場合について、のアルゴリズムとして記述さており、これをCASE[K,L,M]と記述している。図2に示す実施例では適応フィルタへの入力は1チャンネルであるため、CASE[1,L.M]のアルゴリズムとしてフィルタ係数の更新を行なっていくこととなる。
【0020】
図4は高周波数域処理部30と高周波数域再生部50の具体的な実施例を示す。一般的に高周波数域処理部30と高周波数域再生部50とから成る構成を超音波パラメトリックスピーカと呼ばれている。
高周波数域処理部30はAD変換部31と、加算部32と、直流バイアス発生部33と、歪付加部34と、ろ波部35と、DA変換部36とによって構成することができる。
AD変換部31では周波数分割部10から入力される高周波数帯域の可聴音信号をオーバーサンプリングしてAD変換を行なう。周波数分割部10から入力される可聴音信号の上限周波数をfuとした場合、そのサンプリング周波数fsは、
fs=N・(2・fu)……………(1)
Nは2以上正の整数
で与えられる。
【0021】
一般に可聴周波数帯域の上限周波数fuは20kHzとされているから、可聴音信号を記録、再生する場合のように一般的なAD変換動作であれば、サンプリング周波数は上限周波数fuの2倍に採れば充分である。然し乍ら、ここではそれ以上の例えばN=2に選定してサンプリング周波数fsをfs=2×2×20kHzに選定し、オーバーサンプリングする。
オーバーサンプリングされた高周波数域信号の各サンプルに加算手段32で一定値の直流バイアス値を加算し、一定値が加算された各サンプルを歪付加部34に入力する。
【0022】
歪付加部34はゼロ値置換部34Aによって構成することができる。ゼロ値置換部34Aではオーバーサンプリングされて得られたサンプル列の中の少なくとも一部のサンプルの値をゼロ値に置換して折り返し歪み(aliasing)を生じさせる。ゼロ値への置換例としてはサンプル列の中のサンプルの値をN個おきにゼロ値に置換する。
この折り返し歪みにより図5に示すように、直流分によって発生するキャリアCY1、CY2及び可聴音信号AUの折り返し雑音としてAU1、AU2、AU3が発生する。
【0023】
式(1)においてN=2とした場合、キャリアCY2は80kHzの周波数となり、その1/2の周波数40kHzにキャリアCY1が折り返し歪みによって発生する。更に、可聴音信号AUの下限周波数をfL、その帯域幅をfxとした場合、信号成分AU1は帯域幅がfxで折り返し歪みにより加減側に2fu−fuの成分を有し、上限側に2fu−fLとの成分を有する。信号成分AU2は帯域幅がfxで下限側に2fu+fLとの成分を有し、上限側に2fu+fuの成分を有する。信号成分AU3は帯域幅がfxで下限側に4fu−fuの成分を有し、上限側に4fu−fLの成分を持つ。
【0024】
これらの周波数成分を見ると、信号成分AU1、AU2はキャリアCY1を可聴音信号AUで振幅変調して得られる振幅変調波の下側波帯と上側波帯としてみることができる。また信号成分AU3はキャリアCY2を可聴音信号AUで振幅変調して得られる振幅変調波の下側波帯として見ることができる。
従って、この実施例ではろ波部35で折り返し歪み成分を含む信号から可聴音信号AUの上限周波数fu(20kHz)乃至はその偶数倍(40kHz、80kHz)の周波数から再生しようとする可聴音の帯域幅fxか、またはその倍の帯域幅の帯域成分をろ波して取り出すように構成とする。つまり、例えば図6Aに示すようにキャリアCY1と信号成分AU1と信号成分AU2をろ波して取り出すか、または図6Bに示すようにキャリアCY1と信号成分AU1をろ波して取り出すか、或いは図6Cに示すようにキャリアCY1と信号成分AU2をろ波して取り出し、そのろ波して取り出した信号をDA変換部36でDA変換したアナログ信号を高周波数域再生部50に出力する。
【0025】
高周波数域再生部50は増幅器51と、超音波振動素子群52とによって構成することができる。増幅器51で増幅した信号で超音波振動素子群52を駆動することによりキャリアCY1またはCY2の周波数の超音波を発生させることができ、このキャリアCY1またはCY2の周波数の超音波が周波数が周波数分割部10で周波数分割された高周波数域の可聴信号で振幅変調されていることから、超音波の伝搬過程で可聴音が再生される。
超音波振動素子群52を例えば凹面状の板に装着し、この凹面の焦点を所望の距離に設定することにより、その焦点位置で強い可聴音を再生することができる。
【0026】
図7に低周波数域再生部40と高周波数域再生部50の配置と再生される音の音場の関係を示す。ここでは高周波数域再生部50を複数(図7に示す例では3個)設け、各高周波数域再生部50の焦点位置を低周波数域再生音場Low内で合致させることにより、低周波数域音場Low内に高周波数域音場Highを生成することができる。
以上説明した周波数分割部10と、低周波数域処理部20と、高周波数域処理部30はコンピュータによって構成することができる。コンピュータに上述した周波数分割処理と、低周波数域処理と、高周波数域処理とをプログラムにより実行させ、低周波数域再生部40と高周波数域再生部50を駆動する駆動信号を生成させることによりこの発明による局所空間拡声方法を実現することができる。
【0027】
プログラムはコンピュータが読み取り可能な磁気ディスク或はCD−ROMのような記録媒体に記録され、記録媒体からコンピュータにインストールするか或は通信回線を通じてコンピュータにインストールされ、コンピュータに内蔵されているCPUに解読されて上述した局所空間拡声方法が実行される。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば入力された信号音を周波数帯域毎に分割し、個々の帯域毎に異なる方法を用いて処理した上で再生する方法としたから、低周波数域から高周波数域に渡る広い周波数帯域において十分な音圧を持って再生することが可能となり、同時に、小規模でありながら任意の局所空間内のみに音を再生することが可能となる。すなわち、これまで両立させることができなかった局所再生と広帯域再生を、小規模なシステムで同時に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の全体の構成を説明するためのブロック図。
【図2】図1に示した高周波数域処理部と低周波数域再生部の具体的な実施例を説明するためのブロック図。
【図3】図2に示した低周波数域再生部の更に詳細な配置の一例を説明するための配置図。
【図4】図1に示した高周波数域処理部と高周波数域再生部の具体的な実施例を説明するためのブロック図。
【図5】図4に示した高周波数域処理部の動作を説明するためのグラフ。
【図6】図4に示した高周波数域処理部の動作を説明するための図5と同様のグラフ。
【図7】この発明の全体の動作を説明するための配置図。
【符号の説明】
10 周波数分割部 41 1次音源
20 低周波数域処理部 42 2次音源
21 適応フィルタ 43 音圧・音圧傾度センサ
30 高周波数域処理部 50 高周波数域再生部
40 低周波数域再生部 52 超音波振動素子群
【発明の属する利用分野】
本発明は、局所空間内に可聴者を生成する局所空間拡声方法、及び局所空間拡声装置、局所拡声プログラム、及びこのプログラムを記録した記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
拡声装置を用いて音を放射する場合、再生に用いるスピーカの指向特性の影響はあるものの、概ねスピーカに対して全ての方向からその音を聴取することが可能である。そのため、ある特定の空間のみに音を再生し、その外側に音が漏れ出ない拡声方法、すなわち局所再生方法の構築を目指した場合、スピーカなどの拡声装置、或は再生方法を工夫する必要がある。例えば、この局所空間再生を実現するために、所望の方向だけに音を放射する指向性スピーカシステムを用いることが考えられる。このスピーカシステムとしては、ホーンスピーカを用いる、或は反射板の焦点にスピーカユニットを設置するといったように、ホーン或は反射板の幾何学的な形状によって指向性を実現する方法、或は複数のスピーカをアレイ状に配置することで指向性を形成する方法(例えば、非特許文献1)、超音波スピーカを用い、指向性の強い超音波である搬送波を可聴帯域の信号で振幅変調した音波を放出し、その自己復調により可聴帯域の音を再生する方法(特許文献1)等がある。
【0003】
このうち、幾何学的な形状によって指向性を実現する方法は、特に低い周波数において鋭い指向性を得るためには、ホーンの口径、或は反射板の面積が大きいものを用いる必要があり、大規模なシステムとなる。また、スピーカをアレイ状に配置した方法は、ホーン等を用いたシステムよりも小規模でありながらある程度の指向性は得られる。然し乍らまだその指向性は十分に良好なものでない。
一方、超音波スピーカを用いた方法は、搬送波となる超音波に応じた指向性が得られ、狭帯域の指向性を実現することが可能である。しかし、変調・復調のメカニズムの制約上、低周波数域において、十分な再生音圧を得ることができない。
【0004】
更にいずれの方法を採っても、局所的な空間のみに音を再生しようとする場合には、天井などにスピーカなどの拡声装置を取り付ける必要がある(上記非特許文献1)といったように、大掛かりな設備を構築する必要がある。
一方、再生手法によって局所空間再生を実現するための手段として、Kirchhoff−Helmholtzの積分方程式の性質を利用した音場制御手法(非特許文献2)が挙げられる。これは、ある任意の閉空間の境界面上での音圧と音圧傾度(粒子速度)を制御することで、別の場所にある同じ形状の閉空間内の原音場を忠実に再現できるという手法である。但しこの方法では、理論上、境界面上に音圧と音圧傾度(粒子速度)を観測するためのセンサを密に多数配置する必要があるなど大規模なシステムになりがちであり、実現は困難である。また、この手法は理論上全ての周波数帯域にわたって適応できるが、実際のシステムを稼動させた場合には、配置されるセンサの間隔との見合いによって制御可能な帯域は制限される。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−236730号公報
【非特許文献1】
2次元アレイ型指向性スピーカ、音響学会誌Vol.50、No.11、PP.948−950
【非特許文献2】
伊勢、音響学会誌Vol.53、No.9、PP.706−713、1997
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
局所空間内のみに音を再生することを実現しようとした場合には、指向性スピーカを用いる、或はKirchhoff−Helmholtzの積分方程式の性質を利用した音場制御を行なうことが合理的な実現方法として考がえられる。しかし、それぞれの場合、以下に記述する問題点が挙げられる。
まず、指向性スピーカを用いたシステムでは次に述べるような問題点がある。第一に、広い周波数帯域の音、特に低周波数域の音を十分な指向性を持たせて再生することは、現時点では困難である。第二に、このような指向性スピーカを用いた場合、局所的に音を再生しようとした場合、空間の天井にスピーカを設置する必要があるなど、極めて大規模な装置となる。このような大規模な装置にしない場合には、スピーカの持つ指向性の側方へ音を漏れないようにすることは可能であるが、音の到達距離の制御は不可能である。すなわち、ある特定の空間のみに音を再生し、その周りの空間には音を漏らさないという局所的な再生は不可能である。
【0007】
一方、Kirchhoff−Helmholtzの積分方程式の性質を利用した音場制御手法では、音の到着距離を含めて音の再生を制御することも可能である。しかし、これを広い周波数帯域に渡って厳密に適応するためには、音圧及び音圧傾度(粒子速度)を観測するためのセンサを多数設置する必要があり、その数に比例して2次音源の数も増大し実現が困難である。また、実際のシステムとして可動させた場合、制御可能な周波数帯域の上限が限られており、広帯域な音を再生することは現実的に困難である。すなわち、既存の技術では、広帯域な音を拡声することと、局所的な空間のみに拡声することを両立させることはできない。
【0008】
本発明の目的は、上記したこれらの点を改良し、既存の技術では両立できなかった局所空間への再生と広帯域な音の再生を、小規模でありながら実現させるための方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明の請求項1では入力された信号を任意の複数個の周波数帯域に分割し、そのいずれかの帯域の信号を1次音源で再生し、この1次音源で再生した同じ帯域の信号を2次音源用の入力信号とし、任意の局所空間の境界に配置されたセンサからの出力信号に基づいて、2次音源の遅延と周波数特性を制御することにより、その境界外へ放出される音を消音すると共に、周波数帯域分割した他の周波数帯域の信号で超音波帯域の正弦波を振幅変調し、この振幅変調された超音波信号で超音波振動素子を励振して他の周波数帯域の信号を音として再生する局所空間拡声方法を提案する。
【0010】
この発明の請求項2では請求項1記載の局所空間拡声方法において、分割された任意の周波数帯域の音を再生し、同時に再生すべき局所空間の境界面上に配置されたセンサの出力に基づいて、そのセンサの位置における音圧と音圧傾度を同時にゼロとするように2次音源から出力されるべき信号を生成し音として再生する局所空間拡声方法を提案する。
この発明の請求項3では請求項1記載の局所空間拡声方法において、超音波振動素子により再生する周波数帯域の音に対して、オーバーサンプリングして得られたサンプルの中の一部をゼロに置換することにより折り返し歪みを生じさせ、この折り返し歪み成分を含む信号から再生すべき帯域幅の帯域成分をろ波した信号で超音波振動素子を駆動する局所空間拡声方法を提案する。
【0011】
この発明の請求項4では入力された信号を任意の複数個の周波数帯域に分割する周波数分割部と、この周波数分割部で分割されたいずれかの帯域の信号を1次音源で音として再生し、この1次音源で再生した音と同じ周波数帯域の信号を2次音源の入力信号とし、音を再生すべき局所空間の境界に配置されたセンサからの出力信号に基づいて、2次音源の遅延と周波数特性を制御し、境界外へ放出される音を消音する低周波数域再生部と、低周波数域再生部で再生される音の周波数帯域と異なる周波数帯域の信号で超音波帯域の正弦波を振幅変調し、その振幅変調された超音波信号により超音波振動素子を励振し、音を再生する高周波数域再生部とによって構成した局所空間拡声装置を提案する。
【0012】
この発明の請求項5では請求項4記載の局所空間拡声装置において、低周波数域再生部は、周波数分割部で分割されたいずれかの周波数帯域の信号を音として再生する1次音源及び2次音源と、音場を再生すべき局所空間の境界面上に配置され、各配置点における音圧と音圧傾度を検出する複数のセンサと、複数のセンサが検出する検出信号によって前記2次音源に与える信号を制御し、複数のセンサが検出する各センサの配置点における音圧と音圧傾度が同時にゼロとする音を2次音源に再生させる適応フィルタとによって構成した局所空間拡声装置を提案する。
【0013】
この発明の請求項6では請求項4記載の局所空間拡声装置において、高周波数域再生部は複数の超音波振動素子を装備し、これら複数の超音波素子の各音が集束する焦点を低周波数域再生部が再生する局所空間音場内で一致させ、この焦点位置で高周波数域再生部の音を再生する局所空間拡声装置を提案する。
この発明の請求項7ではコンピュータが解読可能な符号列によって記述され、コンピュータに請求項1乃至3記載の局所空間拡声方法の少なくとも何れか一つを実行させ、1次音源と2次音源及び高周波数域再生部を構成する超音波振動素子に与える駆動信号を生成する局所空間拡声プログラムを提案する。
【0014】
この発明の請求項8ではコンピュータが読み取り可能な記録媒体で構成され、請求項7記載の局所空間拡声プログラムを記録した記録媒体を提案する。
作用
この発明によれば入力信号を帯域分割することで低周波数域と高周波数域とを個々に処理することが可能となる。その上で、低周波数域で局所再生が可能であるが高周波数域での制御が不可能であるKirchhoff−Helmholtzの積分方程式の性質を利用した音場制御手法と、高周波数域では十分な音圧で再生することが可能であるが、低周波数域で十分な音圧で再生することが不可能である超音波パラメトリックスピーカでの再生方法を個々の周波数帯域の信号について適応する。この方法により、局所的な空間への音の再生と、広帯域音の再生を両立させることが可能となる。
【0015】
具体的には、Kirchhoff−Helmholtzの積分方程式の性質を利用した音場制御手法では、任意の閉空間として再生スピーカ(1次音源)を含む空間を選び、その空間の境界面上での音圧と音圧傾度(粒子速度)が0となるように制御スピーカ(2次音源)の出力を適応的に制御することで、その閉空間のみで音を再生する。一方、超音波パラメトリックスピーカを用いた方法では、複数の超音波パラメトリックスピーカの焦点を一点に合致させることで、局所空間内の一点で可聴音を再生する。周波数帯域毎とに分割された信号を、こられ二つの方法で処理した後の同期させて再生することで、任意の局所空間に広帯域な音を再生させることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1にこの発明による局所空間所定間拡声装置の一実施例を示す。この発明による局所空間拡声装置は入力される音声信号を複数の周波数帯域信号に分割する周波数分割部10と、この周波数分割部で分割した複数の周波数帯域信号の中の低い周波数帯域の信号を処理する低周波数域処理部20と、この低周波数域処理部20で処理した低い周波数帯域(例えば数100Hz〜1kHz程度)の信号を音として再生する低周波数域再生部40と、
周波数分割部10で分割した複数の周波数帯域信号の中の比較的高い周波数帯域の信号を処理する高周波数域処理部30と、この高周波数域処理部30で処理した高い周波数帯域(1kHz〜20kHz)の信号を音として再生する高周波数域再生部50とによって構成した場合を示す。
【0017】
周波数分割部10で分割する周波数帯域信号の分割数は低い周波数側及び高い周波数側のそれぞれで任意であるが、ここでは説明を簡素化するために低い周波数帯域と高い周波数帯域の2分割した場合を説明する。
図2に低周波数域処理部20と低周波数域再生部40の具体的な実施例を示す。低周波数域処理部20は適応フィルタ21で構成することができ、低周波数域再生部40は1次音源41と、2次音源42と、音場を再生すべき局所空間の境界に設置した複数の音圧・音圧傾度センサ43とによって構成することができる。
【0018】
1次音源41と2次音源42は具体的にはスピーカで構成することができる。図2に示した実施例では1次音源41を1個のスピーカで構成し、2次音源42を複数のスピーカで構成した場合を示す。1次音源と2次音源の具体的な配置の例を図3に示す。図3に示す例では一つの1次音源からの音を、7つの2次音源と、6つの音圧・音圧傾度センサ43を用いて制御する構成とした場合を示す。音圧・音圧傾度センサ43に対して1次音源41を2次音源42よりも遠方に配置するもしくは1次音源に遅延を付加することで、2次音源に用いる適応フィルタの因果性を満たすことができる。尚、音圧・音圧傾度センサ43は一般に音響一電気信号変換器いわゆるマイクロホンで構成することができる。特に音圧傾度センサは一対のマイクロホンを近接して配置して構成され、これら一対のマイクロホンで検出する音の音圧差により音圧傾度を検出する。
【0019】
説明は再び図2に戻る。図2において、周波数分割部10からの入力x(t)が、適応フィルタ21の持つフィルタ係数W(t)と畳み込まれ、その結果であるy(t)が低周波数域再生部40に出力される。出力された音は、再生すべき局所空間の境界に設置された音圧・音圧傾度センサ43により境界面上での音圧及び音圧傾度が観測され、その値を用いて境界面上での音圧及び音圧傾度が0となるように、次の出力に用いる適応フィルタ21のフィルタ係数W(t+1)が求められる。この低周波数域処理部20は、再生すべき局所空間境界面上に配置した音圧・音圧傾度センサ43のセンサの数と、2次音源42のスピーカの数に応じた数だけ設置する。そのため、適応フィルタ21のフィルタ係数W(t+1)の更新には、例えばMEFX−LMSアルゴリズム(Elliot et.al,“A multiple error LMS algorithm and its application to active control of sound and vibration,”IEEE Trans.Acoust.Speech Signal Proc.,Vol.ASSP−35(10),pp.1423−1434,1987.)等を用いる。一般にMEFX−LMSアルゴリズムは、参照センサ数(適応フィルタの入力数)K、2次音源数L、制御点(エラーセンサ)数M、の場合について、のアルゴリズムとして記述さており、これをCASE[K,L,M]と記述している。図2に示す実施例では適応フィルタへの入力は1チャンネルであるため、CASE[1,L.M]のアルゴリズムとしてフィルタ係数の更新を行なっていくこととなる。
【0020】
図4は高周波数域処理部30と高周波数域再生部50の具体的な実施例を示す。一般的に高周波数域処理部30と高周波数域再生部50とから成る構成を超音波パラメトリックスピーカと呼ばれている。
高周波数域処理部30はAD変換部31と、加算部32と、直流バイアス発生部33と、歪付加部34と、ろ波部35と、DA変換部36とによって構成することができる。
AD変換部31では周波数分割部10から入力される高周波数帯域の可聴音信号をオーバーサンプリングしてAD変換を行なう。周波数分割部10から入力される可聴音信号の上限周波数をfuとした場合、そのサンプリング周波数fsは、
fs=N・(2・fu)……………(1)
Nは2以上正の整数
で与えられる。
【0021】
一般に可聴周波数帯域の上限周波数fuは20kHzとされているから、可聴音信号を記録、再生する場合のように一般的なAD変換動作であれば、サンプリング周波数は上限周波数fuの2倍に採れば充分である。然し乍ら、ここではそれ以上の例えばN=2に選定してサンプリング周波数fsをfs=2×2×20kHzに選定し、オーバーサンプリングする。
オーバーサンプリングされた高周波数域信号の各サンプルに加算手段32で一定値の直流バイアス値を加算し、一定値が加算された各サンプルを歪付加部34に入力する。
【0022】
歪付加部34はゼロ値置換部34Aによって構成することができる。ゼロ値置換部34Aではオーバーサンプリングされて得られたサンプル列の中の少なくとも一部のサンプルの値をゼロ値に置換して折り返し歪み(aliasing)を生じさせる。ゼロ値への置換例としてはサンプル列の中のサンプルの値をN個おきにゼロ値に置換する。
この折り返し歪みにより図5に示すように、直流分によって発生するキャリアCY1、CY2及び可聴音信号AUの折り返し雑音としてAU1、AU2、AU3が発生する。
【0023】
式(1)においてN=2とした場合、キャリアCY2は80kHzの周波数となり、その1/2の周波数40kHzにキャリアCY1が折り返し歪みによって発生する。更に、可聴音信号AUの下限周波数をfL、その帯域幅をfxとした場合、信号成分AU1は帯域幅がfxで折り返し歪みにより加減側に2fu−fuの成分を有し、上限側に2fu−fLとの成分を有する。信号成分AU2は帯域幅がfxで下限側に2fu+fLとの成分を有し、上限側に2fu+fuの成分を有する。信号成分AU3は帯域幅がfxで下限側に4fu−fuの成分を有し、上限側に4fu−fLの成分を持つ。
【0024】
これらの周波数成分を見ると、信号成分AU1、AU2はキャリアCY1を可聴音信号AUで振幅変調して得られる振幅変調波の下側波帯と上側波帯としてみることができる。また信号成分AU3はキャリアCY2を可聴音信号AUで振幅変調して得られる振幅変調波の下側波帯として見ることができる。
従って、この実施例ではろ波部35で折り返し歪み成分を含む信号から可聴音信号AUの上限周波数fu(20kHz)乃至はその偶数倍(40kHz、80kHz)の周波数から再生しようとする可聴音の帯域幅fxか、またはその倍の帯域幅の帯域成分をろ波して取り出すように構成とする。つまり、例えば図6Aに示すようにキャリアCY1と信号成分AU1と信号成分AU2をろ波して取り出すか、または図6Bに示すようにキャリアCY1と信号成分AU1をろ波して取り出すか、或いは図6Cに示すようにキャリアCY1と信号成分AU2をろ波して取り出し、そのろ波して取り出した信号をDA変換部36でDA変換したアナログ信号を高周波数域再生部50に出力する。
【0025】
高周波数域再生部50は増幅器51と、超音波振動素子群52とによって構成することができる。増幅器51で増幅した信号で超音波振動素子群52を駆動することによりキャリアCY1またはCY2の周波数の超音波を発生させることができ、このキャリアCY1またはCY2の周波数の超音波が周波数が周波数分割部10で周波数分割された高周波数域の可聴信号で振幅変調されていることから、超音波の伝搬過程で可聴音が再生される。
超音波振動素子群52を例えば凹面状の板に装着し、この凹面の焦点を所望の距離に設定することにより、その焦点位置で強い可聴音を再生することができる。
【0026】
図7に低周波数域再生部40と高周波数域再生部50の配置と再生される音の音場の関係を示す。ここでは高周波数域再生部50を複数(図7に示す例では3個)設け、各高周波数域再生部50の焦点位置を低周波数域再生音場Low内で合致させることにより、低周波数域音場Low内に高周波数域音場Highを生成することができる。
以上説明した周波数分割部10と、低周波数域処理部20と、高周波数域処理部30はコンピュータによって構成することができる。コンピュータに上述した周波数分割処理と、低周波数域処理と、高周波数域処理とをプログラムにより実行させ、低周波数域再生部40と高周波数域再生部50を駆動する駆動信号を生成させることによりこの発明による局所空間拡声方法を実現することができる。
【0027】
プログラムはコンピュータが読み取り可能な磁気ディスク或はCD−ROMのような記録媒体に記録され、記録媒体からコンピュータにインストールするか或は通信回線を通じてコンピュータにインストールされ、コンピュータに内蔵されているCPUに解読されて上述した局所空間拡声方法が実行される。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば入力された信号音を周波数帯域毎に分割し、個々の帯域毎に異なる方法を用いて処理した上で再生する方法としたから、低周波数域から高周波数域に渡る広い周波数帯域において十分な音圧を持って再生することが可能となり、同時に、小規模でありながら任意の局所空間内のみに音を再生することが可能となる。すなわち、これまで両立させることができなかった局所再生と広帯域再生を、小規模なシステムで同時に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の全体の構成を説明するためのブロック図。
【図2】図1に示した高周波数域処理部と低周波数域再生部の具体的な実施例を説明するためのブロック図。
【図3】図2に示した低周波数域再生部の更に詳細な配置の一例を説明するための配置図。
【図4】図1に示した高周波数域処理部と高周波数域再生部の具体的な実施例を説明するためのブロック図。
【図5】図4に示した高周波数域処理部の動作を説明するためのグラフ。
【図6】図4に示した高周波数域処理部の動作を説明するための図5と同様のグラフ。
【図7】この発明の全体の動作を説明するための配置図。
【符号の説明】
10 周波数分割部 41 1次音源
20 低周波数域処理部 42 2次音源
21 適応フィルタ 43 音圧・音圧傾度センサ
30 高周波数域処理部 50 高周波数域再生部
40 低周波数域再生部 52 超音波振動素子群
Claims (8)
- 入力された信号を任意の複数個の周波数帯域に分割し、そのいずれかの帯域の信号を1次音源で再生し、この1次音源で再生した同じ帯域の信号を2次音源用の入力信号とし、任意の局所空間の境界に配置されたセンサからの出力信号に基づいて、2次音源の遅延と周波数特性を制御することにより、その境界外へ放出される音を消音すると共に、前記周波数帯域分割した他の周波数帯域の信号で超音波帯域の正弦波を振幅変調し、この振幅変調された超音波信号で超音波振動素子を励振して前記他の周波数帯域の信号を音として再生することを特徴とする局所空間拡声方法。
- 請求項1記載の局所空間拡声方法において、分割された任意の周波数帯域の音を再生し、同時に再生すべき局所空間の境界面上に配置されたセンサの出力に基づいて、そのセンサの位置における音圧と音圧傾度を同時にゼロとするように2次音源から出力されるべき信号を生成し音として再生することを特徴とする局所空間拡声方法。
- 請求項1記載の局所空間拡声方法において、前記超音波振動素子により再生する周波数帯域の音に対して、オーバーサンプリングして得られたサンプルの中の一部をゼロに置換することにより折り返し歪みを生じさせ、この折り返し歪み成分を含む信号から再生すべき帯域幅の帯域成分をろ波した信号で超音波振動素子を駆動する局所空間拡声方法。
- 入力された信号を任意の複数個の周波数帯域に分割する周波数分割部と、
この周波数分割部で分割されたいずれかの帯域の信号を1次音源で音として再生し、この1次音源で再生した音と同じ周波数帯域の信号を2次音源の入力信号とし、音を再生すべき局所空間の境界に配置されたセンサからの出力信号に基づいて、2次音源の遅延と周波数特性を制御し、境界外へ放出される音を消音する低周波数域再生部と、
前記低周波数域再生部で再生される音の周波数帯域と異なる周波数帯域の信号で超音波帯域の正弦波を振幅変調し、その振幅変調された超音波信号により超音波振動素子を励振し、音を再生する高周波数域再生部と、
によって構成したことを特徴とする局所空間拡声装置。 - 請求項4記載の局所空間拡声装置において、前記低周波数域再生部は、
前記周波数分割部で分割されたいずれかの周波数帯域の信号を音として再生する1次音源及び2次音源と、
音場を再生すべき局所空間の境界面上に配置され、各配置点における音圧と音圧傾度を検出する複数のセンサと、
前記複数のセンサが検出する検出信号によって前記2次音源に与える信号を制御し、前記複数のセンサが検出する各センサの配置点における音圧と音圧傾度が同時にゼロとする音を上記2次音源に再生させる適応フィルタと、
によって構成したことを特徴とする局所空間拡声装置。 - 請求項4記載の局所空間拡声装置において、前記高周波数域再生部は複数の超音波振動素子を装備し、これら複数の超音波素子の各音が集束する焦点を上記低周波数域再生部が再生する局所空間音場内で一致させ、この焦点位置で前記高周波数域再生部の音を再生することを特徴とする局所空間拡声装置。
- コンピュータが解読可能な符号列によって記述され、コンピュータに請求項1乃至3記載の局所空間拡声方法の少なくとも何れか一つを実行させ、前記1次音源と2次音源及び高周波数域再生部を構成する超音波振動素子に与える駆動信号を生成する局所空間拡声プログラム。
- コンピュータが読み取り可能な記録媒体で構成され、請求項7記載の局所空間拡声プログラムを記録した記録媒体。
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