【０００１】
【発明が属する技術分野】
本発明は、耐熱性、耐荷重能及び焼付き潤滑寿命に優れたグリース組成物に関し、詳しくは、耐熱性、耐荷重能、耐水性及び耐久性が要求される製鉄用機械、建設用機械、及び自動車等の過酷な荷重のかかる回転、摺動機構に係る潤滑個所に使用されるグリース組成物並びにそれを用いた高性能な転がり軸受に関する。
【０００２】
【従来の技術】
近年の機械技術の進歩に伴い、機械装置は小型軽量化・高速回転化の傾向が著しい。そのため、ベアリングやギヤー等の機械部分は従来にも増して、高温化の傾向にある。一方、最近の省資源化・省力化の要望から、機械装置はメンテナンスフリー化が進展している。そのため、これら機械装置に使用されるグリースも従来にも増して、高温に対する耐熱性・長寿命性が要求されている。これらの機械装置の中でも、圧延機のワークロール、建設機械、自動車ホイールベアリング等は常に水分と接触しながら稼動しているため、高い耐水性、耐荷重能及び耐久性が要求される。
【０００３】
現在、高温用グリースとしては、Ｃａ、Ａｌ及びＬｉコンプレックスの金属石けん系のものや、ポリウレア系、テレフタラメート及びＰＴＦＥ等の有機系、及びベントナイト等の無機系のもの等がある。しかし、これらのグリースについては、それぞれ短所がある。例えば、金属石けん系のコンプレックスグリースは、多量の水分を含有すると、グリース構造の維持ができない。また、ポリウレア系のグリースでは、硬化現象が起こる。テレフタラメートでは油分離が大きく、ベントナイトでは潤滑性、防錆性が悪い等の欠点がある。更に、ウレアグリース等は、それ自体では防錆性に乏しく、防錆添加剤を添加する必要がある。
【０００４】
また、特公平５−８７６０号公報に開示される、耐水性、防錆性、耐熱性及び耐荷重能を満たすグリースとして、炭酸カルシウムを含有するカルシウム・スルフォネート・コンプレックスを増ちょう剤として含むグリースが知られている（特許文献１）。しかし、従来より使用されているカルシウム・スルフォネート・コンプレックスグリースは、基油として鉱油を使用しており、高温での耐熱性や焼付き潤滑耐久性に欠けるという問題点があった。
【０００５】
尚、グリース用の耐熱性に優れた基油としては、ポリフェニルエーテル油、シリコーン油、フッ素油等が知られているが、これらのポリフェニルエーテル油、シリコーン油、フッ素油は、非常に高価であり、特にシリコーン油やフッ素油は、一般的に潤滑性が悪い。
【０００６】
【特許文献１】
特公平５−８７６０号公報
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、耐熱性、耐荷重能及び焼付き潤滑寿命に優れたグリース組成物を提供することにある。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究した結果、カルシウム・スルフォネート・コンプレックスグリースの耐水性、防錆性、耐熱性及び耐加重能に優れた性能を更に向上させるべく、該コンプレックスと特定の合成油からなる基油と組み合わせたグリース組成物が、格段に良好な性能を有しており、前記目的を達成し得ることの知見を得た。
【０００９】
本発明は、前記知見に基づきなされたもので、基油及び増ちょう剤を少なくとも含有するグリース組成物であって、前記基油が、芳香族エステル油又はチオエーテル油の少なくとも一種であり、前記増ちょう剤が、カルシウム・スルフォネート・コンプレックスであることを特徴とするグリース組成物を提供するものである。本発明のグリース組成物は、かかる構成からなるため、耐熱性、耐荷重能及び焼付き潤滑寿命に優れた効果が得られる。
【００１０】
また、本発明は、前記グリース組成物を封入したことを特徴とする転がり軸受を提供するものである。本発明の転がり軸受は、かかる構成からなるため、耐熱性、耐荷重能、耐水性及び耐久性を有する高性能なものである。
【００１１】
【発明の実施の形態】
〔グリース組成物〕
以下、本発明のグリース組成物について、その好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【００１２】
本発明のグリース組成物に使用される増ちょう剤は、カルシウム・スルフォネート・コンプレックスである。かかるカルシウム・スルフォネート・コンプレックスは、カルシウム・スルフォネートを必須成分とし、該カルシウム・スルフォネートに、無機塩又は有機塩（カルシウム塩等）を組み合わせてなるものである。カルシウム・スルフォネート・コンプレックスは、具体的には、これらの複数の成分の錯体ないし複合体等からなるものである。
【００１３】
増ちょう剤としてのカルシウム・スルフォネート・コンプレックスについて、その必須成分であるカルシウム・スルフォネートとともに組み合わせて使用される成分としては、（ｉ）炭酸カルシウム、（ｉｉ）カルシウム・ジベヘネート、カルシウム・ジステアレート、カルシウム・ジヒドロキシステアレート等の高級脂肪酸カルシウム塩、（ｉｉｉ）酢酸カルシウム塩等の低級脂肪酸カルシウム塩、（ｉｖ）ホウ酸カルシウム塩等が挙げられ、適宜選択して使用される。
【００１４】
このカルシウム・スルフォネート・コンプレックスとしては、中でも、製造工程が容易で工業的に安価である点から、カルシウム・スルフォネート及び炭酸カルシウムの２成分を少なくとも含むとともに、カルシウム・ジベヘネート、カルシウム・ジステアレート、カルシウム・ジヒドロキシステアレート、ホウ酸カルシウム及び酢酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも２種の成分（合計４成分以上）を含んでなるものが好ましい。
【００１５】
本発明のグリース組成物における増ちょう剤としてのカルシウム・スルフォネート・コンプレックスの含有量は、好ましくはグリース組成物総量の２０〜４０重量％であり、更に好ましくは２５〜３５重量％である。該含有量が２０重量％未満であると、本発明のグリース組成物を転がり軸受等の潤滑箇所に適用した際に軸受からのグリース漏洩が多くなるおそれがある。一方、該含有量が４０重量％を超えると、同様に潤滑箇所に適用した際にグリースが硬化し過ぎて十分な潤滑効果を発揮できないおそれがある。
【００１６】
また、カルシウム・スルフォネート・コンプレックスは、その塩基価が５０〜５００ｍｇ／ＫＯＨ、特に３００〜５００ｍｇ／ＫＯＨである高塩基性のものが、グリースの増ちょう効果を向上させる観点から好ましい。
【００１７】
本発明のグリース組成物に使用される基油は、芳香族エステル油又はチオエーテル油の少なくとも一種である。
そのうち、芳香族エステル油としては、特に制限されるものではないが、グリースの耐熱性、耐酸化性、耐摩擦性を向上し得る点から、トリメリット酸エステルやピロメリット酸エステル等が挙げられる。特に、耐熱性や低温での流動性の点で、トリメリット酸エステルが好ましく挙げられる。トリメリット酸エステルとしては、例えば、下記一般式（Ｉ）で表される化合物が好ましい。
【００１８】
【化１】
（式中、Ｒ１、Ｒ２及びＲ３は、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐の炭化水素基であり、これらのＲ１、Ｒ２及びＲ３は互いに同一であっても異なるものであってもよい。これらの炭化水素基としては、その炭素数が６〜１２のものが好ましく、またアルキルが好ましい。）
【００１９】
このようなトリメリット酸エステルは、市販品を用いることもできる。具体的には、「トリメリックスＴ−０８」、「同Ｎ−０８」（以上、花王株式会社製）、「アデカプルーバーＴ−４５」、「同Ｔ−９０」、「同ＰＴ−５０」、「同ＰＴ−１００」、「ＵＮＩＱＥＭＡ ＥＭＫＡＲＡＴＥ８１３０」、「同ＥＭＫＡＲＡＴＥ９１３０」、「同ＥＭＫＡＲＡＴＥ８０３０」、「同ＥＭＫＡＲＡＴＥ１３２０」（以上、旭電化工業株式会社製）等が好適に用いられる。
【００２０】
また、芳香族エステル油として用いることのできるピロメリット酸エステルとしては、例えば、下記一般式（ＩＩ）で表される化合物が挙げられる。
【００２１】
【化２】
（式中、Ｒ１、Ｒ２、Ｒ３及びＲ４は、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐の炭化水素基であり、これらのＲ１、Ｒ２及びＲ３は互いに同一であっても異なるものであってもよい。これらの炭化水素基としては、その炭素数が６〜１２のものが好ましく、またアルキルが好ましい。）
【００２２】
このようなピロメリット酸エステルは、市販品を用いることもできる。具体的には、「アデカプルーバーＬＸ−１８９１」、「同ＬＸ−１８９２」（以上、旭電化工業株式会社製）等が好適に用いられる。
【００２３】
一方、チオエーテル油としては、特に制限されるものではないが、耐熱性や潤滑特性の点で、ジフィニルスルフィドの炭化水素置換体等が好ましく挙げられる。ジフィニルスルフィドの炭化水素置換体としては、例えば、下記一般式（ＩＩＩ）もしくは（ＩＶ）で表される化合物が好ましい。
【００２４】
【化３】
【化４】
（各式中、Ｒ１及びＲ２は、炭素数が１０〜２０の炭化水素基であり、これらのＲ１及びＲ２は互いに同一であっても異なるものであってもよい。これらのＲ１及びＲ２としては、共にその炭素数が１２又は１４のものが好ましく、またアルキルが好ましい。）
【００２５】
本発明に使用される基油としての芳香族エステル油及びチオエーテル油は、各々単独で使用しても、適宜混合して使用してもよい。
【００２６】
更に、本発明のグリース組成物においては、その各種性能をさらに向上させるために、所望により種々の添加剤を混合してもよい。添加剤としては、アミン系、フェノール系、硫黄系、ジチオリン酸亜鉛等の酸化防止剤、石油スルフォン酸、Ｃａスルフォネート、ソルビタンエステル等の防錆剤、リン系、ジチオリン酸亜鉛、有機モリブテン等の極圧剤、脂肪酸、動植物油等の油性向上剤、ベンゾトリアゾール等の金属不活性化剤等、グリースで使用される添加剤を単独又は２種以上混合して用いることができる。なお、これらの添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない程度であれば特に限定されるものではない。
【００２７】
尚、本発明のグリース組成物は、防錆剤が添加されていなくても、優れた防錆性を保持することができる。これは、既述のカルシウム・スルフォネート・コンプレックスが防錆性に優れていることによる。
【００２８】
本発明のグリース組成物を製造する方法としては、予め別に製造されたカルシウム・スルフォネート・コンプレックスを基油中に加え、攪拌して、該基油中に分散される方法、及び基油中でカルシウム・スルフォネート・コンプレックスを形成させる方法がある。本発明においては、両方法何れで行ってもよいが、前者の方法よりも後者の方法の方が増ちょう剤を基油中に良好に分散させやすく、工業的に製造しやすいため好ましい。尚、添加剤は、必要に応じて所望の工程で組成物中に加えられる。
【００２９】
本発明のグリース組成物は、その用途に制限を受けるものではないが、特に、耐熱性、耐荷重能、耐水性及び耐久性が要求される製鉄用機械、建設用機械、及び自動車等の過酷な荷重のかかる回転、摺動機構に係る潤滑個所に好適に使用される。例えば、転がり軸受、特に後述する実施形態の転がり軸受等に好適に使用される。
【００３０】
〔転がり軸受〕
次に、本発明の転がり軸受について詳細に説明する。
本発明の転がり軸受は、前述したグリース組成物を封入したものである。本発明の転がり軸受は、かかる構成からなるため、その潤滑個所が、耐熱性、耐荷重能、耐水性及び耐久性が要求される場合でも有用なものである。本発明の転がり軸受における前記グリース組成物の封入箇所としては、特に制限されないが、過酷な荷重のかかる回転、摺動機構に係る潤滑個所等の所定の個所である。
【００３１】
本発明の転がり軸受としては、その一実施形態として、図１に示す玉軸受が好適に挙げられる。図１に示すように、本実施形態の玉軸受１は、内輪１０と外輪１１との間に保持器１２を介して複数の転動体である玉１３を略等間隔で回動自在に保持してなり、更に内輪１０、外輪１１及び玉１３で形成される空所Ｓに、前述したグリース組成物（図示せず）を充填し、シール１４で封止して構成されるものである。
【００３２】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明のグリース組成物を更に具体的に説明する。しかしながら、本発明はかかる実施例によって何等制限を受けるものではない。尚、特に詳述しない限り、「％」は「重量％」を意味する。
【００３３】
（実施例１）
芳香族エステル油であるトリイソノニルトリメリテート（動粘度：９１ｍｍ２／ｓ＠４０℃）（基油）３３０ｇに、塩基価４００ｍｇ／ＫＯＨの高塩基カルシウム・スルフォネート１２６．９ｇとメタノール１３．６ｇとを入れ、８０〜９５℃に加熱してメタノールを揮発させ除去した。これに、炭酸カルシウム１０ｇを入れ、コロイド状に分散させた。次いで、酢酸６．９ｇ、ベヘン酸３．１ｇ、ステアリン酸２．３ｇ、ヒドロキシステアリン酸５ｇ、及び５０％水酸化カルシウム水溶液１１．７ｇを添加し、十分攪拌した。そして、最高温度１５０℃で３０分間保持し、ミセル構造の成長、即ち結晶構造を均一化した。その後、アミン系酸化防止剤１０ｇを加え、ミル処理及び脱泡処理を行い、カルシウム・スルフォネート・コンプレックス（増ちょう剤）３０重量％を含有したグリース組成物を得た。
【００３４】
（実施例２〜５）
基油の種類を表１に示すものに変更し、増ちょう剤の量が表１に示す量となるように配合した以外の点は、実施例１と同様にしてグリース組成物を得た。
【００３５】
（比較例１〜３）
基油及び増ちょう剤の種類を表１に示す組合せに変更して増ちょう剤の量が表１に示す量となるように配合し、添加剤として更にスルホネート系防錆剤を全量の３重量％となる量添加した。それ以外の点は、実施例と同様にしてグリース組成物を得た。
【００３６】
調製した各グリース組成物の性状（基油動粘度、混和ちょう度）を表１に示す。
【００３７】
実施例１〜５及び比較例１〜３のグリース組成物について、焼付け潤滑寿命評価及びグリース漏洩評価をそれぞれ次に示す評価法に従って行った。その結果を表１に示す。
【００３８】
〔焼付き潤滑寿命評価〕
転がり軸受（日本精工社製、型番６３０５ＶＶ）の所定箇所に、グリース組成物を３．５ｇ封入し、温度１６０℃、ラジアル荷重９８Ｎ、アキシアル荷重１４７０Ｎの下、３，０００ｍｉｎ−１の回転数で回転させ、モーターが過負荷にて停止するか又は軸受温度が１０℃上昇した時点を焼付き潤滑寿命時間とした。比較例１のグリース組成物の焼付き潤滑寿命を１として、相対的な焼付き寿命比により評価した。
【００３９】
【表１】
【００４０】
表１中の基油の詳細は、次に示す通りである。
ＡＥ−１：トリイソノニルトリメリテート
ＡＤＳ：ジフェニルスルフィドのアルキル置換体
（前記式（ＩＩＩ）で表される化合物：Ｒ１及びＲ２が２，３位もしくは２，４位に置換され、共に炭素数１２，１４のアルキル基）
ＡＥ−２：前記式（Ｉ）で表されるトリメリット酸エステル
（式（Ｉ）中、Ｒ１、Ｒ２及びＲ３が炭素数７〜１０のアルキル基である混合物）
ＡＥ−３：前記式（Ｉ）で表されるトリメリット酸エステル
（式（Ｉ）中、Ｒ１、Ｒ２及びＲ３が炭素数９〜１２のアルキル基である混合物）
ＭＯ：鉱油
【００４１】
また、実施例１のグリース組成物（増ちょう剤量３０重量％）における増ちょう剤の量を、それぞれ１５重量％、２０重量％、２５重量％、３５重量％、４０重量％及び４５重量％に変更した以外は同様の組成のグリース組成物について、焼付き寿命比を測定した。このときの各グリース組成物の増ちょう剤量と焼付き寿命比との関係をプロットし、図２に示すグラフにした。
【００４２】
【発明の効果】
本発明によれば、耐熱性、耐荷重能及び焼付き潤滑寿命に優れたグリース組成物が提供される。また、本発明によれば、耐熱性、耐荷重能、耐水性及び耐久性を有する高性能な転がり軸受が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図１】図１は、本発明のグリース組成物を封入した転がり軸受の一実施形態を示す断面図である。
【図２】図２は、本発明のグリース組成物の実施例及び比較例における増ちょう剤量と焼付き寿命比との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
１…玉軸受、１０…内輪、１１…外輪、１２…保持器、１３…玉、１４…シール[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a grease composition excellent in heat resistance, load-bearing capacity and seizure lubrication life, and more specifically, heat-resistant, load-bearing, water-resistant and durable steelmaking machinery, construction machinery, The present invention also relates to a grease composition used for a lubricating portion of a rotating or sliding mechanism under a severe load such as an automobile, and a high-performance rolling bearing using the same.
[0002]
[Prior art]
With the advance of mechanical technology in recent years, there is a remarkable tendency to reduce the size and weight of a mechanical device and to rotate at a high speed. Therefore, mechanical parts such as bearings and gears tend to be hotter than ever before. On the other hand, due to recent demands for resource saving and labor saving, maintenance-free mechanical devices are progressing. For this reason, grease used in these mechanical devices is required to have higher heat resistance and longer life at high temperatures than ever before. Among these mechanical devices, work rolls of rolling mills, construction machines, automobile wheel bearings, and the like always operate while being in contact with moisture, and therefore are required to have high water resistance, load resistance and durability.
[0003]
At present, high-temperature greases include metal soaps of Ca, Al and Li complexes, organic greases such as polyurea, terephthalamate and PTFE, and inorganic greases such as bentonite. However, each of these greases has disadvantages. For example, a complex grease based on a metallic soap cannot maintain a grease structure if it contains a large amount of water. In the case of polyurea-based grease, a curing phenomenon occurs. Terephthalamate has disadvantages such as large oil separation, and bentonite has poor lubricity and rust prevention. Furthermore, urea grease and the like are poor in rust prevention by themselves, and need to add a rust prevention additive.
[0004]
Further, as a grease satisfying water resistance, rust resistance, heat resistance and load-bearing capacity disclosed in Japanese Patent Publication No. Hei 5-8760, a grease containing calcium sulfonate complex containing calcium carbonate as a thickener is known. It is known (Patent Document 1). However, conventionally used calcium sulfonate complex grease uses mineral oil as a base oil, and thus has a problem that it lacks heat resistance at high temperatures and durability against seizure lubrication.
[0005]
Polyphenyl ether oil, silicone oil, fluorine oil and the like are known as base oils having excellent heat resistance for grease, but these polyphenyl ether oils, silicone oil and fluorine oil are very expensive. In particular, silicone oil and fluorine oil generally have poor lubricity.
[0006]
[Patent Document 1]
Japanese Patent Publication No. Hei 5-8760
[Problems to be solved by the invention]
Accordingly, an object of the present invention is to provide a grease composition having excellent heat resistance, load bearing capacity, and seizure lubrication life.
[0008]
[Means for Solving the Problems]
The present inventors have made intensive studies and found that the calcium sulfonate complex grease is composed of the complex and a specific synthetic oil in order to further improve the water resistance, rust resistance, heat resistance and performance excellent in load resistance of the complex grease. It has been found that the grease composition combined with the base oil has remarkably good performance and can achieve the above object.
[0009]
The present invention has been made based on the above findings, and is a grease composition containing at least a base oil and a thickener, wherein the base oil is at least one kind of an aromatic ester oil or a thioether oil. The present invention provides a grease composition characterized in that the thickener is a calcium sulfonate complex. Since the grease composition of the present invention has such a configuration, it is possible to obtain excellent effects in heat resistance, load bearing capacity, and seizure lubrication life.
[0010]
Further, the present invention provides a rolling bearing characterized by enclosing the grease composition. Since the rolling bearing of the present invention has such a configuration, it is a high-performance bearing having heat resistance, load resistance, water resistance, and durability.
[0011]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
(Grease composition)
Hereinafter, the grease composition of the present invention will be described in detail based on preferred embodiments.
[0012]
The thickener used in the grease composition of the present invention is a calcium sulfonate complex. Such a calcium sulfonate complex contains calcium sulfonate as an essential component, and is obtained by combining the calcium sulfonate with an inorganic salt or an organic salt (such as a calcium salt). Specifically, the calcium sulfonate complex is composed of a complex or a complex of a plurality of these components.
[0013]
With respect to the calcium sulfonate complex as a thickener, the components used in combination with the calcium sulfonate, which is an essential component thereof, include (i) calcium carbonate, (ii) calcium dibehenate, calcium distearate, and calcium dihydroxy. Examples include calcium salts of higher fatty acids such as stearates, (iii) calcium salts of lower fatty acids such as calcium acetate salts, and (iv) calcium borate salts, which are appropriately selected and used.
[0014]
The calcium sulfonate complex contains at least two components, calcium sulfonate and calcium carbonate, as well as calcium dibehenate, calcium distearate, and calcium dihydroxy from the viewpoint that the production process is easy and industrially inexpensive. Those containing at least two components (a total of four or more components) selected from the group consisting of stearate, calcium borate and calcium acetate are preferred.
[0015]
The content of the calcium sulfonate complex as a thickener in the grease composition of the present invention is preferably 20 to 40% by weight, more preferably 25 to 35% by weight of the total amount of the grease composition. If the content is less than 20% by weight, grease leakage from the bearing may increase when the grease composition of the present invention is applied to a lubricating portion such as a rolling bearing. On the other hand, if the content exceeds 40% by weight, the grease may be hardened too much when applied to a lubricating part, and a sufficient lubricating effect may not be exhibited.
[0016]
The calcium sulfonate complex is preferably a highly basic one having a base number of 50 to 500 mg / KOH, particularly 300 to 500 mg / KOH, from the viewpoint of improving the thickening effect of grease.
[0017]
The base oil used in the grease composition of the present invention is at least one of an aromatic ester oil and a thioether oil.
Among them, the aromatic ester oil is not particularly limited, but from the viewpoint of improving the heat resistance, oxidation resistance, and friction resistance of the grease, trimellitic acid esters and pyromellitic acid esters are exemplified. . In particular, trimellitic acid esters are preferred from the viewpoint of heat resistance and fluidity at low temperatures. As the trimellitate, for example, a compound represented by the following general formula (I) is preferable.
[0018]
Embedded image
[0019]
As such a trimellitate, a commercially available product can be used. Specifically, “Trimelix T-08”, “T-08” (above, manufactured by Kao Corporation), “Adeka Prover T-45”, “T-90”, “PT-50” , "PT-100", "UNIQEMA EMKARATE 8130", "EMKRATE 9130", "EMKARATE8030", "EMKARATE1320" (all manufactured by Asahi Denka Kogyo Co., Ltd.) and the like.
[0020]
Examples of the pyromellitic acid ester that can be used as the aromatic ester oil include a compound represented by the following general formula (II).
[0021]
Embedded image
(Wherein R 1 , R 2 , R 3 and R 4 are a saturated or unsaturated linear or branched hydrocarbon group, and even if these R 1 , R 2 and R 3 are the same as each other, These hydrocarbon groups are preferably those having 6 to 12 carbon atoms, and preferably alkyl.)
[0022]
As such a pyromellitic acid ester, a commercially available product can also be used. Specifically, “ADEKA PROVER LX-1891” and “LX-1892” (all manufactured by Asahi Denka Kogyo KK) and the like are preferably used.
[0023]
On the other hand, the thioether oil is not particularly limited, but is preferably a hydrocarbon-substituted difinyl sulfide in terms of heat resistance and lubricating properties. As the hydrocarbon-substituted product of difinyl sulfide, for example, a compound represented by the following general formula (III) or (IV) is preferable.
[0024]
Embedded image
Embedded image
(In each formula, R 1 and R 2 are a hydrocarbon group having 10 to 20 carbon atoms, and R 1 and R 2 may be the same or different from each other. Both 1 and R 2 are preferably those having 12 or 14 carbon atoms, and preferably alkyl.)
[0025]
The aromatic ester oil and the thioether oil as the base oil used in the present invention may be used alone or in an appropriate mixture.
[0026]
Furthermore, in the grease composition of the present invention, various additives may be mixed as desired in order to further improve the various performances. Examples of the additives include antioxidants such as amine-based, phenol-based, sulfur-based, and zinc dithiophosphates; rust inhibitors such as petroleum sulfonic acid, Ca sulfonate, and sorbitan esters; and phosphorous-based, zinc dithiophosphate, and organic molybdenum. Additives used in greases, such as pressure agents, fatty acids, oiliness improvers such as animal and vegetable oils, and metal deactivators such as benzotriazole, can be used alone or in combination of two or more. In addition, the addition amount of these additives is not particularly limited as long as the object of the present invention is not impaired.
[0027]
In addition, the grease composition of the present invention can maintain excellent rust prevention even if a rust preventive is not added. This is because the calcium sulfonate complex described above is excellent in rust prevention.
[0028]
As a method for producing the grease composition of the present invention, a calcium sulfonate complex separately prepared in advance is added to a base oil, and the mixture is stirred and dispersed in the base oil. -There is a method of forming a sulfonate complex. In the present invention, both methods may be used. However, the latter method is preferable to the former method because the thickener is easily dispersed in the base oil and the industrial production is easy. In addition, an additive is added to a composition by a desired process as needed.
[0029]
Although the grease composition of the present invention is not limited in its use, it is particularly required for heat-resistant, load-bearing, water-resistant, and durable steelmaking machines, construction machines, and automobiles. It is suitable for use in lubricating parts related to rotation and sliding mechanisms where a heavy load is applied. For example, it is suitably used for a rolling bearing, particularly a rolling bearing of an embodiment to be described later.
[0030]
[Rolling bearing]
Next, the rolling bearing of the present invention will be described in detail.
The rolling bearing of the present invention has the above-described grease composition sealed therein. Since the rolling bearing of the present invention has such a configuration, the lubricating portion is useful even when heat resistance, load resistance, water resistance and durability are required. The place where the grease composition is filled in the rolling bearing of the present invention is not particularly limited, but is a predetermined place such as a lubricated place related to a rotation and a sliding mechanism under a severe load.
[0031]
As an embodiment of the rolling bearing of the present invention, a ball bearing shown in FIG. 1 is preferably exemplified. As shown in FIG. 1, the ball bearing 1 of the present embodiment holds a plurality of balls 13, which are rolling elements, between an inner ring 10 and an outer ring 11 via a retainer 12 so as to be rotatable at substantially equal intervals. Further, a space S formed by the inner ring 10, the outer ring 11, and the balls 13 is filled with the above-described grease composition (not shown), and sealed with a seal 14.
[0032]
【Example】
Next, the grease composition of the present invention will be described more specifically with reference to examples. However, the present invention is not at all limited by such embodiments. Unless otherwise specified, “%” means “% by weight”.
[0033]
(Example 1)
To 33 g of an aromatic ester oil, triisononyl trimellitate (kinematic viscosity: 91 mm 2 / s @ 40 ° C.) (base oil), 126.9 g of a high base calcium sulfonate having a base number of 400 mg / KOH and 13.6 g of methanol And heated to 80 to 95 ° C. to volatilize and remove methanol. 10 g of calcium carbonate was added thereto and dispersed in a colloidal state. Next, 6.9 g of acetic acid, 3.1 g of behenic acid, 2.3 g of stearic acid, 5 g of hydroxystearic acid, and 11.7 g of a 50% calcium hydroxide aqueous solution were added, and the mixture was sufficiently stirred. Then, the temperature was maintained at a maximum temperature of 150 ° C. for 30 minutes to grow the micelle structure, that is, to make the crystal structure uniform. Thereafter, 10 g of an amine-based antioxidant was added, milling and defoaming were performed to obtain a grease composition containing 30% by weight of a calcium sulfonate complex (thickener).
[0034]
(Examples 2 to 5)
A grease composition was obtained in the same manner as in Example 1 except that the type of the base oil was changed to that shown in Table 1 and the thickener was blended so as to have the amount shown in Table 1.
[0035]
(Comparative Examples 1 to 3)
The types of the base oil and the thickener were changed to the combinations shown in Table 1 and blended so that the amount of the thickener became the amount shown in Table 1, and a sulfonate-based rust inhibitor as an additive was added in an amount of 3% by weight. %. Otherwise, a grease composition was obtained in the same manner as in the example.
[0036]
Table 1 shows the properties (base oil kinematic viscosity and mixing consistency) of the prepared grease compositions.
[0037]
The grease compositions of Examples 1 to 5 and Comparative Examples 1 to 3 were evaluated for baking lubrication life and grease leakage in accordance with the following evaluation methods. Table 1 shows the results.
[0038]
[Evaluation of seizure lubrication life]
3.5 g of the grease composition is sealed in a predetermined portion of a rolling bearing (manufactured by Nippon Seiko Co., Ltd., Model No. 6305VV), and rotated at a rotation speed of 3,000 min-1 under a temperature of 160 ° C., a radial load of 98 N and an axial load of 1470 N. Then, the time when the motor stopped due to overload or the bearing temperature rose by 10 ° C. was defined as the seizure lubrication life time. With the seizure lubrication life of the grease composition of Comparative Example 1 set to 1, the grease composition was evaluated by a relative seizure life ratio.
[0039]
[Table 1]
[0040]
Details of the base oil in Table 1 are as follows.
AE-1: triisononyl trimellitate ADS: alkyl-substituted diphenyl sulfide (compound represented by the formula (III): R 1 and R 2 are substituted at the 2,3 or 2,4 position, An alkyl group having 12 or 14 carbon atoms)
AE-2: trimellitic acid ester represented by the formula (I) (in the formula (I), a mixture in which R 1 , R 2 and R 3 are an alkyl group having 7 to 10 carbon atoms)
AE-3: trimellitic acid ester represented by the formula (I) (a mixture in which R 1 , R 2 and R 3 in the formula (I) are an alkyl group having 9 to 12 carbon atoms)
MO: Mineral oil
The amount of the thickener in the grease composition of Example 1 (thickener amount: 30% by weight) was 15%, 20%, 25%, 35%, 40%, and 45% by weight, respectively. The seizure life ratio was measured for a grease composition having the same composition except that the grease composition was changed. At this time, the relationship between the thickener amount of each grease composition and the seizure life ratio was plotted, and the graph is shown in FIG.
[0042]
【The invention's effect】
ADVANTAGE OF THE INVENTION According to this invention, the grease composition excellent in heat resistance, load carrying capacity, and seizure lubrication life is provided. Further, according to the present invention, a high-performance rolling bearing having heat resistance, load bearing capacity, water resistance and durability is provided.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a cross-sectional view showing one embodiment of a rolling bearing enclosing a grease composition of the present invention.
FIG. 2 is a graph showing the relationship between the amount of a thickener and the seizure life ratio in Examples and Comparative Examples of the grease composition of the present invention.
[Explanation of symbols]
DESCRIPTION OF SYMBOLS 1 ... Ball bearing, 10 ... Inner ring, 11 ... Outer ring, 12 ... Cage, 13 ... Ball, 14 ... Seal
