JP2004342450A - 高周波誘導加熱装置及び半導体製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】誘導加熱方式において、これまで困難であった被加熱物の温度分布、温度勾配を容易に形成することを可能にする。
【解決手段】被加熱物を誘導加熱する複数のゾーン分割されたワークコイル40a、40bと、ワークコイルに電力を供給する高周波誘導加熱用電源20と、高周波誘導加熱用電源からワークコイルに供給する電力を各々独立に制御する制御手段30とを備える。制御手段30は、ワークコイルに対応して設けられる複数のインピーダンス整合回路32a、32bと、高周波誘導加熱用電源20からの電力を、各ワークコイルに対応する各整合回路を介してワークコイル40a、40bに時分割で供給する時分割制御手段31とを有する。時分割制御手段31は、複数の整合回路32a、32bを切替える整合回路切替器35と、高周波誘導加熱用電源20の周波数と同期して整合回路切替器35を切替える時分割発振制御回路34とから構成されている。
【選択図】 図1
【解決手段】被加熱物を誘導加熱する複数のゾーン分割されたワークコイル40a、40bと、ワークコイルに電力を供給する高周波誘導加熱用電源20と、高周波誘導加熱用電源からワークコイルに供給する電力を各々独立に制御する制御手段30とを備える。制御手段30は、ワークコイルに対応して設けられる複数のインピーダンス整合回路32a、32bと、高周波誘導加熱用電源20からの電力を、各ワークコイルに対応する各整合回路を介してワークコイル40a、40bに時分割で供給する時分割制御手段31とを有する。時分割制御手段31は、複数の整合回路32a、32bを切替える整合回路切替器35と、高周波誘導加熱用電源20の周波数と同期して整合回路切替器35を切替える時分割発振制御回路34とから構成されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波誘導加熱方式で被加熱物を加熱する高周波誘導加熱装置、及び高周波誘導加熱装置を具備した半導体製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高周波誘導加熱方式は、高周波変換した高周波誘導電力を加熱コイル(ワークコイル)に供給して、このワークコイルで作られる高周波の磁束により誘導される渦電流(誘導電流)によって被加熱物を加熱したり、加熱された被加熱物を介して物体を加熱する方式である。
高周波誘導加熱の特徴として、被加熱物が導電体であれば、そこに生じた渦電流のジュール損により発熱するので高温の加熱まで扱うことが可能となる。
このような高周波誘導加熱方式は、例えば、コールドウォール炉などのエピタキシャル成長装置(例えば、特許文献1参照)、垂直ブリッジマン法などの結晶引上装置(例えば、特許文献2参照)、金属管突合せ接合装置(例えば、特許文献3参照)、あるいは材料試験装置などの各種加熱源に採用されている。
【0003】
図6は、従来例の高周波誘導加熱装置の構成図である。この高周波誘導加熱装置は、商用電源を電力制御回路1に入力して高周波発振回路2から高周波電力を出力する。出力された高周波電力は、マッチング回路(インピーダンス整合回路)3を経由してワークコイル4に供給され、供給された高周波電力にてワークコイル4近傍の被加熱物(図示せず)に誘導による自己発熱を起こし、被加熱物を加熱するように構成されている。
【0004】
通常、このような高周波誘導加熱装置にあっては、被加熱物を均一加熱したり、被加熱物に温度勾配を設けたりすること、すなわち、被加熱物をゾーン毎に加熱することが要請される。しかし、ワークコイルに供給される電力は、ワークコイルに対して一様に供給されているので、ワークコイルによって被加熱物をゾーン毎に温度差を設けて加熱することは難しい。このため、種々の方法が試みられている。
【0005】
(1)ワークコイル4の巻線ピッチを変えることにより磁束密度分布を調整し、この密度分布の差により被加熱物のゾーン毎に誘導電流密度を変えることによって、温度差が生じるように調整している。
【0006】
(2)また、被加熱物の加熱部分に対するワークコイルからの水平方向、または垂直方向の距離を変えることによって、被加熱物の温度分布を調整している。例えば、エピタキシャル成長装置のように、ウェーハを保持するサセプタを誘導加熱する場合、図7に示すようなコイルユニット5を形成する。コイルユニット5は、渦巻き状に巻回したワークコイル4を支持円板6上に浮かして支持し、ゾーン毎にサセプタ10に対する垂直方向の距離を変えて支持している。このように、サセプタ10とワークコイル4との垂直方向の距離をサセプタ10の径方向で変えることにより、温度安定時にサセプタ10を均一加熱するようにしている。
【0007】
(3)また、ワークコイルの前後に補助ヒータを設けることによって、被加熱物の温度勾配を調整している。例えば、結晶引上装置のように、るつぼを誘導加熱する場合では、加熱前後に急速な温度変化をすると、るつぼや引上結晶等の被加熱物が割れてしまう等の問題が生じる。そこで、図8に示すように、ワークコイル4の上下に、熱制御性が容易な抵抗加熱式のヒータ等から構成された上部補助ヒータ9及び下部補助ヒータ8を用意して、下部補助ヒータ8で被加熱物を予備加熱し、上部補助ヒータ9で後加熱するようになっている。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−151314号公報
【特許文献2】
特開平10−251090号公報
【特許文献3】
特開平11−309588号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来技術では次のような問題があった。
(1)巻線ピッチで誘導電流密度を調整する方法では、大幅な調整ができないため、温度勾配についての調整範囲が狭く、被加熱物に温度差の大きい連続した温度勾配が得るのが難しかった。また、同じ理由から、被加熱物に温度分布の均一性を得るのが難しかった。
【0010】
(2)加熱ヒータによる被加熱物の温度勾配や温度分布を補正するために、加熱コイルと被加熱物間の距離を調整して温度勾配や温度分布を補正する場合は、加熱コイルと被加熱物との位置関係に制約があり、その補正にも限界があった。
また、温度安定時に均一加熱が要求される場合には、昇温時にも均一加熱が要求されることが多い。例えばサセプタ10の昇温時には、図9で示される様にサセプタ10の複数のゾーン毎、たとえば、外周部a、中央部b、内周部cの各部位で温度差が発生する。この温度差は急速に加熱しようとすると増々大きくなる。この昇温時間の長短はスループットに大きく影響する。ところが、昇温時間、即ち定常状態に達する迄の時間を短縮するため、加熱速度を大きくすると、前述した温度差のため、ウェーハの結晶間のスリップ欠陥発生や、熱応力によるサセプタ10の割れを誘発していた。
【0011】
(3)補助加熱ヒータで補正する場合は、別種のヒータを必要とするので、構造が複雑になるという問題があった。
このように従来の誘導加熱方法では、被加熱物の温度分布や温度勾配を有効に調整することができなかった。このことは、特に、大口径ウェハへの移行や、半導体の微細化が進んでいる半導体製造装置において、特に問題になっていた。
【0012】
なお、ゾーン分割した複数の加熱コイルを複数の高周波誘導加熱用電源を使って加熱に供する方法も考えられている。この方法では、被加熱物の温度低下を防ぐために、各加熱コイルを近接配置するが、各加熱コイル間で磁束がお互いに干渉しあって装置全体の運転制御が不安定になるため、各加熱コイル間に磁気シールド板を配置するなどの対策が必要であった。また、各コイル間や磁気シールド板から熱が逃げるとともに不連続な磁束分布が生じるため、加熱温度を高精度に維持することは困難であった。したがって、加熱コイル間の相互干渉の除去や、コスト面で問題が多く実用的ではなかった。
【0013】
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解消して、誘導加熱方式において、これまで困難であった被加熱物の温度分布、温度勾配を容易に補正することが可能な高周波誘導加熱装置及び半導体製造装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、被加熱物を誘導加熱するゾーン分割された複数の加熱コイルと、複数の加熱コイルに電力を供給する高周波誘導加熱用電源と、前記高周波誘導加熱用電源から複数の加熱コイルに供給する電力を各々独立に制御する制御手段とを備え、前記制御手段が、複数の加熱コイルに対応して設けられる複数のインピーダンス整合回路と、前記高周波誘導加熱用電源からの電力を各加熱コイルに対応する各インピーダンス整合回路を介して各加熱コイルに時分割で供給する時分割制御手段とを有する高周波誘導加熱装置である。
【0015】
被加熱物はゾーン分割された複数の加熱コイルにより加熱することができるので、補助ヒータを用いることなく、被加熱物に所望の温度勾配を形成でき、被加熱物の温度分布を制御することができる。また、複数の加熱コイルに供給する電力を制御手段によって各々独立に制御するので、被加熱物に所望の温度勾配を容易に形成でき、被加熱物の温度分布を均一に制御することができる。また、時分割制御手段を用いたので高周波誘導加熱用電源が1台ですむ。また、複数の加熱コイルに供給する電力を時分割制御手段を用いて時分割で制御するようにしたので、高周波がゾーン間で相互干渉を起こさず、加熱コイルの磁束による反発、振動等が生じず、複数の加熱コイル間で正常な誘導加熱ができる。また、各加熱コイルに各々インピーダンス整合回路を設けるようにしたので、1台の高周波誘導加熱用電源からでも各加熱コイルに電力を有効に供給できる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、前記時分割制御手段は、複数の整合回路を切替える整合回路切替器と、前記高周波誘導加熱用電源の周波数と同期して前記整合回路切替器を切替える時分割発振制御回路とから構成されている高周波誘導加熱装置である。
時分割発振制御回路を用いて、高周波誘導加熱用電源の周波数と同期して整合回路切替器を切替えるようにしたので、異常発振防止と電力の供給タイミングを合せることが可能となり、各加熱コイルに供給する電力を厳密に制御することができる。
【0017】
第3の発明は、第1又は第2の発明に記載の高周波誘導加熱装置を具備する半導体製造装置である。
半導体製造装置に第1〜第2の発明の高周波誘導加熱装置を具備させると、被加熱物を介して半導体に所望の温度勾配を形成できたり、半導体の温度分布を均一に制御したりすることができるので、特性の優れた半導体を製造することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の高周波誘導加熱装置及びそれを用いた半導体製造装置の実施の形態を説明する。
【0019】
図1は、実施の形態による高周波誘導加熱装置の構成図である。
高周波誘導加熱装置は、加熱ヒータとしてのワークコイル40に電力を供給して、このワークコイル40で作られる高周波の磁束により誘導される渦電流(誘導電流)によって被加熱物(図示せず)を加熱したり、加熱された被加熱物を介して物体(図示せず)を加熱するようになっている。ワークコイル40は、複数のワークコイル40a、40bにゾーン分割されている。ゾーン分割されたワークコイル40a、40bは、被加熱物の近傍であって、被加熱物と対向する複数のゾーン、例えば2〜3個に分割される各ゾーンに各々設けられる。
被加熱物は、例えばサセプタやるつぼなどであり、導電体または誘電体で構成される。また、ワークコイルは、銅などの電気抵抗の低い導電線で構成される。
上述したワークコイル40のゾーン分割は、被加熱物上のゾーンに要求される均熱場や傾斜温度場を与えるために行われる。例えば、コールドウォール炉にあっては、半導体基板を保持するサセプタに対向する円形ゾーンが同心円状にゾーン分割される。るつぼを用いる結晶引上装置にあっては、るつぼの外周を囲むホットゾーンが軸方向に分割される。金属管突合せ接合装置にあっては、金属管の突合せ部を囲む円筒ゾーンが軸方向に分割される。
【0020】
高周波誘導加熱装置は、上述した被加熱物を誘導加熱する複数のワークコイル40a、40bと、複数のワークコイルに電力を供給する高周波誘導加熱用電源20と、高周波誘導加熱用電源20から複数のワークコイル40a、40bに供給する高周波電力を各々独立に制御する制御手段30とから構成される。
【0021】
この高周波誘導加熱装置を構成する高周波誘導加熱用電源20に商用電源が入力される。高周波誘導加熱用電源20は、電力制御回路21と高周波発振回路22とから構成される。電力制御回路は、SCRを通して商用電源の3相全波整流を行い、この3相全波整流を交−直流(AC−DC)変換回路を構成するコイル及びコンデンサを用いて直流に変換する。変換された直流電力は高周波発振回路22に加えられて高周波電力を出力する。この高周波発振回路22は、例えばIGBT(Inverted Gate Bipolar Transistor)等の高速スイッチング素子で構成される。
【0022】
高周波誘導加熱用電源20の高周波発振回路22から出力された高周波電力は、制御手段30に供給される。制御手段30は、マッチング回路(インピーダンス整合回路)32と時分割制御手段31とを備える。整合回路32は、複数の整合回路32a、32bから構成され、複数のワークコイル40a、40bに対応して設けられる。各、整合回路32は、1つのワークコイル40とのインピーダンス調整を行い、高周波電力が有効に伝達されるように整合回路32に内蔵されるコイルとコンデンサにて交流の共振作用を起こさせている。
【0023】
時分割制御手段31は、高周波誘導加熱用電源20からの高周波電力を、各ワークコイル40a、40bに対応する各整合回路32a、32bを介して各ワークコイル40a、40bに時分割で供給するように構成される。
時分割制御手段31は、複数の整合回路32a、32bを切替える整合回路切替器35と、高周波誘導加熱用電源20の周波数と同期して整合回路切替器35を切替える時分割発振制御回路34とから構成されている。
整合回路切替器35は、真空リレー等から構成されて、時分割発生制御回路34から出力される切替信号によって、高周波発振回路22の出力を複数のワークコイル40a、40bのいずれかに切替え接続する。この切替え接続により、図2に示すように、各ゾーンに分割されたワークコイル40a、40bに、各整合回路32a、32bを介して時分割で高周波電力が供給されるようになっている。整合回路切替器35を切替える際、高周波発振回路22の出力制御と同期を取り、この同期信号によって高周波発振回路22と整合回路切替器35とを同期、連動させ、時分割発振制御回路34によりワークコイル40a、40bに接続された各整合回路32a、32bに、或る時間間隔で高周波発振回路22の出力を供給する。高周波発振回路22と同期を取る理由は、異常発振防止と電力供給のタイミング合わせのためである。
【0024】
各ワークコイル40a、40bへの切替のタイミングは、予め実験などで決定しておいてもよいが、例えば各ワークコイル40a、40bで加熱されている被加熱物のゾーン分割コイルに対応する各ゾーンの温度を監視(温度調節等)して、ゾーン数をある時間、例えば1秒間を100で割り、それを単位時間として、それぞれの出力配分(全出力を100%とし、それを比例配分)×単位時間で切り替えるようにすることが好ましい。ここでは、高周波発振回路22の発振周波数との兼ね合いがあるので、負荷による時間計算の最適化が必要となる。通常、この最適化は手動にて行う。また、図2に示すように、各ワークコイル40a、40bへの電力の切替えには、切替時間(最小時間単位)t’を設けるようにする。
各ワークコイル40a、40bへの電力供給には、切替時間(最小時間単位)t’の待ち時間があるので、お互いのワークコイル40a、40bは同時に発振することがない。また切替によって電力を供給されず発振しない側のワークコイル40も、整合回路32が接続された状態となって、電気的には開放にならないので、異常な発振はしない。
【0025】
上述したような構成において、商用電源を高周波誘導加熱用電源20に入力し、電力制御回路21を通して、高周波発振回路22から高周波電力を出力する。出力された高周波電力は、時分割発振制御回路34からの高周波発振回路22の出力と同期した切替え信号によって、整合回路切替器35を切替え、図2に示すように、複数のワークコイル40a、40bに高周波電力を時分割して供給する。これにより、整合回路32a、32bを経由して各ワークコイル40a、40bに高周波電力が供給され、供給された高周波電力にてワークコイル40近傍の被加熱物に誘導による自己発熱が起こり、被加熱物は加熱される。
【0026】
ところでゾーン分割したワークコイル40a、40bに1台の高周波誘導電源を接続し、1台の高周波誘導電源から各ワークコイルに高周波電力を同時に加えると、ワークコイルのマッチング条件がゾーン毎に異なるため、1台の高周波誘導電源からでは各ワークコイルに高周波電力を加えられず、高周波誘導加熱用電源が複数個必要になる。また高周波電力を同時に各ワークコイルに加えると、高周波電力がゾーン間で相互干渉を起こしてしまい、ワークコイルの磁束による反発、振動等が生じて、被加熱物に正常な誘導加熱が出来ない。
【0027】
しかし、実施の形態では、1台の高周波誘導電源でも、ゾーン分割されたワークコイル40a、40b毎にマッチング条件の合致した整合回路32a、32bを設けているので、1台の高周波誘導加熱用電源20でも各ワークコイル40a、40bに有効に高周波電力を供給することができる。また、1台の高周波誘導加熱用電源20から高周波電力をゾーン分割された各ワークコイル40a、40b毎に時分割で加えているので、ゾーン間で高周波電力が同時に加わることがなく、高周波電力がゾーン間で相互干渉を起こすことがなく、したがって、ワークコイル40の磁束による反発、振動等も生じず、被加熱物に正常な誘導加熱が出来るようになる。
【0028】
本実施の形態によれば、高周波電力がゾーン分割されたワークコイルごとに時分割で供給されるので、ゾーン分割したワークコイル近傍に対向する被加熱物のゾーン対応箇所ごとに必要な高周波電力を個別に供給することができる。したがって、従来の誘導加熱方式では不可能であった被加熱物に所望の温度勾配を形成でき、また被加熱物の面内温度分布を均一化できる。
【0029】
また、ゾーン分割コイルに供給される電力を時分割制御で調整するので、巻線ピッチで誘導電流密度を調整する方法と比べて、各ゾーン毎での大幅な温度コントロールが可能となり、温度勾配についての調整範囲が広く、被加熱物に温度差の大きい連続した温度勾配を得ることができ、また、同じ理由から、被加熱物に均一な温度分布を得ることができる。
【0030】
また、時分割によるゾーン分割制御により被加熱物に形成する傾斜温度場や均熱温度場を支配的に形成することができるので、加熱コイルと被加熱物間の距離を調整して温度勾配や温度分布を補正することが必要であっても、加熱コイルと被加熱物との位置関係の制約が緩くなり、加熱調整の容易な時分割によるゾーン分割制御にウェイトを移すことができる。
【0031】
また、各ワークコイルに高周波誘導加熱用電源とマッチングの取れた整合回路を各々設けるようにしたので、1台の高周波誘導加熱用電源であっても、各ワークコイルとインピーダンスをマッチングさせることが可能となり、1つの被加熱物を複数の分割された被加熱物のゾーン対応箇所を持つ複数のワークコイルに、高周波電力を有効に伝達させることができる。
【0032】
また、被加熱物の昇温途中でも、各ゾーン分割コイルに供給される電力を時時分割制御するようにすれば、被加熱物各部位での温度上昇時の温度差も解消することができ、昇温時にも要求される被加熱物の均一加熱を実現することができる。したがって、加熱速度を大きくしても、ウェーハ温度差に起因するウェーハの結晶間のスリップ欠陥発生や、熱応力によるサセプタの割れの誘発を有効に防止できる。
また、補助ヒータで補正する場合であっても、別種のヒータを用いず、同一種類のワークコイルを用いて、これを分割して時分割制御するようにすれば足りるので、構造が簡素になる。
【0033】
このように実施の形態による誘導加熱方法では、被加熱物の温度分布や温度勾配を任意に調整することができるので、大口径ウェーハへの移行や、半導体の微細化が進んでいる半導体製造装置において、特に有用である。
【0034】
また、実施の形態では、ゾーン分割した複数のワークコイルを1台の高周波誘導加熱用電源を使って時分割で制御するようにしたので、高周波がゾーン間で相互干渉を起こさず、ワークコイルの磁束による反発、振動等が生じないので、複数のワークコイル間で正常な誘導加熱ができる。特に、時分割制御による電力の切替えに、切替時間(最小時間単位)t’を設けると、ゾーン分割コイル間の相互干渉をより有効に除去できる。したがって、各ワークコイル間に磁気シールド板を配置するなどの対策が不要になり、構成の簡素化を図ることができる。また、各磁気シールド板から熱が逃げたり、磁気シールド板により不連続な磁束分布が生じることもなく、ゾーン毎に被加熱物の加熱温度を高精度に維持することができる。その結果、コスト面でも安価に構成でき、実用的である。
【0035】
また、複数のゾーン分割コイルを1台の高周波誘導加熱用電源を使って加熱するので、複数のワークコイルを複数の高周波誘導加熱用電源を使って加熱する必要がなく、この観点からも、コスト面で有利で実用的である。
【0036】
また、時分割発振制御回路を用いて、高周波誘導加熱用電源の周波数と同期して整合回路切替器を切替えるようにしたので、異常発振防止と電力の供給タイミングを合せることが可能となり、各ワークコイルに供給する電力を厳密に制御することができ、加熱温度を高精度に維持することができる。
また、実施の形態の高周波誘導加熱装置は、傾斜温度場(水平、垂直)や均熱場を任意に作ることが可能であり、したがって傾斜温度場を利用した結晶成長に適用可能である。このような高周波誘導加熱装置を適用できる装置としては、半導体製造装置、突合せ接合装置等がある。また半導体製造装置としては、コールドウォール炉を備えたエピタキシャル成長装置や、垂直ブリッジマン法を用いる結晶引上装置等がある。
【0037】
特に、半導体製造装置に上述した高周波誘導加熱装置を具備させると、被加熱物を介して半導体融液に所望の温度勾配を形成できたり、半導体基板の温度分布を均一に制御したりすることができるので、従来の半導体製造装置では実現できなかった、特性の優れた半導体を製造することができる。
【0038】
なお、本実施の形態では、高周波誘導加熱用電源から複数のワークコイルに供給する電力を各々独立に制御する制御手段として、電力の時分割制御、すわなち時分割比例配分制御を行っている。しかし、本発明は、時分割制御のみに限定されない。時分割で制御する方法以外に、時分割時間を固定(ゾーン共通)にしておき、各ゾーンで電力の大きさを可変する方法もある。また、前述した時分割比例配分に、この電力の大きさを可変するという方法を加えることも可能である。
また、実施の形態では、ワークコイルの分割数を2〜3個としたが、これに限定されず、必要ゾーン長さにより適正な分割数とすることができる。
【0039】
また、前述したように、被加熱物のゾーン対応箇所ごとに温度を検出する手段を設けて、温度調節計によるフィードバック制御をゾーンごとに行うことも可能である。また、本発明の高周波誘導加熱装置は、上述した半導体製造装置の他、金属の溶解、銅板などの熱加工、機械部品の焼入れなど鉄鋼・金属・機械加工の分野にも適用できる。また、電磁調理器や、電磁炊飯器などにも広く適用可能である。
【0040】
【実施例】
次に本発明を適用した2つの実施例について説明する。
【0041】
実施例1
縦型CVDエピタキシャル成長装置の反応室の概略を図3に示す。気密容器51の内部に円形の加熱ユニット52が設けられる。又、気密容器51の底面を気密に貫通すると共に加熱ユニット52を貫通する回転軸54を設け、回転軸54の下端部には回転駆動機構58を連結する。
回転軸54の先端に円板状のサセプタ55を設け、サセプタ55には所要数のウェーハ56が載置可能となっている。加熱ユニット52は内部にワークコイル53を有し、サセプタ55を高周波誘導加熱するようになっている。又、回転軸54の中心部を貫通して上端部が気密容器51内に突出するガスノズル57を設け、ガスノズル57より気密容器51内に反応ガスを導入する様になっている。
【0042】
前述したワークコイル53は、サセプタ55面内の温度分布の均一化のために、サセプタ55との垂直方向の距離を変更して、加熱ユニット52内に設置されている。また、ワークコイル53は、同心円状にゾーン分割された複数、例えば3つのワークコイル(それぞれドット、白抜き、斜線で表している)を有し、ワークコイル53は、上述した高周波誘導加熱用電源20に制御手段30を介して電気的に接続されている。
図4に示すように、ゾーン分割される各コイルは、例えば数回のターンで1つのゾーンを構成し、そこから電極を取り出して、独立して供給電力の制御が可能となっている。
上述したように本実施例では、サセプタとワークコイル間の距離によるゾーン加熱調整と、時分割制御によるゾーン加熱調整とを併用している。
【0043】
ウェーハ56の処理は、ウェーハ56をサセプタ55に載置し、回転駆動機構58により回転軸54を介してサセプタ55を回転させる。気密容器51内を真空引きし、またワークコイル53に高周波誘導加熱用電源20から高周波電力を供給し、サセプタ55を高周波誘導加熱する。このとき高周波誘導加熱装置の時分割制御手段31によりゾーン分割コイルを時分割で制御してサセプタ55を加熱する。サセプタ55を介してウェーハ56が加熱される。更にガスノズル57より反応ガスが供給され、ウェーハ上にエピタキシャル層が形成される。
【0044】
なお、エピタキシャル成長例としては、不純物(ドーピング)としてホスフィン(PH3)を使用するn型エピタキシャル成長、および不純物としてジボラン(B2H6)を使用するp型エピタキシャル成長がある。
ここで、成長条件を例示すれば次の通りである。
シリコンウェーハ直径 150φmm
原料ガス種 SiH4
ガス流量 500sccm
炉内圧力 常圧
被加熱物温度 1100℃
高周波電力/周波数 160kW/30kHz
エピタキシャル成長時間 1時間
【0045】
上述したサセプタ55の加熱状態は、各ゾーン分割コイルの電力供給量に影響される。従って、温度安定時は、サセプタ55が面内温度分布が均一になるようにゾーン分割コイルを時分割制御する。その結果、サセプタ55上の同心円に置かれたウェーハ毎の温度領域がゾーン分割温度制御により、膜厚を自由に制御できる。
また、温度安定時に先立つ昇温時では、昇温時におけるサセプタ面内温度の分布が均一変化するように、時分割により区切った時間(タイムスライス)を各ゾーン分割コイルに交互に割り当てる。例えば、図9に対応させた場合、立上り温度の悪いサセプタ中央ゾーン分割コイルにはタイムスライスを長く、立上り温度がやや悪いサセプタ内周ゾーン分割コイルにはタイムスライスをやや長く、立上り温度が良好なサセプタ外周ゾーン分割コイルにはタイムスライスを短く割り当てる。例えば、サセプタ内周、外周、中央と同心円状に3分割した場合、内周に1サイクル分(1msec)、外周に2サイクル分(2msec)、中央に3サイクル分(3msec)のタイムスライスを交互に与える。
また、温度安定後の降温時でも同様に時分割制御して、降温時におけるサセプタ面内温度分布も均一変化するようにする。このように複数のゾーン分割されたワークコイルへ供給される電力を独立に制御すると、昇降温過程(過渡的状態)においても、サセプタ面内全域を均一温度で変化させることも可能になり、ウェーハの熱ストレスに起因するスリップ等の欠陥も防止できる。
【0046】
上記のように、ゾーン分割コイルを時分割制御することで、サセプタ55の面内の温度差が解消される。従って、サセプタ55を介して加熱されるウェーハ56の面内の温度差が解消され、エピタキシャル成長膜の均質性、エピタキシャル処理品質が向上する。更に、昇温時のサセプタ面内の温度差が解消されるので、一層の急速加熱が可能となり、スループットの向上が図れる。
【0047】
なお、上述した実施例では、被加熱物を温度制御するために、サセプタとワークコイル間の距離によるゾーン加熱調整と、時分割制御によるゾーン加熱調整とを併用した例について説明したが、ゾーン分割制御のみで温度分布の均一化又は均一温度での変化をカバーできれば、サセプタとの垂直方向の距離は一定にして、ゾーン分割制御のみの温度制御としてもよい。
【0048】
実施例2
次に本発明の実施例2について説明する。図5は結晶引上装置の概略的な縦断面図を示す。
【0049】
結晶引上装置は、原料を収容する高融点金属である白金・イリジウム製などのるつぼ61と、るつぼ61内の原料を加熱し融解するワークコイル62と、それらを格納する圧力容器63とを備える。るつぼ61及びワークコイル62は、圧力容器63内に配置されたホットゾーンと呼ばれる円筒形の場所に設置されている。種結晶64は、図示しない引上機構により、軸65を介して回転、昇降するようになっている。
【0050】
ワークコイル62は、3つのゾーン分割コイル62a、62b、62cから構成され、図1で説明した高周波誘導加熱用電源20に制御手段30を介して電気的に接続されている。ゾーン分割コイル62a、62b、62cは、るつぼ61の軸方向に沿って複数にゾーン分割された円筒形をした各ゾーンに各々配置されて、垂直方向に温度勾配を連続的に形成するように構成される。
【0051】
例えば、結晶の素材であるLN(LiNbO3)をるつぼ61に入れ、高周波誘導加熱用のワークコイル62に時分割で高周波電力を印加したるつぼ61を加熱し、るつぼ61内の材料を溶かして融点より少し高い温度に保っておく。それに単結晶の種結晶64を浸して十分になじませたのち、所定の速度で回転させながら上方に引き上げて結晶成長を行う。なお、育成雰囲気は、不活性および酸化雰囲気で結晶育成が行われる。また、引上装置では、ワークコイルでは水平方向の温度分布制御は出来ないので、るつぼ及び、結晶を回転させて融液を攪拌、結晶から温度の放射を補助するようにしている。
【0052】
例えば、次のような条件で結晶は引上げられる。
結晶径 50φmm
結晶材料 LN(リチウムナイオベイト)
原料ガス種 O2、He、N2等
ガス流量 トータル100sccm
炉内圧力 常圧
被加熱物温度 1200℃
アフタヒータ温度 800℃
(るつぼ上方に保温のために設けたヒータ(図示略))
高周波電力 40kW/7kHz
昇温時間 4時間
冷却時間 20時間
1回の所要時間 1週間以上
【0053】
上述した引上装置においては、結晶化に必要な温度分布を縦方向に設定する必要があるが、実施例のようにゾーン分割コイルを時分割制御することにより、異なる種類の補助ヒータを用いることなしに、温度差の大きい連続した温度勾配が容易に得られる。例えば、上述した高周波電力40kW/7kHzは、次のように時分割により区切る。上、中、下と3分割した場合、上部に1サイクル分(1msec)、中部に2サイクル分(2msec)、下部に3サイクル分(3msec)のタイムスライスを交互に与える。
なお、るつぼ上方に設けるアフターヒータも誘導加熱用のワークコイルで構成することが可能であり、製造条件によってはアフターヒータを省略できる可能性もある。したがって、装置を簡素化できる。また、ゾーン分割コイルを時分割制御することにより、結晶の成長速度、不純物の濃度制御、熱履歴等も制御することができる。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、誘導加熱によって従来では困難であった所望の温度分布、又は温度勾配を被加熱物に容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態の高周波誘導加熱装置のブロック構成図である。
【図2】実施の形態による時分割制御の説明図である。
【図3】実施の形態による縦型エピタキシャル成長装置の反応室の概略図である。
【図4】実施の形態によるゾーン分割コイルLの平面図である。
【図5】実施の形態による結晶引上装置の概略的な縦断面図である。
【図6】従来例の高周波誘導加熱装置のブロック構成図である。
【図7】従来例の垂直方向に距離を変えてある加熱ユニットの説明図である。
【図8】従来例の補助ヒータの説明図、及びそれを用いた垂直方向の温度特性図である。
【図9】従来例のサセプタ面内の温度差を示す線図である。
【符号の説明】
20 高周波誘導加熱電源
30 制御手段
31 時分割制御手段
32 整合回路
32a 整合回路
32b 整合回路
40 ワークコイル(加熱コイル)
40a ワークコイル(加熱コイル)
40b ワークコイル(加熱コイル)
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波誘導加熱方式で被加熱物を加熱する高周波誘導加熱装置、及び高周波誘導加熱装置を具備した半導体製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高周波誘導加熱方式は、高周波変換した高周波誘導電力を加熱コイル(ワークコイル)に供給して、このワークコイルで作られる高周波の磁束により誘導される渦電流(誘導電流)によって被加熱物を加熱したり、加熱された被加熱物を介して物体を加熱する方式である。
高周波誘導加熱の特徴として、被加熱物が導電体であれば、そこに生じた渦電流のジュール損により発熱するので高温の加熱まで扱うことが可能となる。
このような高周波誘導加熱方式は、例えば、コールドウォール炉などのエピタキシャル成長装置(例えば、特許文献1参照)、垂直ブリッジマン法などの結晶引上装置(例えば、特許文献2参照)、金属管突合せ接合装置(例えば、特許文献3参照)、あるいは材料試験装置などの各種加熱源に採用されている。
【0003】
図6は、従来例の高周波誘導加熱装置の構成図である。この高周波誘導加熱装置は、商用電源を電力制御回路1に入力して高周波発振回路2から高周波電力を出力する。出力された高周波電力は、マッチング回路(インピーダンス整合回路)3を経由してワークコイル4に供給され、供給された高周波電力にてワークコイル4近傍の被加熱物(図示せず)に誘導による自己発熱を起こし、被加熱物を加熱するように構成されている。
【0004】
通常、このような高周波誘導加熱装置にあっては、被加熱物を均一加熱したり、被加熱物に温度勾配を設けたりすること、すなわち、被加熱物をゾーン毎に加熱することが要請される。しかし、ワークコイルに供給される電力は、ワークコイルに対して一様に供給されているので、ワークコイルによって被加熱物をゾーン毎に温度差を設けて加熱することは難しい。このため、種々の方法が試みられている。
【0005】
(1)ワークコイル4の巻線ピッチを変えることにより磁束密度分布を調整し、この密度分布の差により被加熱物のゾーン毎に誘導電流密度を変えることによって、温度差が生じるように調整している。
【0006】
(2)また、被加熱物の加熱部分に対するワークコイルからの水平方向、または垂直方向の距離を変えることによって、被加熱物の温度分布を調整している。例えば、エピタキシャル成長装置のように、ウェーハを保持するサセプタを誘導加熱する場合、図7に示すようなコイルユニット5を形成する。コイルユニット5は、渦巻き状に巻回したワークコイル4を支持円板6上に浮かして支持し、ゾーン毎にサセプタ10に対する垂直方向の距離を変えて支持している。このように、サセプタ10とワークコイル4との垂直方向の距離をサセプタ10の径方向で変えることにより、温度安定時にサセプタ10を均一加熱するようにしている。
【0007】
(3)また、ワークコイルの前後に補助ヒータを設けることによって、被加熱物の温度勾配を調整している。例えば、結晶引上装置のように、るつぼを誘導加熱する場合では、加熱前後に急速な温度変化をすると、るつぼや引上結晶等の被加熱物が割れてしまう等の問題が生じる。そこで、図8に示すように、ワークコイル4の上下に、熱制御性が容易な抵抗加熱式のヒータ等から構成された上部補助ヒータ9及び下部補助ヒータ8を用意して、下部補助ヒータ8で被加熱物を予備加熱し、上部補助ヒータ9で後加熱するようになっている。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−151314号公報
【特許文献2】
特開平10−251090号公報
【特許文献3】
特開平11−309588号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来技術では次のような問題があった。
(1)巻線ピッチで誘導電流密度を調整する方法では、大幅な調整ができないため、温度勾配についての調整範囲が狭く、被加熱物に温度差の大きい連続した温度勾配が得るのが難しかった。また、同じ理由から、被加熱物に温度分布の均一性を得るのが難しかった。
【0010】
(2)加熱ヒータによる被加熱物の温度勾配や温度分布を補正するために、加熱コイルと被加熱物間の距離を調整して温度勾配や温度分布を補正する場合は、加熱コイルと被加熱物との位置関係に制約があり、その補正にも限界があった。
また、温度安定時に均一加熱が要求される場合には、昇温時にも均一加熱が要求されることが多い。例えばサセプタ10の昇温時には、図9で示される様にサセプタ10の複数のゾーン毎、たとえば、外周部a、中央部b、内周部cの各部位で温度差が発生する。この温度差は急速に加熱しようとすると増々大きくなる。この昇温時間の長短はスループットに大きく影響する。ところが、昇温時間、即ち定常状態に達する迄の時間を短縮するため、加熱速度を大きくすると、前述した温度差のため、ウェーハの結晶間のスリップ欠陥発生や、熱応力によるサセプタ10の割れを誘発していた。
【0011】
(3)補助加熱ヒータで補正する場合は、別種のヒータを必要とするので、構造が複雑になるという問題があった。
このように従来の誘導加熱方法では、被加熱物の温度分布や温度勾配を有効に調整することができなかった。このことは、特に、大口径ウェハへの移行や、半導体の微細化が進んでいる半導体製造装置において、特に問題になっていた。
【0012】
なお、ゾーン分割した複数の加熱コイルを複数の高周波誘導加熱用電源を使って加熱に供する方法も考えられている。この方法では、被加熱物の温度低下を防ぐために、各加熱コイルを近接配置するが、各加熱コイル間で磁束がお互いに干渉しあって装置全体の運転制御が不安定になるため、各加熱コイル間に磁気シールド板を配置するなどの対策が必要であった。また、各コイル間や磁気シールド板から熱が逃げるとともに不連続な磁束分布が生じるため、加熱温度を高精度に維持することは困難であった。したがって、加熱コイル間の相互干渉の除去や、コスト面で問題が多く実用的ではなかった。
【0013】
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解消して、誘導加熱方式において、これまで困難であった被加熱物の温度分布、温度勾配を容易に補正することが可能な高周波誘導加熱装置及び半導体製造装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、被加熱物を誘導加熱するゾーン分割された複数の加熱コイルと、複数の加熱コイルに電力を供給する高周波誘導加熱用電源と、前記高周波誘導加熱用電源から複数の加熱コイルに供給する電力を各々独立に制御する制御手段とを備え、前記制御手段が、複数の加熱コイルに対応して設けられる複数のインピーダンス整合回路と、前記高周波誘導加熱用電源からの電力を各加熱コイルに対応する各インピーダンス整合回路を介して各加熱コイルに時分割で供給する時分割制御手段とを有する高周波誘導加熱装置である。
【0015】
被加熱物はゾーン分割された複数の加熱コイルにより加熱することができるので、補助ヒータを用いることなく、被加熱物に所望の温度勾配を形成でき、被加熱物の温度分布を制御することができる。また、複数の加熱コイルに供給する電力を制御手段によって各々独立に制御するので、被加熱物に所望の温度勾配を容易に形成でき、被加熱物の温度分布を均一に制御することができる。また、時分割制御手段を用いたので高周波誘導加熱用電源が1台ですむ。また、複数の加熱コイルに供給する電力を時分割制御手段を用いて時分割で制御するようにしたので、高周波がゾーン間で相互干渉を起こさず、加熱コイルの磁束による反発、振動等が生じず、複数の加熱コイル間で正常な誘導加熱ができる。また、各加熱コイルに各々インピーダンス整合回路を設けるようにしたので、1台の高周波誘導加熱用電源からでも各加熱コイルに電力を有効に供給できる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、前記時分割制御手段は、複数の整合回路を切替える整合回路切替器と、前記高周波誘導加熱用電源の周波数と同期して前記整合回路切替器を切替える時分割発振制御回路とから構成されている高周波誘導加熱装置である。
時分割発振制御回路を用いて、高周波誘導加熱用電源の周波数と同期して整合回路切替器を切替えるようにしたので、異常発振防止と電力の供給タイミングを合せることが可能となり、各加熱コイルに供給する電力を厳密に制御することができる。
【0017】
第3の発明は、第1又は第2の発明に記載の高周波誘導加熱装置を具備する半導体製造装置である。
半導体製造装置に第1〜第2の発明の高周波誘導加熱装置を具備させると、被加熱物を介して半導体に所望の温度勾配を形成できたり、半導体の温度分布を均一に制御したりすることができるので、特性の優れた半導体を製造することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の高周波誘導加熱装置及びそれを用いた半導体製造装置の実施の形態を説明する。
【0019】
図1は、実施の形態による高周波誘導加熱装置の構成図である。
高周波誘導加熱装置は、加熱ヒータとしてのワークコイル40に電力を供給して、このワークコイル40で作られる高周波の磁束により誘導される渦電流(誘導電流)によって被加熱物(図示せず)を加熱したり、加熱された被加熱物を介して物体(図示せず)を加熱するようになっている。ワークコイル40は、複数のワークコイル40a、40bにゾーン分割されている。ゾーン分割されたワークコイル40a、40bは、被加熱物の近傍であって、被加熱物と対向する複数のゾーン、例えば2〜3個に分割される各ゾーンに各々設けられる。
被加熱物は、例えばサセプタやるつぼなどであり、導電体または誘電体で構成される。また、ワークコイルは、銅などの電気抵抗の低い導電線で構成される。
上述したワークコイル40のゾーン分割は、被加熱物上のゾーンに要求される均熱場や傾斜温度場を与えるために行われる。例えば、コールドウォール炉にあっては、半導体基板を保持するサセプタに対向する円形ゾーンが同心円状にゾーン分割される。るつぼを用いる結晶引上装置にあっては、るつぼの外周を囲むホットゾーンが軸方向に分割される。金属管突合せ接合装置にあっては、金属管の突合せ部を囲む円筒ゾーンが軸方向に分割される。
【0020】
高周波誘導加熱装置は、上述した被加熱物を誘導加熱する複数のワークコイル40a、40bと、複数のワークコイルに電力を供給する高周波誘導加熱用電源20と、高周波誘導加熱用電源20から複数のワークコイル40a、40bに供給する高周波電力を各々独立に制御する制御手段30とから構成される。
【0021】
この高周波誘導加熱装置を構成する高周波誘導加熱用電源20に商用電源が入力される。高周波誘導加熱用電源20は、電力制御回路21と高周波発振回路22とから構成される。電力制御回路は、SCRを通して商用電源の3相全波整流を行い、この3相全波整流を交−直流(AC−DC)変換回路を構成するコイル及びコンデンサを用いて直流に変換する。変換された直流電力は高周波発振回路22に加えられて高周波電力を出力する。この高周波発振回路22は、例えばIGBT(Inverted Gate Bipolar Transistor)等の高速スイッチング素子で構成される。
【0022】
高周波誘導加熱用電源20の高周波発振回路22から出力された高周波電力は、制御手段30に供給される。制御手段30は、マッチング回路(インピーダンス整合回路)32と時分割制御手段31とを備える。整合回路32は、複数の整合回路32a、32bから構成され、複数のワークコイル40a、40bに対応して設けられる。各、整合回路32は、1つのワークコイル40とのインピーダンス調整を行い、高周波電力が有効に伝達されるように整合回路32に内蔵されるコイルとコンデンサにて交流の共振作用を起こさせている。
【0023】
時分割制御手段31は、高周波誘導加熱用電源20からの高周波電力を、各ワークコイル40a、40bに対応する各整合回路32a、32bを介して各ワークコイル40a、40bに時分割で供給するように構成される。
時分割制御手段31は、複数の整合回路32a、32bを切替える整合回路切替器35と、高周波誘導加熱用電源20の周波数と同期して整合回路切替器35を切替える時分割発振制御回路34とから構成されている。
整合回路切替器35は、真空リレー等から構成されて、時分割発生制御回路34から出力される切替信号によって、高周波発振回路22の出力を複数のワークコイル40a、40bのいずれかに切替え接続する。この切替え接続により、図2に示すように、各ゾーンに分割されたワークコイル40a、40bに、各整合回路32a、32bを介して時分割で高周波電力が供給されるようになっている。整合回路切替器35を切替える際、高周波発振回路22の出力制御と同期を取り、この同期信号によって高周波発振回路22と整合回路切替器35とを同期、連動させ、時分割発振制御回路34によりワークコイル40a、40bに接続された各整合回路32a、32bに、或る時間間隔で高周波発振回路22の出力を供給する。高周波発振回路22と同期を取る理由は、異常発振防止と電力供給のタイミング合わせのためである。
【0024】
各ワークコイル40a、40bへの切替のタイミングは、予め実験などで決定しておいてもよいが、例えば各ワークコイル40a、40bで加熱されている被加熱物のゾーン分割コイルに対応する各ゾーンの温度を監視(温度調節等)して、ゾーン数をある時間、例えば1秒間を100で割り、それを単位時間として、それぞれの出力配分(全出力を100%とし、それを比例配分)×単位時間で切り替えるようにすることが好ましい。ここでは、高周波発振回路22の発振周波数との兼ね合いがあるので、負荷による時間計算の最適化が必要となる。通常、この最適化は手動にて行う。また、図2に示すように、各ワークコイル40a、40bへの電力の切替えには、切替時間(最小時間単位)t’を設けるようにする。
各ワークコイル40a、40bへの電力供給には、切替時間(最小時間単位)t’の待ち時間があるので、お互いのワークコイル40a、40bは同時に発振することがない。また切替によって電力を供給されず発振しない側のワークコイル40も、整合回路32が接続された状態となって、電気的には開放にならないので、異常な発振はしない。
【0025】
上述したような構成において、商用電源を高周波誘導加熱用電源20に入力し、電力制御回路21を通して、高周波発振回路22から高周波電力を出力する。出力された高周波電力は、時分割発振制御回路34からの高周波発振回路22の出力と同期した切替え信号によって、整合回路切替器35を切替え、図2に示すように、複数のワークコイル40a、40bに高周波電力を時分割して供給する。これにより、整合回路32a、32bを経由して各ワークコイル40a、40bに高周波電力が供給され、供給された高周波電力にてワークコイル40近傍の被加熱物に誘導による自己発熱が起こり、被加熱物は加熱される。
【0026】
ところでゾーン分割したワークコイル40a、40bに1台の高周波誘導電源を接続し、1台の高周波誘導電源から各ワークコイルに高周波電力を同時に加えると、ワークコイルのマッチング条件がゾーン毎に異なるため、1台の高周波誘導電源からでは各ワークコイルに高周波電力を加えられず、高周波誘導加熱用電源が複数個必要になる。また高周波電力を同時に各ワークコイルに加えると、高周波電力がゾーン間で相互干渉を起こしてしまい、ワークコイルの磁束による反発、振動等が生じて、被加熱物に正常な誘導加熱が出来ない。
【0027】
しかし、実施の形態では、1台の高周波誘導電源でも、ゾーン分割されたワークコイル40a、40b毎にマッチング条件の合致した整合回路32a、32bを設けているので、1台の高周波誘導加熱用電源20でも各ワークコイル40a、40bに有効に高周波電力を供給することができる。また、1台の高周波誘導加熱用電源20から高周波電力をゾーン分割された各ワークコイル40a、40b毎に時分割で加えているので、ゾーン間で高周波電力が同時に加わることがなく、高周波電力がゾーン間で相互干渉を起こすことがなく、したがって、ワークコイル40の磁束による反発、振動等も生じず、被加熱物に正常な誘導加熱が出来るようになる。
【0028】
本実施の形態によれば、高周波電力がゾーン分割されたワークコイルごとに時分割で供給されるので、ゾーン分割したワークコイル近傍に対向する被加熱物のゾーン対応箇所ごとに必要な高周波電力を個別に供給することができる。したがって、従来の誘導加熱方式では不可能であった被加熱物に所望の温度勾配を形成でき、また被加熱物の面内温度分布を均一化できる。
【0029】
また、ゾーン分割コイルに供給される電力を時分割制御で調整するので、巻線ピッチで誘導電流密度を調整する方法と比べて、各ゾーン毎での大幅な温度コントロールが可能となり、温度勾配についての調整範囲が広く、被加熱物に温度差の大きい連続した温度勾配を得ることができ、また、同じ理由から、被加熱物に均一な温度分布を得ることができる。
【0030】
また、時分割によるゾーン分割制御により被加熱物に形成する傾斜温度場や均熱温度場を支配的に形成することができるので、加熱コイルと被加熱物間の距離を調整して温度勾配や温度分布を補正することが必要であっても、加熱コイルと被加熱物との位置関係の制約が緩くなり、加熱調整の容易な時分割によるゾーン分割制御にウェイトを移すことができる。
【0031】
また、各ワークコイルに高周波誘導加熱用電源とマッチングの取れた整合回路を各々設けるようにしたので、1台の高周波誘導加熱用電源であっても、各ワークコイルとインピーダンスをマッチングさせることが可能となり、1つの被加熱物を複数の分割された被加熱物のゾーン対応箇所を持つ複数のワークコイルに、高周波電力を有効に伝達させることができる。
【0032】
また、被加熱物の昇温途中でも、各ゾーン分割コイルに供給される電力を時時分割制御するようにすれば、被加熱物各部位での温度上昇時の温度差も解消することができ、昇温時にも要求される被加熱物の均一加熱を実現することができる。したがって、加熱速度を大きくしても、ウェーハ温度差に起因するウェーハの結晶間のスリップ欠陥発生や、熱応力によるサセプタの割れの誘発を有効に防止できる。
また、補助ヒータで補正する場合であっても、別種のヒータを用いず、同一種類のワークコイルを用いて、これを分割して時分割制御するようにすれば足りるので、構造が簡素になる。
【0033】
このように実施の形態による誘導加熱方法では、被加熱物の温度分布や温度勾配を任意に調整することができるので、大口径ウェーハへの移行や、半導体の微細化が進んでいる半導体製造装置において、特に有用である。
【0034】
また、実施の形態では、ゾーン分割した複数のワークコイルを1台の高周波誘導加熱用電源を使って時分割で制御するようにしたので、高周波がゾーン間で相互干渉を起こさず、ワークコイルの磁束による反発、振動等が生じないので、複数のワークコイル間で正常な誘導加熱ができる。特に、時分割制御による電力の切替えに、切替時間(最小時間単位)t’を設けると、ゾーン分割コイル間の相互干渉をより有効に除去できる。したがって、各ワークコイル間に磁気シールド板を配置するなどの対策が不要になり、構成の簡素化を図ることができる。また、各磁気シールド板から熱が逃げたり、磁気シールド板により不連続な磁束分布が生じることもなく、ゾーン毎に被加熱物の加熱温度を高精度に維持することができる。その結果、コスト面でも安価に構成でき、実用的である。
【0035】
また、複数のゾーン分割コイルを1台の高周波誘導加熱用電源を使って加熱するので、複数のワークコイルを複数の高周波誘導加熱用電源を使って加熱する必要がなく、この観点からも、コスト面で有利で実用的である。
【0036】
また、時分割発振制御回路を用いて、高周波誘導加熱用電源の周波数と同期して整合回路切替器を切替えるようにしたので、異常発振防止と電力の供給タイミングを合せることが可能となり、各ワークコイルに供給する電力を厳密に制御することができ、加熱温度を高精度に維持することができる。
また、実施の形態の高周波誘導加熱装置は、傾斜温度場(水平、垂直)や均熱場を任意に作ることが可能であり、したがって傾斜温度場を利用した結晶成長に適用可能である。このような高周波誘導加熱装置を適用できる装置としては、半導体製造装置、突合せ接合装置等がある。また半導体製造装置としては、コールドウォール炉を備えたエピタキシャル成長装置や、垂直ブリッジマン法を用いる結晶引上装置等がある。
【0037】
特に、半導体製造装置に上述した高周波誘導加熱装置を具備させると、被加熱物を介して半導体融液に所望の温度勾配を形成できたり、半導体基板の温度分布を均一に制御したりすることができるので、従来の半導体製造装置では実現できなかった、特性の優れた半導体を製造することができる。
【0038】
なお、本実施の形態では、高周波誘導加熱用電源から複数のワークコイルに供給する電力を各々独立に制御する制御手段として、電力の時分割制御、すわなち時分割比例配分制御を行っている。しかし、本発明は、時分割制御のみに限定されない。時分割で制御する方法以外に、時分割時間を固定(ゾーン共通)にしておき、各ゾーンで電力の大きさを可変する方法もある。また、前述した時分割比例配分に、この電力の大きさを可変するという方法を加えることも可能である。
また、実施の形態では、ワークコイルの分割数を2〜3個としたが、これに限定されず、必要ゾーン長さにより適正な分割数とすることができる。
【0039】
また、前述したように、被加熱物のゾーン対応箇所ごとに温度を検出する手段を設けて、温度調節計によるフィードバック制御をゾーンごとに行うことも可能である。また、本発明の高周波誘導加熱装置は、上述した半導体製造装置の他、金属の溶解、銅板などの熱加工、機械部品の焼入れなど鉄鋼・金属・機械加工の分野にも適用できる。また、電磁調理器や、電磁炊飯器などにも広く適用可能である。
【0040】
【実施例】
次に本発明を適用した2つの実施例について説明する。
【0041】
実施例1
縦型CVDエピタキシャル成長装置の反応室の概略を図3に示す。気密容器51の内部に円形の加熱ユニット52が設けられる。又、気密容器51の底面を気密に貫通すると共に加熱ユニット52を貫通する回転軸54を設け、回転軸54の下端部には回転駆動機構58を連結する。
回転軸54の先端に円板状のサセプタ55を設け、サセプタ55には所要数のウェーハ56が載置可能となっている。加熱ユニット52は内部にワークコイル53を有し、サセプタ55を高周波誘導加熱するようになっている。又、回転軸54の中心部を貫通して上端部が気密容器51内に突出するガスノズル57を設け、ガスノズル57より気密容器51内に反応ガスを導入する様になっている。
【0042】
前述したワークコイル53は、サセプタ55面内の温度分布の均一化のために、サセプタ55との垂直方向の距離を変更して、加熱ユニット52内に設置されている。また、ワークコイル53は、同心円状にゾーン分割された複数、例えば3つのワークコイル(それぞれドット、白抜き、斜線で表している)を有し、ワークコイル53は、上述した高周波誘導加熱用電源20に制御手段30を介して電気的に接続されている。
図4に示すように、ゾーン分割される各コイルは、例えば数回のターンで1つのゾーンを構成し、そこから電極を取り出して、独立して供給電力の制御が可能となっている。
上述したように本実施例では、サセプタとワークコイル間の距離によるゾーン加熱調整と、時分割制御によるゾーン加熱調整とを併用している。
【0043】
ウェーハ56の処理は、ウェーハ56をサセプタ55に載置し、回転駆動機構58により回転軸54を介してサセプタ55を回転させる。気密容器51内を真空引きし、またワークコイル53に高周波誘導加熱用電源20から高周波電力を供給し、サセプタ55を高周波誘導加熱する。このとき高周波誘導加熱装置の時分割制御手段31によりゾーン分割コイルを時分割で制御してサセプタ55を加熱する。サセプタ55を介してウェーハ56が加熱される。更にガスノズル57より反応ガスが供給され、ウェーハ上にエピタキシャル層が形成される。
【0044】
なお、エピタキシャル成長例としては、不純物(ドーピング)としてホスフィン(PH3)を使用するn型エピタキシャル成長、および不純物としてジボラン(B2H6)を使用するp型エピタキシャル成長がある。
ここで、成長条件を例示すれば次の通りである。
シリコンウェーハ直径 150φmm
原料ガス種 SiH4
ガス流量 500sccm
炉内圧力 常圧
被加熱物温度 1100℃
高周波電力/周波数 160kW/30kHz
エピタキシャル成長時間 1時間
【0045】
上述したサセプタ55の加熱状態は、各ゾーン分割コイルの電力供給量に影響される。従って、温度安定時は、サセプタ55が面内温度分布が均一になるようにゾーン分割コイルを時分割制御する。その結果、サセプタ55上の同心円に置かれたウェーハ毎の温度領域がゾーン分割温度制御により、膜厚を自由に制御できる。
また、温度安定時に先立つ昇温時では、昇温時におけるサセプタ面内温度の分布が均一変化するように、時分割により区切った時間(タイムスライス)を各ゾーン分割コイルに交互に割り当てる。例えば、図9に対応させた場合、立上り温度の悪いサセプタ中央ゾーン分割コイルにはタイムスライスを長く、立上り温度がやや悪いサセプタ内周ゾーン分割コイルにはタイムスライスをやや長く、立上り温度が良好なサセプタ外周ゾーン分割コイルにはタイムスライスを短く割り当てる。例えば、サセプタ内周、外周、中央と同心円状に3分割した場合、内周に1サイクル分(1msec)、外周に2サイクル分(2msec)、中央に3サイクル分(3msec)のタイムスライスを交互に与える。
また、温度安定後の降温時でも同様に時分割制御して、降温時におけるサセプタ面内温度分布も均一変化するようにする。このように複数のゾーン分割されたワークコイルへ供給される電力を独立に制御すると、昇降温過程(過渡的状態)においても、サセプタ面内全域を均一温度で変化させることも可能になり、ウェーハの熱ストレスに起因するスリップ等の欠陥も防止できる。
【0046】
上記のように、ゾーン分割コイルを時分割制御することで、サセプタ55の面内の温度差が解消される。従って、サセプタ55を介して加熱されるウェーハ56の面内の温度差が解消され、エピタキシャル成長膜の均質性、エピタキシャル処理品質が向上する。更に、昇温時のサセプタ面内の温度差が解消されるので、一層の急速加熱が可能となり、スループットの向上が図れる。
【0047】
なお、上述した実施例では、被加熱物を温度制御するために、サセプタとワークコイル間の距離によるゾーン加熱調整と、時分割制御によるゾーン加熱調整とを併用した例について説明したが、ゾーン分割制御のみで温度分布の均一化又は均一温度での変化をカバーできれば、サセプタとの垂直方向の距離は一定にして、ゾーン分割制御のみの温度制御としてもよい。
【0048】
実施例2
次に本発明の実施例2について説明する。図5は結晶引上装置の概略的な縦断面図を示す。
【0049】
結晶引上装置は、原料を収容する高融点金属である白金・イリジウム製などのるつぼ61と、るつぼ61内の原料を加熱し融解するワークコイル62と、それらを格納する圧力容器63とを備える。るつぼ61及びワークコイル62は、圧力容器63内に配置されたホットゾーンと呼ばれる円筒形の場所に設置されている。種結晶64は、図示しない引上機構により、軸65を介して回転、昇降するようになっている。
【0050】
ワークコイル62は、3つのゾーン分割コイル62a、62b、62cから構成され、図1で説明した高周波誘導加熱用電源20に制御手段30を介して電気的に接続されている。ゾーン分割コイル62a、62b、62cは、るつぼ61の軸方向に沿って複数にゾーン分割された円筒形をした各ゾーンに各々配置されて、垂直方向に温度勾配を連続的に形成するように構成される。
【0051】
例えば、結晶の素材であるLN(LiNbO3)をるつぼ61に入れ、高周波誘導加熱用のワークコイル62に時分割で高周波電力を印加したるつぼ61を加熱し、るつぼ61内の材料を溶かして融点より少し高い温度に保っておく。それに単結晶の種結晶64を浸して十分になじませたのち、所定の速度で回転させながら上方に引き上げて結晶成長を行う。なお、育成雰囲気は、不活性および酸化雰囲気で結晶育成が行われる。また、引上装置では、ワークコイルでは水平方向の温度分布制御は出来ないので、るつぼ及び、結晶を回転させて融液を攪拌、結晶から温度の放射を補助するようにしている。
【0052】
例えば、次のような条件で結晶は引上げられる。
結晶径 50φmm
結晶材料 LN(リチウムナイオベイト)
原料ガス種 O2、He、N2等
ガス流量 トータル100sccm
炉内圧力 常圧
被加熱物温度 1200℃
アフタヒータ温度 800℃
(るつぼ上方に保温のために設けたヒータ(図示略))
高周波電力 40kW/7kHz
昇温時間 4時間
冷却時間 20時間
1回の所要時間 1週間以上
【0053】
上述した引上装置においては、結晶化に必要な温度分布を縦方向に設定する必要があるが、実施例のようにゾーン分割コイルを時分割制御することにより、異なる種類の補助ヒータを用いることなしに、温度差の大きい連続した温度勾配が容易に得られる。例えば、上述した高周波電力40kW/7kHzは、次のように時分割により区切る。上、中、下と3分割した場合、上部に1サイクル分(1msec)、中部に2サイクル分(2msec)、下部に3サイクル分(3msec)のタイムスライスを交互に与える。
なお、るつぼ上方に設けるアフターヒータも誘導加熱用のワークコイルで構成することが可能であり、製造条件によってはアフターヒータを省略できる可能性もある。したがって、装置を簡素化できる。また、ゾーン分割コイルを時分割制御することにより、結晶の成長速度、不純物の濃度制御、熱履歴等も制御することができる。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、誘導加熱によって従来では困難であった所望の温度分布、又は温度勾配を被加熱物に容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態の高周波誘導加熱装置のブロック構成図である。
【図2】実施の形態による時分割制御の説明図である。
【図3】実施の形態による縦型エピタキシャル成長装置の反応室の概略図である。
【図4】実施の形態によるゾーン分割コイルLの平面図である。
【図5】実施の形態による結晶引上装置の概略的な縦断面図である。
【図6】従来例の高周波誘導加熱装置のブロック構成図である。
【図7】従来例の垂直方向に距離を変えてある加熱ユニットの説明図である。
【図8】従来例の補助ヒータの説明図、及びそれを用いた垂直方向の温度特性図である。
【図9】従来例のサセプタ面内の温度差を示す線図である。
【符号の説明】
20 高周波誘導加熱電源
30 制御手段
31 時分割制御手段
32 整合回路
32a 整合回路
32b 整合回路
40 ワークコイル(加熱コイル)
40a ワークコイル(加熱コイル)
40b ワークコイル(加熱コイル)
Claims (3)
- 被加熱物を誘導加熱するゾーン分割された複数の加熱コイルと、複数の加熱コイルに電力を供給する高周波誘導加熱用電源と、前記高周波誘導加熱用電源から複数の加熱コイルに供給する電力を各々独立に制御する制御手段とを備え、
前記制御手段が、複数の加熱コイルに対応して設けられる複数のインピーダンス整合回路と、前記高周波誘導加熱用電源からの電力を各加熱コイルに対応する各インピーダンス整合回路を介して各加熱コイルに時分割で供給する時分割制御手段とを有する高周波誘導加熱装置。 - 前記時分割制御手段は、複数のインピーダンス整合回路を切替える整合回路切替器と、前記高周波誘導加熱用電源の周波数と同期して前記整合回路切替器を切替える時分割発振制御回路とから構成されている請求項1に記載の高周波誘導加熱装置。
- 請求項1又は2に記載の高周波誘導加熱装置を具備する半導体製造装置。
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