JP2004340094A - 単気筒の4サイクル内燃エンジンの行程判別装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】単気筒の4サイクル内燃エンジンの安定状態を判断し正確なエンジンサイクルの行程判別が可能である行程判別装置を提供する。
【解決手段】検知手段においてエンジン負荷が安定状態であると検知された場合にのみ、判別手段が、エンジンサイクル中の吸気管内圧値の変化に基づいて単気筒の4サイクル内燃エンジンの行程を判別する。
【選択図】 図2
【解決手段】検知手段においてエンジン負荷が安定状態であると検知された場合にのみ、判別手段が、エンジンサイクル中の吸気管内圧値の変化に基づいて単気筒の4サイクル内燃エンジンの行程を判別する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、単気筒の4サイクル内燃エンジン(以下単にエンジンと称する)の行程判別装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの行程を判別する装置として、特開2000−265894号に開示されている如き装置が知られている。この装置は、クランク角パルスを発生するパルス発生手段と、クランク軸(クランクシャフト)の2回転中に複数回測定する吸気管内圧値測定手段とを有し、エンジン始動時における吸気管内圧測定値の大小関係によってクランクの上死点がどの行程にあるかを判断するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の装置では、エンジンの運転条件が過渡状態すなわちエンジン回転数の変化率が大きい場合(例えば加速時または減速時など)において、吸気・圧縮行程での吸気管内圧値と膨張・排気行程での吸気管内圧値とが逆転することがある。特に、加速時においては、吸気・圧縮行程での吸気管内圧値が大気圧に近くなるため、直前の膨張・排気行程での吸気管内圧値よりもより大気圧に近い大きな値をとることがある。それ故、単に前後のエンジンサイクルの吸気管内圧値の大小関係のみで行程を判断すると、誤判別してしまう場合があった。
【0004】
そこで、本発明は、エンジンの安定状態を判断し正確なエンジンサイクルの行程判別が可能である行程判別装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によるエンジンの行程判別装置は、前記エンジンの吸気管内圧を所定クランク角度位置毎に順次PM値として検出する吸気管内圧検出手段と、前記エンジンの負荷の安定状態を検知する検知手段と、前記検知手段によってエンジン負荷の安定状態を検知した場合にのみ、前記PM値の変化状態に基づいて前記エンジンの行程判別を実行する行程判別手段と、からなることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明による行程判別装置の実施例について図面に基づいて説明する。
図1は、エンジン及びエンジン制御部の構成を示すブロック図を示している。エンジン10においては、吸気管12から吸入した空気と吸気管12に設けられたインジェクタ28から噴射された燃料との混合気が燃焼室20に吸入され、吸入した混合気が燃焼せしめられてピストン16が往復運動し、クランクシャフト(クランク軸)18が回転する。燃焼室20において燃焼した混合気は、排気ガスとして排気管14へ排出される。吸気管12には、吸入する空気量を制御するスロットル22及び吸気管内圧センサ26が設けられている。スロットル22にはスロットル開度センサ24が設けられており、スロットルの開度を検出しスロットル開度信号Stを発する。また、吸気管内圧センサ26は、吸気管内圧に対応する圧力信号Spを出力する。
【0007】
クランクシャフト18には、回転体30が、クランクシャフト18に連動するように設けられている。回転体30の外周部には、複数の被検出片である複数の磁性突起(図示せず)が設けられている。また、磁性突起の回転軌跡の近傍の位置には、クランク角センサ32が設けられている。クランク角センサ32は、所定のクランク角毎、例えばクランク角20度毎に、磁性突起による磁束の変化に応じて、磁性突起を検出したことを示す検出信号Sdを発する。
【0008】
スロットル開度センサ24、吸気管内圧センサ26及びクランク角センサ32から発せられた信号は、ECU(電子制御ユニット)50のインターフェース52に供給される。インターフェース52では、スロットル開度信号St及び圧力信号Spが適当な手段によって数値化され、クランク角信号Sdは、インターフェース52内の波形成形回路(図示せず)によってパルス列からなるクランク角パルスに波形整形される。インターフェース52からの数値データ信号及びクランク角パルスが、入出力バス56を介してCPU54に供給される。よって、CPU54は、所定のクランク角毎に後述するメインルーチンを実行することができる。
【0009】
CPU54は、入出力バス56を介してデータ信号又はアドレス信号をROM(リードオンリーメモリ)58、RAM(ランダムアクセスメモリ)60、インジェクタ駆動回路62及び点火プラグ駆動回路64との間で送受信する。インジェクタ駆動回路62は、インジェクタ28に接続されており、CPU54からの噴射指令に基づいて駆動電流Ijを供給する。同様に、点火プラグ駆動回路64は、点火プラグ34に接続されており、CPU54からの点火指令に基づいて駆動電流Igを供給する。駆動電流Igが点火プラグ34に供給されることによって、点火プラグ34から火花が発せられる。この火花は燃焼室20に吸入された混合気に引火し、混合気の燃焼によりエンジンの爆発行程が始まることになる。また、ROM58は、CPU54が実行するプログラム等を記憶しており、RAM60は、プログラムで用いられる変数データやフラグ値を記憶する。
【0010】
図2は、CPU54がクランク角センサ32から発せられるクランク角パルスを検知する毎に実行するエンジン行程判別メインルーチンを示すフローチャートである。エンジン行程判別メインルーチンにおいては、まず、エンジンのクランク角毎の吸気管内圧値(すなわちPM値)をCPU54のバッファRAM60に記憶するPM値記憶サブルーチンSS1を実行する。PM値記憶サブルーチンSS1は、バッファRAM60にPM値を記憶するとともに、本ルーチンの以後のステップで用いる現クランク角度位置から2回転前の同一のクランク角度位置でのPM値を示す2PMp、現クランク角度位置から1回転前の同一クランク角度位置でのPM値を示す1PMp、及び現在のPM値を示すPMcを設定する。PM値記憶サブルーチンSS1の動作については、後に説明する。
【0011】
エンジン行程判別メインルーチンでは、PM値記憶サブルーチンSS1において設定された2PMp、1PMp及びPMcを用いて、まず、2PMpが0であるか否かを判別する(ステップS1)。動作の初期状態において、バッファRAM60のメモリに初期値0が設定されているため、クランクが2回転するまでは、2PMp値は0となる。つまり、ステップS1では、クランク2回転分のPM値データが記憶されたか否かを判別するのである。よって、ステップS1において2PMpが0のときは、メインルーチンをそのまま終了する。ステップS1で2PMpが0でないときは、PM値記憶サブルーチンから与えられた2PMp及びPMcを用いて吸気管内圧差ΔPM2TDCを算出する(ステップS2)。ここで、ΔPM2TDCは以下の式を用いて算出される。
【0012】
ΔPM2TDC=|PMc−2PMp|
次に、算出されたΔPM2TDC値が所定の安定閾値より大か否かを判別する(ステップS3)。ΔPM2TDCが所定安定閾値より小さい場合は、エンジン運転状態が安定状態と判断して安定判定カウントを示す変数STcを1だけインクリメントする(ステップS4)。これに対して、ΔPM2TDCが所定安定閾値より大きい場合は、エンジン運転状態が不安定状態と判断して変数STcを1だけデクリメントする(ステップS5)。続いて、STcが所定数以上か否かを判別する(ステップS6)。STcが所定数以上である場合は、は、エンジン運転状態が十分に安定状態にあるとして、続くエンジン行程確認用PM値検索サブルーチンSS2を実行する。これに対して、STcが所定数に達していない場合は、エンジン運転状態が十分に安定状態ではないと判断してルーチンを終了する。ステップS6の判別においては、ある一定の時間内にSTcが所定数以上であるか否かを判別すること、もしくは別のカウンタ(図示せず)を用いて所定ルーチン実行回数中にSTcが所定数以上に達したか否かを判別すること、などを追加することができる。行程確認用PM値検索サブルーチンSS2を実行した後、続いて現在のクランク位置番号が所定番号であるか否かを判別する(ステップS7)。この所定番号は、クランク1回転中の任意の位置に対応する任意の数の番号を取り得る。現在のクランク位置番号が所定番号のときは、エンジン行程判別サブルーチンSS3へと進み、サブルーチンの実行後、メインルーチンへ戻りルーチンを終了する。現在のクランク位置番号が所定番号でないときは、そのままエンジン行程判別メインルーチンを終了する。
【0013】
行程確認用PM値検索サブルーチンSS2は、後に続くエンジン行程判別サブルーチンSS3において用いるいくつかの変数を設定するルーチンである。行程確認用PM値検索サブルーチンSS2の動作については、後に説明する。
図3は、PM値記憶サブルーチンSS1を示すフローチャートである。PM値記憶サブルーチンにおいては、まず、現在の吸気管内圧値PMを読み込む(ステップS31)。次に、バッファRAM60に記憶されているPM1Pn値をPM2Pnに上書きする(ステップS32)。ここで、nはクランク角パルスによって表されるエンジンのステージ番号であり、例えば初期値を1とする1から16の範囲の整数である。続いて、バッファRAM60に記憶されているPMCn値をPM1Pnに上書きし(ステップS33)、更に、ステップS31で読み込んだPM値をPMCnに上書きする(ステップS34)。例えば、n=1のとき、ステップS32では、PM1P1に記憶された値がPM2P1に上書きされる。続いて、ステップS33では、PMC1に記憶された値がPM1P1に上書きされ、ステップ34では、読み取られた現在PM値がPMC1に上書きされる。かかる動作を実行することによって、PMCnには、現在のPM値が記憶され、PM1Pn及びPM2Pnには、クランク1回転前のPM値及びクランク2回転前のPM値が、それぞれ記憶されるのである。
【0014】
次に、現在のPM2Pn値を2PMpとする(ステップS35)。続いて、現在のPM1Pn値を1PMpとし(ステップS36)、現在のPMCn値をPMcとする(ステップS37)。次に、nが所定数すなわち16に達したか否かを判別する(ステップS38)。nが所定数に達していない場合は、nを1だけ増加し(ステップS39)、サブルーチンを終了する。これに対して、nが所定数に達していた場合は、nを1に戻し(ステップS40)、サブルーチンを終了する。かかるサブルーチンを用いることによって、現在のクランク回転におけるPM値PMc、クランクの1回転前におけるPM値1PMp、及びクランクの2回転前におけるPM値2PMpを設定かつ記憶することが可能となる。
【0015】
図4は、行程確認用PM値検索サブルーチンSS2を示すフローチャートである。行程確認用PM値検索サブルーチンSS2においては、まず、F_CYCが1か否かを判別する(ステップS51)。F_CYCはエンジン行程が既に判別済みかどうかを表すフラグ値であり、エンジン行程が既に判別済みの場合は1、未判別の場合は0となる。よって、ステップS51において、F_CYCが1でない場合は、エンジン行程は未判別であるとしてそのままルーチンを終了する。一方、ステップS51においてF_CYCが1であると判別した場合は、クランク角度位置がエンジン行程基準位置か否かを判別する(ステップS52)。エンジン行程基準位置とは、4サイクルエンジンの1エンジンサイクルの4行程(吸気・圧縮・膨張・排気)を1単位としたときの基準位置であり、本実施例では、吸気行程の開始位置である。
【0016】
ステップS52において、クランク角度位置がエンジン行程基準位置ではない場合は、ENGDTCが0か否かを判別する(ステップS53)。ENGDTCは、エンジン行程を「吸気・圧縮行程」及び「膨張・排気行程」に分類したときの分類番号を表すものであり、吸気・圧縮行程の場合は0、膨張・排気行程の場合は1となる。よって、ステップS53においてENGDTCが0と判別した場合は、エンジンが吸気・圧縮行程として、現在PM値PMcがPMLOWより小さいか否かを判別する(ステップS54)。ここで、PMLOWは、メインルーチン動作中に検知した吸気管内圧の最小値であり、すなわち吸気・圧縮行程での吸気管内圧の最小値である。PMcがPMLOWより小さい場合は、現在のPMc値をPMLOWに上書き更新する(ステップS55)。
【0017】
続いて、現在クランク位置番号をPMPKSTGに上書き更新し(ステップS56)、サブルーチンを終了する。ここで、PMPKSTGは、上述のPMLOWを検出したクランク位置番号を記憶する変数である。ステップS53において、ENGDTCが0でないと判別した場合は、現在のクランク位置番号がPMPKSTGの番号と一致するか否かを判別する(ステップS57)。現在クランク位置番号がPMPKSTGと一致する場合は、PMc値をPMHIGHに上書き更新し(ステップS58)、サブルーチンを終了する。ここで、PMHIGHは、現在までに検知した吸気管内圧の最大値である。ステップS57において、現在クランク位置番号がPMPKSTGと一致しない場合は、そのままサブルーチンを終了する。
【0018】
一方、ステップS52において、クランク角度位置がエンジン行程基準位置である場合は、現在のPMc値をPMLOWに上書き更新し(ステップS59)、同様にPMc値をPMHIGHに上書き更新する(ステップS60)。続いて、現在クランク位置番号をPMPKSTGに上書き更新し(ステップS61)、サブルーチンを終了する。S59〜S61のステップを経ることによって、吸気行程の開始位置でのPM値の基準値が与えられる。
【0019】
図5は、エンジン行程判別サブルーチンSS3を示すフローチャートである。エンジン行程判別サブルーチンSS3においては、まず、F_CYCが1か否かを判別する(ステップS71)。F_CYCが1でない場合は、エンジン行程未判別として、現在PM値PMcが1回転前のPM値1PMpより大きいか否かを判別する(ステップS72)。PMcが1PMpより大きい場合は、PMc及び1PMpを用いて吸気管内圧差ΔPM1TDCを算出する(ステップS73)。ここで、ΔPM1TDCは以下の式を用いて算出される。
【0020】
ΔPM1TDC=PMc−1PMp
次に、算出されたΔPM1TDC値が所定閾値TH1より大か否かを判別する(ステップS74)。ΔPM1TDCがTH1より大きい場合は、エンジン行程が膨張・排気行程であると判断し、変数ENGDTCを1とする(ステップS75)。続いて、エンジン行程判別が行われたことを示すフラグ値F_CYCを1にして(ステップS76)、サブルーチンを終了する。ステップS72においてPMcが1PMより小さいと判別した場合、及びステップS74においてΔPM1TDCがTH1より小さいと判別した場合は、ともにエンジン行程が不明又は判別不能と判断して、フラグ値F_CYCを0とし(ステップS77)、サブルーチンを終了する。
【0021】
一方、ステップS71において、F_CYCが1であると判別した場合は、ENGDTCが1か否かすなわちエンジン行程が膨張・排気行程か否かを判別する(ステップS78)。ENGDTCが1でない場合は、エンジン行程の確認は実施せず、現在のF_CYC値及びENGDTC値を維持して(ステップS79)、サブルーチンを終了する。ステップS78において、ENGDTCが1である場合は、行程確認用PM値検索サブルーチンSS2で設定されたPMHIGH値がPMLOW値以上であるか否かを判別する(ステップS80)。PMHIGHがPMLOW以上である場合は、PMHIGH及びPMLOWを用いて吸気管内圧差ΔPM1TDCを算出する(ステップS81)。ここで、ΔPM1TDCは以下の式を用いて算出される。
【0022】
ΔPM1TDC=PMHIGH−PMLOW
次に、算出されたΔPM1TDC値が所定閾値THaより大か否かを判別する(ステップS82)。ΔPM1TDCがTHaより小さい場合は、続いてΔPM1TDCが所定閾値THbより大か否かを判別する(ステップS83)。ΔPM1TDCがTHbよりも小さい場合は、エンジン行程が不明又は判別不能と判断して、フラグ値F_CYCを0とし(ステップS84)、サブルーチンを終了する。また、ステップS80においてPMHIGHがPMLOWより小さいと判別した場合、及びステップS83においてΔPM1TDCがTHbより大きいと判別した場合は、エンジン行程の確認は実施せず、ステップS79に進んで現在のF_CYC値及びENGDTC値を維持し、サブルーチンを終了する。ステップS82において、ΔPM1TDCがTHaより大きいと判別した場合は、エンジン行程が膨張・排気行程であると判断し、変数ENGDTCを1とする(ステップS85)。続いて、エンジン行程判別が行われたことを示すフラグ値F_CYCを1にして(ステップS86)、サブルーチンを終了する。
【0023】
かかるサブルーチンを実行することによって、エンジン行程判別が行われていないすなわちF_CYCが0の場合は、ステップS71〜ステップS76までのステップを経て、エンジン行程が膨張・排気行程であることを判別し、エンジン行程が既に行われているすなわちF_CYCが1の場合は、ステップS71〜ステップS82〜ステップS86までのステップを経て、エンジン行程が膨張・排気行程であることを確認することができるのである。
【0024】
図6は、定常状態にあるエンジンのスロットル開度、エンジン行程、吸気管内圧及びクランク角パルスのタイミングを示している。クランク角パルスは、1つのエンジンサイクル(吸気・圧縮・膨張・排気)において32回検出される。従って、クランク角パルスは、クランク1回転毎に16回検出されることになる。定常状態にあるエンジンでは、スロットル開度はほぼ一定であり、吸気管内圧は1つのエンジンサイクル毎に周期的に増減を繰り返している。図2で示されたエンジン行程判別メインルーチンは、クランク角パルスを検知する毎に実行されるが、現在のPM値とクランク2回転前のPM値との差が小さいため、ステップS3で行われる判別は常に安定状態となる。例えば、A2を現在のクランク角度位置とした場合、A1はクランク2回転前のクランク角度位置、B1はクランク1回転前のクランク角度位置をそれぞれ示すことになる。このとき、ΔPM2TDCであるA1でのPM値とA2でのPM値との差の絶対値は、ほぼ0又は非常に小さい値となり、所定の安定閾値よりは小さいと判別されるのである。
【0025】
また、ステップS7で実行される判別の所定位置番号をそれぞれA1、B1、A2、B2とすると、一つの例として、現在クランク角度位置がA2でかつエンジン行程が未判別すなわちF_CYCが0である場合は、行程確認用PM値検索サブルーチンSS2においては、ステップS51の判別によりそのままの変数データを維持したままサブルーチンを終了する。エンジン行程判別サブルーチンSS3においては、ステップS71からステップS72に進む。ここで図6より、PMcすなわちA2での吸気管内圧は、1PMpすなわちB1での吸気管内圧より小さいため、ステップS77に進み、エンジン行程未判別すなわちF_CYCが0としてルーチンを終了する。別の例として、現在クランク角度位置がB2でかつF_CYCが0である場合は、エンジン行程判別サブルーチンSS3においては、ステップS71からステップS72に進む。ここでPMcすなわちB2での吸気管内圧は、1PMpすなわちA2での吸気管内圧より非常に大きいため、ステップS73〜ステップS76へと進んでENGDTC及びF_CYCをそれぞれ1に設定する。つまり現在のエンジン行程が膨張・排気行程であることを判別するのである。
【0026】
また、現在クランク角度位置がB2でかつF_CYC及びENGDTCがともに1である場合は、行程確認用PM値検索サブルーチンSS2においては、ステップS51〜ステップS58に進み、PMPKSTGのクランク位置番号(例えば今回すなわちB2)における吸気管内圧値をPMHIGHに設定する。続いて、エンジン行程判別サブルーチンSS3においては、ステップS71〜ステップS80と進む。このとき、PMLOWは以前のクランク角度位置における吸気管内圧の最小値(例えばA2における吸気管内圧値、図6参照)であるため、ステップS80〜ステップS82に進む。ここでステップS81において算出されるΔPM1TDCは所定閾値THaより大きくなり、ステップS85以降へと進んでENGDTC及びF_CYCをそれぞれ1に設定する。つまり現在のエンジン行程が膨張・排気行程であることを確認するのである。
【0027】
図7は、別の一例として、膨張行程中に加速すなわちスロットル開度を大きくしたときのエンジンのスロットル開度、エンジン行程、吸気管内圧及びクランク角パルスのタイミングを示している。加速状態にあるエンジンでは、スロットル開度の増加とともにエンジン回転数が増加するため、吸気管内圧はそれまでの定常状態より増加し、周期的な増減を示さなくなる。このとき、エンジン行程判別メインルーチンSS3は、ステップS3における判別で安定カウントダウンすなわち不安定状態と判別することになる。例えば、現在のクランク角度位置をA2とすると、PMcはA2におけるPM値となり、2PMpはA1におけるPM値となる。よってΔPM2TDCは大きな値となり、ステップS3における安定閾値を超えてしまう。また、A2近傍のクランク角度位置におけるPM値も、同様に2回転前のPM値よりも非常に大きいため、A2の前後の割り込み処理においてもメインルーチンは不安定状態と判別することになる。かかる場合には、本発明のエンジン行程判別装置は、安定カウンタSTcをデクリメントすることによって行程判別を実行しないことにして、システムがエンジン運転状態を誤判断しないように制御される。
【0028】
以上のような構成による装置を用いることによって、エンジンのエンジン行程を、エンジンの運転状態が定常状態又は過渡状態(加速・減速状態)にかかわらず、正しく判別することが可能となる。
【0029】
【発明の効果】
上記したことから明らかなように、本発明によるエンジンの行程判別装置は、エンジンの負荷の不安定状態における誤判断を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エンジン及びエンジン制御部の構成を示すブロック図である。
【図2】エンジン行程判別メインルーチンを示すフローチャートである。
【図3】図2で示されたエンジン行程判別メインルーチン中に実行されるPM値記憶サブルーチンを示すフローチャートである。
【図4】図2で示されたエンジン行程判別メインルーチン中に実行される行程確認用PM値検索サブルーチンを示すフローチャートである。
【図5】図2で示されたエンジン行程判別メインルーチン中に実行されるエンジン行程判別サブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】エンジンが定常状態にある場合における、スロットル開度、エンジン行程、吸気管内圧及びクランク角パルスの変化の関係を示すタイムチャートである。
【図7】エンジンが過渡状態すなわち膨張行程中の加速状態にある場合における、スロットル開度、エンジン行程、吸気管内圧及びクランク角パルスの変化の関係を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
10 エンジン
12 吸気管
18 クランクシャフト
26 吸気管内圧センサ
32 クランク角センサ
50 電子制御ユニット(ECU)
54 中央処理装置(CPU)
【発明の属する技術分野】
本発明は、単気筒の4サイクル内燃エンジン(以下単にエンジンと称する)の行程判別装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの行程を判別する装置として、特開2000−265894号に開示されている如き装置が知られている。この装置は、クランク角パルスを発生するパルス発生手段と、クランク軸(クランクシャフト)の2回転中に複数回測定する吸気管内圧値測定手段とを有し、エンジン始動時における吸気管内圧測定値の大小関係によってクランクの上死点がどの行程にあるかを判断するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の装置では、エンジンの運転条件が過渡状態すなわちエンジン回転数の変化率が大きい場合(例えば加速時または減速時など)において、吸気・圧縮行程での吸気管内圧値と膨張・排気行程での吸気管内圧値とが逆転することがある。特に、加速時においては、吸気・圧縮行程での吸気管内圧値が大気圧に近くなるため、直前の膨張・排気行程での吸気管内圧値よりもより大気圧に近い大きな値をとることがある。それ故、単に前後のエンジンサイクルの吸気管内圧値の大小関係のみで行程を判断すると、誤判別してしまう場合があった。
【0004】
そこで、本発明は、エンジンの安定状態を判断し正確なエンジンサイクルの行程判別が可能である行程判別装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によるエンジンの行程判別装置は、前記エンジンの吸気管内圧を所定クランク角度位置毎に順次PM値として検出する吸気管内圧検出手段と、前記エンジンの負荷の安定状態を検知する検知手段と、前記検知手段によってエンジン負荷の安定状態を検知した場合にのみ、前記PM値の変化状態に基づいて前記エンジンの行程判別を実行する行程判別手段と、からなることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明による行程判別装置の実施例について図面に基づいて説明する。
図1は、エンジン及びエンジン制御部の構成を示すブロック図を示している。エンジン10においては、吸気管12から吸入した空気と吸気管12に設けられたインジェクタ28から噴射された燃料との混合気が燃焼室20に吸入され、吸入した混合気が燃焼せしめられてピストン16が往復運動し、クランクシャフト(クランク軸)18が回転する。燃焼室20において燃焼した混合気は、排気ガスとして排気管14へ排出される。吸気管12には、吸入する空気量を制御するスロットル22及び吸気管内圧センサ26が設けられている。スロットル22にはスロットル開度センサ24が設けられており、スロットルの開度を検出しスロットル開度信号Stを発する。また、吸気管内圧センサ26は、吸気管内圧に対応する圧力信号Spを出力する。
【0007】
クランクシャフト18には、回転体30が、クランクシャフト18に連動するように設けられている。回転体30の外周部には、複数の被検出片である複数の磁性突起(図示せず)が設けられている。また、磁性突起の回転軌跡の近傍の位置には、クランク角センサ32が設けられている。クランク角センサ32は、所定のクランク角毎、例えばクランク角20度毎に、磁性突起による磁束の変化に応じて、磁性突起を検出したことを示す検出信号Sdを発する。
【0008】
スロットル開度センサ24、吸気管内圧センサ26及びクランク角センサ32から発せられた信号は、ECU(電子制御ユニット)50のインターフェース52に供給される。インターフェース52では、スロットル開度信号St及び圧力信号Spが適当な手段によって数値化され、クランク角信号Sdは、インターフェース52内の波形成形回路(図示せず)によってパルス列からなるクランク角パルスに波形整形される。インターフェース52からの数値データ信号及びクランク角パルスが、入出力バス56を介してCPU54に供給される。よって、CPU54は、所定のクランク角毎に後述するメインルーチンを実行することができる。
【0009】
CPU54は、入出力バス56を介してデータ信号又はアドレス信号をROM(リードオンリーメモリ)58、RAM(ランダムアクセスメモリ)60、インジェクタ駆動回路62及び点火プラグ駆動回路64との間で送受信する。インジェクタ駆動回路62は、インジェクタ28に接続されており、CPU54からの噴射指令に基づいて駆動電流Ijを供給する。同様に、点火プラグ駆動回路64は、点火プラグ34に接続されており、CPU54からの点火指令に基づいて駆動電流Igを供給する。駆動電流Igが点火プラグ34に供給されることによって、点火プラグ34から火花が発せられる。この火花は燃焼室20に吸入された混合気に引火し、混合気の燃焼によりエンジンの爆発行程が始まることになる。また、ROM58は、CPU54が実行するプログラム等を記憶しており、RAM60は、プログラムで用いられる変数データやフラグ値を記憶する。
【0010】
図2は、CPU54がクランク角センサ32から発せられるクランク角パルスを検知する毎に実行するエンジン行程判別メインルーチンを示すフローチャートである。エンジン行程判別メインルーチンにおいては、まず、エンジンのクランク角毎の吸気管内圧値(すなわちPM値)をCPU54のバッファRAM60に記憶するPM値記憶サブルーチンSS1を実行する。PM値記憶サブルーチンSS1は、バッファRAM60にPM値を記憶するとともに、本ルーチンの以後のステップで用いる現クランク角度位置から2回転前の同一のクランク角度位置でのPM値を示す2PMp、現クランク角度位置から1回転前の同一クランク角度位置でのPM値を示す1PMp、及び現在のPM値を示すPMcを設定する。PM値記憶サブルーチンSS1の動作については、後に説明する。
【0011】
エンジン行程判別メインルーチンでは、PM値記憶サブルーチンSS1において設定された2PMp、1PMp及びPMcを用いて、まず、2PMpが0であるか否かを判別する(ステップS1)。動作の初期状態において、バッファRAM60のメモリに初期値0が設定されているため、クランクが2回転するまでは、2PMp値は0となる。つまり、ステップS1では、クランク2回転分のPM値データが記憶されたか否かを判別するのである。よって、ステップS1において2PMpが0のときは、メインルーチンをそのまま終了する。ステップS1で2PMpが0でないときは、PM値記憶サブルーチンから与えられた2PMp及びPMcを用いて吸気管内圧差ΔPM2TDCを算出する(ステップS2)。ここで、ΔPM2TDCは以下の式を用いて算出される。
【0012】
ΔPM2TDC=|PMc−2PMp|
次に、算出されたΔPM2TDC値が所定の安定閾値より大か否かを判別する(ステップS3)。ΔPM2TDCが所定安定閾値より小さい場合は、エンジン運転状態が安定状態と判断して安定判定カウントを示す変数STcを1だけインクリメントする(ステップS4)。これに対して、ΔPM2TDCが所定安定閾値より大きい場合は、エンジン運転状態が不安定状態と判断して変数STcを1だけデクリメントする(ステップS5)。続いて、STcが所定数以上か否かを判別する(ステップS6)。STcが所定数以上である場合は、は、エンジン運転状態が十分に安定状態にあるとして、続くエンジン行程確認用PM値検索サブルーチンSS2を実行する。これに対して、STcが所定数に達していない場合は、エンジン運転状態が十分に安定状態ではないと判断してルーチンを終了する。ステップS6の判別においては、ある一定の時間内にSTcが所定数以上であるか否かを判別すること、もしくは別のカウンタ(図示せず)を用いて所定ルーチン実行回数中にSTcが所定数以上に達したか否かを判別すること、などを追加することができる。行程確認用PM値検索サブルーチンSS2を実行した後、続いて現在のクランク位置番号が所定番号であるか否かを判別する(ステップS7)。この所定番号は、クランク1回転中の任意の位置に対応する任意の数の番号を取り得る。現在のクランク位置番号が所定番号のときは、エンジン行程判別サブルーチンSS3へと進み、サブルーチンの実行後、メインルーチンへ戻りルーチンを終了する。現在のクランク位置番号が所定番号でないときは、そのままエンジン行程判別メインルーチンを終了する。
【0013】
行程確認用PM値検索サブルーチンSS2は、後に続くエンジン行程判別サブルーチンSS3において用いるいくつかの変数を設定するルーチンである。行程確認用PM値検索サブルーチンSS2の動作については、後に説明する。
図3は、PM値記憶サブルーチンSS1を示すフローチャートである。PM値記憶サブルーチンにおいては、まず、現在の吸気管内圧値PMを読み込む(ステップS31)。次に、バッファRAM60に記憶されているPM1Pn値をPM2Pnに上書きする(ステップS32)。ここで、nはクランク角パルスによって表されるエンジンのステージ番号であり、例えば初期値を1とする1から16の範囲の整数である。続いて、バッファRAM60に記憶されているPMCn値をPM1Pnに上書きし(ステップS33)、更に、ステップS31で読み込んだPM値をPMCnに上書きする(ステップS34)。例えば、n=1のとき、ステップS32では、PM1P1に記憶された値がPM2P1に上書きされる。続いて、ステップS33では、PMC1に記憶された値がPM1P1に上書きされ、ステップ34では、読み取られた現在PM値がPMC1に上書きされる。かかる動作を実行することによって、PMCnには、現在のPM値が記憶され、PM1Pn及びPM2Pnには、クランク1回転前のPM値及びクランク2回転前のPM値が、それぞれ記憶されるのである。
【0014】
次に、現在のPM2Pn値を2PMpとする(ステップS35)。続いて、現在のPM1Pn値を1PMpとし(ステップS36)、現在のPMCn値をPMcとする(ステップS37)。次に、nが所定数すなわち16に達したか否かを判別する(ステップS38)。nが所定数に達していない場合は、nを1だけ増加し(ステップS39)、サブルーチンを終了する。これに対して、nが所定数に達していた場合は、nを1に戻し(ステップS40)、サブルーチンを終了する。かかるサブルーチンを用いることによって、現在のクランク回転におけるPM値PMc、クランクの1回転前におけるPM値1PMp、及びクランクの2回転前におけるPM値2PMpを設定かつ記憶することが可能となる。
【0015】
図4は、行程確認用PM値検索サブルーチンSS2を示すフローチャートである。行程確認用PM値検索サブルーチンSS2においては、まず、F_CYCが1か否かを判別する(ステップS51)。F_CYCはエンジン行程が既に判別済みかどうかを表すフラグ値であり、エンジン行程が既に判別済みの場合は1、未判別の場合は0となる。よって、ステップS51において、F_CYCが1でない場合は、エンジン行程は未判別であるとしてそのままルーチンを終了する。一方、ステップS51においてF_CYCが1であると判別した場合は、クランク角度位置がエンジン行程基準位置か否かを判別する(ステップS52)。エンジン行程基準位置とは、4サイクルエンジンの1エンジンサイクルの4行程(吸気・圧縮・膨張・排気)を1単位としたときの基準位置であり、本実施例では、吸気行程の開始位置である。
【0016】
ステップS52において、クランク角度位置がエンジン行程基準位置ではない場合は、ENGDTCが0か否かを判別する(ステップS53)。ENGDTCは、エンジン行程を「吸気・圧縮行程」及び「膨張・排気行程」に分類したときの分類番号を表すものであり、吸気・圧縮行程の場合は0、膨張・排気行程の場合は1となる。よって、ステップS53においてENGDTCが0と判別した場合は、エンジンが吸気・圧縮行程として、現在PM値PMcがPMLOWより小さいか否かを判別する(ステップS54)。ここで、PMLOWは、メインルーチン動作中に検知した吸気管内圧の最小値であり、すなわち吸気・圧縮行程での吸気管内圧の最小値である。PMcがPMLOWより小さい場合は、現在のPMc値をPMLOWに上書き更新する(ステップS55)。
【0017】
続いて、現在クランク位置番号をPMPKSTGに上書き更新し(ステップS56)、サブルーチンを終了する。ここで、PMPKSTGは、上述のPMLOWを検出したクランク位置番号を記憶する変数である。ステップS53において、ENGDTCが0でないと判別した場合は、現在のクランク位置番号がPMPKSTGの番号と一致するか否かを判別する(ステップS57)。現在クランク位置番号がPMPKSTGと一致する場合は、PMc値をPMHIGHに上書き更新し(ステップS58)、サブルーチンを終了する。ここで、PMHIGHは、現在までに検知した吸気管内圧の最大値である。ステップS57において、現在クランク位置番号がPMPKSTGと一致しない場合は、そのままサブルーチンを終了する。
【0018】
一方、ステップS52において、クランク角度位置がエンジン行程基準位置である場合は、現在のPMc値をPMLOWに上書き更新し(ステップS59)、同様にPMc値をPMHIGHに上書き更新する(ステップS60)。続いて、現在クランク位置番号をPMPKSTGに上書き更新し(ステップS61)、サブルーチンを終了する。S59〜S61のステップを経ることによって、吸気行程の開始位置でのPM値の基準値が与えられる。
【0019】
図5は、エンジン行程判別サブルーチンSS3を示すフローチャートである。エンジン行程判別サブルーチンSS3においては、まず、F_CYCが1か否かを判別する(ステップS71)。F_CYCが1でない場合は、エンジン行程未判別として、現在PM値PMcが1回転前のPM値1PMpより大きいか否かを判別する(ステップS72)。PMcが1PMpより大きい場合は、PMc及び1PMpを用いて吸気管内圧差ΔPM1TDCを算出する(ステップS73)。ここで、ΔPM1TDCは以下の式を用いて算出される。
【0020】
ΔPM1TDC=PMc−1PMp
次に、算出されたΔPM1TDC値が所定閾値TH1より大か否かを判別する(ステップS74)。ΔPM1TDCがTH1より大きい場合は、エンジン行程が膨張・排気行程であると判断し、変数ENGDTCを1とする(ステップS75)。続いて、エンジン行程判別が行われたことを示すフラグ値F_CYCを1にして(ステップS76)、サブルーチンを終了する。ステップS72においてPMcが1PMより小さいと判別した場合、及びステップS74においてΔPM1TDCがTH1より小さいと判別した場合は、ともにエンジン行程が不明又は判別不能と判断して、フラグ値F_CYCを0とし(ステップS77)、サブルーチンを終了する。
【0021】
一方、ステップS71において、F_CYCが1であると判別した場合は、ENGDTCが1か否かすなわちエンジン行程が膨張・排気行程か否かを判別する(ステップS78)。ENGDTCが1でない場合は、エンジン行程の確認は実施せず、現在のF_CYC値及びENGDTC値を維持して(ステップS79)、サブルーチンを終了する。ステップS78において、ENGDTCが1である場合は、行程確認用PM値検索サブルーチンSS2で設定されたPMHIGH値がPMLOW値以上であるか否かを判別する(ステップS80)。PMHIGHがPMLOW以上である場合は、PMHIGH及びPMLOWを用いて吸気管内圧差ΔPM1TDCを算出する(ステップS81)。ここで、ΔPM1TDCは以下の式を用いて算出される。
【0022】
ΔPM1TDC=PMHIGH−PMLOW
次に、算出されたΔPM1TDC値が所定閾値THaより大か否かを判別する(ステップS82)。ΔPM1TDCがTHaより小さい場合は、続いてΔPM1TDCが所定閾値THbより大か否かを判別する(ステップS83)。ΔPM1TDCがTHbよりも小さい場合は、エンジン行程が不明又は判別不能と判断して、フラグ値F_CYCを0とし(ステップS84)、サブルーチンを終了する。また、ステップS80においてPMHIGHがPMLOWより小さいと判別した場合、及びステップS83においてΔPM1TDCがTHbより大きいと判別した場合は、エンジン行程の確認は実施せず、ステップS79に進んで現在のF_CYC値及びENGDTC値を維持し、サブルーチンを終了する。ステップS82において、ΔPM1TDCがTHaより大きいと判別した場合は、エンジン行程が膨張・排気行程であると判断し、変数ENGDTCを1とする(ステップS85)。続いて、エンジン行程判別が行われたことを示すフラグ値F_CYCを1にして(ステップS86)、サブルーチンを終了する。
【0023】
かかるサブルーチンを実行することによって、エンジン行程判別が行われていないすなわちF_CYCが0の場合は、ステップS71〜ステップS76までのステップを経て、エンジン行程が膨張・排気行程であることを判別し、エンジン行程が既に行われているすなわちF_CYCが1の場合は、ステップS71〜ステップS82〜ステップS86までのステップを経て、エンジン行程が膨張・排気行程であることを確認することができるのである。
【0024】
図6は、定常状態にあるエンジンのスロットル開度、エンジン行程、吸気管内圧及びクランク角パルスのタイミングを示している。クランク角パルスは、1つのエンジンサイクル(吸気・圧縮・膨張・排気)において32回検出される。従って、クランク角パルスは、クランク1回転毎に16回検出されることになる。定常状態にあるエンジンでは、スロットル開度はほぼ一定であり、吸気管内圧は1つのエンジンサイクル毎に周期的に増減を繰り返している。図2で示されたエンジン行程判別メインルーチンは、クランク角パルスを検知する毎に実行されるが、現在のPM値とクランク2回転前のPM値との差が小さいため、ステップS3で行われる判別は常に安定状態となる。例えば、A2を現在のクランク角度位置とした場合、A1はクランク2回転前のクランク角度位置、B1はクランク1回転前のクランク角度位置をそれぞれ示すことになる。このとき、ΔPM2TDCであるA1でのPM値とA2でのPM値との差の絶対値は、ほぼ0又は非常に小さい値となり、所定の安定閾値よりは小さいと判別されるのである。
【0025】
また、ステップS7で実行される判別の所定位置番号をそれぞれA1、B1、A2、B2とすると、一つの例として、現在クランク角度位置がA2でかつエンジン行程が未判別すなわちF_CYCが0である場合は、行程確認用PM値検索サブルーチンSS2においては、ステップS51の判別によりそのままの変数データを維持したままサブルーチンを終了する。エンジン行程判別サブルーチンSS3においては、ステップS71からステップS72に進む。ここで図6より、PMcすなわちA2での吸気管内圧は、1PMpすなわちB1での吸気管内圧より小さいため、ステップS77に進み、エンジン行程未判別すなわちF_CYCが0としてルーチンを終了する。別の例として、現在クランク角度位置がB2でかつF_CYCが0である場合は、エンジン行程判別サブルーチンSS3においては、ステップS71からステップS72に進む。ここでPMcすなわちB2での吸気管内圧は、1PMpすなわちA2での吸気管内圧より非常に大きいため、ステップS73〜ステップS76へと進んでENGDTC及びF_CYCをそれぞれ1に設定する。つまり現在のエンジン行程が膨張・排気行程であることを判別するのである。
【0026】
また、現在クランク角度位置がB2でかつF_CYC及びENGDTCがともに1である場合は、行程確認用PM値検索サブルーチンSS2においては、ステップS51〜ステップS58に進み、PMPKSTGのクランク位置番号(例えば今回すなわちB2)における吸気管内圧値をPMHIGHに設定する。続いて、エンジン行程判別サブルーチンSS3においては、ステップS71〜ステップS80と進む。このとき、PMLOWは以前のクランク角度位置における吸気管内圧の最小値(例えばA2における吸気管内圧値、図6参照)であるため、ステップS80〜ステップS82に進む。ここでステップS81において算出されるΔPM1TDCは所定閾値THaより大きくなり、ステップS85以降へと進んでENGDTC及びF_CYCをそれぞれ1に設定する。つまり現在のエンジン行程が膨張・排気行程であることを確認するのである。
【0027】
図7は、別の一例として、膨張行程中に加速すなわちスロットル開度を大きくしたときのエンジンのスロットル開度、エンジン行程、吸気管内圧及びクランク角パルスのタイミングを示している。加速状態にあるエンジンでは、スロットル開度の増加とともにエンジン回転数が増加するため、吸気管内圧はそれまでの定常状態より増加し、周期的な増減を示さなくなる。このとき、エンジン行程判別メインルーチンSS3は、ステップS3における判別で安定カウントダウンすなわち不安定状態と判別することになる。例えば、現在のクランク角度位置をA2とすると、PMcはA2におけるPM値となり、2PMpはA1におけるPM値となる。よってΔPM2TDCは大きな値となり、ステップS3における安定閾値を超えてしまう。また、A2近傍のクランク角度位置におけるPM値も、同様に2回転前のPM値よりも非常に大きいため、A2の前後の割り込み処理においてもメインルーチンは不安定状態と判別することになる。かかる場合には、本発明のエンジン行程判別装置は、安定カウンタSTcをデクリメントすることによって行程判別を実行しないことにして、システムがエンジン運転状態を誤判断しないように制御される。
【0028】
以上のような構成による装置を用いることによって、エンジンのエンジン行程を、エンジンの運転状態が定常状態又は過渡状態(加速・減速状態)にかかわらず、正しく判別することが可能となる。
【0029】
【発明の効果】
上記したことから明らかなように、本発明によるエンジンの行程判別装置は、エンジンの負荷の不安定状態における誤判断を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エンジン及びエンジン制御部の構成を示すブロック図である。
【図2】エンジン行程判別メインルーチンを示すフローチャートである。
【図3】図2で示されたエンジン行程判別メインルーチン中に実行されるPM値記憶サブルーチンを示すフローチャートである。
【図4】図2で示されたエンジン行程判別メインルーチン中に実行される行程確認用PM値検索サブルーチンを示すフローチャートである。
【図5】図2で示されたエンジン行程判別メインルーチン中に実行されるエンジン行程判別サブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】エンジンが定常状態にある場合における、スロットル開度、エンジン行程、吸気管内圧及びクランク角パルスの変化の関係を示すタイムチャートである。
【図7】エンジンが過渡状態すなわち膨張行程中の加速状態にある場合における、スロットル開度、エンジン行程、吸気管内圧及びクランク角パルスの変化の関係を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
10 エンジン
12 吸気管
18 クランクシャフト
26 吸気管内圧センサ
32 クランク角センサ
50 電子制御ユニット(ECU)
54 中央処理装置(CPU)
Claims (4)
- 単気筒4のサイクル内燃エンジンの行程判別装置であって、
前記4サイクル内燃エンジンの吸気管内圧を所定クランク角度位置毎に順次PM値として検出する吸気管内圧検出手段と、
前記4サイクル内燃エンジンの負荷の安定状態を検知する検知手段と、
前記検知手段によってエンジン負荷の安定状態を検知した場合にのみ、前記PM値の変化状態に基づいて前記4サイクル内燃エンジンの行程判別を実行する行程判別手段と、
からなることを特徴とする行程判別装置。 - 前記検知手段は、現在のクランク角度位置におけるPM値とその直前のエンジンサイクルでの前記クランク角度位置と同一のクランク角度位置におけるPM値との差が所定閾値より小である場合にエンジン負荷が安定状態であると判断する判定手段を含むことを特徴とする請求項1記載の行程判別装置。
- 前記判別手段は、1つのエンジンサイクル中におけるPM値の最大値及び最小値に基づいて前記4サイクル内燃エンジンの行程を判別することを特徴とする請求項1記載の行程判別装置。
- 前記判別手段は、前記判定手段において前記エンジン負荷の安定状態が所定回数以上判断されたときにのみ、前記4サイクル内燃エンジンの行程判別を行うことを特徴とする請求項1記載の行程判別装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003140468A JP2004340094A (ja) | 2003-05-19 | 2003-05-19 | 単気筒の4サイクル内燃エンジンの行程判別装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003140468A JP2004340094A (ja) | 2003-05-19 | 2003-05-19 | 単気筒の4サイクル内燃エンジンの行程判別装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2004340094A true JP2004340094A (ja) | 2004-12-02 |
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ID=33529189
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2003140468A Pending JP2004340094A (ja) | 2003-05-19 | 2003-05-19 | 単気筒の4サイクル内燃エンジンの行程判別装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2004340094A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010223136A (ja) * | 2009-03-24 | 2010-10-07 | Honda Motor Co Ltd | エンジン始動制御装置 |
-
2003
- 2003-05-19 JP JP2003140468A patent/JP2004340094A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2010223136A (ja) * | 2009-03-24 | 2010-10-07 | Honda Motor Co Ltd | エンジン始動制御装置 |
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A131 | Notification of reasons for refusal |
Effective date: 20070109 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 |
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A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20070308 |
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A02 | Decision of refusal |
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