JP2004332755A - 転がり軸受のエアオイル潤滑構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】十分な潤滑性能を維持し、かつ騒音低減が可能な転がり軸受のエアオイル潤滑構造を提供する。
【解決手段】転がり軸受1の内輪2の外径面に、この内輪2の転走面2aと並ぶ斜面部2bを設ける。この斜面部2bに隙間δを介して沿うノズル部材6を設ける。ノズル部材6に上記隙間δに開口するエアオイルの吐出孔8を設ける。このノズル部材6は内輪2の円周方向の一部の長さのものとする。ノズル部材6をハウジング9に取付ける外輪間座10等のノズル取付リングを設ける。このノズル取付リングには、ノズル部材6の設けられた円周方向範囲の残りとなる円周方向範囲の一部に、内径面から外径面に貫通した排気流路14を設ける。
【選択図】 図1
【解決手段】転がり軸受1の内輪2の外径面に、この内輪2の転走面2aと並ぶ斜面部2bを設ける。この斜面部2bに隙間δを介して沿うノズル部材6を設ける。ノズル部材6に上記隙間δに開口するエアオイルの吐出孔8を設ける。このノズル部材6は内輪2の円周方向の一部の長さのものとする。ノズル部材6をハウジング9に取付ける外輪間座10等のノズル取付リングを設ける。このノズル取付リングには、ノズル部材6の設けられた円周方向範囲の残りとなる円周方向範囲の一部に、内径面から外径面に貫通した排気流路14を設ける。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、工作機械用主軸支持部など一般産業機械に用いられる転がり軸受のエアオイル潤滑構造に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
軸受における潤滑の目的は、転がり面および滑り面に薄い油膜を形成して、金属と金属が直接接触するのを防ぐことであり、その潤滑により以下に挙げるような効果が得られる。
▲1▼ 摩擦および摩耗の低減
▲2▼ 摩擦熱の排出
▲3▼ 軸受寿命の延長
▲4▼ 錆止め
▲5▼ 異物の侵入防止
潤滑によりこれらの効果を発揮させるためには、軸受の使用条件に適した潤滑方法を採用すると共に、良質な潤滑剤を選定することが必要である。また、潤滑剤中のダスト除去、外部からの異物の侵入防止、および潤滑剤の洩れ防止のために、適切な密封構造の設計が必要である。
【0003】
一般に、工作機械の主軸の支持に用いられる転がり軸受では、潤滑油の攪拌による発熱をできるだけ小さくするために、使用する潤滑油量は非常に少なく制限される。図7は、このような転がり軸受での使用潤滑油量と、摩擦損失および軸受温度との関係を示す。
同図において、符号IIで示す潤滑油量領域はエアオイル潤滑の場合の油量領域に該当している。エアオイル潤滑は、潤滑油を軸受ごとに最適間隔で正確に計量して送り出し、搬送エアと混合して給油管の末端まで連続的に圧送した後、軸受に向けて設けたノズルで潤滑必要部に吹き付けものであり、工作機械の主軸の高速化、温度上昇低減に適合する潤滑方法として広く用いられている。
【0004】
図8は上記エアオイル潤滑方法に用いられるシステムの概略構成を示す。同システムAにおいて、タンク34からポンプ35により汲み出される潤滑油は、圧力スイッチ39やソレノドバルブ40の介在するエア供給路37からのエアで油路36に送り出される。前記エア供給路37から分岐するエア分岐供給路38に送り出されたエアと、前記油路36からの潤滑油とは、前記油路36とエア分岐供給路38の合流部で混合してエアオイルとされ、このエアオイルが軸受周辺部に構成されたエアオイルライン43を経て転がり軸受33に圧送される。エア供給路37およびエア分岐供給路38に送られるエアは、その上流のエアフィルタ41やミストセパレータ42でろ過される。ソレノイドバルブ40はタイマー45により潤滑対象である転がり軸受33に応じた最適間隔で間欠的にエア供給路37を開放する。これにより、エアオイルとして混合される潤滑油の油量が正確に計量されて送り出される。
【0005】
上記エアオイルライン43は、例えば図9のように、転がり軸受33に隣接して設けられたノズル部材56のエアオイル吐出孔58などからなり、転がり軸受33に向けた前記エアオイル吐出孔58からエアオイルが転がり軸受33の潤滑必要部に噴射される。
【0006】
一般に、転がり軸受33の高速回転時には、軸受温度が上昇するため潤滑油の油膜形成能が低下する。加えて、軸受33における回転部周辺の空気が連れ回って形成されるエアカーテンも増大するため、高速回転時ほど潤滑条件が厳しくなり、ノズル部材56から供給される潤滑油も軸受内部へ入り難くなる。このため、エアオイル潤滑におけるエア流量は、ノズル部材56から供給されたエア噴流が最高回転時でも上記エアカーテンを貫通し、潤滑必要部を潤滑するように決定されている。すなわち、エアオイル潤滑におけるエア噴流には、
▲1▼ 給油管の端末まで潤滑油を連続的に圧送する
▲2▼ エアカーテンをエアオイルが貫通する
という2つの働きが要求される。
【0007】
ところが、エアカーテンを貫通し、軸受内部へ到達したエア噴流は転動体57(図9)の公転により断続的に切断され、これによって音が発生する。
【0008】
図10は、図9の潤滑構造での発生音の周波数分析結果を示すグラフである。同図のグラフから、転動体57(図9)の公転周期に同期した周波数(4050Hz)のピークを確認することができる。このことは、転動体57の公転によってエア噴流が切断され、音が発生していることを証明している。つまり、高速回転する軸受33ほど転動体57の公転周期は短く、高音質で耳障りな音が発生する。また、エア流量が多いほど音は大きくなる。
【0009】
このような音の発生を解決するものとして、図11に示す環境対応型の潤滑構造が提案されている(例えば特許文献1)。
この潤滑構造では、軸受33の内輪52の外径面に斜面部52bが設けられ、この斜面部52bに隙間δ(図11(B))を持って沿うノズル部材56Aからエアオイルが噴射され、斜面部52bに潤滑油が付着する。付着した潤滑油は、内輪52の回転に伴って発生する遠心力により、軸受内部へと搬送される。ノズル部材56Aの先端部56Aaaは転動体57の近傍に位置しているため、潤滑油はエアカーテンを貫通することなく、軸受内部へ到達することができる。また、エアカーテンを貫通する必要がなく、潤滑油を内輪斜面部52bに付着させるだけで良いので、エア流量は図9に示した潤滑構造の場合ほど必要でない。つまり、図11の潤滑構造では、少ないエア流量での運転が可能となり、音の発生を抑制することができる。したがって環境対応型のエアオイル潤滑構造となる。図12は、図11の潤滑構造での発生音の周波数分析結果を示すグラフである。軸受サイズや回転速度は図9の潤滑構造の場合と同じである。
【0010】
ところで、図11の潤滑構造において、潤滑油を内輪斜面部52bに付着させた後のエア噴流は不要となる。しかし、この潤滑構造では、図13に示すように、内輪斜面部52bとノズル部材56Aとの隙間δは全周にわたって狭くなっているので、エア噴流は潤滑油と共に積極的に軸受内部へ流入する。そのため音が発生する。
すなわち、図14に拡大断面図で示すように、エア噴流は内輪斜面部52bに沿って軸受内部とは反対側の方向▲1▼、内輪斜面部52bに沿って軸受内部に至る方向▲2▼、および内輪斜面部52bに形成され円周方向に伸びる溝55に沿った方向▲3▼に逃げる以外に逃げ場がなく、その大半は▲2▼の方向に流れる。この方向▲2▼のエア噴流が公転する転動体57に断続的に遮断されるので、これが音の発生の原因になる。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−54643号公報
【0012】
この発明の目的は、十分な潤滑性能を維持し、かつより一層の騒音低減が可能な転がり軸受のエアオイル潤滑構造を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明の転がり軸受のエアオイル潤滑構造は、転がり軸受の内輪の外径面に、この内輪の転走面と並ぶ斜面部を設け、この斜面部に隙間を介して沿うノズル部材を設け、このノズル部材に上記隙間に開口するエアオイルの吐出孔を設け、このノズル部材は上記内輪の円周方向の一部の長さのものとしている。
上記斜面部の角度は、上記吐出孔から吐出されたエアオイル中の上記斜面部に付着した潤滑油が、内輪の回転による遠心力とオイルの表面張力によって上記転走面へ流れる角度とする。転がり軸受は、アンギュラ玉軸受あるいは円筒ころ軸受等とする。
この構成によると、ノズル部材の設けられた円周方向範囲の残りとなる円周方向範囲は円弧状の空間となるが、この空間は軸受内部より低い気圧となっている。そのため、内輪斜面部に潤滑油を付着させた後のエア噴流は、上記空間であるノズル部材の周辺部へ向かって積極的に流れることとなり、エア噴流が軸受内部へ流入するのを防ぐことができる。このため、エア噴流が公転する転動体に断続的に遮断されることがなく、これに起因する音の発生をなくすことができ、騒音をより低減できる。
すなわち、エアオイル潤滑では、軸受内部への潤滑油の供給だけでなく、排油も重要となる。潤滑油の供給が円滑に行われている場合でも、排油が十分に行われていなければ、軸受内部の潤滑油量が増加し、発熱、焼損の原因となる。この発明は、ノズル部材を上記のように円周方向の一部の長さのものとしたため、周辺部に空間を設けることができ、排油に必要な空間を大きく設けることができる。その結果、排油を十分に行うことができ、潤滑の信頼性を向上させることができる。
【0014】
この発明において、上記内輪の斜面部の途中に円周溝を設け、上記ノズル部材の吐出孔を上記円周溝に対面して開口するものとしても良い。このように、内輪の斜面部に、ノズル部材の吐出孔に対面する円周溝を設けた場合、円周溝により、吐出孔から吐出されるエアオイルを全周に行き渡らせる作用が得られ、ノズル部材側は内輪斜面部に沿った凹凸のない面とできる。このため、エアオイルの吐出量が少量となって円周上でのエアの出方が不均一となっても、内輪斜面部に作用する遠心力のため、油の滞留がなく、安定して軸受内に潤滑油を供給でき、軸受温度の安定化および騒音低下が可能となる。このような円周溝を設けた場合にも、ノズル部材を周方向の一部の長さのものとしたことによる上記騒音低減の効果が得られる。
【0015】
また、この発明において、上記ノズル部材と一体または別体に、ハウジングの内径面に嵌合してノズル部材をハウジングに取付けるノズル取付リングを設け、このノズル取付リングにおける、ノズル部材の設けられた円周方向範囲の残りとなる円周方向範囲の一部に、内径面から外径面に貫通した排気流路を設けても良い。この排気流路は、孔であっても、溝であっても良い。
このように構成した場合、ノズル部材の周辺部へ流れたエア噴流が、排気流路を経て外部に流出することとなり、エア噴流が軸受内部へ流入するのを防ぐのに効果が上がり、騒音をより低減できる。
【0016】
さらに、この発明において、ノズル部材の円周方向両端の幅面を、概ね流線形状の断面形状としても良い。ここでいう概ね流線形状とは、ノズル部材の端面の全体が平坦面に形成されている場合よりも、表面に沿う流体流れが滑らかとなる形状であれば良く、理想形状の流線形や円弧曲線の断面形状に限らず、複数の平坦面が繋がることで、流体流れが滑らかにになるようにした面であっても良い。
このようにノズル部材の端部の幅面を概ね流線形状とした場合、軸受における回転部周辺の空気が連れ回って形成されるエアカーテンが、ノズル部材の幅面を通過する際に発生する風切り音を防止することができ、騒音低減効果がより向上する。
【0017】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施形態を図1,図2と共に説明する。転がり軸受1は、内輪2と外輪3の転走面2a,3a間に複数の転動体4を介在させたものである。転動体4は、例えばボールからなり、保持器5のポケット5a内に保持される。この転がり軸受1の内輪2の外径面に、転走面2aに続く斜面部2bを設け、この斜面部2bに隙間δを持って沿うノズル部材6を設ける。斜面部2bは、内輪の幅面から転走面2aに続いて設け、また内輪2の反負荷側(軸受背面側)の外径面に設ける。転がり軸受1がアンギュラ玉軸受である場合、内輪2のステップ面を設ける部分の外径面が上記斜面部2bとされる。
【0018】
ノズル部材6は、その先端部6aaを保持器5の内径面と内輪2の外径面の間における転動体4の近傍に位置させる。図1(A)の矢符号I−Iから見た状態を示す図1(B)のように、ノズル部材6は、内輪2の円周方向の一部の長さのものであり、いわば円弧状に湾曲した短冊状とされている。ノズル部材6は、転がり軸受1に軸方向に隣接して設けられ、側面の内径部から軸方向に伸びる鍔状部6aを有している。この鍔状部6aは、平坦な内径面が内輪2の斜面部2bと同一角度αの傾斜面に形成されて、保持器5の直下まで伸び、その先端がノズル部材6の上記先端部6aaとなる。ノズル部材6の鍔状部6aと内輪2の斜面部2bとの間の隙間δは、内輪2と軸15との嵌合、および内輪2の温度上昇と遠心力による膨張とを考慮し、運転中に接触しない範囲で出来るだけ小さな寸法に設定される。
【0019】
内輪2の斜面部2bには、円周溝7が設けられている。円周溝7は円周方向に延びて環状に形成されており、断面がV字状に形成されている。ノズル部材6は、内輪斜面部2bの円周溝7に対面して吐出口8aが開口する吐出孔8が設けられている。吐出孔8は、内輪斜面部2bに対して傾斜して設けられている。吐出孔8は、ノズル部材6の円周方向の1か所に設けられている。ここでは、吐出孔8の位置P(図1(B))から円周方向に左右に45°だけ振り分けた位置が両端の幅面となる90°分の円弧状となるように、ノズル部材6が形成されている。ノズル部材6は樹脂製とされており、上記した複雑な形状を成形加工により安価に製作することができる。
【0020】
ノズル部材6は、軸受1の外輪3を取付けたハウジング9の内径面に取付けられる。ノズル部材6のハウジング9への取付けは、ノズル部材6と別体のノズル取付リングである外輪間座10を介して行われる。なお、ノズル取付リングと一体にノズル部材6を設けても良い。ここでは、ノズル取付リングである外輪間座10の一側面の内径部に形成した環状の切欠凹部10aに、ノズル部材6が配置される。ノズル部材6は、止めねじ12(図1(B))により外輪間座10に取付けられる。外輪間座10の上記切欠凹部10aにおけるノズル部材6の設けられた円周方向範囲の残りとなる円周方向範囲の一部には、内径面から外径面に貫通した排気流路14(図1)が切欠状に設けられている。ノズル部材6の軸受外の部分の内径面は、内輪間座11に対して接触しない程度に近接している。
【0021】
ノズル部材6の吐出孔8の入口は、ハウジング9からノズル部材6にわたって設けられたエアオイル供給路13に連通している。エアオイル供給路13は、ハウジング9にエアオイル供給口13aを有し、ハウジング9の内面にハウジング部出口13bを有している。ハウジング部出口13bは、外輪間座10の外径面に設けられた円弧状の連通溝13cに連通し、連通溝13cから、径方向に貫通した経路13dを介して、ノズル部材6の吐出孔8に連通している。エアオイル供給口13aは、圧縮した搬送エアに潤滑油を混合させたエアオイルの供給源(図示せず)に接続されている。
【0022】
上記構成のエアオイル潤滑構造の作用を説明する。図1のエアオイル供給口13aより供給されたエアオイルは、ノズル部材6の吐出孔8を経て内輪斜面部2bの円周溝7に噴射される。円周溝7に付着した油は、遠心力の作用により内輪斜面部2bに導かれ、軸受1内に潤滑油として流入する。
【0023】
また、ノズル取付リングである外輪間座10の切欠凹部10aにおけるノズル部材6の設けられた円周方向範囲の残りとなる円周方向範囲は円弧状の空間E(図1(B)となっており、この空間Eは軸受内部より低い気圧となっているので、内輪斜面部2bに潤滑油を付着させた後のエア噴流は、上記空間Eであるノズル部材6の周辺部へ向かって図1(B)に矢印Cで示すように積極的に流れる。さらに、切欠凹部10aにおけるノズル部材6の設けられた円周方向範囲の残りとなる円周方向範囲の一部には、内径面から外径面に貫通した切欠状の排気流路14が設けられているので、ノズル部材6の周辺部へ流れたエア噴流が、この排気流路14を経て外部に流出することとなり、エア噴流が軸受内部へ流入するのを防ぐことができる。このため、エア噴流が公転する転動体4に断続的に遮断されることがなく、これに起因する音の発生をなくすことができ、騒音をより低減できる。
【0024】
軸受内部への潤滑油の供給が円滑に行われている場合でも、排油が十分に行われていなければ、軸受内部の潤滑油量が増加し、発熱・損傷する原因となるが、上記排気流路14は、軸受内部で余剰となった潤滑油を排出させる通路も兼ねる。そのため、軸受内部の潤滑油量が増加するのを防止して、発熱・損傷が生じることを回避することができる。
以上より、このエアオイル潤滑構造は、従来の内輪斜面部の全周に対面するノズル部材を設けたものに比べて、軸受内部に流入するエア噴流の量を削減することができて、音を削減することができる。
【0025】
また、内輪2の斜面部2bに、ノズル部材6の吐出孔8に対面する円周溝7を設けているので、その円周溝7により、吐出孔8から吐出されるエアオイルを全周に行き渡らせる作用が得られ、ノズル部材6側は内輪斜面部2bに沿った凹凸のない面とできる。このため、エアオイルの吐出量が少量となって円周上でのエアの出方が不均一となっても、内輪斜面部2bに作用する遠心力のため、油の滞留がなく、安定して軸受1内に潤滑油を供給でき、軸受温度の安定化および騒音低下が可能となる。
【0026】
図3は、図1,図2の実施形態にかかる転がり軸受1のエアオイル潤滑構造を応用したスピンドル装置の一例を示す。このスピンドル装置は、工作機械に応用されるものであり、主軸15の端部に工具またはワークのチャックが取付けられる。主軸15は、軸方向に離れた複数の転がり軸受1により支持されており、これらの転がり軸受1に、図1,図2の潤滑構造が採用されている。各転がり軸受1の内輪2は主軸15の外径面に嵌合し、外輪3はハウジング9の内径面に嵌合している。これら内外輪2,3は、内輪押さえ25および外輪押さえ26により、ハウジング9内に固定されている。ハウジング9は、内周ハウジング9Aと外周ハウジング9Bの二重構造とされ、内外のハウジング9A,9B間に冷却媒体流路16が形成されている。内周ハウジング9Aは、その一部を図1(A)に示した構造としたものであり、前記エアオイル供給路13およびそのエアオイル供給口13aが設けられている。ハウジング9は、支持台17に設置され、ボルト18で固定されている。また、ハウジング9には、内径面における軸受1の設置部付近にエアオイル排気溝22が設けられ、エアオイル排気溝22は上記排気流路14に連通する。このエアオイル排気溝22に連通して、外部に開放されるエアオイル排気路23が設けられる。
【0027】
図4はこの発明の他の実施形態を示す。図4は、第1の実施形態の図1(B)に対応する図面であり、この実施形態では、ノズル部材6の円周方向両端の幅面を、概ね流線形状の断面形状としている。詳しくは、ノズル部材6の両幅面を断面円弧状の面としている。これにより、軸受1における回転部周辺の空気が連れ回って形成されるエアカーテンが、ノズル部材6の幅面を通過する際に発生する風切り音を防止することができ、騒音低減効果がより向上する。その他の構成,効果は第1の実施形態と同様である。
【0028】
図5はこの発明のさらに他の実施形態を示す。図5は、第1の実施形態における図1(B)に対応する図面であり、この実施形態でも、ノズル部材6の円周方向両端の幅面を、径方向に伸びる平坦面と、これに続いて内径側に伸びる傾斜面とでなる概ね流線形状の断面形状としている。このようなノズル部材6の形状の場合も、軸受におけるエアカーテンが、ノズル部材6の幅面を通過する際に発生する風切り音を防止することができ、騒音低減効果がより向上する。その他の構成,効果は第1の実施形態と同様である。
【0029】
図6はこの発明のさらに他の実施形態を示す。図6(B)は、第1の実施形態の図1(B)に対応する図面であり、図6(A)はその平面図を示す。この実施形態では、ノズル部材6の両端の幅面を、径方向に見て、先端に向けて狭くなる流線型の断面形状としている。ノズル部材6が固定される外輪間座10は、間座本体10Aの端部にこれと別体のC字状の部材10Bを接合して構成され、C字状の部材10Bの切欠部が排気流路14とされる。これにより、軸受1におけるエアカーテンが、ノズル部材6の幅面を通過する際に発生する風切り音を防止することができ、騒音低減効果がより向上する。その他の構成,効果は第1の実施形態と同様である。
【0030】
【発明の効果】
この発明の転がり軸受のエアオイル潤滑構造は、転がり軸受の内輪の外径面に、この内輪の転走面と並ぶ斜面部を設け、この斜面部に隙間を介して沿うノズル部材を設け、このノズル部材に上記隙間に開口するエアオイルの吐出孔を設け、このノズル部材は上記内輪の円周方向の一部の長さのものとしているので、十分な潤滑性能を維持し、かつ斜面部に沿うノズル部材を全周に渡って設けたものに比べて、より一層の騒音低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)はこの発明の第1の実施形態にかかる転がり軸受のエアオイル潤滑構造の断面図、(B)は(A)におけるI−I矢視方向から見たノズル部材の取付状態を示す図である。
【図2】同エアオイル潤滑構造の拡大断面図である。
【図3】同エアオイル潤滑構造を採用したスピンドル装置の断面図である。
【図4】この発明の他の実施形態にかかる転がり軸受のエアオイル潤滑構造におけるノズル取付状態を示す図である。
【図5】この発明のさらに他の実施形態にかかる転がり軸受のエアオイル潤滑構造におけるノズル取付状態を示す図である。
【図6】(A)はこの発明のさらに他の実施形態にかかる転がり軸受のエアオイル潤滑構造におけるノズル取付状態を示す平面図、(B)は同正面図である。
【図7】転がり軸受の潤滑における油量と温度上昇・摩擦損失との関係を示すグラフである。
【図8】従来の転がり軸受潤滑方法に用いられるシステムの概略図である。
【図9】従来の転がり軸受のエアオイル潤滑構造を示す断面図である。
【図10】同潤滑構造による転がり軸受の騒音値の周波数特性を示すグラフである。
【図11】(A)は従来の転がり軸受のエアオイル潤滑構造の他の例を示す断面図、(B)はその部分拡大断面図である。
【図12】同潤滑構造による転がり軸受の騒音値の周波数特性を示すグラフである。
【図13】(A)は従来の転がり軸受のエアオイル潤滑構造を示す断面図、(B)は(A)におけるII−II矢視方向から見たノズル部材の取付状態を示す図である。
【図14】同潤滑構造の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1…転がり軸受
2…内輪
2a…転走面
2b…斜面部
6…ノズル部材
7…円周溝
8…吐出孔
10…外輪間座(ノズル取付リング)
13…エアオイル供給路
14…排気流路
15…主軸
δ…隙間
【発明の属する技術分野】
この発明は、工作機械用主軸支持部など一般産業機械に用いられる転がり軸受のエアオイル潤滑構造に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
軸受における潤滑の目的は、転がり面および滑り面に薄い油膜を形成して、金属と金属が直接接触するのを防ぐことであり、その潤滑により以下に挙げるような効果が得られる。
▲1▼ 摩擦および摩耗の低減
▲2▼ 摩擦熱の排出
▲3▼ 軸受寿命の延長
▲4▼ 錆止め
▲5▼ 異物の侵入防止
潤滑によりこれらの効果を発揮させるためには、軸受の使用条件に適した潤滑方法を採用すると共に、良質な潤滑剤を選定することが必要である。また、潤滑剤中のダスト除去、外部からの異物の侵入防止、および潤滑剤の洩れ防止のために、適切な密封構造の設計が必要である。
【0003】
一般に、工作機械の主軸の支持に用いられる転がり軸受では、潤滑油の攪拌による発熱をできるだけ小さくするために、使用する潤滑油量は非常に少なく制限される。図7は、このような転がり軸受での使用潤滑油量と、摩擦損失および軸受温度との関係を示す。
同図において、符号IIで示す潤滑油量領域はエアオイル潤滑の場合の油量領域に該当している。エアオイル潤滑は、潤滑油を軸受ごとに最適間隔で正確に計量して送り出し、搬送エアと混合して給油管の末端まで連続的に圧送した後、軸受に向けて設けたノズルで潤滑必要部に吹き付けものであり、工作機械の主軸の高速化、温度上昇低減に適合する潤滑方法として広く用いられている。
【0004】
図8は上記エアオイル潤滑方法に用いられるシステムの概略構成を示す。同システムAにおいて、タンク34からポンプ35により汲み出される潤滑油は、圧力スイッチ39やソレノドバルブ40の介在するエア供給路37からのエアで油路36に送り出される。前記エア供給路37から分岐するエア分岐供給路38に送り出されたエアと、前記油路36からの潤滑油とは、前記油路36とエア分岐供給路38の合流部で混合してエアオイルとされ、このエアオイルが軸受周辺部に構成されたエアオイルライン43を経て転がり軸受33に圧送される。エア供給路37およびエア分岐供給路38に送られるエアは、その上流のエアフィルタ41やミストセパレータ42でろ過される。ソレノイドバルブ40はタイマー45により潤滑対象である転がり軸受33に応じた最適間隔で間欠的にエア供給路37を開放する。これにより、エアオイルとして混合される潤滑油の油量が正確に計量されて送り出される。
【0005】
上記エアオイルライン43は、例えば図9のように、転がり軸受33に隣接して設けられたノズル部材56のエアオイル吐出孔58などからなり、転がり軸受33に向けた前記エアオイル吐出孔58からエアオイルが転がり軸受33の潤滑必要部に噴射される。
【0006】
一般に、転がり軸受33の高速回転時には、軸受温度が上昇するため潤滑油の油膜形成能が低下する。加えて、軸受33における回転部周辺の空気が連れ回って形成されるエアカーテンも増大するため、高速回転時ほど潤滑条件が厳しくなり、ノズル部材56から供給される潤滑油も軸受内部へ入り難くなる。このため、エアオイル潤滑におけるエア流量は、ノズル部材56から供給されたエア噴流が最高回転時でも上記エアカーテンを貫通し、潤滑必要部を潤滑するように決定されている。すなわち、エアオイル潤滑におけるエア噴流には、
▲1▼ 給油管の端末まで潤滑油を連続的に圧送する
▲2▼ エアカーテンをエアオイルが貫通する
という2つの働きが要求される。
【0007】
ところが、エアカーテンを貫通し、軸受内部へ到達したエア噴流は転動体57(図9)の公転により断続的に切断され、これによって音が発生する。
【0008】
図10は、図9の潤滑構造での発生音の周波数分析結果を示すグラフである。同図のグラフから、転動体57(図9)の公転周期に同期した周波数(4050Hz)のピークを確認することができる。このことは、転動体57の公転によってエア噴流が切断され、音が発生していることを証明している。つまり、高速回転する軸受33ほど転動体57の公転周期は短く、高音質で耳障りな音が発生する。また、エア流量が多いほど音は大きくなる。
【0009】
このような音の発生を解決するものとして、図11に示す環境対応型の潤滑構造が提案されている(例えば特許文献1)。
この潤滑構造では、軸受33の内輪52の外径面に斜面部52bが設けられ、この斜面部52bに隙間δ(図11(B))を持って沿うノズル部材56Aからエアオイルが噴射され、斜面部52bに潤滑油が付着する。付着した潤滑油は、内輪52の回転に伴って発生する遠心力により、軸受内部へと搬送される。ノズル部材56Aの先端部56Aaaは転動体57の近傍に位置しているため、潤滑油はエアカーテンを貫通することなく、軸受内部へ到達することができる。また、エアカーテンを貫通する必要がなく、潤滑油を内輪斜面部52bに付着させるだけで良いので、エア流量は図9に示した潤滑構造の場合ほど必要でない。つまり、図11の潤滑構造では、少ないエア流量での運転が可能となり、音の発生を抑制することができる。したがって環境対応型のエアオイル潤滑構造となる。図12は、図11の潤滑構造での発生音の周波数分析結果を示すグラフである。軸受サイズや回転速度は図9の潤滑構造の場合と同じである。
【0010】
ところで、図11の潤滑構造において、潤滑油を内輪斜面部52bに付着させた後のエア噴流は不要となる。しかし、この潤滑構造では、図13に示すように、内輪斜面部52bとノズル部材56Aとの隙間δは全周にわたって狭くなっているので、エア噴流は潤滑油と共に積極的に軸受内部へ流入する。そのため音が発生する。
すなわち、図14に拡大断面図で示すように、エア噴流は内輪斜面部52bに沿って軸受内部とは反対側の方向▲1▼、内輪斜面部52bに沿って軸受内部に至る方向▲2▼、および内輪斜面部52bに形成され円周方向に伸びる溝55に沿った方向▲3▼に逃げる以外に逃げ場がなく、その大半は▲2▼の方向に流れる。この方向▲2▼のエア噴流が公転する転動体57に断続的に遮断されるので、これが音の発生の原因になる。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−54643号公報
【0012】
この発明の目的は、十分な潤滑性能を維持し、かつより一層の騒音低減が可能な転がり軸受のエアオイル潤滑構造を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明の転がり軸受のエアオイル潤滑構造は、転がり軸受の内輪の外径面に、この内輪の転走面と並ぶ斜面部を設け、この斜面部に隙間を介して沿うノズル部材を設け、このノズル部材に上記隙間に開口するエアオイルの吐出孔を設け、このノズル部材は上記内輪の円周方向の一部の長さのものとしている。
上記斜面部の角度は、上記吐出孔から吐出されたエアオイル中の上記斜面部に付着した潤滑油が、内輪の回転による遠心力とオイルの表面張力によって上記転走面へ流れる角度とする。転がり軸受は、アンギュラ玉軸受あるいは円筒ころ軸受等とする。
この構成によると、ノズル部材の設けられた円周方向範囲の残りとなる円周方向範囲は円弧状の空間となるが、この空間は軸受内部より低い気圧となっている。そのため、内輪斜面部に潤滑油を付着させた後のエア噴流は、上記空間であるノズル部材の周辺部へ向かって積極的に流れることとなり、エア噴流が軸受内部へ流入するのを防ぐことができる。このため、エア噴流が公転する転動体に断続的に遮断されることがなく、これに起因する音の発生をなくすことができ、騒音をより低減できる。
すなわち、エアオイル潤滑では、軸受内部への潤滑油の供給だけでなく、排油も重要となる。潤滑油の供給が円滑に行われている場合でも、排油が十分に行われていなければ、軸受内部の潤滑油量が増加し、発熱、焼損の原因となる。この発明は、ノズル部材を上記のように円周方向の一部の長さのものとしたため、周辺部に空間を設けることができ、排油に必要な空間を大きく設けることができる。その結果、排油を十分に行うことができ、潤滑の信頼性を向上させることができる。
【0014】
この発明において、上記内輪の斜面部の途中に円周溝を設け、上記ノズル部材の吐出孔を上記円周溝に対面して開口するものとしても良い。このように、内輪の斜面部に、ノズル部材の吐出孔に対面する円周溝を設けた場合、円周溝により、吐出孔から吐出されるエアオイルを全周に行き渡らせる作用が得られ、ノズル部材側は内輪斜面部に沿った凹凸のない面とできる。このため、エアオイルの吐出量が少量となって円周上でのエアの出方が不均一となっても、内輪斜面部に作用する遠心力のため、油の滞留がなく、安定して軸受内に潤滑油を供給でき、軸受温度の安定化および騒音低下が可能となる。このような円周溝を設けた場合にも、ノズル部材を周方向の一部の長さのものとしたことによる上記騒音低減の効果が得られる。
【0015】
また、この発明において、上記ノズル部材と一体または別体に、ハウジングの内径面に嵌合してノズル部材をハウジングに取付けるノズル取付リングを設け、このノズル取付リングにおける、ノズル部材の設けられた円周方向範囲の残りとなる円周方向範囲の一部に、内径面から外径面に貫通した排気流路を設けても良い。この排気流路は、孔であっても、溝であっても良い。
このように構成した場合、ノズル部材の周辺部へ流れたエア噴流が、排気流路を経て外部に流出することとなり、エア噴流が軸受内部へ流入するのを防ぐのに効果が上がり、騒音をより低減できる。
【0016】
さらに、この発明において、ノズル部材の円周方向両端の幅面を、概ね流線形状の断面形状としても良い。ここでいう概ね流線形状とは、ノズル部材の端面の全体が平坦面に形成されている場合よりも、表面に沿う流体流れが滑らかとなる形状であれば良く、理想形状の流線形や円弧曲線の断面形状に限らず、複数の平坦面が繋がることで、流体流れが滑らかにになるようにした面であっても良い。
このようにノズル部材の端部の幅面を概ね流線形状とした場合、軸受における回転部周辺の空気が連れ回って形成されるエアカーテンが、ノズル部材の幅面を通過する際に発生する風切り音を防止することができ、騒音低減効果がより向上する。
【0017】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施形態を図1,図2と共に説明する。転がり軸受1は、内輪2と外輪3の転走面2a,3a間に複数の転動体4を介在させたものである。転動体4は、例えばボールからなり、保持器5のポケット5a内に保持される。この転がり軸受1の内輪2の外径面に、転走面2aに続く斜面部2bを設け、この斜面部2bに隙間δを持って沿うノズル部材6を設ける。斜面部2bは、内輪の幅面から転走面2aに続いて設け、また内輪2の反負荷側(軸受背面側)の外径面に設ける。転がり軸受1がアンギュラ玉軸受である場合、内輪2のステップ面を設ける部分の外径面が上記斜面部2bとされる。
【0018】
ノズル部材6は、その先端部6aaを保持器5の内径面と内輪2の外径面の間における転動体4の近傍に位置させる。図1(A)の矢符号I−Iから見た状態を示す図1(B)のように、ノズル部材6は、内輪2の円周方向の一部の長さのものであり、いわば円弧状に湾曲した短冊状とされている。ノズル部材6は、転がり軸受1に軸方向に隣接して設けられ、側面の内径部から軸方向に伸びる鍔状部6aを有している。この鍔状部6aは、平坦な内径面が内輪2の斜面部2bと同一角度αの傾斜面に形成されて、保持器5の直下まで伸び、その先端がノズル部材6の上記先端部6aaとなる。ノズル部材6の鍔状部6aと内輪2の斜面部2bとの間の隙間δは、内輪2と軸15との嵌合、および内輪2の温度上昇と遠心力による膨張とを考慮し、運転中に接触しない範囲で出来るだけ小さな寸法に設定される。
【0019】
内輪2の斜面部2bには、円周溝7が設けられている。円周溝7は円周方向に延びて環状に形成されており、断面がV字状に形成されている。ノズル部材6は、内輪斜面部2bの円周溝7に対面して吐出口8aが開口する吐出孔8が設けられている。吐出孔8は、内輪斜面部2bに対して傾斜して設けられている。吐出孔8は、ノズル部材6の円周方向の1か所に設けられている。ここでは、吐出孔8の位置P(図1(B))から円周方向に左右に45°だけ振り分けた位置が両端の幅面となる90°分の円弧状となるように、ノズル部材6が形成されている。ノズル部材6は樹脂製とされており、上記した複雑な形状を成形加工により安価に製作することができる。
【0020】
ノズル部材6は、軸受1の外輪3を取付けたハウジング9の内径面に取付けられる。ノズル部材6のハウジング9への取付けは、ノズル部材6と別体のノズル取付リングである外輪間座10を介して行われる。なお、ノズル取付リングと一体にノズル部材6を設けても良い。ここでは、ノズル取付リングである外輪間座10の一側面の内径部に形成した環状の切欠凹部10aに、ノズル部材6が配置される。ノズル部材6は、止めねじ12(図1(B))により外輪間座10に取付けられる。外輪間座10の上記切欠凹部10aにおけるノズル部材6の設けられた円周方向範囲の残りとなる円周方向範囲の一部には、内径面から外径面に貫通した排気流路14(図1)が切欠状に設けられている。ノズル部材6の軸受外の部分の内径面は、内輪間座11に対して接触しない程度に近接している。
【0021】
ノズル部材6の吐出孔8の入口は、ハウジング9からノズル部材6にわたって設けられたエアオイル供給路13に連通している。エアオイル供給路13は、ハウジング9にエアオイル供給口13aを有し、ハウジング9の内面にハウジング部出口13bを有している。ハウジング部出口13bは、外輪間座10の外径面に設けられた円弧状の連通溝13cに連通し、連通溝13cから、径方向に貫通した経路13dを介して、ノズル部材6の吐出孔8に連通している。エアオイル供給口13aは、圧縮した搬送エアに潤滑油を混合させたエアオイルの供給源(図示せず)に接続されている。
【0022】
上記構成のエアオイル潤滑構造の作用を説明する。図1のエアオイル供給口13aより供給されたエアオイルは、ノズル部材6の吐出孔8を経て内輪斜面部2bの円周溝7に噴射される。円周溝7に付着した油は、遠心力の作用により内輪斜面部2bに導かれ、軸受1内に潤滑油として流入する。
【0023】
また、ノズル取付リングである外輪間座10の切欠凹部10aにおけるノズル部材6の設けられた円周方向範囲の残りとなる円周方向範囲は円弧状の空間E(図1(B)となっており、この空間Eは軸受内部より低い気圧となっているので、内輪斜面部2bに潤滑油を付着させた後のエア噴流は、上記空間Eであるノズル部材6の周辺部へ向かって図1(B)に矢印Cで示すように積極的に流れる。さらに、切欠凹部10aにおけるノズル部材6の設けられた円周方向範囲の残りとなる円周方向範囲の一部には、内径面から外径面に貫通した切欠状の排気流路14が設けられているので、ノズル部材6の周辺部へ流れたエア噴流が、この排気流路14を経て外部に流出することとなり、エア噴流が軸受内部へ流入するのを防ぐことができる。このため、エア噴流が公転する転動体4に断続的に遮断されることがなく、これに起因する音の発生をなくすことができ、騒音をより低減できる。
【0024】
軸受内部への潤滑油の供給が円滑に行われている場合でも、排油が十分に行われていなければ、軸受内部の潤滑油量が増加し、発熱・損傷する原因となるが、上記排気流路14は、軸受内部で余剰となった潤滑油を排出させる通路も兼ねる。そのため、軸受内部の潤滑油量が増加するのを防止して、発熱・損傷が生じることを回避することができる。
以上より、このエアオイル潤滑構造は、従来の内輪斜面部の全周に対面するノズル部材を設けたものに比べて、軸受内部に流入するエア噴流の量を削減することができて、音を削減することができる。
【0025】
また、内輪2の斜面部2bに、ノズル部材6の吐出孔8に対面する円周溝7を設けているので、その円周溝7により、吐出孔8から吐出されるエアオイルを全周に行き渡らせる作用が得られ、ノズル部材6側は内輪斜面部2bに沿った凹凸のない面とできる。このため、エアオイルの吐出量が少量となって円周上でのエアの出方が不均一となっても、内輪斜面部2bに作用する遠心力のため、油の滞留がなく、安定して軸受1内に潤滑油を供給でき、軸受温度の安定化および騒音低下が可能となる。
【0026】
図3は、図1,図2の実施形態にかかる転がり軸受1のエアオイル潤滑構造を応用したスピンドル装置の一例を示す。このスピンドル装置は、工作機械に応用されるものであり、主軸15の端部に工具またはワークのチャックが取付けられる。主軸15は、軸方向に離れた複数の転がり軸受1により支持されており、これらの転がり軸受1に、図1,図2の潤滑構造が採用されている。各転がり軸受1の内輪2は主軸15の外径面に嵌合し、外輪3はハウジング9の内径面に嵌合している。これら内外輪2,3は、内輪押さえ25および外輪押さえ26により、ハウジング9内に固定されている。ハウジング9は、内周ハウジング9Aと外周ハウジング9Bの二重構造とされ、内外のハウジング9A,9B間に冷却媒体流路16が形成されている。内周ハウジング9Aは、その一部を図1(A)に示した構造としたものであり、前記エアオイル供給路13およびそのエアオイル供給口13aが設けられている。ハウジング9は、支持台17に設置され、ボルト18で固定されている。また、ハウジング9には、内径面における軸受1の設置部付近にエアオイル排気溝22が設けられ、エアオイル排気溝22は上記排気流路14に連通する。このエアオイル排気溝22に連通して、外部に開放されるエアオイル排気路23が設けられる。
【0027】
図4はこの発明の他の実施形態を示す。図4は、第1の実施形態の図1(B)に対応する図面であり、この実施形態では、ノズル部材6の円周方向両端の幅面を、概ね流線形状の断面形状としている。詳しくは、ノズル部材6の両幅面を断面円弧状の面としている。これにより、軸受1における回転部周辺の空気が連れ回って形成されるエアカーテンが、ノズル部材6の幅面を通過する際に発生する風切り音を防止することができ、騒音低減効果がより向上する。その他の構成,効果は第1の実施形態と同様である。
【0028】
図5はこの発明のさらに他の実施形態を示す。図5は、第1の実施形態における図1(B)に対応する図面であり、この実施形態でも、ノズル部材6の円周方向両端の幅面を、径方向に伸びる平坦面と、これに続いて内径側に伸びる傾斜面とでなる概ね流線形状の断面形状としている。このようなノズル部材6の形状の場合も、軸受におけるエアカーテンが、ノズル部材6の幅面を通過する際に発生する風切り音を防止することができ、騒音低減効果がより向上する。その他の構成,効果は第1の実施形態と同様である。
【0029】
図6はこの発明のさらに他の実施形態を示す。図6(B)は、第1の実施形態の図1(B)に対応する図面であり、図6(A)はその平面図を示す。この実施形態では、ノズル部材6の両端の幅面を、径方向に見て、先端に向けて狭くなる流線型の断面形状としている。ノズル部材6が固定される外輪間座10は、間座本体10Aの端部にこれと別体のC字状の部材10Bを接合して構成され、C字状の部材10Bの切欠部が排気流路14とされる。これにより、軸受1におけるエアカーテンが、ノズル部材6の幅面を通過する際に発生する風切り音を防止することができ、騒音低減効果がより向上する。その他の構成,効果は第1の実施形態と同様である。
【0030】
【発明の効果】
この発明の転がり軸受のエアオイル潤滑構造は、転がり軸受の内輪の外径面に、この内輪の転走面と並ぶ斜面部を設け、この斜面部に隙間を介して沿うノズル部材を設け、このノズル部材に上記隙間に開口するエアオイルの吐出孔を設け、このノズル部材は上記内輪の円周方向の一部の長さのものとしているので、十分な潤滑性能を維持し、かつ斜面部に沿うノズル部材を全周に渡って設けたものに比べて、より一層の騒音低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)はこの発明の第1の実施形態にかかる転がり軸受のエアオイル潤滑構造の断面図、(B)は(A)におけるI−I矢視方向から見たノズル部材の取付状態を示す図である。
【図2】同エアオイル潤滑構造の拡大断面図である。
【図3】同エアオイル潤滑構造を採用したスピンドル装置の断面図である。
【図4】この発明の他の実施形態にかかる転がり軸受のエアオイル潤滑構造におけるノズル取付状態を示す図である。
【図5】この発明のさらに他の実施形態にかかる転がり軸受のエアオイル潤滑構造におけるノズル取付状態を示す図である。
【図6】(A)はこの発明のさらに他の実施形態にかかる転がり軸受のエアオイル潤滑構造におけるノズル取付状態を示す平面図、(B)は同正面図である。
【図7】転がり軸受の潤滑における油量と温度上昇・摩擦損失との関係を示すグラフである。
【図8】従来の転がり軸受潤滑方法に用いられるシステムの概略図である。
【図9】従来の転がり軸受のエアオイル潤滑構造を示す断面図である。
【図10】同潤滑構造による転がり軸受の騒音値の周波数特性を示すグラフである。
【図11】(A)は従来の転がり軸受のエアオイル潤滑構造の他の例を示す断面図、(B)はその部分拡大断面図である。
【図12】同潤滑構造による転がり軸受の騒音値の周波数特性を示すグラフである。
【図13】(A)は従来の転がり軸受のエアオイル潤滑構造を示す断面図、(B)は(A)におけるII−II矢視方向から見たノズル部材の取付状態を示す図である。
【図14】同潤滑構造の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1…転がり軸受
2…内輪
2a…転走面
2b…斜面部
6…ノズル部材
7…円周溝
8…吐出孔
10…外輪間座(ノズル取付リング)
13…エアオイル供給路
14…排気流路
15…主軸
δ…隙間
Claims (4)
- 転がり軸受の内輪の外径面に、この内輪の転走面と並ぶ斜面部を設け、この斜面部に隙間を介して沿うノズル部材を設け、このノズル部材に上記隙間に開口するエアオイルの吐出孔を設け、このノズル部材は上記内輪の円周方向の一部の長さのものとした転がり軸受のエアオイル潤滑構造。
- 請求項1において、上記内輪の斜面部の途中に円周溝を設け、上記ノズル部材の吐出孔を上記円周溝に対面して開口するものとした転がり軸受のエアオイル潤滑構造。
- 請求項1または請求項2において、上記ノズル部材と一体または別体に、ハウジングの内径面に嵌合してノズル部材をハウジングに取付けるノズル取付リングを設け、このノズル取付リングにおける、ノズル部材の設けられた円周方向範囲の残りとなる円周方向範囲の一部に、内径面から外径面に貫通した排気流路を設けた転がり軸受のエアオイル潤滑構造。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、ノズル部材の円周方向両端の幅面が、概ね流線形状の断面形状である転がり軸受のエアオイル潤滑構造。
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JP2013068279A (ja) * | 2011-09-22 | 2013-04-18 | Ntn Corp | 転がり軸受装置 |
JP2013104520A (ja) * | 2011-11-16 | 2013-05-30 | Ntn Corp | 転がり軸受の潤滑装置 |
-
2003
- 2003-04-30 JP JP2003125252A patent/JP2004332755A/ja not_active Withdrawn
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