JP2004332037A - 無電解金めっき方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】無電解金めっき工程時におけるめっきの析出むらを十分に防止することができ、得られる金めっき皮膜の膜厚が均一で、しかも無電解金めっき皮膜とその下側に配置されるめっき皮膜との間の良好な密着性を得ることのできる無電解金めっき方法を提供する。
【解決手段】置換金めっき工程と無電解金めっき工程とを含む無電解金めっき方法であって、置換金めっき液に含有させる金塩と無電解金めっき液に含有させる金塩とを同一種類とし、且つ、該置換金めっき液に含有させる錯化剤と該無電解金めっき液に含有させる錯化剤とを同一種類とし、置換金めっき工程の後に水洗処理工程を経ずに無電解金めっき工程を行うことを特徴とする無電解金めっき方法。
【選択図】 なし
【解決手段】置換金めっき工程と無電解金めっき工程とを含む無電解金めっき方法であって、置換金めっき液に含有させる金塩と無電解金めっき液に含有させる金塩とを同一種類とし、且つ、該置換金めっき液に含有させる錯化剤と該無電解金めっき液に含有させる錯化剤とを同一種類とし、置換金めっき工程の後に水洗処理工程を経ずに無電解金めっき工程を行うことを特徴とする無電解金めっき方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は無電解金めっき方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、プリント配線板上に形成された例えば銀又は銅等からなる導体パターン上にのみ選択的に金めっき皮膜を形成する方法として、電解めっき法と無電解めっき法が広く知られている。これらのうち、電解めっき法が、処理コスト及び浴安定性の観点で有利であることから、主として採用されている。
【0003】
一方、近年においては、半導体デバイス等の配線基板への電子回路の実装を、より高集積化及び/又は極微細化する必要性が生じてきている。しかし、上記電解めっき法は、電源リードに対する設計上の制約があり、また、孤立パターン上へのめっき皮膜の形成が比較的困難であるため、上記要求に対応できない場合が生じている。従って、今後はこのような点で有利である無電解めっき法に対する必要性が高まるものと予想される。
【0004】
この無電解めっき法による金めっきは、従来、概して以下のような工程で行われていた。まず、金属導体部を形成したプリント配線板を、脱脂液に浸漬し、続いて酸洗浄した後、無電解めっきの核となる例えばパラジウム系の触媒を吸着させ、次に該配線板を無電解ニッケルめっき液に浸漬して無電解ニッケル皮膜を形成する。その後、該配線板を置換金めっき液及び無電解金めっき液に順次浸漬して、所望の金めっき皮膜で金属導体部を被覆したプリント配線板を得る。そして、先の工程で用いられた液が後の工程で用いられる液に混入すると、後の工程で用いられる液の安定性が低下したり、或いは先の工程で用いられた液中の成分が後の工程における触媒毒となったりするので、従来は各工程の合間には数分間の流水洗浄処理が行われていた。
【0005】
このような無電解金めっき方法において、従来はシアン化合物を含む金めっき液が主として用いられていた。しかし、シアン化合物はその毒性が強いため、取り扱いが困難である上に、シアン化合物を含有した無電解金めっき液のほとんどは比較的高いpHを有していたため、レジストが溶解してパターンめっき性が低下するという問題点があった。
【0006】
かかる問題点を解決するために、例えば特許文献1では、無電解金めっき液に、金塩として非シアン系化合物である亜硫酸金塩もしくは塩化金酸塩を含有し、更にチオ硫酸塩及び亜硫酸塩、尿素系化合物及びフェニル化合物等を含有し、pH調整剤でそのpHを6.5〜8.5に調整することが提案されている。
【0007】
また、特許文献2では、置換金めっき液に、金塩(金イオン源)として非シアン化化合物である水溶性亜硫酸金化合物を含有させ、更に亜硫酸塩及び水溶性ポリアミノポリカルボン酸塩又はその塩等を適量含有させることにより、パターンめっき性を良好にすると共に、めっき表面の析出むらを解消し、又は各めっき皮膜間の密着性を改善することを意図した、置換無電解金めっき液の調製方法について提案されている。
【0008】
【特許文献1】
特許第3152008号公報
【特許文献2】
特許第3030113号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らは、かかる従来の無電解金めっき方法について詳細に検討を行った結果、特許文献1に記載のような無電解金めっき方法により得られた導体パターン上のめっき皮膜は、めっきの下地である導体部の表面又はめっき皮膜の表面が上記水洗処理により酸化されるため、該導体部又はめっき皮膜上に更にめっきを析出させる際に析出むらが発生してしまい、下地の導体部又はめっき皮膜とその上に析出するめっき皮膜との密着性が低下してしまうことを見出した。そして、このような析出むら及び密着性の低下は、特に無電解金めっきを析出させる際に発生しやすいことも本発明者らは見出した。その原因について、詳細には解明されていないが、概ね以下の通りと考えられている。
【0010】
すなわち、該無電解金めっきは置換金めっき皮膜上に析出するが、置換金めっき皮膜はその他の金属皮膜と比較して概して薄く、その下地であるニッケルめっき皮膜の表面全体を被覆していない状態にある。すなわち、置換金めっき工程終了時においても、導体パターン上にはニッケルめっき皮膜が一部露出しており、この状態で水洗処理を行うと、特に該ニッケルめっき皮膜の表面が酸化されてしまう。その酸化されためっき皮膜は、金めっき析出反応の進行のための触媒(核)としては十分に機能しないものと考えられる。その結果、続いて行われる無電解金めっき工程において、置換金めっき皮膜と表面を酸化されたニッケルめっき皮膜とが露出した導体パターン上へ無電解金めっき皮膜を形成しようとすると、該酸化されたニッケルめっき皮膜上への無電解金めっきの析出が不十分となる場合、或いは該酸化されたニッケルめっき皮膜上への無電解金めっき皮膜の密着性が良好でない場合が生じるものと考えられている。なお、このようなニッケルめっき皮膜表面が酸化される傾向は、水洗処理に用いる水の温度が比較的高い場合、又は水洗時間が比較的長い場合に顕著になることが既に明らかになっている。
【0011】
更に特許文献2に記載のような無電解金めっき方法では、置換金めっきを析出させる際に発生しうる析出むらを防止でき、無電解ニッケルめっき皮膜と置換金めっき皮膜との間の密着性を向上できるが、無電解金めっきを析出させる際に発生する析出むらを防止することはできず、無電解金めっき皮膜とその下側にあるめっき皮膜との間の密着性を向上させることはできないことを、本発明者らは見出した。
【0012】
上記無電解金めっきの析出むらは、該金めっきの外観を損なうばかりでなく、該金めっき皮膜の膜厚を不均一にしてしまい、その膜厚を調整することを困難にさせてしまう。また、上記無電解金めっきの密着性の低下は、製品の歩留まり及び寿命の低下につながり好ましくない。
【0013】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、無電解金めっき工程時におけるめっきの析出むらを十分に防止することができ、得られる金めっき皮膜の膜厚が均一で、しかも無電解金めっき皮膜とその下側に配置されるめっき皮膜との間の良好な密着性を得ることのできる無電解金めっき方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、置換金めっき液の成分組成と無電解金めっき液の成分組成との関係に着目することにより、工程間で行う必要のあった水洗処理を省略することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の無電解金めっき方法は、基体の導体部上に形成された無電解ニッケルめっき皮膜上に置換金めっき液を用いて置換金めっき皮膜を形成する置換金めっき工程と、該置換金めっき皮膜上に無電解金めっき液を用いて無電解金めっき皮膜を形成する無電解金めっき工程とを含む無電解金めっき方法であって、前記置換金めっき液に含有させる金塩と前記無電解金めっき液に含有させる金塩とを同一種類とし、且つ、前記置換金めっき液に含有させる錯化剤と前記無電解金めっき液に含有させる錯化剤とを同一種類とし、置換金めっき工程の後に水洗処理工程を経ずに無電解金めっき工程を行うことを特徴とする。
【0016】
本発明の無電解金めっき方法では、置換金めっき液の主成分である金塩(金イオン源)と金イオンに対する錯化剤とを無電解金めっき液のものと同一種類とするので、配線板などの被めっき物に付着した置換金めっき液が無電解金めっき液に混入しても何ら悪影響を及ぼすことはない。この原因は、詳細には解明されていないが、本発明者らは以下のように考えている。
【0017】
すなわち、従来の無電解金めっき方法では、無電解金めっき液中には置換金めっき液に含有されているものとは異なる金塩及び錯化剤が含有されているため、無電解金めっき工程において、被めっき物に付着した置換金めっき液中の諸成分が無電解金めっき液中に大量に混入すると、無電解金めっき液のpH変動を引き起こしたり、或いは無電解金めっき液のめっき性が低下する傾向にあった。そこでこれを防止するために置換金めっき工程と無電解金めっき工程との間で被めっき物の水洗処理を必要な時間行っていた。
しかし、本発明者らは、本発明の無電解金めっき方法においては、置換金めっき液の主成分である金塩及び錯化剤が無電解金めっき液中のものと同一種類であるため、無電解金めっき液の組成変動は発生し難く、そのpH変動或いはめっき性の低下は少ないため、無電解金めっき皮膜の形成を阻害することが抑制されるものと考えている。
【0018】
また、本発明にかかる無電解金めっき工程において、非シアン系金塩と、錯化剤と、還元剤と、pH調整剤とを含有させ、pHを6〜9に調整した無電解金めっき液を用いることが好ましい。
非シアン系金塩を含有した無電解金めっき液は、シアン系金塩を含有した無電解金めっき液と比較して、ニッケルイオンが混入しても液安定性が低下しない傾向にあるため、置換金めっき工程と無電解金めっき工程との間の水洗処理を省略しても不具合が生じ難い。
【0019】
更に、上記無電解金めっき方法の置換金めっき工程において、同一の成分組成である置換金めっき液で二段処理することが好ましい。これにより、無電解金めっき液へのニッケルイオン等の持ち込みは更に抑制され、無電解金めっき液を長時間連続的に使用することができる。
【0020】
また、上記無電解金めっき方法において、錯化剤として亜硫酸塩及び/又はチオ硫酸塩を含有する置換金めっき液及び無電解金めっき液を用いることが好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0022】
本発明の無電解金めっき方法は、上述したように、基体の導体部上に形成された無電解ニッケルめっき皮膜上に、置換金めっき液を用いて置換金めっき皮膜を形成する置換金めっき工程と、該置換金めっき皮膜上に、無電解金めっき液を用いて無電解金めっき皮膜を形成する無電解金めっき工程とを含み、前記置換金めっき液に含有させる金塩と前記無電解金めっき液に含有させる金塩とを同一種類とし、且つ、前記置換金めっき液に含有させる錯化剤と前記無電解金めっき液に含有させる錯化剤とを同一種類とし、置換金めっき工程の後に水洗処理工程を経ずに無電解金めっき工程を行う。なお、本明細書において、「無電解金めっき」とは、「無電解金めっき方法」として用いる場合を除いて、還元剤の作用により金イオン又は該金イオンを含む錯イオンを金に還元して配線板上に金めっき皮膜を析出させることであり、上述した置換金めっきを除外する概念である。
【0023】
(前処理)
本発明の無電解金めっき方法では、従来のめっき方法と同様に、前処理として脱脂、酸洗浄、触媒付与及び無電解ニッケルめっき皮膜形成を行うことができる。従って、以下のような前処理を行った後に各金めっき工程を行ってもよい。すなわち、セラミックス製又は樹脂製等の基板上に銀又は銅等の材料を用いた導体パターンを印刷法又はエッチング法等により形成して得られた配線板を、まず脱脂液浸漬して、表面の油脂汚れ等を除去する。続いて水洗後、導体パターンの表面を均一化するために、通常は、硫酸過酸化水素水溶液等のエッチング液で該表面をマイルドエッチングする。更に水洗後、希硫酸水溶液等を用いて表面を洗浄する。次に水洗後、例えば置換タイプのパラジウム触媒液等で導体パターン上にのみ触媒を形成させる。そして水洗後、該配線板を無電解ニッケルめっき液に浸漬し、該導体パターン領域に無電解ニッケルめっき皮膜を形成させる。
【0024】
(置換金めっき工程)
置換金めっき工程は、上述の無電解ニッケルめっきを施された配線板を水洗した後、置換金めっき液に浸漬することにより行われる。
【0025】
置換金めっき液は、めっき皮膜として形成されたニッケルと該金めっき液中の金イオンとの置換反応(Ni→Ni2++2e−,2Au++2e−→2Au)により、ニッケルめっき皮膜上に金めっき皮膜を形成するために従来用いられていたものであれば特に限定されない。従って該置換金めっき液は、例えば、シアン化金ナトリウム若しくはシアン化金カリウム等のシアン化金塩(シアン系金イオン源)、或いは亜硫酸金塩、チオ硫酸金塩若しくは塩化金酸塩等の非シアン系金塩(非シアン系金イオン源)、並びに、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、チオリンゴ酸塩若しくはカルボン酸塩等の錯化剤を必須成分として含有し、更に置換金めっき液に通常用いるその他の各種添加剤を適量含むこともできる。
【0026】
但し、本発明の無電解金めっき方法においては、置換金めっき液に含有される金塩及び錯化剤を、後述する無電解金めっき液に含有される金塩及び錯化剤と同一種類にする必要があり、このことが本発明の大きな特徴の一つである。これにより、置換金めっき工程時に配線板に付着した置換金めっき液が、その後の無電解金めっき工程時に無電解金めっき液に持ち込まれても、無電解金めっき液の液安定性等の特性が大きく変動することがないので、従来置換金めっき工程後に行われていた水洗処理を省略することが可能となる。
【0027】
上記金塩としては、非シアン系金塩である亜硫酸金塩又は塩化金酸塩を用いることが好ましい。シアン化金塩は、非シアン系金塩と比較して、概して毒性が強く、取り扱いが比較的困難である。更に、シアン化金塩を含有した置換金めっき液は、該液中に導体である銅又はめっき皮膜を形成していたニッケル等の不純物が溶け込み易く、それにより置換金めっき皮膜のニッケルめっき皮膜への密着性が低下する傾向にある。
【0028】
また、該金塩の置換金めっき液中の濃度は、金イオンとして1〜4g/Lの範囲になるように調整されることが好ましい。金塩の濃度が金イオンとして1g/Lより低いと、置換金めっき被膜の膜厚が薄くなりすぎる傾向にあり、該置換金めっきの無電解金めっき皮膜形成のための触媒としての活性が低下する傾向にある。また、金塩の濃度が金イオンとして4g/Lより高くても置換金めっき皮膜の膜厚はさほど変化せず経済的ではない。
【0029】
置換金めっき工程において置換金めっき液に含有される錯化剤としては、亜硫酸塩若しくはチオ硫酸塩又はそれらの混合物を用いることが好ましい。錯化剤は置換金めっき中の金イオン(Au+)を安定的に錯体化し、Au+の不均化反応(3Au+→2Au+Au3+)を抑制し、該めっき液の安定性を高める作用を有する。
【0030】
また、該錯化剤の置換金めっき液中の含有量は、金塩中の金イオン1モルに対し4〜10モルとなるように調整されることが好ましい。金は4配位金属であるため、金イオンを錯体化させるための錯化剤は、該金イオン1モルに対し4モル以上必要であり、更に、置換金めっき液の安定性を高めるために、ある程度過剰量の錯化剤が該液中に含有されていることが好ましい。なお該金イオン1モルに対し10モルを越える量の錯化剤を置換金めっき液に添加しても、更なる液安定性の向上はほとんど認められない。
【0031】
置換金めっき液のpHは、(1)シアン化金塩を含有する場合は5〜7、(2)非シアン系金塩を含有する場合は6〜9となるように調整されることが好ましい。該pHが(1),(2)のそれぞれの下限値未満であると成分組成中の亜硫酸イオン等が分解して置換金めっき液の安定性が低下する傾向にある。また、該pHが(1),(2)のそれぞれの上限値を超えると、置換金めっき皮膜の膜厚が薄くなりすぎてしまい、該置換金めっきの無電解金めっき皮膜形成のための触媒としての活性が低下する傾向にある。更に、該pHが(1),(2)のそれぞれの上限値を超えると、めっきレジストを該置換金めっき液に溶解させる傾向もあり、そのような場合はパターンめっき性も低下させてしまい好ましくない。
【0032】
そして、該pHの調整は、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等を用いて行うことが好ましい。
【0033】
配線板浸漬時の置換金めっき液の温度は、所望の膜厚の置換金めっき皮膜を得ることができるように適宜設定することができるが、80〜90℃程度とすることが好ましい。置換金めっき液の温度が80℃より低いと、金の析出速度が遅くなりすぎる傾向にあり、90℃より高いと、置換金めっき液が速やかに揮発してしまう、又は該金めっき液中の成分が熱分解してしまうため、該金めっき液中の金イオンの安定性が著しく低下する傾向にある。
【0034】
そして該金めっき液への配線板の浸漬時間は、所望の膜厚の置換金めっき皮膜を得ることができるように、適宜設定することができる。すなわち、置換金めっき皮膜を比較的厚くしたい場合は、配線板の該めっき液への浸漬時間を長くすればよい。逆に、置換金めっき皮膜を比較的薄くしたい場合は、配線板の該めっき液への浸漬時間を短くすればよい。但し、置換金めっき工程を行う際は、ある程度の膜厚(30〜100nm程度)の金めっき皮膜が形成された後は、それ以上の時間浸漬しても該皮膜の膜厚はほとんど変化しない傾向にあるため、これを考慮して製造コスト削減の観点から浸漬時間を設定することが好ましい。
【0035】
更に、該置換金めっき工程において、配線板が、同一の成分組成である置換金めっき液で二段処理されることが好ましい。具体的には、例えば、まず1段目の置換金めっき液に配線板を所定時間浸漬した後、続いて、1段目の置換金めっき液と同一の成分組成であるが別に用意された2段目の置換金めっき液に10〜30秒程度の短時間の間浸漬することも可能である。これにより、1段目の置換金めっき液浸漬時に該液中に溶出し配線板に付着したニッケルイオンを、その後の無電解金めっき工程の際に、無電解金めっき液に持ち込むことを抑制することができるので、無電解金めっき液を長時間連続的に使用することが可能となる。
【0036】
(無電解金めっき工程)
無電解金めっき工程は、上述の置換金めっき皮膜を施された配線板を無電解金めっき液に浸漬することにより行われる。
【0037】
無電解金めっき液は、還元剤の作用により該金めっき液中の金イオンを金に還元して配線板上にめっき皮膜を析出させることができるものであれば特に限定されない。従って、例えば、該無電解金めっき液は、シアン化金カリウム、亜硫酸金ナトリウム若しくは塩化金酸ナトリウム等の金塩、シアン化塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩若しくは塩素塩等の水溶性イオンを供給する錯化剤、及び、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン、チオ尿素、アスコルビン酸ナトリウム等の還元剤を必須成分として含有し、更に、その他のpH調整剤等の無電解金めっき液に通常用いる各種添加剤を適量含むこともできる。
【0038】
但し、上述したとおり、本発明の無電解金めっき方法においては、無電解金めっき液に含有される金塩及び錯化剤を、置換金めっき液に含有される金塩及び錯化剤と同一種類とする必要があり、このことが本発明の大きな特徴の一つである。
【0039】
従って、上記金塩としては、置換金めっき液に含有されるものと同様に、非シアン系金塩である亜硫酸金塩又は塩化金酸塩を用いることが好ましい。
【0040】
該金塩の無電解金めっき液中の濃度は、金イオンとして1.5〜3g/Lの範囲となるように調整されることが好ましい。該金塩の濃度が金イオンとして1.5g/Lよりも低い場合は、金の析出速度が遅くなる傾向にあるため作業効率が低下してしまう。該金塩の濃度が金イオンとして3g/Lよりも高い場合は、無電解金めっき液の液安定性が低下する傾向にある。
【0041】
また、金の錯化剤としても、置換金めっき液に含有されるものと同様に、亜硫酸塩若しくはチオ硫酸塩又はそれらの混合物を用いることが好ましい。
【0042】
そして、該錯化剤の無電解金めっき液中の含有量は、金塩中の金イオン1モルに対し4〜10モルとなるように調整されることが好ましい。金は4配位金属であるため、金イオンを錯体化させるための錯化剤は、該金イオン1モルに対し4モル以上必要であり、これより少ないと液安定性が低下してしまう。更に、無電解金めっき液の安定性を高めるために、ある程度過剰量の錯化剤が該液中に含有されていることが好ましい。なお該金イオン1モルに対し10モルを越える量の錯化剤を無電解金めっき液に添加すると、金の析出速度が遅くなる傾向にあるため、生産性の低下に繋がる。
【0043】
上記還元剤としては、チオ尿素、メチルチオ尿素、ジメチルチオ尿素等の尿素系化合物を用いることが好ましい。
【0044】
該還元剤の無電解金めっき液への添加量は、金塩中の金イオンと等モルであることが好ましい。該還元剤の添加量がこれより少ない場合は、金の析出速度が遅くなってしまう傾向にあるため、生産性の低下に繋がる。また、該還元剤の添加量がこれより多い場合は、無電解金めっき液の液安定性が低下する傾向にある。
【0045】
更に、無電解金めっき液に還元促進剤として、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、カテコール、ピロガロール、アミノフェノール、フェニレンジアミン等のフェニル系化合物を添加することもできる。還元促進剤は、還元剤の還元効率を向上させる物質であり、金の析出速度を速める効果があるので、生産性の向上に繋がる。該還元促進剤の無電解金めっき液への添加量については、上記還元剤2モルに対して該還元促進剤を1モル添加することが好ましい。還元促進剤の添加量が少なすぎると、金の析出速度を速めることができない傾向にあり、還元促進剤の添加量が多すぎると、無電解金めっき液の液安定性が低下する傾向にある。
【0046】
配線板浸漬時の無電解金めっき液の温度は、所望の膜厚の無電解金めっき皮膜を得ることができるように適宜設定することができるが、60〜80℃程度となるように調整されることが好ましい。無電解金めっき液の温度が60℃より低いと、金の析出速度が遅くなりすぎる傾向にあり、80℃より高いと、該めっき液の液安定性が著しく低下する傾向にある。
【0047】
また、無電解金めっき液のpHは、シアン化金塩を含有する場合であっても、非シアン系金塩を含有する場合であっても、6〜9となるように調整されることが好ましい。pHが6未満であると、無電解金めっき液中に存在する亜硫酸イオン等が分解する傾向にあるため、該めっき液の液安定性が低下する。またpHが9を越えると、該めっき液中に存在する金イオンが不均一反応を起こしてしまう傾向にあるので、やはり液安定性が低下する。
【0048】
更に、該無電解金めっき液のpHは、置換金めっき液のpHと同程度となるように調整されることが特に好ましい。本発明の無電解金めっき方法は、置換金めっき工程が終了した後、水洗処理を行うことなく無電解金めっき工程に移行するので、無電解金めっき液のpHと置換金めっき液のpHとが異なると、置換金めっき液の持ち込みにより、無電解金めっき液のpHが変動してしまい、液安定性の低下等に繋がる傾向にある。
【0049】
無電解金めっき液の上記pHは、塩酸又は硫酸等をpH調整剤として添加することによって、6〜9の範囲に調整される。
【0050】
本発明の無電解金めっき方法は、置換金めっき液に含有させる金塩と無電解金めっき液に含有させる金塩とを同一種類とし、且つ、置換金めっき液に含有させる錯化剤と無電解金めっき液に含有させる錯化剤とを同一種類とするので、上述したように、従来置換金めっき工程後に行われていた水洗処理を介することなく、無電解金めっき工程を行うことができる。これにより、特に該水洗処理に用いる水の温度が高すぎる場合、或いは該水洗処理時間が長すぎる場合に顕著に生じていた該水洗処理起因の導体パターン表面の酸化が抑制される。
【0051】
従って、従来の無電解金めっき方法においては、導体パターン表面の酸化が原因で無電解金めっき終了後に置換金めっき皮膜と無電解金めっき皮膜との間に密着不良が発生していたが、本発明の無電解金めっき方法においては、かかる密着不良を抑制することが可能となる。更に、従来の無電解金めっき方法において、無電解金めっき時の初期の金めっきの析出が均一に起こらないため、無電解金めっき皮膜の膜厚のばらつきが大きくなる傾向にあったが、本発明の無電解金めっき方法によると、かかる金めっき皮膜の膜厚の不均一性も解消することができる。
【0052】
そして、本発明の無電解金めっき方法においては、水洗処理のみではなく、置換金めっき工程と無電解金めっき工程との間で、例えば水以外の溶媒に配線板を浸漬して洗浄を行う処理、或いは気相で配線板を乾燥させる処理等をも省略することができるので、工程の短縮化に繋がり、生産効率を向上させることもできる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
実施例及び比較例にかかる無電解金めっき方法は、エッチング法により銅配線を形成した25cm×25cm×1mmの厚さを有するプリント配線板を用いて行われた。
【0055】
実施例1ではまず、該プリント配線板の表面の油脂や汚れ等を除去するために、50℃に調整された酸性脱脂液CLC−5000(日立化成工業株式会社製、製品名)に該プリント配線板を浸漬し4分間処理した。次に、該プリント配線板に付着した余分な界面活性剤を除去するために、該プリント配線板を50℃の純水に浸漬して1分間湯洗し、続いて、水洗処理を2分間行った。次に、該プリント配線板の表面形状を均一にするために、該プリント配線板を過硫酸ナトリウム水溶液(100g/L)に浸漬した状態のまま、室温で1分間維持するソフトエッチング処理を行った後、水洗処理を1分間行った。続いて、プリント配線板の表面の酸化膜を除去するために、該プリント配線板を希硫酸水溶液(100mL/L)に浸漬し、室温で1分間酸化膜除去処理を行い、その後、水洗処理を1分間行った。次に、置換パラジウム触媒液SA−100(日立化成工業株式会社製、製品名)に該プリント配線板を浸漬し、室温で5分間触媒形成処理を行った後、水洗処理を1分間行った。
【0056】
続いて、該プリント配線板を無電解ニッケル−リンめっき液NIPS−100(日立化成工業株式会社製、製品名)に浸漬し、85℃で25分間ニッケルめっき処理をし、約5μmのニッケル−リンの合金めっき皮膜を形成した。
【0057】
そして、水洗処理を1分間行った後、非シアン系金塩である亜硫酸金ナトリウムと錯化剤である亜硫酸ナトリウムとを含有し、pHを8に調整した置換金めっき液HGS−100(日立化成工業株式会社製、製品名)に該プリント配線板を浸漬し、85℃で10分間置換金めっき処理することによって、0.03〜0.1μm程度の膜厚の置換金めっき皮膜を形成した。
【0058】
最後に、該置換金めっき皮膜が形成されたプリント配線板を、水洗することなく、そのまま非シアン系金塩である亜硫酸金ナトリウムと、錯化剤である亜硫酸ナトリウムと、還元剤とを含有し、pHを7.5に調整した無電解金めっき液HGS−2000(日立化成工業株式会社製、製品名)に浸漬し、65℃で40分間無電解金めっき処理を行い、0.4〜0.6μm程度の膜厚を有する無電解金めっき皮膜を形成した。
【0059】
[無電解金めっき皮膜の膜厚測定]
得られた金めっき皮膜の膜厚の測定は蛍光X線膜厚計を用いて行われ、該皮膜の任意の50箇所の膜厚を測定することによって、該金めっき皮膜の平均膜厚及び標準偏差(3σ)が算出された。
【0060】
[金めっき皮膜の密着性確認試験]
得られた金めっき皮膜の密着性確認試験は、無電解めっき工程が終了した後、50mm角のパターン部にセロハンテープを貼り、該セロハンテープを素早く剥離して、金めっきの剥がれた部分の有無を目視で確認することにより行われた。
【0061】
なお、上記無電解金めっき皮膜の膜厚測定及び金めっき皮膜の密着性確認試験は、各実施例及び比較例で得られた金めっき皮膜について行われた。
【0062】
実施例1の無電解金めっき方法により得られた無電解金めっきは、均一に析出し、色合いもきれいな黄色を呈していた。その金めっき皮膜の平均膜厚は、0.52μmであった。また、その標準偏差(3σ)は0.02であり、該皮膜の膜厚のばらつきは比較的小さく、均一な無電解金めっき皮膜が得られたことが確認された。また金めっき皮膜の密着性確認試験でも、金めっき皮膜の剥離は認められず、良好な結果が得られた。
【0063】
(実施例2)
実施例2の無電解金めっき方法においては、置換金めっき工程を以下のように行った以外は、実施例1の無電解金めっき方法と同じ方法を行って、無電解金めっきを施されたプリント配線板を得た。該置換金めっき工程では、置換金めっき液HGS−100にプリント配線板を浸漬し、85℃で10分間置換金めっき処理を行った後に、同じ成分組成であるが別に用意された置換金めっき液HGS−100に、該プリント配線板を85℃で20秒間浸漬することにより置換金めっきの二段処理を行って、置換金めっき皮膜が形成されたプリント配線板を得た。
【0064】
実施例2の無電解金めっき方法により得られた無電解金めっきは、均一に析出し、色合いもきれいな黄色を呈していた。その金めっき皮膜の平均膜厚は、0.55μmであった。また、その標準偏差(3σ)は0.02であり、金めっき皮膜の膜厚のばらつきは小さく、均一な無電解金めっき皮膜が得られたことが確認された。また金めっき皮膜の密着性確認試験でも、金めっき皮膜の剥離は認められず、良好な結果が得られた。なお、この実施例2で用いた無電解金めっき液を約2ヶ月もの長期の間使用したが、該金めっき液が分解することはなかった。
【0065】
(比較例1)
比較例1の無電解金めっき方法においては、置換金めっき工程を行った後に、プリント配線板を3分間水洗処理し、続いて無電解金めっき工程を行った以外は、実施例1の無電解金めっき方法と同じ方法を行って、無電解金めっきを施されたプリント配線板を得た。
【0066】
比較例1の無電解金めっき方法により得られた無電解金めっきは、均一に析出し、色合いもきれいな黄色を呈していた。その金めっき皮膜の平均膜厚は、0.50μmであった。そして、その標準偏差(3σ)は0.10であり、金めっき皮膜の膜厚のばらつきが実施例1,2と比較して、大きくなっていることが確認された。また、金めっき皮膜の密着性確認試験では、金めっき皮膜の剥離は認められなかった。
【0067】
(比較例2)
比較例2の無電解金めっき方法においては、置換金めっき工程を行った後に、プリント配線板を40℃の湯で3分間湯洗処理を行い、続いて無電解金めっき工程を行った以外は、実施例1の無電解金めっき方法と同じ方法を行って、無電解金めっきを施されたプリント配線板を得た。
【0068】
比較例2の無電解金めっき方法により得られた無電解金めっきは、析出状態にむらがあり、色合いは部分的に茶褐色を呈していた。その金めっき皮膜の平均膜厚は、0.38μmであった。また、その標準偏差(3σ)は、0.21であり、金めっき皮膜の膜厚のばらつきが実施例1,2と比較して、大きくなっていることが確認された。また、金めっき皮膜の密着性確認試験では、わずかだが金めっき皮膜の剥離が確認された。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の無電解金めっき方法によれば、無電解金めっき工程時におけるめっきの析出むらを十分に防止することができるので、得られる金めっき皮膜の膜厚が均一となる。しかも無電解金めっき皮膜とその下側に配置されるめっき皮膜との間の良好な密着性を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は無電解金めっき方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、プリント配線板上に形成された例えば銀又は銅等からなる導体パターン上にのみ選択的に金めっき皮膜を形成する方法として、電解めっき法と無電解めっき法が広く知られている。これらのうち、電解めっき法が、処理コスト及び浴安定性の観点で有利であることから、主として採用されている。
【0003】
一方、近年においては、半導体デバイス等の配線基板への電子回路の実装を、より高集積化及び/又は極微細化する必要性が生じてきている。しかし、上記電解めっき法は、電源リードに対する設計上の制約があり、また、孤立パターン上へのめっき皮膜の形成が比較的困難であるため、上記要求に対応できない場合が生じている。従って、今後はこのような点で有利である無電解めっき法に対する必要性が高まるものと予想される。
【0004】
この無電解めっき法による金めっきは、従来、概して以下のような工程で行われていた。まず、金属導体部を形成したプリント配線板を、脱脂液に浸漬し、続いて酸洗浄した後、無電解めっきの核となる例えばパラジウム系の触媒を吸着させ、次に該配線板を無電解ニッケルめっき液に浸漬して無電解ニッケル皮膜を形成する。その後、該配線板を置換金めっき液及び無電解金めっき液に順次浸漬して、所望の金めっき皮膜で金属導体部を被覆したプリント配線板を得る。そして、先の工程で用いられた液が後の工程で用いられる液に混入すると、後の工程で用いられる液の安定性が低下したり、或いは先の工程で用いられた液中の成分が後の工程における触媒毒となったりするので、従来は各工程の合間には数分間の流水洗浄処理が行われていた。
【0005】
このような無電解金めっき方法において、従来はシアン化合物を含む金めっき液が主として用いられていた。しかし、シアン化合物はその毒性が強いため、取り扱いが困難である上に、シアン化合物を含有した無電解金めっき液のほとんどは比較的高いpHを有していたため、レジストが溶解してパターンめっき性が低下するという問題点があった。
【0006】
かかる問題点を解決するために、例えば特許文献1では、無電解金めっき液に、金塩として非シアン系化合物である亜硫酸金塩もしくは塩化金酸塩を含有し、更にチオ硫酸塩及び亜硫酸塩、尿素系化合物及びフェニル化合物等を含有し、pH調整剤でそのpHを6.5〜8.5に調整することが提案されている。
【0007】
また、特許文献2では、置換金めっき液に、金塩(金イオン源)として非シアン化化合物である水溶性亜硫酸金化合物を含有させ、更に亜硫酸塩及び水溶性ポリアミノポリカルボン酸塩又はその塩等を適量含有させることにより、パターンめっき性を良好にすると共に、めっき表面の析出むらを解消し、又は各めっき皮膜間の密着性を改善することを意図した、置換無電解金めっき液の調製方法について提案されている。
【0008】
【特許文献1】
特許第3152008号公報
【特許文献2】
特許第3030113号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らは、かかる従来の無電解金めっき方法について詳細に検討を行った結果、特許文献1に記載のような無電解金めっき方法により得られた導体パターン上のめっき皮膜は、めっきの下地である導体部の表面又はめっき皮膜の表面が上記水洗処理により酸化されるため、該導体部又はめっき皮膜上に更にめっきを析出させる際に析出むらが発生してしまい、下地の導体部又はめっき皮膜とその上に析出するめっき皮膜との密着性が低下してしまうことを見出した。そして、このような析出むら及び密着性の低下は、特に無電解金めっきを析出させる際に発生しやすいことも本発明者らは見出した。その原因について、詳細には解明されていないが、概ね以下の通りと考えられている。
【0010】
すなわち、該無電解金めっきは置換金めっき皮膜上に析出するが、置換金めっき皮膜はその他の金属皮膜と比較して概して薄く、その下地であるニッケルめっき皮膜の表面全体を被覆していない状態にある。すなわち、置換金めっき工程終了時においても、導体パターン上にはニッケルめっき皮膜が一部露出しており、この状態で水洗処理を行うと、特に該ニッケルめっき皮膜の表面が酸化されてしまう。その酸化されためっき皮膜は、金めっき析出反応の進行のための触媒(核)としては十分に機能しないものと考えられる。その結果、続いて行われる無電解金めっき工程において、置換金めっき皮膜と表面を酸化されたニッケルめっき皮膜とが露出した導体パターン上へ無電解金めっき皮膜を形成しようとすると、該酸化されたニッケルめっき皮膜上への無電解金めっきの析出が不十分となる場合、或いは該酸化されたニッケルめっき皮膜上への無電解金めっき皮膜の密着性が良好でない場合が生じるものと考えられている。なお、このようなニッケルめっき皮膜表面が酸化される傾向は、水洗処理に用いる水の温度が比較的高い場合、又は水洗時間が比較的長い場合に顕著になることが既に明らかになっている。
【0011】
更に特許文献2に記載のような無電解金めっき方法では、置換金めっきを析出させる際に発生しうる析出むらを防止でき、無電解ニッケルめっき皮膜と置換金めっき皮膜との間の密着性を向上できるが、無電解金めっきを析出させる際に発生する析出むらを防止することはできず、無電解金めっき皮膜とその下側にあるめっき皮膜との間の密着性を向上させることはできないことを、本発明者らは見出した。
【0012】
上記無電解金めっきの析出むらは、該金めっきの外観を損なうばかりでなく、該金めっき皮膜の膜厚を不均一にしてしまい、その膜厚を調整することを困難にさせてしまう。また、上記無電解金めっきの密着性の低下は、製品の歩留まり及び寿命の低下につながり好ましくない。
【0013】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、無電解金めっき工程時におけるめっきの析出むらを十分に防止することができ、得られる金めっき皮膜の膜厚が均一で、しかも無電解金めっき皮膜とその下側に配置されるめっき皮膜との間の良好な密着性を得ることのできる無電解金めっき方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、置換金めっき液の成分組成と無電解金めっき液の成分組成との関係に着目することにより、工程間で行う必要のあった水洗処理を省略することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の無電解金めっき方法は、基体の導体部上に形成された無電解ニッケルめっき皮膜上に置換金めっき液を用いて置換金めっき皮膜を形成する置換金めっき工程と、該置換金めっき皮膜上に無電解金めっき液を用いて無電解金めっき皮膜を形成する無電解金めっき工程とを含む無電解金めっき方法であって、前記置換金めっき液に含有させる金塩と前記無電解金めっき液に含有させる金塩とを同一種類とし、且つ、前記置換金めっき液に含有させる錯化剤と前記無電解金めっき液に含有させる錯化剤とを同一種類とし、置換金めっき工程の後に水洗処理工程を経ずに無電解金めっき工程を行うことを特徴とする。
【0016】
本発明の無電解金めっき方法では、置換金めっき液の主成分である金塩(金イオン源)と金イオンに対する錯化剤とを無電解金めっき液のものと同一種類とするので、配線板などの被めっき物に付着した置換金めっき液が無電解金めっき液に混入しても何ら悪影響を及ぼすことはない。この原因は、詳細には解明されていないが、本発明者らは以下のように考えている。
【0017】
すなわち、従来の無電解金めっき方法では、無電解金めっき液中には置換金めっき液に含有されているものとは異なる金塩及び錯化剤が含有されているため、無電解金めっき工程において、被めっき物に付着した置換金めっき液中の諸成分が無電解金めっき液中に大量に混入すると、無電解金めっき液のpH変動を引き起こしたり、或いは無電解金めっき液のめっき性が低下する傾向にあった。そこでこれを防止するために置換金めっき工程と無電解金めっき工程との間で被めっき物の水洗処理を必要な時間行っていた。
しかし、本発明者らは、本発明の無電解金めっき方法においては、置換金めっき液の主成分である金塩及び錯化剤が無電解金めっき液中のものと同一種類であるため、無電解金めっき液の組成変動は発生し難く、そのpH変動或いはめっき性の低下は少ないため、無電解金めっき皮膜の形成を阻害することが抑制されるものと考えている。
【0018】
また、本発明にかかる無電解金めっき工程において、非シアン系金塩と、錯化剤と、還元剤と、pH調整剤とを含有させ、pHを6〜9に調整した無電解金めっき液を用いることが好ましい。
非シアン系金塩を含有した無電解金めっき液は、シアン系金塩を含有した無電解金めっき液と比較して、ニッケルイオンが混入しても液安定性が低下しない傾向にあるため、置換金めっき工程と無電解金めっき工程との間の水洗処理を省略しても不具合が生じ難い。
【0019】
更に、上記無電解金めっき方法の置換金めっき工程において、同一の成分組成である置換金めっき液で二段処理することが好ましい。これにより、無電解金めっき液へのニッケルイオン等の持ち込みは更に抑制され、無電解金めっき液を長時間連続的に使用することができる。
【0020】
また、上記無電解金めっき方法において、錯化剤として亜硫酸塩及び/又はチオ硫酸塩を含有する置換金めっき液及び無電解金めっき液を用いることが好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0022】
本発明の無電解金めっき方法は、上述したように、基体の導体部上に形成された無電解ニッケルめっき皮膜上に、置換金めっき液を用いて置換金めっき皮膜を形成する置換金めっき工程と、該置換金めっき皮膜上に、無電解金めっき液を用いて無電解金めっき皮膜を形成する無電解金めっき工程とを含み、前記置換金めっき液に含有させる金塩と前記無電解金めっき液に含有させる金塩とを同一種類とし、且つ、前記置換金めっき液に含有させる錯化剤と前記無電解金めっき液に含有させる錯化剤とを同一種類とし、置換金めっき工程の後に水洗処理工程を経ずに無電解金めっき工程を行う。なお、本明細書において、「無電解金めっき」とは、「無電解金めっき方法」として用いる場合を除いて、還元剤の作用により金イオン又は該金イオンを含む錯イオンを金に還元して配線板上に金めっき皮膜を析出させることであり、上述した置換金めっきを除外する概念である。
【0023】
(前処理)
本発明の無電解金めっき方法では、従来のめっき方法と同様に、前処理として脱脂、酸洗浄、触媒付与及び無電解ニッケルめっき皮膜形成を行うことができる。従って、以下のような前処理を行った後に各金めっき工程を行ってもよい。すなわち、セラミックス製又は樹脂製等の基板上に銀又は銅等の材料を用いた導体パターンを印刷法又はエッチング法等により形成して得られた配線板を、まず脱脂液浸漬して、表面の油脂汚れ等を除去する。続いて水洗後、導体パターンの表面を均一化するために、通常は、硫酸過酸化水素水溶液等のエッチング液で該表面をマイルドエッチングする。更に水洗後、希硫酸水溶液等を用いて表面を洗浄する。次に水洗後、例えば置換タイプのパラジウム触媒液等で導体パターン上にのみ触媒を形成させる。そして水洗後、該配線板を無電解ニッケルめっき液に浸漬し、該導体パターン領域に無電解ニッケルめっき皮膜を形成させる。
【0024】
(置換金めっき工程)
置換金めっき工程は、上述の無電解ニッケルめっきを施された配線板を水洗した後、置換金めっき液に浸漬することにより行われる。
【0025】
置換金めっき液は、めっき皮膜として形成されたニッケルと該金めっき液中の金イオンとの置換反応(Ni→Ni2++2e−,2Au++2e−→2Au)により、ニッケルめっき皮膜上に金めっき皮膜を形成するために従来用いられていたものであれば特に限定されない。従って該置換金めっき液は、例えば、シアン化金ナトリウム若しくはシアン化金カリウム等のシアン化金塩(シアン系金イオン源)、或いは亜硫酸金塩、チオ硫酸金塩若しくは塩化金酸塩等の非シアン系金塩(非シアン系金イオン源)、並びに、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、チオリンゴ酸塩若しくはカルボン酸塩等の錯化剤を必須成分として含有し、更に置換金めっき液に通常用いるその他の各種添加剤を適量含むこともできる。
【0026】
但し、本発明の無電解金めっき方法においては、置換金めっき液に含有される金塩及び錯化剤を、後述する無電解金めっき液に含有される金塩及び錯化剤と同一種類にする必要があり、このことが本発明の大きな特徴の一つである。これにより、置換金めっき工程時に配線板に付着した置換金めっき液が、その後の無電解金めっき工程時に無電解金めっき液に持ち込まれても、無電解金めっき液の液安定性等の特性が大きく変動することがないので、従来置換金めっき工程後に行われていた水洗処理を省略することが可能となる。
【0027】
上記金塩としては、非シアン系金塩である亜硫酸金塩又は塩化金酸塩を用いることが好ましい。シアン化金塩は、非シアン系金塩と比較して、概して毒性が強く、取り扱いが比較的困難である。更に、シアン化金塩を含有した置換金めっき液は、該液中に導体である銅又はめっき皮膜を形成していたニッケル等の不純物が溶け込み易く、それにより置換金めっき皮膜のニッケルめっき皮膜への密着性が低下する傾向にある。
【0028】
また、該金塩の置換金めっき液中の濃度は、金イオンとして1〜4g/Lの範囲になるように調整されることが好ましい。金塩の濃度が金イオンとして1g/Lより低いと、置換金めっき被膜の膜厚が薄くなりすぎる傾向にあり、該置換金めっきの無電解金めっき皮膜形成のための触媒としての活性が低下する傾向にある。また、金塩の濃度が金イオンとして4g/Lより高くても置換金めっき皮膜の膜厚はさほど変化せず経済的ではない。
【0029】
置換金めっき工程において置換金めっき液に含有される錯化剤としては、亜硫酸塩若しくはチオ硫酸塩又はそれらの混合物を用いることが好ましい。錯化剤は置換金めっき中の金イオン(Au+)を安定的に錯体化し、Au+の不均化反応(3Au+→2Au+Au3+)を抑制し、該めっき液の安定性を高める作用を有する。
【0030】
また、該錯化剤の置換金めっき液中の含有量は、金塩中の金イオン1モルに対し4〜10モルとなるように調整されることが好ましい。金は4配位金属であるため、金イオンを錯体化させるための錯化剤は、該金イオン1モルに対し4モル以上必要であり、更に、置換金めっき液の安定性を高めるために、ある程度過剰量の錯化剤が該液中に含有されていることが好ましい。なお該金イオン1モルに対し10モルを越える量の錯化剤を置換金めっき液に添加しても、更なる液安定性の向上はほとんど認められない。
【0031】
置換金めっき液のpHは、(1)シアン化金塩を含有する場合は5〜7、(2)非シアン系金塩を含有する場合は6〜9となるように調整されることが好ましい。該pHが(1),(2)のそれぞれの下限値未満であると成分組成中の亜硫酸イオン等が分解して置換金めっき液の安定性が低下する傾向にある。また、該pHが(1),(2)のそれぞれの上限値を超えると、置換金めっき皮膜の膜厚が薄くなりすぎてしまい、該置換金めっきの無電解金めっき皮膜形成のための触媒としての活性が低下する傾向にある。更に、該pHが(1),(2)のそれぞれの上限値を超えると、めっきレジストを該置換金めっき液に溶解させる傾向もあり、そのような場合はパターンめっき性も低下させてしまい好ましくない。
【0032】
そして、該pHの調整は、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等を用いて行うことが好ましい。
【0033】
配線板浸漬時の置換金めっき液の温度は、所望の膜厚の置換金めっき皮膜を得ることができるように適宜設定することができるが、80〜90℃程度とすることが好ましい。置換金めっき液の温度が80℃より低いと、金の析出速度が遅くなりすぎる傾向にあり、90℃より高いと、置換金めっき液が速やかに揮発してしまう、又は該金めっき液中の成分が熱分解してしまうため、該金めっき液中の金イオンの安定性が著しく低下する傾向にある。
【0034】
そして該金めっき液への配線板の浸漬時間は、所望の膜厚の置換金めっき皮膜を得ることができるように、適宜設定することができる。すなわち、置換金めっき皮膜を比較的厚くしたい場合は、配線板の該めっき液への浸漬時間を長くすればよい。逆に、置換金めっき皮膜を比較的薄くしたい場合は、配線板の該めっき液への浸漬時間を短くすればよい。但し、置換金めっき工程を行う際は、ある程度の膜厚(30〜100nm程度)の金めっき皮膜が形成された後は、それ以上の時間浸漬しても該皮膜の膜厚はほとんど変化しない傾向にあるため、これを考慮して製造コスト削減の観点から浸漬時間を設定することが好ましい。
【0035】
更に、該置換金めっき工程において、配線板が、同一の成分組成である置換金めっき液で二段処理されることが好ましい。具体的には、例えば、まず1段目の置換金めっき液に配線板を所定時間浸漬した後、続いて、1段目の置換金めっき液と同一の成分組成であるが別に用意された2段目の置換金めっき液に10〜30秒程度の短時間の間浸漬することも可能である。これにより、1段目の置換金めっき液浸漬時に該液中に溶出し配線板に付着したニッケルイオンを、その後の無電解金めっき工程の際に、無電解金めっき液に持ち込むことを抑制することができるので、無電解金めっき液を長時間連続的に使用することが可能となる。
【0036】
(無電解金めっき工程)
無電解金めっき工程は、上述の置換金めっき皮膜を施された配線板を無電解金めっき液に浸漬することにより行われる。
【0037】
無電解金めっき液は、還元剤の作用により該金めっき液中の金イオンを金に還元して配線板上にめっき皮膜を析出させることができるものであれば特に限定されない。従って、例えば、該無電解金めっき液は、シアン化金カリウム、亜硫酸金ナトリウム若しくは塩化金酸ナトリウム等の金塩、シアン化塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩若しくは塩素塩等の水溶性イオンを供給する錯化剤、及び、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン、チオ尿素、アスコルビン酸ナトリウム等の還元剤を必須成分として含有し、更に、その他のpH調整剤等の無電解金めっき液に通常用いる各種添加剤を適量含むこともできる。
【0038】
但し、上述したとおり、本発明の無電解金めっき方法においては、無電解金めっき液に含有される金塩及び錯化剤を、置換金めっき液に含有される金塩及び錯化剤と同一種類とする必要があり、このことが本発明の大きな特徴の一つである。
【0039】
従って、上記金塩としては、置換金めっき液に含有されるものと同様に、非シアン系金塩である亜硫酸金塩又は塩化金酸塩を用いることが好ましい。
【0040】
該金塩の無電解金めっき液中の濃度は、金イオンとして1.5〜3g/Lの範囲となるように調整されることが好ましい。該金塩の濃度が金イオンとして1.5g/Lよりも低い場合は、金の析出速度が遅くなる傾向にあるため作業効率が低下してしまう。該金塩の濃度が金イオンとして3g/Lよりも高い場合は、無電解金めっき液の液安定性が低下する傾向にある。
【0041】
また、金の錯化剤としても、置換金めっき液に含有されるものと同様に、亜硫酸塩若しくはチオ硫酸塩又はそれらの混合物を用いることが好ましい。
【0042】
そして、該錯化剤の無電解金めっき液中の含有量は、金塩中の金イオン1モルに対し4〜10モルとなるように調整されることが好ましい。金は4配位金属であるため、金イオンを錯体化させるための錯化剤は、該金イオン1モルに対し4モル以上必要であり、これより少ないと液安定性が低下してしまう。更に、無電解金めっき液の安定性を高めるために、ある程度過剰量の錯化剤が該液中に含有されていることが好ましい。なお該金イオン1モルに対し10モルを越える量の錯化剤を無電解金めっき液に添加すると、金の析出速度が遅くなる傾向にあるため、生産性の低下に繋がる。
【0043】
上記還元剤としては、チオ尿素、メチルチオ尿素、ジメチルチオ尿素等の尿素系化合物を用いることが好ましい。
【0044】
該還元剤の無電解金めっき液への添加量は、金塩中の金イオンと等モルであることが好ましい。該還元剤の添加量がこれより少ない場合は、金の析出速度が遅くなってしまう傾向にあるため、生産性の低下に繋がる。また、該還元剤の添加量がこれより多い場合は、無電解金めっき液の液安定性が低下する傾向にある。
【0045】
更に、無電解金めっき液に還元促進剤として、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、カテコール、ピロガロール、アミノフェノール、フェニレンジアミン等のフェニル系化合物を添加することもできる。還元促進剤は、還元剤の還元効率を向上させる物質であり、金の析出速度を速める効果があるので、生産性の向上に繋がる。該還元促進剤の無電解金めっき液への添加量については、上記還元剤2モルに対して該還元促進剤を1モル添加することが好ましい。還元促進剤の添加量が少なすぎると、金の析出速度を速めることができない傾向にあり、還元促進剤の添加量が多すぎると、無電解金めっき液の液安定性が低下する傾向にある。
【0046】
配線板浸漬時の無電解金めっき液の温度は、所望の膜厚の無電解金めっき皮膜を得ることができるように適宜設定することができるが、60〜80℃程度となるように調整されることが好ましい。無電解金めっき液の温度が60℃より低いと、金の析出速度が遅くなりすぎる傾向にあり、80℃より高いと、該めっき液の液安定性が著しく低下する傾向にある。
【0047】
また、無電解金めっき液のpHは、シアン化金塩を含有する場合であっても、非シアン系金塩を含有する場合であっても、6〜9となるように調整されることが好ましい。pHが6未満であると、無電解金めっき液中に存在する亜硫酸イオン等が分解する傾向にあるため、該めっき液の液安定性が低下する。またpHが9を越えると、該めっき液中に存在する金イオンが不均一反応を起こしてしまう傾向にあるので、やはり液安定性が低下する。
【0048】
更に、該無電解金めっき液のpHは、置換金めっき液のpHと同程度となるように調整されることが特に好ましい。本発明の無電解金めっき方法は、置換金めっき工程が終了した後、水洗処理を行うことなく無電解金めっき工程に移行するので、無電解金めっき液のpHと置換金めっき液のpHとが異なると、置換金めっき液の持ち込みにより、無電解金めっき液のpHが変動してしまい、液安定性の低下等に繋がる傾向にある。
【0049】
無電解金めっき液の上記pHは、塩酸又は硫酸等をpH調整剤として添加することによって、6〜9の範囲に調整される。
【0050】
本発明の無電解金めっき方法は、置換金めっき液に含有させる金塩と無電解金めっき液に含有させる金塩とを同一種類とし、且つ、置換金めっき液に含有させる錯化剤と無電解金めっき液に含有させる錯化剤とを同一種類とするので、上述したように、従来置換金めっき工程後に行われていた水洗処理を介することなく、無電解金めっき工程を行うことができる。これにより、特に該水洗処理に用いる水の温度が高すぎる場合、或いは該水洗処理時間が長すぎる場合に顕著に生じていた該水洗処理起因の導体パターン表面の酸化が抑制される。
【0051】
従って、従来の無電解金めっき方法においては、導体パターン表面の酸化が原因で無電解金めっき終了後に置換金めっき皮膜と無電解金めっき皮膜との間に密着不良が発生していたが、本発明の無電解金めっき方法においては、かかる密着不良を抑制することが可能となる。更に、従来の無電解金めっき方法において、無電解金めっき時の初期の金めっきの析出が均一に起こらないため、無電解金めっき皮膜の膜厚のばらつきが大きくなる傾向にあったが、本発明の無電解金めっき方法によると、かかる金めっき皮膜の膜厚の不均一性も解消することができる。
【0052】
そして、本発明の無電解金めっき方法においては、水洗処理のみではなく、置換金めっき工程と無電解金めっき工程との間で、例えば水以外の溶媒に配線板を浸漬して洗浄を行う処理、或いは気相で配線板を乾燥させる処理等をも省略することができるので、工程の短縮化に繋がり、生産効率を向上させることもできる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
実施例及び比較例にかかる無電解金めっき方法は、エッチング法により銅配線を形成した25cm×25cm×1mmの厚さを有するプリント配線板を用いて行われた。
【0055】
実施例1ではまず、該プリント配線板の表面の油脂や汚れ等を除去するために、50℃に調整された酸性脱脂液CLC−5000(日立化成工業株式会社製、製品名)に該プリント配線板を浸漬し4分間処理した。次に、該プリント配線板に付着した余分な界面活性剤を除去するために、該プリント配線板を50℃の純水に浸漬して1分間湯洗し、続いて、水洗処理を2分間行った。次に、該プリント配線板の表面形状を均一にするために、該プリント配線板を過硫酸ナトリウム水溶液(100g/L)に浸漬した状態のまま、室温で1分間維持するソフトエッチング処理を行った後、水洗処理を1分間行った。続いて、プリント配線板の表面の酸化膜を除去するために、該プリント配線板を希硫酸水溶液(100mL/L)に浸漬し、室温で1分間酸化膜除去処理を行い、その後、水洗処理を1分間行った。次に、置換パラジウム触媒液SA−100(日立化成工業株式会社製、製品名)に該プリント配線板を浸漬し、室温で5分間触媒形成処理を行った後、水洗処理を1分間行った。
【0056】
続いて、該プリント配線板を無電解ニッケル−リンめっき液NIPS−100(日立化成工業株式会社製、製品名)に浸漬し、85℃で25分間ニッケルめっき処理をし、約5μmのニッケル−リンの合金めっき皮膜を形成した。
【0057】
そして、水洗処理を1分間行った後、非シアン系金塩である亜硫酸金ナトリウムと錯化剤である亜硫酸ナトリウムとを含有し、pHを8に調整した置換金めっき液HGS−100(日立化成工業株式会社製、製品名)に該プリント配線板を浸漬し、85℃で10分間置換金めっき処理することによって、0.03〜0.1μm程度の膜厚の置換金めっき皮膜を形成した。
【0058】
最後に、該置換金めっき皮膜が形成されたプリント配線板を、水洗することなく、そのまま非シアン系金塩である亜硫酸金ナトリウムと、錯化剤である亜硫酸ナトリウムと、還元剤とを含有し、pHを7.5に調整した無電解金めっき液HGS−2000(日立化成工業株式会社製、製品名)に浸漬し、65℃で40分間無電解金めっき処理を行い、0.4〜0.6μm程度の膜厚を有する無電解金めっき皮膜を形成した。
【0059】
[無電解金めっき皮膜の膜厚測定]
得られた金めっき皮膜の膜厚の測定は蛍光X線膜厚計を用いて行われ、該皮膜の任意の50箇所の膜厚を測定することによって、該金めっき皮膜の平均膜厚及び標準偏差(3σ)が算出された。
【0060】
[金めっき皮膜の密着性確認試験]
得られた金めっき皮膜の密着性確認試験は、無電解めっき工程が終了した後、50mm角のパターン部にセロハンテープを貼り、該セロハンテープを素早く剥離して、金めっきの剥がれた部分の有無を目視で確認することにより行われた。
【0061】
なお、上記無電解金めっき皮膜の膜厚測定及び金めっき皮膜の密着性確認試験は、各実施例及び比較例で得られた金めっき皮膜について行われた。
【0062】
実施例1の無電解金めっき方法により得られた無電解金めっきは、均一に析出し、色合いもきれいな黄色を呈していた。その金めっき皮膜の平均膜厚は、0.52μmであった。また、その標準偏差(3σ)は0.02であり、該皮膜の膜厚のばらつきは比較的小さく、均一な無電解金めっき皮膜が得られたことが確認された。また金めっき皮膜の密着性確認試験でも、金めっき皮膜の剥離は認められず、良好な結果が得られた。
【0063】
(実施例2)
実施例2の無電解金めっき方法においては、置換金めっき工程を以下のように行った以外は、実施例1の無電解金めっき方法と同じ方法を行って、無電解金めっきを施されたプリント配線板を得た。該置換金めっき工程では、置換金めっき液HGS−100にプリント配線板を浸漬し、85℃で10分間置換金めっき処理を行った後に、同じ成分組成であるが別に用意された置換金めっき液HGS−100に、該プリント配線板を85℃で20秒間浸漬することにより置換金めっきの二段処理を行って、置換金めっき皮膜が形成されたプリント配線板を得た。
【0064】
実施例2の無電解金めっき方法により得られた無電解金めっきは、均一に析出し、色合いもきれいな黄色を呈していた。その金めっき皮膜の平均膜厚は、0.55μmであった。また、その標準偏差(3σ)は0.02であり、金めっき皮膜の膜厚のばらつきは小さく、均一な無電解金めっき皮膜が得られたことが確認された。また金めっき皮膜の密着性確認試験でも、金めっき皮膜の剥離は認められず、良好な結果が得られた。なお、この実施例2で用いた無電解金めっき液を約2ヶ月もの長期の間使用したが、該金めっき液が分解することはなかった。
【0065】
(比較例1)
比較例1の無電解金めっき方法においては、置換金めっき工程を行った後に、プリント配線板を3分間水洗処理し、続いて無電解金めっき工程を行った以外は、実施例1の無電解金めっき方法と同じ方法を行って、無電解金めっきを施されたプリント配線板を得た。
【0066】
比較例1の無電解金めっき方法により得られた無電解金めっきは、均一に析出し、色合いもきれいな黄色を呈していた。その金めっき皮膜の平均膜厚は、0.50μmであった。そして、その標準偏差(3σ)は0.10であり、金めっき皮膜の膜厚のばらつきが実施例1,2と比較して、大きくなっていることが確認された。また、金めっき皮膜の密着性確認試験では、金めっき皮膜の剥離は認められなかった。
【0067】
(比較例2)
比較例2の無電解金めっき方法においては、置換金めっき工程を行った後に、プリント配線板を40℃の湯で3分間湯洗処理を行い、続いて無電解金めっき工程を行った以外は、実施例1の無電解金めっき方法と同じ方法を行って、無電解金めっきを施されたプリント配線板を得た。
【0068】
比較例2の無電解金めっき方法により得られた無電解金めっきは、析出状態にむらがあり、色合いは部分的に茶褐色を呈していた。その金めっき皮膜の平均膜厚は、0.38μmであった。また、その標準偏差(3σ)は、0.21であり、金めっき皮膜の膜厚のばらつきが実施例1,2と比較して、大きくなっていることが確認された。また、金めっき皮膜の密着性確認試験では、わずかだが金めっき皮膜の剥離が確認された。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の無電解金めっき方法によれば、無電解金めっき工程時におけるめっきの析出むらを十分に防止することができるので、得られる金めっき皮膜の膜厚が均一となる。しかも無電解金めっき皮膜とその下側に配置されるめっき皮膜との間の良好な密着性を得ることができる。
Claims (5)
- 基体の導体部上に形成された無電解ニッケルめっき皮膜上に置換金めっき液を用いて置換金めっき皮膜を形成する置換金めっき工程と、該置換金めっき皮膜上に無電解金めっき液を用いて無電解金めっき皮膜を形成する無電解金めっき工程とを含む無電解金めっき方法であって、
前記置換金めっき液に含有させる金塩と前記無電解金めっき液に含有させる金塩とを同一種類とし、且つ、
前記置換金めっき液に含有させる錯化剤と前記無電解金めっき液に含有させる錯化剤とを同一種類とし、
置換金めっき工程の後に水洗処理工程を経ずに無電解金めっき工程を行うことを特徴とする無電解金めっき方法。 - 前記無電解金めっき工程において、非シアン系金塩と、錯化剤と、還元剤と、pH調整剤とを含有させ、pHを6〜9に調整した無電解金めっき液を用いることを特徴とする請求項1記載の無電解金めっき方法。
- 前記置換金めっき工程において、同一の成分組成を有する置換金めっき液で二段処理することを特徴とする請求項1又は2記載の無電解金めっき方法。
- 前記金塩として亜硫酸金塩又は塩化金酸塩を含有する置換金めっき液及び無電解金めっき液を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の無電解金めっき方法。
- 前記錯化剤として亜硫酸塩及び/又はチオ硫酸塩を含有する置換金めっき液及び無電解金めっき液を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の無電解金めっき方法。
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