JP2004330554A - 印刷後処理液及びこれを用いた画像保護方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光沢度の高い記録媒体のみならず、マット調の記録媒体に形成された画像に対しても、その光沢感、発色性を飛躍的に高め、且つ優れた保護特性を付与し得る印刷後処理液及びこれを用いた画像保護方法を提供すること。
【解決手段】少なくともポリマー微粒子を含有する印刷後処理液において、該ポリマー微粒子として、ガラス転移温度50℃以上且つ平均粒子径200nm以上のものを使用する。この印刷後処理液を、インクジェット記録方式により色材が付着された記録媒体の被記録面に、インクジェット記録方式などにより付着させた後、該記録媒体を加熱することにより、該被記録面上に保護層を形成する。この印刷後処理液は、特に、基材上にインク受容層を設けてなり、被記録面となる該インク受容層の表面の75度光沢度が1〜10%である記録媒体に対して有効である。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくともポリマー微粒子を含有する印刷後処理液において、該ポリマー微粒子として、ガラス転移温度50℃以上且つ平均粒子径200nm以上のものを使用する。この印刷後処理液を、インクジェット記録方式により色材が付着された記録媒体の被記録面に、インクジェット記録方式などにより付着させた後、該記録媒体を加熱することにより、該被記録面上に保護層を形成する。この印刷後処理液は、特に、基材上にインク受容層を設けてなり、被記録面となる該インク受容層の表面の75度光沢度が1〜10%である記録媒体に対して有効である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光沢感、発色、保護特性などの向上を目的として、画像が形成された記録媒体の画像面に付与される印刷後処理液に関し、詳しくは、記録媒体のマット面に形成されたインクジェット画像の後処理に最適な印刷後処理液及びこれを用いた画像保護方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
インクジェット記録方式は、記録ヘッドのノズルからインクの液滴を吐出させ、記録媒体にインクを付着させて画像を形成する印刷方式である。近年、インクジェット記録用の記録媒体として、紙やフィルムなどの基材上にインク受容層を設けた構成のインクジェット記録用コート紙が開発され、高画質・高品位のインクジェット画像が得られるようになっている。このインクジェット記録用コート紙は、光沢感に優れる鏡面から、艶消し調のマット面まで、種々の面質のものが市販されており、印刷用途に応じて使い分けられている。
【0003】
また、従来から、インクジェット記録がなされた記録媒体のインクジェット画像面に印刷後処理液を塗布し、該画像面をその塗膜からなる保護層で被覆することにより、画像の耐水性、耐光性、耐ガス性、耐擦性、光沢感、発色性などを改善する方法が知られている。例えば、特許文献1には、少なくとも水と、ポリマー微粒子と、浸透剤とを含有してなるコート液(印刷後処理液)を、インクジェットヘッドを用いて記録媒体上の少なくとも画像部分に吐出しコートを施すことが開示されている。また、特許文献2には、記録媒体にインクジェット記録方式で記録を行い画像を形成した後、画像部分の全面に少なくとも樹脂エマルジョンと水とを含有してなるトップコート液(印刷後処理液)をインクジェット記録方式で噴射して一様な透明のトップコート層を形成することが開示されている。
【0004】
しかしながら、従来の印刷後処理液は、鏡面性が高く光沢度の高い記録媒体に対しては有効であるものの、光沢感が抑えられたマット(艶消し)調の記録媒体、例えば、マット紙などとして市販されているインクジェット記録用コート紙に対しては、その塗膜形成面(被記録面)が凹凸、細孔、亀裂などが存在する粗面であるため、平滑で均一な厚みを有する塗膜を形成することができず、光沢付与、発色性の向上、耐擦性などの画像保護特性の改善の点で不十分なものであった。
【0005】
従って、本発明の目的は、光沢度の高い記録媒体のみならずマット調の記録媒体に形成された画像に対しても、その光沢感、発色性を飛躍的に高め、且つ優れた保護特性を付与し得る印刷後処理液及びこれを用いた画像保護方法を提供することにある。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−201428号公報
【特許文献2】
特開2001−39006号公報
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、光沢調、マット調などの種々の面質のインクジェット画像面上に塗膜を形成し、その画像特性を充分に高め得る印刷後処理液について種々検討した結果、塗膜の形成材料となるポリマー微粒子として、ガラス転移温度及び平均粒子径がそれぞれ特定範囲にあるポリマー微粒子を使用することにより、鏡面性が高く光沢度の高い記録媒体上に形成されたインクジェット画像面だけでなく、細孔、亀裂、凹凸などが存在するマット調の記録媒体上に形成されたインクジェット画像面上にも、良好な光沢感、発色性及び保護特性を付与し得る塗膜(保護層)を形成し得ることを知見した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、少なくともポリマー微粒子を含有する印刷後処理液において、該ポリマー微粒子が、ガラス転移温度50℃以上且つ平均粒子径200nm以上であることを特徴とする印刷後処理液を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
また、本発明は、インクジェット記録方式により色材が付着された記録媒体の被記録面に、上記印刷後処理液を付着させた後、該記録媒体を加熱することにより、該被記録面上に保護層を形成することを特徴とする画像保護方法を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、先ず、本発明の印刷後処理液について詳細に説明する。本発明の印刷後処理液は、ポリマー微粒子を必須成分として含有する水性の液体組成物であり、該ポリマー微粒子を分散質とし、水性液媒体を分散相とするエマルジョンである。
【0011】
上記ポリマー微粒子としては、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上で且つ平均粒子径が200nm以上のものを用いる。ここでいうTgは、重量平均Tgを意味し、例えば、2種以上の樹脂が相分離して存在する多層構造(コアシェル構造)のポリマー微粒子の場合は、各樹脂のTgにその含有率(重量%)を乗じた値の総和を意味する。Tg及び平均粒子径がそれぞれこのような範囲にあるポリマー微粒子であれば、凹凸や亀裂などがほとんどなく鏡面性が高い平滑な面(光沢面)を被記録面とする記録媒体(例えば、市販の光沢系インクジェット専用紙)は勿論のこと、凹凸や亀裂などが多数存在する粗面(マット面)を被記録面とする記録媒体(例えば、市販のマット系インクジェット専用紙)に対しても、その被記録面上に平滑で均一な厚みの塗膜を形成することができ、該被記録面上に形成された画像の諸特性(光沢感、発色性、耐擦性など)を飛躍的に向上させることができる。Tgが50℃未満あるいは平均粒子径が200nm未満のポリマー微粒子では、これを含有させた印刷後処理液を粗面(被記録面)に付着させた場合、該ポリマー微粒子が該粗面の凹部や亀裂に入り込んでしまい、塗膜を形成するのに必要な量のポリマー微粒子が該粗面上に残留しない。従って、Tg及び平均粒子径の何れの要件が欠けても、マット調の画像面に良好な塗膜を形成することはできない。
【0012】
尚、ポリマー微粒子のTgが高すぎると、塗膜の透明性が低下して画質低下を招くおそれがあるので、このTgは50℃〜95℃の範囲にあることが好ましい。また、ポリマー微粒子の平均粒子径が大きすぎると、印刷後処理液をインクジェット記録方式により付着させる場合に必要な吐出安定性が低下するおそれがあるので、この平均粒子径は200〜400nmの範囲にあることが好ましい。
【0013】
ポリマー微粒子の形成材料となる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのうち、特に、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂は塗膜の耐擦性及び透明性に優れており、本発明で好ましく用いられる。
【0014】
また、ポリマー微粒子は、1種類の樹脂からなる単粒子構造のものでもよく、2種以上の樹脂が粒子中に相分離して存在するコアシェル構造のものでもよい。コアシェル構造には、シェル部がコア部を完全に被覆している形態、シェル部がコア部の一部を被覆している形態、シェル部を構成する樹脂の一部がコア部内にドメインなどを形成している形態、コア部とシェル部との間にこれらと組成の異なる樹脂層を1層以上有する3層以上の多層形態などがあるが、何れの形態のポリマー微粒子も本発明で用いることができる。
【0015】
ポリマー微粒子は、乳化剤、重合開始剤の存在下、ラジカル重合可能な単量体を水中で重合させる乳化重合法など、公知の重合法により製造することができる。
【0016】
また、本発明の印刷後処理液で使用される水性液媒体としては、水に、湿潤剤、浸透剤、界面活性剤などの各種添加剤を含有させたものが好ましい。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水を用いることが好ましい。また、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理された水は、カビやバクテリアの発生を防止して長期保存を可能とする点で好ましい。
【0017】
上記湿潤剤は、後述するように、印刷後処理液をインクジェット記録方式により吐出させる場合に必要な吐出安定性を確保する上で有効な添加剤である。湿潤剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール等の多価アルコール類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクタム類;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等の尿素類;マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、マルトース等の糖類等が挙げられる。湿潤剤は、印刷後処理液中に1〜50重量%程度含有させればよい。
【0018】
また、上記の浸透剤及び界面活性剤は、吐出安定性の確保の他、記録媒体への浸透性を確保する上でも有効な添加剤である。浸透剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノール等の低級アルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類等が挙げられる。浸透剤は、印刷後処理液中に1〜50重量%程度含有させればよい。
【0019】
上記界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等の非イオン性界面活性剤;サーフィノール82、104、440、465、485(以上、エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社製)、オルフィンSTG、オルフィンE1010(以上、日信化学社製)等のアセチレングリコ−ル系界面活性剤;カチオン性界面活性剤;両イオン性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、印刷後処理液中に0.01〜20重量%程度含有させればよい。
【0020】
本発明の印刷後処理液に使用可能なその他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、消光剤、酸化防止剤、耐水化剤、防黴剤、防腐剤、増粘剤、流動性改良剤、pH調整剤、消泡剤、抑泡剤、レベリング剤、帯電防止剤等が挙げられる。添加剤を含有させる場合は、ポリマー微粒子の均一分散が阻害されないように留意する必要がある。
【0021】
本発明の印刷後処理液は、成膜性や、インクジェット記録方式により吐出させる場合に必要な吐出安定性などを確保する観点から、液温20℃における粘度が2〜5mPa・s、表面張力が20〜38mN/m、pHが6.5〜11の範囲にあることが好ましい。これらの各物性値の調整は、上述した各成分の含有量を調整することにより行うことができる。尚、上記ポリマー微粒子を必須成分として含有する本発明の印刷後処理液の最低造膜温度(JIS−K6800に準拠)は、およそ40〜100℃の範囲にある。
【0022】
次に、上記印刷後処理液を用いた本発明の画像保護方法について詳細に説明する。
【0023】
本発明の画像保護方法は、インクジェット記録方式により色材が付着された記録媒体の被記録面に、上記印刷後処理液を付着させた後、該記録媒体を加熱することにより、該被記録面上に保護層を形成することを特徴とする。
【0024】
本発明の画像保護方法の対象となる上記記録媒体は、インクジェット記録方式に適合した特性を持つ記録媒体(インクジェット記録用コート紙)に限定されず、例えば一般事務用のコピー用紙など、インクジェット記録が可能なものであればよい。但し、本発明の印刷後処理液は、上述したように、凹凸や亀裂などが多数存在する粗面(マット面)上に形成されたインクジェット画像に対して特に有効なものであるから、本発明の効果を最大限発揮させるという点で、被記録面が粗面でマット調(艶消し調)の外観を呈するインクジェット記録用コート紙が好ましいと言える。
【0025】
具体的には、紙やフィルムなどの基材上にインク受容層を設けてなるインクジェット記録用コート紙において、被記録面となるそのインク受容層の表面の75度光沢度(JIS−Z8142に準拠)が1〜10%の範囲にあるものが好ましい。75度光沢度がこのような範囲にあるインク受容層は、その表面が凹凸、亀裂、細孔などが多数存在する粗面となっており、この粗面が入射光を乱反射させることにより、独特のマット調(艶消し調)の外観を呈している。また、このインク受容層自体の構成は、無機顔料及びバインダーを主体とするいわゆる空隙型(吸収型)のインク受容層である。無機顔料としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の多孔質顔料が用いられ、その含有量は、インク受容層中、固形分換算で40〜90重量%程度である。また、バインダーとしては、ポリビニルアルコール等が用いられる。
【0026】
本発明に好ましく使用できる市販の記録媒体(マット調のインクジェット記録用コート紙)としては、例えば、セイコーエプソン社製の「PMマット紙」(75度光沢度2%)、「MCマット紙」(75度光沢度2%)、「スーパーファイン専用紙」(75度光沢度4%)等が挙げられる。
【0027】
また、上記記録媒体に付着される上記色材は、インクジェット記録用インクの色材として使用可能なものであればよく、染料系でも顔料系でもよい。一般に、染料系色材を含有させた染料インクによる画像形成は、染料を記録媒体内部に侵入させることにより記録媒体自体を染色して画像を形成するもので、染料が記録媒体の表面に留まらないのに対し、顔料系色材を含有させた顔料インクによる画像形成は、染料よりはるかに大きな顔料粒子を記録媒体の表面に留め、該表面上にある顔料粒子自体の発色により画像を形成するものであるため、顔料インクによる画像は、染料インクによる画像に比して、入射光の乱反射による色見の相違や発色性の低下が起こりやすく、また顔料粒子が剥がれ落ちやすく耐擦性に劣るという欠点がある。本発明の印刷後処理液は、このような顔料インク画像の欠点を補い、顔料系色材の特長である優れた耐光性、耐水性を充分に活かすことができるので、色材として顔料系色材(インクとして顔料インク)を使用するのは有効である。
【0028】
顔料系色材としては、例えば、酸化チタン及び酸化鉄、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックなどの無機系顔料;アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどの有機系顔料などが挙げられる。インクジェット記録用の顔料インクは、このような顔料系色材を含有させた水系インクが一般的であり、通常、保湿や浸透調整等のため、更に各種有機溶剤や界面活性剤等が含有されている。インク中における顔料系色材の含有量は、インクに要求される特性等を考慮して適宜調整され、通常、0.5〜30重量%程度である。カラー画像を形成する場合は、イエロー、マゼンタ及びシアンの減法混色の3原色のインク、あるいはこれにブラックその他の色のインクを加えた4色以上のインクを用いる。
【0029】
印刷後処理液の記録媒体への付着は、ロールコーター法、バーコーター法、ブレードコーター法などの公知の塗工方式の他、インクジェット記録方式により行うこともできる。特にインクジェット記録方式は、後処理液の塗工パターンや塗工量の変更に対応し易い;他の塗工方式に比して低塗工量のコントロールが容易;印字(インクの付着)と後処理液の付着を連続的に行うことが可能となり、作業効率が高まるなどのメリットがあり、また、本発明の印刷後処理液は吐出安定性に優れ、記録ヘッドから吐出させてもノズルの目詰まりなどをおこすおそれが極めて少ないため、インクジェット記録方式は印刷後処理液の付着方法として好ましいものである。
【0030】
印刷後処理液は、通常、色材が付着した記録媒体の被記録面の全面に付着させるが、色材の付着部分のみ選択的に付着させるなどしてもよい。
【0031】
印刷後処理液の付着(塗工)量は、固形分換算で4〜20g/m2程度が適当である。付着量が4g/m2未満では記録画像の諸特性の改善効果に乏しく、20g/m2超では塗膜形成に支障をきたしたり、過剰な光沢感の付与による画質低下などを招くおそれがある。
【0032】
記録媒体に印刷後処理液を付着させた後は、速やかにこれを加熱する。この加熱処理により、記録媒体の被記録面上に残留する上記ポリマー微粒子による造膜反応が促進され、該被記録面を被覆する塗膜(保護層)が形成される。記録媒体の加熱は、熱風加熱装置や赤外線式加熱装置などの公知の加熱装置を用いて常法通り行うことができる。加熱温度は、使用するポリマー微粒子にもよるが、40〜140℃が好ましい。記録媒体の含水量が多く、湿った状態にある場合は、これを高温で一気に加熱乾燥するとブリスターを生じ易いので、例えば、乾燥ゾーン1は風乾、乾燥ゾーン2は60℃熱風乾燥、乾燥ゾーン3は130℃熱風乾燥というように、多段乾燥で緩やかに乾燥することが好ましい。
【0033】
本発明の画像保護方法は、例えば、次のようにして実施することができる。
【0034】
図1は、本発明の画像保護方法の一実施形態の実施に使用するインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。図1に示すインクジェットプリンタ10は、紙送りモータ11で駆動されるプラテンローラ12により記録媒体Mを矢標X方向に搬送し、キャリッジ13上に搭載された記録ヘッド20が、記録媒体Mの被記録面に、インクタンク30から供給される各色インク及び印刷後処理液をそれぞれ吐出した後、これを図示しない排紙口より搬出するようになしてある。キャリッジ13は、キャリッジベルト14を介してキャリッジモータ15に連結されており、ガイドレール16上を摺動して、矢標X方向と直交する矢標Y1又はY2方向に主走査するようになっている。また、図示しない排紙口の近傍には、記録媒体Mの被記録面に対し熱風を送風することが可能な熱風乾燥装置(図示せず)が設けられており、排紙前に記録媒体Mを加熱できるようになっている。
【0035】
図2は、記録ヘッド20のノズル開口面20aの概略正面図である。図2中、Nzはノズルの開口部を示し、21及び26は、印刷後処理液を吐出するノズル列であり、22,23,24,25は、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のインクを吐出するノズル列である。このように、主走査方向の両端のノズル列を印刷後処理液吐出用とすることで、双方向(Y1及びY2)印字及び後処理が可能となり、製造効率が上がる。
【0036】
このような構成のインクジェットプリンタ10において、記録ヘッド20は、矢標Y1方向に走査される場合、記録媒体Mの被記録面に対して、先ず、ノズル列22,23,24,25よりY、M、C、Kの各色インクを吐出させてインクジェット記録を行い、続いて、ノズル列26より印刷後処理液を吐出する。矢標Y1方向に走査される場合は、ノズル列21は使用しない。記録ヘッド20は、記録領域の矢標Y1方向終端に到達し、記録媒体Mが矢標X方向に所定量搬送された後、矢標Y2方向に走査される。矢標Y2方向に走査される場合は、先ず、ノズル列25,24,23,22より各色インクを吐出させてインクジェット記録を行い、続いて、ノズル列21より印刷後処理液を吐出する。矢標Y2方向に走査される場合は、ノズル列26は使用しない。
【0037】
上記のようにしてインク及び印刷後処理液が付着された記録媒体Mは、図示しない排紙口を経て外部へ排出される際に、図示しない熱風乾燥装置により所定の温度で加熱される。
【0038】
このような記録ヘッド20の双方向(Y1及びY2)走査と、各走査終了時の記録媒体MのX方向への搬送と、加熱処理とが繰り返されることにより、記録媒体の被記録面上に保護層が形成された構成の記録物(オーバーコート記録物)が製造される。
【0039】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び本発明の効果を示す試験例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、斯かる実施例により何等制限されるものではない。
【0040】
(後処理液の調製)
下記〔表1〕に示す後処理液1〜7を調製した。
【0041】
【表1】
【0042】
(オーバーコート記録物の作製)
マット調のインクジェット記録用コート紙(「MCマット紙」セイコーエプソン製、75度光沢度2%)の被記録面(マット面)に対し、顔料インクジェットプリンタ(PM−4000PX、セイコーエプソン製)を用いて、マゼンタのOD=1のカラーパッチを印刷した。次いで、別のインクジェットプリンタ(「EM930C」セイコーエプソン製)のシアンインクと上記後処理液とを入れ替えたものを用いて、カラーパッチが印刷された被記録面の全面に、シアンOD=1となるベタパターンで、付着量が固形分換算で5g/m2となるように上記後処理液を均一に付着させた。次いで、この後処理済の記録媒体を、内部温度を120℃に設定した恒温槽に入れて1分間放置した。このようにして、インクジェット記録用コート紙の被記録面に上記各後処理液を使用した保護層を形成し、オーバーコート記録物を作製した。
【0043】
〔試験例〕
上記各オーバーコート記録物について、光沢向上、発色向上、耐擦性、耐ガス性を下記の方法により評価した。また、上記各後処理液の吐出安定性を下記の方法により評価した。これらの結果を下記〔表2〕に示す。
【0044】
(光沢向上の評価方法)
オーバーコート記録物のカラーパッチ印刷部分について、JIS−Z8142に従って75度光沢度を測定した。この測定値(サンプル測定値)と、予め測定しておいた後処理前のカラーパッチ印刷部分についての75度光沢度の測定値(ブランク測定値)との差(サンプル測定値−ブランク測定値)を求め、この差が30以上をA(光沢向上能良好)、25以上30未満をB(実用上問題なし)、25未満をC(実用不可)とした。
【0045】
(発色向上の評価方法)
オーバーコート記録物のカラーパッチ印刷部分について、グレタグマクベス社製のスペクトロリーノSPM−50を用い、視野角2度、光源D50、フィルター無しの条件で反射光学濃度(OD値)を測定した。このOD値(サンプルOD値)と、予め測定しておいた後処理前のカラーパッチ印刷部分についてのOD値(ブランクOD値)との差(サンプルOD値−ブランクOD値)を求め、この差が0.2以上をA(発色向上能良好)、0.1以上0.2未満をB(実用上問題なし)、0.1未満をC(実用不可)とした。
【0046】
(耐擦性の評価方法)
オーバーコート記録物の保護層表面に上質紙を重ね合わせ、上から908gの重りで保護層表面を10往復擦った後、サザーランドラブテスター(AB−201、テスター産業製)により保護層表面の状態を目視で観察し、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:保護層表面に傷が観られない。耐擦性良好。
B:保護層表面に傷が観られるが、印字部分に傷は観られない。実用上問題なし。
C:保護層表面は勿論のこと、印字部分にまで傷が観られる。実用不可。
【0047】
(耐ガス性の評価方法)
オーバーコート記録物及び後処理前の記録物(ブランク)をガス導入口及び排出口の付いたガラス容器に入れ、ガス発生器にて発生させたオゾンガスを1ppmで100時間連続して該ガラス容器に導入してガス処理を行った。そして、色差計を用いて、ガス処理前後の各サンプルのカラーパッチ印刷部分についての濃度低下率を求め、この値が10%未満をA(画像濃度の低下がほとんど観られず耐ガス性良好)、10%以上20%未満をB(実用上問題なし)、20%以上をC(画像濃度の低下がひどく実用不可)とした。
【0048】
(吐出安定性の評価方法)
上記顔料インクジェットプリンタ(PM−4000PX)の記録ヘッドの主走査方向両端に位置するインクカートリッジ内のインクと後処理とを入れ替えて、図2に示すようなノズル配置としたものを用いて、C、M、Y、Kの4色を用いたコンポジットパターン上に後処理液を吐出させる印字パターンで、OKトップコートNを1000枚印字してこれらの印字面を目視で観察し、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:後処理液のノズル抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が5箇所以内であり、目詰まりを起こした際にクリーニング動作3回以内で復帰した。吐出安定性に優れる。
B:後処理液のノズル抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が10箇所以内であり、目詰まりを起こした際にクリーニング動作5回以内で復帰した。実用上問題なし。
C:後処理液のノズル抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が10箇所を超えており、目詰まりを起こした際にクリーニング動作5回超で復帰した。実用不可。
【0049】
【表2】
【0050】
上記〔表2〕から明らかなように、ガラス転移温度50℃以上且つ平均粒子径200nm以上のポリマー微粒子を使用した実施例1〜3は、光沢向上、発色向上、耐擦性、耐ガス性、吐出安定性の全ての評価において良好な結果(B評価以上)が得られたのに対し、ガラス転移温度又は平均粒子径が上記範囲外のポリマー微粒子を使用した比較例1〜3は、マット面上に良好な塗膜を形成することができず、光沢向上、発色向上、耐擦性、耐ガス性のいずれかあるいは全てが実用不可(C評価)となった。比較例3の発色向上がC評価となったのは、ポリマー微粒子のガラス転移温度が高いため(Tg100℃)、塗膜の透明性が低下したことに起因するものと推察される。また参考例は、ポリマー微粒子の平均粒子径が大きすぎるため(500nm)、後処理液の吐出安定性が低下し、その結果、インクジェット記録方式を利用した後処理液の付着がうまく行かず、全ての評価がCとなった。
【0051】
以上の結果は、マット調のインクジェット記録用コート紙に対してのものであるが、これとは別に、光沢調のインクジェット記録用コート紙(PM写真用紙〈光沢〉、セイコーエプソン製、75度光沢度50%)に対して、上記後処理液1〜3(実施例1〜3)を用いて上記と同様にオーバーコート記録物を作製して、光沢向上、発色向上、耐擦性、耐ガス性を評価したところ、上記のマット調のインクジェット記録用コート紙の場合と同様の結果となった。従って、本発明の印刷後処理液は、被記録面が粗面であるマット調の記録媒体、及び被記録面が平滑で鏡面性の高い光沢調の記録媒体の何れに対しても、画像特性の向上に有効な保護層を形成することができるといえる。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、鏡面性が高く光沢度の高い平滑面を被記録面とする光沢調の記録媒体のみならず、凹凸、亀裂、細孔などが多数存在する粗面を被記録面とするマット調の記録媒体に対しても、光沢感、発色性、耐擦性などの各種画像特性を飛躍的に高め得る保護層を形成することができ、画質及び保存性の両面で優れたオーバーコート記録物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像保護方法の一実施形態の実施に使用するインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す記録ヘッドのノズル開口面の概略正面図である
【符号の説明】
10 インクジェットプリンタ
12 プラテンローラ
13 キャリッジ
16 ガイドロール
20 記録ヘッド
20a ノズル開口面
21〜26 ノズル列
30 インクタンク
【発明の属する技術分野】
本発明は、光沢感、発色、保護特性などの向上を目的として、画像が形成された記録媒体の画像面に付与される印刷後処理液に関し、詳しくは、記録媒体のマット面に形成されたインクジェット画像の後処理に最適な印刷後処理液及びこれを用いた画像保護方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
インクジェット記録方式は、記録ヘッドのノズルからインクの液滴を吐出させ、記録媒体にインクを付着させて画像を形成する印刷方式である。近年、インクジェット記録用の記録媒体として、紙やフィルムなどの基材上にインク受容層を設けた構成のインクジェット記録用コート紙が開発され、高画質・高品位のインクジェット画像が得られるようになっている。このインクジェット記録用コート紙は、光沢感に優れる鏡面から、艶消し調のマット面まで、種々の面質のものが市販されており、印刷用途に応じて使い分けられている。
【0003】
また、従来から、インクジェット記録がなされた記録媒体のインクジェット画像面に印刷後処理液を塗布し、該画像面をその塗膜からなる保護層で被覆することにより、画像の耐水性、耐光性、耐ガス性、耐擦性、光沢感、発色性などを改善する方法が知られている。例えば、特許文献1には、少なくとも水と、ポリマー微粒子と、浸透剤とを含有してなるコート液(印刷後処理液)を、インクジェットヘッドを用いて記録媒体上の少なくとも画像部分に吐出しコートを施すことが開示されている。また、特許文献2には、記録媒体にインクジェット記録方式で記録を行い画像を形成した後、画像部分の全面に少なくとも樹脂エマルジョンと水とを含有してなるトップコート液(印刷後処理液)をインクジェット記録方式で噴射して一様な透明のトップコート層を形成することが開示されている。
【0004】
しかしながら、従来の印刷後処理液は、鏡面性が高く光沢度の高い記録媒体に対しては有効であるものの、光沢感が抑えられたマット(艶消し)調の記録媒体、例えば、マット紙などとして市販されているインクジェット記録用コート紙に対しては、その塗膜形成面(被記録面)が凹凸、細孔、亀裂などが存在する粗面であるため、平滑で均一な厚みを有する塗膜を形成することができず、光沢付与、発色性の向上、耐擦性などの画像保護特性の改善の点で不十分なものであった。
【0005】
従って、本発明の目的は、光沢度の高い記録媒体のみならずマット調の記録媒体に形成された画像に対しても、その光沢感、発色性を飛躍的に高め、且つ優れた保護特性を付与し得る印刷後処理液及びこれを用いた画像保護方法を提供することにある。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−201428号公報
【特許文献2】
特開2001−39006号公報
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、光沢調、マット調などの種々の面質のインクジェット画像面上に塗膜を形成し、その画像特性を充分に高め得る印刷後処理液について種々検討した結果、塗膜の形成材料となるポリマー微粒子として、ガラス転移温度及び平均粒子径がそれぞれ特定範囲にあるポリマー微粒子を使用することにより、鏡面性が高く光沢度の高い記録媒体上に形成されたインクジェット画像面だけでなく、細孔、亀裂、凹凸などが存在するマット調の記録媒体上に形成されたインクジェット画像面上にも、良好な光沢感、発色性及び保護特性を付与し得る塗膜(保護層)を形成し得ることを知見した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、少なくともポリマー微粒子を含有する印刷後処理液において、該ポリマー微粒子が、ガラス転移温度50℃以上且つ平均粒子径200nm以上であることを特徴とする印刷後処理液を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
また、本発明は、インクジェット記録方式により色材が付着された記録媒体の被記録面に、上記印刷後処理液を付着させた後、該記録媒体を加熱することにより、該被記録面上に保護層を形成することを特徴とする画像保護方法を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、先ず、本発明の印刷後処理液について詳細に説明する。本発明の印刷後処理液は、ポリマー微粒子を必須成分として含有する水性の液体組成物であり、該ポリマー微粒子を分散質とし、水性液媒体を分散相とするエマルジョンである。
【0011】
上記ポリマー微粒子としては、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上で且つ平均粒子径が200nm以上のものを用いる。ここでいうTgは、重量平均Tgを意味し、例えば、2種以上の樹脂が相分離して存在する多層構造(コアシェル構造)のポリマー微粒子の場合は、各樹脂のTgにその含有率(重量%)を乗じた値の総和を意味する。Tg及び平均粒子径がそれぞれこのような範囲にあるポリマー微粒子であれば、凹凸や亀裂などがほとんどなく鏡面性が高い平滑な面(光沢面)を被記録面とする記録媒体(例えば、市販の光沢系インクジェット専用紙)は勿論のこと、凹凸や亀裂などが多数存在する粗面(マット面)を被記録面とする記録媒体(例えば、市販のマット系インクジェット専用紙)に対しても、その被記録面上に平滑で均一な厚みの塗膜を形成することができ、該被記録面上に形成された画像の諸特性(光沢感、発色性、耐擦性など)を飛躍的に向上させることができる。Tgが50℃未満あるいは平均粒子径が200nm未満のポリマー微粒子では、これを含有させた印刷後処理液を粗面(被記録面)に付着させた場合、該ポリマー微粒子が該粗面の凹部や亀裂に入り込んでしまい、塗膜を形成するのに必要な量のポリマー微粒子が該粗面上に残留しない。従って、Tg及び平均粒子径の何れの要件が欠けても、マット調の画像面に良好な塗膜を形成することはできない。
【0012】
尚、ポリマー微粒子のTgが高すぎると、塗膜の透明性が低下して画質低下を招くおそれがあるので、このTgは50℃〜95℃の範囲にあることが好ましい。また、ポリマー微粒子の平均粒子径が大きすぎると、印刷後処理液をインクジェット記録方式により付着させる場合に必要な吐出安定性が低下するおそれがあるので、この平均粒子径は200〜400nmの範囲にあることが好ましい。
【0013】
ポリマー微粒子の形成材料となる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのうち、特に、アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂は塗膜の耐擦性及び透明性に優れており、本発明で好ましく用いられる。
【0014】
また、ポリマー微粒子は、1種類の樹脂からなる単粒子構造のものでもよく、2種以上の樹脂が粒子中に相分離して存在するコアシェル構造のものでもよい。コアシェル構造には、シェル部がコア部を完全に被覆している形態、シェル部がコア部の一部を被覆している形態、シェル部を構成する樹脂の一部がコア部内にドメインなどを形成している形態、コア部とシェル部との間にこれらと組成の異なる樹脂層を1層以上有する3層以上の多層形態などがあるが、何れの形態のポリマー微粒子も本発明で用いることができる。
【0015】
ポリマー微粒子は、乳化剤、重合開始剤の存在下、ラジカル重合可能な単量体を水中で重合させる乳化重合法など、公知の重合法により製造することができる。
【0016】
また、本発明の印刷後処理液で使用される水性液媒体としては、水に、湿潤剤、浸透剤、界面活性剤などの各種添加剤を含有させたものが好ましい。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水を用いることが好ましい。また、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理された水は、カビやバクテリアの発生を防止して長期保存を可能とする点で好ましい。
【0017】
上記湿潤剤は、後述するように、印刷後処理液をインクジェット記録方式により吐出させる場合に必要な吐出安定性を確保する上で有効な添加剤である。湿潤剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール等の多価アルコール類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクタム類;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等の尿素類;マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、マルトース等の糖類等が挙げられる。湿潤剤は、印刷後処理液中に1〜50重量%程度含有させればよい。
【0018】
また、上記の浸透剤及び界面活性剤は、吐出安定性の確保の他、記録媒体への浸透性を確保する上でも有効な添加剤である。浸透剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノール等の低級アルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類等が挙げられる。浸透剤は、印刷後処理液中に1〜50重量%程度含有させればよい。
【0019】
上記界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等の非イオン性界面活性剤;サーフィノール82、104、440、465、485(以上、エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社製)、オルフィンSTG、オルフィンE1010(以上、日信化学社製)等のアセチレングリコ−ル系界面活性剤;カチオン性界面活性剤;両イオン性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、印刷後処理液中に0.01〜20重量%程度含有させればよい。
【0020】
本発明の印刷後処理液に使用可能なその他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、消光剤、酸化防止剤、耐水化剤、防黴剤、防腐剤、増粘剤、流動性改良剤、pH調整剤、消泡剤、抑泡剤、レベリング剤、帯電防止剤等が挙げられる。添加剤を含有させる場合は、ポリマー微粒子の均一分散が阻害されないように留意する必要がある。
【0021】
本発明の印刷後処理液は、成膜性や、インクジェット記録方式により吐出させる場合に必要な吐出安定性などを確保する観点から、液温20℃における粘度が2〜5mPa・s、表面張力が20〜38mN/m、pHが6.5〜11の範囲にあることが好ましい。これらの各物性値の調整は、上述した各成分の含有量を調整することにより行うことができる。尚、上記ポリマー微粒子を必須成分として含有する本発明の印刷後処理液の最低造膜温度(JIS−K6800に準拠)は、およそ40〜100℃の範囲にある。
【0022】
次に、上記印刷後処理液を用いた本発明の画像保護方法について詳細に説明する。
【0023】
本発明の画像保護方法は、インクジェット記録方式により色材が付着された記録媒体の被記録面に、上記印刷後処理液を付着させた後、該記録媒体を加熱することにより、該被記録面上に保護層を形成することを特徴とする。
【0024】
本発明の画像保護方法の対象となる上記記録媒体は、インクジェット記録方式に適合した特性を持つ記録媒体(インクジェット記録用コート紙)に限定されず、例えば一般事務用のコピー用紙など、インクジェット記録が可能なものであればよい。但し、本発明の印刷後処理液は、上述したように、凹凸や亀裂などが多数存在する粗面(マット面)上に形成されたインクジェット画像に対して特に有効なものであるから、本発明の効果を最大限発揮させるという点で、被記録面が粗面でマット調(艶消し調)の外観を呈するインクジェット記録用コート紙が好ましいと言える。
【0025】
具体的には、紙やフィルムなどの基材上にインク受容層を設けてなるインクジェット記録用コート紙において、被記録面となるそのインク受容層の表面の75度光沢度(JIS−Z8142に準拠)が1〜10%の範囲にあるものが好ましい。75度光沢度がこのような範囲にあるインク受容層は、その表面が凹凸、亀裂、細孔などが多数存在する粗面となっており、この粗面が入射光を乱反射させることにより、独特のマット調(艶消し調)の外観を呈している。また、このインク受容層自体の構成は、無機顔料及びバインダーを主体とするいわゆる空隙型(吸収型)のインク受容層である。無機顔料としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の多孔質顔料が用いられ、その含有量は、インク受容層中、固形分換算で40〜90重量%程度である。また、バインダーとしては、ポリビニルアルコール等が用いられる。
【0026】
本発明に好ましく使用できる市販の記録媒体(マット調のインクジェット記録用コート紙)としては、例えば、セイコーエプソン社製の「PMマット紙」(75度光沢度2%)、「MCマット紙」(75度光沢度2%)、「スーパーファイン専用紙」(75度光沢度4%)等が挙げられる。
【0027】
また、上記記録媒体に付着される上記色材は、インクジェット記録用インクの色材として使用可能なものであればよく、染料系でも顔料系でもよい。一般に、染料系色材を含有させた染料インクによる画像形成は、染料を記録媒体内部に侵入させることにより記録媒体自体を染色して画像を形成するもので、染料が記録媒体の表面に留まらないのに対し、顔料系色材を含有させた顔料インクによる画像形成は、染料よりはるかに大きな顔料粒子を記録媒体の表面に留め、該表面上にある顔料粒子自体の発色により画像を形成するものであるため、顔料インクによる画像は、染料インクによる画像に比して、入射光の乱反射による色見の相違や発色性の低下が起こりやすく、また顔料粒子が剥がれ落ちやすく耐擦性に劣るという欠点がある。本発明の印刷後処理液は、このような顔料インク画像の欠点を補い、顔料系色材の特長である優れた耐光性、耐水性を充分に活かすことができるので、色材として顔料系色材(インクとして顔料インク)を使用するのは有効である。
【0028】
顔料系色材としては、例えば、酸化チタン及び酸化鉄、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックなどの無機系顔料;アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどの有機系顔料などが挙げられる。インクジェット記録用の顔料インクは、このような顔料系色材を含有させた水系インクが一般的であり、通常、保湿や浸透調整等のため、更に各種有機溶剤や界面活性剤等が含有されている。インク中における顔料系色材の含有量は、インクに要求される特性等を考慮して適宜調整され、通常、0.5〜30重量%程度である。カラー画像を形成する場合は、イエロー、マゼンタ及びシアンの減法混色の3原色のインク、あるいはこれにブラックその他の色のインクを加えた4色以上のインクを用いる。
【0029】
印刷後処理液の記録媒体への付着は、ロールコーター法、バーコーター法、ブレードコーター法などの公知の塗工方式の他、インクジェット記録方式により行うこともできる。特にインクジェット記録方式は、後処理液の塗工パターンや塗工量の変更に対応し易い;他の塗工方式に比して低塗工量のコントロールが容易;印字(インクの付着)と後処理液の付着を連続的に行うことが可能となり、作業効率が高まるなどのメリットがあり、また、本発明の印刷後処理液は吐出安定性に優れ、記録ヘッドから吐出させてもノズルの目詰まりなどをおこすおそれが極めて少ないため、インクジェット記録方式は印刷後処理液の付着方法として好ましいものである。
【0030】
印刷後処理液は、通常、色材が付着した記録媒体の被記録面の全面に付着させるが、色材の付着部分のみ選択的に付着させるなどしてもよい。
【0031】
印刷後処理液の付着(塗工)量は、固形分換算で4〜20g/m2程度が適当である。付着量が4g/m2未満では記録画像の諸特性の改善効果に乏しく、20g/m2超では塗膜形成に支障をきたしたり、過剰な光沢感の付与による画質低下などを招くおそれがある。
【0032】
記録媒体に印刷後処理液を付着させた後は、速やかにこれを加熱する。この加熱処理により、記録媒体の被記録面上に残留する上記ポリマー微粒子による造膜反応が促進され、該被記録面を被覆する塗膜(保護層)が形成される。記録媒体の加熱は、熱風加熱装置や赤外線式加熱装置などの公知の加熱装置を用いて常法通り行うことができる。加熱温度は、使用するポリマー微粒子にもよるが、40〜140℃が好ましい。記録媒体の含水量が多く、湿った状態にある場合は、これを高温で一気に加熱乾燥するとブリスターを生じ易いので、例えば、乾燥ゾーン1は風乾、乾燥ゾーン2は60℃熱風乾燥、乾燥ゾーン3は130℃熱風乾燥というように、多段乾燥で緩やかに乾燥することが好ましい。
【0033】
本発明の画像保護方法は、例えば、次のようにして実施することができる。
【0034】
図1は、本発明の画像保護方法の一実施形態の実施に使用するインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。図1に示すインクジェットプリンタ10は、紙送りモータ11で駆動されるプラテンローラ12により記録媒体Mを矢標X方向に搬送し、キャリッジ13上に搭載された記録ヘッド20が、記録媒体Mの被記録面に、インクタンク30から供給される各色インク及び印刷後処理液をそれぞれ吐出した後、これを図示しない排紙口より搬出するようになしてある。キャリッジ13は、キャリッジベルト14を介してキャリッジモータ15に連結されており、ガイドレール16上を摺動して、矢標X方向と直交する矢標Y1又はY2方向に主走査するようになっている。また、図示しない排紙口の近傍には、記録媒体Mの被記録面に対し熱風を送風することが可能な熱風乾燥装置(図示せず)が設けられており、排紙前に記録媒体Mを加熱できるようになっている。
【0035】
図2は、記録ヘッド20のノズル開口面20aの概略正面図である。図2中、Nzはノズルの開口部を示し、21及び26は、印刷後処理液を吐出するノズル列であり、22,23,24,25は、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のインクを吐出するノズル列である。このように、主走査方向の両端のノズル列を印刷後処理液吐出用とすることで、双方向(Y1及びY2)印字及び後処理が可能となり、製造効率が上がる。
【0036】
このような構成のインクジェットプリンタ10において、記録ヘッド20は、矢標Y1方向に走査される場合、記録媒体Mの被記録面に対して、先ず、ノズル列22,23,24,25よりY、M、C、Kの各色インクを吐出させてインクジェット記録を行い、続いて、ノズル列26より印刷後処理液を吐出する。矢標Y1方向に走査される場合は、ノズル列21は使用しない。記録ヘッド20は、記録領域の矢標Y1方向終端に到達し、記録媒体Mが矢標X方向に所定量搬送された後、矢標Y2方向に走査される。矢標Y2方向に走査される場合は、先ず、ノズル列25,24,23,22より各色インクを吐出させてインクジェット記録を行い、続いて、ノズル列21より印刷後処理液を吐出する。矢標Y2方向に走査される場合は、ノズル列26は使用しない。
【0037】
上記のようにしてインク及び印刷後処理液が付着された記録媒体Mは、図示しない排紙口を経て外部へ排出される際に、図示しない熱風乾燥装置により所定の温度で加熱される。
【0038】
このような記録ヘッド20の双方向(Y1及びY2)走査と、各走査終了時の記録媒体MのX方向への搬送と、加熱処理とが繰り返されることにより、記録媒体の被記録面上に保護層が形成された構成の記録物(オーバーコート記録物)が製造される。
【0039】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び本発明の効果を示す試験例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、斯かる実施例により何等制限されるものではない。
【0040】
(後処理液の調製)
下記〔表1〕に示す後処理液1〜7を調製した。
【0041】
【表1】
【0042】
(オーバーコート記録物の作製)
マット調のインクジェット記録用コート紙(「MCマット紙」セイコーエプソン製、75度光沢度2%)の被記録面(マット面)に対し、顔料インクジェットプリンタ(PM−4000PX、セイコーエプソン製)を用いて、マゼンタのOD=1のカラーパッチを印刷した。次いで、別のインクジェットプリンタ(「EM930C」セイコーエプソン製)のシアンインクと上記後処理液とを入れ替えたものを用いて、カラーパッチが印刷された被記録面の全面に、シアンOD=1となるベタパターンで、付着量が固形分換算で5g/m2となるように上記後処理液を均一に付着させた。次いで、この後処理済の記録媒体を、内部温度を120℃に設定した恒温槽に入れて1分間放置した。このようにして、インクジェット記録用コート紙の被記録面に上記各後処理液を使用した保護層を形成し、オーバーコート記録物を作製した。
【0043】
〔試験例〕
上記各オーバーコート記録物について、光沢向上、発色向上、耐擦性、耐ガス性を下記の方法により評価した。また、上記各後処理液の吐出安定性を下記の方法により評価した。これらの結果を下記〔表2〕に示す。
【0044】
(光沢向上の評価方法)
オーバーコート記録物のカラーパッチ印刷部分について、JIS−Z8142に従って75度光沢度を測定した。この測定値(サンプル測定値)と、予め測定しておいた後処理前のカラーパッチ印刷部分についての75度光沢度の測定値(ブランク測定値)との差(サンプル測定値−ブランク測定値)を求め、この差が30以上をA(光沢向上能良好)、25以上30未満をB(実用上問題なし)、25未満をC(実用不可)とした。
【0045】
(発色向上の評価方法)
オーバーコート記録物のカラーパッチ印刷部分について、グレタグマクベス社製のスペクトロリーノSPM−50を用い、視野角2度、光源D50、フィルター無しの条件で反射光学濃度(OD値)を測定した。このOD値(サンプルOD値)と、予め測定しておいた後処理前のカラーパッチ印刷部分についてのOD値(ブランクOD値)との差(サンプルOD値−ブランクOD値)を求め、この差が0.2以上をA(発色向上能良好)、0.1以上0.2未満をB(実用上問題なし)、0.1未満をC(実用不可)とした。
【0046】
(耐擦性の評価方法)
オーバーコート記録物の保護層表面に上質紙を重ね合わせ、上から908gの重りで保護層表面を10往復擦った後、サザーランドラブテスター(AB−201、テスター産業製)により保護層表面の状態を目視で観察し、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:保護層表面に傷が観られない。耐擦性良好。
B:保護層表面に傷が観られるが、印字部分に傷は観られない。実用上問題なし。
C:保護層表面は勿論のこと、印字部分にまで傷が観られる。実用不可。
【0047】
(耐ガス性の評価方法)
オーバーコート記録物及び後処理前の記録物(ブランク)をガス導入口及び排出口の付いたガラス容器に入れ、ガス発生器にて発生させたオゾンガスを1ppmで100時間連続して該ガラス容器に導入してガス処理を行った。そして、色差計を用いて、ガス処理前後の各サンプルのカラーパッチ印刷部分についての濃度低下率を求め、この値が10%未満をA(画像濃度の低下がほとんど観られず耐ガス性良好)、10%以上20%未満をB(実用上問題なし)、20%以上をC(画像濃度の低下がひどく実用不可)とした。
【0048】
(吐出安定性の評価方法)
上記顔料インクジェットプリンタ(PM−4000PX)の記録ヘッドの主走査方向両端に位置するインクカートリッジ内のインクと後処理とを入れ替えて、図2に示すようなノズル配置としたものを用いて、C、M、Y、Kの4色を用いたコンポジットパターン上に後処理液を吐出させる印字パターンで、OKトップコートNを1000枚印字してこれらの印字面を目視で観察し、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:後処理液のノズル抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が5箇所以内であり、目詰まりを起こした際にクリーニング動作3回以内で復帰した。吐出安定性に優れる。
B:後処理液のノズル抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が10箇所以内であり、目詰まりを起こした際にクリーニング動作5回以内で復帰した。実用上問題なし。
C:後処理液のノズル抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が10箇所を超えており、目詰まりを起こした際にクリーニング動作5回超で復帰した。実用不可。
【0049】
【表2】
【0050】
上記〔表2〕から明らかなように、ガラス転移温度50℃以上且つ平均粒子径200nm以上のポリマー微粒子を使用した実施例1〜3は、光沢向上、発色向上、耐擦性、耐ガス性、吐出安定性の全ての評価において良好な結果(B評価以上)が得られたのに対し、ガラス転移温度又は平均粒子径が上記範囲外のポリマー微粒子を使用した比較例1〜3は、マット面上に良好な塗膜を形成することができず、光沢向上、発色向上、耐擦性、耐ガス性のいずれかあるいは全てが実用不可(C評価)となった。比較例3の発色向上がC評価となったのは、ポリマー微粒子のガラス転移温度が高いため(Tg100℃)、塗膜の透明性が低下したことに起因するものと推察される。また参考例は、ポリマー微粒子の平均粒子径が大きすぎるため(500nm)、後処理液の吐出安定性が低下し、その結果、インクジェット記録方式を利用した後処理液の付着がうまく行かず、全ての評価がCとなった。
【0051】
以上の結果は、マット調のインクジェット記録用コート紙に対してのものであるが、これとは別に、光沢調のインクジェット記録用コート紙(PM写真用紙〈光沢〉、セイコーエプソン製、75度光沢度50%)に対して、上記後処理液1〜3(実施例1〜3)を用いて上記と同様にオーバーコート記録物を作製して、光沢向上、発色向上、耐擦性、耐ガス性を評価したところ、上記のマット調のインクジェット記録用コート紙の場合と同様の結果となった。従って、本発明の印刷後処理液は、被記録面が粗面であるマット調の記録媒体、及び被記録面が平滑で鏡面性の高い光沢調の記録媒体の何れに対しても、画像特性の向上に有効な保護層を形成することができるといえる。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、鏡面性が高く光沢度の高い平滑面を被記録面とする光沢調の記録媒体のみならず、凹凸、亀裂、細孔などが多数存在する粗面を被記録面とするマット調の記録媒体に対しても、光沢感、発色性、耐擦性などの各種画像特性を飛躍的に高め得る保護層を形成することができ、画質及び保存性の両面で優れたオーバーコート記録物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像保護方法の一実施形態の実施に使用するインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す記録ヘッドのノズル開口面の概略正面図である
【符号の説明】
10 インクジェットプリンタ
12 プラテンローラ
13 キャリッジ
16 ガイドロール
20 記録ヘッド
20a ノズル開口面
21〜26 ノズル列
30 インクタンク
Claims (6)
- 少なくともポリマー微粒子を含有する印刷後処理液において、該ポリマー微粒子が、ガラス転移温度50℃以上且つ平均粒子径200nm以上であることを特徴とする印刷後処理液。
- 湿潤剤、浸透剤及び界面活性剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の印刷後処理液。
- インクジェット記録方式により色材が付着された記録媒体の被記録面に、請求項1又は2記載の印刷後処理液を付着させた後、該記録媒体を加熱することにより、該被記録面上に保護層を形成することを特徴とする画像保護方法。
- 上記記録媒体が基材上にインク受容層を設けてなり、被記録面となる該インク受容層の表面の75度光沢度が1〜10%であることを特徴とする請求項3記載の画像保護方法。
- 上記色材が顔料系色材であることを特徴とする請求項3又は4記載の画像保護方法。
- 上記印刷後処理液をインクジェット記録方式により上記被記録面に付着させることを特徴とする請求項3〜5の何れかに記載の画像保護方法。
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-
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- 2003-05-06 JP JP2003128075A patent/JP2004330554A/ja not_active Withdrawn
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