JP2004329122A - 細胞培養装置および培養方法 - Google Patents

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Osamu Suzuki
木 治 鈴
Takeshi Iritani
谷 剛 入
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Abstract

【課題】細胞の組織再生を促進するための各種の培養条件に勾配を与えた条件下で細胞培養を行い、これにより臓器・器官の機能を有する組織を構築する培養装置および培養方法を提供すること。
【解決手段】培地中で、担体に保持された細胞へ与える培養条件を細胞レベルで制御する培養制御手段を備え、この培養制御手段により、細胞へ与えられる培養条件が勾配を有する条件下で培養を行って組織を形成するように構成した。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、再生組織を構築するための細胞培養装置および培養方法に関する。さらに詳しくは、生体内の環境へ近づけた状態で細胞を培養し、これにより臓器・器官の機能を有する組織を構築して、人体の欠損組織を再生する再生医療用材料、薬理効果を検証するスクリーニング用材料、臓器・器官の機能を研究する研究用材料などを提供するための細胞培養装置および培養方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
近年、細胞の培養や組織の再構築により臓器・器官の治療を行う再生医療の技術が急速に発展してきている。
【0003】
この再生医療へのアプローチとして、再生医工学(Tissue Engineering)による技術が注目されている。この技術は、組織の機能を再生するための細胞と、細胞が分化・増殖するための足場(Scaffold)となる担体と、細胞の分化・増殖を制御する成長因子(growth factor)等を主要な構成要素として組織再生を行うことを基礎としている。
【0004】
この再生医工学の技術により組織再生を行う一つの手段として、生体内(in vivo)へ細胞を移植して組織を再生する方法がある。この生体内での再生方法では、患者の組織欠損部分に、移植細胞と、移植細胞を担持する担体と、成長因子とを与えることにより欠損した組織を再生する。
【0005】
一方、もう一つの手段として、生体外(in vitro)で、担体に捲種した細胞を成長因子の存在下で培養して組織様の構造を形成した後に、患者の体内へこれを移植して組織を再生する方法がある。このように生体外で組織構造を形成する技術は、所望の機能をもつ組織を再生医療用材料として提供する道を開き、さらには薬理効果を検証するスクリーニング用材料、組織の機能を研究する研究用材料等を与えるなど、目的とする機能をもった組織を大量生産することも可能な手段として期待される。
【0006】
現在、例えば表皮、真皮、軟骨、皮膚といった器官に適用される比較的小型の組織では、このような生体外での培養技術が提案されており、例えば特許文献1(米国特許第5,155,034号明細書)に開示された、回転する培養室内で細胞培養を行う技術や、あるいは特許文献2(米国特許第5,858,721号明細書)等に開示されている、高分子担体を用いた培養技術などが提案されている。
【0007】
こうした手法を用いた生体外での培養により実際に機能をもった組織が得られており、中には再生医療の実用化レベルへ達している技術もある。
【0008】
しかしながら、実際に得られているこのような組織は上記したようなごく一部の小型組織のものに限られているのが現状であり、例えば肝臓、膵臓、腎臓といった主要臓器の機能を有する、さらに大型の三次元的な組織を構築するには至っていない。
【0009】
本発明者は、このような従来技術の課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、細胞に対して、その増殖、分化等を促すように作用する、物理的もしくは化学的な外的因子を勾配をもたせて与えることにより、具体的には圧電素子を用いて細胞に勾配をもったひずみを与えることにより、また培養容器内へ多数の細孔から組成、濃度が異なる成長因子を含む溶液を注入し、これにより細胞周囲の成長因子の組成、濃度に勾配を生じさせることにより、あるいは培養容器内へ多数の間隔が異なる細孔から液体を注入し、これにより細胞周囲の流れに勾配を生じさせることにより、生体本来の臓器・器官の機能を有する様々な三次元的な組織を構築することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
【特許文献1】
米国特許第5,155,034号明細書
【特許文献2】
米国特許第5,858,721号明細書
【0011】
【発明の目的】
本発明は、細胞の組織再生を促進するための各種の培養条件に勾配を与えた条件下で細胞培養を行い、これにより臓器・器官の機能を有する組織を三次元的に構築可能とする細胞培養装置および培養方法を提供することを目的としている。
【0012】
【発明の概要】
本発明の細胞培養装置は、培地中で担体に保持された細胞に与える培養条件を、細胞レベルで制御可能な制御手段を備えることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の細胞培養方法は、この細胞培養装置を用い、培養条件が勾配を有する条件下で培養を行うことを特徴としている。
【0014】
ここで、「培養条件」とは、細胞に対して、その増殖、分化等を促すように作用する、物理的もしくは化学的な外的因子をいい、例えば細胞にひずみを与える振動刺激、成長因子の組成もしくは濃度、或いは流体の流れによって細胞に圧力もしくはせん断力を付与する流れ刺激を挙げることができる。
【0015】
また、「細胞レベルで制御する」とは、担体に保持されている細胞に対して、培養条件を均一に付与するのではなく、個々の細胞、もしくは数個の細胞毎に、付与される培養条件を変化させるように(例えば振動刺激の周波数の大きさ、成長因子の組成の分布もしくは濃度の高さ、流れ刺激を与える流れの速度の大きさなどを変化させるように)制御を行うことをいう。また、「培養条件が勾配を有する条件」とは、このように培養条件を細胞レベルで制御することにより、培養条件に勾配を生じさせた状態をいい、ここで「勾配」とは一定増加率での増加、一定減少率での減少の際の、一定の変化率に限定されるものではなく、周期的あるいはランダムに培養条件が変化する際の種々の変化率パターンを含むものである。
【0016】
また、本発明の細胞培養装置は、前記培養制御手段が、
培養容器の外側に取り付けた複数の圧電素子と、
複数の該圧電素子の圧電駆動をそれぞれ独立に制御する圧電制御手段とを備えることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の細胞培養方法は、この細胞培養装置を用い、
圧電制御手段により、それぞれ独立に設定した周波数で各圧電素子を圧電駆動して、担体上の細胞に与える振動刺激を細胞レベルで制御することを特徴としている。
【0018】
また、本発明の細胞培養装置は、前記培養制御手段が、
培養容器に設けられた、成長因子を含む溶液を注入する複数の注入孔と、
前記溶液を注入孔から培養容器内へ送り込むポンプとを備えることを特徴としている。
【0019】
また、本発明の細胞培養方法は、この細胞培養装置を用い、
細胞を保持した担体が載置され、培地が充填された培養容器内に、それぞれの注入孔から、成長因子の組成または濃度をそれぞれ独立に設定して調製した各溶液を注入して、担体上の細胞へ与える成長因子の組成条件または濃度条件を細胞レベルで制御することを特徴としている。
【0020】
また、本発明の細胞培養方法は、この細胞培養装置を用い、
細胞を保持した担体が載置され、培地が充填された培養容器内に、それぞれの注入孔から前記溶液を注入して、担体上の細胞へ与える流れ刺激を細胞レベルで制御することを特徴としている。また、成長因子を含む溶液の代わりに、それぞれの注入孔から培地を注入して、担体上の細胞へ与える流れ刺激を細胞レベルで制御することも可能である。
【0021】
【発明の具体的説明】
以下、本発明を、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の細胞培養装置の実施形態を模式的に示した概略図、図2は、図1の細胞培養装置の外側に取り付けられた圧電素子の配置状態を示した概略図、図3は、担体上の培養細胞が勾配を有するひずみを受ける様子を模式的に示した概略図である。
【0023】
図1に本発明の細胞培養装置の実施形態を示す。この細胞培養装置10aは、培地を供給する培養皿(培養容器)12と、圧電素子14と、各圧電素子14,14・・・をそれぞれ独立に制御する圧電制御手段16を備えている。
【0024】
培養皿12の底部は、膜体18で構成され、培養皿12へ加えられた培地24を直接に保持する。この膜体18には、コラーゲンシート等のポリマーシート、半透膜、限外濾過膜に例示される柔軟性をもつ薄膜が用いられ、圧電素子14の圧電駆動による歪を担体20へ伝達する。本実施形態では、圧電素子14と、圧電制御手段16で培養制御手段を構成している。
【0025】
各圧電素子14,14・・・は、培養皿12の底部外側から膜体18の表面に取り付けられている。本実施形態では図2に示したように四角形状の各圧電素子14,14・・・を離間して等間隔に配置し、それぞれを膜体18へ貼付している。圧電素子14の形状や離間幅は特に限定されない。圧電素子14のサイズは例えば50μm〜5mm四方であり、場合によるが全体として10mm〜300mm四方の圧電素子面を構成する。
【0026】
各圧電素子14,14・・・は圧電制御手段16でそれぞれ独立に圧電駆動している。すなわち、それぞれの圧電素子14,14・・・について独立した回路が形成され、圧電制御手段16で印加電圧を制御して任意の周波数、例えば0.01〜100Hzで歪を与えている。なお、圧電制御手段は、個々の圧電素子14,14・・・に与える電圧周波数を制御して、その歪周波数を制御するとともに、印加電圧の大きさを制御して、その歪の大きさを制御することもできる。このような圧電駆動系は、公知のマイクロマシンの技術による圧電アクチュエータなどに基づき構成することができる。これにより、それぞれの圧電素子14,14・・・の歪周波数に目的に応じた分布を与え、全体として歪勾配を発生させて、担体20へ全体として勾配をもった不均一な応力を与えている。与えられる応力は、1kPa〜10MPa程度である。したがって、図3に示したように、担体20上の各位置に保持されている細胞へ与えられるひずみ(振動刺激)が勾配をもつようになる。このように、それぞれの圧電素子14,14・・・を独立に制御することにより、担体20に保持された細胞へ与える振動刺激を細胞レベルで制御している。
【0027】
なお、図3には、左側から右方向へ徐々に大きな印加電圧周波数を与える状態を模式的に示しているが、本発明はこれに限定されず、一次元的に培養条件に勾配を与える他、二次元的に勾配を与えることもでき、さらには三次元的に同図の上下方向にも培養条件を与えることも可能である。通常は、一次元的に培養条件に勾配を与えることにより、結果として細胞の培養段階では、二次元、三次元的に個々の細胞に与えられる条件が勾配をもつことになる。したがって、一次元的に培養条件に勾配を与えることでも本発明の目的を達成することができるが、より精密な組織を得る細胞培養は、培養条件に多次元的な勾配を与えることで達成することができる。
【0028】
このように構成された細胞培養装置10aにより、以下のように培養を行い組織を構築する。まず、担体20上へあらかじめ培養細胞22を捲種する。担体20は、細胞が培養されてポリペプチドや多糖類などの細胞外マトリックスに保持された組織構造を形成するまで、捲種した細胞22の足場を与えるものであり、これにより細胞22の分化・増殖を促進する。担体20は、例えば厚さが10μm〜2mmの平板状であることが好ましく、例えばチューブ、押し出し、プレス、キャスト等により製造されたシート;凍結乾燥、発泡、相分離、ポローゲン溶出、シンタリング等により製造されたスポンジ;スパンボンド、メルトブロー、ニードルパンチ等で製造された不織布;紡糸等により製造されたメッシュおよび編織物;光造型、レーザー加工により製造された高次成型体が用いられる。また、目的によっては管状などの三次元構造体を用いてもよい。
【0029】
生体への移植用材料を得ようとする場合には、組織再生後は体内で消滅するような生体吸収性をもつ材料か、あるいは生体親和性材料であることが好ましい。また、細胞の入り込みを可能にする多孔性材料を用いてもよく、捲種した細胞の担体20表面への接着を良好なものとするための表面処理をしてもよい。例えば細胞接着分子を担体20表面へ吸着または固定したり、接着を制御すると考えられる細胞表面のレセプターに特異的に結合して、その細胞の担体20表面への接着を促進するタンパク質を担体表面へ保持してもよい。
【0030】
生体吸収性材料または生体親和性材料としては、例えば合成高分子、天然高分子、無機材料が挙げられる。
【0031】
合成高分子としては、例えばポリエチレングリコール、ポリグリコール酸、ポリ−DL−乳酸、ポリ−L−乳酸、ポリ−ε−カプロラクトン、およびこれらの共重合体が挙げられる。
【0032】
天然高分子としては、例えばフィブリン、コラーゲン、ゼラチン、アルギン酸、ヒアルロン酸、キチン、キトサン、羊膜が挙げられる。
【0033】
無機材料としては、第2リン酸カルシウム、第8リン酸カルシウム、非晶質リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウムが挙げられる。これらは主に骨形成用材料として好適に用いられる。
【0034】
これらの担体材料は単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。例えば、これらの合成高分子、天然高分子および無機材料から選択される2種以上を混合した複合体を用いてもよい。
【0035】
この他の担体材料としては、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリビニル化合物、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ニトロセルロース、綿等の非生体分解性の材料が挙げられ、培養物を長期間維持する場合あるいは低温保存する場合に好適に用いられる。
【0036】
この担体20上へ、培養細胞22を捲種する。細胞の播種密度は、培養期間や担体20の種類、培地の組成などによるが、6.5×10〜3.8×10個/cmが好ましく、さらに好ましくは1.3×10〜2.5×10個/cm、特に好ましくは1.5×10〜2.3×10個/cmである。また、担体内に包埋する場合には、3.0×10〜3.8×10個/cmが好ましく、さらに好ましくは7.0×10〜2.5×10個/cm、特に好ましくは8.0×10〜2.3×10/cmである。
【0037】
細胞22は得ようとする組織に応じて適宜選択される。例えば組織幹細胞およびこれから分化した細胞(前駆細胞、芽細胞など)を用いることができる。
【0038】
組織幹細胞としては、間葉系幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、神経幹細胞、上皮幹細胞などを用いることができる。
【0039】
間葉系幹細胞から分化した細胞としては、例えば線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、内皮細胞、靭帯芽細胞、腱芽細胞、心筋細胞、脂肪細胞、神経細胞、肝細胞を用いることができる。
【0040】
この他、皮膚、肝臓、膵臓などの器官に由来する繊維芽細胞など、分化・増殖能をもつあらゆる細胞を目的に応じて用いることができ、これらは必要に応じて組み合わせて用いられる。また、目的に応じて同種自己細胞、同種他家細胞および異種細胞のいずれであってもよく、間質細胞で分化・増殖を支持したり、実質細胞を併用してもよい。
【0041】
上記の各細胞は、細胞種に応じた公知の手法により、生体から採取、分離することができる。分離した細胞をそのまま使用することもできるが、適当な培地で所定期間培養してから用いてもよい。
【0042】
生体からの細胞の分離は、物理的処理、化学的処理、生物的処理を単独であるいはこれらを組み合わせて行うことができる。物理的処理としては、例えばメッシュフィルター、グラインダー、ブレンダー、ホモジナイザー、遠心分離装置等による処理が挙げられる。化学的処理としては、例えばトリプシン、キモトリプシン、コラゲナーゼ、エラスターゼ、ヒアルロニダーゼ、プロナーゼ等による酵素処理、キレート剤による処理が挙げられ、これにより隣接する細胞の結合を弱めて解離させ、細胞を分散させた懸濁液を得ることができる。生物的処理としては、例えば目的とする細胞表面の特異抗原やレセプターを利用した単離処理、クローニング等が挙げられる。
【0043】
次いで、培養細胞22を捲種した担体20を、培養皿14底部の膜体18の表面へ直接に載置し、培養皿14に供給した培地24内で培養を行う。培地24をバッチ式で交換するか、あるいはフレッシュな培地を連続で供給しながら培養を行う。用いる培地24は、細胞の種類に応じて適宜選択され、例えばMEM培地、BME培地、DMEM培地、αMEM培地、IMEM培地、DM−160培地、Fisher培地、F12培地、WE培地およびRPMI培地等、並びにこれらの培地に血清成分(例えば、ウシ胎児血清)等を添加したものが用いられる。
【0044】
培養条件は細胞の種類等に応じて適宜設定することができ、通常はpH7.1〜7.4、温度36.5〜37.2℃、CO濃度4.8〜5.2%の条件下で、24時間〜30日間培養を行う。
【0045】
培地24には、培養する細胞の成長、分化を制御する成長因子を目的に応じて添加する。このような成長因子としては、例えばトンラスフォーミング成長因子(TGF)、骨成長因子(BMP)、肝細胞成長因子(HGF)、神経成長因子(NGF)、上皮成長因子(EGF)、内皮成長因子(ECGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インシュリン、インシュリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、コロニー刺激因子、エリスロポイエチン、トランスフェリン、インターロイキン、およびインターフェロン等が挙げられる。
【0046】
培地中には、添加剤として、必要に応じて、血清成分、酸化防止剤、抗菌剤、pH調整剤等を含有させることができる。
【0047】
膜体18上に載置された担体20は、培養皿14の外側から膜体18へ貼付された圧電素子14,14・・・の歪に応じて、膜体18を介して応力を受ける。各圧電素子14,14・・・は、圧電制御手段16で独立に設定した周波数で電圧が印加されて周波数をもつ歪を発生する。各圧電素子14,14・・・の歪周波数を、周波数勾配をもつように設定して、これにより歪勾配を発生させることにより、歪勾配をもつ圧電素子面へ膜体18を介して接している担体20の下面は、全体として勾配をもった不均一な応力を受け、担体20上の細胞22,22・・・には、図3に示したように、担体20上の各サイトにより異なる、勾配をもったひずみが与えられる。これにより、与えられたひずみ刺激に基づいて各細胞22,22・・・のイオンチャンネルが開放され、細胞内のセカンドメッセンジャーによる情報伝達を介して、結果として与えられた刺激に対応した遺伝子が活性化され、分化・増殖などを引き起こす。
【0048】
このように、生体内の条件に対応した、ひずみ勾配が与えられた環境下で培養を行っているため、所定の機能を発現するように組織形成が促進されるとともに、細胞外マトリックスの形成、成長因子の分泌など、細胞自身の組織形成能により自発的に機能をもった組織が形成されていく。そして、目的とする組織に応じて最適なひずみ条件を与えるように圧電駆動を制御することで、例えば組織内での異なる分化、異なる増殖速度を誘導することができ、複雑な構造をもった主要臓器などの組織であっても、生体の臓器・器官がもつ機能が発現された組織を構築することができる。
【0049】
本発明によれば、様々な型の細胞の分化・増殖を制御することができ、臓器・器官の少なくとも一部の機能を有する様々な再生組織を提供することができる。このような組織としては、例えば、心臓弁、心筋、肝臓、膵臓、小腸、腎臓、副腎、膀胱、胃腸管脂肪組織、神経組織、粘膜上皮、内皮、平滑筋、食道、脂肪組織、骨、軟骨、靭帯、皮膚、血管などの循環器系等の少なくとも一部の機能を有する組織を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0050】
図4に本発明の細胞培養装置の他の実施形態を示す。この細胞培養装置10bでは、培地24を供給する培養皿(培養容器)12bの底面38に複数の注入孔30,30・・・が設けられ、これらの注入孔30,30・・・から成長因子を含む溶液が注入される。また、培養皿12の底部には、これらの注入孔30,30・・・を覆うように透過性膜体32が取り付けられ、培養皿12へ加えられた培地と直接に接触させている。この透過性膜体32は、注入孔30,30・・・からの成長因子を含む溶液を透過する材質からなり、コラーゲンシート等のポリマーシート、半透膜、限外濾過膜に例示される薄膜が用いられる。
【0051】
本実施形態では、図5に示したように培養皿12bの底面に複数の注入孔30,30・・・を等間隔で設け、流路34,34・・・を介して各シリンジポンプ36,36・・・の駆動により成長因子を含む溶液を送液して培養皿12内へ注入している。この注入孔30と、シリンジポンプ36で培養制御手段を構成している。ポンプとしては、シリンジポンプに限らず他の送液ポンプを用いてもよい。注入孔30,30・・・のサイズおよびその間隔は特に限定されないが、例えば直径10μm〜1mmの注入孔が50μm〜1mmの間隔で設けられる。
【0052】
各シリンジポンプ36,36・・・には、成長因子を任意の組成(種類およびその組み合わせ)または任意の濃度で含む各溶液をそれぞれ充填する。これらの各溶液は、各注入孔34,34・・・から注入される成長因子が組成勾配または濃度勾配をもつように、異なる組成または濃度の成長因子を含むように調製される。すなわち、以下のいずれかの態様:
▲1▼ 組成が異なる成長因子を各注入孔34,34・・・から注入して組成勾配をもたせるか、または
▲2▼ 同一の成長因子を異なる濃度で各注入孔34,34・・・から注入して濃度勾配をもたせる
ことにより、全体として培養皿12内で成長因子が組成または濃度の勾配をもった環境下で培養を行う。
【0053】
このように、それぞれの注入孔34,34・・・から、成長因子の組成または濃度をそれぞれ独立に設定して調製した各溶液を注入して、担体20上の細胞へ与える成長因子の組成条件または濃度条件を細胞レベルで制御している。
【0054】
これにより図6に示したように担体20上の各位置に存在する各細胞22,22・・・はそれぞれ組成勾配または濃度勾配を有する条件下で成長因子40が与えられる。これにより、成長因子40を受容した各細胞22,22・・・のイオンチャンネルが開放され、細胞内のセカンドメッセンジャーによる情報伝達を介して、結果として与えられた成長因子40に対応した遺伝子が活性化され、分化・増殖などを引き起こす。
【0055】
このように、生体内の条件に対応した、成長因子の組成、濃度勾配が与えられた環境下で培養を行っているため、所定の機能を発現するように組織形成が促進されるとともに、細胞外マトリックスの形成、成長因子の分泌など、細胞自身の組織形成能により自発的に機能をもった組織が形成されていく。そして、目的とする組織に応じて最適な組成勾配、濃度勾配条件を与えるように各シリンジポンプ36,36・・・で注入する各溶液を調製することで、例えば組織内での異なる分化、異なる増殖速度を誘導することができ、複雑な構造をもった主要臓器などの組織であっても、生体の臓器・器官がもつ機能が発現された組織を構築することができる。
【0056】
図7に本発明の細胞培養装置の他の実施形態を示す。この細胞培養装置10cでは、培地24を供給する培養皿(培養容器)12cの底面38に複数の注入孔30,30・・・が異なった間隔で設けられ、これらの注入孔30,30・・・から成長因子を含む溶液が注入される。また、図4の実施形態のように培養皿12の底部には、これらの注入孔30,30・・・を覆うように透過性膜体32が取り付けられ、培養皿12へ加えられた培地と直接に接触させている。
【0057】
本実施形態では、図8に示したように培養皿12cの底面に複数の注入孔30,30・・・を異なった間隔で設け、これらの注入孔30と、シリンジポンプ36で培養制御手段を構成している。そして流路34,34・・・を介してシリンジポンプ36,36・・・の駆動により同一組成、同一濃度の成長因子を含む溶液を送液して培養皿12内へ注入している。このように注入孔30,30・・・を異なった間隔で設けているため、培地24内において注入孔34,34・・・からの流れに基づき流速勾配を生じさせている。このように、注入孔30,30・・・の間隔、あるいは注入孔34,34・・・から注入される液体の流速等を適宜調節することで、担体20上の各細胞22,22・・・へ与える流れ刺激を細胞レベルで制御することができる。すなわち、図9に示したように担体20上の各位置に存在する各細胞22,22・・・はそれぞれ勾配をもった流れを受ける条件下で培養される。このため各細胞22,22・・・は勾配に応じた流れによるせん断力、圧力等の刺激を受け、この流れに基づく刺激により各細胞22,22・・・のイオンチャンネルが開放され、細胞内のセカンドメッセンジャーによる情報伝達を介して、結果として与えられた成長因子に対応した遺伝子が活性化され、分化・増殖などを引き起こす。
【0058】
このように、生体内の条件に対応した、流れ勾配が与えられた環境下で培養を行っているため、所定の機能を発現するように組織形成が促進されるとともに、細胞外マトリックスの形成、成長因子の分泌など、細胞自身の組織形成能により自発的に機能をもった組織が形成されていく。そして、目的とする組織に応じて最適な流れ勾配条件を与えるように注入孔30,30・・・の間隔を設定することで、例えば組織内での異なる分化、異なる増殖速度を誘導することができ、複雑な構造をもった主要臓器などの組織であっても、生体の臓器・器官がもつ機能が発現された組織を構築することができる。
【0059】
注入孔30,30・・・から注入する液体は、成長因子を含む溶液に限らず、培地24とすることもできる。この場合には、フレッシュな培地24が培養皿12内で流れ勾配をもつように底面から連続して供給され、各培養細胞22,22・・・は勾配をもった流れによる刺激を受ける環境下で培養される。
【0060】
【発明の効果】
以上説明した本発明の細胞培養装置および培養方法によれば、実際に生体内で組織が形成される環境と同じく、細胞の分化・増殖等を促進する各パラメータに勾配を与えた条件下で細胞培養を行うことができるので、臓器・器官の少なくとも一部の機能を有する様々な組織を再生、構築することが可能となる。
【0061】
こうして得られた再生組織は、生体内に包埋して生体内の欠損組織を再生するために用いることができ、細胞組織医薬品、細胞組織医療用具などの再生医療用材料を提供することができる。
【0062】
また、in vitroで化合物の薬理効果をスクリーニングするスクリーニング用材料を提供することができる。
【0063】
さらに、臓器・器官の機能を研究する研究用材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の細胞培養装置の実施形態を模式的に示した概略図である。
【図2】図2は、図1の細胞培養装置の外側に取り付けられた圧電素子の配置状態を示した概略図である。
【図3】図3は、担体上の培養細胞が勾配を有するひずみを受ける様子を模式的に示した概略図である。
【図4】図4は、本発明の細胞培養装置の他の実施形態を模式的に示した概略図である。
【図5】図5は、図4の細胞培養装置の容器底部に設けられた注入孔の配置状態を示した概略図である。
【図6】図6は、担体上の培養細胞の周囲の成長因子が組成または濃度勾配を有している様子を模式的に示した概略図である。
【図7】図7は、本発明の細胞培養装置の他の実施形態を模式的に示した概略図である。
【図8】図8は、図7の細胞培養装置の容器底部に設けられた注入孔の配置状態を示した概略図である。
【図9】図9は、担体上の培養細胞が勾配を有する流れを受ける様子を模式的に示した概略図である。
【符号の説明】
10 細胞培養装置
12 培養皿
14 圧電素子
16 圧電制御手段
18 膜体
20 担体
22 細胞
23 細胞外基質
24 培地
30 注入孔
32 透過性膜体
34 流路
36 シリンジポンプ
38 培養容器底面
40 成長因子

Claims (8)

  1. 培地中で担体に保持された細胞に与える培養条件を、細胞レベルで制御可能な培養制御手段を備えることを特徴とする細胞培養装置。
  2. 前記培養制御手段は、
    培養容器の外側に取り付けた複数の圧電素子と、
    複数の該圧電素子の圧電駆動をそれぞれ独立に制御する圧電制御手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の細胞培養装置。
  3. 前記培養制御手段は、
    培養容器に設けられた、成長因子を含む溶液を注入する複数の注入孔と、
    前記溶液を注入孔から培養容器内へ送り込むポンプとを備えることを特徴とする請求項1に記載の細胞培養装置。
  4. 請求項1に記載の細胞培養装置を用い、培養条件が勾配を有する条件下で培養を行うことを特徴とする細胞培養方法。
  5. 請求項2に記載の細胞培養装置を用い、
    圧電制御手段により、それぞれ独立に設定した周波数で各圧電素子を圧電駆動して、担体上の細胞に与える振動刺激を細胞レベルで制御することを特徴とする細胞培養方法。
  6. 請求項3に記載の細胞培養装置を用い、
    細胞を保持した担体が載置され、培地が充填された培養容器内に、それぞれの注入孔から、成長因子の組成または濃度をそれぞれ独立に設定して調製した各溶液を注入して、担体上の細胞に与える成長因子の組成条件または濃度条件を細胞レベルで制御することを特徴とする細胞培養方法。
  7. 請求項3に記載の細胞培養装置を用い、
    細胞を保持した担体が載置され、培地が充填された培養容器内に、それぞれの注入孔から前記溶液を注入して、担体上の細胞へ与える流れ刺激を細胞レベルで制御することを特徴とする細胞培養方法。
  8. 成長因子を含む溶液の代わりに、それぞれの注入孔から培地を注入して、担体上の細胞へ与える流れ刺激を細胞レベルで制御することを特徴とする請求項7に記載の細胞培養方法。
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