JP2004327317A - 燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】発電電力を急変させる場合の補機駆動を最適に制御し、ネット発電電力の立ち上がり特性を良好なものとする。
【解決手段】燃料電池のグロス発電電力から補機消費電力を差し引いたネット発電電力の立ち上がりにおける目標応答に応じて、燃料電池に供給する空気流量及び空気圧力を制御する。これにより、ドライバによるアクセル踏み込み後のもたつき感が解消される。あるいは、ドライバのアクセル踏み込み時の駆動力応答性と燃料電池システムの騒音との違和感が抑制される。
【選択図】 図3
【解決手段】燃料電池のグロス発電電力から補機消費電力を差し引いたネット発電電力の立ち上がりにおける目標応答に応じて、燃料電池に供給する空気流量及び空気圧力を制御する。これにより、ドライバによるアクセル踏み込み後のもたつき感が解消される。あるいは、ドライバのアクセル踏み込み時の駆動力応答性と燃料電池システムの騒音との違和感が抑制される。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池車両において電力供給源として用いられる燃料電池システムに関するものであり、特に、発電電力を急変させる場合の運転方法の改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、水素ガス等の燃料ガスと酸素を有する酸化ガスとを電解質を介して電気化学的に反応させ、電極間から電気エネルギを直接取り出すものである。このような燃料電池を用いた発電は、発電効率が高いことに加え、有害な物質の排出が極めて少ないという利点を持つため、発電プラントや家庭用発電機等の定置型発電に適用されるばかりでなく、車両の駆動源として利用する等、燃料電池車両の電力供給源としても近年注目されている。
【0003】
燃料電池車両では、ドライバの要求に応じて発生させる駆動力の大きさに対応して、燃料電池の発電電力を可変とする必要がある。このとき、総合効率を向上させるために、その発電電力の変化にしたがって、燃料電池に供給する反応ガス(燃料である水素、及び水素と反応させて電子を取り出すための酸化ガスである酸素を含む空気)の量を制御することが一般的に行われている。
【0004】
ここで、現在の主流である高圧水素ボンベを搭載した燃料電池車両では、高圧(例えば、数MPa〜数十MPa)水素を調圧弁により減圧して燃料電池に供給する方式を採用しているため、水素供給系を構成する調圧弁等のシステム補機の消費電力は比較的小さくて済む。一方、空気供給系は、外気を大気圧から燃料電池に必要な圧力(例えば、百数十Paから数百kPa)まで圧縮し、例えば数千NL/minもの流量で供給しなければならず、数kW〜十数kW程度の定格出力を有するコンプレッサあるいはブロアが必須となっている。
【0005】
したがって、燃料電池の発電電力がすべて車両を駆動するための駆動モータで消費されるわけではなく、燃料電池自身から取り出される総発電電力(以下、グロス発電電力と称する。)からコンプレッサやブロア等が消費する補機消費電力を差し引いた正味の実効発電電力(以下、ネット発電電力と称する。)が、実際に駆動力を発生させるために消費されることになる。したがって、燃料電池車両の燃料電池システムの制御においては、このネット発電電力をいかに有効に発生させるかが重要である。
【0006】
そこで、このような課題に着目した従来技術として、燃料電池とキャパシタが並列に接続され、目標供給電流に基づいて燃料電池への反応ガスの供給量が制御される燃料電池電源装置において、コンプレッサの過剰な作動や燃料電池のガス欠を抑制するように目標供給電流を補正するという技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0007】
この特許文献1には、駆動力の変化に応じて行われる燃料電池の発電電力可変制御において、例えば発電電力要求が急増した場合、燃料電池に必要な空気供給量に応じてコンプレッサの回転数を急増させても、空気供給系の遅れ(コンプレッサから燃料電池に至る空気供給系のダイナミクスや圧力制御の応答遅れ)により実際の発電電力の応答に遅れが生じることが記載されている。そして、実際の発電電力の応答が遅れている状態でコンプレッサ回転数を急変させることは、コンプレッサに無駄な電力を消費させていると指摘し、燃料電池の発電電力の応答遅れに応じてコンプレッサの回転数の上昇も遅らせることによって無駄なエネルギーが消費されることを抑制するようにしている。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−305011号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載されるように、コンプレッサの応答を闇雲に遅らせてしまうと、燃料電池への反応ガスの供給量の応答遅れを助長してしまうことになり、燃料電池から取り出せる電力のさらなる応答遅れを招くことになる。また、このような応答遅れがあるにも拘わらず燃料電池から電力を必要量取り出そうとすると、過渡的に反応ガスが供給不足となるので、燃料電池の劣化を引き起こしてしまう虞れがある。
【0010】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、特に発電電力を急変させる場合の補機駆動を最適に制御することを目的とし、これにより、ネット発電電力の立ち上がり特性を良好なものとすることが可能で、無駄な補機消費電力を抑制し得る燃料電池システムを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、燃料電池発電電力立ち上がり時において、アクセル踏み込み時の駆動力のもたつき感を防ぐことが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。さらに、アクセル踏み込み時の駆動力の応答性と騒音との違和感を抑制することが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の燃料電池システムは、水素と空気の供給により発電する燃料電池を備え、車両の駆動モータへ電力を供給するものである。このような燃料電池システムにおいて、本発明では、前記目的を達成するために、燃料電池の総発電電力(グロス発電電力)から補記消費電力を差し引いた実効発電電力(ネット発電電力)の立ち上がりにおける目標応答に応じて、前記燃料電池に供給する空気流量及び空気圧力を制御することを特徴とする。
【0013】
以上の構成を有する本発明の燃料電池システムでは、特に発電電力を急変させる場合の補機駆動が最適に制御され、ネット発電電力の立ち上がり特性が良好なものとなり、無駄な補機消費電力も抑制される。
【0014】
ここで、特に、ドライバによるアクセル踏み込み後のもたつき感の解消に重きを置く場合には、燃料電池のネット発電電力の立ち上がりに際して、当該ネット発電電力が所定値に達するまでの時間が最短となるように、前記燃料電池に供給する空気流量及び空気圧力を制御する。具体的には、例えばアクセル踏み込み直後の加速応答遅れが最短となるように、あるいは加速走行のための(加速の伸びが得られる)ネット発電電力が目標発電電力のX%(例えば70%)である場合において、ネット発電電力が目標発電電力のX%に到達するまでの時間が最短となるように、前記燃料電池に供給する空気流量及び空気圧力を制御する。
【0015】
一方、加速感と騒音のバランスに重きを置く場合には、加速走行のための(加速の伸びが得られる)ネット発電電力が目標発電電力のX%である場合において、燃料電池のネット発電電力の立ち上がりに際して、ネット発電電力が目標発電電力のX%に到達した時点での前記燃料電池に圧縮空気を供給するためのコンプレッサの回転数が最小となるように、前記燃料電池に供給する空気流量及び空気圧力を制御する。
【0016】
【発明の効果】
本発明の燃料電池システムによれば、発電電力を急変させる場合の補機駆動を最適に制御することで、ネット発電電力の立ち上がり特性を良好なものとすることができ、無駄な補機消費電力を抑制することができる。例えば、ネット発電電力が所定値に達するまでの時間が最短となるように、燃料電池に供給する空気流量及び空気圧力を制御すれば、アクセル踏み込み時の駆動力のもたつき感を防ぐことができる。また、車両の加速の伸びが感じられるだけの実効発電電力が得られる段階でのコンプレッサの回転数の立ち上がり分が最小となるように、燃料電池に供給する空気流量及び空気圧力を制御すれば、ドライバのアクセル踏み込み時の駆動力応答性と燃料電池システムの騒音との違和感を抑制することが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した燃料電池システムについて、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の燃料電池システムの構成を示すものである。図1に示すように、本実施形態の燃料電池システムは、発電を行う燃料電池1と、この燃料電池1に酸化剤ガスである空気を供給する空気供給系、燃料ガスである水素を供給する水素供給系とを備える。
【0019】
燃料電池1は、燃料ガスである水素が供給される水素極(アノード極)1aと酸化剤ガスである空気が供給される空気極(カソード極)1bとが電解質を挟んで重ね合わされて発電セルが構成されるとともに、複数の発電セルが多段積層されたスタック構造を有しており、水素と空気中の酸素とを基にした電気化学反応により化学エネルギを電気エネルギに変換するものである。この燃料電池1の各発電セルでは、水素極1aに供給された水素が水素イオンと電子とに分離される反応が起き、水素イオンは電解質を通り、電子は外部回路を通って電力を発生させ、空気極1bにそれぞれ移動する。空気極1bでは、供給された空気中の酸素と電解質を通って移動した水素イオン及び電子が反応して水が生成され、外部に排出される。
【0020】
燃料電池1の電解質としては、高エネルギ密度化、低コスト化、軽量化等を考慮して、固体高分子電解質膜が用いられる。固体高分子電解質膜は、例えばフッ素樹脂系イオン交換膜等、イオン(プロトン)伝導性の高分子膜からなるものであり、飽和含水することによりイオン伝導性電解質として機能する。
【0021】
空気供給系は、例えば、外気を吸入し燃料電池1の空気極1bに加湿した空気を圧送するためのコンプレッサ2、モータ回転センサ2bを備え前記コンプレッサ2を駆動するモータ2a、空気供給配管3及び空気加湿器4と、空気極排ガスを排出するための空気排気配管5及び供給される空気の圧力を所望の圧力に制御する調圧装置である空気調圧弁6とから構成される。この空気供給系において、空気は、コンプレッサ2により加圧されて空気供給配管3に送り込まれ、空気加湿器4で加湿された後、燃料電池1の空気極1bに供給される。燃料電池1で消費されなかった酸素及び空気中の他の成分は、空気排気配管5から空気調圧弁6を介して大気中に排出される。
【0022】
水素供給系は、例えば、水素供給源である水素ボンベ7、調圧装置である水素調圧弁8、水素供給配管9、水素加湿器10、水素循環装置であるエゼクタ11、及び水素循環配管12から構成される。そして、水素供給源である水素ボンベ7から供給される水素ガスは、水素調圧弁8で減圧され、前記水素供給配管9及びエゼクタ11を通って水素加湿器10で加湿されて燃料電池1の水素極1aに送り込まれる。燃料電池1では供給された水素ガスが全て消費されるわけではなく、残った水素ガス(燃料電池1の水素極1aから排出される水素ガス)は、水素循環配管12を通ってエゼクタ11により循環され、新たに水素ボンベ7から供給される水素ガスと混合されて、再び燃料電池1の水素極1aに供給される。
【0023】
また、燃料電池1の水素極1aの出口側には、水素パージ弁14が設けられている。この水素パージ弁14は、水素を循環させることに起因して水素循環配管12内蓄積された不純物や窒素等を水素と共に排出する、水素パージ時に開放されるものである。
【0024】
また、本実施形態の燃料電池システムにおいては、前記空気供給系に空気圧力センサ15が設けられるとともに、前記水素供給系に水素圧力センサ16が設けられ、さらに各種制御を行う燃料電池システム制御装置17が設けられており、この燃料電池システム制御装置17が前記空気供給系や水素供給系の動作を制御している。
【0025】
すなわち、空気供給系において、燃料電池1の空気極1bへ供給される空気の流量と圧力は、コンプレッサ2の回転数及び空気調圧弁6の開度により制御される。コンプレッサ2はモータ2aにより駆動され、燃料電池システム制御装置17は、モータ回転センサ2bからの検出値を参照しながら、モータ2aが目標の回転数となるようにモータ2aを制御する。また、燃料電池システム制御装置17は、空気圧力センサ15からの検出値を参照しながら、燃料電池1の空気極1bへ供給される空気の圧力が目標の圧力となるように空気調圧弁6を制御する。
【0026】
水素供給系では、燃料電池1の水素極1aへ供給される水素の圧力は、水素調圧弁8の開度で制御される。燃料電池システム制御装置17は、水素圧力センサ16からの検出値を参照しながら、燃料電池1の水素極1aへ供給される水素の圧力が目標の圧力となるように水素調圧弁8を制御する。
【0027】
また、本実施形態の燃料電池システムでは、さらに、セル電圧センサ18が設置されている。セル電圧センサ18は、燃料電池1内に直列に接続された発電セルの各電極間の電圧を測定するものであり、その測定値は燃料電池システム制御装置17に読み込まれる。燃料電池システム制御装置17は、このセル電圧センサ18の測定値からセル電圧低下を検知して、それに応じた各種制御を行う。
【0028】
また、本実施形態の燃料電池システムにおいては、蓄電手段である2次バッテリ19が、DC/DCコンバータ20を介して燃料電池1に接続され、図示しない電気負荷が2次バッテリ19とDC/DCコンバータ20の間、あるいは、燃料電池1とDC/DCコンバータ20間に接続される構成となっている。
【0029】
2次バッテリ19には電圧センサ21が設置されており、燃料電池システム制御装置17は、2次バッテリ19の電圧をこの電圧センサ21から読み込むことができるようになっている。また、燃料電池システム制御装置17は、DC/DCコンバータ20を制御することにより、燃料電池1及び2次バッテリ19から電気負荷に供給する電力の配分を変更することができるようになっている。なお、電気負荷とは、燃料電池車両の駆動モータ等であり、燃料電池システム制御装置17によって制御されるものである。
【0030】
ここで、以上のように構成される本実施形態の燃料電池システムにおける制御、特に燃料電池システム制御装置17による一連の制御について、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0031】
燃料電池システムの制御においては、先ず、ステップS1において、図示しないアクセル開度センサやシフトポジションセンサ、車速センサからの情報に基づいてドライバの要求する駆動力を演算し、2次バッテリ19の状態をも考慮して、燃料電池システムへの目標発電電力を演算する(目標発電電力演算)。
【0032】
次に、ステップS2では、目標発電電力に応じて燃料電池1に供給する水素及び空気の目標流量・圧力を演算する(反応ガス目標流量・圧力演算)。ここで、目標発電電力は、主に駆動モータに供給されるいわゆるネット発電電力であり、このネット発電電力に、コンプレッサ2に代表される燃料電池システム補機に必要な電力を加えることにより、燃料電池1自体から取り出されるいわゆるグロス発電電力を演算し、さらにそのグロス発電電力を取り出すために必要な水素及び空気の目標流量・圧力を演算する。
【0033】
次いで、ステップS3において、目標流量・圧力の応答性を演算する(反応ガス目標応答性演算)。ここで演算する応答性の設定方法についての詳細は、次の通りである。
【0034】
図3、図4は、時刻T1においてドライバがステップ的にアクセルを全閉から全開に踏み込んだときの目標発電電力、目標流量、目標圧力、目標コンプレッサ回転数、実際のグロス発電電力、コンプレッサ消費電力、ネット発電電力のタイミングチャートであり、図3は比較的速い目標応答性を設定した場合、図4は比較的遅い目標応答性を設定した場合を示している。
【0035】
図3の速い応答の場合、ネット発電電力がゼロをクロスするまでの時間は(T2−T1)であり、目標発電電力の例えば70%をクロスするまでの時間は(T3−T1)となっている。一方、図4の遅い応答の場合、ゼロをクロスするまでの時間は(T4−T1)であり、目標発電電力の例えば70%をクロスするまでの時間は(T5−T1)である。ゼロをクロスするまでに時間は(T2−T1)>(T4−T1)であるので、遅い応答の方が有利であるが、目標発電電力の例えば70%をクロスするまでの時間は(T3−T1)<(T5−T1)であるので、速い応答の方が有利である。
【0036】
この場合、ドライバによるアクセル踏み込み直後の加速応答遅れ時間(例えばゼロをクロスするまでの時間)の短さに重きを置く設定とするならば、図4の設定を選択する。逆に、加速の伸びが得られるまでの時間(目標発電電力の例えば70%をクロスするまでの時間)の短さに重きをおく設定とするならば、図3の設定を選択する。
【0037】
このように、所定のネット発電電力までの所要時間をパラメータとして、ステップS3での目標応答の設定を行えば、明確な目標応答の設計が可能となる。
【0038】
また、2次バッテリ19の充電状態が低下している場合、ステップS3の目標応答の設定を切り換えても良い。2次バッテリ19の充電状態が低下していると、2次バッテリ19の放電可能電力が低下する。図3あるいは図4において、時刻T1直後はネット発電電力が負の値となっているが、この部分は2次バッテリ19の放電電力によってまかなわれている(すなわち、コンプレッサ2の回転上昇に必要な電力を2次バッテリ19が供給している。)。さらに、この時点では、2次バッテリ19の放電電力は、ドライバの駆動力要求に応えるべく、駆動モータへも電力供給を行っている。したがって、2次バッテリ19の放電可能電力が低下している場合、当然、ステップS3における目標応答の設定を補正する必要がある。
【0039】
このような補正を加えることにより、2次バッテリの充電状態が低下した場合でも、その影響を最小限に抑制することが可能となる。
【0040】
ステップ3での反応ガス目標応答性演算の後、ステップS4では、ステップS3で演算された反応ガスの流量及び圧力の目標応答にしたがい、流量及び圧力の制御を行う(流量・圧力制御)。すなわち、空気系ではコンプレッサ2の回転数と空気調圧弁6の開度をモータ回転センサ2b、空気圧力センサ15を用いてフィードバック制御を行う。また、水素系では水素調圧弁8の開度を水素圧力センサ16を用いてフィードバック制御を行う。
【0041】
ステップS5では、DC/DCコンバータ20を制御することにより、燃料電池1から取り出す電力を制御する。ここでは、実際に燃料電池1へ供給されている反応ガスの流量・圧力を、水素圧力センサ16、空気圧力センサ15、モータ回転センサ2b(空気流量センサを設置しても可)から得て、ガス供給不足による燃料電池1の劣化が発生しないように行う。その結果、過渡的に駆動力に必要な電力とDC/DCコンバータ20によって燃料電池1から取り出す電力との間に差異が生じた場合、2次バッテリ19の充放電によって自動的に補われることになる。
【0042】
以上のように、本実施形態の燃料電池システムによれば、燃料電池システム制御装置17の制御によって、補機消費電力を考慮したネット発電電力の立ち上がり特性を良好にすることが可能となるため、ドライバのアクセル踏み込み時に無駄な補機消費電力を抑制することができる。
【0043】
また、ネット発電電力の立ち上がり時において、ネット発電電力が所定値に達するまでの時間が最短となるように制御することで、ドライバのアクセル踏み込み時の駆動力のもたつき感を防ぐことが可能となる。
【0044】
さらに、2次バッテリ19等の蓄電手段の充電状態から計算される放電可能電力により、ネット発電電力の立ち上がり特性を補正することにより、充電状態によって発生するおそれのあるドライバのアクセル踏み込み時の駆動力のもたつき感を最小限に抑制することが可能となる。
【0045】
(第2の実施形態)
本実施形態は、第1の実施形態のステップS3における目標応答の設定に新たなパラメータを導入したものである。燃料電池システムの構成については図1、制御のフローチャートについては図2と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0046】
第1の実施形態では、例えば車両の加速走行のためのネット発電電力が目標発電電力の例えば70%である場合に、ネット発電電力が目標発電電力の70%に達するまでに要する時間をパラメータとして使用する場合について述べた。この場合、目標発電電力の70%に達するまでに要する時間は図3の設定の方が短いため、「加速の伸びが得られるまでの時間」に重きをおくならば、図3の設定を選択する。
【0047】
しかしながら、目標発電電力の例えば70%が得られる時点、すなわち図3の設定では時刻T3、図4の設定では時刻T5でのコンプレッサ回転数は、それぞれN1、N2となる。ここで、N1>N2であるので、同じネット発電電力が得られる、すなわち同じ駆動力が得られる際に、図3の設定の方がコンプレッサ回転数が高く、騒音が大きくなることになる。この状態では、図3の設定を選択すると、ドライバに「音の割に加速しない」という悪い印象を与えることも懸念される。したがって、加速感と騒音のバランスに重きを置く設定をするならば、図4の設定を選択する。
【0048】
このように、所定のネット発電電力でのコンプレッサ回転数をパラメータとして、ステップS3での目標応答の設定を行えば、音振性能を考慮した目標応答の設計が可能となる。
【0049】
また、2次バッテリ19の充電状態が低下している場合、ステップS3の目標応答の設定を切り換えても良い。2次バッテリ19の充電状態が低下していると、2次バッテリの放電可能電力が低下する。図3あるいは図4において、時刻T1直後はネット発電電力が負の値となっているが、この部分は2次バッテリ19の放電電力によってまかなわれている(すなわち、コンプレッサ2の回転上昇に必要な電力を2次バッテリ19が供給している。)。さらに、この時点では、2次バッテリ19の放電電力は、ドライバの駆動力要求に応えるべく、駆動モータへも電力供給を行っている。したがって、2次バッテリ19の放電可能電力が低下している場合、当然、ステップS3における目標応答の設定を補正する必要がある。
【0050】
このような補正を加えることにより、2次バッテリの充電状態が低下した場合でも、その影響を最小限に抑制することが可能となる。
【0051】
以上のように、本実施形態の燃料電池システムによれば、燃料電池システム制御装置17による制御によって、加速の伸びが感じられるだけのネット発電電力が得られる段階でコンプレッサ回転数の上昇を抑制することができ、ドライバのアクセル踏み込み時の駆動力応答性と燃料電池システムの騒音との違和感を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した燃料電池システムの構成例を示す図である。
【図2】前記燃料電池システムの制御フローを示すフローチャートである。
【図3】ドライバがステップ的にアクセルを全閉から全開に踏み込んだときの目標発電電力、目標流量、目標圧力、目標コンプレッサ回転数、実際のグロス発電電力、コンプレッサ消費電力、ネット発電電力の変化を示すタイミングチャートであり、比較的速い目標応答性を設定した場合のタイミングチャートである。
【図4】ドライバがステップ的にアクセルを全閉から全開に踏み込んだときの目標発電電力、目標流量、目標圧力、目標コンプレッサ回転数、実際のグロス発電電力、コンプレッサ消費電力、ネット発電電力の変化を示すタイミングチャートであり、比較的遅い目標応答性を設定した場合のタイミングチャートである。
【符号の説明】
1 燃料電池
2 コンプレッサ
2a モータ
2b モータ回転センサ
7 水素ボンベ
15 空気圧力センサ
16 水素圧力センサ
17 燃料電池システム制御装置
19 2次バッテリ
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池車両において電力供給源として用いられる燃料電池システムに関するものであり、特に、発電電力を急変させる場合の運転方法の改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、水素ガス等の燃料ガスと酸素を有する酸化ガスとを電解質を介して電気化学的に反応させ、電極間から電気エネルギを直接取り出すものである。このような燃料電池を用いた発電は、発電効率が高いことに加え、有害な物質の排出が極めて少ないという利点を持つため、発電プラントや家庭用発電機等の定置型発電に適用されるばかりでなく、車両の駆動源として利用する等、燃料電池車両の電力供給源としても近年注目されている。
【0003】
燃料電池車両では、ドライバの要求に応じて発生させる駆動力の大きさに対応して、燃料電池の発電電力を可変とする必要がある。このとき、総合効率を向上させるために、その発電電力の変化にしたがって、燃料電池に供給する反応ガス(燃料である水素、及び水素と反応させて電子を取り出すための酸化ガスである酸素を含む空気)の量を制御することが一般的に行われている。
【0004】
ここで、現在の主流である高圧水素ボンベを搭載した燃料電池車両では、高圧(例えば、数MPa〜数十MPa)水素を調圧弁により減圧して燃料電池に供給する方式を採用しているため、水素供給系を構成する調圧弁等のシステム補機の消費電力は比較的小さくて済む。一方、空気供給系は、外気を大気圧から燃料電池に必要な圧力(例えば、百数十Paから数百kPa)まで圧縮し、例えば数千NL/minもの流量で供給しなければならず、数kW〜十数kW程度の定格出力を有するコンプレッサあるいはブロアが必須となっている。
【0005】
したがって、燃料電池の発電電力がすべて車両を駆動するための駆動モータで消費されるわけではなく、燃料電池自身から取り出される総発電電力(以下、グロス発電電力と称する。)からコンプレッサやブロア等が消費する補機消費電力を差し引いた正味の実効発電電力(以下、ネット発電電力と称する。)が、実際に駆動力を発生させるために消費されることになる。したがって、燃料電池車両の燃料電池システムの制御においては、このネット発電電力をいかに有効に発生させるかが重要である。
【0006】
そこで、このような課題に着目した従来技術として、燃料電池とキャパシタが並列に接続され、目標供給電流に基づいて燃料電池への反応ガスの供給量が制御される燃料電池電源装置において、コンプレッサの過剰な作動や燃料電池のガス欠を抑制するように目標供給電流を補正するという技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0007】
この特許文献1には、駆動力の変化に応じて行われる燃料電池の発電電力可変制御において、例えば発電電力要求が急増した場合、燃料電池に必要な空気供給量に応じてコンプレッサの回転数を急増させても、空気供給系の遅れ(コンプレッサから燃料電池に至る空気供給系のダイナミクスや圧力制御の応答遅れ)により実際の発電電力の応答に遅れが生じることが記載されている。そして、実際の発電電力の応答が遅れている状態でコンプレッサ回転数を急変させることは、コンプレッサに無駄な電力を消費させていると指摘し、燃料電池の発電電力の応答遅れに応じてコンプレッサの回転数の上昇も遅らせることによって無駄なエネルギーが消費されることを抑制するようにしている。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−305011号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載されるように、コンプレッサの応答を闇雲に遅らせてしまうと、燃料電池への反応ガスの供給量の応答遅れを助長してしまうことになり、燃料電池から取り出せる電力のさらなる応答遅れを招くことになる。また、このような応答遅れがあるにも拘わらず燃料電池から電力を必要量取り出そうとすると、過渡的に反応ガスが供給不足となるので、燃料電池の劣化を引き起こしてしまう虞れがある。
【0010】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、特に発電電力を急変させる場合の補機駆動を最適に制御することを目的とし、これにより、ネット発電電力の立ち上がり特性を良好なものとすることが可能で、無駄な補機消費電力を抑制し得る燃料電池システムを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、燃料電池発電電力立ち上がり時において、アクセル踏み込み時の駆動力のもたつき感を防ぐことが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。さらに、アクセル踏み込み時の駆動力の応答性と騒音との違和感を抑制することが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の燃料電池システムは、水素と空気の供給により発電する燃料電池を備え、車両の駆動モータへ電力を供給するものである。このような燃料電池システムにおいて、本発明では、前記目的を達成するために、燃料電池の総発電電力(グロス発電電力)から補記消費電力を差し引いた実効発電電力(ネット発電電力)の立ち上がりにおける目標応答に応じて、前記燃料電池に供給する空気流量及び空気圧力を制御することを特徴とする。
【0013】
以上の構成を有する本発明の燃料電池システムでは、特に発電電力を急変させる場合の補機駆動が最適に制御され、ネット発電電力の立ち上がり特性が良好なものとなり、無駄な補機消費電力も抑制される。
【0014】
ここで、特に、ドライバによるアクセル踏み込み後のもたつき感の解消に重きを置く場合には、燃料電池のネット発電電力の立ち上がりに際して、当該ネット発電電力が所定値に達するまでの時間が最短となるように、前記燃料電池に供給する空気流量及び空気圧力を制御する。具体的には、例えばアクセル踏み込み直後の加速応答遅れが最短となるように、あるいは加速走行のための(加速の伸びが得られる)ネット発電電力が目標発電電力のX%(例えば70%)である場合において、ネット発電電力が目標発電電力のX%に到達するまでの時間が最短となるように、前記燃料電池に供給する空気流量及び空気圧力を制御する。
【0015】
一方、加速感と騒音のバランスに重きを置く場合には、加速走行のための(加速の伸びが得られる)ネット発電電力が目標発電電力のX%である場合において、燃料電池のネット発電電力の立ち上がりに際して、ネット発電電力が目標発電電力のX%に到達した時点での前記燃料電池に圧縮空気を供給するためのコンプレッサの回転数が最小となるように、前記燃料電池に供給する空気流量及び空気圧力を制御する。
【0016】
【発明の効果】
本発明の燃料電池システムによれば、発電電力を急変させる場合の補機駆動を最適に制御することで、ネット発電電力の立ち上がり特性を良好なものとすることができ、無駄な補機消費電力を抑制することができる。例えば、ネット発電電力が所定値に達するまでの時間が最短となるように、燃料電池に供給する空気流量及び空気圧力を制御すれば、アクセル踏み込み時の駆動力のもたつき感を防ぐことができる。また、車両の加速の伸びが感じられるだけの実効発電電力が得られる段階でのコンプレッサの回転数の立ち上がり分が最小となるように、燃料電池に供給する空気流量及び空気圧力を制御すれば、ドライバのアクセル踏み込み時の駆動力応答性と燃料電池システムの騒音との違和感を抑制することが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した燃料電池システムについて、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の燃料電池システムの構成を示すものである。図1に示すように、本実施形態の燃料電池システムは、発電を行う燃料電池1と、この燃料電池1に酸化剤ガスである空気を供給する空気供給系、燃料ガスである水素を供給する水素供給系とを備える。
【0019】
燃料電池1は、燃料ガスである水素が供給される水素極(アノード極)1aと酸化剤ガスである空気が供給される空気極(カソード極)1bとが電解質を挟んで重ね合わされて発電セルが構成されるとともに、複数の発電セルが多段積層されたスタック構造を有しており、水素と空気中の酸素とを基にした電気化学反応により化学エネルギを電気エネルギに変換するものである。この燃料電池1の各発電セルでは、水素極1aに供給された水素が水素イオンと電子とに分離される反応が起き、水素イオンは電解質を通り、電子は外部回路を通って電力を発生させ、空気極1bにそれぞれ移動する。空気極1bでは、供給された空気中の酸素と電解質を通って移動した水素イオン及び電子が反応して水が生成され、外部に排出される。
【0020】
燃料電池1の電解質としては、高エネルギ密度化、低コスト化、軽量化等を考慮して、固体高分子電解質膜が用いられる。固体高分子電解質膜は、例えばフッ素樹脂系イオン交換膜等、イオン(プロトン)伝導性の高分子膜からなるものであり、飽和含水することによりイオン伝導性電解質として機能する。
【0021】
空気供給系は、例えば、外気を吸入し燃料電池1の空気極1bに加湿した空気を圧送するためのコンプレッサ2、モータ回転センサ2bを備え前記コンプレッサ2を駆動するモータ2a、空気供給配管3及び空気加湿器4と、空気極排ガスを排出するための空気排気配管5及び供給される空気の圧力を所望の圧力に制御する調圧装置である空気調圧弁6とから構成される。この空気供給系において、空気は、コンプレッサ2により加圧されて空気供給配管3に送り込まれ、空気加湿器4で加湿された後、燃料電池1の空気極1bに供給される。燃料電池1で消費されなかった酸素及び空気中の他の成分は、空気排気配管5から空気調圧弁6を介して大気中に排出される。
【0022】
水素供給系は、例えば、水素供給源である水素ボンベ7、調圧装置である水素調圧弁8、水素供給配管9、水素加湿器10、水素循環装置であるエゼクタ11、及び水素循環配管12から構成される。そして、水素供給源である水素ボンベ7から供給される水素ガスは、水素調圧弁8で減圧され、前記水素供給配管9及びエゼクタ11を通って水素加湿器10で加湿されて燃料電池1の水素極1aに送り込まれる。燃料電池1では供給された水素ガスが全て消費されるわけではなく、残った水素ガス(燃料電池1の水素極1aから排出される水素ガス)は、水素循環配管12を通ってエゼクタ11により循環され、新たに水素ボンベ7から供給される水素ガスと混合されて、再び燃料電池1の水素極1aに供給される。
【0023】
また、燃料電池1の水素極1aの出口側には、水素パージ弁14が設けられている。この水素パージ弁14は、水素を循環させることに起因して水素循環配管12内蓄積された不純物や窒素等を水素と共に排出する、水素パージ時に開放されるものである。
【0024】
また、本実施形態の燃料電池システムにおいては、前記空気供給系に空気圧力センサ15が設けられるとともに、前記水素供給系に水素圧力センサ16が設けられ、さらに各種制御を行う燃料電池システム制御装置17が設けられており、この燃料電池システム制御装置17が前記空気供給系や水素供給系の動作を制御している。
【0025】
すなわち、空気供給系において、燃料電池1の空気極1bへ供給される空気の流量と圧力は、コンプレッサ2の回転数及び空気調圧弁6の開度により制御される。コンプレッサ2はモータ2aにより駆動され、燃料電池システム制御装置17は、モータ回転センサ2bからの検出値を参照しながら、モータ2aが目標の回転数となるようにモータ2aを制御する。また、燃料電池システム制御装置17は、空気圧力センサ15からの検出値を参照しながら、燃料電池1の空気極1bへ供給される空気の圧力が目標の圧力となるように空気調圧弁6を制御する。
【0026】
水素供給系では、燃料電池1の水素極1aへ供給される水素の圧力は、水素調圧弁8の開度で制御される。燃料電池システム制御装置17は、水素圧力センサ16からの検出値を参照しながら、燃料電池1の水素極1aへ供給される水素の圧力が目標の圧力となるように水素調圧弁8を制御する。
【0027】
また、本実施形態の燃料電池システムでは、さらに、セル電圧センサ18が設置されている。セル電圧センサ18は、燃料電池1内に直列に接続された発電セルの各電極間の電圧を測定するものであり、その測定値は燃料電池システム制御装置17に読み込まれる。燃料電池システム制御装置17は、このセル電圧センサ18の測定値からセル電圧低下を検知して、それに応じた各種制御を行う。
【0028】
また、本実施形態の燃料電池システムにおいては、蓄電手段である2次バッテリ19が、DC/DCコンバータ20を介して燃料電池1に接続され、図示しない電気負荷が2次バッテリ19とDC/DCコンバータ20の間、あるいは、燃料電池1とDC/DCコンバータ20間に接続される構成となっている。
【0029】
2次バッテリ19には電圧センサ21が設置されており、燃料電池システム制御装置17は、2次バッテリ19の電圧をこの電圧センサ21から読み込むことができるようになっている。また、燃料電池システム制御装置17は、DC/DCコンバータ20を制御することにより、燃料電池1及び2次バッテリ19から電気負荷に供給する電力の配分を変更することができるようになっている。なお、電気負荷とは、燃料電池車両の駆動モータ等であり、燃料電池システム制御装置17によって制御されるものである。
【0030】
ここで、以上のように構成される本実施形態の燃料電池システムにおける制御、特に燃料電池システム制御装置17による一連の制御について、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0031】
燃料電池システムの制御においては、先ず、ステップS1において、図示しないアクセル開度センサやシフトポジションセンサ、車速センサからの情報に基づいてドライバの要求する駆動力を演算し、2次バッテリ19の状態をも考慮して、燃料電池システムへの目標発電電力を演算する(目標発電電力演算)。
【0032】
次に、ステップS2では、目標発電電力に応じて燃料電池1に供給する水素及び空気の目標流量・圧力を演算する(反応ガス目標流量・圧力演算)。ここで、目標発電電力は、主に駆動モータに供給されるいわゆるネット発電電力であり、このネット発電電力に、コンプレッサ2に代表される燃料電池システム補機に必要な電力を加えることにより、燃料電池1自体から取り出されるいわゆるグロス発電電力を演算し、さらにそのグロス発電電力を取り出すために必要な水素及び空気の目標流量・圧力を演算する。
【0033】
次いで、ステップS3において、目標流量・圧力の応答性を演算する(反応ガス目標応答性演算)。ここで演算する応答性の設定方法についての詳細は、次の通りである。
【0034】
図3、図4は、時刻T1においてドライバがステップ的にアクセルを全閉から全開に踏み込んだときの目標発電電力、目標流量、目標圧力、目標コンプレッサ回転数、実際のグロス発電電力、コンプレッサ消費電力、ネット発電電力のタイミングチャートであり、図3は比較的速い目標応答性を設定した場合、図4は比較的遅い目標応答性を設定した場合を示している。
【0035】
図3の速い応答の場合、ネット発電電力がゼロをクロスするまでの時間は(T2−T1)であり、目標発電電力の例えば70%をクロスするまでの時間は(T3−T1)となっている。一方、図4の遅い応答の場合、ゼロをクロスするまでの時間は(T4−T1)であり、目標発電電力の例えば70%をクロスするまでの時間は(T5−T1)である。ゼロをクロスするまでに時間は(T2−T1)>(T4−T1)であるので、遅い応答の方が有利であるが、目標発電電力の例えば70%をクロスするまでの時間は(T3−T1)<(T5−T1)であるので、速い応答の方が有利である。
【0036】
この場合、ドライバによるアクセル踏み込み直後の加速応答遅れ時間(例えばゼロをクロスするまでの時間)の短さに重きを置く設定とするならば、図4の設定を選択する。逆に、加速の伸びが得られるまでの時間(目標発電電力の例えば70%をクロスするまでの時間)の短さに重きをおく設定とするならば、図3の設定を選択する。
【0037】
このように、所定のネット発電電力までの所要時間をパラメータとして、ステップS3での目標応答の設定を行えば、明確な目標応答の設計が可能となる。
【0038】
また、2次バッテリ19の充電状態が低下している場合、ステップS3の目標応答の設定を切り換えても良い。2次バッテリ19の充電状態が低下していると、2次バッテリ19の放電可能電力が低下する。図3あるいは図4において、時刻T1直後はネット発電電力が負の値となっているが、この部分は2次バッテリ19の放電電力によってまかなわれている(すなわち、コンプレッサ2の回転上昇に必要な電力を2次バッテリ19が供給している。)。さらに、この時点では、2次バッテリ19の放電電力は、ドライバの駆動力要求に応えるべく、駆動モータへも電力供給を行っている。したがって、2次バッテリ19の放電可能電力が低下している場合、当然、ステップS3における目標応答の設定を補正する必要がある。
【0039】
このような補正を加えることにより、2次バッテリの充電状態が低下した場合でも、その影響を最小限に抑制することが可能となる。
【0040】
ステップ3での反応ガス目標応答性演算の後、ステップS4では、ステップS3で演算された反応ガスの流量及び圧力の目標応答にしたがい、流量及び圧力の制御を行う(流量・圧力制御)。すなわち、空気系ではコンプレッサ2の回転数と空気調圧弁6の開度をモータ回転センサ2b、空気圧力センサ15を用いてフィードバック制御を行う。また、水素系では水素調圧弁8の開度を水素圧力センサ16を用いてフィードバック制御を行う。
【0041】
ステップS5では、DC/DCコンバータ20を制御することにより、燃料電池1から取り出す電力を制御する。ここでは、実際に燃料電池1へ供給されている反応ガスの流量・圧力を、水素圧力センサ16、空気圧力センサ15、モータ回転センサ2b(空気流量センサを設置しても可)から得て、ガス供給不足による燃料電池1の劣化が発生しないように行う。その結果、過渡的に駆動力に必要な電力とDC/DCコンバータ20によって燃料電池1から取り出す電力との間に差異が生じた場合、2次バッテリ19の充放電によって自動的に補われることになる。
【0042】
以上のように、本実施形態の燃料電池システムによれば、燃料電池システム制御装置17の制御によって、補機消費電力を考慮したネット発電電力の立ち上がり特性を良好にすることが可能となるため、ドライバのアクセル踏み込み時に無駄な補機消費電力を抑制することができる。
【0043】
また、ネット発電電力の立ち上がり時において、ネット発電電力が所定値に達するまでの時間が最短となるように制御することで、ドライバのアクセル踏み込み時の駆動力のもたつき感を防ぐことが可能となる。
【0044】
さらに、2次バッテリ19等の蓄電手段の充電状態から計算される放電可能電力により、ネット発電電力の立ち上がり特性を補正することにより、充電状態によって発生するおそれのあるドライバのアクセル踏み込み時の駆動力のもたつき感を最小限に抑制することが可能となる。
【0045】
(第2の実施形態)
本実施形態は、第1の実施形態のステップS3における目標応答の設定に新たなパラメータを導入したものである。燃料電池システムの構成については図1、制御のフローチャートについては図2と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0046】
第1の実施形態では、例えば車両の加速走行のためのネット発電電力が目標発電電力の例えば70%である場合に、ネット発電電力が目標発電電力の70%に達するまでに要する時間をパラメータとして使用する場合について述べた。この場合、目標発電電力の70%に達するまでに要する時間は図3の設定の方が短いため、「加速の伸びが得られるまでの時間」に重きをおくならば、図3の設定を選択する。
【0047】
しかしながら、目標発電電力の例えば70%が得られる時点、すなわち図3の設定では時刻T3、図4の設定では時刻T5でのコンプレッサ回転数は、それぞれN1、N2となる。ここで、N1>N2であるので、同じネット発電電力が得られる、すなわち同じ駆動力が得られる際に、図3の設定の方がコンプレッサ回転数が高く、騒音が大きくなることになる。この状態では、図3の設定を選択すると、ドライバに「音の割に加速しない」という悪い印象を与えることも懸念される。したがって、加速感と騒音のバランスに重きを置く設定をするならば、図4の設定を選択する。
【0048】
このように、所定のネット発電電力でのコンプレッサ回転数をパラメータとして、ステップS3での目標応答の設定を行えば、音振性能を考慮した目標応答の設計が可能となる。
【0049】
また、2次バッテリ19の充電状態が低下している場合、ステップS3の目標応答の設定を切り換えても良い。2次バッテリ19の充電状態が低下していると、2次バッテリの放電可能電力が低下する。図3あるいは図4において、時刻T1直後はネット発電電力が負の値となっているが、この部分は2次バッテリ19の放電電力によってまかなわれている(すなわち、コンプレッサ2の回転上昇に必要な電力を2次バッテリ19が供給している。)。さらに、この時点では、2次バッテリ19の放電電力は、ドライバの駆動力要求に応えるべく、駆動モータへも電力供給を行っている。したがって、2次バッテリ19の放電可能電力が低下している場合、当然、ステップS3における目標応答の設定を補正する必要がある。
【0050】
このような補正を加えることにより、2次バッテリの充電状態が低下した場合でも、その影響を最小限に抑制することが可能となる。
【0051】
以上のように、本実施形態の燃料電池システムによれば、燃料電池システム制御装置17による制御によって、加速の伸びが感じられるだけのネット発電電力が得られる段階でコンプレッサ回転数の上昇を抑制することができ、ドライバのアクセル踏み込み時の駆動力応答性と燃料電池システムの騒音との違和感を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した燃料電池システムの構成例を示す図である。
【図2】前記燃料電池システムの制御フローを示すフローチャートである。
【図3】ドライバがステップ的にアクセルを全閉から全開に踏み込んだときの目標発電電力、目標流量、目標圧力、目標コンプレッサ回転数、実際のグロス発電電力、コンプレッサ消費電力、ネット発電電力の変化を示すタイミングチャートであり、比較的速い目標応答性を設定した場合のタイミングチャートである。
【図4】ドライバがステップ的にアクセルを全閉から全開に踏み込んだときの目標発電電力、目標流量、目標圧力、目標コンプレッサ回転数、実際のグロス発電電力、コンプレッサ消費電力、ネット発電電力の変化を示すタイミングチャートであり、比較的遅い目標応答性を設定した場合のタイミングチャートである。
【符号の説明】
1 燃料電池
2 コンプレッサ
2a モータ
2b モータ回転センサ
7 水素ボンベ
15 空気圧力センサ
16 水素圧力センサ
17 燃料電池システム制御装置
19 2次バッテリ
Claims (8)
- 水素と空気の供給により発電する燃料電池を備え、車両の駆動モータへ電力を供給する燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池の総発電電力から補機消費電力を差し引いた実効発電電力の立ち上がりにおける目標応答に応じて、前記燃料電池に供給する空気流量及び空気圧力を制御することを特徴とする燃料電池システム。 - 前記燃料電池の実効発電電力の立ち上がりに際して、当該実効発電電力が所定値に達するまでの時間が最短となるように、前記燃料電池に供給する空気流量及び空気圧力を制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
- 前記車両のアクセル踏み込み直後の加速応答遅れが最短となるように前記燃料電池に供給する空気流量及び空気圧力を制御することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
- 前記車両の加速走行のための実効発電電力が目標発電電力のX%である場合において、実効発電電力が目標発電電力のX%に到達するまでの時間が最短となるように前記燃料電池に供給する空気流量及び空気圧力を制御することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
- 前記車両の加速走行のための実効発電電力が目標発電電力のX%である場合において、前記燃料電池の実効発電電力の立ち上がりに際して、実効発電電力が目標発電電力のX%に到達した時点での前記燃料電池に圧縮空気を供給するためのコンプレッサの回転数が最小となるように、前記燃料電池に供給する空気流量及び空気圧力を制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
- 前記燃料電池と並列接続された充放電可能な蓄電手段を更に備え、
前記蓄電手段の放電可能電力に応じて前記実効発電電力の立ち上がりにおける目標応答を補正することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の燃料電池システム。 - 前記蓄電手段が、2次バッテリまたはキャパシタであることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池システム。
- 前記燃料電池システムは、前記燃料電池に圧縮空気を供給するコンプレッサ、前記燃料電池に水素を循環する水素循環用補機、前記燃料電池に冷却水を供給する冷却水用補機を備え、前記補機消費電力は、これらのうちの少なくとも1つの消費電力を含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
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