JP2004323627A - ポリエステルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】操業性が良好で、ガスバリア性、耐熱性に優れたポリエステルの製造方法を提供する。
【解決手段】酸成分としてイソフタル酸を4mol%以上含有し、エチレングリコールまたは1,4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルを製造するに際し、原料としてアルカリ金属化合物をアルカリ金属原子として1〜10質量ppm含有するイソフタル酸を用いることを特徴とするポリエステルの製造方法。および、好ましくは、触媒としてさらにリン化合物を使用する上記製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】酸成分としてイソフタル酸を4mol%以上含有し、エチレングリコールまたは1,4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルを製造するに際し、原料としてアルカリ金属化合物をアルカリ金属原子として1〜10質量ppm含有するイソフタル酸を用いることを特徴とするポリエステルの製造方法。および、好ましくは、触媒としてさらにリン化合物を使用する上記製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、操業性が良好で、オリゴマーによる成形金型の汚染が少なく、かつ、ガスバリア性、耐熱性に優れたポリエステルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルは、機械的強度、化学的安定性、透明性に優れており、また、軽量、安価であるために、各種のシート、フィルム、容器などに幅広く用いられ、特に、炭酸飲料、果汁飲料、液体調味料、食用油、酒、ワイン用などの容器用途の伸びが著しい。近年では、炭酸飲料、ワイン等の飲料用容器あるいは医療品用容器等においては、内容物を保存するという観点から、ガスバリヤー性が要求される場合が高まっている。しかし、PETからなる容器は、ガスバリア性が不十分であるという問題があり、これを解決するものとして、ポリエチレンイソフタレート(PEI)またはポリ(エチレンイソフタレート/エチレンテレフタレート)(PEIT)のような共重合ポリエステルからなるものが提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
しかし、こうした共重合ポリエステル樹脂は、その重合時に、エチレンイソフタレート環状2量体などのオリゴマー(DEI)が多量に副生するため、これらが成形時に成形金型を汚染したり成形品に異物として混入しやすいという問題があった。環状オリゴマーの発生量を抑制する方法として、例えば特許文献2にはプロトン酸触媒を用いる方法が提案されている。しかしながら、この方法では、PEIまたはPEIT中のジエチレングリコール(DEG)共重合割合が増加しすぎ、PEIまたはPEITのガラス転移点(Tg)が低下してしまうため、樹脂チップの乾燥中に、チップ同士がブロッキングしてしまい、取り扱いが悪くなり、操業性が低下するという問題があった。また、成形品にした際に十分な耐熱性が得られないという問題もあった。一方、ポリブチレンイソフタレート(PBI)系ポリエステルの場合には、プロトン酸触媒を用いると、テトラヒドロフラン(THF)が多量に発生し、重合反応が進まなくなり、高重合度のポリマーが得られないという問題があった。
【0004】
ガスバリア性と耐熱性を両立させる方法として、特許文献3には、PEITに1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンを共重合する方法が提案されている。しかし、この方法では、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンに起因するオリゴマーが発生し、成形金型等を汚染する場合があり、必ずしも優れた方法とは言えなかった。
【0005】
【特許文献1】
特開昭59−64624号公報
【特許文献2】
特開昭59−64625号公報
【特許文献3】
特開2001−342334号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような問題点を解決し、操業性が良好で、オリゴマーによる成形金型の汚染が少なく、かつ、ガスバリア性、耐熱性に優れたポリエステルの製造方法を提供することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリエステルの原料として、アルカリ金属化合物を特定量含有するイソフタル酸を用いることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
1.酸成分としてイソフタル酸を4mol%以上含有し、エチレングリコールまたは1,4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルを製造するに際し、原料としてアルカリ金属化合物をアルカリ金属原子として1〜10質量ppm含有するイソフタル酸を用いることを特徴とするポリエステルの製造方法。
2.エステル化反応工程または重縮合工程において、触媒としてリン化合物を添加することを特徴とする1に記載のポリエステルの製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明により製造されるポリエステルは、酸成分としてイソフタル酸(IPA)を4mol%以上含有するものである。IPAの含有量が4mol%未満では、ガスバリア性が低下するため好ましくない。
【0011】
ポリエステルを構成する他の酸成分としては、テレフタル酸(TPA)、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、パラヒドロキシ安息香酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ドデカン二酸、ヘキサデカン二酸、エイコサン二酸、乳酸、コハク酸、ダイマー酸、2−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−オキサイド−10−フォスファフェナントレン−10−イル)メチルコハク酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)−エステル、3−メチルホスフィニコプロピオン酸、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトンなどが挙げられるが、中でもテレフタル酸が好ましく用いられる。
【0012】
一方、ポリエステルの主たるグリコール成分は、エチレングリコール(EG)または1,4−ブタンジオール(BD)である。少量であれば、他のグリコール成分、例えば、ネオペンチルグリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ナノンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの脂肪族グリコールを用いてもよい。また、グリコールは併用しても差し支えない。
【0013】
本発明の製造方法は、上記のポリエステルを製造するにあたって、アルカリ金属化合物をアルカリ金属原子として1〜10ppm含有するIPAを原料として使用する必要がある。原料のIPAに含有しているアルカリ金属化合物がアルカリ金属原子として1質量ppm未満であると、ポリエステルを構成する主たるグリコールがEGの場合には、IPAとEGのエステル化反応時、および重縮合反応時において、DEGが多量に副生し、DEGが多量に共重合されたポリエステルとなる。DEGの共重合割合が高くなると、Tgが低下し、樹脂ペレットの乾燥中にチップ同士がブロッキングし取り扱いが悪くなり、操業性が低下するため好ましくない。また、成形品にした際に十分な耐熱性が得られなくなるため好ましくない。また、主たるグリコールがBDの場合には、THFが多量に発生し、酸/グリコールの比率が変化して重合反応が進まなくなるため好ましくない。
【0014】
原料のIPAに含有しているアルカリ金属化合物がアルカリ金属原子として10質量ppmを超えると、主たるグリコールがEGの場合には、DEGの副生量が低下し、DEI等のオリゴマーが多量に副生し、成形金型等を汚染するため好ましくない。また、脂肪族グリコールの種類に関わらず、所望の極限粘度のポリエステルが得られず、ポリエステルの強度特性が低下する場合がある。
【0015】
アルカリ金属化合物の元素の種類としては、Na、K、Liなどが好ましく、それらの元素は、水酸化物、酢酸塩、または炭酸塩としてIPAに含有されていることが好ましい。
【0016】
IPA中にアルカリ金属化合物を含有させる方法としては、容器の中にIPAの粉体を投入し、アルカリ金属化合物の溶解した水を加え、浸した後脱水し、乾燥する方法、あらかじめ容器をアルカリ金属化合物の水溶液に接触させ、容器内壁にアルカリ金属化合物を付着させておき、その容器にIPAを投入し、IPA中にアルカリ金属化合物を移行させる等の方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
このようなアルカリ金属化合物を含有するIPAとEGとを反応させる場合には、IPAに対してモル比1.1〜4.0のEGとからなるスラリーをエステル化反応缶に投入し、窒素ガス制圧下、温度180〜200℃で5〜7時間エステル化反応を行い、PEIの低重合体を得ることができる。また、これを高重合度化させるために、このPEI低重合体に重合触媒を添加し、0.01〜13.3hPaの減圧下、温度250〜280℃で、極限粘度が0.5以上となるまで重縮合反応を行うことができる。
【0018】
また、テレフタル酸(TPA)を共重合させる場合には、上記の方法で得たPEI低重合体と、温度230〜250℃で窒素ガス制圧下、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートおよび/またはその低重合体の存在するエステル化反応槽に、TPAに対してモル比1.1〜2.0倍のEGとTPAのスラリーを添加し、常圧下、滞留時間7〜8時間反応させて、得られた反応率95%のPET低重合体とを、各々重合反応缶に所定量移送し、重合触媒を添加し、0.01〜13.3hPaの減圧下、温度250〜280℃で、極限粘度が0.5以上となるまで重縮合反応を行うことにより製造できる。
【0019】
また、アルカリ金属化合物を含有するIPAとBDとを反応させる場合には、IPAに対してモル比1.1〜4.0のBDとからなるスラリーをエステル化反応缶に投入し、窒素ガス制圧下、温度180〜200℃で5〜7時間エステル化反応を行い、PBIの低重合体を得ることができる。また、これを高重合度化させるために、このPBI低重合体に重合触媒を添加し、0.01〜13.3hPaの減圧下、温度250〜280℃で、極限粘度が0.5以上となるまで重縮合を行うことにより、PBIを得ることができる。
【0020】
さらに、PBIにTPAを共重合させる場合には、温度150℃で窒素ガス制圧下、エステル化反応槽に、テレフタル酸ジメチル(DMT)とDMTに対してモル比1.1〜2.0のBDおよび重合触媒を添加し、常圧下、滞留時間1〜2時間で反応させた後、2〜5時間かけて230〜250℃に昇温することによりBDとTPAののエステル化物を得ることができる。このエステル化物と上記の方法で得たPBIとを、各々重合反応缶に所定量移送し、重合触媒を添加し、0.01〜13.3hPaの減圧下、温度230〜260℃で、極限粘度が0.5以上となるまで重縮合反応を行うことにより製造できる。
また、TPA、IPA、BDの共重合ポリエステルは、次の方法で製造するこのもできる。すなわち、窒素ガス制圧下、IPAとDMTの存在する重合反応缶に、IPAとDMTに対してモル比1.1〜2.0のBDおよび重合触媒を添加し、温度150℃で1〜2時間反応させた後、2〜5時間かけて230〜250℃に昇温し、BD、TPA、IPAのエステル化物を得た後、さらに230〜260℃で極限粘度が0.5以上となるまで重縮合反応を行う。
【0021】
また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ヒンダードフェノール系化合物のような抗酸化剤、コバルト化合物、蛍光剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような顔料および酸化セリウムのような耐光剤などの添加物を含有させてもよい。
【0022】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法では、エステル化反応前または重縮合反応前に、触媒としてリン化合物を添加することが好ましい。リン化合物の種類としては、特に限定されないが、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルなどが挙げられ、リン酸トリエチルが好ましい。
【0023】
リン化合物の添加量は、酸成分1molに対し0.2×10−4〜200×10−4molの範囲とすることが好ましく、0.3×10−4〜100×10−4molの範囲がさらに好ましく、0.4×10−4〜50×10−4molの範囲が最も好ましい。リン化合物の添加量が、酸成分1molに対し200×10−4molを超えると、エステル化反応工程または重縮合化工程において、グリコールがEGの場合にはDEGの副生量が増加し、また、グリコールがBDの場合にはTHFが多量に生成し、いずれの場合も好ましくない。また、リン化合物の添加量が、酸成分1molに対し0.2×10−4mol未満となると、エステル化反応工程または重縮合化工程において、DEG等のエーテル体の副生量が低下し、DEI等のオリゴマーが多量に副生し、成形金型等を汚染するため好ましくない。
【0024】
本発明の製法により得られたIPA酸成分の共重合されたポリエステルは、他のポリエステルと混合して用いてもよい。例えば、IPA共重合量の比較的高いポリエステルを、PETやPBTにより希釈し、目的に応じて耐熱性、バリア性、加工性などを調整して用いることができる。
【0025】
【作用】
DEGやTHF等のエーテル縮合物は、主としてオリゴマーのカルボキシル基が、一種の酸触媒として作用し、グリコールがエーテル結合することにより副生する。原料のIPA中に含有しているアルカリ金属化合物は、塩基として作用するため、アルカリ金属化合物の含有量が多いと、グリコールがEGの場合には、DEGの副生量が低下してしまい、環状オリゴマーの発生を引き起こすと推定される。また、グリコールの種類に関わらず、アルカリ金属化合物はエステル化反応を阻害する作用があるため、反応時間が長くなり、操業性が低下したり、所望の重合度、すなわち強度特性のポリエステルを得ることができない場合がある。一方、アルカリ金属化合物の含有量が少なくなりすぎると、DEGやTHF等のエーテル体の副生量が極端に多くなり、ガラス転移温度を低下させたり、作業環境の悪化を引き起こす。グリコールがEGの場合には、重合時に副生するDEGを有効活用し、その共重合割合を制御することが可能となり、比較的簡便に、操業性やポリエステルの耐熱性を低下させることなく低オリゴマー化を図ることが可能となる。
【0026】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、特性値等の測定及び評価方法は、次の通りである。
(a)極限粘度
フェノールと四塩化エタンとの等重量混合物を溶媒として、温度20.0℃で測定した。
(b)IPA、DEG及びその他の共重合割合
ポリエステルを重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比1/25の混合溶媒に溶解し、日本電子社製LA−400型NMR装置で1H−NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から、共重合割合を求めた。
(c)ガラス転移温度(Tg)
パーキンエルマー社製示差熱走査熱量計DSC−7型を用い、25℃から280℃の範囲で、昇温速度20℃/分で測定し、再昇温時のチャートよりTgを求めた。
(d)ガスバリア性(炭酸ガス透過係数)〔単位:ml・mm/m2・day・atm 〕
ボトルの切片について、ジーエルサイエンス社製GPM−250型測定器を用いて、二酸化炭素の透過した体積から求めた。この値は低いほど良く、8.0未満であれば合格とした。
(e)ボトルの耐熱性
延伸ブロー成形により得たボトルに、70℃の熱水を満たし、30分間放置後の体積変化の有無を目視で調べた。
○:体積変化なし(合格)。
×:体積変化あり(不合格)。
(f)金属含有量
白金るつぼに試料5g秤量し、濃硫酸2mlを加え電気炉で灰化する。るつぼ中の灰分を希塩酸水溶液に溶解させ、日本ジャーレルアッシュ製ICP分析装置ARIS−APにて定量した。
(g)ボトル成形不良の有無
プレフォーム、ボトルを目視で確認し、形状不良、ひび割れ等外観検査を行った。
○:不良なし(合格)
△:一部不良品(1割以下)(不合格)
×:不良品多発(1割超)(不合格)
【0027】
実施例1
1N水酸化ナトリウム水溶液20Lを容積100Lのステンレス製容器に上部投入口より投入し、下部排水バルブよりこの水溶液を抜いた後、バルブを閉じ、100℃で3時間加熱し、乾燥させた。この容器を冷却後、IPA50Kgを投入し、投入口より下部払い出し弁を開き、IPAを抜き取った。このIPA中の水酸化ナトリウム量は、ナトリウム原子として1.5質量ppmであった。(他の例では、IPAの投入量、アルカリの種類を変えることにより、IPA中のアルカリ化合物の量を調整した。)
【0028】
次に、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート及びその低重合体の存在するエステル化反応缶に、TPAとEGとのモル比1/1.6のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力500Paの条件で反応させ、滞留時間を8時間としてエステル化反応率95%のPETオリゴマーを連続的に得た。別のエステル化反応缶に、水酸化ナトリウムがナトリウム原子として1.5質量ppm含有するIPA33.2kgとEG37.2Kg(モル比1/3)からなるスラリー、およびリン酸トリエチルを、酸成分1molに対し5×10−4molとなる量(23g)投入し、温度200℃、常圧で5時間エステル化反応を行い、エステル化反応率95%のPEI低重合体を得た。PET低重合体10kgとPEI低重合体40kgとを重縮合反応缶に仕込み、全酸成分1molに対し三酸化アンチモン4×10−4mol(29g)のEG溶液(1.3Kg)を加え、減圧にして、最終的に66.7Pa、280℃で3時間重縮合を行い、PEIT〔ポリエステル(A)〕を得た。得られたポリエステル(A)は、極限粘度が0.85、IPAの共重合割合が79.2mol%、Tgが63℃であった。ポリエステル(A)は、静置の乾燥機で50℃で20時間、減圧度66.7Paで真空乾燥を行ったが、ブロッキング等は特に見られなかった。
【0029】
一方、PETオリゴマー60kgを重縮合反応器に仕込み、TPA成分1molに対し三酸化アンチモンが2×10−4mol(17g)のEG溶液(0.8Kg)を加え、重縮合反応器中を減圧にして、最終的に66.7Pa、280℃で、2時間重縮合を行い、極限粘度0.65のPETを得た。このPETを、回転式固相重合装置に仕込み、70℃で2時間予備乾燥し、続いて130℃で4時間乾燥させた後、温度 220℃、圧力66.7Paで18時間固相重合を行い、極限粘度0.75のPET〔ポリエステル(B)〕を得た。
【0030】
ポリエステル(A)10kg(20重量部)とポリエステル(B)40kg(80重量部)とをブレンドし、シリンダー各部及びノズルの温度280℃、スクリュー回転数100rpm、射出時間8秒、冷却時間22秒、金型温度20℃に設定した射出成形機(日精エーエスビー製ASB−50HT型)でプレフォームを成形した(溶融滞留時間は1分)。次いで、このプレフォームを110℃の雰囲気下、ブロー圧力2MPaで延伸ブロー成形し、胴部平均肉厚250μm、内容積1Lのボトルとし、引き続いて160℃に設定した金型内で圧縮緊張下、10秒間ヒートセットしてボトルを作成した。これらを連続で1000本のボトルを作成したが、成形金型、ボトル表面にオリゴマーによる汚染は認められなかった。また、ボトルの成形性、ガスバリア性、耐熱性ともに良好であった。得られたボトルの評価結果等を表1に示す。
【0031】
実施例2、3、比較例1、3
ポリエステル(A)のIPAの共重合割合、原料IPAアルカリ金属化合物の種類とその含有量、ポリエステル(A)とポリエステル(B)との混合割合を表1に示すように変えた以外には、実施例1に準じた方法でポリエステルを製造し、ボトルを作製した。得られたボトルの評価結果等を表1に示す。
【0032】
実施例4、5、比較例2
ポリエステル(A)の共重合割合、原料IPA中アルカリ金属化合物の種類を表1に示すように変え、ポリエステル(A)を実施例1に準じた方法で固相重合し、ポリエステル(B)を混合せず、ポリエステル(A)のみを成形に供した。表1には、固相重合後のポリエステル(A)の特性値、および得られたボトルの評価結果等を示す。
【0033】
実施例6
実施例1と同様にして、IPAに水酸化ナトリウムをナトリウム原子として1.5質量ppm含有させた。このIPA33.2Kg、テレフタル酸ジメチル(DMT)9.7Kg、BD45.1Kg(IPA、DMTに対してモル比2)を重合反応器に仕込み、触媒として、テトラブチルチタネート(TBT)が酸成分1molに対し1×10−4molとなる量(8.5g)溶解したBD溶液1Kg投入し、常圧下150℃で1時間、および3時間で250℃まで昇温し、エステル化反応、エステル交換反応を行った。得られたエステル化物に、触媒としてリン酸トリエチルを酸成分1molに対し、0.5×10−4molとなる量(23g)投入し、245℃で2時間、減圧下で重縮合反応を行い、ポリエステル(A)を得た。得られたポリエステル(A)は、極限粘度が0.85、IPAの共重合割合が79.2mol%、Tgが66℃であった。ポリエステル(A)は実施例1と同様にして真空乾燥を行ったが、ブロッキング等は特に見られなかった。さらに、実施例1と同様にしてポリエステル(B)を得、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを混合してプレフォームを成形した。さらに実施例1と同様にボトルを作成した。得られたボトルの評価結果等を表1に示す。
【0034】
実施例7、比較例4
ポリエステル(A)のIPAの共重合割合、原料IPAアルカリ金属化合物の種類とその含有量、ポリエステル(A)とポリエステル(B)との混合割合を表1に示すように変えた以外には、実施例6に準じた方法でボトルを作製した。得られたボトルの評価結果等を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例1〜7ではいずれも良好なポリエステルが得られ、性能にも問題は生じなかった。
比較例1では、原料IPA中のナトリウム含有量が少なすぎるため、ポリエステル(A)のDEG共重合割合が増加し、Tgが低下したため、このチップを乾燥させたところ、ブロッキングが生じた。また、ボトルの耐熱性が低下した。
比較例2では、ポリエステル(A)のIPAの共重合割合が少なすぎるため、ボトルのガスバリア性が低下した。
比較例3では、原料IPA中のナトリウム含有量が多すぎるため、DEG共重合割合が低くなりすぎ、ボトル成形時にオリゴマーによる成形金型の汚染が発生した。また、ポリエステル(A)の極限粘度がやや低くなったため、ボトル成形不良がやや認められた。
比較例4では、原料IPA中のナトリウム含有量が少なすぎるため、重合時にTHFが多量に発生し、ポリエステル(A)が所望の粘度まで到達しなかったため、ボトル成形不良が多発した。
【0037】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、オリゴマーによる成形金型の汚染が少なく、かつ、ガスバリア性、耐熱性に優れたポリエステルが得られ、各種のシート、フィルム、容器、特に、炭酸飲料、果汁飲料、液体調味料、食用油、酒、ワイン用などの容器や、医療品用容器等に用いることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、操業性が良好で、オリゴマーによる成形金型の汚染が少なく、かつ、ガスバリア性、耐熱性に優れたポリエステルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルは、機械的強度、化学的安定性、透明性に優れており、また、軽量、安価であるために、各種のシート、フィルム、容器などに幅広く用いられ、特に、炭酸飲料、果汁飲料、液体調味料、食用油、酒、ワイン用などの容器用途の伸びが著しい。近年では、炭酸飲料、ワイン等の飲料用容器あるいは医療品用容器等においては、内容物を保存するという観点から、ガスバリヤー性が要求される場合が高まっている。しかし、PETからなる容器は、ガスバリア性が不十分であるという問題があり、これを解決するものとして、ポリエチレンイソフタレート(PEI)またはポリ(エチレンイソフタレート/エチレンテレフタレート)(PEIT)のような共重合ポリエステルからなるものが提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
しかし、こうした共重合ポリエステル樹脂は、その重合時に、エチレンイソフタレート環状2量体などのオリゴマー(DEI)が多量に副生するため、これらが成形時に成形金型を汚染したり成形品に異物として混入しやすいという問題があった。環状オリゴマーの発生量を抑制する方法として、例えば特許文献2にはプロトン酸触媒を用いる方法が提案されている。しかしながら、この方法では、PEIまたはPEIT中のジエチレングリコール(DEG)共重合割合が増加しすぎ、PEIまたはPEITのガラス転移点(Tg)が低下してしまうため、樹脂チップの乾燥中に、チップ同士がブロッキングしてしまい、取り扱いが悪くなり、操業性が低下するという問題があった。また、成形品にした際に十分な耐熱性が得られないという問題もあった。一方、ポリブチレンイソフタレート(PBI)系ポリエステルの場合には、プロトン酸触媒を用いると、テトラヒドロフラン(THF)が多量に発生し、重合反応が進まなくなり、高重合度のポリマーが得られないという問題があった。
【0004】
ガスバリア性と耐熱性を両立させる方法として、特許文献3には、PEITに1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンを共重合する方法が提案されている。しかし、この方法では、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンに起因するオリゴマーが発生し、成形金型等を汚染する場合があり、必ずしも優れた方法とは言えなかった。
【0005】
【特許文献1】
特開昭59−64624号公報
【特許文献2】
特開昭59−64625号公報
【特許文献3】
特開2001−342334号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような問題点を解決し、操業性が良好で、オリゴマーによる成形金型の汚染が少なく、かつ、ガスバリア性、耐熱性に優れたポリエステルの製造方法を提供することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリエステルの原料として、アルカリ金属化合物を特定量含有するイソフタル酸を用いることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
1.酸成分としてイソフタル酸を4mol%以上含有し、エチレングリコールまたは1,4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルを製造するに際し、原料としてアルカリ金属化合物をアルカリ金属原子として1〜10質量ppm含有するイソフタル酸を用いることを特徴とするポリエステルの製造方法。
2.エステル化反応工程または重縮合工程において、触媒としてリン化合物を添加することを特徴とする1に記載のポリエステルの製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明により製造されるポリエステルは、酸成分としてイソフタル酸(IPA)を4mol%以上含有するものである。IPAの含有量が4mol%未満では、ガスバリア性が低下するため好ましくない。
【0011】
ポリエステルを構成する他の酸成分としては、テレフタル酸(TPA)、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、パラヒドロキシ安息香酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ドデカン二酸、ヘキサデカン二酸、エイコサン二酸、乳酸、コハク酸、ダイマー酸、2−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−オキサイド−10−フォスファフェナントレン−10−イル)メチルコハク酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)−エステル、3−メチルホスフィニコプロピオン酸、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトンなどが挙げられるが、中でもテレフタル酸が好ましく用いられる。
【0012】
一方、ポリエステルの主たるグリコール成分は、エチレングリコール(EG)または1,4−ブタンジオール(BD)である。少量であれば、他のグリコール成分、例えば、ネオペンチルグリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ナノンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの脂肪族グリコールを用いてもよい。また、グリコールは併用しても差し支えない。
【0013】
本発明の製造方法は、上記のポリエステルを製造するにあたって、アルカリ金属化合物をアルカリ金属原子として1〜10ppm含有するIPAを原料として使用する必要がある。原料のIPAに含有しているアルカリ金属化合物がアルカリ金属原子として1質量ppm未満であると、ポリエステルを構成する主たるグリコールがEGの場合には、IPAとEGのエステル化反応時、および重縮合反応時において、DEGが多量に副生し、DEGが多量に共重合されたポリエステルとなる。DEGの共重合割合が高くなると、Tgが低下し、樹脂ペレットの乾燥中にチップ同士がブロッキングし取り扱いが悪くなり、操業性が低下するため好ましくない。また、成形品にした際に十分な耐熱性が得られなくなるため好ましくない。また、主たるグリコールがBDの場合には、THFが多量に発生し、酸/グリコールの比率が変化して重合反応が進まなくなるため好ましくない。
【0014】
原料のIPAに含有しているアルカリ金属化合物がアルカリ金属原子として10質量ppmを超えると、主たるグリコールがEGの場合には、DEGの副生量が低下し、DEI等のオリゴマーが多量に副生し、成形金型等を汚染するため好ましくない。また、脂肪族グリコールの種類に関わらず、所望の極限粘度のポリエステルが得られず、ポリエステルの強度特性が低下する場合がある。
【0015】
アルカリ金属化合物の元素の種類としては、Na、K、Liなどが好ましく、それらの元素は、水酸化物、酢酸塩、または炭酸塩としてIPAに含有されていることが好ましい。
【0016】
IPA中にアルカリ金属化合物を含有させる方法としては、容器の中にIPAの粉体を投入し、アルカリ金属化合物の溶解した水を加え、浸した後脱水し、乾燥する方法、あらかじめ容器をアルカリ金属化合物の水溶液に接触させ、容器内壁にアルカリ金属化合物を付着させておき、その容器にIPAを投入し、IPA中にアルカリ金属化合物を移行させる等の方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
このようなアルカリ金属化合物を含有するIPAとEGとを反応させる場合には、IPAに対してモル比1.1〜4.0のEGとからなるスラリーをエステル化反応缶に投入し、窒素ガス制圧下、温度180〜200℃で5〜7時間エステル化反応を行い、PEIの低重合体を得ることができる。また、これを高重合度化させるために、このPEI低重合体に重合触媒を添加し、0.01〜13.3hPaの減圧下、温度250〜280℃で、極限粘度が0.5以上となるまで重縮合反応を行うことができる。
【0018】
また、テレフタル酸(TPA)を共重合させる場合には、上記の方法で得たPEI低重合体と、温度230〜250℃で窒素ガス制圧下、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートおよび/またはその低重合体の存在するエステル化反応槽に、TPAに対してモル比1.1〜2.0倍のEGとTPAのスラリーを添加し、常圧下、滞留時間7〜8時間反応させて、得られた反応率95%のPET低重合体とを、各々重合反応缶に所定量移送し、重合触媒を添加し、0.01〜13.3hPaの減圧下、温度250〜280℃で、極限粘度が0.5以上となるまで重縮合反応を行うことにより製造できる。
【0019】
また、アルカリ金属化合物を含有するIPAとBDとを反応させる場合には、IPAに対してモル比1.1〜4.0のBDとからなるスラリーをエステル化反応缶に投入し、窒素ガス制圧下、温度180〜200℃で5〜7時間エステル化反応を行い、PBIの低重合体を得ることができる。また、これを高重合度化させるために、このPBI低重合体に重合触媒を添加し、0.01〜13.3hPaの減圧下、温度250〜280℃で、極限粘度が0.5以上となるまで重縮合を行うことにより、PBIを得ることができる。
【0020】
さらに、PBIにTPAを共重合させる場合には、温度150℃で窒素ガス制圧下、エステル化反応槽に、テレフタル酸ジメチル(DMT)とDMTに対してモル比1.1〜2.0のBDおよび重合触媒を添加し、常圧下、滞留時間1〜2時間で反応させた後、2〜5時間かけて230〜250℃に昇温することによりBDとTPAののエステル化物を得ることができる。このエステル化物と上記の方法で得たPBIとを、各々重合反応缶に所定量移送し、重合触媒を添加し、0.01〜13.3hPaの減圧下、温度230〜260℃で、極限粘度が0.5以上となるまで重縮合反応を行うことにより製造できる。
また、TPA、IPA、BDの共重合ポリエステルは、次の方法で製造するこのもできる。すなわち、窒素ガス制圧下、IPAとDMTの存在する重合反応缶に、IPAとDMTに対してモル比1.1〜2.0のBDおよび重合触媒を添加し、温度150℃で1〜2時間反応させた後、2〜5時間かけて230〜250℃に昇温し、BD、TPA、IPAのエステル化物を得た後、さらに230〜260℃で極限粘度が0.5以上となるまで重縮合反応を行う。
【0021】
また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ヒンダードフェノール系化合物のような抗酸化剤、コバルト化合物、蛍光剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような顔料および酸化セリウムのような耐光剤などの添加物を含有させてもよい。
【0022】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法では、エステル化反応前または重縮合反応前に、触媒としてリン化合物を添加することが好ましい。リン化合物の種類としては、特に限定されないが、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルなどが挙げられ、リン酸トリエチルが好ましい。
【0023】
リン化合物の添加量は、酸成分1molに対し0.2×10−4〜200×10−4molの範囲とすることが好ましく、0.3×10−4〜100×10−4molの範囲がさらに好ましく、0.4×10−4〜50×10−4molの範囲が最も好ましい。リン化合物の添加量が、酸成分1molに対し200×10−4molを超えると、エステル化反応工程または重縮合化工程において、グリコールがEGの場合にはDEGの副生量が増加し、また、グリコールがBDの場合にはTHFが多量に生成し、いずれの場合も好ましくない。また、リン化合物の添加量が、酸成分1molに対し0.2×10−4mol未満となると、エステル化反応工程または重縮合化工程において、DEG等のエーテル体の副生量が低下し、DEI等のオリゴマーが多量に副生し、成形金型等を汚染するため好ましくない。
【0024】
本発明の製法により得られたIPA酸成分の共重合されたポリエステルは、他のポリエステルと混合して用いてもよい。例えば、IPA共重合量の比較的高いポリエステルを、PETやPBTにより希釈し、目的に応じて耐熱性、バリア性、加工性などを調整して用いることができる。
【0025】
【作用】
DEGやTHF等のエーテル縮合物は、主としてオリゴマーのカルボキシル基が、一種の酸触媒として作用し、グリコールがエーテル結合することにより副生する。原料のIPA中に含有しているアルカリ金属化合物は、塩基として作用するため、アルカリ金属化合物の含有量が多いと、グリコールがEGの場合には、DEGの副生量が低下してしまい、環状オリゴマーの発生を引き起こすと推定される。また、グリコールの種類に関わらず、アルカリ金属化合物はエステル化反応を阻害する作用があるため、反応時間が長くなり、操業性が低下したり、所望の重合度、すなわち強度特性のポリエステルを得ることができない場合がある。一方、アルカリ金属化合物の含有量が少なくなりすぎると、DEGやTHF等のエーテル体の副生量が極端に多くなり、ガラス転移温度を低下させたり、作業環境の悪化を引き起こす。グリコールがEGの場合には、重合時に副生するDEGを有効活用し、その共重合割合を制御することが可能となり、比較的簡便に、操業性やポリエステルの耐熱性を低下させることなく低オリゴマー化を図ることが可能となる。
【0026】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、特性値等の測定及び評価方法は、次の通りである。
(a)極限粘度
フェノールと四塩化エタンとの等重量混合物を溶媒として、温度20.0℃で測定した。
(b)IPA、DEG及びその他の共重合割合
ポリエステルを重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比1/25の混合溶媒に溶解し、日本電子社製LA−400型NMR装置で1H−NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から、共重合割合を求めた。
(c)ガラス転移温度(Tg)
パーキンエルマー社製示差熱走査熱量計DSC−7型を用い、25℃から280℃の範囲で、昇温速度20℃/分で測定し、再昇温時のチャートよりTgを求めた。
(d)ガスバリア性(炭酸ガス透過係数)〔単位:ml・mm/m2・day・atm 〕
ボトルの切片について、ジーエルサイエンス社製GPM−250型測定器を用いて、二酸化炭素の透過した体積から求めた。この値は低いほど良く、8.0未満であれば合格とした。
(e)ボトルの耐熱性
延伸ブロー成形により得たボトルに、70℃の熱水を満たし、30分間放置後の体積変化の有無を目視で調べた。
○:体積変化なし(合格)。
×:体積変化あり(不合格)。
(f)金属含有量
白金るつぼに試料5g秤量し、濃硫酸2mlを加え電気炉で灰化する。るつぼ中の灰分を希塩酸水溶液に溶解させ、日本ジャーレルアッシュ製ICP分析装置ARIS−APにて定量した。
(g)ボトル成形不良の有無
プレフォーム、ボトルを目視で確認し、形状不良、ひび割れ等外観検査を行った。
○:不良なし(合格)
△:一部不良品(1割以下)(不合格)
×:不良品多発(1割超)(不合格)
【0027】
実施例1
1N水酸化ナトリウム水溶液20Lを容積100Lのステンレス製容器に上部投入口より投入し、下部排水バルブよりこの水溶液を抜いた後、バルブを閉じ、100℃で3時間加熱し、乾燥させた。この容器を冷却後、IPA50Kgを投入し、投入口より下部払い出し弁を開き、IPAを抜き取った。このIPA中の水酸化ナトリウム量は、ナトリウム原子として1.5質量ppmであった。(他の例では、IPAの投入量、アルカリの種類を変えることにより、IPA中のアルカリ化合物の量を調整した。)
【0028】
次に、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート及びその低重合体の存在するエステル化反応缶に、TPAとEGとのモル比1/1.6のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力500Paの条件で反応させ、滞留時間を8時間としてエステル化反応率95%のPETオリゴマーを連続的に得た。別のエステル化反応缶に、水酸化ナトリウムがナトリウム原子として1.5質量ppm含有するIPA33.2kgとEG37.2Kg(モル比1/3)からなるスラリー、およびリン酸トリエチルを、酸成分1molに対し5×10−4molとなる量(23g)投入し、温度200℃、常圧で5時間エステル化反応を行い、エステル化反応率95%のPEI低重合体を得た。PET低重合体10kgとPEI低重合体40kgとを重縮合反応缶に仕込み、全酸成分1molに対し三酸化アンチモン4×10−4mol(29g)のEG溶液(1.3Kg)を加え、減圧にして、最終的に66.7Pa、280℃で3時間重縮合を行い、PEIT〔ポリエステル(A)〕を得た。得られたポリエステル(A)は、極限粘度が0.85、IPAの共重合割合が79.2mol%、Tgが63℃であった。ポリエステル(A)は、静置の乾燥機で50℃で20時間、減圧度66.7Paで真空乾燥を行ったが、ブロッキング等は特に見られなかった。
【0029】
一方、PETオリゴマー60kgを重縮合反応器に仕込み、TPA成分1molに対し三酸化アンチモンが2×10−4mol(17g)のEG溶液(0.8Kg)を加え、重縮合反応器中を減圧にして、最終的に66.7Pa、280℃で、2時間重縮合を行い、極限粘度0.65のPETを得た。このPETを、回転式固相重合装置に仕込み、70℃で2時間予備乾燥し、続いて130℃で4時間乾燥させた後、温度 220℃、圧力66.7Paで18時間固相重合を行い、極限粘度0.75のPET〔ポリエステル(B)〕を得た。
【0030】
ポリエステル(A)10kg(20重量部)とポリエステル(B)40kg(80重量部)とをブレンドし、シリンダー各部及びノズルの温度280℃、スクリュー回転数100rpm、射出時間8秒、冷却時間22秒、金型温度20℃に設定した射出成形機(日精エーエスビー製ASB−50HT型)でプレフォームを成形した(溶融滞留時間は1分)。次いで、このプレフォームを110℃の雰囲気下、ブロー圧力2MPaで延伸ブロー成形し、胴部平均肉厚250μm、内容積1Lのボトルとし、引き続いて160℃に設定した金型内で圧縮緊張下、10秒間ヒートセットしてボトルを作成した。これらを連続で1000本のボトルを作成したが、成形金型、ボトル表面にオリゴマーによる汚染は認められなかった。また、ボトルの成形性、ガスバリア性、耐熱性ともに良好であった。得られたボトルの評価結果等を表1に示す。
【0031】
実施例2、3、比較例1、3
ポリエステル(A)のIPAの共重合割合、原料IPAアルカリ金属化合物の種類とその含有量、ポリエステル(A)とポリエステル(B)との混合割合を表1に示すように変えた以外には、実施例1に準じた方法でポリエステルを製造し、ボトルを作製した。得られたボトルの評価結果等を表1に示す。
【0032】
実施例4、5、比較例2
ポリエステル(A)の共重合割合、原料IPA中アルカリ金属化合物の種類を表1に示すように変え、ポリエステル(A)を実施例1に準じた方法で固相重合し、ポリエステル(B)を混合せず、ポリエステル(A)のみを成形に供した。表1には、固相重合後のポリエステル(A)の特性値、および得られたボトルの評価結果等を示す。
【0033】
実施例6
実施例1と同様にして、IPAに水酸化ナトリウムをナトリウム原子として1.5質量ppm含有させた。このIPA33.2Kg、テレフタル酸ジメチル(DMT)9.7Kg、BD45.1Kg(IPA、DMTに対してモル比2)を重合反応器に仕込み、触媒として、テトラブチルチタネート(TBT)が酸成分1molに対し1×10−4molとなる量(8.5g)溶解したBD溶液1Kg投入し、常圧下150℃で1時間、および3時間で250℃まで昇温し、エステル化反応、エステル交換反応を行った。得られたエステル化物に、触媒としてリン酸トリエチルを酸成分1molに対し、0.5×10−4molとなる量(23g)投入し、245℃で2時間、減圧下で重縮合反応を行い、ポリエステル(A)を得た。得られたポリエステル(A)は、極限粘度が0.85、IPAの共重合割合が79.2mol%、Tgが66℃であった。ポリエステル(A)は実施例1と同様にして真空乾燥を行ったが、ブロッキング等は特に見られなかった。さらに、実施例1と同様にしてポリエステル(B)を得、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを混合してプレフォームを成形した。さらに実施例1と同様にボトルを作成した。得られたボトルの評価結果等を表1に示す。
【0034】
実施例7、比較例4
ポリエステル(A)のIPAの共重合割合、原料IPAアルカリ金属化合物の種類とその含有量、ポリエステル(A)とポリエステル(B)との混合割合を表1に示すように変えた以外には、実施例6に準じた方法でボトルを作製した。得られたボトルの評価結果等を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例1〜7ではいずれも良好なポリエステルが得られ、性能にも問題は生じなかった。
比較例1では、原料IPA中のナトリウム含有量が少なすぎるため、ポリエステル(A)のDEG共重合割合が増加し、Tgが低下したため、このチップを乾燥させたところ、ブロッキングが生じた。また、ボトルの耐熱性が低下した。
比較例2では、ポリエステル(A)のIPAの共重合割合が少なすぎるため、ボトルのガスバリア性が低下した。
比較例3では、原料IPA中のナトリウム含有量が多すぎるため、DEG共重合割合が低くなりすぎ、ボトル成形時にオリゴマーによる成形金型の汚染が発生した。また、ポリエステル(A)の極限粘度がやや低くなったため、ボトル成形不良がやや認められた。
比較例4では、原料IPA中のナトリウム含有量が少なすぎるため、重合時にTHFが多量に発生し、ポリエステル(A)が所望の粘度まで到達しなかったため、ボトル成形不良が多発した。
【0037】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、オリゴマーによる成形金型の汚染が少なく、かつ、ガスバリア性、耐熱性に優れたポリエステルが得られ、各種のシート、フィルム、容器、特に、炭酸飲料、果汁飲料、液体調味料、食用油、酒、ワイン用などの容器や、医療品用容器等に用いることができる。
Claims (2)
- 酸成分としてイソフタル酸を4mol%以上含有し、エチレングリコールまたは1,4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルを製造するに際し、原料としてアルカリ金属化合物をアルカリ金属原子として1〜10質量ppm含有するイソフタル酸を用いることを特徴とするポリエステルの製造方法。
- エステル化反応工程または重縮合工程において、触媒としてリン化合物を添加することを特徴とする請求項1記載のポリエステルの製造方法。
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