JP2004323593A - フッ素樹脂粉体の改質方法及びフッ素樹脂粉体 - Google Patents
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Abstract
【課題】特殊な原料を使用することなく濡れ性及び接着性が改善された状態にフッ素樹脂粉体を改質する。
【解決手段】フッ素樹脂粉体20にプラズマ処理を施すことにより、その表面を改質する。プラズマ処理装置11のチャンバー12内に設けられた下部電極18上にフッ素樹脂粉体20が置かれた状態でプラズマ処理が行われる。プラズマ処理はアルゴン及び水素の混合ガスの存在下において行われる。摺動特性を高める塗膜を形成する塗料に添加する目的の場合は、プラズマ処理処理を行うフッ素樹脂粉体20は平均1次粒径が5μm以下が好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】フッ素樹脂粉体20にプラズマ処理を施すことにより、その表面を改質する。プラズマ処理装置11のチャンバー12内に設けられた下部電極18上にフッ素樹脂粉体20が置かれた状態でプラズマ処理が行われる。プラズマ処理はアルゴン及び水素の混合ガスの存在下において行われる。摺動特性を高める塗膜を形成する塗料に添加する目的の場合は、プラズマ処理処理を行うフッ素樹脂粉体20は平均1次粒径が5μm以下が好ましい。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素樹脂粉体の改質方法及びフッ素樹脂粉体に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ素樹脂は耐熱性、耐薬品性、耐候性、摺動性、撥水撥油性、電気特性に優れているが、その反面、フッ素樹脂はその特徴である難接着性のため、他の材料との複合化が困難である。また、フッ素樹脂に他の材料を被覆させるには、接着剤を介して行う必要があるが、この接着剤との密着性も悪く、そのためフッ素樹脂側の接着表面を改質して接着性を高める試みがなされている。
【0003】
フッ素樹脂の表面改質方法として、フッ化オレフィン重合体成形物を水素の低温プラズマで処理する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。成形物としてはフィルム、シートあるいはガラスクロスを補強材としたシート、テープ等が挙げられている。また、充填剤含有フッ素樹脂成形品をアンモニア及びアルゴン混合ガス雰囲気中で高周波スパッタエッチング処理する方法も提案されている(特許文献2参照)。また、融点が調製されていない重合上がりのフッ素樹脂の粉体原料に、所定の雰囲気及び温度の下で所定の照射線量の電離性放射線を照射して形成された改質フッ素樹脂が提案されている(特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平2−127442号公報(2頁)
【特許文献2】
特公平3−58375号公報(2頁)
【特許文献3】
特開2002−114851号公報(明細書の段落[0007]〜[0012])
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1及び特許文献2に開示されたものはフッ素樹脂成形品(成形体)の表面改質に関するもので、フッ素樹脂の粉体の改質に関しては何ら記載されていない。しかし、成形品になってから表面改質を行うのでは、フッ素樹脂原料を購入して成形加工を行う業者が成形品にいちいち表面改質処理を行う必要があり、生産性が低下するという問題がある。また、フッ素樹脂の粉体を塗料や合成樹脂等に混入する使用方法がとれないという問題がある。
【0006】
一方、特許文献3に記載された方法では、フッ素樹脂の粉体原料として特殊な原料(融点が調製されていない重合上がりのフッ素樹脂の粉体原料)を使用する必要がある。また、改質されたフッ素樹脂粉体の使用方法もフッ素樹脂粉体を成形して使用することにあり、フッ素樹脂の粉体を塗料等に混入して使用することに関しては記載されていない。
【0007】
本発明は前記の問題に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は、特殊な原料を使用することなく濡れ性及び接着性が改善された状態にフッ素樹脂粉体を改質することができるフッ素樹脂粉体の改質方法を提供することにある。また、第2の目的は濡れ性及び接着性の改善されたフッ素樹脂粉末を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記第1の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、フッ素樹脂の粉体原料にプラズマ処理を施す。この発明では、特殊なフッ素樹脂の粉体原料を使用せずに市販のフッ素樹脂の粉体原料を使用して、簡単にフッ素樹脂粉体の表面を濡れ性及び接着性が改善された状態に改質することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記プラズマ処理はアルゴン及び水素の混合ガスの存在下において行われる。この発明では、雰囲気ガスが他のガス(例えば、酸素やアルゴン単独)の場合に比較して、フッ素樹脂粉体の表面の改質効果が向上する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記フッ素樹脂粉体は平均1次粒径が5μm以下である。この発明では、摺動特性を高める塗膜を形成する塗料に添加するのに適した平均1次粒径のフッ素樹脂粉体の改質に好適となる。
【0011】
第2の目的を達成するため、請求項4に記載の発明のフッ素樹脂粉体は、請求項1〜請求項3のいずれ一項に記載の改質方法を施すことにより製造されたものである。この発明のフッ素樹脂粉体はその表面の濡れ性及び接着性が改善された状態に改質されている。従って、フッ素樹脂粉体を合成樹脂、ゴム、エラストマー、塗料、インキ、オイル、グリスに添加した場合、それらの耐熱性、耐薬品性、耐候性、摺動性、撥水撥油性、電気特性等の性能が、改質されていないフッ素樹脂粉体を添加した場合に比較して向上する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を説明する。本発明はフッ素樹脂粉体にプラズマ処理を施すことにより、その表面を改質するフッ素樹脂粉体の改質方法及び前記処理により得られたフッ素樹脂粉体である。
【0013】
フッ素樹脂としては、分子内にフッ素原子を含む粉体(粉末)であればよい。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とその変性物、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体(TFE/VdF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、クロロトリフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体(CTFE/VdF)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニル(PVF)等又はこれらの任意の混合物が挙げられる。中でもPTFE及びPFAが好ましい。
【0014】
プラズマ処理に使用するフッ素樹脂粉体は市販品で差し支えない。使用するフッ素樹脂粉体の1次粒子径は特に限定されないが、塗料に添加して摺動性向上を目的に使用する場合は、5μm以下が好ましい。また、粉体塗装に使用する場合は、5〜500μmの範囲が好ましい。
【0015】
プラズマ処理は雰囲気ガスとして、例えば、酸素(O2)ガス、アルゴン(Ar)ガス、アルゴン(Ar)及び水素(H2)の混合ガス、エタノールガス等が使用されるが、Ar及びH2の混合ガスが好ましい。Ar及びH2の混合比は特に限定されないが、H2の混合比が5vol%(以下、単に%と表示)未満では処理時間が長くなるため、5%以上が好ましい。また、H2100%でも可能であるが、20%を超えると防爆対策が必要となるため、H2の混合比は5〜20%が好ましい。
【0016】
プラズマ処理装置としては例えば図1に示す構成のものが使用される。図1はプラズマ処理装置の模式構成図を示す。図1に示すように、プラズマ処理装置11は、チャンバー12と、マスフローコントローラ13を介してチャンバー12に接続された処理ガスボンベ14と、コンダクタンスバルブ15を介してチャンバー12に接続された真空ポンプ16とを備えている。チャンバー12内には上部電極17及び下部電極18が配設されている。上部電極17及び下部電極18は対向して配置され。下部電極18はその上面にプラズマ処理を施す試料を載置可能に平面状に形成されている。上部電極17は接地され、下部電極18は高周波発振器19に接続されている。
【0017】
プラズマ処理は次の手順で行われる。先ずチャンバー12の図示しない蓋を開けて処理対象物であるフッ素樹脂粉体20を下部電極18上に置く。フッ素樹脂粉体20をあまり厚く置くと処理の不均一を招くので、2〜3mm程度までの厚さで均一に下部電極18上に広げるように置くのが良い。
【0018】
次にチャンバー12の蓋を閉め、真空ポンプ16で真空引き(減圧)を行う。ある程度減圧になるまではフッ素樹脂粉体20が舞い上がらないようにゆっくり排気する。チャンバー12内が所定の減圧になったらマスフローコントローラ13を使用し、処理用ガスを一定流量でチャンバー12内に導入する。この際、真空ポンプ16による排気は継続された状態である。
【0019】
次にチャンバー12と真空ポンプ16との間に配設されたコンダクタンスバルブ15を制御してチャンバー12内の真空度(減圧度)を処理条件に合わせる。次に高周波発振器19を駆動させて下部電極18に高周波を印加し、チャンバー12内の反応ガスをプラズマ化してフッ素樹脂粉体20と反応させる。
【0020】
所定時間処理を行った後、処理ガス導入、高周波印加及び真空排気を停止する。次にチャンバー12内を大気圧に戻した後、蓋を開けてフッ素樹脂粉体20を取り出す。チャンバー12内を大気圧に戻す際も、フッ素樹脂粉体20が舞い上がらないように、ゆっくり大気圧に戻す。以上によりフッ素樹脂粉体20のプラズマ処理が完了する。
【0021】
以下、実施例及び比較例等によりさらに詳しく説明する。
<プラズマ処理条件の検討>
プラズマ処理を行う際の処理ガス及び処理時間について先ず検討を行った。フッ素樹脂粉体をプラズマ処理する代わりに、PTFE製シート(厚さ1mm)を使用し、前記プラズマ処理装置11を用いて下記条件下で処理した。
【0022】
i 上部電極:550×650mm硬質アルミ製
ii 下部電極:550×650mm硬質アルミ製
iii 電極間距離:80mm
iv 高周波発生電源:13.56MHz
v 印加電力:1000W
vi 雰囲気圧:20Pa
viiガス量:300ml/min
viii 処理時間:15分
処理ガスとして、O2ガス、Arガス、Ar/H2混合ガス、エタノールガスを使用してそれぞれ処理を行った。処理後のPTFE製シートの表面における接触角を測定した。
【0023】
<接触角測定条件>
協和界面化学(株)製の接触角計CA−Xを用いて水及び種々の試薬との接触角を測定した。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
表1から、全てのガスにおいて、未処理の試料の接触角と、処理後の試料の接触角とが異なり、PTFEの表面が改質されたことが確認された。中でも、Ar/H2混合ガス及びエタノールガスにおいて、水及び種々の試薬に対する接触角が小さくなり、濡れ易くなった。即ち、処理ガスとしてはAr/H2混合ガス及びエタノールガスが有効であった。
【0025】
次に処理ガスとして効果の大きかったAr/H2混合ガス及びエタノールガスについて、処理時間の影響を検討した。前記プラズマ処理条件のうち処理時間以外は同じにして、処理時間を変更して処理を行った。処理後の試料(PTFE製シート)の表面における接触角を水及びNMP(N−メチル−2−ピロリドン)について前記と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
表2から、処理時間が長い方が接触角が小さくなり、Ar/H2混合ガスの方がエタノールガスに比較して短時間で改質が可能であることが判明した。尚、接触角は目視読取りであることから表1と表2のエタノールでの水の接触角(表1では42°、表2では41°)に差を生じているが、問題となる程のものではない。
【0027】
次にAr/H2混合ガス中のH2の量の影響を検討した。処理ガスの検討を行った前記プラズマ処理条件と同じ条件で、処理ガスとしてH2の量の異なるAr/H2混合ガスを使用して処理を行った。処理後の試料(PTFE製シート)の表面における接触角を水及びNMP(N−メチル−2−ピロリドン)について前記と同様にして測定した。結果を表3に示す。
【0028】
【表3】
表3から、H2の混合比が5%以上で処理効果が高く、5%以上の場合、10%、20%とH2の混合比を高めても効果はさほど変わらないことが分かる。しかし、H2の混合比が20%を超えると、爆発の虞があり、真空ポンプ16側で窒素(N2)ガスで希釈するとともに防爆対策が必要になる。従って、H2の混合比は5〜20%が好ましい。
【0029】
<フッ素樹脂粉体(粉末)へのプラズマ処理>
前記プラズマ処理装置11を用いて、市販のPTFE粉体について前記の手順及び前記i〜viiiの処理条件でプラズマ処理を行った。PTFE粉体として1次平均粒径が0.1μm、1μm及び5μmのものを使用した。
【0030】
プラズマ処理を行ったPTFE粉体及び未処理のPTFE粉体について走査電子顕微鏡で観察した。図3(a)に未処理品の30000倍の走査電子顕微鏡写真を、図3(b)に処理品の30000倍の走査電子顕微鏡写真を示す。また、図4(a)に未処理品の100000倍の走査電子顕微鏡写真を、図4(b)に処理品の100000倍の走査電子顕微鏡写真を示す。処理品は未処理品と形状が異なる状態となっており、表面が改質されたことが確認された。具体的には、未処理品が球形に近かったのに対して、処理品では球の表面が不規則に削られて球形ではなくなっていた。
【0031】
<フッ素樹脂粉体改質品の効果の確認>
実施例1
ポリアミドイミドワニスに上記プラズマ処理法(Ar/H2混合ガス)にて表面改質したPTFE粉体(1次平均粒径0.1μm)を配合し、良く攪拌した後、三本ロールミルを通し、塗料を作製した。この塗料をアルミニウム合金A390(アルミニウム脱脂済み)の基材(プレート)に膜厚が25μmとなるようにエアースプレーにてコーティングし、200℃×60分の条件で焼成し、硬化させて樹脂コーティング層を形成した。被膜組成は、ポリアミドイミド配合量60wt%、改質PTFE配合量40wt%。
【0032】
実施例2
表面改質したPTFE粉体として1次平均粒径が1μmのものを使用した点を除いて実施例1と同じ条件で、アルミニウム合金A390(アルミニウム脱脂済み)の基材上に膜厚が25μmの樹脂コーティング層を形成した。
【0033】
実施例3
表面改質したPTFE粉体として1次平均粒径が5μmのものを使用した点を除いて実施例1と同じ条件で、アルミニウム合金A390(アルミニウム脱脂済み)の基材上に膜厚が25μmの樹脂コーティング層を形成した。
【0034】
比較例1
表面改質したPTFE粉体に代えて、1次平均粒径が0.1μmの未改質のPTFE粉体を使用した点を除いて実施例1と同じ条件で、アルミニウム合金A390(アルミニウム脱脂済み)の基材上に膜厚が25μmの樹脂コーティング層を形成した。
【0035】
比較例2
表面改質したPTFE粉体に代えて、1次平均粒径が1μmの未改質のPTFE粉体を使用した点を除いて実施例2と同じ条件で、アルミニウム合金A390(アルミニウム脱脂済み)の基材上に膜厚が25μmの樹脂コーティング層を形成した。
【0036】
比較例3
表面改質したPTFE粉体に代えて、1次平均粒径が5μmの未改質のPTFE粉体を使用した点を除いて実施例3と同じ条件で、アルミニウム合金A390(アルミニウム脱脂済み)の基材上に膜厚が25μmの樹脂コーティング層を形成した。
【0037】
(無潤滑焼き付き試験)
スラスト試験機を用いて、図2に示すように、基材30の樹脂コーティング層(図示せず)に相手材31としてのリングを、滑り速度:3.6m/sec、面圧:10MPa、相手材:SUJ2の条件で、潤滑油無しの無潤滑下で試験を行い、焼き付きまでの時間を測定した。結果を表4に示す。
【0038】
【表4】
表4から、実施例1〜3のいずれの場合も、比較例1〜3に比べて焼き付きまでの時間が長くなり、潤滑性能が向上することが確認された。
【0039】
この実施の形態では以下の効果を有する。
(1) フッ素樹脂の粉体原料にプラズマ処理を施すことによりフッ素樹脂粉体の表面を改質する。従って、特許文献3に開示された電離性放射線を照射する方法と異なり、特殊なフッ素樹脂の粉体原料を使用せずに市販のフッ素樹脂の粉体原料を使用して、簡単にフッ素樹脂粉体の表面を濡れ性及び接着性が改善された状態に改質することができる。そして、改質されたフッ素樹脂粉体を塗料に添加した場合、摺動性の向上を図ることができる。また、その耐熱性、耐薬品性、耐候性、撥水撥油性、電気特性等の性能の向上が期待できる。また、合成樹脂、ゴム、エラストマー、インキ、オイル、グリスに改質されたフッ素樹脂粉体を添加した場合、それらの耐熱性、耐薬品性、耐候性、摺動性、撥水撥油性、電気特性等の性能の向上が期待できる。
【0040】
(2) 前記プラズマ処理はアルゴン及び水素の混合ガスの存在下において行う場合、プラズマ処理を酸素、アルゴン単独、エタノールガス等の他のガス雰囲気で行った場合に比較して、フッ素樹脂粉体の表面の改質効果が向上する。
【0041】
(3) フッ素樹脂粉体は平均1次粒径が5μm以下であるため、摺動特性を高める塗膜を形成する塗料に添加するのに好適となる。
(4) アルゴン及び水素の混合ガス中の水素の量を5〜20vol%とすることにより、特別な防爆対策を行うことなくプラズマ処理を行うことができる。
【0042】
実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
○ プラズマ処理条件は前記に限らない。例えば、雰囲気圧は20Paに限らず、3〜150Pa程度の範囲で安定してプラズマを発生させることができる。
【0043】
○ 印加電力は1000Wに限らず、プラズマ処理条件にもよるが、上部電極17及び下部電極18が前記のサイズであれば、100〜3000W程度の範囲で十分使用できる。また、電極間距離は10〜200mmの範囲で安定して放電が可能である。さらに、上部電極17及び下部電極18のサイズは前記サイズに限らず、前記サイズより小さなサイズあるいは大きなサイズとしてもよい。
【0044】
○ 処理時間は処理を行うフッ素樹脂粉体の粒径にもよるが、あまり長時間行うと粉体自体が消滅するため、5〜60分程度が目安となる。
○ プラズマ処理装置11は平行平板タイプに限らず、他のタイプのプラズマ処理装置、例えばバレル式であってもよい。
【0045】
○ プラズマ処理をアルゴン及び水素の混合ガスの存在下において行う場合、アルゴン及び水素が所定の混合割合で充填された1本の処理ガスボンベ14を使用する構成に限らない。例えば、アルゴンガスボンベ及び水素ガスボンベをそれぞれマスフローコントローラ13を介してチャンバー12に接続し、各マスフローコントローラ13を調整してチャンバー12内に所定の混合割合のアルゴン及び水素の混合ガスを供給する構成としてもよい。この場合、アルゴン及び水素の混合ガスの混合割合を変更する際、いちいち所定の混合割合でガスが充填されたボンベを準備して交換する手間を省略することができ、変更が簡単になる。
【0046】
○ 前記実施の形態ではフッ素樹脂粉体に対してプラズマ処理を行う際に、フッ素樹脂粉体を下部電極18上に置いたままで処理を行ったが、プラズマ処理の途中でフッ素樹脂粉体をかき混ぜてもよい。この場合、下部電極18上に置くフッ素樹脂粉体の厚さを厚くしても処理の不均一を回避できる。
【0047】
以下の技術的思想(発明)は前記実施の形態から把握できる。
(1) 請求項2に記載の発明において、水素ガスの混合割合が5〜20vol%である。
【0048】
【発明の効果】
以上、詳述したように、請求項1〜請求項3に記載の発明によれば、特殊な原料を使用することなく濡れ性及び接着性が改善された状態にフッ素樹脂粉体を改質することができる。また、請求項4に記載の発明によれば、濡れ性及び接着性の改善されたフッ素樹脂粉末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プラズマ処理装置の模式構成図。
【図2】無潤滑状態での焼き付き試験方法を示す模式斜視図。
【図3】電子顕微鏡写真(30000倍)の図を示し、(a)は未処理のフッ素樹脂粉体の図、(b)はプラズマ処理されたフッ素樹脂粉体の図。
【図4】電子顕微鏡写真(100000倍)の図を示し、(a)は未処理のフッ素樹脂粉体の図、(b)はプラズマ処理されたフッ素樹脂粉体の図。
【符号の説明】
20…フッ素樹脂粉体。
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素樹脂粉体の改質方法及びフッ素樹脂粉体に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ素樹脂は耐熱性、耐薬品性、耐候性、摺動性、撥水撥油性、電気特性に優れているが、その反面、フッ素樹脂はその特徴である難接着性のため、他の材料との複合化が困難である。また、フッ素樹脂に他の材料を被覆させるには、接着剤を介して行う必要があるが、この接着剤との密着性も悪く、そのためフッ素樹脂側の接着表面を改質して接着性を高める試みがなされている。
【0003】
フッ素樹脂の表面改質方法として、フッ化オレフィン重合体成形物を水素の低温プラズマで処理する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。成形物としてはフィルム、シートあるいはガラスクロスを補強材としたシート、テープ等が挙げられている。また、充填剤含有フッ素樹脂成形品をアンモニア及びアルゴン混合ガス雰囲気中で高周波スパッタエッチング処理する方法も提案されている(特許文献2参照)。また、融点が調製されていない重合上がりのフッ素樹脂の粉体原料に、所定の雰囲気及び温度の下で所定の照射線量の電離性放射線を照射して形成された改質フッ素樹脂が提案されている(特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平2−127442号公報(2頁)
【特許文献2】
特公平3−58375号公報(2頁)
【特許文献3】
特開2002−114851号公報(明細書の段落[0007]〜[0012])
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1及び特許文献2に開示されたものはフッ素樹脂成形品(成形体)の表面改質に関するもので、フッ素樹脂の粉体の改質に関しては何ら記載されていない。しかし、成形品になってから表面改質を行うのでは、フッ素樹脂原料を購入して成形加工を行う業者が成形品にいちいち表面改質処理を行う必要があり、生産性が低下するという問題がある。また、フッ素樹脂の粉体を塗料や合成樹脂等に混入する使用方法がとれないという問題がある。
【0006】
一方、特許文献3に記載された方法では、フッ素樹脂の粉体原料として特殊な原料(融点が調製されていない重合上がりのフッ素樹脂の粉体原料)を使用する必要がある。また、改質されたフッ素樹脂粉体の使用方法もフッ素樹脂粉体を成形して使用することにあり、フッ素樹脂の粉体を塗料等に混入して使用することに関しては記載されていない。
【0007】
本発明は前記の問題に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は、特殊な原料を使用することなく濡れ性及び接着性が改善された状態にフッ素樹脂粉体を改質することができるフッ素樹脂粉体の改質方法を提供することにある。また、第2の目的は濡れ性及び接着性の改善されたフッ素樹脂粉末を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記第1の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、フッ素樹脂の粉体原料にプラズマ処理を施す。この発明では、特殊なフッ素樹脂の粉体原料を使用せずに市販のフッ素樹脂の粉体原料を使用して、簡単にフッ素樹脂粉体の表面を濡れ性及び接着性が改善された状態に改質することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記プラズマ処理はアルゴン及び水素の混合ガスの存在下において行われる。この発明では、雰囲気ガスが他のガス(例えば、酸素やアルゴン単独)の場合に比較して、フッ素樹脂粉体の表面の改質効果が向上する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記フッ素樹脂粉体は平均1次粒径が5μm以下である。この発明では、摺動特性を高める塗膜を形成する塗料に添加するのに適した平均1次粒径のフッ素樹脂粉体の改質に好適となる。
【0011】
第2の目的を達成するため、請求項4に記載の発明のフッ素樹脂粉体は、請求項1〜請求項3のいずれ一項に記載の改質方法を施すことにより製造されたものである。この発明のフッ素樹脂粉体はその表面の濡れ性及び接着性が改善された状態に改質されている。従って、フッ素樹脂粉体を合成樹脂、ゴム、エラストマー、塗料、インキ、オイル、グリスに添加した場合、それらの耐熱性、耐薬品性、耐候性、摺動性、撥水撥油性、電気特性等の性能が、改質されていないフッ素樹脂粉体を添加した場合に比較して向上する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を説明する。本発明はフッ素樹脂粉体にプラズマ処理を施すことにより、その表面を改質するフッ素樹脂粉体の改質方法及び前記処理により得られたフッ素樹脂粉体である。
【0013】
フッ素樹脂としては、分子内にフッ素原子を含む粉体(粉末)であればよい。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とその変性物、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体(TFE/VdF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、クロロトリフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体(CTFE/VdF)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニル(PVF)等又はこれらの任意の混合物が挙げられる。中でもPTFE及びPFAが好ましい。
【0014】
プラズマ処理に使用するフッ素樹脂粉体は市販品で差し支えない。使用するフッ素樹脂粉体の1次粒子径は特に限定されないが、塗料に添加して摺動性向上を目的に使用する場合は、5μm以下が好ましい。また、粉体塗装に使用する場合は、5〜500μmの範囲が好ましい。
【0015】
プラズマ処理は雰囲気ガスとして、例えば、酸素(O2)ガス、アルゴン(Ar)ガス、アルゴン(Ar)及び水素(H2)の混合ガス、エタノールガス等が使用されるが、Ar及びH2の混合ガスが好ましい。Ar及びH2の混合比は特に限定されないが、H2の混合比が5vol%(以下、単に%と表示)未満では処理時間が長くなるため、5%以上が好ましい。また、H2100%でも可能であるが、20%を超えると防爆対策が必要となるため、H2の混合比は5〜20%が好ましい。
【0016】
プラズマ処理装置としては例えば図1に示す構成のものが使用される。図1はプラズマ処理装置の模式構成図を示す。図1に示すように、プラズマ処理装置11は、チャンバー12と、マスフローコントローラ13を介してチャンバー12に接続された処理ガスボンベ14と、コンダクタンスバルブ15を介してチャンバー12に接続された真空ポンプ16とを備えている。チャンバー12内には上部電極17及び下部電極18が配設されている。上部電極17及び下部電極18は対向して配置され。下部電極18はその上面にプラズマ処理を施す試料を載置可能に平面状に形成されている。上部電極17は接地され、下部電極18は高周波発振器19に接続されている。
【0017】
プラズマ処理は次の手順で行われる。先ずチャンバー12の図示しない蓋を開けて処理対象物であるフッ素樹脂粉体20を下部電極18上に置く。フッ素樹脂粉体20をあまり厚く置くと処理の不均一を招くので、2〜3mm程度までの厚さで均一に下部電極18上に広げるように置くのが良い。
【0018】
次にチャンバー12の蓋を閉め、真空ポンプ16で真空引き(減圧)を行う。ある程度減圧になるまではフッ素樹脂粉体20が舞い上がらないようにゆっくり排気する。チャンバー12内が所定の減圧になったらマスフローコントローラ13を使用し、処理用ガスを一定流量でチャンバー12内に導入する。この際、真空ポンプ16による排気は継続された状態である。
【0019】
次にチャンバー12と真空ポンプ16との間に配設されたコンダクタンスバルブ15を制御してチャンバー12内の真空度(減圧度)を処理条件に合わせる。次に高周波発振器19を駆動させて下部電極18に高周波を印加し、チャンバー12内の反応ガスをプラズマ化してフッ素樹脂粉体20と反応させる。
【0020】
所定時間処理を行った後、処理ガス導入、高周波印加及び真空排気を停止する。次にチャンバー12内を大気圧に戻した後、蓋を開けてフッ素樹脂粉体20を取り出す。チャンバー12内を大気圧に戻す際も、フッ素樹脂粉体20が舞い上がらないように、ゆっくり大気圧に戻す。以上によりフッ素樹脂粉体20のプラズマ処理が完了する。
【0021】
以下、実施例及び比較例等によりさらに詳しく説明する。
<プラズマ処理条件の検討>
プラズマ処理を行う際の処理ガス及び処理時間について先ず検討を行った。フッ素樹脂粉体をプラズマ処理する代わりに、PTFE製シート(厚さ1mm)を使用し、前記プラズマ処理装置11を用いて下記条件下で処理した。
【0022】
i 上部電極:550×650mm硬質アルミ製
ii 下部電極:550×650mm硬質アルミ製
iii 電極間距離:80mm
iv 高周波発生電源:13.56MHz
v 印加電力:1000W
vi 雰囲気圧:20Pa
viiガス量:300ml/min
viii 処理時間:15分
処理ガスとして、O2ガス、Arガス、Ar/H2混合ガス、エタノールガスを使用してそれぞれ処理を行った。処理後のPTFE製シートの表面における接触角を測定した。
【0023】
<接触角測定条件>
協和界面化学(株)製の接触角計CA−Xを用いて水及び種々の試薬との接触角を測定した。結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
表1から、全てのガスにおいて、未処理の試料の接触角と、処理後の試料の接触角とが異なり、PTFEの表面が改質されたことが確認された。中でも、Ar/H2混合ガス及びエタノールガスにおいて、水及び種々の試薬に対する接触角が小さくなり、濡れ易くなった。即ち、処理ガスとしてはAr/H2混合ガス及びエタノールガスが有効であった。
【0025】
次に処理ガスとして効果の大きかったAr/H2混合ガス及びエタノールガスについて、処理時間の影響を検討した。前記プラズマ処理条件のうち処理時間以外は同じにして、処理時間を変更して処理を行った。処理後の試料(PTFE製シート)の表面における接触角を水及びNMP(N−メチル−2−ピロリドン)について前記と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
表2から、処理時間が長い方が接触角が小さくなり、Ar/H2混合ガスの方がエタノールガスに比較して短時間で改質が可能であることが判明した。尚、接触角は目視読取りであることから表1と表2のエタノールでの水の接触角(表1では42°、表2では41°)に差を生じているが、問題となる程のものではない。
【0027】
次にAr/H2混合ガス中のH2の量の影響を検討した。処理ガスの検討を行った前記プラズマ処理条件と同じ条件で、処理ガスとしてH2の量の異なるAr/H2混合ガスを使用して処理を行った。処理後の試料(PTFE製シート)の表面における接触角を水及びNMP(N−メチル−2−ピロリドン)について前記と同様にして測定した。結果を表3に示す。
【0028】
【表3】
表3から、H2の混合比が5%以上で処理効果が高く、5%以上の場合、10%、20%とH2の混合比を高めても効果はさほど変わらないことが分かる。しかし、H2の混合比が20%を超えると、爆発の虞があり、真空ポンプ16側で窒素(N2)ガスで希釈するとともに防爆対策が必要になる。従って、H2の混合比は5〜20%が好ましい。
【0029】
<フッ素樹脂粉体(粉末)へのプラズマ処理>
前記プラズマ処理装置11を用いて、市販のPTFE粉体について前記の手順及び前記i〜viiiの処理条件でプラズマ処理を行った。PTFE粉体として1次平均粒径が0.1μm、1μm及び5μmのものを使用した。
【0030】
プラズマ処理を行ったPTFE粉体及び未処理のPTFE粉体について走査電子顕微鏡で観察した。図3(a)に未処理品の30000倍の走査電子顕微鏡写真を、図3(b)に処理品の30000倍の走査電子顕微鏡写真を示す。また、図4(a)に未処理品の100000倍の走査電子顕微鏡写真を、図4(b)に処理品の100000倍の走査電子顕微鏡写真を示す。処理品は未処理品と形状が異なる状態となっており、表面が改質されたことが確認された。具体的には、未処理品が球形に近かったのに対して、処理品では球の表面が不規則に削られて球形ではなくなっていた。
【0031】
<フッ素樹脂粉体改質品の効果の確認>
実施例1
ポリアミドイミドワニスに上記プラズマ処理法(Ar/H2混合ガス)にて表面改質したPTFE粉体(1次平均粒径0.1μm)を配合し、良く攪拌した後、三本ロールミルを通し、塗料を作製した。この塗料をアルミニウム合金A390(アルミニウム脱脂済み)の基材(プレート)に膜厚が25μmとなるようにエアースプレーにてコーティングし、200℃×60分の条件で焼成し、硬化させて樹脂コーティング層を形成した。被膜組成は、ポリアミドイミド配合量60wt%、改質PTFE配合量40wt%。
【0032】
実施例2
表面改質したPTFE粉体として1次平均粒径が1μmのものを使用した点を除いて実施例1と同じ条件で、アルミニウム合金A390(アルミニウム脱脂済み)の基材上に膜厚が25μmの樹脂コーティング層を形成した。
【0033】
実施例3
表面改質したPTFE粉体として1次平均粒径が5μmのものを使用した点を除いて実施例1と同じ条件で、アルミニウム合金A390(アルミニウム脱脂済み)の基材上に膜厚が25μmの樹脂コーティング層を形成した。
【0034】
比較例1
表面改質したPTFE粉体に代えて、1次平均粒径が0.1μmの未改質のPTFE粉体を使用した点を除いて実施例1と同じ条件で、アルミニウム合金A390(アルミニウム脱脂済み)の基材上に膜厚が25μmの樹脂コーティング層を形成した。
【0035】
比較例2
表面改質したPTFE粉体に代えて、1次平均粒径が1μmの未改質のPTFE粉体を使用した点を除いて実施例2と同じ条件で、アルミニウム合金A390(アルミニウム脱脂済み)の基材上に膜厚が25μmの樹脂コーティング層を形成した。
【0036】
比較例3
表面改質したPTFE粉体に代えて、1次平均粒径が5μmの未改質のPTFE粉体を使用した点を除いて実施例3と同じ条件で、アルミニウム合金A390(アルミニウム脱脂済み)の基材上に膜厚が25μmの樹脂コーティング層を形成した。
【0037】
(無潤滑焼き付き試験)
スラスト試験機を用いて、図2に示すように、基材30の樹脂コーティング層(図示せず)に相手材31としてのリングを、滑り速度:3.6m/sec、面圧:10MPa、相手材:SUJ2の条件で、潤滑油無しの無潤滑下で試験を行い、焼き付きまでの時間を測定した。結果を表4に示す。
【0038】
【表4】
表4から、実施例1〜3のいずれの場合も、比較例1〜3に比べて焼き付きまでの時間が長くなり、潤滑性能が向上することが確認された。
【0039】
この実施の形態では以下の効果を有する。
(1) フッ素樹脂の粉体原料にプラズマ処理を施すことによりフッ素樹脂粉体の表面を改質する。従って、特許文献3に開示された電離性放射線を照射する方法と異なり、特殊なフッ素樹脂の粉体原料を使用せずに市販のフッ素樹脂の粉体原料を使用して、簡単にフッ素樹脂粉体の表面を濡れ性及び接着性が改善された状態に改質することができる。そして、改質されたフッ素樹脂粉体を塗料に添加した場合、摺動性の向上を図ることができる。また、その耐熱性、耐薬品性、耐候性、撥水撥油性、電気特性等の性能の向上が期待できる。また、合成樹脂、ゴム、エラストマー、インキ、オイル、グリスに改質されたフッ素樹脂粉体を添加した場合、それらの耐熱性、耐薬品性、耐候性、摺動性、撥水撥油性、電気特性等の性能の向上が期待できる。
【0040】
(2) 前記プラズマ処理はアルゴン及び水素の混合ガスの存在下において行う場合、プラズマ処理を酸素、アルゴン単独、エタノールガス等の他のガス雰囲気で行った場合に比較して、フッ素樹脂粉体の表面の改質効果が向上する。
【0041】
(3) フッ素樹脂粉体は平均1次粒径が5μm以下であるため、摺動特性を高める塗膜を形成する塗料に添加するのに好適となる。
(4) アルゴン及び水素の混合ガス中の水素の量を5〜20vol%とすることにより、特別な防爆対策を行うことなくプラズマ処理を行うことができる。
【0042】
実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
○ プラズマ処理条件は前記に限らない。例えば、雰囲気圧は20Paに限らず、3〜150Pa程度の範囲で安定してプラズマを発生させることができる。
【0043】
○ 印加電力は1000Wに限らず、プラズマ処理条件にもよるが、上部電極17及び下部電極18が前記のサイズであれば、100〜3000W程度の範囲で十分使用できる。また、電極間距離は10〜200mmの範囲で安定して放電が可能である。さらに、上部電極17及び下部電極18のサイズは前記サイズに限らず、前記サイズより小さなサイズあるいは大きなサイズとしてもよい。
【0044】
○ 処理時間は処理を行うフッ素樹脂粉体の粒径にもよるが、あまり長時間行うと粉体自体が消滅するため、5〜60分程度が目安となる。
○ プラズマ処理装置11は平行平板タイプに限らず、他のタイプのプラズマ処理装置、例えばバレル式であってもよい。
【0045】
○ プラズマ処理をアルゴン及び水素の混合ガスの存在下において行う場合、アルゴン及び水素が所定の混合割合で充填された1本の処理ガスボンベ14を使用する構成に限らない。例えば、アルゴンガスボンベ及び水素ガスボンベをそれぞれマスフローコントローラ13を介してチャンバー12に接続し、各マスフローコントローラ13を調整してチャンバー12内に所定の混合割合のアルゴン及び水素の混合ガスを供給する構成としてもよい。この場合、アルゴン及び水素の混合ガスの混合割合を変更する際、いちいち所定の混合割合でガスが充填されたボンベを準備して交換する手間を省略することができ、変更が簡単になる。
【0046】
○ 前記実施の形態ではフッ素樹脂粉体に対してプラズマ処理を行う際に、フッ素樹脂粉体を下部電極18上に置いたままで処理を行ったが、プラズマ処理の途中でフッ素樹脂粉体をかき混ぜてもよい。この場合、下部電極18上に置くフッ素樹脂粉体の厚さを厚くしても処理の不均一を回避できる。
【0047】
以下の技術的思想(発明)は前記実施の形態から把握できる。
(1) 請求項2に記載の発明において、水素ガスの混合割合が5〜20vol%である。
【0048】
【発明の効果】
以上、詳述したように、請求項1〜請求項3に記載の発明によれば、特殊な原料を使用することなく濡れ性及び接着性が改善された状態にフッ素樹脂粉体を改質することができる。また、請求項4に記載の発明によれば、濡れ性及び接着性の改善されたフッ素樹脂粉末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プラズマ処理装置の模式構成図。
【図2】無潤滑状態での焼き付き試験方法を示す模式斜視図。
【図3】電子顕微鏡写真(30000倍)の図を示し、(a)は未処理のフッ素樹脂粉体の図、(b)はプラズマ処理されたフッ素樹脂粉体の図。
【図4】電子顕微鏡写真(100000倍)の図を示し、(a)は未処理のフッ素樹脂粉体の図、(b)はプラズマ処理されたフッ素樹脂粉体の図。
【符号の説明】
20…フッ素樹脂粉体。
Claims (4)
- フッ素樹脂の粉体原料にプラズマ処理を施すフッ素樹脂粉体の改質方法。
- 前記プラズマ処理はアルゴン及び水素の混合ガスの存在下において行われる請求項1に記載のフッ素樹脂粉体の改質方法。
- 前記フッ素樹脂粉体は平均1次粒径が5μm以下である請求項1又は請求項2に記載のフッ素樹脂粉体の改質方法。
- 請求項1〜請求項3のいずれ一項に記載の改質方法を施すことにより製造されたフッ素樹脂粉体。
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