JP2004321863A - 汚染土壌の原位置浄化装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】汚染土壌の浄化期間を短縮する
【解決手段】汚染物質によって汚染された汚染域4近傍に設けた注水井6からスクリーン6Bを介して水を注入し、上記汚染域4を経由して流れるように注入水をスクリーン7Bを介して揚水井7で揚水し、上記揚水井7から汲み上げた地下水を水処理システム8によって浄化する汚染土壌の原位置浄化装置において、上記注入水に滅菌剤を混入する滅菌剤混入装置を設けることにより、上記各スクリ−ンに微生物が繁殖しないようにした。
【選択図】 図1
【解決手段】汚染物質によって汚染された汚染域4近傍に設けた注水井6からスクリーン6Bを介して水を注入し、上記汚染域4を経由して流れるように注入水をスクリーン7Bを介して揚水井7で揚水し、上記揚水井7から汲み上げた地下水を水処理システム8によって浄化する汚染土壌の原位置浄化装置において、上記注入水に滅菌剤を混入する滅菌剤混入装置を設けることにより、上記各スクリ−ンに微生物が繁殖しないようにした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は汚染土壌の原位置浄化装置に関し、より詳細には、浄化期間を短縮することを可能にした汚染土壌の原位置浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
廃棄物の不法投棄現場、埋立処分場、または廃棄物によって汚染された土壌や地下水汚染現場の浄化方法には、汚染土壌を掘削撤去して良質土により埋め戻す置換法と、例えば、汚染土壌の周囲に所要数の井戸を掘削して汚染された地下水をポンプで汲み上げ浄化する原位置浄化方法がある。置換法は、汚染域の深度が浅い場合には有効な手段となるが、汚染域の深度が深くなる(例えば深度が10m程度)と、掘削量が膨大になりコスト高となる。従って、汚染域の深度が深く、汚染域が帯水層にある場合には、上記のような原位置浄化方法が特に有効となるが、もちろん深度が浅い場合にも原位置浄化方法は適用できる。
【0003】
米国特許第4,435,292号(特許文献1)に示された原位置浄化方法は、注水井から高圧で注水し、揚水井から高い真空で汚染水を排出して、水処理システムで汚染物質を除去するようにしたものである。この従来技術は、処理水を循環使用することにより、注入する清浄水の使用量を削減するとともに、注入媒体として、溶媒、または窒素等の不活性ガス、または汚染物質を浄化する反応性ガスを使用することによって、浄化することができるようにしたものである。
【0004】
また、特公平6−96143号(特許文献2)に示された原位置浄化方法は、注水井及び揚水井からの注水と汲み上げを、間欠的に行う。これにより、注水及び汲み上げの停止期間中に地下水を静止させて、土壌粒子の小間隙中に滞留する汚染物質を、汚染物質の自重により移動させて、地下水流内に誘出させることにより、汚染物質の浄化を促進するようにしたものである。
【0005】
このような汚染土壌の原位置浄化方法または装置において、特許文献ではないが、図2に示すような原位置浄化装置がある。透水層1の地下水位2の下部に有る帯水層3には、廃棄物または汚染土壌からなる汚染域4が含まれている。透水層1の下部に有る難透水層(不透水層とも云う)5の標高を測定し、難透水層5の標高の高い側に所要数の注水井6を掘削して水を注入する。この注入水は標高の低い側に流れ、汚染域4を通過する際に、汚染域4から汚染物質を溶出する。難透水層5の標高の低い側に所要数の揚水井7を掘削し、汚染物質が溶出した汚染水をポンプ7Aで地上に汲み上げ、水処理システム8で汚染物質を除去し、汚染物質が除去された処理水を、再び注水井6に注入し循環している。注水井6および揚水井7には、汚染域4の深度に対応する深さ位置に、編目状のスクリーン6B、7Bが設けられている。スクリーン6Bは、注入水を汚染域4近傍の土壌中に吐出するとともに、土壌が注水井6に侵入しないようにしている。また、スクリーン7Bは、汚染水を揚水井7に吸入するとともに、土壌が揚水井7に侵入しないようにしている。汚染域4、注水井6および揚水井7を囲む汚染土壌の外周を、難透水層5に達する深度の止水壁9、9で包囲し、地表面を表面遮水工10で覆い、汚染物質の周囲への漏出、及び雨水等の土壌中への浸透を防止している。
【0006】
【特許文献1】
米国特許第4,435,292号明細書
【特許文献2】
特公平6−96143号明細書
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1、2及び図2に示す従来技術は、微生物が注水井及び揚水井のスクリーンに付着して繁殖し、スクリ−ンが目詰まりを起こすため、数ヶ月で注水ができなくなることがあった。そのため、注水井及び揚水井の増設工事が必要となって、増設工事期間中は浄化作業が行えず、結果として浄化期間が長くなる不具合があった。
【0008】
また、上記特許文献2に示す従来技術は、地下水の静止中に、土壌粒子の小間隙中に滞留する汚染物質を、汚染物質の自重により移動させるものであるため、地下水流内への汚染物質の誘出に時間がかかり、注水及び汲み上げの停止期間が長くなって、結果として浄化期間が長くなる不具合があった。また、汚染物質の自重による移動を利用するため、汚染物質の浄化にも限度があった。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、注入水に滅菌剤を混入、またはスクリーンを滅菌性の部材にして、スクリ−ンに微生物が繁殖しないようにすることによって、スクリーンの目詰まりを防止し、浄化運転の停止期間を無くして、浄化期間を短縮することである。さらに、本発明の目的は、注入水に気体を混入して注入水を乱流にすることにより、汚染物質の上記注入水への溶出を促進させて、汚染物質の浄化を促進し、浄化期間を短縮することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、汚染物質によって汚染された汚染域近傍にスクリーンを介して注水する注水井を設けるとともに、上記注水井からの注入水が汚染域を経由するようにスクリーンを介して揚水する揚水井を設け、上記揚水井から汲み上げた地下水を、水処理システムによって浄化する汚染土壌の原位置浄化装置において、上記注入水に滅菌剤を混入する滅菌剤混入装置を設け、上記各スクリ−ンに微生物が繁殖しないようにしたことを特徴とする汚染土壌の原位置浄化装置である。
【0011】
請求項2の発明は、汚染物質によって汚染された汚染域近傍にスクリーンを介して注水する注水井を設けるとともに、上記注水井からの注入水が汚染域を経由するようにスクリーンを介して揚水する揚水井を設け、上記揚水井から汲み上げた地下水を、水処理システムによって浄化する汚染土壌の原位置浄化装置において、上記各スクリーンを滅菌性の部材にして、上記スクリ−ンに微生物が繁殖しないようにしたことを特徴とする汚染土壌の原位置浄化装置である。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1に記載した汚染土壌の原位置浄化装置において、上記滅菌剤として、次亜塩素酸ソーダ、塩素ガス、臭素ガスまたはオゾンガスのいずれかを用いることを特徴とする汚染土壌の原位置浄化装置である。
【0013】
請求項4の発明は、請求項2に記載した汚染土壌の原位置浄化装置において、上記滅菌性の部材として、銅または水不溶性の滅菌剤のコーティングを用いることを特徴とする汚染土壌の原位置浄化装置である。
【0014】
請求項5の発明は、汚染物質によって汚染された汚染域近傍に注水する注水井を設けるとともに、上記注水井からの注入水が汚染域を経由するように揚水井を設け、上記揚水井から汲み上げた地下水を、水処理システムによって浄化する汚染土壌の原位置浄化装置において、上記注入水に気体を混入して注入水を乱流にする気体混入装置を設け、上記汚染物質の上記注入水への溶出を促進させるようにしたことを特徴とする汚染土壌の原位置浄化装置である。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1から4、及び5のいずれかに記載した汚染土壌の原位置浄化装置において、上記注入水の注入を間欠的に行う間欠注入装置及び地下水の汲み上げを間欠的に行う間欠汲上装置を設けたことを特徴とする汚染土壌の原位置浄化装置である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、前記従来装置と同等部分については同一符号を付けて説明する。図1は、本発明の汚染土壌の原位置浄化装置の施工例を示す土壌の鉛直断面図である。
【0017】
透水層1の地下水位2の下部に有る帯水層3には、廃棄物または汚染土壌からなる汚染域4が含まれている。汚染域4は、地表から10m程度の深度に形成されている。透水層1は、透水係数が10 − 2 〜10− 4 cm/秒程度の、比較的地下水の流速が早い砂質土からなる層である。透水層1の下部に有る難透水層
(不透水層とも云う)5の標高を測定し、難透水層5の標高の高い側に所要数の注水井6を掘削し、この注水井6に水を注入する。難透水層5は、透水係数が10− 6 〜10− 7cm/秒程度の、沖積粘土層又は洪積粘土層からなる層であ
る。難透水層5の標高の低い側に所要数の揚水井7を掘削し、汚染物質が溶出した汚染水を揚水井7を通してポンプで地上に汲み上げ、地上に設置した水処理システム8で、汚染水から汚染物質を除去する。
【0018】
注水井6、揚水井7には汚染域4の深度に対応する深さ位置に、編目状のスクリーン6B、7Bが設けられている。スクリーン6Bは、注入水を土壌中に吐出するとともに、土壌が注水井6に侵入しないようにしている。また、スクリーン7Bは、汚染水を揚水井7に吸入するとともに、土壌が揚水井7に侵入しないようにしている。汚染域4、注水井6、揚水井7を囲む汚染土壌の外周を、難透水層5に達する深度の止水壁9、9で包囲し、地表面を表面遮水工10で覆えば、汚染物質の周囲への漏出、及び雨水等の土壌中への浸透を防止できるので好ましい。
【0019】
スクリーン6B、7Bに微生物が付着して繁殖し、スクリーン6B、7Bが目詰まりするのを防止するために、注水井6では注入水に、次亜塩素酸ソーダ、塩素ガス、臭素ガスまたはオゾンガス等の滅菌剤を混入して注入する。注入水に滅菌剤を混入する方法は、従来の安価なスクリーンを使用できる上、微生物の種類に応じて滅菌剤を選択して使用でき、また微生物の繁殖の程度に応じて滅菌剤の混入量を調整できるので好ましい。また、スクリーン6B、7Bを滅菌性の部材にして、スクリーン6B、7Bに微生物が付着して繁殖するのを防止することができる。滅菌性の部材としては、スクリーン6B、7Bの材質を銅にする方法と、スクリーン6B、7Bを水不溶性の滅菌剤でコーティングする方法がある。スクリーン6B、7Bを滅菌性の部材にする方法は、ランニングコストがかからないので好ましい。このようにして、スクリーン6B、7Bに微生物が繁殖せず、スクリーンの目詰まりが無くなるので、注入井6または揚水井7の増設工事に伴う浄化運転の停止期間が無くなり、増設工事費を削減し、浄化期間を短縮することができる。スクリーンの目詰まりを防止する上記手法と、注水および汲み上げを間欠的に行う手法を併用することができる。その場合、注水および汲み上げに使用する電力等のエネルギーが削減できるので、ランニングコストを節約できる。
【0020】
注水井6への注入水の流量が小さいうちは、注入水の流量と浄化効率は比例関係になる。しかし、土壌粒子間の間隙水への汚染物質の溶出速度が律速となって、注入水の流量をある限度以上に大きくしても、浄化効率が頭打ちとなる。従って、注入水に空気等の気体を混入して注入水を乱流にする。高圧の気体を使用すれ
ば、注入水を乱流にする効果が大きくなるので好ましい。これにより、土壌粒子の間隙にあらゆる方向から注入水が流入し、汚染物質の注入水への溶出を促進させて、汚染物質の浄化を促進し、浄化期間を短縮することができる。注入水を乱流にする上記手法と、注水および汲み上げを間欠的に行う手法を併用することができる。その場合、注水および汲み上げに使用する電力等のエネルギーが削減できるので、ランニングコストを節約できる。
【0021】
注入時間、注入停止時間、および汲上時間、汲上停止時間は、実験的手法あるいはリアルタイム手法で決定することができる。実験的手法は、予め、揚水井7から汲み上げられる汚染水中の汚染物の濃度を測定し、最も汚染物の濃度が高くなる注入時間、注入停止時間、および汲上時間、汲上停止時間を求めることにより行う。リアルタイム手法は、揚水井7から汲み上げられる汚染水中の汚染物の濃度を常時測定し、汚染物の濃度が所定の基準値以下になったら、注水井6および揚水井7の運転を所定時間停止し、その後注水井6および揚水井7の運転を再開する。運転再開時の汚染水中の汚染物の濃度が所定の基準値以上であれば、そのまま運転を継続し、所定の基準値以下であれば注水井6および揚水井7の運転を所定時間停止する。
【0022】
なお、以上の実施態様では、注水井6および揚水井7の停止と再開は、同時に行っているが、注入水が汚染域4を経由して揚水井7に到達するまでのタイムラグを考慮して、揚水井7の停止と再開を注水井6の停止と再開よりも遅らせることにより、より効率的な運転を行うことができる。また、注水井6および揚水井7の両方を間欠的に運転することがエネルギー効率の点で好ましいが、平均的な注入流量と揚水流量がバランスすれば、注水井6または揚水井7の一方のみを間欠的に運転しても良い。
【0023】
注水井6から注水すると、この注入水は標高の低い側に流れ、汚染域4を通過する際に、汚染域4の廃棄物または土壌粒子に吸着した汚染物質が注入水に溶出し、この汚染物質が溶出した汚染水が、揚水井7から地上に汲み上げられる。水処理システム8で汚染物質が除去された処理水は、再び注水井6に注入し循環して使用する。この循環を継続することにより、汚染域4の浄化が進行する。処理水は放流し、注水井6から清浄水を注水しても良い。
【0024】
なお、以上の実施態様では、難透水層5の標高の高い側に注水井6を設置し、標高の低い側に揚水井7を設置することにより、地下水流による洗浄効果を併用しているため好ましいが、この実施態様に限定されるものでは無く、注水井6と揚水井7との間の水頭差(位置エネルギー差)により生じる注入水の循環だけで、汚染域4を通る水流を生じさせても良い。さらに、汚染域4が元々の地下水位2よりも下の帯水層3に有る場合について説明したが、元々の地下水位2よりも上に汚染域4があっても、水を注入することで汚染域4が地下水位よりも下になれば良い。
【0025】
【発明の効果】
請求項1から4の発明によれば、スクリーンに微生物が繁殖せず、スクリーンの目詰まりが無くなるので、注水井または揚水井の増設工事に伴う浄化運転の停止期間が無くなり、注水井または揚水井の増設工事費を削減し、汚染土壌の浄化期間を短縮することができる。
請求項5の発明によれば、汚染物質の注入水への溶出を促進させて、汚染物質の浄化を促進し、浄化期間を短縮することができる。
請求項6の発明によれば、請求項1から4及び請求項5に対応する効果に加え、注水および汲み上げに要するランニングコストを節約できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の汚染土壌の原位置浄化装置の施工例を示す土壌の鉛直断面図である。
【図2】従来の汚染土壌の原位置浄化装置の施工例を示す土壌の鉛直断面図である。
【符号の説明】
1…透水層、2…地下水位、3…帯水層、4…汚染域、5…難透水層、6…注水井、7…揚水井、8…水処理システム、9…止水壁、10…表面遮水工。
【発明の属する技術分野】
本発明は汚染土壌の原位置浄化装置に関し、より詳細には、浄化期間を短縮することを可能にした汚染土壌の原位置浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
廃棄物の不法投棄現場、埋立処分場、または廃棄物によって汚染された土壌や地下水汚染現場の浄化方法には、汚染土壌を掘削撤去して良質土により埋め戻す置換法と、例えば、汚染土壌の周囲に所要数の井戸を掘削して汚染された地下水をポンプで汲み上げ浄化する原位置浄化方法がある。置換法は、汚染域の深度が浅い場合には有効な手段となるが、汚染域の深度が深くなる(例えば深度が10m程度)と、掘削量が膨大になりコスト高となる。従って、汚染域の深度が深く、汚染域が帯水層にある場合には、上記のような原位置浄化方法が特に有効となるが、もちろん深度が浅い場合にも原位置浄化方法は適用できる。
【0003】
米国特許第4,435,292号(特許文献1)に示された原位置浄化方法は、注水井から高圧で注水し、揚水井から高い真空で汚染水を排出して、水処理システムで汚染物質を除去するようにしたものである。この従来技術は、処理水を循環使用することにより、注入する清浄水の使用量を削減するとともに、注入媒体として、溶媒、または窒素等の不活性ガス、または汚染物質を浄化する反応性ガスを使用することによって、浄化することができるようにしたものである。
【0004】
また、特公平6−96143号(特許文献2)に示された原位置浄化方法は、注水井及び揚水井からの注水と汲み上げを、間欠的に行う。これにより、注水及び汲み上げの停止期間中に地下水を静止させて、土壌粒子の小間隙中に滞留する汚染物質を、汚染物質の自重により移動させて、地下水流内に誘出させることにより、汚染物質の浄化を促進するようにしたものである。
【0005】
このような汚染土壌の原位置浄化方法または装置において、特許文献ではないが、図2に示すような原位置浄化装置がある。透水層1の地下水位2の下部に有る帯水層3には、廃棄物または汚染土壌からなる汚染域4が含まれている。透水層1の下部に有る難透水層(不透水層とも云う)5の標高を測定し、難透水層5の標高の高い側に所要数の注水井6を掘削して水を注入する。この注入水は標高の低い側に流れ、汚染域4を通過する際に、汚染域4から汚染物質を溶出する。難透水層5の標高の低い側に所要数の揚水井7を掘削し、汚染物質が溶出した汚染水をポンプ7Aで地上に汲み上げ、水処理システム8で汚染物質を除去し、汚染物質が除去された処理水を、再び注水井6に注入し循環している。注水井6および揚水井7には、汚染域4の深度に対応する深さ位置に、編目状のスクリーン6B、7Bが設けられている。スクリーン6Bは、注入水を汚染域4近傍の土壌中に吐出するとともに、土壌が注水井6に侵入しないようにしている。また、スクリーン7Bは、汚染水を揚水井7に吸入するとともに、土壌が揚水井7に侵入しないようにしている。汚染域4、注水井6および揚水井7を囲む汚染土壌の外周を、難透水層5に達する深度の止水壁9、9で包囲し、地表面を表面遮水工10で覆い、汚染物質の周囲への漏出、及び雨水等の土壌中への浸透を防止している。
【0006】
【特許文献1】
米国特許第4,435,292号明細書
【特許文献2】
特公平6−96143号明細書
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1、2及び図2に示す従来技術は、微生物が注水井及び揚水井のスクリーンに付着して繁殖し、スクリ−ンが目詰まりを起こすため、数ヶ月で注水ができなくなることがあった。そのため、注水井及び揚水井の増設工事が必要となって、増設工事期間中は浄化作業が行えず、結果として浄化期間が長くなる不具合があった。
【0008】
また、上記特許文献2に示す従来技術は、地下水の静止中に、土壌粒子の小間隙中に滞留する汚染物質を、汚染物質の自重により移動させるものであるため、地下水流内への汚染物質の誘出に時間がかかり、注水及び汲み上げの停止期間が長くなって、結果として浄化期間が長くなる不具合があった。また、汚染物質の自重による移動を利用するため、汚染物質の浄化にも限度があった。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、注入水に滅菌剤を混入、またはスクリーンを滅菌性の部材にして、スクリ−ンに微生物が繁殖しないようにすることによって、スクリーンの目詰まりを防止し、浄化運転の停止期間を無くして、浄化期間を短縮することである。さらに、本発明の目的は、注入水に気体を混入して注入水を乱流にすることにより、汚染物質の上記注入水への溶出を促進させて、汚染物質の浄化を促進し、浄化期間を短縮することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、汚染物質によって汚染された汚染域近傍にスクリーンを介して注水する注水井を設けるとともに、上記注水井からの注入水が汚染域を経由するようにスクリーンを介して揚水する揚水井を設け、上記揚水井から汲み上げた地下水を、水処理システムによって浄化する汚染土壌の原位置浄化装置において、上記注入水に滅菌剤を混入する滅菌剤混入装置を設け、上記各スクリ−ンに微生物が繁殖しないようにしたことを特徴とする汚染土壌の原位置浄化装置である。
【0011】
請求項2の発明は、汚染物質によって汚染された汚染域近傍にスクリーンを介して注水する注水井を設けるとともに、上記注水井からの注入水が汚染域を経由するようにスクリーンを介して揚水する揚水井を設け、上記揚水井から汲み上げた地下水を、水処理システムによって浄化する汚染土壌の原位置浄化装置において、上記各スクリーンを滅菌性の部材にして、上記スクリ−ンに微生物が繁殖しないようにしたことを特徴とする汚染土壌の原位置浄化装置である。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1に記載した汚染土壌の原位置浄化装置において、上記滅菌剤として、次亜塩素酸ソーダ、塩素ガス、臭素ガスまたはオゾンガスのいずれかを用いることを特徴とする汚染土壌の原位置浄化装置である。
【0013】
請求項4の発明は、請求項2に記載した汚染土壌の原位置浄化装置において、上記滅菌性の部材として、銅または水不溶性の滅菌剤のコーティングを用いることを特徴とする汚染土壌の原位置浄化装置である。
【0014】
請求項5の発明は、汚染物質によって汚染された汚染域近傍に注水する注水井を設けるとともに、上記注水井からの注入水が汚染域を経由するように揚水井を設け、上記揚水井から汲み上げた地下水を、水処理システムによって浄化する汚染土壌の原位置浄化装置において、上記注入水に気体を混入して注入水を乱流にする気体混入装置を設け、上記汚染物質の上記注入水への溶出を促進させるようにしたことを特徴とする汚染土壌の原位置浄化装置である。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1から4、及び5のいずれかに記載した汚染土壌の原位置浄化装置において、上記注入水の注入を間欠的に行う間欠注入装置及び地下水の汲み上げを間欠的に行う間欠汲上装置を設けたことを特徴とする汚染土壌の原位置浄化装置である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、前記従来装置と同等部分については同一符号を付けて説明する。図1は、本発明の汚染土壌の原位置浄化装置の施工例を示す土壌の鉛直断面図である。
【0017】
透水層1の地下水位2の下部に有る帯水層3には、廃棄物または汚染土壌からなる汚染域4が含まれている。汚染域4は、地表から10m程度の深度に形成されている。透水層1は、透水係数が10 − 2 〜10− 4 cm/秒程度の、比較的地下水の流速が早い砂質土からなる層である。透水層1の下部に有る難透水層
(不透水層とも云う)5の標高を測定し、難透水層5の標高の高い側に所要数の注水井6を掘削し、この注水井6に水を注入する。難透水層5は、透水係数が10− 6 〜10− 7cm/秒程度の、沖積粘土層又は洪積粘土層からなる層であ
る。難透水層5の標高の低い側に所要数の揚水井7を掘削し、汚染物質が溶出した汚染水を揚水井7を通してポンプで地上に汲み上げ、地上に設置した水処理システム8で、汚染水から汚染物質を除去する。
【0018】
注水井6、揚水井7には汚染域4の深度に対応する深さ位置に、編目状のスクリーン6B、7Bが設けられている。スクリーン6Bは、注入水を土壌中に吐出するとともに、土壌が注水井6に侵入しないようにしている。また、スクリーン7Bは、汚染水を揚水井7に吸入するとともに、土壌が揚水井7に侵入しないようにしている。汚染域4、注水井6、揚水井7を囲む汚染土壌の外周を、難透水層5に達する深度の止水壁9、9で包囲し、地表面を表面遮水工10で覆えば、汚染物質の周囲への漏出、及び雨水等の土壌中への浸透を防止できるので好ましい。
【0019】
スクリーン6B、7Bに微生物が付着して繁殖し、スクリーン6B、7Bが目詰まりするのを防止するために、注水井6では注入水に、次亜塩素酸ソーダ、塩素ガス、臭素ガスまたはオゾンガス等の滅菌剤を混入して注入する。注入水に滅菌剤を混入する方法は、従来の安価なスクリーンを使用できる上、微生物の種類に応じて滅菌剤を選択して使用でき、また微生物の繁殖の程度に応じて滅菌剤の混入量を調整できるので好ましい。また、スクリーン6B、7Bを滅菌性の部材にして、スクリーン6B、7Bに微生物が付着して繁殖するのを防止することができる。滅菌性の部材としては、スクリーン6B、7Bの材質を銅にする方法と、スクリーン6B、7Bを水不溶性の滅菌剤でコーティングする方法がある。スクリーン6B、7Bを滅菌性の部材にする方法は、ランニングコストがかからないので好ましい。このようにして、スクリーン6B、7Bに微生物が繁殖せず、スクリーンの目詰まりが無くなるので、注入井6または揚水井7の増設工事に伴う浄化運転の停止期間が無くなり、増設工事費を削減し、浄化期間を短縮することができる。スクリーンの目詰まりを防止する上記手法と、注水および汲み上げを間欠的に行う手法を併用することができる。その場合、注水および汲み上げに使用する電力等のエネルギーが削減できるので、ランニングコストを節約できる。
【0020】
注水井6への注入水の流量が小さいうちは、注入水の流量と浄化効率は比例関係になる。しかし、土壌粒子間の間隙水への汚染物質の溶出速度が律速となって、注入水の流量をある限度以上に大きくしても、浄化効率が頭打ちとなる。従って、注入水に空気等の気体を混入して注入水を乱流にする。高圧の気体を使用すれ
ば、注入水を乱流にする効果が大きくなるので好ましい。これにより、土壌粒子の間隙にあらゆる方向から注入水が流入し、汚染物質の注入水への溶出を促進させて、汚染物質の浄化を促進し、浄化期間を短縮することができる。注入水を乱流にする上記手法と、注水および汲み上げを間欠的に行う手法を併用することができる。その場合、注水および汲み上げに使用する電力等のエネルギーが削減できるので、ランニングコストを節約できる。
【0021】
注入時間、注入停止時間、および汲上時間、汲上停止時間は、実験的手法あるいはリアルタイム手法で決定することができる。実験的手法は、予め、揚水井7から汲み上げられる汚染水中の汚染物の濃度を測定し、最も汚染物の濃度が高くなる注入時間、注入停止時間、および汲上時間、汲上停止時間を求めることにより行う。リアルタイム手法は、揚水井7から汲み上げられる汚染水中の汚染物の濃度を常時測定し、汚染物の濃度が所定の基準値以下になったら、注水井6および揚水井7の運転を所定時間停止し、その後注水井6および揚水井7の運転を再開する。運転再開時の汚染水中の汚染物の濃度が所定の基準値以上であれば、そのまま運転を継続し、所定の基準値以下であれば注水井6および揚水井7の運転を所定時間停止する。
【0022】
なお、以上の実施態様では、注水井6および揚水井7の停止と再開は、同時に行っているが、注入水が汚染域4を経由して揚水井7に到達するまでのタイムラグを考慮して、揚水井7の停止と再開を注水井6の停止と再開よりも遅らせることにより、より効率的な運転を行うことができる。また、注水井6および揚水井7の両方を間欠的に運転することがエネルギー効率の点で好ましいが、平均的な注入流量と揚水流量がバランスすれば、注水井6または揚水井7の一方のみを間欠的に運転しても良い。
【0023】
注水井6から注水すると、この注入水は標高の低い側に流れ、汚染域4を通過する際に、汚染域4の廃棄物または土壌粒子に吸着した汚染物質が注入水に溶出し、この汚染物質が溶出した汚染水が、揚水井7から地上に汲み上げられる。水処理システム8で汚染物質が除去された処理水は、再び注水井6に注入し循環して使用する。この循環を継続することにより、汚染域4の浄化が進行する。処理水は放流し、注水井6から清浄水を注水しても良い。
【0024】
なお、以上の実施態様では、難透水層5の標高の高い側に注水井6を設置し、標高の低い側に揚水井7を設置することにより、地下水流による洗浄効果を併用しているため好ましいが、この実施態様に限定されるものでは無く、注水井6と揚水井7との間の水頭差(位置エネルギー差)により生じる注入水の循環だけで、汚染域4を通る水流を生じさせても良い。さらに、汚染域4が元々の地下水位2よりも下の帯水層3に有る場合について説明したが、元々の地下水位2よりも上に汚染域4があっても、水を注入することで汚染域4が地下水位よりも下になれば良い。
【0025】
【発明の効果】
請求項1から4の発明によれば、スクリーンに微生物が繁殖せず、スクリーンの目詰まりが無くなるので、注水井または揚水井の増設工事に伴う浄化運転の停止期間が無くなり、注水井または揚水井の増設工事費を削減し、汚染土壌の浄化期間を短縮することができる。
請求項5の発明によれば、汚染物質の注入水への溶出を促進させて、汚染物質の浄化を促進し、浄化期間を短縮することができる。
請求項6の発明によれば、請求項1から4及び請求項5に対応する効果に加え、注水および汲み上げに要するランニングコストを節約できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の汚染土壌の原位置浄化装置の施工例を示す土壌の鉛直断面図である。
【図2】従来の汚染土壌の原位置浄化装置の施工例を示す土壌の鉛直断面図である。
【符号の説明】
1…透水層、2…地下水位、3…帯水層、4…汚染域、5…難透水層、6…注水井、7…揚水井、8…水処理システム、9…止水壁、10…表面遮水工。
Claims (6)
- 汚染物質によって汚染された汚染域近傍にスクリーンを介して注水する注水井を設けるとともに、上記注水井からの注入水が汚染域を経由するようにスクリーンを介して揚水する揚水井を設け、上記揚水井から汲み上げた地下水を、水処理システムによって浄化する汚染土壌の原位置浄化装置において、上記注入水に滅菌剤を混入する滅菌剤混入装置を設け、上記各スクリ−ンに微生物が繁殖しないようにしたことを特徴とする汚染土壌の原位置浄化装置。
- 汚染物質によって汚染された汚染域近傍にスクリーンを介して注水する注水井を設けるとともに、上記注水井からの注入水が汚染域を経由するようにスクリーンを介して揚水する揚水井を設け、上記揚水井から汲み上げた地下水を、水処理システムによって浄化する汚染土壌の原位置浄化装置において、上記各スクリーンを滅菌性の部材にして、上記スクリ−ンに微生物が繁殖しないようにしたことを特徴とする汚染土壌の原位置浄化装置。
- 請求項1に記載した汚染土壌の原位置浄化装置において、上記滅菌剤として、次亜塩素酸ソーダ、塩素ガス、臭素ガスまたはオゾンガスのいずれかを用いることを特徴とする汚染土壌の原位置浄化装置。
- 請求項2に記載した汚染土壌の原位置浄化装置において、上記滅菌性の部材として、銅または水不溶性の滅菌剤のコーティングを用いることを特徴とする汚染土壌の原位置浄化装置。
- 汚染物質によって汚染された汚染域近傍に注水する注水井を設けるとともに、上記注水井からの注入水が汚染域を経由するように揚水井を設け、上記揚水井から汲み上げた地下水を、水処理システムによって浄化する汚染土壌の原位置浄化装置において、上記注入水に気体を混入して注入水を乱流にする気体混入装置を設け、上記汚染物質の上記注入水への溶出を促進させるようにしたことを特徴とする汚染土壌の原位置浄化装置。
- 請求項1から4、及び5のいずれかに記載した汚染土壌の原位置浄化装置において、上記注入水の注入を間欠的に行う間欠注入装置及び地下水の汲み上げを間欠的に行う間欠汲上装置を設けたことを特徴とする汚染土壌の原位置浄化装置。
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-
2003
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