JP2004311678A - 金属膜を積層した半導体素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】半導体素子にかかる放熱、歪、不純物拡散より生じる負の外的要因を低減し、半導体素子の特性と寿命を改善すること。
【解決手段】本発明の目的は、結晶成長膜と基板と、結晶成長膜を上方としたときの上方あるいは上方と下方の両方に電極が形成してあり、その電極の膜厚を4μm以上(好ましくは6μm以上)にすることにより達成される。
【選択図】 図2
【解決手段】本発明の目的は、結晶成長膜と基板と、結晶成長膜を上方としたときの上方あるいは上方と下方の両方に電極が形成してあり、その電極の膜厚を4μm以上(好ましくは6μm以上)にすることにより達成される。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶成長膜と基板と、結晶成長膜を上方としたときの上方あるいは上方と下方の両方に電極が形成してあり、その電極の上層に4μm以上の膜厚の金属膜が積層していることを特徴とする半導体素子に関する。
【0002】
本発明による、金属膜を積層した半導体素子は、特にGaN、AlGaN、InGaN等を一例とするGaN系III−V族化合物半導体において特に有効であり、素子特性の向上と寿命の長期化を可能とする。GaN系III−V族窒化物半導体は半導体レーザやLED、太陽電池、HEMT、HBT等の発光デバイスもしくは電子デバイスを作成するのに用いられる。
【0003】
【従来の技術】
GaN系III−V族化合物半導体は直接遷移型のバンド構造をもち、さらにバンドギャップエネルギーが青色から紫色の発光が得られる範囲にあり、これを用いた発光素子や半導体レーザに関する研究が行われている。特に発振波長410nmの青紫色レーザダイオード(以下、本明細書においては、この青紫色レーザダイオードを「LD」と表記する)は次世代のDVD規格であるBlu―ray Diskのキーデバイスであり、実用化されれば光ディスクの記録容量を片面単層25GB以上に高めることができることから実用化と高信頼化に向けて、その開発が盛んに行われている。またGaN、AlGaN、InGaN、InAlGaNなどの窒化ガリウム系化合物半導体は、高い絶縁耐圧、高い熱伝導度、高い飽和電子速度を有していることから、高周波のパワートランジスタ用材料として有望である。AlGaN/GaNのヘテロ構造を用いたHEMT構造においては、GaN膜中のヘテロ界面近傍に高い濃度の2次元電子ガス(2DEG)が蓄積される。この2次元電子ガスはAlGaN膜にドーピングされたドナー不純物と空間的に分離され蓄積されるため高い電子移動度を示すことから、低いソース抵抗が得られる。またこの2次元電子ガスは高電界領域においても高い飽和電子速度を有しているので、高い遮断周波数などの高周波特性が期待されている。
【0004】
この様にGaN系III−V族化合物半導体は発光デバイス、電子デバイスどちらから見ても有用な材料系であり、窒化ガリウム系化合物半導体のエピタキシャル成長、プロセス、評価等の技術の開発が強く望まれている。なかでも、これまでの化合物半導体であるGaAsやInPとは化学的な物性が異なっていることから、従来の技術がそのまま転用できないためプロセス技術の開発が急務である。
【0005】
特許文献1には、GaN系III−V族化合物半導体によるレーザ素子をサブマウントに実装するときにジャンクションダウン組み立てにし、3μm程度の電極パッドを用いることが記載されている。その効果によりレーザチップをサブマウントに実装する際の固着のダメージを低減することと、融着剤によって発光部が覆われることによる歩留まりの劣化を改善する手法が記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−305349号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
GaN系III−V族化合物半導体は、基板と結晶成長膜の間、組成の異なる結晶成長層の間で格子間距離が異なっている格子不整合系であり、このためGaN系III−V族化合物半導体はその内部に必然的に歪を内包している。この歪は素子の特性と関係があり、歪を制御することによって素子特性を向上させることが可能であるが、逆にいえば、歪により素子性能が劣化することもある。GaN系III−V族化合物半導体では歪が大きいため結晶にクラックが入ったり、発光特性やキャリア密度といった物性に影響を与えたりと歪の影響は従来の例えばGaAs系やInP系のIII−V族化合物半導体に比べて非常に大きい。
【0008】
従来、歪の制御という点では、基板の改良もしくは変更、結晶成長膜の層構造や組成の工夫によりなされてきたが、これらの改良には適した基板が存在しないことや、結晶成長条件が大きく異なるため同時に結晶成長できないといった制約や、歪の制御を行うための層を挿入すると貫通転移や結晶欠陥が増加するといったトレードオフが存在しており、歪の制御に対しての抜本的な解決は現在までには見出されていない。
【0009】
またデバイスチップ作成のプロセスにおける、アニールやシンタといった加熱処理工程、洗浄工程、フォト工程、絶縁膜デポ工程やメタルデポといったプロセスの各工程が歪に与える影響も満足に知見が得られておらず、ここでも歪の制御に対しての抜本的な解決は現在までには見出されていない。
【0010】
またデバイスチップのサブマウントへの実装時のハンダ材料の種類や実装条件(温度や雰囲気等)が歪として素子に大きな影響を与えると考えられている。しかし実際には実装工程における歪に関する知見はあまり多いとはいえないものしか得られていない。ここでも歪の制御に対しての抜本的な解決は現在までには見出されていない。また、ハンダ材料の結晶中への拡散もデバイスの発光特性や電流電圧特性を大きく劣化させることから、大きな問題となっている。
【0011】
また、GaN系III−V族化合物半導体はバンドギャップが大きいことから動作電圧が必然的に高く、そのため消費電力が従来のGaAs系やInP系III−V族化合物半導体に比べて大きい。これは発熱が大きいことを意味しており、素子寿命や特性を向上するためには素子の放熱が重要であることを示している。これも従来のGaAs系やInP系III−V族化合物半における対処方法では解決できなくなっている。
【0012】
本発明は、半導体素子上に一定膜厚以上の金属膜を積層することによって、半導体素子にかかる放熱、歪、不純物拡散より生じる負の外的要因を低減し、半導体素子の特性と寿命の改善を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、結晶成長膜と基板と、結晶成長膜を上方としたときの上方あるいは上方と下方の両方にp型あるいはn型のための電極が形成してあり、その電極の膜厚が4μm以上(好ましくは6μm以上)の膜厚であることにより達成される。
【0014】
従来例にあげた特許文献1には3μm程度(最も厚いもので3.9μm)の膜厚の金属層を積層することが記載されているが、我々は鋭意検討の末、実際にはそれでは特性の改善、歩留まりの劣化といった問題の解決に十分ではないことを見出した。
【0015】
半導体素子は通常、結晶成長膜と基板と、結晶成長膜を上方としたときの上方あるいは上方と下方の両方に形成された電極によって構成されている。ここでいう電極とは素子に必要な電力を供給可能な膜厚を備えた金属層を指し、その膜厚は多くとも1μm以下である。発明者らはその電極の膜厚を4μm以上の膜厚、より好ましくは6μm以上、さらにより好ましくは7μm以上とすることにより、素子特性と寿命が改善されることを鋭意検討の結果見出した。
【0016】
この電極としての金属膜以外の金属膜積層による特性の改善と素子寿命の長期化は、次の三つのメカニズムにより達成されていると考えられる。1.膜厚が厚い金属膜が積層されていることによる熱容量の増加に伴う、半導体素子の放熱性の増加、2.膜厚が厚い金属膜が積層されていることによる半導体素子を実装する際に使用するハンダ材料の半導体素子への拡散防止、3.膜厚が厚い金属膜が積層されていることによる半導体素子への歪の印加防止、もしくは半導体素子に生じる歪の解消の三つである。
【0017】
GaN系III−V族化合物半導体材料はワイドバンドギャップ半導体であるため、GaAsなどのナローバンドギャップ半導体に比べると必然的に動作電圧が大きくなる。このため素子の消費電力が大きくなり、動作中の半導体素子の温度は必然的にGaAsなどのこれまでの化合物半導体材料による素子に比べて高温になる。素子温度の上昇は素子寿命の劣化を促すことから、半導体素子では放熱性の高いサブマウント上に素子を実装することにより素子温度の上昇を抑えている。
【0018】
これまでのGaAs、InP系のIII−V族化合物半導体材料による半導体素子では、放熱性という観点からの素子上の金属膜の厚さはほとんど問題にされてこなかった。それよりも素子を実装する放熱性の高いサブマウントとの接合がより重要であった。ところが、消費電力が大きく素子温度の高くなるGaN系III−V族化合物半導体の素子においては、放熱特性の重要度が大きくこれまでのGaAs、InP系のIII−V族化合物半導体材料での考え方が通用しない。素子上にヒートシンクとも考えられる膜厚の厚い金属膜を積層することにより放熱特性を向上し、素子温度の上昇を抑えることができ寿命の長期化を図ることができる。
【0019】
また、半導体素子をサブマウント上に実装する際にハンダ材料がもちいられるが、このハンダ材料はGaN系III−V族化合物半導体の結晶成長膜まで拡散し取り込まれると素子特性に致命的な悪影響をあたえる。そのため、ハンダ材料との接合部にあたる素子上の金属膜を厚くすることにより、拡散を防ぐことができる。また、ハンダ材料の拡散係数の小さな特定の金属を使用すると結晶成長膜へのハンダ材料の拡散をより効果的に防ぐことができる。
【0020】
また、GaN系III−V族化合物半導体は格子不整合系である。結晶成長膜と基板との格子定数が異なる、GaNから見てサファイアが約−14%、6HSiCが約−3.4%。GaN基板を使用したとしても、結晶成長膜中のAlGaN層とは格子不整合を生じ、その大きさはGaNからみてAlの組成比が0.1のとき約−0.25%である。加えてLDの活性層に使用するInGaNは、組成の増加に伴う不整合度の増加がAlGaNよりも大きく同じくInの組成比が0.1のとき1.1%になる。このために、GaN系III−V族化合物半導体は結晶成長膜中に大きな歪を内包している。
【0021】
この歪は、内部にピエゾ電界を生み出すなど、素子の特性に影響を及ぼすばかりか、歪が大きくなるとついにはクラックの発生に至り、素子を致命的に劣化させる。したがって内部に大きな歪を内包しているGaN系III−V族化合物半導体は外的な応力に対して非常に敏感でありかつ弱い。半導体プロセス中での昇温や降温に気を使わなければならないのはもちろんのこと、特に半導体素子をサブマウント上に実装するときに生じる歪が大きな問題となっている。
【0022】
サブマウント材料とハンダ材料と半導体素子の間では熱膨張係数が異なっているため、接合時の加熱処理により大きな応力が生じ半導体素子に歪がかかる。膜厚の厚い金属膜を半導体素子上に積層しておく事により、サブマウントやハンダ材料との熱膨張率差を吸収することができ、結果として半導体素子にかかる応力を小さく抑えひいては、例えば半導体レーザ素子において重要な活性層にかかる歪を小さくできる。
【0023】
また、GaN系III−V族化合物半導体はバンドギャップが大きいことから動作電圧が必然的に高く、そのため消費電力が従来のGaAs系やInP系III−V族化合物半導体に比べて大きい。これは発熱が大きいことを意味しており、素子寿命や特性を向上するためには素子の放熱が重要であることを示している。また、半導体レーザに関して言えば次世代の光ディスクの規格であるBlu−RayDiskでは、従来のCDやDVDに使われるものに比べて大きな光強度が求められている。
【0024】
さらに、倍速への対応、容量増加のための多層構造への対応を考えるとレーザ素子に求められる出力光の強度は増加の一途をたどる。このとこは、半導体素子の消費電力を大きくし必然的に発熱量の増加となる。この発熱量がGaAs系やInP系III−V族化合物半導体に比べると2〜10倍になる場合がある。したがって従来の半導体素子への電力供給を目的とした電極層(概して、その膜厚は1μm以下である)のみを介した放熱では不十分である事がわかってきており、電極層の上部、特に半導体レーザにおいては発熱の著しい、発光部であるリッジストライプ上部にヒートシンクとも考えられる膜厚の大きな金属層を配置することは放熱特性が改善し、素子特性や寿命の向上に貢献する。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の金属膜を積層した半導体素子とは、発光、増幅など主な機能を持った半導体素子とその上面もしくは下面、あるいは両面に積層された金属膜からなり、半導体素子の発光、増幅などの特性と素子寿命が改善されたものである。
【0026】
半導体素子に積層する金属膜の種類ははAu、Ag、Cu、Ni、Pd、Pt、Mg、Al、Ti、Cr、Co、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの内のいずれかを単体もしくは合金として使用し、一つもしくは二つ以上を積層して使用する。
【0027】
この中でもNi、TiやPtはサブマウントへのボンディングに使用するハンダ材料(Sn、Pb等)が結晶成長膜へ拡散し素子特性を劣化させることを防ぐバリア性に優れている。
【0028】
また、CrやTiなどは電極、結晶成長膜、基板や絶縁に使用する酸化物と密着性が高く、金属膜の剥がれを防止するのに有効である。
【0029】
また、Au、Cuなどは導電性と熱伝導特性に優れ、放熱を促進し、半導体素子への導電性を確保する事に優れている。
【0030】
これらの材料を単体もしくは合金として使用し、一つもしくは二つ以上を積層し組み合わせて使用することにより、所望の放熱性、歪の制御性、ハンダ材料の拡散防止といった機能を有した金属膜が得られる。
【0031】
金属膜の積層方法としては種々の方法が存在する、蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、メッキ等である。積層方法のいずれか1種類もしくは2種類以上を組み合わせて用いる。蒸着、イオンプレーティング、やスパッタリングによる方法は積層する金属の種類に柔軟に対応できる。また、本発明では、4μm以上(好ましくは6μm以上)と通常で厚膜といわれる厚さを積層する事になるので現実的なプロセスの時間やコストを考えると、高速で安価な手法が好ましく、これには現在のところメッキが適している。
【0032】
実際には半導体素子上にまず蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングのいずれかによりメッキの下地となる金属膜を形成し、その後メッキにより形成する。この際には、もちろん半導体の製造工程で通常もちいられる技術をもちいて、素子にあわせたパターニングが行われていることは言うまでも無い。
【0033】
【実施例】
以下に本発明を実施例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
実施例はまず、基板と結晶成長膜と電極からなる半導体素子を作成した。結晶成長膜としてはGaN系III−V族化合物半導体を、基板としてはサファイア基板に対して欠陥密度低減の為のELO技術をもちいてGaNを積層したものを用いた。半導体素子としては410nmに発振波長を持つ半導体レーザを選択した。
【0035】
以下の結晶成長とプロセスにより得られる、半導体素子の断面図を図1に示す。基板110上にn−GaN層108、n−AlGaNクラッド層107、n−GaNガイド層106、InGaN系MQW層105、p−GaNガイド層104、p−AlGaNクラッド層103からなる結晶成長膜をMOCVD法により形成した。MOCVD法でのGa源としてはトリメチルガリウム(TMG)を、Al源としてはトリメチルアルミニウム(TMA)、In源としてはトリメチルインジウム(TMI)を用いた。成長温度範囲は600℃から1100℃の間である。また、n型のドーパントしてSiを、p型のドーパントとしてMgを用いた。
【0036】
なお、基板110はGaN系III−V族化合物半導体を結晶成長可能な基板であれば問題なく、例としてサファイア、サファイア上の低転移化GaN、GaN基板、Si、GaAs等があげられる。また本特許において、半導体レーザとしての結晶成長膜における層構造の構成が上記の場合と異なる時にも、本特許が有効であることは言うまでも無い。
【0037】
この基板上の結晶成長膜に対して、通常の半導体製造工程によるプロセス工程を施し、リッジストライプの形成、絶縁膜102の形成、光閉じ込め絶縁膜の形成、n−GaN層の露出、p−電極101、n−電極109の形成を行った。以下、特に断りなきときには半導体素子とは図1に記載の半導体素子を指すこととする。また、図1に記載の半導体素子を、単に「素子」という場合がある。
(実施例1)
図2に実施例1にかかる金属膜を積層した半導体素子の断面図を示す、またその作成工程を図3に示した、詳細を以下で説明する。
【0038】
まず、半導体素子上全面に第1金属層301を形成した(図3(a))。第1金属層301の構成は、下から順にTi:50nm、Pt:100nm、Au:2000nmであった。この第1金属層301の形成には電子ビーム蒸着装置を用いた。
【0039】
次に、第1金属層301上にフォトレジスト302により第1金属層301のうち必要な部分のみを残すためのパターンを形成した(図3(b))。
【0040】
パターン形成後、第1金属層301に対してウェットエッチングを行った後、フォトレジスト302を除去した(図3(c))。
【0041】
フォトレジスト302を除去した後、第2金属層304を積層するためパターニングのためのフォトレジスト303をフォト工程により形成した(図3(d))。
【0042】
最後に、第2金属層304をAuメッキにより形成した。メッキの際には第1金属層301が下地の役割と、通電のための導電経路としての役割を果たす。第2金属層304の膜厚は10μmであった。なお、フォトレジスト303は、第2金属層304を形成した後、除去した(図3(e))。
【0043】
この実施例では、図2および図3(e)に示されるように、p型電極が、p−電極101、膜厚2150nmの第1金属層301、および膜厚10μmの第2金属層304とからなる。本発明では、このp−電極101、第1金属層301、および第2金属層304とからなるp型電極の厚みが4μm以上(好ましくは6μm以上)である。n型電極についても、これと同様に、n−電極109、第1金属層301、および第2金属層304からなるn型電極の厚みが4μm以上(好ましくは6μm以上)である。このように、電極は複数層の金属層から構成されていても良い。なお、p−電極101および第1金属層301の膜厚は第2金属層304の膜厚よりずっと小さいので、ここでは無視できる。
【0044】
この後裏面を研削研磨し、ウェハの膜厚を80μm以上200μm以下にし、ストライプ方向に垂直と水平の二回のヘキ開工程をへて半導体レーザのチップが完成する。
【0045】
半導体レーザチップのサブマウント上への実装は、結晶成長膜がサブマウント側にくるジャンクションダウンと呼ばれる方向で行った。実装後の模式図を図4に示した。レーザチップとサブマウント402の接合ハンダ材料401には金スズハンダを用いた。なお、本特許ではハンダの種類による効果の違いはなく、別の種類のハンダ材料を用いたとしても何ら問題はない。サブマウント402とレーザチップの両方を250度に加熱し、位置を合わせて接合した。またこの場合の実装温度は200℃以上300℃以下で行うことが重要である。レーザチップを実装したサブマウントをCuからなるベースに組んだ後、寿命試験を行った。寿命試験はある一定の光出力を出しつづけるAPCモードで行った。試験環境は室温25℃、光出力5mWの連続発振で行った。得られた半導体レーザの寿命試験時間に対する動作電流の上昇率を劣化率として図5に示した。
【0046】
第2金属層304の膜厚をそれぞれ6μm、4μm、3μmに代えた素子を作成し、同様に半導体レーザチップをサブマウント上に実装し、Cuからなるベースに組んだ後、同様の寿命試験を行った。劣化率を同じく図5に示した。
【0047】
なお、劣化率は以下のようにして算出した。まず、室温(25℃)において、素子に対して一定の電圧(5mW)を素子に印加し続けることにした。印加した直後の電流をI0、t時間経過後の電流をItとしたときに、劣化率=(It−I0)/tとして算出した。
【0048】
また、図5を作成する元となった、第1金属層301と第2金属層304とからなるp型電極の膜厚(表1では「金属層膜厚」と表記、すなわち第1金属層301の膜厚と第2金属層304の膜厚との和)と劣化率との関係を以下の表1に示す。
【0049】
【表1】
表1および図5から理解されるように、膜厚が4μm以下であれば劣化率を0.4mA/h以下とすることができ、膜厚が6μm以下であれば劣化率を0.1mA/h以下とすることができることが理解される。一方、膜厚が3μmである場合には、劣化率が1.3mA/hと非常に高く、素子の性能として劣ることが理解される。
【0050】
第1金属層301と第2金属層304とからなるp型電極の膜厚の最大は、100μmである。100μmを越えた場合には、半導体素子に対して非常に大きいp型電極を形成することになり、このようなp型電極の形成は困難である。
【0051】
なお、特許文献1には、膜厚を増やしていくと、劣化率が低下するという関係については言及されていない。
(実施例2)
実施例2として、半導体素子の基板をGaN基板もしくはその他の導電性のある基板を使用した素子を作成した。実施例2にかかる半導体素子の断面図を図6に示した。GaN基板601はn型のドーピングが施されており導電性があるため、実施例1では上方に形成したn−電極を半導体素子の下方に裏面n−電極602として形成することができる。また、その作成工程を以下に記す。
【0052】
半導体素子のp−電極上に実施例1での記載と同様にして金属層を10μmの膜厚でAuメッキにより形成する。次に基板を研削研磨しウェハの膜厚を80μm以上200μm以下にする。その後、裏面n−電極602を電子ビーム蒸着により形成する。次に表面と同様にして膜厚10μmの金属層603をAuメッキにて形成する。完成した後は実施例1と同様に半導体レーザチップをサブマウント上に実装し、Cuからなるベースに組んだ後、同様の寿命試験を行った。劣化率は0.02mA/hであり、実施例1とほぼ同様であった。
【0053】
【発明の効果】
本発明は、結晶成長膜と基板と、結晶成長膜を上方としたときの上方あるいは上方と下方の両方に電極が形成してあり、その電極の膜厚を4μm以上(好ましくは6μm以上)にすることにより、本発明に係る半導体素子は、特にGaN、AlGaNを一例とするGaN系III−V族化合物半導体において特に有効であり、素子特性の向上と寿命の長期化を可能とする。GaN系三−V族窒化物半導体は半導体レーザやLED、太陽電池、HEMT、HBT等の発光デバイスもしくは電子デバイスを作成するのに用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の方法により作成された半導体素子の断面図
【図2】金属膜を積層した半導体素子の断面図
【図3】金属層を積層した半導体素子を作成するためのプロセスフローを示す図
【図4】サブマウント上に実装した半導体レーザを表す模式図
【図5】積層した金属膜の膜厚変化による、半導体素子の寿命試験の劣化率を表した図
【図6】基板としてGaN基板(導電性)を使用したときの金属膜を積層した半導体素子の断面図
【符号の説明】
101:p−電極
102:絶縁膜
103:p−クラッド層
104:p−ガイド層
105:MQW活性層
106:n−ガイド層
107:n−クラッド層
108:n−GaN層
109:n−電極
110:基板
301:第1金属層
302:フォトレジスト
303:フォトレジスト
304:第2金属層
401:半導体チップをサブマウントに実装するためのハンダ材料
402:サブマウント
601:GaN基板
602:裏面n−電極
603:裏面n−電極上に積層した金属層
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶成長膜と基板と、結晶成長膜を上方としたときの上方あるいは上方と下方の両方に電極が形成してあり、その電極の上層に4μm以上の膜厚の金属膜が積層していることを特徴とする半導体素子に関する。
【0002】
本発明による、金属膜を積層した半導体素子は、特にGaN、AlGaN、InGaN等を一例とするGaN系III−V族化合物半導体において特に有効であり、素子特性の向上と寿命の長期化を可能とする。GaN系III−V族窒化物半導体は半導体レーザやLED、太陽電池、HEMT、HBT等の発光デバイスもしくは電子デバイスを作成するのに用いられる。
【0003】
【従来の技術】
GaN系III−V族化合物半導体は直接遷移型のバンド構造をもち、さらにバンドギャップエネルギーが青色から紫色の発光が得られる範囲にあり、これを用いた発光素子や半導体レーザに関する研究が行われている。特に発振波長410nmの青紫色レーザダイオード(以下、本明細書においては、この青紫色レーザダイオードを「LD」と表記する)は次世代のDVD規格であるBlu―ray Diskのキーデバイスであり、実用化されれば光ディスクの記録容量を片面単層25GB以上に高めることができることから実用化と高信頼化に向けて、その開発が盛んに行われている。またGaN、AlGaN、InGaN、InAlGaNなどの窒化ガリウム系化合物半導体は、高い絶縁耐圧、高い熱伝導度、高い飽和電子速度を有していることから、高周波のパワートランジスタ用材料として有望である。AlGaN/GaNのヘテロ構造を用いたHEMT構造においては、GaN膜中のヘテロ界面近傍に高い濃度の2次元電子ガス(2DEG)が蓄積される。この2次元電子ガスはAlGaN膜にドーピングされたドナー不純物と空間的に分離され蓄積されるため高い電子移動度を示すことから、低いソース抵抗が得られる。またこの2次元電子ガスは高電界領域においても高い飽和電子速度を有しているので、高い遮断周波数などの高周波特性が期待されている。
【0004】
この様にGaN系III−V族化合物半導体は発光デバイス、電子デバイスどちらから見ても有用な材料系であり、窒化ガリウム系化合物半導体のエピタキシャル成長、プロセス、評価等の技術の開発が強く望まれている。なかでも、これまでの化合物半導体であるGaAsやInPとは化学的な物性が異なっていることから、従来の技術がそのまま転用できないためプロセス技術の開発が急務である。
【0005】
特許文献1には、GaN系III−V族化合物半導体によるレーザ素子をサブマウントに実装するときにジャンクションダウン組み立てにし、3μm程度の電極パッドを用いることが記載されている。その効果によりレーザチップをサブマウントに実装する際の固着のダメージを低減することと、融着剤によって発光部が覆われることによる歩留まりの劣化を改善する手法が記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−305349号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
GaN系III−V族化合物半導体は、基板と結晶成長膜の間、組成の異なる結晶成長層の間で格子間距離が異なっている格子不整合系であり、このためGaN系III−V族化合物半導体はその内部に必然的に歪を内包している。この歪は素子の特性と関係があり、歪を制御することによって素子特性を向上させることが可能であるが、逆にいえば、歪により素子性能が劣化することもある。GaN系III−V族化合物半導体では歪が大きいため結晶にクラックが入ったり、発光特性やキャリア密度といった物性に影響を与えたりと歪の影響は従来の例えばGaAs系やInP系のIII−V族化合物半導体に比べて非常に大きい。
【0008】
従来、歪の制御という点では、基板の改良もしくは変更、結晶成長膜の層構造や組成の工夫によりなされてきたが、これらの改良には適した基板が存在しないことや、結晶成長条件が大きく異なるため同時に結晶成長できないといった制約や、歪の制御を行うための層を挿入すると貫通転移や結晶欠陥が増加するといったトレードオフが存在しており、歪の制御に対しての抜本的な解決は現在までには見出されていない。
【0009】
またデバイスチップ作成のプロセスにおける、アニールやシンタといった加熱処理工程、洗浄工程、フォト工程、絶縁膜デポ工程やメタルデポといったプロセスの各工程が歪に与える影響も満足に知見が得られておらず、ここでも歪の制御に対しての抜本的な解決は現在までには見出されていない。
【0010】
またデバイスチップのサブマウントへの実装時のハンダ材料の種類や実装条件(温度や雰囲気等)が歪として素子に大きな影響を与えると考えられている。しかし実際には実装工程における歪に関する知見はあまり多いとはいえないものしか得られていない。ここでも歪の制御に対しての抜本的な解決は現在までには見出されていない。また、ハンダ材料の結晶中への拡散もデバイスの発光特性や電流電圧特性を大きく劣化させることから、大きな問題となっている。
【0011】
また、GaN系III−V族化合物半導体はバンドギャップが大きいことから動作電圧が必然的に高く、そのため消費電力が従来のGaAs系やInP系III−V族化合物半導体に比べて大きい。これは発熱が大きいことを意味しており、素子寿命や特性を向上するためには素子の放熱が重要であることを示している。これも従来のGaAs系やInP系III−V族化合物半における対処方法では解決できなくなっている。
【0012】
本発明は、半導体素子上に一定膜厚以上の金属膜を積層することによって、半導体素子にかかる放熱、歪、不純物拡散より生じる負の外的要因を低減し、半導体素子の特性と寿命の改善を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、結晶成長膜と基板と、結晶成長膜を上方としたときの上方あるいは上方と下方の両方にp型あるいはn型のための電極が形成してあり、その電極の膜厚が4μm以上(好ましくは6μm以上)の膜厚であることにより達成される。
【0014】
従来例にあげた特許文献1には3μm程度(最も厚いもので3.9μm)の膜厚の金属層を積層することが記載されているが、我々は鋭意検討の末、実際にはそれでは特性の改善、歩留まりの劣化といった問題の解決に十分ではないことを見出した。
【0015】
半導体素子は通常、結晶成長膜と基板と、結晶成長膜を上方としたときの上方あるいは上方と下方の両方に形成された電極によって構成されている。ここでいう電極とは素子に必要な電力を供給可能な膜厚を備えた金属層を指し、その膜厚は多くとも1μm以下である。発明者らはその電極の膜厚を4μm以上の膜厚、より好ましくは6μm以上、さらにより好ましくは7μm以上とすることにより、素子特性と寿命が改善されることを鋭意検討の結果見出した。
【0016】
この電極としての金属膜以外の金属膜積層による特性の改善と素子寿命の長期化は、次の三つのメカニズムにより達成されていると考えられる。1.膜厚が厚い金属膜が積層されていることによる熱容量の増加に伴う、半導体素子の放熱性の増加、2.膜厚が厚い金属膜が積層されていることによる半導体素子を実装する際に使用するハンダ材料の半導体素子への拡散防止、3.膜厚が厚い金属膜が積層されていることによる半導体素子への歪の印加防止、もしくは半導体素子に生じる歪の解消の三つである。
【0017】
GaN系III−V族化合物半導体材料はワイドバンドギャップ半導体であるため、GaAsなどのナローバンドギャップ半導体に比べると必然的に動作電圧が大きくなる。このため素子の消費電力が大きくなり、動作中の半導体素子の温度は必然的にGaAsなどのこれまでの化合物半導体材料による素子に比べて高温になる。素子温度の上昇は素子寿命の劣化を促すことから、半導体素子では放熱性の高いサブマウント上に素子を実装することにより素子温度の上昇を抑えている。
【0018】
これまでのGaAs、InP系のIII−V族化合物半導体材料による半導体素子では、放熱性という観点からの素子上の金属膜の厚さはほとんど問題にされてこなかった。それよりも素子を実装する放熱性の高いサブマウントとの接合がより重要であった。ところが、消費電力が大きく素子温度の高くなるGaN系III−V族化合物半導体の素子においては、放熱特性の重要度が大きくこれまでのGaAs、InP系のIII−V族化合物半導体材料での考え方が通用しない。素子上にヒートシンクとも考えられる膜厚の厚い金属膜を積層することにより放熱特性を向上し、素子温度の上昇を抑えることができ寿命の長期化を図ることができる。
【0019】
また、半導体素子をサブマウント上に実装する際にハンダ材料がもちいられるが、このハンダ材料はGaN系III−V族化合物半導体の結晶成長膜まで拡散し取り込まれると素子特性に致命的な悪影響をあたえる。そのため、ハンダ材料との接合部にあたる素子上の金属膜を厚くすることにより、拡散を防ぐことができる。また、ハンダ材料の拡散係数の小さな特定の金属を使用すると結晶成長膜へのハンダ材料の拡散をより効果的に防ぐことができる。
【0020】
また、GaN系III−V族化合物半導体は格子不整合系である。結晶成長膜と基板との格子定数が異なる、GaNから見てサファイアが約−14%、6HSiCが約−3.4%。GaN基板を使用したとしても、結晶成長膜中のAlGaN層とは格子不整合を生じ、その大きさはGaNからみてAlの組成比が0.1のとき約−0.25%である。加えてLDの活性層に使用するInGaNは、組成の増加に伴う不整合度の増加がAlGaNよりも大きく同じくInの組成比が0.1のとき1.1%になる。このために、GaN系III−V族化合物半導体は結晶成長膜中に大きな歪を内包している。
【0021】
この歪は、内部にピエゾ電界を生み出すなど、素子の特性に影響を及ぼすばかりか、歪が大きくなるとついにはクラックの発生に至り、素子を致命的に劣化させる。したがって内部に大きな歪を内包しているGaN系III−V族化合物半導体は外的な応力に対して非常に敏感でありかつ弱い。半導体プロセス中での昇温や降温に気を使わなければならないのはもちろんのこと、特に半導体素子をサブマウント上に実装するときに生じる歪が大きな問題となっている。
【0022】
サブマウント材料とハンダ材料と半導体素子の間では熱膨張係数が異なっているため、接合時の加熱処理により大きな応力が生じ半導体素子に歪がかかる。膜厚の厚い金属膜を半導体素子上に積層しておく事により、サブマウントやハンダ材料との熱膨張率差を吸収することができ、結果として半導体素子にかかる応力を小さく抑えひいては、例えば半導体レーザ素子において重要な活性層にかかる歪を小さくできる。
【0023】
また、GaN系III−V族化合物半導体はバンドギャップが大きいことから動作電圧が必然的に高く、そのため消費電力が従来のGaAs系やInP系III−V族化合物半導体に比べて大きい。これは発熱が大きいことを意味しており、素子寿命や特性を向上するためには素子の放熱が重要であることを示している。また、半導体レーザに関して言えば次世代の光ディスクの規格であるBlu−RayDiskでは、従来のCDやDVDに使われるものに比べて大きな光強度が求められている。
【0024】
さらに、倍速への対応、容量増加のための多層構造への対応を考えるとレーザ素子に求められる出力光の強度は増加の一途をたどる。このとこは、半導体素子の消費電力を大きくし必然的に発熱量の増加となる。この発熱量がGaAs系やInP系III−V族化合物半導体に比べると2〜10倍になる場合がある。したがって従来の半導体素子への電力供給を目的とした電極層(概して、その膜厚は1μm以下である)のみを介した放熱では不十分である事がわかってきており、電極層の上部、特に半導体レーザにおいては発熱の著しい、発光部であるリッジストライプ上部にヒートシンクとも考えられる膜厚の大きな金属層を配置することは放熱特性が改善し、素子特性や寿命の向上に貢献する。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の金属膜を積層した半導体素子とは、発光、増幅など主な機能を持った半導体素子とその上面もしくは下面、あるいは両面に積層された金属膜からなり、半導体素子の発光、増幅などの特性と素子寿命が改善されたものである。
【0026】
半導体素子に積層する金属膜の種類ははAu、Ag、Cu、Ni、Pd、Pt、Mg、Al、Ti、Cr、Co、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの内のいずれかを単体もしくは合金として使用し、一つもしくは二つ以上を積層して使用する。
【0027】
この中でもNi、TiやPtはサブマウントへのボンディングに使用するハンダ材料(Sn、Pb等)が結晶成長膜へ拡散し素子特性を劣化させることを防ぐバリア性に優れている。
【0028】
また、CrやTiなどは電極、結晶成長膜、基板や絶縁に使用する酸化物と密着性が高く、金属膜の剥がれを防止するのに有効である。
【0029】
また、Au、Cuなどは導電性と熱伝導特性に優れ、放熱を促進し、半導体素子への導電性を確保する事に優れている。
【0030】
これらの材料を単体もしくは合金として使用し、一つもしくは二つ以上を積層し組み合わせて使用することにより、所望の放熱性、歪の制御性、ハンダ材料の拡散防止といった機能を有した金属膜が得られる。
【0031】
金属膜の積層方法としては種々の方法が存在する、蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、メッキ等である。積層方法のいずれか1種類もしくは2種類以上を組み合わせて用いる。蒸着、イオンプレーティング、やスパッタリングによる方法は積層する金属の種類に柔軟に対応できる。また、本発明では、4μm以上(好ましくは6μm以上)と通常で厚膜といわれる厚さを積層する事になるので現実的なプロセスの時間やコストを考えると、高速で安価な手法が好ましく、これには現在のところメッキが適している。
【0032】
実際には半導体素子上にまず蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングのいずれかによりメッキの下地となる金属膜を形成し、その後メッキにより形成する。この際には、もちろん半導体の製造工程で通常もちいられる技術をもちいて、素子にあわせたパターニングが行われていることは言うまでも無い。
【0033】
【実施例】
以下に本発明を実施例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
実施例はまず、基板と結晶成長膜と電極からなる半導体素子を作成した。結晶成長膜としてはGaN系III−V族化合物半導体を、基板としてはサファイア基板に対して欠陥密度低減の為のELO技術をもちいてGaNを積層したものを用いた。半導体素子としては410nmに発振波長を持つ半導体レーザを選択した。
【0035】
以下の結晶成長とプロセスにより得られる、半導体素子の断面図を図1に示す。基板110上にn−GaN層108、n−AlGaNクラッド層107、n−GaNガイド層106、InGaN系MQW層105、p−GaNガイド層104、p−AlGaNクラッド層103からなる結晶成長膜をMOCVD法により形成した。MOCVD法でのGa源としてはトリメチルガリウム(TMG)を、Al源としてはトリメチルアルミニウム(TMA)、In源としてはトリメチルインジウム(TMI)を用いた。成長温度範囲は600℃から1100℃の間である。また、n型のドーパントしてSiを、p型のドーパントとしてMgを用いた。
【0036】
なお、基板110はGaN系III−V族化合物半導体を結晶成長可能な基板であれば問題なく、例としてサファイア、サファイア上の低転移化GaN、GaN基板、Si、GaAs等があげられる。また本特許において、半導体レーザとしての結晶成長膜における層構造の構成が上記の場合と異なる時にも、本特許が有効であることは言うまでも無い。
【0037】
この基板上の結晶成長膜に対して、通常の半導体製造工程によるプロセス工程を施し、リッジストライプの形成、絶縁膜102の形成、光閉じ込め絶縁膜の形成、n−GaN層の露出、p−電極101、n−電極109の形成を行った。以下、特に断りなきときには半導体素子とは図1に記載の半導体素子を指すこととする。また、図1に記載の半導体素子を、単に「素子」という場合がある。
(実施例1)
図2に実施例1にかかる金属膜を積層した半導体素子の断面図を示す、またその作成工程を図3に示した、詳細を以下で説明する。
【0038】
まず、半導体素子上全面に第1金属層301を形成した(図3(a))。第1金属層301の構成は、下から順にTi:50nm、Pt:100nm、Au:2000nmであった。この第1金属層301の形成には電子ビーム蒸着装置を用いた。
【0039】
次に、第1金属層301上にフォトレジスト302により第1金属層301のうち必要な部分のみを残すためのパターンを形成した(図3(b))。
【0040】
パターン形成後、第1金属層301に対してウェットエッチングを行った後、フォトレジスト302を除去した(図3(c))。
【0041】
フォトレジスト302を除去した後、第2金属層304を積層するためパターニングのためのフォトレジスト303をフォト工程により形成した(図3(d))。
【0042】
最後に、第2金属層304をAuメッキにより形成した。メッキの際には第1金属層301が下地の役割と、通電のための導電経路としての役割を果たす。第2金属層304の膜厚は10μmであった。なお、フォトレジスト303は、第2金属層304を形成した後、除去した(図3(e))。
【0043】
この実施例では、図2および図3(e)に示されるように、p型電極が、p−電極101、膜厚2150nmの第1金属層301、および膜厚10μmの第2金属層304とからなる。本発明では、このp−電極101、第1金属層301、および第2金属層304とからなるp型電極の厚みが4μm以上(好ましくは6μm以上)である。n型電極についても、これと同様に、n−電極109、第1金属層301、および第2金属層304からなるn型電極の厚みが4μm以上(好ましくは6μm以上)である。このように、電極は複数層の金属層から構成されていても良い。なお、p−電極101および第1金属層301の膜厚は第2金属層304の膜厚よりずっと小さいので、ここでは無視できる。
【0044】
この後裏面を研削研磨し、ウェハの膜厚を80μm以上200μm以下にし、ストライプ方向に垂直と水平の二回のヘキ開工程をへて半導体レーザのチップが完成する。
【0045】
半導体レーザチップのサブマウント上への実装は、結晶成長膜がサブマウント側にくるジャンクションダウンと呼ばれる方向で行った。実装後の模式図を図4に示した。レーザチップとサブマウント402の接合ハンダ材料401には金スズハンダを用いた。なお、本特許ではハンダの種類による効果の違いはなく、別の種類のハンダ材料を用いたとしても何ら問題はない。サブマウント402とレーザチップの両方を250度に加熱し、位置を合わせて接合した。またこの場合の実装温度は200℃以上300℃以下で行うことが重要である。レーザチップを実装したサブマウントをCuからなるベースに組んだ後、寿命試験を行った。寿命試験はある一定の光出力を出しつづけるAPCモードで行った。試験環境は室温25℃、光出力5mWの連続発振で行った。得られた半導体レーザの寿命試験時間に対する動作電流の上昇率を劣化率として図5に示した。
【0046】
第2金属層304の膜厚をそれぞれ6μm、4μm、3μmに代えた素子を作成し、同様に半導体レーザチップをサブマウント上に実装し、Cuからなるベースに組んだ後、同様の寿命試験を行った。劣化率を同じく図5に示した。
【0047】
なお、劣化率は以下のようにして算出した。まず、室温(25℃)において、素子に対して一定の電圧(5mW)を素子に印加し続けることにした。印加した直後の電流をI0、t時間経過後の電流をItとしたときに、劣化率=(It−I0)/tとして算出した。
【0048】
また、図5を作成する元となった、第1金属層301と第2金属層304とからなるp型電極の膜厚(表1では「金属層膜厚」と表記、すなわち第1金属層301の膜厚と第2金属層304の膜厚との和)と劣化率との関係を以下の表1に示す。
【0049】
【表1】
表1および図5から理解されるように、膜厚が4μm以下であれば劣化率を0.4mA/h以下とすることができ、膜厚が6μm以下であれば劣化率を0.1mA/h以下とすることができることが理解される。一方、膜厚が3μmである場合には、劣化率が1.3mA/hと非常に高く、素子の性能として劣ることが理解される。
【0050】
第1金属層301と第2金属層304とからなるp型電極の膜厚の最大は、100μmである。100μmを越えた場合には、半導体素子に対して非常に大きいp型電極を形成することになり、このようなp型電極の形成は困難である。
【0051】
なお、特許文献1には、膜厚を増やしていくと、劣化率が低下するという関係については言及されていない。
(実施例2)
実施例2として、半導体素子の基板をGaN基板もしくはその他の導電性のある基板を使用した素子を作成した。実施例2にかかる半導体素子の断面図を図6に示した。GaN基板601はn型のドーピングが施されており導電性があるため、実施例1では上方に形成したn−電極を半導体素子の下方に裏面n−電極602として形成することができる。また、その作成工程を以下に記す。
【0052】
半導体素子のp−電極上に実施例1での記載と同様にして金属層を10μmの膜厚でAuメッキにより形成する。次に基板を研削研磨しウェハの膜厚を80μm以上200μm以下にする。その後、裏面n−電極602を電子ビーム蒸着により形成する。次に表面と同様にして膜厚10μmの金属層603をAuメッキにて形成する。完成した後は実施例1と同様に半導体レーザチップをサブマウント上に実装し、Cuからなるベースに組んだ後、同様の寿命試験を行った。劣化率は0.02mA/hであり、実施例1とほぼ同様であった。
【0053】
【発明の効果】
本発明は、結晶成長膜と基板と、結晶成長膜を上方としたときの上方あるいは上方と下方の両方に電極が形成してあり、その電極の膜厚を4μm以上(好ましくは6μm以上)にすることにより、本発明に係る半導体素子は、特にGaN、AlGaNを一例とするGaN系III−V族化合物半導体において特に有効であり、素子特性の向上と寿命の長期化を可能とする。GaN系三−V族窒化物半導体は半導体レーザやLED、太陽電池、HEMT、HBT等の発光デバイスもしくは電子デバイスを作成するのに用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の方法により作成された半導体素子の断面図
【図2】金属膜を積層した半導体素子の断面図
【図3】金属層を積層した半導体素子を作成するためのプロセスフローを示す図
【図4】サブマウント上に実装した半導体レーザを表す模式図
【図5】積層した金属膜の膜厚変化による、半導体素子の寿命試験の劣化率を表した図
【図6】基板としてGaN基板(導電性)を使用したときの金属膜を積層した半導体素子の断面図
【符号の説明】
101:p−電極
102:絶縁膜
103:p−クラッド層
104:p−ガイド層
105:MQW活性層
106:n−ガイド層
107:n−クラッド層
108:n−GaN層
109:n−電極
110:基板
301:第1金属層
302:フォトレジスト
303:フォトレジスト
304:第2金属層
401:半導体チップをサブマウントに実装するためのハンダ材料
402:サブマウント
601:GaN基板
602:裏面n−電極
603:裏面n−電極上に積層した金属層
Claims (7)
- 結晶成長膜と基板と、結晶成長膜を上方としたときの上方あるいは上方と下方の両方に電極が形成してあり、その電極の膜厚が4μm以上である、半導体素子。
- 請求項1に記載の半導体素子であって、金属膜がAu、Ag、Cu、Ni、Pd、Pt、Mg、Al、Ti、Cr、Co、Zr、Nb、Mo、Ta、Wの内のいずれかを単体もしくは合金として使用し、一つもしくは二つ以上を積層して使用したものであることを特徴とする半導体素子。
- 請求項2に記載の半導体素子であって、その金属膜の積層方法が蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、メッキの内のどれか一つ、もしくは二つ以上を組み合わせたものであることを特徴とする半導体素子。
- 請求項1に記載の半導体素子であって、上記電極の上層に加えて、それ以外の場所にも上記金属膜を積層することを特徴とする半導体素子。
- 請求項に1に記載の半導体素子であって、二つ以上の電極が半導体素子の上方に形成されており、その高さが異なるとき上記積層金属の膜厚により二つ以上の電極の高さを水平にすることを特徴とする半導体素子。
- 請求項1に記載の半導体素子であって、結晶成長膜がGaN系III−V族化合物半導体であることを特徴とする半導体素子。
- 請求項1に記載の半導体素子であって、半導体素子が半導体レーザであることを特徴とする半導体素子。
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- 2003-04-07 JP JP2003102607A patent/JP2004311678A/ja active Pending
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