JP2004309301A - 部分放電計測装置およびこの装置に用いる信号処理回路 - Google Patents
部分放電計測装置およびこの装置に用いる信号処理回路 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】パルス性またはパルスの後に振動を含む電気的な部分放電信号波形を、並列に接続した正極性および負極性の各半波の尖頭値検出回路および前記尖頭値検出回路の出力を加算する加算回路からなる演算回路を複数接続した構成とすることで、部分放電信号波形の最初の半波ピーク値および極性を持つ単一半波のみに波形整形するので、尖頭値および極性の誤検出を防止し、精度の高い信号検出を可能にする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、部分放電計測機器およびこの装置に用いる信号処理回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
高電圧回転機を長期にわたり運用する際には、電気的、熱的、機械的や環境的なストレスにより、機器内部の電気絶縁体の劣化が進行する。この絶縁体の劣化により最終的に絶縁破壊ひいては機器の故障に至ることから、機器の絶縁劣化を精度よく検出することは、機器の信頼性向上や運転管理の観点から極めて重要である。
【0003】
ところで、絶縁体の劣化を検出する方法として、絶縁劣化に伴い発生するパルス状の部分放電信号を機器内部および外部に据え付けたセンサで検出し、この検出信号をハードおよびソフトウエアで処理して定量化、分析する方法が知られている。波形を処理する際には、検出された部分放電のアナログ波形をアナログ・ディジタル変換して、コンピュータに取り込み統計的解析や波形分析などが行われる。このような技術は、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3等に開示されており、部分放電パルスを直接フィルタ、ピークホールド回路およびアナログ・ディジタル変換回路に通して部分放電信号の尖頭値をコンピュータに記録するものである。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−182257号公報
【特許文献2】
特開2001−264378公報
【特許文献3】
特開2002−71742公報
【0005】
しかし、絶縁劣化部分放電のパルス性の信号波形は、伝搬経路での反射や振動などにより、正および負極性に振動する場合が多い。このため、パルスの尖頭値および極性を検出するときには、パルス波形後に発生する振動や反射波によって尖頭値や極性の誤検出が起こる場合があり、部分放電信号の検出精度が低下するという問題があった。また、信号波形の検出精度を高めるために、信号のディジタル化時におけるサンプリング数を増大させると、単位時間あたりのデータ数が増大しデータ容量の増大および転送や解析に時間がかかりすぎるという問題があった。
【0006】
さらに、部分放電検出に際しては、部分放電信号だけでなく周囲環境からのノイズ信号も検出される場合が多い。ノイズ信号が混入すると、ノイズ信号と部分放電信号の区別が付きにくいため、絶縁診断、特にオンライン診断においては診断精度を低下させる要因であるノイズ信号の除去・低減が必要不可欠である。例えば、特許文献1では、ノイズ対策として計測装置のノイズ除去用に電源ケーブルの配電盤側および機器の電源ケーブル接続部にノイズフィルタを取り付けるなどの対策が行われてきた。しかしながら、すべての場合にノイズフィルタが取付けできるとは限らないことや、ノイズフィルタを取り付けるなどの対策を行ってもノイズが混入する場合がある。そうなると、精度の高い部分放電検出および絶縁診断ができないという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記情況に鑑みてなされたもので、その課題は高電圧回転機で発生した部分放電信号の尖頭値と極性を検出する信号処理回路とその信号処理回路を用いた部分放電計測装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、請求項1に記載の信号処理回路の発明は、パルス性またはパルスの後に振動を含む電気的な部分放電信号波形の尖頭値を検出する、並列に接続した正極性および負極性の各半波の尖頭値検出回路と前記両尖頭値検出回路の出力を加算する加算回路とからなる演算回路を、複数接続した構成とし、部分放電信号波形の最初の半波ピーク値および極性を持つ単一半波のみに波形整形することを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によると、信号処理回路において、並列に接続した正極性および負極性の各半波の尖頭値検出回路と、この尖頭値検出回路の出力を加算する加算回路からなる演算回路を、複数接続した構成とすることで、複数の尖頭値を持つ部分放電信号波形の最初の尖頭値および極性の単一半波に整形することができるので、尖頭値および極性の誤検出を防止し、精度の高い信号検出を可能にする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の信号処理回路において、前記尖頭値検出回路は、部分放電信号波形の尖頭値および極性をディジタル化する信号処理回路の前段に積分方式の尖頭値検出回路を設け、検出信号を低周波化することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によると、請求項1に記載の信号処理回路において、積分方式の尖頭値検出回路の採用で信号を低周波化することにより、部分放電信号波形の尖頭値および極性のディジタル化時に発生するサンプリング誤差を小さくすることによって検出精度を向上することができ、さらに、低周波化することにより単位時間あたりのサンプリング点数を減らすことによってデータ数を減らし、データ転送効率の向上および解析時間の短縮を可能にする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の信号処理回路において、部分放電信号波形の尖頭値検出後に不感時間帯を設けることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によると、波形整形前の複数の尖頭値を持つ部分放電信号波形で最初の半波の尖頭値が2番目の半波の尖頭値よりも低い場合には、波形整形後に部分放電波形の最初の尖頭値および極性からなる単一半波と2番目の尖頭値および極性からなる単一半波の2つが出力されるため、最初の半波の信号検出後に不感時間帯を設けることによって、2番目の半波を無視して尖頭値および極性の誤検出を防止し、精度の高い信号検出を可能にする。
【0014】
請求項4に記載の部分放電計測装置の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の信号処理回路を、高電圧回転機中で発生する部分放電信号の処理に使用することを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によると、部分放電計測装置は、計測回路の振動や反射によって生じる複数の尖頭値および極性の半波から成る部分放電の信号波形の尖頭値および極性を正確に検出することによって、精度の高い絶縁診断を可能にする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の信号処理回路において、部分放電信号が発生したときに尖頭値のみをディジタル化し記憶装置に取り込むことを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によると、部分放電計測装置は、信号が検出された場合のみ尖頭値および極性をディジタル化して記憶装置に保存することによって、単位時間あたりのデータ量を減らしデータ転送効率の向上および解析時間の短縮を可能にし、また、同一容量の記憶装置に対してより多数の信号を記憶でき、多データの解析により精度の高い絶縁診断を可能にする。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項4または請求項5に記載の部分放電計測装置において、周波数帯域5MHz以上で部分放電信号を検出・処理することを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明によると、ノイズの主要因であるインバータからのノイズ信号は主に2MHz以下であるのに対して、部分放電信号は十数MHz以上の高い周波数成分を含むことから、部分放電計測装置にハイパスフィルタを用いて5MHz以上の信号を検出、波形整形処理することによって、インバータノイズ信号を除去・低減して、精度の高い部分放電検出および絶縁診断を可能にする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施形態の信号処理回路のブロック図である。
図に示すように、本実施形態の信号処理回路30は、並列に接続した2つの正極性および負極性の各半波の尖頭値検出回路20A,20Bおよびこの両尖頭値検出回路20A,20Bの出力を加算する加算回路21からなる第1段目演算回路27と、この第1段目演算回路27と同一構成の第2段目演算回路27とから構成されている。この尖頭値検出回路は図5に示すように、パルス性の部分放電波形1の尖頭値を保持し、検出回路中の積分回路の時定数によって決まる波尾長をもつ単一パルスを出力する。また加算回路21では、2つの端子23,24に入力された信号波形の瞬時値を加算する。信号処理は、尖頭値検出回路と加算回路の組み合わせを繰り返した構成になっている。
【0021】
図2および図3は、第1実施形態の信号処理過程を明らかにするために、入力された部分放電波形1および図1のブロック図の各節点を通過する波形の概略図を示している。すなわち、図2(a)および図3(a)に示した入力振動波形1のうち、先頭のパルス波形を第1波、次の逆極性に振動した波形を第2波、さらにその次の振動半波を第3波と順に名づける。理想的な場合の入力信号は、振動波形の第1波の尖頭値が最も大きく、振幅は徐々に減衰してやがて無視できるほど小さくなる。
【0022】
次に、信号処理過程を、図2(a)のような入力波1の第1波が正極性の場合を例に説明する。正極性の尖頭値をもつ第1波が節点22から尖頭値検出回路に入ると、1段目の正極性の尖頭値検出回路20Aによって図2(b)に示すように第1波の尖頭値に比例した尖頭値をもち振動波よりも波尾長の長い正極性の単一パルス波形5に整形され、節点23に出力される。続いて第2波の負極性の半波が節点22から回路に入ると、1段目の負極性の尖頭値検出回路20Bによって図2(c)に示すように第2波の尖頭値に比例した尖頭値をもつ負極性の単一パルス波形6に整形され、節点24に出力される。次に、正負の単一波形は1段目の加算回路21で加算される。それぞれの単一整形波の波尾長が入力波の振動周期に比べて十分長ければ、図2(d)に示すように、正の第1波形の波尾は負の第2波形との加算によって小さくなり、1波目のみの単一パルス波形7が節点25に出力されることになる。次に、第2段目の正極性および負極性の尖頭値検出回路によって、図2(e)および(f)に示すように、負の尖頭値検出回路の出力9はゼロで、正の尖頭値検出回路の出力は、入力波形の尖頭値に比例した尖頭値を持ち、波尾が図2(a)の入力パルスの振動波形よりも長い単一パルス8が現れる。続いて、第2段の加算回路によって、図2(g)に示すような正極性の単一パルス10が節点26より出力される。
【0023】
このようにして、第1波が正極性の振動波形は、図1に示した信号処理回路によって、第1波の尖頭値に比例した尖頭値を持ち、波尾が振動せず長い波形に整形される。
【0024】
図3(a)〜(g)には、第1波が負極性の場合の波形整形の概略を示す。この場合、第1波が正極性の場合の図2において、第1波が負極性であるので、その後の波形処理は図2の正極波を負極波として処理すればよく、その結果として図3(a)〜(g)が得られるが、その説明は重複するので省略する。
しかし、計測対象機器や計測条件によっては、図2(a)の場合と異なり、入力波の第2波の尖頭値の方が第1波の尖頭値より大きい場合が現れる。
【0025】
図4は、第2波の尖頭値が大きい場合の波形処理過程を示す。図4(a)のように第2波目の尖頭値が大きい波形1が入力されると、第1段目の加算回路の出力波形は図4(d)に示すように正負の2つの尖頭値をもつ波形7になる。しかし、第2段目の尖頭値検出回路および加算回路によって、図4(g)に示すように単一パルス10に整形することができる。
【0026】
このように、並列に接続した2つの正極性および負極性の各半波の尖頭値検出回路および前記両尖頭値検出回路の出力を加算する加算回路(波形演算回路)からなる第1段目演算回路およびその演算回路を複数接続構成することにより、第1波ないしは第2波の尖頭値のいずれが大きい振動を有する部分放電波形においても、最初の半波ピーク値および極性を持つ単一半波のみに波形整形することができ、精度よく部分放電パルスの大きさと極性を検出する信号処理回路を提供できる。
【0027】
図5は本発明の第2実施形態の信号処理を説明するフロー図である。
図5の本実施形態は、図1の信号処理回路30中の尖頭値検出回路において、積分方式の検出回路の採用で入力された部分放電信号1をこのように低周波2化し、アナログ・ディジタル変換回路31によって尖頭値を検出し、記憶回路32に記憶する信号処理のフロー図である。すなわち、図5において、尖頭値検出回路に入力されるパルス性およびパルス後に振動する部分放電波形1を積分することにより、積分回路の時定数によって決まる波尾長をもつ単一パルス波形2を出力する。
【0028】
図6は、振動波および波尾長の長い単一パルス波のディジタル化(サンプリング)を示す図である。
図6に示すように、入力波1を波尾長の長い波形3に整形し、サンプリングすることによって、サンプリングによる尖頭値の誤差が小さくなる。また、波尾長の長い波形に必要なサンプリング数が少ないために、データの記憶量を少なくすることができ、効率のよいデータ転送が可能になる。ここで、2は入力波の第1波の尖頭値、4は整形後の波形の尖頭値、5はサンプリング時間、6は波形サンプリング値、7はサンプリング値の誤差、8は電圧0レベルである。
【0029】
このように、図1の多段の尖頭値検出回路に積分方式の尖頭値検出回路を採用することにより、振動を有する部分放電波形のピーク値および極性の検出誤差を少なくし、データ記憶量およびデータ転送効率を改善することが可能な信号処理回路を提供できる。
【0030】
図7は本発明の第3実施形態の部分放電検出方法を示すフロー図である。
図7(a)に示すように、図1に示す多段の尖頭値検出回路30および図4に示したアナログ・ディジタル変換回路31からサンプリング値ピーク値検出回路33に検出不感時間帯34を採用し、記憶装置32に記憶する部分放電検出方法を示している。
【0031】
また、図7(b)に示すように、サンプリング値ピーク検出回路33によって最初の半波の尖頭値のみ(点3)を記憶装置32に取り込こんだ後の一定時間、不感帯として記憶装置への取り込みを停止する。ここで2は信号波形、3はサンプリング値、4は検出不感時間、5は電圧0レベルである。
【0032】
適用例として、図8(a)の波形に示すように、計測対象機や計測条件によっては、パルス性およびパルス後に振動を有する部分放電波形において、第2波の尖頭値が第1波目の尖頭値の2倍よりも大きい波形が生じる場合がある。このとき、信号処理過程は図2と同様であるが、図1に示した信号処理回路の出力波形は、図8(g)のような入力振動波形10の第1波と同極性のパルスのほかに、第2波分の極性の異なるパルス波形も出力される。また、図8(g)に示した波形の尖頭値を検出する場合、第1波の尖頭値を検出した後に検出不感時間11を設けることによって、第1波と極性および尖頭値が異なる第2波や第3波の誤検出を防ぐことができる。
【0033】
このように、多段の尖頭値検出回路の後段に取り付けられたアナログ・ディジタル変換回路に検出不感時間帯を採用することによって、尖頭値の誤検出を防ぐことができ、精度よく部分放電パルスの大きさおよび極性を検出する回路を提供できる。また、部分放電パルスの尖頭値のみを記憶装置に取り込むことによって、単位時間あたりのデータ数を減らしデータ転送効率の向上および解析時間を短縮するとともに、同一容量の記憶装置により多数の部分放電パルスデータを蓄積することができるため、一度の記憶装置からのデータ転送で多数のパルスデータを取得でき、効率よく精度の高い部分放電データ取得が可能な信号処理回路を提供できる。なお、波形の振動の持続時間は機器によって異なるが、不感時間帯として5〜15μsが好適である。
【0034】
図9は本発明の第4実施形態の部分放電検出装置のブロック図である。
図に示すように、本実施形態は第1実施形態乃至第3実施形態の信号処理回路を用いている。すなわち、本実施形態の構成は、後記する第5実施形態に示すように、カットオフ周波数5MHzのハイパスフィルタ回路35を前段に備え、第1乃至第3実施形態の多段の尖頭値検出回路および演算回路27、アナログ・ディジタル変換回路31、不感時間帯34を設けたピーク値検出回路33および記憶装置32から構成されている。なお、パーソナルコンピュータ37を接続して、部分放電計測器の制御およびデータ取得を行うこともできる。36は増幅器である。
【0035】
図10は、図9の部分放電計測器に第1〜第3実施形態の信号処理、アナログ・ディジタル変換回路および検出不感時間帯を採用した部分放電計測方法を示す図である。
【0036】
高圧電気機器内部で発生するパルス性の部分放電の電気的、光学的、音響的な信号を機器38内や外部に取り付けられたセンサ39によって検出し、電気信号を取り出しあるいは電気信号に変換して部分放電計測装置40で信号処理する。41は電力供給用電線、42は接地点である。
【0037】
図11(a)は、電動機の高電圧線端子に取り付けられた高周波変流器によって検出された正極性の部分放電パルス波形1であり、図11(b)は、図11(a)の部分放電パルスが部分放電計測装置内の尖頭値検出および加算回路で波形整形された後の波形2である。
【0038】
図11(a)および(b)は同時に観測されたもので、図11(a)の時間軸の1目盛は0.05μs、図11(b)の時間軸の1目盛は0.2μsである。なお、図11(b)の単一パルスが立上る時間は図11(a)の部分放電パルスに比べて遅くなるが、これは信号処理による時間遅れのためである。
【0039】
図11(a)および(b)に示すように、部分放電信号がもつパルス性の振動波形を部分放電計測装置によって振動波形の第1波と同一の極性で波尾長の長い単一のパルスに整形することができる。前記第2実施形態に示したように、整形後の波形をディジタル化することにより部分放電信号の極性および尖頭値の取り込み誤差が小さくできる。さらに、前記第3実施形態に示したように尖頭値検出後に不感時間をおき尖頭値のみを記憶装置に取り込むことによって、単位時間あたりのデータ量を減少させデータ転送効率の向上および解析時間の短縮を可能にするとともに、一度の計測で多数の部分放電データを取得・解析することができ、精度よい診断が可能になる。
【0040】
このように、部分放電計測装置に信号処理、アナログ・ディジタル変換回路および検出不感時間帯を有する信号処理回路を備えることによって、精度良い検出および診断が可能な部分放電計測装置を提供できる。
【0041】
図12は本発明の第5実施形態の部分放電計測装置の検出周波数帯域を示す図である。すなわち周波数帯域5MHz以上で電気パルスを検出・処理することにより、ノイズ信号を除去するように部分放電計測装置の検出周波数帯域を示している。
【0042】
図13は外来ノイズの主要因であるインバータノイズの計測波形例(負極性)を示す図である。
機器によって異なるが、インバータノイズ波形1は、図14に定義されるように、波形の尖頭値2と立上り時間4で決まる。3は0レベルである。普通第1波の立ち上がり時間が0.4μs程度であり、周波数成分は数MHz以下が主である。
一方、図11(a)に示すように、部分放電信号の第1波の立ち上がり時間は0.01μs以下(数ns)程度であり、数十MHzの周波数成分を含む。
【0043】
そこで、検出器の検出周波数帯域を5MHz以上にすれば、低周波のインバータノイズの波高値を1/2以下(−6dB/octのハイパスフィルタを採用した場合)に低減できることになる。そのため、図9に示すように、第4実施形態に示した部分放電計測装置の内部の信号処理回路にカットオフ周波数5MHzのハイパスフィルタ35を設けている。
【0044】
図15は、部分放電検出の一実施例として部分放電計測装置のインバータノイズおよび部分放電信号の検出試験方法を示す図である。
図において、43は交流電源、44は変圧器、45はモデル電動機バーコイル、46は部分放電計測装置、47は結合コンデンサ、48は検出抵抗、49はインバータ、50は接地点である。ここで電動機の固定子コイルを模擬したモデルコイル45に電圧を5kV印加して、部分放電を発生させる。これと同時に、インバータ49を駆動させてノイズを発生させる。インバータノイズは電力線およびアース線を伝わって部分放電計測装置46に進入するものと考えられる。
【0045】
図16は部分放電またはインバータノイズが入力された場合の計測装置の応答を示す図であり、同図(a)は部分放電信号が部分放電計測装置に入力された場合、同図(b)はインバータノイズが計測装置に入力された場合の計測装置の応答を示したものである。ここで、1は部分放電計測装置への入力部分放電信号、2は部分放電計測装置の出力応答信号、3は部分放電計測装置への入力ノイズ信号、4は部分放電計測装置の出力応答信号、5は時間軸、6は電圧軸である。
【0046】
図16に示すように、部分放電計測装置は、インバータノイズには応答しないのに対して、部分放電信号に応答することが分かる。これにより、部分放電信号のみを検出できる。
【0047】
このように、第1実施形態乃至第3実施形態の信号検出回路を有する部分放電計測装置において、カットオフ周波数5MHz以上の部分放電信号を検出・処理することにより、ノイズ信号を除去・低減することができ、検出精度および診断精度の高い部分放電計測装置を提供できる。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る信号処理回路は、尖頭値検出回路と加算回路から成る多段の信号処理回路、積分回路を用いた尖頭値検出回路および尖頭値検出後に不感時間帯を設けることによって、部分放電信号の検出精度を向上することができる。
【0049】
また、本発明に係る部分放電計測装置は、上記の信号処理回路および5MHz以上の検出周波数帯域を採用することにより、ノイズ除去・低減を行い多数の部分放電信号を精度よく検出し、絶縁診断することができる。さらに、この装置に信号処理回路を用いることにより、精度の高い部分放電検出および絶縁診断を可能にすることが可能になり、高電圧回転機の適正な補修計画の策定および信頼性の向上に大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の信号処理回路のブロック図。
【図2】図1の信号処理過程を示す図。
【図3】図1の他の信号処理過程を示す図。
【図4】図1のさらに他の信号処理過程を示す図。
【図5】本発明の第2実施形態の信号処理のフロー図。
【図6】図5の入力波のディジタル化を示す図。
【図7】本発明の第3実施形態の信号処理のフロー図。
【図8】図7の信号処理過程を示す図。
【図9】本発明の第4実施形態の部分放電検出装置のブロック図。
【図10】図9の部分放電検出装置を用いた測定例を示す図。
【図11】第4実施形態の信号処理した波形を示す図。
【図12】本発明の第5実施形態による検出周波数帯域を示す概念図。
【図13】図12で用いるインバータノイズの計測波形図。
【図14】図12で用いるインバータノイズ波形を定義する図。
【図15】図12における部分放電信号の検出試験方法を示す回路図。
【図16】図15において計測装置の応答を示す図。
【符号の説明】
20A,20B…尖頭値検出回路、21…加算回路、22,23,24,25,26…節点、27…演算回路、30…信号処理回路、31…アナログ・ディジタル変換回路、32…記憶回路、33…サンプリング値ピーク値検出回路、34…検出不感時間帯、35…ハイパスフィルタ回路、36…増幅器、37…パーソナルコンピュータ、38…機器、39…センサ、40…部分放電計測装置、41…電力供給用電線、42…接地点、43…交流電源、44…変圧器、45…モデル電動機バーコイル、46…部分放電計測装置、47…結合コンデンサ、48…検出抵抗、49…インバータ、50…接地点。
Claims (6)
- パルス性またはパルスの後に振動を含む電気的な部分放電信号波形の尖頭値を検出する並列に接続した正極性および負極性の各半波の尖頭値検出回路と、前記両尖頭値検出回路の出力を加算する加算回路とからなる演算回路を、複数接続した構成とし、前記部分放電信号波形の最初の半波ピーク値および極性を持つ単一半波のみを波形整形することを特徴とする信号処理回路。
- 請求項1に記載の信号処理回路において、前記尖頭値検出回路は、部分放電信号波形の尖頭値および極性をディジタル化する信号処理回路の前段に積分方式の尖頭値検出回路を設け、検出信号を低周波化することを特徴とする信号処理回路。
- 請求項1または請求項2に記載の信号処理回路において、部分放電信号波形の尖頭値検出後に不感時間帯を設けることを特徴とする信号処理回路。
- 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の信号処理回路を、高電圧回転機中で発生する部分放電信号の処理に使用することを特徴とする部分放電計測装置。
- 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の信号処理回路を用いた部分放電計測装置において、部分放電信号が発生したときに尖頭値のみをディジタル化し記憶装置に取り込むことを特徴とする部分放電計測装置。
- 請求項4または請求項5に記載の部分放電計測装置において、周波数帯域5MHz以上で部分放電信号を検出・処理することを特徴とする部分放電計測装置。
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