JP2004309075A - フィン部材を内装した伝熱管及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属製の素管2内に、管軸方向に長尺で軸中心部から少なくとも2方向にフィン3を突出した金属製の板状フィン部材4を挿入配設して伝熱管1を得る。また、板状フィン部材4の外方向の先端側に、素管2への挿入配設前は素管2の内周面よりも外方に配置可能に密着面5を形成する。また、素管2への挿入時は、密着面5を内方に弾性変形させて挿入し、弾性復元力により密着面5を素管2の内周面に対応させて密着固定させる。
【選択図】 図1
Description
【産業上の利用分野】
本発明は、EGRガス冷却装置等の多管式熱交換器、ラジエーター組込式オイルクーラーにて、冷却水、冷却風、カーエアコン用冷媒、その他の冷媒液等の冷却媒体と、EGRガス、煤を含有する燃焼排気ガス等の被冷却高温熱媒体流体との熱交換を行うために用いるもの等、種々の用途のフィン部材を内装した伝熱管及びその製造方法に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平11−108578号公報
【特許文献2】特開2000−179410号公報
【特許文献3】特開2001−227413号公報
【0003】
従来、自動車のエンジン等では、排気ガスの一部を排気ガス系から取り出して、再びエンジンの吸気系に戻し、混合気や吸入空気に加えるEGRシステムが、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンに用いられていた。EGRシステム、特にディーゼルエンジンの高EGR率のクールドEGRシステムでは、排気ガス中のNOxを低減し、燃費の悪化を防止するとともに、過剰な温度上昇によるEGRバルブの機能低下や耐久性の低下を防止するため、高温化したEGRガスを冷却水、冷却風、カーエアコン用冷媒、その他の冷媒液等の冷却媒体で冷却するEGRガス冷却装置を設けている。
【0004】
そして、このEGRガス冷却装置として、上記特許文献1〜特許文献3の従来発明等に示す如く、内部をEGRガスが流通可能な複数の細径の伝熱管を配置し、この伝熱管の外側に冷却水や冷却風、冷媒液等の冷却媒体を流通させる事により、伝熱管を介してEGRガスと冷却媒体との熱交換を行うものが存在した。
【0005】
上述の如きEGRガス冷却装置で使用する伝熱管は、内周面が平滑な金属管が多く用いられているが、このような伝熱管ではEGRガスの殆どが伝熱管の中心付近を高速に流動し、伝熱管の内周面側を通過するEGRガスから熱が伝導されるのみで、冷却媒体との熱交換が行われにくかった。この熱交換性能の向上のため、前記特許文献1、2の従来発明では、内周面に突起を突設した金属製の素管内に、平板を螺旋状に捻って形成したフィン部材を挿入配設して伝熱管を形成している。また、特許文献3では、素管内に平板状のフィン部材を一体に突出して伝熱管を形成している。
【0006】
このように、素管内に螺旋状に捻ったフィン部材を配設したり平板状のフィン部材を一体に突設する事で、伝熱管の伝熱面積を増大させ、EGRガスと伝熱管との熱伝導性を高め、伝熱管内のEGRガスの流れを乱流化して、EGRガスの伝熱管内の流動距離を長くし、伝熱管とEGRガスとの接触時間を長くする事で、伝熱管を介したEGRガスと冷却媒体との熱交換効率を高めようとしていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1、2の従来技術では、フィン部材と素管との接触は、フィン部材の両側縁と、素管の内周面の突起部分との断続した点接触である。また、特許文献3の従来技術では、フィン部材の外周縁と素管の内周面との線接触である。そのため、何れもフィン部材と素管との接触面積が少なく、フィン部材がEGRガスの熱を受熱しても、フィン部材から素管への熱伝達が十分に行われず、EGRガスと伝熱管の外周を流動する冷却媒体との熱交換効率を高めるには限界があった。また、素管との接触が線接触や断続した点接触では、フィン部材の固定性が悪く、伝熱管の振動や流体の流動力により、フィン部材のブレや変形を生じ易く、伝熱管の熱交換機能や耐久性を損なう可能性もあった。
【0008】
本発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、伝熱管の素管内に挿入配設するフィン部材と素管との接触面積を多くする事により、フィン部材と素管との熱伝導性を高め、その結果、伝熱管内部を流動する流体と、該伝熱管の外部を流動する流体との熱交換性能を向上させようとするものである。更に、素管内でのフィン部材の固定性を高め、流体の流動や伝熱管の振動等によるフィン部材のブレや変形を抑制して、伝熱管の使用性や耐久性を向上させる事を可能とするものである。また、このような熱交換性能や耐久性等に優れる伝熱管を製作可能な製造方法を得るものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述の如き課題を解決するため、第1の発明は、金属製の素管内に、管軸方向に長尺で軸中心部から少なくとも2方向にフィンを突出した金属製の板状フィン部材を挿入配設し、この板状フィン部材の外方向の先端側に、素管の内周面の一部に対応させて面接触可能に密着面を形成し、板状フィン部材の素管への挿入配設前は、密着面が素管の内周面よりも外方に配置されるような直径で板状フィン部材を形成するとともに、板状フィン部材の素管への挿入配設時は、密着面を内方に弾性変形させて素管内に挿入し、密着面の弾性復元力により該密着面を素管の内周面に対応させて密着固定させて成るフィン部材を内装した伝熱管である。
【0010】
また、第2の発明は、管軸方向に長尺で軸中心部から少なくとも2方向にフィンを突出して金属製の板状フィン部材を形成し、この板状フィン部材の外方向の先端側に、素管の内周面の一部に対応させて面接触可能に密着面を形成するとともに、この密着面が素管の内周面よりも外方に配置されるような直径で板状フィン部材を形成する工程と、素管の内周面よりも外方に配置された密着面を、内方に弾性変形させながら板状フィン部材を素管内に挿入し、密着面の弾性復元力により該密着面を素管の内周面に対応させて密着固定させ、板状フィン部材を素管に挿入配設する工程とから成るフィン部材を内装した伝熱管の製造方法である。
【0011】
また、密着面は、板状フィン部材の外方向の先端部を素管の内周面の一部に対応させて密着可能とする事により形成しても良い。
【0012】
また、密着面は、板状フィン部材の外方向の先端部に金属製の伝熱板を接続し、この伝熱板の外周面を素管の内周面の一部に対応させて密着可能とする事により形成しても良い。
【0013】
【作用】
本発明は上述の如く構成したものであり、伝熱管を形成するには、まず第1工程では、管軸方向に長尺で軸中心部から少なくとも2方向にフィンを突出して金属製の板状フィン部材を形成する。この板状フィン部材の外方向の先端側には、素管の内周面の一部に対応させて面接触可能に密着面を形成する。そして、この密着面が素管の内周面よりも外方に配置されるような直径で板状フィン部材を形成する。
【0014】
次に、第2工程では、第1工程で形成した板状フィン部材を金属製の素管に挿入配設して、伝熱管を形成するものであるが、板状フィン部材は、素管への挿入配設前は、密着面が素管の内周面よりも外方に配置されるような直径で形成している。このような板状フィン部材を素管に挿入配設する際には、密着面を内方に弾性変形させて外径を縮径させながら素管内に挿入する。この挿入が完了すると、密着面の弾性復元力により該密着面が素管の内周面に対応して面接触するとともに、その弾性復元力により板状フィン部材が素管の内周面に強く密着固定するものとなる。
【0015】
上述の如く、熱伝導性に優れる金属製の素管内に、軸中心部から少なくとも2方向にフィンを突出して形成した金属製の板状フィン部材を挿入配設する事で、伝熱管の伝熱面積を増大させる事ができ、伝熱管の吸熱特性や放熱特性を向上させる事ができる。そして、従来のフィン部材を配設しない伝熱管では、素管の内周面付近を流動する一部の流体の熱のみが伝熱管に伝達され、大部分の流体は伝熱管に熱を伝達する事なく伝熱管内を高速に通過していたが、本発明の伝熱管では、外方向に複数のフィンを突設している事で、伝熱管の内部空間が分割され、流体の流れの偏りを防ぎ、伝熱管内を流体が素管の内周面だけでなく板状フィン部材の表面と接触しながら分散して流動するものとなり、流体と伝熱管間の熱伝導を効率的に行う事ができる。
【0016】
また、板状フィン部材の外方向の先端側に設けた密着面を、素管の内周面の一部に対応して面接触させているので、特許文献1〜3の従来発明等の如く金属管と板状フィン部材とが点接触又は線接触する伝熱管に比べて、板状フィン部材と素管との互いの接触面積を多くする事ができ、板状フィン部材と素管との熱伝導性を高める事ができる。
【0017】
従って、例えば本発明の伝熱管内に高温のEGRガスを流動させて冷媒液により冷却を行う際に、本発明の伝熱管では、EGRガスの熱を、素管の壁面だけでなく板状フィン部材に効率的に伝達させる事ができる。そして、素管と面接触する板状フィン部材の密着面により、板状フィン部材から素管への熱の伝達が促進され、この熱が素管の外表面を介して外部を流動する冷媒液に放熱される事で、冷媒液とEGRガスとの熱交換を効率的に行う事が可能となるとともに、EGRガスをムラ無く均一に冷却する事が可能となる。
【0018】
また、素管及び板状フィン部材を形成する金属材は、銅、アルミニウム、黄銅、又はステンレス等を用いる事により、熱伝導性に優れるとともにEGRガス等に対する耐食性にも優れた伝熱管を得る事ができる。また、素管と板状フィン部材を、同一の金属で形成しても良いし、異なる金属を用いて形成しても良い。また、耐食性を更に高めるため、前述の如き金属材に、亜鉛、銅、錫、錫−亜鉛合金、ニッケル、亜鉛−ニッケル合金等から成る1層のメッキ処理を行い、必要に応じクロメート被膜等を施しても良いし、金属材の外表面にニッケルをメッキし、このニッケルの外周面に更に亜鉛−ニッケル合金をメッキする等、2層以上のメッキ処理を行っても良い。
【0019】
また、板状フィン部材は、前述の如く密着面の弾性復元力により素管の内周面に強く密着固定しているので、素管内での固定性が良い。しかし、溶接やろう付け等により双方を接続固定すれば、素管内での板状フィン部材の固定性を更に高める事ができ、流体の流動や伝熱管の振動等による板状フィン部材のブレや変形を防ぐので、伝熱管の使用性や耐久性を向上させる事も可能となる。更に、素管の内周面に板状フィン部材の密着面をろう付けする場合は、板状フィン部材と素管の内周面との伝熱が、密着面だけでなくろう材のフィレットをも介して行われるので、熱伝導性が更に高まり、伝熱管の熱交換性能を向上させる事ができる。
【0020】
そして、このろう付けの際は、素管への板状フィン部材の挿入前に、各フィンの少なくとも密着面の両側縁、又は密着面の素管への密着側にろう材をメッキしておく。このろう材のメッキは、好ましくは作業が容易な事からフィン部材の全表面に施しても良いし、素管の内周面にろう材をメッキしても良い。
【0021】
また、板状フィン部材の形成素材にろう材をクラッドし、このクラッド材を加工してフィン部材を形成しても良い。また、密着面にろう材付着用のバインダーを塗布した板状フィン部材を素管に挿入後、該素管内にパウダー状のろう材を供給しても良い。また、密着面にろう材ペーストを供給した板状フィン部材を素管へ挿入しても良いし、素管内に板状フィン部材を挿入後、該素管内にろう材ペーストを供給しても良い。何れの場合でも、素管内に板状フィン部材を挿入配設して伝熱管を完成した後に、ろう付けを行うか、又は伝熱管を多管式熱交換器やラジエーター組込式オイルクーラーに組付けた後に、ろう付けを行う。
【0022】
また、素管の内周面に密着させる密着面は板状フィン部材の外方向の先端部を素管の内周面の一部に対応させて密着可能とする事により形成しても良いし、板状フィン部材の外方向の先端部に金属製の伝熱板を接続し、この伝熱板の外周面を素管の内周面の一部に対応させて密着可能とする事により形成しても良い。伝熱板の外周面を密着面とした場合、伝熱板を介して素管の内周面と板状フィン部材とが、より広い面積で面接触するものとなり、素管と板状フィン部材との熱伝導性を更に向上させて、優れた熱交換性能を持つ伝熱管を得る事ができる。
【0023】
また、板状フィン部材は、素管内を流動する流体が通過可能な窓部を少なくとも一個設ければ、窓部を設けた面積分だけ伝熱面積は減るが、より軽量な伝熱管を得る事ができる。また、伝熱管の内部空間を流動する流体が窓部を通過して流動する事により、流体の乱流化を生じ、伝熱管内での流体の流動距離が長くなり、素管の内周面や板状フィン部材の表面との接触時間が長くなるとともに、流体が撹拌されて、流体の一部のみではなく全体が素管や板状フィン部材と繰り返し接触するものとなる。従って、伝熱管の熱伝導性が高まり、窓部を設けて伝熱面積を少なくしても、内部を流動する流体と外部を流動する流体との熱交換効率を向上させる事ができる。
【0024】
また、板状フィン部材は、流体の流入元側を切り欠いて窓部と連通する開口部を設ければ、EGRガス等の流体が伝熱管内に流入する際に受ける流動抵抗を少なくする事ができ、流体の供給元から伝熱管内への円滑な流体の流入が可能となる。
【0025】
また、窓部を設けた場合でも、窓部の内部に突片を一定間隔で突出すれば、伝熱面積を多くする事が可能となるし、突片を設ける事で窓部に形成される凹凸により、流体の乱流化、撹拌作用が更に促進されて、伝熱管の熱伝導性を高める事ができる。
【0026】
また、上記伝熱管は、自動車のエンジン、その他内燃機関、冷暖房等、熱交換を行う何れの装置にも用いる事ができる。そして、本発明の伝熱管を、エンジンのEGRガス冷却装置、その他の多管式熱交換器に組付ければ、EGRガスの冷却を効率的に行う事ができる。従って、EGRシステム、特にディーゼルエンジンの高EGR率のクールドEGRシステムに於いて、排気ガス中のNOxを低減できるとともに、燃費の悪化も防止する事ができる。また、過剰な温度上昇を防止して、EGRバルブの劣化や機能低下も確実に防止する事ができる。
【0027】
また、高温オイルを内部に流通させて、エンジン冷却水で冷却するラジエーターへの組込式オイルクーラー等に本発明の伝熱管を組付けても良く、優れた熱交換を行って、伝熱特性の高いオイルクーラーを得る事ができる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の伝熱管を、自動車のクールドEGRシステムに於けるEGRガス冷却装置に使用した実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は第1実施例の伝熱管の斜視図で、金属製の素管内に、90°間隔で4方向にフィンを突設した断面形状が十字形の板状フィン部材を配設している。図2は図1の伝熱管の端面図である。図3は第1実施例に於ける、素管への挿入前の板状フィン部材の端面図で、密着面が素管の内周面よりも外方に配置されるよう形成し、素管への挿入配設前の板状フィン部材の外径を、素管の内径よりも大径に形成している。
【0029】
また、図4は第2実施例及び第3実施例の伝熱管の斜視図で、第1実施例よりも表面積の大きな密着面に、更に内方に向いた伝熱片を設けた板状フィン部材を素管内に配設した状態を示している。図5は第2実施例に於ける、素管への挿入前の板状フィン部材の端面図で、密着面の先端側を素管の内周面よりも外方に配置可能に形成したものである。また、図6は第3実施例に於ける、素管への挿入配設前の板状フィン部材の端面図で、密着面の両側縁は素管の内周面よりも内方に配置可能とするが、密着面を素管の内周面よりも外方に配置可能に形成したものである。
【0030】
また、図7は、第4実施例の伝熱管の端面図で、60°間隔で6方向にフィンを突出した板状フィン部材を素管に内装したものである。また、図8は第5実施例の伝熱管の端面図で、断面形状を十字形とする板状フィン部材の外方向の先端部に伝熱板を接続し、この伝熱板の外周面を素管の内周面への密着面としたものである。図9は第5実施例に於ける、素管への挿入配設前の板状フィン部材の端面図である。
【0031】
また、図10は第1実施例の板状フィン部材のみの斜視図で、フィンに窓部や開口部を何等設けず平滑なものとしている。図11は第6実施例の板状フィン部材の斜視図で、各フィンに、流体が通過可能な複数の窓部を開口している。図12は第7実施例の板状フィン部材の斜視図で、各フィンに複数設けた窓部の内部に、突片を複数形成している。図13は、第8実施例の板状フィン部材の斜視図で、第6、第7実施例の窓部よりも小さな窓部を、各フィンに開口している。
【0032】
また、図14は第9実施例の板状フィン部材の斜視図で、各フィンに複数の窓部を形成するとともに、流体の流入元側を切り欠いて窓部と連通する開口部を設けている。図15は、第10実施例の板状フィン部材の斜視図で、各フィンに、複数の突片を突設した窓部を複数開口するとともに、流体の流入元側を切り欠いて、窓部と連通する開口部を設けている。また、図16は本発明の伝熱管を用いたEGRガス冷却装置の概略図である。
【0033】
そして、本発明の第1実施例を図1〜図3、図10、図16を用いて詳細に説明すれば、(1)は伝熱管で、内部をEGRガスが流通可能な細径の金属製の素管(2)内部に、管軸方向に長尺で軸中心部から90°間隔で4方向にフィン(3)を突出した金属製の板状フィン部材(4)を挿入配設して形成したものである。
【0034】
上述の如き伝熱管(1)を形成する方法は、まず、第1工程に於いて、素管(2)と板状フィン部材(4)を各々形成するが、この素管(2)及び板状フィン部材(4)は、銅、アルミニウム、黄銅、又はステンレス等の熱伝導性に優れた金属を用いて形成する事ができる。尚、素管(2)と板状フィン部材(4)とは、同一の金属で形成しても良いし、後述のろう付けや溶接を行う事が可能であれば、使用目的やコスト等に応じて、双方を異なる金属で形成しても良い。
【0035】
そして、板状フィン部材(4)は、図3、図10に示す如く、管軸方向に長尺な広幅板部材(6)の中央部の両面に垂直に、管軸方向に長尺で前記広幅板部材(6)よりも狭幅とする一対の狭幅板部材(7)を接続する事で、90°間隔で4方向に放射状にフィン(3)を突設した板状フィン部材(4)を形成している。また、広幅板部材(6)への狭幅板部材(7)の接続は、狭幅板部材(7)の一側を広幅板部材(6)と平行に折曲して平坦な接続部(22)を形成し、図3に示す如く、各狭幅板部材(7)の接続部(22)を広幅板部材(6)にろう付けして行っている。
【0036】
また、板状フィン部材(4)は、外方向の先端部(32)を素管(2)の内周面よりも僅かに内方の位置で各々折曲部(30)を介して略直角に折曲し、この折曲した先端部(32)の外周面を素管(2)の内周面への密着面(5)としている。このように形成する事で、板状フィン部材(4)は、素管(2)への挿入配設前は、図3に示す如く、密着面(5)の折曲部(30)までの直径は素管(2)の内径より僅かに小径であるが、密着面(5)の先端側が素管(2)の内周面よりも外方に配置されるように直線的な形状で形成しており、密着面(5)の形状は円弧状の素管(2)の内周面に対応した形状とはなっていない。しかし、板状フィン部材(4)の素管(2)への挿入配設時は、密着面(5)が弾性変形して、該密着面(5)が素管(2)の内周面に対応する円弧状に湾曲する事により、図2に示す如く、素管(2)の内周面に面接触可能となるものである。
【0037】
次に、第2工程では、上記工程で形成した板状フィン部材(4)を素管(2)内に挿入配設して伝熱管(1)を得るものであるが、板状フィン部材(4)は、素管(2)への挿入配設前は、図3に示す如く、密着面(5)の先端側が、素管(2)の内周面よりも外方に突出している。このような板状フィン部材(4)を素管(2)内に挿入配設するには、該密着面(5)を折曲部(30)を支点に内方に押圧変形し、密着面(5)の外径を内方に縮径させながら、板状フィン部材(4)を素管(2)内に挿入する。このように密着面(5)を縮径させるとともに、板状フィン部材(4)は、密着面(5)の折曲部(30)までの直径を素管(2)の内径より僅かに小径に形成しているから、挿入過程で折曲部(30)や密着面(5)が素管(2)の内周面に強く擦るような事がなく、素管(2)内に板状フィン部材(4)を円滑に挿入する事ができるとともに、素管(2)の内周面や密着面(5)の表面のめっきが破損する等の不具合を防ぐ事ができる。
【0038】
この挿入により、図2に示す如く、直線的であった密着面(5)が素管(2)の内周面に対応して円弧状に変形し、素管(2)の内周面に面接触するので、板状フィン部材(4)と素管(2)との熱伝導を効率的に行えるものとなる。更に、素管(2)への挿入後は、密着面(5)の外方への弾性復元力が作用して、該密着面(5)が素管(2)の内周面に強く密着固定するので、素管(2)と板状フィン部材(4)との良好な熱伝導性が保持されるとともに、ろう付けや溶接等を行わなくても、素管(2)内での板状フィン部材(4)の固定性が向上し、安定するものとなる。
【0039】
また、上記第1実施例の板状フィン部材(4)は、密着面(5)の折曲部(30)までの直径を素管(2)の内径よりも僅かに小径としているので、密着面(5)は図2のaに示す部位では素管(2)の内周面には密着せずに隙間を生じる。しかし、bで示す面積分は素管(2)の内周面に確実に面接触しているので、従来の線接触や点接触に比べて、接触面積を大きく増大させる事ができる。この密着面(5)と素管(2)の内周面との接触面積を更に増大させ、双方の熱伝導性を更に高めるとともに、素管(2)内での板状フィン部材(4)の固定性も向上させるため、密着面(5)の両側縁と素管(2)の内周面とをろう付けしている。
【0040】
このろう付けにより、図2のaで示す隙間がろう材のフィレット(9)で閉塞されて密着面(5)と素管(2)の内周面とが広幅に面接触するだけでなく、フィレット(9)の形成幅分、伝熱面積が増えるものとなり、板状フィン部材(4)と素管(2)との熱伝導性を更に高める事ができる。また、このろう付けにより、密着面(5)と素管(2)の内周面とが、強固に密着固定され、板状フィン部材(4)の固定性を高める事ができる。その結果、流体の流動や伝熱管の振動等による板状フィン部材(4)のブレや変形を抑制して、伝熱管(1)の使用性や耐久性を向上させる事が可能となる。
【0041】
また、このろう付けは、素管(2)へのフィン(3)の挿入前に、予め板状フィン部材(4)の密着面(5)の少なくとも両側縁、或いは密着面(5)の素管(2)への密着側の表面全体にろう材をメッキしておく。このろう材のメッキは、好ましくは作業が容易な事から板状フィン部材(4)の全表面に施しても良いし、素管(2)の内周面にろう材をメッキしても良い。また、板状フィン部材(4)の形成素材である広幅板部材(6)と狭幅板部材(7)にろう材をクラッドし、このクラッド材を加工して板状フィン部材(4)を形成しても良い。
【0042】
また、密着面(5)の両側縁にろう材付着用のバインダーを塗布した板状フィン部材(4)を素管(2)に挿入後、該素管(2)内にパウダー状のろう材を供給しても良い。他の方法として、密着面(5)の両側縁にろう材ペーストを供給した板状フィン部材(4)を素管(2)へ挿入しても良いし、素管(2)内に板状フィン部材(4)を挿入後、該素管(2)内にろう材ペーストを供給しても良い。そして、伝熱管(1)の製作時にろう付けを行っても良いし、或いは伝熱管(1)を後述のEGRガス冷却装置(10)に組付け後に、ろう付けを行っても良い。
【0043】
上述の如く形成した伝熱管(1)では、軸中心部から4方向にフィン(3)を突設した板状フィン部材(4)の配設により、伝熱面積を増大させる事ができる。更に、各フィン(3)の先端側と素管(2)の内周面とを、従来技術の如き点接触又は線接触ではなく、密着面(5)を介して面接触させ、更に互いをろう付けしているので、板状フィン部材(4)と素管(2)との熱伝導性を高め、板状フィン部材(4)で受熱したEGRガスの熱を、素管(2)に効率的に伝達した後、外部に放熱する事ができる。
【0044】
また、板状フィン部材(4)の配設により、伝熱管(1)の内部空間(8)が4つに分割され、この4分割された内部空間(8)内を流体が分散して流動するので、流体の流れの偏りを防ぐものとなる。更に、内部空間(8)内を流体が素管(2)の内周面だけでなく板状フィン部材(4)の表面と接触しながら分散して流動する事により、流体と伝熱管(1)との伝熱を効率的に行う事ができ、伝熱管(1)の内外を流動する流体間の熱交換効率を向上させる事が可能となる。
【0045】
そして、上述の如き伝熱管(1)を組付けたEGRガス冷却装置(10)は、図16に示す如く、円筒状の胴管(11)の両端にチューブシート(12)を一対接続し、内部を密閉可能としている。そして、一対のチューブシート(12)間に、本実施例の伝熱管(1)を複数本、チューブシート(12)を貫通して接続配置している。また、胴管(11)の両端には、EGRガスの導入口(14)と導出口(15)とを設けたボンネット(16)を接続している。
【0046】
更に、胴管(11)の外周には、エンジン冷却水や冷却風等の冷却媒体の流入口(17)と流出口(18)を設ける事により、一対のチューブシート(12)で仕切られた気密空間内を、冷却媒体が流通可能な冷却部(13)としている。また、この冷却部(13)内に、複数の支持板(20)を接合配置し、この支持板(20)に設けた挿通孔(21)に、伝熱管(1)を挿通する事により、バッフルプレートとして伝熱管(1)を安定的に支持するとともに、冷却部(13)内を流動する冷却媒体の流れを蛇行化している。
【0047】
上記EGRガス冷却装置(10)に於いて、導入口(14)から胴管(11)内に高温化したEGRガスを導入すると、このEGRガスは胴管(11)内に複数配置した伝熱管(1)内に流入する。この伝熱管(1)を配置した冷却部(13)では、予め伝熱管(1)の外部にエンジン冷却水等の冷却媒体を流通しているので、伝熱管(1)の外表面を介してEGRガスと冷却媒体とで熱交換が行われる。
【0048】
この伝熱管(1)は、前述の如く、板状フィン部材(4)の配設により伝熱面積を増大させて、EGRガスとの接触頻度を高めるとともに、板状フィン部材(4)と素管(2)とを面接触させて熱伝導性を高めている。そのため、素管(2)の内周面側のEGRガスの熱だけでなく、中央付近を流動するEGRガスの熱も、板状フィン部材(4)を介して素管(2)の内周面に効率的に伝熱された後、素管(2)の外周面を介して冷却媒体に放熱される。そして、EGRガスの全体がムラ無く均一に冷却されるものとなり、EGRガスへの優れた冷却効果が得られる。
【0049】
このように良好に冷却されたEGRガスは、導出口(15)を介してEGRガス冷却装置(10)から流出し、インテークマニホールド側に戻される。従って、EGRバルブの高温化を防止して、EGRバルブの優れた機能性と耐久性を得る事ができるとともに、吸入空気の温度を低下するのでNOxの低減と良好な燃費が可能となる。また、伝熱管(1)内でのEGRガスの乱流化により、EGRガスに混入する煤の剥離が促進されて、大きな塊となるのを防ぐ事ができ、目詰まり等に起因する冷却性能の劣化やエンジントラブルを防ぐ事も可能となる。
【0050】
また、上記第1実施例では、板状フィン部材(4)は、密着面(5)の折曲部(30)までの直径を素管(2)の内径より僅かに小径に形成し、素管(2)内への板状フィン部材(4)の挿入作業を容易としている。しかし、板状フィン部材(4)の密着面(5)の折曲部(30)までの直径を、素管(2)の内径と略同一に形成しても良く、素管(2)への挿入後は、密着面(5)の先端から折曲部(30)までの広い面積で素管(2)の内周面に面接触させる事ができる。
【0051】
次に、図4、図5に示す他の異なる第2実施例の伝熱管(1)の製造方法を説明する。まず、第1工程では、第1実施例と同様に、広幅板部材(6)の中央部の両面に、接続部(22)を介して一対の狭幅板部材(7)を接続し、軸中心部から4方向にフィン(3)を突設し断面形状を十字形とした板状フィン部材(4)を形成している。そして、板状フィン部材(4)の外方向の先端部(32)を、折曲部(30)を介して折曲し、この先端部(32)の外周面を、素管(2)の内周面に面接触可能な密着面(5)としている。
【0052】
また、第2実施例では、密着面(5)を第1実施例よりも広幅に形成する事で、板状フィン部材(4)と素管(2)との接触面積を多くして、熱伝導性を更に向上可能としている。また、各フィン(3)の密着面(5)の先端側を、素管(2)の内部方向に第2折曲部(31)を介して更に折曲する事で、密着面(5)の先端内方に管軸方向に長尺な伝熱片(23)を突設している。この伝熱片(23)により、板状フィン部材(4)の伝熱面積をより増大させる事ができるとともに、EGRガスの乱流化を促進して、伝熱管(1)を介した内外の流体間の熱交換効率を向上させる事が可能となる。
【0053】
また、第1実施例の板状フィン部材(4)では、素管(2)への挿入配設前では、各フィン(3)の密着面(5)を直線的に形成しているが、第2実施例では、密着面(5)を素管(2)の内周面に対応させた円弧状に形成している。また、第2実施例では、図5に示す如く、各密着面(5)を形成する折曲部(30)までの直径を素管(2)の内径と略同一とし、伝熱片(23)を形成する第2折曲部(31)側までを素管(2)の内周面よりも外方に突出させて、板状フィン部材(4)を形成している。
【0054】
次に、第2工程で、上述の如き板状フィン部材(4)を素管(2)内に挿入配設する際には、密着面(5)を折曲部(30)を支点に内方に押圧変形し、密着面(5)の先端側の外径を内方に縮径させながら、板状フィン部材(4)を素管(2)内に挿入する。この挿入により、円弧状の密着面(5)は素管(2)の内周面に対応して面接触するとともに、密着面(5)の外方への弾性復元力により、該密着面(5)が素管(2)の内周面に強く密着固定される。また、密着面(5)の折曲部(30)での直径を、素管(2)の内径と略同一とするとともに、密着面(5)を広幅に形成しているので、密着面(5)と素管(2)の内周面とを広い面積で面接触させる事ができる。従って、素管(2)と板状フィン部材(4)との優れた熱伝導性が得られるとともに、素管(2)内での板状フィン部材(4)の固定性も高いものとなる。
【0055】
また、上記第2実施例の板状フィン部材(4)は、密着面(5)の第2折曲部(31)側までの外径を、素管(2)の内径よりも大径に形成しているが、他の異なる第3実施例では、図6に示す如く、密着面(5)の折曲部(30)までの外径と、伝熱片(23)を形成する第2折曲部(31)側の外径は、素管(2)の内径と略同一又はやや小径としている。更に、素管(2)の内周面の円弧よりも小さな曲率半径で密着面(5)を円弧状に形成し、この密着面(5)が素管(2)の内周面よりも外方に配置されるように、板状フィン部材(4)を形成している。
【0056】
上述の如き板状フィン部材(4)を素管(2)内に挿入配設する際には、円弧状の密着面(5)を内方に押圧変形して板状フィン部材(4)の直径を縮径しながら、素管(2)内に挿入する。この挿入により、密着面(5)が素管(2)の内周面に対応して面接触し、図4に示す如く、第2実施例と同様の伝熱管(1)を得る事ができる。また、素管(2)への挿入後は、密着面(5)の外方への弾性復元力により、該密着面(5)が素管(2)の内周面に強く密着固定し、素管(2)と板状フィン部材(4)との良好な熱伝導性が保持されるとともに、素管(2)内での板状フィン部材(4)の固定性が向上するものとなる。
【0057】
また、上記第2、第3実施例に於いても、広面積の密着面(5)が弾性復元力により素管(2)の内周面に強く密着固定しているので、素管(2)内での板状フィン部材(4)の固定性が良く安定している。それに加えて、密着面(5)の両側縁を素管(2)の内周面にろう付けしているので、素管(2)内での板状フィン部材(4)の固定性が更に高まり、板状フィン部材(4)のブレや変形等の防止効果を高める事ができる。また、このろう付けによるフィレット(9)の形成幅分、素管(2)と板状フィン部材(4)との接触面積を更に広くして、熱伝導性を更に向上させる事ができる。
【0058】
また、上記第1〜第3実施例の板状フィン部材(4)は、軸中心部から90°間隔で4方向にフィン(3)を突設しているが、他の異なる第4実施例では、図7に示す如く、60°間隔で6方向にフィン(3)を突設して板状フィン部材(4)を形成している。この板状フィン部材(4)は、両側を折曲部(30)を介して直線的に折曲し一対の密着面(5)を設けた広幅板部材(6)の中央付近の両面に、この広幅板部材(6)よりも更に広幅とし、断面形状をV字形に折曲形成した一対のV字形板部材(24)を接続して形成している。この接続は、V字形板部材(24)の折曲側の接続部(22)を、広幅板部材(6)にろう付けする事で行っている。
【0059】
また、一方のV字形板部材(24)の、一対のフィン(3)の先端部(32)を互いにV字の内側方向に折曲部(30)を介して直線的に折曲し、この折曲した先端部(32)の外周面を素管(2)の内周面への密着面(5)としている。また、他方のV字形板部材(24)の、一対のフィン(3)の先端部(32)を互いにV字の外側方向に折曲部(30)を介して直線的に折曲し、この折曲した先端部(32)の外周面を素管(2)の内周面への密着面(5)としている。
【0060】
また、上記広幅板部材(6)及び一対のV字形板部材(24)の各密着面(5)は、第1実施例と同様に、素管(2)への挿入前は、先端側が素管(2)の内周面よりも外方に配置されるよう形成している。そして、このような板状フィン部材(4)を素管(2)に挿入配設する際は、密着面(5)を内方に弾性変形させて板状フィン部材(4)の外径を縮径させながら素管(2)内に挿入する。この挿入により、図7に示す如く、密着面(5)が素管(2)の内周面に対応して円弧状に面接触する。また、各密着面(5)の両側縁を、素管(2)の内周面にろう付けする事で、板状フィン部材(4)の固定性を高めるとともに、ろう材のフィレット(9)の幅分、板状フィン部材(4)と素管(2)との接触面積を増大させて、双方の熱伝導性を高めている。
【0061】
上記第4実施例の伝熱管(1)では、フィン(3)の枚数を多くしているので、板状フィン部材(4)の伝熱面積を更に増大させる事が可能となるとともに、板状フィン部材(4)と素管(2)との接触面積も多くなり、双方の熱伝導性を高める事ができる。このような伝熱管(1)を用いる事により、伝熱管(1)の内外を流通するEGRガスと冷却媒体との間で熱交換を効率的に行う事が可能となる。
【0062】
また、上記第4実施例では、一方のV字形板部材(24)の一対の密着面(5)を内側に折曲形成し、他方のV字形板部材(24)の一対の密着面(5)を外側に折曲形成しているが、全ての密着面(5)をV字の内側のみ又は外側のみに折曲形成しても良い。また、一方及び他方のV字形板部材(24)の先端部(32)を内側及び外側に各々折曲し、先端部(32)の外周面を密着面(5)としても良い。また、V字形板部材(24)の接続部(22)を、広幅板部材(6)にろう付けしているが、一対の密着面(5)が素管(2)の内周面にろう付け固定されているので、必ずしも接続部(22)を広幅板部材(6)にろう付けしなくても、V字形板部材(24)の固定性が保たれる。
【0063】
また、上記第1〜第4実施例では、板状フィン部材(4)の外方向の先端部(32)を、折曲部(30)を介して折曲し、この先端部(32)の外周面を素管(2)の内周面に直接に密着させる密着面(5)としているが、図8、図9に示す第5実施例では、板状フィン部材(4)の外方向の先端部(32)に、管軸方向に長尺な金属製の伝熱板(25)を接続し、この伝熱板(25)の外周面を密着面(5)としている。この板状フィン部材(4)と伝熱板(25)とは、図9に示す如く、板状フィン部材(4)の先端側を折曲部(30)を介して略直角に折曲形成した先端部(32)の外周面に、伝熱板(25)の内周面をろう付けして接続している。また、密着面(5)は、図9に示す如く、直線的に形成し、素管(2)への挿入前は、密着面(5)が素管(2)の内周面よりも外方に配置されるように形成している。
【0064】
そして、素管(2)への板状フィン部材(4)の挿入時は、伝熱板(25)を内方に押圧して密着面(5)及び先端部(32)を弾性変形させ、板状フィン部材(4)の外径を縮径させながら挿入する。この挿入後は、密着面(5)及び先端部(32)の弾性復元力により、密着面(5)が素管(2)の内周面に密着固定される。このように伝熱板(25)の密着面(5)を素管(2)の内周面と密着させる事により、素管(2)の内周面と板状フィン部材(4)との接触面積を伝熱板(25)を介して間接的に増大させる事ができ、素管(2)と板状フィン部材(4)との熱伝導性を向上させる事ができる。更に、本実施例では伝熱板(25)の長さ方向の両側縁を、素管(2)の内部方向に折曲して伝熱片(23)を設ける事により、伝熱管(1)の伝熱面積の更なる増大を可能とし、EGRガスの乱流化を促進して、EGRガスの熱を効率的に素管(2)に伝熱する事を可能としている。
【0065】
また、前記第1〜第4実施例の如き板状フィン部材(4)に於いても、上記第5実施例の如く、板状フィン部材(4)の外方向の先端部(32)に伝熱板(25)を接続し、この伝熱板(25)の外周面を素管(2)の内周面への密着面(5)としても良く、伝熱板(25)の配設工程はあるが、伝熱管(1)の伝熱面積の更なる増大や、板状フィン部材(4)と素管(2)との熱伝導性の更なる向上が可能となる。
【0066】
また、上記第1〜第5実施例では、板状フィン部材(4)の各フィン(3)には、窓部や開口部、凹凸等を何等設けていないが、図11に示す第6実施例では、広幅板部材(6)に一対の狭幅板部材(7)を接続して、90°間隔で4方向にフィン(3)を突設した板状フィン部材(4)に於いて、各フィン(3)の表面に、流体が通過可能な窓部(26)を管軸方向に直列に複数個、所定間隔で開口している。
【0067】
また、第6実施例では、フィン(3)の表面積の多くを除去するような比較的大きな窓部(26)を設ける事で、軽量な板状フィン部材(4)を得る事ができる。従って、伝熱管(1)並びにこの伝熱管(1)を使用したEGRガス冷却装置(10)等の軽量化も可能となる。尚、このような大きな窓部(26)を形成する事で、図10に示す第1実施例の板状フィン部材(4)に比べて、伝熱面積が少なくなる可能性があるが、窓部(26)の内周面の肉厚分の面積を伝熱面とする事ができるので、伝熱面積が大きく減少する事はない。
【0068】
更に、伝熱面積が多少減っても、第6実施例では、伝熱管(1)の内部空間(8)を流動するEGRガスが、複数の窓部(26)を通過しながら流動先に流動する事により、EGRガスの乱流化を生じる。そのため、伝熱管(1)内でのEGRガスの流動距離が長くなり、素管(2)の内周面や板状フィン部材(4)の表面との接触時間が長くなるとともに、EGRガスが撹拌されて、EGRガスの一部のみではなく全体が素管(2)や板状フィン部材(4)と繰り返し接触するものとなる。その結果、EGRガスの熱を伝熱管(1)に効率的に伝熱する事ができ、この熱を伝熱管(1)の外表面を介して冷却媒体に放熱する事で、熱交換性能の高いEGRガスの冷却が可能となる。
【0069】
また、他の異なる第7実施例では、図12に示す如く、軸中心部から2方向に突出する各フィン(3)に所定間隔で複数開口した窓部(26)の、軸方向に平行で密着面(5)側の一辺に、窓部(26)内に突出する突片(27)を所定間隔で複数形成している。このように、突片(27)を設ける事により、板状フィン部材(4)の伝熱面積を増やす事ができるとともに、密着面(5)側に設ける事で、突片(27)で受けた熱を密着面(5)に直ちに伝達し、この密着面(5)を介して素管(2)に伝熱する事が可能となる。また、突片(27)を設ける事で窓部(26)に形成される凹凸により、流体の乱流化、撹拌作用が更に促進されて、熱交換効率を高める事ができる。
【0070】
また、図13は、第8実施例の板状フィン部材(4)の斜視図で、軸中心部から2方向に突出するフィン(3)の各々に、第6実施例よりも小さな窓部(26)を管軸方向に所定間隔で直列に複数個配置したものを、外方向に2段設けている。また、密着面(5)側の段の窓部(26)の配置間隔を、軸中心部側の段の窓部(26)の配置間隔よりも広くして、各フィン(3)の先端側の伝熱面積を多くする事で、各フィン(3)の密着面(5)から素管(2)への熱伝導を行い易くしている。
【0071】
また、比較的小さな窓部(26)を複数板状フィン部材(4)に設ける事により、伝熱管(1)内を流動するEGRガスが細分化されて窓部(26)を通過し、撹拌作用が高まるとともに、小さな窓部(26)を通過しながら繰り返し素管(2)の内周面や板状フィン部材(4)の表面にEGRガスが接触するものとなり、EGRガスから伝熱管(1)への熱伝導性を良好なものとする事ができる。また、他の異なる実施例として、各フィン(3)の表面に、大きさや形状の異なる窓部(26)を、所望間隔で複数個、更には複数段設けても良い。
【0072】
また、上記第1〜第8実施例の板状フィン部材(4)は、EGRガスの流入元側に開口部を設けず、流入元側の端面を平滑なものとしているが、図14に示す第9実施例及び図15に示す第10実施例では、板状フィン部材(4)の各フィン(3)に、図11に示す第6実施例の如き比較的大きな窓部(26)を直列に一段設けるとともに、各フィン(3)のEGRガスの流入元側を切り欠いて、流入元側の窓部(26)と連通する開口部(28)を設けている。また、図15に示す第10実施例では、更に各窓部(26)の密着面(5)側の一辺に、窓部(26)内に突出する複数の突片(27)を設け、伝熱面積を多くしている。
【0073】
このように、各フィン(3)のEGRガスの流入元側に、窓部(26)と連通する開口部(28)を設ける事により、第9、第10実施例では、EGRガスが伝熱管(1)に流入する際の流動抵抗を少なくする事ができ、EGRガスの導入口(14)から伝熱管(1)へのEGRガスの流入を、円滑に行う事が可能となる。更に、第10実施例では、突片(27)の形成により、伝熱面積を増やすとともに、EGRガスの乱流化や撹拌作用を更に促進させる事ができる。
【0074】
また、上記図12〜図15に示す第7〜第10実施例では、板状フィン部材(4)を広幅板部材(6)のみで形成し、この広幅板部材(6)の180°方向の両端をフィン(3)とした板状フィン部材(4)としているが、他の異なる実施例として、図10に示す第1実施例等と同様に、広幅板部材(6)と一対の狭幅板部材(7)とで形成した断面形状が十字形の板状フィン部材(4)としても良い。
【0075】
また、第2、第3実施例の如く、各フィン(3)の素管(2)の内周面への密着面(5)を比較的広幅とし、更に各密着面(5)に伝熱片(23)を突設形成した板状フィン部材(4)に於いても、各フィン(3)に、図11〜図15に示す第6〜10実施例の如く、大又は小の窓部(26)を設けて伝熱管(1)内を流動する流体の乱流化や伝熱管(1)の軽量化を可能としたり、該窓部(26)に突片(27)を設けて伝熱面積を増大させるとともに、EGRガスの乱流化や撹拌作用を促進させても良い。また、開口部(28)を設けて伝熱管(1)への流体の流入時の流動抵抗を少なくしても良い。
【0076】
また、第4実施例の如く、一枚の広幅板部材(6)と、これに対称に接続する一対のV字形板部材(24)とで形成した板状フィン部材(4)に於いても、各フィン(3)に、図11〜図15に示す第6〜10実施例の如く、大又は小の窓部(26)を設けて伝熱管(1)内を流動する流体の乱流化や伝熱管(1)の軽量化を可能としたり、該窓部(26)に突片(27)を設けて伝熱面積を増大させるとともに、EGRガスの乱流化や撹拌作用を促進させても良い。また、開口部(28)を設けて伝熱管(1)への流体の流入時の流動抵抗を少なくしても良い。
【0077】
また、第5実施例の如く、外方向の先端部(32)に接続した伝熱板(25)の外周面を、素管(2)の内周面への密着面(5)とした板状フィン部材(4)に於いても、各フィン(3)に、図11〜図15に示す第6〜10実施例の如く、大又は小の窓部(26)を設けて伝熱管(1)内を流動する流体の乱流化や伝熱管(1)の軽量化を可能としたり、該窓部(26)に突片(27)を設けて伝熱面積を増大させるとともに、EGRガスの乱流化や撹拌作用を促進させても良い。また、開口部(28)を設けて伝熱管(1)への流体の流入時の流動抵抗を少なくしても良い。
【0078】
また、上記第1〜第10実施例では、軸中心部から60°、90°又は180°とする同一間隔で外方向にフィン(3)を突設しているが、他の異なる間隔を介してフィン(3)を突設しても良いし、同一間隔ではなく隣接するフィン(3)同士の間隔を、互いに異なる間隔で突設しても良い。
【0079】
また、上記各実施例では、EGRガス冷却装置(10)に本発明の伝熱管(1)を組付けたものとして説明しているが、他の異なる多管式熱交換器に本発明の伝熱管(1)を用いても良く、優れた熱交換性能を得る事ができる。また、エンジンオイル、ミッションオイル、ATF、パワステオイル等の高温オイルを内部に流通させて、この高温オイルをエンジン冷却水で冷却するラジエーターへの組込式オイルクーラーに、本発明の伝熱管(1)を組付ける事もできる。そして、本発明の伝熱面積が広く且つ熱伝導性の高い伝熱管(1)を介して、伝熱管(1)内を流通するエンジン冷却水と伝熱管(1)外部を流通する被冷却オイルとの熱交換が促進され、被冷却オイルの冷却を均一且つ効率的に行えるものである。
【0080】
【発明の効果】
本発明は上述の如く構成したもので、熱伝導性に優れる金属製の素管内に、軸中心部から少なくとも2方向にフィンを突設した金属製の板状フィン部材を配設しているので、伝熱管の伝熱面積を増大させる事ができる。また、板状フィン部材の密着面を素管の内周面に面接触させているので、素管と板状フィン部材との熱伝導性を高める事ができる。従って、伝熱管の熱交換性能が向上し、伝熱管の内外を流動する流体相互の熱交換を効率的に行う事が可能となる。また、このような熱交換性能に優れた伝熱管を、容易な方法で廉価に得る事が可能となる。
【0081】
また、板状フィン部材の各密着面が、弾性復元力により素管の内周面に強く密着固定させているので、前記素管と板状フィン部材との優れた熱伝導性を保つ事ができるだけでなく、素管内での板状フィン部材の固定性が向上するものとなる。その結果、流体の流動や伝熱管の振動等によるフィンのブレや変形を抑制するとともに、各フィンやフィンが接触している素管の壁面のフレッティング等を防いで、熱交換を円滑に行う事ができ、伝熱管の耐久性も向上する。そして、この熱交換性能に優れる伝熱管を、多管式熱交換器や、ラジエーター組込式オイルクーラー等に使用する事により、伝熱特性の高い製品を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の伝熱管を示す斜視図。
【図2】図1の端面図。
【図3】伝熱管への挿入前の状態を示す第1実施例の板状フィン部材の端面図。
【図4】第2、第3実施例の伝熱管を示す斜視図。
【図5】伝熱管への挿入前の状態を示す第2実施例の板状フィン部材の端面図。
【図6】伝熱管への挿入前の状態を示す第3実施例の板状フィン部材の端面図。
【図7】第4実施例の伝熱管を示す端面図。
【図8】第5実施例の伝熱管を示す端面図。
【図9】伝熱管への挿入前の状態を示す第5実施例の板状フィン部材の端面図。
【図10】第1実施例の板状フィン部材を示す斜視図。
【図11】第6実施例の板状フィン部材を示す斜視図。
【図12】第7実施例の板状フィン部材を示す斜視図。
【図13】第8実施例の板状フィン部材を示す斜視図。
【図14】第9実施例の板状フィン部材を示す斜視図。
【図15】第10実施例の板状フィン部材を示す斜視図。
【図16】本発明の伝熱管を組付けたEGRガス冷却装置の一部切り欠き平面図。
【符号の説明】
2 素管
3 フィン
4 板状フィン部材
5 密着面
25 伝熱板
26 窓部
27 突片
28 開口部
32 先端部
Claims (4)
- 金属製の素管内に、管軸方向に長尺で軸中心部から少なくとも2方向にフィンを突出した金属製の板状フィン部材を挿入配設し、この板状フィン部材の外方向の先端側に、素管の内周面の一部に対応させて面接触可能に密着面を形成し、板状フィン部材の素管への挿入配設前は、密着面が素管の内周面よりも外方に配置されるような直径で板状フィン部材を形成するとともに、板状フィン部材の素管への挿入配設時は、密着面を内方に弾性変形させて素管内に挿入し、密着面の弾性復元力により該密着面を素管の内周面に対応させて密着固定させる事を特徴とするフィン部材を内装した伝熱管。
- 管軸方向に長尺で軸中心部から少なくとも2方向にフィンを突出して金属製の板状フィン部材を形成し、この板状フィン部材の外方向の先端側に、素管の内周面の一部に対応させて面接触可能に密着面を形成するとともに、この密着面が素管の内周面よりも外方に配置されるような直径で板状フィン部材を形成する工程と、素管の内周面よりも外方に配置された密着面を、内方に弾性変形させながら板状フィン部材を素管内に挿入し、密着面の弾性復元力により該密着面を素管の内周面に対応させて密着固定させ、板状フィン部材を素管に挿入配設する工程とから成る事を特徴とするフィン部材を内装した伝熱管の製造方法。
- 密着面は、板状フィン部材の外方向の先端部を素管の内周面の一部に対応させて密着可能とする事により形成した事を特徴とする請求項2のフィン部材を内装した伝熱管の製造方法。
- 密着面は、板状フィン部材の外方向の先端部に金属製の伝熱板を接続し、この伝熱板の外周面を素管の内周面の一部に対応させて密着可能とする事により形成した事を特徴とする請求項2のフィン部材を内装した伝熱管の製造方法。
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