JP2004305055A - 磁性複合粒子およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】生理活性物質を高収率で固定化できる磁性複合粒子を提供する。
【解決手段】個々の強磁性酸化鉄粒子の表面近傍にシリカ層を形成し、その上にシランカップリング剤を結合させた磁性複合粒子であり、シリカは強磁性酸化鉄粒子に対して0.5〜50重量%の範囲に、シランカップリング剤は強磁性酸化鉄粒子に対して0.01〜20重量%の範囲に、さらに平均粒子サイズが0.01〜10μmの範囲に、保磁力と飽和磁化が、それぞれ0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)と20〜80A・m2 /kg(20〜80emu/g)の範囲に制御した磁性複合粒子。
【選択図】 なし
【解決手段】個々の強磁性酸化鉄粒子の表面近傍にシリカ層を形成し、その上にシランカップリング剤を結合させた磁性複合粒子であり、シリカは強磁性酸化鉄粒子に対して0.5〜50重量%の範囲に、シランカップリング剤は強磁性酸化鉄粒子に対して0.01〜20重量%の範囲に、さらに平均粒子サイズが0.01〜10μmの範囲に、保磁力と飽和磁化が、それぞれ0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)と20〜80A・m2 /kg(20〜80emu/g)の範囲に制御した磁性複合粒子。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生理活性物質を固定化するための磁性複合粒子およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、診断薬担体、細菌分離担体、核酸分離精製担体、タンパク質精製担体、固定化酵素担体、抗体固定化担体などに使用するうえで有用な磁性複合粒子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、生理活性物質を基材上に共有結合により固定化する方法として、シッフ塩基法が知られている。この方法は、たとえば、生理活性物質や基材に対して親和性のある官能基を有するカップリング剤を使用することにより、基材上に生理活性物質を固定化するという方法である。
【0003】
生理活性物質を固定化する材料として、特開平5−344885号公報に開示のように、シラノール誘導体からなるものが公知である。生理活性物質を固定化するには、この固定化材料をシランカップリング剤により基材に導入したのち、活性化し、生理活性物質を接触させて固定化する。この固定化材料は、鎖長を変えることで任意の生理活性物質を基材に固定化できるが、分解されやすい結合を有しており、固定化材料自身の安定性が悪いという問題がある。
【0004】
また、生理活性物質として、酵素、抗体、補酵素などの機能を持つタンパク質、糖タンパク質、糖類などが挙げられるが、その中でも、酵素を固定化するための担体が知られている。たとえば、特開平5−219952号公報には、酵素に対して親和性のある官能基と疎水性の官能基を有するカップリング剤を結合した酵素固定化用無機質または有機質担体が開示されている。
また、特開平9−257号公報には、特殊な官能基を持つシランカップリング剤で処理した無機担体が開示されており、これに酵素を固定化し、洗浄、乾燥したのち、脂肪酸を含浸させて固定化酵素担体を得ている。
【0005】
さらに、生理活性物質を固定化するための担体として、基材に磁性粒子を用いたものも公知である(特許文献1参照)。このものは、平均粒径1〜10μmの樹脂粒子に平均粒径0.3〜1μmの磁性粒子を固定し、これにシランカップリング剤により生理活性物質を固定化するものである。
しかしながら、この担体では、磁性粒子表面の一部は樹脂粒子との結合点となるため、シランカップリング剤と結合できる点は限定される。したがって、この担体に多量の生理活性物質を固定化するのは困難となる。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−63761号公報(第2〜3頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情に照らして、生理活性物質を高収率で固定化できる材料を提供することを目的とする。また、生理活性物質を固定化するのに安定な構造を有する材料を提供することを別の目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために、鋭意検討した結果、基材として強磁性酸化鉄粒子を使用しこれにシリカおよびシランカップリング剤を結合させた複合磁性粒子によると、生理活性物質を高収率で固定化でき、しかも安定性の高い固定化材料となることを知り、本発明をなすに至った。
本発明の磁性複合粒子は、強磁性酸化鉄粒子を基材としてその上にシリカ層を形成し、さらにこのシリカ層にシランカップリング剤を結合させたものである。このシランカップリング剤に含まれる官能基を介して、直接または他の官能基を結合させたのちに、各種の生理活性物質を結合させることができる。
【0009】
シランカップリング剤は、生理活性物質に対して親和性のある官能基として、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ビニル基、アクリル基またはメタクリル基を有しているのが好ましい。
これらのシランカップリング剤により、表面にシリカ層を形成した強磁性酸化鉄粒子を処理すると、シリカとシランカップリング剤のシラノール基と磁性粒子表面のシリカとの間に化学結合が形成され、上記官能基をこの官能基が磁性粒子の外側に向くように導入させることができる。
シランカップリング剤の量は、強磁性酸化鉄粒子に対して、0.01〜20重量%の範囲とするのが好ましい。シランカップリング剤の量が、この範囲より少ないと、固定化できる生理活性物質の量が減少する傾向にある。一方、上記範囲より多いと、シランカップリング剤が粒子表面に均一に結合しにくくなるため、生理活性物質の固定化効率が逆に劣る傾向にある。
【0010】
本発明者らは、生理活性物質を固定化するための磁性担体の構造について、広範囲に検討してきた。シランカップリング剤は、無機物質となんらかの形で相互作用をなすため、強磁性酸化鉄粒子に直接シランカップリング剤を結合させることも可能である。しかしながら、磁性粒子に直接結合させた場合には、その結合量が少ないか、または結合力が弱いという問題がある。
【0011】
本発明者らは、シランカップリング剤は無機材料の中でも、とくにシリカと強い結合を形成することに注目し、シリカ層を介してシランカップリング剤を結合させることを着想した。このように強磁性酸化鉄粒子にシリカ層を形成し、このシリカ層にシランカップリング剤を結合させた磁性複合粒子が、生理活性物質を固定化するための材料として最適であることを見い出した。
すなわち、強磁性酸化鉄粒子を基材としその上にシリカ層を形成することで、多量のシランカップリング剤を結合させることができ、これにより生理活性物質に対して親和性のある官能基を多量に導入できることがわかった。また、シリカとシランカップリング剤は強固に結合するため、本発明の磁性粒子は安定性の高い生理活性物質固定化用材料となりうるものである。
【0012】
シランカップリング剤を結合させるためのシリカの量は、強磁性酸化鉄粒子に対して、0.5〜50重量%の範囲とするのが好ましい。シリカの量が上記より少ないと、シランカップリング剤の結合量が減少し、固定化できる生理活性物質の量も減少する傾向にある。また、上記より多いと、シリカが粒子表面以外の部分に析出しやすくなるため、シランカップリング剤を粒子表面に均一に結合させるのが難しく、生理活性物質の固定化量向上の効果が少なくなる。
【0013】
また、本発明の磁性複合粒子は、強磁性酸化鉄粒子から構成されているため、この磁性粒子に生理活性物質を固定化したのちに、磁石などを用いて容易に捕集することができるという特徴を有している。
強磁性酸化鉄粒子としては、マグネタイト(Fe3 O4 )粒子、マグヘマイト(γ−Fe2 O3 )粒子、マグネタイト−マグヘマイト中間酸化鉄、マンガン亜鉛フェライト(MnZnFe2 O4 )粒子が、好ましく用いられる。これらの中でも、マグネタイト粒子は、飽和磁化量が大きいため、磁石などで捕集する際の磁界感度が良好なため、最適である。これら強磁性酸化鉄粒子の粒子サイズは、とくに限定されるものではないが、0.01〜0.5μmの範囲にあるものは、溶液中での分散性が良好であり、好適である。
【0014】
シリカとシランカップリング剤を結合したのちの磁性複合粒子の粒子サイズとしては、平均粒子サイズが0.01〜10μmであるが最適であり、平均粒子サイズが0.02〜8μmであるのがとくに好ましい。
平均粒子サイズが上記範囲より小さいと、比表面積が大きくなるため、生理活性物質の固定化量は向上するが、磁界による捕集性が低くなる傾向にある。また、平均粒子サイズが上記範囲より大きくなると、粒子の比表面積が小さくなるため、生理活性物質の固定化効率が低くなる傾向にある。
【0015】
生理活性物質を固定化した磁性粒子は、磁石などにより捕集されるが、この捕集性は磁性粒子の飽和磁化量に依存し、飽和磁化量が大きいほど捕集性は向上する。シリカの量が強磁性酸化鉄粒子に対して0.5〜50重量%の範囲であり、またシランカップリング剤の量が強磁性酸化鉄粒子に対して0.01〜20重量%の範囲であれば、飽和磁化量が低下しても、実質的に磁石による捕集性に対してはほとんど影響がないことがわかった。
シリカの量やシランカップリング剤の量が、上記範囲より少ないと、生理活性物質の固定化効率が低くなり、上記範囲より多いと、磁性粒子の飽和磁化量が小さくなるため、磁石による捕集性が低下する傾向にある。
【0016】
つぎに、磁性複合粒子の保磁力であるが、一般に保磁力が大きくなると磁性粒子間の凝集力が大きくなり、分散性が低下する。その結果、生理活性物質と結合すべき活性点が減少し、生理活性物質の固定化効率が低下する傾向にある。
本発明の磁性複合粒子においては、個々の強磁性酸化鉄粒子に対してシリカおよびシランカップリング剤が被着形成されているため、磁性粒子の保磁力としては、強磁性酸化鉄粒子の保磁力によりほぼ決まる。
【0017】
本発明者らは、生理活性物質の固定化特性に影響を与えない最適の保磁力の範囲について検討した結果、0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)の範囲であれば、実用上問題がないことを見い出した。
保磁力が15.92kA/mより大きいと、磁性複合粒子の分散性が低下するが、15.92kA/m以下の保磁力であれば、実用上問題ないことがわかった。保磁力が低い分にはとくに問題とならないが、0.80kA/mより低くするには、強磁性酸化鉄粒子の粒子サイズを大きくするなど、強磁性酸化鉄粒子を本発明の目的に適さない形状や構造にする必要があり、好ましくない。
【0018】
つぎに、磁性複合粒子の飽和磁化は、強磁性酸化鉄粒子の飽和磁化と被着形成するシリカおよびシランカップリング剤の量により決まり、20〜80A・m2 /kg(20〜80emu/g)の範囲が最適である。
飽和磁化が20A・m2 /kgより小さいと、磁石による捕集性が低下する傾向にある。また、80A・m2 /kgより大きくするためには、シリカおよびシランカップリング剤の量を少なくする必要があり、生理活性物質の固定化効率が低下する傾向にある。
【0019】
強磁性酸化鉄粒子は、針状、板状、球状、粒状、楕円状、立方形状などの各種の形状のものを使用できるが、粒子形状は、生理活性物質の固定化量を左右し、球状ないし粒状のものが分散性が最も良好であり、好ましい。
ここで、「球状」とは、アスペクト比(あらゆる方向で測定した場合の最大長さと最小長さとの比)が1.0〜1.2の範囲内である形状を指し、「楕円状」とは、アスペクト比が1.2〜1.5の範囲内である形状を指している。また、「粒状」とは、球状のように粒子の長さが全方向で揃っているものや、楕円状のように一方向の長さのみ大きいもの以外に、方向による長さの差異はあるが、全体として形状にとくに異方性がない粒子を指している。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の磁性複合粒子は、既述のとおり、強磁性酸化鉄粒子とシリカおよびシランカップリング剤とから構成されている。とくに強磁性酸化鉄粒子の表面近傍にシリカ層を被着形成し、これにシランカップリング剤を結合することにより、生理活性物質を効率よく固定化することが可能となる。
【0021】
磁性複合粒子の形状としては、球状ないし粒状が好ましく、平均粒子サイズは0.01〜10μmの範囲が好ましい。また、保磁力は0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)の範囲、飽和磁化は20〜80A・m2 /kg(20〜80emu/g)の範囲が好ましい。
【0022】
強磁性酸化鉄粒子としては、とくに限定されるものではないが、マグネタイト(Fe3 O4 )粒子、マグヘマイト(γ−Fe2 O3 )粒子、マグネタイト−マグヘマイト中間酸化鉄、マンガン亜鉛フェライト(MnZnFe2 O4 )粒子が好ましい。これらの中でも、マグネタイト粒子は飽和磁化量が大きいため、磁石などで捕集する際の磁界感度が良好なため、とくに好ましい。
【0023】
つぎに、強磁性酸化鉄粒子としてマグネタイト粒子を用い、この粒子近傍にシリカ層を設け、このシリカ層にシランカップリング剤を結合した磁性複合粒子を例にとり、本発明の磁性複合粒子の製造方法を説明する。
【0024】
<マグネタイト粒子の合成>
マグネタイト粒子は、鉄塩の水溶液中の酸化反応を用いた、以下の方法により合成することができる。
まず、硫酸第一鉄(FeSO4 ・6H2 O)を溶解した2価のFeイオン水溶液にNaOH水溶液を滴下し、水酸化第一鉄〔Fe(OH)2 〕を析出させる。この水酸化第一鉄の懸濁液のpHを9〜10に調整したのち、空気を吹き込んで酸化することにより、マグネタイト粒子を成長させる。pHが上記範囲よりも小さいと、マグネタイトの析出が遅くなる。上記範囲よりも大きいと、ゲーサイト(α−FeOOH)が生成しやすくなる。
【0025】
空気吹き込み速度と、懸濁液の保持温度は、マグネタイト粒子の粒子サイズに大きく影響する。空気吹き込み速度は100〜400リットル/時間に、懸濁液の保持温度は50〜90℃に調整するのがよい。空気吹き込み速度が大きいと、マグネタイトの結晶成長が速くなり、粒子サイズは小さくなる。また、空気吹き込み速度が小さすぎるか、あるいは大きすぎると、マグネタイト以外の物質が混在析出しやすくなる。さらに、保持温度が高くなるほど、マグネタイトが結晶成長しやすくなり、粒子サイズが大きくなる。一方、保持温度が低すぎると、ゲーサイト(α−FeOOH)粒子が生成しやすくなる。
このような方法により、平均粒子サイズが0.01〜0.5μmのマグネタイト粒子を合成することができる。平均粒子サイズは、走査型電子顕微鏡写真上で300個の粒子のサイズを測定し、その平均値から求められる。
【0026】
<シリカの被着処理>
つぎに、シリカの被着処理方法について、説明する。
上記の方法で合成したマグネタイト粒子を純水で十分水洗したのち、乾燥させることなく、水に対するマグネタイト粒子の量が1〜10重量%になるように、マグネタイト粒子を水に分散させて懸濁液を得る。
水に対するマグネタイト粒子の量は、シリカを個々のマグネタイト粒子の表面近傍に被着形成するときの均一性に影響し、上記範囲内のときに最も均一にシリカが被着形成される。水に対するマグネタイト粒子の量が1重量%未満となると、濃度が希薄すぎて、シリカがマグネタイト粒子の表面以外の場所で析出しやすくなる。また、水に対するマグネタイト粒子の量が10重量%を超えると、濃度が高すぎて、マグネタイト粒子が凝集しやすくなり、個々のマグネタイト粒子の表面近傍に均一にシリカを被着形成することが困難になる。
【0027】
つぎに、この懸濁液に、SiO2 に換算して、強磁性酸化鉄粒子に対し、0.5〜50重量%になるように、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)を添加する。この添加量が0.5重量%より少ないと、マグネタイト粒子の表面近傍に被着形成されるシリカの量が不十分になるため、シランカップリング剤の結合量が少なくなり、磁性粒子表面の生理活性物質と結合すべき活性点が少なくなって、生理活性物質の固定化効率が低下する。また、上記の添加量が50重量%より多いと、シリカが個々のマグネタイト粒子の表面以外の部分に析出しやすくなるため、シランカップリング剤を粒子表面に均一に結合させることが困難となり、また磁性担体としての飽和磁化量が減少し、磁界による捕集性が低下する。
【0028】
このようにケイ酸ナトリウムを添加した懸濁液に、撹拌しながら、希塩酸などの酸を添加して中性付近まで中和処理することにより、マグネタイト粒子の表面近傍にシリカを被着形成する。その際、珪酸ナトリウムは、水に対し、SiO2 に換算して、0.5〜2重量%となるように調整されているのが好ましい。これは、珪酸ナトリウム水溶液から上記中和反応によりシリカを析出させると、液の粘度が高くなってくるためである。この液の粘度が高すぎると、個々のマグネタイト粒子の表面近傍にシリカを均一に被着形成するのが困難になり、一方、液の粘度が低すぎると、シリカが析出しにくくなる。
【0029】
したがって、マグネタイト粒子に対し、SiO2 に換算して、0.5〜50重量%になるように珪酸ナトリウムを加えるが、このときの水に対する珪酸ナトリウムの量が、SiO2 に換算して、0.5〜2重量%になるように調整し、かつ水に対するマグネタイト粒子の量が1〜10重量%になるように、マグネタイト粒子、珪酸ナトリウムおよび水の量を調整するのが好ましい。
このようにして合成される粒子は、純水で十分水洗したのち、ろ過し、空気中で、たとえば60℃で4時間程度乾燥させる。
【0030】
<シランカップリング剤の結合>
つぎに、シランカップリング剤の結合によるマグネタイト粒子表面への官能基の導入の方法について、説明する。
上記の方法でシリカ被着処理したマグネタイト粒子を、水に対して1〜40重量%になるように水中に分散し、この分散液にシランカップリング剤溶液を加える。このシランカップリング剤溶液は、そのままでもよいし、水やアルコール、メチルエチルケトン、トルエン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたはこれらの混合溶媒などで希釈して使用してもよい。
【0031】
シランカップリング剤としては、生理活性物質に対して親和性のある官能基として、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基を有するものを使用できる。
これらの官能基を有するシランカップリング剤には、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0032】
シランカップリング剤の量は、強磁性酸化鉄粒子に対し、0.01〜20重量%の範囲とするのが好ましい。この量が上記範囲より少ないと、固定化できる生理活性物質の量が減少し、多すぎると、シランカップリング剤が粒子表面に均一に結合しにくくなり、生理活性物質の固定化効率が逆に劣る傾向にある。
シランカップリング剤の処理時間は、1〜4時間程度が好ましい。処理時間が短すぎると、シランカップリング剤のシリカへの結合が不十分になる。処理時間が長すぎると、反応時に生成するアルコールなどが悪影響を及ぼすためか、シリカ表面のシランカップリング剤に未反応のアルコキシ基が残存するため、好ましくない。この反応混合物を水洗して、ろ過、乾燥する。
上記の方法により、マグネタイト粒子の表面に形成したシリカ層にシランカップリング剤を結合させることができ、これによりシランカップリング剤の官能基をマグネタイト粒子の表面に導入することができる。
【0033】
このような方法により、保磁力と飽和磁化がそれぞれ0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)と20〜80A・m2 /kg(20〜80emu/g)の範囲にある、個々のマグネタイト粒子の表面近傍にマグネタイト粒子に対し0.5〜50重量%のシリカと0.01〜20重量%のシランカップリング剤が被着形成された、平均粒子サイズが0.01〜10μmの球状ないし粒状である、生理活性物質を高収率で固定化できる磁性複合粒子が得られる。
【0034】
なお、保磁力および飽和磁化は、振動試料型磁力計(東英工業社製)を用いて測定される値である。飽和磁化は、797kA/m(10キロエルステッド)の磁界を印加したときの磁化量から求められる。保磁力は、797kA/mの磁界を印加して磁化したのち、磁界をゼロに戻し、さらに磁界を逆方向に徐々に増加させて行ったときの、磁化量がゼロになる印加磁界の値から求められる。
【0035】
本発明の磁性複合粒子およびその製造方法について、その特徴を箇条書きにすると、下記(1)〜(6)のとおりである。
(1)強磁性酸化鉄粒子とシリカおよびシランカップリング剤とから構成されている磁性複合粒子であって、
(2)この磁性複合粒子に含まれるシリカとシランカップリング剤の量は、強磁性酸化鉄粒子に対し、それぞれ0.5〜50重量%と0.01〜20重量%の範囲にあるのが好ましく、
(3)強磁性酸化鉄粒子は、マグネタイト粒子であるのが好ましく、
(4)この磁性複合粒子は、球状ないし粒状の形状を有し、平均粒子サイズが0.01〜10μmの範囲にあるのが好ましく、
(5)この磁性複合粒子の保磁力と飽和磁化が、それぞれ、0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)と20〜80A・m2 /kg(20〜80emu/g)の範囲にあるのが好ましい。
(6)また、この磁性複合粒子の製造方法として、強磁性酸化鉄粒子を分散させた水懸濁液中に所定量の珪酸ナトリウムを加えて溶解したのち、酸を加えて中和することにより、個々の強磁性酸化鉄粒子の表面近傍にシリカを被着形成し、このシリカ層にさらにシランカップリング剤を結合させて、粒子表面に官能基を導入するのが好ましい。
【0036】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0037】
実施例1
<マグネタイト粒子の合成>
100gの硫酸第一鉄(FeSO4 ・7H2 O)を1,000ccの純水に溶解した。この硫酸第一鉄と等倍モルになるように、28.8gの水酸化ナトリウムを500ccの純水に溶解した。つぎに、硫酸第一鉄水溶液を攪拌しながら、1時間かけて水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、水酸化第一鉄の沈殿物を生成させた。滴下終了後、攪拌しながら、水酸化第一鉄の沈殿物を含む懸濁液の温度を75℃まで昇温した。懸濁液の温度が75℃に達したのち、250リットル/時間の速度で、エアーポンプを使用して空気を吹き込みながら、8時間酸化して、マグネタイト粒子を生成させた。このマグネタイト粒子はほぼ球形であり、平均粒子サイズは約0.23μmであった。
なお、マグネタイト粒子の粒子サイズは、透過型電子顕微鏡写真上、約300個の粒子サイズを測定し、その平均粒子サイズから求めた。
【0038】
<シリカの被着処理>
上記のマグネタイト粒子の分散液を、純水を用いて十分に水洗したのち、乾燥させることなく、マグネタイトと純水の重量がそれぞれ10gと200gになるように調整した。水洗後の分散液中のマグネタイトの含有量は、一部採取して乾燥させて求めた。この分散液に2gの珪酸ナトリウムを溶解した。
上記の珪酸ナトリウムは、溶解状態ではアルカリ性であるが、中和して中性付近になるとシリカとして析出する。そこで、この珪酸ナトリウム溶解マグネタイト粒子分散液に、攪拌しながら、約1時間かけて、希塩酸を滴下して中性付近まで中和した。滴下終了後、さらに1時間、攪拌を継続した。これにより、個々のマグネタイト粒子の表面近傍にシリカが被着形成された。
なお、この反応において、水に対する珪酸ナトリウムの量とマグネタイト粒子の量は重要であり、珪酸ナトリウムの量が、水に対してSiO2 に換算して0.5〜2重量%の範囲であるのが、珪酸ナトリウム水溶液から中和反応によりシリカを析出させるときの液の粘度が最適になり、個々のマグネタイト粒子の表面近傍にシリカを均一に被着形成することでできる。また、水に対するマグネタイト粒子の量が1〜10重量%の範囲とするのが、マグネタイト粒子の表面近傍に優先的にシリカを被着形成する上で最適である。
つぎに、攪拌を停止して、自然沈降させた。上澄み液を除去し、水洗したのち、ろ過し、60℃で4時間乾燥した。
【0039】
<シランカップリング剤の結合処理>
つぎに、上記のシリカを被着したマグネタイト粒子10gを、純水25g中に分散した。この分散液を撹拌しながら、末端にアミノ基を有するN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.2gを添加した。添加後、さらに3時間撹拌した。水洗したのち、ろ過し、110℃で4時間乾燥することにより、磁性複合粒子を製造した。
【0040】
このようにして得られた磁性複合粒子は、平均粒子サイズが0.30μmの球状ないし粒状であり、保磁力が4.78kA/m(60エルステッド)で、飽和磁化が67.9A・m2 /kg(67.9emu/g)であった。また、シリカの量は、マグネタイトに粒子に対して22.2重量%で、シランカップリング剤の量は、マグネタイト粒子に対して1.88重量%であった。
【0041】
実施例2
シリカの被着処理工程において、珪酸ナトリウムの添加量を2gから4gに変更した以外は、実施例1と同様にシリカを被着形成し、その後のシランカップリング剤の結合処理も、実施例1と同様に行い、マグネタイト粒子の表面近傍にシリカおよびシランカップリング剤を被着形成した磁性複合粒子を製造した。
この磁性複合粒子は、平均粒子サイズが0.33μmの球状ないし粒状であり、保磁力が5.97kA/m(75エルステッド)で、飽和磁化が59.3A・m2 /kg(59.3emu/g)であった。また、シリカの量は、マグネタイト粒子に対して38.9重量%で、シランカップリング剤の量は、マグネタイト粒子に対して1.91重量%であった。
【0042】
実施例3
シランカップリング剤の結合処理工程において、末端にアミノ基を有するN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランに代えて、末端にエポキシ基を有する3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを使用した以外は、実施例1と同様に結合処理を行い、マグネタイト粒子の表面近傍にシリカおよびシランカップリング剤を被着形成した磁性複合粒子を製造した。
この磁性複合粒子は、平均粒子サイズが0.31μmの球状ないし粒状であり、保磁力が5.18kA/m(65エルステッド)で、飽和磁化が68.3A・m2 /kg(68.3emu/g)であった。また、シリカの量は、マグネタイトに粒子に対して20.8重量%で、シランカップリング剤の量は、マグネタイト粒子に対して1.76重量%であった。
【0043】
比較例1
シリカの被着処理を行わず、マグネタイト粒子に直接シランカップリング剤の結合処理を施した以外は、実施例1と同様に行い、マグネタイト粒子にシランカップリング剤を結合させた磁性複合粒子を製造した。
この磁性複合粒子は、平均粒子サイズが0.28μmの球状ないし粒状であり、保磁力が5.74kA/m(72エルステッド)で、飽和磁化が79.5A・m2 /kg(79.5emu/g)であった。また、シランカップリング剤の量は、マグネタイト粒子に対して0.42重量%であった。
【0044】
上記の実施例1〜3および比較例1で得た各磁性複合粒子について、平均粒子サイズ、マグネタイト粒子に対するシリカの割合(SiO2 /Fe3 O4 )、マグネタイト粒子に対するシランカップリング剤の結合割合(シランカップリング剤/Fe3 O4 )、保磁力および飽和磁化を、表1にまとめて示した。
【0045】
表1
【0046】
上記表1の結果から、マグネタイト粒子にシリカ層を形成したのち、シランカップリング剤の結合処理を施した実施例1〜3の磁性複合粒子は、マグネタイト粒子に直接シランカップリング剤の結合処理を施した比較例1の磁性複合粒子に比べて、シランカップリング剤の結合量が向上しており、生理活性物質に対して親和性のある官能基を多量に導入できることがわかる。これは、シリカとシランカップリング剤との間の強い相互作用によるものと考えられる。
【0047】
つぎに、これらの磁性複合粒子を用いて、酵素の固定化試験を行った。
まず、磁性複合粒子の一定量を水に分散し、この分散液に酵素として一定量のペルオキシダーゼを添加、撹拌し、磁性複合粒子にペルオキシダーゼを固定化した。固定化した酵素の量および活性を測定する方法として、TOOS−4−AA系の発色反応を使用した。この発色反応は、ペルオキシダーゼにより触媒される過酸化水素の還元によって生成した酸素と、TOOS〔N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン〕および4−AA(4−アミノアンチピリン)の反応により、波長546nmに吸収を有する色素が生成することを利用したものであり、当業者間で公知の方法である。
【0048】
すなわち、まず、0.9重量%の過酸化水素を含有する水溶液0.1mlに、反応液〔50mM・トリス塩酸バッファー(pH7.5)、0.6mM・TOOS、0.5mM・4−AA〕を3ml添加して攪拌し、測定液を調製した。つぎに、この測定液にペルオキシダーゼ固定化磁性粒子を100mg添加し、37℃で加温した。この溶液について、吸光度計により磁性粒子の添加直後から5分間の吸光度(OD:546nm)を30秒間隔で測定して、上記試料中の過酸化水素の改質により生成した色素を定量した。その結果、実施例1〜3の磁性複合粒子は、比較例1の磁性複合粒子に比べて、多量の酵素が固定化されており、またこの固定化された酵素は高い活性を示すものであることがわかった。
【0049】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、強磁性酸化鉄粒子を基材とし、これにシリカ層とシランカップリング剤を結合させた磁性複合粒子を提供するものであり、とくに、強磁性酸化鉄粒子に対し、シリカを0.5〜50重量%の範囲に、シランカップリング剤を0.01〜20重量%の範囲に、それぞれ設定し、また平均粒子サイズを0.01〜10μmの範囲に、さらに保磁力と飽和磁化をそれぞれ0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)と20〜80A・m2 /kg(20〜80emu/g)の範囲に設定することにより、生理活性物質を効率良く固定化できるという格別の効果が奏される。また、このように固定化した酵素は高い活性を示すという効果も奏されるものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、生理活性物質を固定化するための磁性複合粒子およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、診断薬担体、細菌分離担体、核酸分離精製担体、タンパク質精製担体、固定化酵素担体、抗体固定化担体などに使用するうえで有用な磁性複合粒子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、生理活性物質を基材上に共有結合により固定化する方法として、シッフ塩基法が知られている。この方法は、たとえば、生理活性物質や基材に対して親和性のある官能基を有するカップリング剤を使用することにより、基材上に生理活性物質を固定化するという方法である。
【0003】
生理活性物質を固定化する材料として、特開平5−344885号公報に開示のように、シラノール誘導体からなるものが公知である。生理活性物質を固定化するには、この固定化材料をシランカップリング剤により基材に導入したのち、活性化し、生理活性物質を接触させて固定化する。この固定化材料は、鎖長を変えることで任意の生理活性物質を基材に固定化できるが、分解されやすい結合を有しており、固定化材料自身の安定性が悪いという問題がある。
【0004】
また、生理活性物質として、酵素、抗体、補酵素などの機能を持つタンパク質、糖タンパク質、糖類などが挙げられるが、その中でも、酵素を固定化するための担体が知られている。たとえば、特開平5−219952号公報には、酵素に対して親和性のある官能基と疎水性の官能基を有するカップリング剤を結合した酵素固定化用無機質または有機質担体が開示されている。
また、特開平9−257号公報には、特殊な官能基を持つシランカップリング剤で処理した無機担体が開示されており、これに酵素を固定化し、洗浄、乾燥したのち、脂肪酸を含浸させて固定化酵素担体を得ている。
【0005】
さらに、生理活性物質を固定化するための担体として、基材に磁性粒子を用いたものも公知である(特許文献1参照)。このものは、平均粒径1〜10μmの樹脂粒子に平均粒径0.3〜1μmの磁性粒子を固定し、これにシランカップリング剤により生理活性物質を固定化するものである。
しかしながら、この担体では、磁性粒子表面の一部は樹脂粒子との結合点となるため、シランカップリング剤と結合できる点は限定される。したがって、この担体に多量の生理活性物質を固定化するのは困難となる。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−63761号公報(第2〜3頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情に照らして、生理活性物質を高収率で固定化できる材料を提供することを目的とする。また、生理活性物質を固定化するのに安定な構造を有する材料を提供することを別の目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために、鋭意検討した結果、基材として強磁性酸化鉄粒子を使用しこれにシリカおよびシランカップリング剤を結合させた複合磁性粒子によると、生理活性物質を高収率で固定化でき、しかも安定性の高い固定化材料となることを知り、本発明をなすに至った。
本発明の磁性複合粒子は、強磁性酸化鉄粒子を基材としてその上にシリカ層を形成し、さらにこのシリカ層にシランカップリング剤を結合させたものである。このシランカップリング剤に含まれる官能基を介して、直接または他の官能基を結合させたのちに、各種の生理活性物質を結合させることができる。
【0009】
シランカップリング剤は、生理活性物質に対して親和性のある官能基として、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ビニル基、アクリル基またはメタクリル基を有しているのが好ましい。
これらのシランカップリング剤により、表面にシリカ層を形成した強磁性酸化鉄粒子を処理すると、シリカとシランカップリング剤のシラノール基と磁性粒子表面のシリカとの間に化学結合が形成され、上記官能基をこの官能基が磁性粒子の外側に向くように導入させることができる。
シランカップリング剤の量は、強磁性酸化鉄粒子に対して、0.01〜20重量%の範囲とするのが好ましい。シランカップリング剤の量が、この範囲より少ないと、固定化できる生理活性物質の量が減少する傾向にある。一方、上記範囲より多いと、シランカップリング剤が粒子表面に均一に結合しにくくなるため、生理活性物質の固定化効率が逆に劣る傾向にある。
【0010】
本発明者らは、生理活性物質を固定化するための磁性担体の構造について、広範囲に検討してきた。シランカップリング剤は、無機物質となんらかの形で相互作用をなすため、強磁性酸化鉄粒子に直接シランカップリング剤を結合させることも可能である。しかしながら、磁性粒子に直接結合させた場合には、その結合量が少ないか、または結合力が弱いという問題がある。
【0011】
本発明者らは、シランカップリング剤は無機材料の中でも、とくにシリカと強い結合を形成することに注目し、シリカ層を介してシランカップリング剤を結合させることを着想した。このように強磁性酸化鉄粒子にシリカ層を形成し、このシリカ層にシランカップリング剤を結合させた磁性複合粒子が、生理活性物質を固定化するための材料として最適であることを見い出した。
すなわち、強磁性酸化鉄粒子を基材としその上にシリカ層を形成することで、多量のシランカップリング剤を結合させることができ、これにより生理活性物質に対して親和性のある官能基を多量に導入できることがわかった。また、シリカとシランカップリング剤は強固に結合するため、本発明の磁性粒子は安定性の高い生理活性物質固定化用材料となりうるものである。
【0012】
シランカップリング剤を結合させるためのシリカの量は、強磁性酸化鉄粒子に対して、0.5〜50重量%の範囲とするのが好ましい。シリカの量が上記より少ないと、シランカップリング剤の結合量が減少し、固定化できる生理活性物質の量も減少する傾向にある。また、上記より多いと、シリカが粒子表面以外の部分に析出しやすくなるため、シランカップリング剤を粒子表面に均一に結合させるのが難しく、生理活性物質の固定化量向上の効果が少なくなる。
【0013】
また、本発明の磁性複合粒子は、強磁性酸化鉄粒子から構成されているため、この磁性粒子に生理活性物質を固定化したのちに、磁石などを用いて容易に捕集することができるという特徴を有している。
強磁性酸化鉄粒子としては、マグネタイト(Fe3 O4 )粒子、マグヘマイト(γ−Fe2 O3 )粒子、マグネタイト−マグヘマイト中間酸化鉄、マンガン亜鉛フェライト(MnZnFe2 O4 )粒子が、好ましく用いられる。これらの中でも、マグネタイト粒子は、飽和磁化量が大きいため、磁石などで捕集する際の磁界感度が良好なため、最適である。これら強磁性酸化鉄粒子の粒子サイズは、とくに限定されるものではないが、0.01〜0.5μmの範囲にあるものは、溶液中での分散性が良好であり、好適である。
【0014】
シリカとシランカップリング剤を結合したのちの磁性複合粒子の粒子サイズとしては、平均粒子サイズが0.01〜10μmであるが最適であり、平均粒子サイズが0.02〜8μmであるのがとくに好ましい。
平均粒子サイズが上記範囲より小さいと、比表面積が大きくなるため、生理活性物質の固定化量は向上するが、磁界による捕集性が低くなる傾向にある。また、平均粒子サイズが上記範囲より大きくなると、粒子の比表面積が小さくなるため、生理活性物質の固定化効率が低くなる傾向にある。
【0015】
生理活性物質を固定化した磁性粒子は、磁石などにより捕集されるが、この捕集性は磁性粒子の飽和磁化量に依存し、飽和磁化量が大きいほど捕集性は向上する。シリカの量が強磁性酸化鉄粒子に対して0.5〜50重量%の範囲であり、またシランカップリング剤の量が強磁性酸化鉄粒子に対して0.01〜20重量%の範囲であれば、飽和磁化量が低下しても、実質的に磁石による捕集性に対してはほとんど影響がないことがわかった。
シリカの量やシランカップリング剤の量が、上記範囲より少ないと、生理活性物質の固定化効率が低くなり、上記範囲より多いと、磁性粒子の飽和磁化量が小さくなるため、磁石による捕集性が低下する傾向にある。
【0016】
つぎに、磁性複合粒子の保磁力であるが、一般に保磁力が大きくなると磁性粒子間の凝集力が大きくなり、分散性が低下する。その結果、生理活性物質と結合すべき活性点が減少し、生理活性物質の固定化効率が低下する傾向にある。
本発明の磁性複合粒子においては、個々の強磁性酸化鉄粒子に対してシリカおよびシランカップリング剤が被着形成されているため、磁性粒子の保磁力としては、強磁性酸化鉄粒子の保磁力によりほぼ決まる。
【0017】
本発明者らは、生理活性物質の固定化特性に影響を与えない最適の保磁力の範囲について検討した結果、0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)の範囲であれば、実用上問題がないことを見い出した。
保磁力が15.92kA/mより大きいと、磁性複合粒子の分散性が低下するが、15.92kA/m以下の保磁力であれば、実用上問題ないことがわかった。保磁力が低い分にはとくに問題とならないが、0.80kA/mより低くするには、強磁性酸化鉄粒子の粒子サイズを大きくするなど、強磁性酸化鉄粒子を本発明の目的に適さない形状や構造にする必要があり、好ましくない。
【0018】
つぎに、磁性複合粒子の飽和磁化は、強磁性酸化鉄粒子の飽和磁化と被着形成するシリカおよびシランカップリング剤の量により決まり、20〜80A・m2 /kg(20〜80emu/g)の範囲が最適である。
飽和磁化が20A・m2 /kgより小さいと、磁石による捕集性が低下する傾向にある。また、80A・m2 /kgより大きくするためには、シリカおよびシランカップリング剤の量を少なくする必要があり、生理活性物質の固定化効率が低下する傾向にある。
【0019】
強磁性酸化鉄粒子は、針状、板状、球状、粒状、楕円状、立方形状などの各種の形状のものを使用できるが、粒子形状は、生理活性物質の固定化量を左右し、球状ないし粒状のものが分散性が最も良好であり、好ましい。
ここで、「球状」とは、アスペクト比(あらゆる方向で測定した場合の最大長さと最小長さとの比)が1.0〜1.2の範囲内である形状を指し、「楕円状」とは、アスペクト比が1.2〜1.5の範囲内である形状を指している。また、「粒状」とは、球状のように粒子の長さが全方向で揃っているものや、楕円状のように一方向の長さのみ大きいもの以外に、方向による長さの差異はあるが、全体として形状にとくに異方性がない粒子を指している。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の磁性複合粒子は、既述のとおり、強磁性酸化鉄粒子とシリカおよびシランカップリング剤とから構成されている。とくに強磁性酸化鉄粒子の表面近傍にシリカ層を被着形成し、これにシランカップリング剤を結合することにより、生理活性物質を効率よく固定化することが可能となる。
【0021】
磁性複合粒子の形状としては、球状ないし粒状が好ましく、平均粒子サイズは0.01〜10μmの範囲が好ましい。また、保磁力は0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)の範囲、飽和磁化は20〜80A・m2 /kg(20〜80emu/g)の範囲が好ましい。
【0022】
強磁性酸化鉄粒子としては、とくに限定されるものではないが、マグネタイト(Fe3 O4 )粒子、マグヘマイト(γ−Fe2 O3 )粒子、マグネタイト−マグヘマイト中間酸化鉄、マンガン亜鉛フェライト(MnZnFe2 O4 )粒子が好ましい。これらの中でも、マグネタイト粒子は飽和磁化量が大きいため、磁石などで捕集する際の磁界感度が良好なため、とくに好ましい。
【0023】
つぎに、強磁性酸化鉄粒子としてマグネタイト粒子を用い、この粒子近傍にシリカ層を設け、このシリカ層にシランカップリング剤を結合した磁性複合粒子を例にとり、本発明の磁性複合粒子の製造方法を説明する。
【0024】
<マグネタイト粒子の合成>
マグネタイト粒子は、鉄塩の水溶液中の酸化反応を用いた、以下の方法により合成することができる。
まず、硫酸第一鉄(FeSO4 ・6H2 O)を溶解した2価のFeイオン水溶液にNaOH水溶液を滴下し、水酸化第一鉄〔Fe(OH)2 〕を析出させる。この水酸化第一鉄の懸濁液のpHを9〜10に調整したのち、空気を吹き込んで酸化することにより、マグネタイト粒子を成長させる。pHが上記範囲よりも小さいと、マグネタイトの析出が遅くなる。上記範囲よりも大きいと、ゲーサイト(α−FeOOH)が生成しやすくなる。
【0025】
空気吹き込み速度と、懸濁液の保持温度は、マグネタイト粒子の粒子サイズに大きく影響する。空気吹き込み速度は100〜400リットル/時間に、懸濁液の保持温度は50〜90℃に調整するのがよい。空気吹き込み速度が大きいと、マグネタイトの結晶成長が速くなり、粒子サイズは小さくなる。また、空気吹き込み速度が小さすぎるか、あるいは大きすぎると、マグネタイト以外の物質が混在析出しやすくなる。さらに、保持温度が高くなるほど、マグネタイトが結晶成長しやすくなり、粒子サイズが大きくなる。一方、保持温度が低すぎると、ゲーサイト(α−FeOOH)粒子が生成しやすくなる。
このような方法により、平均粒子サイズが0.01〜0.5μmのマグネタイト粒子を合成することができる。平均粒子サイズは、走査型電子顕微鏡写真上で300個の粒子のサイズを測定し、その平均値から求められる。
【0026】
<シリカの被着処理>
つぎに、シリカの被着処理方法について、説明する。
上記の方法で合成したマグネタイト粒子を純水で十分水洗したのち、乾燥させることなく、水に対するマグネタイト粒子の量が1〜10重量%になるように、マグネタイト粒子を水に分散させて懸濁液を得る。
水に対するマグネタイト粒子の量は、シリカを個々のマグネタイト粒子の表面近傍に被着形成するときの均一性に影響し、上記範囲内のときに最も均一にシリカが被着形成される。水に対するマグネタイト粒子の量が1重量%未満となると、濃度が希薄すぎて、シリカがマグネタイト粒子の表面以外の場所で析出しやすくなる。また、水に対するマグネタイト粒子の量が10重量%を超えると、濃度が高すぎて、マグネタイト粒子が凝集しやすくなり、個々のマグネタイト粒子の表面近傍に均一にシリカを被着形成することが困難になる。
【0027】
つぎに、この懸濁液に、SiO2 に換算して、強磁性酸化鉄粒子に対し、0.5〜50重量%になるように、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)を添加する。この添加量が0.5重量%より少ないと、マグネタイト粒子の表面近傍に被着形成されるシリカの量が不十分になるため、シランカップリング剤の結合量が少なくなり、磁性粒子表面の生理活性物質と結合すべき活性点が少なくなって、生理活性物質の固定化効率が低下する。また、上記の添加量が50重量%より多いと、シリカが個々のマグネタイト粒子の表面以外の部分に析出しやすくなるため、シランカップリング剤を粒子表面に均一に結合させることが困難となり、また磁性担体としての飽和磁化量が減少し、磁界による捕集性が低下する。
【0028】
このようにケイ酸ナトリウムを添加した懸濁液に、撹拌しながら、希塩酸などの酸を添加して中性付近まで中和処理することにより、マグネタイト粒子の表面近傍にシリカを被着形成する。その際、珪酸ナトリウムは、水に対し、SiO2 に換算して、0.5〜2重量%となるように調整されているのが好ましい。これは、珪酸ナトリウム水溶液から上記中和反応によりシリカを析出させると、液の粘度が高くなってくるためである。この液の粘度が高すぎると、個々のマグネタイト粒子の表面近傍にシリカを均一に被着形成するのが困難になり、一方、液の粘度が低すぎると、シリカが析出しにくくなる。
【0029】
したがって、マグネタイト粒子に対し、SiO2 に換算して、0.5〜50重量%になるように珪酸ナトリウムを加えるが、このときの水に対する珪酸ナトリウムの量が、SiO2 に換算して、0.5〜2重量%になるように調整し、かつ水に対するマグネタイト粒子の量が1〜10重量%になるように、マグネタイト粒子、珪酸ナトリウムおよび水の量を調整するのが好ましい。
このようにして合成される粒子は、純水で十分水洗したのち、ろ過し、空気中で、たとえば60℃で4時間程度乾燥させる。
【0030】
<シランカップリング剤の結合>
つぎに、シランカップリング剤の結合によるマグネタイト粒子表面への官能基の導入の方法について、説明する。
上記の方法でシリカ被着処理したマグネタイト粒子を、水に対して1〜40重量%になるように水中に分散し、この分散液にシランカップリング剤溶液を加える。このシランカップリング剤溶液は、そのままでもよいし、水やアルコール、メチルエチルケトン、トルエン、ベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたはこれらの混合溶媒などで希釈して使用してもよい。
【0031】
シランカップリング剤としては、生理活性物質に対して親和性のある官能基として、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基を有するものを使用できる。
これらの官能基を有するシランカップリング剤には、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0032】
シランカップリング剤の量は、強磁性酸化鉄粒子に対し、0.01〜20重量%の範囲とするのが好ましい。この量が上記範囲より少ないと、固定化できる生理活性物質の量が減少し、多すぎると、シランカップリング剤が粒子表面に均一に結合しにくくなり、生理活性物質の固定化効率が逆に劣る傾向にある。
シランカップリング剤の処理時間は、1〜4時間程度が好ましい。処理時間が短すぎると、シランカップリング剤のシリカへの結合が不十分になる。処理時間が長すぎると、反応時に生成するアルコールなどが悪影響を及ぼすためか、シリカ表面のシランカップリング剤に未反応のアルコキシ基が残存するため、好ましくない。この反応混合物を水洗して、ろ過、乾燥する。
上記の方法により、マグネタイト粒子の表面に形成したシリカ層にシランカップリング剤を結合させることができ、これによりシランカップリング剤の官能基をマグネタイト粒子の表面に導入することができる。
【0033】
このような方法により、保磁力と飽和磁化がそれぞれ0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)と20〜80A・m2 /kg(20〜80emu/g)の範囲にある、個々のマグネタイト粒子の表面近傍にマグネタイト粒子に対し0.5〜50重量%のシリカと0.01〜20重量%のシランカップリング剤が被着形成された、平均粒子サイズが0.01〜10μmの球状ないし粒状である、生理活性物質を高収率で固定化できる磁性複合粒子が得られる。
【0034】
なお、保磁力および飽和磁化は、振動試料型磁力計(東英工業社製)を用いて測定される値である。飽和磁化は、797kA/m(10キロエルステッド)の磁界を印加したときの磁化量から求められる。保磁力は、797kA/mの磁界を印加して磁化したのち、磁界をゼロに戻し、さらに磁界を逆方向に徐々に増加させて行ったときの、磁化量がゼロになる印加磁界の値から求められる。
【0035】
本発明の磁性複合粒子およびその製造方法について、その特徴を箇条書きにすると、下記(1)〜(6)のとおりである。
(1)強磁性酸化鉄粒子とシリカおよびシランカップリング剤とから構成されている磁性複合粒子であって、
(2)この磁性複合粒子に含まれるシリカとシランカップリング剤の量は、強磁性酸化鉄粒子に対し、それぞれ0.5〜50重量%と0.01〜20重量%の範囲にあるのが好ましく、
(3)強磁性酸化鉄粒子は、マグネタイト粒子であるのが好ましく、
(4)この磁性複合粒子は、球状ないし粒状の形状を有し、平均粒子サイズが0.01〜10μmの範囲にあるのが好ましく、
(5)この磁性複合粒子の保磁力と飽和磁化が、それぞれ、0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)と20〜80A・m2 /kg(20〜80emu/g)の範囲にあるのが好ましい。
(6)また、この磁性複合粒子の製造方法として、強磁性酸化鉄粒子を分散させた水懸濁液中に所定量の珪酸ナトリウムを加えて溶解したのち、酸を加えて中和することにより、個々の強磁性酸化鉄粒子の表面近傍にシリカを被着形成し、このシリカ層にさらにシランカップリング剤を結合させて、粒子表面に官能基を導入するのが好ましい。
【0036】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0037】
実施例1
<マグネタイト粒子の合成>
100gの硫酸第一鉄(FeSO4 ・7H2 O)を1,000ccの純水に溶解した。この硫酸第一鉄と等倍モルになるように、28.8gの水酸化ナトリウムを500ccの純水に溶解した。つぎに、硫酸第一鉄水溶液を攪拌しながら、1時間かけて水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、水酸化第一鉄の沈殿物を生成させた。滴下終了後、攪拌しながら、水酸化第一鉄の沈殿物を含む懸濁液の温度を75℃まで昇温した。懸濁液の温度が75℃に達したのち、250リットル/時間の速度で、エアーポンプを使用して空気を吹き込みながら、8時間酸化して、マグネタイト粒子を生成させた。このマグネタイト粒子はほぼ球形であり、平均粒子サイズは約0.23μmであった。
なお、マグネタイト粒子の粒子サイズは、透過型電子顕微鏡写真上、約300個の粒子サイズを測定し、その平均粒子サイズから求めた。
【0038】
<シリカの被着処理>
上記のマグネタイト粒子の分散液を、純水を用いて十分に水洗したのち、乾燥させることなく、マグネタイトと純水の重量がそれぞれ10gと200gになるように調整した。水洗後の分散液中のマグネタイトの含有量は、一部採取して乾燥させて求めた。この分散液に2gの珪酸ナトリウムを溶解した。
上記の珪酸ナトリウムは、溶解状態ではアルカリ性であるが、中和して中性付近になるとシリカとして析出する。そこで、この珪酸ナトリウム溶解マグネタイト粒子分散液に、攪拌しながら、約1時間かけて、希塩酸を滴下して中性付近まで中和した。滴下終了後、さらに1時間、攪拌を継続した。これにより、個々のマグネタイト粒子の表面近傍にシリカが被着形成された。
なお、この反応において、水に対する珪酸ナトリウムの量とマグネタイト粒子の量は重要であり、珪酸ナトリウムの量が、水に対してSiO2 に換算して0.5〜2重量%の範囲であるのが、珪酸ナトリウム水溶液から中和反応によりシリカを析出させるときの液の粘度が最適になり、個々のマグネタイト粒子の表面近傍にシリカを均一に被着形成することでできる。また、水に対するマグネタイト粒子の量が1〜10重量%の範囲とするのが、マグネタイト粒子の表面近傍に優先的にシリカを被着形成する上で最適である。
つぎに、攪拌を停止して、自然沈降させた。上澄み液を除去し、水洗したのち、ろ過し、60℃で4時間乾燥した。
【0039】
<シランカップリング剤の結合処理>
つぎに、上記のシリカを被着したマグネタイト粒子10gを、純水25g中に分散した。この分散液を撹拌しながら、末端にアミノ基を有するN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.2gを添加した。添加後、さらに3時間撹拌した。水洗したのち、ろ過し、110℃で4時間乾燥することにより、磁性複合粒子を製造した。
【0040】
このようにして得られた磁性複合粒子は、平均粒子サイズが0.30μmの球状ないし粒状であり、保磁力が4.78kA/m(60エルステッド)で、飽和磁化が67.9A・m2 /kg(67.9emu/g)であった。また、シリカの量は、マグネタイトに粒子に対して22.2重量%で、シランカップリング剤の量は、マグネタイト粒子に対して1.88重量%であった。
【0041】
実施例2
シリカの被着処理工程において、珪酸ナトリウムの添加量を2gから4gに変更した以外は、実施例1と同様にシリカを被着形成し、その後のシランカップリング剤の結合処理も、実施例1と同様に行い、マグネタイト粒子の表面近傍にシリカおよびシランカップリング剤を被着形成した磁性複合粒子を製造した。
この磁性複合粒子は、平均粒子サイズが0.33μmの球状ないし粒状であり、保磁力が5.97kA/m(75エルステッド)で、飽和磁化が59.3A・m2 /kg(59.3emu/g)であった。また、シリカの量は、マグネタイト粒子に対して38.9重量%で、シランカップリング剤の量は、マグネタイト粒子に対して1.91重量%であった。
【0042】
実施例3
シランカップリング剤の結合処理工程において、末端にアミノ基を有するN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランに代えて、末端にエポキシ基を有する3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを使用した以外は、実施例1と同様に結合処理を行い、マグネタイト粒子の表面近傍にシリカおよびシランカップリング剤を被着形成した磁性複合粒子を製造した。
この磁性複合粒子は、平均粒子サイズが0.31μmの球状ないし粒状であり、保磁力が5.18kA/m(65エルステッド)で、飽和磁化が68.3A・m2 /kg(68.3emu/g)であった。また、シリカの量は、マグネタイトに粒子に対して20.8重量%で、シランカップリング剤の量は、マグネタイト粒子に対して1.76重量%であった。
【0043】
比較例1
シリカの被着処理を行わず、マグネタイト粒子に直接シランカップリング剤の結合処理を施した以外は、実施例1と同様に行い、マグネタイト粒子にシランカップリング剤を結合させた磁性複合粒子を製造した。
この磁性複合粒子は、平均粒子サイズが0.28μmの球状ないし粒状であり、保磁力が5.74kA/m(72エルステッド)で、飽和磁化が79.5A・m2 /kg(79.5emu/g)であった。また、シランカップリング剤の量は、マグネタイト粒子に対して0.42重量%であった。
【0044】
上記の実施例1〜3および比較例1で得た各磁性複合粒子について、平均粒子サイズ、マグネタイト粒子に対するシリカの割合(SiO2 /Fe3 O4 )、マグネタイト粒子に対するシランカップリング剤の結合割合(シランカップリング剤/Fe3 O4 )、保磁力および飽和磁化を、表1にまとめて示した。
【0045】
表1
【0046】
上記表1の結果から、マグネタイト粒子にシリカ層を形成したのち、シランカップリング剤の結合処理を施した実施例1〜3の磁性複合粒子は、マグネタイト粒子に直接シランカップリング剤の結合処理を施した比較例1の磁性複合粒子に比べて、シランカップリング剤の結合量が向上しており、生理活性物質に対して親和性のある官能基を多量に導入できることがわかる。これは、シリカとシランカップリング剤との間の強い相互作用によるものと考えられる。
【0047】
つぎに、これらの磁性複合粒子を用いて、酵素の固定化試験を行った。
まず、磁性複合粒子の一定量を水に分散し、この分散液に酵素として一定量のペルオキシダーゼを添加、撹拌し、磁性複合粒子にペルオキシダーゼを固定化した。固定化した酵素の量および活性を測定する方法として、TOOS−4−AA系の発色反応を使用した。この発色反応は、ペルオキシダーゼにより触媒される過酸化水素の還元によって生成した酸素と、TOOS〔N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン〕および4−AA(4−アミノアンチピリン)の反応により、波長546nmに吸収を有する色素が生成することを利用したものであり、当業者間で公知の方法である。
【0048】
すなわち、まず、0.9重量%の過酸化水素を含有する水溶液0.1mlに、反応液〔50mM・トリス塩酸バッファー(pH7.5)、0.6mM・TOOS、0.5mM・4−AA〕を3ml添加して攪拌し、測定液を調製した。つぎに、この測定液にペルオキシダーゼ固定化磁性粒子を100mg添加し、37℃で加温した。この溶液について、吸光度計により磁性粒子の添加直後から5分間の吸光度(OD:546nm)を30秒間隔で測定して、上記試料中の過酸化水素の改質により生成した色素を定量した。その結果、実施例1〜3の磁性複合粒子は、比較例1の磁性複合粒子に比べて、多量の酵素が固定化されており、またこの固定化された酵素は高い活性を示すものであることがわかった。
【0049】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、強磁性酸化鉄粒子を基材とし、これにシリカ層とシランカップリング剤を結合させた磁性複合粒子を提供するものであり、とくに、強磁性酸化鉄粒子に対し、シリカを0.5〜50重量%の範囲に、シランカップリング剤を0.01〜20重量%の範囲に、それぞれ設定し、また平均粒子サイズを0.01〜10μmの範囲に、さらに保磁力と飽和磁化をそれぞれ0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)と20〜80A・m2 /kg(20〜80emu/g)の範囲に設定することにより、生理活性物質を効率良く固定化できるという格別の効果が奏される。また、このように固定化した酵素は高い活性を示すという効果も奏されるものである。
Claims (9)
- 強磁性酸化鉄粒子とシリカおよびシランカップリング剤とから構成されていることを特徴とする生理活性物質を固定化するための磁性複合粒子。
- 強磁性酸化鉄粒子の表面近傍にシリカ層を有し、このシリカ層にシランカップリング剤が結合されている請求項1に記載の磁性複合粒子。
- シリカの量は、強磁性酸化鉄粒子に対して、0.5〜50重量%の範囲である請求項1または2に記載の磁性複合粒子。
- シランカップリング剤の量は、強磁性酸化鉄粒子に対して、0.01〜20重量%の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の磁性複合粒子。
- 強磁性酸化鉄粒子は、マグネタイト粒子、マグへマイト粒子、マグネタイト−マグヘマイト中間体粒子、マンガン亜鉛フェライト粒子のうちのいずれかである請求項1〜4のいずれかに記載の磁性複合粒子。
- シランカップリング剤は、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基のうちの少なくとも1種の官能基を有する請求項1〜5のいずれかに記載の磁性複合粒子。
- 形状が球状ないし粒状で、平均粒子サイズが0.01〜10μmの範囲にあり、保磁力が0.80〜15.92kA/m(10〜200エルステッド)、飽和磁化が20〜80A・m2 /kg(20〜80emu/g)の範囲にある請求項1〜6のいずれかに記載の磁性複合粒子。
- 強磁性酸化鉄粒子を分散させた水懸濁液中に、所定量の珪酸ナトリウムを加えて溶解したのち、酸を加えて中和することにより、個々の強磁性酸化鉄粒子の表面近傍にシリカを被着形成し、ついで、このシリカ層にシランカップリング剤を結合させることにより、請求項1〜7に記載の磁性複合粒子を製造することを特徴とする磁性複合粒子の製造方法。
- 請求項1〜7に記載の磁性複合粒子に生理活性物質を固定化したことを特徴とする生理活性物質固定化磁性複合粒子。
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