JP2004301549A - 分子吸着放出装置及び分子吸着放出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】異なる任意のタイミングで効率的かつ確実にDNA等の各種有用分子の1種以上の吸着及び放出を可逆的に行うことが可能で、微小化、チップ化、集積化等が可能で遺伝子治療、診断等に好適で安全な分子吸着放出装置の提供。
【解決手段】独立に制御可能であり、分子の吸着及び放出のいずれかを行う2以上の吸着放出電極を有してなる分子吸着放出装置。吸着放出電極が分子の吸着及び放出を可逆的に行う態様、吸着放出電極により吸着又は放出される分子が互いに異なる態様、吸着放出電極と共に電気回路を形成する対向電極を有する態様、参照電極を有する態様、基板を2以上有する態様、各基板にn個の吸着放出電極が配置され、該n個の吸着放出電極を、第1吸着放出電極、・・・、第n吸着放出電極、としたとき、各基板における、第1吸着放出電極どうしが、・・・、第n吸着放出電極どうしが、互いに同一の電源に電気的に接続された態様等好ましい。
【選択図】 図2
【解決手段】独立に制御可能であり、分子の吸着及び放出のいずれかを行う2以上の吸着放出電極を有してなる分子吸着放出装置。吸着放出電極が分子の吸着及び放出を可逆的に行う態様、吸着放出電極により吸着又は放出される分子が互いに異なる態様、吸着放出電極と共に電気回路を形成する対向電極を有する態様、参照電極を有する態様、基板を2以上有する態様、各基板にn個の吸着放出電極が配置され、該n個の吸着放出電極を、第1吸着放出電極、・・・、第n吸着放出電極、としたとき、各基板における、第1吸着放出電極どうしが、・・・、第n吸着放出電極どうしが、互いに同一の電源に電気的に接続された態様等好ましい。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、1種又は2種以上のDNA等の各種有用分子を、異なる任意のタイミングで効率的にかつ確実に吸着及び/又は放出することができ、小型化、チップ化、集積化等が可能で高性能な分子吸着放出装置及び分子吸着放出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、バイオテクノロジーが一大産業として急速に発展してきており、病気の診断・治療等に関する新技術の開発が盛んに行われている。
その一例として、アレイ状に配した相補的DNA鎖に結合した測定対象のDNAの量を蛍光強度によって定量するDNAチップが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、該DNAチップにおいては、一般に、スポッター等を用いて所定の箇所にDNA分子を塗布して固定しており、操作が煩雑な上に高コストで量産に向かないという問題があり、該DAN分子の種類を増やしていくとこの問題は顕著となる。したがって、前記DNAチップにおいては、多種の前記DNA分子を容易にかつ簡便に固定することができる技術の開発が望まれている。
また、前記DNAチップにおいては、検出対象であるDNAと反応させた後で該DNAチップを保存することができれば、検査したいDNA毎にチップから取りだし増幅した後で診断・分析等を行うことができ、また、前記DNAチップにおいて、前記DNA分子を放出可能とすることができれば、該DNAチップの繰返し使用を行うことができ、大変便利である。これらが実現すればバイオ分野の研究開発の更なる進展が期待されることから、これらの技術の開発が望まれている。
【0003】
一方、病気の診断・治療等においては、DNAのみならず各種物質乃至分子を所望のタイミングで定量したり、あるいは任意の対象に対し所望のタイミングで供給したりすることができる技術の開発が望まれるが、この場合、前記各種物質乃至分子の移動を制御することが必要になる。しかし、このような制御は大変困難であり、従来における前記DNAチップ等の診断・分析装置の場合、DNA分子等の診断・分析対象の移動を自在に制御することはできず、また、該診断・分析対象が前記診断・分析装置に反応した後で、反応系を保存等することも困難であるという問題がある。
1種又は2種以上の有用分子を異なる任意のタイミングで効率的にかつ確実に吸着及び/又は放出することが可能で、微小化、チップ化、集積化等が可能で、遺伝子治療、診断・分析等に好適な技術は、未だ提供されていないのが現状である。
【0004】
【特許文献1】
特表平11−512605号公報
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記現状に鑑みてなされたものであり、前記要望に応え、従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、1種又は2種以上のDNA等の有用物質乃至分子を異なる任意のタイミングで効率的にかつ確実に吸着及び/又は放出することが可能で、微小化、チップ化、集積化等が可能であり、遺伝子治療、診断・分析等に好適で安全な分子吸着放出装置、及び、1種又は2種以上のDNA等の有用物質乃至分子を異なる任意のタイミングで効率的にかつ確実に吸着又は放出させることが可能であり、診断・分析等に好適で安全な分子吸着放出方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための本発明者等が鋭意検討した結果、以下の知見を得た。即ち、DNA等の有用物質乃至分子の吸着乃至放出等の移動を電気的に制御可能とすることにより、バイオ分野の研究開発に役立つ診断・分析装置を提供することができ、その際、2以上の電極を用いて2種以上の前記有用物質乃至分子の吸着乃至放出を異なる任意のタイミングで行うことができれば、高効率で分析・診断等が可能となる知見である。また、電極の露出面積を小さく設計することができれば、装置の微小化、チップ化、集積化等が可能となる知見である。
【0006】
本発明は、本発明者等による前記知見に基づくものであり、前記前記課題を解決するための手段としては、後述する付記1から34に記載した通りである。
本発明の分子吸着放出装置は、独立に制御可能であり、分子の吸着及び放出のいずれかを行う2以上の吸着放出電極を有してなることを特徴とする。該分子吸着放出装置においては、前記2以上の吸着放出電極に対し、独立に異なる任意のタイミングで電位を変化させると、異なる任意のタイミングで、該吸着放出電極から前記分子が放出され又は該吸着放出電極に吸着される。このとき、前記2以上の吸着放出電極を、既に印加されている電位と逆の電位に変化させることにより、前記分子の放出及び吸着が、可逆的に行われる。また、前記2以上の吸着放出電極に2種以上の分子を吸着させておき、前記2以上の吸着放出電極に対し、独立に異なる任意のタイミングで電位を変化させると、前記2種以上の分子を異なる任意のタイミングで放出させることができ、2種以上の分子が存在する導電性液中において、前記2以上の吸着放出電極に対し、独立に異なる任意のタイミングで電位を変化させると、前記2種以上の分子を該2以上の吸着放出電極に吸着させることができる。
本発明の分子吸着放出方法は、2以上の吸着放出電極に対し、異なるタイミングで任意に電位を変化させることにより、異なるタイミングで分子の吸着及び放出のいずれかを行うことを含むことを特徴とする。該分子吸着放出方法においては、前記2以上の吸着放出電極に対し、異なるタイミングで任意に電位を変化させると、前記分子が異なるタイミングで吸着又は放出される。
【0007】
【発明の実施の形態】
(分子吸着放出装置及び分子吸着放出方法)
本発明の分子吸着放出装置は、独立に制御可能であり、分子の吸着及び放出のいずれかを行う2以上の吸着放出電極を有してなり、対向電極、参照電極、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有してなる。
本発明の分子吸着放出方法は、2以上の吸着放出電極に対し、異なるタイミングで任意に電位を変化させることにより、異なるタイミングで分子の吸着及び放出のいずれかを行うことを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の処理乃至工程を含む。本発明の分子吸着放出方法は、本発明の分子吸着放出装置を用いて好適に実施することができる。
以下、本発明の分子吸着放出装置を説明すると共に、その説明を通じて本発明の分子吸着放出方法についても説明することとする。
【0008】
−吸着放出電極−
前記吸着放出電極としては、その材質、形状、構造、大きさ、表面性状などについて特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知のものを使用することができる。
なお、本発明においては、独立に制御可能な前記吸着放出電極を2以上使用することを要するが、この場合、2以上の該吸着放出電極は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0009】
前記材質としては、導電性を有する限り特に制限はなく、例えば、金属、合金、導電性樹脂、炭素化合物、などが挙げられる。
前記金属としては、例えば、金、白金、銀、銅、亜鉛、などが挙げられる。
前記合金としては、例えば、前記金属として例示したものの2種以上の合金などが挙げられる。
前記導電性樹脂としては、例えば、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリp−フェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアニリン、などが挙げられる。
前記炭素化合物としては、例えば、導電性カーボン、導電性ダイヤモンド、などが挙げられる。
これらの材質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、該吸着放出電極の材質として選択した金属よりも、卑な金属(全て)が該吸着放出電極と直接又は間接的(導電性液体を介してなど)に電気的に接触すると、該吸着放出電極に腐食が生じたり、該吸着放出電極に前記分子の選択的な吸着が生じたりすることがあるので、該材質としての金属の種類は少ない方が好ましい。
【0010】
前記形状としては、特に制限はなく、目的に応じて選択することができるが、例えば、平板状、円状、楕円状、などが挙げられる。これらの形状は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0011】
前記大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、その幅乃至径が、該分子吸着放出装置をチップ化する場合には500μm以下程度であり、100〜300μmが好ましく、該分子吸着放出装置を微細なチップとする場合には100μm未満が好ましい。また、2以上の前記吸着放出電極における大きさは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記表面性状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光沢面、粗面などが挙げられるが、研磨(ポリッシング)された光沢面が好ましい。
【0012】
なお、本発明においては、前記吸着放出電極の表面に絶縁膜を被覆して該吸着放出電極の一部が露出するようにして、該吸着放出電極の大きさを適宜所望の程度に調節することができる。この場合、前記吸着放出電極自体を微細に加工する必要がなく、前記吸着放出電極を形成し易い大きさに予め形成した後で、該吸着放出電極上に前記絶縁膜を被覆してパターニング等することにより、該吸着放出電極の大きさ、即ち露出面積を所望の程度に容易にかつ簡便に調節することができ、微小化、チップ化、集積化等が可能になる点で有利である。
【0013】
前記絶縁膜を用い、前記吸着放出電極を所望の形状、大きさ等に被覆(パターニング)する場合、該吸着放出電極の露出面の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、その幅乃至径が、該分子吸着放出装置を小型化する場合には500μm以下程度であり、100〜300μmが好ましく、該分子吸着放出装置を微細にチップ化する場合には100μm未満が好ましい。なお、2以上の前記吸着放出電極における大きさは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、前記吸着放出電極の露出面の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、略長方形、略円形、略楕円形、などが挙げられる。
【0014】
前記絶縁膜としては、その材質、形状、構造、厚み、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができる。
前記材質としては、例えば、窒化ケイ素、レジスト材、などが挙げられる。これらの材質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、微細に複雑な形状に加工するのが容易であり、装置の微小化、チップ化、集積化等に好適である点で、レジスト材がより好ましい。
【0015】
前記レジスト材としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、微細なパターニングを行う観点からは、例えば、g線レジスト、i線レジスト、KrFレジスト、ArFレジスト、F2レジスト及び電子線レジストから選択される少なくとも1種が好ましい。これらのレジスト材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、各種のパターン状が挙げられる。また、前記構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。前記厚み及び前記大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0017】
前記絶縁膜は、公知の方法、例えば、CVD、PVD等の蒸着法、塗布法などに従って形成することができる。
なお、前記絶縁膜の材質が前記レジスト材である場合、該絶縁膜は、前記レジスト材を塗布し、乾燥することによりレジスト膜を形成した後、所望の形状に露光、現像等を行ってパターングすることにより、所望の形状にパターニングされた前記絶縁膜を得ることができる。
【0018】
前記2以上の吸着放出電極における、隣接する該吸着放出電極の露出部どうしの間隔としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、隣接する前記吸着放出電極に吸着されている分子等に影響を与えない観点からは、後述する電解質の濃度にもよるが、例えば、100nm以上が好ましい。
【0019】
前記吸着放出電極は、適宜形成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。なお、該吸着放出電極を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CVD、PVD等の蒸着法、無鉛めっき法、スパッタ法、などが挙げられる。これらは、1種単独で行ってもよいし、2以上を行ってもよい。
【0020】
前記吸着放出電極の数としては、2以上であること以外には特に制限はなく、吸着又は放出する分子の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば、診断・分析用チップ等の用途の場合、3以上が好ましく、4以上がより好ましい。
【0021】
前記2以上の吸着放出電極は、基板と一体化されて使用されてもよいし、独立の形態で使用されてもよい。
前記吸着放出電極が前記基板と一体化されて使用される場合、該2以上の前記吸着放出電極は、同一の基板上に一体化されていてもよいし、異なる基板上に一体化されてもよい。
【0022】
前記2以上の吸着放出電極が同一の基板上に一体化されている場合には、該分子吸着放出装置をチップ化することができる点で有利であり、該2以上の吸着放出電極が異なる基板上に一体化されている場合には、前記吸着放出電極の耐久性、機械的強度等を向上させることができる点で有利である。
【0023】
前記2以上の吸着放出電極が同一の基板上に一体化されている場合、該吸着放出電極の数としては、該基板の数を1つとする場合には2以上であることが必要であり、該基板の数を2以上とする場合には2以上が好ましく、該分子吸着放出装置をチップ化等する観点からは、3以上がより好ましく、4以上が更に好ましい。
【0024】
前記2以上の吸着放出電極が異なる基板上に一体化されている場合、即ち、前記吸着放出電極が互いに独立の形態で使用される場合、該吸着放出電極は、繰り返しの使用に耐え得るように設計されているのが好ましい。
なお、この態様を図1に示した。図1に示す通り、吸着放出電極10は、基板1上に一体化されて固定配置されている。なお、図1(A)は、平面図であり、図1(B)は、側面図である。なお、ここでは、基板1は酸化ケイ素基板である。吸着放出電極10は、長方形薄板状の金電極である。吸着放出電極10と基板1との間には、図示していないが、両者を密着させるための密着層(後述)が設けられている。該密着層は、クロムにより形成されている。そして、吸着放出電極10の表面には、絶縁膜20が被覆されており、吸着放出電極10の一端部及び基板1の一部表面が露出している。吸着放出電極10及び基板1の露出部が、前記分子との間で吸着又は放出が行われる部位となる。
なお、図1では、基板1の1つ当たり吸着放出電極10が1つであるが、基板1の1つ当たり吸着放出電極10の数は2以上であってもよい(図2参照)。また、吸着放出電極10等の露出部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、吸着放出電極10の一端部のみならず中央部であってもよい。
【0025】
前記基板としては、その形状、構造、厚み、大きさ等としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができる。
前記基板の具体例としては、絶縁基板が好適に挙げられる。該絶縁基板としては、例えば、石英ガラス基板、シリコン基板、酸化ケイ素基板、窒化ケイ素基板、サファイヤ基板、等が好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記2以上の吸着放出電極が同一の基板上に一体化されている場合、本発明の分子吸着放出装置は、該基板を2以上有していてもよい。この場合、該吸着放出装置を高性能、高効率な集積型吸着放出装置として設計することができ、診断・分析等における検出効率や検出感度の向上等を図ることができる点で有利である。また、このとき、各基板における前記吸着放出電極の数としては、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
この態様を図2に示した。図2に示す通り、吸着放出電極10が、合計で8つ(A電極、B電極、C電極、D電極、E電極、F電極、G電極、及びH電極)、基板1上に一体化されて固定配置されている。前記集積型吸着放出装置において、基板が9つ設けられている。また、長方形状の対向電極12が1つ基板1上に一体化されて固定配置されており、長方形状の参照電極14が2つ基板1上に一体化されて固定配置されている。したがって、基板1上の中央には、上下方向に沿って直線状に対向電極12が配置され、対向電極12を挟むようにして前記上下方向に沿って直線状に参照電極14が配置されている。また、基板1の両端部には、参照電極14を挟むように、かつ参照電極14に対向するようにして、左右方向に沿って直線状に吸着放出電極10が4つづつ(A電極、B電極、C電極及びD電極、並びに、E電極、F電極、G電極及びH電極)配置されている。
なお、ここでは、基板1は石英ガラス基板である。吸着放出電極10は、図1におけるのと同様の薄板状の金電極である。対向電極12及び参照電極14は、Ag/AgCl合金電極である。吸着放出電極10、対向電極12又は参照電極14と、基板1との間には、図示していないが、両者を密着させるための密着層(後述)が設けられている。該密着層は、クロムにより形成されている。そして、吸着放出電極10、対向電極12及び参照電極14の表面には、絶縁膜20が被覆されており、吸着放出電極10の一端部、対向電極12の両端部以外の部分、参照電極14の両端部以外の部分、及び基板1の一部表面が露出している。吸着放出電極10、対向電極12、参照電極14及び基板1の露出部が、前記分子との間で吸着又は放出が行われる部位となる。なお、吸着放出電極10、対向電極12及び参照電極14は、図示しない電源に導通可能に結線されており、吸着放出電極10におけるA電極、B電極、C電極、D電極、E電極、F電極、G電極及びH電極は、独立して駆動可能になっている。
【0028】
ここで、前記集積型吸着放出装置について説明する。
前記集積型吸着放出装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設計することができるが、例えば、各基板にn個の吸着放出電極が配置され、該n個の吸着放出電極を、第1吸着放出電極、第2吸着放出電極、・・・、第n−1吸着放出電極、第n吸着放出電極、とすると、各基板における、第1吸着放出電極どうしが、第2吸着放出電極どうしが、・・・、第n−1吸着放出電極どうしが、第n吸着放出電極どうしが、互いに同一の電源に電気的に接続されている態様などが好ましい。この場合、多数の診断・分析試料を一度に処理等することができ、高効率である点で有利である。
【0029】
この態様の一例を図示すると、図3に示す通りであり、ここでは、前記集積型吸着放出装置において、長方形状の基板が9つ設けられている。各基板には、前記吸着放出電極が8つ(A電極、B電極、C電極、D電極、E電極、F電極、G電極、及びH電極)一体化されて固定配置されており、前記対向電極が1つ一体化されて固定配置されており、前記参照電極が一体化されて固定配置されている。各基板においては、中央に、図3における上下方向に沿って直線状に前記対向電極が配置され、該対向電極を挟むようにして前記上下方向に沿って直線状に前記参照電極が配置されている。また、各基板においては、前記参照電極を挟むように、かつ該参照電極に対向するようにして、一端部に、図3における左右方向に沿って直線状に前記吸着放出電極が4つ配置され、両端部を合計すると8つの前記吸着放出電極が配置されている。この各基板は、図2に図示したものと基本的には同様の構造を有している。
【0030】
9つの基板は、3個づつ3列に略等間隔に配置され、各列に配置された各基板は、互いに同一の構成を有している。更に、図3においては、左列及び右列に配置された各基板が、互いに同一の構成を有しており、各基板の左端上から順にE電極、F電極、G電極、及びH電極が配置されており、右端上から順にA電極、B電極、C電極、及びD電極が配置されている。また、中央列に配置された各基板が、互いに同一の構成を有しており、各基板の左端上から順に、A電極、B電極、C電極、及びD電極が配置されており、右端上から順にE電極、F電極、G電極、及びH電極が配置されている。
【0031】
また、前記左列に配置された各基板におけるA電極〜D電極と、前記中央列に配置された各基板におけるA電極からD電極とは互いに対向配置されており、前記中央列に配置された各基板におけるE電極からH電極と、前記右列に配置された各基板におけるE電極〜H電極とは互いに対向配置されている。
そして、各基板における、前記対向電極どうし、前記参照電極どうし、前記A電極どうし、前記B電極どうし、前記C電極どうし、前記D電極どうし、前記E電極どうし、前記F電極どうし、前記G電極どうし、前記H電極どうしは、それぞれ同一の導線で結線され同一の電源にて駆動可能になっている。
【0032】
この集積型吸着放出装置においては、9つの基板における、前記A電極を制御する電源を操作して該A電極と前記対向電極との間で電圧を制御し、該A電極における電位を変化させると、該A電極部分においてのみ、前記分子が吸着又は放出可能し、他のB電極〜H電極部分においては電位の変化がないので前記分子が吸着又は放出しない。この場合、9種類の試料を同時に分析・診断等することができ、A電極〜H電極に対応する8種類の前記分子を吸着乃至放出させることができる。このため、高効率で高性能である。
【0033】
本発明においては、前記吸着放出電極が前記基板上に一体化されて固定配置される場合、該基板と前記吸着放出電極との間に、両者の密着性を向上させる目的で密着層が設けられているのが好ましい。
【0034】
前記密着層の材質、形状、構造、厚み、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記材質としては、例えば、クロム、プラチナ/チタン、などが挙げられる。前記構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
前記厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記大きさとしては、特に制限はなく、前記吸着放出電極の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0035】
前記吸着放出電極は、電位を変化可能に電源等に接続されるが、正電位から負電位まで電位を変化可能であるのが好ましい。この場合、正電位が印加されていた前記吸着放出電極の電位を負電位に変化させることにより、該吸着放出電極に吸着されていた前記分子を放出させることができ、又は遊離していた前記分子を該吸着放出電極に吸着させることができ、前記分子を前記吸着放出電極に可逆的に吸着及び放出させることができる点で有利である。
なお、前記2以上の吸着放出電極における少なくとも2つを、異なる電源等に接続しておくのが、2以上の前記吸着放出電極を独立に制御可能にする観点からは好ましく、各吸着放出電極をそれぞれ異なる電源等に接続し、2以上の前記吸着放出電極のそれぞれが、互いに独立に制御可能であるのが好ましい。
【0036】
本発明の分子吸着放出装置としては、前記2以上の吸着放出電極と共に電気回路を形成する対向電極を有しているのが好ましい。該対向電極は、前記吸着放出電極と共に電気回路を形成し、電流の収支を図るため使用される。
前記対向電極としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、前記吸着放出電極として説明したものを使用することができる。なお、該対向電極の材質としては、前記吸着放出電極の場合と同様に、多数種の金属を選択しない方が好ましい。
前記対向電極は、前記吸着放出電極と共に前記基板に一体化されて固定配置されて使用されてもよいし、該基板とは別の基板に一体化されて固定配置されて使用されてもよいし、独立の形態で使用されてもよい。
前記対向電極の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少ない方が好ましく、前記基板1つ当たり前記吸着放出電極が2以上固定配置されている場合には、各基板当たり1つであるのが好ましい。この場合、該2以上の前記吸着放出電極は、前記対向電極に対向して配置されるのが好ましく、前記基板の中央に配置された前記対向電極を挟むようにして該基板の縁側に配置されるのがより好ましい。
【0037】
本発明の分子吸着放出装置としては、前記対向電極のほかに、参照電極を有しているのが好ましい。この場合、いわゆる三電極法による制御となり、該参照電極を用いない二電極法に比べ、前記吸着放出電極及び前記対向電極の間の電位を容易に制御することができる点で有利である。該参照電極は、基準電位を測定乃至観測するために好適に使用することができる。
前記参照電極としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、前記吸着放出電極として説明したものを参照電極として使用することができる。なお、該参照電極の材質としては、前記吸着放出電極の場合と同様に、多数種の金属を選択しない方が好ましい。
前記参照電極は、前記吸着放出電極及び前記対向電極の少なくともいずれかと共に前記基板に一体化されて固定配置されて使用されてもよいし、該基板とは別の基板に一体化されて固定配置されて使用されてもよいし、独立の形態で使用されてもよい。
前記参照電極の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少ない方が好ましく、前記基板1つ当たり前記対向電極が1つ固定配置されている場合には、各基板当たり2つであるのが好ましい。この場合、該参照電極は、前記対向電極を挟むようにして配置されるのが好ましく、更に前記吸着放出電極が、該参照電極を挟むようにして該基板の縁側に配置されるのがより好ましい。
【0038】
前記分子としては、前記吸着放出電極と相互作用可能な領域を少なくとも一部に含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記相互作用としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、電気的作用(電気的結合など)、化学的作用(化学結合など)、物理的作用(吸着など)、などが挙げられるが、該分子を前記吸着放出装置に可逆的に吸着及び放出可能にする観点からは、電気的作用(電気的結合など)が好ましい。
【0039】
前記相互作用可能な領域の大きさとしては、特に制限はなく、前記相互作用の強さ等に応じて適宜選択することができるが、前記分子を前記吸着放出電極に対し、確実に吸着又は放出させる観点からは、大きい方が好ましい。
前記相互作用可能な領域においては、その一部に前記吸着放出電極との相互作用力(例えば結合力など)が異なる部位が存在していてもよい。
【0040】
前記相互作用可能な領域の前記分子当たりにおける数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも1つであり、2以上であってもよい。
【0041】
前記分子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、線状、粒状、板状、これらの2以上の組合せ、など挙げられるが、これらの中でも、線状などが好ましい。
【0042】
前記分子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、病気の治療、診断等への応用等の観点からは生体分子などが好適に挙げられ、前記吸着放出電極と電気的相互作用が可能である点で、帯電分子であるのが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記帯電分子としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、イオン性ポリマー、などが好適に挙げられる。
【0043】
前記イオン性ポリマーとしては、正イオンポリマー及び負イオンポリマーから選択されるのが好ましい。
前記正イオンポリマー(正に帯電したイオンポリマー)としては、例えば、グアニジンDNA、ポリアミンなどが好適に挙げられる。
前記負イオンポリマー(負に帯電したイオンポリマー)としては、例えば、ポリヌクレオチド、ポリリン酸などが好適に挙げられる。これらは、負電荷が分子中に一定間隔で存在する点で前記吸着放出電極との相互作用(結合等)を制御し易い点で好ましい。
【0044】
前記ポリヌクレオチドの中でも、DNA、RNA、これらとタンパク質との複合体などから選択されるのが好ましい。前記DNA及びRNAは、一本鎖であってもよいし、二本鎖であってもよい。
前記ポリヌクレオチドの具体例としては、癌関連遺伝子、遺伝病に関連する遺伝子、ウイルス遺伝子、細菌遺伝子及び病気のリスクファクターと呼ばれる多型性を示す遺伝子、などが挙げられる。
【0045】
前記癌関連遺伝子としては、例えば、k−ras遺伝子、N−ras遺伝子、p53遺伝子、BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子、src遺伝子、ros遺伝子又はAPC遺伝子などが挙げられる。
前記遺伝病に関連する遺伝子としては、例えば、各種先天性代謝異常症、例えばフェニールケトン尿症、アルカプトン尿症、シスチン尿症、ハンチントン舞踏病、Down症候群、Duchenne型筋ジストロフィー、血友病などが挙げられる。
前記ウイルス遺伝子及び前記細菌遺伝子としては、例えば、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、HIVウイルス、マイコプラズマ、リケッチア、レンサ球菌、サルモネラ菌などが挙げられる。
前記多型性を示す遺伝子としては、病気等の原因とは必ずしも直接は関係のない個体によって異なる塩基配列を持つ遺伝子、例えば、PS1(プリセリニン1)遺伝子、PS2(プリセリニン2)遺伝子、APP(ベーターアミロイドプレカーサー蛋白質)遺伝子、リポプロテイン遺伝子、HLA(Human Leukocyte Antigen)や血液型に関する遺伝子、高血圧、糖尿病等の発症に関係するとされている遺伝子、などが挙げられる。
【0046】
なお、前記ポリヌクレオチドを作製する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から目的に応じて適宜選定することができ、例えば、DNAシンセサイザー(DNA自動合成機)を用いる方法、あるいは、予め作製しておいたオリゴヌクレオチド配列に対し、プライマー及びDNAポリメラーゼを作用させる、あるいはオリゴマーブロックを並べてアニーリングし、DNAライゲース又はRNAライゲースを作用させて結合させる方法、などが挙げられる。
前記ポリヌクレオチドの場合、その長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも6塩基であるのが好ましい。一般に、該ポリヌクレオチドの長さが短い程、前記吸着放出電極から放出させるのに必要なピーク電圧が低くなる。
【0047】
前記分子は、前記吸着放出電極の電位を変化させることにより、例えば、正電位が印加されていた前記吸着放出電極の電位を負電位に変化させることにより、あるいは、負電位が印加されていた前記吸着放出電極の電位を正電位に変化させることにより、該吸着放出電極に吸着され、又は該吸着放出電極から放出される。例えば、前記分子がポリヌクレオチド(DNA)である場合、前記吸着放出電極に、正電位を印加すると該ポリヌクレオチド(DNA)が該吸着放出電極に吸着され、逆に、負電位を印加すると該ポリヌクレオチド(DNA)が該吸着放出電極から放出される。
【0048】
前記分子の前記吸着放出電極に吸着させる数又は前記吸着放出電極から放出される数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明においては、前記2以上の吸着放出電極により吸着又は放出される前記分子が、互いに異なり、2種以上であるのが好ましい。この場合、該吸着放出装置は、高効率で診断等を行うことができる点で有利である。
【0049】
前記分子としては、診断、分析等に応用する観点からは、標的を捕捉可能な標的捕捉部を有するのが好ましい。
前記標的捕捉部の具体例としては、前記標的に対する抗体、抗原、酵素、補酵素、などが好適に挙げられる。前記標的捕捉部は、前記標的との関係で選択することができる。例えば、前記標的が抗原である場合には、前記標的捕捉部としては該抗原に対する抗体を選択することができる。前記標的が抗体である場合には、前記標的捕捉部としては該抗体に対する抗原を選択することができる。前記標的が酵素(例えばアビジン)である場合には、前記標的捕捉部としては該酵素の補酵素(例えばビオチン)を選択することができる。前記標的が補酵素(例えばビオチン)である場合には、前記標的捕捉部としては該補酵素の酵素(例えばアビジン)を選択することができる。
【0050】
前記標的捕捉部の前記標的捕捉体1分子当たりにおける数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも1つであり、2以上であってもよい。
また、前記標的捕捉部の前記標的捕捉体における位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記相互作用部が線状である場合にはその末端などが挙げられ、該相互作用部がポリヌクレオチドである場合には、3’末端であってもよいし、5’末端であってもよい。
【0051】
前記標的としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、有機分子などが好適に挙げられる。
前記有機分子としては、例えば、タンパク質、血漿蛋白、腫瘍マーカー、アポ蛋白、ウイルス、自己抗体、凝固・線溶因子、ホルモン、血中薬物、核酸、HLA抗原、リポ蛋白、糖蛋白、ポリペプチド、脂質、多糖類、リポ多糖類、などが好適に挙げられる。
【0052】
前記タンパク質としては、例えば、アビジン等の酵素などが挙げられる。
前記血漿蛋白としては、例えば、免疫グロブリン(IgG,IgA,IgM,IgD,IgE)、補体成分(C3,C4,C5,C1q)、CRP、α1−アンチトリプシン、α1−マイクログロブリン、β2−マイクログロブリン、ハプトグロビン、トランスフェリン、セルロプラスミン、フェリチンなどが挙げられる。
【0053】
前記腫瘍マーカーとしては、例えば、α−フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CA19−9、CA125、CA15−3、SCC抗原、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、PIVKA−II、γ−セミノプロテイン、TPA、エラスターゼI、神経特異エノラーゼ(NSE)、免疫抑制酸性蛋白(IAP)などが挙げられる。
【0054】
前記アポ蛋白としては、例えばアポA−I、アポA−II、アポB、アポC−II、アポC−III、アポEなどが挙げられる。
【0055】
前記ウイルスとしては、例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HBC)、HTLV−I、HIVなどが挙げられる。また、ウイルス以外の感染症としては、ASO、トキソプラズマ、マイコプラズマ、STDなどが挙げられる。
【0056】
前記自己抗体としては、例えば、抗マイクロゾーム抗体、抗サイログロブリン抗体、抗核抗体、リュウマチ因子、抗ミトコンドリア抗体、ミエリン抗体などが挙げられる。
【0057】
前記凝固・線溶因子としては、例えば、フィブリノゲン、フィブリン分解産物(FDP)、プラスミノゲン、α2−プラスミンインヒビター、アンチトロンビンIII、β−トロンボグロブリン、第VIII因子、プロテインC、プロテインSなどが挙げられる。
【0058】
前記ホルモンとしては、例えば、下垂体ホルモン(LH、FSH、GH、ACTH、TSH、プロラクチン)、甲状腺ホルモン(T3、T4、サイログロブリン)、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、副腎皮質ホルモン(アルドステロン、コルチゾール)、性腺ホルモン(hCG、エストロゲン、テストステロン、hPL)、膵・消化管ホルモン(インスリン、C−ペプチド、グルカゴン、ガストリン)、その他(レニン、アンジオテンシンI,II、エンケファリン、エリスロポエチン)などが挙げられる。
【0059】
前記血中薬物としては、例えば、カルバマゼピン、プリミドン、バルプロ酸等の抗てんかん薬、ジゴキシン、キニジン、ジギトキシン、テオフィリン等の循環器疾患薬、ゲンタマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン等の抗生物質などが挙げられる。
前記核酸としては、上述のものが挙げられる。
【0060】
また、前記分子としては、前記吸着放出電極と相互作用していない時に光の照射を受けると発光可能な、又は、前記吸着放出電極と相互作用している時に光の照射を受けると発光可能な発光部を有するのが好ましい。この場合、診断等を目視で行うことができる点で好ましい。
【0061】
前記発光部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、蛍光色素、金属、半導体ナノスフィアー、などが好適に挙げられる。
【0062】
前記蛍光色素は、前記吸着放出電極が金属電極等の金属である場合には、該金属と相互作用している間(例えば、該金属の近傍に位置している間)は、吸収可能な波長の光が照射されても発光せず、該金属と相互作用しなくなった時(例えば、該金属とは離接している時)には、吸収可能な波長の光が照射されるとその光エネルギーにより発光可能であり、前記発光部として特に好適に使用可能である。
【0063】
前記蛍光色素としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、下記構造式1で表される化合物などが好適に挙げられる。
【0064】
構造式1
【化1】
【0065】
前記発光部の前記分子1つ当たりにおける数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも1つであり、2以上であってもよい。
また、前記発光部の前記分子における位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記相互作用可能な領域が線状である場合にはその末端などが挙げられ、該相互作用可能な領域がポリヌクレオチドである場合には、3’末端であってもよいし、5’末端であってもよい。
【0066】
前記分子において、例えば、前記相互作用可能な領域が前記ポリヌクレオチドである場合、前記標的捕捉部となる分子により5’末端修飾されたオリゴDNAをプライマー及びDNAポリメラーゼを用い、該ポリヌクレオチド鎖を伸長していき、分子鎖中に前記発光部となる分子を結合させる方法、などによって該分子を製造することができる。
【0067】
本発明においては、前記吸着放出電極を、前記分子を分解等しない導電性液体中に浸漬させることにより好適に使用することができる。前記導電性液体を使用すると、前記分子の吸着又は放出が容易である点で有利である。
前記導電性液体としては、導電性であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水、イオン溶液、電解質を含有する溶液、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
本発明においては、前記分子の吸着又は放出の後で、前記導電性液体を非導電性液体に置換することにより、反応系を不活性にし、該分子の再吸着又は再放出を抑制させることができる。
前記非導電性液体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記分子、前記吸着放出電極等を変質等させることがないものが好ましく、例えば、アルコール等の公知の有機溶媒などが好適に挙げられる。なお、該有機溶媒としては、アルコールが好ましく、エタノールがより好ましい。該有機溶媒がエタノールであると、腐敗を効果的に防止でき、長期保存に好適である。
【0069】
ここで、本発明の分子吸着放出装置を用いた前記分子の吸着乃至放出の原理、即ち本発明の分子吸着放出方法における前記分子の吸着乃至放出の原理について説明する。
図4に示すように、前記分子としてDNA分子100を含有する試料中に吸着放出電極10及び前記対向電極を浸漬させた。なお、吸着放出電極10は、図示しない絶縁基板上に化学的に不活性なAuで形成されたものである。前記試料は、塩化ナトリウム水溶液であり、前記導電性液体である。ここで、吸着放出電極10(ここではAu電極)に、図示しない電源から正電圧を印加することにより正電位を印加すると、前記分子であるDNA分子100は、負に帯電しているため、該吸着放出電極10上に電気的に引き付けられて吸着される。なお、吸着放出電極10は、前記塩化ナトリウム水溶液中に配置された前記対向電極(図示せず)と共に電気回路を形成している。該吸着放出電極10上に吸着されたDNA分子100は、電気的な吸引力により強固に該吸着放出電極10上に吸着され、該吸着放出電極の電位を変化させない限り脱離することはない。
なお、この場合、図5に示すように、参照電極14を更に前記導電性液体中に配置し、吸着放出電極10の電位を所望の程度に制御してもよい。
【0070】
次に、吸着放出電極10に、前記電源から負電圧を印加することにより負電位を印加すると、図6上段又は図7に示すように、吸着放出電極10から上に電気的に吸着されていたDNA分子100が、図6下段又は図8に示すように、電気的な反発力により吸着放出電極10から放出される。なお、前記吸着放出電極から吸着した前記分子を放出させるためには、該吸着放出電極と該分子とが電気的に相互作用している閾値としての電位が、該吸着放出電極の種類と該分子の種類との関係に応じて存在するので、該閾値を超えるように該吸着放出電極に電位を印加する必要がある。
【0071】
したがって、吸着放出電極10に、前記電源から正電圧及び負電圧を繰り返し印加することにより、DNA分子100を吸着放出電極10に吸着及び放出を繰り返して行う、即ち、DNA分子100の吸着及び放出を可逆的に行うことができる。また、このとき、吸着放出電極10が2以上に対し、異なるタイミングで任意に電位を変化させることにより、異なるタイミングで前記分子としてのDNA分子100を選択的に吸着乃至放出させることができる。なお、このとき、前記分子としてのDNA分子100を吸着又は放出させるために閾値を超える電位を印加する対象である吸着放出電極10以外の吸着放出電極10には、電位を印加しなくてもよいし、前記閾値を超えない程度の弱い電位を印加させておいてもよい。
【0072】
また、前記分子が2以上ある場合において、該2以上の分子をそれぞれ異なる吸着放出電極10上に吸着させておくことにより、異なるタイミングで異なる前記分子を選択的に放出させることができ、逆に、該2以上の分子を前記試料中に存在させておくことにより、異なるタイミングで異なる前記分子をそれぞれ別の吸着放出電極に選択的に吸着させることもできる。2以上の吸着放出電極10に異なる前記分子を吸着させたものは、分子供給用チップ等として使用することができる。
【0073】
本発明においては、吸着放出電極10にDNA分子100を吸着させた後、前記導電性液体を有機溶媒等の前記非導電性液体に置換することにより、前記分子を吸着放出電極10に吸着させたまま安定に保存等することができ、このような状態で微小化、チップ化、集積化等したものは取扱性に優れる。前記非導電性液体は、DNA分子100を変質等させないものが好ましく、この場合、長期保存安定性が確保される点で好ましい。なお、このとき、吸着放出電極10に印加した電源をOFFにしても、前記分子としてのDNA分子100は、逆電位を印加しない限り該吸着放出電極10から脱離しない。そして、必要に応じて、前記非導電性液体を前記導電性液体に置換し、吸着放出電極10に逆電位を印加して吸着放出電極の電位を変化させると、その逆電位を印加したタイミングで、DNA分子100を放出させることができる。
【0074】
本発明においては、前記吸着放出電極以外の部材、例えば、前記絶縁膜、前記基板等の表面に、前記分子(例えばDNA分子等)が吸着されてしまうのを防ぐ目的で、潤滑剤を該部材の表面に付与することができる。
前記潤滑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パーフルオロポリエーテル系化合物等のフッ素潤滑剤、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記潤滑剤を使用する場合、前記吸着放出電極に電圧を印加することにより、前記吸着放出電極の表面だけ前記潤滑剤が除去され、他の表面には該潤滑剤が付与される。
【0075】
次に、上述した図3に示す集積型分子吸着放出装置における分子の吸着乃至放出の一例について説明する。
例えば、まず、各基板1を前記導電性液体中に浸漬させる。各基板1上に一体化させて固定配置した吸着放出電極10の中で、A電極を除く他の吸着放出電極10(B電極、C電極、D電極、E電極、F電極、G電極及びH電極)にのみ前記閾値を超える負電圧を印加して、前記A電極にのみ正電圧を印加する。そして、ここで、外部からスポイトで該導電性液体中に前記分子としてのDNA分子(これを「分子A」と称する)を注入すると、該DNA分子(分子A)は前記A電極にのみ吸着する。その後、前記導電性液体を捨てて該導電性液体中に存在する該DNA分子(分子A)を除去する。なお、基板1には、対向電極12及び参照電極14が固定されているので、これらの表面に該DNA分子(分子A)が付着している可能性があるので、前記導電性液体を捨てる時に、外部から別の電極を該導電性液体中に挿入し、対向電極12、参照電極14及びA電極を除く他の吸着放出電極に負電圧を印加すると、対向電極12及び参照電極14の表面に吸着されたDNA分子(分子A)を除去することができる。なお、基板1に対向電極12及び参照電極14に一体的に固定配置されていない場合には、対向電極12及び参照電極14を新しいものと交換してもよい。
【0076】
次に、基板1を新しい導電性液体(電解質溶液)中に浸漬させる。前記A電極には電圧を印加しないかあるいは前記閾値以下の弱い負電圧を印加しておき、一方、該A電極を除く他の吸着放出電極には前記閾値以上の負電圧を印加しておき、前記B電極にのみ正電圧を印加する。そして、ここで、前記同様、該導電性液体中にDNA分子(分子B)を注入すると、該B電極に該DNA分子(分子B)を吸着させることができる。
以上のような手順により、前記C電極以下の各吸着放出電極に対しDNA分子(分子C、分子D、・・・、分子H)をそれぞれ吸着させることができる。
【0077】
本発明の分子吸着放出装置においては、以上のようにして前記吸着放出電極上に前記分子を吸着させることができるので、従来において使用されていたスポイト(又はスポッター)等を使用する必要がなく、その結果、前記吸着放出電極上の極めて微小な露出面上に前記分子を吸着させ、分配させることができる(空間分解能(〜200μM)に優れる)。しかも、前記露出面を、前記絶縁膜を用いて形成し、該絶縁膜を、前記レジスト材を用いてパターング形成した場合には、より微小な露出面とすることができ、装置の微小化、チップ化、集積化等に極めて有利である。
【0078】
そして、次に、前記A電極に前記閾値を超える負電圧を印加すると、該A電極に吸着された前記DNA分子(分子A)が、該A電極との電気的反発力により放出される。これを、スポイト等を用いて吸引すると、あるいは正電圧を印加した外部電極を作用させると、該A電極に吸着されていたDNA分子(分子A)を外部に取り出すことができる。以上の操作を各電極に対して行うことにより、各電極に吸着されていたDNA分子を取り出すことができる。このとき、取り出したDNA分子等の前記分子は、例えば、石英ガラスなどの絶縁物の上に一括して配列させてもよく、この状態は、市販のDNAチップと同等である。また、取り出したDNA分子等をここで増幅等させてもよい。市販のDNAチップでは、一回の検査で一枚消費されるが、本発明によりチップ化した分子吸着放出装置によれば、配置させた前記吸着放出電極の数だけ繰返使用が可能であり、各種用途に好適に利用可能である。
【0079】
次に、図9に示すような、前記標的捕捉体及び発光部110を有する分子100について説明する。分子100は、前記相互作用可能な領域としてのポリヌクレオチドと、該ポリヌクレオチドの一端に結合された発光部110(例えば蛍光色素)と、該ポリヌクレオチドの他端に結合された標的捕捉部(図示せず)(例えば抗体)とを有してなる。
図9は、分子100が前記吸着放出電極(例えば金属電極)に吸着されており、光の照射を受けても発光部110が発光しない状態を表しており、図10は、分子100が前記吸着放出電極(例えば金属電極)から放出されているので、光の照射を受けて発光部110が発光した状態の発光部110aとなった状態を表している。
【0080】
発光部110を有する分子100を用いれば、前記吸着放出電極(例えば金属電極など)から放出させるタイミングを任意に制御することによりその発光を任意に制御することができ、また、標的を捕捉し分子100自身の拡散速度が遅くなることを利用することにより、その発光時間の変化等を検出することにより、該標的の存在の有無等を容易に検出することができる。
【0081】
このとき、発光部110に光を照射させる光照射手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紫外線ランプ、半導体レーザーなどが好適に挙げられる。
前記光照射手段の光の照射方向としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記標的捕捉体が保持された前記吸着放出電極の表面方向であって、かつ該吸着放出電極からの反射光の進行方向が前記光検出手段方向であるのが好ましい。
前記光照射手段が照射する光の波長としては、前記標的捕捉体における前記発光部が吸収可能であり、かつ吸収後に発光可能な波長であれば特に制限はなく、該発光部の吸収ピーク波長との関係において適宜選択することができる。
【0082】
また、発光部110aが発光する光を検知する光検知手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、受光センサー、CCDカメラ、フォトマル、フォトダイオードなどが好適に挙げられる
前記光検出手段の中でも、前記発光部が発光する光の単位時間当りの光子数を算出可能である、前記発光部が発光する蛍光強度を検出可能である、あるいは、前記発光部が発光する光が消光するまで(測定不能となるまで)の時間を測定可能である、ものが好ましく、更には、前記吸着放出電極から放出され、検出領域内から検出領域外に向かって拡散し、移動する前記分子であってその標的捕捉部が前記標的を捕捉したものにおける前記発光部が発光する光の単位時間当りの光子数を算出し、前記吸着放出電極から放出され、検出領域内から検出領域外に向かって拡散し、移動する前記分子であってその標的捕捉部が前記標的を捕捉していないものにおける前記発光部が発光する光の単位時間当りの光子数と比較することにより、前記分子における前記標的捕捉部に前記標的が捕捉されたか否かを検出可能であるものがより好ましい。
【0083】
前記発光部を有する前記分子を吸着乃至放出させる前記分子吸着放出装置について、図11及び図12を参照しながら説明する。該分子吸着放出装置においては、正電圧が印加された吸着放出電極10上に、前記標的捕捉部及び前記発光部を有するDNA分子100が電気的に吸着されている。また、吸着放出電極10に対し光を照射する前記光照射手段としての紫外線ランプ200と、前記光検出手段としての受光センサー300とが配置されている。
なお、吸着放出電極10の上方には対向電極(図示せず)が設けられており、吸着放出電極10と該対向電極とは電場を印加可能な電源(図示せず)に接続されており、前記導電性液体中に浸漬された状態で配置され、電気回路を形成している。なお、該導電性液体には、前記標的捕捉部が捕捉可能な前記標的を含有する試料液が混合されている。
【0084】
紫外線ランプ200は、吸着放出電極10による反射光が受光センサー300の方向に進行するようにして配置され、吸着放出電極10の表面に紫外線200aの照射を行う(図11及び図12参照)。受光センサー300は、前記照射光200aの反射光を受光すると共に、DNA分子100における発光部110が発光する光を受光する(図11及び図12参照)。
ここで、吸着放出電極10に接続された電源を作動させておき、吸着放出電極10に正電圧を印加しておくと、図11に示すように、吸着放出電極10にDNA分子100が電気的に吸着される。この時、DNA分子100における発光部110は、吸着放出電極10に電気的に結合しているので、紫外線ランプ200から照射された紫外線を受けても発光せず、受光センサー300も発光を検出しない。一方、吸着放出電極10に今まで印加していた逆電位である負電圧を印加し、吸着放出電極10を負電位に変化させると、図12に示すように、吸着放出電極10とDNA分子100とのクーロン反発力により、吸着放出電極10からDNA分子100が放出される。この時、図12に示すように、DNA分子100における発光部110は、紫外線ランプ200から照射された紫外線200aを受光し、紫外線200aの光エネルギーを吸収してその発光部11が発光する。したがって、受光センサー300は、DNA分子100における発光部110が発光する光を検出する。
【0085】
このとき、DNA分子100における前記標的捕捉部に前記標的が捕捉されていると、該DNA分子100の分子拡散速度が遅くなるため、該DNA分子100における前記標的捕捉部に前記標的が捕捉されていない場合に比べて、受光センサー300により検出される、DNA分子100における発光部110からの発光量(単位時間当りの光子数)が多くなる。この発光量の変化の有無により、前記標的の存在の有無を受光センサー300により検出することができる。
【0086】
以上説明した本発明の分子吸着放出装置又は分子吸着放出方法によると、DNA分子等の前記分子の2種以上を、異なる任意のタイミングで吸着乃至放出させることができ、しかも吸着及び放出を可逆的に行うことができ、更に小型化、チップ化、集積化等することができるので、糖尿病、高血圧症、高脂血症、その他の多因子性疾患全般などの各種病気をはじめ、各種の診断、分析、測定、検出等に好適に使用することができる。また、前記分子に前記標的捕捉部を設けておくことにより、蛋白質等の各種有用分子の診断、分析、測定、検出等を行うことができ、しかもその際に発光部等を設けておくことにより、該有用分子の定量までも行うことができる。本発明の分子吸着放出装置又は分子吸着放出方法においては、前記分子を電気的に微小空間で短期乃至長期に保持乃至保存して集積化することができ、また、半導体等における微細加工技術を応用することができ、しかも電気制御可能であるため、本発明の分子吸着放出装置又は分子吸着放出方法によれば、多種多数の前記分子の吸着乃至放出を簡便に行うことができ、各種研究に応用可能であり、バイオテクノロジー産業の一層の発展に寄与し得る。
【0087】
【実施例】
以下、本発明の分子吸着放出装置又は分子吸着放出方法の実施例としては、上述した通りであり、以下においては、前記吸着放出電極に対する前記分子の吸着及び放出を行った具体的な実験について説明する。
まず、前記基板としての石英ガラス基板上に、前記吸着放出電極としてのAu電極を蒸着法により形成した。なお、該基板及び該Au電極の表面には、図1に示すように、窒化ケイ素による絶縁膜を形成し、該基板及び該Au電極の一部を露出させた。このAu電極を、電気化学的測定法であるサイクリックボルタンメトリーにより評価したところ、図13に示すような結果となった。このグラフからは、該Au電極は、−0.7V〜0.7Vの電圧範囲内で電流値が小さく、その表面での顕著な酸化還元反応は認められなかった。このため、該Au電極は、−0.7V(−700mV)〜0.7V(700mV)の電圧を印加して使用すれば破損等の問題がないことが判った。
【0088】
次に、図4に示すように、吸着放出電極10(Au電極)をNaCl(0.05mol/L)水溶液中に浸漬させ、正電圧(700mV)を印加した。そして、更に該NaCl水溶液中に前記分子としてのss−DNAを添加した。すると、該ss−DNAは、強く負に帯電しているため、正電圧が印加されたAu電極に吸着した。
【0089】
次に、図5に示すように、参照電極14(Ag/AgCl)を前記NaCl水溶液中に挿入し、前記ss−DNAを吸着した前記Au電極に対し、参照電極14を基準として−600mV〜−800mVの電圧を印加した。すると、該NaCl水溶液中に前記ss−DNAが放出され、脱離した。このとき、該ss−DNAに前記発光部としての色素(Cy3)を結合させておいたところ、該ss−DNAがAu電極に吸着されていたときは、該色素は発光せず、該ss−DNAがAu電極から放出され前記NaCl水溶液中に脱離すると該色素は発光した。このときの発光の状態を測定したグラフを図14に示した。
【0090】
ここで、本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) 独立に制御可能であり、分子の吸着及び放出のいずれかを行う2以上の吸着放出電極を有してなることを特徴とする分子吸着放出装置。
(付記2) 2以上の吸着放出電極が、分子の吸着及び放出を可逆的に行う付記1に記載の分子吸着放出装置。
(付記3) 2以上の吸着放出電極により吸着及び放出のいずれかされる分子が、互いに異なる付記1から2のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記4) 2以上の吸着放出電極が同一の基板上に配置された付記1から3のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記5) 2以上の吸着放出電極と共に電気回路を形成する対向電極を少なくとも1つ有する付記1から4のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記6) 2以上の吸着放出電極及び対向電極が同一の基板上に配置された付記5に記載の分子吸着放出装置。
(付記7) 対向電極が1つであり、該対向電極に対向して2以上の吸着放出電極が配置された付記5から6のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記8) 参照電極を少なくとも1つ有する付記5から7のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記9) 2以上の吸着放出電極、対向電極及び参照電極が同一の基板上に配置された付記8に記載の分子吸着放出装置。
(付記10) 対向電極が1つであり、参照電極が2つであり、該対向電極を挟むようにして配置され、2以上の吸着放出電極が該対向電極及び参照電極を挟むようにして配置された付記8から9のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記11) 基板を2以上有する付記4から10のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記12) 各基板にn個の吸着放出電極が配置され、該n個の吸着放出電極を、第1吸着放出電極、第2吸着放出電極、・・・、第n−1吸着放出電極、第n吸着放出電極、としたとき、各基板における、第1吸着放出電極どうしが、第2吸着放出電極どうしが、・・・、第n−1吸着放出電極どうしが、第n吸着放出電極どうしが、互いに同一の電源に電気的に接続された付記11に記載の分子吸着放出装置。
(付記13) 各基板における、第1吸着放出電極、第2吸着放出電極、・・・、第n−1吸着放出電極、第n吸着放出電極が、それぞれ対向して配置された付記12に記載の分子吸着放出装置。
(付記14) 2以上の吸着放出電極における少なくとも1つが、その一部が露出するように絶縁膜で被覆された付記1から13のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記15) 露出する吸着放出電極の形状が略長方形であり、その幅が500μm以下である付記14に記載の分子吸着放出装置。
(付記16) 絶縁膜が、パターニングされたレジスト膜である付記14から15のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記17) レジスト膜が、g線レジスト、i線レジスト、KrFレジスト、ArFレジスト、F2レジスト及び電子線レジストから選択される少なくとも1種で形成された付記16に記載の分子吸着放出装置。
(付記18) 2以上の吸着放出電極における、隣接する吸着放出電極の露出部どうしの間隔が100nm以上である付記1から17のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記19) 基板が絶縁基板である付記1から18のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記20) 吸着放出電極と基板との間に、該吸着放出電極と該基板とを密着させる密着層を有してなる付記1から19のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記21) 分子が電気的相互作用可能な領域を少なくとも一部に有する付記1から20のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記22) 分子が線状分子である付記1から21のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記23) 分子が生体分子である付記1から22のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記24) 分子が帯電分子である付記1から23のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記25) 分子が、標的を捕捉可能な標的捕捉部を有する付記1から24のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記26) 標的捕捉部が、抗体、抗原、酵素及び補酵素から選択される付記25に記載の分子吸着放出装置。
(付記27) 分子が、吸着放出電極と電気的に相互作用していない時に光の照射を受けると発光可能な発光部を有する付記1から26のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記28) 発光部が蛍光色素である付記27に記載の分子吸着放出装置。
(付記29) 吸着放出電極が、分子を含有する導電性液体中に浸漬されて用いられる付記1から28のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記30) 2以上の吸着放出電極に対し、異なるタイミングで任意に電位を変化させることにより、異なるタイミングで分子の吸着及び放出のいずれかを行うことを含むことを特徴とする分子吸着放出方法。
(付記31) 吸着及び放出のいずれかされる分子が互いに異なる付記30に記載の分子吸着放出方法。
(付記32) 分子の吸着及び放出が可逆的に行われる付記30から31のいずれかに記載の分子吸着放出方法。
(付記33) 分子が吸着及び放出のいずれかされる前に吸着放出電極の表面に潤滑剤を塗付する付記30から32のいずれかに記載の分子吸着放出方法。
(付記34) 吸着放出電極を、分子を含有する導電性液体中に浸漬して用いる付記30から33のいずれかに記載の分子吸着放出方法。
【0091】
【発明の効果】
本発明によると、前記要望に応え、従来における問題を解決することができ、1種又は2種以上のDNA等の有用物質乃至分子を異なる任意のタイミングで効率的にかつ確実に吸着及び/又は放出することが可能で、微小化、チップ化、集積化等が可能であり、遺伝子治療、診断・分析等に好適で安全な分子吸着放出装置、及び、1種又は2種以上のDNA等の有用物質乃至分子を異なる任意のタイミングで効率的にかつ確実に吸着又は放出させることが可能であり、診断・分析等に好適で安全な分子吸着放出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、吸着放出電極が基板上に固定配置された状態の一例を示す概略説明図である。
【図2】図2は、2以上の吸着放出電極、対向電極及び参照電極が基板上に固定配置された状態の一例を示す概略説明図である。
【図3】図3は、図2に示す、基板を組合せた集積型分子吸着放出装置の一例を示す概略説明図である。
【図4】図4は、吸着放出電極からDNA分子が吸着される原理を説明するための概略説明図である。
【図5】図5は、図4において参照電極を配置した場合を示す概略説明図である。
【図6】図6は、吸着放出電極からDNA分子が放出される原理を説明するための概略説明図である。
【図7】図7は、吸着放出電極に分子が吸着した状態の一例を示す概略説明図である。
【図8】図8は、吸着放出電極から分子が放出される状態の一例を示す概略説明図である。
【図9】図9は、発光部を有する分子の一例を示す概略説明図である。
【図10】図10は、図9において、発光部が発光している状態の一例を示す概略説明図である。
【図11】図11は、発光部を有する分子を用いて標的の存在を検出している状態を説明するための概念図(その1)である。
【図12】図12は、発光部を有する分子を用いて標的の存在を検出している状態を説明するための概念図(その2)である。
【図13】図13は、サイクリックボルタンメトリーにより吸着放出電極(金電極)の特性を評価した実験データのグラフである。
【図14】図14は、発光部を有する分子を用い、該分子が吸着放出電極から負オ種津されたことを示す実験データのグラフである。
【符号の説明】
1 基板
10 吸着放出電極
12 対向電極
14 参照電極
20 絶縁膜
100 DNA分子
110 発光部
110a 発光した発光部
200 紫外線ランプ
200a 紫外線
300 受光センサー
300a 反射光
【発明の属する技術分野】
本発明は、1種又は2種以上のDNA等の各種有用分子を、異なる任意のタイミングで効率的にかつ確実に吸着及び/又は放出することができ、小型化、チップ化、集積化等が可能で高性能な分子吸着放出装置及び分子吸着放出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、バイオテクノロジーが一大産業として急速に発展してきており、病気の診断・治療等に関する新技術の開発が盛んに行われている。
その一例として、アレイ状に配した相補的DNA鎖に結合した測定対象のDNAの量を蛍光強度によって定量するDNAチップが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、該DNAチップにおいては、一般に、スポッター等を用いて所定の箇所にDNA分子を塗布して固定しており、操作が煩雑な上に高コストで量産に向かないという問題があり、該DAN分子の種類を増やしていくとこの問題は顕著となる。したがって、前記DNAチップにおいては、多種の前記DNA分子を容易にかつ簡便に固定することができる技術の開発が望まれている。
また、前記DNAチップにおいては、検出対象であるDNAと反応させた後で該DNAチップを保存することができれば、検査したいDNA毎にチップから取りだし増幅した後で診断・分析等を行うことができ、また、前記DNAチップにおいて、前記DNA分子を放出可能とすることができれば、該DNAチップの繰返し使用を行うことができ、大変便利である。これらが実現すればバイオ分野の研究開発の更なる進展が期待されることから、これらの技術の開発が望まれている。
【0003】
一方、病気の診断・治療等においては、DNAのみならず各種物質乃至分子を所望のタイミングで定量したり、あるいは任意の対象に対し所望のタイミングで供給したりすることができる技術の開発が望まれるが、この場合、前記各種物質乃至分子の移動を制御することが必要になる。しかし、このような制御は大変困難であり、従来における前記DNAチップ等の診断・分析装置の場合、DNA分子等の診断・分析対象の移動を自在に制御することはできず、また、該診断・分析対象が前記診断・分析装置に反応した後で、反応系を保存等することも困難であるという問題がある。
1種又は2種以上の有用分子を異なる任意のタイミングで効率的にかつ確実に吸着及び/又は放出することが可能で、微小化、チップ化、集積化等が可能で、遺伝子治療、診断・分析等に好適な技術は、未だ提供されていないのが現状である。
【0004】
【特許文献1】
特表平11−512605号公報
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記現状に鑑みてなされたものであり、前記要望に応え、従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、1種又は2種以上のDNA等の有用物質乃至分子を異なる任意のタイミングで効率的にかつ確実に吸着及び/又は放出することが可能で、微小化、チップ化、集積化等が可能であり、遺伝子治療、診断・分析等に好適で安全な分子吸着放出装置、及び、1種又は2種以上のDNA等の有用物質乃至分子を異なる任意のタイミングで効率的にかつ確実に吸着又は放出させることが可能であり、診断・分析等に好適で安全な分子吸着放出方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための本発明者等が鋭意検討した結果、以下の知見を得た。即ち、DNA等の有用物質乃至分子の吸着乃至放出等の移動を電気的に制御可能とすることにより、バイオ分野の研究開発に役立つ診断・分析装置を提供することができ、その際、2以上の電極を用いて2種以上の前記有用物質乃至分子の吸着乃至放出を異なる任意のタイミングで行うことができれば、高効率で分析・診断等が可能となる知見である。また、電極の露出面積を小さく設計することができれば、装置の微小化、チップ化、集積化等が可能となる知見である。
【0006】
本発明は、本発明者等による前記知見に基づくものであり、前記前記課題を解決するための手段としては、後述する付記1から34に記載した通りである。
本発明の分子吸着放出装置は、独立に制御可能であり、分子の吸着及び放出のいずれかを行う2以上の吸着放出電極を有してなることを特徴とする。該分子吸着放出装置においては、前記2以上の吸着放出電極に対し、独立に異なる任意のタイミングで電位を変化させると、異なる任意のタイミングで、該吸着放出電極から前記分子が放出され又は該吸着放出電極に吸着される。このとき、前記2以上の吸着放出電極を、既に印加されている電位と逆の電位に変化させることにより、前記分子の放出及び吸着が、可逆的に行われる。また、前記2以上の吸着放出電極に2種以上の分子を吸着させておき、前記2以上の吸着放出電極に対し、独立に異なる任意のタイミングで電位を変化させると、前記2種以上の分子を異なる任意のタイミングで放出させることができ、2種以上の分子が存在する導電性液中において、前記2以上の吸着放出電極に対し、独立に異なる任意のタイミングで電位を変化させると、前記2種以上の分子を該2以上の吸着放出電極に吸着させることができる。
本発明の分子吸着放出方法は、2以上の吸着放出電極に対し、異なるタイミングで任意に電位を変化させることにより、異なるタイミングで分子の吸着及び放出のいずれかを行うことを含むことを特徴とする。該分子吸着放出方法においては、前記2以上の吸着放出電極に対し、異なるタイミングで任意に電位を変化させると、前記分子が異なるタイミングで吸着又は放出される。
【0007】
【発明の実施の形態】
(分子吸着放出装置及び分子吸着放出方法)
本発明の分子吸着放出装置は、独立に制御可能であり、分子の吸着及び放出のいずれかを行う2以上の吸着放出電極を有してなり、対向電極、参照電極、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有してなる。
本発明の分子吸着放出方法は、2以上の吸着放出電極に対し、異なるタイミングで任意に電位を変化させることにより、異なるタイミングで分子の吸着及び放出のいずれかを行うことを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の処理乃至工程を含む。本発明の分子吸着放出方法は、本発明の分子吸着放出装置を用いて好適に実施することができる。
以下、本発明の分子吸着放出装置を説明すると共に、その説明を通じて本発明の分子吸着放出方法についても説明することとする。
【0008】
−吸着放出電極−
前記吸着放出電極としては、その材質、形状、構造、大きさ、表面性状などについて特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知のものを使用することができる。
なお、本発明においては、独立に制御可能な前記吸着放出電極を2以上使用することを要するが、この場合、2以上の該吸着放出電極は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0009】
前記材質としては、導電性を有する限り特に制限はなく、例えば、金属、合金、導電性樹脂、炭素化合物、などが挙げられる。
前記金属としては、例えば、金、白金、銀、銅、亜鉛、などが挙げられる。
前記合金としては、例えば、前記金属として例示したものの2種以上の合金などが挙げられる。
前記導電性樹脂としては、例えば、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリp−フェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアニリン、などが挙げられる。
前記炭素化合物としては、例えば、導電性カーボン、導電性ダイヤモンド、などが挙げられる。
これらの材質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、該吸着放出電極の材質として選択した金属よりも、卑な金属(全て)が該吸着放出電極と直接又は間接的(導電性液体を介してなど)に電気的に接触すると、該吸着放出電極に腐食が生じたり、該吸着放出電極に前記分子の選択的な吸着が生じたりすることがあるので、該材質としての金属の種類は少ない方が好ましい。
【0010】
前記形状としては、特に制限はなく、目的に応じて選択することができるが、例えば、平板状、円状、楕円状、などが挙げられる。これらの形状は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0011】
前記大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、その幅乃至径が、該分子吸着放出装置をチップ化する場合には500μm以下程度であり、100〜300μmが好ましく、該分子吸着放出装置を微細なチップとする場合には100μm未満が好ましい。また、2以上の前記吸着放出電極における大きさは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記表面性状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光沢面、粗面などが挙げられるが、研磨(ポリッシング)された光沢面が好ましい。
【0012】
なお、本発明においては、前記吸着放出電極の表面に絶縁膜を被覆して該吸着放出電極の一部が露出するようにして、該吸着放出電極の大きさを適宜所望の程度に調節することができる。この場合、前記吸着放出電極自体を微細に加工する必要がなく、前記吸着放出電極を形成し易い大きさに予め形成した後で、該吸着放出電極上に前記絶縁膜を被覆してパターニング等することにより、該吸着放出電極の大きさ、即ち露出面積を所望の程度に容易にかつ簡便に調節することができ、微小化、チップ化、集積化等が可能になる点で有利である。
【0013】
前記絶縁膜を用い、前記吸着放出電極を所望の形状、大きさ等に被覆(パターニング)する場合、該吸着放出電極の露出面の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、その幅乃至径が、該分子吸着放出装置を小型化する場合には500μm以下程度であり、100〜300μmが好ましく、該分子吸着放出装置を微細にチップ化する場合には100μm未満が好ましい。なお、2以上の前記吸着放出電極における大きさは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、前記吸着放出電極の露出面の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、略長方形、略円形、略楕円形、などが挙げられる。
【0014】
前記絶縁膜としては、その材質、形状、構造、厚み、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができる。
前記材質としては、例えば、窒化ケイ素、レジスト材、などが挙げられる。これらの材質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、微細に複雑な形状に加工するのが容易であり、装置の微小化、チップ化、集積化等に好適である点で、レジスト材がより好ましい。
【0015】
前記レジスト材としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、微細なパターニングを行う観点からは、例えば、g線レジスト、i線レジスト、KrFレジスト、ArFレジスト、F2レジスト及び電子線レジストから選択される少なくとも1種が好ましい。これらのレジスト材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、各種のパターン状が挙げられる。また、前記構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。前記厚み及び前記大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0017】
前記絶縁膜は、公知の方法、例えば、CVD、PVD等の蒸着法、塗布法などに従って形成することができる。
なお、前記絶縁膜の材質が前記レジスト材である場合、該絶縁膜は、前記レジスト材を塗布し、乾燥することによりレジスト膜を形成した後、所望の形状に露光、現像等を行ってパターングすることにより、所望の形状にパターニングされた前記絶縁膜を得ることができる。
【0018】
前記2以上の吸着放出電極における、隣接する該吸着放出電極の露出部どうしの間隔としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、隣接する前記吸着放出電極に吸着されている分子等に影響を与えない観点からは、後述する電解質の濃度にもよるが、例えば、100nm以上が好ましい。
【0019】
前記吸着放出電極は、適宜形成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。なお、該吸着放出電極を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CVD、PVD等の蒸着法、無鉛めっき法、スパッタ法、などが挙げられる。これらは、1種単独で行ってもよいし、2以上を行ってもよい。
【0020】
前記吸着放出電極の数としては、2以上であること以外には特に制限はなく、吸着又は放出する分子の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば、診断・分析用チップ等の用途の場合、3以上が好ましく、4以上がより好ましい。
【0021】
前記2以上の吸着放出電極は、基板と一体化されて使用されてもよいし、独立の形態で使用されてもよい。
前記吸着放出電極が前記基板と一体化されて使用される場合、該2以上の前記吸着放出電極は、同一の基板上に一体化されていてもよいし、異なる基板上に一体化されてもよい。
【0022】
前記2以上の吸着放出電極が同一の基板上に一体化されている場合には、該分子吸着放出装置をチップ化することができる点で有利であり、該2以上の吸着放出電極が異なる基板上に一体化されている場合には、前記吸着放出電極の耐久性、機械的強度等を向上させることができる点で有利である。
【0023】
前記2以上の吸着放出電極が同一の基板上に一体化されている場合、該吸着放出電極の数としては、該基板の数を1つとする場合には2以上であることが必要であり、該基板の数を2以上とする場合には2以上が好ましく、該分子吸着放出装置をチップ化等する観点からは、3以上がより好ましく、4以上が更に好ましい。
【0024】
前記2以上の吸着放出電極が異なる基板上に一体化されている場合、即ち、前記吸着放出電極が互いに独立の形態で使用される場合、該吸着放出電極は、繰り返しの使用に耐え得るように設計されているのが好ましい。
なお、この態様を図1に示した。図1に示す通り、吸着放出電極10は、基板1上に一体化されて固定配置されている。なお、図1(A)は、平面図であり、図1(B)は、側面図である。なお、ここでは、基板1は酸化ケイ素基板である。吸着放出電極10は、長方形薄板状の金電極である。吸着放出電極10と基板1との間には、図示していないが、両者を密着させるための密着層(後述)が設けられている。該密着層は、クロムにより形成されている。そして、吸着放出電極10の表面には、絶縁膜20が被覆されており、吸着放出電極10の一端部及び基板1の一部表面が露出している。吸着放出電極10及び基板1の露出部が、前記分子との間で吸着又は放出が行われる部位となる。
なお、図1では、基板1の1つ当たり吸着放出電極10が1つであるが、基板1の1つ当たり吸着放出電極10の数は2以上であってもよい(図2参照)。また、吸着放出電極10等の露出部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、吸着放出電極10の一端部のみならず中央部であってもよい。
【0025】
前記基板としては、その形状、構造、厚み、大きさ等としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができる。
前記基板の具体例としては、絶縁基板が好適に挙げられる。該絶縁基板としては、例えば、石英ガラス基板、シリコン基板、酸化ケイ素基板、窒化ケイ素基板、サファイヤ基板、等が好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記2以上の吸着放出電極が同一の基板上に一体化されている場合、本発明の分子吸着放出装置は、該基板を2以上有していてもよい。この場合、該吸着放出装置を高性能、高効率な集積型吸着放出装置として設計することができ、診断・分析等における検出効率や検出感度の向上等を図ることができる点で有利である。また、このとき、各基板における前記吸着放出電極の数としては、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
この態様を図2に示した。図2に示す通り、吸着放出電極10が、合計で8つ(A電極、B電極、C電極、D電極、E電極、F電極、G電極、及びH電極)、基板1上に一体化されて固定配置されている。前記集積型吸着放出装置において、基板が9つ設けられている。また、長方形状の対向電極12が1つ基板1上に一体化されて固定配置されており、長方形状の参照電極14が2つ基板1上に一体化されて固定配置されている。したがって、基板1上の中央には、上下方向に沿って直線状に対向電極12が配置され、対向電極12を挟むようにして前記上下方向に沿って直線状に参照電極14が配置されている。また、基板1の両端部には、参照電極14を挟むように、かつ参照電極14に対向するようにして、左右方向に沿って直線状に吸着放出電極10が4つづつ(A電極、B電極、C電極及びD電極、並びに、E電極、F電極、G電極及びH電極)配置されている。
なお、ここでは、基板1は石英ガラス基板である。吸着放出電極10は、図1におけるのと同様の薄板状の金電極である。対向電極12及び参照電極14は、Ag/AgCl合金電極である。吸着放出電極10、対向電極12又は参照電極14と、基板1との間には、図示していないが、両者を密着させるための密着層(後述)が設けられている。該密着層は、クロムにより形成されている。そして、吸着放出電極10、対向電極12及び参照電極14の表面には、絶縁膜20が被覆されており、吸着放出電極10の一端部、対向電極12の両端部以外の部分、参照電極14の両端部以外の部分、及び基板1の一部表面が露出している。吸着放出電極10、対向電極12、参照電極14及び基板1の露出部が、前記分子との間で吸着又は放出が行われる部位となる。なお、吸着放出電極10、対向電極12及び参照電極14は、図示しない電源に導通可能に結線されており、吸着放出電極10におけるA電極、B電極、C電極、D電極、E電極、F電極、G電極及びH電極は、独立して駆動可能になっている。
【0028】
ここで、前記集積型吸着放出装置について説明する。
前記集積型吸着放出装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設計することができるが、例えば、各基板にn個の吸着放出電極が配置され、該n個の吸着放出電極を、第1吸着放出電極、第2吸着放出電極、・・・、第n−1吸着放出電極、第n吸着放出電極、とすると、各基板における、第1吸着放出電極どうしが、第2吸着放出電極どうしが、・・・、第n−1吸着放出電極どうしが、第n吸着放出電極どうしが、互いに同一の電源に電気的に接続されている態様などが好ましい。この場合、多数の診断・分析試料を一度に処理等することができ、高効率である点で有利である。
【0029】
この態様の一例を図示すると、図3に示す通りであり、ここでは、前記集積型吸着放出装置において、長方形状の基板が9つ設けられている。各基板には、前記吸着放出電極が8つ(A電極、B電極、C電極、D電極、E電極、F電極、G電極、及びH電極)一体化されて固定配置されており、前記対向電極が1つ一体化されて固定配置されており、前記参照電極が一体化されて固定配置されている。各基板においては、中央に、図3における上下方向に沿って直線状に前記対向電極が配置され、該対向電極を挟むようにして前記上下方向に沿って直線状に前記参照電極が配置されている。また、各基板においては、前記参照電極を挟むように、かつ該参照電極に対向するようにして、一端部に、図3における左右方向に沿って直線状に前記吸着放出電極が4つ配置され、両端部を合計すると8つの前記吸着放出電極が配置されている。この各基板は、図2に図示したものと基本的には同様の構造を有している。
【0030】
9つの基板は、3個づつ3列に略等間隔に配置され、各列に配置された各基板は、互いに同一の構成を有している。更に、図3においては、左列及び右列に配置された各基板が、互いに同一の構成を有しており、各基板の左端上から順にE電極、F電極、G電極、及びH電極が配置されており、右端上から順にA電極、B電極、C電極、及びD電極が配置されている。また、中央列に配置された各基板が、互いに同一の構成を有しており、各基板の左端上から順に、A電極、B電極、C電極、及びD電極が配置されており、右端上から順にE電極、F電極、G電極、及びH電極が配置されている。
【0031】
また、前記左列に配置された各基板におけるA電極〜D電極と、前記中央列に配置された各基板におけるA電極からD電極とは互いに対向配置されており、前記中央列に配置された各基板におけるE電極からH電極と、前記右列に配置された各基板におけるE電極〜H電極とは互いに対向配置されている。
そして、各基板における、前記対向電極どうし、前記参照電極どうし、前記A電極どうし、前記B電極どうし、前記C電極どうし、前記D電極どうし、前記E電極どうし、前記F電極どうし、前記G電極どうし、前記H電極どうしは、それぞれ同一の導線で結線され同一の電源にて駆動可能になっている。
【0032】
この集積型吸着放出装置においては、9つの基板における、前記A電極を制御する電源を操作して該A電極と前記対向電極との間で電圧を制御し、該A電極における電位を変化させると、該A電極部分においてのみ、前記分子が吸着又は放出可能し、他のB電極〜H電極部分においては電位の変化がないので前記分子が吸着又は放出しない。この場合、9種類の試料を同時に分析・診断等することができ、A電極〜H電極に対応する8種類の前記分子を吸着乃至放出させることができる。このため、高効率で高性能である。
【0033】
本発明においては、前記吸着放出電極が前記基板上に一体化されて固定配置される場合、該基板と前記吸着放出電極との間に、両者の密着性を向上させる目的で密着層が設けられているのが好ましい。
【0034】
前記密着層の材質、形状、構造、厚み、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記材質としては、例えば、クロム、プラチナ/チタン、などが挙げられる。前記構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
前記厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記大きさとしては、特に制限はなく、前記吸着放出電極の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0035】
前記吸着放出電極は、電位を変化可能に電源等に接続されるが、正電位から負電位まで電位を変化可能であるのが好ましい。この場合、正電位が印加されていた前記吸着放出電極の電位を負電位に変化させることにより、該吸着放出電極に吸着されていた前記分子を放出させることができ、又は遊離していた前記分子を該吸着放出電極に吸着させることができ、前記分子を前記吸着放出電極に可逆的に吸着及び放出させることができる点で有利である。
なお、前記2以上の吸着放出電極における少なくとも2つを、異なる電源等に接続しておくのが、2以上の前記吸着放出電極を独立に制御可能にする観点からは好ましく、各吸着放出電極をそれぞれ異なる電源等に接続し、2以上の前記吸着放出電極のそれぞれが、互いに独立に制御可能であるのが好ましい。
【0036】
本発明の分子吸着放出装置としては、前記2以上の吸着放出電極と共に電気回路を形成する対向電極を有しているのが好ましい。該対向電極は、前記吸着放出電極と共に電気回路を形成し、電流の収支を図るため使用される。
前記対向電極としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、前記吸着放出電極として説明したものを使用することができる。なお、該対向電極の材質としては、前記吸着放出電極の場合と同様に、多数種の金属を選択しない方が好ましい。
前記対向電極は、前記吸着放出電極と共に前記基板に一体化されて固定配置されて使用されてもよいし、該基板とは別の基板に一体化されて固定配置されて使用されてもよいし、独立の形態で使用されてもよい。
前記対向電極の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少ない方が好ましく、前記基板1つ当たり前記吸着放出電極が2以上固定配置されている場合には、各基板当たり1つであるのが好ましい。この場合、該2以上の前記吸着放出電極は、前記対向電極に対向して配置されるのが好ましく、前記基板の中央に配置された前記対向電極を挟むようにして該基板の縁側に配置されるのがより好ましい。
【0037】
本発明の分子吸着放出装置としては、前記対向電極のほかに、参照電極を有しているのが好ましい。この場合、いわゆる三電極法による制御となり、該参照電極を用いない二電極法に比べ、前記吸着放出電極及び前記対向電極の間の電位を容易に制御することができる点で有利である。該参照電極は、基準電位を測定乃至観測するために好適に使用することができる。
前記参照電極としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、前記吸着放出電極として説明したものを参照電極として使用することができる。なお、該参照電極の材質としては、前記吸着放出電極の場合と同様に、多数種の金属を選択しない方が好ましい。
前記参照電極は、前記吸着放出電極及び前記対向電極の少なくともいずれかと共に前記基板に一体化されて固定配置されて使用されてもよいし、該基板とは別の基板に一体化されて固定配置されて使用されてもよいし、独立の形態で使用されてもよい。
前記参照電極の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少ない方が好ましく、前記基板1つ当たり前記対向電極が1つ固定配置されている場合には、各基板当たり2つであるのが好ましい。この場合、該参照電極は、前記対向電極を挟むようにして配置されるのが好ましく、更に前記吸着放出電極が、該参照電極を挟むようにして該基板の縁側に配置されるのがより好ましい。
【0038】
前記分子としては、前記吸着放出電極と相互作用可能な領域を少なくとも一部に含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記相互作用としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、電気的作用(電気的結合など)、化学的作用(化学結合など)、物理的作用(吸着など)、などが挙げられるが、該分子を前記吸着放出装置に可逆的に吸着及び放出可能にする観点からは、電気的作用(電気的結合など)が好ましい。
【0039】
前記相互作用可能な領域の大きさとしては、特に制限はなく、前記相互作用の強さ等に応じて適宜選択することができるが、前記分子を前記吸着放出電極に対し、確実に吸着又は放出させる観点からは、大きい方が好ましい。
前記相互作用可能な領域においては、その一部に前記吸着放出電極との相互作用力(例えば結合力など)が異なる部位が存在していてもよい。
【0040】
前記相互作用可能な領域の前記分子当たりにおける数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも1つであり、2以上であってもよい。
【0041】
前記分子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、線状、粒状、板状、これらの2以上の組合せ、など挙げられるが、これらの中でも、線状などが好ましい。
【0042】
前記分子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、病気の治療、診断等への応用等の観点からは生体分子などが好適に挙げられ、前記吸着放出電極と電気的相互作用が可能である点で、帯電分子であるのが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記帯電分子としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、イオン性ポリマー、などが好適に挙げられる。
【0043】
前記イオン性ポリマーとしては、正イオンポリマー及び負イオンポリマーから選択されるのが好ましい。
前記正イオンポリマー(正に帯電したイオンポリマー)としては、例えば、グアニジンDNA、ポリアミンなどが好適に挙げられる。
前記負イオンポリマー(負に帯電したイオンポリマー)としては、例えば、ポリヌクレオチド、ポリリン酸などが好適に挙げられる。これらは、負電荷が分子中に一定間隔で存在する点で前記吸着放出電極との相互作用(結合等)を制御し易い点で好ましい。
【0044】
前記ポリヌクレオチドの中でも、DNA、RNA、これらとタンパク質との複合体などから選択されるのが好ましい。前記DNA及びRNAは、一本鎖であってもよいし、二本鎖であってもよい。
前記ポリヌクレオチドの具体例としては、癌関連遺伝子、遺伝病に関連する遺伝子、ウイルス遺伝子、細菌遺伝子及び病気のリスクファクターと呼ばれる多型性を示す遺伝子、などが挙げられる。
【0045】
前記癌関連遺伝子としては、例えば、k−ras遺伝子、N−ras遺伝子、p53遺伝子、BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子、src遺伝子、ros遺伝子又はAPC遺伝子などが挙げられる。
前記遺伝病に関連する遺伝子としては、例えば、各種先天性代謝異常症、例えばフェニールケトン尿症、アルカプトン尿症、シスチン尿症、ハンチントン舞踏病、Down症候群、Duchenne型筋ジストロフィー、血友病などが挙げられる。
前記ウイルス遺伝子及び前記細菌遺伝子としては、例えば、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、HIVウイルス、マイコプラズマ、リケッチア、レンサ球菌、サルモネラ菌などが挙げられる。
前記多型性を示す遺伝子としては、病気等の原因とは必ずしも直接は関係のない個体によって異なる塩基配列を持つ遺伝子、例えば、PS1(プリセリニン1)遺伝子、PS2(プリセリニン2)遺伝子、APP(ベーターアミロイドプレカーサー蛋白質)遺伝子、リポプロテイン遺伝子、HLA(Human Leukocyte Antigen)や血液型に関する遺伝子、高血圧、糖尿病等の発症に関係するとされている遺伝子、などが挙げられる。
【0046】
なお、前記ポリヌクレオチドを作製する方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から目的に応じて適宜選定することができ、例えば、DNAシンセサイザー(DNA自動合成機)を用いる方法、あるいは、予め作製しておいたオリゴヌクレオチド配列に対し、プライマー及びDNAポリメラーゼを作用させる、あるいはオリゴマーブロックを並べてアニーリングし、DNAライゲース又はRNAライゲースを作用させて結合させる方法、などが挙げられる。
前記ポリヌクレオチドの場合、その長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも6塩基であるのが好ましい。一般に、該ポリヌクレオチドの長さが短い程、前記吸着放出電極から放出させるのに必要なピーク電圧が低くなる。
【0047】
前記分子は、前記吸着放出電極の電位を変化させることにより、例えば、正電位が印加されていた前記吸着放出電極の電位を負電位に変化させることにより、あるいは、負電位が印加されていた前記吸着放出電極の電位を正電位に変化させることにより、該吸着放出電極に吸着され、又は該吸着放出電極から放出される。例えば、前記分子がポリヌクレオチド(DNA)である場合、前記吸着放出電極に、正電位を印加すると該ポリヌクレオチド(DNA)が該吸着放出電極に吸着され、逆に、負電位を印加すると該ポリヌクレオチド(DNA)が該吸着放出電極から放出される。
【0048】
前記分子の前記吸着放出電極に吸着させる数又は前記吸着放出電極から放出される数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明においては、前記2以上の吸着放出電極により吸着又は放出される前記分子が、互いに異なり、2種以上であるのが好ましい。この場合、該吸着放出装置は、高効率で診断等を行うことができる点で有利である。
【0049】
前記分子としては、診断、分析等に応用する観点からは、標的を捕捉可能な標的捕捉部を有するのが好ましい。
前記標的捕捉部の具体例としては、前記標的に対する抗体、抗原、酵素、補酵素、などが好適に挙げられる。前記標的捕捉部は、前記標的との関係で選択することができる。例えば、前記標的が抗原である場合には、前記標的捕捉部としては該抗原に対する抗体を選択することができる。前記標的が抗体である場合には、前記標的捕捉部としては該抗体に対する抗原を選択することができる。前記標的が酵素(例えばアビジン)である場合には、前記標的捕捉部としては該酵素の補酵素(例えばビオチン)を選択することができる。前記標的が補酵素(例えばビオチン)である場合には、前記標的捕捉部としては該補酵素の酵素(例えばアビジン)を選択することができる。
【0050】
前記標的捕捉部の前記標的捕捉体1分子当たりにおける数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも1つであり、2以上であってもよい。
また、前記標的捕捉部の前記標的捕捉体における位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記相互作用部が線状である場合にはその末端などが挙げられ、該相互作用部がポリヌクレオチドである場合には、3’末端であってもよいし、5’末端であってもよい。
【0051】
前記標的としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、有機分子などが好適に挙げられる。
前記有機分子としては、例えば、タンパク質、血漿蛋白、腫瘍マーカー、アポ蛋白、ウイルス、自己抗体、凝固・線溶因子、ホルモン、血中薬物、核酸、HLA抗原、リポ蛋白、糖蛋白、ポリペプチド、脂質、多糖類、リポ多糖類、などが好適に挙げられる。
【0052】
前記タンパク質としては、例えば、アビジン等の酵素などが挙げられる。
前記血漿蛋白としては、例えば、免疫グロブリン(IgG,IgA,IgM,IgD,IgE)、補体成分(C3,C4,C5,C1q)、CRP、α1−アンチトリプシン、α1−マイクログロブリン、β2−マイクログロブリン、ハプトグロビン、トランスフェリン、セルロプラスミン、フェリチンなどが挙げられる。
【0053】
前記腫瘍マーカーとしては、例えば、α−フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CA19−9、CA125、CA15−3、SCC抗原、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、PIVKA−II、γ−セミノプロテイン、TPA、エラスターゼI、神経特異エノラーゼ(NSE)、免疫抑制酸性蛋白(IAP)などが挙げられる。
【0054】
前記アポ蛋白としては、例えばアポA−I、アポA−II、アポB、アポC−II、アポC−III、アポEなどが挙げられる。
【0055】
前記ウイルスとしては、例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HBC)、HTLV−I、HIVなどが挙げられる。また、ウイルス以外の感染症としては、ASO、トキソプラズマ、マイコプラズマ、STDなどが挙げられる。
【0056】
前記自己抗体としては、例えば、抗マイクロゾーム抗体、抗サイログロブリン抗体、抗核抗体、リュウマチ因子、抗ミトコンドリア抗体、ミエリン抗体などが挙げられる。
【0057】
前記凝固・線溶因子としては、例えば、フィブリノゲン、フィブリン分解産物(FDP)、プラスミノゲン、α2−プラスミンインヒビター、アンチトロンビンIII、β−トロンボグロブリン、第VIII因子、プロテインC、プロテインSなどが挙げられる。
【0058】
前記ホルモンとしては、例えば、下垂体ホルモン(LH、FSH、GH、ACTH、TSH、プロラクチン)、甲状腺ホルモン(T3、T4、サイログロブリン)、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、副腎皮質ホルモン(アルドステロン、コルチゾール)、性腺ホルモン(hCG、エストロゲン、テストステロン、hPL)、膵・消化管ホルモン(インスリン、C−ペプチド、グルカゴン、ガストリン)、その他(レニン、アンジオテンシンI,II、エンケファリン、エリスロポエチン)などが挙げられる。
【0059】
前記血中薬物としては、例えば、カルバマゼピン、プリミドン、バルプロ酸等の抗てんかん薬、ジゴキシン、キニジン、ジギトキシン、テオフィリン等の循環器疾患薬、ゲンタマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン等の抗生物質などが挙げられる。
前記核酸としては、上述のものが挙げられる。
【0060】
また、前記分子としては、前記吸着放出電極と相互作用していない時に光の照射を受けると発光可能な、又は、前記吸着放出電極と相互作用している時に光の照射を受けると発光可能な発光部を有するのが好ましい。この場合、診断等を目視で行うことができる点で好ましい。
【0061】
前記発光部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、蛍光色素、金属、半導体ナノスフィアー、などが好適に挙げられる。
【0062】
前記蛍光色素は、前記吸着放出電極が金属電極等の金属である場合には、該金属と相互作用している間(例えば、該金属の近傍に位置している間)は、吸収可能な波長の光が照射されても発光せず、該金属と相互作用しなくなった時(例えば、該金属とは離接している時)には、吸収可能な波長の光が照射されるとその光エネルギーにより発光可能であり、前記発光部として特に好適に使用可能である。
【0063】
前記蛍光色素としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、下記構造式1で表される化合物などが好適に挙げられる。
【0064】
構造式1
【化1】
【0065】
前記発光部の前記分子1つ当たりにおける数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも1つであり、2以上であってもよい。
また、前記発光部の前記分子における位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記相互作用可能な領域が線状である場合にはその末端などが挙げられ、該相互作用可能な領域がポリヌクレオチドである場合には、3’末端であってもよいし、5’末端であってもよい。
【0066】
前記分子において、例えば、前記相互作用可能な領域が前記ポリヌクレオチドである場合、前記標的捕捉部となる分子により5’末端修飾されたオリゴDNAをプライマー及びDNAポリメラーゼを用い、該ポリヌクレオチド鎖を伸長していき、分子鎖中に前記発光部となる分子を結合させる方法、などによって該分子を製造することができる。
【0067】
本発明においては、前記吸着放出電極を、前記分子を分解等しない導電性液体中に浸漬させることにより好適に使用することができる。前記導電性液体を使用すると、前記分子の吸着又は放出が容易である点で有利である。
前記導電性液体としては、導電性であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水、イオン溶液、電解質を含有する溶液、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
本発明においては、前記分子の吸着又は放出の後で、前記導電性液体を非導電性液体に置換することにより、反応系を不活性にし、該分子の再吸着又は再放出を抑制させることができる。
前記非導電性液体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記分子、前記吸着放出電極等を変質等させることがないものが好ましく、例えば、アルコール等の公知の有機溶媒などが好適に挙げられる。なお、該有機溶媒としては、アルコールが好ましく、エタノールがより好ましい。該有機溶媒がエタノールであると、腐敗を効果的に防止でき、長期保存に好適である。
【0069】
ここで、本発明の分子吸着放出装置を用いた前記分子の吸着乃至放出の原理、即ち本発明の分子吸着放出方法における前記分子の吸着乃至放出の原理について説明する。
図4に示すように、前記分子としてDNA分子100を含有する試料中に吸着放出電極10及び前記対向電極を浸漬させた。なお、吸着放出電極10は、図示しない絶縁基板上に化学的に不活性なAuで形成されたものである。前記試料は、塩化ナトリウム水溶液であり、前記導電性液体である。ここで、吸着放出電極10(ここではAu電極)に、図示しない電源から正電圧を印加することにより正電位を印加すると、前記分子であるDNA分子100は、負に帯電しているため、該吸着放出電極10上に電気的に引き付けられて吸着される。なお、吸着放出電極10は、前記塩化ナトリウム水溶液中に配置された前記対向電極(図示せず)と共に電気回路を形成している。該吸着放出電極10上に吸着されたDNA分子100は、電気的な吸引力により強固に該吸着放出電極10上に吸着され、該吸着放出電極の電位を変化させない限り脱離することはない。
なお、この場合、図5に示すように、参照電極14を更に前記導電性液体中に配置し、吸着放出電極10の電位を所望の程度に制御してもよい。
【0070】
次に、吸着放出電極10に、前記電源から負電圧を印加することにより負電位を印加すると、図6上段又は図7に示すように、吸着放出電極10から上に電気的に吸着されていたDNA分子100が、図6下段又は図8に示すように、電気的な反発力により吸着放出電極10から放出される。なお、前記吸着放出電極から吸着した前記分子を放出させるためには、該吸着放出電極と該分子とが電気的に相互作用している閾値としての電位が、該吸着放出電極の種類と該分子の種類との関係に応じて存在するので、該閾値を超えるように該吸着放出電極に電位を印加する必要がある。
【0071】
したがって、吸着放出電極10に、前記電源から正電圧及び負電圧を繰り返し印加することにより、DNA分子100を吸着放出電極10に吸着及び放出を繰り返して行う、即ち、DNA分子100の吸着及び放出を可逆的に行うことができる。また、このとき、吸着放出電極10が2以上に対し、異なるタイミングで任意に電位を変化させることにより、異なるタイミングで前記分子としてのDNA分子100を選択的に吸着乃至放出させることができる。なお、このとき、前記分子としてのDNA分子100を吸着又は放出させるために閾値を超える電位を印加する対象である吸着放出電極10以外の吸着放出電極10には、電位を印加しなくてもよいし、前記閾値を超えない程度の弱い電位を印加させておいてもよい。
【0072】
また、前記分子が2以上ある場合において、該2以上の分子をそれぞれ異なる吸着放出電極10上に吸着させておくことにより、異なるタイミングで異なる前記分子を選択的に放出させることができ、逆に、該2以上の分子を前記試料中に存在させておくことにより、異なるタイミングで異なる前記分子をそれぞれ別の吸着放出電極に選択的に吸着させることもできる。2以上の吸着放出電極10に異なる前記分子を吸着させたものは、分子供給用チップ等として使用することができる。
【0073】
本発明においては、吸着放出電極10にDNA分子100を吸着させた後、前記導電性液体を有機溶媒等の前記非導電性液体に置換することにより、前記分子を吸着放出電極10に吸着させたまま安定に保存等することができ、このような状態で微小化、チップ化、集積化等したものは取扱性に優れる。前記非導電性液体は、DNA分子100を変質等させないものが好ましく、この場合、長期保存安定性が確保される点で好ましい。なお、このとき、吸着放出電極10に印加した電源をOFFにしても、前記分子としてのDNA分子100は、逆電位を印加しない限り該吸着放出電極10から脱離しない。そして、必要に応じて、前記非導電性液体を前記導電性液体に置換し、吸着放出電極10に逆電位を印加して吸着放出電極の電位を変化させると、その逆電位を印加したタイミングで、DNA分子100を放出させることができる。
【0074】
本発明においては、前記吸着放出電極以外の部材、例えば、前記絶縁膜、前記基板等の表面に、前記分子(例えばDNA分子等)が吸着されてしまうのを防ぐ目的で、潤滑剤を該部材の表面に付与することができる。
前記潤滑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パーフルオロポリエーテル系化合物等のフッ素潤滑剤、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記潤滑剤を使用する場合、前記吸着放出電極に電圧を印加することにより、前記吸着放出電極の表面だけ前記潤滑剤が除去され、他の表面には該潤滑剤が付与される。
【0075】
次に、上述した図3に示す集積型分子吸着放出装置における分子の吸着乃至放出の一例について説明する。
例えば、まず、各基板1を前記導電性液体中に浸漬させる。各基板1上に一体化させて固定配置した吸着放出電極10の中で、A電極を除く他の吸着放出電極10(B電極、C電極、D電極、E電極、F電極、G電極及びH電極)にのみ前記閾値を超える負電圧を印加して、前記A電極にのみ正電圧を印加する。そして、ここで、外部からスポイトで該導電性液体中に前記分子としてのDNA分子(これを「分子A」と称する)を注入すると、該DNA分子(分子A)は前記A電極にのみ吸着する。その後、前記導電性液体を捨てて該導電性液体中に存在する該DNA分子(分子A)を除去する。なお、基板1には、対向電極12及び参照電極14が固定されているので、これらの表面に該DNA分子(分子A)が付着している可能性があるので、前記導電性液体を捨てる時に、外部から別の電極を該導電性液体中に挿入し、対向電極12、参照電極14及びA電極を除く他の吸着放出電極に負電圧を印加すると、対向電極12及び参照電極14の表面に吸着されたDNA分子(分子A)を除去することができる。なお、基板1に対向電極12及び参照電極14に一体的に固定配置されていない場合には、対向電極12及び参照電極14を新しいものと交換してもよい。
【0076】
次に、基板1を新しい導電性液体(電解質溶液)中に浸漬させる。前記A電極には電圧を印加しないかあるいは前記閾値以下の弱い負電圧を印加しておき、一方、該A電極を除く他の吸着放出電極には前記閾値以上の負電圧を印加しておき、前記B電極にのみ正電圧を印加する。そして、ここで、前記同様、該導電性液体中にDNA分子(分子B)を注入すると、該B電極に該DNA分子(分子B)を吸着させることができる。
以上のような手順により、前記C電極以下の各吸着放出電極に対しDNA分子(分子C、分子D、・・・、分子H)をそれぞれ吸着させることができる。
【0077】
本発明の分子吸着放出装置においては、以上のようにして前記吸着放出電極上に前記分子を吸着させることができるので、従来において使用されていたスポイト(又はスポッター)等を使用する必要がなく、その結果、前記吸着放出電極上の極めて微小な露出面上に前記分子を吸着させ、分配させることができる(空間分解能(〜200μM)に優れる)。しかも、前記露出面を、前記絶縁膜を用いて形成し、該絶縁膜を、前記レジスト材を用いてパターング形成した場合には、より微小な露出面とすることができ、装置の微小化、チップ化、集積化等に極めて有利である。
【0078】
そして、次に、前記A電極に前記閾値を超える負電圧を印加すると、該A電極に吸着された前記DNA分子(分子A)が、該A電極との電気的反発力により放出される。これを、スポイト等を用いて吸引すると、あるいは正電圧を印加した外部電極を作用させると、該A電極に吸着されていたDNA分子(分子A)を外部に取り出すことができる。以上の操作を各電極に対して行うことにより、各電極に吸着されていたDNA分子を取り出すことができる。このとき、取り出したDNA分子等の前記分子は、例えば、石英ガラスなどの絶縁物の上に一括して配列させてもよく、この状態は、市販のDNAチップと同等である。また、取り出したDNA分子等をここで増幅等させてもよい。市販のDNAチップでは、一回の検査で一枚消費されるが、本発明によりチップ化した分子吸着放出装置によれば、配置させた前記吸着放出電極の数だけ繰返使用が可能であり、各種用途に好適に利用可能である。
【0079】
次に、図9に示すような、前記標的捕捉体及び発光部110を有する分子100について説明する。分子100は、前記相互作用可能な領域としてのポリヌクレオチドと、該ポリヌクレオチドの一端に結合された発光部110(例えば蛍光色素)と、該ポリヌクレオチドの他端に結合された標的捕捉部(図示せず)(例えば抗体)とを有してなる。
図9は、分子100が前記吸着放出電極(例えば金属電極)に吸着されており、光の照射を受けても発光部110が発光しない状態を表しており、図10は、分子100が前記吸着放出電極(例えば金属電極)から放出されているので、光の照射を受けて発光部110が発光した状態の発光部110aとなった状態を表している。
【0080】
発光部110を有する分子100を用いれば、前記吸着放出電極(例えば金属電極など)から放出させるタイミングを任意に制御することによりその発光を任意に制御することができ、また、標的を捕捉し分子100自身の拡散速度が遅くなることを利用することにより、その発光時間の変化等を検出することにより、該標的の存在の有無等を容易に検出することができる。
【0081】
このとき、発光部110に光を照射させる光照射手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紫外線ランプ、半導体レーザーなどが好適に挙げられる。
前記光照射手段の光の照射方向としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記標的捕捉体が保持された前記吸着放出電極の表面方向であって、かつ該吸着放出電極からの反射光の進行方向が前記光検出手段方向であるのが好ましい。
前記光照射手段が照射する光の波長としては、前記標的捕捉体における前記発光部が吸収可能であり、かつ吸収後に発光可能な波長であれば特に制限はなく、該発光部の吸収ピーク波長との関係において適宜選択することができる。
【0082】
また、発光部110aが発光する光を検知する光検知手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、受光センサー、CCDカメラ、フォトマル、フォトダイオードなどが好適に挙げられる
前記光検出手段の中でも、前記発光部が発光する光の単位時間当りの光子数を算出可能である、前記発光部が発光する蛍光強度を検出可能である、あるいは、前記発光部が発光する光が消光するまで(測定不能となるまで)の時間を測定可能である、ものが好ましく、更には、前記吸着放出電極から放出され、検出領域内から検出領域外に向かって拡散し、移動する前記分子であってその標的捕捉部が前記標的を捕捉したものにおける前記発光部が発光する光の単位時間当りの光子数を算出し、前記吸着放出電極から放出され、検出領域内から検出領域外に向かって拡散し、移動する前記分子であってその標的捕捉部が前記標的を捕捉していないものにおける前記発光部が発光する光の単位時間当りの光子数と比較することにより、前記分子における前記標的捕捉部に前記標的が捕捉されたか否かを検出可能であるものがより好ましい。
【0083】
前記発光部を有する前記分子を吸着乃至放出させる前記分子吸着放出装置について、図11及び図12を参照しながら説明する。該分子吸着放出装置においては、正電圧が印加された吸着放出電極10上に、前記標的捕捉部及び前記発光部を有するDNA分子100が電気的に吸着されている。また、吸着放出電極10に対し光を照射する前記光照射手段としての紫外線ランプ200と、前記光検出手段としての受光センサー300とが配置されている。
なお、吸着放出電極10の上方には対向電極(図示せず)が設けられており、吸着放出電極10と該対向電極とは電場を印加可能な電源(図示せず)に接続されており、前記導電性液体中に浸漬された状態で配置され、電気回路を形成している。なお、該導電性液体には、前記標的捕捉部が捕捉可能な前記標的を含有する試料液が混合されている。
【0084】
紫外線ランプ200は、吸着放出電極10による反射光が受光センサー300の方向に進行するようにして配置され、吸着放出電極10の表面に紫外線200aの照射を行う(図11及び図12参照)。受光センサー300は、前記照射光200aの反射光を受光すると共に、DNA分子100における発光部110が発光する光を受光する(図11及び図12参照)。
ここで、吸着放出電極10に接続された電源を作動させておき、吸着放出電極10に正電圧を印加しておくと、図11に示すように、吸着放出電極10にDNA分子100が電気的に吸着される。この時、DNA分子100における発光部110は、吸着放出電極10に電気的に結合しているので、紫外線ランプ200から照射された紫外線を受けても発光せず、受光センサー300も発光を検出しない。一方、吸着放出電極10に今まで印加していた逆電位である負電圧を印加し、吸着放出電極10を負電位に変化させると、図12に示すように、吸着放出電極10とDNA分子100とのクーロン反発力により、吸着放出電極10からDNA分子100が放出される。この時、図12に示すように、DNA分子100における発光部110は、紫外線ランプ200から照射された紫外線200aを受光し、紫外線200aの光エネルギーを吸収してその発光部11が発光する。したがって、受光センサー300は、DNA分子100における発光部110が発光する光を検出する。
【0085】
このとき、DNA分子100における前記標的捕捉部に前記標的が捕捉されていると、該DNA分子100の分子拡散速度が遅くなるため、該DNA分子100における前記標的捕捉部に前記標的が捕捉されていない場合に比べて、受光センサー300により検出される、DNA分子100における発光部110からの発光量(単位時間当りの光子数)が多くなる。この発光量の変化の有無により、前記標的の存在の有無を受光センサー300により検出することができる。
【0086】
以上説明した本発明の分子吸着放出装置又は分子吸着放出方法によると、DNA分子等の前記分子の2種以上を、異なる任意のタイミングで吸着乃至放出させることができ、しかも吸着及び放出を可逆的に行うことができ、更に小型化、チップ化、集積化等することができるので、糖尿病、高血圧症、高脂血症、その他の多因子性疾患全般などの各種病気をはじめ、各種の診断、分析、測定、検出等に好適に使用することができる。また、前記分子に前記標的捕捉部を設けておくことにより、蛋白質等の各種有用分子の診断、分析、測定、検出等を行うことができ、しかもその際に発光部等を設けておくことにより、該有用分子の定量までも行うことができる。本発明の分子吸着放出装置又は分子吸着放出方法においては、前記分子を電気的に微小空間で短期乃至長期に保持乃至保存して集積化することができ、また、半導体等における微細加工技術を応用することができ、しかも電気制御可能であるため、本発明の分子吸着放出装置又は分子吸着放出方法によれば、多種多数の前記分子の吸着乃至放出を簡便に行うことができ、各種研究に応用可能であり、バイオテクノロジー産業の一層の発展に寄与し得る。
【0087】
【実施例】
以下、本発明の分子吸着放出装置又は分子吸着放出方法の実施例としては、上述した通りであり、以下においては、前記吸着放出電極に対する前記分子の吸着及び放出を行った具体的な実験について説明する。
まず、前記基板としての石英ガラス基板上に、前記吸着放出電極としてのAu電極を蒸着法により形成した。なお、該基板及び該Au電極の表面には、図1に示すように、窒化ケイ素による絶縁膜を形成し、該基板及び該Au電極の一部を露出させた。このAu電極を、電気化学的測定法であるサイクリックボルタンメトリーにより評価したところ、図13に示すような結果となった。このグラフからは、該Au電極は、−0.7V〜0.7Vの電圧範囲内で電流値が小さく、その表面での顕著な酸化還元反応は認められなかった。このため、該Au電極は、−0.7V(−700mV)〜0.7V(700mV)の電圧を印加して使用すれば破損等の問題がないことが判った。
【0088】
次に、図4に示すように、吸着放出電極10(Au電極)をNaCl(0.05mol/L)水溶液中に浸漬させ、正電圧(700mV)を印加した。そして、更に該NaCl水溶液中に前記分子としてのss−DNAを添加した。すると、該ss−DNAは、強く負に帯電しているため、正電圧が印加されたAu電極に吸着した。
【0089】
次に、図5に示すように、参照電極14(Ag/AgCl)を前記NaCl水溶液中に挿入し、前記ss−DNAを吸着した前記Au電極に対し、参照電極14を基準として−600mV〜−800mVの電圧を印加した。すると、該NaCl水溶液中に前記ss−DNAが放出され、脱離した。このとき、該ss−DNAに前記発光部としての色素(Cy3)を結合させておいたところ、該ss−DNAがAu電極に吸着されていたときは、該色素は発光せず、該ss−DNAがAu電極から放出され前記NaCl水溶液中に脱離すると該色素は発光した。このときの発光の状態を測定したグラフを図14に示した。
【0090】
ここで、本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) 独立に制御可能であり、分子の吸着及び放出のいずれかを行う2以上の吸着放出電極を有してなることを特徴とする分子吸着放出装置。
(付記2) 2以上の吸着放出電極が、分子の吸着及び放出を可逆的に行う付記1に記載の分子吸着放出装置。
(付記3) 2以上の吸着放出電極により吸着及び放出のいずれかされる分子が、互いに異なる付記1から2のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記4) 2以上の吸着放出電極が同一の基板上に配置された付記1から3のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記5) 2以上の吸着放出電極と共に電気回路を形成する対向電極を少なくとも1つ有する付記1から4のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記6) 2以上の吸着放出電極及び対向電極が同一の基板上に配置された付記5に記載の分子吸着放出装置。
(付記7) 対向電極が1つであり、該対向電極に対向して2以上の吸着放出電極が配置された付記5から6のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記8) 参照電極を少なくとも1つ有する付記5から7のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記9) 2以上の吸着放出電極、対向電極及び参照電極が同一の基板上に配置された付記8に記載の分子吸着放出装置。
(付記10) 対向電極が1つであり、参照電極が2つであり、該対向電極を挟むようにして配置され、2以上の吸着放出電極が該対向電極及び参照電極を挟むようにして配置された付記8から9のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記11) 基板を2以上有する付記4から10のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記12) 各基板にn個の吸着放出電極が配置され、該n個の吸着放出電極を、第1吸着放出電極、第2吸着放出電極、・・・、第n−1吸着放出電極、第n吸着放出電極、としたとき、各基板における、第1吸着放出電極どうしが、第2吸着放出電極どうしが、・・・、第n−1吸着放出電極どうしが、第n吸着放出電極どうしが、互いに同一の電源に電気的に接続された付記11に記載の分子吸着放出装置。
(付記13) 各基板における、第1吸着放出電極、第2吸着放出電極、・・・、第n−1吸着放出電極、第n吸着放出電極が、それぞれ対向して配置された付記12に記載の分子吸着放出装置。
(付記14) 2以上の吸着放出電極における少なくとも1つが、その一部が露出するように絶縁膜で被覆された付記1から13のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記15) 露出する吸着放出電極の形状が略長方形であり、その幅が500μm以下である付記14に記載の分子吸着放出装置。
(付記16) 絶縁膜が、パターニングされたレジスト膜である付記14から15のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記17) レジスト膜が、g線レジスト、i線レジスト、KrFレジスト、ArFレジスト、F2レジスト及び電子線レジストから選択される少なくとも1種で形成された付記16に記載の分子吸着放出装置。
(付記18) 2以上の吸着放出電極における、隣接する吸着放出電極の露出部どうしの間隔が100nm以上である付記1から17のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記19) 基板が絶縁基板である付記1から18のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記20) 吸着放出電極と基板との間に、該吸着放出電極と該基板とを密着させる密着層を有してなる付記1から19のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記21) 分子が電気的相互作用可能な領域を少なくとも一部に有する付記1から20のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記22) 分子が線状分子である付記1から21のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記23) 分子が生体分子である付記1から22のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記24) 分子が帯電分子である付記1から23のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記25) 分子が、標的を捕捉可能な標的捕捉部を有する付記1から24のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記26) 標的捕捉部が、抗体、抗原、酵素及び補酵素から選択される付記25に記載の分子吸着放出装置。
(付記27) 分子が、吸着放出電極と電気的に相互作用していない時に光の照射を受けると発光可能な発光部を有する付記1から26のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記28) 発光部が蛍光色素である付記27に記載の分子吸着放出装置。
(付記29) 吸着放出電極が、分子を含有する導電性液体中に浸漬されて用いられる付記1から28のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
(付記30) 2以上の吸着放出電極に対し、異なるタイミングで任意に電位を変化させることにより、異なるタイミングで分子の吸着及び放出のいずれかを行うことを含むことを特徴とする分子吸着放出方法。
(付記31) 吸着及び放出のいずれかされる分子が互いに異なる付記30に記載の分子吸着放出方法。
(付記32) 分子の吸着及び放出が可逆的に行われる付記30から31のいずれかに記載の分子吸着放出方法。
(付記33) 分子が吸着及び放出のいずれかされる前に吸着放出電極の表面に潤滑剤を塗付する付記30から32のいずれかに記載の分子吸着放出方法。
(付記34) 吸着放出電極を、分子を含有する導電性液体中に浸漬して用いる付記30から33のいずれかに記載の分子吸着放出方法。
【0091】
【発明の効果】
本発明によると、前記要望に応え、従来における問題を解決することができ、1種又は2種以上のDNA等の有用物質乃至分子を異なる任意のタイミングで効率的にかつ確実に吸着及び/又は放出することが可能で、微小化、チップ化、集積化等が可能であり、遺伝子治療、診断・分析等に好適で安全な分子吸着放出装置、及び、1種又は2種以上のDNA等の有用物質乃至分子を異なる任意のタイミングで効率的にかつ確実に吸着又は放出させることが可能であり、診断・分析等に好適で安全な分子吸着放出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、吸着放出電極が基板上に固定配置された状態の一例を示す概略説明図である。
【図2】図2は、2以上の吸着放出電極、対向電極及び参照電極が基板上に固定配置された状態の一例を示す概略説明図である。
【図3】図3は、図2に示す、基板を組合せた集積型分子吸着放出装置の一例を示す概略説明図である。
【図4】図4は、吸着放出電極からDNA分子が吸着される原理を説明するための概略説明図である。
【図5】図5は、図4において参照電極を配置した場合を示す概略説明図である。
【図6】図6は、吸着放出電極からDNA分子が放出される原理を説明するための概略説明図である。
【図7】図7は、吸着放出電極に分子が吸着した状態の一例を示す概略説明図である。
【図8】図8は、吸着放出電極から分子が放出される状態の一例を示す概略説明図である。
【図9】図9は、発光部を有する分子の一例を示す概略説明図である。
【図10】図10は、図9において、発光部が発光している状態の一例を示す概略説明図である。
【図11】図11は、発光部を有する分子を用いて標的の存在を検出している状態を説明するための概念図(その1)である。
【図12】図12は、発光部を有する分子を用いて標的の存在を検出している状態を説明するための概念図(その2)である。
【図13】図13は、サイクリックボルタンメトリーにより吸着放出電極(金電極)の特性を評価した実験データのグラフである。
【図14】図14は、発光部を有する分子を用い、該分子が吸着放出電極から負オ種津されたことを示す実験データのグラフである。
【符号の説明】
1 基板
10 吸着放出電極
12 対向電極
14 参照電極
20 絶縁膜
100 DNA分子
110 発光部
110a 発光した発光部
200 紫外線ランプ
200a 紫外線
300 受光センサー
300a 反射光
Claims (10)
- 独立に制御可能であり、分子の吸着及び放出のいずれかを行う2以上の吸着放出電極を有してなることを特徴とする分子吸着放出装置。
- 2以上の吸着放出電極が、分子の吸着及び放出を可逆的に行う請求項1に記載の分子吸着放出装置。
- 2以上の吸着放出電極により吸着及び放出のいずれかされる分子が、互いに異なる請求項1から2のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
- 2以上の吸着放出電極と共に電気回路を形成する対向電極を少なくとも1つ有する請求項1から3のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
- 参照電極を少なくとも1つ有する請求項4に記載の分子吸着放出装置。
- 2以上の吸着放出電極、対向電極及び参照電極が同一の基板上に配置された請求項5に記載の分子吸着放出装置。
- 基板を2以上有する請求項6に記載の分子吸着放出装置。
- 各基板にn個の吸着放出電極が配置され、該n個の吸着放出電極を、第1吸着放出電極、第2吸着放出電極、・・・、第n−1吸着放出電極、第n吸着放出電極、としたとき、各基板における、第1吸着放出電極どうしが、第2吸着放出電極どうしが、・・・、第n−1吸着放出電極どうしが、第n吸着放出電極どうしが、互いに同一の電源に電気的に接続された請求項7に記載の分子吸着放出装置。
- 2以上の吸着放出電極における少なくとも1つが、その一部が露出するように絶縁膜で被覆された請求項1から8のいずれかに記載の分子吸着放出装置。
- 2以上の吸着放出電極に対し、異なるタイミングで任意に電位を変化させることにより、異なるタイミングで分子の吸着及び放出のいずれかを行うことを含むことを特徴とする分子吸着放出方法。
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