JP2004294334A - フリーフロー電気泳動素子、及びフリーフロー電気泳動法 - Google Patents
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Abstract
【解決課題】両性担体を用いず、安定なpH勾配を実現することが可能なフリーフロー電気泳動素子とそれを用いたフリーフロー等電点電気泳動法を提供することにある。
【解決手段】2枚の平板を組み合わせて構成された電気泳動槽に緩衝液と試料溶液とを連続的に注入しながら試料の分離と分取を行うフリーフロー電気泳動素子において、電気泳動槽を構成する2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面を、酸基と塩基とが結合した両性高分子により構成する。
【選択図】 図4
【解決手段】2枚の平板を組み合わせて構成された電気泳動槽に緩衝液と試料溶液とを連続的に注入しながら試料の分離と分取を行うフリーフロー電気泳動素子において、電気泳動槽を構成する2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面を、酸基と塩基とが結合した両性高分子により構成する。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気泳動槽に緩衝液と試料溶液とを連続的に流しながら試料溶液中に含まれる溶質の分離と分取を行うフリーフロー電気泳動素子とそれを用いたフリーフロー電気泳動法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
フリーフロー電気泳動とは、2枚の板に挟まれて構成された液体流路としての電気泳動槽に試料と緩衝液を連続的に注入しながら電気泳動により分離及び分取を行う電気泳動法である。分離操作は予め緩衝液注入口から一定流速で支持液を流して複数の流出口への液の流れを作り、試料注入口から試料を注入する。泳動槽内部は狭い空間特有の物理的現象によって強い層流が実現されているため、異なる液体を連続的に流すと液体が拡散しにくく、ほぼ直線的に流出口に向かって流れ出る。泳動槽の両端に形成した1対の電極間に電圧を印加すると、試料に含まれる物質は電気泳動の原理によって正負いずれかの電極側に泳動しながら流出口に流出する。物質によって泳動の方向及び速度が異なるため、試料に含まれる物質は分離しながら流出口に流出する。従って、複数の流出口の中から特定の分取口より液を取り出すことにより試料の分取が行える。
【0003】
フリーフロー電気泳動法の一手法に、フリーフロー等電点電気泳動があるが(例えば、非特許文献1参照)、フリーフロー等電点電気泳動法は両性担体の混合液を含んだ緩衝液を用い、電圧印加により電極間の溶液にpH勾配を作って、等電点を有する試料を等電点分離する方法であり、主にタンパク質の分離に用いられる。非特許文献1は、電気泳動槽に両性担体の混合液を含んだ緩衝液と陽極側部液と陰極側部液と陽極電極液と陰極電極液と試料溶液とを連続的に注入しながら試料の等電点分離と分取を行うフリーフロー等電点電気泳動法が報告している。
【0004】
【非特許文献1】
Electrophoresis 1996,17,1906−1910(例えば、図3B,1908〜1909頁“3.3Experimental details”参照)
【0005】
より詳しく述べると、非特許文献1では、電気泳動槽としては長さ500mm、幅100mm、深さ0.4mmのフリーフロー電気泳動装置を用い、電気泳動槽の中央部に0.5%の両性担体の混合液と0.2%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含んだ緩衝液を、電気泳動槽の陽極側の側部に0.2%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含んだ0.1m mol/lリン酸水溶液を、電気泳動槽の陰極側の側部に0.2%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含んだ0.1m mol/l水酸化ナトリウム水溶液を、陽極電極液として0.1m mol/lリン酸水溶液を、陰極電極液として0.1m mol/l水酸化ナトリウム水溶液を用いて、フリーフロー等電点電気泳動を行う手法が報告されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
非特許文献1に報告されている手法は、両性担体の混合液を含んだ緩衝液を用い、電場による両性担体の泳動によって電極間にpH勾配を形成する方法である。両性担体には複数種のものが市販されているが、等電点電気泳動を行うに当たり、狭い範囲のpH勾配が作りにくい、再現性が良くない等の問題点を有する。特にフリーフロー等電点電気泳動では分離後に分取して2次分析を行うに当たり、両性担体がペプチドと似た性質を持っており分離精度に影響を与える可能性もあり、市販のものの成分が公開されておらず未知の部分が多い等の問題を有する。
また、両性担体はペプチドと似た性質を持っているため、試料として蛋白質を断片化してペプチドにしたものを用いた場合、両性担体がペプチドと似た振る舞いをする。したがって、分取液を用いた2次分析を行うに当たり、分取液には分離した試料と一緒に両性担体が含まれるため、分析結果が試料のデーターか両性担体のデータかを判別するのが難しい。また、両性担体は市販のものの成分が公開されておらず未知の部分が多い等の問題を有する。
【0007】
等電点電気泳動においては、両性担体の問題点を解決する一手段として固定化pH勾配等電点電気泳動法が広く利用されている。この方法は支持体となるゲルを作成する際に同時にpH勾配をゲルに固定する方法である。このため、分離中にpH勾配の変化が起こらず、再現性に優れた等電点電気泳動が可能となる特徴があり、二次元電気泳動の一次元目の等電点電気泳動には主にこの手法が用いられている。しかしながら、固定化pH勾配等電点電気泳動法はゲルを支持体としたゲル電気泳動法であり、無担体で分離と分取を連続的に行うフリーフロー電気泳動法には応用できない。
【0008】
したがって本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、両性担体を用いず、安定なpH勾配を実現することが可能なフリーフロー電気泳動素子とそれを用いたフリーフロー等電点電気泳動法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のフリーフロー電気泳動素子は、2枚の平板を組み合わせて構成された電気泳動槽に緩衝液と試料溶液とを連続的に注入しながら試料の分離と分取を行うフリーフロー電気泳動素子であって、電気泳動槽を構成する2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面が、酸基と塩基とが結合した両性高分子により構成されていることを特徴とする。
【0010】
両性高分子とは、酸基と塩基が結合し酸性およびアルカリ性の両方の性質を有する高分子をいう。電気泳動槽を構成する2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面が、酸基と塩基とが結合した両性高分子により構成されているので、電気泳動槽内のpHの制御が可能となる。均一な両性高分子によって2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面を構成する場合には、電気泳動層内が均一なpH値に制御される。また、両性高分子に結合してい酸基の量を多くすると電気泳動槽内を酸性とし、塩基の量を多くするとアルカリ性となる。このようにすることによって、両性高分子に結合する酸基とアルカリ性の量によって決定されるpH値に電気泳動槽を保持することが可能となる。
【0011】
通常、泳動槽内のpH制御は、用いる緩衝液のpH、もしくは緩衝液に含まれる複数種の両性担体によって制御されるが、本構成では電気泳動槽壁面を構成する両性高分子によってpHを制御するため、安定したpH制御を行うことができ、安定した分離が実現可能なフリーフロー電気泳動素子を提供することができる。
【0012】
また、本発明は、上記フリーフロー電気泳動素子あるいは下記の好ましい実施の態様のフリーフロー電気泳動素子を用い、等電点電気泳動を行うフリーフロー等電点電気泳動法に関する。本方法により、両性担体を用いず、安定なpH勾配を実現することが可能なフリーフロー電気泳動素子法を提供することができる。
【0013】
【発明の実施の態様】
以下に本発明を詳細に説明する。
上述のとおり、両性高分子とは、酸基と塩基が結合し酸性およびアルカリ性の両方の性質を有する高分子をいう。酸基としてはカルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等が挙げられ、また塩基としては第1,第2,第3アミノ基等が挙げられる。また、高分子としては、ポリアクリルアミド等の親水性高分子が挙げられる。
【0014】
両性高分子は、電気泳動槽を構成する2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面を構成すればよいが、電気泳動槽のpH雰囲気を制御する観点からは、両性高分子によって電気泳動槽を構成する2枚の平板の電気泳動槽側の対向面を形成することが好ましい。
【0015】
平板の電気泳動槽側の面を構成する両性高分子は、当該平板の面に板状、膜状等の形状で固定あるいは貼り付けることができるが、これらの形状に限定されない。例えば、電気泳動槽側の面を構成するようにするのであれば、点状、ストライブ状等の不連続形状に形成することも可能である。ただし、両性高分子を収容する凹部を平板の当該面に設ける必要がある。また、当該技術分野においては、酸基および塩基の任意の比率の両性高分子を製造することが可能である。例えば、ポリアクリルアミドの場合、アクリル酸とアクリル酸アミドを所望の比率で共重合させることによって酸基および塩基の所望の比率のポリアクリル酸アミドが得られる。
酸と塩基の比率を連続的に変えて連続的なpH勾配を高分子に固定する方法としては、例えば、市販の固定化pH勾配ゲル作成用アクリルアミド誘導体を用い、既知の方法で作成することができる。市販の固定化pH勾配ゲル作成用アクリルアミド誘導体としては、例えば、アマシャムバイオサイエンス社製のImmobilineが挙げられる。また、市販されているシート状またはストリップ状の固定化pH勾配プレキャストゲルを用い、電気泳動槽側の面に固定あるいは貼り付けることで構成することもできる。シート状またはストリップ状の固定化pH勾配プレキャストゲルは、アマシャムバイオサイエンス社、バイオラッド社、インビトロジェン社等から複数のものが市販されている。
【0016】
以下に、本発明の好ましい態様について記載する。それらの任意の組み合わせも、特に矛盾がない限り本発明の好ましい態様である。
(1) 前記両性高分子が膜形状とされ、2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面を構成している。膜形状とすることによって、当該面を広く連続的に形成することができ、また膜状であるので両性高分子の量を減らすことができる。
(2) 前記両性高分子はカルボキシル基とアミノ基を結合した両性高分子である。カルボキシル基とアミノ基を結合した両性高分子が最も一般的であり、またたんぱく質等の生体物質との相溶性が良い。カルボキシル基とアミノ基を結合した両性高分子としては、カルボキシル基とアミノ基を結合したポリアクリルアミドが挙げられる。
【0017】
(3) 両性高分子の該酸基と塩基の割合が、電気泳動槽の両端に配置される1対の電極との間で、一方電極から他方電極に向けて、pHが増加または減少している。従って、電気泳動槽には一方電極から他方電極に向けて特定の範囲のpH勾配が形成されている。電気泳動槽内のpH勾配は、平板の電気泳動槽側の面を構成する両性ポリマーによって形成されているので、pH勾配が安定して形成でき、再現性の良いフリーフロー等速電気泳動が可能となる。また、両性高分子に結合する酸基と塩基の割合を変えることでpH勾配を自在に設計可能となる。また、pH勾配の形成に両性担体を用いていないため、2次分析を阻害する夾雑物は含まれない。したがって、本構成により、両性担体を用いず、安定なpH勾配を実現することが可能なフリーフロー電気泳動素子が提供でき、該フリーフロー電気泳動素子を用いることによって良好なフリーフロー等電点電気泳動法が実現できる。
【0018】
(4) 電気泳動槽が液の流れに沿って複数の隔壁で区切られており、隔壁で区切られた電気泳動槽の各部分を形成する2枚の平板電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面を、酸基と塩基の結合の割合が異なる両性高分子によって構成し、電気泳動槽の両端に配置される1対の電極との間で、一方電極から他方電極に向けて、pHが増加または減少させる。
【0019】
本フリーフロー電気泳動素子は、緩衝液注入口と流出口との間に複数の隔壁が構成されているため、注入口から流出口に向かう流れの拡散を抑えることが可能となる。隔壁で区切られた電気泳動槽は、その内壁に構成された両性高分子によってそれぞれ異なるpHとなっているので、隔壁で区切られた電気泳動槽毎にpHを制御でき、電極間におけるpH勾配をより安定に維持することが可能となる。したがって、本構成とすることで、より安定した分離を実現することが可能なフリーフロー電気泳動素子を提供することができる。
【0020】
なお、両性高分子は平板の電気泳動槽側の面を固定的に構成する必要はなく、隔壁で区切られた電気泳動槽毎に帯形状の膜状あるいは板状の高分子固定基板を設置することも可能である。隔壁は対向する注入口構成基板との間に空隙を空けて設けるが、該空隙は緩衝液注入口から流出口までの間、必ずしも一定間隔である必要はなく、部分的に突起を有した構造とすることもできる。この突起を注入口構成基板に接触させるよう構成することで、注入口構成基板と泳動槽構成基板21との間隔を規制することも可能である。
【0021】
(5) 電気泳動槽を構成する2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも1つの面に、酸基と塩基を結合した両性高分子を含む板が電気泳動槽側に向けて取外し可能に配置されて、前記少なくとも一方の面を構成している。
両性高分子により構成した平板面は、両性高分子の性能が劣化するため、劣化に応じて交換する必要が生ずる場合がある。本構成とすることで、両性高分子を含む板と電気泳動槽を構成する平板とが分離可能となり、劣化した両性高分子を含む板のみを交換することができる。このため、ランニングコストを下げることが可能となる。なお、「両性高分子を含む板」とは、段落0014の電気泳動槽側の面を構成する「板状、膜状等の連続形状、点状、ストライブ状等の不連続形状」を包含する意味で用いている。
【0022】
また、電気泳動槽を構成する2枚の平板は繰り返し使うことが可能であるため、コストのかかる複雑な形状を構成することも問題ではなくなる。例えば、泳動槽両端の電極近傍に電極室と隔壁を構成し、電気泳動槽と電極室との流れを独立することによって、電極で発生するガスを電気泳動槽に浸入させることなく泳動できる構成となる。また、両性高分子を含む板を設置する部分の溝深さを制御することにより、微小な間隔の電気泳動槽を構成することが可能となる。泳動槽の間隔を狭くすると、レイノルズ数が小さくなるために安定な層流が実現できることや、泳動槽の断面積が小さくなるために高電圧の印加可能となり高速な分離が実現できる等の効果が得られる。また、泳動槽の容積に対する泳動槽壁面の表面積の割合が大きくなるため、両性高分子を含む板に固定されたる酸基と塩基に依存するpHの勾配を電気泳動槽内でより安定に維持することが可能となる。したがって、本構成とすることで、ランニングコストを下げることができ、より安定した分離を実現することが可能なフリーフロー電気泳動素子を提供することができる。
【0023】
(6)電気泳動槽の間隔が150μm以下である。
電気泳動槽を150μm以下とすると、レイノルズ数が小さくなるために安定な層流が実現できることや、電気泳動槽の断面積が小さくなるために高電圧の印加可能となり高速な分離が実現できる等の効果が得られる。また、電気泳動槽の容積に対する電気泳動槽壁面の表面積の割合が大きくなるため、アクリルアミド膜に固定されたるカルボキシル基と3級のアミノ基に依存するpHの勾配を電気泳動槽内でより安定に維持することが可能となる。したがって、安定した分離を高速で実現することが可能なフリーフロー電気泳動素子を提供することができる。
【0024】
【実施例】
(第1の実施の形態)
図1及び図2は,本発明のフリーフロー電気泳動素子の第1の実施形態を示す。図1は該フリーフロー電気泳動素子1の上面図であり、図2は図1の線II−IIでの断面図を示す。
フリーフロー電気泳動素子1は、泳動槽構成基板2及び3をスペーサ9を介して組み合わせて構成される。電気泳動槽構成基板3には複数の緩衝液注入口4a〜4gと複数の試料注入口5a〜5cと複数の流出口6a〜6uとが形成されている。このフリーフロー電気泳動素子1では、泳動槽構成基板2及び3とスペーサ9とにより電気泳動槽8が構成され、電気泳動槽8の両端部には1対の電極7a,7bが配置されている。
【0025】
電気泳動槽構成基板2及び3の電気泳動槽8を構成する側の面には、カルボキシル基と第3級のアミノ基を結合したポリアクリルアミドの膜(図示せず)が形成されている。該ポリアクリルアミドの膜は、該膜に結合しているカルボキシル基と3級のアミノ基の割合が電極7aから電極7bに向けてpH勾配を形成するよう、製膜されており、その結果、電気泳動槽8には電極7aから電極7bに向けて、例えば、pH10〜pH3のpH勾配がリニアに形成されている。
【0026】
次に、フリーフロー電気泳動素子1を用いたフリーフロー電気泳動法を説明する。
フリーフロー電気泳動とは、電気泳動槽8に試料と支持液を連続的に注入しながら電気泳動による分離及び分取を行う電気泳動法であるが、電気泳動槽8にたいして、予め複数の緩衝液注入口4から一定流速で支持液を流して複数の流出口6への液の流れを作り、複数ある試料注入口5の少なくとも一つから試料を注入することによって分離操作を行なう。電気泳動槽内部は狭い空間特有の物理的現象によって強い層流が実現されているため、異なる液体を連続的に流すと液体が拡散しにくく、ほぼ直線的に流出口に向かって流れ出る。1対の電極7間に電圧を印加すると試料に含まれる物質は、電気泳動の原理によって正負いずれかの電極側に泳動しながら流出口6に流出する。物質によって泳動の方向及び速度が異なるため、試料に含まれる物質は分離しながら流出口6に流出する。従って、複数の流出口6の中から特定の分取口より液を取り出すことにより試料の分取が行える。なお、フリーフロー等速電気泳動とはタンパク質の分離を行う際に用いられる手法であり、電気泳動槽8内にpH勾配を生じさせてタンパク質の等電点の違いで分離・分取する手法である。
【0027】
(実施例1)
図1及び図2に示す本発明に係るフリーフロー電気泳動素子1を用いて、フリーフロー電気泳動法を行なった。
泳動槽の中央に流す緩衝液として1v/v%のグリセリンと10v/v%のエチルアルコールを含んだ水溶液を、陰極側に流す陰極電極液として10m mol/lの水酸化ナトリウムと10v/v%のエチルアルコールを含んだ水溶液を、陽極側に流す陽極電極液として10m mol/lのリン酸と10v/v%のエチルアルコールを含んだ水溶液を、試料溶液として10mg/mlのチトクロムCと10mg/mlのミオグロビンを含んだ水溶液を用い、フリーフロー電気泳動素子1にてフリーフロー等電点電気泳動を行った。電極7aを図示しない電圧印加電源の陰極に、電極7bを電圧印加電源の陽極に接続し、中央の緩衝液注入口4b〜fに緩衝液を、4aに陰極電極液を、4gに陽極電極液を、ポンプで流した。試料溶液は試料注入口5bからポンプで注入した。フリーフロー等電点電気泳動は、緩衝液と陰極電極液と陽極電極液と試料溶液を注入しながら電極7に電界を印加して行った。
【0028】
分取液は流出口6b〜tからの流出液を回収して得た。流出口6a及び6uからの流出液は回収せずドレインに排出した。電界の印加方法は定電流設定とし、値を0.7mAとした。泳動槽内の流速は試料溶液の線流速が3mm/sec以下になるようにポンプ調整した。アクリルアミド膜により緩衝液の流れるエリアにはpH勾配が生じ、分取液にはpH勾配が生じた。試料溶液中に含まれるチトクロムCとミオグロビンは、有色タンパク質であるため泳動槽上面を観察することで両タンパクの分離状態を確認した。両タンパクは泳動槽に入ると同時に分離し、後に収束しながら流出口に排出した。チトクロムCの等電点9.6であり、チトクロムCを含む分取液のpHは9.4、ミオグロビンの等電点7.0であり、ミオグロビンを含む分取液のpHは6.4であり、それぞれの等電点の値とほぼ一致した。試料溶液の注入口を試料注入口5aまたは試料注入口5cとした場合においても両タンパクは同じ流出口に収束し流出したことから、この泳動が等電点電気泳動であることが確認できた。
【0029】
(作用・効果)
次に、この発明の実施形態の作用及び効果を説明する。
本実施形態では、泳動槽構成基板2及び3の泳動槽8を構成する側の面には、カルボキシル基と第3級のアミノ基を結合したポリアクリルアミドの膜が配置されている。該ポリアクリルアミドの膜に結合しているカルボキシル基と3級のアミノ基の割合は、電極7aから電極7bに向けて系統的に異ならせて、その結果、電気泳動槽8には電極7aから電極7bに向けてpH3〜pH10のpH勾配が形成している。電気泳動槽8内のpH勾配は、その側面に固定されたアクリルアミド膜によって形成されているものであるため、pH勾配が安定して形成でき、再現性の良いフリーフロー等速電気泳動が可能となる。また、アクリルアミド膜に結合するカルボキシル基と第3級のアミノ基の割合を変えることでpH勾配を自在に設計可能となる。また、pH勾配の形成に両性担体を用いていないため、2次分析を阻害する夾雑物は含まれない。
したがって、本実施形態により、両性担体を用いず、安定なpH勾配を実現することが可能なフリーフロー電気泳動素子とそれを用いたフリーフロー等電点電気泳動法を提供することができる。
【0030】
なお、この発明の実施形態は、当然、各種変更が可能である。
例えば、pH勾配の範囲は3〜10に限定されず、アクリルアミド膜に結合するカルボキシル基と第3級のアミノ基の割合を変えることでpH勾配を自在に設計できる。本実施形態では、泳動槽の間隔はスペーサ9よって規制されているが、その構成は限定されず、泳動槽構成基板2及び3に溝を形成して泳動槽とすることもできる。
緩衝液や電極液の種類は限定されず通常電気泳動に用いられる緩衝液に変更できる。グリセリンの有無、エチルアルコールの有無、及びそれらの添加量は限定されない。なお、試料注入口の場所は限定されない。
【0031】
(第2の実施の形態)
図3及び図4に本発明のフリーフロー電気泳動素子の第2の実施形態を示す。図3は本フリーフロー電気泳動素子10の上面図であり、図4は図3の線IV−IVでの断面図を示す。
【0032】
フリーフロー電気泳動素子10は、泳動槽構成基板11と注入口構成基板12との組み合わせで構成される。電気泳動槽構成基板11には、アクリルアミド膜を構成した板をはめ込むための幅広溝15と細長い溝からなる2つの電極室13と、幅広溝15と電極室13とを区切る隔壁14とが構成されている。注入口構成基板12には、アクリルアミド膜を構成した板をはめ込むための幅広溝16と複数の緩衝液注入口4a〜4gと複数の試料注入口5a〜5cと複数の流出口6a〜6uとが構成されている。幅広溝15,16には、カルボキシル基と第3級のアミノ基を結合したポリアクリルアミドの膜が構成された膜構成基板17がそれぞれ取り外し可能に設置されている。電極室13a,13bには電極7a,7bがをそれぞれ設置されている。電気泳動槽8は、2枚の膜構成基板17に挟まれた空間によって構成される。幅広溝15,16は膜構成基板17を設置した状態で電気泳動槽8の間隔が30μmとなるように構成した。
【0033】
膜構成基板17に構成したポリアクリルアミドの膜に結合しているカルボキシル基と3級のアミノ基の割合を変えることによって、電極7aから電極7bに向けて電気泳動槽8には電極7aから電極7bに向けてpH10〜pH3のpH勾配が形成されるようにしてある。泳動槽構成基板11及び注入口構成基板12の素材はホウケイ酸ガラス、電極7は白金からなる。幅広溝15,16と電極室13は公知のウェットエッチング法にて加工した。隔壁14は対向する注入口構成基板12との間に微小の空隙ができるように加工した。泳動槽構成基板11及び注入口構成基板12の接合は、公知の接着技術にてよって接合した。
【0034】
(実施例2)
フリーフロー電気泳動素子10を用い、電極7aを図示しない電圧印加電源の陰極に、電極7bを電圧印加電源の陽極に接続して、実施形態1記載の実施例と同様の分離を実施したところ、試料の等電点に応じた分離が実現できた。
【0035】
(作用・効果)
次に、この発明の実施例の作用及び効果を説明する。
本実施形態は、電気泳動槽8を構成する泳動槽構成基板11と注入口構成基板12の電気泳動槽側の面に、カルボキシル基と第3級のアミノ基を結合したポリアクリルアミドの膜を構成した2枚の膜構成基板17が、ポリアクリルアミドの膜を電気泳動槽側に向けて配置されている。ポリアクリルアミドの膜を構成した2枚の膜構成基板17は、膜の性能が劣化する。したがって、膜が劣化するのに応じて交換する必要が生ずる場合がある。本構成とすることで、膜構成基板17と電気泳動槽8を構成する2枚の平板とが分離可能となり、劣化する膜構成基板17のみを交換することができる。このため、ランニングコストを下げることが可能となる。
【0036】
また、電気泳動槽8を構成する2枚の平板は繰り返し使うことが可能であるため、コストのかかる複雑な形状を構成することも問題ではなくなる。例えば、本実施例では電極室13と隔壁14を構成した。この構成によって、電気泳動槽8と電極室13との流れを独立でき、電極7で発生するガスを電気泳動槽8に浸入させることなく泳動できる構成となる。また、アクリルアミド膜を構成した板をはめ込むための幅広溝15,16の深さを制御することにより、微小な間隔の電気泳動槽8を構成することが可能となる。泳動槽の間隔を狭くすると、レイノルズ数が小さくなるために安定な層流が実現できることや、泳動槽の断面積が小さくなるために高電圧の印加可能となり高速な分離が実現できる等の効果が得られる。また、電気泳動槽の容積に対する電気泳動槽壁面の表面積の割合が大きくなるため、アクリルアミド膜に固定されたるカルボキシル基と3級のアミノ基に依存するpHの勾配を電気泳動槽8内でより安定に維持することが可能となる。したがって、本実施形態とすることで、ランニングコストを下げることができ、より安定した分離を実現することが可能なフリーフロー電気泳動素子を提供することができる。
【0037】
なお、この発明の実施形態は、第1実施形態と同様に、当然、各種変更が可能である。
電気泳動槽の間隔は30μmに限定されなず、安定層流が実現できる間隔であれば任意の間隔とすることができる。150μm以下であれば、レイノルズ数が小さくなるために安定な層流が実現できることや、電気泳動槽の断面積が小さくなるために高電圧の印加可能となり高速な分離が実現できる等の効果が得られる。なお、電気泳動槽の間隔を狭くすることによってその効果は大きくなり、電気泳動槽の容積も小さくなるために緩衝液や試料の微量化ができる。電気泳動槽の最適な間隔は10μm〜50μmの範囲である。この範囲を下回ると電気泳動槽の抵抗が高くなる、電気泳動槽への水圧の負荷が大きくなる等の問題が生じる。また、この範囲を超えると、高電圧印加時に流れる電流が大きくなり気泡発生や熱の発生等の問題も大きくなる。
【0038】
(第3の実施の形態)
以下に、図5及び図6に本発明のフリーフロー電気泳動素子の第3の実施形態を示す。図5は本フリーフロー電気泳動素子10の上面図であり、図6は図5の線VI−VIでの断面図であり、図7は電気泳動槽構成基板の上面図であり、図8は注入口構成基板の上面図である。
【0039】
フリーフロー電気泳動素子20は、泳動槽構成基板21と注入口構成基板22との組み合わせで構成され、電気泳動槽構成基板21には細長い溝からなる複数の泳動槽部23と細長い溝からなる2つの電極室13と、各電気泳動槽部23と電極室13とを区切る隔壁24とが設けられている。注入口構成基板22には、複数の緩衝液注入口4と複数の試料注入口5と複数の流出口6と1対の電極7とが設けられている。電極7は注入口構成基板22の泳動槽構成基板21と対向する面上に薄膜で構成される。複数の緩衝液注入口4と複数の流出口6は同数且つ同間隔で構成される。隔壁23は、複数の緩衝液注入口4の間に流出口6に向かって同間隔で設けられ、対向する注入口構成基板3との間に空隙を有して構成される。泳動槽構成基板21の素材はホウケイ酸ガラスからなる。泳動槽23と電極室13は公知のウェットエッチング法にて深さ50マイクロメートルに加工した。
電気泳動槽構成基板21及び注入口構成基板22の接合は、公知の接合技術を用いて接合した。
【0040】
各泳動槽23には、それぞれカルボキシル基と第3級のアミノ基を結合したポリアクリルアミドの膜が構成されている。なお、ポリアクリルアミドの膜は図示していない。該ポリアクリルアミドの膜に結合しているカルボキシル基と3級のアミノ基の割合は、各電気泳動槽23で異なり、電極7aから電極7bに向けて系統的に異なるよう製膜されている。その結果、各電気泳動槽23内はそれぞれ異なるpHとなり、電極7aから電極7bに向けてpH10〜pH3のpH勾配が形成されている。
【0041】
(作用・効果)
次に、この発明の実施の形態の作用及び効果を説明する。
本発明のフリーフロー電気泳動素子20は、緩衝液注入口4と流出口6とが同数且つ同間隔に構成され、その間に同間隔で隔壁24が構成されている。このため、各緩衝液注入口から対向する流出口に向かう流れの拡散を抑えることが可能となる。各電気泳動槽23はその内壁に構成されたアクリルアミド膜によってそれぞれ異なるpHとなっている。本構成とすることで、pHの勾配を電気泳動槽23内でより安定に維持することが可能となる。したがって、本実施形態とすることで、より安定した分離を実現することが可能なフリーフロー電気泳動素子を提供することができる。
【0042】
なお、この発明の実施の形態の各構成は、当然、各種変形、変更が可能である。アクリルアミド膜は電気泳動槽23の内壁に直接構成される必要はなく、第2実施形態のように、各泳動槽の壁面に帯状のアクリルアミド膜固定基板を設置することでも実現可能である。隔壁24は対向する注入口構成基板22との間に空隙を有して構成されているが、該空隙は緩衝液注入口から流出口までの間、必ずしも一定間隔である必要はなく、部分的に突起を有した構造とすることもできる。この突起を注入口構成基板22に接触させるよう構成することで、注入口構成基板22と泳動槽構成基板21との間隔を規制する効果を付加することも可能である。泳動槽23の深さは限定されないが、流れを強い層流に保つには150マイクロメートル以下が望ましい。
【0043】
【発明の効果】
(1)請求項1に係るフリーフロー電気泳動素子は、電気泳動槽を構成する2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面が、酸基と塩基とが結合した両性高分子により構成されているので、電気泳動槽壁面を構成する両性高分子によって電気泳動槽内のpHを制御するため、安定したpH制御を実現することができ、両性担体を用いていないため、2次分析を阻害する夾雑物は含まれない。
【0044】
(2) 請求項2に係るフリーフロー電気泳動素子においては、前記両性高分子が膜形状とされ、2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面を構成しているので、当該面を広く連続的に形成することができ、また膜状であるので両性高分子の量を減らすことができる。
(3) 請求項3に係るフリーフロー電気泳動素子においては、前記両性高分子をカルボキシル基とアミノ基を結合した両性高分子としたので、一般的によく用いられるカルボキシル基とアミノ基を結合した両性高分子を使用することができ、またたんぱく質等の生体物質との相性が良い。
【0045】
(4) 請求項4に係るフリーフロー電気泳動素子においては、カルボキシル基とアミノ基を結合した両性高分子をカルボキシル基とアミノ基を結合したポリアクリルアミドとするので、市販の固定化pH勾配ゲル作成用アクリルアミド誘導体を利用でき、安定したpH制御を実現し安定した分離が実現可能なフリーフロー電気泳動素子を安価に提供することができる。
【0046】
(4) 請求項5に係るフリーフロー電気泳動素子においては、両性高分子の該酸基と塩基の割合を、電気泳動槽の両端に配置される1対の電極との間で変更し、一方電極から他方電極に向けて、pHを増加または減少させ電気泳動槽に一方電極から他方電極に向けて特定の範囲のpH勾配が形成されているが、電気泳動槽内のpH勾配は、平板の電気泳動槽側の面を構成する両性ポリマーによって形成されているので、pH勾配が安定して形成でき、再現性の良いフリーフロー等速電気泳動が可能となる。また、両性高分子に結合する酸基と塩基の割合を変えることでpH勾配を自在に設計可能となり、またpH勾配の形成に両性担体を用いていないため、2次分析を阻害する夾雑物は含まれない。
【0047】
(6) 請求項6に係るフリーフロー電気泳動素子においては、電気泳動槽が液の流れに沿って複数の隔壁で区切られており、隔壁で区切られた電気泳動槽の部分を形成する2枚の平板電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面を、酸基と塩基の結合の割合が異なる両性高分子によって構成し、電気泳動槽の両端に配置される1対の電極との間で、一方電極から他方電極に向けて、pHが増加または減少させているので、注入口から流出口に向かう流れの拡散を抑えることが可能となり、隔壁で区切られた電気泳動槽は、その内壁に構成された両性高分子によってそれぞれ異なるpHとなり、隔壁で区切られた電気泳動槽毎にpHを制御でき、電極間におけるpH勾配をより安定に維持することが可能となる。
【0048】
(7) 電気泳動槽を構成する2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも1つの面に、酸基と塩基を結合した両性高分子を含む板が電気泳動槽側に向けて取外し可能に配置されて、前記少なくとも一方の面を構成しているので、両性高分子を含む板板と電気泳動槽を構成する平板とが分離可能となり、劣化した両性高分子を含む板のみを交換することができ、ランニングコストを下げることが可能となる。また、電気泳動槽を構成する2枚の平板は繰り返し使うことが可能であるため、コストのかかる複雑な形状を構成することもできる。
【0049】
(8) 請求項8に係るフリーフロー電気泳動素子においては、電気泳動槽の間隔が150μm以下としたので、レイノルズ数が小さくなるために安定な層流が実現できることや、電気泳動槽の断面積が小さくなるために高電圧の印加可能となり高速な分離が実現できる。また、また、電気泳動槽の容積に対する電気泳動槽壁面の表面積の割合が大きくなるため、アクリルアミド膜に固定されたるカルボキシル基と3級のアミノ基に依存するpHの勾配を電気泳動槽内でより安定に維持することが可能となる。
【0050】
(9) 請求項9に係るフリーフロー等電点電気泳動方法においては、 上記フリーフロー電気泳動素子を用い、等電点電気泳動を行うフリーフロー等電点電気泳動法を行なうもので、本方法により、両性担体を用いず、安定なpH勾配を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフリーフロー電気泳動素子の第1の実施形態の上面図である。
【図2】図1の線II−IIでの断面図を示す。
【図3】本発明のフリーフロー電気泳動素子の第2の実施形態の上面図である。
【図4】図3の線IV−IVでの断面図を示す。
【図5】本発明のフリーフロー電気泳動素子の第3の実施形態の上面図である。
【図6】図5の線VI−VIでの断面図を示す。
【図7】本発明のフリーフロー電気泳動素子の第3の実施形態の泳動槽構成基板21の上面図である。
【図8】注入口構成基板の上面図である。
【符号の説明】
1、10,20・・・フリーフロー電気泳動素子、2,3・・・電気泳動槽構成基板、4、4a〜4g・・・緩衝液注入口、5、5a〜5c・・・資料注入口、6、6a〜6u・・・流出口、7、7a,7b・・・電極、8・・・電気泳動室、9・・・スペーサ、10・・・フリーフロー電気泳動素子、11・・・電気泳動槽構成基板、12・・・注入口構成基板、13・・・電極室、14・・・隔壁、15、16・・・幅広溝、17・・・膜構成基板、20・・・フリーフロー電気泳動素子、21・・・電気泳動槽構成基板、22・・・注入口構成基板、23・・・電気泳動槽、24・・・隔壁
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気泳動槽に緩衝液と試料溶液とを連続的に流しながら試料溶液中に含まれる溶質の分離と分取を行うフリーフロー電気泳動素子とそれを用いたフリーフロー電気泳動法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
フリーフロー電気泳動とは、2枚の板に挟まれて構成された液体流路としての電気泳動槽に試料と緩衝液を連続的に注入しながら電気泳動により分離及び分取を行う電気泳動法である。分離操作は予め緩衝液注入口から一定流速で支持液を流して複数の流出口への液の流れを作り、試料注入口から試料を注入する。泳動槽内部は狭い空間特有の物理的現象によって強い層流が実現されているため、異なる液体を連続的に流すと液体が拡散しにくく、ほぼ直線的に流出口に向かって流れ出る。泳動槽の両端に形成した1対の電極間に電圧を印加すると、試料に含まれる物質は電気泳動の原理によって正負いずれかの電極側に泳動しながら流出口に流出する。物質によって泳動の方向及び速度が異なるため、試料に含まれる物質は分離しながら流出口に流出する。従って、複数の流出口の中から特定の分取口より液を取り出すことにより試料の分取が行える。
【0003】
フリーフロー電気泳動法の一手法に、フリーフロー等電点電気泳動があるが(例えば、非特許文献1参照)、フリーフロー等電点電気泳動法は両性担体の混合液を含んだ緩衝液を用い、電圧印加により電極間の溶液にpH勾配を作って、等電点を有する試料を等電点分離する方法であり、主にタンパク質の分離に用いられる。非特許文献1は、電気泳動槽に両性担体の混合液を含んだ緩衝液と陽極側部液と陰極側部液と陽極電極液と陰極電極液と試料溶液とを連続的に注入しながら試料の等電点分離と分取を行うフリーフロー等電点電気泳動法が報告している。
【0004】
【非特許文献1】
Electrophoresis 1996,17,1906−1910(例えば、図3B,1908〜1909頁“3.3Experimental details”参照)
【0005】
より詳しく述べると、非特許文献1では、電気泳動槽としては長さ500mm、幅100mm、深さ0.4mmのフリーフロー電気泳動装置を用い、電気泳動槽の中央部に0.5%の両性担体の混合液と0.2%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含んだ緩衝液を、電気泳動槽の陽極側の側部に0.2%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含んだ0.1m mol/lリン酸水溶液を、電気泳動槽の陰極側の側部に0.2%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含んだ0.1m mol/l水酸化ナトリウム水溶液を、陽極電極液として0.1m mol/lリン酸水溶液を、陰極電極液として0.1m mol/l水酸化ナトリウム水溶液を用いて、フリーフロー等電点電気泳動を行う手法が報告されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
非特許文献1に報告されている手法は、両性担体の混合液を含んだ緩衝液を用い、電場による両性担体の泳動によって電極間にpH勾配を形成する方法である。両性担体には複数種のものが市販されているが、等電点電気泳動を行うに当たり、狭い範囲のpH勾配が作りにくい、再現性が良くない等の問題点を有する。特にフリーフロー等電点電気泳動では分離後に分取して2次分析を行うに当たり、両性担体がペプチドと似た性質を持っており分離精度に影響を与える可能性もあり、市販のものの成分が公開されておらず未知の部分が多い等の問題を有する。
また、両性担体はペプチドと似た性質を持っているため、試料として蛋白質を断片化してペプチドにしたものを用いた場合、両性担体がペプチドと似た振る舞いをする。したがって、分取液を用いた2次分析を行うに当たり、分取液には分離した試料と一緒に両性担体が含まれるため、分析結果が試料のデーターか両性担体のデータかを判別するのが難しい。また、両性担体は市販のものの成分が公開されておらず未知の部分が多い等の問題を有する。
【0007】
等電点電気泳動においては、両性担体の問題点を解決する一手段として固定化pH勾配等電点電気泳動法が広く利用されている。この方法は支持体となるゲルを作成する際に同時にpH勾配をゲルに固定する方法である。このため、分離中にpH勾配の変化が起こらず、再現性に優れた等電点電気泳動が可能となる特徴があり、二次元電気泳動の一次元目の等電点電気泳動には主にこの手法が用いられている。しかしながら、固定化pH勾配等電点電気泳動法はゲルを支持体としたゲル電気泳動法であり、無担体で分離と分取を連続的に行うフリーフロー電気泳動法には応用できない。
【0008】
したがって本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、両性担体を用いず、安定なpH勾配を実現することが可能なフリーフロー電気泳動素子とそれを用いたフリーフロー等電点電気泳動法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のフリーフロー電気泳動素子は、2枚の平板を組み合わせて構成された電気泳動槽に緩衝液と試料溶液とを連続的に注入しながら試料の分離と分取を行うフリーフロー電気泳動素子であって、電気泳動槽を構成する2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面が、酸基と塩基とが結合した両性高分子により構成されていることを特徴とする。
【0010】
両性高分子とは、酸基と塩基が結合し酸性およびアルカリ性の両方の性質を有する高分子をいう。電気泳動槽を構成する2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面が、酸基と塩基とが結合した両性高分子により構成されているので、電気泳動槽内のpHの制御が可能となる。均一な両性高分子によって2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面を構成する場合には、電気泳動層内が均一なpH値に制御される。また、両性高分子に結合してい酸基の量を多くすると電気泳動槽内を酸性とし、塩基の量を多くするとアルカリ性となる。このようにすることによって、両性高分子に結合する酸基とアルカリ性の量によって決定されるpH値に電気泳動槽を保持することが可能となる。
【0011】
通常、泳動槽内のpH制御は、用いる緩衝液のpH、もしくは緩衝液に含まれる複数種の両性担体によって制御されるが、本構成では電気泳動槽壁面を構成する両性高分子によってpHを制御するため、安定したpH制御を行うことができ、安定した分離が実現可能なフリーフロー電気泳動素子を提供することができる。
【0012】
また、本発明は、上記フリーフロー電気泳動素子あるいは下記の好ましい実施の態様のフリーフロー電気泳動素子を用い、等電点電気泳動を行うフリーフロー等電点電気泳動法に関する。本方法により、両性担体を用いず、安定なpH勾配を実現することが可能なフリーフロー電気泳動素子法を提供することができる。
【0013】
【発明の実施の態様】
以下に本発明を詳細に説明する。
上述のとおり、両性高分子とは、酸基と塩基が結合し酸性およびアルカリ性の両方の性質を有する高分子をいう。酸基としてはカルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等が挙げられ、また塩基としては第1,第2,第3アミノ基等が挙げられる。また、高分子としては、ポリアクリルアミド等の親水性高分子が挙げられる。
【0014】
両性高分子は、電気泳動槽を構成する2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面を構成すればよいが、電気泳動槽のpH雰囲気を制御する観点からは、両性高分子によって電気泳動槽を構成する2枚の平板の電気泳動槽側の対向面を形成することが好ましい。
【0015】
平板の電気泳動槽側の面を構成する両性高分子は、当該平板の面に板状、膜状等の形状で固定あるいは貼り付けることができるが、これらの形状に限定されない。例えば、電気泳動槽側の面を構成するようにするのであれば、点状、ストライブ状等の不連続形状に形成することも可能である。ただし、両性高分子を収容する凹部を平板の当該面に設ける必要がある。また、当該技術分野においては、酸基および塩基の任意の比率の両性高分子を製造することが可能である。例えば、ポリアクリルアミドの場合、アクリル酸とアクリル酸アミドを所望の比率で共重合させることによって酸基および塩基の所望の比率のポリアクリル酸アミドが得られる。
酸と塩基の比率を連続的に変えて連続的なpH勾配を高分子に固定する方法としては、例えば、市販の固定化pH勾配ゲル作成用アクリルアミド誘導体を用い、既知の方法で作成することができる。市販の固定化pH勾配ゲル作成用アクリルアミド誘導体としては、例えば、アマシャムバイオサイエンス社製のImmobilineが挙げられる。また、市販されているシート状またはストリップ状の固定化pH勾配プレキャストゲルを用い、電気泳動槽側の面に固定あるいは貼り付けることで構成することもできる。シート状またはストリップ状の固定化pH勾配プレキャストゲルは、アマシャムバイオサイエンス社、バイオラッド社、インビトロジェン社等から複数のものが市販されている。
【0016】
以下に、本発明の好ましい態様について記載する。それらの任意の組み合わせも、特に矛盾がない限り本発明の好ましい態様である。
(1) 前記両性高分子が膜形状とされ、2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面を構成している。膜形状とすることによって、当該面を広く連続的に形成することができ、また膜状であるので両性高分子の量を減らすことができる。
(2) 前記両性高分子はカルボキシル基とアミノ基を結合した両性高分子である。カルボキシル基とアミノ基を結合した両性高分子が最も一般的であり、またたんぱく質等の生体物質との相溶性が良い。カルボキシル基とアミノ基を結合した両性高分子としては、カルボキシル基とアミノ基を結合したポリアクリルアミドが挙げられる。
【0017】
(3) 両性高分子の該酸基と塩基の割合が、電気泳動槽の両端に配置される1対の電極との間で、一方電極から他方電極に向けて、pHが増加または減少している。従って、電気泳動槽には一方電極から他方電極に向けて特定の範囲のpH勾配が形成されている。電気泳動槽内のpH勾配は、平板の電気泳動槽側の面を構成する両性ポリマーによって形成されているので、pH勾配が安定して形成でき、再現性の良いフリーフロー等速電気泳動が可能となる。また、両性高分子に結合する酸基と塩基の割合を変えることでpH勾配を自在に設計可能となる。また、pH勾配の形成に両性担体を用いていないため、2次分析を阻害する夾雑物は含まれない。したがって、本構成により、両性担体を用いず、安定なpH勾配を実現することが可能なフリーフロー電気泳動素子が提供でき、該フリーフロー電気泳動素子を用いることによって良好なフリーフロー等電点電気泳動法が実現できる。
【0018】
(4) 電気泳動槽が液の流れに沿って複数の隔壁で区切られており、隔壁で区切られた電気泳動槽の各部分を形成する2枚の平板電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面を、酸基と塩基の結合の割合が異なる両性高分子によって構成し、電気泳動槽の両端に配置される1対の電極との間で、一方電極から他方電極に向けて、pHが増加または減少させる。
【0019】
本フリーフロー電気泳動素子は、緩衝液注入口と流出口との間に複数の隔壁が構成されているため、注入口から流出口に向かう流れの拡散を抑えることが可能となる。隔壁で区切られた電気泳動槽は、その内壁に構成された両性高分子によってそれぞれ異なるpHとなっているので、隔壁で区切られた電気泳動槽毎にpHを制御でき、電極間におけるpH勾配をより安定に維持することが可能となる。したがって、本構成とすることで、より安定した分離を実現することが可能なフリーフロー電気泳動素子を提供することができる。
【0020】
なお、両性高分子は平板の電気泳動槽側の面を固定的に構成する必要はなく、隔壁で区切られた電気泳動槽毎に帯形状の膜状あるいは板状の高分子固定基板を設置することも可能である。隔壁は対向する注入口構成基板との間に空隙を空けて設けるが、該空隙は緩衝液注入口から流出口までの間、必ずしも一定間隔である必要はなく、部分的に突起を有した構造とすることもできる。この突起を注入口構成基板に接触させるよう構成することで、注入口構成基板と泳動槽構成基板21との間隔を規制することも可能である。
【0021】
(5) 電気泳動槽を構成する2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも1つの面に、酸基と塩基を結合した両性高分子を含む板が電気泳動槽側に向けて取外し可能に配置されて、前記少なくとも一方の面を構成している。
両性高分子により構成した平板面は、両性高分子の性能が劣化するため、劣化に応じて交換する必要が生ずる場合がある。本構成とすることで、両性高分子を含む板と電気泳動槽を構成する平板とが分離可能となり、劣化した両性高分子を含む板のみを交換することができる。このため、ランニングコストを下げることが可能となる。なお、「両性高分子を含む板」とは、段落0014の電気泳動槽側の面を構成する「板状、膜状等の連続形状、点状、ストライブ状等の不連続形状」を包含する意味で用いている。
【0022】
また、電気泳動槽を構成する2枚の平板は繰り返し使うことが可能であるため、コストのかかる複雑な形状を構成することも問題ではなくなる。例えば、泳動槽両端の電極近傍に電極室と隔壁を構成し、電気泳動槽と電極室との流れを独立することによって、電極で発生するガスを電気泳動槽に浸入させることなく泳動できる構成となる。また、両性高分子を含む板を設置する部分の溝深さを制御することにより、微小な間隔の電気泳動槽を構成することが可能となる。泳動槽の間隔を狭くすると、レイノルズ数が小さくなるために安定な層流が実現できることや、泳動槽の断面積が小さくなるために高電圧の印加可能となり高速な分離が実現できる等の効果が得られる。また、泳動槽の容積に対する泳動槽壁面の表面積の割合が大きくなるため、両性高分子を含む板に固定されたる酸基と塩基に依存するpHの勾配を電気泳動槽内でより安定に維持することが可能となる。したがって、本構成とすることで、ランニングコストを下げることができ、より安定した分離を実現することが可能なフリーフロー電気泳動素子を提供することができる。
【0023】
(6)電気泳動槽の間隔が150μm以下である。
電気泳動槽を150μm以下とすると、レイノルズ数が小さくなるために安定な層流が実現できることや、電気泳動槽の断面積が小さくなるために高電圧の印加可能となり高速な分離が実現できる等の効果が得られる。また、電気泳動槽の容積に対する電気泳動槽壁面の表面積の割合が大きくなるため、アクリルアミド膜に固定されたるカルボキシル基と3級のアミノ基に依存するpHの勾配を電気泳動槽内でより安定に維持することが可能となる。したがって、安定した分離を高速で実現することが可能なフリーフロー電気泳動素子を提供することができる。
【0024】
【実施例】
(第1の実施の形態)
図1及び図2は,本発明のフリーフロー電気泳動素子の第1の実施形態を示す。図1は該フリーフロー電気泳動素子1の上面図であり、図2は図1の線II−IIでの断面図を示す。
フリーフロー電気泳動素子1は、泳動槽構成基板2及び3をスペーサ9を介して組み合わせて構成される。電気泳動槽構成基板3には複数の緩衝液注入口4a〜4gと複数の試料注入口5a〜5cと複数の流出口6a〜6uとが形成されている。このフリーフロー電気泳動素子1では、泳動槽構成基板2及び3とスペーサ9とにより電気泳動槽8が構成され、電気泳動槽8の両端部には1対の電極7a,7bが配置されている。
【0025】
電気泳動槽構成基板2及び3の電気泳動槽8を構成する側の面には、カルボキシル基と第3級のアミノ基を結合したポリアクリルアミドの膜(図示せず)が形成されている。該ポリアクリルアミドの膜は、該膜に結合しているカルボキシル基と3級のアミノ基の割合が電極7aから電極7bに向けてpH勾配を形成するよう、製膜されており、その結果、電気泳動槽8には電極7aから電極7bに向けて、例えば、pH10〜pH3のpH勾配がリニアに形成されている。
【0026】
次に、フリーフロー電気泳動素子1を用いたフリーフロー電気泳動法を説明する。
フリーフロー電気泳動とは、電気泳動槽8に試料と支持液を連続的に注入しながら電気泳動による分離及び分取を行う電気泳動法であるが、電気泳動槽8にたいして、予め複数の緩衝液注入口4から一定流速で支持液を流して複数の流出口6への液の流れを作り、複数ある試料注入口5の少なくとも一つから試料を注入することによって分離操作を行なう。電気泳動槽内部は狭い空間特有の物理的現象によって強い層流が実現されているため、異なる液体を連続的に流すと液体が拡散しにくく、ほぼ直線的に流出口に向かって流れ出る。1対の電極7間に電圧を印加すると試料に含まれる物質は、電気泳動の原理によって正負いずれかの電極側に泳動しながら流出口6に流出する。物質によって泳動の方向及び速度が異なるため、試料に含まれる物質は分離しながら流出口6に流出する。従って、複数の流出口6の中から特定の分取口より液を取り出すことにより試料の分取が行える。なお、フリーフロー等速電気泳動とはタンパク質の分離を行う際に用いられる手法であり、電気泳動槽8内にpH勾配を生じさせてタンパク質の等電点の違いで分離・分取する手法である。
【0027】
(実施例1)
図1及び図2に示す本発明に係るフリーフロー電気泳動素子1を用いて、フリーフロー電気泳動法を行なった。
泳動槽の中央に流す緩衝液として1v/v%のグリセリンと10v/v%のエチルアルコールを含んだ水溶液を、陰極側に流す陰極電極液として10m mol/lの水酸化ナトリウムと10v/v%のエチルアルコールを含んだ水溶液を、陽極側に流す陽極電極液として10m mol/lのリン酸と10v/v%のエチルアルコールを含んだ水溶液を、試料溶液として10mg/mlのチトクロムCと10mg/mlのミオグロビンを含んだ水溶液を用い、フリーフロー電気泳動素子1にてフリーフロー等電点電気泳動を行った。電極7aを図示しない電圧印加電源の陰極に、電極7bを電圧印加電源の陽極に接続し、中央の緩衝液注入口4b〜fに緩衝液を、4aに陰極電極液を、4gに陽極電極液を、ポンプで流した。試料溶液は試料注入口5bからポンプで注入した。フリーフロー等電点電気泳動は、緩衝液と陰極電極液と陽極電極液と試料溶液を注入しながら電極7に電界を印加して行った。
【0028】
分取液は流出口6b〜tからの流出液を回収して得た。流出口6a及び6uからの流出液は回収せずドレインに排出した。電界の印加方法は定電流設定とし、値を0.7mAとした。泳動槽内の流速は試料溶液の線流速が3mm/sec以下になるようにポンプ調整した。アクリルアミド膜により緩衝液の流れるエリアにはpH勾配が生じ、分取液にはpH勾配が生じた。試料溶液中に含まれるチトクロムCとミオグロビンは、有色タンパク質であるため泳動槽上面を観察することで両タンパクの分離状態を確認した。両タンパクは泳動槽に入ると同時に分離し、後に収束しながら流出口に排出した。チトクロムCの等電点9.6であり、チトクロムCを含む分取液のpHは9.4、ミオグロビンの等電点7.0であり、ミオグロビンを含む分取液のpHは6.4であり、それぞれの等電点の値とほぼ一致した。試料溶液の注入口を試料注入口5aまたは試料注入口5cとした場合においても両タンパクは同じ流出口に収束し流出したことから、この泳動が等電点電気泳動であることが確認できた。
【0029】
(作用・効果)
次に、この発明の実施形態の作用及び効果を説明する。
本実施形態では、泳動槽構成基板2及び3の泳動槽8を構成する側の面には、カルボキシル基と第3級のアミノ基を結合したポリアクリルアミドの膜が配置されている。該ポリアクリルアミドの膜に結合しているカルボキシル基と3級のアミノ基の割合は、電極7aから電極7bに向けて系統的に異ならせて、その結果、電気泳動槽8には電極7aから電極7bに向けてpH3〜pH10のpH勾配が形成している。電気泳動槽8内のpH勾配は、その側面に固定されたアクリルアミド膜によって形成されているものであるため、pH勾配が安定して形成でき、再現性の良いフリーフロー等速電気泳動が可能となる。また、アクリルアミド膜に結合するカルボキシル基と第3級のアミノ基の割合を変えることでpH勾配を自在に設計可能となる。また、pH勾配の形成に両性担体を用いていないため、2次分析を阻害する夾雑物は含まれない。
したがって、本実施形態により、両性担体を用いず、安定なpH勾配を実現することが可能なフリーフロー電気泳動素子とそれを用いたフリーフロー等電点電気泳動法を提供することができる。
【0030】
なお、この発明の実施形態は、当然、各種変更が可能である。
例えば、pH勾配の範囲は3〜10に限定されず、アクリルアミド膜に結合するカルボキシル基と第3級のアミノ基の割合を変えることでpH勾配を自在に設計できる。本実施形態では、泳動槽の間隔はスペーサ9よって規制されているが、その構成は限定されず、泳動槽構成基板2及び3に溝を形成して泳動槽とすることもできる。
緩衝液や電極液の種類は限定されず通常電気泳動に用いられる緩衝液に変更できる。グリセリンの有無、エチルアルコールの有無、及びそれらの添加量は限定されない。なお、試料注入口の場所は限定されない。
【0031】
(第2の実施の形態)
図3及び図4に本発明のフリーフロー電気泳動素子の第2の実施形態を示す。図3は本フリーフロー電気泳動素子10の上面図であり、図4は図3の線IV−IVでの断面図を示す。
【0032】
フリーフロー電気泳動素子10は、泳動槽構成基板11と注入口構成基板12との組み合わせで構成される。電気泳動槽構成基板11には、アクリルアミド膜を構成した板をはめ込むための幅広溝15と細長い溝からなる2つの電極室13と、幅広溝15と電極室13とを区切る隔壁14とが構成されている。注入口構成基板12には、アクリルアミド膜を構成した板をはめ込むための幅広溝16と複数の緩衝液注入口4a〜4gと複数の試料注入口5a〜5cと複数の流出口6a〜6uとが構成されている。幅広溝15,16には、カルボキシル基と第3級のアミノ基を結合したポリアクリルアミドの膜が構成された膜構成基板17がそれぞれ取り外し可能に設置されている。電極室13a,13bには電極7a,7bがをそれぞれ設置されている。電気泳動槽8は、2枚の膜構成基板17に挟まれた空間によって構成される。幅広溝15,16は膜構成基板17を設置した状態で電気泳動槽8の間隔が30μmとなるように構成した。
【0033】
膜構成基板17に構成したポリアクリルアミドの膜に結合しているカルボキシル基と3級のアミノ基の割合を変えることによって、電極7aから電極7bに向けて電気泳動槽8には電極7aから電極7bに向けてpH10〜pH3のpH勾配が形成されるようにしてある。泳動槽構成基板11及び注入口構成基板12の素材はホウケイ酸ガラス、電極7は白金からなる。幅広溝15,16と電極室13は公知のウェットエッチング法にて加工した。隔壁14は対向する注入口構成基板12との間に微小の空隙ができるように加工した。泳動槽構成基板11及び注入口構成基板12の接合は、公知の接着技術にてよって接合した。
【0034】
(実施例2)
フリーフロー電気泳動素子10を用い、電極7aを図示しない電圧印加電源の陰極に、電極7bを電圧印加電源の陽極に接続して、実施形態1記載の実施例と同様の分離を実施したところ、試料の等電点に応じた分離が実現できた。
【0035】
(作用・効果)
次に、この発明の実施例の作用及び効果を説明する。
本実施形態は、電気泳動槽8を構成する泳動槽構成基板11と注入口構成基板12の電気泳動槽側の面に、カルボキシル基と第3級のアミノ基を結合したポリアクリルアミドの膜を構成した2枚の膜構成基板17が、ポリアクリルアミドの膜を電気泳動槽側に向けて配置されている。ポリアクリルアミドの膜を構成した2枚の膜構成基板17は、膜の性能が劣化する。したがって、膜が劣化するのに応じて交換する必要が生ずる場合がある。本構成とすることで、膜構成基板17と電気泳動槽8を構成する2枚の平板とが分離可能となり、劣化する膜構成基板17のみを交換することができる。このため、ランニングコストを下げることが可能となる。
【0036】
また、電気泳動槽8を構成する2枚の平板は繰り返し使うことが可能であるため、コストのかかる複雑な形状を構成することも問題ではなくなる。例えば、本実施例では電極室13と隔壁14を構成した。この構成によって、電気泳動槽8と電極室13との流れを独立でき、電極7で発生するガスを電気泳動槽8に浸入させることなく泳動できる構成となる。また、アクリルアミド膜を構成した板をはめ込むための幅広溝15,16の深さを制御することにより、微小な間隔の電気泳動槽8を構成することが可能となる。泳動槽の間隔を狭くすると、レイノルズ数が小さくなるために安定な層流が実現できることや、泳動槽の断面積が小さくなるために高電圧の印加可能となり高速な分離が実現できる等の効果が得られる。また、電気泳動槽の容積に対する電気泳動槽壁面の表面積の割合が大きくなるため、アクリルアミド膜に固定されたるカルボキシル基と3級のアミノ基に依存するpHの勾配を電気泳動槽8内でより安定に維持することが可能となる。したがって、本実施形態とすることで、ランニングコストを下げることができ、より安定した分離を実現することが可能なフリーフロー電気泳動素子を提供することができる。
【0037】
なお、この発明の実施形態は、第1実施形態と同様に、当然、各種変更が可能である。
電気泳動槽の間隔は30μmに限定されなず、安定層流が実現できる間隔であれば任意の間隔とすることができる。150μm以下であれば、レイノルズ数が小さくなるために安定な層流が実現できることや、電気泳動槽の断面積が小さくなるために高電圧の印加可能となり高速な分離が実現できる等の効果が得られる。なお、電気泳動槽の間隔を狭くすることによってその効果は大きくなり、電気泳動槽の容積も小さくなるために緩衝液や試料の微量化ができる。電気泳動槽の最適な間隔は10μm〜50μmの範囲である。この範囲を下回ると電気泳動槽の抵抗が高くなる、電気泳動槽への水圧の負荷が大きくなる等の問題が生じる。また、この範囲を超えると、高電圧印加時に流れる電流が大きくなり気泡発生や熱の発生等の問題も大きくなる。
【0038】
(第3の実施の形態)
以下に、図5及び図6に本発明のフリーフロー電気泳動素子の第3の実施形態を示す。図5は本フリーフロー電気泳動素子10の上面図であり、図6は図5の線VI−VIでの断面図であり、図7は電気泳動槽構成基板の上面図であり、図8は注入口構成基板の上面図である。
【0039】
フリーフロー電気泳動素子20は、泳動槽構成基板21と注入口構成基板22との組み合わせで構成され、電気泳動槽構成基板21には細長い溝からなる複数の泳動槽部23と細長い溝からなる2つの電極室13と、各電気泳動槽部23と電極室13とを区切る隔壁24とが設けられている。注入口構成基板22には、複数の緩衝液注入口4と複数の試料注入口5と複数の流出口6と1対の電極7とが設けられている。電極7は注入口構成基板22の泳動槽構成基板21と対向する面上に薄膜で構成される。複数の緩衝液注入口4と複数の流出口6は同数且つ同間隔で構成される。隔壁23は、複数の緩衝液注入口4の間に流出口6に向かって同間隔で設けられ、対向する注入口構成基板3との間に空隙を有して構成される。泳動槽構成基板21の素材はホウケイ酸ガラスからなる。泳動槽23と電極室13は公知のウェットエッチング法にて深さ50マイクロメートルに加工した。
電気泳動槽構成基板21及び注入口構成基板22の接合は、公知の接合技術を用いて接合した。
【0040】
各泳動槽23には、それぞれカルボキシル基と第3級のアミノ基を結合したポリアクリルアミドの膜が構成されている。なお、ポリアクリルアミドの膜は図示していない。該ポリアクリルアミドの膜に結合しているカルボキシル基と3級のアミノ基の割合は、各電気泳動槽23で異なり、電極7aから電極7bに向けて系統的に異なるよう製膜されている。その結果、各電気泳動槽23内はそれぞれ異なるpHとなり、電極7aから電極7bに向けてpH10〜pH3のpH勾配が形成されている。
【0041】
(作用・効果)
次に、この発明の実施の形態の作用及び効果を説明する。
本発明のフリーフロー電気泳動素子20は、緩衝液注入口4と流出口6とが同数且つ同間隔に構成され、その間に同間隔で隔壁24が構成されている。このため、各緩衝液注入口から対向する流出口に向かう流れの拡散を抑えることが可能となる。各電気泳動槽23はその内壁に構成されたアクリルアミド膜によってそれぞれ異なるpHとなっている。本構成とすることで、pHの勾配を電気泳動槽23内でより安定に維持することが可能となる。したがって、本実施形態とすることで、より安定した分離を実現することが可能なフリーフロー電気泳動素子を提供することができる。
【0042】
なお、この発明の実施の形態の各構成は、当然、各種変形、変更が可能である。アクリルアミド膜は電気泳動槽23の内壁に直接構成される必要はなく、第2実施形態のように、各泳動槽の壁面に帯状のアクリルアミド膜固定基板を設置することでも実現可能である。隔壁24は対向する注入口構成基板22との間に空隙を有して構成されているが、該空隙は緩衝液注入口から流出口までの間、必ずしも一定間隔である必要はなく、部分的に突起を有した構造とすることもできる。この突起を注入口構成基板22に接触させるよう構成することで、注入口構成基板22と泳動槽構成基板21との間隔を規制する効果を付加することも可能である。泳動槽23の深さは限定されないが、流れを強い層流に保つには150マイクロメートル以下が望ましい。
【0043】
【発明の効果】
(1)請求項1に係るフリーフロー電気泳動素子は、電気泳動槽を構成する2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面が、酸基と塩基とが結合した両性高分子により構成されているので、電気泳動槽壁面を構成する両性高分子によって電気泳動槽内のpHを制御するため、安定したpH制御を実現することができ、両性担体を用いていないため、2次分析を阻害する夾雑物は含まれない。
【0044】
(2) 請求項2に係るフリーフロー電気泳動素子においては、前記両性高分子が膜形状とされ、2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面を構成しているので、当該面を広く連続的に形成することができ、また膜状であるので両性高分子の量を減らすことができる。
(3) 請求項3に係るフリーフロー電気泳動素子においては、前記両性高分子をカルボキシル基とアミノ基を結合した両性高分子としたので、一般的によく用いられるカルボキシル基とアミノ基を結合した両性高分子を使用することができ、またたんぱく質等の生体物質との相性が良い。
【0045】
(4) 請求項4に係るフリーフロー電気泳動素子においては、カルボキシル基とアミノ基を結合した両性高分子をカルボキシル基とアミノ基を結合したポリアクリルアミドとするので、市販の固定化pH勾配ゲル作成用アクリルアミド誘導体を利用でき、安定したpH制御を実現し安定した分離が実現可能なフリーフロー電気泳動素子を安価に提供することができる。
【0046】
(4) 請求項5に係るフリーフロー電気泳動素子においては、両性高分子の該酸基と塩基の割合を、電気泳動槽の両端に配置される1対の電極との間で変更し、一方電極から他方電極に向けて、pHを増加または減少させ電気泳動槽に一方電極から他方電極に向けて特定の範囲のpH勾配が形成されているが、電気泳動槽内のpH勾配は、平板の電気泳動槽側の面を構成する両性ポリマーによって形成されているので、pH勾配が安定して形成でき、再現性の良いフリーフロー等速電気泳動が可能となる。また、両性高分子に結合する酸基と塩基の割合を変えることでpH勾配を自在に設計可能となり、またpH勾配の形成に両性担体を用いていないため、2次分析を阻害する夾雑物は含まれない。
【0047】
(6) 請求項6に係るフリーフロー電気泳動素子においては、電気泳動槽が液の流れに沿って複数の隔壁で区切られており、隔壁で区切られた電気泳動槽の部分を形成する2枚の平板電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面を、酸基と塩基の結合の割合が異なる両性高分子によって構成し、電気泳動槽の両端に配置される1対の電極との間で、一方電極から他方電極に向けて、pHが増加または減少させているので、注入口から流出口に向かう流れの拡散を抑えることが可能となり、隔壁で区切られた電気泳動槽は、その内壁に構成された両性高分子によってそれぞれ異なるpHとなり、隔壁で区切られた電気泳動槽毎にpHを制御でき、電極間におけるpH勾配をより安定に維持することが可能となる。
【0048】
(7) 電気泳動槽を構成する2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも1つの面に、酸基と塩基を結合した両性高分子を含む板が電気泳動槽側に向けて取外し可能に配置されて、前記少なくとも一方の面を構成しているので、両性高分子を含む板板と電気泳動槽を構成する平板とが分離可能となり、劣化した両性高分子を含む板のみを交換することができ、ランニングコストを下げることが可能となる。また、電気泳動槽を構成する2枚の平板は繰り返し使うことが可能であるため、コストのかかる複雑な形状を構成することもできる。
【0049】
(8) 請求項8に係るフリーフロー電気泳動素子においては、電気泳動槽の間隔が150μm以下としたので、レイノルズ数が小さくなるために安定な層流が実現できることや、電気泳動槽の断面積が小さくなるために高電圧の印加可能となり高速な分離が実現できる。また、また、電気泳動槽の容積に対する電気泳動槽壁面の表面積の割合が大きくなるため、アクリルアミド膜に固定されたるカルボキシル基と3級のアミノ基に依存するpHの勾配を電気泳動槽内でより安定に維持することが可能となる。
【0050】
(9) 請求項9に係るフリーフロー等電点電気泳動方法においては、 上記フリーフロー電気泳動素子を用い、等電点電気泳動を行うフリーフロー等電点電気泳動法を行なうもので、本方法により、両性担体を用いず、安定なpH勾配を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフリーフロー電気泳動素子の第1の実施形態の上面図である。
【図2】図1の線II−IIでの断面図を示す。
【図3】本発明のフリーフロー電気泳動素子の第2の実施形態の上面図である。
【図4】図3の線IV−IVでの断面図を示す。
【図5】本発明のフリーフロー電気泳動素子の第3の実施形態の上面図である。
【図6】図5の線VI−VIでの断面図を示す。
【図7】本発明のフリーフロー電気泳動素子の第3の実施形態の泳動槽構成基板21の上面図である。
【図8】注入口構成基板の上面図である。
【符号の説明】
1、10,20・・・フリーフロー電気泳動素子、2,3・・・電気泳動槽構成基板、4、4a〜4g・・・緩衝液注入口、5、5a〜5c・・・資料注入口、6、6a〜6u・・・流出口、7、7a,7b・・・電極、8・・・電気泳動室、9・・・スペーサ、10・・・フリーフロー電気泳動素子、11・・・電気泳動槽構成基板、12・・・注入口構成基板、13・・・電極室、14・・・隔壁、15、16・・・幅広溝、17・・・膜構成基板、20・・・フリーフロー電気泳動素子、21・・・電気泳動槽構成基板、22・・・注入口構成基板、23・・・電気泳動槽、24・・・隔壁
Claims (9)
- 2枚の平板を組み合わせて構成された電気泳動槽に緩衝液と試料溶液とを連続的に注入しながら試料の分離と分取を行うフリーフロー電気泳動素子において、電気泳動槽を構成する2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面が、酸基と塩基とが結合した両性高分子により構成されていることを特徴とするフリーフロー電気泳動素子。
- 請求項1記載のフリーフロー電気泳動素子において、前記両性高分子が膜形状とされ、2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面を構成していることを特徴とするフリーフロー電気泳動素子。
- 請求項1または2記載のフリーフロー電気泳動素子において、前記両性高分子はカルボキシル基とアミノ基を結合した両性高分子であることを特徴とするフリーフロー電気泳動素子。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載のフリーフロー電気泳動素子において、前記両性高分子はカルボキシル基とアミノ基を結合したポリアクリルアミドであることを特徴とするフリーフロー電気泳動素子。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載のフリーフロー電気泳動素子において、両性高分子の該酸基と塩基の割合を変化させ、電気泳動槽の両端に配置される1対の電極との間で、一方電極から他方電極に向けて、pHが増加または減少していることを特徴とするフリーフロー電気泳動素子。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載のフリーフロー電気泳動素子において、両性高分子に酸基と塩基が結合しており、電気泳動槽が液の流れに沿って複数の隔壁で区切られており、隔壁で区切られた電気泳動槽の各部分を形成する2枚の平板電気泳動槽側の面の少なくとも一方の面を、酸基と塩基の結合の割合が異なる両性高分子によって構成し、電気泳動槽の両端に配置される1対の電極との間で、一方電極から他方電極に向けて、pHが増加または減少していることを特徴とするフリーフロー電気泳動素子。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載のフリーフロー電気泳動素子において、電気泳動槽を構成する2枚の平板の電気泳動槽側の面の少なくとも1つの面に、酸基と塩基を結合した両性高分子を含む板が該両性高分子が電気泳動槽側に向けて取外し可能に配置されて、前記少なくとも一方の面を構成していることを特徴とするフリーフロー電気泳動素子。
- 請求項1乃至7記載のフリーフロー電気泳動素子において、電気泳動槽の間隔が150μm以下であることを特徴とするフリーフロー電気泳動素子。
- 請求項1乃至8記載のフリーフロー電気泳動素子を用い、等電点電気泳動を行うことを特徴とするフリーフロー等電点電気泳動法。
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WO2016031980A1 (ja) * | 2014-08-28 | 2016-03-03 | 国立大学法人東京大学 | 電気泳動デバイス、電気泳動デバイス製造方法および細胞外小胞体分離装置 |
-
2003
- 2003-03-27 JP JP2003088894A patent/JP2004294334A/ja active Pending
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