JP2004292735A - エチレン・α−オレフィンゴム組成物と繊維との接着体の製造方法及び伝動ベルト - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エチレン・α−オレフィンゴム組成物と繊維との接着物において、繊維を、エチレン・α−オレフィン−ジエン共重合体ゴム100質量部に対して、ポリ−p−ジニトロソベンゼンを0.05〜1.5質量部配合したゴム糊でオーバーコート処理した後、エチレン・α−オレフィンゴムの未加硫ゴム組成物と密着加硫せしめたことを特徴とするエチレン・α−オレフィンゴム組成物と繊維との接着体の製造方法である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエチレン・α−オレフィンゴム組成物と繊維との接着体の製造方法及び伝動ベルトに係り、詳しくは、特に高温時における接着力を改善したエチレン・α−オレフィンゴム組成物と繊維との接着体の製造方法及び伝動ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、省エネルギー化、コンパクト化の社会的要請を背景に、自動車のエンジンルーム周辺の雰囲気温度は従来に比べて上昇してきている。これにともない伝動ベルトの使用環境温度が高くなり、ベルト寿命が低下することが指摘されている。即ち、従来、伝動ベルトには天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴムなどのゴム材料が使用されてきたが、高温雰囲気下では圧縮ゴム層が硬化し、早期にクラックを生じ易いという問題が発生したるものである。
【0003】
このようなベルトの早期破壊現象に対し、従来からクロロプレンゴムの耐熱性の改善が検討されてきたが、これに代わり最近ではエチレン−プロピレン系ゴム(EPR)あるいはエチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)等のエチレン−α−オレフィンエラストマーが優れた耐熱性、耐寒性を有し、比較的に安価であるだけでなく、環境負荷物質の含有量が少ないポリマーであるとして注目されている。このポリマーは伝動ベルトへの使用も検討されつつある。
【0004】
しかしながら、エチレン−プロピレン系ゴムは引き裂き力が低く、パーオキサイド架橋系を用いると、更に引き裂き力が低下して、走行時に心線がポップアウトしやすいという問題があった。一方、硫黄架橋系を用いたものは、加硫度を十分に上げるのが困難であるため、走行時に摩耗が多くなり、特にVリブドベルトでは、摩耗紛がリブ部間の底部で蓄積され粘着摩耗を起こしやすく、これが発音を引き起こす大きな問題になっていた。また、加硫度を上げるために、分子内の二重結合量の極めて多いEPDMを用いると、粘着摩耗はある程度改善できるが、耐熱性が低下するという不具合が発生した。
【0005】
更に、問題になる点は、エチレン・α−オレフィンエラストマーと繊維コードとの接着方法にある。具体的には、繊維材料をレゾルシン−ホルマリン−スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンラテックスとを含有するディップ液に浸漬処理した後、EPDMゴム組成物と加硫接着する方法(特許文献1参照)、またレゾルシン−ホルマリン−ゴムラテックス接着液で接着処理した繊維材料と、メチレン供与体、メチレン受容体及び珪酸化合物と配合したEPDMゴム組成物と加硫接着する方法(特許文献2参照)などが試みられてきた。また、ハロゲン化ポリマーを配合したエチレン・α−オレフィンエラストマー用接着処理剤が上市されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−113657号公報
【特許文献2】
特開平8−113656号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、レゾルシン−ホルマリン−スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンラテックスを含有するディップ液で処理する場合には、接着力が改善されるが、これを伝動ベルトの心線のような繰り返し屈曲疲労をうける部位に使用した場合には、心線と接着ゴム層とが早期に剥離することがあった。
【0008】
また、メチレン供与体、メチレン受容体及び珪酸化合物と配合したEPDMゴム組成物を使用した場合でも、同様に繰り返し屈曲疲労をうける部位に使用すると、心線と接着ゴム層とが早期に剥離することがあった。
【0009】
更に、エチレン・α−オレフィンエラストマー用接着処理剤に含有されるハロゲン化ポリマーは環境負荷物質として知られており、環境問題の重要性が増す近年において好ましくない。
【0010】
本発明は、これらの点を考慮し、エチレン・α−オレフィンゴム組成物と伝動ベルトの心線となる繊維コードやカバー帆布のような織物等とを良好に接着することができるエチレン・α−オレフィンゴム組成物と繊維との接着体の製造方法及び伝動ベルトを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
即ち、本願請求項1記載の発明は、エチレン・α−オレフィンゴム組成物と繊維との接着体の製造方法にあって、繊維を、エチレン・α−オレフィン−ジエン共重合体ゴム100質量部に対して、ポリ−p−ジニトロソベンゼンを0.05〜1.5質量部配合したゴム糊でオーバーコート処理した後、エチレン・α−オレフィンゴムの未加硫ゴム組成物と密着加硫せしめたことを特徴とする。
【0012】
本願請求項2記載の発明は、請求項1記載のエチレン・α−オレフィンゴム組成物と繊維との接着体の製造方法にあって、繊維はオーバーコート処理の前に、イソシアネートもしくは/およびエポキシを含む処理液で前処理が行われてなることを特徴とする。
【0013】
本願請求項3記載の発明は、動力伝動用ベルトにあって、ベルト長手方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、圧縮ゴム層を含む弾性体層からなる動力伝動ベルトにおいて、心線として、エチレン・α−オレフィン−ジエン共重合体ゴム100質量部に対して、ポリ−p−ジニトロソベンゼンを0.05〜1.5質量部配合した接着処理剤により形成した被膜を有するコードを、エチレン・α−オレフィンゴム組成物からなる接着ゴム層に埋設したことを特徴とする。
【0014】
本願請求項4記載の発明は、請求項3記載の動力伝動用ベルトにあって、心線は、イソシアネートもしくは/およびエポキシを含む前処理剤が含浸されてなることを特徴とする。
【0015】
本願請求項5記載の発明は、請求項3又は4に記載の動力伝動用ベルトにあって、動力伝動用ベルトが、ベルト長さ方向に沿って繊維コードをエチレン・α−オレフィンゴム組成物中に埋設した接着ゴム層と、エチレン・α−オレフィンゴム組成物で構成されたベルト長さ方向に延びる複数のリブ部を有するVリブドベルトであることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するエチレン・α−オレフィンゴムとしては、エチレンとα−オレフィン(プロピレン、ブテン、ヘキセン、あるいはオクテン)の共重合体、あるいは、エチレンと上記α−オレフィンと非共役ジエンの共重合体であり、具体的にはエチレン−プロピレンゴム(EPM)やエチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)からなるゴムをいう。上記ジエン成分としては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネンなどの炭素原子数5〜15の非共役ジエンが挙げられる。
【0017】
上記ゴムの架橋には、硫黄や有機過酸化物が使用される。有機過酸化物としては、例えばジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−モノ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等を挙げることができる。この有機過酸化物は、単独もしくは混合物として、通常エチレン−α−オレフィンエラストマー100gに対して0.005〜0.02モルgの範囲で使用される。
【0018】
また、架橋助剤(co−agent)を配合することによって、架橋度を上げて粘着摩耗等の問題を防止することができる。架橋助剤として挙げられるものとしては、TIAC、TAC、1,2−ポリブタジエン、不飽和カルボン酸の金属塩、オキシム類、グアニジン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、N−N‘−m−フェニレンビスマレイミド、硫黄など通常パーオキサイド架橋に用いるものである。
【0019】
そして、それ以外に必要に応じてカーボンブラック、シリカのような増強剤、炭酸カルシウム、タルクのような充填剤、可塑剤、安定剤、加工助剤、着色剤のような通常のゴム配合物に使用されるものが使用される。
【0020】
本発明で使用する繊維は、アラミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)、ポリエチレンナフタレート繊維(PEN繊維)のようなポリエステル繊維であり、その形態としてのコード、織物が使用される。
【0021】
使用する繊維は、下記方法によって接着処理される。
即ち、繊維を、エチレン・α−オレフィン−ジエン共重合体ゴムと、ポリ−p−ジニトロソベンゼンと、そしてイソシアネート化合物を配合したゴム糊でオーバーコート処理した後、エチレン・α−オレフィンゴムの未加硫ゴム組成物と密着加硫せしめる。尚、オーバーコート処理の前に、イソシアネートもしくは/およびエポキシを含む処理液で前処理をすることが接着力を高める上で好ましい。前処理では、未処理の繊維を室温に設定したイソシアネートもしくは/およびエポキシを含む処理液に0.5〜30秒間浸漬した後、150〜190℃に調節したオーブンに2〜5分間通して乾燥される。
【0022】
ゴム糊に使用するエチレン・α−オレフィン−ジエン共重合体ゴムとは、エチレンとα−オレフィン(プロピレン、ブテン、ヘキセン、あるいはオクテン)の共重合体、あるいは、エチレンと上記α−オレフィンと非共役ジエンの共重合体であり、具体的にはエチレン−プロピレンゴム(EPM)やエチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)からなるゴムをいう。上記ジエン成分としては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネンなどの炭素原子数5〜15の非共役ジエンが挙げられる。尚、エチレン・α−オレフィン−ジエン共重合体ゴムとして、ジエン含量が8〜20%ものを用いることが接着性を高める上で好適である。
【0023】
イソシアネートとしては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン2,4−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリアリールポリイソシアネート(例えば商品名としてPAPIがある)等がある。また、上記イソシアネートにフェノール類、第3級アルコール類、第2級アルコール類等のブロック化剤を反応させてポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック化したブロック化ポリイソシアネートも使用可能である。その配合量はエチレン・α−オレフィンゴム100質量部に対して5〜35質量部である。5質量部未満では、高温時における未加硫ゴムとの接着が不十分であり、一方35質量部を超えると、接着力の低下を招く。
【0024】
更に、本発明においては、オーバーコート処理液にポリ−p−ジニトロソベンゼンが配合される。接着性の改善に効果があり、加硫剤として硫黄を配合する場合は、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤の活性化剤として作用する。その配合量はエチレン・α−オレフィンゴム100質量部に対して0.05〜1.5質量部添加することが好ましい。0.05質量部未満では、未加硫ゴムとの接着が不十分であり、一方1.5質量部を超えると、接着体の物性の低下などを招く。
【0025】
また必要に応じてシリカ、カーボンブラック、加硫促進剤等を含めることができる。シリカとしては、含水シリカを含み、粒子径、PH等は限定しない。その添加量はエチレン・α−オレフィンゴム100質量部に対して、5〜40質量部である。5質量部未満では、未加硫ゴムとの接着が不十分であり、一方40質量部を超えると、ゴムの粘度が上昇して繊維への浸透性が劣り、接着力が低下する。
【0026】
カーボンブラックの種類としては、SAF、ISAF、HAF、FF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等があり、特に規定しない。その添加量はエチレン・α−オレフィンゴム100質量部に対して、5〜50質量部である。5質量部未満では、処理繊維の経時接着力の低下が大きく、また50質量部を超えると、ゴムの粘度が上昇して繊維への浸透性が劣り、接着力が低下する。
【0027】
またレゾルシンとホルマリンの初期縮合物を添加しても良い。この場合レゾルシンとホルマリンのモル比は1:2〜2:1にすることが接着力を高める上で好適である。モル比が1/2未満では、レゾルシン−ホルマリン樹脂の三次元化反応が進み過ぎてゲル化し、一方2/1を超えると、逆にレゾルシンとホルマリンの反応があまり進まないため、接着力が低下する。
【0028】
オーバーコート処理液に使用するゴム組成物中のエチレン・α−オレフィンゴム分は60〜90質量%である。60質量%未満では、繊維への浸透性が劣り、接着力が低下し、他方90質量%を超えると、処理繊維の経時接着力の低下が大きくなる。
【0029】
前処理剤で使用するイソシアネート化合物としては、上記に例示したものがある。このイソシアネート化合物はトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に混合して使用される。
【0030】
前処理剤で使用するエポキシ化合物としては、例えばエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールや、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコールとエピクロルヒドリンのようなハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物や、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール.ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン.ホルムアルデヒド樹脂等の多価フェノール類やハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物などである。上記エポキシ化合物はトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に混合して使用される。
【0031】
上記接着処理をした繊維の用途として、例えば図1に示すVリブドベルトの心線に使用される。このVリブドベルト1によると、接着ゴム層3中の撚糸コードを素材とする高強度で低伸度のコードよりなる心線2を接着ゴム層3中に埋設し、その下側に弾性体層である圧縮ゴム層4を有している。この圧縮ゴム層4にはベルト長手方向にのびる断面略三角形の複数のリブ7が設けられている。また、ベルト表面にはゴム付帆布5を設けてもよいが、設ける必要もない。
【0032】
前記圧縮ゴム層4に使用されるゴム組成物は、エチレン・α−オレフィンゴム100質量部に対して、アラミド、ナイロン、ポリステル、ビニロン、綿など短繊維を1〜50質量部、好ましくは5〜25質量部含有してもよい。
【0033】
一方、接着ゴム層3には耐熱性を有し、そして心線との接着を良好にするためにも、上記エチレン・α−オレフィンゴム組成物であって硫黄により架橋できるものを使用する。そして、それ以外に必要に応じてカーボンブラック、シリカのような増強剤、炭酸カルシウム、タルクのような充填剤、可塑剤、安定剤、加工助剤、着色剤のような通常のゴム配合に用いるものが使用される。
【0034】
上記接着ゴム層3における硫黄の添加量は、エチレン・α−オレフィンゴム100質量部に対して0.5〜3.0質量部である。
【0035】
尚、この接着ゴム層3に使用するエチレン・α−オレフィンゴムのうちEPDMは、ヨウ素価が4以上で40未満であることが好ましい。4未満であるとゴム組成物の硫黄による架橋が充分でなく、心線のポップアウトの問題が発生する。一方、40を超えると、ゴム組成物のスコーチが短くなって取扱にくくなり、また耐熱性が悪くなる。
【0036】
Vリブドベルトの製造方法の一例は以下の通りである。まず、円筒状の成形ドラムの周面に1〜複数枚のカバー帆布と接着ゴム層とを巻き付けた後、この上にロープからなる心線を螺旋状にスピニングし、更に圧縮ゴム層を順次巻きつけて積層体を得た後、これを硫黄や有機過酸化物により架橋して架橋スリーブを得る。
【0037】
次に、架橋スリーブを駆動ロールと従動ロールに掛架され所定の張力下で走行させ、更に回転させた研削ホイールを走行中の架橋スリーブに当接するように移動して架橋スリーブの圧縮ゴム層表面に3〜100個の複数の溝状部を一度に研磨する。
【0038】
このようにして得られた架橋スリーブを駆動ロールと従動ロールから取り外し、該架橋スリーブを他の駆動ロールと従動ロールに掛架して走行させ、カッターによって所定の幅に切断して個々のVリブドベルトに仕上げる。
【0039】
また、本発明においては、上記のVリブドベルト以外にも、図2に示すようにベルトの上下表面のみにゴム付帆布25を付着したVベルト21などの伝動ベルトも含む。このVベルト21は、心線22を接着ゴム層23中に埋設し、その下側に弾性体層である圧縮ゴム層24を有している。この圧縮ゴム層24には、コグを長手方向に沿って所定間隔で設けてもよい。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
実施例1〜3、比較例1〜3
1220dtex/1×5のポリエチレンテレフタレート(PET)の未処理撚糸コードを準備し、表1に示すプレディップ液に浸漬した後、180℃で4分間熱処理した。次に、表2に示す各ゴム配合93質量部並びにイソシアネート7質量部をトルエン900質量部に溶解したオーバーコート処理液に浸漬し、150℃で4分間熱処理した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
得られたコードを表4に示す配合をもつ厚さ4mmのゴムシートの上に25mm幅に並べ、プレス板で2.0MPaの圧力をかけ、163℃で30分間加硫し、剥離試験用の試料を作製した。そして、JISK6256に従い剥離力を測定した。その結果を表5に示す。尚、表5中のポリ−p−ジニトロソベンゼン配合量とは、オーバーコート処理液中のゴム成分100質量部に対する各配合量をいう。
【0046】
【表5】
【0047】
また、得られた処理コードを心線とし、接着ゴム層として表4のゴム配合、また圧縮ゴム層として表3のゴム配合を用意した。そして、円筒状の成型ドラムの周面にゴム付綿帆布を2プライと接着ゴム層を積層し、上記心線をピッチ1.03mm、張力50Nでピニングした後に圧縮ゴム層を積層し、この積層物を加硫した。加硫スリーブを駆動ロールと従動ロールに掛架して所定の張力下で走行させながら、回転中の研削ホイールを圧縮ゴム層表面に当てて複数の溝状部を研磨加工し、そして所定幅に切断してVリブドベルトを得た。
【0048】
得られたVリブドベルトはRMA規格による長さ975mmのK型3リブドベルトであり、リブピッチ3.56mm、リブ高さ2.0mm、ベルト厚さ4.3mm、リブ角度40°である。得られたベルトの接着性評価として、ベルト周方向に埋設した心線を2本引き起こし、50mm/分の速度で剥離したときの応力を求めた。その結果を表5に併記する。
【0049】
これらの結果、実施例では比較例に比べて高い接着性が得られるものの、ポリ−p−ジニトロソベンゼンを配合していない比較例1並びに適量より少なく配合した比較例2では接着性に乏しい。一方、ポリ−p−ジニトロソベンゼンを適量より多く配合した比較例3では接着力の低下がみられた。
【0050】
【発明の効果】
以上のように本願請求項記載の発明は、エチレン・α−オレフィンゴム組成物と繊維との接着物において、繊維を、エチレン・α−オレフィン−ジエン共重合体ゴム100質量部に対して、ポリ−p−ジニトロソベンゼンを0.05〜1.5質量部配合したゴム糊でオーバーコート処理した後、エチレン・α−オレフィンゴムの未加硫ゴム組成物と密着加硫せしめたことを特徴とするエチレン・α−オレフィンゴム組成物と繊維との接着体の製造方法にあって、繊維とエチレン・α−オレフィンゴム組成物との加硫接着力を高めることができる。
【0051】
また、ベルト長手方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、圧縮ゴム層を含む弾性体層からなる動力伝動ベルトにおいて、心線として、エチレン・α−オレフィン−ジエン共重合体ゴム100質量部に対して、ポリ−p−ジニトロソベンゼンを0.05〜1.5質量部配合した接着処理剤により形成した被膜を有するコードを、エチレン・α−オレフィンゴム組成物からなる接着ゴム層に埋設したことを特徴とする動力伝動用ベルトにあって、接着力が高く、ひいてはベルト走行寿命が長くなる効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Vリブドベルトの断面図である。
【図2】Vベルトの断面図である。
【符号の説明】
1 Vリブドベルト
2 心線
3 接着ゴム層
4 圧縮ゴム層
5 ゴム付帆布
7 リブ
Claims (5)
- エチレン・α−オレフィンゴム組成物と繊維との接着物において、繊維を、エチレン・α−オレフィン−ジエン共重合体ゴム100質量部に対して、ポリ−p−ジニトロソベンゼンを0.05〜1.5質量部配合したゴム糊でオーバーコート処理した後、エチレン・α−オレフィンゴムの未加硫ゴム組成物と密着加硫せしめたことを特徴とするエチレン・α−オレフィンゴム組成物と繊維との接着体の製造方法。
- 繊維はオーバーコート処理の前に、イソシアネートもしくは/およびエポキシを含む処理液で前処理が行われてなる請求項1記載のエチレン・α−オレフィンゴム組成物と繊維との接着体の製造方法。
- ベルト長手方向に沿って心線を埋設した接着ゴム層と、圧縮ゴム層を含む弾性体層からなる動力伝動ベルトにおいて、心線として、エチレン・α−オレフィン−ジエン共重合体ゴム100質量部に対して、ポリ−p−ジニトロソベンゼンを0.05〜1.5質量部配合した接着処理剤により形成した被膜を有するコードを、エチレン・α−オレフィンゴム組成物からなる接着ゴム層に埋設したことを特徴とする動力伝動用ベルト。
- 心線は、イソシアネートもしくは/およびエポキシを含む前処理剤が含浸されてなる請求項3記載の動力伝動用ベルト。
- 動力伝動用ベルトが、ベルト長さ方向に沿って繊維コードをエチレン・α−オレフィンゴム組成物中に埋設した接着ゴム層と、エチレン・α−オレフィンゴム組成物で構成されたベルト長さ方向に延びる複数のリブ部を有するVリブドベルトである請求項3又は4に記載の動力伝動用ベルト。
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