JP2004277955A - 一方向性強化布帛、プリフォームおよび複合材料 - Google Patents
一方向性強化布帛、プリフォームおよび複合材料 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004277955A JP2004277955A JP2003073265A JP2003073265A JP2004277955A JP 2004277955 A JP2004277955 A JP 2004277955A JP 2003073265 A JP2003073265 A JP 2003073265A JP 2003073265 A JP2003073265 A JP 2003073265A JP 2004277955 A JP2004277955 A JP 2004277955A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- reinforcing fiber
- fiber yarn
- fabric
- auxiliary
- composite material
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Abstract
【課題】樹脂の含浸性がよく、力学特性に優れた複合材料が得られる一方向性強化布帛、それを用いたプリフォームおよび複合材料を提供する。
【解決手段】本発明の一方向性強化布帛は、繊度が350〜3,500tex、フィラメント数が6,000〜50,000本である連続した強化繊維糸条を一方向に並行するように引き揃えた強化繊維糸条群と、連続した補助繊維糸条を強化繊維糸条と交差する方向に延在した緯方向補助繊維糸条群または不連続の補助繊維が構成する層状体とが布帛を構成し、かかる布帛における強化繊維糸条の目付(FAW)が50〜370g/m2であり、かつ、次の式1、2を満たすものである。FAW=K1×(TEX)1/2…(1) FAW=−317×GAP+K2 …(2) 但し FAW:強化繊維糸条の目付(g/m2) TEX:強化繊維糸条の繊度(tex) GAP:強化繊維糸条間の隙間(mm) K1:4〜9の定数 K2:260〜395の定数
【選択図】なし
【解決手段】本発明の一方向性強化布帛は、繊度が350〜3,500tex、フィラメント数が6,000〜50,000本である連続した強化繊維糸条を一方向に並行するように引き揃えた強化繊維糸条群と、連続した補助繊維糸条を強化繊維糸条と交差する方向に延在した緯方向補助繊維糸条群または不連続の補助繊維が構成する層状体とが布帛を構成し、かかる布帛における強化繊維糸条の目付(FAW)が50〜370g/m2であり、かつ、次の式1、2を満たすものである。FAW=K1×(TEX)1/2…(1) FAW=−317×GAP+K2 …(2) 但し FAW:強化繊維糸条の目付(g/m2) TEX:強化繊維糸条の繊度(tex) GAP:強化繊維糸条間の隙間(mm) K1:4〜9の定数 K2:260〜395の定数
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂の含浸性が良好で、力学特性(特に圧縮強度)にも優れる複合材料を得られる一方向性強化布帛、プリフォームおよびこれらに樹脂を含浸した複合材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた複合材料(以下、FRPと記す)は、優れた力学特性、軽量化等の要求特性を満たすことから主に航空・宇宙、スポーツ用途に用いられてきた。これらFRPの生産性に優れる成形法としては、例えばレジン・トランスファー・モールディング(RTM)成形法が挙げられる。かかるRTM成形法では、マトリックス樹脂が含浸されていない、ドライな布帛を成形型の中に配置して、低粘度の液状マトリックス樹脂を強制的に注入することにより強化繊維中にマトリックス樹脂を含浸させてFRPを成形する。
【0003】
ところがこのRTM成形法は、一般的にはFRPの生産性には優れるが、用いる強化繊維基材(例えばドライな織物)の含浸性が悪いと含浸時間が長くなるだけでなく、FRPにボイド等が発生して、生産性を低下させる問題があった。上記問題に対し、例えば特許文献1には、織物の開口率を適切にすることにより、厚み方向の含浸性を改善する旨の記載がある。また、特許文献2には、一方向性の炭素繊維織物における炭素繊維糸条間の隙間により、含浸性を改善する旨の記載がある。
【0004】
しかしながら、含浸性は、上記特許文献等に記載のある単純な開口率や隙間の大きさだけでなく、開口している箇所の布帛中の分布状態、更には強化繊維糸条のクリンプ(屈曲)程度も大きく影響をうけ、単純な開口率や隙間だけでは実際の含浸挙動を説明することができない。このことは、例えば10mm以上の厚い板厚を有するFRPを成形する場合に特に顕在化する。
【0005】
また、開口率や隙間を単純に大きくし過ぎることは、含浸性には有利に働くものの、FRPにした場合に樹脂リッチ部分を多く形成することを意味する。これは、成形時の残留応力の発生、不均一性の増大の原因となり、力学特性(特に圧縮強度、疲労強度等)の低下だけでなく、サーマルクラックの発生等をも引き起こす原因となる。この問題は、単純にFRPに未含浸部やボイドが発生することによる力学特性低下とは異なるものである。
【0006】
つまり、これらに全ての問題点に対応した技術が存在してこそ、始めてFRPに要求される含浸性と力学特性とが両立できるのであるが、上記従来技術によると、含浸性と力学特性(特に圧縮強度)とを兼ね備える布帛は得られておらず、これら要求を満たす技術が渇望されていた。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−37904号公報(第4頁、段落0014)
【0008】
【特許文献2】
特開平11−107107号公報(第8頁、段落0068)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、マトリックス樹脂の含浸性が良好で、力学特性(特に圧縮強度)にも優れる複合材料を得られる一方向性強化布帛、プリフォームおよびそれにマトリックス樹脂を含浸して得られる複合材料を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の一方向性強化布帛は、繊度が350〜3,500tex、フィラメント数が6,000〜50,000本である連続した強化繊維糸条を一方向に並行するように引き揃えた強化繊維糸条群と、連続した補助繊維糸条を強化繊維糸条と交差する方向に延在した緯方向補助繊維糸条群または不連続の補助繊維が構成する層状体とが布帛を構成し、かかる布帛における強化繊維糸条の目付(FAW)が50〜370g/m2であり、かつ、次の式1、式2のいずれをも満たすことを特徴とするものである。
【0011】
FAW=K1×(TEX)1/2 …………(1)
FAW=−317×GAP+K2 …………(2)
ここで、FAW:強化繊維糸条の目付(g/m2)
TEX:強化繊維糸条の繊度(tex)
GAP:強化繊維糸条間の隙間(mm)
K1:4〜9の定数
K2:260〜395の定数
本発明のプリフォームは、上記布帛が複数枚積層され、かつ、積層された布帛同士が少なくとも部分的に接着していることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の複合材料は、上記布帛が複数枚積層され、かつ、樹脂がマトリックスとして含浸していることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の課題に影響を及ぼす因子として、次の2つの因子が挙げられ、いずれもこれらの値が大きい方が上述した含浸性に関しては向上する。
【0014】
[因子1]:布帛の全体面積に占める開口箇所面積の比率
[因子2]:強化繊維糸条間の隙間
ここで、[因子1]は、換言すれば布帛中における開口総面積の多少を表し、一方、[因子2]は、上記布帛を微視的に見た場合の開口している面積を表す。
【0015】
しかしながら、前記因子を単に大きくして含浸性を向上した場合、FRPには樹脂リッチ部分が多く形成され、成形時の残留応力の発生、FRPの不均一性の増大の原因となり、力学特性(特に圧縮強度)の低下が引き起こされる。
【0016】
ここで、含浸性だけに注目しても、上記[因子1]、[因子2]のみが含浸性に影響するものではない。例えば、同じ開口率であって、小さい開口箇所が布帛中に多数分布しているものと、大きい開口箇所が布帛中に少数分布しているものの含浸性は大きく異なる。また、布帛の強化繊維糸条の目付が異なる布帛を用いて、厚みが同じ複合材料を得るべく厚み方向に樹脂を含浸させる場合、隙間の大きさが異なっても同じ含浸性を示す。すなわち、目付が大きい布帛は、目付が小さい布帛に較べて積層枚数は少なくて済むため、大きい目付の布帛の隙間は小さくても同じ含浸性を示すのである。
【0017】
以上の経験的事実に基づき、本発明では、含浸性だけでなく、力学特性にも影響を及ぼす上記[因子1]、[因子2]以外の影響因子として、
[因子3]:微視的な開口箇所(強化繊維糸条間の隙間)の布帛中での分布の状態と、更には
[因子4]:強化繊維糸条のクリンプ(屈曲)、
の影響が非常に大きいことを見出し、それらを最適な範囲に設定したものである。
【0018】
まず、[因子3]について以下に説明する。
【0019】
本発明の一方向性強化布帛は、前述の通り繊度が350〜3,500tex、フィラメント数が6,000〜50,000本である連続した強化繊維糸条を一方向に並行するように引き揃えた強化繊維糸条群と、連続した補助繊維糸条を強化繊維糸条と交差する方向に延在した緯方向補助繊維糸条群、または不連続の補助繊維が構成する層状体とが布帛を構成し、かかる布帛における強化繊維糸条の目付(FAW)が50〜370g/m2であり、かつ、次の式1、式2のいずれをも満たす。
【0020】
FAW=K1×(TEX)1/2 ……(1)
FAW=−317×GAP+K2 ……(2)
ここで、上記式に登場する各用語の意味は下記の通りである。
【0021】
FAW:
強化繊維糸条の目付(g/m2)であり、平面状にした布帛から、布帛の全幅方向に渡って等間隔に一辺125mmの正方形を3箇所切り出し、そのサンプルから測定されるる平均値を指す。なお、サイジング剤や後述の樹脂材料等が1重量%以上付着している場合は、サイジング剤や樹脂材料が可溶、かつ、強化繊維が不溶の溶媒等を用いて除去して測定される平均値を指す。
【0022】
TEX:
強化繊維糸条の繊度(tex)であり、JIS−R7601に沿って測定した値を指す。なお、サイジング剤や樹脂材料が1重量%以上付着している場合は、前述の方法等でサイジング剤や樹脂材料を除去した値を用いる。
【0023】
GAP:
布帛を構成している強化繊維糸条と強化繊維糸条間の隙間(mm)であり、平面状にした布帛について、その垂線方向から見た時の強化繊維糸条間の隙間を指し、補助繊維糸条等の強化繊維糸条以外のもの(例えば後述の補助繊維糸条、ステッチ糸等)は存在しないものとして扱い、布帛の全幅方向にわたり、均等間隔に選択した50箇所の隙間の平均値を用いる。
【0024】
K1:
4〜9の範囲の定数である。
【0025】
K2:
260〜395の範囲の定数である。
【0026】
上記式1は、用いる強化繊維糸条の繊度に対し、布帛の強化繊維糸条の目付、すなわち、強化繊維糸条が配置される密度(後述の強化繊維糸条間の隙間の密度)を定義するものである。K1が4未満の場合は、布帛中に形成される強化繊維糸条が疎になり過ぎて樹脂リッチ部分を多く形成するため力学特性に劣る。逆に、K1が9を超える場合は、布帛中に形成される強化繊維糸条が密になり過ぎて含浸性に劣る。より好ましいK1は5〜8、更に好ましいK1は5.5〜7.5である。
【0027】
上記式2は、布帛の強化繊維糸条の目付(強化繊維糸条間の隙間の密度)に対し、強化繊維糸条間の隙間の大きさを定義するものである。K2が260未満の場合は布帛中に形成される強化繊維糸条間の隙間が少なくなりすぎ含浸性に劣る。逆に、K2が395を超える場合は布帛中に形成される強化繊維糸条間の隙間が多くなりすぎ力学特性に劣る。より好ましいK2は290〜380、更に好ましいK2は300〜365である。なお、式2で算出される強化繊維糸条間の隙間が負の値になる場合は下限値をゼロとして扱うものとする。
【0028】
かかる式1、式2のいずれをも満たすことにより、布帛中の最適な強化繊維糸条間の隙間の分布、および、その大きさが決定されるのである。
【0029】
次に、[因子4]について以下に説明する。
【0030】
[因子4]は、強化繊維糸条のクリンプにより形成される立体的な空間の体積を表し、大きい方が含浸性に優れる。しかしながら、本発明の課題の一つである複合材料にしたときの力学特性、特に圧縮強度は、かかるクリンプが存在すると、著しく低下する。一方向性強化布帛は、強化繊維糸条よりも繊度(または断面積)の小さい連続した補助繊維糸条、または不連続の補助繊維を用いるため、その含浸性および力学特性への影響が小さいと一般的に考えられていた。しかしながら、本発明者らは、補助繊維糸条の繊度が、含浸性だけでなく、力学特性、特に圧縮強度への影響が、予想外にも極めて大きいことを見出したのである。
【0031】
すなわち、本発明の緯方向補助繊維糸条群を構成する補助繊維糸条の繊度(Ta1)は、強化繊維糸条の繊度(Tc)の1%以下であるのが好ましい。すなわち、(Ta1×100)/Tc≦1である。より好ましくは0.5%以下、更に好ましくは0.2%以下である。かかる比率の下限は特にないが、布帛の形態安定や製造安定の面から、0.01%以上であるのが一般的である。
【0032】
かかる補助繊維糸条は、強化繊維糸条を横切って配置されているため、両者が交差または交錯する箇所が必ず形成される。Ta1がTcの1%を超えると、かかる箇所において、補助繊維糸条が強化繊維糸条を布帛の厚み方向にクリンプ(屈曲)させ、強化繊維糸条の真直性を阻害してしまう場合がある。かかるクリンプの形成により、力学特性、特に圧縮強度に優れる複合材料を得難い。かかるクリンプは、複合材料の強化繊維体積率が高い(よって軽量化効果に優れる)ほど顕著に発現し、力学特性を低下させる。すなわち、優れた軽量化効果および極めて高い力学特性が要求される航空機の一次構造部材等に適用できる様な複合材料が得られない。Ta1が上記範囲であると、強化繊維糸条のクリンプは僅かながら形成されるものの、その真直性には影響を及ぼすには至らない。そのため、力学特性の低下は実質的に無視できるレベルとなり、高い強化繊維体積率でありながら、極めて高い力学特性を発現する複合材料を得ることができるのである。
【0033】
Ta1は、それ単独では適した指標になり難いが、Tcが800〜1,700texの炭素繊維糸条と想定すると、上記のクリンプの影響低減の観点から、Ta1は、8tex以下であるのが好ましい。より好ましくは5tex以下、更に好ましくは2tex以下である。
【0034】
同様の観点から、不連続の補助繊維が構成する層状体の目付は、強化繊維糸条の目付の10%以下であるのが好ましい。より好ましくは6%以下、更に好ましくは4%以下である。不連続の補助繊維は、そのもの単独でなく層状体として適用するため、連続した補助繊維糸条よりクリンプに及ぼす影響は大きくない場合が多い。また、層状体の目付、および不連続の補助繊維の繊維径は、それ単独では適した指標になり難いが、上記Tcが800〜1,700texの炭素繊維糸条と想定すると、目付が2〜20g/m2、繊維径が15μm以下であるのが好ましい。より好ましくは目付が4〜14g/m2、繊維径が12μm以下、更に好ましくは目付が5〜13g/m2、繊維径が9μm以下である。
【0035】
上記要件は、逆の観点からは含浸性に著しく劣ることを意味する。しかしながら、上記式1、式2のいずれをも満たしている場合、含浸性を充分高くすることができるため、高い力学特性を発現する意味で、Ta1が上記範囲であること、または層状体の目付が上記範囲であることは本発明のより好ましい態様ということができる。
【0036】
本発明の一方向性強化布帛は、連続した強化繊維糸条が、お互いに並行するように引き揃えられ、一方向に配列して強化繊維糸条群を形成している。また、連続した補助繊維糸条は、強化繊維糸条を横切って、すなわち、強化繊維糸条と直交するか、斜めに交差する方向に延在して緯方向補助繊維糸条群を形成している。一方、別の態様として、不連続の補助繊維は、強化繊維糸条を横切って存在し、それら複数が一体化して層状体を構成している。一方向性強化布帛が形態安定するためには、補助繊維糸条または層状体が強化繊維糸条を横切り、強化繊維糸条が配列している方向以外の方向を支持する必要があるためである。
【0037】
布帛における強化繊維糸条の目付は、50〜370g/m2である。より好ましくは100〜270g/m2、更に好ましくは140〜240g/m2である。50g/m2未満では、厚い複合材料を得る場合は積層枚数が多くなり過ぎ、積層の時間がかかり過ぎるだけでなく、用いる強化繊維糸条に制限を受ける。また、370g/m2を超えると、布帛を多数積層した複合材料において、一層が大きく(層間が少なく)なり過ぎ、応力集中が発生して複合材料の力学特性に劣る。
【0038】
一方向性強化布帛の組織形態は、例えば、連続した補助繊維糸条がお互いに並行に引き揃えられ、一方向に配列している織組織または不織組織であってもよいし、補助繊維糸条がたて編(例えば、1/1トリコット編組織等)またはよこ編で配置している編組織であってもよい。また、不連続の補助繊維の層状体(不織布、マット、紡績糸等により構成される布帛等)が貼り合わされて一体化しているシートでもよいし、それらの組み合わせでもよい。なお、連続した補助繊維糸条の密度は、一方向性強化布帛の形態安定、強化繊維糸条との交差または交錯箇所の影響の最小限化のため、0.3〜6本/cmであるのが好ましい。より好ましくは1〜4本/cmである。中でも、一方向性織物であると、製造の容易さ、形態安定性だけでなく、マトリックス樹脂の含浸性、強化繊維糸条の真直性にも優れるため好ましい。
【0039】
かかる一方向性織物としては、布帛の両側に緯方向補助繊維糸条群が配され、それを構成する補助繊維糸条と強化繊維糸条群を構成する補助繊維糸条とが織組織(平織、綾織、繻子織等)を構成している織物が挙げられる。
【0040】
更に好ましい例としては、強化繊維糸条と並行する方向に延在する、連続した補助繊維糸条から構成される経方向補助繊維糸条群を有し、かつ、布帛の両側に緯方向補助繊維糸条群が配され、それを構成する補助繊維糸条と経方向補助繊維糸条群を構成する補助繊維糸条とが織組織を構成し、強化繊維糸条を一体に保持しているノンクリンプ織物が挙げられる。
【0041】
かかる経方向補助繊維糸条群を用いてノンクリンプ織物にすると、隣り合う強化繊維糸条の間隔を確保することにより、強化繊維糸条間の隙間を安定させることができる。また、布帛凹凸を平滑化する効果も発現するため、複合材料において積層した布帛層のうねりを抑制し、より高い力学特性を発現し得る。更には、補助繊維糸条が交差または交錯する箇所での強化繊維糸条の乱れを抑制し、その真直性を維持するガイドの如き役割も期待できる。以上の効果により、例えば航空機の一次構造部材に要求されるレベルの力学特性に極めて優れる複合材料を得ることができるのである。
【0042】
経方向補助繊維糸条群を構成する補助繊維糸条の繊度(Ta2)は、強化繊維糸条の繊度(Tc)の20%以下であるのが好ましい。すなわち、(Ta2×100)/Tc≦20である。より好ましくは10%以下、更に好ましくは4%以下である。かかる比率の下限は特にないが、布帛の形態安定性、製造安定性の面から、0.1%以上であるのが一般的である。
【0043】
経方向補助繊維糸条群は、強化繊維糸条と並行していてそれを横切らないため、強化繊維糸条をクリンプさせることはない。この意味から、Ta2は上記Ta1よりも大きい繊度であっても問題ないが、Ta2はTcの20%を超えると、成形される複合材料の重量が大きくなり、複合材料の本質的な目的である軽量化効果を損なうため、好ましくない。
【0044】
経方向補助繊維糸条群を構成する補助繊維糸条は、引張破断伸度が高く、実質的に熱収縮がなく、糸条繊度のラインナップ、耐吸水性、コストのバランスに優れる炭素繊維またはガラス繊維が好ましく用いられる。
【0045】
本発明で用いる強化繊維糸条は、前述したようにその繊度が350〜3,500tex、フィラメント数が6,000〜50,000本である。より好ましくは、繊度が400〜1,800tex、フィラメント数が12,000〜38,000本、更に好ましくは600〜1,500tex、フィラメント数が18,000〜36,000本である。繊度が350未満であったり、フィラメント数が6,000本未満であると、強化繊維糸条が高価となり、生産性に優れる注入成形で真価を発揮する本発明の意義が薄れてしまう。一方、繊度が3,500texを超えたり、フィラメント数が50,000本を超えると、強化繊維糸条の糸条中での単繊維(フィラメント)の蛇行が大きくなり、優れた力学特性が得られないだけでなく、強化繊維糸条間の隙間の分布が疎になり過ぎて含浸性に劣る。また、かかる強化繊維糸条は、成形した複合材料が高い強化繊維体積率や力学特性を発現するために、無撚であることが好ましい。
【0046】
本発明で用いる強化繊維糸条としては、特にその種類に制限はないが、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、有機繊維(例えば、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、フェノール繊維、ポリエチレン繊維、ポリビニルアルコール繊維等)、金属繊維またはセラミック繊維、これらの組み合わせ等が挙げられる。炭素繊維は、比強度および比弾性率に優れ、耐吸水性に優れるので、航空機構造材や自動車の強化繊維糸条として好ましく用いられる。
【0047】
中でも、次の炭素繊維であると、成形される複合材料の衝撃吸収エネルギーが大きくなるので、航空機の1次構造材として適用が可能となる。すなわち、JIS−R7601に準拠して測定される引張弾性率(E)が210GPa以上、破壊歪エネルギー(W)が40MJ/m3(=106×J/m3)以上の炭素繊維であると好ましい。より好ましくは、Eが280〜400GPa、かつWが53MJ/m3以上のものである。Wの上限値は、通常に入手可能な炭素繊維に基づくと、80MJ/m3以下であるのが一般的である。
【0048】
Eが210GPa未満の炭素繊維を用いると、構造材としての複合材料の撓み量が許容される様にするために、複合材料を構造部材として用いる場合に板厚を厚くせねばならず、結果的に重くなってしまう。また、Wが40MJ/m3未満であると、複合材料に衝撃が付与される際、炭素繊維の破壊によって吸収される衝撃エネルギーが小さいので、余剰のエネルギーは層間のマトリックス樹脂層の破壊に費やされ、層間のクラックも大きくなるので好ましくない。なお、W(単位はMJ/m3)は、JIS−R7601に規定される測定法に従って測定された引張強度(σ)(単位はMPa)とE(単位はMPa)とに基づき、式W=σ2/2×Eにより算出される。
【0049】
特に、Eが280〜400GPa、かつWが53MJ/m3以上の炭素繊維は、単繊維直径が4〜6μmであり、通常の炭素繊維の7〜10μmよりも細い。単繊維直径が細いものを用いた場合、樹脂の浸透圧の面から不利となるが、本発明の式1および式2を満たすことにより、かかる細い直径を有する力学特性を高く発現させる炭素繊維を用いた場合にも、優れた含浸性を発現させることができるため、本発明の効果を最大限に発現させる態様ということができる。
【0050】
本発明の一方向性強化布帛は、樹脂材料が、布帛の少なくとも表面に、強化繊維糸条の2〜20重量%の範囲で接着しているのが好ましい。より好ましくは6〜18重量%、更に好ましくは11〜17重量%である。樹脂材料が、上記範囲で接着していることにより、布帛の一層高い形態安定性がもたらされる。更に、布帛を積層する際に、布帛同士のタック性(接着性)がもたらされる。その結果、形態安定性に優れ、プリフォーム化が容易な一方向性強化布帛を得ることができる。かかる特性は、2重量%未満では発現し難い。
【0051】
また、上記範囲の樹脂材料が、布帛の少なくとも表面に接着していると、一方向性強化布帛を積層して得られる複合材料において、クラックストッパーの役目を果たす。特に、複合材料が衝撃を受けた時に、損傷抑制の役目を果たし、複合材料に優れた力学特性(特に後述のCAI)をもたらし、いわゆる層間強化効果がある。なお、表面以外に接着している場合も、複合材料中の残留応力の緩和の役目を果たし、上記力学特性向上に寄与する。
【0052】
かかる高靭性化効果に加え、布帛を積層した場合に、表面に接着している樹脂材料がスペーサーとなって、厚み方向に隣接する布帛層間にスペースが形成される。かかるスペースは、注入成形により複合材料を成形する際、マトリックス樹脂の流路の役目を果たし、層間流路形成効果がある。この効果により、マトリックス樹脂の含浸が容易になるだけでなく、その含浸速度も速くなる。
【0053】
樹脂材料が20重量%を越えると、複合材料にした場合の強化繊維体積率が低くなり過ぎるだけでなく、力学特性(特に湿熱処理後の圧縮特性)にも劣る場合がある。また、加熱して布帛同士を接着する場合、樹脂材料が変形することにより樹脂流路を潰し、かえって含浸を妨げる場合があるため好ましくない。
【0054】
かかる樹脂材料は、布帛の少なくとも表面に接着しているが、表面以外に布帛の内部、すなわち、強化繊維糸条の中(強化繊維単糸の間)に接着していてもよい。しかしながら、上述の層間強化効果、層間流路形成効果は、樹脂材料が表面に接着していることにより、特に高い効果が発現されるため、樹脂材料は実質的に布帛の表面にのみ存在しているのが好ましい。表面にのみ存在していると、樹脂材料の接着量を最小限に抑えることができ、複合材料にした場合の樹脂体積を減らす、すなわち強化繊維体積率を一層高くすることができ、複合材料の軽量化効果を一層高く発現させることができる。
【0055】
かかる樹脂材料は、布帛片面に接着していても、布帛両面に接着していてもよい。より低コストに一方向性強化布帛を製造する場合は前者が好ましい。一方向性強化布帛の表裏の使い分けをしたくない場合は後者が好ましく、目的によって使い分けることができる。
【0056】
ここで、樹脂材料としては、例えば多孔性フィルム、短繊維不織布もしくはカットファイバー、粉粒体のような形態をしていて、布帛の全面を覆ってはいないものが好ましい。中でも、マトリックス樹脂の含浸(特に積層面の垂直方向の含浸)に優れる点、成形される複合材料の強化繊維体積率を高くできる点、成形される複合材料が湿熱処理を受けるとき、樹脂材料の水分の拡散を最小限に抑制できる点から、点状の形態であるのが好ましい。
【0057】
かかる樹脂材料は、布帛表面からみた、その点の平均直径(楕円形の場合は平均短径)が、10〜1,000μmであるのが好ましい。より好ましくは20〜500μm、更に好ましくは50〜250μmである。10μm未満であると、点状の樹脂材料が密に分散しすぎて含浸性を阻害する場合がある。また、1,000μmを超えると、疎になり過ぎ均一に分散できない場合がある。また、布帛表面に接着している樹脂材料の布帛面に垂直方向における凹凸が大き過ぎると、それの厚み方向に隣接する強化繊維糸条が屈曲しやすい。かかる観点から、布帛表面における樹脂材料の平均厚みは、5〜250μmであることが好ましい。より好ましくは10〜100μm、更に好ましくは15〜80μmである。
【0058】
樹脂材料の成分は、布帛の取扱性等を向上させ、得られる複合材料の力学特性を低下させない、好ましくは向上させるものであれば、特に限定されない。樹脂材料として、各種の熱硬化性樹脂および/または熱可塑性樹脂を使用できる。
【0059】
熱可塑性樹脂を主成分として用いる場合には、例えば、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フェノール、ポリスルフォン、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびフェノキシから選ばれる少なくとも1種のであるのが好ましい。中でもポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテルおよびポリエーテルスルフォンから選ばれる少なくとも1種のであるのがとりわけ好ましい。
【0060】
熱可塑性樹脂は、樹脂材料の主成分となり、その配合量が、70〜100重量%であることが好ましい。より好ましくは75〜97重量%であり、更に好ましくは80〜95重量%である。配合量が70重量%未満であると、力学特性(特にCAI)に優れた複合材料を得られない場合がある。また、熱可塑性樹脂を主成分とした場合、樹脂材料の布帛への接着性や接着加工性が劣る場合がある。この場合には、樹脂材料に少量の粘着付与剤、可塑剤等を副成分として配合し、0〜150℃(より好ましくは30〜100℃)のガラス転移温度にするとよい。かかる副成分としては、マトリックス樹脂と同様または類似のものであると、マトリックス樹脂との接着性、相溶性に優れる利点がある。
【0061】
得られる複合材料の力学特性を高いものにするためには、特に緯方向補助繊維糸条群を構成する補助繊維糸条とマトリックス樹脂との接着性は極めて重要であり、接着力が高ければ高い方が、優れた力学特性を発現するのに想像以上に寄与する。かかる接着性に関する直接的な指標としては、本発明の実施例に記載の成形方法により得られる複合材料において、強化繊維体積率Vfが53〜65%であり、かつ、その複合材料の特性が次の要件a〜cの少なくとも2つを満たすのが好ましい。より好ましくは、要件a〜cの全てを満たすのがよい。かかる場合、マトリックス樹脂との接着性に優れるということができる。すなわち、本発明でいう力学特性の中でも、最も重要な特性である。なお、SACMAとは、Suppliers of Advanced Composite Materials Associationの略である。
【0062】
要件a:衝撃付与後の常温圧縮強度(CAI)が240MPa以上である。かかるCAIは、SACMA−SRM−2R−94に従ってDry条件にて測定されたものである。
【0063】
要件b:常温有孔圧縮強度(OHC/RT)が275MPa以上であり、かつ湿熱処理後の高温有孔圧縮強度(OHC/HW)が215MPa以上である。かかるOHC/RTは、SACMA−SRM−3R−94に従ってDry条件にて測定したものである。OHC/HWは、同じ試験片を72℃温水中に14日間浸漬した後、直ちに82℃雰囲気下にて測定したものである。
【0064】
要件c:常温0°圧縮強度(CS/RT)が1,350MPa以上、かつ湿熱処理後の高温0°圧縮強度(CS/HW)が1,100MPa以上である。CS/RTは、SACMA−SRM−1R−94に従ってDry条件にて測定したものである。CS/HWは、同じ試験片を72℃温水中に14日間浸漬した後、直ちに82℃雰囲気下にて測定したものである。
【0065】
例えば、エポキシがマトリックス樹脂の場合、緯方向補助繊維糸条群を構成する補助繊維糸条には、補助繊維の耐熱性、耐吸水性、糸条繊度のラインアップの他に、エポキシとの接着性に優れるものを用いるのが好ましくい。これらを満たす好ましい例として、ポリアミド(6、66、9、12、610、612、芳香族系、それらの共重合品等)、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリケトン、フェノール、ポリイミドが挙げられ、中でもポリアミド66でがとりわけ好ましい。
【0066】
本発明のプリフォームは、少なくとも、上述の一方向性強化布帛が複数枚積層され、かつ、積層された布帛同士が少なくとも部分的に接着しているものである。ここで、布帛同士が接着してないと、プリフォームの取扱性に劣る。なお、かかる接着するためには、布帛に前述の樹脂材料が付着しているのが好ましい。
【0067】
本発明の複合材料は、少なくとも、上述の一方向性強化布帛が複数枚積層されたものにマトリックス樹脂が含浸しているものである。布帛に含浸されたマトリックス樹脂は、含浸後に、固化(硬化または重合)し、複合材料を形成する。
【0068】
本発明の複合材料は、その優れた力学特性を最大限に発現させるために、複合材料における強化繊維糸条の体積含有率が53〜65%であるのが好ましい。53%未満であると、複合材料の軽量化効果に劣る場合がある。また、65%を超えると、後述の注入成形での成形が困難となり、生産性よく複合材料を得られない場合がある。
【0069】
かかるマトリックス樹脂としては、熱可塑性、熱硬化性のいずれも使用することができるが、その成形性、力学特性の面から熱硬化性樹脂であるのが好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ、フェノール、ビニルエステル、不飽和ポリエステル、シアネートエステル、ビスマレイミド、ベンゾオキサジン、アクリルから選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。更にエラストマー、ゴム、硬化剤、硬化促進剤、触媒等を添加したものも使用することができる。中でも、航空機の一次構造部材で要求される極めて高い力学特性を達成するためには、エポキシまたはビスマレイミドであるのが好ましい。
【0070】
本発明の複合材料は、例えば、注入成形(RTM(Resin Transfer Molding)、RFI(Resin Film Infusion)、RIM(Resin Injection Molding)、真空アシストRTM等)、プレス成形等の各種成形方法およびそれらを組み合わせた成形方法にて成形することができる。
【0071】
より好ましい複合材料の成形方法としては、生産性の高い注入成形方法が挙げられる。かかる注入成形方法として、好ましくはRTMが挙げられる。RTMは、例えば、雄型および雌型により形成したキャビティ中にマトリックス樹脂を加圧して注入する成形方法がある。より好ましい成形方法として、真空アシストRTMが挙げられる。真空アシストRTMは、上述の通りであるが、例えば、雄型または雌型のいずれかとバッグ材(例えば、ナイロンフィルム、シリコンラバー等の柔軟性を有するもの)により形成したキャビティを減圧し、大気圧との差圧にてマトリックス樹脂を注入する。この場合、キャビティ内の一方向性強化布帛に樹脂拡散媒体(メディア)を配置し、かかるメディアによりマトリックス樹脂の拡散・含浸を促進する。成形後には、複合材料からメディアを分離することが好ましい。これらの注入成形方法は、成形コストの面から好ましく適用される。
【0072】
本発明の複合材料の用途は、特に限定されないが、極めて高いCAI、OHC、CS等の優れた力学特性を有しているため、特に航空機、自動車、または、船舶等の輸送機器における一次構造部材、二次構造部材、外装部材、内装部材もしくはそれらの部品のいずれかに用いられると、その効果を最大限に発現する。
【0073】
【実施例】
実施例および比較例に用いる原材料および成形方法は、次の通りである。
1.強化繊維糸条:
PAN系炭素繊維、24,000フィラメント、繊度1,030tex、引張強度5,900MPa、引張弾性率295GPa、破断伸度2.0%、破壊歪エネルギー59MJ/m3。
2.連続した補助繊維糸条A:
ガラス繊維、ECE225 1/0 1.0Z、繊度22.5tex、伸度3%以上、バインダータイプ”DP”(日東紡製)。
3.連続した補助繊維糸条B:
ポリアミド66繊維、7フィラメント、繊度1.7tex。
4.不連続の補助繊維が構成する層状体:
ポリアミド12繊維(繊維径9μm)が構成する不織布、目付5g/m2。
5.織成条件(一方向性織物の場合)
強化繊維糸条をたて糸として(補助繊維糸条を補助たて糸とする場合も同様)、綜絖(メール内寸が2.5mm)および筬(筬羽隙間は3mm)にて所望の糸条幅よりも一旦狭める。次いで、レピアを用いて補助繊維糸条をよこ糸として打ち込んで製織した後、織前で開口を規制するバーやニップロールにてたて糸を所望の糸条幅に拡幅して巻き取った。
6.樹脂材料:
ポリエーテルスルフォン樹脂(住友化学工業(株)製スミカエクセル5003P)60重量%(主成分)と次のエポキシ樹脂組成物40重量%(副成分)とを2軸押出機にて溶融混練したものを冷凍粉砕したもの。平均粒子径D50((株)セイシン企業製LMS−24で測定)115μm、ガラス転移点92℃。
【0074】
エポキシ樹脂組成物−ジャパンエポキシレジン(株)製”エピコート”806を21重量部、日本化薬(株)製NC−3000を12.5重量部、および、日産化学工業(株)製TEPIC−Pを4重量部を、100℃で均一になるまで攪拌したもの。
7.マトリックス樹脂:
次の主液100重量部に、次の硬化液を39重量部加え、80℃にて均一に様に撹拌したエポキシ樹脂組成物。80℃におけるE型粘度計による粘度:55mPa・s、1時間後の粘度:180mPa・s、180℃で2時間硬化後のガラス転移点:197℃、曲げ弾性率:3.3GPa。
【0075】
主液−エポキシとして、Vantico(株)製”アラルダイト”MY−721を40重量部、ジャパンエポキシレジン(株)製”エピコート”825を35重量部、日本化薬(株)製GANを15重量部、および、ジャパンエポキシレジン(株)製”エピコート”630を10重量部を70℃で1時間攪拌して均一溶解させたもの。
【0076】
硬化液−ポリアミンとして、ジャパンエポキシレジン(株)製”エピキュア”Wを70重量部、三井化学ファイン(株)製3,3’−ジアミノジフェニルスルホンを20重量部、および、住友化学工業社製”スミキュア”Sを10重量部を100℃で1時間攪拌して均一にした後に70℃に降温し、硬化促進剤として、宇部興産(株)製t−ブチルカテコールを2重量部を更に70℃で30分間攪拌して均一溶解させたもの。
【0077】
(実施例1)
上記強化繊維糸条を、お互いに並行に引き揃え、2.3本/cmの密度で一方向に配列し、シート状の強化繊維糸条群を形成した。次に、補助繊維糸条Aを、お互いに並行に引き揃え、3本/cmの密度で、上記強化繊維糸条群と直交する方向に配列し、強化繊維糸条と補助繊維糸条Aとを、織機を用いて平織組織に交錯させ、一方向性織物を形成した。
【0078】
得られた一方向性強化布帛は、強化繊維糸条の目付が239g/m2、強化繊維糸条間の隙間(GAP)は0.2mm(たて補助繊維糸条は存在しないものとして測定)、K1=7.4、K2=302であった。
【0079】
(実施例2)
上記強化繊維糸条を、お互いに並行に引き揃え、1.8本/cmの密度で一方向に配列し、シート状の強化繊維糸条群を形成した。また、補助繊維糸条Aを、お互いが並行に引き揃え、1.8本/cmの密度で、強化繊維糸条群と同じ方向で、かつ、強化繊維糸条と交互に一方向に配列し、経方向補助繊維糸条群を形成した。両者を用いてシート状の経方向糸条群を形成した。次に、補助繊維糸条Bを、お互いに並行に引き揃え、3本/cmの密度で、経方向糸条群と直交する方向に配列し、上記補助繊維糸条Aと補助繊維糸条Bとを織機を用いて平織組織に交錯させ、一方向性ノンクリンプ織物を形成した。
【0080】
かかる一方向性ノンクリンプ織物に、粒子状の樹脂材料を、ノードソン(株)製トリボIIガンにて均一分散させながら、表面に26g/m2(14重量%)塗布した。その後、185℃、0.3m/minの条件にて遠赤外線ヒーターを通過させ、樹脂材料を布帛片表面に接着して一方向性強化布帛を得た。
【0081】
得られた一方向性強化布帛は、樹脂材料によって交錯点が固定されているため、実施例1のものよりも布帛の取扱性に優れるだけでなく、強化繊維糸条の真直性を保つことができた。また、強化繊維糸条の目付は190g/m2、GAPは0.38mm、K1=5.9、K2=310であった。
【0082】
(実施例3)
強化繊維糸条の糸条幅を狭める様に製織した以外は、実施例2と同様にして一方向性強化布帛を得た。
【0083】
得られた一方向性強化布帛は、強化繊維糸条の目付が188g/m2、GAPは0.49mm(たて補助繊維糸条は存在しないものとして測定)、K1=5.9、K2=343であった。
【0084】
(実施例4)
実施例2と同様に強化繊維糸条を引き出し、櫛形ガイドを通過させて糸条幅を狭め、簾状の強化繊維糸条群を形成した。次に、強化繊維糸条群の両面に上記層状体を配置して離型紙にて挟み、180℃、線圧0.2MPaでプレスロールを連続的に通過させ、糸条幅を拡幅すると同時に、層状体を表面に接着して一方向性強化布帛を得た。
【0085】
得られた一方向性強化布帛は、層状体の接着によって形態安定性優れ、強化繊維糸条の真直性にも優れた。強化繊維糸条の目付は190g/m2、強化繊維糸条間の隙間は0.23mm、K1=5.9、K2=263であった。
【0086】
(比較例1)
補助繊維糸条Bに替えて、補助繊維糸条Aを用いた以外は実施例2と同様にしてノンクリンプ織物を形成し、樹脂材料を付着させて一方向性強化布帛を得た。
【0087】
得られた一方向性強化布帛は、強化繊維糸条の目付が189g/m2、強化繊維糸条同士の隙間は0.71mm、K1=5.9、K2=414であった。
【0088】
(比較例2)
実施例2において、補助繊維糸条Aを用いずに、強化繊維糸条と補助繊維糸条Bとを、織機を用いて平織組織に交錯させて一方向性織物を形成し、圧縮空気(0.5MPa)をφ0.5mmのノズルから吹き付け、開繊処理をした。次いで、実施例2と同様にして樹脂材料を付着させて一方向性強化布帛を得た。
【0089】
得られた一方向性強化布帛は、強化繊維糸条の目付が189g/m2、強化繊維糸条同士の隙間は0.1mm、K1=5.9、K2=221であった。
【0090】
(実施例5、比較例3)
実施例1〜4、比較例1、2の一方向性強化布帛を用いて、次の成形方法1によって、本文中に記載の要件a〜cに合致する複合材料を成形し、評価した。
【0091】
<成形方法1(力学特性テスト用)>
以下において、本発明の成形方法を、図面を参照しながら説明する。
【0092】
図1は、本発明の複合材料の製造装置の一態様の概略断面図である。図1に示す様に、平面状のアルミ製成形型12の表面に、一方向性強化布帛11を所定の枚数と角度で積層する。積層体の最表面にピールプライ13であるポリエステル繊維の離型処理された織物を配置し、その上に樹脂拡散媒体(メディア)14であるポリプロピレン製メッシュ状シートを配置し、更にその上に、押さえ板となるアルミ製カウルプレート20を配置する。積層体が成形型と接した周囲には、エッジ・ブリーザー16であるポリエステル繊維の不織布を複数枚積層して張り巡らす。真空吸引口18やエッジ・ブリーザーから最も近いメディアまでの距離が10mm以上離れるようにメディアの平面視の最大外形がメディア面の積層体の平面視の最大外形よりも10〜50mm程度小さくなるように配置する(図示せず)。全体をバッグ材15であるナイロンフィルムで覆い、バッグ材と成形型の周囲を、シール材17で密閉する。樹脂注入口19は、メディアに接するように取り付け、シール材で密閉する。真空吸引口は、樹脂注入口から遠いエッジ・ブリーザー上に取り付け、同様にシールする。真空吸引口から吸引し、バッグ材の内が0.08〜0.1MPaの圧力になるように真空吸引する。3℃/minの速度で、装置全体を80℃に昇温する。真空吸引を継続しながら、積層体が80℃に達してから1時間保持する。その後、樹脂注入口のバルブを解放して、メディアからマトリックス樹脂を必要な量だけ注入する。含浸が完了したら、樹脂注入口のバルブを閉め、マトリックス樹脂の注入を中止する。なお、真空吸引は、注入開始から4時間継続する。1.5℃/minの速度で、装置全体を130℃まで昇温する。130℃に達した時点で、真空吸引口をシールして吸引を中止する。この時、バッグ材の中を真空状態に保つ様にシールする。130℃に達してから2時間保持してマトリックス樹脂を硬化させる。その後、3℃/minの速度で常温まで降温する。バッグ材、ピールプライおよびメディアを除去して、一旦、複合材料を取り出す。次いで複合材料を、成形型上に置き、1.5℃/minの速度で180℃まで昇温する。180℃に達してから2時間保持してマトリックス樹脂を二次硬化させる。その後、3℃/minの速度で常温まで降温して、複合材料を得る。
【0093】
(実施例6、比較例4)
実施例1〜4、比較例1、2の一方向性強化布帛を用いて、次の成形方法2に沿ってそれぞれ成形し、含浸性を評価した。
【0094】
特に実施例2、3の一方向性強化布帛は、アイロン(160℃)にて高すぎない温度で布帛同士を接着させることができたため、積層する際のタック性等の優れ、成形する時間を短くできた。また、後述の加熱・加圧によるプリフォーム化によっても、一体化して取扱性に優れたプリフォームを得ることができた。
【0095】
<成形方法2(厚板含浸テスト用)>
アルミ製成形型の表面に、一方向性強化布帛を[−45/0/+45/90]の順に、強化繊維体積率55%の時に17mmになるように積層する(実施例1は72枚、実施例2、3、比較例1、2は90枚)。積層体の最表面にアルミ製カウルプレート20を配置し、全体をナイロンフィルムで覆い、バッグ材と成形型の周囲をシール材で密閉し、バッグ材の内が0.08〜0.1MPaの圧力になるように真空吸引する。3℃/minの速度で、装置全体を80℃に昇温する。真空吸引を継続しながら、積層体が80℃に達してから1時間保持し、その後、3℃/minの速度で常温まで降温し、真空吸引を中止する。バッグ材を除去して、プリフォームを得る。
【0096】
図2は、図1とは異なる態様の、本発明の複合材料の製造装置の概略縦断面図である。なお、この図で図1と同じ符号のものは、図1の部材と同じものであることを示している。図2に示す様に、真空吸引口22および樹脂注入口23の配置を図1とは変更し、マトリックス樹脂を厚み方向に流すようにした。また、吸引効率を上げるためにメディア14を成形型面にも配置し、真空吸引口にはチャンネル24を配置した。更に、積層体として予め一体化したプリフォーム21を用いた。それ以外は、上記成形方法1と同様にして成形した。なお、樹脂の流出が可視できる様に成形型としてガラス製のものを用い、含浸時間を直接観察により測定した。
【0097】
以上の結果を表1にまとめたのが次の表1である。
【0098】
【表1】
【0099】
この表から分かるように、複合材料の力学特性に関し、本実施例のものは、要件a〜cの少なくとも2つを満たし、非常に高い値を示した。中でも、実施例2が特に優れた。また、複合材料の断面を観察した結果、実施例2、4の一方向性強化布帛の層のうねりは、実施例1、3に比べて相対的に小さい。これに起因して、極めて高い常温での力学特性を発現したと推測される。
【0100】
一方、比較例1のものは、GAPが大きいため含浸性には優れるが、逆に力学特性に劣った。これは、補助繊維糸条の繊度が本発明の好ましい範囲外であることにも起因している。一方、比較例2のものは、力学特性は充分満足するが、含浸性に著しく劣り、その両立が達成されていない。
【0101】
【発明の効果】
本発明によれば、一方向性強化布帛における強化繊維糸条間の隙間の分布およびその大きさを最適なものにしたので、マトリックス樹脂の含浸性が良好で、特にCAI、OHC、CS等の力学特性に優れる複合材料を得られる一方向性強化布帛、プリフォームおよび複合材料を得ることができる。
【0102】
このようにして得られた複合材料は、航空機、自動車、船舶等の輸送機器における構造部材、内層部材または外層部材などの各部材をはじめ、幅広い分野に適するが、特に航空機の構造部材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合材料の製造装置の一態様の概略断面図である。
【図2】図1とは異なる態様の、本発明の複合材料の製造装置の概略縦断面図である。
【符号の説明】
11:一方向性強化布帛
12:成形型
13:ピールプライ
14:樹脂拡散媒体
15:バッグ材
16:エッジ・ブリーザー
17:シール材
18、22:真空吸引口
19、23:樹脂注入口
20:カウルプレート
21:プリフォーム
24:チャンネル
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂の含浸性が良好で、力学特性(特に圧縮強度)にも優れる複合材料を得られる一方向性強化布帛、プリフォームおよびこれらに樹脂を含浸した複合材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた複合材料(以下、FRPと記す)は、優れた力学特性、軽量化等の要求特性を満たすことから主に航空・宇宙、スポーツ用途に用いられてきた。これらFRPの生産性に優れる成形法としては、例えばレジン・トランスファー・モールディング(RTM)成形法が挙げられる。かかるRTM成形法では、マトリックス樹脂が含浸されていない、ドライな布帛を成形型の中に配置して、低粘度の液状マトリックス樹脂を強制的に注入することにより強化繊維中にマトリックス樹脂を含浸させてFRPを成形する。
【0003】
ところがこのRTM成形法は、一般的にはFRPの生産性には優れるが、用いる強化繊維基材(例えばドライな織物)の含浸性が悪いと含浸時間が長くなるだけでなく、FRPにボイド等が発生して、生産性を低下させる問題があった。上記問題に対し、例えば特許文献1には、織物の開口率を適切にすることにより、厚み方向の含浸性を改善する旨の記載がある。また、特許文献2には、一方向性の炭素繊維織物における炭素繊維糸条間の隙間により、含浸性を改善する旨の記載がある。
【0004】
しかしながら、含浸性は、上記特許文献等に記載のある単純な開口率や隙間の大きさだけでなく、開口している箇所の布帛中の分布状態、更には強化繊維糸条のクリンプ(屈曲)程度も大きく影響をうけ、単純な開口率や隙間だけでは実際の含浸挙動を説明することができない。このことは、例えば10mm以上の厚い板厚を有するFRPを成形する場合に特に顕在化する。
【0005】
また、開口率や隙間を単純に大きくし過ぎることは、含浸性には有利に働くものの、FRPにした場合に樹脂リッチ部分を多く形成することを意味する。これは、成形時の残留応力の発生、不均一性の増大の原因となり、力学特性(特に圧縮強度、疲労強度等)の低下だけでなく、サーマルクラックの発生等をも引き起こす原因となる。この問題は、単純にFRPに未含浸部やボイドが発生することによる力学特性低下とは異なるものである。
【0006】
つまり、これらに全ての問題点に対応した技術が存在してこそ、始めてFRPに要求される含浸性と力学特性とが両立できるのであるが、上記従来技術によると、含浸性と力学特性(特に圧縮強度)とを兼ね備える布帛は得られておらず、これら要求を満たす技術が渇望されていた。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−37904号公報(第4頁、段落0014)
【0008】
【特許文献2】
特開平11−107107号公報(第8頁、段落0068)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、マトリックス樹脂の含浸性が良好で、力学特性(特に圧縮強度)にも優れる複合材料を得られる一方向性強化布帛、プリフォームおよびそれにマトリックス樹脂を含浸して得られる複合材料を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の一方向性強化布帛は、繊度が350〜3,500tex、フィラメント数が6,000〜50,000本である連続した強化繊維糸条を一方向に並行するように引き揃えた強化繊維糸条群と、連続した補助繊維糸条を強化繊維糸条と交差する方向に延在した緯方向補助繊維糸条群または不連続の補助繊維が構成する層状体とが布帛を構成し、かかる布帛における強化繊維糸条の目付(FAW)が50〜370g/m2であり、かつ、次の式1、式2のいずれをも満たすことを特徴とするものである。
【0011】
FAW=K1×(TEX)1/2 …………(1)
FAW=−317×GAP+K2 …………(2)
ここで、FAW:強化繊維糸条の目付(g/m2)
TEX:強化繊維糸条の繊度(tex)
GAP:強化繊維糸条間の隙間(mm)
K1:4〜9の定数
K2:260〜395の定数
本発明のプリフォームは、上記布帛が複数枚積層され、かつ、積層された布帛同士が少なくとも部分的に接着していることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の複合材料は、上記布帛が複数枚積層され、かつ、樹脂がマトリックスとして含浸していることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の課題に影響を及ぼす因子として、次の2つの因子が挙げられ、いずれもこれらの値が大きい方が上述した含浸性に関しては向上する。
【0014】
[因子1]:布帛の全体面積に占める開口箇所面積の比率
[因子2]:強化繊維糸条間の隙間
ここで、[因子1]は、換言すれば布帛中における開口総面積の多少を表し、一方、[因子2]は、上記布帛を微視的に見た場合の開口している面積を表す。
【0015】
しかしながら、前記因子を単に大きくして含浸性を向上した場合、FRPには樹脂リッチ部分が多く形成され、成形時の残留応力の発生、FRPの不均一性の増大の原因となり、力学特性(特に圧縮強度)の低下が引き起こされる。
【0016】
ここで、含浸性だけに注目しても、上記[因子1]、[因子2]のみが含浸性に影響するものではない。例えば、同じ開口率であって、小さい開口箇所が布帛中に多数分布しているものと、大きい開口箇所が布帛中に少数分布しているものの含浸性は大きく異なる。また、布帛の強化繊維糸条の目付が異なる布帛を用いて、厚みが同じ複合材料を得るべく厚み方向に樹脂を含浸させる場合、隙間の大きさが異なっても同じ含浸性を示す。すなわち、目付が大きい布帛は、目付が小さい布帛に較べて積層枚数は少なくて済むため、大きい目付の布帛の隙間は小さくても同じ含浸性を示すのである。
【0017】
以上の経験的事実に基づき、本発明では、含浸性だけでなく、力学特性にも影響を及ぼす上記[因子1]、[因子2]以外の影響因子として、
[因子3]:微視的な開口箇所(強化繊維糸条間の隙間)の布帛中での分布の状態と、更には
[因子4]:強化繊維糸条のクリンプ(屈曲)、
の影響が非常に大きいことを見出し、それらを最適な範囲に設定したものである。
【0018】
まず、[因子3]について以下に説明する。
【0019】
本発明の一方向性強化布帛は、前述の通り繊度が350〜3,500tex、フィラメント数が6,000〜50,000本である連続した強化繊維糸条を一方向に並行するように引き揃えた強化繊維糸条群と、連続した補助繊維糸条を強化繊維糸条と交差する方向に延在した緯方向補助繊維糸条群、または不連続の補助繊維が構成する層状体とが布帛を構成し、かかる布帛における強化繊維糸条の目付(FAW)が50〜370g/m2であり、かつ、次の式1、式2のいずれをも満たす。
【0020】
FAW=K1×(TEX)1/2 ……(1)
FAW=−317×GAP+K2 ……(2)
ここで、上記式に登場する各用語の意味は下記の通りである。
【0021】
FAW:
強化繊維糸条の目付(g/m2)であり、平面状にした布帛から、布帛の全幅方向に渡って等間隔に一辺125mmの正方形を3箇所切り出し、そのサンプルから測定されるる平均値を指す。なお、サイジング剤や後述の樹脂材料等が1重量%以上付着している場合は、サイジング剤や樹脂材料が可溶、かつ、強化繊維が不溶の溶媒等を用いて除去して測定される平均値を指す。
【0022】
TEX:
強化繊維糸条の繊度(tex)であり、JIS−R7601に沿って測定した値を指す。なお、サイジング剤や樹脂材料が1重量%以上付着している場合は、前述の方法等でサイジング剤や樹脂材料を除去した値を用いる。
【0023】
GAP:
布帛を構成している強化繊維糸条と強化繊維糸条間の隙間(mm)であり、平面状にした布帛について、その垂線方向から見た時の強化繊維糸条間の隙間を指し、補助繊維糸条等の強化繊維糸条以外のもの(例えば後述の補助繊維糸条、ステッチ糸等)は存在しないものとして扱い、布帛の全幅方向にわたり、均等間隔に選択した50箇所の隙間の平均値を用いる。
【0024】
K1:
4〜9の範囲の定数である。
【0025】
K2:
260〜395の範囲の定数である。
【0026】
上記式1は、用いる強化繊維糸条の繊度に対し、布帛の強化繊維糸条の目付、すなわち、強化繊維糸条が配置される密度(後述の強化繊維糸条間の隙間の密度)を定義するものである。K1が4未満の場合は、布帛中に形成される強化繊維糸条が疎になり過ぎて樹脂リッチ部分を多く形成するため力学特性に劣る。逆に、K1が9を超える場合は、布帛中に形成される強化繊維糸条が密になり過ぎて含浸性に劣る。より好ましいK1は5〜8、更に好ましいK1は5.5〜7.5である。
【0027】
上記式2は、布帛の強化繊維糸条の目付(強化繊維糸条間の隙間の密度)に対し、強化繊維糸条間の隙間の大きさを定義するものである。K2が260未満の場合は布帛中に形成される強化繊維糸条間の隙間が少なくなりすぎ含浸性に劣る。逆に、K2が395を超える場合は布帛中に形成される強化繊維糸条間の隙間が多くなりすぎ力学特性に劣る。より好ましいK2は290〜380、更に好ましいK2は300〜365である。なお、式2で算出される強化繊維糸条間の隙間が負の値になる場合は下限値をゼロとして扱うものとする。
【0028】
かかる式1、式2のいずれをも満たすことにより、布帛中の最適な強化繊維糸条間の隙間の分布、および、その大きさが決定されるのである。
【0029】
次に、[因子4]について以下に説明する。
【0030】
[因子4]は、強化繊維糸条のクリンプにより形成される立体的な空間の体積を表し、大きい方が含浸性に優れる。しかしながら、本発明の課題の一つである複合材料にしたときの力学特性、特に圧縮強度は、かかるクリンプが存在すると、著しく低下する。一方向性強化布帛は、強化繊維糸条よりも繊度(または断面積)の小さい連続した補助繊維糸条、または不連続の補助繊維を用いるため、その含浸性および力学特性への影響が小さいと一般的に考えられていた。しかしながら、本発明者らは、補助繊維糸条の繊度が、含浸性だけでなく、力学特性、特に圧縮強度への影響が、予想外にも極めて大きいことを見出したのである。
【0031】
すなわち、本発明の緯方向補助繊維糸条群を構成する補助繊維糸条の繊度(Ta1)は、強化繊維糸条の繊度(Tc)の1%以下であるのが好ましい。すなわち、(Ta1×100)/Tc≦1である。より好ましくは0.5%以下、更に好ましくは0.2%以下である。かかる比率の下限は特にないが、布帛の形態安定や製造安定の面から、0.01%以上であるのが一般的である。
【0032】
かかる補助繊維糸条は、強化繊維糸条を横切って配置されているため、両者が交差または交錯する箇所が必ず形成される。Ta1がTcの1%を超えると、かかる箇所において、補助繊維糸条が強化繊維糸条を布帛の厚み方向にクリンプ(屈曲)させ、強化繊維糸条の真直性を阻害してしまう場合がある。かかるクリンプの形成により、力学特性、特に圧縮強度に優れる複合材料を得難い。かかるクリンプは、複合材料の強化繊維体積率が高い(よって軽量化効果に優れる)ほど顕著に発現し、力学特性を低下させる。すなわち、優れた軽量化効果および極めて高い力学特性が要求される航空機の一次構造部材等に適用できる様な複合材料が得られない。Ta1が上記範囲であると、強化繊維糸条のクリンプは僅かながら形成されるものの、その真直性には影響を及ぼすには至らない。そのため、力学特性の低下は実質的に無視できるレベルとなり、高い強化繊維体積率でありながら、極めて高い力学特性を発現する複合材料を得ることができるのである。
【0033】
Ta1は、それ単独では適した指標になり難いが、Tcが800〜1,700texの炭素繊維糸条と想定すると、上記のクリンプの影響低減の観点から、Ta1は、8tex以下であるのが好ましい。より好ましくは5tex以下、更に好ましくは2tex以下である。
【0034】
同様の観点から、不連続の補助繊維が構成する層状体の目付は、強化繊維糸条の目付の10%以下であるのが好ましい。より好ましくは6%以下、更に好ましくは4%以下である。不連続の補助繊維は、そのもの単独でなく層状体として適用するため、連続した補助繊維糸条よりクリンプに及ぼす影響は大きくない場合が多い。また、層状体の目付、および不連続の補助繊維の繊維径は、それ単独では適した指標になり難いが、上記Tcが800〜1,700texの炭素繊維糸条と想定すると、目付が2〜20g/m2、繊維径が15μm以下であるのが好ましい。より好ましくは目付が4〜14g/m2、繊維径が12μm以下、更に好ましくは目付が5〜13g/m2、繊維径が9μm以下である。
【0035】
上記要件は、逆の観点からは含浸性に著しく劣ることを意味する。しかしながら、上記式1、式2のいずれをも満たしている場合、含浸性を充分高くすることができるため、高い力学特性を発現する意味で、Ta1が上記範囲であること、または層状体の目付が上記範囲であることは本発明のより好ましい態様ということができる。
【0036】
本発明の一方向性強化布帛は、連続した強化繊維糸条が、お互いに並行するように引き揃えられ、一方向に配列して強化繊維糸条群を形成している。また、連続した補助繊維糸条は、強化繊維糸条を横切って、すなわち、強化繊維糸条と直交するか、斜めに交差する方向に延在して緯方向補助繊維糸条群を形成している。一方、別の態様として、不連続の補助繊維は、強化繊維糸条を横切って存在し、それら複数が一体化して層状体を構成している。一方向性強化布帛が形態安定するためには、補助繊維糸条または層状体が強化繊維糸条を横切り、強化繊維糸条が配列している方向以外の方向を支持する必要があるためである。
【0037】
布帛における強化繊維糸条の目付は、50〜370g/m2である。より好ましくは100〜270g/m2、更に好ましくは140〜240g/m2である。50g/m2未満では、厚い複合材料を得る場合は積層枚数が多くなり過ぎ、積層の時間がかかり過ぎるだけでなく、用いる強化繊維糸条に制限を受ける。また、370g/m2を超えると、布帛を多数積層した複合材料において、一層が大きく(層間が少なく)なり過ぎ、応力集中が発生して複合材料の力学特性に劣る。
【0038】
一方向性強化布帛の組織形態は、例えば、連続した補助繊維糸条がお互いに並行に引き揃えられ、一方向に配列している織組織または不織組織であってもよいし、補助繊維糸条がたて編(例えば、1/1トリコット編組織等)またはよこ編で配置している編組織であってもよい。また、不連続の補助繊維の層状体(不織布、マット、紡績糸等により構成される布帛等)が貼り合わされて一体化しているシートでもよいし、それらの組み合わせでもよい。なお、連続した補助繊維糸条の密度は、一方向性強化布帛の形態安定、強化繊維糸条との交差または交錯箇所の影響の最小限化のため、0.3〜6本/cmであるのが好ましい。より好ましくは1〜4本/cmである。中でも、一方向性織物であると、製造の容易さ、形態安定性だけでなく、マトリックス樹脂の含浸性、強化繊維糸条の真直性にも優れるため好ましい。
【0039】
かかる一方向性織物としては、布帛の両側に緯方向補助繊維糸条群が配され、それを構成する補助繊維糸条と強化繊維糸条群を構成する補助繊維糸条とが織組織(平織、綾織、繻子織等)を構成している織物が挙げられる。
【0040】
更に好ましい例としては、強化繊維糸条と並行する方向に延在する、連続した補助繊維糸条から構成される経方向補助繊維糸条群を有し、かつ、布帛の両側に緯方向補助繊維糸条群が配され、それを構成する補助繊維糸条と経方向補助繊維糸条群を構成する補助繊維糸条とが織組織を構成し、強化繊維糸条を一体に保持しているノンクリンプ織物が挙げられる。
【0041】
かかる経方向補助繊維糸条群を用いてノンクリンプ織物にすると、隣り合う強化繊維糸条の間隔を確保することにより、強化繊維糸条間の隙間を安定させることができる。また、布帛凹凸を平滑化する効果も発現するため、複合材料において積層した布帛層のうねりを抑制し、より高い力学特性を発現し得る。更には、補助繊維糸条が交差または交錯する箇所での強化繊維糸条の乱れを抑制し、その真直性を維持するガイドの如き役割も期待できる。以上の効果により、例えば航空機の一次構造部材に要求されるレベルの力学特性に極めて優れる複合材料を得ることができるのである。
【0042】
経方向補助繊維糸条群を構成する補助繊維糸条の繊度(Ta2)は、強化繊維糸条の繊度(Tc)の20%以下であるのが好ましい。すなわち、(Ta2×100)/Tc≦20である。より好ましくは10%以下、更に好ましくは4%以下である。かかる比率の下限は特にないが、布帛の形態安定性、製造安定性の面から、0.1%以上であるのが一般的である。
【0043】
経方向補助繊維糸条群は、強化繊維糸条と並行していてそれを横切らないため、強化繊維糸条をクリンプさせることはない。この意味から、Ta2は上記Ta1よりも大きい繊度であっても問題ないが、Ta2はTcの20%を超えると、成形される複合材料の重量が大きくなり、複合材料の本質的な目的である軽量化効果を損なうため、好ましくない。
【0044】
経方向補助繊維糸条群を構成する補助繊維糸条は、引張破断伸度が高く、実質的に熱収縮がなく、糸条繊度のラインナップ、耐吸水性、コストのバランスに優れる炭素繊維またはガラス繊維が好ましく用いられる。
【0045】
本発明で用いる強化繊維糸条は、前述したようにその繊度が350〜3,500tex、フィラメント数が6,000〜50,000本である。より好ましくは、繊度が400〜1,800tex、フィラメント数が12,000〜38,000本、更に好ましくは600〜1,500tex、フィラメント数が18,000〜36,000本である。繊度が350未満であったり、フィラメント数が6,000本未満であると、強化繊維糸条が高価となり、生産性に優れる注入成形で真価を発揮する本発明の意義が薄れてしまう。一方、繊度が3,500texを超えたり、フィラメント数が50,000本を超えると、強化繊維糸条の糸条中での単繊維(フィラメント)の蛇行が大きくなり、優れた力学特性が得られないだけでなく、強化繊維糸条間の隙間の分布が疎になり過ぎて含浸性に劣る。また、かかる強化繊維糸条は、成形した複合材料が高い強化繊維体積率や力学特性を発現するために、無撚であることが好ましい。
【0046】
本発明で用いる強化繊維糸条としては、特にその種類に制限はないが、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、有機繊維(例えば、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、フェノール繊維、ポリエチレン繊維、ポリビニルアルコール繊維等)、金属繊維またはセラミック繊維、これらの組み合わせ等が挙げられる。炭素繊維は、比強度および比弾性率に優れ、耐吸水性に優れるので、航空機構造材や自動車の強化繊維糸条として好ましく用いられる。
【0047】
中でも、次の炭素繊維であると、成形される複合材料の衝撃吸収エネルギーが大きくなるので、航空機の1次構造材として適用が可能となる。すなわち、JIS−R7601に準拠して測定される引張弾性率(E)が210GPa以上、破壊歪エネルギー(W)が40MJ/m3(=106×J/m3)以上の炭素繊維であると好ましい。より好ましくは、Eが280〜400GPa、かつWが53MJ/m3以上のものである。Wの上限値は、通常に入手可能な炭素繊維に基づくと、80MJ/m3以下であるのが一般的である。
【0048】
Eが210GPa未満の炭素繊維を用いると、構造材としての複合材料の撓み量が許容される様にするために、複合材料を構造部材として用いる場合に板厚を厚くせねばならず、結果的に重くなってしまう。また、Wが40MJ/m3未満であると、複合材料に衝撃が付与される際、炭素繊維の破壊によって吸収される衝撃エネルギーが小さいので、余剰のエネルギーは層間のマトリックス樹脂層の破壊に費やされ、層間のクラックも大きくなるので好ましくない。なお、W(単位はMJ/m3)は、JIS−R7601に規定される測定法に従って測定された引張強度(σ)(単位はMPa)とE(単位はMPa)とに基づき、式W=σ2/2×Eにより算出される。
【0049】
特に、Eが280〜400GPa、かつWが53MJ/m3以上の炭素繊維は、単繊維直径が4〜6μmであり、通常の炭素繊維の7〜10μmよりも細い。単繊維直径が細いものを用いた場合、樹脂の浸透圧の面から不利となるが、本発明の式1および式2を満たすことにより、かかる細い直径を有する力学特性を高く発現させる炭素繊維を用いた場合にも、優れた含浸性を発現させることができるため、本発明の効果を最大限に発現させる態様ということができる。
【0050】
本発明の一方向性強化布帛は、樹脂材料が、布帛の少なくとも表面に、強化繊維糸条の2〜20重量%の範囲で接着しているのが好ましい。より好ましくは6〜18重量%、更に好ましくは11〜17重量%である。樹脂材料が、上記範囲で接着していることにより、布帛の一層高い形態安定性がもたらされる。更に、布帛を積層する際に、布帛同士のタック性(接着性)がもたらされる。その結果、形態安定性に優れ、プリフォーム化が容易な一方向性強化布帛を得ることができる。かかる特性は、2重量%未満では発現し難い。
【0051】
また、上記範囲の樹脂材料が、布帛の少なくとも表面に接着していると、一方向性強化布帛を積層して得られる複合材料において、クラックストッパーの役目を果たす。特に、複合材料が衝撃を受けた時に、損傷抑制の役目を果たし、複合材料に優れた力学特性(特に後述のCAI)をもたらし、いわゆる層間強化効果がある。なお、表面以外に接着している場合も、複合材料中の残留応力の緩和の役目を果たし、上記力学特性向上に寄与する。
【0052】
かかる高靭性化効果に加え、布帛を積層した場合に、表面に接着している樹脂材料がスペーサーとなって、厚み方向に隣接する布帛層間にスペースが形成される。かかるスペースは、注入成形により複合材料を成形する際、マトリックス樹脂の流路の役目を果たし、層間流路形成効果がある。この効果により、マトリックス樹脂の含浸が容易になるだけでなく、その含浸速度も速くなる。
【0053】
樹脂材料が20重量%を越えると、複合材料にした場合の強化繊維体積率が低くなり過ぎるだけでなく、力学特性(特に湿熱処理後の圧縮特性)にも劣る場合がある。また、加熱して布帛同士を接着する場合、樹脂材料が変形することにより樹脂流路を潰し、かえって含浸を妨げる場合があるため好ましくない。
【0054】
かかる樹脂材料は、布帛の少なくとも表面に接着しているが、表面以外に布帛の内部、すなわち、強化繊維糸条の中(強化繊維単糸の間)に接着していてもよい。しかしながら、上述の層間強化効果、層間流路形成効果は、樹脂材料が表面に接着していることにより、特に高い効果が発現されるため、樹脂材料は実質的に布帛の表面にのみ存在しているのが好ましい。表面にのみ存在していると、樹脂材料の接着量を最小限に抑えることができ、複合材料にした場合の樹脂体積を減らす、すなわち強化繊維体積率を一層高くすることができ、複合材料の軽量化効果を一層高く発現させることができる。
【0055】
かかる樹脂材料は、布帛片面に接着していても、布帛両面に接着していてもよい。より低コストに一方向性強化布帛を製造する場合は前者が好ましい。一方向性強化布帛の表裏の使い分けをしたくない場合は後者が好ましく、目的によって使い分けることができる。
【0056】
ここで、樹脂材料としては、例えば多孔性フィルム、短繊維不織布もしくはカットファイバー、粉粒体のような形態をしていて、布帛の全面を覆ってはいないものが好ましい。中でも、マトリックス樹脂の含浸(特に積層面の垂直方向の含浸)に優れる点、成形される複合材料の強化繊維体積率を高くできる点、成形される複合材料が湿熱処理を受けるとき、樹脂材料の水分の拡散を最小限に抑制できる点から、点状の形態であるのが好ましい。
【0057】
かかる樹脂材料は、布帛表面からみた、その点の平均直径(楕円形の場合は平均短径)が、10〜1,000μmであるのが好ましい。より好ましくは20〜500μm、更に好ましくは50〜250μmである。10μm未満であると、点状の樹脂材料が密に分散しすぎて含浸性を阻害する場合がある。また、1,000μmを超えると、疎になり過ぎ均一に分散できない場合がある。また、布帛表面に接着している樹脂材料の布帛面に垂直方向における凹凸が大き過ぎると、それの厚み方向に隣接する強化繊維糸条が屈曲しやすい。かかる観点から、布帛表面における樹脂材料の平均厚みは、5〜250μmであることが好ましい。より好ましくは10〜100μm、更に好ましくは15〜80μmである。
【0058】
樹脂材料の成分は、布帛の取扱性等を向上させ、得られる複合材料の力学特性を低下させない、好ましくは向上させるものであれば、特に限定されない。樹脂材料として、各種の熱硬化性樹脂および/または熱可塑性樹脂を使用できる。
【0059】
熱可塑性樹脂を主成分として用いる場合には、例えば、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フェノール、ポリスルフォン、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびフェノキシから選ばれる少なくとも1種のであるのが好ましい。中でもポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテルおよびポリエーテルスルフォンから選ばれる少なくとも1種のであるのがとりわけ好ましい。
【0060】
熱可塑性樹脂は、樹脂材料の主成分となり、その配合量が、70〜100重量%であることが好ましい。より好ましくは75〜97重量%であり、更に好ましくは80〜95重量%である。配合量が70重量%未満であると、力学特性(特にCAI)に優れた複合材料を得られない場合がある。また、熱可塑性樹脂を主成分とした場合、樹脂材料の布帛への接着性や接着加工性が劣る場合がある。この場合には、樹脂材料に少量の粘着付与剤、可塑剤等を副成分として配合し、0〜150℃(より好ましくは30〜100℃)のガラス転移温度にするとよい。かかる副成分としては、マトリックス樹脂と同様または類似のものであると、マトリックス樹脂との接着性、相溶性に優れる利点がある。
【0061】
得られる複合材料の力学特性を高いものにするためには、特に緯方向補助繊維糸条群を構成する補助繊維糸条とマトリックス樹脂との接着性は極めて重要であり、接着力が高ければ高い方が、優れた力学特性を発現するのに想像以上に寄与する。かかる接着性に関する直接的な指標としては、本発明の実施例に記載の成形方法により得られる複合材料において、強化繊維体積率Vfが53〜65%であり、かつ、その複合材料の特性が次の要件a〜cの少なくとも2つを満たすのが好ましい。より好ましくは、要件a〜cの全てを満たすのがよい。かかる場合、マトリックス樹脂との接着性に優れるということができる。すなわち、本発明でいう力学特性の中でも、最も重要な特性である。なお、SACMAとは、Suppliers of Advanced Composite Materials Associationの略である。
【0062】
要件a:衝撃付与後の常温圧縮強度(CAI)が240MPa以上である。かかるCAIは、SACMA−SRM−2R−94に従ってDry条件にて測定されたものである。
【0063】
要件b:常温有孔圧縮強度(OHC/RT)が275MPa以上であり、かつ湿熱処理後の高温有孔圧縮強度(OHC/HW)が215MPa以上である。かかるOHC/RTは、SACMA−SRM−3R−94に従ってDry条件にて測定したものである。OHC/HWは、同じ試験片を72℃温水中に14日間浸漬した後、直ちに82℃雰囲気下にて測定したものである。
【0064】
要件c:常温0°圧縮強度(CS/RT)が1,350MPa以上、かつ湿熱処理後の高温0°圧縮強度(CS/HW)が1,100MPa以上である。CS/RTは、SACMA−SRM−1R−94に従ってDry条件にて測定したものである。CS/HWは、同じ試験片を72℃温水中に14日間浸漬した後、直ちに82℃雰囲気下にて測定したものである。
【0065】
例えば、エポキシがマトリックス樹脂の場合、緯方向補助繊維糸条群を構成する補助繊維糸条には、補助繊維の耐熱性、耐吸水性、糸条繊度のラインアップの他に、エポキシとの接着性に優れるものを用いるのが好ましくい。これらを満たす好ましい例として、ポリアミド(6、66、9、12、610、612、芳香族系、それらの共重合品等)、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリケトン、フェノール、ポリイミドが挙げられ、中でもポリアミド66でがとりわけ好ましい。
【0066】
本発明のプリフォームは、少なくとも、上述の一方向性強化布帛が複数枚積層され、かつ、積層された布帛同士が少なくとも部分的に接着しているものである。ここで、布帛同士が接着してないと、プリフォームの取扱性に劣る。なお、かかる接着するためには、布帛に前述の樹脂材料が付着しているのが好ましい。
【0067】
本発明の複合材料は、少なくとも、上述の一方向性強化布帛が複数枚積層されたものにマトリックス樹脂が含浸しているものである。布帛に含浸されたマトリックス樹脂は、含浸後に、固化(硬化または重合)し、複合材料を形成する。
【0068】
本発明の複合材料は、その優れた力学特性を最大限に発現させるために、複合材料における強化繊維糸条の体積含有率が53〜65%であるのが好ましい。53%未満であると、複合材料の軽量化効果に劣る場合がある。また、65%を超えると、後述の注入成形での成形が困難となり、生産性よく複合材料を得られない場合がある。
【0069】
かかるマトリックス樹脂としては、熱可塑性、熱硬化性のいずれも使用することができるが、その成形性、力学特性の面から熱硬化性樹脂であるのが好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ、フェノール、ビニルエステル、不飽和ポリエステル、シアネートエステル、ビスマレイミド、ベンゾオキサジン、アクリルから選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。更にエラストマー、ゴム、硬化剤、硬化促進剤、触媒等を添加したものも使用することができる。中でも、航空機の一次構造部材で要求される極めて高い力学特性を達成するためには、エポキシまたはビスマレイミドであるのが好ましい。
【0070】
本発明の複合材料は、例えば、注入成形(RTM(Resin Transfer Molding)、RFI(Resin Film Infusion)、RIM(Resin Injection Molding)、真空アシストRTM等)、プレス成形等の各種成形方法およびそれらを組み合わせた成形方法にて成形することができる。
【0071】
より好ましい複合材料の成形方法としては、生産性の高い注入成形方法が挙げられる。かかる注入成形方法として、好ましくはRTMが挙げられる。RTMは、例えば、雄型および雌型により形成したキャビティ中にマトリックス樹脂を加圧して注入する成形方法がある。より好ましい成形方法として、真空アシストRTMが挙げられる。真空アシストRTMは、上述の通りであるが、例えば、雄型または雌型のいずれかとバッグ材(例えば、ナイロンフィルム、シリコンラバー等の柔軟性を有するもの)により形成したキャビティを減圧し、大気圧との差圧にてマトリックス樹脂を注入する。この場合、キャビティ内の一方向性強化布帛に樹脂拡散媒体(メディア)を配置し、かかるメディアによりマトリックス樹脂の拡散・含浸を促進する。成形後には、複合材料からメディアを分離することが好ましい。これらの注入成形方法は、成形コストの面から好ましく適用される。
【0072】
本発明の複合材料の用途は、特に限定されないが、極めて高いCAI、OHC、CS等の優れた力学特性を有しているため、特に航空機、自動車、または、船舶等の輸送機器における一次構造部材、二次構造部材、外装部材、内装部材もしくはそれらの部品のいずれかに用いられると、その効果を最大限に発現する。
【0073】
【実施例】
実施例および比較例に用いる原材料および成形方法は、次の通りである。
1.強化繊維糸条:
PAN系炭素繊維、24,000フィラメント、繊度1,030tex、引張強度5,900MPa、引張弾性率295GPa、破断伸度2.0%、破壊歪エネルギー59MJ/m3。
2.連続した補助繊維糸条A:
ガラス繊維、ECE225 1/0 1.0Z、繊度22.5tex、伸度3%以上、バインダータイプ”DP”(日東紡製)。
3.連続した補助繊維糸条B:
ポリアミド66繊維、7フィラメント、繊度1.7tex。
4.不連続の補助繊維が構成する層状体:
ポリアミド12繊維(繊維径9μm)が構成する不織布、目付5g/m2。
5.織成条件(一方向性織物の場合)
強化繊維糸条をたて糸として(補助繊維糸条を補助たて糸とする場合も同様)、綜絖(メール内寸が2.5mm)および筬(筬羽隙間は3mm)にて所望の糸条幅よりも一旦狭める。次いで、レピアを用いて補助繊維糸条をよこ糸として打ち込んで製織した後、織前で開口を規制するバーやニップロールにてたて糸を所望の糸条幅に拡幅して巻き取った。
6.樹脂材料:
ポリエーテルスルフォン樹脂(住友化学工業(株)製スミカエクセル5003P)60重量%(主成分)と次のエポキシ樹脂組成物40重量%(副成分)とを2軸押出機にて溶融混練したものを冷凍粉砕したもの。平均粒子径D50((株)セイシン企業製LMS−24で測定)115μm、ガラス転移点92℃。
【0074】
エポキシ樹脂組成物−ジャパンエポキシレジン(株)製”エピコート”806を21重量部、日本化薬(株)製NC−3000を12.5重量部、および、日産化学工業(株)製TEPIC−Pを4重量部を、100℃で均一になるまで攪拌したもの。
7.マトリックス樹脂:
次の主液100重量部に、次の硬化液を39重量部加え、80℃にて均一に様に撹拌したエポキシ樹脂組成物。80℃におけるE型粘度計による粘度:55mPa・s、1時間後の粘度:180mPa・s、180℃で2時間硬化後のガラス転移点:197℃、曲げ弾性率:3.3GPa。
【0075】
主液−エポキシとして、Vantico(株)製”アラルダイト”MY−721を40重量部、ジャパンエポキシレジン(株)製”エピコート”825を35重量部、日本化薬(株)製GANを15重量部、および、ジャパンエポキシレジン(株)製”エピコート”630を10重量部を70℃で1時間攪拌して均一溶解させたもの。
【0076】
硬化液−ポリアミンとして、ジャパンエポキシレジン(株)製”エピキュア”Wを70重量部、三井化学ファイン(株)製3,3’−ジアミノジフェニルスルホンを20重量部、および、住友化学工業社製”スミキュア”Sを10重量部を100℃で1時間攪拌して均一にした後に70℃に降温し、硬化促進剤として、宇部興産(株)製t−ブチルカテコールを2重量部を更に70℃で30分間攪拌して均一溶解させたもの。
【0077】
(実施例1)
上記強化繊維糸条を、お互いに並行に引き揃え、2.3本/cmの密度で一方向に配列し、シート状の強化繊維糸条群を形成した。次に、補助繊維糸条Aを、お互いに並行に引き揃え、3本/cmの密度で、上記強化繊維糸条群と直交する方向に配列し、強化繊維糸条と補助繊維糸条Aとを、織機を用いて平織組織に交錯させ、一方向性織物を形成した。
【0078】
得られた一方向性強化布帛は、強化繊維糸条の目付が239g/m2、強化繊維糸条間の隙間(GAP)は0.2mm(たて補助繊維糸条は存在しないものとして測定)、K1=7.4、K2=302であった。
【0079】
(実施例2)
上記強化繊維糸条を、お互いに並行に引き揃え、1.8本/cmの密度で一方向に配列し、シート状の強化繊維糸条群を形成した。また、補助繊維糸条Aを、お互いが並行に引き揃え、1.8本/cmの密度で、強化繊維糸条群と同じ方向で、かつ、強化繊維糸条と交互に一方向に配列し、経方向補助繊維糸条群を形成した。両者を用いてシート状の経方向糸条群を形成した。次に、補助繊維糸条Bを、お互いに並行に引き揃え、3本/cmの密度で、経方向糸条群と直交する方向に配列し、上記補助繊維糸条Aと補助繊維糸条Bとを織機を用いて平織組織に交錯させ、一方向性ノンクリンプ織物を形成した。
【0080】
かかる一方向性ノンクリンプ織物に、粒子状の樹脂材料を、ノードソン(株)製トリボIIガンにて均一分散させながら、表面に26g/m2(14重量%)塗布した。その後、185℃、0.3m/minの条件にて遠赤外線ヒーターを通過させ、樹脂材料を布帛片表面に接着して一方向性強化布帛を得た。
【0081】
得られた一方向性強化布帛は、樹脂材料によって交錯点が固定されているため、実施例1のものよりも布帛の取扱性に優れるだけでなく、強化繊維糸条の真直性を保つことができた。また、強化繊維糸条の目付は190g/m2、GAPは0.38mm、K1=5.9、K2=310であった。
【0082】
(実施例3)
強化繊維糸条の糸条幅を狭める様に製織した以外は、実施例2と同様にして一方向性強化布帛を得た。
【0083】
得られた一方向性強化布帛は、強化繊維糸条の目付が188g/m2、GAPは0.49mm(たて補助繊維糸条は存在しないものとして測定)、K1=5.9、K2=343であった。
【0084】
(実施例4)
実施例2と同様に強化繊維糸条を引き出し、櫛形ガイドを通過させて糸条幅を狭め、簾状の強化繊維糸条群を形成した。次に、強化繊維糸条群の両面に上記層状体を配置して離型紙にて挟み、180℃、線圧0.2MPaでプレスロールを連続的に通過させ、糸条幅を拡幅すると同時に、層状体を表面に接着して一方向性強化布帛を得た。
【0085】
得られた一方向性強化布帛は、層状体の接着によって形態安定性優れ、強化繊維糸条の真直性にも優れた。強化繊維糸条の目付は190g/m2、強化繊維糸条間の隙間は0.23mm、K1=5.9、K2=263であった。
【0086】
(比較例1)
補助繊維糸条Bに替えて、補助繊維糸条Aを用いた以外は実施例2と同様にしてノンクリンプ織物を形成し、樹脂材料を付着させて一方向性強化布帛を得た。
【0087】
得られた一方向性強化布帛は、強化繊維糸条の目付が189g/m2、強化繊維糸条同士の隙間は0.71mm、K1=5.9、K2=414であった。
【0088】
(比較例2)
実施例2において、補助繊維糸条Aを用いずに、強化繊維糸条と補助繊維糸条Bとを、織機を用いて平織組織に交錯させて一方向性織物を形成し、圧縮空気(0.5MPa)をφ0.5mmのノズルから吹き付け、開繊処理をした。次いで、実施例2と同様にして樹脂材料を付着させて一方向性強化布帛を得た。
【0089】
得られた一方向性強化布帛は、強化繊維糸条の目付が189g/m2、強化繊維糸条同士の隙間は0.1mm、K1=5.9、K2=221であった。
【0090】
(実施例5、比較例3)
実施例1〜4、比較例1、2の一方向性強化布帛を用いて、次の成形方法1によって、本文中に記載の要件a〜cに合致する複合材料を成形し、評価した。
【0091】
<成形方法1(力学特性テスト用)>
以下において、本発明の成形方法を、図面を参照しながら説明する。
【0092】
図1は、本発明の複合材料の製造装置の一態様の概略断面図である。図1に示す様に、平面状のアルミ製成形型12の表面に、一方向性強化布帛11を所定の枚数と角度で積層する。積層体の最表面にピールプライ13であるポリエステル繊維の離型処理された織物を配置し、その上に樹脂拡散媒体(メディア)14であるポリプロピレン製メッシュ状シートを配置し、更にその上に、押さえ板となるアルミ製カウルプレート20を配置する。積層体が成形型と接した周囲には、エッジ・ブリーザー16であるポリエステル繊維の不織布を複数枚積層して張り巡らす。真空吸引口18やエッジ・ブリーザーから最も近いメディアまでの距離が10mm以上離れるようにメディアの平面視の最大外形がメディア面の積層体の平面視の最大外形よりも10〜50mm程度小さくなるように配置する(図示せず)。全体をバッグ材15であるナイロンフィルムで覆い、バッグ材と成形型の周囲を、シール材17で密閉する。樹脂注入口19は、メディアに接するように取り付け、シール材で密閉する。真空吸引口は、樹脂注入口から遠いエッジ・ブリーザー上に取り付け、同様にシールする。真空吸引口から吸引し、バッグ材の内が0.08〜0.1MPaの圧力になるように真空吸引する。3℃/minの速度で、装置全体を80℃に昇温する。真空吸引を継続しながら、積層体が80℃に達してから1時間保持する。その後、樹脂注入口のバルブを解放して、メディアからマトリックス樹脂を必要な量だけ注入する。含浸が完了したら、樹脂注入口のバルブを閉め、マトリックス樹脂の注入を中止する。なお、真空吸引は、注入開始から4時間継続する。1.5℃/minの速度で、装置全体を130℃まで昇温する。130℃に達した時点で、真空吸引口をシールして吸引を中止する。この時、バッグ材の中を真空状態に保つ様にシールする。130℃に達してから2時間保持してマトリックス樹脂を硬化させる。その後、3℃/minの速度で常温まで降温する。バッグ材、ピールプライおよびメディアを除去して、一旦、複合材料を取り出す。次いで複合材料を、成形型上に置き、1.5℃/minの速度で180℃まで昇温する。180℃に達してから2時間保持してマトリックス樹脂を二次硬化させる。その後、3℃/minの速度で常温まで降温して、複合材料を得る。
【0093】
(実施例6、比較例4)
実施例1〜4、比較例1、2の一方向性強化布帛を用いて、次の成形方法2に沿ってそれぞれ成形し、含浸性を評価した。
【0094】
特に実施例2、3の一方向性強化布帛は、アイロン(160℃)にて高すぎない温度で布帛同士を接着させることができたため、積層する際のタック性等の優れ、成形する時間を短くできた。また、後述の加熱・加圧によるプリフォーム化によっても、一体化して取扱性に優れたプリフォームを得ることができた。
【0095】
<成形方法2(厚板含浸テスト用)>
アルミ製成形型の表面に、一方向性強化布帛を[−45/0/+45/90]の順に、強化繊維体積率55%の時に17mmになるように積層する(実施例1は72枚、実施例2、3、比較例1、2は90枚)。積層体の最表面にアルミ製カウルプレート20を配置し、全体をナイロンフィルムで覆い、バッグ材と成形型の周囲をシール材で密閉し、バッグ材の内が0.08〜0.1MPaの圧力になるように真空吸引する。3℃/minの速度で、装置全体を80℃に昇温する。真空吸引を継続しながら、積層体が80℃に達してから1時間保持し、その後、3℃/minの速度で常温まで降温し、真空吸引を中止する。バッグ材を除去して、プリフォームを得る。
【0096】
図2は、図1とは異なる態様の、本発明の複合材料の製造装置の概略縦断面図である。なお、この図で図1と同じ符号のものは、図1の部材と同じものであることを示している。図2に示す様に、真空吸引口22および樹脂注入口23の配置を図1とは変更し、マトリックス樹脂を厚み方向に流すようにした。また、吸引効率を上げるためにメディア14を成形型面にも配置し、真空吸引口にはチャンネル24を配置した。更に、積層体として予め一体化したプリフォーム21を用いた。それ以外は、上記成形方法1と同様にして成形した。なお、樹脂の流出が可視できる様に成形型としてガラス製のものを用い、含浸時間を直接観察により測定した。
【0097】
以上の結果を表1にまとめたのが次の表1である。
【0098】
【表1】
【0099】
この表から分かるように、複合材料の力学特性に関し、本実施例のものは、要件a〜cの少なくとも2つを満たし、非常に高い値を示した。中でも、実施例2が特に優れた。また、複合材料の断面を観察した結果、実施例2、4の一方向性強化布帛の層のうねりは、実施例1、3に比べて相対的に小さい。これに起因して、極めて高い常温での力学特性を発現したと推測される。
【0100】
一方、比較例1のものは、GAPが大きいため含浸性には優れるが、逆に力学特性に劣った。これは、補助繊維糸条の繊度が本発明の好ましい範囲外であることにも起因している。一方、比較例2のものは、力学特性は充分満足するが、含浸性に著しく劣り、その両立が達成されていない。
【0101】
【発明の効果】
本発明によれば、一方向性強化布帛における強化繊維糸条間の隙間の分布およびその大きさを最適なものにしたので、マトリックス樹脂の含浸性が良好で、特にCAI、OHC、CS等の力学特性に優れる複合材料を得られる一方向性強化布帛、プリフォームおよび複合材料を得ることができる。
【0102】
このようにして得られた複合材料は、航空機、自動車、船舶等の輸送機器における構造部材、内層部材または外層部材などの各部材をはじめ、幅広い分野に適するが、特に航空機の構造部材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合材料の製造装置の一態様の概略断面図である。
【図2】図1とは異なる態様の、本発明の複合材料の製造装置の概略縦断面図である。
【符号の説明】
11:一方向性強化布帛
12:成形型
13:ピールプライ
14:樹脂拡散媒体
15:バッグ材
16:エッジ・ブリーザー
17:シール材
18、22:真空吸引口
19、23:樹脂注入口
20:カウルプレート
21:プリフォーム
24:チャンネル
Claims (14)
- 繊度が350〜3,500tex、フィラメント数が6,000〜50,000本である連続した強化繊維糸条を一方向に並行するように引き揃えた強化繊維糸条群と、連続した補助繊維糸条を強化繊維糸条と交差する方向に延在した緯方向補助繊維糸条群または不連続の補助繊維が構成する層状体とが布帛を構成し、かかる布帛における強化繊維糸条の目付(FAW)が50〜370g/m2であり、かつ、次の式1、式2のいずれをも満たすことを特徴とする一方向性強化布帛。
FAW=K1×(TEX)1/2 …………(1)
FAW=−317×GAP+K2 …………(2)
ここで、FAW:強化繊維糸条の目付(g/m2)
TEX:強化繊維糸条の繊度(tex)
GAP:強化繊維糸条間の隙間(mm)
K1:4〜9の定数
K2:260〜395の定数 - 繊度が600〜1,500tex、フィラメント数が18,000〜36,000本である連続した強化繊維糸条を一方向に並行するように引き揃えた強化繊維糸条群と、連続した補助繊維糸条を強化繊維糸条と交差する方向に延存させた緯方向補助繊維糸条群とが布帛を構成し、かかる布帛における強化繊維糸条の目付(FAW)が100〜270g/m2であり、かつ、次の式1、式2のいずれをも満たすことを特徴とする請求項1に記載の一方向性強化布帛。
FAW=K1×(TEX)1/2 …………(1)
FAW=−317×GAP+K2 …………(2)
ここで、K1:5〜8の定数
K2:300〜365の定数 - 緯方向補助繊維糸条群を構成する補助繊維糸条の繊度が、強化繊維糸条のそれの1%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の一方向性強化布帛。
- 不連続の補助繊維が構成する層状体が不織布であり、かつ、その目付が2〜20g/m2であることを特徴とする請求項1に記載の一方向性強化布帛。
- 強化繊維糸条は、引張弾性率が280〜400GPaであり、かつ破壊歪エネルギーが53MJ/m3以上である炭素繊維糸条であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の一方向性強化布帛。
- 布帛の少なくとも表面に、強化繊維糸条の2〜20重量%の樹脂材料が付着していることを特徴とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の一方向性強化布帛。
- 樹脂材料が布帛表面に点在しており、かつ、布帛表面からみた樹脂材料の平均直径が10〜1,000μmであり、かつ、布帛表面からの樹脂材料の平均高さが5〜250μmである請求項6に記載の一方向性強化布帛。
- さらに強化繊維糸条と並行する方向に延在する、補助繊維糸条から構成される経方向補助繊維糸条群を有し、かつ、布帛の両側に緯方向補助繊維糸条群が配され、それを構成する補助繊維糸条と経方向補助繊維糸条群を構成する補助繊維糸条とが織組織を構成しているノンクリンプ織物であることを特徴とする請求項1〜3、5〜7のいずれかに記載の一方向性強化布帛。
- 強化繊維糸条の体積含有率が53〜65%の複合材料を成形したとき、その複合材料の特性が次の要件a〜cの少なくとも2つを満足することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の一方向性強化布帛。
要件a:SACMA−SRM−2R−94に規定される方法による衝撃付与後
の常温圧縮強度が240MPa以上であること。
要件b:SACMA−SRM−3R−94に規定される方法による常温有孔圧縮強度が275MPa以上であり、かつ、湿熱処理後の高温有孔圧縮
強度が215MPa以上であること。
要件c:SACMA−SRM−1R−94に規定される方法による常温0°圧縮強度が1,350MPa以上であり、かつ、湿熱処理後の高温0°圧縮強度が1,100MPa以上であること。 - 注入成形法にて複合材料を成形するために用いられることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の一方向性強化布帛。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の一方向性強化布帛が複数枚積層され、かつ、積層された布帛同士が少なくとも部分的に接着していることを特徴とするプリフォーム。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の一方向性強化布帛が複数枚積層され、かつ、樹脂がマトリックスとして含浸していることを特徴とする複合材料。
- 複合材料における強化繊維糸条の体積含有率が53〜65%である請求項12に記載の複合材料。
- 航空機、自動車または船舶の構成部材として用いられることを特徴とする請求項12または13に記載の複合材料。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003073265A JP2004277955A (ja) | 2003-03-18 | 2003-03-18 | 一方向性強化布帛、プリフォームおよび複合材料 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003073265A JP2004277955A (ja) | 2003-03-18 | 2003-03-18 | 一方向性強化布帛、プリフォームおよび複合材料 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004277955A true JP2004277955A (ja) | 2004-10-07 |
Family
ID=33289204
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003073265A Pending JP2004277955A (ja) | 2003-03-18 | 2003-03-18 | 一方向性強化布帛、プリフォームおよび複合材料 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004277955A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012245623A (ja) * | 2011-05-25 | 2012-12-13 | Univ Of Tokyo | 多孔質型を用いた複合材の成形方法および装置 |
WO2013073546A1 (ja) | 2011-11-16 | 2013-05-23 | 東レ株式会社 | 繊維強化複合材料および繊維強化複合材料の製造方法 |
JP2018065999A (ja) * | 2016-10-19 | 2018-04-26 | 東レ株式会社 | 強化繊維基材、強化繊維積層体および繊維強化樹脂 |
KR101878102B1 (ko) * | 2017-06-26 | 2018-07-12 | 현대제철 주식회사 | 탄소 섬유 강화 플라스틱의 faw 분석 방법 |
-
2003
- 2003-03-18 JP JP2003073265A patent/JP2004277955A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012245623A (ja) * | 2011-05-25 | 2012-12-13 | Univ Of Tokyo | 多孔質型を用いた複合材の成形方法および装置 |
WO2013073546A1 (ja) | 2011-11-16 | 2013-05-23 | 東レ株式会社 | 繊維強化複合材料および繊維強化複合材料の製造方法 |
KR20140095466A (ko) | 2011-11-16 | 2014-08-01 | 도레이 카부시키가이샤 | 섬유 강화 복합 재료 및 섬유 강화 복합 재료의 제조 방법 |
JP2018065999A (ja) * | 2016-10-19 | 2018-04-26 | 東レ株式会社 | 強化繊維基材、強化繊維積層体および繊維強化樹脂 |
JP7087337B2 (ja) | 2016-10-19 | 2022-06-21 | 東レ株式会社 | 強化繊維基材、強化繊維積層体および繊維強化樹脂 |
KR101878102B1 (ko) * | 2017-06-26 | 2018-07-12 | 현대제철 주식회사 | 탄소 섬유 강화 플라스틱의 faw 분석 방법 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3894035B2 (ja) | 炭素繊維強化基材、それからなるプリフォームおよび複合材料 | |
JP4561081B2 (ja) | 強化繊維基材、複合材料およびそれらの製造方法 | |
JP4126978B2 (ja) | プリフォームおよびそれからなるfrpならびにfrpの製造方法 | |
JP4254158B2 (ja) | 炭素繊維基材の製造方法、プリフォームの製造方法および複合材料の製造方法 | |
JP5157391B2 (ja) | 強化繊維基材、積層体および繊維強化樹脂 | |
WO2000056539A1 (fr) | Materiau a base de fibres renforçant un composite, preforme et procede de production de matiere plastique renforcee par des fibres | |
JP2006192745A (ja) | 強化繊維基材、プリフォーム、繊維強化樹脂成形体およびその製造方法 | |
JP7087337B2 (ja) | 強化繊維基材、強化繊維積層体および繊維強化樹脂 | |
KR20160074296A (ko) | 하이브리드 세라믹 섬유강화 복합재료 제조방법 및 이에 의해 제조된 하이브리드 세라믹 섬유강화 복합재료 | |
JP5125867B2 (ja) | 強化繊維基材、積層体および複合材料 | |
JP4341419B2 (ja) | プリフォームの製造方法および複合材料の製造方法 | |
JP2005213469A (ja) | 強化繊維基材、プリフォーム、複合材料および強化繊維基材の製造方法 | |
JP2005262818A (ja) | 強化繊維基材、プリフォームおよび強化繊維基材の製造方法 | |
JP2004277955A (ja) | 一方向性強化布帛、プリフォームおよび複合材料 | |
JP4609513B2 (ja) | プリフォームの製造方法 | |
JP2006138031A (ja) | 強化繊維基材、プリフォームおよびそれらの製造方法 | |
JP2004256961A (ja) | 強化繊維基材の製造方法および該基材を用いた複合材料の製造方法 | |
JP4558398B2 (ja) | 平滑な表面を有する複合材料 | |
JP2005272526A (ja) | 複合材料および複合材料の製造方法 | |
CN219686779U (zh) | 一种纤维网格结构层间增韧复合材料 | |
JPH043769B2 (ja) | ||
JP6819276B2 (ja) | 強化繊維基材および繊維強化プラスチック | |
JP2023050344A (ja) | 樹脂注入成形用強化繊維基材 | |
CN116353144A (zh) | 一种纤维网格结构层间增韧复合材料及其制备方法 | |
JP2022055598A (ja) | 繊維強化樹脂 |