JP2004277266A - 化合物半導体単結晶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】VB法及びVGF法による結晶の成長速度の高速化、結晶の長尺化に有効な化合物半導体結晶の製造方法を提供すること。
【解決手段】多結晶原料を融解し、種付けを完了した後、炉内温度を降温すること(VGF法)で、種付け完了後の種結晶部3aから断面積増大部のある時点まで又は種付け完了後の種結晶部3aから成長結晶部3cの長手方向全体の1/4以下のある時点まで単結晶の育成を行い、次いで、炉内温度の降下を停止して、成長容器3を成長炉に対し相対的に移動させること(VGF法)で単結晶の育成を行い、単結晶の育成速度と歩留りを上げる。
【選択図】 図1
【解決手段】多結晶原料を融解し、種付けを完了した後、炉内温度を降温すること(VGF法)で、種付け完了後の種結晶部3aから断面積増大部のある時点まで又は種付け完了後の種結晶部3aから成長結晶部3cの長手方向全体の1/4以下のある時点まで単結晶の育成を行い、次いで、炉内温度の降下を停止して、成長容器3を成長炉に対し相対的に移動させること(VGF法)で単結晶の育成を行い、単結晶の育成速度と歩留りを上げる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原料融液を結晶成長容器内で下方から上方に向けて徐々に固化させて単結晶を成長する垂直ブリッジマン法(VB法)および垂直温度勾配凝固法(VGF法)による化合物半導体結晶の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
直径φ3インチを超える大型で、しかも転位密度の低い化合物半導体単結晶(GaAs、InPなど)が得られる方法として、液体封止型チョクラルスキー法(LEC法)に代わって、垂直ブリッジマン法(VB法)及び垂直温度勾配凝固法(VGF法)が注目されている。VB法及びVGF法は、原料融液を容器内で下部から上方に向けて徐々に固化させることにより単結晶を成長する縦型の容器内成長法である。LEC法では、低温度勾配下で成長を行うと液体封止剤通過後の結晶からIII−V族化合物半導体ではV族の解離、II−VI族化合物半導体ではVI族の解離が問題になるが、VB法及びVGF法は縦型の容器内成長であるため、容器の上方を液体封止剤で覆うことによって解離を防止することができる。従って、VB法及びVGF法では、LEC法に比べて低温度勾配下で成長できるため、転位密度の低い化合物半導体単結晶を製造することができる。
【0003】
垂直ブリッジマン法(VB法)も垂直温度勾配凝固法(VGF法)も、半導体原料融液を容器(るつぼ)内に収納し、容器の底部に予め配置した種結晶より結晶成長を開始して、徐々に上方に固化させことにより結晶化を進行せしめ、ついには原料融液全体を結晶化させるという点で共通する。ただし、VB法は、成長容器をヒーターの位置に対して相対的に降下させて成長させる方法であり、VGF法は、温度降下のみで成長させる方法である。
【0004】
このVB法及びVGF法では、種結晶載置部(種結晶部)が最下部にあり、種結晶載置部から上方に向けて直径が大きくなる増径部(断面積増大部)、増径部から上方に続く直胴部(成長結晶部)を有している成長容器を、支持部材により支持して加熱装置内に配置する。そして、成長容器下部の種結晶載置部内に種結晶を設置し、その上に多結晶原料を置き、上部が高く、下部が低い温度分布を設けた加熱装置の中で、種結晶の下部から上部に向かって結晶固化させる。
【0005】
従来、まず、結晶成長の前半において、VB法と同様、温度勾配をつけた炉内で、原料を収容した縦型容器を下降させて、原料の下端から結晶を育成して行き、次に、容器の下降を停止し、VGF法と同様にして、炉の温度を下げて行き引き続いて結晶を成長させて行く化合物半導体結晶の育成方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この特許文献1の方法には、次のような長所がある。まず、温度が高く設定される結晶成長初期においてVB法を採用することで、高温部の温度をあまり高くせずに済む。これによって構成元素の解離を防止する。このため組成ずれが防止される。次に、成長の中後期にVGF法を採用することで、炉長を短くすることができる。また、最初にVB法を行っているため、VB法からVGF法に移行する段階において、温度勾配は比較的大きい。したがって、成長の中後期でもVGF法において成長速度の制御が容易になる。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−325485号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、結晶の長尺化において、結晶育成速度の高速化を図りつつ、固液界面を融液側に凸面又は平坦となるようにして、低転位単結晶を高歩留り、且つ安価に製造するという観点からは、更なる改善がなされた化合物半導体結晶の製造方法の提供が望まれていた。
【0009】
VB法及びVGF法の特長である低転位化を実現するためには、(i) 結晶固化後に発生する熱的な歪の抑制、(ii) 固液界面(結晶成長時の結晶固化形状を示す)が融液側へ凹面形状(図4)となってしまうことによる機械的な歪みの抑制が必要となる。
【0010】
上記(i) の点については熱的な歪み対策の一つとして、低温度勾配下での結晶成長が挙げられる。これは、結晶固化部及び成長部を低温度勾配下でゆっくり冷却することで冷却時の熱歪みにより発生する転位を抑制することができるためである。
【0011】
上記(ii) の点については、固液界面形状が融液側へ凹面になると発生した転位が結晶の内部に向かって集まり多結晶化しやすい条件となるため、VB法及びVGF法においては凹面成長による転位の抑制、つまり固液界面形状が融液側に凸面(図5)又は平坦となるようにすることが不可欠である。
【0012】
しかし、上述した理由から、VB法及びVGF法での結晶成長時は、低温度勾配下での結晶成長となるため、種結晶部からの放熱量を多くすることができない。そのため、結晶成長速度を高速化すると、種結晶部からの放熱量が不足し、固液界面形状が融液側に凹面(図4)となってしまう。従って、VB法及びVGF法で高速成長を実施した場合、単結晶化、低転位化することが非常に困難となる。また結晶を長尺化した場合にも、原料融液からの流入熱が増大するため、種結晶部からの放熱量が不足し、固液界面形状が融液側に凹面となるため、単結晶化、低転位化が困難である。
【0013】
そこで、本発明の目的は上記課題を解決し、VB法及びVGF法による結晶の成長速度の高速化、結晶の長尺化に有効な化合物半導体結晶の製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0015】
請求項1の発明に係る化合物半導体単結晶の製造方法は、断面積が小さい種結晶部と、これに続く徐々に断面積が増大する断面積増大部と、これに続く断面積が大きくほぼ一定の成長結晶部とを有する容器を用いて、該容器に原料融液を収納し、温度勾配を設けた成長炉内で該容器の底部に予め配置した種結晶より結晶成長を開始して、徐々に上方に結晶化を進行させて、ついには原料融液全体を結晶化させる化合物半導体単結晶の製造方法において、多結晶原料を融解し、種付けを完了した後、炉内温度を降温することで、種付け完了後の種結晶部から断面積増大部のある時点まで単結晶の育成を行い、次いで、炉内温度の降下を停止して、上記容器を成長炉に対し相対的に移動させることで単結晶の育成を行うことを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明に係る化合物半導体単結晶の製造方法は、断面積が小さい種結晶部と、これに続く徐々に断面積が増大する断面積増大部と、これに続く断面積が大きくほぼ一定の成長結晶部とを有する容器を用いて、該容器に原料融液を収納し、温度勾配を設けた成長炉内で該容器の底部に予め配置した種結晶より結晶成長を開始して、徐々に上方に結晶化を進行させて、ついには原料融液全体を結晶化させる化合物半導体単結晶の製造方法において、多結晶原料を融解し、種付けを完了した後、炉内温度を降温することで、種付け完了後の種結晶部から成長結晶部の長手方向全体の長さの1/4以下のある時点まで単結晶の育成を行い、次いで、炉内温度の降下を停止して、上記容器を成長炉に対し相対的に移動させることで単結晶の育成を行うことを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の化合物半導体単結晶の製造方法において、多結晶原料を融解し、種付けを完了した後、炉内温度を降温することで、種付け完了後の種結晶部から単結晶を育成し、炉内温度の降下を停止した時点の原料融液の平均温度を、融点に対して5℃高い温度より低くすることを特徴とする。
【0018】
<発明の要点>
本発明の要旨は、化合物半導体単結晶の製造方法において、固液界面が融液側へ凸または平坦となり、且つ成長速度を高速化または長尺化できる以下の方法である。
【0019】
すなわち、円形あるいは任意形状の直径あるいは断面積が小さい種結晶部と、円形あるいは任意形状の直径あるいは断面積が大きくほぼ一定の成長結晶部と、徐々に直径あるいは断面積が増大する増径部あるいは断面積増大部とを有する容器を用いて、該容器に原料融液を収納し、温度勾配を設けた成長炉内で該容器の底部に予め配置した種結晶より結晶成長を開始し、徐々に上方に結晶化を進行させて、ついには原料融液全体を結晶化させる化合物半導体単結晶の製造方法において、多結晶原料を融解し、種付けを完了した後、種結晶部から増径部あるいは断面積増大部のある時点までを、炉内の温度を降温することで単結晶を育成する方法(VGF法)の利用を行った後、次に該容器を成長炉に対し相対的に移動させることで単結晶を育成する方法(VB法)の利用を行い、単結晶の育成速度と歩留りを上げるようにした化合物半導体単結晶の製造方法である。
【0020】
多結晶原料を短時間で完全に融解し、短時間で安定して種付けを行うためには、多結晶原料配置部の炉内の平均温度を融点よりある程度高めにする必要がある。しかし、完全に多結晶原料を融解した後は、融点付近まで融液の温度を下げても固化しない。本発明では、この点に着目し、多結晶原料配置部の炉内の平均温度を融点よりある程度高め(例えば、融点より15℃高くする)にして(図1(a))、炉内多結晶原料を完全に融解し、安定して種付けを行った後、炉内温度を降温すること(VGF法)で、種付け完了後の種結晶部から増径部あるいは断面積増大部のある時点まで又は種付け完了後の種結晶部から成長結晶部長手方向全体の1/4以下のある時点まで、単結晶を育成した時点の原料融液の平均温度を融点付近まで低くする(例えば、融点より5℃高い温度より低くする)(図1(b))。
【0021】
このように原料融液の平均温度を融点に対して融点付近まで低くすると、これによって、原料融液からの流入熱が少なくなり、その後のVB法においては、固液界面の平坦化及び、結晶成長速度の高速化を図ることが可能となる。また、結晶を長尺化することにより、単結晶育成時の原料融液からの流入熱が増大するが、本発明により原料融液からの流入熱を少なくすることができるので、長尺低転位単結晶を製造することが可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図示の実施例に基づいて説明する。
【0023】
本発明の化合物半導体単結晶の製造方法は、種結晶から炉内温度を降下させること(VGF法)により、単結晶を育成しながら原料融液の温度を融点付近まで下げた後、炉内温度の降下を停止してから原料容器を下方に移動させること(VB法)により単結晶を育成することで、育成速度及び歩留りを上げるものである。化合物半導体単結晶の一つであるGaAsを例にとって説明する。
【0024】
図1は本発明の化合物半導体単結晶の製造方法の一部を示したもので、(a)は、原料を融解し、種付けを完了した後の温度分布を表す概略図、(b)は、種付けを完了した後、温度勾配を維持しながら炉内の温度を降温させる事によって種結晶部から単結晶を育成し、原料融液の平均温度が融点に対して5℃高い温度より低くなった時点で、炉内温度の降温を停止した時の温度分布を表す概略図である。
【0025】
[実施例1]
GaAs単結晶成長を、図2に示すように、チャンバ1内の不活性ガス2中でグラファイト製加熱装置(上部ヒーター8、中部ヒーター9、下部ヒーター10)で加熱処理する成長炉を用いて成長を行った。
【0026】
結晶成長容器としては、下部に形成した直径が小さい円形の種結晶収容部たる種結晶部3aと、これに続く上方に徐々に直径が増大する増径部(断面積増大部3b)と、これに続く円形の直径が大きくほぼ一定の直胴部(結晶育成部3c)とを有するPBN製るつぼ3を用いた。
【0027】
PBN製るつぼ3にGaAs多結晶原料4と液体封止剤である三酸化ホウ素(B2O3)5と種結晶6を収容した。その後、グラファイト製結晶受け台7にPBN製るつぼ3をセットする。セット完了後、炉内を真空引きし、不活性ガスで置換し、上部ヒーター8、中部ヒーター9、下部ヒーター10により昇温する。上部ヒーター8を1256℃、中部ヒーター9を約1252℃、下部ヒーター10を1217℃になるまで昇温する。昇温後15時間設定温度を保持する事によって、多結晶原料を完全に融解し、種付けを行う(図1(a)参照)。種付け完了後の原料融液の平均温度は約1254℃(GaAs融点に対して16℃高い温度)であった。
【0028】
上部ヒーター8を1240℃、中部ヒーター9を約1243℃、下部ヒーター10を1208℃になるまで温度を降温すること(VGF法)で、種付け完了後の種結晶部3aから単結晶を育成させる(図1(b)参照)。温度を降温する事(VGF法)で、増径部(断面積増大部3b)の全体の長さの4/5の位置までを単結晶で育成させた時点において、原料融液の平均温度が約1242℃(GaAs融点に対して4℃高い温度)になった。
【0029】
その後、炉内の温度降下を停止して、PBN製るつぼ3を4mm/時の速度で下方に移動させる事(VB法)によって、最後まで結晶成長を行った。
【0030】
上記の方法で、直径φ4インチ結晶長200mmの低転位GaAs単結晶を得ることができた。
【0031】
VB法のみまたはVGF法のみでは、直径φ4インチ結晶長200mmのGaAs単結晶得るのに170時間かかっていたが、本実施例1の方法では、150時間で低転位GaAs単結晶を成長させることができた。VB法のみまたはVGF法のみに対して本実施例1の方法では成長速度を上げているにも拘わらず、固液界面は融液側に凸または平坦であり、歩留もVB法のみまたはVGF法のみでは70%であったが、本実施例1の方法では80%に改善した。
【0032】
[実施例2]
ここで説明するGaAs単結晶成長の概略を図3に示す。実施例1と同様にPBN製るつぼ3にGaAs多結晶原料4と液体封止剤である三酸化ホウ素(B2O3)5と種結晶6を収容した。その後、グラファイト製結晶受け台7にPBN製るつぼ3をセットする。セット完了後、炉内を真空引きし、不活性ガスで置換し、最上部ヒーター11、上部ヒーター8、中部ヒーター9、下部ヒーター10により昇温する。最上部ヒーター11を1256℃、上部ヒーター8を1256℃、中部ヒーター9を約1252℃、下部ヒーター10を1207℃になるまで昇温する。昇温後15時間設定温度を保持する事によって、多結晶原料を完全に融解し、種付けを行う(図1(a)参照)。種付け完了後の原料融液の平均温度は約1254℃(GaAs融点に対して16℃高い温度)であった。
【0033】
最上部ヒーター11を1241℃、上部ヒーター8を1241℃、中部ヒーター9を1243℃、下部ヒーター10を1198℃になるまで温度を降温すること(VGF法)で、種付け完了後の種結晶部から単結晶を育成させる(図1(b)参照)。温度を降温する事(VGF法)で、成長結晶部の長さが30mmになるまで単結晶で育成させた時点において、原料融液の平均温度が約1242℃(GaAsの融点に対して4℃高い温度)になった。
【0034】
その後、炉内の温度降下を停止して、PBN製るつぼ3を3mm/時の速度で下方に移動させる事(VB法)によって、最後まで結晶成長を行った。
【0035】
この方法で、直径φ4インチ結晶長300mmの低転位GaAs単結晶を得ることができた。
【0036】
VB法のみまたはVGF法のみでは、直径φ4インチ結晶長300mmのGaAs単結晶得るのに270時間かかっていたが、本実施例2の方法では、220時間で低転位GaAs単結晶を成長させることができた。VB法のみまたはVGF法のみに対して本実施例2の方法では成長速度を上げているにも拘わらず、固液界面は融液側に凸または平坦であり、歩留もVB法のみまたはVGF法のみでは50%であったが、本実施例2の方法では70%に改善した。
【0037】
上記した実施例1と実施例2では、GaAsの単結晶成長について述べたが、GaAsの他に、例えばInP、GaP等の化合物半導体単結晶成長に応用することも可能である。
【0038】
[比較例1]
炉内の温度を降温することで、種付け完了後の種結晶部から単結晶を育成して、炉内の温度降下停止後の時点の原料融液の平均温度が、融点に対して5℃以上高い1243℃以上で行った以外は、実施例1と同じ条件でGaAs単結晶の成長を行った。
【0039】
炉内の温度降下停止後の時点の原料融液の平均温度が1243℃以上で行った以外は実施例1と同じ条件で行った結果、固液界面は融液側に凹になり、歩留も70%以下と実施例1の80%より低下した。
【0040】
[比較例2]
炉内の温度を降温することで、種付け完了後の種結晶部から単結晶を育成して、炉内の温度降下停止後の時点の原料融液の平均温度が、融点に対して5℃以上高い1243℃以上で行った以外は実施例2と同じ条件でGaAs単結晶の成長を行った。
【0041】
炉内の温度降下停止後の時点の原料融液の平均温度が1243℃以上で行った以外は実施例2と同じ条件で行った結果、固液界面は融液側に凹になり、歩留も60%以下と実施例2の70%より低下した。
【0042】
GaAs以外のInP、GaP等の化合物半導体単結晶成長においても、原料融液の平均温度が、融点に対して5℃以上高い温度で行った場合は、固液界面は融液側に凹になり、歩留も5℃以下で行った場合より低下した。
【0043】
以上の結果から、種結晶部から増径部あるいは断面積増大部のある時点までを、温度勾配を維持して温度を降温することで、単結晶を育成した時点の原料融液の平均温度を、融点に対して5℃高い温度より低くすることにより、固液界面は融液側に凸または平坦になり、高歩留で単結晶を製造することができる。
【0044】
成長速度の高速化は、種付け完了後の種結晶部から成長結晶部長手方向全体の1/4以下のある時点まで、温度勾配を維持して温度を降温することで、単結晶を育成した時点の原料融液の平均温度を融点付近まで低くする(例えば融点に対して5℃高い温度よりも低くする)ことにより、同様に達成することができる。
【0045】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、VB法及びVGF法によって単結晶を成長する製造方法において、温度勾配を維持して温度を降温することで、種結晶部から増径部あるいは断面積増大部のある時点まで又は種付け完了後の種結晶部から成長結晶部長手方向全体の1/4以下のある時点まで、単結晶を育成した時点の原料融液の平均温度を融点付近まで低くする、例えば融点に対して5℃高い温度よりも低くするため、これにより原料融液からの流入熱を少なくすることができる。
【0046】
従って、本発明の化合物半導体結晶の製造方法を用いることにより、結晶成長速度の高速化、結晶の長尺化において、固液界面を融液側に凸または平坦にすることができ、低転位単結晶を製造することができる。従って、高歩留り、且つ安価に化合物半導体結晶を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化合物半導体単結晶の製造方法の一部を示したもので、(a)は、原料を融解し、種付けを完了した後の温度分布を表す概略図、(b)は、種付けを完了した後、温度勾配を維持しながら炉内の温度を降温させる事によって種結晶部から単結晶を育成し、原料融液の平均温度が融点に対して5℃高い温度より低くなった時点で、炉内温度の降温を停止した時の温度分布を表す概略図である。
【図2】本発明の実施例1に係るVB法による化合物半導体結晶の製造装置の概略図である。
【図3】本発明の実施例2に係るVB法による化合物半導体結晶の製造装置の概略図である。
【図4】固液界面形状が融液側に凹面である事を表す概略図である。
【図5】固液界面形状が融液側に凸面である事を表す概略図である
【符号の説明】
3 PBN製るつぼ(結晶成長容器)
3a 種結晶部
3b 断面積増大部(増径部)
3c 成長結晶部(直胴部)
4 GaAs多結晶原料
5 三酸化ホウ素(液体封止剤)
6 種結晶
7 結晶受け台
8 上部ヒーター
9 中部ヒーター
10 下部ヒーター
11 最上部ヒーター
【発明の属する技術分野】
本発明は、原料融液を結晶成長容器内で下方から上方に向けて徐々に固化させて単結晶を成長する垂直ブリッジマン法(VB法)および垂直温度勾配凝固法(VGF法)による化合物半導体結晶の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
直径φ3インチを超える大型で、しかも転位密度の低い化合物半導体単結晶(GaAs、InPなど)が得られる方法として、液体封止型チョクラルスキー法(LEC法)に代わって、垂直ブリッジマン法(VB法)及び垂直温度勾配凝固法(VGF法)が注目されている。VB法及びVGF法は、原料融液を容器内で下部から上方に向けて徐々に固化させることにより単結晶を成長する縦型の容器内成長法である。LEC法では、低温度勾配下で成長を行うと液体封止剤通過後の結晶からIII−V族化合物半導体ではV族の解離、II−VI族化合物半導体ではVI族の解離が問題になるが、VB法及びVGF法は縦型の容器内成長であるため、容器の上方を液体封止剤で覆うことによって解離を防止することができる。従って、VB法及びVGF法では、LEC法に比べて低温度勾配下で成長できるため、転位密度の低い化合物半導体単結晶を製造することができる。
【0003】
垂直ブリッジマン法(VB法)も垂直温度勾配凝固法(VGF法)も、半導体原料融液を容器(るつぼ)内に収納し、容器の底部に予め配置した種結晶より結晶成長を開始して、徐々に上方に固化させことにより結晶化を進行せしめ、ついには原料融液全体を結晶化させるという点で共通する。ただし、VB法は、成長容器をヒーターの位置に対して相対的に降下させて成長させる方法であり、VGF法は、温度降下のみで成長させる方法である。
【0004】
このVB法及びVGF法では、種結晶載置部(種結晶部)が最下部にあり、種結晶載置部から上方に向けて直径が大きくなる増径部(断面積増大部)、増径部から上方に続く直胴部(成長結晶部)を有している成長容器を、支持部材により支持して加熱装置内に配置する。そして、成長容器下部の種結晶載置部内に種結晶を設置し、その上に多結晶原料を置き、上部が高く、下部が低い温度分布を設けた加熱装置の中で、種結晶の下部から上部に向かって結晶固化させる。
【0005】
従来、まず、結晶成長の前半において、VB法と同様、温度勾配をつけた炉内で、原料を収容した縦型容器を下降させて、原料の下端から結晶を育成して行き、次に、容器の下降を停止し、VGF法と同様にして、炉の温度を下げて行き引き続いて結晶を成長させて行く化合物半導体結晶の育成方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この特許文献1の方法には、次のような長所がある。まず、温度が高く設定される結晶成長初期においてVB法を採用することで、高温部の温度をあまり高くせずに済む。これによって構成元素の解離を防止する。このため組成ずれが防止される。次に、成長の中後期にVGF法を採用することで、炉長を短くすることができる。また、最初にVB法を行っているため、VB法からVGF法に移行する段階において、温度勾配は比較的大きい。したがって、成長の中後期でもVGF法において成長速度の制御が容易になる。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−325485号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、結晶の長尺化において、結晶育成速度の高速化を図りつつ、固液界面を融液側に凸面又は平坦となるようにして、低転位単結晶を高歩留り、且つ安価に製造するという観点からは、更なる改善がなされた化合物半導体結晶の製造方法の提供が望まれていた。
【0009】
VB法及びVGF法の特長である低転位化を実現するためには、(i) 結晶固化後に発生する熱的な歪の抑制、(ii) 固液界面(結晶成長時の結晶固化形状を示す)が融液側へ凹面形状(図4)となってしまうことによる機械的な歪みの抑制が必要となる。
【0010】
上記(i) の点については熱的な歪み対策の一つとして、低温度勾配下での結晶成長が挙げられる。これは、結晶固化部及び成長部を低温度勾配下でゆっくり冷却することで冷却時の熱歪みにより発生する転位を抑制することができるためである。
【0011】
上記(ii) の点については、固液界面形状が融液側へ凹面になると発生した転位が結晶の内部に向かって集まり多結晶化しやすい条件となるため、VB法及びVGF法においては凹面成長による転位の抑制、つまり固液界面形状が融液側に凸面(図5)又は平坦となるようにすることが不可欠である。
【0012】
しかし、上述した理由から、VB法及びVGF法での結晶成長時は、低温度勾配下での結晶成長となるため、種結晶部からの放熱量を多くすることができない。そのため、結晶成長速度を高速化すると、種結晶部からの放熱量が不足し、固液界面形状が融液側に凹面(図4)となってしまう。従って、VB法及びVGF法で高速成長を実施した場合、単結晶化、低転位化することが非常に困難となる。また結晶を長尺化した場合にも、原料融液からの流入熱が増大するため、種結晶部からの放熱量が不足し、固液界面形状が融液側に凹面となるため、単結晶化、低転位化が困難である。
【0013】
そこで、本発明の目的は上記課題を解決し、VB法及びVGF法による結晶の成長速度の高速化、結晶の長尺化に有効な化合物半導体結晶の製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0015】
請求項1の発明に係る化合物半導体単結晶の製造方法は、断面積が小さい種結晶部と、これに続く徐々に断面積が増大する断面積増大部と、これに続く断面積が大きくほぼ一定の成長結晶部とを有する容器を用いて、該容器に原料融液を収納し、温度勾配を設けた成長炉内で該容器の底部に予め配置した種結晶より結晶成長を開始して、徐々に上方に結晶化を進行させて、ついには原料融液全体を結晶化させる化合物半導体単結晶の製造方法において、多結晶原料を融解し、種付けを完了した後、炉内温度を降温することで、種付け完了後の種結晶部から断面積増大部のある時点まで単結晶の育成を行い、次いで、炉内温度の降下を停止して、上記容器を成長炉に対し相対的に移動させることで単結晶の育成を行うことを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明に係る化合物半導体単結晶の製造方法は、断面積が小さい種結晶部と、これに続く徐々に断面積が増大する断面積増大部と、これに続く断面積が大きくほぼ一定の成長結晶部とを有する容器を用いて、該容器に原料融液を収納し、温度勾配を設けた成長炉内で該容器の底部に予め配置した種結晶より結晶成長を開始して、徐々に上方に結晶化を進行させて、ついには原料融液全体を結晶化させる化合物半導体単結晶の製造方法において、多結晶原料を融解し、種付けを完了した後、炉内温度を降温することで、種付け完了後の種結晶部から成長結晶部の長手方向全体の長さの1/4以下のある時点まで単結晶の育成を行い、次いで、炉内温度の降下を停止して、上記容器を成長炉に対し相対的に移動させることで単結晶の育成を行うことを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の化合物半導体単結晶の製造方法において、多結晶原料を融解し、種付けを完了した後、炉内温度を降温することで、種付け完了後の種結晶部から単結晶を育成し、炉内温度の降下を停止した時点の原料融液の平均温度を、融点に対して5℃高い温度より低くすることを特徴とする。
【0018】
<発明の要点>
本発明の要旨は、化合物半導体単結晶の製造方法において、固液界面が融液側へ凸または平坦となり、且つ成長速度を高速化または長尺化できる以下の方法である。
【0019】
すなわち、円形あるいは任意形状の直径あるいは断面積が小さい種結晶部と、円形あるいは任意形状の直径あるいは断面積が大きくほぼ一定の成長結晶部と、徐々に直径あるいは断面積が増大する増径部あるいは断面積増大部とを有する容器を用いて、該容器に原料融液を収納し、温度勾配を設けた成長炉内で該容器の底部に予め配置した種結晶より結晶成長を開始し、徐々に上方に結晶化を進行させて、ついには原料融液全体を結晶化させる化合物半導体単結晶の製造方法において、多結晶原料を融解し、種付けを完了した後、種結晶部から増径部あるいは断面積増大部のある時点までを、炉内の温度を降温することで単結晶を育成する方法(VGF法)の利用を行った後、次に該容器を成長炉に対し相対的に移動させることで単結晶を育成する方法(VB法)の利用を行い、単結晶の育成速度と歩留りを上げるようにした化合物半導体単結晶の製造方法である。
【0020】
多結晶原料を短時間で完全に融解し、短時間で安定して種付けを行うためには、多結晶原料配置部の炉内の平均温度を融点よりある程度高めにする必要がある。しかし、完全に多結晶原料を融解した後は、融点付近まで融液の温度を下げても固化しない。本発明では、この点に着目し、多結晶原料配置部の炉内の平均温度を融点よりある程度高め(例えば、融点より15℃高くする)にして(図1(a))、炉内多結晶原料を完全に融解し、安定して種付けを行った後、炉内温度を降温すること(VGF法)で、種付け完了後の種結晶部から増径部あるいは断面積増大部のある時点まで又は種付け完了後の種結晶部から成長結晶部長手方向全体の1/4以下のある時点まで、単結晶を育成した時点の原料融液の平均温度を融点付近まで低くする(例えば、融点より5℃高い温度より低くする)(図1(b))。
【0021】
このように原料融液の平均温度を融点に対して融点付近まで低くすると、これによって、原料融液からの流入熱が少なくなり、その後のVB法においては、固液界面の平坦化及び、結晶成長速度の高速化を図ることが可能となる。また、結晶を長尺化することにより、単結晶育成時の原料融液からの流入熱が増大するが、本発明により原料融液からの流入熱を少なくすることができるので、長尺低転位単結晶を製造することが可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図示の実施例に基づいて説明する。
【0023】
本発明の化合物半導体単結晶の製造方法は、種結晶から炉内温度を降下させること(VGF法)により、単結晶を育成しながら原料融液の温度を融点付近まで下げた後、炉内温度の降下を停止してから原料容器を下方に移動させること(VB法)により単結晶を育成することで、育成速度及び歩留りを上げるものである。化合物半導体単結晶の一つであるGaAsを例にとって説明する。
【0024】
図1は本発明の化合物半導体単結晶の製造方法の一部を示したもので、(a)は、原料を融解し、種付けを完了した後の温度分布を表す概略図、(b)は、種付けを完了した後、温度勾配を維持しながら炉内の温度を降温させる事によって種結晶部から単結晶を育成し、原料融液の平均温度が融点に対して5℃高い温度より低くなった時点で、炉内温度の降温を停止した時の温度分布を表す概略図である。
【0025】
[実施例1]
GaAs単結晶成長を、図2に示すように、チャンバ1内の不活性ガス2中でグラファイト製加熱装置(上部ヒーター8、中部ヒーター9、下部ヒーター10)で加熱処理する成長炉を用いて成長を行った。
【0026】
結晶成長容器としては、下部に形成した直径が小さい円形の種結晶収容部たる種結晶部3aと、これに続く上方に徐々に直径が増大する増径部(断面積増大部3b)と、これに続く円形の直径が大きくほぼ一定の直胴部(結晶育成部3c)とを有するPBN製るつぼ3を用いた。
【0027】
PBN製るつぼ3にGaAs多結晶原料4と液体封止剤である三酸化ホウ素(B2O3)5と種結晶6を収容した。その後、グラファイト製結晶受け台7にPBN製るつぼ3をセットする。セット完了後、炉内を真空引きし、不活性ガスで置換し、上部ヒーター8、中部ヒーター9、下部ヒーター10により昇温する。上部ヒーター8を1256℃、中部ヒーター9を約1252℃、下部ヒーター10を1217℃になるまで昇温する。昇温後15時間設定温度を保持する事によって、多結晶原料を完全に融解し、種付けを行う(図1(a)参照)。種付け完了後の原料融液の平均温度は約1254℃(GaAs融点に対して16℃高い温度)であった。
【0028】
上部ヒーター8を1240℃、中部ヒーター9を約1243℃、下部ヒーター10を1208℃になるまで温度を降温すること(VGF法)で、種付け完了後の種結晶部3aから単結晶を育成させる(図1(b)参照)。温度を降温する事(VGF法)で、増径部(断面積増大部3b)の全体の長さの4/5の位置までを単結晶で育成させた時点において、原料融液の平均温度が約1242℃(GaAs融点に対して4℃高い温度)になった。
【0029】
その後、炉内の温度降下を停止して、PBN製るつぼ3を4mm/時の速度で下方に移動させる事(VB法)によって、最後まで結晶成長を行った。
【0030】
上記の方法で、直径φ4インチ結晶長200mmの低転位GaAs単結晶を得ることができた。
【0031】
VB法のみまたはVGF法のみでは、直径φ4インチ結晶長200mmのGaAs単結晶得るのに170時間かかっていたが、本実施例1の方法では、150時間で低転位GaAs単結晶を成長させることができた。VB法のみまたはVGF法のみに対して本実施例1の方法では成長速度を上げているにも拘わらず、固液界面は融液側に凸または平坦であり、歩留もVB法のみまたはVGF法のみでは70%であったが、本実施例1の方法では80%に改善した。
【0032】
[実施例2]
ここで説明するGaAs単結晶成長の概略を図3に示す。実施例1と同様にPBN製るつぼ3にGaAs多結晶原料4と液体封止剤である三酸化ホウ素(B2O3)5と種結晶6を収容した。その後、グラファイト製結晶受け台7にPBN製るつぼ3をセットする。セット完了後、炉内を真空引きし、不活性ガスで置換し、最上部ヒーター11、上部ヒーター8、中部ヒーター9、下部ヒーター10により昇温する。最上部ヒーター11を1256℃、上部ヒーター8を1256℃、中部ヒーター9を約1252℃、下部ヒーター10を1207℃になるまで昇温する。昇温後15時間設定温度を保持する事によって、多結晶原料を完全に融解し、種付けを行う(図1(a)参照)。種付け完了後の原料融液の平均温度は約1254℃(GaAs融点に対して16℃高い温度)であった。
【0033】
最上部ヒーター11を1241℃、上部ヒーター8を1241℃、中部ヒーター9を1243℃、下部ヒーター10を1198℃になるまで温度を降温すること(VGF法)で、種付け完了後の種結晶部から単結晶を育成させる(図1(b)参照)。温度を降温する事(VGF法)で、成長結晶部の長さが30mmになるまで単結晶で育成させた時点において、原料融液の平均温度が約1242℃(GaAsの融点に対して4℃高い温度)になった。
【0034】
その後、炉内の温度降下を停止して、PBN製るつぼ3を3mm/時の速度で下方に移動させる事(VB法)によって、最後まで結晶成長を行った。
【0035】
この方法で、直径φ4インチ結晶長300mmの低転位GaAs単結晶を得ることができた。
【0036】
VB法のみまたはVGF法のみでは、直径φ4インチ結晶長300mmのGaAs単結晶得るのに270時間かかっていたが、本実施例2の方法では、220時間で低転位GaAs単結晶を成長させることができた。VB法のみまたはVGF法のみに対して本実施例2の方法では成長速度を上げているにも拘わらず、固液界面は融液側に凸または平坦であり、歩留もVB法のみまたはVGF法のみでは50%であったが、本実施例2の方法では70%に改善した。
【0037】
上記した実施例1と実施例2では、GaAsの単結晶成長について述べたが、GaAsの他に、例えばInP、GaP等の化合物半導体単結晶成長に応用することも可能である。
【0038】
[比較例1]
炉内の温度を降温することで、種付け完了後の種結晶部から単結晶を育成して、炉内の温度降下停止後の時点の原料融液の平均温度が、融点に対して5℃以上高い1243℃以上で行った以外は、実施例1と同じ条件でGaAs単結晶の成長を行った。
【0039】
炉内の温度降下停止後の時点の原料融液の平均温度が1243℃以上で行った以外は実施例1と同じ条件で行った結果、固液界面は融液側に凹になり、歩留も70%以下と実施例1の80%より低下した。
【0040】
[比較例2]
炉内の温度を降温することで、種付け完了後の種結晶部から単結晶を育成して、炉内の温度降下停止後の時点の原料融液の平均温度が、融点に対して5℃以上高い1243℃以上で行った以外は実施例2と同じ条件でGaAs単結晶の成長を行った。
【0041】
炉内の温度降下停止後の時点の原料融液の平均温度が1243℃以上で行った以外は実施例2と同じ条件で行った結果、固液界面は融液側に凹になり、歩留も60%以下と実施例2の70%より低下した。
【0042】
GaAs以外のInP、GaP等の化合物半導体単結晶成長においても、原料融液の平均温度が、融点に対して5℃以上高い温度で行った場合は、固液界面は融液側に凹になり、歩留も5℃以下で行った場合より低下した。
【0043】
以上の結果から、種結晶部から増径部あるいは断面積増大部のある時点までを、温度勾配を維持して温度を降温することで、単結晶を育成した時点の原料融液の平均温度を、融点に対して5℃高い温度より低くすることにより、固液界面は融液側に凸または平坦になり、高歩留で単結晶を製造することができる。
【0044】
成長速度の高速化は、種付け完了後の種結晶部から成長結晶部長手方向全体の1/4以下のある時点まで、温度勾配を維持して温度を降温することで、単結晶を育成した時点の原料融液の平均温度を融点付近まで低くする(例えば融点に対して5℃高い温度よりも低くする)ことにより、同様に達成することができる。
【0045】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、VB法及びVGF法によって単結晶を成長する製造方法において、温度勾配を維持して温度を降温することで、種結晶部から増径部あるいは断面積増大部のある時点まで又は種付け完了後の種結晶部から成長結晶部長手方向全体の1/4以下のある時点まで、単結晶を育成した時点の原料融液の平均温度を融点付近まで低くする、例えば融点に対して5℃高い温度よりも低くするため、これにより原料融液からの流入熱を少なくすることができる。
【0046】
従って、本発明の化合物半導体結晶の製造方法を用いることにより、結晶成長速度の高速化、結晶の長尺化において、固液界面を融液側に凸または平坦にすることができ、低転位単結晶を製造することができる。従って、高歩留り、且つ安価に化合物半導体結晶を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化合物半導体単結晶の製造方法の一部を示したもので、(a)は、原料を融解し、種付けを完了した後の温度分布を表す概略図、(b)は、種付けを完了した後、温度勾配を維持しながら炉内の温度を降温させる事によって種結晶部から単結晶を育成し、原料融液の平均温度が融点に対して5℃高い温度より低くなった時点で、炉内温度の降温を停止した時の温度分布を表す概略図である。
【図2】本発明の実施例1に係るVB法による化合物半導体結晶の製造装置の概略図である。
【図3】本発明の実施例2に係るVB法による化合物半導体結晶の製造装置の概略図である。
【図4】固液界面形状が融液側に凹面である事を表す概略図である。
【図5】固液界面形状が融液側に凸面である事を表す概略図である
【符号の説明】
3 PBN製るつぼ(結晶成長容器)
3a 種結晶部
3b 断面積増大部(増径部)
3c 成長結晶部(直胴部)
4 GaAs多結晶原料
5 三酸化ホウ素(液体封止剤)
6 種結晶
7 結晶受け台
8 上部ヒーター
9 中部ヒーター
10 下部ヒーター
11 最上部ヒーター
Claims (3)
- 断面積が小さい種結晶部と、これに続く徐々に断面積が増大する断面積増大部と、これに続く断面積が大きくほぼ一定の成長結晶部とを有する容器を用いて、該容器に原料融液を収納し、温度勾配を設けた成長炉内で該容器の底部に予め配置した種結晶より結晶成長を開始して、徐々に上方に結晶化を進行させて、ついには原料融液全体を結晶化させる化合物半導体単結晶の製造方法において、
多結晶原料を融解し、種付けを完了した後、炉内温度を降温することで、種付け完了後の種結晶部から断面積増大部のある時点まで単結晶の育成を行い、
次いで、炉内温度の降下を停止して、上記容器を成長炉に対し相対的に移動させることで単結晶の育成を行うことを特徴とする化合物半導体単結晶の製造方法。 - 断面積が小さい種結晶部と、これに続く徐々に断面積が増大する断面積増大部と、これに続く断面積が大きくほぼ一定の成長結晶部とを有する容器を用いて、該容器に原料融液を収納し、温度勾配を設けた成長炉内で該容器の底部に予め配置した種結晶より結晶成長を開始して、徐々に上方に結晶化を進行させて、ついには原料融液全体を結晶化させる化合物半導体単結晶の製造方法において、
多結晶原料を融解し、種付けを完了した後、炉内温度を降温することで、種付け完了後の種結晶部から成長結晶部の長手方向全体の長さの1/4以下のある時点まで単結晶の育成を行い、
次いで、炉内温度の降下を停止して、上記容器を成長炉に対し相対的に移動させることで単結晶の育成を行うことを特徴とする化合物半導体単結晶の製造方法。 - 請求項1又は2記載の化合物半導体単結晶の製造方法において、
多結晶原料を融解し、種付けを完了した後、炉内温度を降温することで、種付け完了後の種結晶部から単結晶を育成し、炉内温度の降下を停止した時点の原料融液の平均温度を、融点に対して5℃高い温度より低くすることを特徴とする化合物半導体単結晶の製造方法。
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