JP2004273751A - 磁性部材、電磁波吸収シート、磁性部材の製造方法、電子機器 - Google Patents
磁性部材、電磁波吸収シート、磁性部材の製造方法、電子機器 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】高周波領域で優れた透磁率を有した磁性部材、電磁波吸収シート、磁性部材の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】電磁波吸収シート1を、複合磁性層10の片面に、磁性金属層20を有する構成とした。磁性金属層20は、組成をFe,Co,Niの一種以上を含む軟磁性合金薄膜とするのが好ましく、特に、Fe−Ni合金、Fe−Co合金、Fe−Co−Ni合金等が好適である。また、複合磁性層10は、多数の磁性粉末11が塑性変形して密に絡み合うことで形成することもでき、個々の磁性粉末11は、扁平状軟磁性金属粉からなる電磁波減衰相12と、電磁波減衰相12の表面に形成された絶縁膜からなる絶縁相13と、から形成することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】電磁波吸収シート1を、複合磁性層10の片面に、磁性金属層20を有する構成とした。磁性金属層20は、組成をFe,Co,Niの一種以上を含む軟磁性合金薄膜とするのが好ましく、特に、Fe−Ni合金、Fe−Co合金、Fe−Co−Ni合金等が好適である。また、複合磁性層10は、多数の磁性粉末11が塑性変形して密に絡み合うことで形成することもでき、個々の磁性粉末11は、扁平状軟磁性金属粉からなる電磁波減衰相12と、電磁波減衰相12の表面に形成された絶縁膜からなる絶縁相13と、から形成することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波領域の電磁ノイズ対策部品に用いる電磁波吸収シートおよびその製造方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】
パソコン、ゲーム機器あるいは携帯情報端末に代表されるデジタル電子機器をはじめとする電子装置は、回路の高周波化、高性能化に伴い高密度化が進行しており、受動素子が半導体素子などノイズを放射する能動素子の影響を受けやすくなっている。従来、この対策として、フェライトコアや準マイクロ波帯に対応する電波吸収体が利用されているが、電子機器の小型化に伴い、ノイズ対策部品の小型化、薄型化、高性能化が要求されている。
【0003】
一方、EMC規格を満たすために、200MHz近傍の周波数でのノイズ規格を満たすことが重要課題となっており、この帯域に対応した電波吸収体や小型EMI対策部品の需要が拡大している。
例えば、特許文献1には、扁平磁性粉を焼鈍処理して残留応力を低減させた後に面内方向に配向させ、有機結合剤のガラス転移温度Tg以上の温度においてシート面に垂直の方向に加圧することにより、共鳴周波数の低周波化を図り100MHz以下の周波数で高い透磁率を達成し得る複合シート状生成物の製造方法が開示されている。しかしながら、このような有機結合剤と扁平磁性粉の複合磁性体シートの透磁率は、100MHzで高々30程度であり、高透磁率を得るのは困難である。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−4097号公報
【0005】
また特許文献2には、扁平状の軟磁性粉を用い、押し出し成型により板状に成型することを特徴とする圧粉磁心の製造方法が開示されている。この方法では、扁平状軟磁性粉が押し出し方向に配向するために透磁率を高くできる利点があるが、厚さが0.4mmよりも薄いシートを製造しようとすると、狭ノズルから押し出すと同時にテンションを加えて引き取って薄くする必要があり、高透磁率化が困難になる。即ち、狭ノズルからの押し出しの際に引き取れるだけの柔軟性を付与するために樹脂量を多くして、押し出し温度での粘性を下げる必要があり、このため磁性粉の充填量が減少して高透磁率が得られない。
【0006】
【特許文献2】
特開平11−74140号公報
【0007】
押し出しによらず、印刷積層法やドクターブレード法により薄くする方法も開示されている。
特許文献3に開示されているのは、アスペクト比が5〜40である扁平状の軟磁性金属粉とバインダーとを用いて印刷積層法によって厚さ500μm以下のシートを作製し、このシートを厚さ10mm以下に重ねてさらに加圧成型し打ち抜いて磁心とする方法である。しかし、この方法を用いても溶剤以外に多量の有機バインダーを使用するため、軟磁性金属粉の占積率を75%よりも高くすることが困難であり、また、成型に伴う応力劣化を避けることができず、残留応力を効果的に取り除くことのできる熱処理も施せないため、結果として100MHz付近の高周波において高い透磁率を得ることができない。
また、特許文献4は、扁平状軟磁性粉と結合剤、溶媒からなるスラリー状の混和物から成膜を行う複合磁性体の製造方法が開示されており、該方法において、応力歪みを除去した扁平状軟磁性粉に再び応力歪みを加えないよう複合磁性体を製造することを特徴としているが、このように扁平粉自体に変形応力を加えない方法では、材料の占積率を大きくすることは困難であるうえ、樹脂の硬化収縮による応力発生は原理的に避けることができないなどの欠点を有しているため、100MHz付近の高周波で高い透磁率を得ることが期待できない。
【0008】
【特許文献3】
特開平11−176680号公報
【特許文献4】
特開2000−243615号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術は、いずれも扁平状軟磁性金属粉の残留応力を小さくした後、成型工程において、該扁平状軟磁性金属粉に過大な応力が加わらないよう配慮することに重点がおかれた技術思想に基づくものであり、このような技術思想では実質的に金属粉の占積率を大きくできないうえ、成型体の残留応力が小さくならないという二重の欠点を有しており、数十MHz〜数GHz帯に至る高周波での複素透磁率の向上に限界があった。
【0010】
本発明者らは、この問題点を解決するために、特許文献5において、表面に絶縁膜が形成された扁平状軟磁性金属粉を圧着接合することにより、軟磁性金属相と絶縁相とからなる複合磁性体を提案したが、更なる優れた高周波特性が望まれている。
【0011】
【特許文献5】
特開2002−289414号公報
【0012】
そこで、本発明は、この問題点を解決し、高周波領域で優れた透磁率を有した磁性部材、電磁波吸収シート、磁性部材の製造方法等を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
かかる目的のもと、本発明の磁性部材は、電磁波減衰相と絶縁相を有した複合磁性層と、複合磁性層に積層された軟磁性金属層と、を有することを特徴とする。
ここで、電磁波減衰相は、文字通り電磁波減衰機能を有するもので、例えば、誘電損失材料または磁性損失材料または導電損失材料から形成することができる。
誘電損失材料は、電界を加えることによって生じる誘電分散により電波を吸収する。このような材料としては、カーボン等、より詳しくはカーボン粒子を混入したゴムシート、グラファイト含有発泡ポリスチロール、カーボン含有発泡ウレタン等がある。
磁性損失材料は、加えられた磁界により電波を吸収するもので、この種の材料としてフェライトは最も代表的なものである。また、磁性損失材料として、扁平状軟磁性金属粉を用いることが特に有効である。
導電損失材料は、電界が加えられると導電電流が流れ、電磁波のエネルギーを熱に変換するものである。このような材料としては、導電性繊維を布状に織り上げた布や、酸化インジウム錫を蒸着した誘電体シート等がある。
また、電磁波減衰相として、Fe等の金属材料を用いることもできる。
【0014】
ところで、電磁波減衰相を形成する磁性損失材料として、扁平状軟磁性金属粉を用いる場合、電磁波減衰相における扁平状軟磁性金属粉の占積率は30%以上、好ましくは75%以上、電磁波減衰相の100MHzにおける複素透磁率の実数部分を20以上とすることができる。
また、電磁波減衰相は、表面に絶縁膜を有する扁平状軟磁性金属粉を、その厚さ方向に積層することで所定の厚さに形成した構成とし、さらにこの電磁波減衰相の表面を絶縁層で覆うようにしてもよい。その場合、電磁波減衰相を形成する扁平状軟磁性金属粉の厚さは、例えば0.1〜1μmとされる。ここで、電磁波減衰相は、扁平状軟磁性金属粉がほぼ一定の方向に配向されているのが好ましい。また、電磁波減衰相の厚さは5〜100μm、絶縁層の厚さは50μm以下とすることができる。
ところで、絶縁層は、電気絶縁材料から形成されたシート材が磁性層に貼着されることで形成することもできるし、電気絶縁性樹脂によって磁性層をコーティングすることで形成することもできる。後者の場合、磁性層を補強する効果も有し、絶縁層を形成する電気絶縁性樹脂は、磁性層を形成する扁平状軟磁性金属粉の隙間に入り込んでいてもよい。
これら、電磁波減衰相を形成する材料は、電磁波を吸収したい目的の周波数等に応じ、適宜選択される。
なおここで、複合磁性層、軟磁性金属層、絶縁層という文言における「層」とは、文字通り層状をなしているもので、所定の厚さを有した複合磁性層、軟磁性金属層、絶縁層が積層される構成となっている。
また、複合磁性層の電磁波減衰相、絶縁相という文言における「相」とは、一つの層(複合磁性層)中で、物理的・化学的な性質が異なる部分を区分するためのものである。
さらに、絶縁膜は、扁平状軟磁性金属粉の表面を覆うように膜状に形成されるものを指している。
【0015】
また複合磁性層の絶縁相は、有機絶縁材料、無機絶縁材料の少なくとも一つまたはそれらの化合物を含むことができる。
ここで、有機絶縁材料としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンスルフィド、PET、PBT、ポリアリレート、シリコン樹脂、ジアリルフタレート、ポリイミド等がある。
また、無機絶縁材料としては、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、ガラスおよびボロンナイトライド、セリサイト、酸化ケイ素、窒化ケイ素等がある。
上記したような材料は、少なくとも一つを含んでいればよく、複数種を組み合わせる場合には、それらの混合物だけでなく化合物であってもよい(例えば原料としてシリカゾルとアルミナゾルを組み合わせて用いた場合、反応によってそれらの化合物であるムライト相となることもある)。
【0016】
軟磁性金属層は、Fe、Co、Niの少なくとも一種以上を含む合金または金属の薄膜とするのが好ましい。
【0017】
また、上記したような磁性部材は、例えば携帯電話端末等の内部に配設されるフレキシブルケーブルに貼り付けることで不要な電磁波を減衰できる。したがって、本発明は電磁波吸収シートとすることもできる。そして、この電磁波吸収シートは、表面に絶縁膜を有する電磁波減衰材料からなる粉体が、その厚さ方向に積層されることで所定の厚さに形成された複合磁性層と、複合磁性層の片面側に設けられた軟磁性金属層と、を備えることを特徴とする。このような複合磁性層と軟磁性金属層は、電磁波吸収シートの厚さ方向において対向した状態で交互に配置する、つまり複数層に積層することで、その電磁波吸収性能を高めることができる。
ここで、軟磁性金属層と複合磁性層のみを交互に積層することもできるが、電気抵抗の低い複合磁性層を用いる場合は、電気的な短絡を防ぐため、複合磁性層と軟磁性金属層の間に絶縁層を介在させるのが好ましい。また、複合磁性層と軟磁性金属層の間に、他の層を適宜介在させることももちろん可能である。
【0018】
複合磁性層と軟磁性金属層の間に絶縁層を介在させるには、複数の手法が考えられる。例えば、複合磁性層に絶縁層を一体に形成してシート状としておき、これに軟磁性金属層を直接形成することができる。また、軟磁性金属層の基板として絶縁材料で形成したシートを用いることで軟磁性金属層をシート状とし、これを絶縁層として機能させつつ、複合磁性層に積層させることもできる。これら二つの方法を組み合わせた方法、すなわち、複合磁性層に絶縁層を一体に形成しておく一方、軟磁性金属層を絶縁材料からなる基板上に形成し、これを複合磁性層に積層させる方法も採用できる。つまり、複合磁性層と絶縁層を有するシート状生成物と、軟磁性金属層と絶縁層を有するシート状生成物とを貼り合わせるのである。
また、複合磁性層と軟磁性金属層を1単位とし、これを複数単位にわたって積層する場合、単位間で複合磁性層と軟磁性金属層の短絡を防ぐため、ここにも絶縁層を介在させるのが好ましい。さらに、積層する複合磁性層と軟磁性金属層の数は一致させる必要はなく、複合磁性層に対し軟磁性金属層の数を多くしたり、逆に複合磁性層に対し軟磁性金属層の数を少なくする等してもよい。
【0019】
ところで、前記粉体としては、前記したような各種電磁波吸収機能を有した材料を用いることができるが、特に扁平状軟磁性金属粉が好適である。この扁平状軟磁性金属粉は、複合磁性層にて、ほぼ一定の方向に配向するのが好ましい。
また、軟磁性金属層の片側に下地金属層を設けることも有効である。これにより、軟磁性金属層と複合磁性層の間に下地金属層を介在させることができる。この場合、絶縁層上に下地金属層を形成し、その下地金属層上に軟磁性金属層を形成するのが好ましい。
【0020】
また、本発明は、電磁波減衰材料からなる粉体と絶縁材料を混合絶縁処理する工程と、混合により絶縁を施した粉体を基板上に堆積させた後に圧延して配向させてシート状生成物を得る工程と、シート状生成物の一面側に軟磁性金属層を形成する工程と、を備えることを特徴とする磁性部材の製造方法として捉えることができる。
【0021】
上記したような磁性部材、電磁波吸収シート等は、携帯電話機を初め、PC(Personal Computer)、PDA(Personal Digital Assistants)、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)端末等の各種電子機器に適用することができる。
すなわち、そのような電子機器は、その外殻をなす筐体内に、電磁波吸収部材を配設しており、その電磁波吸収部材は、電磁波減衰相と絶縁相を有した複合磁性層と、複合磁性層に積層された軟磁性金属層と、を有することを特徴とするものとなる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1に示すように、本実施の形態における電磁波吸収シート(磁性部材)1は、複合磁性層10の片面に、磁性金属層(軟磁性金属層)20を有した構成となっている。
ここで、複合磁性層10は、全体として5〜100μmの厚さを有しているのが好ましい。また、磁性金属層20は、全体として50μm以下、さらには15μm以下であることがより好ましい。
【0023】
図2に、複合磁性層10のみを模式的に示す。複合磁性層10は、多数の磁性粉末(粉体)11が塑性変形して密に絡み合うことで形成されている。
個々の磁性粉末11は、扁平状軟磁性金属粉からなる電磁波減衰相12と、電磁波減衰相12の表面に形成された絶縁膜からなる絶縁相13と、から形成される複合磁性体である。これによって、互いに接する電磁波減衰相12間には絶縁相13が介在することになる。これにより、複合磁性層10は、表面に絶縁膜を有する扁平状軟磁性金属粉が、その厚さ方向に層状に積層されることで所定の厚さに形成された構成となっている。
【0024】
はじめに、電磁波減衰相12を構成する扁平状軟磁性金属粉について説明する。扁平状軟磁性金属粉は、電磁波減衰材料として機能する、パーマロイ(Fe−Ni合金)、スーパーパーマロイ(Fe−Ni−Mo合金)、センダスト(Fe−Si−Al合金)、Fe−Si合金、Fe−Co合金、Fe−Cr合金、Fe−Cr−Si合金等であり、そのアスペクト比は10〜200、より望ましくは10〜150であることが好ましい。
扁平状軟磁性金属粉の厚さ(圧延前の厚さ)は0.1〜1μmとすることが望ましい。扁平状軟磁性金属粉の厚さを0.1μm未満とすることは製造上困難であり、取り扱いも難しくなる。また、扁平状軟磁性金属粉の厚さが1μmを超えると、高周波での磁気特性の低下を招くことになるので好ましくない。また、扁平状軟磁性金属粉を圧接接合しても、厚さはほとんど変化しない。よって、扁平状軟磁性金属粉が圧接接合された後の厚さも0.1〜1μmの範囲となる。
【0025】
次に、絶縁相13を構成する絶縁膜について説明する。
図2に示したように、扁平状軟磁性金属粉の全表面に均一に絶縁膜が形成されていることが理想的ではあるが、扁平状軟磁性金属粉の表面に絶縁膜が形成されていない部分があっても圧接接合後に絶縁相13として機能しうる程度の絶縁膜が形成されていればよい。
扁平状軟磁性金属粉と絶縁材料を混合し、所定の処理を加えることにより、扁平状軟磁性金属粉の表面に絶縁膜が形成される。絶縁材料としては、有機絶縁材料、無機絶縁材料の少なくとも一つまたはそれらの化合物を含むことができる。より詳しくは、有機絶縁材料としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンスルフィド、PET、PBT、ポリアリレート、シリコン樹脂、ジアリルフタレート、ポリイミド等の他、シラン系やチタネート系のカップリング剤を用いることができる。また、無機絶縁材料としては、シリカゾル、チタニアゾル、マグネシアゾル、アルミナゾル、粉末ガラスおよびボロンナイトライド、セリサイト、酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。無機絶縁材料としては無機ポリマーを用いることもでき、この無機ポリマーとしては、ペルヒドロポリシラザン等、ポリシラザン系のものを用いることができる。
【0026】
他に、複合磁性層10の電磁波減衰相12は、電磁波減衰材料として機能する、導電損失材料、誘電損失材料、磁性損失材料等によって形成することもできる。
導電損失材料は、電界が加えられると導電電流が流れ、電磁波のエネルギーを熱に変換するものである。このような材料としては、導電性繊維を布状に織り上げた布や、酸化インジウム錫を蒸着した誘電体シート等がある。
また、誘電損失材料は、電界を加えることによって生じる誘電分散により電波を吸収する。このような材料としては、カーボン等、より詳しくはカーボン粒子を混入したゴムシート、グラファイト含有発泡ポリスチロール、カーボン含有発泡ウレタン等がある。
磁性損失材料は、加えられた磁界により電波を吸収するもので、この種の材料としてフェライトは最も代表的なものであり、例えば、Mn−Mg−Znフェライト、Mn−Znフェライト、Ni−Znフェライト、六方晶系フェライト等を好適に用いることができる。
また、電波を反射・吸収する材料で複合磁性層10の電磁波減衰相12を形成することもできる。このような材料としては、例えば金属材料があり、具体的にはカーボニル鉄等を好適に用いることができる。
このように、複合磁性層10の電磁波減衰相12を導電損失材料、誘電損失材料、磁性損失材料、金属材料で形成する場合、絶縁相13は、合成ゴム、軟質塩化ビニール、塩素化ポリエチレン等の材料で形成することができる。
【0027】
ここで、複合磁性層10と磁性金属層20は、複数層にわたって積層することもできる。この場合、複合磁性層10と磁性金属層20のみを交互に積層することもできるが、その場合、電気的な短絡を防ぐため、複合磁性層10と磁性金属層20の間に図示しない絶縁層を介在させるのが好ましい。
【0028】
また、図1に示した磁性金属層20は、組成がFe,Co,Niの一種以上を含む軟磁性合金薄膜であり、例えば、Fe−Ni合金、Fe−Co合金、Fe−Co−Ni合金等が使用される。更に、この合金薄膜に下地金属層、絶縁基材がある構造も実用される。この軟磁性合金薄膜の厚さは、電磁波吸収を行う目的とする周波数帯域により異なるが、0.1〜3μmの膜厚のものが実用される。また、厚さの異なる膜を多層化してさらに広帯域化することも可能である。
【0029】
なお、上記では、複合磁性層10を構成する磁性粉末11に、扁平状軟磁性金属粉を用いる構成を挙げたが、図3に示すように、磁性粉末11を、扁平状軟磁性金属粉と同じく磁性損失材料である、フェライト等の球状粉等の不定形粉とすることも可能である。
この場合、不定形粉の粒径は0.1〜1μmとすることが望ましい。扁平状軟磁性金属粉の場合と同様、不定形粉の粒径を0.1μm未満とすることは製造上困難であり、取り扱いも難しくなり、また1μmを超えると、高周波での磁気特性の低下を招くことになるので好ましくない。また、不定形粉を圧接接合しても、粒径はほとんど変化しない。よって、不定形粉が圧接接合された後の厚さも0.1〜1μmの範囲となる。
【0030】
上記のような構成の電磁波吸収シート1は、携帯電話機内に配設することができる。なお、ここでは電子機器として携帯電話機を例にするが、これはあくまで本発明の適用事例にすぎない。
電磁波吸収シート1を携帯電話機内に配設する様子を図4に模式的に示している。携帯電話機(電子機器)30は、その外殻をなす筐体としてフロント・カバー31とケース34とを備え、その間に必要に応じてホイップ・アンテナが取り付けられる回路基板32が配設される。ケース34内には内蔵アンテナ36が収容されており、電磁波吸収シート1は、内蔵アンテナ36とその一部が重なるように、回路基板32とケース34との間に配設される。なお、電磁波吸収シート1の固定は、粘着剤、両面粘着テープ等を用いて行うことができる。
【0031】
図5は、本実施の形態に係る電磁波吸収シート1の製造工程を示す図である。以下では、磁性粉末11に扁平状軟磁性金属粉を用いる場合について説明するが、磁性粉末11に不定形粉を用いる場合も、不定形粉自体の製造工程以外は扁平状軟磁性金属粉を用いる場合と同様の製造工程を経る。
まず、粉砕工程において、平均粒径数10μmの軟磁性金属のアトマイズ粉をトルエン等の有機溶媒中、例えば媒体撹拌ミルを用いて粉砕し、厚さ0.1〜1μm、アスペクト比10〜200の扁平状軟磁性金属粉を得る。このときの扁平状軟磁性金属粉の粒度分布は、必ずしもシャープである必要はなく、2山の分布を有していてもよい。
粉砕工程後、熱処理工程に移る。この熱処理工程では、扁平状軟磁性金属粉に対し不活性ガス、窒素あるいは水素中で例えば600℃で60分の熱処理を行う。これにより、軟磁性金属粉を扁平化するための粉砕工程による歪みが除去されるとともに、粉砕中に軟磁性金属粉中に混入した酸素および炭素が除去される。この熱処理工程は必須のものではないが、扁平状軟磁性金属粉は歪み(磁歪)が小さい方が好ましいため、後述する絶縁処理工程に先立って扁平状軟磁性金属粉に熱処理を施し、扁平状軟磁性金属粉の歪みを除去しておくことが望ましい。
【0032】
次いで、絶縁処理工程(絶縁膜形成工程)に移る。この工程では、扁平状軟磁性金属粉と絶縁材料(液状または微細粉)とを混合し、所定の方法で絶縁膜を合成して絶縁処理粉、つまり扁平状軟磁性金属粉表面に絶縁膜が形成された磁性粉末11を作製する。この絶縁処理工程は、絶縁材料の種類に応じて処理の方法が異なる。以下、絶縁材料が▲1▼ペルヒドロポリシラザンの場合、▲2▼カップリング剤(シラン系、チタネート系等)の場合、▲3▼その他の酸化物ゾル、BN(ボロンナイトライド)の場合についてそれぞれの処理の方法を述べる。
【0033】
▲1▼絶縁材料がペルヒドロポリシラザンの場合には、混合装置を用いて扁平状軟磁性金属粉とペルヒドロポリシラザンを混合する。混合後、例えば大気中または窒素中300℃、60分保持で熱処理を行う。ペルヒドロポリシラザンは、大気中で熱処理するとSiO2へ、窒素中で熱処理するとSi3N4へ転化する。
▲2▼絶縁材料がカップリング剤(シラン系、チタネート系等)の場合には、湿式処理法を用いて金属粉表面を被覆する。湿式処理は、溶剤で50〜100倍に希釈したカップリング剤の中で扁平状軟磁性金属粉を撹拌混合しながら、溶剤を飛ばして表面処理を行う方法である。
▲3▼絶縁材料がその他の酸化物ゾル、BNの場合には、混合装置を用いて扁平状軟磁性金属粉と絶縁材料を直接混合(乾式混合)する。
【0034】
続いて、圧延配向工程(接合工程)に移る。圧延配向工程では、まず、絶縁膜が形成された扁平状軟磁性金属粉(磁性粉末11)同士が圧接接合される。具体的には、磁性粉末11を篩でふるいながら落下させてほぼ均等に基板上に堆積させる。またこのとき、篩を用いるのではなく、磁性粉末11をスプレーで基板上に吹き付けることで、磁性粉末11を基板上に堆積させることもできる。
次いで、磁性粉末11が略均一に堆積した基板上を圧延ロールにて圧延し、基板に平行な向きに絶縁処理粉を配向させる(圧延配向工程)。この工程により、厚さ5〜100μmの、複合磁性層10を形成するシート状生成物を得ることができる。このシート状生成物に対し、必要に応じて打ち抜き加工を施してもよい(打ち抜き加工工程)。
圧延配向工程では、基板表面から3mm以上上方に位置する篩等の保持容器から絶縁処理粉を自由落下させ、絶縁処理粉を面内配向させたうえで圧延を行うことにより、圧延後の配向度を改善することができる。
また、篩のメッシュサイズを適宜選択して絶縁処理粉の粒度を変更することによって、最終的に得られる複合磁性体の磁気特性を任意の範囲に設定することが可能である。篩のメッシュサイズの好ましい範囲は、20〜120μmである。より望ましい範囲は40〜120μm、さらに望ましい範囲は53〜106μmである。
【0035】
複合磁性層10を形成するシート状生成物の厚さを5〜100μmとするのは以下の理由に基づく。すなわち、シートの厚さが5μmよりも薄い場合は、焼結により高周波で充分大きな透磁率が得られるため、複合磁性体の必要性が小さい。一方、シートの厚さが100μmを超えると、電気機器の筐体内部の狭い空間に複合磁性層10を有する電磁波吸収シート1を収めることが困難になるという制約条件からである。
【0036】
なお、圧延を例にして圧延配向工程(接合工程)を説明したが、この工程は圧延に限られるものではない。扁平状軟磁性金属粉が塑性変形する程度の加圧力を付与するものであれば、プレス加工等、他の加圧成型の方法を用いてもよいが、加圧の点で圧延が最も望ましい。
【0037】
次いで、打ち抜き加工されたシート状生成物に熱処理を施し、扁平状軟磁性金属粉の塑性変形後の残留歪を緩和する(熱処理工程)。扁平状軟磁性金属粉の著しい酸化を避けるため、熱処理雰囲気をAr等不活性ガス雰囲気中、窒素または水素雰囲気中とすることが好ましい。
また、熱処理温度は400〜800℃の範囲とする。熱処理温度が400℃未満では残留歪の緩和効果が少なく、一方、熱処理温度が800℃を超えると扁平状軟磁性金属粉表面に形成された絶縁膜の絶縁機能が損なわれる。なお、熱処理時間は1時間程度とすればよい。
以上の工程を経ることにより、本実施の形態に係る、厚さ5〜100μmのシート状の複合磁性層10がシート状生成物として得られる。
【0038】
次いで、複合磁性層10の片面側に、磁性金属層20を形成する。
これには、例えば、所定厚さの樹脂シート上に下地金属層となる、例えばNi等の金属を蒸着し、その上に、60%Fe−Ni合金等を所定厚さでめっきすることで、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜が得られる。
更に、これら、複合磁性層10を形成するシート状生成物と、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜とを積層することで、図1に示した電磁波吸収シート1が得られる。
ここで、複合磁性層10と磁性金属層20は、複数層にわたって積層することで電磁波吸収シート1を形成する場合、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜の樹脂シートが、複合磁性層10と磁性金属層20の間に介在する絶縁層として機能する。
なお、本実施の形態に係る電磁波吸収シート1の磁気特性は測定工程で行う。測定結果は実施例のところで述べる。
【0039】
次に、図6を用いて本実施の形態に係る複合磁性層10を形成するシート状生成物の扁平状軟磁性金属粉の占積率について説明する。
図6(A)、(B)は本実施の形態に係る複合磁性層10を形成するシート状生成物の拡大断面図、図6(C)、(D)は従来の複合磁性体の拡大断面図である。
図6(C)に示す従来の複合磁性体は、扁平状軟磁性金属粉と樹脂(塩素化ポリエチレン)とから構成されている。また、図6(D)に示す従来の複合磁性体は、扁平状軟磁性金属粉とウレタン樹脂、BN粉の混合粉をプレス成型したものである。図6(C)、(D)に示した従来の複合磁性体において、扁平状軟磁性金属粉の占積率を調べたところ、その占積率(体積%)は高々75%であった。
【0040】
一方、図6(A)、(B)に示した本実施の形態に係る複合磁性層10を形成するシート状生成物において、扁平状軟磁性金属粉の占積率を調べたところ、図6(A)では占積率87%、図6(B)では占積率78%であった。この結果から、本実施の形態に係る複合磁性層10を形成するシート状生成物によれば、扁平状軟磁性金属粉の占積率を75%以上とすることが可能であり、さらには扁平状軟磁性金属粉の占積率を90%を超えるものとすることも可能であると推測される。扁平状軟磁性金属粉の占積率の望ましい範囲は60〜90%、さらに望ましい範囲は70〜85%である。扁平状軟磁性金属粉の占積率が50%未満になると、磁気特性が低下してしまう。一方、扁平状軟磁性金属粉の占積率が95%を超えると、粉体間の絶縁性が低下してしまう。
本実施の形態に係る複合磁性層10を形成するシート状生成物は、電磁波減衰相12、すなわち、扁平状軟磁性金属粉の占積率が75%以上であるため、磁気特性が良好である。なお、本実施の形態において、扁平状軟磁性金属粉の占積率は、扁平状軟磁性金属粉表面のシリコンオキサイドも考慮して算出した値である。
【0041】
本実施の形態の複合磁性層10を形成するシート状生成物の断面を観察すると、厚さ0.1〜1μmの扁平状軟磁性金属粉が塑性変形していること、扁平状軟磁性金属粉が層状に積層されていることが確認された。また、個々の扁平状軟磁性金属粉は、酸化物あるいは窒化物で絶縁された構造になっていた。つまり、本実施の形態の複合磁性層10を形成するシート状生成物は、層状の電磁波減衰相12の間に絶縁相13が介在している構造となっていることが確認された。そして、本実施の形態の複合磁性層10を形成するシート状生成物は、小さな反磁界と小さな渦電流を同時に達成し得る構造となっており、本実施の形態の複合磁性層10を形成するシート状生成物によれば、100MHzにおいて従来の複合磁性体よりも著しく大きな複素透磁率を実現することが可能である。
【0042】
【実施例】
以下、本発明の電磁波吸収シート1およびそれを構成する複合磁性層10について実施例で詳述する。
【0043】
(実験例1:電磁波減衰相12を扁平状軟磁性金属粉で構成した場合の従来との比較)
図5の工程図に説明したように、軟磁性金属粉として水アトマイズによる平均粒径約20μmの4Moパーマロイ粉(80Ni−4Mo−1Si−bal.Fe(mol%))を、溶媒にトルエンを用いた媒体撹拌ミル中で粉砕扁平化し、平均粒径約40μm、厚さ0.2〜0.6μm、アスペクト比30〜120の扁平状軟磁性金属粉(以下、適宜、「扁平状粉」という。)とした。粉の平均粒子径は、光散乱を利用した粒度分布計(日機装(株)製マイクロトラック粒度分布計)により測定した。
絶縁相13を形成する絶縁材料としてはペルヒドロポリシラザン(東燃ポリシラザンL110、20重量%(wt%)キシレン溶液)を用いた。ペルヒドロポリシラザン20重量%キシレン溶液の扁平状Moパーマロイ粉に対する添加量を4重量%とした。そして、扁平状Moパーマロイ粉とペルヒドロポリシラザンを混合機(ライカイ器、卓上ニーダー等)を用い、室温で30分混合した。その後、大気中、300℃で60分間保持し、ペルヒドロポリシラザンをSiO2に転化し、扁平状Moパーマロイ粉の表面に絶縁膜を形成した。
【0044】
次に、絶縁処理された前記扁平状粉をステンレス基板の上方10mmの位置にある篩(目開き;125μm以下)でふるいながらほぼ均等にステンレス基板上に堆積させた。このステンレス基板をロール径50mmの2段冷間圧延ロールを通過させて圧延し、各扁平状粉を前記基板に平行な向きに配向させ、厚さ約20μmのシート状にした。
続いて、このシートを、金属粉を扁平化する際の粉砕による歪みを取るため、および粉砕中に粉に混入した酸素、炭素を除くために水素中、600℃で60分間、熱処理した。
この後、シートの補強、および絶縁性を付加するため、室温硬化型シリコーンレジンのキシレン溶液(20%)にシートを約20分間含浸させ、その後乾燥させて、複合磁性層10を形成するシート状生成物を得た。
【0045】
更に、厚さ6μmの樹脂シート上にニッケルを蒸着し、これを下地として60%Fe−Ni合金を厚さ約0.6μmでめっきして、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜を得た。
更に、これら、複合磁性層10を形成するシート状生成物と、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜とを積層し、本発明の電磁波吸収シート1を得た。
【0046】
次に、本発明に係る電磁波吸収シート1をフレキシブルプリント基板に貼り付けてノイズの低減効果を調べた結果を図7に示す。なお、横軸は周波数(MHz)、縦軸は水平偏波の受信レベルを示す。また、比較のために、磁性金属層20を設けない複合磁性層10のみからなるシート状生成物を貼り付けた状態での測定結果を図8に、電磁波吸収シート1を貼り付けないブランク状態の測定結果を図9に示す。
これらの図において、点線で示したものがノイズの規格値であり、これを超えるとノイズ規格に不適格となる。これより、本発明の電磁波吸収シート1は、特に200〜300MHzにおいて、ノイズ減衰効果が優れていることが分かる。
【0047】
(実験例2:電磁波減衰相12を磁性材料、金属、カーボン、扁平状軟磁性金属粉で形成した場合の比較)
次に、磁性金属層20を設けることによる効果を確認するための実験を行った。
ここで、複合磁性層10の電磁波減衰相12としては、上記したような扁平状軟磁性金属粉だけでなく、同様のノイズ減衰効果を有する物質である、磁性材料、金属、カーボンを用いた。
【0048】
実施例1、比較例1
電磁波減衰相12を形成する物質として、磁性材料であるNi−Znフェライト粉を用いた。このNi−Znフェライト粉は、Ni−Znフェライト塊をボールミルで粉砕して不定形粉とし、塩素化ポリエチレンと共に混練・押出し、これによって厚さ約0.1mmの複合磁性層10を形成するシート状生成物を作製し、これを比較例1とした。
更に、得られたシート状生成物の片面に、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜として60%Fe−Ni軟磁性金属膜を積層し、これを実施例1とした。
【0049】
実施例2、比較例2
電磁波減衰相12を形成する物質として、酸化鉄を還元した後にCOと反応させて得るカーボニル鉄粉を用いた。このカーボニル鉄粉は、塩素化ポリエチレンと共に混練・押出し、これによって厚さ約0.1mmの複合磁性層10を形成するシート状生成物を作製し、これを比較例2とした。
更に、得られたシート状生成物の片面に、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜として60%Fe−Ni軟磁性金属膜を積層し、これを実施例2とした。
【0050】
実施例3、比較例3
電磁波減衰相12を形成する物質として、カーボンを用いた。このカーボンは、粉末状で、塩素化ポリエチレンと共に混練・押出し、これによって厚さ約0.1mmの複合磁性層10を形成するシート状生成物を作製し、これを比較例3とした。
更に、得られたシート状生成物の片面に、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜として60%Fe−Ni軟磁性金属膜を積層し、これを実施例3とした。
【0051】
実施例4、比較例4
電磁波減衰相12を形成する物質として、実験例1と同様、磁性材料である扁平状軟磁性金属粉を用いた。
絶縁相13を形成する絶縁材料としては、実験例1と同様の、ペルヒドロポリシラザン(東燃ポリシラザンL110、20重量%(wt%)キシレン溶液)を用いた。
そして、上記実験例1と同様にしてNi−Znフェライト粉の表面に絶縁材料による絶縁膜を形成し、さらに絶縁処理されたNi−Znフェライト粉を堆積、圧延、配向、熱処理等を行い、複合磁性層10を形成するシート状生成物を得て、これを比較例4とした。さらに、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜を、複合磁性層10を形成するシート状生成物に積層し、本発明の電磁波吸収シート1としたものを実施例4とした。
【0052】
上記のようにして得た実施例1〜4、比較例1〜4のシートを、フレキシブルケーブルに貼り付け、実験例1と同様の試験を行った結果を表1に示す。ここで、何らの対策を施さない、つまりフレキシブルケーブル単体での測定結果を比較例5として併記した。なお、最大ノイズピークレベルは、ノイズ規格を基準にした場合の約220MHzにおけるノイズピークの最大値である。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示すように、ノイズ対策を施していない比較例5に対し、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜を備えない比較例1〜4では、フレキシブルケーブルに貼り付けただけで3〜4dB程度のノイズ低減効果が認められる。さらに、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜を積層した実施例1〜4では、より大きな、7〜8dBのノイズ減衰効果が得られた。
このようにして、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜を積層することで、より大きなノイズ減衰効果を得ることができるのが明らかである。
【0055】
以上本発明の実施の形態および実施例について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、複合磁性層に軟磁性金属層を積層することで、より優れた高周波特性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電磁波吸収シートの構成を示す図である。
【図2】電磁波吸収シートを構成する磁性層を示す図であり、扁平状軟磁性金属粉の表面に絶縁膜が形成された状態を示す模式図である。
【図3】電磁波吸収シートの構成の他の例を示す図である。
【図4】電磁波吸収シートを備えた携帯電話機の概略構成を示す図である。
【図5】本実施の形態に係る製造工程図である。
【図6】磁性層の拡大断面を従来の複合磁性体と対比して示し、(A)は本発明(占積率87%)の複合磁性層の拡大断面図、(B)は本発明(占積率78%)の複合磁性層の拡大断面図、(C)は従来の扁平状軟磁性金属粉と樹脂(塩素化ポリエチレン)からなる複合磁性層の拡大断面図、(D)は扁平状軟磁性金属粉とウレタン樹脂、BN粉の混合粉をプレス成型した複合磁性層の拡大断面図である。
【図7】本発明におけるノイズ減衰特性を示す図である。
【図8】磁性金属層を設けない場合のノイズ減衰特性を示す図である。
【図9】電磁波吸収シートを設けない場合のノイズ減衰特性を示す図である。
【符号の説明】
1…電磁波吸収シート(磁性部材)、10…複合磁性層、11…磁性粉末(粉体)、12…電磁波減衰相、13…絶縁相、20…磁性金属層(軟磁性金属層)、30…携帯電話機(電子機器)、31…フロント・カバー(筐体)、34…ケース(筐体)
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波領域の電磁ノイズ対策部品に用いる電磁波吸収シートおよびその製造方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】
パソコン、ゲーム機器あるいは携帯情報端末に代表されるデジタル電子機器をはじめとする電子装置は、回路の高周波化、高性能化に伴い高密度化が進行しており、受動素子が半導体素子などノイズを放射する能動素子の影響を受けやすくなっている。従来、この対策として、フェライトコアや準マイクロ波帯に対応する電波吸収体が利用されているが、電子機器の小型化に伴い、ノイズ対策部品の小型化、薄型化、高性能化が要求されている。
【0003】
一方、EMC規格を満たすために、200MHz近傍の周波数でのノイズ規格を満たすことが重要課題となっており、この帯域に対応した電波吸収体や小型EMI対策部品の需要が拡大している。
例えば、特許文献1には、扁平磁性粉を焼鈍処理して残留応力を低減させた後に面内方向に配向させ、有機結合剤のガラス転移温度Tg以上の温度においてシート面に垂直の方向に加圧することにより、共鳴周波数の低周波化を図り100MHz以下の周波数で高い透磁率を達成し得る複合シート状生成物の製造方法が開示されている。しかしながら、このような有機結合剤と扁平磁性粉の複合磁性体シートの透磁率は、100MHzで高々30程度であり、高透磁率を得るのは困難である。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−4097号公報
【0005】
また特許文献2には、扁平状の軟磁性粉を用い、押し出し成型により板状に成型することを特徴とする圧粉磁心の製造方法が開示されている。この方法では、扁平状軟磁性粉が押し出し方向に配向するために透磁率を高くできる利点があるが、厚さが0.4mmよりも薄いシートを製造しようとすると、狭ノズルから押し出すと同時にテンションを加えて引き取って薄くする必要があり、高透磁率化が困難になる。即ち、狭ノズルからの押し出しの際に引き取れるだけの柔軟性を付与するために樹脂量を多くして、押し出し温度での粘性を下げる必要があり、このため磁性粉の充填量が減少して高透磁率が得られない。
【0006】
【特許文献2】
特開平11−74140号公報
【0007】
押し出しによらず、印刷積層法やドクターブレード法により薄くする方法も開示されている。
特許文献3に開示されているのは、アスペクト比が5〜40である扁平状の軟磁性金属粉とバインダーとを用いて印刷積層法によって厚さ500μm以下のシートを作製し、このシートを厚さ10mm以下に重ねてさらに加圧成型し打ち抜いて磁心とする方法である。しかし、この方法を用いても溶剤以外に多量の有機バインダーを使用するため、軟磁性金属粉の占積率を75%よりも高くすることが困難であり、また、成型に伴う応力劣化を避けることができず、残留応力を効果的に取り除くことのできる熱処理も施せないため、結果として100MHz付近の高周波において高い透磁率を得ることができない。
また、特許文献4は、扁平状軟磁性粉と結合剤、溶媒からなるスラリー状の混和物から成膜を行う複合磁性体の製造方法が開示されており、該方法において、応力歪みを除去した扁平状軟磁性粉に再び応力歪みを加えないよう複合磁性体を製造することを特徴としているが、このように扁平粉自体に変形応力を加えない方法では、材料の占積率を大きくすることは困難であるうえ、樹脂の硬化収縮による応力発生は原理的に避けることができないなどの欠点を有しているため、100MHz付近の高周波で高い透磁率を得ることが期待できない。
【0008】
【特許文献3】
特開平11−176680号公報
【特許文献4】
特開2000−243615号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術は、いずれも扁平状軟磁性金属粉の残留応力を小さくした後、成型工程において、該扁平状軟磁性金属粉に過大な応力が加わらないよう配慮することに重点がおかれた技術思想に基づくものであり、このような技術思想では実質的に金属粉の占積率を大きくできないうえ、成型体の残留応力が小さくならないという二重の欠点を有しており、数十MHz〜数GHz帯に至る高周波での複素透磁率の向上に限界があった。
【0010】
本発明者らは、この問題点を解決するために、特許文献5において、表面に絶縁膜が形成された扁平状軟磁性金属粉を圧着接合することにより、軟磁性金属相と絶縁相とからなる複合磁性体を提案したが、更なる優れた高周波特性が望まれている。
【0011】
【特許文献5】
特開2002−289414号公報
【0012】
そこで、本発明は、この問題点を解決し、高周波領域で優れた透磁率を有した磁性部材、電磁波吸収シート、磁性部材の製造方法等を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
かかる目的のもと、本発明の磁性部材は、電磁波減衰相と絶縁相を有した複合磁性層と、複合磁性層に積層された軟磁性金属層と、を有することを特徴とする。
ここで、電磁波減衰相は、文字通り電磁波減衰機能を有するもので、例えば、誘電損失材料または磁性損失材料または導電損失材料から形成することができる。
誘電損失材料は、電界を加えることによって生じる誘電分散により電波を吸収する。このような材料としては、カーボン等、より詳しくはカーボン粒子を混入したゴムシート、グラファイト含有発泡ポリスチロール、カーボン含有発泡ウレタン等がある。
磁性損失材料は、加えられた磁界により電波を吸収するもので、この種の材料としてフェライトは最も代表的なものである。また、磁性損失材料として、扁平状軟磁性金属粉を用いることが特に有効である。
導電損失材料は、電界が加えられると導電電流が流れ、電磁波のエネルギーを熱に変換するものである。このような材料としては、導電性繊維を布状に織り上げた布や、酸化インジウム錫を蒸着した誘電体シート等がある。
また、電磁波減衰相として、Fe等の金属材料を用いることもできる。
【0014】
ところで、電磁波減衰相を形成する磁性損失材料として、扁平状軟磁性金属粉を用いる場合、電磁波減衰相における扁平状軟磁性金属粉の占積率は30%以上、好ましくは75%以上、電磁波減衰相の100MHzにおける複素透磁率の実数部分を20以上とすることができる。
また、電磁波減衰相は、表面に絶縁膜を有する扁平状軟磁性金属粉を、その厚さ方向に積層することで所定の厚さに形成した構成とし、さらにこの電磁波減衰相の表面を絶縁層で覆うようにしてもよい。その場合、電磁波減衰相を形成する扁平状軟磁性金属粉の厚さは、例えば0.1〜1μmとされる。ここで、電磁波減衰相は、扁平状軟磁性金属粉がほぼ一定の方向に配向されているのが好ましい。また、電磁波減衰相の厚さは5〜100μm、絶縁層の厚さは50μm以下とすることができる。
ところで、絶縁層は、電気絶縁材料から形成されたシート材が磁性層に貼着されることで形成することもできるし、電気絶縁性樹脂によって磁性層をコーティングすることで形成することもできる。後者の場合、磁性層を補強する効果も有し、絶縁層を形成する電気絶縁性樹脂は、磁性層を形成する扁平状軟磁性金属粉の隙間に入り込んでいてもよい。
これら、電磁波減衰相を形成する材料は、電磁波を吸収したい目的の周波数等に応じ、適宜選択される。
なおここで、複合磁性層、軟磁性金属層、絶縁層という文言における「層」とは、文字通り層状をなしているもので、所定の厚さを有した複合磁性層、軟磁性金属層、絶縁層が積層される構成となっている。
また、複合磁性層の電磁波減衰相、絶縁相という文言における「相」とは、一つの層(複合磁性層)中で、物理的・化学的な性質が異なる部分を区分するためのものである。
さらに、絶縁膜は、扁平状軟磁性金属粉の表面を覆うように膜状に形成されるものを指している。
【0015】
また複合磁性層の絶縁相は、有機絶縁材料、無機絶縁材料の少なくとも一つまたはそれらの化合物を含むことができる。
ここで、有機絶縁材料としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンスルフィド、PET、PBT、ポリアリレート、シリコン樹脂、ジアリルフタレート、ポリイミド等がある。
また、無機絶縁材料としては、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、ガラスおよびボロンナイトライド、セリサイト、酸化ケイ素、窒化ケイ素等がある。
上記したような材料は、少なくとも一つを含んでいればよく、複数種を組み合わせる場合には、それらの混合物だけでなく化合物であってもよい(例えば原料としてシリカゾルとアルミナゾルを組み合わせて用いた場合、反応によってそれらの化合物であるムライト相となることもある)。
【0016】
軟磁性金属層は、Fe、Co、Niの少なくとも一種以上を含む合金または金属の薄膜とするのが好ましい。
【0017】
また、上記したような磁性部材は、例えば携帯電話端末等の内部に配設されるフレキシブルケーブルに貼り付けることで不要な電磁波を減衰できる。したがって、本発明は電磁波吸収シートとすることもできる。そして、この電磁波吸収シートは、表面に絶縁膜を有する電磁波減衰材料からなる粉体が、その厚さ方向に積層されることで所定の厚さに形成された複合磁性層と、複合磁性層の片面側に設けられた軟磁性金属層と、を備えることを特徴とする。このような複合磁性層と軟磁性金属層は、電磁波吸収シートの厚さ方向において対向した状態で交互に配置する、つまり複数層に積層することで、その電磁波吸収性能を高めることができる。
ここで、軟磁性金属層と複合磁性層のみを交互に積層することもできるが、電気抵抗の低い複合磁性層を用いる場合は、電気的な短絡を防ぐため、複合磁性層と軟磁性金属層の間に絶縁層を介在させるのが好ましい。また、複合磁性層と軟磁性金属層の間に、他の層を適宜介在させることももちろん可能である。
【0018】
複合磁性層と軟磁性金属層の間に絶縁層を介在させるには、複数の手法が考えられる。例えば、複合磁性層に絶縁層を一体に形成してシート状としておき、これに軟磁性金属層を直接形成することができる。また、軟磁性金属層の基板として絶縁材料で形成したシートを用いることで軟磁性金属層をシート状とし、これを絶縁層として機能させつつ、複合磁性層に積層させることもできる。これら二つの方法を組み合わせた方法、すなわち、複合磁性層に絶縁層を一体に形成しておく一方、軟磁性金属層を絶縁材料からなる基板上に形成し、これを複合磁性層に積層させる方法も採用できる。つまり、複合磁性層と絶縁層を有するシート状生成物と、軟磁性金属層と絶縁層を有するシート状生成物とを貼り合わせるのである。
また、複合磁性層と軟磁性金属層を1単位とし、これを複数単位にわたって積層する場合、単位間で複合磁性層と軟磁性金属層の短絡を防ぐため、ここにも絶縁層を介在させるのが好ましい。さらに、積層する複合磁性層と軟磁性金属層の数は一致させる必要はなく、複合磁性層に対し軟磁性金属層の数を多くしたり、逆に複合磁性層に対し軟磁性金属層の数を少なくする等してもよい。
【0019】
ところで、前記粉体としては、前記したような各種電磁波吸収機能を有した材料を用いることができるが、特に扁平状軟磁性金属粉が好適である。この扁平状軟磁性金属粉は、複合磁性層にて、ほぼ一定の方向に配向するのが好ましい。
また、軟磁性金属層の片側に下地金属層を設けることも有効である。これにより、軟磁性金属層と複合磁性層の間に下地金属層を介在させることができる。この場合、絶縁層上に下地金属層を形成し、その下地金属層上に軟磁性金属層を形成するのが好ましい。
【0020】
また、本発明は、電磁波減衰材料からなる粉体と絶縁材料を混合絶縁処理する工程と、混合により絶縁を施した粉体を基板上に堆積させた後に圧延して配向させてシート状生成物を得る工程と、シート状生成物の一面側に軟磁性金属層を形成する工程と、を備えることを特徴とする磁性部材の製造方法として捉えることができる。
【0021】
上記したような磁性部材、電磁波吸収シート等は、携帯電話機を初め、PC(Personal Computer)、PDA(Personal Digital Assistants)、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)端末等の各種電子機器に適用することができる。
すなわち、そのような電子機器は、その外殻をなす筐体内に、電磁波吸収部材を配設しており、その電磁波吸収部材は、電磁波減衰相と絶縁相を有した複合磁性層と、複合磁性層に積層された軟磁性金属層と、を有することを特徴とするものとなる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1に示すように、本実施の形態における電磁波吸収シート(磁性部材)1は、複合磁性層10の片面に、磁性金属層(軟磁性金属層)20を有した構成となっている。
ここで、複合磁性層10は、全体として5〜100μmの厚さを有しているのが好ましい。また、磁性金属層20は、全体として50μm以下、さらには15μm以下であることがより好ましい。
【0023】
図2に、複合磁性層10のみを模式的に示す。複合磁性層10は、多数の磁性粉末(粉体)11が塑性変形して密に絡み合うことで形成されている。
個々の磁性粉末11は、扁平状軟磁性金属粉からなる電磁波減衰相12と、電磁波減衰相12の表面に形成された絶縁膜からなる絶縁相13と、から形成される複合磁性体である。これによって、互いに接する電磁波減衰相12間には絶縁相13が介在することになる。これにより、複合磁性層10は、表面に絶縁膜を有する扁平状軟磁性金属粉が、その厚さ方向に層状に積層されることで所定の厚さに形成された構成となっている。
【0024】
はじめに、電磁波減衰相12を構成する扁平状軟磁性金属粉について説明する。扁平状軟磁性金属粉は、電磁波減衰材料として機能する、パーマロイ(Fe−Ni合金)、スーパーパーマロイ(Fe−Ni−Mo合金)、センダスト(Fe−Si−Al合金)、Fe−Si合金、Fe−Co合金、Fe−Cr合金、Fe−Cr−Si合金等であり、そのアスペクト比は10〜200、より望ましくは10〜150であることが好ましい。
扁平状軟磁性金属粉の厚さ(圧延前の厚さ)は0.1〜1μmとすることが望ましい。扁平状軟磁性金属粉の厚さを0.1μm未満とすることは製造上困難であり、取り扱いも難しくなる。また、扁平状軟磁性金属粉の厚さが1μmを超えると、高周波での磁気特性の低下を招くことになるので好ましくない。また、扁平状軟磁性金属粉を圧接接合しても、厚さはほとんど変化しない。よって、扁平状軟磁性金属粉が圧接接合された後の厚さも0.1〜1μmの範囲となる。
【0025】
次に、絶縁相13を構成する絶縁膜について説明する。
図2に示したように、扁平状軟磁性金属粉の全表面に均一に絶縁膜が形成されていることが理想的ではあるが、扁平状軟磁性金属粉の表面に絶縁膜が形成されていない部分があっても圧接接合後に絶縁相13として機能しうる程度の絶縁膜が形成されていればよい。
扁平状軟磁性金属粉と絶縁材料を混合し、所定の処理を加えることにより、扁平状軟磁性金属粉の表面に絶縁膜が形成される。絶縁材料としては、有機絶縁材料、無機絶縁材料の少なくとも一つまたはそれらの化合物を含むことができる。より詳しくは、有機絶縁材料としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンスルフィド、PET、PBT、ポリアリレート、シリコン樹脂、ジアリルフタレート、ポリイミド等の他、シラン系やチタネート系のカップリング剤を用いることができる。また、無機絶縁材料としては、シリカゾル、チタニアゾル、マグネシアゾル、アルミナゾル、粉末ガラスおよびボロンナイトライド、セリサイト、酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。無機絶縁材料としては無機ポリマーを用いることもでき、この無機ポリマーとしては、ペルヒドロポリシラザン等、ポリシラザン系のものを用いることができる。
【0026】
他に、複合磁性層10の電磁波減衰相12は、電磁波減衰材料として機能する、導電損失材料、誘電損失材料、磁性損失材料等によって形成することもできる。
導電損失材料は、電界が加えられると導電電流が流れ、電磁波のエネルギーを熱に変換するものである。このような材料としては、導電性繊維を布状に織り上げた布や、酸化インジウム錫を蒸着した誘電体シート等がある。
また、誘電損失材料は、電界を加えることによって生じる誘電分散により電波を吸収する。このような材料としては、カーボン等、より詳しくはカーボン粒子を混入したゴムシート、グラファイト含有発泡ポリスチロール、カーボン含有発泡ウレタン等がある。
磁性損失材料は、加えられた磁界により電波を吸収するもので、この種の材料としてフェライトは最も代表的なものであり、例えば、Mn−Mg−Znフェライト、Mn−Znフェライト、Ni−Znフェライト、六方晶系フェライト等を好適に用いることができる。
また、電波を反射・吸収する材料で複合磁性層10の電磁波減衰相12を形成することもできる。このような材料としては、例えば金属材料があり、具体的にはカーボニル鉄等を好適に用いることができる。
このように、複合磁性層10の電磁波減衰相12を導電損失材料、誘電損失材料、磁性損失材料、金属材料で形成する場合、絶縁相13は、合成ゴム、軟質塩化ビニール、塩素化ポリエチレン等の材料で形成することができる。
【0027】
ここで、複合磁性層10と磁性金属層20は、複数層にわたって積層することもできる。この場合、複合磁性層10と磁性金属層20のみを交互に積層することもできるが、その場合、電気的な短絡を防ぐため、複合磁性層10と磁性金属層20の間に図示しない絶縁層を介在させるのが好ましい。
【0028】
また、図1に示した磁性金属層20は、組成がFe,Co,Niの一種以上を含む軟磁性合金薄膜であり、例えば、Fe−Ni合金、Fe−Co合金、Fe−Co−Ni合金等が使用される。更に、この合金薄膜に下地金属層、絶縁基材がある構造も実用される。この軟磁性合金薄膜の厚さは、電磁波吸収を行う目的とする周波数帯域により異なるが、0.1〜3μmの膜厚のものが実用される。また、厚さの異なる膜を多層化してさらに広帯域化することも可能である。
【0029】
なお、上記では、複合磁性層10を構成する磁性粉末11に、扁平状軟磁性金属粉を用いる構成を挙げたが、図3に示すように、磁性粉末11を、扁平状軟磁性金属粉と同じく磁性損失材料である、フェライト等の球状粉等の不定形粉とすることも可能である。
この場合、不定形粉の粒径は0.1〜1μmとすることが望ましい。扁平状軟磁性金属粉の場合と同様、不定形粉の粒径を0.1μm未満とすることは製造上困難であり、取り扱いも難しくなり、また1μmを超えると、高周波での磁気特性の低下を招くことになるので好ましくない。また、不定形粉を圧接接合しても、粒径はほとんど変化しない。よって、不定形粉が圧接接合された後の厚さも0.1〜1μmの範囲となる。
【0030】
上記のような構成の電磁波吸収シート1は、携帯電話機内に配設することができる。なお、ここでは電子機器として携帯電話機を例にするが、これはあくまで本発明の適用事例にすぎない。
電磁波吸収シート1を携帯電話機内に配設する様子を図4に模式的に示している。携帯電話機(電子機器)30は、その外殻をなす筐体としてフロント・カバー31とケース34とを備え、その間に必要に応じてホイップ・アンテナが取り付けられる回路基板32が配設される。ケース34内には内蔵アンテナ36が収容されており、電磁波吸収シート1は、内蔵アンテナ36とその一部が重なるように、回路基板32とケース34との間に配設される。なお、電磁波吸収シート1の固定は、粘着剤、両面粘着テープ等を用いて行うことができる。
【0031】
図5は、本実施の形態に係る電磁波吸収シート1の製造工程を示す図である。以下では、磁性粉末11に扁平状軟磁性金属粉を用いる場合について説明するが、磁性粉末11に不定形粉を用いる場合も、不定形粉自体の製造工程以外は扁平状軟磁性金属粉を用いる場合と同様の製造工程を経る。
まず、粉砕工程において、平均粒径数10μmの軟磁性金属のアトマイズ粉をトルエン等の有機溶媒中、例えば媒体撹拌ミルを用いて粉砕し、厚さ0.1〜1μm、アスペクト比10〜200の扁平状軟磁性金属粉を得る。このときの扁平状軟磁性金属粉の粒度分布は、必ずしもシャープである必要はなく、2山の分布を有していてもよい。
粉砕工程後、熱処理工程に移る。この熱処理工程では、扁平状軟磁性金属粉に対し不活性ガス、窒素あるいは水素中で例えば600℃で60分の熱処理を行う。これにより、軟磁性金属粉を扁平化するための粉砕工程による歪みが除去されるとともに、粉砕中に軟磁性金属粉中に混入した酸素および炭素が除去される。この熱処理工程は必須のものではないが、扁平状軟磁性金属粉は歪み(磁歪)が小さい方が好ましいため、後述する絶縁処理工程に先立って扁平状軟磁性金属粉に熱処理を施し、扁平状軟磁性金属粉の歪みを除去しておくことが望ましい。
【0032】
次いで、絶縁処理工程(絶縁膜形成工程)に移る。この工程では、扁平状軟磁性金属粉と絶縁材料(液状または微細粉)とを混合し、所定の方法で絶縁膜を合成して絶縁処理粉、つまり扁平状軟磁性金属粉表面に絶縁膜が形成された磁性粉末11を作製する。この絶縁処理工程は、絶縁材料の種類に応じて処理の方法が異なる。以下、絶縁材料が▲1▼ペルヒドロポリシラザンの場合、▲2▼カップリング剤(シラン系、チタネート系等)の場合、▲3▼その他の酸化物ゾル、BN(ボロンナイトライド)の場合についてそれぞれの処理の方法を述べる。
【0033】
▲1▼絶縁材料がペルヒドロポリシラザンの場合には、混合装置を用いて扁平状軟磁性金属粉とペルヒドロポリシラザンを混合する。混合後、例えば大気中または窒素中300℃、60分保持で熱処理を行う。ペルヒドロポリシラザンは、大気中で熱処理するとSiO2へ、窒素中で熱処理するとSi3N4へ転化する。
▲2▼絶縁材料がカップリング剤(シラン系、チタネート系等)の場合には、湿式処理法を用いて金属粉表面を被覆する。湿式処理は、溶剤で50〜100倍に希釈したカップリング剤の中で扁平状軟磁性金属粉を撹拌混合しながら、溶剤を飛ばして表面処理を行う方法である。
▲3▼絶縁材料がその他の酸化物ゾル、BNの場合には、混合装置を用いて扁平状軟磁性金属粉と絶縁材料を直接混合(乾式混合)する。
【0034】
続いて、圧延配向工程(接合工程)に移る。圧延配向工程では、まず、絶縁膜が形成された扁平状軟磁性金属粉(磁性粉末11)同士が圧接接合される。具体的には、磁性粉末11を篩でふるいながら落下させてほぼ均等に基板上に堆積させる。またこのとき、篩を用いるのではなく、磁性粉末11をスプレーで基板上に吹き付けることで、磁性粉末11を基板上に堆積させることもできる。
次いで、磁性粉末11が略均一に堆積した基板上を圧延ロールにて圧延し、基板に平行な向きに絶縁処理粉を配向させる(圧延配向工程)。この工程により、厚さ5〜100μmの、複合磁性層10を形成するシート状生成物を得ることができる。このシート状生成物に対し、必要に応じて打ち抜き加工を施してもよい(打ち抜き加工工程)。
圧延配向工程では、基板表面から3mm以上上方に位置する篩等の保持容器から絶縁処理粉を自由落下させ、絶縁処理粉を面内配向させたうえで圧延を行うことにより、圧延後の配向度を改善することができる。
また、篩のメッシュサイズを適宜選択して絶縁処理粉の粒度を変更することによって、最終的に得られる複合磁性体の磁気特性を任意の範囲に設定することが可能である。篩のメッシュサイズの好ましい範囲は、20〜120μmである。より望ましい範囲は40〜120μm、さらに望ましい範囲は53〜106μmである。
【0035】
複合磁性層10を形成するシート状生成物の厚さを5〜100μmとするのは以下の理由に基づく。すなわち、シートの厚さが5μmよりも薄い場合は、焼結により高周波で充分大きな透磁率が得られるため、複合磁性体の必要性が小さい。一方、シートの厚さが100μmを超えると、電気機器の筐体内部の狭い空間に複合磁性層10を有する電磁波吸収シート1を収めることが困難になるという制約条件からである。
【0036】
なお、圧延を例にして圧延配向工程(接合工程)を説明したが、この工程は圧延に限られるものではない。扁平状軟磁性金属粉が塑性変形する程度の加圧力を付与するものであれば、プレス加工等、他の加圧成型の方法を用いてもよいが、加圧の点で圧延が最も望ましい。
【0037】
次いで、打ち抜き加工されたシート状生成物に熱処理を施し、扁平状軟磁性金属粉の塑性変形後の残留歪を緩和する(熱処理工程)。扁平状軟磁性金属粉の著しい酸化を避けるため、熱処理雰囲気をAr等不活性ガス雰囲気中、窒素または水素雰囲気中とすることが好ましい。
また、熱処理温度は400〜800℃の範囲とする。熱処理温度が400℃未満では残留歪の緩和効果が少なく、一方、熱処理温度が800℃を超えると扁平状軟磁性金属粉表面に形成された絶縁膜の絶縁機能が損なわれる。なお、熱処理時間は1時間程度とすればよい。
以上の工程を経ることにより、本実施の形態に係る、厚さ5〜100μmのシート状の複合磁性層10がシート状生成物として得られる。
【0038】
次いで、複合磁性層10の片面側に、磁性金属層20を形成する。
これには、例えば、所定厚さの樹脂シート上に下地金属層となる、例えばNi等の金属を蒸着し、その上に、60%Fe−Ni合金等を所定厚さでめっきすることで、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜が得られる。
更に、これら、複合磁性層10を形成するシート状生成物と、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜とを積層することで、図1に示した電磁波吸収シート1が得られる。
ここで、複合磁性層10と磁性金属層20は、複数層にわたって積層することで電磁波吸収シート1を形成する場合、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜の樹脂シートが、複合磁性層10と磁性金属層20の間に介在する絶縁層として機能する。
なお、本実施の形態に係る電磁波吸収シート1の磁気特性は測定工程で行う。測定結果は実施例のところで述べる。
【0039】
次に、図6を用いて本実施の形態に係る複合磁性層10を形成するシート状生成物の扁平状軟磁性金属粉の占積率について説明する。
図6(A)、(B)は本実施の形態に係る複合磁性層10を形成するシート状生成物の拡大断面図、図6(C)、(D)は従来の複合磁性体の拡大断面図である。
図6(C)に示す従来の複合磁性体は、扁平状軟磁性金属粉と樹脂(塩素化ポリエチレン)とから構成されている。また、図6(D)に示す従来の複合磁性体は、扁平状軟磁性金属粉とウレタン樹脂、BN粉の混合粉をプレス成型したものである。図6(C)、(D)に示した従来の複合磁性体において、扁平状軟磁性金属粉の占積率を調べたところ、その占積率(体積%)は高々75%であった。
【0040】
一方、図6(A)、(B)に示した本実施の形態に係る複合磁性層10を形成するシート状生成物において、扁平状軟磁性金属粉の占積率を調べたところ、図6(A)では占積率87%、図6(B)では占積率78%であった。この結果から、本実施の形態に係る複合磁性層10を形成するシート状生成物によれば、扁平状軟磁性金属粉の占積率を75%以上とすることが可能であり、さらには扁平状軟磁性金属粉の占積率を90%を超えるものとすることも可能であると推測される。扁平状軟磁性金属粉の占積率の望ましい範囲は60〜90%、さらに望ましい範囲は70〜85%である。扁平状軟磁性金属粉の占積率が50%未満になると、磁気特性が低下してしまう。一方、扁平状軟磁性金属粉の占積率が95%を超えると、粉体間の絶縁性が低下してしまう。
本実施の形態に係る複合磁性層10を形成するシート状生成物は、電磁波減衰相12、すなわち、扁平状軟磁性金属粉の占積率が75%以上であるため、磁気特性が良好である。なお、本実施の形態において、扁平状軟磁性金属粉の占積率は、扁平状軟磁性金属粉表面のシリコンオキサイドも考慮して算出した値である。
【0041】
本実施の形態の複合磁性層10を形成するシート状生成物の断面を観察すると、厚さ0.1〜1μmの扁平状軟磁性金属粉が塑性変形していること、扁平状軟磁性金属粉が層状に積層されていることが確認された。また、個々の扁平状軟磁性金属粉は、酸化物あるいは窒化物で絶縁された構造になっていた。つまり、本実施の形態の複合磁性層10を形成するシート状生成物は、層状の電磁波減衰相12の間に絶縁相13が介在している構造となっていることが確認された。そして、本実施の形態の複合磁性層10を形成するシート状生成物は、小さな反磁界と小さな渦電流を同時に達成し得る構造となっており、本実施の形態の複合磁性層10を形成するシート状生成物によれば、100MHzにおいて従来の複合磁性体よりも著しく大きな複素透磁率を実現することが可能である。
【0042】
【実施例】
以下、本発明の電磁波吸収シート1およびそれを構成する複合磁性層10について実施例で詳述する。
【0043】
(実験例1:電磁波減衰相12を扁平状軟磁性金属粉で構成した場合の従来との比較)
図5の工程図に説明したように、軟磁性金属粉として水アトマイズによる平均粒径約20μmの4Moパーマロイ粉(80Ni−4Mo−1Si−bal.Fe(mol%))を、溶媒にトルエンを用いた媒体撹拌ミル中で粉砕扁平化し、平均粒径約40μm、厚さ0.2〜0.6μm、アスペクト比30〜120の扁平状軟磁性金属粉(以下、適宜、「扁平状粉」という。)とした。粉の平均粒子径は、光散乱を利用した粒度分布計(日機装(株)製マイクロトラック粒度分布計)により測定した。
絶縁相13を形成する絶縁材料としてはペルヒドロポリシラザン(東燃ポリシラザンL110、20重量%(wt%)キシレン溶液)を用いた。ペルヒドロポリシラザン20重量%キシレン溶液の扁平状Moパーマロイ粉に対する添加量を4重量%とした。そして、扁平状Moパーマロイ粉とペルヒドロポリシラザンを混合機(ライカイ器、卓上ニーダー等)を用い、室温で30分混合した。その後、大気中、300℃で60分間保持し、ペルヒドロポリシラザンをSiO2に転化し、扁平状Moパーマロイ粉の表面に絶縁膜を形成した。
【0044】
次に、絶縁処理された前記扁平状粉をステンレス基板の上方10mmの位置にある篩(目開き;125μm以下)でふるいながらほぼ均等にステンレス基板上に堆積させた。このステンレス基板をロール径50mmの2段冷間圧延ロールを通過させて圧延し、各扁平状粉を前記基板に平行な向きに配向させ、厚さ約20μmのシート状にした。
続いて、このシートを、金属粉を扁平化する際の粉砕による歪みを取るため、および粉砕中に粉に混入した酸素、炭素を除くために水素中、600℃で60分間、熱処理した。
この後、シートの補強、および絶縁性を付加するため、室温硬化型シリコーンレジンのキシレン溶液(20%)にシートを約20分間含浸させ、その後乾燥させて、複合磁性層10を形成するシート状生成物を得た。
【0045】
更に、厚さ6μmの樹脂シート上にニッケルを蒸着し、これを下地として60%Fe−Ni合金を厚さ約0.6μmでめっきして、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜を得た。
更に、これら、複合磁性層10を形成するシート状生成物と、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜とを積層し、本発明の電磁波吸収シート1を得た。
【0046】
次に、本発明に係る電磁波吸収シート1をフレキシブルプリント基板に貼り付けてノイズの低減効果を調べた結果を図7に示す。なお、横軸は周波数(MHz)、縦軸は水平偏波の受信レベルを示す。また、比較のために、磁性金属層20を設けない複合磁性層10のみからなるシート状生成物を貼り付けた状態での測定結果を図8に、電磁波吸収シート1を貼り付けないブランク状態の測定結果を図9に示す。
これらの図において、点線で示したものがノイズの規格値であり、これを超えるとノイズ規格に不適格となる。これより、本発明の電磁波吸収シート1は、特に200〜300MHzにおいて、ノイズ減衰効果が優れていることが分かる。
【0047】
(実験例2:電磁波減衰相12を磁性材料、金属、カーボン、扁平状軟磁性金属粉で形成した場合の比較)
次に、磁性金属層20を設けることによる効果を確認するための実験を行った。
ここで、複合磁性層10の電磁波減衰相12としては、上記したような扁平状軟磁性金属粉だけでなく、同様のノイズ減衰効果を有する物質である、磁性材料、金属、カーボンを用いた。
【0048】
実施例1、比較例1
電磁波減衰相12を形成する物質として、磁性材料であるNi−Znフェライト粉を用いた。このNi−Znフェライト粉は、Ni−Znフェライト塊をボールミルで粉砕して不定形粉とし、塩素化ポリエチレンと共に混練・押出し、これによって厚さ約0.1mmの複合磁性層10を形成するシート状生成物を作製し、これを比較例1とした。
更に、得られたシート状生成物の片面に、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜として60%Fe−Ni軟磁性金属膜を積層し、これを実施例1とした。
【0049】
実施例2、比較例2
電磁波減衰相12を形成する物質として、酸化鉄を還元した後にCOと反応させて得るカーボニル鉄粉を用いた。このカーボニル鉄粉は、塩素化ポリエチレンと共に混練・押出し、これによって厚さ約0.1mmの複合磁性層10を形成するシート状生成物を作製し、これを比較例2とした。
更に、得られたシート状生成物の片面に、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜として60%Fe−Ni軟磁性金属膜を積層し、これを実施例2とした。
【0050】
実施例3、比較例3
電磁波減衰相12を形成する物質として、カーボンを用いた。このカーボンは、粉末状で、塩素化ポリエチレンと共に混練・押出し、これによって厚さ約0.1mmの複合磁性層10を形成するシート状生成物を作製し、これを比較例3とした。
更に、得られたシート状生成物の片面に、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜として60%Fe−Ni軟磁性金属膜を積層し、これを実施例3とした。
【0051】
実施例4、比較例4
電磁波減衰相12を形成する物質として、実験例1と同様、磁性材料である扁平状軟磁性金属粉を用いた。
絶縁相13を形成する絶縁材料としては、実験例1と同様の、ペルヒドロポリシラザン(東燃ポリシラザンL110、20重量%(wt%)キシレン溶液)を用いた。
そして、上記実験例1と同様にしてNi−Znフェライト粉の表面に絶縁材料による絶縁膜を形成し、さらに絶縁処理されたNi−Znフェライト粉を堆積、圧延、配向、熱処理等を行い、複合磁性層10を形成するシート状生成物を得て、これを比較例4とした。さらに、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜を、複合磁性層10を形成するシート状生成物に積層し、本発明の電磁波吸収シート1としたものを実施例4とした。
【0052】
上記のようにして得た実施例1〜4、比較例1〜4のシートを、フレキシブルケーブルに貼り付け、実験例1と同様の試験を行った結果を表1に示す。ここで、何らの対策を施さない、つまりフレキシブルケーブル単体での測定結果を比較例5として併記した。なお、最大ノイズピークレベルは、ノイズ規格を基準にした場合の約220MHzにおけるノイズピークの最大値である。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示すように、ノイズ対策を施していない比較例5に対し、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜を備えない比較例1〜4では、フレキシブルケーブルに貼り付けただけで3〜4dB程度のノイズ低減効果が認められる。さらに、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜を積層した実施例1〜4では、より大きな、7〜8dBのノイズ減衰効果が得られた。
このようにして、磁性金属層20を形成するシート状軟磁性薄膜を積層することで、より大きなノイズ減衰効果を得ることができるのが明らかである。
【0055】
以上本発明の実施の形態および実施例について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、複合磁性層に軟磁性金属層を積層することで、より優れた高周波特性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電磁波吸収シートの構成を示す図である。
【図2】電磁波吸収シートを構成する磁性層を示す図であり、扁平状軟磁性金属粉の表面に絶縁膜が形成された状態を示す模式図である。
【図3】電磁波吸収シートの構成の他の例を示す図である。
【図4】電磁波吸収シートを備えた携帯電話機の概略構成を示す図である。
【図5】本実施の形態に係る製造工程図である。
【図6】磁性層の拡大断面を従来の複合磁性体と対比して示し、(A)は本発明(占積率87%)の複合磁性層の拡大断面図、(B)は本発明(占積率78%)の複合磁性層の拡大断面図、(C)は従来の扁平状軟磁性金属粉と樹脂(塩素化ポリエチレン)からなる複合磁性層の拡大断面図、(D)は扁平状軟磁性金属粉とウレタン樹脂、BN粉の混合粉をプレス成型した複合磁性層の拡大断面図である。
【図7】本発明におけるノイズ減衰特性を示す図である。
【図8】磁性金属層を設けない場合のノイズ減衰特性を示す図である。
【図9】電磁波吸収シートを設けない場合のノイズ減衰特性を示す図である。
【符号の説明】
1…電磁波吸収シート(磁性部材)、10…複合磁性層、11…磁性粉末(粉体)、12…電磁波減衰相、13…絶縁相、20…磁性金属層(軟磁性金属層)、30…携帯電話機(電子機器)、31…フロント・カバー(筐体)、34…ケース(筐体)
Claims (12)
- 電磁波減衰相と絶縁相を有した複合磁性層と、
前記複合磁性層に積層された軟磁性金属層と、
を有することを特徴とする磁性部材。 - 前記電磁波減衰相が、誘電損失材料または磁性損失材料または導電損失材料から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性部材。
- 前記磁性損失材料が、扁平状軟磁性金属粉であることを特徴とする請求項2に記載の磁性部材。
- 前記軟磁性金属層が、Fe、Co、Niの少なくとも一種以上を含む合金または金属の薄膜であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の磁性部材。
- 前記絶縁相が、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンスルフィド、PET、PBT、ポリアリレート、シリコン樹脂、ジアリルフタレート、ポリイミドのいずれかの有機絶縁材料、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、ガラスおよびボロンナイトライド、セリサイト、酸化ケイ素、窒化ケイ素のいずれかの無機絶縁材料のうち、少なくとも一つまたはそれらの化合物を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の磁性部材。
- 表面に絶縁膜を有する電磁波減衰材料からなる粉体が、その厚さ方向に積層されることで所定の厚さに形成された複合磁性層と、
前記複合磁性層の片面側に設けられた軟磁性金属層と、
を備えることを特徴とする電磁波吸収シート。 - 前記複合磁性層と、前記軟磁性金属層とが、厚さ方向において交互に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の電磁波吸収シート。
- 前記複合磁性層と前記軟磁性金属層の間に絶縁層が介在することを特徴とする請求項6または7に記載の電磁波吸収シート。
- 前記粉体として、扁平状軟磁性金属粉が用いられ、前記複合磁性層にて、前記扁平状軟磁性金属粉がほぼ一定の方向に配向されていることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の電磁波吸収シート。
- 前記軟磁性金属層の片側に下地金属層が設けられていることを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載の電磁波吸収シート。
- 電磁波減衰材料からなる粉体と絶縁材料を混合絶縁処理する工程と、
混合により絶縁を施した前記粉体を基板上に堆積させた後に圧延して配向させてシート状生成物を得る工程と、
前記シート状生成物の一面側に軟磁性金属層を形成する工程と、
を備えることを特徴とする磁性部材の製造方法。 - 電子機器の外殻をなす筐体と、
前記筐体内に配設された電磁波吸収部材と、を備え、
前記電磁波吸収部材は、
電磁波減衰相と絶縁相を有した複合磁性層と、
前記複合磁性層に積層された軟磁性金属層と、
を有することを特徴とする電子機器。
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