JP2004263732A - 変速機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エンジン1と駆動輪との間の動力伝達経路上にフォワードクラッチ51を備える自動変速機10において、上記フォワードクラッチ51を所定のスリップ状態に制御するスリップ領域をエンジン負荷及び車速に応じて生成するに際し、車両の走行状態が非定常状態であるときは、定常状態であるときに比べて、上記スリップ領域を拡大する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は変速機の制御装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車等に搭載される自動変速機では、エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路上にトルクコンバータ等の流体伝動装置が備えられ、該伝動装置にポンプ等の入力要素とタービン等の出力要素とを直結するロックアップクラッチが設けられる。このロックアップクラッチは、エンジン負荷や車速等の車両の走行状態に基づいて制御され、例えば低負荷高回転領域はロックアップ領域に、高負荷低回転領域はコンバータ領域に、低負荷中回転領域はスリップ領域に設定される。そして、ロックアップ領域では、流体伝動装置の入力要素と出力要素とが完全締結されて燃費性能の向上が図られ、コンバータ領域では、入力要素と出力要素とが完全解放されてトルク増大作用が図られ、スリップ領域では、入力要素と出力要素とが半ば締結されて燃費性能の向上とドライバビリティの向上(例えばトルク変動に伴うショックや振動等の吸収をいう)との両立が図られる。ところが、このようなロックアップクラッチは、概して径が大きく、ピストン室の容積が大きく、ピストンの質量が大きく、ピストンの面振れが大きいから、どうしても応答性や制御性、ひいては制御精度に劣る、という不具合が伴う。
【0003】
一方、エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路上には、他にも各種の摩擦締結要素が配置され、該摩擦締結要素を所定のスリップ状態に制御することが知られている。ここでいう摩擦締結要素には、例えば、遊星歯車機構の動力伝達経路を切り換えて複数の変速段を達成するのに用いられるフォワードクラッチ等の変速段達成用のクラッチの他、エンジンと流体伝動装置との間の動力伝達又は流体伝動装置と変速機との間の動力伝達を接続又は遮断してエンジンの回転負荷を軽減するのに用いられる始動クラッチや発進クラッチ、あるいは主として無段変速機と併用されて変速機の出力回転を正逆反転させるのに用いられる前後進切換クラッチ、さらにはギヤードニュートラルが達成可能な無段変速機と併用されて動力伝達経路をギヤ比の大きいローモードとギヤ比の小さいハイモードとに切り換えるのに用いられるローモードクラッチやハイモードクラッチ等が含まれる。このような摩擦締結要素は、一般に、流体伝動装置のロックアップクラッチに比べると、概して径が小さく、ピストン室の容積が小さく、ピストンの質量が小さく、ピストンの面振れが小さいから、応答性や制御性、ひいては制御精度に優れる、という利点を有する。
【0004】
例えば、特許文献1には、燃費の改善及びアイドル振動の抑制を図るため、ニュートラル制御と称して、Dレンジでのアイドル停車時に、前進第1速段を達成する摩擦締結要素(フォワードクラッチ)を所定のスリップ状態に制御することが記載されている。これにより、クリープ現象の反作用としてエンジンに加えられる負荷トルクが減少し、燃費の改善及びアイドル振動の抑制が図られる。また、特許文献2には、ライン圧の最適化及び伝達効率の最良化を図るため、最も弱い摩擦締結要素、換言すれば最も高い作動圧を要求する摩擦締結要素を微小量(摩擦締結要素の耐久性を低下させない程度の量:例えば10rpm)スリップさせることが記載されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−304125号公報
【特許文献2】
米国特許第5400678号明細書
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、特許文献1に記載の発明では、フォワードクラッチのスリップ制御は車両の停車時にのみ行われ、車両の発進時ないし発進後はフォワードクラッチは完全締結される。また、特許文献2に記載の発明では、摩擦締結要素のスリップ制御は、該摩擦締結要素がスリップしている状態からライン圧を上げていって該摩擦締結要素がもはやスリップしなくなるライン圧を求めるために行われる。つまり、従来、摩擦締結要素をスリップ制御するといっても、それはごく限られた状況及び目的でしか行われていなかった。しかし、この摩擦締結要素は、前述したように応答性や制御精度に優れるので、この摩擦締結要素をより広範囲にスリップ制御して、例えばドライバビリティの向上(前述したようにトルク変動に伴うショックや振動等の吸収をいう)に有効活用することは合理的なことであると考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路上に備えられた、入出力要素間のスリップ状態が制御可能な摩擦締結要素を広範囲にスリップ制御して、ドライバビリティの向上等に有効活用することを課題とする。以下、その他の課題を含め、本発明を詳しく説明する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本願の請求項1に記載の発明は、エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路上に、入出力要素間のスリップ状態が制御可能な摩擦締結要素を備える変速機の制御装置であって、上記摩擦締結要素のスリップ状態を制御する制御手段と、該制御手段で上記摩擦締結要素を所定のスリップ状態に制御するスリップ領域をエンジン負荷及び車速に応じて生成する生成手段と、車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、該検出手段で検出された車両の走行状態が定常状態であるか非定常状態であるかを判定する判定手段と、該判定手段で車両の走行状態が非定常状態であると判定されたときは、定常状態であると判定されたときに比べて、上記生成手段で生成されるスリップ領域を拡大するスリップ領域拡大手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、まず、摩擦締結要素を所定のスリップ状態に制御するスリップ領域をエンジン負荷及び車速に応じて生成するから、上記摩擦締結要素をエンジン負荷及び車速に応じて広範囲にスリップ制御して、ドライバビリティの向上に有効活用することができる。
【0010】
そして、車両の走行状態が非定常状態であるとき、例えば発進時や加速時等の過渡状態であるときは、定常状態であるときに比べて、上記スリップ領域を拡大するから、上記摩擦締結要素をより一層広範囲にスリップ制御して、ドライバビリティの向上により一層有効活用することができる。
【0011】
しかもその場合に、非定常状態のときに限りスリップ領域を拡大するから、定常状態のときは摩擦締結要素は不必要にスリップ制御されず、よってスリップ制御の弊害である伝達効率の低下、熱の発生、及び摩擦締結要素の耐久性の低下の問題が極力抑制される。
【0012】
次に、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、判定手段で車両の走行状態が定常状態であると判定されたときのスリップ領域は、エンジン負荷が所定のエンジン負荷以下及び車速が所定の車速以下の領域であることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、定常状態のときは、摩擦締結要素は、低負荷低回転領域でスリップ制御されるから、該低負荷低回転領域で起こり易く目立ち易いトルク変動に伴うショックや振動が高応答・高精度に吸収でき、ドライバビリティの向上に大きく寄与する。
【0014】
次に、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、スリップ領域拡大手段は、スリップ領域を高エンジン負荷側に拡大することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、非定常状態のときは、摩擦締結要素は、高負荷領域でもスリップ制御されるようになるから、該高負荷領域で起こり易い過渡時のトルク変動に伴うショックや振動が高応答・高精度に吸収でき、ドライバビリティの向上に大きく寄与する。
【0016】
次に、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、スリップ領域拡大手段は、エンジン負荷が高いほど、スリップ領域と締結領域との境界を定める車速を低くすることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、エンジン負荷が高いほど、つまり運転者の加速要求が大きく、アクセルペダルがより大きく踏み込まれたときは、車速が低くても、スリップ制御が解除され、摩擦締結要素は締結状態とされて、伝達効率が向上し、良好な加速性が得られる。もっとも、スリップ制御によるショック吸収作用は図れなくなるが、高負荷時はショックが隠蔽されて目立たなくなるから大きな問題とならない。
【0018】
次に、請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明において、制御手段は、スリップ領域において、エンジン負荷が高いほど、摩擦締結要素のスリップ量を小さくすることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、摩擦締結要素をスリップ制御するにしても、高負荷時はスリップ量を小さくするから、高負荷時に顕著化する伝達効率の低下の問題、熱の発生の問題、及び摩擦締結要素の耐久性の低下の問題が有効に抑制されると共に、逆に低負荷時はスリップ量を大きくするから、低負荷時に目立ち易いトルク変動に伴うショックや振動の問題が有効に抑制される。以下、実施の形態を通して、本発明をさらに詳しく説明する。
【0020】
【発明の実施の形態】
本実施の形態においては、本発明は、図1に示す自動変速機10に適用されている。この自動変速機10は、エンジン1の出力が入力される流体伝動装置としてのトルクコンバータ20と、該トルクコンバータ20の出力が入力される2つの遊星歯車機構30,40とを有し、該遊星歯車機構30,40の動力伝達経路を切り換えるクラッチやブレーキ等の複数の摩擦締結要素51〜55及びワンウェイクラッチ56の選択的作動により、表1に示すように、Dレンジの1〜4速、Sレンジの1〜3速、Lレンジの1〜2速、及びRレンジの後退速が達成される(表中「○」が作動を示す)。
【0021】
【表1】
【0022】
トルクコンバータ20は、エンジン出力軸2に連結されたケース21と、該ケース21に固設された入力要素としてのポンプ22と、該ポンプ22に対向して配置された出力要素としてのタービン23と、これらのポンプ22とタービン23との間に配置されたステータ25とを含み、タービン23の回転がタービン軸27を介して遊星歯車機構30,40に出力される。上記ステータ25はワンウェイクラッチ24を介して変速機ケース11に支持されてトルク増大作用を果たす。トルクコンバータ20は、後述するように、上記ポンプ22とタービン23とを直結するロックアップクラッチ26を備える。また、コンバータケース21を介してエンジン1により駆動されるオイルポンプ12が配設されている。
【0023】
タービン軸27と第1遊星歯車機構30のサンギヤ31との間にフォワードクラッチ51が、タービン軸27と第2遊星歯車機構40のサンギヤ41との間にリバースクラッチ52が、タービン軸27と第2遊星歯車機構40のキャリヤ42との間に3−4クラッチ53がそれぞれ設けられている。2−4ブレーキ54は第2遊星歯車機構40のサンギヤ41を固定する。第1遊星歯車機構30のリングギヤ33と第2遊星歯車機構40のキャリヤ42とが連結されて、これらと変速機ケース11との間にローリバースブレーキ55とワンウエイクラッチ56とが並列に配置されている。第1遊星歯車機構30のキャリヤ32と第2遊星歯車機構40のリングギヤ43とが連結されて、これらに出力ギヤ13が接続されている。出力ギヤ13が2つの中間ギヤ14,15を介して差動装置60の入力ギヤ61に噛合し、上記出力ギヤ13の回転が差動装置60を介して左右の車軸62,63から図外の駆動輪に伝達される。
【0024】
図2に示すように、トルクコンバータ20のロックアップクラッチ26は、詳しくは、コンバータケース21とタービン23との間に位置している。ロックアップクラッチ26は、コンバータケース21を介してエンジン出力軸2とタービン軸27とを直結する。ロックアップクラッチ26は、タービン23に固設され、コンバータケース21内の締結室26a内の作動油の圧力により常に締結方向に付勢されつつ、解放室26b内の作動油の圧力により解放方向に付勢される。
【0025】
このロックアップクラッチ26の油圧制御回路70には、該ロックアップクラッチ26のスリップ状態を制御する制御手段としてのデューティソレノイドバルブ71とシフトバルブ72とが配設されている。シフトバルブ72には、デューティソレノイドバルブ71で調整された制御圧の供給ライン73の他、パイロット圧の供給ライン74、一定圧に調整されたコンバータ圧の供給ライン75、ロックアップクラッチ26の締結室26aに通じる締結圧ライン76、及び解放室26bに通じる解放圧ライン77が接続している。パイロット圧ライン74からパイロット圧が供給されると、図示したように、シフトバルブ72のスプール72aがスプリング72bの付勢力に抗して図面上左側に位置し、締結圧ライン76がコンバータ圧ライン75と、解放圧ライン77が制御圧ライン73とそれぞれ連通して、コンバータ圧が締結用油圧に用いられ、制御圧が解放用油圧に用いられる。
【0026】
この状態で、デューティソレノイドバルブ71に印加するデューティ率(1ON−OFF周期におけるON時間の比率)を大きくしていくと、制御圧(解放用油圧)PLUが小さくなっていき、その結果、ロックアップクラッチ26の締結力が大きくなっていって、ロックアップクラッチ26はついには完全締結される(ロックアップ状態)。一方、デューティ率を小さくしていくと、制御圧PLUが大きくなっていき、その結果、ロックアップクラッチ26の締結力が小さくなっていって、ロックアップクラッチ26はついには完全解放される(コンバータ状態)。そして、デューティ率をその間で制御することにより、制御圧PLU、ひいてはロックアップクラッチ26の締結力が調整され、ロックアップクラッチ26は半ば締結される(スリップ状態)。
【0027】
本実施の形態においては、複数の変速段達成用の摩擦締結要素51〜55のうち、少なくともフォワードクラッチ51が、上記トルクコンバータ20のロックアップクラッチ26と同様、入力要素と出力要素との間のスリップ状態が制御可能に構成されている。ただし、本実施形態においては、上記表1に明示したように、フォワードクラッチ51は1〜3速でのみ締結されるから、4速をカバーするため、3〜4速で締結される3−4クラッチ53もまた入力要素と出力要素との間のスリップ状態が制御可能に構成されている。以下、フォワードクラッチ51を例に取り説明するが、特に断らない限り、3−4クラッチ53もこれに準じて同様である。
【0028】
すなわち、図3に示すように、フォワードクラッチ51は、タービン軸27に固設された入力要素としてのドラム511と、第1遊星歯車機構30のサンギア31の構成部材310にスプライン嵌合された出力要素としてのハブ512と、これらのドラム511及びハブ512にそれぞれスプライン嵌合された複数の摩擦板513…513と、ドラム511内に軸方向に移動自在に収納されたピストン514とを有し、該ピストン514とドラム511との間に外周側締結室515及び内周側締結室516が形成されている。
【0029】
このフォワードクラッチ51の油圧制御回路80には、該フォワードクラッチ51のスリップ状態を制御する制御手段としてのデューティソレノイドバルブ81とシフトバルブ82とが配設されている。デューティソレノイドバルブ81には、ライン圧の供給ライン83、及び上記外周側締結室515に通じる外周側締結圧ライン84が接続している。シフトバルブ82には、同様に、ライン圧の供給ライン85、及び上記内周側締結室516に通じる内周側締結圧ライン86の他、上記デューティソレノイドバルブ81で調整された制御圧の供給ライン87が接続している。シフトバルブ82にこの制御圧供給ライン87から制御圧が供給されないときは、図示したように、シフトバルブ82のスプール82aがスプリング82bの付勢力により図面上左側に位置し、ライン圧供給ライン85と内周側締結圧ライン86とが遮断している。
【0030】
この状態で、デューティソレノイドバルブ81に印加するデューティ率を小さくしていくと、制御圧(外周側締結用油圧)PFWが大きくなっていき、その結果、フォワードクラッチ51は、外周側締結室515にのみ油圧を受けて、比較的ゆっくりと締結動作が進行する。このとき、シフトバルブ82のスプール82aが、同じく上記制御圧を受けて、スプリング82bの付勢力に抗して図面上右側に移動していく。そして、該スプール82aの右側移動により、ライン圧供給ライン85と内周側締結圧ライン86とがついに連通すると、その連通度に応じた大きさの作動圧(内周側締結用油圧)が内周側締結室516に供給され、フォワードクラッチ51は、両締結室515,516共に油圧を受けて、締結動作が比較的速やかに進行する。したがって、フォワードクラッチ51に外周側締結用油圧PFWのみが供給される範囲内で、換言すれば、シフトバルブ82を挟んでライン圧供給ライン85と内周側締結圧ライン86とが遮断している状態で、デューティソレノイドバルブ81のデューティ率を制御することにより、フォワードクラッチ51の締結力を緻密に精度よく調整し、フォワードクラッチ51のスリップ制御を緻密に精度よく行うことができる。
【0031】
図4に示すように、この自動変速機10のコントロールユニット100は、エンジン1のスロットル開度を検出するスロットル開度センサ101からの信号、エンジン回転数としてエンジン出力軸2の回転数Neを検出するエンジン回転センサ102からの信号、タービン回転数としてタービン軸27の回転数Ntを検出するタービン回転センサ103からの信号、車速として出力ギヤ13の回転数(遊星歯車機構30,40の出力回転数)を検出する車速センサ104からの信号、作動油の温度を検出する油温センサ105からの信号、運転者により選択されているレンジでONするレンジスイッチ106からの信号、アクセルペダルの非踏み込みでONするアイドルスイッチ107からの信号、及びブレーキペダルの踏み込みでONするブレーキスイッチ108からの信号等を入力する。そして、コントロールユニット100は、それらの信号が示す車両の走行状態(特にスロットル開度及び車速)に基づいて、目標変速段を設定し、その目標変速段が達成されるように、上記摩擦締結要素51〜55に対する作動圧の給排を行う変速制御用デューティソレノイドバルブ81,91…91に制御信号を出力する。また、コントロールユニット100は、変速中でないときは、同じく上記信号が示す車両の走行状態(特にスロットル開度及び車速)を複数の領域に分類し、その分類結果に応じて、上記ロックアップクラッチ制御用デューティソレノイドバルブ71及びフォワードクラッチ制御用デューティソレノイドバルブ81に制御信号を出力し、ロックアップクラッチ26のスリップ制御とフォワードクラッチ51のスリップ制御とを連係して制御する。
【0032】
以下、図5〜図7のフローチャートを参照して、上記連係制御の具体的動作の1例を説明する。まず、コントロールユニット100は、ステップS1で、上記各種センサ・スイッチ類101〜108からの入力信号により車両の状態量を検出する。次いで、ステップS2で、Pレンジ又はNレンジ、すなわち非走行レンジが選択されているか否かを判定し、NOのとき、つまりDレンジ等の走行レンジが選択されているときは、ステップS3に進む。ステップS3では、減速走行、すなわちアクセルペダルが非踏み込みか否かを判定し、NOのとき、つまりアクセルペダルが踏み込まれているときは、ステップS4に進む。ステップS4では、定常走行、すなわちエンジン1の制御パラメータが大きな変動なく安定に推移しているか否かを判定し、YESのとき、つまり定常走行時はステップS5に進み、NOのとき、つまり非定常走行時(例えば発進時や加速時等の過渡状態であるとき)はステップS6に進む。
【0033】
ステップS5では、定常時制御マップを用いてフォワードクラッチ51の制御領域を設定し、ステップS6では、非定常時制御マップを用いてフォワードクラッチ51の制御領域を設定する。ここで、定常時制御マップの具体的1例を図8に、非定常時制御マップの具体的1例を図9にそれぞれ示す。両マップ共、車速と、エンジン負荷を代表するパラメータの1つであるスロットル開度とに応じて、フォワードクラッチ51を締結する締結領域と、フォワードクラッチ51をスリップ制御するスリップ領域とが予め定められている。
【0034】
図8の定常時制御マップでは、スリップ領域は、スロットル開度が低開度側の所定開度θ1以下で、かつ車速が低車速側の所定車速V1以下の領域に定められている。上記所定車速V1はスロットル開度に拘らず一定値であるのに対し、上記所定開度θ1は車速が大ほど大きくされている(すなわち右肩上がりの傾向である)。図9の非定常時制御マップでは、スリップ領域は、上記定常時制御マップに比べて、高スロットル開度側に拡大している。その場合、スロットル開度が大きいほど、スリップ領域と締結領域との境界を定める車速L1は低くされている。
【0035】
なお、本実施形態においては、フォワードクラッチ51は、上記締結領域では、弱締結状態とされる(それを実現する油圧は負荷及び回転に依存して予め決められる)。その結果、フォワードクラッチ51を通過するトルクが瞬間的に変動したときには、フォワードクラッチ51は瞬間的にスリップし、上記トルク変動に伴うショックや振動等が吸収される。一方、スリップ領域では、フォワードクラッチ51は、そのスリップ量が所定の目標スリップ量に収束するようにフィードバック制御される。また、図8、図9に示したように、スロットル開度がごく小さい(すなわち全閉又は開度ゼロ近傍の)減速領域は、車速に拘らず、すなわち全車速に亘って、スリップ領域とされている。
【0036】
図5のフローチャートに戻り、コントロールユニット100は、上記のように、ステップS5又はS6で、フォワードクラッチ51の制御領域を設定したのち、ステップS7で、今度は、制御マップを用いてロックアップクラッチ26の制御領域を設定する。ここで、制御マップの具体的1例を図10に示す。このロックアップクラッチ26用の制御マップにおいても、上記図8、図9に例示したフォワードクラッチ51用の制御マップと同様、車速と、エンジン負荷を代表するパラメータの1つであるスロットル開度とに応じて、ロックアップクラッチ26を完全締結するロックアップ領域と、完全解放するコンバータ領域と、半ば締結するスリップ領域とが予め定められている。
【0037】
この図10の制御マップでは、ロックアップ領域は、車速に拘らず、すなわち全車速に亘って、スロットル開度が低開度側の所定開度θ2以下の領域に定められている。ここで、この第2の所定開度θ2は、上記図8、図9に例示したフォワードクラッチ51のスリップ領域を定める第1の所定開度θ1よりも小さい開度に設定されている。この第2の所定開度θ2もまた、第1の所定開度θ1と同様、車速が大ほど大きくされている。その場合、第2の所定開度θ2は、上記図8、図9に例示したフォワードクラッチ51のスリップ領域を定める所定車速V1と、該所定車速V1より高い第2の所定車速V2とにおいて、段差がつけられている。もっとも、このような特性は1例に過ぎず、段差はなくても構わない。また、図10に示したように、スロットル開度がごく小さい(すなわち全閉又は開度ゼロ近傍の)減速領域は、車速に拘らず、すなわち全車速に亘って、ロックアップ領域とされている。
【0038】
この図10の制御マップでは、スリップ領域もまた、車速に拘らず、すなわち全車速に亘って定められている。その場合、スリップ領域は、スロットル開度が上記第1の所定開度θ1と第2の所定開度θ2との間の領域に定められている。
【0039】
ここで、比較のため、従来のロックアップクラッチの制御マップの具体的1例を図11に示す。すなわち、トルクコンバータのロックアップクラッチのみスリップ制御し、フォワードクラッチ等の他の摩擦締結要素を車両の走行状態に応じて広範囲にスリップ制御しない場合である。
【0040】
この図11の従来の制御マップでは、ロックアップ領域は、スロットル開度が低開度側の所定開度θx以下で、かつ車速が高車速側の上記第2の所定車速V2以上の領域に定められている。ここで、上記所定開度θxは、図10に例示した第2の所定開度θ2と略同じ値である。また、スリップ領域は、スロットル開度が同じく低開度側の所定開度θx以下で、かつ車速が低車速側の上記第1の所定車速V1と高車速側の上記第2の所定車速V2との間の領域に定められている。さらに、スロットル開度がごく小さい(すなわち全閉又は開度ゼロ近傍の)減速領域は、低車速側から順に、コンバータ領域、スリップ領域、及びロックアップ領域に分割されている。
【0041】
つまり、本実施形態で採用する図10の制御マップは、図11に例示した従来の制御マップに比べて、ロックアップ領域及びスリップ領域が拡大され、その分コンバータ領域が縮小されている。その主な理由は、図8、図9に例示したように、フォワードクラッチ51を、走行中、全域に亘って(ただし本実施形態においては前述したように1〜3速の範囲に限られる。4速時は3−4クラッチ53を使ってカバーする)スリップさせるようにしたからである。すなわち、前述したように、定常走行時であるときも、また非定常走行時であるときも、スリップ領域においては、フォワードクラッチ51は、スリップ量が所定の目標スリップ量(ゼロを除く)に収束するようにフィードバック制御される。一方、締結領域においては、フォワードクラッチ51は、弱締結状態とされて(目標スリップ量がゼロ狙い)、瞬間的なトルク変動時に限ってスリップすることが許容されている。よって、車両の走行中は、まず全域に亘って、フォワードクラッチ51の自主的な(自然発生的な)スリップにより、瞬間的なトルク変動に伴うショックや振動等が吸収されると共に、特に低車速側においては、フォワードクラッチ51をより積極的にスリップさせることにより、低車速側で目立ち易いトルク変動に伴うショックや振動等がより一層確実に吸収される。
【0042】
このように、フォワードクラッチ51の側で、ドライバビリティの向上(トルク変動に伴うショックや振動等の吸収)を全域に亘って担うようにしたから、ロックアップクラッチ26のコンバータ領域を縮小することができ、その結果、ロックアップクラッチ26の側で、可及的な燃費の向上を図ることができる。
【0043】
再び図5のフローチャートに戻り、コントロールユニット100は、上記のように、ステップS7で、ロックアップクラッチ26の制御領域を設定したのち、ステップS8で、領域分類マップを用いて車両の走行状態を複数の領域A〜Fのいずれかに分類する。ここで、領域分類マップの具体的1例を図12に示す。この領域分類マップは、結局のところ、上記図8、図9に例示したフォワードクラッチ51の制御マップと、図10に例示したロックアップクラッチ26の制御マップとを組み合わせて得られるものであり、車速と、エンジン負荷を代表するパラメータの1つであるスロットル開度とに応じて、全域が複数(図例では6つ)の領域A〜Fに予め分類されている。もっとも、スロットル開度がごく小さい(すなわち全閉又は開度ゼロ近傍の)減速領域Gと、PレンジやNレンジが選択された非走行領域(駐停車領域)Nも併せて示されている。
【0044】
すなわち、図13にまとめたように、領域Aは、上記図8、図9に例示したフォワードクラッチ51の制御マップと、図10に例示したロックアップクラッチ26の制御マップとから明らかなように、ロックアップクラッチ26をロックアップ状態とし、フォワードクラッチ51をスリップ状態とする領域である。したがって、フォワードクラッチ51の側でドライバビリティの向上を図りながら、ロックアップクラッチ26の側で燃費の向上を図ることができる。
【0045】
次に、領域Bは、ロックアップクラッチ26もフォワードクラッチ51も共にスリップ状態とする領域である。したがって、フォワードクラッチ51の側でドライバビリティの向上を図りながら、ロックアップクラッチ26の側で燃費の向上とドライバビリティの向上の両立を図ることができる。
【0046】
次に、領域Cは、ロックアップクラッチ26をコンバータ状態とし、フォワードクラッチ51を、非定常走行時はスリップ状態、定常走行時は弱締結状態とする領域である。したがって、いずれの場合も、フォワードクラッチ51の側でドライバビリティの向上を図りながら、ロックアップクラッチ26の側でトルク増大作用(走り重視)を図ることができる。
【0047】
次に、領域Dは、ロックアップクラッチ26をコンバータ状態とし、フォワードクラッチ51を弱締結状態とする領域である。したがって、フォワードクラッチ51の側でドライバビリティの向上を図りながら、ロックアップクラッチ26の側でトルク増大作用(走り重視)を図ることができる。
【0048】
次に、領域Eは、ロックアップクラッチ26をスリップ状態とし、フォワードクラッチ51を弱締結状態とする領域である。したがって、フォワードクラッチ51の側でドライバビリティの向上を図りながら、ロックアップクラッチ26の側で燃費の向上とドライバビリティの向上の両立を図ることができる。
【0049】
そして、領域Fは、ロックアップクラッチ26をロックアップ状態とし、フォワードクラッチ51を弱締結状態とする領域である。したがって、フォワードクラッチ51の側でドライバビリティの向上を図りながら、ロックアップクラッチ26の側で燃費の向上を図ることができる。
【0050】
また、減速領域Gは、領域Aと同様、ロックアップクラッチ26をロックアップ状態とし、フォワードクラッチ51をスリップ状態とする領域である。したがって、フォワードクラッチ51の側でドライバビリティの向上を図りながら、ロックアップクラッチ26の側で燃費の向上を図ることができる。
【0051】
さらに、非走行領域Nは、ロックアップクラッチ26をロックアップ状態とし、フォワードクラッチ51を解放状態とする領域である。したがって、フォワードクラッチ51の側で動力伝達を遮断しながら、ロックアップクラッチ26の側でいち早い発進時動作に対応することができる。
【0052】
再び図5のフローチャートに戻り、コントロールユニット100は、上記のように、ステップS8で、車両の走行状態を領域分類したのち、ステップS9で、変速中か否かを判定し、NOのとき、つまり非変速時はステップS10に進んで、分類した領域に応じてフォワードクラッチ51及びロックアップクラッチ26を図13の内容に従い制御し、YESのとき、つまり変速時はステップS11に進んで、別途変速制御を実行する。
【0053】
ここで、上記ステップS11の変速制御においては(特にフォワードクラッチ51が関与する3〜4速間の変速制御においては)、フォワードクラッチ51を変速達成のためにスリップ制御し、かつロックアップクラッチ26を変速ショック吸収のためにスリップ制御する(このような変速中のスリップ連係制御は本発明に含まれない)。
【0054】
一方、ステップS2でYESのとき、つまりPレンジやNレンジの非走行レンジが選択されているときは、ステップS12で、車両の走行状態を非走行領域(駐停車領域)Nに分類したのち、ステップS10に進んで、該領域Nに応じてフォワードクラッチ51及びロックアップクラッチ26を図13の内容に従い制御する。また、ステップS3でYESのとき、つまりアクセルペダルが非踏み込みの減速走行であるときは、ステップS13で、車両の走行状態をスロットル開度がごく小さい(すなわち全閉又は開度ゼロ近傍の)減速領域Gに分類したのち、ステップS9で非変速時であることを確認したうえでステップS10に進んで、該領域Gに応じてフォワードクラッチ51及びロックアップクラッチ26を図13の内容に従い制御する。
【0055】
そして、いずれの場合も、上記ステップS10で、フォワードクラッチ51及びロックアップクラッチ26を、スリップ領域において、スリップ制御するとき、そのスリップ制御は、およそ図6、図7にそれぞれ例示したフローチャートに従い行われる。まず、フォワードクラッチ51においては、コントロールユニット100は、図6のステップS21で、各種センサ・スイッチ類101〜108からの入力信号により車両の状態量を検出したのち、ステップS22で、実スリップ量SFWを算出する。この場合、実スリップ量SFWは、フォワードクラッチ51の入力回転数Nin(すなわちタービン回転数Nt)から、フォワードクラッチ51の出力回転数Nout(すなわち第1遊星歯車機構30のサンギヤ31の回転数:出力ギヤ13の回転数とギヤ比とから求められる)を減じた値である。
【0056】
次いで、ステップS23で、スロットル開度tvoと車速Vとに応じて目標スリップ量SFWoを設定する。この場合、目標スリップ量SFWoは、スロットル開度tvoが大きいほど小さく、車速Vが高いほど小さくされる。
【0057】
次いで、ステップS24で、実スリップ量SFWが目標スリップ量SFWoより大きいか否かを判定し、大きい場合は、ステップS25で、フォワードクラッチ51が締結する方向に制御圧(外周側締結用油圧)PFWを変更(増大)し、小さい場合は、ステップS26で、フォワードクラッチ51が解放する方向に制御圧(外周側締結用油圧)PFWを変更(減少)する。
【0058】
一方、ロックアップクラッチ26においては、コントロールユニット100は、図7のステップS31で、各種センサ・スイッチ類101〜108からの入力信号により車両の状態量を検出したのち、ステップS32で、実スリップ量SLUを算出する。この場合、実スリップ量SLUは、ロックアップクラッチ26の入力回転数(すなわちエンジン回転数Ne)から、ロックアップクラッチ26の出力回転数(すなわちタービン回転数Nt)を減じた値である。
【0059】
次いで、ステップS33で、スロットル開度tvoと車速Vとに応じて目標スリップ量SLUoを設定する。この場合、目標スリップ量SLUoは、スロットル開度tvoが大きいほど大きく、車速Vが高いほど大きくされる。
【0060】
次いで、ステップS34で、実スリップ量SLUが目標スリップ量SLUoより大きいか否かを判定し、大きい場合は、ステップS35で、ロックアップクラッチ26が締結する方向に制御圧(解放用油圧)PLUを変更(減少)し、小さい場合は、ステップS36で、ロックアップクラッチ26が解放する方向に制御圧(解放用油圧)PLUを変更(増大)する。
【0061】
なお、図14に例示したように、フォワードクラッチ51の締結力を制御するようにしてもよい。すなわち、まず、ステップS41で、各種センサ・スイッチ類101〜108からの入力信号により車両の状態量を検出したのち、ステップS42で、実締結力FFWを算出する。この場合、実締結力FFWは、フォワードクラッチ51に作用している油圧(すなわち外周側締結用油圧PFW)と、摩擦板513…513間の摩擦面積Mと、同じく摩擦板513…513間の摩擦係数μとを乗じた値である。
【0062】
次いで、ステップS43で、スロットル開度tvoと車速Vとに応じて目標締結力FFWoを設定する。この場合、目標締結力FFWoは、スロットル開度tvoが大きいほど大きく、車速Vが高いほど大きくされる。
【0063】
次いで、ステップS44で、目標締結力FFWoが実締結力FFWより大きいか否かを判定し、大きい場合は、ステップS45で、フォワードクラッチ51が締結する方向に制御圧(外周側締結用油圧)PFWを変更(増大)し、小さい場合は、ステップS46で、フォワードクラッチ51が解放する方向に制御圧(外周側締結用油圧)PFWを変更(減少)する。
【0064】
以上のように、本実施形態では、動力発生装置(エンジン)1からの伝達トルクを連続的に可変にできる機構を有する2つ以上のクラッチ26,51,…を直列に配置した構成において、車両の走行状態に応じてトルク伝達量を分担させるようにしたから、相反する傾向にある燃費の向上(摩擦締結要素51,53やロックアップクラッチ26のスリップ量を減少することで達成される)と、ドライバビリティの向上(逆に摩擦締結要素51,53やロックアップクラッチ26のスリップ量を増大することで達成される)とを高次元で両立させることが可能となる。
【0065】
特に、領域Aでは、トルクコンバータ20のロックアップクラッチ26に比べて高応答・高精度であるフォワードクラッチ51を精度よくスリップさせるから、発進領域及び極低車速領域で上記ロックアップクラッチ26をロックアップしたときに発生する振動やこもり音が良好に吸収される。これにより、トルクコンバータ20の滑り損失を低減し、燃費を向上させることができる。これに対し、従来は、走行中にフォワードクラッチ51のスリップ制御をしていなかったので、低車速領域でロックアップクラッチ26をロックアップすると、上記振動やこもり音が発生することから、高車速領域でしかロックアップクラッチ26をロックアップ又はスリップすることができず、それにより、燃費の低下が著しかったのである。
【0066】
また特に、領域Bでは、もしロックアップクラッチ26をロックアップし、フォワードクラッチ51のみをスリップさせただけでは、負荷が少し大きくなっただけで駆動力不足が生じる。そこで、領域Bでは、ロックアップクラッチ26もスリップさせて、トルクコンバータ20のトルク比により駆動力不足を補うようにした。これにより、中負荷領域での燃費の向上と、走りの低下の回避とを図る。また、コンバータ領域とロックアップ領域との間の移行を円滑化する。従来は、トルクコンバータ20のロックアップクラッチ26とフォワードクラッチ51のような他の摩擦締結要素との両方をスリップさせる領域は基本的に存在していなかった。ただ、例外的に、前述したように、変速中の変速ショックを防止するために、ロックアップクラッチ26を瞬間的にスリップさせることが行われていたのみである。
【0067】
また特に、領域E及び領域Fでは、フォワードクラッチ51を、常時、弱締結状態に維持するから、いわゆるアクセルの「ちょい踏み」(tip in/out)のような瞬間的なアクセル操作に対しては、高応答・高精度のフォワードクラッチ51のスリップによって良好なショック吸収が図られる。これにより、ショックが抑制されると共に、不必要にロックアップクラッチ26を解放させることも免れて、燃費の低下が防止できる。従来は、応答性が低く、制御性に劣るロックアップクラッチ26を微妙に締結力制御していたので、アクセルの「ちょい踏み」のような瞬間的な対応には精度のよいスリップ制御が困難で、ショックが発生していたのである。あるいは、ロックアップクラッチ26をコンバータ状態にして、燃費や走行フィーリングの低下を招いていたのである。あるいは、ショック吸収のために高価なダンパを併用して、コストアップを招いていたのである。
【0068】
一方、図8、図9に例示したように、フォワードクラッチ51を所定のスリップ状態に制御するスリップ領域をスロットル開度及び車速に応じて生成するようにしたから、上記フォワードクラッチ51をスロットル開度及び車速に応じて広範囲にスリップ制御して、ドライバビリティの向上に有効活用することができる。
【0069】
そして、車両の走行状態が非定常状態であるとき、例えば発進時や加速時等の過渡状態であるときは(図5のステップS6:図9参照)、定常状態であるときに比べて(図5のステップS5:図8参照)、上記スリップ領域を拡大するから、上記フォワードクラッチ51をより一層広範囲にスリップ制御して、ドライバビリティの向上により一層有効活用することができる。
【0070】
しかもその場合に、非定常状態のときに限りスリップ領域を拡大するから、定常状態のときはフォワードクラッチ51は不必要にスリップ制御されず、よってスリップ制御の弊害である伝達効率の低下、熱の発生、及び摩擦締結要素の耐久性の低下の問題が極力抑制される。
【0071】
しかも、定常状態のときは、フォワードクラッチ51は、低負荷低回転領域でスリップ制御されるから(図8参照)、該低負荷低回転領域で起こり易く目立ち易いトルク変動に伴うショックや振動が高応答・高精度に吸収でき、ドライバビリティの向上に大きく寄与する。
【0072】
また、非定常状態のときは、フォワードクラッチ51は、高負荷領域でもスリップ制御されるようになるから(図9参照)、該高負荷領域で起こり易い過渡時のトルク変動に伴うショックや振動が高応答・高精度に吸収でき、この点においても、ドライバビリティの向上に大きく寄与する。
【0073】
さらに、その場合に、図9に符号L1で示したように、スロットル開度が大きいほど、つまり運転者の加速要求が大きく、アクセルペダルがより大きく踏み込まれたときほど、車速が低くても、スリップ制御(目標スリップ量を設定した積極的なスリップ制御)が解除され、フォワードクラッチ51は締結状態とされるから(弱締結状態:目標スリップ量はゼロ狙い)、伝達効率が向上し、良好な加速性が得られる。もっとも、スリップ制御によるショック吸収作用は低減するが、高負荷時はショックが隠蔽されて目立たなくなるから大きな問題とはならない。
【0074】
また、従来は、例えばDレンジで停車中にフォワードクラッチ51を滑らせるか又は解放させてクリープ力をカットしたときは、次の発進時又は加速時には直ちに該フォワードクラッチ51を締結していた。その結果、ショックが頻繁に発生していた。そこで、本実施形態では、図9(図12)に示したように、非定常時におけるフォワードクラッチ51のスリップ領域A〜B〜Cにおいては、フォワードクラッチ51を積極的に目標スリップ量にスリップさせると共に、要求駆動力が高くなれば、その要求に応じてトルクコンバータ20のロックアップクラッチ26もスリップさせ(図10参照)、トルク比増大作用により、駆動力不足を補うようにした。加えて、上記ラインL1の特性により、運転者がアクセルペダルをより大きく踏み込んだときには、フォワードクラッチ51によるショック吸収(円滑度合い:ドライバビリティ)よりも、フォワードクラッチ51を締結気味にして加速応答性を重要視させた。また、そのように早めにフォワードクラッチ51を締結気味とすることで、該フォワードクラッチ51の信頼性や耐久性が確保できる。逆に、低負荷では、ショック吸収(円滑度合い:ドライバビリティ)を優先させ、ゆっくりと滑らせながらフォワードクラッチ51をつないでいく。
【0075】
その場合に、上記スリップ領域(A〜B又はA〜B〜C)において、スロットル開度が大きいほど(エンジン負荷が高いほど)、フォワードクラッチ51のスリップ量を小さくすることが好ましい。フォワードクラッチ51をスリップ制御するにしても、高負荷時にスリップ量を小さくすることで、高負荷時に顕著化する伝達効率の低下の問題、熱の発生の問題、及び摩擦締結要素の耐久性の低下の問題が有効に抑制されるからである。また逆に、低負荷時にスリップ量を大きくすることで、低負荷時に目立ち易いトルク変動に伴うショックや振動の問題が有効に抑制されるからである。
【0076】
また特に、減速領域Gでは、全車速に亘って、フォワードクラッチ51をスリップさせるようにしたから(図8、図9参照)、定常又は加速中からのバックアウトでのショックを防止して、速やかに燃料カットを開始・実行することができる。従来は、図11に例示したように、応答性・制御性に劣るロックアップクラッチ26を一部の車速範囲において滑らせていたから、ショックなく燃料カットすることが困難であった。特に、低車速領域では、ショックが目立ち易い(乗員がショックを感じ易い)から、このような減速中におけるフォワードクラッチ51のスリップ制御は効果が大きくなる。
【0077】
なお、上記実施形態では、スリップ制御の対象としての摩擦締結要素として、フォワードクラッチ51を利用したが、前述したように、これに代えて、あるいはこれと共に、3−4クラッチ53をスリップ制御してもよい。また、変速段達成用の摩擦締結要素に限らず、始動クラッチや発進クラッチ等も好適にスリップ制御可能である。
【0078】
また、上記実施形態では、変速機が自動変速機10の場合であったが、これに代えて、無段変速機であってもよい。その場合、スリップ制御の対象としての摩擦締結要素として、前後進切換クラッチ等が好適に利用でき、さらには、ギヤードニュートラルが達成可能な無段変速機の場合は、ローモードクラッチやハイモードクラッチ等のモード切換用クラッチ等が好適に利用可能である。
【0079】
【発明の効果】
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本発明によれば、エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路上に備えられた、入出力要素間のスリップ状態が制御可能な摩擦締結要素を広範囲にスリップ制御することにより、ドライバビリティの向上等に有効活用することができる。本発明は、自動車等に搭載される自動変速機や無段変速機等の変速機一般の技術分野において幅広い産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動変速機の骨子図である。
【図2】上記自動変速機のトルクコンバータ及びロックアップクラッチの油圧制御回路を示す構造図である。
【図3】上記自動変速機のフォワードクラッチ及び油圧制御回路を示す構造図である。
【図4】上記自動変速機の制御システム構成図である。
【図5】上記ロックアップクラッチのスリップ制御とフォワードクラッチのスリップ制御との連係制御の具体的動作の1例を示すフローチャートである。
【図6】上記フォワードクラッチのスリップ制御の具体的動作の1例を示すフローチャートである。
【図7】上記ロックアップクラッチのスリップ制御の具体的動作の1例を示すフローチャートである。
【図8】上記フォワードクラッチの制御領域の設定に用いられる定常走行時用の制御マップの具体的1例を示す図である。
【図9】同じく非定常走行時用の制御マップの具体的1例を示す図である。
【図10】上記ロックアップクラッチの制御領域の設定に用いられる制御マップの具体的1例を示す図である。
【図11】同じく従来の制御マップの具体的1例を示す図である。
【図12】車両の走行状態の領域分類に用いられる領域分類マップの具体的1例を示す図である。
【図13】上記分類された領域毎の制御内容をまとめたテーブルである。
【図14】上記フォワードクラッチの締結力制御の具体的動作の1例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
10 自動変速機
30,40 遊星歯車機構
51 フォワードクラッチ(摩擦締結要素)
53 3−4クラッチ(摩擦締結要素)
81 フォワードクラッチ制御用デューティソレノイドバルブ(制御手段)
100 コントロールユニット(生成手段、判定手段、スリップ領域拡大手段)
101 スロットル開度センサ(走行状態検出手段)
104 車速センサ(走行状態検出手段)
Claims (5)
- エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路上に、入出力要素間のスリップ状態が制御可能な摩擦締結要素を備える変速機の制御装置であって、上記摩擦締結要素のスリップ状態を制御する制御手段と、該制御手段で上記摩擦締結要素を所定のスリップ状態に制御するスリップ領域をエンジン負荷及び車速に応じて生成する生成手段と、車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、該検出手段で検出された車両の走行状態が定常状態であるか非定常状態であるかを判定する判定手段と、該判定手段で車両の走行状態が非定常状態であると判定されたときは、定常状態であると判定されたときに比べて、上記生成手段で生成されるスリップ領域を拡大するスリップ領域拡大手段とを備えることを特徴とする変速機の制御装置。
- 判定手段で車両の走行状態が定常状態であると判定されたときのスリップ領域は、エンジン負荷が所定のエンジン負荷以下及び車速が所定の車速以下の領域であることを特徴とする請求項1に記載の変速機の制御装置。
- スリップ領域拡大手段は、スリップ領域を高エンジン負荷側に拡大することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の変速機の制御装置。
- スリップ領域拡大手段は、エンジン負荷が高いほど、スリップ領域と締結領域との境界を定める車速を低くすることを特徴とする請求項3に記載の変速機の制御装置。
- 制御手段は、スリップ領域において、エンジン負荷が高いほど、摩擦締結要素のスリップ量を小さくすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の変速機の制御装置。
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