JP2004258348A - 防汚処理された光学フィルムおよび該光学フィルムを表面に有する画像表示装置 - Google Patents
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- LRLFERHOMMGOSV-LAVHUSFLSA-N C/C=C\C(\[NH+](c(ccc(O)c1)c1OC)[O-])=C/C=C Chemical compound C/C=C\C(\[NH+](c(ccc(O)c1)c1OC)[O-])=C/C=C LRLFERHOMMGOSV-LAVHUSFLSA-N 0.000 description 1
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Abstract
【課題】本発明の目的は、指脂、口紅等の汚れが付着しにくく、また拭き取り容易で、フィルムの光学的特性、物理的特性を損なわない防汚処理を光学フィルムに施すことにあり、該防汚処理を施した画像表示装置用の光学フィルムを得ることにある。
【解決手段】フッ素を含まない有機溶媒で0.01〜10質量%に希釈されたフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物溶液でフィルム基材表面を防汚処理した光学フィルム。
【選択図】 なし
【解決手段】フッ素を含まない有機溶媒で0.01〜10質量%に希釈されたフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物溶液でフィルム基材表面を防汚処理した光学フィルム。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は防汚コート剤と該コート剤により表面を防汚処理した光学フィルム、該光学フィルムを用いた画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネルなどのフラットパネルディスプレイやCRTのような画像表示装置において、視認性向上のための外光映り込み防止プラスチックフィルムが提案されている。このフィルムに求められる特性として外光映り込み防止機能の他に、傷防止、埃、汚れ付着防止などの物性が必要とされる。画像表示装置に求められる汚れ防止性能としては、指脂、口紅、その他の液体が付着しにくく、拭き取りやすいことが必要とされる。このような汚れ防止のための技術として特許文献1(特開昭64−86101号公報)には、防汚性を有する有機珪素化合物を付与する方法が開示されている。しかしながらこのような有機珪素化合物を用いた方法では、撥油性が十分でなく、表面に指脂が付いたときに除去しにくい。そのため例えば特許文献2(特開2000−144097号公報)、特許文献3(特開2001−48590号公報)に開示されているように、パーフルオロアルキル基を有する化合物を表面に付与する方法が知られている。しかしながらこのような方法では、溶媒として、高額で地球温暖化要因となるフッ素含有溶媒を少なくとも使用しなければならず、昨今問題となっている環境安全性の観点から好ましくない。フッ素を含まない有機溶媒によって処理をすると、先に付着した化合物が表面エネルギーを低下させ、溶剤を弾いてしまい、表面にムラが出来てしまう。
【0003】
一方自動車、船舶の前面ガラスに撥水処理を行う方法が、例えば特許文献4(特開平9−13017号公報)に開示されている。この方法は、撥水膜をガラス表面に付与することによって、雨滴を弾いて前方の視界を確保するものである。
【0004】
【特許文献1】
特開昭64−86101号公報
【0005】
【特許文献2】
特開2000−144097号公報
【0006】
【特許文献3】
特開2001−48590号公報
【0007】
【特許文献4】
特開平9−13017号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、指脂、口紅等の汚れが付着しにくく、また拭き取り容易で、フィルムの光学的特性、物理的特性を損なわない防汚処理を光学フィルムに施すことにあり、該防汚処理を施した画像表示装置用の光学フィルムを得ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意検討を行った結果、上記目的は以下の手段によって達成されることを見いだした。
【0010】
1.フッ素を含まない有機溶媒で0.01〜10質量%に希釈されたフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物溶液でフィルム基材表面を防汚処理したことを特徴とする光学フィルム。
【0011】
2.前記フルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物において、シラン化合物中のフルオロアルキル基が、Si原子1つに対し、1つ以下の割合でSi原子と結合しており、残りは加水分解性基もしくはシロキサン結合基であることを特徴とする前記1に記載の光学フィルム。
【0012】
3.前記フルオロアルキル基を有するシラン化合物が、下記一般式(A)で表され、かつ該シラン化合物の濃度を0.01〜5質量%に希釈した溶液で防汚処理することを特徴とする前記2に記載の光学フィルム。
【0013】
一般式(A)
CF3(CF2)m(CH2)n−Si−(ORa)3
(mは1〜10の整数。nは0〜10の整数。Raは同一もしくは異なるアルキル基を表す。)
4.酸を添加してpHを5以下に調整した溶液によってフィルム基材表面を防汚処理したことを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0014】
5.前記一般式(A)で表される化合物中、Raが炭素原子数3つ以下であり炭素と水素のみからなるアルキル基であることを特徴とする前記3に記載の光学フィルム。
【0015】
6.フィルム基材の最表層がCVD法、もしくはゾルゲル法によって作製された金属酸化物層であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0016】
7.反射防止機能を有することを特徴とする前記6に記載の光学フィルム。
8.前記7に記載の光学フィルムを表面に有する画像表示装置。
【0017】
9.フッ素を含まない有機溶媒で0.01〜5質量%に希釈されたフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物溶液に、アルコキシシランまたはアルキルアルコキシシランを0.01〜15質量%添加して成した組成物によってフィルム基材表面を防汚処理したことを特徴とする光学フィルム。
【0018】
10.前記フルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物において、シラン化合物中のフルオロアルキル基が、Si原子1つに対し、1つ以下の割合でSi原子と結合されており、残りが加水分解性基もしくはシロキサン結合基であることを特徴とする前記9に記載の光学フィルム。
【0019】
11.前記フルオロアルキル基を有するシラン化合物が、前記一般式(A)で表され、かつ該シラン化合物の濃度を0.01〜5質量%に希釈した溶液で防汚処理することを特徴とする前記10に記載の光学フィルム。
【0020】
12.酸を添加してpHを5以下に調整した溶液によってフィルム基材表面を防汚処理したことを特徴とする前記9〜11のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0021】
13.有機溶媒の濃度を98質量%以上とした溶液で防汚処理することを特徴とする前記9〜12のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0022】
14.有機溶媒中、高沸点溶媒の比率を0.5〜2質量%とした溶液で防汚処理することを特徴とする前記9〜12のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0023】
15.前記一般式(A)で表される化合物中、Raが炭素原子数3つ以下であり炭素と水素のみからなるアルキル基であることを特徴とする前記11に記載の光学フィルム。
【0024】
16.フィルム基材の最表層がCVD法、もしくはゾルゲル法によって作製された金属酸化物層であることを特徴とする前記9〜15のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0025】
17.反射防止機能を有することを特徴とする前記16に記載の光学フィルム。
【0026】
18.前記17に記載の光学フィルムを表面に有する画像表示装置。
19.フッ素を含まない有機溶媒で0.01〜5質量%に希釈されたフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物溶液に、珪素イソシアネート化合物を0.01〜5質量%添加して成した組成物によってフィルム基材表面を防汚処理したことを特徴とする光学フィルム。
【0027】
20.前記フルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物において、シラン化合物中のフルオロアルキル基が、Si原子1つに対し、1つ以下の割合でSi原子と結合されており、残りが加水分解性基もしくはシロキサン結合基であることを特徴とする前記19に記載の光学フィルム。
【0028】
21.前記フルオロアルキル基を有するシラン化合物が、前記一般式(A)で表され、かつ該シラン化合物の濃度を0.01〜5質量%に希釈した溶液で防汚処理することを特徴とする前記20に記載の光学フィルム。
【0029】
22.酸を添加してpHを7以下に調整した溶液によってフィルム基材表面を防汚処理したことを特徴とする前記19〜21のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0030】
23.前記一般式(A)で表される化合物中、Raが炭素原子数3つ以下であり炭素と水素のみからなるアルキル基であることを特徴とする前記21に記載の光学フィルム。
【0031】
24.フィルム基材の最表層がCVD法、もしくはゾルゲル法によって作製された金属酸化物層であることを特徴とする前記19〜23のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0032】
25.反射防止機能を有することを特徴とする前記24に記載の光学フィルム。
【0033】
26.前記25に記載の光学フィルムを表面に有する画像表示装置。
以下、本発明の詳細について説明する。
【0034】
前記特開平9−13017号公報に記載されたような自動車用撥水コート剤は、指脂、口紅等の付着の防止、或いはその拭き取り容易性から、良好な防汚性を有している。
【0035】
本発明者らはフィルムへこれらの撥水性コートを適用し防汚処理を行うに際しての最適な条件を求めることによって、フィルムに対して良好な防汚性を有し、基材フィルムの光学的特性、物理的特性を損なわない防汚処理方法をみいだした。本発明に係わる防汚処理方法によれば表面の傷等の防止ができ、またフィルム同士の貼り付き(ブロッキング)抑制に効果がある。
【0036】
本発明に係る防汚層は、請求項1に記載のように、フッ素を含まない有機溶媒で0.01〜10質量%に希釈されたフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物溶液をコーティングして作製する。
【0037】
上記フッ素系シラン化合物としては、たとえば、信越化学社製KBM7803(ヘプタデカトリフルオロデシルトリメトキシシラン)、KBM7103(トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)などを市販品として挙げることができる。
【0038】
即ち、本発明においては、基材フィルム表面を、フッ素を含まない有機溶媒で0.01〜10質量%に希釈されたフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物溶液で防汚処理することで基材フィルムの光学特性等に影響を与えることがない。
【0039】
また、前記フルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物のなかでも、シラン化合物中のフルオロアルキル基が、Si原子1つに対し、1つ以下の割合でSi原子と結合されており、残りは加水分解性基もしくはシロキサン結合基であるシラン化合物が好ましい。
【0040】
ここでいう加水分解性の基としては、例えばアルコキシ基等の基であり、加水分解によりヒドロキシル基となり、それにより前記シラン化合物は重縮合物を形成する。
【0041】
例えば、上記シラン化合物は水と(必要なら酸触媒の存在下)、副生するアルコールを留去しながら、通常、室温〜100℃の範囲で反応させる。これによりアルコキシシランは(部分的に)加水分解し、一部縮合反応が起こり、ヒドロキシル基を有する加水分解物として得ることができる。加水分解、縮合の程度は、反応させる水の量により適宜調節することができるが、本発明ににおいては、防汚処理に用いるシラン化合物溶液に積極的には水を添加せず、調製後、主として乾燥時に、空気中の水分等により加水分解反応を起こさせるため溶液の固形分濃度を薄く希釈して用いることが好ましい。
【0042】
上記シラン化合物溶液を、防汚層形成用組成物として用いて、これを基材フィルム上に塗布し、加水分解、重縮合を基材上で進行させることで、撥水性の性質を基材フィルム表面に付与する、本発明に係わる防汚層を基材上に形成することができる。
【0043】
好ましくは、前記防汚層形成用組成物において、前記フルオロアルキル基を有するシラン化合物は下記一般式(A)で表され、かつ該シラン化合物の濃度を0.01〜5質量%に希釈した溶液として用いて、防汚処理することである
一般式(A)
CF3(CF2)m(CH2)n−Si−(ORa)3
ここにおいて、mは1〜10の整数。nは0〜10の整数。Raは同一もしくは異なるアルキル基を表す。
【0044】
前記一般式(A)で表される化合物中、Raは炭素原子数3つ以下であり炭素と水素のみからなるアルキル基、例えば、メチル、エチル、イソプロピル等の基が好ましい。
【0045】
これら本発明において好ましく用いられるフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物としては、CF3(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CH2)2Si(OC2H5)3、CF3(CH2)2Si(OC3H7)3、CF3(CH2)2Si(OC4H9)3、CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)5(CH2)2Si(OC2H5)3、CF3(CF2)5(CH2)2Si(OC3H7)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OC2H5)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OC3H7)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)(OC3H7)2、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)2OC3H7、CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3(OC2H5)2、CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3(OC3H7)2、(CF3)2CF(CF2)8(CH2)2Si(OCH3)3、C7F15CONH(CH2)3Si(OC2H5)3、C8F17SO2NH(CH2)3Si(OC2H5)3、C8F17(CH2)2OCONH(CH2)3Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)(OC2H5)2、CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)(OC3H7)2、CF3(CF2)7(CH2)2Si(C2H5)(OCH3)2、CF3(CF2)7(CH2)2Si(C2H5)(OC3H7)2、CF3(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CH2)2Si(CH3)(OC2H5)2、CF3(CH2)2Si(CH3)(OC3H7)2、CF3(CF2)5(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)5(CH2)2Si(CH3)(OC3H7)2、CF3(CF2)2O(CF2)3(CH2)2Si(OC3H7)、C7F15CH2O(CH2)3Si(OC2H5)3、C8F17SO2O(CH2)3Si(OC2H5)3、C8F17(CH2)2OCHO(CH2)3Si(OCH3)3などが挙げられるが、この限りでない。
【0046】
これらのシラン化合物を用いる際には、フッ素を含まない有機溶媒で0.01〜10質量%、好ましくは0.03〜5質量%、さらに好ましくは0.05〜2質量%に希釈された状態で用いる。
【0047】
本発明において、前記シラン化合物溶液を調製するために好ましく用いられるフッ素を含まない有機溶媒には、以下のものがあげられる。
【0048】
本発明の防汚層用の塗布組成物の溶媒としては、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテル及び/又はプロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステル、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルとしては具体的にはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなど。又、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステルとしては特にプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、具体的にはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどがあげられる。プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテル及び/又はプロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステルなど、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酪酸エチルなどのエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミドその他の溶媒などがあげられる。或いは、これらの溶媒が、適宜混合されて用いられる。混合される溶媒としては、特にこれらに限定されるものではない。
【0049】
特に好ましい範囲としては、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる1種類以上の有機溶媒である。
【0050】
これらの溶媒中には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールのような常圧における沸点が100℃未満のもの(低沸点溶媒)と、プロピレングリコールモノメチルエーテル、n−ブチルアルコールのような沸点が100℃以上のもの(高沸点溶媒)を併用することが好ましく、特に沸点が60〜98℃のものと、100〜160℃のものを併用することが好ましい。併用する場合の低沸点溶媒と高沸点溶媒の比率は、低沸点溶媒は組成物中、98.0質量%以上であり、高沸点溶媒が0.5〜2質量%であることが好ましい。
【0051】
本発明の防汚層形成用組成物においては、酸を添加してpHを5.0以下に調整し用いることが好ましい。酸は前記シラン化合物の加水分解を促し、重縮合反応の触媒として作用するので、基材表面にシラン化合物の重縮合膜の形成を容易にし、防汚性を高めることができる。pHは1.5〜5.0の範囲が良く、1.5以下では溶液の酸性が強すぎて、容器や配管をいためる恐れがあり、5以上では反応が進行しにくい。好ましくはpH2.0〜4.0の範囲である。
【0052】
本発明ににおいては、防汚処理に用いるシラン化合物溶液に積極的には水を添加せず、調製後、主として乾燥時に、空気中の水分等により加水分解反応を起こさせる。そのために溶液の固形分濃度を希釈したところで用いる。処理液に水を添加しすぎると、その分ポットライフが短くなる。
【0053】
本発明においては硫酸、塩酸、硝酸、次亜塩素酸、ホウ酸、フッ酸。好ましくは塩酸、硝酸等の無機酸のほか、スルホ基(スルホン酸基ともいう)またはカルボキシル基を有する有機酸、例えば、酢酸、ポリアクリル酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メチルスルホン酸等が用いられる。有機酸は1分子内に水酸基とカルボキシル基を有する化合物であればいっそう好ましく、例えば、クエン酸または酒石酸等のヒドロキシジカルボン酸が用いられる。また、有機酸は水溶性の酸であることが更に好ましく、例えば上記クエン酸や酒石酸の他に、レブリン酸、ギ酸、プロピオン酸、リンゴ酸、コハク酸、メチルコハク酸、フマル酸、オキサロ酢酸、ピルビン酸、2−オキソグルタル酸、グリコール酸、D−グリセリン酸、D−グルコン酸、マロン酸、マレイン酸、シュウ酸、イソクエン酸、乳酸等が好ましく用いられる。また、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、アトロバ酸等も適宜用いることができる。
【0054】
添加量は、前記シラン化合物の部分加水分解物100質量部に対して0.1質量部〜10質量部、好ましくは0.2質量部〜5質量部がよい。また、水の添加量については部分加水分解物が理論上100%加水分解し得る量以上であればよく、100%〜300%相当量、好ましくは100%〜200%相当量を添加するのがよい。
【0055】
このようにして得られた防汚層用の塗布組成物は極めて安定である。
本発明に係わる防汚処理方法においては、このように得られた前記防汚層用の塗布組成物を基材フィルム上に均一に塗布して、防汚層を形成する。塗布方法としては、何れの方法でもよく、通常のディップコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター、押し出しコーター等を用いる方法が挙げられる。また、より防汚層の防汚機能や膜付き、その他の物性をより良好なものにするために、紫外線照射、加熱処理、プラズマ処理等を行ってもよい。
【0056】
また、防汚層用の塗布組成物調製後、熟成工程を設けることより、有機珪素化合物の加水分解、縮合による架橋が充分に進み、得られた被膜の特性が優れたものとなる。熟成は、前記シラン化合物を溶解し、pH等を調整して、調製した塗布組成物溶液を放置すればよい。放置する時間は、上述の架橋が所望の膜特性を得るのに充分な程度進行する時間である。具体的には用いる触媒の種類にもよるが、硝酸では室温で1時間以上、酢酸では数時間以上、8時間〜1週間程度で充分であり、通常3日前後である。熟成温度は熟成時間に影響を与え、極寒地では20℃付近まで加熱する手段をとった方がよいこともある。一般に高温では熟成が早く進むが、100℃以上に加熱するとゲル化が起こるので、せいぜい50〜60℃までの加熱が適切である。
【0057】
フッ素含有のシラン化合物を基材フィルムに適用することによって、防汚層の低屈折率化及び撥水・撥油性付与の点で好ましいのみでなく、耐傷性が高く、またフィルム同士のブロッキングに特に優れるという効果がある。
【0058】
本発明においては、前記フルオロアルキル基を有するシラン化合物を含有する、フッ素を含まない有機溶媒溶液に、更に、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシランを添加して成した組成物を用いると更に好ましい。
【0059】
これらのフッ素を含有しないアルコキシシラン、アルキルアルコキシシランの例としては、公知のいずれのシラン化合物でもよいが、代表的な例を以下に挙げる。
【0060】
これらの例としては、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)、アルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等)、ジアルキルジアルコキシシラン等が挙げられる。
【0061】
これらのアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン類は、前記防汚層用の塗布組成物調製の際に、前記フッ素を含有のシラン化合物に加えて、前記0.01〜15質量%の範囲で混合して用いればよく、同様に加水分解、縮合することで、前記記フッ素を含有のシラン化合物と共に重縮合した一体となった膜を形成する。
【0062】
これらのアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン類を前記フッ素を含有のシラン化合物と混合して用いることで、膜強度を高め、耐傷性や重ねたときのブロッキン防止に更に効果がある。
【0063】
また、更に、フルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物溶液に、珪素イソシアネート化合物を0.01〜5質量%添加して成した組成物を用いることも、形成される防汚層の膜強度を更に改善し、表面の傷付きの防止やまた、フィルム同士を重ねた際の貼り付き(ブロッキング)の抑制により一層の効果を奏する。
【0064】
本発明で用いられる珪素イソシアネート化合物としては、Si(NCO)4、CH3Si(NCO)3、(CH3)2Si(NCO)2、(CH3)3SiNCO、CH2=CHSi(NCO)3、C2H5Si(NCO)3、などが挙げられるが、好ましくはSi(NCO)4、CH3Si(NCO)3であり、本発明の課題である環境安全性の観点からSi(NCO)4であることがさらに好ましい。
【0065】
これらの珪素イソシアネート化合物を前記の量、防汚層形成組成物中に混合させることで、前記シラン化合物による架橋反応をより完全に行うことができ前記膜物性の改良効果が大きい。これらの化合物は、加水分解には関与しないが、加水分解により形成した水酸基(シラノール基)と反応することで前記シラノール基同士の縮合を補完し膜を強固なものとする。
【0066】
これら珪素イソシアネート化合物を用いる際の有機溶媒についても前記フッ素を含有しない有機溶媒をそのまま用いればよいが、前記あげられた有機溶媒のうち、珪素イソシアネート化合物を混合して用いる際には、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒が特に好ましい。
【0067】
また、珪素イソシアネート化合物を混合して用いる際には、pHが7.0以下であればよく、2.0〜7.0の範囲が良い。pHが7.0以上では前記シラノール基との反応が進行しにくくなる。中でも好ましくはpHが3.0〜6.0の範囲である。
【0068】
防汚層の屈折率は1.30〜1.50であることが好ましく、更に好ましくは、1.35〜1.49である。1.30以下であると、膜硬度がとれず、1.50以上であると表面反射率が増大してしまう。またフルオロアルキル基を含有するシラン化合物の加水分解重縮合物から形成される樹脂を構成成分とする防汚層は、動摩擦係数が0.03〜0.25の範囲が好ましい。
【0069】
本発明の光学フィルムは、長尺フィルム上に直接または他の層を介して金属酸化物層を形成するが、樹脂硬化層あるいは他の層を介して形成することがより好ましい。上記のようにして得られた長尺フィルム上には、熱硬化樹脂層あるいは活性線硬化樹脂層を形成することが好ましく、特に紫外線硬化樹脂層を設けることが好ましい。
【0070】
樹脂硬化層は、種々の機能を有していてもよく、例えば、クリアハードコート層であってもよく、また帯電防止機能を有していてもよい。樹脂硬化層はエチレン性不飽和結合を有するモノマーを1種以上含む成分を重合させて形成した層であることが好ましい。エチレン性不飽和結合を有するモノマーを含む成分を重合させて形成した樹脂層としては、活性線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂を硬化させて形成された層が好ましく用いられるが、特に好ましく用いられるのは活性線硬化樹脂層である。ここで、活性線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。
【0071】
活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。
【0072】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0073】
具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
【0074】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させる容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151110号に記載のものを用いることができる。
【0075】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させる容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号に記載のものを用いることができる。
【0076】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号に記載のものを用いることができる。
【0077】
これらの光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及び誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。
【0078】
上記光反応開始剤も光増感剤としても使用できる。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。
【0079】
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
【0080】
本発明において使用し得る市販品の紫外線硬化樹脂としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC700、RC750(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用できる。
【0081】
これらの活性線硬化樹脂層は公知の方法で塗設することができる。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化させるための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm2程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cm2である。近紫外線領域〜可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることによって効率よく形成することができる。
【0082】
紫外線硬化樹脂層組成物塗布液の有機溶媒としては、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、あるいはこれらを混合し利用できる。例えば、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5質量%〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0083】
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、前述のものを用いることができる。塗布量はウェット膜厚として0.1μm〜30μmが適当で、好ましくは、0.5μm〜15μmである。紫外線硬化性樹脂組成物は塗布乾燥中または後に、紫外線を照射するのがよく、照射時間としては0.5秒〜5分が好ましく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率または作業効率の観点から3秒〜2分がより好ましい。
【0084】
硬化樹脂層塗布液には、ブロッキングを防止するため、また導電性を付与するため、また対擦り傷性等を高めるために、無機化合物あるいは有機化合物の微粒子を加えることもでき、それらの種類としては、前述のマット剤の微粒子とほぼ同様である。これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.005〜5μmが好ましく0.01〜1μmであることが特に好ましい。紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、該樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましい。
【0085】
紫外線硬化樹脂層はJIS−B−0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が1〜50nmのクリアハードコート層であってもよい。また、紫外線硬化樹脂層の屈折率は1.45〜1.7、好ましくは1.49〜1.65であることが好ましい。
【0086】
《長尺フィルム》
本発明に係る長尺フィルムについて説明する。
【0087】
本発明に係る長尺フィルムとしては、製造が容易であること、または反射防止層等との接着性が良好である、光学的に等方性である、光学的に透明であること等が好ましい要件として挙げられる。
【0088】
上記の性質を有していれば特に限定はないが、例えば、セルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムまたはアクリルフィルム等を挙げることができる。また、アートン(R)(JSR株式会社製)で知られるノルボルネンフィルム、ゼオノア(R)(日本ゼオン株式会社製)で知られるシクロオレフィン樹脂フィルム等もあげることができる。中でも、セルローストリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)が好ましく、本発明においては、特にセルローストリアセテートフィルム(例えばコニカタック 製品名KC8UX2MW、KC4UX2MW(コニカ(株)製)が好ましく用いられる。)またはセルロースアセテートプロピオネートフィルムが、製造上、コスト面、透明性、等方性、接着性等の観点から好ましく用いられる。
【0089】
基材フィルム支持体の光学特性としては膜厚方向のリターデーションRtが0nm〜300nm、面内方向のリターデーションR0が0nm〜1000nmのものが好ましく用いられる。
【0090】
(セルロースエステルフィルム)
低い反射率の積層体が得られるため、基材フィルムとしてはセルロースエステルフィルムを用いることが好ましい。セルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく、中でもセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。
【0091】
特にアセチル基の置換度をX、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとしたとき、XとYが下記の範囲にあるセルロースの混合脂肪酸エステルを有する支持体上に凹凸層と高屈折率層及び低屈折率層を設けた低反射フィルムが好ましく用いられる。
【0092】
2.3≦X+Y≦3.0
0.1≦Y≦1.2
特に、2.5≦X+Y≦2.85
0.3≦Y≦1.2であることが好ましい。
【0093】
本発明に係る支持体として、セルロースエステルを用いる場合、セルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。これらのセルロースエステルは、アシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いてセルロース原料と反応させて得ることができる。
【0094】
アシル化剤が酸クロライド(CH3COCl、C2H5COCl、C3H7COCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には、特開平10−45804号に記載の方法等を参考にして合成することができる。また、本発明に用いられるセルロースエステルは各置換度に合わせて上記アシル化剤量を混合して反応させたものであり、セルロースエステルはこれらアシル化剤がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度(モル%)という。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している(実際には2.6〜3.0)。
【0095】
本発明に用いられるセルロースエステルとしては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基またはブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルが特に好ましく用いられる。なお、ブチレートを形成するブチリル基としては、直鎖状でも分岐していてもよい。
【0096】
プロピオネート基を置換基として含むセルロースアセテートプロピオネートは耐水性に優れ、液晶画像表示装置用のフィルムとして有用である。
【0097】
アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することができる。
【0098】
セルロースエステルの数平均分子量は、70,000〜250,000が、成型した場合の機械的強度が強く、且つ、適度なドープ粘度となり好ましく、更に好ましくは、80,000〜150,000である。
【0099】
(流延製膜法による支持体の作製)
これらセルロースエステルは後述するように一般的に溶液流延製膜法と呼ばれるセルロースエステル溶解液(ドープ)を、例えば、無限に移送する無端の金属ベルトまたは回転する金属ドラムの流延用支持体上に加圧ダイからドープを流延(キャスティング)し製膜する方法で製造されることが好ましい。
【0100】
これらドープの調製に用いられる有機溶媒としては、セルロースエステルを溶解でき、かつ、適度な沸点であることが好ましく、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができるが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。
【0101】
また、下記の製膜工程に示すように、溶媒蒸発工程において流延用支持体上に形成されたウェブ(ドープ膜)から溶媒を乾燥させるときに、ウェブ中の発泡を防止する観点から、用いられる有機溶媒の沸点としては、30〜80℃が好ましく、例えば、上記記載の良溶媒の沸点は、メチレンクロライド(沸点40.4℃)、酢酸メチル(沸点56.32℃)、アセトン(沸点56.3℃)、酢酸エチル(沸点76.82℃)等である。
【0102】
上記記載の良溶媒の中でも溶解性に優れるメチレンクロライド、酢酸メチルが好ましく用いられ、特にメチレンクロライドが全有機溶媒に対して50質量%以上含まれていることが好ましい。
【0103】
上記有機溶媒の他に、0.1質量%〜30質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。特に好ましくは5〜30質量%で前記アルコールが含まれることが好ましい。これらは上記記載のドープを流延用支持体に流延後、溶媒が蒸発を始めアルコールの比率が多くなるとウェブ(ドープ膜)がゲル化し、ウェブを丈夫にし流延用支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。
【0104】
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることができる。
【0105】
これらの溶媒のうち、ドープの安定性がよく、沸点も比較的低く、乾燥性もよく、且つ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。好ましくは、メチレンクロライド70質量%〜95質量%に対してエタノール5質量%〜30質量%を含む溶媒を用いることが好ましい。メチレンクロライドの代わりに酢酸メチルを用いることもできる。このとき、冷却溶解法によりドープを調製してもよい。
【0106】
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムは少なくとも幅手方向に延伸されたものが好ましく、特に溶液流延工程で剥離残溶量が3質量%〜40質量%であるときに幅手方向に1.01倍〜1.5倍に延伸されたものであることが好ましい。より好ましくは幅手方向と長手方向に2軸延伸することであり、剥離残溶量が3質量%〜40質量%であるときに幅手方向及び長手方向に、各々1.01倍〜1.5倍に延伸されることが望ましい。こうすることによって、視認性に優れた低反射フィルムを得ることが出来る。更に、2軸延伸し、後述のナーリング加工をすることによって、長尺状低反射フィルムのロール状での保管中の巻き形状の劣化を著しく改善することができる。
【0107】
このときの延伸倍率としては1.01倍〜1.5倍が好ましく、特に好ましくは、1.03倍〜1.45倍である。
【0108】
更に好ましくは後述する裏面側の突起の数が所定範囲内に調整することにより、ロール状の低反射フィルムの保管安定性の向上効果が得られる。
【0109】
(支持体の透過率)
本発明に係る二軸延伸されたセルロースエステルフィルムは、光透過率が90%以上、より好ましくは93%以上の透明支持体であることが好ましい。
【0110】
(支持体の膜厚と透湿性)
本発明に係るセルロースエステルフィルム支持体は、その厚さが10μm〜100μmのものが好ましく、透湿性は、25℃、90±2%RHにおいて、200g/m2・24時間以下であることが好ましく、更に好ましくは、10〜180g/m2・24時間以下であり、特に好ましくは、160g/m2・24時間以下である。
【0111】
特には、膜厚10μm〜60μmで透湿性が上記範囲内であることが好ましい。
【0112】
ここで、支持体の透湿性は、JIS Z 0208に記載の方法に従い、各試料の透湿性を測定した。
【0113】
(長尺フィルム)
本発明に係る長尺フィルムとは、具体的には、100m〜5000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。更に、上記の長尺フィルムは下記に記載のナーリング加工を施すことがこのましい。ここで、ナーリング加工について説明する。
【0114】
《ナーリング加工》
本発明では、上記の長尺フィルムの幅方向の両端に凹凸を付与して端部を嵩高くするいわゆるナーリング加工が施されていることが好ましい。ここで、ナーリング高さとは、下記のように定義される。
【0115】
ナーリング高さa(μm)のフィルム膜厚d(μm)に対する比率X(%)=(a/d)×100
本発明においては、X=1%〜25%の範囲であることが好ましく、5%〜20%が更に好ましく、10%〜15%が特に好ましい。
【0116】
また、本発明においては、上記のナーリング加工は、フィルムの製膜工程において乾燥終了後、巻き取りの前に設けることが好ましい。
【0117】
(可塑剤)
本発明の低反射フィルムの支持体にセルロースエステルフィルムを用いる場合、下記のような可塑剤を含有するのが好ましい。可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等を好ましく用いることができる。
【0118】
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることができる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
【0119】
ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることができる。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等を用いることができる。グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール等を用いることができる。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0120】
特に、特願2000−338883記載のエポキシ系化合物、ロジン系化合物、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ケトン樹脂、トルエンスルホンアミド樹脂等の添加物を有するセルロースエステルも好ましく用いられる。
【0121】
具体的には、ロジン及びロジン誘導体としては、以下の構造式のものが挙げられる。
【0122】
【化1】
【0123】
上記化合物のうち、KE−604とKE−610は荒川化学工業(株)からそれぞれ酸価237と170で市販されている。同じく、荒川化学工業(株)からアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸及びパラストリン酸3者の混合物のエステル化物として、KE−100及びKE−356が、それぞれの酸価は8と0で市販されている。また、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸及びパラストリン酸3者の混合物は、播磨化成(株)からそれぞれの酸価167、168のG−7及びハートールR−Xで市販されている。
【0124】
本発明に用いるエポキシ樹脂としては、以下の構造を有するものが挙げられる。
【0125】
【化2】
【0126】
アラルダイドEPN1179及びアラルダイドAER260は旭チバ(株)から市販されている。
【0127】
ケトン樹脂としては、以下の構造のものが挙げられる。
【0128】
【化3】
【0129】
ハイラック110及びハイラック110Hは日立化成(株)から市販されている。
【0130】
パラトルエンスルホンアミド樹脂としては、以下の構造のものが挙げられ、トップラーとして、フジアミドケミカル(株)から市販されている。
【0131】
【化4】
【0132】
これらの可塑剤は単独または併用するのが好ましい。
これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1質量%〜20質量%が好ましく、特に好ましくは、3質量%〜13質量%である。
【0133】
(紫外線吸収剤)
本発明に係る支持体に用いられる紫外線吸収剤について説明する。低反射フィルム用の支持体には、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0134】
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
【0135】
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、下記一般式〔1〕で示される化合物が好ましく用いられる。
【0137】
【化5】
【0138】
式中、R1、R2、R3、R4及びR5は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシル基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基または5〜6員の複素環基を表し、R4とR5は閉環して5〜6員の炭素環を形成してもよい。
【0139】
また、上記記載のこれらの基は、任意の置換基を有していてよい。
以下に、本発明に係る紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0140】
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、Ciba製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、Ciba製)
また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記一般式〔2〕で表される化合物が好ましく用いられる。
【0141】
【化6】
【0142】
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、及びフェニル基を表し、これらのアルキル基、アルケニル基及びフェニル基は置換基を有していてもよい。Aは水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基または−CO(NH)n−1−D基を表し、Dはアルキル基、アルケニル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。m及びnは1または2を表す。
【0143】
上記において、アルキル基としては、例えば、炭素数24までの直鎖または分岐の脂肪族基を表し、アルコキシル基としては例えば、炭素数18までのアルコキシル基を表し、アルケニル基としては例えば、炭素数16までのアルケニル基でアリル基、2−ブテニル基等を表す。また、アルキル基、アルケニル基、フェニル基への置換基としてはハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等、ヒドロキシル基、フェニル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等を置換していてもよい)等が挙げられる。
【0144】
以下に一般式〔2〕で表されるベンゾフェノン系化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0145】
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤としては、透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
【0146】
また、特開2001−187825に記載されている分配係数が9.2以上の紫外線吸収剤は、支持体の面品質を向上させ、塗布性にも優れている。特に分配係数が10.1以上の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
【0147】
また、特開平6−148430号に記載の一般式(1)または一般式(2)、特願2000−156039の一般式(3)、(6)、(7)記載の高分子紫外線吸収剤(または紫外線吸収性ポリマー)も好ましく用いられる。高分子紫外線吸収剤としては、PUVA−30M(大塚化学(株)製)等が市販されている。
【0148】
本発明に用いられる紫外線吸収剤添加液の添加方法としては、下記に記載の方法が挙げられる。
【0149】
《添加方法A》
紫外線吸収剤添加液の調製方法としては、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶剤に紫外線吸収剤を溶解してから直接ドープ組成中に添加する。
【0150】
《添加方法B》
紫外線吸収剤添加液の調製方法としては、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶剤に紫外線吸収剤と少量のセルロースエステルを溶解してからインラインミキサーでドープに添加する。
【0151】
本発明においては、添加方法Bの方が、紫外線吸収剤の添加量を容易に調整できるため、生産性に優れていて好ましい。
【0152】
紫外線吸収剤の使用量は化合物の種類、使用条件などにより一様ではないが、通常はセルロースエステルフィルム1m2当り、0.2〜2.0gが好ましく、0.4〜1.5gがさらに好ましく、0.6〜1.0gが特に好ましい。
【0153】
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムには滑り性を付与するために微粒子を添加することができる。微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
【0154】
無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースエステル積層フィルムの濁度を低減できるので、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
【0155】
二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
【0156】
酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
【0157】
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。
【0158】
上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0159】
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムに添加される微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5nm〜16nmであり、特に好ましくは、5nm〜12nmである。これらの微粒子は0.1μm〜5μmの粒径の2次粒子を形成してセルロースエステルフィルムに含まれることが好ましく、好ましい平均粒径は0.1μm〜2μmであり、更に好ましくは0.2μm〜0.6μmである。これにより、フィルム表面に高さ0.1μm〜1.0μm程度の凹凸を形成し、これによってフィルム表面に適切な滑り性を与えることが出来る。
【0160】
本発明に用いられる微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって、1次平均粒子径とした。
【0161】
微粒子の見掛比重としては、70g/リットル以上が好ましく、更に好ましくは、90〜200g/リットルであり、特に好ましくは、100〜200g/リットルである。見掛比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましく、また、本発明のように固形分濃度の高いドープを調製する際には、特に好ましく用いられる。
【0162】
1次粒子の平均径が20nm以下、見掛比重が70g/リットル以上の二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることができる。また例えばアエロジル200V、アエロジルR972V(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、それらを使用することができる。
【0163】
上記記載の見掛比重は二酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーに採り、この時の重さを測定し、下記式で算出したものである。
【0164】
見掛比重(g/リットル)=二酸化珪素質量(g)/二酸化珪素の容積(リットル)
本発明に用いられる微粒子の分散液を調製する方法としては、例えば以下に示すような3種類が挙げられる。
【0165】
《調製方法A》
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて撹拌する。
【0166】
《調製方法B》
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に溶剤に少量のセルローストリアセテートを加え、撹拌溶解する。これに前記微粒子分散液を加えて撹拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0167】
《調製方法C》
溶剤に少量のセルローストリアセテートを加え、撹拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0168】
調製方法Aは二酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点で優れている。中でも、上記記載の調製方法Bは二酸化珪素微粒子の分散性と、二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
【0169】
《分散方法》
二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5質量%〜30質量%が好ましく、10質量%〜25質量%がさらに好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0170】
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0171】
セルロースエステルに対する二酸化珪素微粒子の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、二酸化珪素微粒子は0.01質量部〜0.3質量部が好ましく、0.05質量部〜0.2質量部がさらに好ましく、0.08質量部〜0.12質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方がヘイズが低く、凝集物も少ない点が優れている。
【0172】
分散機は通常の分散機が使用できる。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。二酸化珪素微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどがあげられる。
【0173】
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1μm〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.807MPa以上であることが好ましい。更に好ましくは19.613MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
【0174】
上記のような高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)あるいはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)社製UHN−01等が挙げられる。
【0175】
また、微粒子を含むドープを流延支持体に直接接するように流延することが、滑り性が高く、ヘイズが低いフィルムが得られるので好ましい。
【0176】
又、ロール状に巻き取られた後、出荷されるまでの間、汚れや静電気によるゴミ付着等から製品を保護するために通常、包装加工がなされる。この包装材料については、上記目的が果たせれば特に限定されないが、フィルムからの残留溶媒の揮発を妨げないものが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、紙、各種不織布等が挙げられる。繊維がメッシュクロス状になったものは、より好ましく用いられる。
【0177】
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、複数のドープを用いた共流延法等による多層構成を有するものであってもよい。
【0178】
共流延とは、異なったダイを通じて2層または3層構成にする逐次多層流延方法、2つまたは3つのスリットを有するダイ内で合流させ2層または3層構成にする同時多層流延方法、逐次多層流延と同時多層流延を組み合わせた多層流延方法のいずれであっても良い。
【0179】
本発明に係るセルロースエステルフィルムの作製に用いられる好ましい製造装置の例を図1を用いて説明する。
【0180】
図1において、エンドレスステンレスベルト1は、乾燥ゾーン3と乾燥ゾーン4の間を循環している。ドープ組成物は、ダイ2から流延部5でエンドレスステンレスベルト1の上に流延され、矢印方向に運ばれ、乾燥ゾーン3と乾燥ゾーン4で、乾燥され、剥離部6で剥離ロール7によりエンドレスステンレスベルト1から剥離される。剥離されたフィルムは、更に第1乾燥ゾーン8を通り、第2乾燥ゾーン8′から、第3乾燥ゾーン8″へ運ばれ、製品として巻き取り部Wで巻き取られる。尚、第1乾燥ゾーン8と第3乾燥ゾーン8″は、パスを長くとるため、搬送ロール9により搬送される。
【0181】
第2乾燥ゾーンにおいては、テンター等の延伸手段により幅手または、幅手と長手の両方向に延伸される。
【0182】
又、本発明で用いられるセルロースエステルは、フィルムにしたときの輝点異物が少ないものが、支持体として好ましく用いられる。本発明において、輝点異物とは、2枚の偏光板を直交に配置し(クロスニコル)、この間にセルロースエステルフィルムを配置して、一方の面から光源の光を当てて、もう一方の面からセルロースエステルフィルムを観察したときに、光源の光がもれて見える点のことである。
【0183】
このとき評価に用いる偏光板は、輝点異物がない保護フィルムで構成されたものであることが望ましく、偏光子の保護にガラス板を使用したものが好ましく用いられる。輝点異物の発生は、セルロースエステルに含まれる未酢化のセルロースがその原因の1つと考えられ、対策としては、未酢化のセルロース量の少ないセルロースエステルを用いることや、また、セルロースエステルを溶解したドープ液の濾過等により、除去、低減が可能である。又、フィルム膜厚が薄くなるほど単位面積当たりの輝点異物数は少なくなり、フィルムに含まれるセルロースエステルの含有量が少なくなるほど輝点異物は少なくなる傾向がある。
【0184】
輝点異物は、輝点の直径0.01mm以上のものが200個/cm2以下であることが好ましく、更に好ましくは、100個/cm2以下、50個/cm2以下、30個/cm2以下、10個/cm2以下であることが好ましいが、特に好ましくは、0であることである。
【0185】
又、0.005mm〜0.01mmの輝点についても200個/cm2以下であることが好ましく、更に好ましくは、100個/cm2以下、50個/cm2以下、30個/cm2以下、10個/cm2以下であることが好ましいが、特に好ましいのは、輝点が0の場合である。0.005mm以下の輝点についても少ないものが好ましい。
【0186】
輝点異物を濾過によって除去する場合、セルロースエステルを単独で溶解させたものを濾過するよりも可塑剤を添加混合した組成物を濾過することが輝点異物の除去効率が高く好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知のものが好ましく用いられるが、セラミックス、金属等も好ましく用いられる。絶対濾過精度としては50μm以下のものが好ましく、更に好ましくは、30μm以下、10μm以下であるが、特に好ましくは、5μm以下のものである。
【0187】
これらは、適宜組み合わせて使用することもできる。濾材はサーフェースタイプでもデプスタイプでも用いることができるが、デプスタイプの方が比較的目詰まりしにくく好ましく用いられる。
【0188】
《バックコート層》
(支持体のバックコート層の突起)
本発明の低反射フィルムは、支持体の一方の面には凹凸層、反射防止層等を有するが、もう一方の面(裏面ともいう)には、表面からの高さが、0.1μm以上の突起を10個〜500個/100μm2有することが好ましく、更に好ましくは、50個〜500個/100μm2であり、特に好ましくは、100個〜450個/100μm2である。
【0189】
ここで、表面の突起数の測定は、光学干渉式表面粗さ計(例えば、WYKO社製 RST PLUS)を用い、フィルム表面から高さ0.1μm以上の突起の数をカウントすることができる。
【0190】
このような裏面側の突起は、あらかじめフィルム中に微粒子を添加する方法、あるいは微粒子を含有する塗布液を塗設してバックコート層を設ける方法によって形成することが出来る。突起の数や大きさは微粒子の添加量や分散状態を制御することによって制御することができる。
【0191】
これによって、各光学干渉層塗設中に一旦ロール状に巻き取りをしてもブロッキングの発生が防止できるだけでなく、次の光学干渉層を塗設する際の塗布むらを著しく低減することができる。塗布むらの原因は完全に明らかにはなっていないが、原因の1つとしてロール状に巻き取ったフィルムを塗布工程に送り出す際の剥離帯電が関係していると推測される。基材フィルム中に微粒子を添加することで、裏面に高さ0.1μm〜10μmの突起を10個〜500個/100μm2有するようにすることができる。このとき、基材フィルムを多層構成として、表層のみに微粒子を含ませることもできる。
【0192】
裏面の突起を上記の範囲に調整することにより、長尺ロール状の低反射フィルムの保管性の改善に効果がある。
【0193】
バックコート層には、樹脂と微粒子が含まれていることが好ましく、添加する微粒子の種類としては、有機化合物でも無機化合物でもよく、例えば、二酸化けい素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を含有させることが好ましい。中でも二酸化けい素がフィルムのヘイズを小さくできるので好ましい。微粒子の2次粒子の平均粒径は0.1μm〜10μmで、その含有量は基材のセルロースエステルに対して0.04質量%〜0.3質量%が好ましい。二酸化けい素のような微粒子には有機物により表面処理されている場合が多いが、これはフィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類(特にメチル基を有するアルコキシシラン類)、シラザン、シロキサン等が挙げられる。微粒子の平均粒径は大きい方がマット効果が大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は5nm〜50nmで、より好ましくは7〜16nmである。二酸化けい素の微粒子としてはアエロジル(株)製のAEROSIL(アエロジル)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600等を挙げることができ、好ましくはAEROSIL(アエロジル)200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することができる。この場合、平均粒径や材質の異なる微粒子、例えば、AEROSIL(アエロジル)200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で使用できる。
【0194】
この塗布組成物には樹脂を含ませることができ、ここで用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体または共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等のセルロースエステル系樹脂、マレイン酸及び/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン共重合体、メチルメタクリレート/ブタジエン/スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン/ブタジエン樹脂、ブタジエン/アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。アクリル樹脂としては、アクリペットMD、VH、MF、V(以上、三菱レーヨン(株)製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(以上、根上工業(株)製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118(以上、三菱レーヨン(株)製)等が用いられる。特に好ましくはジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートのようなセルロースエステル樹脂が用いられる。
【0195】
添加する微粒子の添加量、粒径を調整することによって裏面の突起数を調整することが出来る。また、反射防止層(光学干渉層ともいう)の裏面側に微粒子を含む層を塗設することによって、裏面に高さ0.1μm〜10μmの突起を1〜500個/0.01mm2有する低反射フィルムを提供することができる。
【0196】
上記のような樹脂、微粒子の混合組成物を溶解、膨潤または分散させる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルム等がある。溶解させない溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール等が挙げられる。
【0197】
本発明に用いられるバックコート層には、アンチカール機能を付与することもできる。具体的には支持体を溶解させる溶媒または膨潤させる溶媒を含む組成物を塗布することによって行われる。用いる溶媒としては、溶解させる溶媒または膨潤させる溶媒の混合物の他、さらに溶解させない溶媒を含む場合もある。これらを樹脂フィルムのカール度や樹脂の種類によって適宜選択した割合で混合した組成物及び塗布量を用いて行う。
【0198】
カール防止機能を強めたい場合は、溶解させる溶媒または膨潤させる溶媒の混合比率を大きくし、溶解させない溶媒の比率を小さくするのが効果的である。この混合比率は好ましくは、(溶解させる溶媒または膨潤させる溶媒):(溶解させない溶媒)=10:0〜1:9で用いられる。
【0199】
これらの塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースロールコーター、押し出しコーター等を用いて基材の表面にウェット膜厚1μm〜100μm塗布するのが好ましいが、特に5〜30μmであるとよい。
【0200】
本発明に用いられるバックコート層を塗設する順番は、反射防止層を塗設する前であることが好ましく、更に好ましくは、凹凸層を設ける前に支持体上に設けることである。
【0201】
本発明の低反射フィルムに設けられる各層の組成物の塗布方法としては、ディッピング、スピンコート、ナイフコート、バーコート、エアードクターコート、ブレードコート、スクイズコート、リバースロールコート、グラビアロールコート、カーテンコート、スプレイコート、ダイコート等の公知の塗布方法を用いてことができ、連続塗布または薄膜塗布が可能な塗布方法が好ましく用いられる。
【0202】
前記組成物を基材に塗布する際、塗布液中の固形分濃度や塗布量を調整することにより、層の膜厚及び塗布均一性等をコントロールすることができる。
【0203】
本発明に用いる基材フィルムは、例えば、これが低反射フィルムである場合、反射防止層の中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の各塗布組成物を塗布する時に、塗布部(コーター部分)や乾燥ゾーンの空気中の水分量を制御することが好ましい。塗布時の空気中の水分量制御としては、露点で調整することが容易であり、露点が5℃以上16℃以下が好ましく、9℃以上12℃以下が特に好ましい。露点が5℃以下になると、塗布した膜がもろく傷が入りやすくなり、好ましくない。また、露点が高すぎるとブラッシングが発生し、塗布層が白濁してしまう。塗布時に空気中にある水分が被膜の硬度を上げ、低反射フィルムの高温耐久性を向上していることが判った。この塗布時の露点管理によって、表面粗さRa0.08μm〜0.5μmの低反射フィルムだけでなく、表面粗さ0.01μm〜0.08nm未満の低反射フィルムでも同様の効果を得ることが出来る。
【0204】
裏面側に前記微粒子を含有するバックコート層を設けることも好ましく、また添加する微粒子の大きさや添加量、材質等によって動摩擦係数を調整することができる。バックコート層を設けることにより、動摩擦係数を0.9以下にすることができる。
【0205】
本発明において、基材フィルムは、反射防止加工の他、例えばブロッキング防止加工、クリアハード加工、帯電防止加工、カール防止加工、易接着加工等表面加工されていてもよい。
【0206】
基材フィルムの最表面に形成される金属酸化物層としては、たとえば、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、Fe2O3、Fe3O4、CuO、SiO、SiO2、SnO2、In2O3、In−Sn−O(ITO)、As−Sn−O(ATO)などからなる層が挙げられる。また、金属、酸素以外の成分、例えば炭素、窒素、フッ素を含んでいても構わない。ただし、好ましくはSiO2、SnO2、TiO2、In−Sn−O、特に好ましくはSiO2である。
【0207】
これらのうち、本発明においては、特に反射防止加工されたフィルムが好ましく、透明基材フィルム上に、ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層等の金属酸化物層を含有する層がこの順序の層構成で積層されているものが好ましい。
【0208】
反射防止加工としては、透明基材フィルム上にハードコート層、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の順の層構成も好ましい構成であるが、本発明は特にこられの構成に限定されない。
【0209】
反射防止フィルムにおいて、基材フィルムの最表層の金属酸化物層は低屈折率層であり、従って、本発明の一態様においては、低屈折率層上に防汚層を塗設形成するものである。
【0210】
本発明に係わる反射防止フィルムにおいては、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が0.01μm〜1μmの硬化樹脂層(ハードコート層)を設けることが好ましい。これらは紫外線等の光により硬化する光硬化性樹脂層であることが好ましい。このような紫外線で硬化された樹脂層の上に本発明に係る金属酸化物層を形成させ、次いで、前記金属酸化物層を設け、最上層に上記の防汚層を設けることにより擦り傷耐性に優れた(耐傷性に優れるともいう)、クッツキ難い、反射防止フィルムを得ることができる。
【0211】
金属酸化物層を設ける方法は特に限定されず、ゾルゲル法を用いて塗布により、或いはCVD法、スパッタ、蒸着等によって形成することができるが、本発明においては、例えば、低屈折率層等の最表層の金属酸化物層については、特にCVD法、或いはゾル−ゲル法により作製されることが好ましい。
【0212】
(金属酸化物層を塗設により設ける方法)
金属酸化物層を塗設によって形成する方法について説明する。
【0213】
本発明の反射防止フィルムの基本的な構成において、透明支持体、中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
【0214】
低屈折率層の屈折率<透明支持体の屈折率<中屈折率層の屈折率<高屈折率層の屈折率。
【0215】
中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層を有する反射防止フィルムでは、特開昭59−50401号に記載されているように、中屈折率層が下記数式(1)を、高屈折率層が下記数式(2)を、低屈折率層が下記数式(3)をそれぞれ満足することにより、反射防止フィルムとしての平均反射率をさらに下げる設計が可能となり好ましい。
【0216】
(hλ/4)×0.7<n3d3<(hλ/4)×1.3・・・数式(1)
数式(1)中、hは正の整数(一般に1、2または3)であり、n3は中屈折率層の屈折率であり、そして、d3は中屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、350〜800(nm)の範囲の値である。
【0217】
(jλ/4)×0.7<n4d4<(jλ/4)×1.3・・・数式(2)
数式(2)中、jは正の整数(一般に1、2または3)であり、n4は高屈折率層の屈折率であり、そして、d4は高屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、350〜800(nm)の範囲の値である。
【0218】
(kλ/4)×0.7<n5d5<(kλ/4)×1.3・・・数式(3)
数式(3)中、kは正の奇数(一般に1)であり、n5は低屈折率層の屈折率であり、そして、d5は低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、350〜800(nm)の範囲の値である。
【0219】
この他、透明支持体、ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の順の層構成も好ましい構成であるが、本発明は特にこられの構成に限定されない。
【0220】
〈高屈折率層及び中屈折率層〉
本発明においては、反射率の低減のために、透明支持体若しくはハードコート層を付与した透明支持体と低屈折率層との間に、高屈折率層を設けることが好ましい。また、透明支持体と高屈折率層との間に中屈折率層を設けることは、反射率の低減のために好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.55〜2.30であることが好ましく、1.57〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、透明支持体の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.55〜1.80であることが好ましい。高屈折率層及び中屈折率層の厚さは、5nm〜1μmであることが好ましく、10nm〜0.2μmであることがさらに好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。高屈折率層及び中屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。高屈折率層及び中屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。高屈折率層及び中屈折率層は、無機微粒子とバインダーポリマーとを含むことが好ましい。
【0221】
高屈折率層及び中屈折率層に無機微粒子を用いる場合は、無機微粒子の屈折率は1.80〜2.80であることが好ましく、1.90〜2.80であることがさらに好ましい。無機微粒子の一次粒子の重量平均径は、1〜150nmであることが好ましく、1〜100nmであることがさらに好ましく、1〜80nmであることが最も好ましい。層中での無機微粒子の重量平均径は、1〜200nmであることが好ましく、5〜150nmであることがより好ましく、10〜100nmであることがさらに好ましく、10〜80nmであることが最も好ましい。無機微粒子の平均粒径は、20〜30nm以上であれば光散乱法により、20〜30nm以下であれば電子顕微鏡写真により測定される。無機微粒子の比表面積は、BET法で測定された値として、10〜400m2/gであることが好ましく、20〜200m2/gであることがさらに好ましく、30〜150m2/gであることが最も好ましい。
【0222】
無機微粒子は、金属の酸化物または硫化物から形成された粒子であることが好ましい。金属の酸化物または硫化物の例として、二酸化チタン(例、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム及び硫化亜鉛が挙げられる。なかでも、酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。無機微粒子は、これらの金属の酸化物または硫化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。
【0223】
また、無機微粒子はシランカップリング剤等により表面処理されていてもよい。2種類以上の表面処理を組み合わせて処理されていても構わない。
【0224】
無機微粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状あるいは不定形状であることが好ましい。2種類以上の無機微粒子を高屈折率層及び中屈折率層に併用してもよい。
【0225】
高屈折率層及び中屈折率層中の無機微粒子の割合は、5〜65体積%であることが好ましく、より好ましくは10〜60体積%であり、さらに好ましくは20〜55体積%である。
【0226】
無機微粒子は、媒体に分散した分散体の状態で、高屈折率層及び中屈折率層を形成するための塗布液に供される。無機微粒子の分散媒体としては、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散溶媒の具体例としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム)、芳香族炭化水素(例、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が挙げられる。なかでも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
【0227】
無機微粒子を媒体中に分散する分散機の例としては、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが挙げられる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例としては、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが挙げられる。
【0228】
高屈折率層及び中屈折率層は、架橋構造を有するポリマー(以下、架橋ポリマーともいう)をバインダーポリマーとして用いることが好ましい。架橋ポリマーの例として、ポリオレフィン等の飽和炭化水素鎖を有するポリマー(以下、ポリオレフィンと総称する)、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド及びメラミン樹脂等の架橋物が挙げられる。なかでも、ポリオレフィン、ポリエーテル及びポリウレタンの架橋物が好ましく、ポリオレフィン及びポリエーテルの架橋物がさらに好ましく、ポリオレフィンの架橋物が最も好ましい。また、架橋ポリマーがアニオン性基を有することは更に好ましい。アニオン性基は無機微粒子の分散状態を維持する機能を有し、架橋構造はポリマーに皮膜形成能を付与して皮膜を強化する機能を有する。
【0229】
アニオン性基の例としては、カルボン酸基(カルボキシル)、スルホン酸基(スルホ)及びリン酸基(ホスホノ)が挙げられるが、スルホン酸基及びリン酸基が好ましい。ここで、アニオン性基は、塩の状態であってもよい。アニオン性基と塩を形成するカチオンは、アルカリ金属イオンであることが好ましい。また、アニオン性基のプロトンは、解離していてもよい。アニオン性基とポリマー鎖とを結合する連結基は、−CO−、−O−、アルキレン基、アリーレン基、及びこれらの組み合わせから選ばれる二価の基であることが好ましい。好ましいバインダーポリマーである架橋ポリマーは、アニオン性基を有する繰り返し単位と、架橋構造を有する繰り返し単位とを有するコポリマーであることが好ましい。この場合、コポリマー中のアニオン性基を有する繰り返し単位の割合は、2〜96質量%であることが好ましく、4〜94質量%であることがさらに好ましく、6〜92質量%であることが最も好ましい。繰り返し単位は、2以上のアニオン性基を有していてもよい。
【0230】
アニオン性基を有する架橋ポリマーには、その他の繰り返し単位(アニオン性基も架橋構造も有しない繰り返し単位)が含まれていてもよい。(アミノ基または4級アンモニウム基を有する繰り返し単位及びベンゼン環を有する繰り返し単位等)
架橋ポリマーは、架橋ポリマーを生成するためのモノマーを配合して高屈折率層及び中屈折率層形成用の塗布液を調製し、塗布液の塗布と同時または塗布後に、重合反応によって生成させることが好ましい。架橋ポリマーの生成と共に、各層が形成される。アニオン性基を有するモノマーは、無機微粒子に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%使用される。また、その他のモノマー(アミノ基または4級アンモニウム基を有するモノマー)は、塗布液中で分散助剤として機能する。アミノ基または4級アンモニウム基を有するモノマーは、アニオン性基を有するモノマーに対して、好ましくは3〜33質量%使用される。塗布液の塗布と同時または塗布後に、重合反応によって架橋ポリマーを生成する方法により、塗布液の塗布前にこれらのモノマーを有効に機能させることができる。
【0231】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー(ポリオレフィン)の例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミド等が挙げられる。アニオン性基を有するモノマー、及びアミノ基または4級アンモニウム基を有するモノマーは市販のモノマーを用いてもよい。好ましく用いられる市販のアニオン性基を有するモノマーとしては、KAYAMARPM−21、PM−2(日本化薬(株)製)、AntoxMS−60、MS−2N、MS−NH4(日本乳化剤(株)製)、アロニックスM−5000、M−6000、M−8000シリーズ(東亞合成化学工業(株)製)、ビスコート#2000シリーズ(大阪有機化学工業(株)製)、ニューフロンティアGX−8289(第一工業製薬(株)製)、NKエステルCB−1、A−SA(新中村化学工業(株)製)、AR−100、MR−100、MR−200(第八化学工業(株)製)等が挙げられる。また、好ましく用いられる市販のアミノ基または4級アンモニウム基を有するモノマーとしてはDMAA(大阪有機化学工業(株)製)、DMAEA,DMAPAA(興人(株)製)、ブレンマーQA(日本油脂(株)製)、ニューフロンティアC−1615(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
【0232】
ポリマーの重合反応は、光重合反応または熱重合反応を用いることができる。特に光重合反応が好ましい。重合反応のため、重合開始剤を使用することが好ましい。例えば、ハードコート層のバインダーポリマーを形成するために用いられる前述した熱重合開始剤、及び光重合開始剤が挙げられる。
【0233】
重合開始剤として市販の重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤に加えて、重合促進剤を使用してもよい。重合開始剤と重合促進剤の添加量は、モノマーの全量の0.2〜10質量%の範囲であることが好ましい。塗布液(モノマーを含む無機微粒子の分散液)を加熱して、モノマー(またはオリゴマー)の重合を促進してもよい。また、塗布後の光重合反応の後に加熱して、形成されたポリマーの熱硬化反応を追加処理してもよい。
【0234】
中屈折率層及び高屈折率層には、比較的屈折率が高いポリマーを用いることが好ましい。屈折率が高いポリマーの例としては、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリカーボネート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及び環状(脂環式または芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタンが挙げられる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高く用いることができる。
【0235】
中屈折率層及び高屈折率層は、また、被膜形成能を有する有機金属化合物から、ゾルゲル法を用いて形成してもよい。(ゾルゲル法)
ゾルゲル法により高屈折率層または中屈折率層を形成する場合、有機金属化合物は、適当な媒体に分散し得るか、あるいは液状であることが好ましい。有機金属化合物の例としては、金属アルコレート(例えば、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−i−プロポキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−sec−ブトキシド、チタンテトラ−tert−ブトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−i−プロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アンチモントリエトキシド、アンチモントリブトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラ−i−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−sec−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−tert−ブトキシド)、キレート化合物(例えば、ジ−イソプロポキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジ−ブトキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジ−エトキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ビスアセチルアセトンジルコニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムジ−n−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムジ−i−プロポキシドモノメチルアセトアセテート、トリ−n−ブトキシドジルコニウムモノエチルアセトアセテート)、有機酸塩(例えば、炭酸ジルコニールアンモニウム)及びジルコニウム等が挙げられる。
【0236】
低屈折率層として、好ましくは、ゾルゲル法による低屈折率層が用いられる。低屈折率層の屈折率は、低ければ反射防止性能が良化するため好ましいが、低屈折率層の強度付与の観点では困難となる。このバランスから、低屈折率層の屈折率は1.30〜1.50であることが好ましく、1.35〜1.49であることがさらに好ましい。
【0237】
低屈折率層が無機粒子を含有することは、強度向上の点から好ましい。低屈折率層に用いられる無機微粒子としては、非晶質のものが好ましく用いられ、金属の酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなることが好ましく、なかでも金属酸化物が特に好ましく、特に好ましい無機微粒子は、二酸化ケイ素微粒子、すなわちシリカ微粒子である。無機微粒子の平均粒径は0.001〜0.2μmであることが好ましく、0.005〜0.05μmであることがより好ましい。微粒子の粒径はなるべく均一(単分散)であることが好ましい。無機微粒子の粒径は大きすぎると光が散乱し、フィルムが不透明になり、小さすぎるものは凝集しやすく合成及び取り扱いが困難である。
【0238】
無機微粒子の配合量は、低屈折率層の全質量の5〜90質量%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜70質量%であり、特に好ましくは10〜50質量%である。無機微粒子は、表面処理を施して用いることも好ましい。表面処理法としてはプラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理とカップリング剤を使用する化学的表面処理があるが、無機微粒子がシリカの場合はシランカップリング剤による処理が特に有効である。
【0239】
低屈折率層に、無機もしくは有機の微粒子を用い、微粒子間または微粒子内のミクロボイドとして形成した層を用いることも好ましい。微粒子の平均粒径は、0.5〜200mmであることが好ましく、1〜100nmであることがより好ましく、3〜70nmであることがさらに好ましく、5〜40nmの範囲であることが最も好ましい。微粒子の粒径は、なるべく均一(単分散)であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなることが好ましく、金属酸化物または金属ハロゲン化物からなることがさらに好ましく、特に好ましくは、金属酸化物、なかでも二酸化ケイ素、すなわちシリカが好ましい。
【0240】
ミクロボイドを形成することにより、低屈折率層の巨視的屈折率は、低屈折率層を構成する成分の屈折率の和よりも低い値になる。層の屈折率は、層の構成要素の体積当りの屈折率の和になる。微粒子やポリマーのような低屈折率層の構成成分の屈折率は1よりも大きな値であるのに対して、空気の屈折率は1.00である。そのため、ミクロボイドを形成することによって、屈折率が非常に低い低屈折率層を得ることができる。
【0241】
低屈折率層用として用いる各種ゾルゲル素材としては、各種ゾルゲル素材を用いることが好ましい。このようなゾルゲル素材としては、金属アルコレート(シラン、チタン、アルミニウム、ジルコニウム等のアルコレート)、オルガノアルコキシ金属化合物及びその加水分解物を用いることができる。特に、アルコキシシラン、オルガノアルコキシシラン及びその加水分解物が好ましい。これらの例としては、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)、アルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等)、アリールトリアルコキシシラン(フェニルトリメトキシシラン等)、ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン等が挙げられる。また、各種の官能基を有するオルガノアルコキシシラン(ビニルトリアルコキシシラン、メチルビニルジアルコキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジアルコキシシラン、β−(3,4−エポキジシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリアルコキシシラン等)、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラデシル)トリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等)を用いることも好ましい。
【0242】
ゾルゲル法による金属酸化物膜の形成は、前記金属アルコキシドを、アルコール、水、酸などからなる、加水分解、重合反応によってゲルとなる液とし、これを用いてディップコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター、押し出しコーターなどを用いてフィルム上に塗布し、ゲル膜を形成する方法である。
【0243】
金属アルコキシドを含む組成物の加水分解または硬化を促進するため、活性エネルギー線を照射することが好ましく、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。光源としては例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ等も用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20mJ/cm2〜10,000mJ/cm2の範囲である。
【0244】
低屈折率層としては、水酸基、カルボニル基など、各種の官能基を有するオルガノアルコキシシランを用いて、水酸基、カルボニル基などの極性基を表面に有することが、本発明に係わる防汚層形成用組成物との膜付きを強化する上で望ましい。
【0245】
本発明において、前記金属酸化物層は、プラズマCVD法によって形成することもできる。プラズマCVD法としては公知のプラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法、CatCVD法が挙げられるが、好ましくは大気圧プラズマCVD法である。特に、以下に詳説する2周波電源を用いる方法が特に好ましく用いられる。
【0246】
以下に、金属酸化物層をプラズマCVDによって形成する方法を図2、3を用いて説明する。
【0247】
図2は本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
【0248】
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置は、プラズマ放電処理装置、二つの電源を有する電圧印加手段の他に、図2では図示してないが、ガス供給手段、電極温度調節手段を有している装置である。
【0249】
プラズマ放電処理装置10は、第1電極11と第2電極12から構成されている対向電極を有しており、該対向電極間に、第1電極11からは第1電源21からの第1の周波数ω1の高周波電圧V1が印加され、また第2電極12からは第2電源22からの第2の周波数ω2の高周波電圧V2が印加されるようになっている。第1電源21は第2電源22より大きな高周波電圧(V1>V2)を印加出来る能力を有していればよく、また第1電源21の第1の周波数ω1は第2電源22の第2の周波数ω2より低い周波数である。
【0250】
第1電極11と第1電源21との間には、第1電源21からの電流が第1電極11に向かって流れるように第1フィルター23が設置されており、第1電源21からの電流をアース側に通過しにくくし、第2電源22からの電流がアース側へと通過し易くするように設計されている。
【0251】
また、第2電極12と第2電源22との間には、第2電源22からの電流が第2電極12に向かって流れるように第2フィルター24が設置されており、第2電源22からの電流をアース側へ通過しにくくし、第1電源21からの電流がアース側に通過し易くなるように設計されている。
【0252】
第1電極11と第2電極12との対向電極間(放電空間)13に、ここでは図示してない(後述の図3に図示してあるような)ガス供給手段からガスGを導入し、第1電極11と第2電極12から高周波電圧を印加して放電を発生させ、ガスGをプラズマ状態にしながら対向電極の下側(紙面下側)にジェット状に吹き出させて、対向電極下面と基材Fとで作る処理空間にプラズマ状態のガスG°を送り、図示してない基材の元巻き(アンワインダー)から巻きほぐされて搬送して来るか、あるいは前工程から搬送して来る基材Fの上に、処理位置14付近で薄膜を形成させる。このとき基材Fは温度制御可能なバックロール上に配置されていてもよい。薄膜形成中、ここでは図示してない(後述の図3に図示してあるような)電極温度調節手段から配管を経て電極を加熱または冷却する。プラズマ放電処理の際の基材の温度によっては、得られる薄膜の物性や組成は変化することがあり、これに対して適宜制御することが望ましい。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の温度ムラが出来るだけ生じないように電極の表面の温度を均一に調節することが望まれる。
【0253】
また、図2に前述の高周波電圧(印加電圧)と放電開始電圧の測定に使用する測定器を示した。25及び26は高周波プローブであり、27及び28はオシロスコープである。
【0254】
ジェット方式の該大気圧プラズマ放電処理装置を複数基接して直列に並べて配置することが好ましく、これにより何回もプラズマ処理され高速で製膜することも出来る。また各装置が異なったプラズマ状態のガスをジェット噴射すれば、組成の異なった層の金属化合物積層薄膜を形成することも出来る。
【0255】
図3は本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0256】
本発明で好ましく用いられる気圧プラズマ放電処理装置は、少なくとも、プラズマ放電処理装置30、二つの電源を有する電圧印加手段40、ガス供給手段50、電極温度調節手段60を有している装置である。
【0257】
図3は、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との対向電極間(放電空間)32で、基材Fをプラズマ放電処理して薄膜を形成するものである。
【0258】
ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との間の放電空間(対向電極間)32に、ロール回転電極(第1電極)35には第1電源41から周波数ω1であって高周波電圧V1を、また角筒型固定電極群(第2電極)36には第2電源42から周波数ω2であって高周波電圧V2をかけるようになっている。
【0259】
ロール回転電極(第1電極)35と第1電源41との間には、第1電源41からの電流がロール回転電極(第1電極)35に向かって流れるように第1フィルター43が設置されており、該第1フィルターは第1電源41からの電流がアース側へ通過しにくくし、第2電源42からの電流がアース側に通過し易くするように設計されている。また、角筒型固定電極群(第2電極)36と第2電源42との間には、第2電源からの電流が第2電極に向かって流れるように第2フィルター44が設置されており、第2フィルター44は、第2電源42からの電流がアース側へ通過しにくくし、第1電源41からの電流をアース側に通過し易くするように設計されている。
【0260】
なお、ロール回転電極35を第2電極、また角筒型固定電極群36を第1電極としてもよい。何れにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。第1電源は第2電源より大きな高周波電圧(V1>V2)を印加出来る能力を有しており、また、周波数はω1<ω2となる能力を有している。
【0261】
ガス供給手段50のガス供給装置51で発生させたガスGは、流量を制御して給気口52よりプラズマ放電処理容器31内に導入する。図では配管等は示していないが、角筒型固定電極群36の間隙より放電空間32へとガスGが供給され、同様に角筒型固定電極群36の間隙より処理排ガスG′を排出する。
【0262】
基材Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されて来るか、または前工程から搬送されて来て、ガイドロール64を経てニップロール65で基材に同伴されて来る空気等を遮断し、ロール回転電極35に接触したまま巻き回しながら角筒型固定電極群36との間に移送し、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との両方から電圧をかけ、対向電極間(放電空間)32で放電プラズマを発生させる。基材Fはロール回転電極35に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜を形成する。基材Fは、ニップロール66、ガイドロール67を経て、図示してない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。
【0263】
放電処理済みの処理排ガスG′は排気口53より排出する。
薄膜形成中、ロール回転電極(第1電極)35及び角筒型固定電極群(第2電極)36を加熱または冷却するために、電極温度調節手段60で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管61を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、68及び69はプラズマ放電処理容器31と外界とを仕切る仕切板である。
【0264】
図4は、図3に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0265】
図4において、ロール電極35aは導電性の金属質母材35Aとその上に誘電体35Bが被覆されたものである。内部は中空のジャケットになっていて電極表面の温度を均一に制御するための媒体が循環できるようになっている。
【0266】
図5は、角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0267】
図5において、角筒型電極36aは、導電性の金属質母材36Aに対し、図4同様の誘電体36Bの被覆を有し、該電極の構造は金属質のパイプになっていて、それがジャケットとなり、放電中の電極表面の温度を調節できるようになっている。
【0268】
なお、角筒型固定電極は、上記ロール電極に対向して複数本設置することができ、該電極の放電面積はロール回転電極35に対向している全角筒型固定電極面の面積の和で表される。
【0269】
図5に示した角筒型電極36aは、円筒型電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
【0270】
図4及び5において、ロール電極35a及び角筒型電極36aは、それぞれ導電性の金属質母材35A及び36Aの上に誘電体35B及び36Bとしてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体は膜厚で0.5〜4mmが好ましく、特に1〜2mmが好ましい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ガラスライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0271】
導電性の金属質母材35A及び36Aとしては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料等を挙げることが出来るが、後述の理由から、チタン金属またはチタン合金が特に好ましい。
【0272】
2個の電極間の距離(電極間隙)は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、電極の一方に誘電体を設けた場合の誘電体表面と導電性の金属質母材表面の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設けた場合の誘電体表面同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1nm〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5nm〜2mmである。
【0273】
本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体についての詳細については後述する。
【0274】
プラズマ放電処理容器31はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。図2において、平行した両電極の両側面(基材面近くまで)を上記のような材質の物で覆うことが好ましい。
【0275】
本発明の大気圧プラズマ放電処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、
等の市販のものを挙げることが出来、何れも使用することが出来る。なお、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。
【0276】
また、第2電源(高周波電源)としては、
等の市販のものを挙げることが出来、何れも好ましく使用出来る。
【0277】
本発明においては、このような電圧を印加して、安定したグロー放電状態を保つことが出来る電極をプラズマ放電処理装置に採用することが望まれる。
【0278】
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極に1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを薄膜形成性ガスに与え薄膜を形成させる。供給する電力は1〜50W/cm2が好ましい。なお、放電面積(cm2)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0279】
ここで電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
【0280】
このような大気圧プラズマによる薄膜形成法に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならない。このような電極としては、金属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
【0281】
本発明に使用する誘電体被覆電極においては、様々な金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10−6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10−6/℃以下、更に好ましくは5×10−6/℃以下、更に好ましくは2×10−6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0282】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記(a)または(b)および(e)〜(h)が好ましく、特に、(a)が好ましい。
【0283】
本発明において、金属質母材は、上記の特性からはチタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが出来る。
【0284】
本発明に有用な電極の金属質母材は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用出来るが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることが出来る。工業用純チタンとしては、TIA、TIB、TIC、TID等を挙げることが出来、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているもので、チタンの含有量としては、99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることが出来、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量としては、98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることが出来、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタン金属はステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材としてチタン合金またはチタン金属の上に施された後述の誘電体との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることが出来る。
【0285】
一方、誘電体の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。この中では、後述のセラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体が好ましい。
【0286】
または、上述のような大電力に耐える仕様の一つとして、誘電体の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。なお、誘電体の空隙率は、BET吸着法や水銀ポロシメーターにより測定することが出来る。後述の実施例においては、島津製作所製の水銀ポロシメーターにより金属質母材に被覆された誘電体の破片を用い、空隙率を測定する。誘電体が、低い空隙率を有することにより、高耐久性が達成される。このような空隙を有しつつも空隙率が低い誘電体としては、後述の大気プラズマ溶射法等による高密度、高密着のセラミックス溶射被膜等を挙げることが出来る。更に空隙率を下げるためには、封孔処理を行うことが好ましい。
【0287】
上記、大気プラズマ溶射法は、セラミックス等の微粉末、ワイヤ等をプラズマ熱源中に投入し、溶融または半溶融状態の微粒子として被覆対象の金属質母材に吹き付け、皮膜を形成させる技術である。プラズマ熱源とは、分子ガスを高温にし、原子に解離させ、更にエネルギーを与えて電子を放出させた高温のプラズマガスである。このプラズマガスの噴射速度は大きく、従来のアーク溶射やフレーム溶射に比べて、溶射材料が高速で金属質母材に衝突するため、密着強度が高く、高密度な被膜を得ることが出来る。詳しくは、特開2000−301655に記載の高温被曝部材に熱遮蔽皮膜を形成する溶射方法を参照することが出来る。この方法により、上記のような被覆する誘電体(セラミック溶射膜)の空隙率にすることが出来る。
【0288】
また、大電力に耐える別の好ましい仕様としては、誘電体の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下である。
【0289】
誘電体の空隙率をより低減させるためには、上記のようにセラミックス等の溶射膜に、更に、無機化合物で封孔処理を行うことが好ましい。前記無機化合物としては、金属酸化物が好ましく、この中では特に酸化ケイ素(SiOx)を主成分として含有するものが好ましい。
【0290】
封孔処理の無機化合物は、ゾルゲル反応により硬化して形成したものであることが好ましい。封孔処理の無機化合物が金属酸化物を主成分とするものである場合には、金属アルコキシド等を封孔液として前記セラミック溶射膜上に塗布し、ゾルゲル反応により硬化する。無機化合物がシリカを主成分とするものの場合には、アルコキシシランを封孔液として用いることが好ましい。
【0291】
ここでゾルゲル反応の促進には、エネルギー処理を用いることが好ましい。エネルギー処理としては、熱硬化(好ましくは200℃以下)や、紫外線照射などがある。更に封孔処理の仕方として、封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極が出来る。
【0292】
本発明に係る誘電体被覆電極の金属アルコキシド等を封孔液として、セラミックス溶射膜にコーティングした後、ゾルゲル反応で硬化する封孔処理を行う場合、硬化した後の金属酸化物の含有量は60モル%以上であることが好ましい。封孔液の金属アルコキシドとしてアルコキシシランを用いた場合には、硬化後のSiOx(xは2以下)含有量が60モル%以上であることが好ましい。硬化後のSiOx含有量は、XPS(X線光電子スペクトル)により誘電体層の断層を分析することにより測定できる。
【0293】
本発明の光学フィルムの製造方法に係る電極においては、電極の少なくとも基材と接する側のJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整することが好ましいが、更に好ましくは、8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調整することである。このように誘電体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法により、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことが出来、放電状態を安定化出来ること、更に熱収縮差や残留応力による歪やひび割れを無くし、且つ、高精度で、耐久性を大きく向上させることが出来る。誘電体表面の研磨仕上げは、少なくとも基材と接する側の誘電体において行われることが好ましい。
【0294】
また、基材と接する側の誘電体の表面と、接している基材Fの裏面との間の動摩擦係数は1.5以下であることが好ましく、更に好ましくは0.01〜1.2であり、更に好ましくは0.01〜0.9であり、更に好ましくは0.01〜0.7である。
【0295】
本発明に使用する誘電体被覆電極において、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温度が100℃以上であることである。更に好ましくは120℃以上、特に好ましくは150〜500℃である。なお、耐熱温度とは、絶縁破壊が発生せず、正常に放電出来る状態において耐えられる最も高い温度のことを指す。このような耐熱温度は、上記のセラミックス溶射や、泡混入量の異なる層状のガラスライニングで設けた誘電体を適用したり、下記金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差の範囲内の材料を適宜選択する手段を適宜組み合わせることによって達成可能である。
【0296】
〈反応ガス〉
本発明の金属酸化物薄膜層の形成方法に用いる反応ガスについて説明する。
【0297】
薄膜層を形成するための反応ガスは、主に窒素を含むガスである。すなわち、窒素ガスが50%以上で含有することが好ましく、さらに好ましくは70%以上で含有することが好ましく、さらに好ましくは90体積%〜99.99体積%であることが望ましい。反応ガスには窒素のほかに希ガスが含有していてもよい。
【0298】
ここで、希ガスとは、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等であり、本発明では、ヘリウム、アルゴン等が窒素に添加されて用いられてもよい。
【0299】
窒素ガスは安定したプラズマ放電を発生させるために用いられ、反応ガスには薄膜を形成するための原料として、反応性ガスが添加される。該プラズマ中で反応性ガスはイオン化あるいはラジカル化され、基材表面に堆積あるいは付着するなどして薄膜が形成される。
【0300】
更に、反応ガス中に酸素、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化窒素、一酸化窒素、水、過酸化水素、オゾン等を0.1体積%〜10体積%含有させることにより薄膜層の硬度、密度等の物性を制御することができる。これらは適宜選択される。
【0301】
本発明の薄膜形成方法を実施するにあたり、使用するガスは、基材上に設けたい薄膜の種類によって異なるが、基本的に、窒素ガスと、薄膜を形成するための反応性ガスの混合ガスで、本発明においてこの混合ガスを反応ガスという。反応性ガスは、反応ガスに対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。薄膜の膜厚としては、一つの層あたり0.1〜1000nmの範囲の薄膜が好ましく得られる。
【0302】
光学フィルムとしての反射防止フィルムにおける、反射防止層は、通常、基材よりも屈折率の高い高屈折率の層と基材よりも屈折率の低い低屈折率の層を組み合わせることにより達成される。構成の例としては、単層、多層の各種知られているが、多層のものとしては基材側から高屈折率層と低屈折率層の2層から成る構成や、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(基材等よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)、高屈折率層、低屈折率層の順に積層することや、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の4層以上を積層すること等が提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性などから、ハードコート層を有する基材上に、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層を設けることが好ましい。
【0303】
反射防止フィルムの低屈折率層は、珪素化合物の層が好ましく用いられる。
高屈折率層としてはチタン化合物を、中屈折率層形成用としては錫化合物又はチタン化合物と珪素化合物の混合物(又は高屈折率形成用のチタン化合物で形成した層、低屈折率層を形成する珪素化合物で形成した層を積層してもよい)を用いることが出来る。
【0304】
上記低屈折率層や中屈折率層、高屈折率層等の金属化合物薄膜の形成に使用し得る反応性ガスについて、以降、主に説明する。
【0305】
反射防止層薄膜は、大まかに、低屈折率層薄膜には、珪素化合物を使用し、中屈折率層薄膜には、スズまたは低屈折率層薄膜に使用する化合物と高屈折率層薄膜に使用する化合物を併用する場合もあり、高屈折率層薄膜にはチタン化合物やジルコニウム化合物またはタンタル化合物を使用することが出来る。
【0306】
珪素化合物は、取り扱い上の観点から金属水素化合物、金属アルコキシドが好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、金属アルコキシドが好ましく用いられる。また、上記記載の珪素化合物を放電空間である電極間に導入するには、両者は常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入出来るが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。珪素化合物を加熱により気化して用いる場合、テトラエトキシシランなどの常温で液体で、沸点が200℃以下である金属アルコキシドが反射防止膜の形成に好適に用いられる。上記金属アルコキシドは、溶媒によって希釈して使用されても良く、溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。
【0307】
上記記載の珪素化合物としては、例えば、ジメチルシラン、テトラメチルシランなどの有機金属化合物、モノシラン、ジシランなどの金属水素化合物、二塩化シラン、三塩化シランなどの金属ハロゲン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のアルコキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、オルガノシラン、含フッ素有機シラン化合物などを用いることが好ましいがこれらに限定されない。また、これらは適宜組み合わせて用いることが出来る。
【0308】
反応ガス中に上記記載の珪素化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中の珪素化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0309】
中屈折率層薄膜あるいは高屈折率層薄膜を形成し得る反応性ガス化合物としては、例えば、亜鉛アセチルアセトナート、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、トリエチルインジウム、トリメチルインジウム、エトラエチルスズ、エトラメチルスズ、二酢酸ジ−n−ブチルスズ、テトラブチルスズ、テトラオクチルスズ、ペンタイソプロポキシタンタルなどから選択された少なくとも1つの有機金属化合物を含む反応性ガスを用いて、導電性層薄膜膜あるいは帯電防止層薄膜、あるいは反射防止層薄膜の中屈折率層薄膜あるいは高屈折率層薄膜として有用な金属化合物層を形成することが出来る。
【0310】
チタン化合物としては、取り扱い上の観点から金属水素化合物、金属アルコキシドが好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、金属アルコキシドが好ましく用いられる。高屈折率層薄膜として有用なチタン化合物は、テトラジメチルアミノチタンなどの有機金属化合物、モノチタン、ジチタンなどの金属水素化合物、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタンなどの金属ハロゲン化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどの金属アルコキシドなどを用いることが好ましいがこれらに限定されない。また、上記記載のチタン化合物を放電空間である電極間に導入するには、これらは常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入出来るが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。珪素化合物、チタン化合物を加熱により気化して用いる場合、テトライソプロポキシチタンなどの常温で液体で、沸点が200℃以下である金属アルコキシドが反射防止膜の形成に好適に用いられる。上記金属アルコキシドは、溶媒によって希釈して使用されても良く、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。反応ガス中に上記記載のチタン化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中のチタン化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0311】
また、反応ガス中に酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素から選択される成分を0.01〜10体積%含有させることにより、反応が促進され、且つ、緻密で良質な薄膜を形成することが出来る。
【0312】
本発明に係わる金属化合物層は、大気圧プラズマCVDにおいて、有機金属化合物、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選択される金属を含む有機金属化合物を反応性ガスとして用い形成される金属化合物層である。反応性ガスのうち、より好ましくは、これらの有機金属化合物が金属アルコキシド、アルキル化金属、含金属錯体から選ばれるものが好ましい。
【0313】
上記または上記以外の反応性ガスを適宜選択して、本発明の薄膜形成方法に使用することにより前記の低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層のほか、様々な高機能性の薄膜を得ることも出来る。その一例を以下に示すが、本発明はこれに限られるものではない。
【0314】
電極膜:Au、Al、Ag、Ti、Ti、Pt、Mo、Mo−Si
誘電体保護膜:SiO2、SiO、Si3N4、Al2O3、Al2O3、Y2O3
透明導電膜:In2O3、SnO2
エレクトロクロミック膜:WO3、IrO2、MoO3、V2O5
蛍光膜:ZnS、ZnS+ZnSe、ZnS+CdS
磁気記録膜:Fe−Ni、Fe−Si−Al、γ−Fe2O3、Co、Fe3O4、Cr、SiO2、AlO3
超導電膜:Nb、Nb−Ge、NbN
太陽電池膜:a−Si、Si
反射膜:Ag、Al、Au、Cu
選択性吸収膜:ZrC−Zr
選択性透過膜:In2O3、SnO2
シャドーマスク:Cr
耐摩耗性膜:Cr、Ta、Pt、TiC、TiN
耐食性膜:Al、Zn、Cd、Ta、Ti、Cr
耐熱膜:W、Ta、Ti
潤滑膜:MoS2
装飾膜:Cr、Al、Ag、Au、TiC、Cu
高屈折率膜:TiO2、ZrO2、Ta2O5
本発明の光学フィルムの金属化合物薄膜は、上述のような、大気圧もしくはその近傍の圧力下で上述のような反応ガスを用いて金属化合物薄膜を形成する。
【0315】
薄膜の膜厚としては、前記のように、一つの層あたり0.1〜1000nmの範囲の薄膜が好ましく得られる。
【0316】
本発明の光学フィルムは、例えば高屈折率層または中屈折率層、及び低屈折率層を積層した反射防止層を有する光学フィルムに防汚層を設けたものである。または導電層、帯電防止層等の金属酸化物層上に防汚層を設けた光学フィルム等にも好ましく用いることができる。
【0317】
本発明において、プラズマ放電装置を複数設けることによって、多層の薄膜を連続的に設けることができ、薄膜のムラもなく多層の積層体を形成することができる。
【0318】
例えば、長尺フィルム上に反射防止層を有する光学フィルムを作製する場合、屈折率1.6〜2.3の高屈折率層及び屈折率1.3〜1.5の防汚層を長尺フィルム表面に連続して積層し、効率的に作製することができる。
【0319】
上記の方法により、本発明においては、多層の薄膜を積層することができ、各層の膜厚ムラもなく、均一な光学フィルムを得ることができる。
【0320】
本発明の光学フィルムは、フィルム上に形成した金属酸化物層上に、防汚層を形成することを特徴としているが、熱硬化樹脂層あるいは活性線硬化樹脂層脂硬化層等の他の層を介して金属酸化物層形成してもよく、特に前記の紫外線硬化樹脂層を設けることが好ましい。
【0321】
また、本発明に係るセルロースエステルフィルム等の場合に、フィルムの動摩擦係数を調整するため、裏面側に前記微粒子を含有するバックコート層を設けることも好ましく、また添加する微粒子の大きさや添加量、材質等によって動摩擦係数を調整することができる。
【0322】
本発明に係わる防汚層ないし防汚処理は反射防止フィルム、帯電防止フィルム、位相差フィルム、導電性フィルム、電磁波遮蔽フィルム、偏光板等の保護フィルム、光学補償フィルム、視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム、偏光板、プラズマディスプレイ前面フィルター等に好ましく用いられる。特に複数の金属酸化物層を形成する反射防止フィルムに有用である。
【0323】
《偏光板》
本発明の防汚処理された光学フィルムは特に偏光板保護フィルムとして有用であり、これを用いて公知の方法で偏光板を作製することができる。
【0324】
この光学フィルムを有する偏光板や光学フィルムを有する表示装置は視認性に優れており、過酷な環境下であっても優れた視認性を提供することができる。
【0325】
《表示装置》
本発明の表示装置について説明する。
【0326】
本発明の光学フィルムは反射型、透過型、半透過型液晶表示装置あるいは液晶表示装置で好ましく用いられ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ等の各種表示装置にも好ましく用いられる。
【0327】
画像表示装置としては、フィルムを貼ることから、フラットパネルディスプレイが好ましい。たとえば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル、電界発光型ディスプレイなどが挙げられる。貼る方法はどのような方法でもよく、パネル本体に組み込む、例えば液晶ディスプレイの場合には、偏光板保護フィルムに使用するなどが挙げられる。
【0328】
液晶ディスプレイに組み込む場合、前記偏光板の観察側の偏光板保護フィルムとして用いることで、例えば、反射防止層を有する透明フィルムの場合には、反射防止層上に敷設された防汚層により、指脂等の汚れがつきにくく、かつ付着しても容易に除去しやすい、また、耐傷性に優れた、液晶セル表面を有する液晶表示装置が得られる。
【0329】
このようなフィルムを用いることによって、ガラス、アクリルのような基材を1枚ごとに防汚処理する必要が無くなり、必要なサイズにカットして使用することが出来る。
【0330】
【実施例】
実施例
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0331】
《バックコート層を有するセルロースエステルフィルム1の作製》
基材フィルム1として、帯電防止ハードコート層付きセルローストリアセテートフィルム(膜厚80μm、コニカタック KC8UF−HA、表面比抵抗1010Ω/cm2、幅手両端部にナーリング高さ10μmを有する)を用い、この裏面側に、下記バックコート層組成物(1)をウェット膜厚14μmとなるように押し出しコーターで塗布し、85℃にて乾燥し巻き取り、バックコート層を設けバックコート層を有するセルロースエステルフィルム1とした。
【0332】
バックコート層の表面の高さ0.1μm以上の突起数は480個/100μm2であった。
【0333】
〈バックコート層組成物(1)〉
アセトン 30質量部
酢酸エチル 45質量部
イソプロピルアルコール 10質量部
ジアセチルセルロース 0.6質量部
超微粒子シリカ2%アセトン分散液
(日本アエロジル(株)製アエロジル200V) 0.2質量部
《セルロースエステルフィルム2の作製》
また、下記のように各種添加液、各種ドープを調製して、基材フィルム2としてセルロースエステルフィルム2を作製した。
【0334】
〈酸化けい素分散液Aの調製〉
アエロジルR972V(日本アエロジル(株)製) 1kg
エタノール 9kg
以上をディゾルバで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリン型高圧分散装置を用いて分散を行い、酸化けい素分散液Aを調製した。
【0335】
〈添加液Bの調製〉
セルローストリアセテート(アセチル基の置換度2.88) 6kg
メチレンクロライド 140kg
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、濾過した。これに10kgの上記酸化けい素分散液Aを撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、濾過し、添加液Bを調製した。
【0336】
〈ドープCの調製〉
メチレンクロライド 440kg
エタノール 35kg
セルローストリアセテート(アセチル基の置換度2.88) 100kg
トリフェニルホスフェート 9kg
エチルフタリルエチルグリコレート 2kg
チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.3kg
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.5kg
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.5kg
上記の溶剤を密閉容器に投入し、攪拌しながら残りの素材を投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、混合した。ドープを流延する温度まで下げて一晩静置し、脱泡操作を施した後、溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。更に上記溶液に添加液Bを3kg添加し、インラインミキサー(東レ(株)製静止型管内混合機Hi−Mixer、SWJ)で10分間混合し、濾過し、ドープCを調製した。
【0337】
ドープCを濾過した後、ベルト流延装置を用い、35℃のドープを35℃のステンレスバンド支持体上に均一に流延した。その後、支持体上で乾燥させた後、ステンレスバンド支持体上からフィルムを剥離した。このときのフィルムの残留溶媒量は80%であった。ステンレスバンド支持体から剥離した後、80℃に維持された乾燥ゾーンで1分間乾燥させた後、2軸延伸テンターを用いて、残留溶媒量3〜10質量%であるときに100℃の雰囲気下で長手方向に1.03倍、幅方向に1.1倍に延伸し、幅把持を解放して、多数のロールで搬送させながら125℃の乾燥ゾーンで乾燥を終了させ、フィルム両端に幅10mm、高さ10μmのナーリング加工を施して、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム2を作製した。フィルム幅は1300mm、巻き取り長は1500mとした。面内リターデーションR0は1nmであった。
【0338】
《バックコート層を有するセルロースエステルフィルム2の作製》
上記で作製したセルロースエステルフィルム2のa面(流延製膜の際にステンレスバンド支持体に接していた側(b面)の反対側の面)に、下記バックコート層組成物(1)をウェット膜厚14μmとなるように押し出しコーターで塗布し、85℃にて乾燥し巻き取り、バックコート層を設けた。
【0339】
バックコート層の表面の高さ0.1μm以上の突起数は480個/100μm2であった。
【0340】
〈バックコート層組成物(1)〉
アセトン 30質量部
酢酸エチル 45質量部
イソプロピルアルコール 10質量部
ジアセチルセルロース 0.6質量部
超微粒子シリカ2%アセトン分散液
(日本アエロジル(株)製アエロジル200V) 0.2質量部
(ハードコート層を有するセルロースエステルフィルム2の作製)
〈ハードコート層の塗設〉
下記のハードコート層1塗布組成物を上記で作製したセルロースエステルフィルム2のb面側(溶液流延製膜工程でステンレスバンド支持体側に接している面)に押し出しコートし、次いで80℃に設定された乾燥部で乾燥した後、110mJ/cm2で紫外線照射し、6μmの乾燥膜厚となるようにハードコート層を設けた。
【0341】
《反射防止フィルムの作製》
上記基材フィルム1および基材フィルム2のハードコート層上に、金属酸化物層を形成して、それぞれ反射防止フィルムを作製した。表1に示すように、金属酸化物層は、塗布法または大気圧プラズマCVDのいずれかを用いて形成した。
【0342】
《塗布法による反射防止層の形成》
下記のように中屈折率層、高屈折率層、次いで、低屈折率層の順に反射防止層を塗設し、反射防止加工を行った。
【0343】
(中屈折率層)
セルロースエステルフィルム1、2のハードコート層の上に、下記中屈折率層組成物M−1を押し出しコーターで塗布し、80℃で5分間乾燥させた後、高圧水銀ランプ(80W)を用いて紫外線を175mJ/cm2照射して硬化させ、厚さが78nmとなるように中屈折率層を設けた。なお、この中屈折率層の屈折率は1.70であった。
【0344】
(高屈折率層)
前記の中屈折率層上に、下記の高屈折率層組成物H−1を押し出しコーターで塗布し、80℃で5分間乾燥させた後、高圧水銀ランプ(80W)を用いて紫外線を175mJ/cm2照射して硬化させ、厚さが66nmとなるように高屈折率層を設けた。尚、この高屈折率層の屈折率は1.85であった。
【0345】
〈高屈折率層組成物H−1〉
イソプロピルアルコール 445質量部
水 1.5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 223質量部
メチルエチルケトン 73質量部
テトラ(n)ブトキシチタン 545質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
(信越化学社製KBM503) 0.8質量部
10%シリコーンオイル(信越化学工業(株)社製KF−96−1,000C
S、溶媒:メチルエチルケトン) 1.4質量部
(低屈折率層)
前記の高屈折率層上に、下記の低屈折率層組成物L−1を押し出しコーターで塗布し、80℃で5分間乾燥させた後、更に120℃で5分間熱硬化させ、さらに紫外線を175mJ/cm2照射して硬化させ、厚さ95nmとなるように低屈折率層を設けた。尚、この低屈折率層の屈折率は1.45であった。
【0346】
〈テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製〉
テトラエトキシシラン580gとエタノール1144gを混合し、これにクエン酸水溶液(クエン酸1水和物5.4gを水272gに溶解したもの)を添加した後に、室温(25℃)にて1時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物Aを調製した。
【0347】
(低屈折率層組成物L−1)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 304.3質量部
イソプロピルアルコール 305質量部
テトラエトキシシラン加水分解物A 139質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
(信越化学社製KBM503) 1.6質量部
《大気圧プラズマCVD法による反射防止層の形成》
前記、基材フィルム1または基材フィルム2のハードコート層上に、下記に記載のような大気圧プラズマCVD法を適用して、第1の酸化チタン層(屈折率2.15、膜厚0.02μm)、第1の酸化珪素層(屈折率1.46、膜厚0.03μm)、第2の酸化チタン層(屈折率2.15、膜厚0.12μm)、第2の酸化珪素層(屈折率1.46、膜厚0.08μm)を順次形成し、金属酸化物層を有する長尺の反射防止フィルムを各々作製した。
【0348】
《金属化合物層の形成》
大気圧プラズマCVD法による金属酸化物層の形成には、下記のプラズマ放電処理装置を用いた。
【0349】
《プラズマ放電処理装置》
(電極の作製)
図3に示したプラズマ放電処理装置において、誘電体で被覆したロール電極及び同様に誘電体で被覆した複数の角筒型電極のセットを以下のように作製した。
【0350】
第1電極となるロール電極は、冷却水による冷却手段を有するチタン合金T64製ジャケットロール金属質母材に対して、アルミナ溶射膜を被覆し、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行った。このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、Rmax5μmとなるように加工した。最終的な誘電体の膜厚は1mm、誘電体の比誘電率は10であった。更に導電性の金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差は1.7×10−4で、耐熱温度は260℃であった。
【0351】
一方、第2電極の角筒型電極は、中空の角筒型のチタン合金T64に対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆し、対向する角筒型固定電極群とした。この角筒型電極の誘電体については上記ロール電極のものと同じである。
【0352】
この角筒型電極をロール回転電極のまわりに、対向電極間隙を1mmとして25本配置した。角筒型固定電極群の放電総面積は、150cm(幅手方向の長さ)×4cm(搬送方向の長さ)×25本(電極の数)=15000cm2であった。
【0353】
対抗電極間より以下に示す反応ガスを導入し、使用済みガスの排気を行いつつ、上記作製した、ハードコート層を有する各セルロースエステルフィルム上に、金属酸化物層を以下に示す順次4層の構成で形成し反射防止層とした(それぞれの膜厚については以下に示した)。
【0354】
尚、プラズマ放電処理装置には、固定電極側に、連続周波数13.56MHz、0.8kV/mmの高周波電圧(パール工業社製高周波電源)を供給し、ロール電極側には、連続周波数100kHz、8kV/mmの高周波電圧(ハイデン研究所製高周波電源)を供給した。また、ロール電極は、ドライブを用いてセルロースエステルフィルムの搬送に同期して回転させた。
【0355】
なお、固定電極とロール電極の間隙は1mm、反応ガスの圧力は大気圧+1kPaとして行った。金属酸化物層を形成する為にプラズマ放電処理に用いた反応ガス(酸化珪素層形成用反応ガス)の組成を以下に記す。尚、反応ガス中の液体成分は気化器によって蒸気とし、加温しながら放電部に供給した。
【0356】
《反射防止層の層構成、層の膜厚、反応ガスの種類》
ハードコート層上に、第1酸化チタン層、第1酸化珪素層、第2酸化チタン層、第2酸化珪素層の順に設けた。
【0357】
《反応ガスの種類》
反射防止層の形成に用いた反応ガスを以下に示す。
【0358】
(反応ガスA):酸化チタン層(高屈折率層)形成用
窒素 68.7体積%
アルゴン 30体積%
反応ガス(酸素ガス) 1体積%
反応ガス(テトライソプロポキシチタン蒸気) 0.3体積%
(反応ガスB):酸化珪素層(低屈折率層)形成用
窒素 98.7体積%
反応ガス(酸素ガス) 1体積%
反応ガス(テトラエトキシシラン蒸気) 0.3体積%
(反応ガスC):酸化珪素層(低屈折率層)形成用
窒素 99.2体積%
反応ガス(酸素ガス) 0.5体積%
反応ガス(メチルトリエトキシシラン蒸気) 0.3体積%
得られた各光学フィルムについて、以下の防汚処理を行い防汚層付きフィルムを作製した。
【0359】
《防汚層付きフィルムの作製》
反射防止加工を行った基材フィルム1または2を用いて、金属酸化物層(酸化珪素層)上に、表1に記載のように、下記組成物1〜5を用いて、防汚層を設けて、防汚層付き反射防止フィルムを各々作製した(実施例1〜11及び比較例1、2)。
【0360】
用いた基材フィルム、反射防止層形成方法、用いた防汚層用組成物、防汚層形成後の熱処理等、各実施例、比較例について表1に示した。
【0361】
〈塗布方法〉
反射防止加工面上にウエット膜厚10μmとなるように下記組成物1〜5を表1に示すようにそれぞれ塗布し、80℃5分間乾燥し、表1に示すように必要に応じて更に熱処理を加えた(実施例結果参照)。
【0362】
(組成物1)
イソプロピルアルコール98質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル1.83質量部、硝酸(1.38)0.03質量部を均一に混合した。この液中にヘプタデカフルオロデシルトリイソプロポキシシラン〔CF3(CF2)7CH2CH2Si(OC3H7)3〕0.05質量部、ジメチルジメトキシシラン0.05質量部を添加して均一に混合して組成物1を調製した。
【0363】
(組成物2)
ヘプタデカフルオロデシルトリイソプロポキシシランをヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン〔CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)3〕としたこと以外は、組成物1と同様にして組成物2を調製した。
【0364】
(組成物3)
ヘプタデカフルオロデシルトリイソプロポキシシランをヘプタデカフルオロデシルジメトキモノイソプロポキシシラン〔CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)2(C3H7)〕としたこと以外は、組成物1と同様にして組成物3を調製した。
【0365】
(組成物4)
イソプロピルアルコール79質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル20.00質量部、硝酸(1.38)0.50質量部を均一に混合した。この液中にヘプタデカフルオデシルトリイソプロポキシシラン〔CF3(CF2)7CH2CH2Si(OC3H7)3〕0.5部、ジメチルジメトキシシラン0.5質量部を添加して均一に混合して組成物4を調製した。
【0366】
(組成物5)
ディスプレイ表面用防汚コーティング剤ダイキン工業製オプツールDSX(HFE20%溶液)を住友3M社HFE−7200にて200倍に希釈して作製した。
【0367】
実施例1〜11及び比較例1、2で作製した光学フィルムについて以下の評価を行った。
【0368】
《評価方法》
(n−ヘキサデカン接触角)
協和界面化学株式会社製接触角計CA−X型を用い、23℃55%RHにて24時間調湿したサンプルを液滴径1.0mmにてそのままの温湿度下にて測定した。
【0369】
(スチールウール耐傷性(SW))
1cm2当たり100gの重りを載せた日本スチールウール(株)製:ボンスター#0000のスチールウールを用い、22mmφに切断し、試料表面を10回擦って、発生する傷の数を目視でカウントした。
【0370】
(ブラックバンド)
出来上がった幅1330mmのフィルムを100mmの紙管に、防汚コート面を内側にして長さ1200m巻き取り、50℃、80%にて1ヶ月放置した後に、巻き取り直後からフィルム同士の貼り付きが無いかどうかを以下のように判断した。
【0371】
なし;目視で変化が無い。
あり;フィルム同士が張り付いており、奥側のフィルムが見える部分がある。
【0372】
【表1】
【0373】
以上のように、本発明に係わる防汚層を有する光学フィルムは接触角等は比較例と同等であり、特に耐傷性が優れ、またクッツキを示すブラックバンドが観察されないことから、物理的特性に優れていることがわかる。
【0374】
【発明の効果】
防汚性にすぐれ、又耐傷性のよいフィルム同士のブロッキングを起こしにくい光学フィルムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセルロースエステルフィルムを製造する装置の模式図である。
【図2】本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
【図3】本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図4】図2に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図5】角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 エンドレスステンレスベルト
2 ダイ
3、4 乾燥ゾーン
5 流延部
6 剥離部
7 剥離ロール
8 第1乾燥ゾーン
9 搬送ロール
8′ 第2乾燥ゾーン
8″ 第3乾燥ゾーン
W 巻き取り部
10 プラズマ放電処理装置
11 第1電極
12 第2電極
21 第1電源
22 第2電源
【発明の属する技術分野】
本発明は防汚コート剤と該コート剤により表面を防汚処理した光学フィルム、該光学フィルムを用いた画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネルなどのフラットパネルディスプレイやCRTのような画像表示装置において、視認性向上のための外光映り込み防止プラスチックフィルムが提案されている。このフィルムに求められる特性として外光映り込み防止機能の他に、傷防止、埃、汚れ付着防止などの物性が必要とされる。画像表示装置に求められる汚れ防止性能としては、指脂、口紅、その他の液体が付着しにくく、拭き取りやすいことが必要とされる。このような汚れ防止のための技術として特許文献1(特開昭64−86101号公報)には、防汚性を有する有機珪素化合物を付与する方法が開示されている。しかしながらこのような有機珪素化合物を用いた方法では、撥油性が十分でなく、表面に指脂が付いたときに除去しにくい。そのため例えば特許文献2(特開2000−144097号公報)、特許文献3(特開2001−48590号公報)に開示されているように、パーフルオロアルキル基を有する化合物を表面に付与する方法が知られている。しかしながらこのような方法では、溶媒として、高額で地球温暖化要因となるフッ素含有溶媒を少なくとも使用しなければならず、昨今問題となっている環境安全性の観点から好ましくない。フッ素を含まない有機溶媒によって処理をすると、先に付着した化合物が表面エネルギーを低下させ、溶剤を弾いてしまい、表面にムラが出来てしまう。
【0003】
一方自動車、船舶の前面ガラスに撥水処理を行う方法が、例えば特許文献4(特開平9−13017号公報)に開示されている。この方法は、撥水膜をガラス表面に付与することによって、雨滴を弾いて前方の視界を確保するものである。
【0004】
【特許文献1】
特開昭64−86101号公報
【0005】
【特許文献2】
特開2000−144097号公報
【0006】
【特許文献3】
特開2001−48590号公報
【0007】
【特許文献4】
特開平9−13017号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、指脂、口紅等の汚れが付着しにくく、また拭き取り容易で、フィルムの光学的特性、物理的特性を損なわない防汚処理を光学フィルムに施すことにあり、該防汚処理を施した画像表示装置用の光学フィルムを得ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意検討を行った結果、上記目的は以下の手段によって達成されることを見いだした。
【0010】
1.フッ素を含まない有機溶媒で0.01〜10質量%に希釈されたフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物溶液でフィルム基材表面を防汚処理したことを特徴とする光学フィルム。
【0011】
2.前記フルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物において、シラン化合物中のフルオロアルキル基が、Si原子1つに対し、1つ以下の割合でSi原子と結合しており、残りは加水分解性基もしくはシロキサン結合基であることを特徴とする前記1に記載の光学フィルム。
【0012】
3.前記フルオロアルキル基を有するシラン化合物が、下記一般式(A)で表され、かつ該シラン化合物の濃度を0.01〜5質量%に希釈した溶液で防汚処理することを特徴とする前記2に記載の光学フィルム。
【0013】
一般式(A)
CF3(CF2)m(CH2)n−Si−(ORa)3
(mは1〜10の整数。nは0〜10の整数。Raは同一もしくは異なるアルキル基を表す。)
4.酸を添加してpHを5以下に調整した溶液によってフィルム基材表面を防汚処理したことを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0014】
5.前記一般式(A)で表される化合物中、Raが炭素原子数3つ以下であり炭素と水素のみからなるアルキル基であることを特徴とする前記3に記載の光学フィルム。
【0015】
6.フィルム基材の最表層がCVD法、もしくはゾルゲル法によって作製された金属酸化物層であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0016】
7.反射防止機能を有することを特徴とする前記6に記載の光学フィルム。
8.前記7に記載の光学フィルムを表面に有する画像表示装置。
【0017】
9.フッ素を含まない有機溶媒で0.01〜5質量%に希釈されたフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物溶液に、アルコキシシランまたはアルキルアルコキシシランを0.01〜15質量%添加して成した組成物によってフィルム基材表面を防汚処理したことを特徴とする光学フィルム。
【0018】
10.前記フルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物において、シラン化合物中のフルオロアルキル基が、Si原子1つに対し、1つ以下の割合でSi原子と結合されており、残りが加水分解性基もしくはシロキサン結合基であることを特徴とする前記9に記載の光学フィルム。
【0019】
11.前記フルオロアルキル基を有するシラン化合物が、前記一般式(A)で表され、かつ該シラン化合物の濃度を0.01〜5質量%に希釈した溶液で防汚処理することを特徴とする前記10に記載の光学フィルム。
【0020】
12.酸を添加してpHを5以下に調整した溶液によってフィルム基材表面を防汚処理したことを特徴とする前記9〜11のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0021】
13.有機溶媒の濃度を98質量%以上とした溶液で防汚処理することを特徴とする前記9〜12のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0022】
14.有機溶媒中、高沸点溶媒の比率を0.5〜2質量%とした溶液で防汚処理することを特徴とする前記9〜12のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0023】
15.前記一般式(A)で表される化合物中、Raが炭素原子数3つ以下であり炭素と水素のみからなるアルキル基であることを特徴とする前記11に記載の光学フィルム。
【0024】
16.フィルム基材の最表層がCVD法、もしくはゾルゲル法によって作製された金属酸化物層であることを特徴とする前記9〜15のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0025】
17.反射防止機能を有することを特徴とする前記16に記載の光学フィルム。
【0026】
18.前記17に記載の光学フィルムを表面に有する画像表示装置。
19.フッ素を含まない有機溶媒で0.01〜5質量%に希釈されたフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物溶液に、珪素イソシアネート化合物を0.01〜5質量%添加して成した組成物によってフィルム基材表面を防汚処理したことを特徴とする光学フィルム。
【0027】
20.前記フルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物において、シラン化合物中のフルオロアルキル基が、Si原子1つに対し、1つ以下の割合でSi原子と結合されており、残りが加水分解性基もしくはシロキサン結合基であることを特徴とする前記19に記載の光学フィルム。
【0028】
21.前記フルオロアルキル基を有するシラン化合物が、前記一般式(A)で表され、かつ該シラン化合物の濃度を0.01〜5質量%に希釈した溶液で防汚処理することを特徴とする前記20に記載の光学フィルム。
【0029】
22.酸を添加してpHを7以下に調整した溶液によってフィルム基材表面を防汚処理したことを特徴とする前記19〜21のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0030】
23.前記一般式(A)で表される化合物中、Raが炭素原子数3つ以下であり炭素と水素のみからなるアルキル基であることを特徴とする前記21に記載の光学フィルム。
【0031】
24.フィルム基材の最表層がCVD法、もしくはゾルゲル法によって作製された金属酸化物層であることを特徴とする前記19〜23のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0032】
25.反射防止機能を有することを特徴とする前記24に記載の光学フィルム。
【0033】
26.前記25に記載の光学フィルムを表面に有する画像表示装置。
以下、本発明の詳細について説明する。
【0034】
前記特開平9−13017号公報に記載されたような自動車用撥水コート剤は、指脂、口紅等の付着の防止、或いはその拭き取り容易性から、良好な防汚性を有している。
【0035】
本発明者らはフィルムへこれらの撥水性コートを適用し防汚処理を行うに際しての最適な条件を求めることによって、フィルムに対して良好な防汚性を有し、基材フィルムの光学的特性、物理的特性を損なわない防汚処理方法をみいだした。本発明に係わる防汚処理方法によれば表面の傷等の防止ができ、またフィルム同士の貼り付き(ブロッキング)抑制に効果がある。
【0036】
本発明に係る防汚層は、請求項1に記載のように、フッ素を含まない有機溶媒で0.01〜10質量%に希釈されたフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物溶液をコーティングして作製する。
【0037】
上記フッ素系シラン化合物としては、たとえば、信越化学社製KBM7803(ヘプタデカトリフルオロデシルトリメトキシシラン)、KBM7103(トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)などを市販品として挙げることができる。
【0038】
即ち、本発明においては、基材フィルム表面を、フッ素を含まない有機溶媒で0.01〜10質量%に希釈されたフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物溶液で防汚処理することで基材フィルムの光学特性等に影響を与えることがない。
【0039】
また、前記フルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物のなかでも、シラン化合物中のフルオロアルキル基が、Si原子1つに対し、1つ以下の割合でSi原子と結合されており、残りは加水分解性基もしくはシロキサン結合基であるシラン化合物が好ましい。
【0040】
ここでいう加水分解性の基としては、例えばアルコキシ基等の基であり、加水分解によりヒドロキシル基となり、それにより前記シラン化合物は重縮合物を形成する。
【0041】
例えば、上記シラン化合物は水と(必要なら酸触媒の存在下)、副生するアルコールを留去しながら、通常、室温〜100℃の範囲で反応させる。これによりアルコキシシランは(部分的に)加水分解し、一部縮合反応が起こり、ヒドロキシル基を有する加水分解物として得ることができる。加水分解、縮合の程度は、反応させる水の量により適宜調節することができるが、本発明ににおいては、防汚処理に用いるシラン化合物溶液に積極的には水を添加せず、調製後、主として乾燥時に、空気中の水分等により加水分解反応を起こさせるため溶液の固形分濃度を薄く希釈して用いることが好ましい。
【0042】
上記シラン化合物溶液を、防汚層形成用組成物として用いて、これを基材フィルム上に塗布し、加水分解、重縮合を基材上で進行させることで、撥水性の性質を基材フィルム表面に付与する、本発明に係わる防汚層を基材上に形成することができる。
【0043】
好ましくは、前記防汚層形成用組成物において、前記フルオロアルキル基を有するシラン化合物は下記一般式(A)で表され、かつ該シラン化合物の濃度を0.01〜5質量%に希釈した溶液として用いて、防汚処理することである
一般式(A)
CF3(CF2)m(CH2)n−Si−(ORa)3
ここにおいて、mは1〜10の整数。nは0〜10の整数。Raは同一もしくは異なるアルキル基を表す。
【0044】
前記一般式(A)で表される化合物中、Raは炭素原子数3つ以下であり炭素と水素のみからなるアルキル基、例えば、メチル、エチル、イソプロピル等の基が好ましい。
【0045】
これら本発明において好ましく用いられるフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物としては、CF3(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CH2)2Si(OC2H5)3、CF3(CH2)2Si(OC3H7)3、CF3(CH2)2Si(OC4H9)3、CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)5(CH2)2Si(OC2H5)3、CF3(CF2)5(CH2)2Si(OC3H7)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OC2H5)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OC3H7)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)(OC3H7)2、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)2OC3H7、CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3(OC2H5)2、CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3(OC3H7)2、(CF3)2CF(CF2)8(CH2)2Si(OCH3)3、C7F15CONH(CH2)3Si(OC2H5)3、C8F17SO2NH(CH2)3Si(OC2H5)3、C8F17(CH2)2OCONH(CH2)3Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)(OC2H5)2、CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)(OC3H7)2、CF3(CF2)7(CH2)2Si(C2H5)(OCH3)2、CF3(CF2)7(CH2)2Si(C2H5)(OC3H7)2、CF3(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CH2)2Si(CH3)(OC2H5)2、CF3(CH2)2Si(CH3)(OC3H7)2、CF3(CF2)5(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)5(CH2)2Si(CH3)(OC3H7)2、CF3(CF2)2O(CF2)3(CH2)2Si(OC3H7)、C7F15CH2O(CH2)3Si(OC2H5)3、C8F17SO2O(CH2)3Si(OC2H5)3、C8F17(CH2)2OCHO(CH2)3Si(OCH3)3などが挙げられるが、この限りでない。
【0046】
これらのシラン化合物を用いる際には、フッ素を含まない有機溶媒で0.01〜10質量%、好ましくは0.03〜5質量%、さらに好ましくは0.05〜2質量%に希釈された状態で用いる。
【0047】
本発明において、前記シラン化合物溶液を調製するために好ましく用いられるフッ素を含まない有機溶媒には、以下のものがあげられる。
【0048】
本発明の防汚層用の塗布組成物の溶媒としては、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテル及び/又はプロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステル、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルとしては具体的にはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなど。又、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステルとしては特にプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、具体的にはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどがあげられる。プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテル及び/又はプロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステルなど、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酪酸エチルなどのエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミドその他の溶媒などがあげられる。或いは、これらの溶媒が、適宜混合されて用いられる。混合される溶媒としては、特にこれらに限定されるものではない。
【0049】
特に好ましい範囲としては、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる1種類以上の有機溶媒である。
【0050】
これらの溶媒中には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールのような常圧における沸点が100℃未満のもの(低沸点溶媒)と、プロピレングリコールモノメチルエーテル、n−ブチルアルコールのような沸点が100℃以上のもの(高沸点溶媒)を併用することが好ましく、特に沸点が60〜98℃のものと、100〜160℃のものを併用することが好ましい。併用する場合の低沸点溶媒と高沸点溶媒の比率は、低沸点溶媒は組成物中、98.0質量%以上であり、高沸点溶媒が0.5〜2質量%であることが好ましい。
【0051】
本発明の防汚層形成用組成物においては、酸を添加してpHを5.0以下に調整し用いることが好ましい。酸は前記シラン化合物の加水分解を促し、重縮合反応の触媒として作用するので、基材表面にシラン化合物の重縮合膜の形成を容易にし、防汚性を高めることができる。pHは1.5〜5.0の範囲が良く、1.5以下では溶液の酸性が強すぎて、容器や配管をいためる恐れがあり、5以上では反応が進行しにくい。好ましくはpH2.0〜4.0の範囲である。
【0052】
本発明ににおいては、防汚処理に用いるシラン化合物溶液に積極的には水を添加せず、調製後、主として乾燥時に、空気中の水分等により加水分解反応を起こさせる。そのために溶液の固形分濃度を希釈したところで用いる。処理液に水を添加しすぎると、その分ポットライフが短くなる。
【0053】
本発明においては硫酸、塩酸、硝酸、次亜塩素酸、ホウ酸、フッ酸。好ましくは塩酸、硝酸等の無機酸のほか、スルホ基(スルホン酸基ともいう)またはカルボキシル基を有する有機酸、例えば、酢酸、ポリアクリル酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メチルスルホン酸等が用いられる。有機酸は1分子内に水酸基とカルボキシル基を有する化合物であればいっそう好ましく、例えば、クエン酸または酒石酸等のヒドロキシジカルボン酸が用いられる。また、有機酸は水溶性の酸であることが更に好ましく、例えば上記クエン酸や酒石酸の他に、レブリン酸、ギ酸、プロピオン酸、リンゴ酸、コハク酸、メチルコハク酸、フマル酸、オキサロ酢酸、ピルビン酸、2−オキソグルタル酸、グリコール酸、D−グリセリン酸、D−グルコン酸、マロン酸、マレイン酸、シュウ酸、イソクエン酸、乳酸等が好ましく用いられる。また、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、アトロバ酸等も適宜用いることができる。
【0054】
添加量は、前記シラン化合物の部分加水分解物100質量部に対して0.1質量部〜10質量部、好ましくは0.2質量部〜5質量部がよい。また、水の添加量については部分加水分解物が理論上100%加水分解し得る量以上であればよく、100%〜300%相当量、好ましくは100%〜200%相当量を添加するのがよい。
【0055】
このようにして得られた防汚層用の塗布組成物は極めて安定である。
本発明に係わる防汚処理方法においては、このように得られた前記防汚層用の塗布組成物を基材フィルム上に均一に塗布して、防汚層を形成する。塗布方法としては、何れの方法でもよく、通常のディップコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター、押し出しコーター等を用いる方法が挙げられる。また、より防汚層の防汚機能や膜付き、その他の物性をより良好なものにするために、紫外線照射、加熱処理、プラズマ処理等を行ってもよい。
【0056】
また、防汚層用の塗布組成物調製後、熟成工程を設けることより、有機珪素化合物の加水分解、縮合による架橋が充分に進み、得られた被膜の特性が優れたものとなる。熟成は、前記シラン化合物を溶解し、pH等を調整して、調製した塗布組成物溶液を放置すればよい。放置する時間は、上述の架橋が所望の膜特性を得るのに充分な程度進行する時間である。具体的には用いる触媒の種類にもよるが、硝酸では室温で1時間以上、酢酸では数時間以上、8時間〜1週間程度で充分であり、通常3日前後である。熟成温度は熟成時間に影響を与え、極寒地では20℃付近まで加熱する手段をとった方がよいこともある。一般に高温では熟成が早く進むが、100℃以上に加熱するとゲル化が起こるので、せいぜい50〜60℃までの加熱が適切である。
【0057】
フッ素含有のシラン化合物を基材フィルムに適用することによって、防汚層の低屈折率化及び撥水・撥油性付与の点で好ましいのみでなく、耐傷性が高く、またフィルム同士のブロッキングに特に優れるという効果がある。
【0058】
本発明においては、前記フルオロアルキル基を有するシラン化合物を含有する、フッ素を含まない有機溶媒溶液に、更に、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシランを添加して成した組成物を用いると更に好ましい。
【0059】
これらのフッ素を含有しないアルコキシシラン、アルキルアルコキシシランの例としては、公知のいずれのシラン化合物でもよいが、代表的な例を以下に挙げる。
【0060】
これらの例としては、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)、アルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等)、ジアルキルジアルコキシシラン等が挙げられる。
【0061】
これらのアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン類は、前記防汚層用の塗布組成物調製の際に、前記フッ素を含有のシラン化合物に加えて、前記0.01〜15質量%の範囲で混合して用いればよく、同様に加水分解、縮合することで、前記記フッ素を含有のシラン化合物と共に重縮合した一体となった膜を形成する。
【0062】
これらのアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン類を前記フッ素を含有のシラン化合物と混合して用いることで、膜強度を高め、耐傷性や重ねたときのブロッキン防止に更に効果がある。
【0063】
また、更に、フルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物溶液に、珪素イソシアネート化合物を0.01〜5質量%添加して成した組成物を用いることも、形成される防汚層の膜強度を更に改善し、表面の傷付きの防止やまた、フィルム同士を重ねた際の貼り付き(ブロッキング)の抑制により一層の効果を奏する。
【0064】
本発明で用いられる珪素イソシアネート化合物としては、Si(NCO)4、CH3Si(NCO)3、(CH3)2Si(NCO)2、(CH3)3SiNCO、CH2=CHSi(NCO)3、C2H5Si(NCO)3、などが挙げられるが、好ましくはSi(NCO)4、CH3Si(NCO)3であり、本発明の課題である環境安全性の観点からSi(NCO)4であることがさらに好ましい。
【0065】
これらの珪素イソシアネート化合物を前記の量、防汚層形成組成物中に混合させることで、前記シラン化合物による架橋反応をより完全に行うことができ前記膜物性の改良効果が大きい。これらの化合物は、加水分解には関与しないが、加水分解により形成した水酸基(シラノール基)と反応することで前記シラノール基同士の縮合を補完し膜を強固なものとする。
【0066】
これら珪素イソシアネート化合物を用いる際の有機溶媒についても前記フッ素を含有しない有機溶媒をそのまま用いればよいが、前記あげられた有機溶媒のうち、珪素イソシアネート化合物を混合して用いる際には、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒が特に好ましい。
【0067】
また、珪素イソシアネート化合物を混合して用いる際には、pHが7.0以下であればよく、2.0〜7.0の範囲が良い。pHが7.0以上では前記シラノール基との反応が進行しにくくなる。中でも好ましくはpHが3.0〜6.0の範囲である。
【0068】
防汚層の屈折率は1.30〜1.50であることが好ましく、更に好ましくは、1.35〜1.49である。1.30以下であると、膜硬度がとれず、1.50以上であると表面反射率が増大してしまう。またフルオロアルキル基を含有するシラン化合物の加水分解重縮合物から形成される樹脂を構成成分とする防汚層は、動摩擦係数が0.03〜0.25の範囲が好ましい。
【0069】
本発明の光学フィルムは、長尺フィルム上に直接または他の層を介して金属酸化物層を形成するが、樹脂硬化層あるいは他の層を介して形成することがより好ましい。上記のようにして得られた長尺フィルム上には、熱硬化樹脂層あるいは活性線硬化樹脂層を形成することが好ましく、特に紫外線硬化樹脂層を設けることが好ましい。
【0070】
樹脂硬化層は、種々の機能を有していてもよく、例えば、クリアハードコート層であってもよく、また帯電防止機能を有していてもよい。樹脂硬化層はエチレン性不飽和結合を有するモノマーを1種以上含む成分を重合させて形成した層であることが好ましい。エチレン性不飽和結合を有するモノマーを含む成分を重合させて形成した樹脂層としては、活性線硬化樹脂あるいは熱硬化樹脂を硬化させて形成された層が好ましく用いられるが、特に好ましく用いられるのは活性線硬化樹脂層である。ここで、活性線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。
【0071】
活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。
【0072】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0073】
具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。
【0074】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させる容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151110号に記載のものを用いることができる。
【0075】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂としては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させる容易に形成されるものを挙げることができ、特開昭59−151112号に記載のものを用いることができる。
【0076】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させて生成するものを挙げることができ、特開平1−105738号に記載のものを用いることができる。
【0077】
これらの光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾイン及び誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。光増感剤と共に使用してもよい。
【0078】
上記光反応開始剤も光増感剤としても使用できる。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。
【0079】
樹脂モノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
【0080】
本発明において使用し得る市販品の紫外線硬化樹脂としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC700、RC750(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製)等を適宜選択して利用できる。
【0081】
これらの活性線硬化樹脂層は公知の方法で塗設することができる。
紫外線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化させるための光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm2程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cm2である。近紫外線領域〜可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることによって効率よく形成することができる。
【0082】
紫外線硬化樹脂層組成物塗布液の有機溶媒としては、例えば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、あるいはこれらを混合し利用できる。例えば、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5質量%〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0083】
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、前述のものを用いることができる。塗布量はウェット膜厚として0.1μm〜30μmが適当で、好ましくは、0.5μm〜15μmである。紫外線硬化性樹脂組成物は塗布乾燥中または後に、紫外線を照射するのがよく、照射時間としては0.5秒〜5分が好ましく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率または作業効率の観点から3秒〜2分がより好ましい。
【0084】
硬化樹脂層塗布液には、ブロッキングを防止するため、また導電性を付与するため、また対擦り傷性等を高めるために、無機化合物あるいは有機化合物の微粒子を加えることもでき、それらの種類としては、前述のマット剤の微粒子とほぼ同様である。これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.005〜5μmが好ましく0.01〜1μmであることが特に好ましい。紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、該樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましい。
【0085】
紫外線硬化樹脂層はJIS−B−0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が1〜50nmのクリアハードコート層であってもよい。また、紫外線硬化樹脂層の屈折率は1.45〜1.7、好ましくは1.49〜1.65であることが好ましい。
【0086】
《長尺フィルム》
本発明に係る長尺フィルムについて説明する。
【0087】
本発明に係る長尺フィルムとしては、製造が容易であること、または反射防止層等との接着性が良好である、光学的に等方性である、光学的に透明であること等が好ましい要件として挙げられる。
【0088】
上記の性質を有していれば特に限定はないが、例えば、セルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムまたはアクリルフィルム等を挙げることができる。また、アートン(R)(JSR株式会社製)で知られるノルボルネンフィルム、ゼオノア(R)(日本ゼオン株式会社製)で知られるシクロオレフィン樹脂フィルム等もあげることができる。中でも、セルローストリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)が好ましく、本発明においては、特にセルローストリアセテートフィルム(例えばコニカタック 製品名KC8UX2MW、KC4UX2MW(コニカ(株)製)が好ましく用いられる。)またはセルロースアセテートプロピオネートフィルムが、製造上、コスト面、透明性、等方性、接着性等の観点から好ましく用いられる。
【0089】
基材フィルム支持体の光学特性としては膜厚方向のリターデーションRtが0nm〜300nm、面内方向のリターデーションR0が0nm〜1000nmのものが好ましく用いられる。
【0090】
(セルロースエステルフィルム)
低い反射率の積層体が得られるため、基材フィルムとしてはセルロースエステルフィルムを用いることが好ましい。セルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく、中でもセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。
【0091】
特にアセチル基の置換度をX、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとしたとき、XとYが下記の範囲にあるセルロースの混合脂肪酸エステルを有する支持体上に凹凸層と高屈折率層及び低屈折率層を設けた低反射フィルムが好ましく用いられる。
【0092】
2.3≦X+Y≦3.0
0.1≦Y≦1.2
特に、2.5≦X+Y≦2.85
0.3≦Y≦1.2であることが好ましい。
【0093】
本発明に係る支持体として、セルロースエステルを用いる場合、セルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。これらのセルロースエステルは、アシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いてセルロース原料と反応させて得ることができる。
【0094】
アシル化剤が酸クロライド(CH3COCl、C2H5COCl、C3H7COCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には、特開平10−45804号に記載の方法等を参考にして合成することができる。また、本発明に用いられるセルロースエステルは各置換度に合わせて上記アシル化剤量を混合して反応させたものであり、セルロースエステルはこれらアシル化剤がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度(モル%)という。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している(実際には2.6〜3.0)。
【0095】
本発明に用いられるセルロースエステルとしては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基またはブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルが特に好ましく用いられる。なお、ブチレートを形成するブチリル基としては、直鎖状でも分岐していてもよい。
【0096】
プロピオネート基を置換基として含むセルロースアセテートプロピオネートは耐水性に優れ、液晶画像表示装置用のフィルムとして有用である。
【0097】
アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することができる。
【0098】
セルロースエステルの数平均分子量は、70,000〜250,000が、成型した場合の機械的強度が強く、且つ、適度なドープ粘度となり好ましく、更に好ましくは、80,000〜150,000である。
【0099】
(流延製膜法による支持体の作製)
これらセルロースエステルは後述するように一般的に溶液流延製膜法と呼ばれるセルロースエステル溶解液(ドープ)を、例えば、無限に移送する無端の金属ベルトまたは回転する金属ドラムの流延用支持体上に加圧ダイからドープを流延(キャスティング)し製膜する方法で製造されることが好ましい。
【0100】
これらドープの調製に用いられる有機溶媒としては、セルロースエステルを溶解でき、かつ、適度な沸点であることが好ましく、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができるが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。
【0101】
また、下記の製膜工程に示すように、溶媒蒸発工程において流延用支持体上に形成されたウェブ(ドープ膜)から溶媒を乾燥させるときに、ウェブ中の発泡を防止する観点から、用いられる有機溶媒の沸点としては、30〜80℃が好ましく、例えば、上記記載の良溶媒の沸点は、メチレンクロライド(沸点40.4℃)、酢酸メチル(沸点56.32℃)、アセトン(沸点56.3℃)、酢酸エチル(沸点76.82℃)等である。
【0102】
上記記載の良溶媒の中でも溶解性に優れるメチレンクロライド、酢酸メチルが好ましく用いられ、特にメチレンクロライドが全有機溶媒に対して50質量%以上含まれていることが好ましい。
【0103】
上記有機溶媒の他に、0.1質量%〜30質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。特に好ましくは5〜30質量%で前記アルコールが含まれることが好ましい。これらは上記記載のドープを流延用支持体に流延後、溶媒が蒸発を始めアルコールの比率が多くなるとウェブ(ドープ膜)がゲル化し、ウェブを丈夫にし流延用支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。
【0104】
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることができる。
【0105】
これらの溶媒のうち、ドープの安定性がよく、沸点も比較的低く、乾燥性もよく、且つ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。好ましくは、メチレンクロライド70質量%〜95質量%に対してエタノール5質量%〜30質量%を含む溶媒を用いることが好ましい。メチレンクロライドの代わりに酢酸メチルを用いることもできる。このとき、冷却溶解法によりドープを調製してもよい。
【0106】
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムは少なくとも幅手方向に延伸されたものが好ましく、特に溶液流延工程で剥離残溶量が3質量%〜40質量%であるときに幅手方向に1.01倍〜1.5倍に延伸されたものであることが好ましい。より好ましくは幅手方向と長手方向に2軸延伸することであり、剥離残溶量が3質量%〜40質量%であるときに幅手方向及び長手方向に、各々1.01倍〜1.5倍に延伸されることが望ましい。こうすることによって、視認性に優れた低反射フィルムを得ることが出来る。更に、2軸延伸し、後述のナーリング加工をすることによって、長尺状低反射フィルムのロール状での保管中の巻き形状の劣化を著しく改善することができる。
【0107】
このときの延伸倍率としては1.01倍〜1.5倍が好ましく、特に好ましくは、1.03倍〜1.45倍である。
【0108】
更に好ましくは後述する裏面側の突起の数が所定範囲内に調整することにより、ロール状の低反射フィルムの保管安定性の向上効果が得られる。
【0109】
(支持体の透過率)
本発明に係る二軸延伸されたセルロースエステルフィルムは、光透過率が90%以上、より好ましくは93%以上の透明支持体であることが好ましい。
【0110】
(支持体の膜厚と透湿性)
本発明に係るセルロースエステルフィルム支持体は、その厚さが10μm〜100μmのものが好ましく、透湿性は、25℃、90±2%RHにおいて、200g/m2・24時間以下であることが好ましく、更に好ましくは、10〜180g/m2・24時間以下であり、特に好ましくは、160g/m2・24時間以下である。
【0111】
特には、膜厚10μm〜60μmで透湿性が上記範囲内であることが好ましい。
【0112】
ここで、支持体の透湿性は、JIS Z 0208に記載の方法に従い、各試料の透湿性を測定した。
【0113】
(長尺フィルム)
本発明に係る長尺フィルムとは、具体的には、100m〜5000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。更に、上記の長尺フィルムは下記に記載のナーリング加工を施すことがこのましい。ここで、ナーリング加工について説明する。
【0114】
《ナーリング加工》
本発明では、上記の長尺フィルムの幅方向の両端に凹凸を付与して端部を嵩高くするいわゆるナーリング加工が施されていることが好ましい。ここで、ナーリング高さとは、下記のように定義される。
【0115】
ナーリング高さa(μm)のフィルム膜厚d(μm)に対する比率X(%)=(a/d)×100
本発明においては、X=1%〜25%の範囲であることが好ましく、5%〜20%が更に好ましく、10%〜15%が特に好ましい。
【0116】
また、本発明においては、上記のナーリング加工は、フィルムの製膜工程において乾燥終了後、巻き取りの前に設けることが好ましい。
【0117】
(可塑剤)
本発明の低反射フィルムの支持体にセルロースエステルフィルムを用いる場合、下記のような可塑剤を含有するのが好ましい。可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等を好ましく用いることができる。
【0118】
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることができる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
【0119】
ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることができる。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等を用いることができる。グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール等を用いることができる。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0120】
特に、特願2000−338883記載のエポキシ系化合物、ロジン系化合物、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ケトン樹脂、トルエンスルホンアミド樹脂等の添加物を有するセルロースエステルも好ましく用いられる。
【0121】
具体的には、ロジン及びロジン誘導体としては、以下の構造式のものが挙げられる。
【0122】
【化1】
【0123】
上記化合物のうち、KE−604とKE−610は荒川化学工業(株)からそれぞれ酸価237と170で市販されている。同じく、荒川化学工業(株)からアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸及びパラストリン酸3者の混合物のエステル化物として、KE−100及びKE−356が、それぞれの酸価は8と0で市販されている。また、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸及びパラストリン酸3者の混合物は、播磨化成(株)からそれぞれの酸価167、168のG−7及びハートールR−Xで市販されている。
【0124】
本発明に用いるエポキシ樹脂としては、以下の構造を有するものが挙げられる。
【0125】
【化2】
【0126】
アラルダイドEPN1179及びアラルダイドAER260は旭チバ(株)から市販されている。
【0127】
ケトン樹脂としては、以下の構造のものが挙げられる。
【0128】
【化3】
【0129】
ハイラック110及びハイラック110Hは日立化成(株)から市販されている。
【0130】
パラトルエンスルホンアミド樹脂としては、以下の構造のものが挙げられ、トップラーとして、フジアミドケミカル(株)から市販されている。
【0131】
【化4】
【0132】
これらの可塑剤は単独または併用するのが好ましい。
これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1質量%〜20質量%が好ましく、特に好ましくは、3質量%〜13質量%である。
【0133】
(紫外線吸収剤)
本発明に係る支持体に用いられる紫外線吸収剤について説明する。低反射フィルム用の支持体には、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0134】
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
【0135】
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、下記一般式〔1〕で示される化合物が好ましく用いられる。
【0137】
【化5】
【0138】
式中、R1、R2、R3、R4及びR5は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシル基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基または5〜6員の複素環基を表し、R4とR5は閉環して5〜6員の炭素環を形成してもよい。
【0139】
また、上記記載のこれらの基は、任意の置換基を有していてよい。
以下に、本発明に係る紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0140】
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、Ciba製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、Ciba製)
また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては下記一般式〔2〕で表される化合物が好ましく用いられる。
【0141】
【化6】
【0142】
式中、Yは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、及びフェニル基を表し、これらのアルキル基、アルケニル基及びフェニル基は置換基を有していてもよい。Aは水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、シクロアルキル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基または−CO(NH)n−1−D基を表し、Dはアルキル基、アルケニル基または置換基を有していてもよいフェニル基を表す。m及びnは1または2を表す。
【0143】
上記において、アルキル基としては、例えば、炭素数24までの直鎖または分岐の脂肪族基を表し、アルコキシル基としては例えば、炭素数18までのアルコキシル基を表し、アルケニル基としては例えば、炭素数16までのアルケニル基でアリル基、2−ブテニル基等を表す。また、アルキル基、アルケニル基、フェニル基への置換基としてはハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等、ヒドロキシル基、フェニル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等を置換していてもよい)等が挙げられる。
【0144】
以下に一般式〔2〕で表されるベンゾフェノン系化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0145】
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤としては、透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
【0146】
また、特開2001−187825に記載されている分配係数が9.2以上の紫外線吸収剤は、支持体の面品質を向上させ、塗布性にも優れている。特に分配係数が10.1以上の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
【0147】
また、特開平6−148430号に記載の一般式(1)または一般式(2)、特願2000−156039の一般式(3)、(6)、(7)記載の高分子紫外線吸収剤(または紫外線吸収性ポリマー)も好ましく用いられる。高分子紫外線吸収剤としては、PUVA−30M(大塚化学(株)製)等が市販されている。
【0148】
本発明に用いられる紫外線吸収剤添加液の添加方法としては、下記に記載の方法が挙げられる。
【0149】
《添加方法A》
紫外線吸収剤添加液の調製方法としては、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶剤に紫外線吸収剤を溶解してから直接ドープ組成中に添加する。
【0150】
《添加方法B》
紫外線吸収剤添加液の調製方法としては、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶剤に紫外線吸収剤と少量のセルロースエステルを溶解してからインラインミキサーでドープに添加する。
【0151】
本発明においては、添加方法Bの方が、紫外線吸収剤の添加量を容易に調整できるため、生産性に優れていて好ましい。
【0152】
紫外線吸収剤の使用量は化合物の種類、使用条件などにより一様ではないが、通常はセルロースエステルフィルム1m2当り、0.2〜2.0gが好ましく、0.4〜1.5gがさらに好ましく、0.6〜1.0gが特に好ましい。
【0153】
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムには滑り性を付与するために微粒子を添加することができる。微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
【0154】
無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースエステル積層フィルムの濁度を低減できるので、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
【0155】
二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
【0156】
酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
【0157】
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。
【0158】
上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0159】
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムに添加される微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5nm〜16nmであり、特に好ましくは、5nm〜12nmである。これらの微粒子は0.1μm〜5μmの粒径の2次粒子を形成してセルロースエステルフィルムに含まれることが好ましく、好ましい平均粒径は0.1μm〜2μmであり、更に好ましくは0.2μm〜0.6μmである。これにより、フィルム表面に高さ0.1μm〜1.0μm程度の凹凸を形成し、これによってフィルム表面に適切な滑り性を与えることが出来る。
【0160】
本発明に用いられる微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって、1次平均粒子径とした。
【0161】
微粒子の見掛比重としては、70g/リットル以上が好ましく、更に好ましくは、90〜200g/リットルであり、特に好ましくは、100〜200g/リットルである。見掛比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましく、また、本発明のように固形分濃度の高いドープを調製する際には、特に好ましく用いられる。
【0162】
1次粒子の平均径が20nm以下、見掛比重が70g/リットル以上の二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることができる。また例えばアエロジル200V、アエロジルR972V(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、それらを使用することができる。
【0163】
上記記載の見掛比重は二酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーに採り、この時の重さを測定し、下記式で算出したものである。
【0164】
見掛比重(g/リットル)=二酸化珪素質量(g)/二酸化珪素の容積(リットル)
本発明に用いられる微粒子の分散液を調製する方法としては、例えば以下に示すような3種類が挙げられる。
【0165】
《調製方法A》
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて撹拌する。
【0166】
《調製方法B》
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に溶剤に少量のセルローストリアセテートを加え、撹拌溶解する。これに前記微粒子分散液を加えて撹拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0167】
《調製方法C》
溶剤に少量のセルローストリアセテートを加え、撹拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
【0168】
調製方法Aは二酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点で優れている。中でも、上記記載の調製方法Bは二酸化珪素微粒子の分散性と、二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
【0169】
《分散方法》
二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5質量%〜30質量%が好ましく、10質量%〜25質量%がさらに好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0170】
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0171】
セルロースエステルに対する二酸化珪素微粒子の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、二酸化珪素微粒子は0.01質量部〜0.3質量部が好ましく、0.05質量部〜0.2質量部がさらに好ましく、0.08質量部〜0.12質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方がヘイズが低く、凝集物も少ない点が優れている。
【0172】
分散機は通常の分散機が使用できる。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。二酸化珪素微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどがあげられる。
【0173】
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1μm〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.807MPa以上であることが好ましい。更に好ましくは19.613MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
【0174】
上記のような高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)あるいはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)社製UHN−01等が挙げられる。
【0175】
また、微粒子を含むドープを流延支持体に直接接するように流延することが、滑り性が高く、ヘイズが低いフィルムが得られるので好ましい。
【0176】
又、ロール状に巻き取られた後、出荷されるまでの間、汚れや静電気によるゴミ付着等から製品を保護するために通常、包装加工がなされる。この包装材料については、上記目的が果たせれば特に限定されないが、フィルムからの残留溶媒の揮発を妨げないものが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、紙、各種不織布等が挙げられる。繊維がメッシュクロス状になったものは、より好ましく用いられる。
【0177】
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、複数のドープを用いた共流延法等による多層構成を有するものであってもよい。
【0178】
共流延とは、異なったダイを通じて2層または3層構成にする逐次多層流延方法、2つまたは3つのスリットを有するダイ内で合流させ2層または3層構成にする同時多層流延方法、逐次多層流延と同時多層流延を組み合わせた多層流延方法のいずれであっても良い。
【0179】
本発明に係るセルロースエステルフィルムの作製に用いられる好ましい製造装置の例を図1を用いて説明する。
【0180】
図1において、エンドレスステンレスベルト1は、乾燥ゾーン3と乾燥ゾーン4の間を循環している。ドープ組成物は、ダイ2から流延部5でエンドレスステンレスベルト1の上に流延され、矢印方向に運ばれ、乾燥ゾーン3と乾燥ゾーン4で、乾燥され、剥離部6で剥離ロール7によりエンドレスステンレスベルト1から剥離される。剥離されたフィルムは、更に第1乾燥ゾーン8を通り、第2乾燥ゾーン8′から、第3乾燥ゾーン8″へ運ばれ、製品として巻き取り部Wで巻き取られる。尚、第1乾燥ゾーン8と第3乾燥ゾーン8″は、パスを長くとるため、搬送ロール9により搬送される。
【0181】
第2乾燥ゾーンにおいては、テンター等の延伸手段により幅手または、幅手と長手の両方向に延伸される。
【0182】
又、本発明で用いられるセルロースエステルは、フィルムにしたときの輝点異物が少ないものが、支持体として好ましく用いられる。本発明において、輝点異物とは、2枚の偏光板を直交に配置し(クロスニコル)、この間にセルロースエステルフィルムを配置して、一方の面から光源の光を当てて、もう一方の面からセルロースエステルフィルムを観察したときに、光源の光がもれて見える点のことである。
【0183】
このとき評価に用いる偏光板は、輝点異物がない保護フィルムで構成されたものであることが望ましく、偏光子の保護にガラス板を使用したものが好ましく用いられる。輝点異物の発生は、セルロースエステルに含まれる未酢化のセルロースがその原因の1つと考えられ、対策としては、未酢化のセルロース量の少ないセルロースエステルを用いることや、また、セルロースエステルを溶解したドープ液の濾過等により、除去、低減が可能である。又、フィルム膜厚が薄くなるほど単位面積当たりの輝点異物数は少なくなり、フィルムに含まれるセルロースエステルの含有量が少なくなるほど輝点異物は少なくなる傾向がある。
【0184】
輝点異物は、輝点の直径0.01mm以上のものが200個/cm2以下であることが好ましく、更に好ましくは、100個/cm2以下、50個/cm2以下、30個/cm2以下、10個/cm2以下であることが好ましいが、特に好ましくは、0であることである。
【0185】
又、0.005mm〜0.01mmの輝点についても200個/cm2以下であることが好ましく、更に好ましくは、100個/cm2以下、50個/cm2以下、30個/cm2以下、10個/cm2以下であることが好ましいが、特に好ましいのは、輝点が0の場合である。0.005mm以下の輝点についても少ないものが好ましい。
【0186】
輝点異物を濾過によって除去する場合、セルロースエステルを単独で溶解させたものを濾過するよりも可塑剤を添加混合した組成物を濾過することが輝点異物の除去効率が高く好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知のものが好ましく用いられるが、セラミックス、金属等も好ましく用いられる。絶対濾過精度としては50μm以下のものが好ましく、更に好ましくは、30μm以下、10μm以下であるが、特に好ましくは、5μm以下のものである。
【0187】
これらは、適宜組み合わせて使用することもできる。濾材はサーフェースタイプでもデプスタイプでも用いることができるが、デプスタイプの方が比較的目詰まりしにくく好ましく用いられる。
【0188】
《バックコート層》
(支持体のバックコート層の突起)
本発明の低反射フィルムは、支持体の一方の面には凹凸層、反射防止層等を有するが、もう一方の面(裏面ともいう)には、表面からの高さが、0.1μm以上の突起を10個〜500個/100μm2有することが好ましく、更に好ましくは、50個〜500個/100μm2であり、特に好ましくは、100個〜450個/100μm2である。
【0189】
ここで、表面の突起数の測定は、光学干渉式表面粗さ計(例えば、WYKO社製 RST PLUS)を用い、フィルム表面から高さ0.1μm以上の突起の数をカウントすることができる。
【0190】
このような裏面側の突起は、あらかじめフィルム中に微粒子を添加する方法、あるいは微粒子を含有する塗布液を塗設してバックコート層を設ける方法によって形成することが出来る。突起の数や大きさは微粒子の添加量や分散状態を制御することによって制御することができる。
【0191】
これによって、各光学干渉層塗設中に一旦ロール状に巻き取りをしてもブロッキングの発生が防止できるだけでなく、次の光学干渉層を塗設する際の塗布むらを著しく低減することができる。塗布むらの原因は完全に明らかにはなっていないが、原因の1つとしてロール状に巻き取ったフィルムを塗布工程に送り出す際の剥離帯電が関係していると推測される。基材フィルム中に微粒子を添加することで、裏面に高さ0.1μm〜10μmの突起を10個〜500個/100μm2有するようにすることができる。このとき、基材フィルムを多層構成として、表層のみに微粒子を含ませることもできる。
【0192】
裏面の突起を上記の範囲に調整することにより、長尺ロール状の低反射フィルムの保管性の改善に効果がある。
【0193】
バックコート層には、樹脂と微粒子が含まれていることが好ましく、添加する微粒子の種類としては、有機化合物でも無機化合物でもよく、例えば、二酸化けい素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を含有させることが好ましい。中でも二酸化けい素がフィルムのヘイズを小さくできるので好ましい。微粒子の2次粒子の平均粒径は0.1μm〜10μmで、その含有量は基材のセルロースエステルに対して0.04質量%〜0.3質量%が好ましい。二酸化けい素のような微粒子には有機物により表面処理されている場合が多いが、これはフィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類(特にメチル基を有するアルコキシシラン類)、シラザン、シロキサン等が挙げられる。微粒子の平均粒径は大きい方がマット効果が大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は5nm〜50nmで、より好ましくは7〜16nmである。二酸化けい素の微粒子としてはアエロジル(株)製のAEROSIL(アエロジル)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600等を挙げることができ、好ましくはAEROSIL(アエロジル)200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することができる。この場合、平均粒径や材質の異なる微粒子、例えば、AEROSIL(アエロジル)200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で使用できる。
【0194】
この塗布組成物には樹脂を含ませることができ、ここで用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体または共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等のセルロースエステル系樹脂、マレイン酸及び/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン共重合体、メチルメタクリレート/ブタジエン/スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン/ブタジエン樹脂、ブタジエン/アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。アクリル樹脂としては、アクリペットMD、VH、MF、V(以上、三菱レーヨン(株)製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(以上、根上工業(株)製)、ダイヤナールBR−50、BR−52、BR−53、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−93、BR−95、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118(以上、三菱レーヨン(株)製)等が用いられる。特に好ましくはジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートのようなセルロースエステル樹脂が用いられる。
【0195】
添加する微粒子の添加量、粒径を調整することによって裏面の突起数を調整することが出来る。また、反射防止層(光学干渉層ともいう)の裏面側に微粒子を含む層を塗設することによって、裏面に高さ0.1μm〜10μmの突起を1〜500個/0.01mm2有する低反射フィルムを提供することができる。
【0196】
上記のような樹脂、微粒子の混合組成物を溶解、膨潤または分散させる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルム等がある。溶解させない溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール等が挙げられる。
【0197】
本発明に用いられるバックコート層には、アンチカール機能を付与することもできる。具体的には支持体を溶解させる溶媒または膨潤させる溶媒を含む組成物を塗布することによって行われる。用いる溶媒としては、溶解させる溶媒または膨潤させる溶媒の混合物の他、さらに溶解させない溶媒を含む場合もある。これらを樹脂フィルムのカール度や樹脂の種類によって適宜選択した割合で混合した組成物及び塗布量を用いて行う。
【0198】
カール防止機能を強めたい場合は、溶解させる溶媒または膨潤させる溶媒の混合比率を大きくし、溶解させない溶媒の比率を小さくするのが効果的である。この混合比率は好ましくは、(溶解させる溶媒または膨潤させる溶媒):(溶解させない溶媒)=10:0〜1:9で用いられる。
【0199】
これらの塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースロールコーター、押し出しコーター等を用いて基材の表面にウェット膜厚1μm〜100μm塗布するのが好ましいが、特に5〜30μmであるとよい。
【0200】
本発明に用いられるバックコート層を塗設する順番は、反射防止層を塗設する前であることが好ましく、更に好ましくは、凹凸層を設ける前に支持体上に設けることである。
【0201】
本発明の低反射フィルムに設けられる各層の組成物の塗布方法としては、ディッピング、スピンコート、ナイフコート、バーコート、エアードクターコート、ブレードコート、スクイズコート、リバースロールコート、グラビアロールコート、カーテンコート、スプレイコート、ダイコート等の公知の塗布方法を用いてことができ、連続塗布または薄膜塗布が可能な塗布方法が好ましく用いられる。
【0202】
前記組成物を基材に塗布する際、塗布液中の固形分濃度や塗布量を調整することにより、層の膜厚及び塗布均一性等をコントロールすることができる。
【0203】
本発明に用いる基材フィルムは、例えば、これが低反射フィルムである場合、反射防止層の中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の各塗布組成物を塗布する時に、塗布部(コーター部分)や乾燥ゾーンの空気中の水分量を制御することが好ましい。塗布時の空気中の水分量制御としては、露点で調整することが容易であり、露点が5℃以上16℃以下が好ましく、9℃以上12℃以下が特に好ましい。露点が5℃以下になると、塗布した膜がもろく傷が入りやすくなり、好ましくない。また、露点が高すぎるとブラッシングが発生し、塗布層が白濁してしまう。塗布時に空気中にある水分が被膜の硬度を上げ、低反射フィルムの高温耐久性を向上していることが判った。この塗布時の露点管理によって、表面粗さRa0.08μm〜0.5μmの低反射フィルムだけでなく、表面粗さ0.01μm〜0.08nm未満の低反射フィルムでも同様の効果を得ることが出来る。
【0204】
裏面側に前記微粒子を含有するバックコート層を設けることも好ましく、また添加する微粒子の大きさや添加量、材質等によって動摩擦係数を調整することができる。バックコート層を設けることにより、動摩擦係数を0.9以下にすることができる。
【0205】
本発明において、基材フィルムは、反射防止加工の他、例えばブロッキング防止加工、クリアハード加工、帯電防止加工、カール防止加工、易接着加工等表面加工されていてもよい。
【0206】
基材フィルムの最表面に形成される金属酸化物層としては、たとえば、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、Fe2O3、Fe3O4、CuO、SiO、SiO2、SnO2、In2O3、In−Sn−O(ITO)、As−Sn−O(ATO)などからなる層が挙げられる。また、金属、酸素以外の成分、例えば炭素、窒素、フッ素を含んでいても構わない。ただし、好ましくはSiO2、SnO2、TiO2、In−Sn−O、特に好ましくはSiO2である。
【0207】
これらのうち、本発明においては、特に反射防止加工されたフィルムが好ましく、透明基材フィルム上に、ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層等の金属酸化物層を含有する層がこの順序の層構成で積層されているものが好ましい。
【0208】
反射防止加工としては、透明基材フィルム上にハードコート層、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の順の層構成も好ましい構成であるが、本発明は特にこられの構成に限定されない。
【0209】
反射防止フィルムにおいて、基材フィルムの最表層の金属酸化物層は低屈折率層であり、従って、本発明の一態様においては、低屈折率層上に防汚層を塗設形成するものである。
【0210】
本発明に係わる反射防止フィルムにおいては、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が0.01μm〜1μmの硬化樹脂層(ハードコート層)を設けることが好ましい。これらは紫外線等の光により硬化する光硬化性樹脂層であることが好ましい。このような紫外線で硬化された樹脂層の上に本発明に係る金属酸化物層を形成させ、次いで、前記金属酸化物層を設け、最上層に上記の防汚層を設けることにより擦り傷耐性に優れた(耐傷性に優れるともいう)、クッツキ難い、反射防止フィルムを得ることができる。
【0211】
金属酸化物層を設ける方法は特に限定されず、ゾルゲル法を用いて塗布により、或いはCVD法、スパッタ、蒸着等によって形成することができるが、本発明においては、例えば、低屈折率層等の最表層の金属酸化物層については、特にCVD法、或いはゾル−ゲル法により作製されることが好ましい。
【0212】
(金属酸化物層を塗設により設ける方法)
金属酸化物層を塗設によって形成する方法について説明する。
【0213】
本発明の反射防止フィルムの基本的な構成において、透明支持体、中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
【0214】
低屈折率層の屈折率<透明支持体の屈折率<中屈折率層の屈折率<高屈折率層の屈折率。
【0215】
中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層を有する反射防止フィルムでは、特開昭59−50401号に記載されているように、中屈折率層が下記数式(1)を、高屈折率層が下記数式(2)を、低屈折率層が下記数式(3)をそれぞれ満足することにより、反射防止フィルムとしての平均反射率をさらに下げる設計が可能となり好ましい。
【0216】
(hλ/4)×0.7<n3d3<(hλ/4)×1.3・・・数式(1)
数式(1)中、hは正の整数(一般に1、2または3)であり、n3は中屈折率層の屈折率であり、そして、d3は中屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、350〜800(nm)の範囲の値である。
【0217】
(jλ/4)×0.7<n4d4<(jλ/4)×1.3・・・数式(2)
数式(2)中、jは正の整数(一般に1、2または3)であり、n4は高屈折率層の屈折率であり、そして、d4は高屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、350〜800(nm)の範囲の値である。
【0218】
(kλ/4)×0.7<n5d5<(kλ/4)×1.3・・・数式(3)
数式(3)中、kは正の奇数(一般に1)であり、n5は低屈折率層の屈折率であり、そして、d5は低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、350〜800(nm)の範囲の値である。
【0219】
この他、透明支持体、ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の順の層構成も好ましい構成であるが、本発明は特にこられの構成に限定されない。
【0220】
〈高屈折率層及び中屈折率層〉
本発明においては、反射率の低減のために、透明支持体若しくはハードコート層を付与した透明支持体と低屈折率層との間に、高屈折率層を設けることが好ましい。また、透明支持体と高屈折率層との間に中屈折率層を設けることは、反射率の低減のために好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.55〜2.30であることが好ましく、1.57〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、透明支持体の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.55〜1.80であることが好ましい。高屈折率層及び中屈折率層の厚さは、5nm〜1μmであることが好ましく、10nm〜0.2μmであることがさらに好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。高屈折率層及び中屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。高屈折率層及び中屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。高屈折率層及び中屈折率層は、無機微粒子とバインダーポリマーとを含むことが好ましい。
【0221】
高屈折率層及び中屈折率層に無機微粒子を用いる場合は、無機微粒子の屈折率は1.80〜2.80であることが好ましく、1.90〜2.80であることがさらに好ましい。無機微粒子の一次粒子の重量平均径は、1〜150nmであることが好ましく、1〜100nmであることがさらに好ましく、1〜80nmであることが最も好ましい。層中での無機微粒子の重量平均径は、1〜200nmであることが好ましく、5〜150nmであることがより好ましく、10〜100nmであることがさらに好ましく、10〜80nmであることが最も好ましい。無機微粒子の平均粒径は、20〜30nm以上であれば光散乱法により、20〜30nm以下であれば電子顕微鏡写真により測定される。無機微粒子の比表面積は、BET法で測定された値として、10〜400m2/gであることが好ましく、20〜200m2/gであることがさらに好ましく、30〜150m2/gであることが最も好ましい。
【0222】
無機微粒子は、金属の酸化物または硫化物から形成された粒子であることが好ましい。金属の酸化物または硫化物の例として、二酸化チタン(例、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム及び硫化亜鉛が挙げられる。なかでも、酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。無機微粒子は、これらの金属の酸化物または硫化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。
【0223】
また、無機微粒子はシランカップリング剤等により表面処理されていてもよい。2種類以上の表面処理を組み合わせて処理されていても構わない。
【0224】
無機微粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状あるいは不定形状であることが好ましい。2種類以上の無機微粒子を高屈折率層及び中屈折率層に併用してもよい。
【0225】
高屈折率層及び中屈折率層中の無機微粒子の割合は、5〜65体積%であることが好ましく、より好ましくは10〜60体積%であり、さらに好ましくは20〜55体積%である。
【0226】
無機微粒子は、媒体に分散した分散体の状態で、高屈折率層及び中屈折率層を形成するための塗布液に供される。無機微粒子の分散媒体としては、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散溶媒の具体例としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム)、芳香族炭化水素(例、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が挙げられる。なかでも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが特に好ましい。
【0227】
無機微粒子を媒体中に分散する分散機の例としては、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが挙げられる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例としては、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが挙げられる。
【0228】
高屈折率層及び中屈折率層は、架橋構造を有するポリマー(以下、架橋ポリマーともいう)をバインダーポリマーとして用いることが好ましい。架橋ポリマーの例として、ポリオレフィン等の飽和炭化水素鎖を有するポリマー(以下、ポリオレフィンと総称する)、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド及びメラミン樹脂等の架橋物が挙げられる。なかでも、ポリオレフィン、ポリエーテル及びポリウレタンの架橋物が好ましく、ポリオレフィン及びポリエーテルの架橋物がさらに好ましく、ポリオレフィンの架橋物が最も好ましい。また、架橋ポリマーがアニオン性基を有することは更に好ましい。アニオン性基は無機微粒子の分散状態を維持する機能を有し、架橋構造はポリマーに皮膜形成能を付与して皮膜を強化する機能を有する。
【0229】
アニオン性基の例としては、カルボン酸基(カルボキシル)、スルホン酸基(スルホ)及びリン酸基(ホスホノ)が挙げられるが、スルホン酸基及びリン酸基が好ましい。ここで、アニオン性基は、塩の状態であってもよい。アニオン性基と塩を形成するカチオンは、アルカリ金属イオンであることが好ましい。また、アニオン性基のプロトンは、解離していてもよい。アニオン性基とポリマー鎖とを結合する連結基は、−CO−、−O−、アルキレン基、アリーレン基、及びこれらの組み合わせから選ばれる二価の基であることが好ましい。好ましいバインダーポリマーである架橋ポリマーは、アニオン性基を有する繰り返し単位と、架橋構造を有する繰り返し単位とを有するコポリマーであることが好ましい。この場合、コポリマー中のアニオン性基を有する繰り返し単位の割合は、2〜96質量%であることが好ましく、4〜94質量%であることがさらに好ましく、6〜92質量%であることが最も好ましい。繰り返し単位は、2以上のアニオン性基を有していてもよい。
【0230】
アニオン性基を有する架橋ポリマーには、その他の繰り返し単位(アニオン性基も架橋構造も有しない繰り返し単位)が含まれていてもよい。(アミノ基または4級アンモニウム基を有する繰り返し単位及びベンゼン環を有する繰り返し単位等)
架橋ポリマーは、架橋ポリマーを生成するためのモノマーを配合して高屈折率層及び中屈折率層形成用の塗布液を調製し、塗布液の塗布と同時または塗布後に、重合反応によって生成させることが好ましい。架橋ポリマーの生成と共に、各層が形成される。アニオン性基を有するモノマーは、無機微粒子に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%使用される。また、その他のモノマー(アミノ基または4級アンモニウム基を有するモノマー)は、塗布液中で分散助剤として機能する。アミノ基または4級アンモニウム基を有するモノマーは、アニオン性基を有するモノマーに対して、好ましくは3〜33質量%使用される。塗布液の塗布と同時または塗布後に、重合反応によって架橋ポリマーを生成する方法により、塗布液の塗布前にこれらのモノマーを有効に機能させることができる。
【0231】
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー(ポリオレフィン)の例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミド等が挙げられる。アニオン性基を有するモノマー、及びアミノ基または4級アンモニウム基を有するモノマーは市販のモノマーを用いてもよい。好ましく用いられる市販のアニオン性基を有するモノマーとしては、KAYAMARPM−21、PM−2(日本化薬(株)製)、AntoxMS−60、MS−2N、MS−NH4(日本乳化剤(株)製)、アロニックスM−5000、M−6000、M−8000シリーズ(東亞合成化学工業(株)製)、ビスコート#2000シリーズ(大阪有機化学工業(株)製)、ニューフロンティアGX−8289(第一工業製薬(株)製)、NKエステルCB−1、A−SA(新中村化学工業(株)製)、AR−100、MR−100、MR−200(第八化学工業(株)製)等が挙げられる。また、好ましく用いられる市販のアミノ基または4級アンモニウム基を有するモノマーとしてはDMAA(大阪有機化学工業(株)製)、DMAEA,DMAPAA(興人(株)製)、ブレンマーQA(日本油脂(株)製)、ニューフロンティアC−1615(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
【0232】
ポリマーの重合反応は、光重合反応または熱重合反応を用いることができる。特に光重合反応が好ましい。重合反応のため、重合開始剤を使用することが好ましい。例えば、ハードコート層のバインダーポリマーを形成するために用いられる前述した熱重合開始剤、及び光重合開始剤が挙げられる。
【0233】
重合開始剤として市販の重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤に加えて、重合促進剤を使用してもよい。重合開始剤と重合促進剤の添加量は、モノマーの全量の0.2〜10質量%の範囲であることが好ましい。塗布液(モノマーを含む無機微粒子の分散液)を加熱して、モノマー(またはオリゴマー)の重合を促進してもよい。また、塗布後の光重合反応の後に加熱して、形成されたポリマーの熱硬化反応を追加処理してもよい。
【0234】
中屈折率層及び高屈折率層には、比較的屈折率が高いポリマーを用いることが好ましい。屈折率が高いポリマーの例としては、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリカーボネート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及び環状(脂環式または芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタンが挙げられる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高く用いることができる。
【0235】
中屈折率層及び高屈折率層は、また、被膜形成能を有する有機金属化合物から、ゾルゲル法を用いて形成してもよい。(ゾルゲル法)
ゾルゲル法により高屈折率層または中屈折率層を形成する場合、有機金属化合物は、適当な媒体に分散し得るか、あるいは液状であることが好ましい。有機金属化合物の例としては、金属アルコレート(例えば、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−i−プロポキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−sec−ブトキシド、チタンテトラ−tert−ブトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−i−プロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アンチモントリエトキシド、アンチモントリブトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラ−i−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−sec−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−tert−ブトキシド)、キレート化合物(例えば、ジ−イソプロポキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジ−ブトキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジ−エトキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ビスアセチルアセトンジルコニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムジ−n−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムジ−i−プロポキシドモノメチルアセトアセテート、トリ−n−ブトキシドジルコニウムモノエチルアセトアセテート)、有機酸塩(例えば、炭酸ジルコニールアンモニウム)及びジルコニウム等が挙げられる。
【0236】
低屈折率層として、好ましくは、ゾルゲル法による低屈折率層が用いられる。低屈折率層の屈折率は、低ければ反射防止性能が良化するため好ましいが、低屈折率層の強度付与の観点では困難となる。このバランスから、低屈折率層の屈折率は1.30〜1.50であることが好ましく、1.35〜1.49であることがさらに好ましい。
【0237】
低屈折率層が無機粒子を含有することは、強度向上の点から好ましい。低屈折率層に用いられる無機微粒子としては、非晶質のものが好ましく用いられ、金属の酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなることが好ましく、なかでも金属酸化物が特に好ましく、特に好ましい無機微粒子は、二酸化ケイ素微粒子、すなわちシリカ微粒子である。無機微粒子の平均粒径は0.001〜0.2μmであることが好ましく、0.005〜0.05μmであることがより好ましい。微粒子の粒径はなるべく均一(単分散)であることが好ましい。無機微粒子の粒径は大きすぎると光が散乱し、フィルムが不透明になり、小さすぎるものは凝集しやすく合成及び取り扱いが困難である。
【0238】
無機微粒子の配合量は、低屈折率層の全質量の5〜90質量%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜70質量%であり、特に好ましくは10〜50質量%である。無機微粒子は、表面処理を施して用いることも好ましい。表面処理法としてはプラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理とカップリング剤を使用する化学的表面処理があるが、無機微粒子がシリカの場合はシランカップリング剤による処理が特に有効である。
【0239】
低屈折率層に、無機もしくは有機の微粒子を用い、微粒子間または微粒子内のミクロボイドとして形成した層を用いることも好ましい。微粒子の平均粒径は、0.5〜200mmであることが好ましく、1〜100nmであることがより好ましく、3〜70nmであることがさらに好ましく、5〜40nmの範囲であることが最も好ましい。微粒子の粒径は、なるべく均一(単分散)であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなることが好ましく、金属酸化物または金属ハロゲン化物からなることがさらに好ましく、特に好ましくは、金属酸化物、なかでも二酸化ケイ素、すなわちシリカが好ましい。
【0240】
ミクロボイドを形成することにより、低屈折率層の巨視的屈折率は、低屈折率層を構成する成分の屈折率の和よりも低い値になる。層の屈折率は、層の構成要素の体積当りの屈折率の和になる。微粒子やポリマーのような低屈折率層の構成成分の屈折率は1よりも大きな値であるのに対して、空気の屈折率は1.00である。そのため、ミクロボイドを形成することによって、屈折率が非常に低い低屈折率層を得ることができる。
【0241】
低屈折率層用として用いる各種ゾルゲル素材としては、各種ゾルゲル素材を用いることが好ましい。このようなゾルゲル素材としては、金属アルコレート(シラン、チタン、アルミニウム、ジルコニウム等のアルコレート)、オルガノアルコキシ金属化合物及びその加水分解物を用いることができる。特に、アルコキシシラン、オルガノアルコキシシラン及びその加水分解物が好ましい。これらの例としては、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)、アルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等)、アリールトリアルコキシシラン(フェニルトリメトキシシラン等)、ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン等が挙げられる。また、各種の官能基を有するオルガノアルコキシシラン(ビニルトリアルコキシシラン、メチルビニルジアルコキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジアルコキシシラン、β−(3,4−エポキジシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリアルコキシシラン等)、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラデシル)トリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等)を用いることも好ましい。
【0242】
ゾルゲル法による金属酸化物膜の形成は、前記金属アルコキシドを、アルコール、水、酸などからなる、加水分解、重合反応によってゲルとなる液とし、これを用いてディップコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター、押し出しコーターなどを用いてフィルム上に塗布し、ゲル膜を形成する方法である。
【0243】
金属アルコキシドを含む組成物の加水分解または硬化を促進するため、活性エネルギー線を照射することが好ましく、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。光源としては例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ等も用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20mJ/cm2〜10,000mJ/cm2の範囲である。
【0244】
低屈折率層としては、水酸基、カルボニル基など、各種の官能基を有するオルガノアルコキシシランを用いて、水酸基、カルボニル基などの極性基を表面に有することが、本発明に係わる防汚層形成用組成物との膜付きを強化する上で望ましい。
【0245】
本発明において、前記金属酸化物層は、プラズマCVD法によって形成することもできる。プラズマCVD法としては公知のプラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法、CatCVD法が挙げられるが、好ましくは大気圧プラズマCVD法である。特に、以下に詳説する2周波電源を用いる方法が特に好ましく用いられる。
【0246】
以下に、金属酸化物層をプラズマCVDによって形成する方法を図2、3を用いて説明する。
【0247】
図2は本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
【0248】
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置は、プラズマ放電処理装置、二つの電源を有する電圧印加手段の他に、図2では図示してないが、ガス供給手段、電極温度調節手段を有している装置である。
【0249】
プラズマ放電処理装置10は、第1電極11と第2電極12から構成されている対向電極を有しており、該対向電極間に、第1電極11からは第1電源21からの第1の周波数ω1の高周波電圧V1が印加され、また第2電極12からは第2電源22からの第2の周波数ω2の高周波電圧V2が印加されるようになっている。第1電源21は第2電源22より大きな高周波電圧(V1>V2)を印加出来る能力を有していればよく、また第1電源21の第1の周波数ω1は第2電源22の第2の周波数ω2より低い周波数である。
【0250】
第1電極11と第1電源21との間には、第1電源21からの電流が第1電極11に向かって流れるように第1フィルター23が設置されており、第1電源21からの電流をアース側に通過しにくくし、第2電源22からの電流がアース側へと通過し易くするように設計されている。
【0251】
また、第2電極12と第2電源22との間には、第2電源22からの電流が第2電極12に向かって流れるように第2フィルター24が設置されており、第2電源22からの電流をアース側へ通過しにくくし、第1電源21からの電流がアース側に通過し易くなるように設計されている。
【0252】
第1電極11と第2電極12との対向電極間(放電空間)13に、ここでは図示してない(後述の図3に図示してあるような)ガス供給手段からガスGを導入し、第1電極11と第2電極12から高周波電圧を印加して放電を発生させ、ガスGをプラズマ状態にしながら対向電極の下側(紙面下側)にジェット状に吹き出させて、対向電極下面と基材Fとで作る処理空間にプラズマ状態のガスG°を送り、図示してない基材の元巻き(アンワインダー)から巻きほぐされて搬送して来るか、あるいは前工程から搬送して来る基材Fの上に、処理位置14付近で薄膜を形成させる。このとき基材Fは温度制御可能なバックロール上に配置されていてもよい。薄膜形成中、ここでは図示してない(後述の図3に図示してあるような)電極温度調節手段から配管を経て電極を加熱または冷却する。プラズマ放電処理の際の基材の温度によっては、得られる薄膜の物性や組成は変化することがあり、これに対して適宜制御することが望ましい。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の温度ムラが出来るだけ生じないように電極の表面の温度を均一に調節することが望まれる。
【0253】
また、図2に前述の高周波電圧(印加電圧)と放電開始電圧の測定に使用する測定器を示した。25及び26は高周波プローブであり、27及び28はオシロスコープである。
【0254】
ジェット方式の該大気圧プラズマ放電処理装置を複数基接して直列に並べて配置することが好ましく、これにより何回もプラズマ処理され高速で製膜することも出来る。また各装置が異なったプラズマ状態のガスをジェット噴射すれば、組成の異なった層の金属化合物積層薄膜を形成することも出来る。
【0255】
図3は本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0256】
本発明で好ましく用いられる気圧プラズマ放電処理装置は、少なくとも、プラズマ放電処理装置30、二つの電源を有する電圧印加手段40、ガス供給手段50、電極温度調節手段60を有している装置である。
【0257】
図3は、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との対向電極間(放電空間)32で、基材Fをプラズマ放電処理して薄膜を形成するものである。
【0258】
ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との間の放電空間(対向電極間)32に、ロール回転電極(第1電極)35には第1電源41から周波数ω1であって高周波電圧V1を、また角筒型固定電極群(第2電極)36には第2電源42から周波数ω2であって高周波電圧V2をかけるようになっている。
【0259】
ロール回転電極(第1電極)35と第1電源41との間には、第1電源41からの電流がロール回転電極(第1電極)35に向かって流れるように第1フィルター43が設置されており、該第1フィルターは第1電源41からの電流がアース側へ通過しにくくし、第2電源42からの電流がアース側に通過し易くするように設計されている。また、角筒型固定電極群(第2電極)36と第2電源42との間には、第2電源からの電流が第2電極に向かって流れるように第2フィルター44が設置されており、第2フィルター44は、第2電源42からの電流がアース側へ通過しにくくし、第1電源41からの電流をアース側に通過し易くするように設計されている。
【0260】
なお、ロール回転電極35を第2電極、また角筒型固定電極群36を第1電極としてもよい。何れにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。第1電源は第2電源より大きな高周波電圧(V1>V2)を印加出来る能力を有しており、また、周波数はω1<ω2となる能力を有している。
【0261】
ガス供給手段50のガス供給装置51で発生させたガスGは、流量を制御して給気口52よりプラズマ放電処理容器31内に導入する。図では配管等は示していないが、角筒型固定電極群36の間隙より放電空間32へとガスGが供給され、同様に角筒型固定電極群36の間隙より処理排ガスG′を排出する。
【0262】
基材Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されて来るか、または前工程から搬送されて来て、ガイドロール64を経てニップロール65で基材に同伴されて来る空気等を遮断し、ロール回転電極35に接触したまま巻き回しながら角筒型固定電極群36との間に移送し、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との両方から電圧をかけ、対向電極間(放電空間)32で放電プラズマを発生させる。基材Fはロール回転電極35に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜を形成する。基材Fは、ニップロール66、ガイドロール67を経て、図示してない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。
【0263】
放電処理済みの処理排ガスG′は排気口53より排出する。
薄膜形成中、ロール回転電極(第1電極)35及び角筒型固定電極群(第2電極)36を加熱または冷却するために、電極温度調節手段60で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管61を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、68及び69はプラズマ放電処理容器31と外界とを仕切る仕切板である。
【0264】
図4は、図3に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0265】
図4において、ロール電極35aは導電性の金属質母材35Aとその上に誘電体35Bが被覆されたものである。内部は中空のジャケットになっていて電極表面の温度を均一に制御するための媒体が循環できるようになっている。
【0266】
図5は、角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0267】
図5において、角筒型電極36aは、導電性の金属質母材36Aに対し、図4同様の誘電体36Bの被覆を有し、該電極の構造は金属質のパイプになっていて、それがジャケットとなり、放電中の電極表面の温度を調節できるようになっている。
【0268】
なお、角筒型固定電極は、上記ロール電極に対向して複数本設置することができ、該電極の放電面積はロール回転電極35に対向している全角筒型固定電極面の面積の和で表される。
【0269】
図5に示した角筒型電極36aは、円筒型電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
【0270】
図4及び5において、ロール電極35a及び角筒型電極36aは、それぞれ導電性の金属質母材35A及び36Aの上に誘電体35B及び36Bとしてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体は膜厚で0.5〜4mmが好ましく、特に1〜2mmが好ましい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ガラスライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0271】
導電性の金属質母材35A及び36Aとしては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料等を挙げることが出来るが、後述の理由から、チタン金属またはチタン合金が特に好ましい。
【0272】
2個の電極間の距離(電極間隙)は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、電極の一方に誘電体を設けた場合の誘電体表面と導電性の金属質母材表面の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設けた場合の誘電体表面同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1nm〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5nm〜2mmである。
【0273】
本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体についての詳細については後述する。
【0274】
プラズマ放電処理容器31はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。図2において、平行した両電極の両側面(基材面近くまで)を上記のような材質の物で覆うことが好ましい。
【0275】
本発明の大気圧プラズマ放電処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、
等の市販のものを挙げることが出来、何れも使用することが出来る。なお、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。
【0276】
また、第2電源(高周波電源)としては、
等の市販のものを挙げることが出来、何れも好ましく使用出来る。
【0277】
本発明においては、このような電圧を印加して、安定したグロー放電状態を保つことが出来る電極をプラズマ放電処理装置に採用することが望まれる。
【0278】
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極に1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを薄膜形成性ガスに与え薄膜を形成させる。供給する電力は1〜50W/cm2が好ましい。なお、放電面積(cm2)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0279】
ここで電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
【0280】
このような大気圧プラズマによる薄膜形成法に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならない。このような電極としては、金属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
【0281】
本発明に使用する誘電体被覆電極においては、様々な金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10−6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10−6/℃以下、更に好ましくは5×10−6/℃以下、更に好ましくは2×10−6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0282】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記(a)または(b)および(e)〜(h)が好ましく、特に、(a)が好ましい。
【0283】
本発明において、金属質母材は、上記の特性からはチタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが出来る。
【0284】
本発明に有用な電極の金属質母材は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用出来るが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることが出来る。工業用純チタンとしては、TIA、TIB、TIC、TID等を挙げることが出来、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているもので、チタンの含有量としては、99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることが出来、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量としては、98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることが出来、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタン金属はステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材としてチタン合金またはチタン金属の上に施された後述の誘電体との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることが出来る。
【0285】
一方、誘電体の求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。この中では、後述のセラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体が好ましい。
【0286】
または、上述のような大電力に耐える仕様の一つとして、誘電体の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。なお、誘電体の空隙率は、BET吸着法や水銀ポロシメーターにより測定することが出来る。後述の実施例においては、島津製作所製の水銀ポロシメーターにより金属質母材に被覆された誘電体の破片を用い、空隙率を測定する。誘電体が、低い空隙率を有することにより、高耐久性が達成される。このような空隙を有しつつも空隙率が低い誘電体としては、後述の大気プラズマ溶射法等による高密度、高密着のセラミックス溶射被膜等を挙げることが出来る。更に空隙率を下げるためには、封孔処理を行うことが好ましい。
【0287】
上記、大気プラズマ溶射法は、セラミックス等の微粉末、ワイヤ等をプラズマ熱源中に投入し、溶融または半溶融状態の微粒子として被覆対象の金属質母材に吹き付け、皮膜を形成させる技術である。プラズマ熱源とは、分子ガスを高温にし、原子に解離させ、更にエネルギーを与えて電子を放出させた高温のプラズマガスである。このプラズマガスの噴射速度は大きく、従来のアーク溶射やフレーム溶射に比べて、溶射材料が高速で金属質母材に衝突するため、密着強度が高く、高密度な被膜を得ることが出来る。詳しくは、特開2000−301655に記載の高温被曝部材に熱遮蔽皮膜を形成する溶射方法を参照することが出来る。この方法により、上記のような被覆する誘電体(セラミック溶射膜)の空隙率にすることが出来る。
【0288】
また、大電力に耐える別の好ましい仕様としては、誘電体の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下である。
【0289】
誘電体の空隙率をより低減させるためには、上記のようにセラミックス等の溶射膜に、更に、無機化合物で封孔処理を行うことが好ましい。前記無機化合物としては、金属酸化物が好ましく、この中では特に酸化ケイ素(SiOx)を主成分として含有するものが好ましい。
【0290】
封孔処理の無機化合物は、ゾルゲル反応により硬化して形成したものであることが好ましい。封孔処理の無機化合物が金属酸化物を主成分とするものである場合には、金属アルコキシド等を封孔液として前記セラミック溶射膜上に塗布し、ゾルゲル反応により硬化する。無機化合物がシリカを主成分とするものの場合には、アルコキシシランを封孔液として用いることが好ましい。
【0291】
ここでゾルゲル反応の促進には、エネルギー処理を用いることが好ましい。エネルギー処理としては、熱硬化(好ましくは200℃以下)や、紫外線照射などがある。更に封孔処理の仕方として、封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すと、よりいっそう無機質化が向上し、劣化の無い緻密な電極が出来る。
【0292】
本発明に係る誘電体被覆電極の金属アルコキシド等を封孔液として、セラミックス溶射膜にコーティングした後、ゾルゲル反応で硬化する封孔処理を行う場合、硬化した後の金属酸化物の含有量は60モル%以上であることが好ましい。封孔液の金属アルコキシドとしてアルコキシシランを用いた場合には、硬化後のSiOx(xは2以下)含有量が60モル%以上であることが好ましい。硬化後のSiOx含有量は、XPS(X線光電子スペクトル)により誘電体層の断層を分析することにより測定できる。
【0293】
本発明の光学フィルムの製造方法に係る電極においては、電極の少なくとも基材と接する側のJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整することが好ましいが、更に好ましくは、8μm以下であり、特に好ましくは、7μm以下に調整することである。このように誘電体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法により、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことが出来、放電状態を安定化出来ること、更に熱収縮差や残留応力による歪やひび割れを無くし、且つ、高精度で、耐久性を大きく向上させることが出来る。誘電体表面の研磨仕上げは、少なくとも基材と接する側の誘電体において行われることが好ましい。
【0294】
また、基材と接する側の誘電体の表面と、接している基材Fの裏面との間の動摩擦係数は1.5以下であることが好ましく、更に好ましくは0.01〜1.2であり、更に好ましくは0.01〜0.9であり、更に好ましくは0.01〜0.7である。
【0295】
本発明に使用する誘電体被覆電極において、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温度が100℃以上であることである。更に好ましくは120℃以上、特に好ましくは150〜500℃である。なお、耐熱温度とは、絶縁破壊が発生せず、正常に放電出来る状態において耐えられる最も高い温度のことを指す。このような耐熱温度は、上記のセラミックス溶射や、泡混入量の異なる層状のガラスライニングで設けた誘電体を適用したり、下記金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差の範囲内の材料を適宜選択する手段を適宜組み合わせることによって達成可能である。
【0296】
〈反応ガス〉
本発明の金属酸化物薄膜層の形成方法に用いる反応ガスについて説明する。
【0297】
薄膜層を形成するための反応ガスは、主に窒素を含むガスである。すなわち、窒素ガスが50%以上で含有することが好ましく、さらに好ましくは70%以上で含有することが好ましく、さらに好ましくは90体積%〜99.99体積%であることが望ましい。反応ガスには窒素のほかに希ガスが含有していてもよい。
【0298】
ここで、希ガスとは、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等であり、本発明では、ヘリウム、アルゴン等が窒素に添加されて用いられてもよい。
【0299】
窒素ガスは安定したプラズマ放電を発生させるために用いられ、反応ガスには薄膜を形成するための原料として、反応性ガスが添加される。該プラズマ中で反応性ガスはイオン化あるいはラジカル化され、基材表面に堆積あるいは付着するなどして薄膜が形成される。
【0300】
更に、反応ガス中に酸素、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化窒素、一酸化窒素、水、過酸化水素、オゾン等を0.1体積%〜10体積%含有させることにより薄膜層の硬度、密度等の物性を制御することができる。これらは適宜選択される。
【0301】
本発明の薄膜形成方法を実施するにあたり、使用するガスは、基材上に設けたい薄膜の種類によって異なるが、基本的に、窒素ガスと、薄膜を形成するための反応性ガスの混合ガスで、本発明においてこの混合ガスを反応ガスという。反応性ガスは、反応ガスに対し、0.01〜10体積%含有させることが好ましい。薄膜の膜厚としては、一つの層あたり0.1〜1000nmの範囲の薄膜が好ましく得られる。
【0302】
光学フィルムとしての反射防止フィルムにおける、反射防止層は、通常、基材よりも屈折率の高い高屈折率の層と基材よりも屈折率の低い低屈折率の層を組み合わせることにより達成される。構成の例としては、単層、多層の各種知られているが、多層のものとしては基材側から高屈折率層と低屈折率層の2層から成る構成や、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(基材等よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)、高屈折率層、低屈折率層の順に積層することや、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の4層以上を積層すること等が提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性などから、ハードコート層を有する基材上に、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層を設けることが好ましい。
【0303】
反射防止フィルムの低屈折率層は、珪素化合物の層が好ましく用いられる。
高屈折率層としてはチタン化合物を、中屈折率層形成用としては錫化合物又はチタン化合物と珪素化合物の混合物(又は高屈折率形成用のチタン化合物で形成した層、低屈折率層を形成する珪素化合物で形成した層を積層してもよい)を用いることが出来る。
【0304】
上記低屈折率層や中屈折率層、高屈折率層等の金属化合物薄膜の形成に使用し得る反応性ガスについて、以降、主に説明する。
【0305】
反射防止層薄膜は、大まかに、低屈折率層薄膜には、珪素化合物を使用し、中屈折率層薄膜には、スズまたは低屈折率層薄膜に使用する化合物と高屈折率層薄膜に使用する化合物を併用する場合もあり、高屈折率層薄膜にはチタン化合物やジルコニウム化合物またはタンタル化合物を使用することが出来る。
【0306】
珪素化合物は、取り扱い上の観点から金属水素化合物、金属アルコキシドが好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、金属アルコキシドが好ましく用いられる。また、上記記載の珪素化合物を放電空間である電極間に導入するには、両者は常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入出来るが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。珪素化合物を加熱により気化して用いる場合、テトラエトキシシランなどの常温で液体で、沸点が200℃以下である金属アルコキシドが反射防止膜の形成に好適に用いられる。上記金属アルコキシドは、溶媒によって希釈して使用されても良く、溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。
【0307】
上記記載の珪素化合物としては、例えば、ジメチルシラン、テトラメチルシランなどの有機金属化合物、モノシラン、ジシランなどの金属水素化合物、二塩化シラン、三塩化シランなどの金属ハロゲン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のアルコキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、オルガノシラン、含フッ素有機シラン化合物などを用いることが好ましいがこれらに限定されない。また、これらは適宜組み合わせて用いることが出来る。
【0308】
反応ガス中に上記記載の珪素化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中の珪素化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0309】
中屈折率層薄膜あるいは高屈折率層薄膜を形成し得る反応性ガス化合物としては、例えば、亜鉛アセチルアセトナート、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、トリエチルインジウム、トリメチルインジウム、エトラエチルスズ、エトラメチルスズ、二酢酸ジ−n−ブチルスズ、テトラブチルスズ、テトラオクチルスズ、ペンタイソプロポキシタンタルなどから選択された少なくとも1つの有機金属化合物を含む反応性ガスを用いて、導電性層薄膜膜あるいは帯電防止層薄膜、あるいは反射防止層薄膜の中屈折率層薄膜あるいは高屈折率層薄膜として有用な金属化合物層を形成することが出来る。
【0310】
チタン化合物としては、取り扱い上の観点から金属水素化合物、金属アルコキシドが好ましく、腐食性、有害ガスの発生がなく、工程上の汚れなども少ないことから、金属アルコキシドが好ましく用いられる。高屈折率層薄膜として有用なチタン化合物は、テトラジメチルアミノチタンなどの有機金属化合物、モノチタン、ジチタンなどの金属水素化合物、二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタンなどの金属ハロゲン化合物、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどの金属アルコキシドなどを用いることが好ましいがこれらに限定されない。また、上記記載のチタン化合物を放電空間である電極間に導入するには、これらは常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入出来るが、液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。珪素化合物、チタン化合物を加熱により気化して用いる場合、テトライソプロポキシチタンなどの常温で液体で、沸点が200℃以下である金属アルコキシドが反射防止膜の形成に好適に用いられる。上記金属アルコキシドは、溶媒によって希釈して使用されても良く、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用出来る。反応ガス中に上記記載のチタン化合物を用いる場合、放電プラズマ処理により基材上に均一な薄膜を形成する観点から、反応ガス中のチタン化合物の含有率は、0.01〜10体積%であることが好ましいが、更に好ましくは、0.1〜5体積%である。
【0311】
また、反応ガス中に酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、窒素から選択される成分を0.01〜10体積%含有させることにより、反応が促進され、且つ、緻密で良質な薄膜を形成することが出来る。
【0312】
本発明に係わる金属化合物層は、大気圧プラズマCVDにおいて、有機金属化合物、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選択される金属を含む有機金属化合物を反応性ガスとして用い形成される金属化合物層である。反応性ガスのうち、より好ましくは、これらの有機金属化合物が金属アルコキシド、アルキル化金属、含金属錯体から選ばれるものが好ましい。
【0313】
上記または上記以外の反応性ガスを適宜選択して、本発明の薄膜形成方法に使用することにより前記の低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層のほか、様々な高機能性の薄膜を得ることも出来る。その一例を以下に示すが、本発明はこれに限られるものではない。
【0314】
電極膜:Au、Al、Ag、Ti、Ti、Pt、Mo、Mo−Si
誘電体保護膜:SiO2、SiO、Si3N4、Al2O3、Al2O3、Y2O3
透明導電膜:In2O3、SnO2
エレクトロクロミック膜:WO3、IrO2、MoO3、V2O5
蛍光膜:ZnS、ZnS+ZnSe、ZnS+CdS
磁気記録膜:Fe−Ni、Fe−Si−Al、γ−Fe2O3、Co、Fe3O4、Cr、SiO2、AlO3
超導電膜:Nb、Nb−Ge、NbN
太陽電池膜:a−Si、Si
反射膜:Ag、Al、Au、Cu
選択性吸収膜:ZrC−Zr
選択性透過膜:In2O3、SnO2
シャドーマスク:Cr
耐摩耗性膜:Cr、Ta、Pt、TiC、TiN
耐食性膜:Al、Zn、Cd、Ta、Ti、Cr
耐熱膜:W、Ta、Ti
潤滑膜:MoS2
装飾膜:Cr、Al、Ag、Au、TiC、Cu
高屈折率膜:TiO2、ZrO2、Ta2O5
本発明の光学フィルムの金属化合物薄膜は、上述のような、大気圧もしくはその近傍の圧力下で上述のような反応ガスを用いて金属化合物薄膜を形成する。
【0315】
薄膜の膜厚としては、前記のように、一つの層あたり0.1〜1000nmの範囲の薄膜が好ましく得られる。
【0316】
本発明の光学フィルムは、例えば高屈折率層または中屈折率層、及び低屈折率層を積層した反射防止層を有する光学フィルムに防汚層を設けたものである。または導電層、帯電防止層等の金属酸化物層上に防汚層を設けた光学フィルム等にも好ましく用いることができる。
【0317】
本発明において、プラズマ放電装置を複数設けることによって、多層の薄膜を連続的に設けることができ、薄膜のムラもなく多層の積層体を形成することができる。
【0318】
例えば、長尺フィルム上に反射防止層を有する光学フィルムを作製する場合、屈折率1.6〜2.3の高屈折率層及び屈折率1.3〜1.5の防汚層を長尺フィルム表面に連続して積層し、効率的に作製することができる。
【0319】
上記の方法により、本発明においては、多層の薄膜を積層することができ、各層の膜厚ムラもなく、均一な光学フィルムを得ることができる。
【0320】
本発明の光学フィルムは、フィルム上に形成した金属酸化物層上に、防汚層を形成することを特徴としているが、熱硬化樹脂層あるいは活性線硬化樹脂層脂硬化層等の他の層を介して金属酸化物層形成してもよく、特に前記の紫外線硬化樹脂層を設けることが好ましい。
【0321】
また、本発明に係るセルロースエステルフィルム等の場合に、フィルムの動摩擦係数を調整するため、裏面側に前記微粒子を含有するバックコート層を設けることも好ましく、また添加する微粒子の大きさや添加量、材質等によって動摩擦係数を調整することができる。
【0322】
本発明に係わる防汚層ないし防汚処理は反射防止フィルム、帯電防止フィルム、位相差フィルム、導電性フィルム、電磁波遮蔽フィルム、偏光板等の保護フィルム、光学補償フィルム、視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム、偏光板、プラズマディスプレイ前面フィルター等に好ましく用いられる。特に複数の金属酸化物層を形成する反射防止フィルムに有用である。
【0323】
《偏光板》
本発明の防汚処理された光学フィルムは特に偏光板保護フィルムとして有用であり、これを用いて公知の方法で偏光板を作製することができる。
【0324】
この光学フィルムを有する偏光板や光学フィルムを有する表示装置は視認性に優れており、過酷な環境下であっても優れた視認性を提供することができる。
【0325】
《表示装置》
本発明の表示装置について説明する。
【0326】
本発明の光学フィルムは反射型、透過型、半透過型液晶表示装置あるいは液晶表示装置で好ましく用いられ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ等の各種表示装置にも好ましく用いられる。
【0327】
画像表示装置としては、フィルムを貼ることから、フラットパネルディスプレイが好ましい。たとえば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル、電界発光型ディスプレイなどが挙げられる。貼る方法はどのような方法でもよく、パネル本体に組み込む、例えば液晶ディスプレイの場合には、偏光板保護フィルムに使用するなどが挙げられる。
【0328】
液晶ディスプレイに組み込む場合、前記偏光板の観察側の偏光板保護フィルムとして用いることで、例えば、反射防止層を有する透明フィルムの場合には、反射防止層上に敷設された防汚層により、指脂等の汚れがつきにくく、かつ付着しても容易に除去しやすい、また、耐傷性に優れた、液晶セル表面を有する液晶表示装置が得られる。
【0329】
このようなフィルムを用いることによって、ガラス、アクリルのような基材を1枚ごとに防汚処理する必要が無くなり、必要なサイズにカットして使用することが出来る。
【0330】
【実施例】
実施例
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0331】
《バックコート層を有するセルロースエステルフィルム1の作製》
基材フィルム1として、帯電防止ハードコート層付きセルローストリアセテートフィルム(膜厚80μm、コニカタック KC8UF−HA、表面比抵抗1010Ω/cm2、幅手両端部にナーリング高さ10μmを有する)を用い、この裏面側に、下記バックコート層組成物(1)をウェット膜厚14μmとなるように押し出しコーターで塗布し、85℃にて乾燥し巻き取り、バックコート層を設けバックコート層を有するセルロースエステルフィルム1とした。
【0332】
バックコート層の表面の高さ0.1μm以上の突起数は480個/100μm2であった。
【0333】
〈バックコート層組成物(1)〉
アセトン 30質量部
酢酸エチル 45質量部
イソプロピルアルコール 10質量部
ジアセチルセルロース 0.6質量部
超微粒子シリカ2%アセトン分散液
(日本アエロジル(株)製アエロジル200V) 0.2質量部
《セルロースエステルフィルム2の作製》
また、下記のように各種添加液、各種ドープを調製して、基材フィルム2としてセルロースエステルフィルム2を作製した。
【0334】
〈酸化けい素分散液Aの調製〉
アエロジルR972V(日本アエロジル(株)製) 1kg
エタノール 9kg
以上をディゾルバで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリン型高圧分散装置を用いて分散を行い、酸化けい素分散液Aを調製した。
【0335】
〈添加液Bの調製〉
セルローストリアセテート(アセチル基の置換度2.88) 6kg
メチレンクロライド 140kg
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、濾過した。これに10kgの上記酸化けい素分散液Aを撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、濾過し、添加液Bを調製した。
【0336】
〈ドープCの調製〉
メチレンクロライド 440kg
エタノール 35kg
セルローストリアセテート(アセチル基の置換度2.88) 100kg
トリフェニルホスフェート 9kg
エチルフタリルエチルグリコレート 2kg
チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.3kg
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.5kg
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.5kg
上記の溶剤を密閉容器に投入し、攪拌しながら残りの素材を投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、混合した。ドープを流延する温度まで下げて一晩静置し、脱泡操作を施した後、溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。更に上記溶液に添加液Bを3kg添加し、インラインミキサー(東レ(株)製静止型管内混合機Hi−Mixer、SWJ)で10分間混合し、濾過し、ドープCを調製した。
【0337】
ドープCを濾過した後、ベルト流延装置を用い、35℃のドープを35℃のステンレスバンド支持体上に均一に流延した。その後、支持体上で乾燥させた後、ステンレスバンド支持体上からフィルムを剥離した。このときのフィルムの残留溶媒量は80%であった。ステンレスバンド支持体から剥離した後、80℃に維持された乾燥ゾーンで1分間乾燥させた後、2軸延伸テンターを用いて、残留溶媒量3〜10質量%であるときに100℃の雰囲気下で長手方向に1.03倍、幅方向に1.1倍に延伸し、幅把持を解放して、多数のロールで搬送させながら125℃の乾燥ゾーンで乾燥を終了させ、フィルム両端に幅10mm、高さ10μmのナーリング加工を施して、膜厚80μmのセルロースエステルフィルム2を作製した。フィルム幅は1300mm、巻き取り長は1500mとした。面内リターデーションR0は1nmであった。
【0338】
《バックコート層を有するセルロースエステルフィルム2の作製》
上記で作製したセルロースエステルフィルム2のa面(流延製膜の際にステンレスバンド支持体に接していた側(b面)の反対側の面)に、下記バックコート層組成物(1)をウェット膜厚14μmとなるように押し出しコーターで塗布し、85℃にて乾燥し巻き取り、バックコート層を設けた。
【0339】
バックコート層の表面の高さ0.1μm以上の突起数は480個/100μm2であった。
【0340】
〈バックコート層組成物(1)〉
アセトン 30質量部
酢酸エチル 45質量部
イソプロピルアルコール 10質量部
ジアセチルセルロース 0.6質量部
超微粒子シリカ2%アセトン分散液
(日本アエロジル(株)製アエロジル200V) 0.2質量部
(ハードコート層を有するセルロースエステルフィルム2の作製)
〈ハードコート層の塗設〉
下記のハードコート層1塗布組成物を上記で作製したセルロースエステルフィルム2のb面側(溶液流延製膜工程でステンレスバンド支持体側に接している面)に押し出しコートし、次いで80℃に設定された乾燥部で乾燥した後、110mJ/cm2で紫外線照射し、6μmの乾燥膜厚となるようにハードコート層を設けた。
【0341】
《反射防止フィルムの作製》
上記基材フィルム1および基材フィルム2のハードコート層上に、金属酸化物層を形成して、それぞれ反射防止フィルムを作製した。表1に示すように、金属酸化物層は、塗布法または大気圧プラズマCVDのいずれかを用いて形成した。
【0342】
《塗布法による反射防止層の形成》
下記のように中屈折率層、高屈折率層、次いで、低屈折率層の順に反射防止層を塗設し、反射防止加工を行った。
【0343】
(中屈折率層)
セルロースエステルフィルム1、2のハードコート層の上に、下記中屈折率層組成物M−1を押し出しコーターで塗布し、80℃で5分間乾燥させた後、高圧水銀ランプ(80W)を用いて紫外線を175mJ/cm2照射して硬化させ、厚さが78nmとなるように中屈折率層を設けた。なお、この中屈折率層の屈折率は1.70であった。
【0344】
(高屈折率層)
前記の中屈折率層上に、下記の高屈折率層組成物H−1を押し出しコーターで塗布し、80℃で5分間乾燥させた後、高圧水銀ランプ(80W)を用いて紫外線を175mJ/cm2照射して硬化させ、厚さが66nmとなるように高屈折率層を設けた。尚、この高屈折率層の屈折率は1.85であった。
【0345】
〈高屈折率層組成物H−1〉
イソプロピルアルコール 445質量部
水 1.5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 223質量部
メチルエチルケトン 73質量部
テトラ(n)ブトキシチタン 545質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
(信越化学社製KBM503) 0.8質量部
10%シリコーンオイル(信越化学工業(株)社製KF−96−1,000C
S、溶媒:メチルエチルケトン) 1.4質量部
(低屈折率層)
前記の高屈折率層上に、下記の低屈折率層組成物L−1を押し出しコーターで塗布し、80℃で5分間乾燥させた後、更に120℃で5分間熱硬化させ、さらに紫外線を175mJ/cm2照射して硬化させ、厚さ95nmとなるように低屈折率層を設けた。尚、この低屈折率層の屈折率は1.45であった。
【0346】
〈テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製〉
テトラエトキシシラン580gとエタノール1144gを混合し、これにクエン酸水溶液(クエン酸1水和物5.4gを水272gに溶解したもの)を添加した後に、室温(25℃)にて1時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物Aを調製した。
【0347】
(低屈折率層組成物L−1)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 304.3質量部
イソプロピルアルコール 305質量部
テトラエトキシシラン加水分解物A 139質量部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
(信越化学社製KBM503) 1.6質量部
《大気圧プラズマCVD法による反射防止層の形成》
前記、基材フィルム1または基材フィルム2のハードコート層上に、下記に記載のような大気圧プラズマCVD法を適用して、第1の酸化チタン層(屈折率2.15、膜厚0.02μm)、第1の酸化珪素層(屈折率1.46、膜厚0.03μm)、第2の酸化チタン層(屈折率2.15、膜厚0.12μm)、第2の酸化珪素層(屈折率1.46、膜厚0.08μm)を順次形成し、金属酸化物層を有する長尺の反射防止フィルムを各々作製した。
【0348】
《金属化合物層の形成》
大気圧プラズマCVD法による金属酸化物層の形成には、下記のプラズマ放電処理装置を用いた。
【0349】
《プラズマ放電処理装置》
(電極の作製)
図3に示したプラズマ放電処理装置において、誘電体で被覆したロール電極及び同様に誘電体で被覆した複数の角筒型電極のセットを以下のように作製した。
【0350】
第1電極となるロール電極は、冷却水による冷却手段を有するチタン合金T64製ジャケットロール金属質母材に対して、アルミナ溶射膜を被覆し、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行った。このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、Rmax5μmとなるように加工した。最終的な誘電体の膜厚は1mm、誘電体の比誘電率は10であった。更に導電性の金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差は1.7×10−4で、耐熱温度は260℃であった。
【0351】
一方、第2電極の角筒型電極は、中空の角筒型のチタン合金T64に対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆し、対向する角筒型固定電極群とした。この角筒型電極の誘電体については上記ロール電極のものと同じである。
【0352】
この角筒型電極をロール回転電極のまわりに、対向電極間隙を1mmとして25本配置した。角筒型固定電極群の放電総面積は、150cm(幅手方向の長さ)×4cm(搬送方向の長さ)×25本(電極の数)=15000cm2であった。
【0353】
対抗電極間より以下に示す反応ガスを導入し、使用済みガスの排気を行いつつ、上記作製した、ハードコート層を有する各セルロースエステルフィルム上に、金属酸化物層を以下に示す順次4層の構成で形成し反射防止層とした(それぞれの膜厚については以下に示した)。
【0354】
尚、プラズマ放電処理装置には、固定電極側に、連続周波数13.56MHz、0.8kV/mmの高周波電圧(パール工業社製高周波電源)を供給し、ロール電極側には、連続周波数100kHz、8kV/mmの高周波電圧(ハイデン研究所製高周波電源)を供給した。また、ロール電極は、ドライブを用いてセルロースエステルフィルムの搬送に同期して回転させた。
【0355】
なお、固定電極とロール電極の間隙は1mm、反応ガスの圧力は大気圧+1kPaとして行った。金属酸化物層を形成する為にプラズマ放電処理に用いた反応ガス(酸化珪素層形成用反応ガス)の組成を以下に記す。尚、反応ガス中の液体成分は気化器によって蒸気とし、加温しながら放電部に供給した。
【0356】
《反射防止層の層構成、層の膜厚、反応ガスの種類》
ハードコート層上に、第1酸化チタン層、第1酸化珪素層、第2酸化チタン層、第2酸化珪素層の順に設けた。
【0357】
《反応ガスの種類》
反射防止層の形成に用いた反応ガスを以下に示す。
【0358】
(反応ガスA):酸化チタン層(高屈折率層)形成用
窒素 68.7体積%
アルゴン 30体積%
反応ガス(酸素ガス) 1体積%
反応ガス(テトライソプロポキシチタン蒸気) 0.3体積%
(反応ガスB):酸化珪素層(低屈折率層)形成用
窒素 98.7体積%
反応ガス(酸素ガス) 1体積%
反応ガス(テトラエトキシシラン蒸気) 0.3体積%
(反応ガスC):酸化珪素層(低屈折率層)形成用
窒素 99.2体積%
反応ガス(酸素ガス) 0.5体積%
反応ガス(メチルトリエトキシシラン蒸気) 0.3体積%
得られた各光学フィルムについて、以下の防汚処理を行い防汚層付きフィルムを作製した。
【0359】
《防汚層付きフィルムの作製》
反射防止加工を行った基材フィルム1または2を用いて、金属酸化物層(酸化珪素層)上に、表1に記載のように、下記組成物1〜5を用いて、防汚層を設けて、防汚層付き反射防止フィルムを各々作製した(実施例1〜11及び比較例1、2)。
【0360】
用いた基材フィルム、反射防止層形成方法、用いた防汚層用組成物、防汚層形成後の熱処理等、各実施例、比較例について表1に示した。
【0361】
〈塗布方法〉
反射防止加工面上にウエット膜厚10μmとなるように下記組成物1〜5を表1に示すようにそれぞれ塗布し、80℃5分間乾燥し、表1に示すように必要に応じて更に熱処理を加えた(実施例結果参照)。
【0362】
(組成物1)
イソプロピルアルコール98質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル1.83質量部、硝酸(1.38)0.03質量部を均一に混合した。この液中にヘプタデカフルオロデシルトリイソプロポキシシラン〔CF3(CF2)7CH2CH2Si(OC3H7)3〕0.05質量部、ジメチルジメトキシシラン0.05質量部を添加して均一に混合して組成物1を調製した。
【0363】
(組成物2)
ヘプタデカフルオロデシルトリイソプロポキシシランをヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン〔CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)3〕としたこと以外は、組成物1と同様にして組成物2を調製した。
【0364】
(組成物3)
ヘプタデカフルオロデシルトリイソプロポキシシランをヘプタデカフルオロデシルジメトキモノイソプロポキシシラン〔CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)2(C3H7)〕としたこと以外は、組成物1と同様にして組成物3を調製した。
【0365】
(組成物4)
イソプロピルアルコール79質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル20.00質量部、硝酸(1.38)0.50質量部を均一に混合した。この液中にヘプタデカフルオデシルトリイソプロポキシシラン〔CF3(CF2)7CH2CH2Si(OC3H7)3〕0.5部、ジメチルジメトキシシラン0.5質量部を添加して均一に混合して組成物4を調製した。
【0366】
(組成物5)
ディスプレイ表面用防汚コーティング剤ダイキン工業製オプツールDSX(HFE20%溶液)を住友3M社HFE−7200にて200倍に希釈して作製した。
【0367】
実施例1〜11及び比較例1、2で作製した光学フィルムについて以下の評価を行った。
【0368】
《評価方法》
(n−ヘキサデカン接触角)
協和界面化学株式会社製接触角計CA−X型を用い、23℃55%RHにて24時間調湿したサンプルを液滴径1.0mmにてそのままの温湿度下にて測定した。
【0369】
(スチールウール耐傷性(SW))
1cm2当たり100gの重りを載せた日本スチールウール(株)製:ボンスター#0000のスチールウールを用い、22mmφに切断し、試料表面を10回擦って、発生する傷の数を目視でカウントした。
【0370】
(ブラックバンド)
出来上がった幅1330mmのフィルムを100mmの紙管に、防汚コート面を内側にして長さ1200m巻き取り、50℃、80%にて1ヶ月放置した後に、巻き取り直後からフィルム同士の貼り付きが無いかどうかを以下のように判断した。
【0371】
なし;目視で変化が無い。
あり;フィルム同士が張り付いており、奥側のフィルムが見える部分がある。
【0372】
【表1】
【0373】
以上のように、本発明に係わる防汚層を有する光学フィルムは接触角等は比較例と同等であり、特に耐傷性が優れ、またクッツキを示すブラックバンドが観察されないことから、物理的特性に優れていることがわかる。
【0374】
【発明の効果】
防汚性にすぐれ、又耐傷性のよいフィルム同士のブロッキングを起こしにくい光学フィルムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセルロースエステルフィルムを製造する装置の模式図である。
【図2】本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
【図3】本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図4】図2に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図5】角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 エンドレスステンレスベルト
2 ダイ
3、4 乾燥ゾーン
5 流延部
6 剥離部
7 剥離ロール
8 第1乾燥ゾーン
9 搬送ロール
8′ 第2乾燥ゾーン
8″ 第3乾燥ゾーン
W 巻き取り部
10 プラズマ放電処理装置
11 第1電極
12 第2電極
21 第1電源
22 第2電源
Claims (26)
- フッ素を含まない有機溶媒で0.01〜10質量%に希釈されたフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物溶液でフィルム基材表面を防汚処理したことを特徴とする光学フィルム。
- 前記フルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物において、シラン化合物中のフルオロアルキル基が、Si原子1つに対し、1つ以下の割合でSi原子と結合しており、残りは加水分解性基もしくはシロキサン結合基であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
- 前記フルオロアルキル基を有するシラン化合物が、下記一般式(A)で表され、かつ該シラン化合物の濃度を0.01〜5質量%に希釈した溶液で防汚処理することを特徴とする請求項2に記載の光学フィルム。
一般式(A)
CF3(CF2)m(CH2)n−Si−(ORa)3
(mは1〜10の整数。nは0〜10の整数。Raは同一もしくは異なるアルキル基を表す。) - 酸を添加してpHを5以下に調整した溶液によってフィルム基材表面を防汚処理したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 前記一般式(A)で表される化合物中、Raが炭素原子数3つ以下であり炭素と水素のみからなるアルキル基であることを特徴とする請求項3に記載の光学フィルム。
- フィルム基材の最表層がCVD法、もしくはゾルゲル法によって作製された金属酸化物層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 反射防止機能を有することを特徴とする請求項6に記載の光学フィルム。
- 請求項7に記載の光学フィルムを表面に有する画像表示装置。
- フッ素を含まない有機溶媒で0.01〜5質量%に希釈されたフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物溶液に、アルコキシシランまたはアルキルアルコキシシランを0.01〜15質量%添加して成した組成物によってフィルム基材表面を防汚処理したことを特徴とする光学フィルム。
- 前記フルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物において、シラン化合物中のフルオロアルキル基が、Si原子1つに対し、1つ以下の割合でSi原子と結合されており、残りが加水分解性基もしくはシロキサン結合基であることを特徴とする請求項9に記載の光学フィルム。
- 前記フルオロアルキル基を有するシラン化合物が、前記一般式(A)で表され、かつ該シラン化合物の濃度を0.01〜5質量%に希釈した溶液で防汚処理することを特徴とする請求項10に記載の光学フィルム。
- 酸を添加してpHを5以下に調整した溶液によってフィルム基材表面を防汚処理したことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 有機溶媒の濃度を98質量%以上とした溶液で防汚処理することを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 有機溶媒中、高沸点溶媒の比率を0.5〜2質量%とした溶液で防汚処理することを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 前記一般式(A)で表される化合物中、Raが炭素原子数3つ以下であり炭素と水素のみからなるアルキル基であることを特徴とする請求項11に記載の光学フィルム。
- フィルム基材の最表層がCVD法、もしくはゾルゲル法によって作製された金属酸化物層であることを特徴とする請求項9〜15のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 反射防止機能を有することを特徴とする請求項16に記載の光学フィルム。
- 請求項17に記載の光学フィルムを表面に有する画像表示装置。
- フッ素を含まない有機溶媒で0.01〜5質量%に希釈されたフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物溶液に、珪素イソシアネート化合物を0.01〜5質量%添加して成した組成物によってフィルム基材表面を防汚処理したことを特徴とする光学フィルム。
- 前記フルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物において、シラン化合物中のフルオロアルキル基が、Si原子1つに対し、1つ以下の割合でSi原子と結合されており、残りが加水分解性基もしくはシロキサン結合基であることを特徴とする請求項19に記載の光学フィルム。
- 前記フルオロアルキル基を有するシラン化合物が、前記一般式(A)で表され、かつ該シラン化合物の濃度を0.01〜5質量%に希釈した溶液で防汚処理することを特徴とする請求項20に記載の光学フィルム。
- 酸を添加してpHを7以下に調整した溶液によってフィルム基材表面を防汚処理したことを特徴とする請求項19〜21のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 前記一般式(A)で表される化合物中、Raが炭素原子数3つ以下であり炭素と水素のみからなるアルキル基であることを特徴とする請求項21に記載の光学フィルム。
- フィルム基材の最表層がCVD法、もしくはゾルゲル法によって作製された金属酸化物層であることを特徴とする請求項19〜23のいずれか1項に記載の光学フィルム。
- 反射防止機能を有することを特徴とする請求項24に記載の光学フィルム。
- 請求項25に記載の光学フィルムを表面に有する画像表示装置。
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