以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る鍵盤装置の断面図である。同図(a)は非押鍵状態を示し、同図(b)は押鍵状態を示す。同図では白鍵について図示するが、黒鍵についても同様に構成される。なお、本実施の形態において、演奏者側を前方と称する。
本装置は、電子鍵盤楽器として構成され、押鍵操作されるシーソー型の鍵1と、鍵1によって駆動され回動支点部Pを中心に回動する質量体10とを有する。
棚板2上に鍵支持部材3が設けられ、複数の鍵1は鍵支持部材3によって押離鍵方向に回動自在に支持される。ストッパ4は、鍵1と当接して鍵1の押鍵の終端位置(同図(b))を規定する。鍵1の後端部上面は、滑らかに加工されており、質量体10を駆動する駆動部1aとして機能する。
鍵1の後方における棚板2上には、支持部材20が設けられている。支持部材20の上部には、蒲鉾状の支持部20aが全鍵幅に亘って鍵並び方向に形成されている。支持部20aには、各鍵1に対応して複数の支点ピン23が突設されている。質量体10は、支点ピン23から抜けないように、且つ支持部20aで回動自在に支持されるように構成されている。
質量体10は、回動支点部Pから前方に延びる前方延設部10Aと、回動支点部Pから後方に延びる後方延設部10Bとから成る。延設部10Aには、発音位置調整用ネジ13が設けられている。発音位置調整用ネジ13の下端部は、鍵1の駆動部1aと当接する被駆動部13aとして機能する。鍵1の押鍵操作により、駆動部1aが被駆動部13aと当接して、質量体10が回動する。発音位置調整用ネジ13は、質量体10の回動量と発音タイミングとの関係を調整するのに用いられる。
質量体10では、押鍵時に適当な慣性力を得るための質量が主として前方延設部10Aに集中している。延設部10Aの発音位置調整用ネジ13より前方部分を、以下、「第1質量集中部10A1」と称し、延設部10Aの発音位置調整用ネジ13より後方部分を、以下、「第2質量集中部10A2」と称する。
質量体10は、押鍵時において慣性質量を付与するためのものであるので、上記のように質量を一部に集中させなくても質量体10全体で慣性質量を発生させるように構成すればよい。例えば長軸に対して直角方向の断面にほぼ一様な質量を有するようにしてもよいし、後述する本発明の第2の実施の形態のように、質量体10の両端部10f、10rに鉄等の金属をそれぞれ埋設する構成でもよい。
図1(a)に示すように、第1質量集中部10A1の鍵1に対する対向面10A1a(下面)は、非押鍵状態において鍵1の上面と略平行になっており、しかも近接している。また、同図(b)に示すように、第2質量集中部10A2の鍵1に対する対向面10A2a(下面)は、押鍵状態(鍵1が押鍵終端位置にあるとき)において鍵1の上面と略平行になっており、しかも近接している。延設部10Aの下面をこのような形状に設定することで、支持部20aの上端位置高さHを極力低く設定している。
質量体10の後方延設部10Bは、への字状に屈曲している。後方延設部10Bの下面には、第1アクチュエータ11及び第2アクチュエータ12が突設されている。質量体10の後方延設部10B下方には、第1スイッチ基板21及び第2スイッチ基板22が設けられている。第1スイッチ基板21上には第1スイッチ部25が、第2スイッチ基板22上には第2スイッチ部26が、各鍵1に対応してそれぞれ配置されている。第1スイッチ基板21の後方にはストッパ27が設けられる。ストッパ27は、質量体10の回動時に質量体10の後端部と当接して緩衝機能を果たす。パネル部5は、鍵1の上方に配置され、各種操作子や表示部(図示せず)を備える。
図2は、第1スイッチ部25及び第2スイッチ部26の構成を示す断面図である。同図(a)は第1スイッチ部25を示し、同図(b)は第2スイッチ部26を示す。第1、第2のスイッチ部25、26はいずれも、ラバーで構成された接点時間差タイプの2メイク式タッチレスポンススイッチである。押鍵行程において、第1アクチュエータ11は先に第1スイッチ部25に当接し、これに遅れて第2アクチュエータ12が第2スイッチ部26に当接するように設定されている。
本実施の形態では、所定のアルゴリズムによって第1スイッチ部25をキーオン検出用に用い、第2スイッチ部26をキーオフ検出用に用いて、各スイッチ25、26からの検出信号によって楽音発生のための指示信号を得るようにしているが、いずれか一方、例えば第2スイッチ部26のみでキーオン、キーオフの双方を検出するように構成してもよい。その場合でも、押鍵動作の検出に用いない方のスイッチ部を、後述するような押鍵反力を発生させるためだけに設けるようにしてもよい。
なお、上述したように、本実施の形態では回動支点部Pにより近い第1スイッチ部25から先に駆動され、回動支点部Pからより遠い第2スイッチ部26が後から駆動されるようにしたことで、安定した動作が確保される。すなわち、各アクチュエータ11、12が互いに離間している構成では、各スイッチ部25、26の駆動順序を逆に設定すると、作動上不安定になる場合があり好ましくないからである。
また、各アクチュエータ11、12間の距離を十分に確保した上で、回動支点部Pにより近いスイッチ部から順に駆動されるようにしたので、発音タイミング等の精度が向上する。すなわち、例えばグランドピアノにおけるハンマによる打弦タイミングに対応する位置に各スイッチ部25、26を配置する場合において、この配置が質量体10側で多少ずれたとしても、その影響は鍵1に対応させたら僅かなものとなる。従って、各スイッチ部25、26自体の精度がそれほど高いものでなくても、これらを組み合わせた発音制御処理システムを構築すれば、発音位置の精度、ひいてはタッチレスポンスの精度を向上することができる。
同図(a)に示すように、第1スイッチ部25は、可動部25Aと固定部25Bとから成る。固定部25Bは、第1スイッチ基板21の上面に施され、平面的にみて櫛歯状をしたパターンである固定接点25b1、25b2から成る。可動部25Aは、スカート部25cを有して弾性膨出部となっており、その上面に第1アクチュエータ11が当接する。可動部25Aには、第1、第2メイク用の可動接点25a1、25a2が固定接点25b1、25b2にそれぞれ対向して設けられている。可動接点25a1、25a2が固定接点25b1、25b2に当接することで、押鍵動作が検出される。
同図(b)に示すように、第2スイッチ部26も第1スイッチ部25と同様に構成され、可動部26Aと固定部26Bとから成る。固定部26Bは、固定接点26b1、26b2から成り、可動部26Aは、スカート部26cを有して弾性膨出部となっており、可動接点26a1、26a2を備える。ただし、第2スイッチ部26のスカート部26cの厚みは、下部26c2では厚く、上部26c1にいくにつれて薄く形成されている。これにより、単に反力を発生させるだけでなく、適当な座屈を起こさせ、後述するようなレットオフ感が得られるようになっている。なお、その座屈現象については、図7(b)で後述するのと同様である。
図3は、押鍵時のキーストロークと押鍵反力(荷重)との関係を示す図である。同図では、鍵1の押鍵の往行程において、キーストロークを横軸にとり、押鍵反力(荷重)を縦軸にとって示している。同図(b)は第1スイッチ部25を押下した場合における反力を示し、同図(c)は第2スイッチ部26を押下した場合における反力を示し、同図(a)はこれら両反力を受けた結果、押鍵時に鍵1に加わる押鍵反力を示す。同図(a)の曲線STは、グランドピアノでいうと発音しない程度の弱い力で押鍵した場合(静的タッチ)を示し、同図(a)の曲線DTは、発音する程度の通常または強い力で押鍵した場合(動的タッチ)を示す。
同図(b)に示すように、第1スイッチ部25が第1アクチュエータ11によって押下されると、可動部25Aのスカート部25c(図2(a))が撓んで反力F2が発生する。その後、接点当接まで反力F2は略一定である。
一方、同図(c)に示すように、第2スイッチ部26が第2アクチュエータ12によって押下されると、可動部26Aのスカート部26c(図2(b))が撓んで反力F3が発生する。しかし、上述したように、スカート部26cの厚みは、下部26c2では厚く、上部26c1にいくにつれて薄く形成されているので、ほどなく上部26c1から座屈が始まり、その後、接点当接まで反力が減少していく。
反力F2と反力F3の発生タイミングには、上述した各アクチュエータ11、12と各スイッチ部25、26との当接タイミングの設定によってずれが設けられている。図3(a)では、ストローク位置Aからほぼストローク位置Bまでが、第1スイッチ部25による反力が加わり得る範囲であり、ストローク位置Bから終端位置までが、第2スイッチ部26による反力が加わり得る範囲である。その結果、図3(a)に示すような押鍵反力が得られる。
すなわち、まず、静的タッチの場合、鍵1が質量体10に当接して反力F1が発生する。この反力F1の大きさ及び発生タイミングは、グランドピアノにおけるハンマ押し上げによる押鍵反力に近似するように設定されている。次いで、第1アクチュエータ11が第1スイッチ部25に当接して反力F2が加わる。この反力F2が加算された反力の大きさ及び反力F2の発生タイミングは、グランドピアノにおけるダンパ押し上げによる押鍵反力に近似するように設定されている。次いで、第2アクチュエータ12が第2スイッチ部26に当接して反力F3が加わった後、反力が減少し、押鍵終端近傍で急上昇する。この反力F3が加算された反力の大きさ、反力F3の発生タイミング、及びその後の反力変化の態様は、グランドピアノにおけるローラパットとジャックとの摩擦による押鍵反力、及び両者がはずれることにより生じるレットオフ感に近似するように設定されている。
このような設定により、曲線STのように、押鍵往行程においてグランドピアノにおける静的タッチの押鍵感触を擬似的に得ることができる。
一方、動的タッチの場合は、質量体10は、鍵1からほとんど押鍵初期に与えられた力だけで回動するので、押鍵初期以外は、鍵1の駆動部1aと発音位置調整用ネジ13の被駆動部13aとは離間に近い状態となり、質量体10が各スイッチ部25、26を押圧してもそれらの反力がそのまま鍵1まで伝達されるわけではない。従って、同図(b)、(c)に示すような反力の影響が必ずしも現れず、一般に曲線DTのような反力態様となる。すなわち、押鍵態様によっても異なるが、一般に押鍵初期に反力ピークが発生し、そのままレットオフ領域に突入し得る。押鍵初期に反力ピークが現れるのは、衝突原理に近い作用が指と鍵との間に働くからであると推測される。
本実施の形態によれば、第1質量集中部10A1の鍵1に対する対向面10A1aを、非押鍵状態において鍵1の上面(鍵側対向面)と略平行に近接させ、第2質量集中部10A2の鍵1に対する対向面10A2aを押鍵状態において鍵1の上面(鍵側対向面)と略平行に近接させたので、押鍵による質量体10の回動行程において鍵1との干渉を回避しつつ質量体10を可能な限り鍵1に近接させることができる。
すなわち、前述した従来の図10に示す構成のように延設部10Aを一様な平坦面とした場合に比し、支持部20aの上端位置高さHをより低く設定することができる(H<H’)。その結果、棚板2上面から延設部10Aの前端部上部までの距離hは、非押鍵時に最小(h0)で押鍵時に最大(h1)となるが、これらは従来の図10に示す構成に比し小さい(h0<h0’、h1<h1’)。従って、鍵盤装置における上下方向の省スペース化を図ることができ、ひいては質量体10の設計の自由度を確保することができるから、適切な押鍵感触を設定することが容易になる。
別な表現をすれば、鍵盤まわりの構成はシンプルであるが、特に鍵盤の高さを低く設定したとしても大きな慣性質量を得ることができる。すなわち、同じ鍵盤高さ内で鍵と質量体を配設する場合、本実施の形態のような構成によれば、小さい質量でより大きい慣性質量が得られることになる。なぜなら、質量体10のこのような構成にすることで、質量体10の回動範囲、ひいては移動距離を大きく確保でき、これによって実質的な慣性質量を大きく確保することができるからである。
なお、押鍵終了位置では、質量体10の後方延設部10Bの自由端部が被駆動部13aよりも下方に位置するので、上下方向のスペースを有効に活用してスペースを一層節約することができる。
また、第1、第2スイッチ部25、26の弾性力を用いて所望の反力が所望のタイミングで発生するように構成し、グランドピアノにおける押鍵反力に相当する反力やレットオフ感を再現するようにしたので、グランドピアノにおける静的タッチの押鍵感触を擬似的に得ることができる。また、駆動部1aと被駆動部13aとが当接/離間可能に構成したので、動的タッチの押鍵感触も得ることができる。
また、スイッチ部25、26に押鍵動作検出の機能と押鍵反力発生の機能を併せ持たすようにしたので、構成が簡単であるだけでなく、適切な押鍵反力の調整が容易である。すなわち、押鍵終端近傍での反力態様は、レットオフ感等、押鍵感触に重要である一方、押鍵動作は押鍵終端近傍で検出するのが好ましい。そのため、仮に両機能を別個の構成とした場合、スイッチ部により押鍵終端近傍で生じた反力が押鍵感触に大きい影響を与え、押鍵反力の調整が複雑になる。しかし、本実施の形態では、スイッチ部25、26による反力を適当に設定することでレットオフ感を含む押鍵反力の調整を容易にすることができる。よって、構成を複雑化することなく、押鍵動作検出のために押鍵最終段階で発生する反力をも考慮して押鍵反力を設定でき、押鍵動作検出による影響を排除して所望の押鍵感触を得ることができる。
なお、本実施の形態では、スイッチ部25、26の反力と質量体10の自重による復帰方向への付勢作用とが協働して押鍵終了直前にレットオフ感等の押鍵感触を生じさせるようにしたが、質量体40を非押鍵位置に付記させる手段としては、弾性変形する弾性膨出部の反力、質量体10の自重及び/または鍵1の自重による反力、バネ等による反力等、各種構成が適用可能である。
なお、本実施の形態では、スイッチ部25、26をタッチスイッチとして構成したが、これに限るものでなく、押鍵反力を発生すると共に押鍵動作を検出するものであれば他の構成を採用してもよい。例えば、発光素子、受光素子及び反射板から構成されるフォトリフレクタ等であってもよい。
なお、本実施の形態では、質量体10が鍵1の後部上方に配置される場合を例示したが、これに限るものでなく、質量体10が鍵1の後部下方に配置されるようにしてもよい。その場合は、被駆動部を、発音位置調整用ネジ13に代えて、質量体10が鍵1により引っ張られるような構成とし、且つ、鍵1が非押鍵位置にあるとき、第2質量集中部10A2の上面が鍵1の長手方向において鍵1の下面に略平行に近接すると共に、鍵1が押鍵終端位置にあるとき、第1質量集中部10Aの上面が鍵1の長手方向において鍵1の下面に略平行に近接するように構成すればよい。
(第2の実施の形態)
以下に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
図4、図5は、本発明の第2の実施の形態に係る鍵盤装置の部分縦断面図である。図4は非押鍵状態(後述する鍵51、質量体40が回動開始位置にある状態)を示し、図5は押鍵往行程終了状態(鍵51、質量体40が回動終了位置にある状態)を示す。これらの図では、上ケースや蓋体等は省略されている。なお、以下、本鍵盤装置の演奏者側(図4の左方)を前方、演奏者からみて鍵後端方向(同図右方)を後方とそれぞれ称する。
本装置は、押鍵操作されるシーソー型の鍵51(白鍵51W及び黒鍵51B)と、質量体支持部材70と、該支持部材70によって回動自在に支持され鍵51によって駆動されて回動するシーソー型の質量体40とを有する。
棚板52上には鍵フレーム60が設けられている。鍵フレーム60上には鍵支持部53が設けられ、鍵支持部53には支点ピン6(白鍵用支点ピン56W、黒鍵用支点ピン56B)が各鍵51に対応して突設されている。各鍵51W、51Bにはそれぞれ支点穴51Wa、51Baが設けられている。支点穴51Wa、51Baはいずれも、下方に向かって縮径している。各鍵51の鍵盤装置本体への組み付け(鍵フレーム60への取り付け)時には、支点ピン6が支点穴51Wa、51Baを貫通し、これにより、各鍵51の鍵並び方向及び鍵長手方向の位置が規制されると共に、各鍵51が鍵支持部53によって押離鍵方向に回動自在に支持される。
各鍵51の後端部上面には、発泡ウレタンが貼着され、さらにその上面には摺動しやすいテープが貼着されている。これら発泡ウレタン及びテープからなる弾性体が貼着された部分は後述する質量体40の発音位置調整ネジ41と当接して質量体40を駆動する駆動部9として機能する。上記弾性体により当接がチャタリングなく円滑にされている。すなわち、弾性体により、鍵51と質量体40との間において、駆動時の振動インピーダンスマッチングを適切にとることができる(オーバーシュートによる振動モードを発生しない)ということである。
鍵フレーム60の前部には、押鍵ストッパ54(白鍵用押鍵ストッパ54W、黒鍵用押鍵ストッパ54B)及びキーガイド55(白鍵用キーガイド555W、黒鍵用キーガイド555B)が各鍵51毎に設けられている。押鍵ストッパ54は鍵51と当接して鍵51の押鍵による回動終了位置(図5)を規制する。キーガイド55は、鍵51の回動時における鍵並び方向への揺動を抑制する。
鍵フレーム60上における押鍵ストッパ54、キーガイド55の後方であって鍵支持部53の前方には、スイッチ基板7が設けられ、該スイッチ基板7には各鍵51毎に第1の鍵スイッチ58が設けられている。第1の鍵スイッチ58は鍵51によって押下され、主として押鍵操作を検出する。
質量体支持部材70は、棚板52上における鍵51の後端部近傍に設けられている。支持部材70は、例えば1オクターブ単位で構成され、前部及び後部の適所で棚板52に固定されている。支持部材70の前部には、非押鍵時用ストッパ21が各鍵51毎に設けられており、非押鍵時用ストッパ21は、鍵51と当接して鍵51の押鍵による回動開始位置(図4)、すなわち非押鍵時の位置を規制する。支持部材70の後部には、後述する質量体用ストッパ72が設けられている。質量体用ストッパ72は弾性を有し、後述する質量体40の当接部44と当接して押鍵に伴う質量体40の回動終了位置(図5)を規制すると共に、緩衝機能を果たす。
支持部材70にはさらに、スイッチ基板73が設けられる。スイッチ基板73は、複数の支持部材70に対応、例えば全鍵に対応して設けられ、ネジ74によって支持部材70に固定されている。スイッチ基板73上には第2の鍵スイッチ75が各質量体40毎に設けられている。第2の鍵スイッチ75は、質量体40によって押下され、主として鍵51の離鍵動作を間接的に検出する。なお、本実施の形態では、設定モードにより、第1の鍵スイッチ58及び第2の鍵スイッチ75の双方による検出結果に基づいて、所定のアルゴリズムによる多彩な楽音制御が可能なように構成されているが、第1の鍵スイッチ58及び第2の鍵スイッチ75のいずれか一方による検出結果に基づいて楽音制御を行うようにしてもよい。
支持部材70はまた、これに固設される回動軸部32を有する。回動軸部32は後述する質量体40の軸受け部45と係合して質量体40を回動自在に支持する。
本鍵盤装置では、いわゆる上跳ね式構造が採用され、質量体40が鍵51よりも上方に跳ね上がる。質量体40は、押鍵開始位置では後述する尾部47の上面47aが最も高い位置にあり、押鍵終了位置では頭部46の前部上面46dが最も高い位置にあるが、押鍵全行程においては押鍵終了位置における頭部46の上面46dの位置が最も高くなる。従って、本装置の高さ(装置の上下方向の厚み)は主として前部上面46dの最高位置を考慮して設定されている。
図6は、質量体40の構成を示す側面図である。
質量体40は、適当な押鍵感触を得るために設けられる。質量体40は、発音位置調整ネジ41、後述するフロントウェイトFRW(錘)及びバックウェイトBUW(錘)を除く部分(本体)が樹脂で形成され、各質量体40はいずれも同様に構成される。質量体40には、欠円状の穴を有する軸受け部45が両側面に形成される。質量体40は、両軸受け部45が支持部材70の回動軸部32に嵌合されることにより回動自在に支持され、押離鍵時には軸受け部45を中心として回動する。
質量体40は、軸受け部45から前方に延びる前方延設部40Aと、軸受け部45から後方に延びる後方延設部40Bとから構成される。質量体40には、押鍵時に適当な慣性力を得るための質量として、前方延設部40Aの頭部46及び後方延設部40Bの尾部47には中空状の錘取り付け部46e、47eがそれぞれ形成されている。これら錘取り付け部46e、47eには、金属製等のフロントウェイトFRW及びバックウェイトBUWが分離配置されている。
各ウェイトFRW、BUWの質量体40への組み付けは、質量体40を金型によって成形する際、金属製錘としてのウェイトFRW、BUWに対する樹脂のアウトサートの同時成形によって各ウェイトFRW、BUWが樹脂内にインサート成形されることによってなされる。場合によっては、質量体40とウェイトFRW、BUWとを別々に形成し、ウェイトFRW、BUWの外周を軟質樹脂でアウトサート成形したものを錘取り付け部46e、47eの内周に圧着挟持させて質量体40を完成するようにしてもよい。
各ウェイトFRW、BUWは頭部46、尾部47にそれぞれ内包される形で配置されるので、頭部46、尾部47の上方に突出することがなく、上下方向のスペースの圧迫が回避されている。
各ウェイトFRW、BUWは、外縁部の形状を略同一にしつつ、厚さや不図示の中空部の大きさの組み合わせによってそれぞれ異なる重さに設定されている。重さの設定は、全鍵について動的タッチ及び静的タッチを共に考慮してなされ、例えば慣性モーメントが高音鍵から低音鍵に向かうにつれて大きくなるように設定され、これにより、押鍵感触キースケーリングが実現されている。
各ウェイトFRW、BUWの取り付けにより、質量体40はいずれも、前方延設部40Aの方が後方延設部40Bよりも重く設定されている。従って、非押鍵状態及び押鍵初期には鍵51の駆動部59と常に当接し、鍵51と質量体40とが連動状態となる。なお、押鍵態様によっては、ごくまれに押鍵往行程途中から質量体40が鍵51の駆動部59から離間する場合がある。
発音位置調整ネジ41は延設部40Aに設けられている。発音位置調整ネジ41は、曲面状の頭部41a、六角レンチ用の六角穴(図示せず)を有する調整部41b、及びネジ部(図示せず)を有する軸部41cが一体となって構成され、例えば質量体40の金型による成形時にインサート成形により質量体40に取り付けられる。発音位置調整ネジ41は、頭部41aが鍵51の駆動部59と当接して押鍵による駆動力を質量体40に伝達し、これによって質量体40が回動する。発音位置調整ネジ41は質量体40の成形時に最も下方に突出した状態でインサートされ、成形後はドライバで回転させることで下方への突出量が個々に調整可能になっている。これによって、質量体40の回動量と第2の鍵スイッチ75の検出による発音タイミングとの関係を調整することができる。
前方延設部40Aの頭部46の下面46aは、側方からみて滑らかな直線状で、図4に示すように非押鍵状態において鍵51の上面に近接しており、上下方向の省スペースを図っている。下面46aは、非押鍵状態において前方が鍵51上面に対してやや開き気味に設定されており(図4)、製品ばらつきがあっても下面46aの前方が鍵51上面に対して閉じ気味にはならないようになっている。下面46aより後方の下面後部46bは後方にいくに従い上方に傾斜している。上記のように下面46aは前方に開き気味であるが、下面後部46bがこのように傾斜していることで、下面後部46bと鍵51上面との干渉が生じにくいようになっている。
なお、第1の実施の形態における第1質量集中部10A1の鍵1に対する対向面10A1aと同様に、頭部46の下面46aが非押鍵状態において鍵51上面と略平行に近接するように設定してもよい。
頭部46の前部上面46dは、略平面状に形成され、押鍵終了位置(図5)で本鍵盤装置に対して略水平状態となるように設定されている。上述したように、押鍵全行程においては押鍵終了位置における頭部46の上面46dの位置が最も高いから、このように設定することで、上下方向のスペースが節約される。
後方延設部40Bの下面には、アクチュエータ42が設けられ、アクチュエータ42は、質量体40の回動に伴い支持部材70の鍵スイッチ75を押下する。後方延設部40Bの後端部下部には、当接部44が形成されている。当接部44は、質量体40の回動によって支持部材70の質量体用ストッパ72に当接する。
尾部47の上面47aは略平面状に形成され、非押鍵状態(図4)で本鍵盤装置に対して略水平状態となるように設定されている。上述したように、押鍵開始位置では尾部47が最も高い位置にあるから、このように設定することで、主に尾部47近傍における上下方向のスペースが節約される。
さらに、押鍵終了位置では、質量体40の尾部47が発音位置調整ネジ41よりも下方に位置するので、上下方向のスペースを有効に活用してスペースを節約することができる。なお、後方延設部40Bのうち少なくとも一部が発音位置調整ネジ41より下方に位置するようにすればよい。
また、当接部44の下面44aは側方からみると略直線状をしているが、この当接部44の下面44aは押鍵終了位置(図5)で本鍵盤装置に対して略水平状態となるように設定されている。押鍵終了位置では当接部44の下面44aが最も低く位置するから、このように設定することで、上下方向のスペースの節約につながる。
本実施の形態によれば、押鍵全行程において、質量体40の頭部46の前部上面46dが質量体40の部位の中で最高位に位置する部位であることを考慮して、最高位に位置する押鍵終了位置(図5)で、頭部46の前部上面46dが本鍵盤装置に対して略水平状態となるように設定したので、上下方向のスペースの圧迫を緩和することができる。また、押鍵全行程において最低位に位置する当接部44の下面44aを、最低位に位置する押鍵終了位置で本装置に対して略水平状態となるように設定したので、上下方向のスペースの圧迫を一層緩和することができる。さらに、押鍵開始位置に限れば最高位に位置する尾部47の上面47aを押鍵開始位置で本装置に対して略水平状態となるように設定したことによっても、尾部47近傍におけるスペースの圧迫の緩和に寄与している。よって、上下方向の省スペース化を図りつつ、質量体の設計の自由度を確保して適切な押鍵感触を得ることができる。また、質量体40の設計の自由度確保につながることから、適切な押鍵感触の設定を容易にする上で第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、各ウェイトFRW、BUWは、頭部46、尾部47にそれぞれ内包される形で配置され、頭部46の前部上面46dの上方、尾部47の上面47aの上方、または当接部44の下方等に突出することがないので、各ウェイトFRW、BUWの存在が上下方向のスペースを費やさない。よって、質量体40の前部上面46dや上面47a等を上記のように略水平に設定したことによる効果を十分に発揮させることができ、質量体40自体の設計の工夫で上下方向の省スペース化を効果的に図ることができる。
さらに、押鍵終了位置では、後方延設部40Bの一部である尾部47が発音位置調整ネジ41よりも下方に位置するので、上下方向のスペースを有効に活用してスペースを一層節約することができる。
なお、上下方向のスペースを節約するためには、押鍵開始から押鍵終了までの押鍵全行程中に最高位または最低位に位置する質量体40の部位を本装置に対して略水平となるように設定すればよく、この部位は質量体40の自由端部に限られない。上記設定は、最高位に位置する部位及び最低位のいずれかに位置する部位のいずれかについてのみ行ってもよいが、双方について行うのが望ましい。なお、最高/最低位でなくても、それに近い位置に位置する場合がある部位は、同様に略水平に設定するのが好ましく、そのようにすればその部位近傍におけるスペースの節約を容易に図ることができる。
なお、本実施の形態において質量体40の前部上面46d等のような最高/最低位の部位を略水平に設定したことや、ウェイトFRW、BUWを頭部46、尾部47に内包配置した点は、第1の実施の形態における質量体10にも適用してもよい。これにより、上下方向の省スペースを一層図ることができる。
(第3の実施の形態)
以下に、本発明の第3の実施の形態を説明する。
本第3の実施の形態に係る鍵盤装置の構成は、基本的に第2の実施の形態と同様であり、図4〜図6に示す通りである。ただし、本第3の実施の形態では、第1の鍵スイッチ58(第1山形反力発生手段)及び第2の鍵スイッチ75(第2山形反力発生手段)の反力によって適当な押鍵感触を得るように構成される。
本実施の形態では、鍵51を押鍵すると、まず第1の鍵スイッチ58が鍵51の下面に設けられた不図示のアクチュエータによって押下され、それに遅れて第2の鍵スイッチ75が質量体40のアクチュエータ42によって押下されるように、各鍵スイッチ58、75等の配置や高さが設定されている。
図7は、第1の鍵スイッチ58及び第2の鍵スイッチ75の構成を示す断面図である。同図(a)は第1の鍵スイッチ58を示し、同図(b)は第2の鍵スイッチ75を示す。第1、第2の鍵スイッチ58、75はいずれも、ゴム等の弾性部材で構成された接点時間差タイプの2メイク式タッチレスポンススイッチである。
同図(a)に示すように、第1の鍵スイッチ58は可動接点58a1、58a2及びこれらに対向する固定接点58b1、58b2を備える。第1の鍵スイッチ58は、基端部58gからスカート部58cが上方に延び、椀状に膨出した弾性膨出部が形成されている。その上端部58dは鍵51による押圧力を受ける。上端部58dが押圧されると、スカート部58cが弾性変形(座屈)して、可動接点58a1、58a2と固定接点58b1、58b2とが当接し、押鍵操作が検出される。なお、上記座屈現象については、図7(b)で後述することによってより明らかになる。
第2の鍵スイッチ75も第1の鍵スイッチ58と基本的に同様に構成される。すなわち同図(b)に示すように、第2の鍵スイッチ75は可動接点75a1、75a2及びこれらに対向する固定接点75b1、75b2を備える。第2の鍵スイッチ75は、基端部75gからスカート部75cが上方に延び、椀状に膨出した弾性膨出部が形成されている。その上端部75dは被駆動部として質量体40のアクチュエータ42による押圧力を受ける。上端部75dが押圧されると、スカート部75cが弾性変形(座屈)して、可動接点75a1、75a2と固定接点75b1、75b2とが当接し、押鍵操作が検出される。
スカート部75cの肉厚は、基端部75g近傍の下部75c3では厚く、中間部75c2を経て、上端部75dに近い上部75c1にいくにつれて薄くなるように形成されている。これにより、後述するように、第2の鍵スイッチ75は、押圧されると適当な反力を発生する一方、押圧解除時には押圧時より小さい反力を発生しつつ復帰し、反力のヒステリシスを与える。なお、第2の鍵スイッチ75の素材としては、このヒステリシスがより効率よく得られるような素材が選定されると共に、構造的にも、第2の鍵スイッチ75の方が第1の鍵スイッチ58よりも座屈作用及びヒステリシス現象がより強く現れるように構成されている。スカート部の高さが、第1の鍵スイッチ58よりも第2の鍵スイッチ75の方が高いのも、その1つである。
より具体的には、図7(b)に示すように、第2の鍵スイッチ75では、基端部75gからストレートにほぼ垂直にスカート部75cが立ち上がり、下部75c3及び中間部75c2では、ほぼ直線的に上方に延びる。ただし、上方にいくにつれて、それらの水平断面の径が少しずつ小さくなっていく(その径の変化率をAとする)。中間部75c2に連設される上部75c1では、水平断面の径が一層小さくなっていく(その径の変化率をBとする)。そして、変化率Bが変化率Aより大となるように設定、すなわち、スカート部75cの部分縦断面形状が逆J字状を呈するように形成する。これにより、押下され始めでは反力が高く、押下往行程の途中乃至押下終わりにかけて反力が小さくなって、押下されることにより座屈が進行する構成が実現される。しかも、押下解除時には押下往行程時よりも反力が小さく、ヒステリシスが発生するような構成となる。
なお、スカート部75cにおいて、水平断面の径の変化率が急激に変化する位置Zが、座屈が始まる部位となる。
図8は、鍵スイッチのストロークと反力(荷重)との関係を示す図である。同図では、ストロークを横軸にとり、反力(荷重)を縦軸にとって示している。同図(a)は第1の鍵スイッチ58を押下した場合における反力を示し、同図(b)は第2の鍵スイッチ75を押下した場合における反力を示す。
押圧による反力は、主としてスカート部58c、75cの座屈によって生じる。図7に示す可動接点58a1、58a2、75a1、75a2の各膨出部58e、58f、75e、75fの座屈によっても反力は僅かに生じるが、全体としての反力にはほとんど影響しない。もっとも、これら可動接点の各膨出部58e、58f、75e、75fの座屈をも積極的に利用して全体として適当な反力を生じさせるようにしてもよい。その場合、第1の鍵スイッチ58でいえば、膨出部58e及び膨出部58fのいずれか一方の座屈反力を利用してもよいし、双方の座屈反力を利用してもよい。
第1の鍵スイッチ58では、図8(a)に示すように、押圧直後、反力が急上昇し、t1でスカート部58cが座屈を始め、その後反力上昇が衰える。一方、第2の鍵スイッチ75では、同図(b)に示すように、押圧直後、反力が急上昇し、t2でスカート部75cが座屈を始め、反力が一旦減少した後、t3以降は反力が再度上昇していく。このt3における反力の減少が後述するレットオフ感を生み出す。
第1の鍵スイッチ58と第2の鍵スイッチ75との反力の発生タイミングの関係は、第1の鍵スイッチ58の反力が図8(a)のt1近傍に達した時点で第2の鍵スイッチ75が押下され始め、第2の鍵スイッチ75の反力が立ち上がっていくような関係となっている。
図9は、押鍵時及び離鍵時のキーストロークと押鍵反力(荷重)との関係を示す図である。同図では特に、グランドピアノでいうと発音しない程度の弱い力で押鍵した場合(静的タッチ)の押鍵反力を示している。
同図に示す曲線SG、SB2はそれぞれ、本装置による押鍵の往行程、復行程における押鍵反力を示す。なお、曲線SB1はヒステリシスがない従来の装置における押鍵復行程における押鍵反力を示し、曲線PBはグランドピアノにおける押鍵復行程における押鍵反力を示す。
本装置の静的タッチでは、曲線SGのように、まず押鍵初期に略一定の平坦な押鍵反力FFが発生する。これは鍵51及び質量体40(ウェイトFRW、BUWを含む)の自重により生じるものである(初期反力発生手段)。なお、平坦な押鍵反力FFは、専ら鍵51または質量体40のいずれか一方の自重により生じるようにしてもよい。あるいは、弾性膨出部を別途設け、これの反力によって押鍵反力FFを発生させるように構成してもよい。
次いで、先に第1の鍵スイッチ58が鍵51によって押下されることで、第1の山形反力FM1が発生する。これはスカート部58cの弾性変形によって生じ、図8(a)のt1以前に発生する反力が押鍵反力FFに加算されて生じる。その後、第2の鍵スイッチ75が質量体40のアクチュエータ42によって押下されることで、第2の山形反力FM2が発生する。これはスカート部75cの弾性変形によって生じ、そのピーク及びピーク後の落ち込み(レットオフ)の位置は図8(b)のt2及びt3に対応して生じる。
平坦な押鍵反力FFの大きさ、発生タイミング及び発生態様は、グランドピアノにおけるハンマ押し上げによる押鍵反力に近似するように設定されている。第1の山形反力FM1の大きさ、発生タイミング及び発生態様は、グランドピアノにおけるダンパ押し上げによる押鍵反力に近似するように設定されている。第2の山形反力FM2の大きさ、発生タイミング及び発生態様は、グランドピアノにおけるローラパットとジャックとの摩擦による押鍵反力、及び両者がはずれることにより生じるレットオフ感に近似するように設定されている。このような設定により、押鍵往行程においてグランドピアノにおける静的タッチの押鍵感触を擬似的に得ている。
ところで、押鍵による鍵51、質量体40の回動終了位置からの復帰時、すなわち押鍵の復行程においては、スイッチ等の弾性膨出部の弾性変形でレットオフを得る従来の鍵盤装置では、曲線SB1のように、往行程における反力に近いピークを有する反力が生じていた。そのため、復行程で押し戻されるような強い押鍵反力が質量体乃至鍵を通じて手に伝わり、質の悪いタッチ感の原因になっていた。そこで本装置では、上述したようにスカート部75cの肉厚を上部75c1にいくにつれて薄くする等により、押圧解除時の反力が押圧時より小さくなるように構成し、反力のヒステリシスを得るようにした。従って、復行程における第2の山形反力FM2に対応する位置では、曲線SB2は曲線SB1に比し相当に低く、むしろ曲線PBに近くなっている。これにより、回動終了位置からの復帰直後、特にレットオフ領域に対応する位置における押鍵感触についてもグランドピアノのものにより近似させることができる。
本実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様の効果を奏するだけでなく、押鍵往行程において、第1の鍵スイッチ58及び第2の鍵スイッチ75の弾性変形によって、平坦な押鍵反力FF、第1の山形反力FM1及び第2の山形反力FM2を作り出し、これらの大きさ、発生タイミング、形態を適当に設定することで、グランドピアノの往行程における静的タッチの押鍵感触を擬似的に得ることができる。
また、レットオフ領域で、往行程と復行程とで押鍵反力のヒステリシスを設定したので、回動復帰時においてもグランドピアノにおける押鍵反力により近づけることができる。しかも、押鍵反力のヒステリシスは、第2の鍵スイッチ75のスカート部75cを上方にいくほど薄く設定することで得られるので、構成が複雑化せず、コストも上昇しない。
よって、構成を複雑化することなく、押鍵の復行程における押鍵反力をも考慮して、よりグランドピアノに近い自然な押鍵感触を得ることができる。
なお、発音位置調整ネジ41の頭部41aは鍵51の駆動部59と当接/離間可能に構成されているので、動的タッチの押鍵感触も得ることができる点は第1の実施の形態と同様である。また、第1の鍵スイッチ58及び第2の鍵スイッチ75が押鍵操作検出機能及び押鍵反力発生機能を兼ねているので、構成が簡単である点、押鍵操作検出による影響を排除して所望の押鍵感触を得ることができる点も、第1の実施の形態と同様である。
なお、第1、第2の鍵スイッチ58、75は、双方共に鍵側1に設けてもよいし、質量体40側に設けてもよい。また、押鍵反力のヒステリシスは、主にレットオフ領域で必要であり、本実施の形態ではレットオフを生じさせる第2の鍵スイッチ75にヒステリシス機能を持たせるようにしたが、鍵スイッチの押下順序を変え、例えば先に質量体40側の鍵スイッチ、続いて鍵51側の鍵スイッチという順で押下されるようにしてもよい。その場合は、より遅く押下される鍵51側の鍵スイッチがレットオフ機能及びヒステリシス機能を果たすように構成すればよい。
なお、第1、第2の鍵スイッチ58、75にタッチスイッチでなくフォトセンサ等の他の構成を採用してもよいことは第1の実施の形態と同様である。
1 鍵、 1a 駆動部、 3 鍵支持部材、 10 質量体、 10A1 第1質量集中部、 10A1a、10A2a 対向面、 10A2 第2質量集中部、 13a 被駆動部、 20 支持部材、 20a 支持部、 25 第1スイッチ部、 26 第2スイッチ部、 25A、26A 可動部、 25B、26B 固定部、 P 回動支点部、 32 回動軸部、 40 質量体、 41 発音位置調整ネジ、 44 当接部、 45 軸受け部、 46 頭部、 46a 下面、 46b 下面後部、 47 尾部、 47a 上面、 51 鍵、 53 鍵支持部、 58 第1の鍵スイッチ(第1山形反力発生手段)、 59 駆動部、 60 鍵フレーム、 70 支持部材、 75 第2の鍵スイッチ(第2山形反力発生手段)