JP2004240267A - 高分子光導波路 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子光導波路に関し、特に耐熱性、耐薬品性、加工性に優れたポリイミド光導波路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
低損失光ファイバの開発による光通信システムの実用化に伴い、種々の光通信用部品の開発が望まれている。またこれら光部品を高密度に実装する光配線技術、特に光導波路技術の確立が望まれている。
【0003】
一般に光導波路には、光損失が小さい、製造が容易、コアとクラッドの屈折率差を制御できる、耐熱性に優れている、などの条件が要求される。低損失な光導波路としては石英系が主に検討されている。光ファイバで実証済みのように石英は光透過性が極めて良好であるため導波路とした場合も波長が1.3μmにおいて0.1dB/cm以下の低光損失化が達成されている。しかしその光導波路作製に長時間を必要とする、作業時に高温が必要である、大面積化が困難であるなど製造上の問題点がある。
【0004】
これに対してポリメチルメタクリレート(PMMA)などからなる高分子光導波路は低い温度で成形が可能であり、低価格が期待できるなどの長所がある一方、耐熱性に劣る、長波長で十分な低損失化が達成されていない、などの欠点がある。すなわち、PMMAに代表される脂肪族系高分子は、光インタコネクションにおいてはLSIチップを実装する際に要求されるハンダ耐熱性を有していない。また、脂肪族系高分子は光通信波長領域に脂肪族C−H結合由来の赤外吸収の高波長吸収を有しているため、この領域での光損失が大きい。したがって、脂肪族C−H結合をもたない高耐熱性透明樹脂からなる高分子光導波路が求められていた。
【0005】
一方、芳香族ポリイミドはプラスチックの中で最も耐熱性に優れ、さらに脂肪族C−H結合を有さない。このため、芳香族ポリイミドの透明性を高め、光通信分やに利用するための研究が精力的におこなわれてきた。透明性を有するポリイミドについては、例えば非特許文献1、非特許文献2等に詳細に述べられている。
【0006】
透明性を有する芳香族ポリイミドとしては、全芳香族ポリイミドの分子構造中にトリフルオロメチル基などを導入したフッ素含有ポリイミドが数多く開発されてきた。なかでも、NTTが開発したフッ素含有ポリイミド「FLUPI」(登録商標)は、可視から近赤外波長領域での透明性が高く、その光学的等方性も高い(複屈折が従来の芳香族ポリイミドより一桁小さい)ため、高分子光導波路用材料として最も研究が進んでいるポリイミドである。
【0007】
しかしながら「FLUPI」(登録商標)に代表されるフッ素含有ポリイミドは、透明性という特徴を付与した引き換えに、ポリイミドの特徴である耐熱性、耐薬品性が低下する場合が多い。ポリイミドを光導波路として用いるためには、コアとクラッドの多層構造にする必要があるが、フッ素含有ポリイミドは耐薬品性が低く、積層時に溶解、膨潤したり、白化、クラックが入る等の問題を起こすため、多層化が困難であった。
【0008】
そこでこれらの問題を解決すべく、種々検討されており、有機溶媒に対するポリイミドとポリアミド酸の溶解性の差を利用する方法(特許文献1参照)、380℃以上での熱処理によって有機溶媒への不溶化を図る方法(特許文献2参照)等が開示されている。しかし、光導波路を作成するためには非常に微細な加工を精度良く行うことが必要となるため、前者の方法を用いるためには、有機溶媒に対する溶解性の差が極めて顕著であることが不可欠であり、用いることが出来るポリイミドと有機溶媒の組み合わせは実質的にはかなり制限される問題を有する。また後者の方法では、加熱により上述の問題は解決されるものの、ポリイミドが380℃以上という高温の加熱により変質して着色が見られ、特にマルチモードで想定されている633nmや850nmの波長での光線透過の損失が増大する問題がある。
【0009】
一方、樹脂中に架橋構造を導入することにより、樹脂の分解温度やガラス転移温度といった耐熱性、耐薬品性を向上できることが知られている。しかしながらポリイミドは一般的に、その前駆体であるポリアミド酸を経て合成されることから、架橋構造を導入することが難しかった。つまり、一般的なポリイミド光導波路作製プロセスにおいては、前駆体であるポリアミド酸の溶液を調整し、これをドラム又はベルト等に流延した後、加熱して溶媒を適度な量まで取り除くことにより、自己支持性のあるポリアミドフィルムを作製する。さらにこのフィルムを加熱処理などによりイミド化反応を進行させ、得られたポリイミドフィルムに導波路加工を施す。最近は射出成形やプレス成形による加工プロセスの単純化もはかられているが、いずれにせよ、ポリアミド酸の分子量が高すぎたり無限大である場合には、溶液としての取り扱いができないためにポリアミド酸のフィルムを得られず、結果としてポリイミドフィルムを得ることができない。
【0010】
すなわち耐熱性、耐薬品性向上を目的とした架橋構造導入のために、3官能以上の官能基を有するモノマーを用いた場合には、特許文献3に記載のように、前駆体であるポリアミド酸の段階で架橋、ゲル化してしまい、溶液として取り扱えなくなってしまうという問題を有していた。
【0011】
上述の理由から、架橋ポリイミドは通常、ポリイミドの主鎖あるいは末端に架橋構造を導入し、成形後に架橋させる手法により合成される(非特許文献3参照)。
しかしながら、これまでに開発されてきた多くの架橋方法は、そのほとんどが付加反応によるものであり、架橋させるためにイミド化後にさらに高温で処理する必要があるため、樹脂の劣化、着色や基材の酸化など、多くの問題を含んでいた。また、付加反応により生成した架橋構造は耐熱性の低い脂肪族鎖を含む結合であるため、ポリイミドの高い分解温度を損ねるものであった。上述の二つの方法を組み合わせた架橋ポリイミドについても示されており、トリアミン化合物を用いて、予め主鎖に分岐構造を導入し、それらのポリマーを付加反応により架橋することが記載されているが.ポリイミドの高い分解温度を犠牲にしていることにかわりはなかった。
【0012】
また、近年、デンドリマーまたはハイパーブランチポリマーと呼ばれる新しい高分子材料が見出され、ポリイミド構造体についても検討されているが(非特許文献4参照)、これらは分子同士が化学的に結合されておらず、さらに物理的な絡み合いも少ないため、その耐熱性、耐薬品性は直鎖のものと大きくは異ならない。尚、特許文献4では、射出成形可能な溶融流動性ポリイミドを得るために、テトラアミノ化合物またはトリアミノ化合物を用いているが、1官能性の末端封止剤を併用することで、分子量が無限大とならない様に調節している。すなわち、ここで得られるポリイミドは、ネットワーク状の架橋ポリイミドではなく、分岐を有するハイパーブランチポリマーに相当する。
以上のように、一般的なポリイミドの製造条件下で製造することができ、耐熱性、耐薬品性、加工性に優れる高分子光導波路が求められていた。
【0013】
【非特許文献1】
「ポリイミド樹脂」(発行:(株)技術情報協会、1991)
【非特許文献2】
「躍進するポリイミドの最新動向」(発行:住ベテクノリサーチ(株)社、1997)
【特許文献1】
特許2816771号公報
【0014】
【特許文献2】
特許3019166号公報
【特許文献3】
特開平4−88020号公報
【非特許文献3】
横田力夫;「強化プラスチック」、Vol.43,No.6,205−211(1999)、Vol.43,No.9,318−329(1999)、竹市力;高分子,46(8),576(1997)
【0015】
【非特許文献4】
K.Yamanaka ;Macromolecules,33,1111(2000)
【特許文献4】
特開平7−247357号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、一般的なポリイミドの製造条件下で製造することができ、耐熱性、耐薬品性、加工性に優れた架橋ポリイミドを用いた高分子光導波路を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、分子末端がジカルボン酸又はそのエステルであるポリアミド酸は、3または4個のアミノ基を有する化合物と反応しないため、アミド酸ワニスの状態では架橋反応が進行ないこと、しかし通常のイミド化条件下では反応して、架橋ポリイミドを与えること、得られた架橋ポリイミドはその架橋構造がイミド結合であるため、高い分解温度を有すること、この架橋ポリイミドを用いることにより、高い耐熱性および耐薬品性を持ちながら優れた加工性を併せ持つ高分子光導波路を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0018】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]に記載した事項より特定される。
【0019】
[1]化学式(1)で表される架橋構造を含んでなる架橋ポリイミドを光学コアおよび/または光学クラッドとして用いることを特徴とするシングルモードまたはマルチモードの高分子光導波路。
【化16】
(ここで、mは3または4の整数であり、Xは3価または4価の芳香族基、Yは2価の芳香族基を、Zは4価の芳香族基を表す。)。
【0020】
[2]Xが、下記式(2)で表される化合物であることを特徴とする[1]記載の高分子光導波路。
【化17】
(ここで、nは3または4の整数、R1は下記式(3)で表される3または4価の基を表す。)
【0021】
【化18】
(ここで、R2は下記式(4)で表される2価の基を表す。)
【0022】
【化19】
【0023】
[3]Xが、下記式(5−a)または(5−b)で表される化合物であることを特徴とする[1]記載の高分子光導波路。
【化20】
(ここでR3は下記式(6)で表される2価の基を表す。)
【0024】
【化21】
【0025】
[4]Xが、下記式(7−a)または(7−b)で表される化合物であることを特徴とする[1]記載の高分子光導波路。
【化22】
(ここでR4は下記式(8)で表される2価の基を表し、R5は下記式(9)で表される2価の基を表す。また、R6は下記式(10)で表される2価の基を表す。)
【0026】
【化23】
(ここでR7は下記式(11)で表される2価の基を表す。)
【化24】
(ここでR7は下記式(11)で表される2価の基を表す。)
【0027】
【化25】
【化26】
【0028】
[5]Xが、下記式(12)で表される化合物であることを特徴とする[1]記載の高分子光導波路。
【化27】
(ここでR8はNまたはCHで表される3価の基を表す。)
【0029】
[6]Yが下記式(13)から選ばれる2価の芳香族基であることを特徴とする[2]〜[5]記載の高分子光導波路。
【化28】
【0030】
(ここで、式(13)の芳香環の水素原子の一部は、アミノ基やカルボニル基と反応性を有しない置換基で置換されていてもよい。R9はそれぞれ独立であり、下記式(14)で表される2価の基を表す。)
【化29】
【0031】
[7]Zが下記式(15)から選ばれる4価の芳香族基であることを特徴とする[2]〜[5]記載の高分子光導波路。
【化30】
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の高分子光導波路は、化学式(1)で表わされる繰り返し単位を主鎖骨格に有し、その分子末端の一部または全てが化学式(1)であらわされる架橋基を有する架橋ポリイミドを光学コアおよび/あるいは光学クラッドとして用いる。
【0033】
本発明で用いる化学式(1)で表わされる架橋構造を含んでなる架橋ポリイミドは、化学式(1)で表わされる架橋構造を含んでいれば、いかなるものでも問題なく、この架橋ポリイミドの製造の一例としては、3または4個のアミノ基を有する化合物および、分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸をイミド化することにより、得る方法を挙げることができる。
【0034】
分子末端がカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸は、常温ではアミノ基を有する化合物とアミド化反応しないため、ワニスが架橋することはない。分子末端がカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸は、ワニスを塗布、脱溶剤、イミド化する条件下で、脱水あるいは脱アルコールし、分子末端に酸無水物基を生成し、これが3または4個のアミノ基を有する化合物のアミノ基と反応、アミド酸の生成とそのイミド化を経て、ポリマー同士を架橋させる。
【0035】
なお、分子末端が酸無水物基であるポリアミド酸を用いた場合、該化合物が常温で3または4個のアミノ基を有する化合物のアミノ基と反応、ポリアミド酸が架橋し、ワニスがゲル化するため好ましくない。
【0036】
本発明に用いる架橋ポリイミドの原料の一つとなり得るポリアミド酸のジカルボン酸またはそのエステル末端は、好ましくは下記式(16−a)または(16−b)で表されるものである。
【0037】
【化31】
【0038】
【化32】
【0039】
(ここで、R10は水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基または芳香族基を表す。また式(16−a)において、ジカルボン酸またはそのエステル末端の反対側はどのような構造であってもよい)
R10の具体例としては下記式(17)に示される、
【0040】
【化33】
などが挙げられる。
【0041】
3または4個のアミノ基を有する化合物としては、好ましい具体例としては、下記式(18)、(21)、(23)および(28)で表される化合物が挙げられる。
【0042】
【化34】
(ここで、nは3または4を、R11は下記式(19)で表される3または4価の基を表す。)
【0043】
【化35】
(ここで、R12は下記式(20)で表される2価の基を表す。)
【0044】
【化36】
【0045】
【化37】
(ここで、R13は−NH2または−Hであり、R14は下記式(22)で表される2価の基を表す。)
【0046】
【化38】
【0047】
【化39】
(ここで、R15は下記式(24)で表される1価の基を表し、R16は下記式(25)で表される1価の基を表し、R17は下記式(26)で表される2価の基を表す)
【0048】
【化40】
(ここで、R18は下記式(27)で表される2価の基を表す。)
【0049】
【化41】
(ここで、R18は下記式(27)で表される2価の基を表す。)
【0050】
【化42】
【0051】
【化43】
【0052】
【化44】
(ここで、R19はNまたはCHで表される3価の基を表す。)
【0053】
具体例としては、例えば、トリス(p−アミノフェニル)アミン、トリス(3−アミノフェニル)ホスフィンオキサイド、、トリス(4−アミノフェニル)メタン、1,3,5−トリス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、トリアミノピリミジン、メラミンおよび下記式(29)〜(36)に表される化合物等が挙げられる。
これらは単独で、または、二種類以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0054】
【化45】
【0055】
【化46】
【0056】
【化47】
【0057】
【化48】
【0058】
【化49】
【0059】
【化50】
【0060】
【化51】
【0061】
【化52】
【0062】
本発明に用いる架橋ポリイミドの製造において、3または4個のアミノ基を有する化合物の使用量は、用いるポリアミド酸のジカルボン酸またはそのエステル末端1モルに対し、好ましくは0.1〜0.6モル、更に好ましくは0.2〜0.4モルである。該化合物の使用量が多い場合、および、少ない場合には、得られるポリイミド中の架橋していない分子鎖が多く、耐熱性、耐薬品性の向上効果が小さくなる傾向にある。ここでいうジカルボン酸またはそのエステル末端1モルとは上記した式(16−a)または式(16−b)で表わされる末端構造1モルを表す。
【0063】
本発明に用いる架橋ポリイミドを製造する際、用いる分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸の有する繰り返し単位に、特に制限はなく、従来公知のポリアミド酸の繰り返し単位から任意に選択できる。本発明のポリアミド酸は、好ましくは、下記式(37)で表される繰り返し構造を有するものである。
【0064】
【化53】
(ここで、Yは2価の芳香族基を、より好ましくは、下記式(13)から選ばれる2価の芳香族基を示し、Zは、前記と同じ意味を示す。)
【0065】
【化54】
(ここで、式(13)の芳香環の水素原子の一部は、アミノ基やカルボニル基と反応性を有しない置換基で置換されていても良い。R9はそれぞれ独立であり、下記式(38)で表される2価の基を表す)
【0066】
【化55】
【0067】
(また、Yは4価の芳香族基を、より好ましくは、下記式(39)から選ばれる4価の芳香族基を示す。)
【0068】
【化56】
【0069】
上記ポリアミド酸は、前述の繰り返し構造から選ばれる2種以上の繰り返し単位を有していてもよい。この場合、2種以上の繰り返し単位のモル分率、繰り返し数、順序の定序性、規則性に制限はない。
【0070】
本発明で用いられる架橋ポリイミドの原料の一つとなり得る分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸の分子量に特に制限はなく、ワニスの粘度、得られる架橋ポリイミドの物性等に合わせ、任意に設定することが出来るが、対数粘度で示した場合、0.2から2.0dl/g(N,N−ジメチルアセトアミド中、濃度0.5g/dl、35℃で測定。)の範囲であることが好ましく、0.4から1.2dl/gの範囲であることが特に好ましい。対数粘度が0.2以上では、分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸の強度が高く、ワニスを塗布、イミド化する際に塗膜が割れる等の不都合がなく好ましい。また、2.0以下の場合には、得られるポリアミド酸の末端カルボン酸基および/またはそのエステル基が多く、架橋による物性向上の効果が得られ易い。本発明で用いる架橋ポリイミドの原料の一つとなり得る分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸は、一般的な酸無水物末端のポリアミド酸に水またはアルコールを添加し、その末端をジカルボン酸またはそのエステルにすることにより得ることができる。
【0071】
水またはアルコールを添加する上記酸無水物末端のポリアミド酸は、テトラカルボン酸二無水物に対し、等量未満の芳香族ジアミンを用いて得ることが出来る。本発明で用いる架橋ポリイミドの原料の一つとなり得るポリアミド酸は、用いる芳香族ジアミンの量を調整することで、得られるポリアミド酸の末端基量、ワニスの粘度、得られる架橋ポリイミドの架橋密度(架橋点間距離)を制御することが出来る。
【0072】
用いる酸無水物末端のポリアミド酸の合成においては、テトラカルボン酸二無水物1モルに対し、ジアミンを0.8〜0.99モル用いることが好ましい。用いるジアミンが少ない場合には、得られるポリマーの強度が低く、ワニスを塗布、イミド化する際に塗膜が割れるためあまり好ましくない。また、多い場合には、得られるポリアミド酸の酸無水物末端が極端に少ないため、十分に架橋させることが出来ないことがある。なお、テトラカルボン酸二無水物1モルとジアミンαモルを用いた場合、得られるポリアミド酸の末端酸無水物量は(1−α)×2モルとなる。
【0073】
また、用いる酸無水物末端のポリアミド酸の製造方法に特に制限はなく、従来公知の芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物より従来公知の方法で得ることが出来、原料装入の順序、反応の濃度、温度、時間には何ら制限はない。なお、通常、ポリアミド酸は、不活性ガス雰囲気下、非プロトン性極性溶媒中で、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を、常温〜60℃程度で数時間反応させることにより得られる。本発明に用いる酸無水物末端のポリアミド酸は、溶剤中で合成し溶剤に溶解したままのものであっても、また、貧溶媒を用いて析出させ、固体状態としたものであっても良い。
【0074】
ここで、用いることのできる従来公知の芳香族ジアミンとしては、例えばm−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(4−アミノフェニル)スルホキシド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’ービス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’ービス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2−トリフルオロメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2’−トリフルオロメチル−3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−5−トリフルオロメチルベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)−5−トリフルオロメチルベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0075】
ここで、用いることのできる従来公知の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物 、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ー1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物等が挙げられ、これらは単独あるいは2種以上混合して使用することが出来る。
【0076】
ここで、架橋ポリイミドの原料の一つとなり得るポリアミド酸の合成に用いることの出来る反応溶媒に特に制限はなく、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホロトリアミド、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、テトラヒドロフラン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジフェニルエーテル、スルホラン、ジフェニルスルホン、テトラメチル尿素、アニソール等が挙げられる。これらの溶媒は、単独または2種以上混合して用いても差し支えない。
【0077】
本発明で用いる架橋ポリイミドは、3または4個のアミノ基を有する化合物、および、分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸を含むワニスをイミド化することより得られるものであり、このワニスの製造方法の一例としては、前述のポリアミド酸の製造方法により得られる分子末端が酸無水物基であるポリアミド酸溶液に、水またはアルコールを添加して、末端酸無水物基をジカルボン酸またはそのエステルにした後、3または4個のアミノ基を有する化合物を溶解させることにより得ることが出来る。
【0078】
また、前述の溶媒類に、分子末端がジカルボン酸またはそのエステルである固体状のポリアミド酸や、分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸溶液と、3または4個のアミノ基を有する化合物を溶解して調製することが出来る。また、上記ワニスは、3または4個のアミノ基を有する化合物および分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸の濃度に特に制限はなく、ワニスの保存安定性や塗布性に応じ、任意に調製することが出来る。
【0079】
なお、ワニスは、3または4個のアミノ基を有する化合物および分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸の他に、イミド化を促進する触媒、溶剤の除去性やワニスの粘度、保存安定性を変化させるための溶剤、基材との接着性を調整するカップリング材、得られる架橋ポリイミドの特性を変化させるフィラー類(例えば繊維強化剤、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、微粉金属類等)を含んでいても良い。
【0080】
本発明で用いる架橋ポリミドの原料の一つとなり得る分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸は、上記分子末端が酸無水物であるポリアミド酸に水またはアルコールを加えることにより、加水分解反応が進行し、得ることが出来る。この加水分解反応機構については、式(40)のように予想される(反応式中、Aはポリアミド酸主鎖部分、Rは水素または炭素数1から10の炭化水素基または芳香族基を表す)。
【0081】
【化57】
【0082】
まず、分子末端が酸無水物であるポリアミド酸に水またはアルコールを加えることにより、ポリアミド酸主鎖中のアミド結合が加水分解して主鎖が切断され、末端がアミノ基および酸無水物基のポリアミド酸と、末端がジカルボン酸またはそのエステルおよび酸無水物基のポリアミド酸の2種が生成する。次に生成したアミノ基末端と元々ある酸無水物末端がアミド化反応を生じ、その結果、分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸が生成すると予想される。
【0083】
本発明においては、末端ジカルボン酸無水物基1モルに対し、水および/またはアルコールを1〜2モル用いることが好ましい。用いる水および/またはアルコールが少ない場合には、加水分解反応が十分に進行しないため、ポリアミド酸末端にジカルボン酸無水物基が残存し、後に加える3または4個のアミノ基を有する化合物と容易に反応して架橋し、ゲル化してしまう可能性がある。また、多い場合には、必要以上にポリアミド酸主鎖中のアミド結合を加水分解することとなり、酸無水物末端とアミド化反応できない過剰のアミノ基末端が生成し、分子量の低下および耐熱性の低下を招く恐れがある。
【0084】
ここで、分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸を製造するため、酸無水物基末端のポリアミド酸を加水分解するために用いることの出来る化合物としては、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、フェノール、クレゾールなどが挙げられる。これらの水および/またはアルコールは、単独または2種以上混合して用いても差し支えない。
【0085】
本発明で用いる架橋ポリイミドは、分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸の末端基がイミド化時に脱水または脱アルコールして酸無水物末端となり、3または4個のアミノ基を有する化合物と反応して、アミド酸の生成とそのイミド化により生成する架橋ポリイミドである。本発明で用いられる架橋ポリイミドは、未架橋の直鎖状ポリイミドに比べ、高いガラス転移温度と、高い耐薬品性を示す。また、その架橋構造がイミド結合であるため、他の架橋方法により得られる架橋ポリイミドに比べても、高い分解温度および高いガ ラス転移温度を示す。さらに、本発明で用いられる架橋ポリイミドは、未架橋の直鎖状ポリイミドに比べ、高い機械強度や、摺動、摩耗、疲労特性を有することが期待される。
【0086】
本発明で用いる架橋ポリイミドは、その架橋構造がイミド結合であるため、架橋構造部分にも脂肪鎖C−H結合がなく、脂肪鎖C−H結合を持つ他の架橋ポリイミドに比べ光損失量が小さい。また、本発明で用いる架橋ポリイミドは、従来高分子光導波路のコアおよび/あるいはクラッド部分として使用されている樹脂と同程度の屈折率、複屈折率を有し、具体的には複屈折率が、0.01 以下の高い光学的等方性を持ち、高分子光導波路のコアおよび/あるいはクラッド部分として有用である。
【0087】
本発明の高分子光導波路は、前駆体であるポリアミド酸ワニスを用いて成膜し、成膜後に加熱処理することによりポリイミド化して導波路加工を施すことにより得ることができる。ここで、用いるポリアミド酸ワニスは、ポリイミド化された際に所望の屈折率を有するよう、予め調整しておく。屈折率の調整は、例えば、芳香族ジアミン及び/または芳香族テトラカルボン酸二無水物の中から、複数の異なる芳香族ジアミン及び/また芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いる方法、また本発明の効果を損なわない範囲でこれらに包含されない複数の異なる芳香族ジアミン及び/また芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いる方法等が挙げられる。
【0088】
膜形成にはポリアミド酸の有機溶媒溶液を基材上にスピンコートする方法が最も一般的である。この際に用いられる溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、フェノール、クロロフェノール、クレゾール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ピリジン、ピコリン、ジメチルスルホン、トリクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。ポリアミド酸は、溶媒の種類の選択と溶液濃度の調整により、薄膜の形成工程に対応した適当な粘性、重ね塗り特性を得ることができる。
【0089】
本発明の高分子光導波路は、より具体的には、以下に示すような方法で一般的に製造することができる。すなわち、所望の比屈折率差に調整されたコア用/クラッド用のポリアミド酸溶液を用意し、まず、スピンコート法によりクラッド用ポリアミド酸溶液から基板にクラッド膜を作製し、不活性ガス雰囲気下、250℃以上370℃以下で加熱処理してポリイミド下層クラッドを形成する。次いで、この上に同様にしてコア用ポリアミド酸溶液を塗布し、加熱処理してポリイミドコア層を形成する。次に、このコア層の上にエッチングマスクとなる層を形成し、フォトリソグラフィー等により導波路パターンに加工する。エッチングマスクの材料としては、有機フォトレジスト又は金属等が用いられる。次に、エッチングマスク越しにコア層を反応性イオンエッチングすることにより所望の導波路パターンを形成することができる。その後、再度クラッド用ポリアミック酸溶液を塗布、加熱処理してポリイミド上層クラッドを形成する。この方法は、特に、シングルモード光導波路の作製に有効であり、作製時間を十分確保できる場合にはマルチモード光導波路の作製にも有効である。
【0090】
高分子光導波路の作成に用いるコア用/クラッド用ポリイミドは、両者の屈折率の差が0.01〜10%程度の組み合わせを用いることが好ましい。なお、下層クラッド用ポリイミドと上層クラッド用ポリイミドは同一のものでもよく、また異なるものを用いてもよい。
【0091】
上記加熱処理とは、光導波路作成時においてポリアミド酸を塗布した後、これをポリイミド化するために行う加熱のことをいう。また加熱処理の温度または加熱処理温度とは、この加熱処理する際の温度をいう。
【0092】
熱処理における雰囲気は特に制限されないが、窒素やアルゴンなどの不活性ガスであることが好ましい。加熱処理の時間は温度等の条件により異なるが、通常1秒〜100時間が好ましく、10秒〜10時間程度がより好ましい。
【0093】
本発明に用いる架橋基を有するポリイミドは高い耐薬品性を有するため、高分子光導波路を作成時において優れた加工性を有する。すなわち、光導波路作成時の加熱処理により、一度形成されたポリイミド層は耐薬品性を有するようになり、その上に、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、フェノール、クロロフェノール、クレゾール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ピリジン、ピコリン、ジメチルスルホン、トリクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の有機溶媒に溶解したポリアミド酸溶液を塗布しても、溶解、膨潤、白化、クラックの発生を起こさない。つまり、これらの有機溶剤に不溶化する。このことにより、使用する有機溶媒並びにポリアミド酸、ポリイミドを任意に選択することができる。
【0094】
なお、積層時に溶解、膨潤、白化、クラックの発生を起こした場合には、導波路形状が設計寸法より小さくなったり、コアとクラッドとの間の屈折率差や界面が乱れ、光が散乱することにより損失が増大し、実質的には光導波路として用いることができず、また製品の信頼性にも大きく影響する。
【0095】
以上、説明した特徴を有し、かつ説明した方法により作製された光導波路は、耐熱性及び高い耐薬品性を有することによる優れた加工性を併せ持つ高分子光導波路であり、従来解決できなかった課題を満足することができる高分子光導波路である。
【0096】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。尚、実施例中の各評価方法及び光導波路の作成方法を以下に示す。
【0097】
▲1▼屈折率及び複屈折率: 粘度が2,000〜40,000cP程度となるように濃度を調整したポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を用意し、この溶液をシリコンウェハにスピンコーティングした後、窒素雰囲気下、60℃で2時間、その後300℃まで昇温してさらに2時間乾燥した。この操作により、シリコンウェハ上に膜厚5〜20μmのポリイミド薄膜が得られた。METRICON社プリズムカプラ2010を用いてプリズムカップリング法により、この膜の波長1300nmでの屈折率及び複屈折率を測定した。なお、ここにおける屈折率はTEモードで測定した値を示し、複屈折率はTEモードとTMモードでのそれぞれの屈折率の差(TE―TM)を示す。
【0098】
▲2▼光導波路作成: 4インチのシリコン基板に、粘度が2,000〜40,000cP程度となるように濃度を調整したクラッド用ポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を、加熱処理後のポリイミド膜厚が15μmになるようにスピンコート法により塗布した。これを70℃で2時間、160℃で1時間、250℃で30分、さらに所定の加熱処理温度で1時間熱処理をしてポリイミド膜を形成した。次いでこの上に、粘度が2,000〜40,000cP程度となるように濃度を調整したコア用ポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を、加熱処理後のポリイミド膜厚が7μmになるようにスピンコート法により塗布した。これを70℃で2時間、160℃で1時間、250℃で30分、さらに所定の加熱処理温度で1時間熱処理をして、下部クラッド層上にポリイミドのコア層を形成した。この上に膜厚1.5μmのシリコン含有レジスト層を塗布した後約90℃でプリベークを行った。次に線幅7μm、長さ10cmの直線状光導波路パターンが100μm間隔に40本描かれたフォトマスクを用いて密着露光した後、現像液を用いて露光部分のフォトレジストを現像除去した。その後90℃でポストベークを行った。このパターンニングされたレジスト層をマスクとしてポリイミド膜を酸素の反応性イオンエッチングにより膜表面から7μmの深さまでエッチングした。次にポリイミドの上層に残ったレジスト層を剥離液で除去した。最後に、粘度が2,000〜40,000cP程度となるように濃度を調整したクラッド用ポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を、加熱処理後のポリイミド膜厚が15μmになるようにスピンコート法により塗布した。これを70℃で2時間、160℃で1時間、250℃で30分、さらに所定の加熱処理温度で1時間熱処理をしてポリイミド膜を形成し、上部クラッド層を形成した。このようにして、幅7μm、高さ7μmの埋め込み型光導波路を作成した。
【0099】
ガラス転移温度(Tg):DSC(示差走査型熱量計、島津製作所製・DSC−60)により、25℃から430℃まで昇温速度10℃/分で測定した。
【0100】
耐薬品性:p−クロロフェノール90重量%/フェノール10重量%混合溶媒100ミリリットルに、ポリイミドフィルム0.5gを装入し、180℃10分間加熱撹拌して溶解の有無を目視で観察した。
【0101】
合成例1
1,3,5−トリス(1−(4−アミノ−3−クロロフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼンの合成
200mlの3口反応容器に活性白土1.98g、2−クロロアニリン127.57g(1.00mol)、1,3,5−トリイソプロペニルベンゼン20.87g (純度95質量%、0.10mol)を仕込み、210℃で3時間撹拌した。混合物を100℃に冷却し、活性白土をろ別した。ろ液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析したところ、目的物の1,3,5−トリス(1−(4−アミノ−3−クロロフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼンが86.5%の反応収率で生成していた。過剰の2−クロロアニリンを減圧下留去した後、目的物を42.8g(純度95質量%、70mmol、単離収率70%)得た。目的物の物性は以下の通り。
融点 108.0〜109.0 ℃
1H−NMR (CDCl3) δ:1.46 (s, 18H), 3.90 (s, 6H), 6.60 (d, 3H, J = 8.4 Hz), 6.75 (dd, 3H, J =8.4, 1.9 Hz), 6.84 (s, 3H), 7.01 (d, 3H, J = 1.9 Hz)FD−mass 528(M+)
【0102】
合成例2
1,3,5−トリス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼンの合成
100mlの3口反応容器に窒素雰囲気下でアニリン30ml、アニリン塩酸塩10.36g(80mmol)を加え150℃まで昇温した。反応溶液に撹拌しながら1,3,5−トリス(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼン5.0g(純度75質量%、12.2mmol)を150℃で加えた後、180℃で5時間撹拌した。反応溶液を150℃まで冷却し、ヘキサン200mlと酢酸エチル400mlの混合溶媒中に添加し、結晶を析出させた。15℃まで冷却した後、結晶をろ別した。得られた結晶を水200ml中でリスラリーすることによりアニリン塩酸塩を除去した。結晶をろ別後、酢酸エチル50mlと水50mlの混合溶液に分散させ、10%水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和した。有機相を分離後、溶媒を濃縮した。ヘキサンを用いて再結晶を行い、目的物の1,3,5−トリス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼンを3.88g(純度98質量%、 8.1mmol、単離収率66%)得た。目的物の物性は以下の通り。
融点 143.3〜143.8 ℃
1H−NMR (CDCl3) δ:1.52 (s, 18H), 3.53 (br, 6H), 6.55 (dd, 6H, J = 8.6, 1.9 Hz), 6.89 (s, 3H), 6.91 (dd, 6H, J = 8.6, 1.9 Hz) FD−mass 477(M+)。
式(43)に示す1,3,5−トリス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼンを合成した。
【0103】
【化58】
【0104】
実施例1
撹拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコに、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル98mmolを、N,N−ジメチルアセトアミド中、窒素雰囲気下30分間撹拌して溶解した。その後、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物100mmolを溶液温度の上昇に注意しながら分割して加え、室温で6時間攪拌し、ポリアミド酸濃度25重量%のポリアミド酸(下記構造式(44))溶液を得た。
【化59】
【0105】
撹拌機、窒素導入管を備えたフラスコに得られたポリアミド酸溶液(分子末端酸無水物基2mmol相当)にメタノール2mmolをN,N−ジメチルアセトアミドで希釈した溶液を装入し、窒素雰囲気下6時間攪拌して加水分解し、分子末端がジカルボン酸またはそのメチルエステルであるポリアミド酸を得た。
次に、合成例2で得られた1,3,5−トリス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン0.67mmolを装入し、窒素雰囲気下6時間攪拌して溶解して、架橋ポリイミド光導波路材料の前駆体であるワニスAを得た(表1のa対応)。
【0106】
同様の調製法によって、目的の組成比となるように芳香族ジアミン、酸無水物および、3または4個のアミノ基を有する化合物を用い、表1記載のポリイミド光導波路材料の前駆体であるワニスBを得た(表1のb対応)。上記のワニスAおよびBはそれぞれ共に250℃で加熱処理することによりイミド化され、架橋ポリイミドとなる。
【0107】
それぞれのワニスの一部をガラス板上にキャストし、窒素気流下でキュア温度250℃まで4時間かけて昇温し、ワニスの脱溶媒・イミド化を行った。得られたポリイミドフィルムをガラス板より剥離し、Tg(ガラス転移温度)、耐薬品性を評価した。結果を(表2)に示す。
また、得られたワニスの一部をシリコンウェハー上にスピンコートし、窒素気流化で100℃、200℃でそれぞれ10分、250℃で30分間加熱し、脱溶媒・イミド化したポリイミド塗膜を得た。この際、得られる塗膜の膜厚が8μmとなるようスピンコーターの回転数を調整した。得られたシリコンウェハー上のポリイミド塗膜の1300μmでの屈折率・複屈折率をプリズムカプラにより測定した。結果を(表2)に示す。
【0108】
ポリアミド酸ワニスAから得られるポリイミドをコア材とし、ポリアミド酸ワニスBから得られるポリイミドをクラッド材としてシングルモード光導波路を作成した。光導波路作成の過程において、コア層、クラッド層ともに溶解、膨潤、クラック発生といった問題はまったく見られなかった。この光導波路をダイシングソーによって5cmの長さに切り出し、波長1300nmで損失を測定したところ、1dB/cm以下であった。
【0109】
実施例2
実施例1にしたがって、同様の調整法により、ポリアミド酸作成時に用いるジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物、3または4個のアミノ基を有する化合物を適宜変更し、表1記載のポリイミドcをコア、dをクラッドとするシングルモード光導波路を作製した。この光導波路を光導波路作成の過程において、コア層、クラッド層ともに溶解、膨潤、クラック発生といった問題はまったく見られなかった。この光導波路をダイシングソーによって5cmの長さに切り出し、波長1300nmで損失を測定したところ、1dB/cm以下であった。実施例1と同様に、それぞれのワニスをスピンコートして得たポリイミド塗膜の物性値も表2に示す。
【0110】
下記表1に上記実施例で用いたポリイミドの構造・組成を示す。すべての材料は、ジアミン由来の構造単位と酸二無水物由来の構造単位が交互に結合して存在する。ジアミン由来の構造単位、酸二無水物由来の構造単位が、それぞれ複数種あっても、上述した基本構造は変わらない。
【0111】
また、表1中において、用いた架橋基構造Xとして下記構造式で表すものがあり、架橋点の一部または全部がポリイミド構造と結合しており、それぞれ(41)をAPMEB、(42)をTADPOの略号で示した。
【0112】
【化60】
【0113】
【化61】
【0114】
【表1】
【0115】
実施例3
実施例1にしたがって、同様の調整法により、ポリアミド酸作成時に用いるジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物、3または4個のアミノ基を有する化合物を適宜変更し、表1記載のポリイミドeをコア、fをクラッドとするシングルモード光導波路を作製した。この光導波路を光導波路作成の過程において、コア層、クラッド層ともに溶解、膨潤、クラック発生といった問題はまったく見られなかった。この光導波路をダイシングソーによって5cmの長さに切り出し、波長1300nmで損失を測定したところ、1dB/cm以下であった。実施例1と同様に、それぞれのワニスをスピンコートして得たポリイミド塗膜の物性値も表2に示す。
【0116】
以上より、本発明の高分子光導波路が、低い光損失性および高い耐薬品性を有することによる優れた加工性を併せ持つ高分子光導波路であることがわかる。
【0117】
比較例1
実施例1にしたがって、同様の調整法により、ポリアミド酸作成時に用いるジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物を適宜変更し、ただし架橋基となる3または4個のアミノ基を有する化合物を加えず、表1記載の架橋ポリイミドgの前駆体であるポリアミド酸ワニスCおよびhの前駆体であるポリアミド酸ワニスDを作製した。実施例1と同様に、それぞれのワニスをスピンコートして得られたポリイミド塗膜の物性値を表2に示す。
ポリアミド酸ワニスCから得られるポリイミドをコア材とし、ポリアミド酸ワニスDから得られるポリイミドをクラッド材としてシングルモード光導波路を作成しようとしたところ、光導波路作成の過程において、コア層を塗布時、クラッド層が溶解し、光導波路を作成することができなかった。
【0118】
比較例2
実施例1にしたがい、同様の調整法により、ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物を適宜変更して、表1記載の架橋ポリイミドiで表されるポリイミドをコア材、jで表されるポリイミドをクラッド材としてシングルモード光導波路を作成しようとしたところ、光導波路作成の過程において、コア層を塗布時クラッド層にクラックが発生し、光導波路を作成することができなかった。
【0119】
比較例3
撹拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコに、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル0.06mol、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.04mol、N,N−ジメチルアセトアミド270gを装入し、窒素雰囲気下30分間撹拌して溶解した。その後、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物0.098molを溶液温度の上昇に注意しながら分割して加え、室温で6時間攪拌し、次いで1−(3、4−ジカルボキシフェニル)アセチレン無水物0.004molを同様に溶液温度の上昇に注意しながら分割して加え、さらに室温で6時間攪拌し、表1記載のポリイミドkの前駆体となるポリアミド酸ワニスEを得た。さらに実施例1と同様にして、フィルムおよび塗膜を作成した。得られたフィルムおよび塗膜の物性を表2に示す。
同様に用いるジアミンの量を変更し、表1記載のポリイミドl前駆体となるポリアミド酸ワニスFを得た。上記のワニスEおよびFはそれぞれ共に250℃で加熱処理することによりイミド化し、それぞれ表1記載の架橋ポリイミドとなる。ただし、表1記載の架橋部の構造を表すDCPAの略号は、1−(3,4−ジカルボキシフェニル)アセチレン無水物由来の飽和或いは不飽和の脂肪鎖であるとする。
【0120】
実施例1にしたがって、表1記載のポリイミド式kをコア、lをクラッドとするシングルモード光導波路を作製した。この光導波路を光導波路作成の過程において、コア層、クラッド層ともに溶解、膨潤、クラック発生といった問題は見られなかった。しかし、この光導波路をダイシングソーによって5cmの長さに切り出し、波長1300nmで損失を測定したところ、光損失量が多いため、高分子光導波路として適していないことがわかった。
【0121】
【表2】
【0122】
【発明の効果】
本発明のポリイミド光導波路は、高い光学特性(透明性・光学等方性)、高い耐熱性および耐薬品性を持ちながら優れた加工性を併せ持つ高分子光導波路である。本発明は、光通信、光情報処理、微小光学あるいはその他の一般光学の分野で用いられる種々の光導波路デバイス(光スイッチ、光フィルタなど)、光集積回路、または、光配線板等に広く適用できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子光導波路に関し、特に耐熱性、耐薬品性、加工性に優れたポリイミド光導波路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
低損失光ファイバの開発による光通信システムの実用化に伴い、種々の光通信用部品の開発が望まれている。またこれら光部品を高密度に実装する光配線技術、特に光導波路技術の確立が望まれている。
【0003】
一般に光導波路には、光損失が小さい、製造が容易、コアとクラッドの屈折率差を制御できる、耐熱性に優れている、などの条件が要求される。低損失な光導波路としては石英系が主に検討されている。光ファイバで実証済みのように石英は光透過性が極めて良好であるため導波路とした場合も波長が1.3μmにおいて0.1dB/cm以下の低光損失化が達成されている。しかしその光導波路作製に長時間を必要とする、作業時に高温が必要である、大面積化が困難であるなど製造上の問題点がある。
【0004】
これに対してポリメチルメタクリレート(PMMA)などからなる高分子光導波路は低い温度で成形が可能であり、低価格が期待できるなどの長所がある一方、耐熱性に劣る、長波長で十分な低損失化が達成されていない、などの欠点がある。すなわち、PMMAに代表される脂肪族系高分子は、光インタコネクションにおいてはLSIチップを実装する際に要求されるハンダ耐熱性を有していない。また、脂肪族系高分子は光通信波長領域に脂肪族C−H結合由来の赤外吸収の高波長吸収を有しているため、この領域での光損失が大きい。したがって、脂肪族C−H結合をもたない高耐熱性透明樹脂からなる高分子光導波路が求められていた。
【0005】
一方、芳香族ポリイミドはプラスチックの中で最も耐熱性に優れ、さらに脂肪族C−H結合を有さない。このため、芳香族ポリイミドの透明性を高め、光通信分やに利用するための研究が精力的におこなわれてきた。透明性を有するポリイミドについては、例えば非特許文献1、非特許文献2等に詳細に述べられている。
【0006】
透明性を有する芳香族ポリイミドとしては、全芳香族ポリイミドの分子構造中にトリフルオロメチル基などを導入したフッ素含有ポリイミドが数多く開発されてきた。なかでも、NTTが開発したフッ素含有ポリイミド「FLUPI」(登録商標)は、可視から近赤外波長領域での透明性が高く、その光学的等方性も高い(複屈折が従来の芳香族ポリイミドより一桁小さい)ため、高分子光導波路用材料として最も研究が進んでいるポリイミドである。
【0007】
しかしながら「FLUPI」(登録商標)に代表されるフッ素含有ポリイミドは、透明性という特徴を付与した引き換えに、ポリイミドの特徴である耐熱性、耐薬品性が低下する場合が多い。ポリイミドを光導波路として用いるためには、コアとクラッドの多層構造にする必要があるが、フッ素含有ポリイミドは耐薬品性が低く、積層時に溶解、膨潤したり、白化、クラックが入る等の問題を起こすため、多層化が困難であった。
【0008】
そこでこれらの問題を解決すべく、種々検討されており、有機溶媒に対するポリイミドとポリアミド酸の溶解性の差を利用する方法(特許文献1参照)、380℃以上での熱処理によって有機溶媒への不溶化を図る方法(特許文献2参照)等が開示されている。しかし、光導波路を作成するためには非常に微細な加工を精度良く行うことが必要となるため、前者の方法を用いるためには、有機溶媒に対する溶解性の差が極めて顕著であることが不可欠であり、用いることが出来るポリイミドと有機溶媒の組み合わせは実質的にはかなり制限される問題を有する。また後者の方法では、加熱により上述の問題は解決されるものの、ポリイミドが380℃以上という高温の加熱により変質して着色が見られ、特にマルチモードで想定されている633nmや850nmの波長での光線透過の損失が増大する問題がある。
【0009】
一方、樹脂中に架橋構造を導入することにより、樹脂の分解温度やガラス転移温度といった耐熱性、耐薬品性を向上できることが知られている。しかしながらポリイミドは一般的に、その前駆体であるポリアミド酸を経て合成されることから、架橋構造を導入することが難しかった。つまり、一般的なポリイミド光導波路作製プロセスにおいては、前駆体であるポリアミド酸の溶液を調整し、これをドラム又はベルト等に流延した後、加熱して溶媒を適度な量まで取り除くことにより、自己支持性のあるポリアミドフィルムを作製する。さらにこのフィルムを加熱処理などによりイミド化反応を進行させ、得られたポリイミドフィルムに導波路加工を施す。最近は射出成形やプレス成形による加工プロセスの単純化もはかられているが、いずれにせよ、ポリアミド酸の分子量が高すぎたり無限大である場合には、溶液としての取り扱いができないためにポリアミド酸のフィルムを得られず、結果としてポリイミドフィルムを得ることができない。
【0010】
すなわち耐熱性、耐薬品性向上を目的とした架橋構造導入のために、3官能以上の官能基を有するモノマーを用いた場合には、特許文献3に記載のように、前駆体であるポリアミド酸の段階で架橋、ゲル化してしまい、溶液として取り扱えなくなってしまうという問題を有していた。
【0011】
上述の理由から、架橋ポリイミドは通常、ポリイミドの主鎖あるいは末端に架橋構造を導入し、成形後に架橋させる手法により合成される(非特許文献3参照)。
しかしながら、これまでに開発されてきた多くの架橋方法は、そのほとんどが付加反応によるものであり、架橋させるためにイミド化後にさらに高温で処理する必要があるため、樹脂の劣化、着色や基材の酸化など、多くの問題を含んでいた。また、付加反応により生成した架橋構造は耐熱性の低い脂肪族鎖を含む結合であるため、ポリイミドの高い分解温度を損ねるものであった。上述の二つの方法を組み合わせた架橋ポリイミドについても示されており、トリアミン化合物を用いて、予め主鎖に分岐構造を導入し、それらのポリマーを付加反応により架橋することが記載されているが.ポリイミドの高い分解温度を犠牲にしていることにかわりはなかった。
【0012】
また、近年、デンドリマーまたはハイパーブランチポリマーと呼ばれる新しい高分子材料が見出され、ポリイミド構造体についても検討されているが(非特許文献4参照)、これらは分子同士が化学的に結合されておらず、さらに物理的な絡み合いも少ないため、その耐熱性、耐薬品性は直鎖のものと大きくは異ならない。尚、特許文献4では、射出成形可能な溶融流動性ポリイミドを得るために、テトラアミノ化合物またはトリアミノ化合物を用いているが、1官能性の末端封止剤を併用することで、分子量が無限大とならない様に調節している。すなわち、ここで得られるポリイミドは、ネットワーク状の架橋ポリイミドではなく、分岐を有するハイパーブランチポリマーに相当する。
以上のように、一般的なポリイミドの製造条件下で製造することができ、耐熱性、耐薬品性、加工性に優れる高分子光導波路が求められていた。
【0013】
【非特許文献1】
「ポリイミド樹脂」(発行:(株)技術情報協会、1991)
【非特許文献2】
「躍進するポリイミドの最新動向」(発行:住ベテクノリサーチ(株)社、1997)
【特許文献1】
特許2816771号公報
【0014】
【特許文献2】
特許3019166号公報
【特許文献3】
特開平4−88020号公報
【非特許文献3】
横田力夫;「強化プラスチック」、Vol.43,No.6,205−211(1999)、Vol.43,No.9,318−329(1999)、竹市力;高分子,46(8),576(1997)
【0015】
【非特許文献4】
K.Yamanaka ;Macromolecules,33,1111(2000)
【特許文献4】
特開平7−247357号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、一般的なポリイミドの製造条件下で製造することができ、耐熱性、耐薬品性、加工性に優れた架橋ポリイミドを用いた高分子光導波路を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、分子末端がジカルボン酸又はそのエステルであるポリアミド酸は、3または4個のアミノ基を有する化合物と反応しないため、アミド酸ワニスの状態では架橋反応が進行ないこと、しかし通常のイミド化条件下では反応して、架橋ポリイミドを与えること、得られた架橋ポリイミドはその架橋構造がイミド結合であるため、高い分解温度を有すること、この架橋ポリイミドを用いることにより、高い耐熱性および耐薬品性を持ちながら優れた加工性を併せ持つ高分子光導波路を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0018】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]に記載した事項より特定される。
【0019】
[1]化学式(1)で表される架橋構造を含んでなる架橋ポリイミドを光学コアおよび/または光学クラッドとして用いることを特徴とするシングルモードまたはマルチモードの高分子光導波路。
【化16】
(ここで、mは3または4の整数であり、Xは3価または4価の芳香族基、Yは2価の芳香族基を、Zは4価の芳香族基を表す。)。
【0020】
[2]Xが、下記式(2)で表される化合物であることを特徴とする[1]記載の高分子光導波路。
【化17】
(ここで、nは3または4の整数、R1は下記式(3)で表される3または4価の基を表す。)
【0021】
【化18】
(ここで、R2は下記式(4)で表される2価の基を表す。)
【0022】
【化19】
【0023】
[3]Xが、下記式(5−a)または(5−b)で表される化合物であることを特徴とする[1]記載の高分子光導波路。
【化20】
(ここでR3は下記式(6)で表される2価の基を表す。)
【0024】
【化21】
【0025】
[4]Xが、下記式(7−a)または(7−b)で表される化合物であることを特徴とする[1]記載の高分子光導波路。
【化22】
(ここでR4は下記式(8)で表される2価の基を表し、R5は下記式(9)で表される2価の基を表す。また、R6は下記式(10)で表される2価の基を表す。)
【0026】
【化23】
(ここでR7は下記式(11)で表される2価の基を表す。)
【化24】
(ここでR7は下記式(11)で表される2価の基を表す。)
【0027】
【化25】
【化26】
【0028】
[5]Xが、下記式(12)で表される化合物であることを特徴とする[1]記載の高分子光導波路。
【化27】
(ここでR8はNまたはCHで表される3価の基を表す。)
【0029】
[6]Yが下記式(13)から選ばれる2価の芳香族基であることを特徴とする[2]〜[5]記載の高分子光導波路。
【化28】
【0030】
(ここで、式(13)の芳香環の水素原子の一部は、アミノ基やカルボニル基と反応性を有しない置換基で置換されていてもよい。R9はそれぞれ独立であり、下記式(14)で表される2価の基を表す。)
【化29】
【0031】
[7]Zが下記式(15)から選ばれる4価の芳香族基であることを特徴とする[2]〜[5]記載の高分子光導波路。
【化30】
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の高分子光導波路は、化学式(1)で表わされる繰り返し単位を主鎖骨格に有し、その分子末端の一部または全てが化学式(1)であらわされる架橋基を有する架橋ポリイミドを光学コアおよび/あるいは光学クラッドとして用いる。
【0033】
本発明で用いる化学式(1)で表わされる架橋構造を含んでなる架橋ポリイミドは、化学式(1)で表わされる架橋構造を含んでいれば、いかなるものでも問題なく、この架橋ポリイミドの製造の一例としては、3または4個のアミノ基を有する化合物および、分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸をイミド化することにより、得る方法を挙げることができる。
【0034】
分子末端がカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸は、常温ではアミノ基を有する化合物とアミド化反応しないため、ワニスが架橋することはない。分子末端がカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸は、ワニスを塗布、脱溶剤、イミド化する条件下で、脱水あるいは脱アルコールし、分子末端に酸無水物基を生成し、これが3または4個のアミノ基を有する化合物のアミノ基と反応、アミド酸の生成とそのイミド化を経て、ポリマー同士を架橋させる。
【0035】
なお、分子末端が酸無水物基であるポリアミド酸を用いた場合、該化合物が常温で3または4個のアミノ基を有する化合物のアミノ基と反応、ポリアミド酸が架橋し、ワニスがゲル化するため好ましくない。
【0036】
本発明に用いる架橋ポリイミドの原料の一つとなり得るポリアミド酸のジカルボン酸またはそのエステル末端は、好ましくは下記式(16−a)または(16−b)で表されるものである。
【0037】
【化31】
【0038】
【化32】
【0039】
(ここで、R10は水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基または芳香族基を表す。また式(16−a)において、ジカルボン酸またはそのエステル末端の反対側はどのような構造であってもよい)
R10の具体例としては下記式(17)に示される、
【0040】
【化33】
などが挙げられる。
【0041】
3または4個のアミノ基を有する化合物としては、好ましい具体例としては、下記式(18)、(21)、(23)および(28)で表される化合物が挙げられる。
【0042】
【化34】
(ここで、nは3または4を、R11は下記式(19)で表される3または4価の基を表す。)
【0043】
【化35】
(ここで、R12は下記式(20)で表される2価の基を表す。)
【0044】
【化36】
【0045】
【化37】
(ここで、R13は−NH2または−Hであり、R14は下記式(22)で表される2価の基を表す。)
【0046】
【化38】
【0047】
【化39】
(ここで、R15は下記式(24)で表される1価の基を表し、R16は下記式(25)で表される1価の基を表し、R17は下記式(26)で表される2価の基を表す)
【0048】
【化40】
(ここで、R18は下記式(27)で表される2価の基を表す。)
【0049】
【化41】
(ここで、R18は下記式(27)で表される2価の基を表す。)
【0050】
【化42】
【0051】
【化43】
【0052】
【化44】
(ここで、R19はNまたはCHで表される3価の基を表す。)
【0053】
具体例としては、例えば、トリス(p−アミノフェニル)アミン、トリス(3−アミノフェニル)ホスフィンオキサイド、、トリス(4−アミノフェニル)メタン、1,3,5−トリス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、トリアミノピリミジン、メラミンおよび下記式(29)〜(36)に表される化合物等が挙げられる。
これらは単独で、または、二種類以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0054】
【化45】
【0055】
【化46】
【0056】
【化47】
【0057】
【化48】
【0058】
【化49】
【0059】
【化50】
【0060】
【化51】
【0061】
【化52】
【0062】
本発明に用いる架橋ポリイミドの製造において、3または4個のアミノ基を有する化合物の使用量は、用いるポリアミド酸のジカルボン酸またはそのエステル末端1モルに対し、好ましくは0.1〜0.6モル、更に好ましくは0.2〜0.4モルである。該化合物の使用量が多い場合、および、少ない場合には、得られるポリイミド中の架橋していない分子鎖が多く、耐熱性、耐薬品性の向上効果が小さくなる傾向にある。ここでいうジカルボン酸またはそのエステル末端1モルとは上記した式(16−a)または式(16−b)で表わされる末端構造1モルを表す。
【0063】
本発明に用いる架橋ポリイミドを製造する際、用いる分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸の有する繰り返し単位に、特に制限はなく、従来公知のポリアミド酸の繰り返し単位から任意に選択できる。本発明のポリアミド酸は、好ましくは、下記式(37)で表される繰り返し構造を有するものである。
【0064】
【化53】
(ここで、Yは2価の芳香族基を、より好ましくは、下記式(13)から選ばれる2価の芳香族基を示し、Zは、前記と同じ意味を示す。)
【0065】
【化54】
(ここで、式(13)の芳香環の水素原子の一部は、アミノ基やカルボニル基と反応性を有しない置換基で置換されていても良い。R9はそれぞれ独立であり、下記式(38)で表される2価の基を表す)
【0066】
【化55】
【0067】
(また、Yは4価の芳香族基を、より好ましくは、下記式(39)から選ばれる4価の芳香族基を示す。)
【0068】
【化56】
【0069】
上記ポリアミド酸は、前述の繰り返し構造から選ばれる2種以上の繰り返し単位を有していてもよい。この場合、2種以上の繰り返し単位のモル分率、繰り返し数、順序の定序性、規則性に制限はない。
【0070】
本発明で用いられる架橋ポリイミドの原料の一つとなり得る分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸の分子量に特に制限はなく、ワニスの粘度、得られる架橋ポリイミドの物性等に合わせ、任意に設定することが出来るが、対数粘度で示した場合、0.2から2.0dl/g(N,N−ジメチルアセトアミド中、濃度0.5g/dl、35℃で測定。)の範囲であることが好ましく、0.4から1.2dl/gの範囲であることが特に好ましい。対数粘度が0.2以上では、分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸の強度が高く、ワニスを塗布、イミド化する際に塗膜が割れる等の不都合がなく好ましい。また、2.0以下の場合には、得られるポリアミド酸の末端カルボン酸基および/またはそのエステル基が多く、架橋による物性向上の効果が得られ易い。本発明で用いる架橋ポリイミドの原料の一つとなり得る分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸は、一般的な酸無水物末端のポリアミド酸に水またはアルコールを添加し、その末端をジカルボン酸またはそのエステルにすることにより得ることができる。
【0071】
水またはアルコールを添加する上記酸無水物末端のポリアミド酸は、テトラカルボン酸二無水物に対し、等量未満の芳香族ジアミンを用いて得ることが出来る。本発明で用いる架橋ポリイミドの原料の一つとなり得るポリアミド酸は、用いる芳香族ジアミンの量を調整することで、得られるポリアミド酸の末端基量、ワニスの粘度、得られる架橋ポリイミドの架橋密度(架橋点間距離)を制御することが出来る。
【0072】
用いる酸無水物末端のポリアミド酸の合成においては、テトラカルボン酸二無水物1モルに対し、ジアミンを0.8〜0.99モル用いることが好ましい。用いるジアミンが少ない場合には、得られるポリマーの強度が低く、ワニスを塗布、イミド化する際に塗膜が割れるためあまり好ましくない。また、多い場合には、得られるポリアミド酸の酸無水物末端が極端に少ないため、十分に架橋させることが出来ないことがある。なお、テトラカルボン酸二無水物1モルとジアミンαモルを用いた場合、得られるポリアミド酸の末端酸無水物量は(1−α)×2モルとなる。
【0073】
また、用いる酸無水物末端のポリアミド酸の製造方法に特に制限はなく、従来公知の芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物より従来公知の方法で得ることが出来、原料装入の順序、反応の濃度、温度、時間には何ら制限はない。なお、通常、ポリアミド酸は、不活性ガス雰囲気下、非プロトン性極性溶媒中で、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を、常温〜60℃程度で数時間反応させることにより得られる。本発明に用いる酸無水物末端のポリアミド酸は、溶剤中で合成し溶剤に溶解したままのものであっても、また、貧溶媒を用いて析出させ、固体状態としたものであっても良い。
【0074】
ここで、用いることのできる従来公知の芳香族ジアミンとしては、例えばm−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(4−アミノフェニル)スルホキシド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’ービス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’ービス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2−トリフルオロメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2’−トリフルオロメチル−3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−5−トリフルオロメチルベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)−5−トリフルオロメチルベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0075】
ここで、用いることのできる従来公知の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物 、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ー1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物等が挙げられ、これらは単独あるいは2種以上混合して使用することが出来る。
【0076】
ここで、架橋ポリイミドの原料の一つとなり得るポリアミド酸の合成に用いることの出来る反応溶媒に特に制限はなく、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホロトリアミド、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、テトラヒドロフラン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジフェニルエーテル、スルホラン、ジフェニルスルホン、テトラメチル尿素、アニソール等が挙げられる。これらの溶媒は、単独または2種以上混合して用いても差し支えない。
【0077】
本発明で用いる架橋ポリイミドは、3または4個のアミノ基を有する化合物、および、分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸を含むワニスをイミド化することより得られるものであり、このワニスの製造方法の一例としては、前述のポリアミド酸の製造方法により得られる分子末端が酸無水物基であるポリアミド酸溶液に、水またはアルコールを添加して、末端酸無水物基をジカルボン酸またはそのエステルにした後、3または4個のアミノ基を有する化合物を溶解させることにより得ることが出来る。
【0078】
また、前述の溶媒類に、分子末端がジカルボン酸またはそのエステルである固体状のポリアミド酸や、分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸溶液と、3または4個のアミノ基を有する化合物を溶解して調製することが出来る。また、上記ワニスは、3または4個のアミノ基を有する化合物および分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸の濃度に特に制限はなく、ワニスの保存安定性や塗布性に応じ、任意に調製することが出来る。
【0079】
なお、ワニスは、3または4個のアミノ基を有する化合物および分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸の他に、イミド化を促進する触媒、溶剤の除去性やワニスの粘度、保存安定性を変化させるための溶剤、基材との接着性を調整するカップリング材、得られる架橋ポリイミドの特性を変化させるフィラー類(例えば繊維強化剤、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、微粉金属類等)を含んでいても良い。
【0080】
本発明で用いる架橋ポリミドの原料の一つとなり得る分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸は、上記分子末端が酸無水物であるポリアミド酸に水またはアルコールを加えることにより、加水分解反応が進行し、得ることが出来る。この加水分解反応機構については、式(40)のように予想される(反応式中、Aはポリアミド酸主鎖部分、Rは水素または炭素数1から10の炭化水素基または芳香族基を表す)。
【0081】
【化57】
【0082】
まず、分子末端が酸無水物であるポリアミド酸に水またはアルコールを加えることにより、ポリアミド酸主鎖中のアミド結合が加水分解して主鎖が切断され、末端がアミノ基および酸無水物基のポリアミド酸と、末端がジカルボン酸またはそのエステルおよび酸無水物基のポリアミド酸の2種が生成する。次に生成したアミノ基末端と元々ある酸無水物末端がアミド化反応を生じ、その結果、分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸が生成すると予想される。
【0083】
本発明においては、末端ジカルボン酸無水物基1モルに対し、水および/またはアルコールを1〜2モル用いることが好ましい。用いる水および/またはアルコールが少ない場合には、加水分解反応が十分に進行しないため、ポリアミド酸末端にジカルボン酸無水物基が残存し、後に加える3または4個のアミノ基を有する化合物と容易に反応して架橋し、ゲル化してしまう可能性がある。また、多い場合には、必要以上にポリアミド酸主鎖中のアミド結合を加水分解することとなり、酸無水物末端とアミド化反応できない過剰のアミノ基末端が生成し、分子量の低下および耐熱性の低下を招く恐れがある。
【0084】
ここで、分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸を製造するため、酸無水物基末端のポリアミド酸を加水分解するために用いることの出来る化合物としては、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、フェノール、クレゾールなどが挙げられる。これらの水および/またはアルコールは、単独または2種以上混合して用いても差し支えない。
【0085】
本発明で用いる架橋ポリイミドは、分子末端がジカルボン酸またはそのエステルであるポリアミド酸の末端基がイミド化時に脱水または脱アルコールして酸無水物末端となり、3または4個のアミノ基を有する化合物と反応して、アミド酸の生成とそのイミド化により生成する架橋ポリイミドである。本発明で用いられる架橋ポリイミドは、未架橋の直鎖状ポリイミドに比べ、高いガラス転移温度と、高い耐薬品性を示す。また、その架橋構造がイミド結合であるため、他の架橋方法により得られる架橋ポリイミドに比べても、高い分解温度および高いガ ラス転移温度を示す。さらに、本発明で用いられる架橋ポリイミドは、未架橋の直鎖状ポリイミドに比べ、高い機械強度や、摺動、摩耗、疲労特性を有することが期待される。
【0086】
本発明で用いる架橋ポリイミドは、その架橋構造がイミド結合であるため、架橋構造部分にも脂肪鎖C−H結合がなく、脂肪鎖C−H結合を持つ他の架橋ポリイミドに比べ光損失量が小さい。また、本発明で用いる架橋ポリイミドは、従来高分子光導波路のコアおよび/あるいはクラッド部分として使用されている樹脂と同程度の屈折率、複屈折率を有し、具体的には複屈折率が、0.01 以下の高い光学的等方性を持ち、高分子光導波路のコアおよび/あるいはクラッド部分として有用である。
【0087】
本発明の高分子光導波路は、前駆体であるポリアミド酸ワニスを用いて成膜し、成膜後に加熱処理することによりポリイミド化して導波路加工を施すことにより得ることができる。ここで、用いるポリアミド酸ワニスは、ポリイミド化された際に所望の屈折率を有するよう、予め調整しておく。屈折率の調整は、例えば、芳香族ジアミン及び/または芳香族テトラカルボン酸二無水物の中から、複数の異なる芳香族ジアミン及び/また芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いる方法、また本発明の効果を損なわない範囲でこれらに包含されない複数の異なる芳香族ジアミン及び/また芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いる方法等が挙げられる。
【0088】
膜形成にはポリアミド酸の有機溶媒溶液を基材上にスピンコートする方法が最も一般的である。この際に用いられる溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、フェノール、クロロフェノール、クレゾール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ピリジン、ピコリン、ジメチルスルホン、トリクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。ポリアミド酸は、溶媒の種類の選択と溶液濃度の調整により、薄膜の形成工程に対応した適当な粘性、重ね塗り特性を得ることができる。
【0089】
本発明の高分子光導波路は、より具体的には、以下に示すような方法で一般的に製造することができる。すなわち、所望の比屈折率差に調整されたコア用/クラッド用のポリアミド酸溶液を用意し、まず、スピンコート法によりクラッド用ポリアミド酸溶液から基板にクラッド膜を作製し、不活性ガス雰囲気下、250℃以上370℃以下で加熱処理してポリイミド下層クラッドを形成する。次いで、この上に同様にしてコア用ポリアミド酸溶液を塗布し、加熱処理してポリイミドコア層を形成する。次に、このコア層の上にエッチングマスクとなる層を形成し、フォトリソグラフィー等により導波路パターンに加工する。エッチングマスクの材料としては、有機フォトレジスト又は金属等が用いられる。次に、エッチングマスク越しにコア層を反応性イオンエッチングすることにより所望の導波路パターンを形成することができる。その後、再度クラッド用ポリアミック酸溶液を塗布、加熱処理してポリイミド上層クラッドを形成する。この方法は、特に、シングルモード光導波路の作製に有効であり、作製時間を十分確保できる場合にはマルチモード光導波路の作製にも有効である。
【0090】
高分子光導波路の作成に用いるコア用/クラッド用ポリイミドは、両者の屈折率の差が0.01〜10%程度の組み合わせを用いることが好ましい。なお、下層クラッド用ポリイミドと上層クラッド用ポリイミドは同一のものでもよく、また異なるものを用いてもよい。
【0091】
上記加熱処理とは、光導波路作成時においてポリアミド酸を塗布した後、これをポリイミド化するために行う加熱のことをいう。また加熱処理の温度または加熱処理温度とは、この加熱処理する際の温度をいう。
【0092】
熱処理における雰囲気は特に制限されないが、窒素やアルゴンなどの不活性ガスであることが好ましい。加熱処理の時間は温度等の条件により異なるが、通常1秒〜100時間が好ましく、10秒〜10時間程度がより好ましい。
【0093】
本発明に用いる架橋基を有するポリイミドは高い耐薬品性を有するため、高分子光導波路を作成時において優れた加工性を有する。すなわち、光導波路作成時の加熱処理により、一度形成されたポリイミド層は耐薬品性を有するようになり、その上に、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、フェノール、クロロフェノール、クレゾール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ピリジン、ピコリン、ジメチルスルホン、トリクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の有機溶媒に溶解したポリアミド酸溶液を塗布しても、溶解、膨潤、白化、クラックの発生を起こさない。つまり、これらの有機溶剤に不溶化する。このことにより、使用する有機溶媒並びにポリアミド酸、ポリイミドを任意に選択することができる。
【0094】
なお、積層時に溶解、膨潤、白化、クラックの発生を起こした場合には、導波路形状が設計寸法より小さくなったり、コアとクラッドとの間の屈折率差や界面が乱れ、光が散乱することにより損失が増大し、実質的には光導波路として用いることができず、また製品の信頼性にも大きく影響する。
【0095】
以上、説明した特徴を有し、かつ説明した方法により作製された光導波路は、耐熱性及び高い耐薬品性を有することによる優れた加工性を併せ持つ高分子光導波路であり、従来解決できなかった課題を満足することができる高分子光導波路である。
【0096】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。尚、実施例中の各評価方法及び光導波路の作成方法を以下に示す。
【0097】
▲1▼屈折率及び複屈折率: 粘度が2,000〜40,000cP程度となるように濃度を調整したポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を用意し、この溶液をシリコンウェハにスピンコーティングした後、窒素雰囲気下、60℃で2時間、その後300℃まで昇温してさらに2時間乾燥した。この操作により、シリコンウェハ上に膜厚5〜20μmのポリイミド薄膜が得られた。METRICON社プリズムカプラ2010を用いてプリズムカップリング法により、この膜の波長1300nmでの屈折率及び複屈折率を測定した。なお、ここにおける屈折率はTEモードで測定した値を示し、複屈折率はTEモードとTMモードでのそれぞれの屈折率の差(TE―TM)を示す。
【0098】
▲2▼光導波路作成: 4インチのシリコン基板に、粘度が2,000〜40,000cP程度となるように濃度を調整したクラッド用ポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を、加熱処理後のポリイミド膜厚が15μmになるようにスピンコート法により塗布した。これを70℃で2時間、160℃で1時間、250℃で30分、さらに所定の加熱処理温度で1時間熱処理をしてポリイミド膜を形成した。次いでこの上に、粘度が2,000〜40,000cP程度となるように濃度を調整したコア用ポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を、加熱処理後のポリイミド膜厚が7μmになるようにスピンコート法により塗布した。これを70℃で2時間、160℃で1時間、250℃で30分、さらに所定の加熱処理温度で1時間熱処理をして、下部クラッド層上にポリイミドのコア層を形成した。この上に膜厚1.5μmのシリコン含有レジスト層を塗布した後約90℃でプリベークを行った。次に線幅7μm、長さ10cmの直線状光導波路パターンが100μm間隔に40本描かれたフォトマスクを用いて密着露光した後、現像液を用いて露光部分のフォトレジストを現像除去した。その後90℃でポストベークを行った。このパターンニングされたレジスト層をマスクとしてポリイミド膜を酸素の反応性イオンエッチングにより膜表面から7μmの深さまでエッチングした。次にポリイミドの上層に残ったレジスト層を剥離液で除去した。最後に、粘度が2,000〜40,000cP程度となるように濃度を調整したクラッド用ポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を、加熱処理後のポリイミド膜厚が15μmになるようにスピンコート法により塗布した。これを70℃で2時間、160℃で1時間、250℃で30分、さらに所定の加熱処理温度で1時間熱処理をしてポリイミド膜を形成し、上部クラッド層を形成した。このようにして、幅7μm、高さ7μmの埋め込み型光導波路を作成した。
【0099】
ガラス転移温度(Tg):DSC(示差走査型熱量計、島津製作所製・DSC−60)により、25℃から430℃まで昇温速度10℃/分で測定した。
【0100】
耐薬品性:p−クロロフェノール90重量%/フェノール10重量%混合溶媒100ミリリットルに、ポリイミドフィルム0.5gを装入し、180℃10分間加熱撹拌して溶解の有無を目視で観察した。
【0101】
合成例1
1,3,5−トリス(1−(4−アミノ−3−クロロフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼンの合成
200mlの3口反応容器に活性白土1.98g、2−クロロアニリン127.57g(1.00mol)、1,3,5−トリイソプロペニルベンゼン20.87g (純度95質量%、0.10mol)を仕込み、210℃で3時間撹拌した。混合物を100℃に冷却し、活性白土をろ別した。ろ液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析したところ、目的物の1,3,5−トリス(1−(4−アミノ−3−クロロフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼンが86.5%の反応収率で生成していた。過剰の2−クロロアニリンを減圧下留去した後、目的物を42.8g(純度95質量%、70mmol、単離収率70%)得た。目的物の物性は以下の通り。
融点 108.0〜109.0 ℃
1H−NMR (CDCl3) δ:1.46 (s, 18H), 3.90 (s, 6H), 6.60 (d, 3H, J = 8.4 Hz), 6.75 (dd, 3H, J =8.4, 1.9 Hz), 6.84 (s, 3H), 7.01 (d, 3H, J = 1.9 Hz)FD−mass 528(M+)
【0102】
合成例2
1,3,5−トリス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼンの合成
100mlの3口反応容器に窒素雰囲気下でアニリン30ml、アニリン塩酸塩10.36g(80mmol)を加え150℃まで昇温した。反応溶液に撹拌しながら1,3,5−トリス(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼン5.0g(純度75質量%、12.2mmol)を150℃で加えた後、180℃で5時間撹拌した。反応溶液を150℃まで冷却し、ヘキサン200mlと酢酸エチル400mlの混合溶媒中に添加し、結晶を析出させた。15℃まで冷却した後、結晶をろ別した。得られた結晶を水200ml中でリスラリーすることによりアニリン塩酸塩を除去した。結晶をろ別後、酢酸エチル50mlと水50mlの混合溶液に分散させ、10%水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和した。有機相を分離後、溶媒を濃縮した。ヘキサンを用いて再結晶を行い、目的物の1,3,5−トリス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼンを3.88g(純度98質量%、 8.1mmol、単離収率66%)得た。目的物の物性は以下の通り。
融点 143.3〜143.8 ℃
1H−NMR (CDCl3) δ:1.52 (s, 18H), 3.53 (br, 6H), 6.55 (dd, 6H, J = 8.6, 1.9 Hz), 6.89 (s, 3H), 6.91 (dd, 6H, J = 8.6, 1.9 Hz) FD−mass 477(M+)。
式(43)に示す1,3,5−トリス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼンを合成した。
【0103】
【化58】
【0104】
実施例1
撹拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコに、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル98mmolを、N,N−ジメチルアセトアミド中、窒素雰囲気下30分間撹拌して溶解した。その後、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物100mmolを溶液温度の上昇に注意しながら分割して加え、室温で6時間攪拌し、ポリアミド酸濃度25重量%のポリアミド酸(下記構造式(44))溶液を得た。
【化59】
【0105】
撹拌機、窒素導入管を備えたフラスコに得られたポリアミド酸溶液(分子末端酸無水物基2mmol相当)にメタノール2mmolをN,N−ジメチルアセトアミドで希釈した溶液を装入し、窒素雰囲気下6時間攪拌して加水分解し、分子末端がジカルボン酸またはそのメチルエステルであるポリアミド酸を得た。
次に、合成例2で得られた1,3,5−トリス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン0.67mmolを装入し、窒素雰囲気下6時間攪拌して溶解して、架橋ポリイミド光導波路材料の前駆体であるワニスAを得た(表1のa対応)。
【0106】
同様の調製法によって、目的の組成比となるように芳香族ジアミン、酸無水物および、3または4個のアミノ基を有する化合物を用い、表1記載のポリイミド光導波路材料の前駆体であるワニスBを得た(表1のb対応)。上記のワニスAおよびBはそれぞれ共に250℃で加熱処理することによりイミド化され、架橋ポリイミドとなる。
【0107】
それぞれのワニスの一部をガラス板上にキャストし、窒素気流下でキュア温度250℃まで4時間かけて昇温し、ワニスの脱溶媒・イミド化を行った。得られたポリイミドフィルムをガラス板より剥離し、Tg(ガラス転移温度)、耐薬品性を評価した。結果を(表2)に示す。
また、得られたワニスの一部をシリコンウェハー上にスピンコートし、窒素気流化で100℃、200℃でそれぞれ10分、250℃で30分間加熱し、脱溶媒・イミド化したポリイミド塗膜を得た。この際、得られる塗膜の膜厚が8μmとなるようスピンコーターの回転数を調整した。得られたシリコンウェハー上のポリイミド塗膜の1300μmでの屈折率・複屈折率をプリズムカプラにより測定した。結果を(表2)に示す。
【0108】
ポリアミド酸ワニスAから得られるポリイミドをコア材とし、ポリアミド酸ワニスBから得られるポリイミドをクラッド材としてシングルモード光導波路を作成した。光導波路作成の過程において、コア層、クラッド層ともに溶解、膨潤、クラック発生といった問題はまったく見られなかった。この光導波路をダイシングソーによって5cmの長さに切り出し、波長1300nmで損失を測定したところ、1dB/cm以下であった。
【0109】
実施例2
実施例1にしたがって、同様の調整法により、ポリアミド酸作成時に用いるジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物、3または4個のアミノ基を有する化合物を適宜変更し、表1記載のポリイミドcをコア、dをクラッドとするシングルモード光導波路を作製した。この光導波路を光導波路作成の過程において、コア層、クラッド層ともに溶解、膨潤、クラック発生といった問題はまったく見られなかった。この光導波路をダイシングソーによって5cmの長さに切り出し、波長1300nmで損失を測定したところ、1dB/cm以下であった。実施例1と同様に、それぞれのワニスをスピンコートして得たポリイミド塗膜の物性値も表2に示す。
【0110】
下記表1に上記実施例で用いたポリイミドの構造・組成を示す。すべての材料は、ジアミン由来の構造単位と酸二無水物由来の構造単位が交互に結合して存在する。ジアミン由来の構造単位、酸二無水物由来の構造単位が、それぞれ複数種あっても、上述した基本構造は変わらない。
【0111】
また、表1中において、用いた架橋基構造Xとして下記構造式で表すものがあり、架橋点の一部または全部がポリイミド構造と結合しており、それぞれ(41)をAPMEB、(42)をTADPOの略号で示した。
【0112】
【化60】
【0113】
【化61】
【0114】
【表1】
【0115】
実施例3
実施例1にしたがって、同様の調整法により、ポリアミド酸作成時に用いるジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物、3または4個のアミノ基を有する化合物を適宜変更し、表1記載のポリイミドeをコア、fをクラッドとするシングルモード光導波路を作製した。この光導波路を光導波路作成の過程において、コア層、クラッド層ともに溶解、膨潤、クラック発生といった問題はまったく見られなかった。この光導波路をダイシングソーによって5cmの長さに切り出し、波長1300nmで損失を測定したところ、1dB/cm以下であった。実施例1と同様に、それぞれのワニスをスピンコートして得たポリイミド塗膜の物性値も表2に示す。
【0116】
以上より、本発明の高分子光導波路が、低い光損失性および高い耐薬品性を有することによる優れた加工性を併せ持つ高分子光導波路であることがわかる。
【0117】
比較例1
実施例1にしたがって、同様の調整法により、ポリアミド酸作成時に用いるジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物を適宜変更し、ただし架橋基となる3または4個のアミノ基を有する化合物を加えず、表1記載の架橋ポリイミドgの前駆体であるポリアミド酸ワニスCおよびhの前駆体であるポリアミド酸ワニスDを作製した。実施例1と同様に、それぞれのワニスをスピンコートして得られたポリイミド塗膜の物性値を表2に示す。
ポリアミド酸ワニスCから得られるポリイミドをコア材とし、ポリアミド酸ワニスDから得られるポリイミドをクラッド材としてシングルモード光導波路を作成しようとしたところ、光導波路作成の過程において、コア層を塗布時、クラッド層が溶解し、光導波路を作成することができなかった。
【0118】
比較例2
実施例1にしたがい、同様の調整法により、ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物を適宜変更して、表1記載の架橋ポリイミドiで表されるポリイミドをコア材、jで表されるポリイミドをクラッド材としてシングルモード光導波路を作成しようとしたところ、光導波路作成の過程において、コア層を塗布時クラッド層にクラックが発生し、光導波路を作成することができなかった。
【0119】
比較例3
撹拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコに、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル0.06mol、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.04mol、N,N−ジメチルアセトアミド270gを装入し、窒素雰囲気下30分間撹拌して溶解した。その後、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物0.098molを溶液温度の上昇に注意しながら分割して加え、室温で6時間攪拌し、次いで1−(3、4−ジカルボキシフェニル)アセチレン無水物0.004molを同様に溶液温度の上昇に注意しながら分割して加え、さらに室温で6時間攪拌し、表1記載のポリイミドkの前駆体となるポリアミド酸ワニスEを得た。さらに実施例1と同様にして、フィルムおよび塗膜を作成した。得られたフィルムおよび塗膜の物性を表2に示す。
同様に用いるジアミンの量を変更し、表1記載のポリイミドl前駆体となるポリアミド酸ワニスFを得た。上記のワニスEおよびFはそれぞれ共に250℃で加熱処理することによりイミド化し、それぞれ表1記載の架橋ポリイミドとなる。ただし、表1記載の架橋部の構造を表すDCPAの略号は、1−(3,4−ジカルボキシフェニル)アセチレン無水物由来の飽和或いは不飽和の脂肪鎖であるとする。
【0120】
実施例1にしたがって、表1記載のポリイミド式kをコア、lをクラッドとするシングルモード光導波路を作製した。この光導波路を光導波路作成の過程において、コア層、クラッド層ともに溶解、膨潤、クラック発生といった問題は見られなかった。しかし、この光導波路をダイシングソーによって5cmの長さに切り出し、波長1300nmで損失を測定したところ、光損失量が多いため、高分子光導波路として適していないことがわかった。
【0121】
【表2】
【0122】
【発明の効果】
本発明のポリイミド光導波路は、高い光学特性(透明性・光学等方性)、高い耐熱性および耐薬品性を持ちながら優れた加工性を併せ持つ高分子光導波路である。本発明は、光通信、光情報処理、微小光学あるいはその他の一般光学の分野で用いられる種々の光導波路デバイス(光スイッチ、光フィルタなど)、光集積回路、または、光配線板等に広く適用できる。
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