JP2004223663A - インピーダンス制御装置、およびインピーダンス制御プログラム - Google Patents
インピーダンス制御装置、およびインピーダンス制御プログラム Download PDFInfo
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Abstract
【課題】ロボットが強制的に人間の手先を動かすことなく、リアルタイムにその外部環境の剛性係数(Kh)を推定し、高精度にロボットの各部を制御できるようなインピーダンス制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】エンドエフェクタ11に作用する外部環境の力の時間差分と、その外部環境の作用位置の時間差分とからその外部環境の剛性係数Khを算出するとともに、予めロボット1側に設定された慣性係数Mおよび粘性係数Dおよび剛性係数K、および前記算出された外部環境の剛性係数Khを用いてエンドエフェクタ11の位置pを算出してロボット1を駆動制御する。この位置差分を計測する際、エンドエフェクタ11の移動速度およびロボット1のコンプライアンスを考慮してエンドエフェクタ11の位置の時間差分を求める。
【選択図】 図2
【解決手段】エンドエフェクタ11に作用する外部環境の力の時間差分と、その外部環境の作用位置の時間差分とからその外部環境の剛性係数Khを算出するとともに、予めロボット1側に設定された慣性係数Mおよび粘性係数Dおよび剛性係数K、および前記算出された外部環境の剛性係数Khを用いてエンドエフェクタ11の位置pを算出してロボット1を駆動制御する。この位置差分を計測する際、エンドエフェクタ11の移動速度およびロボット1のコンプライアンスを考慮してエンドエフェクタ11の位置の時間差分を求める。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インピーダンス制御を実現するロボットの制御装置に関し、特にロボットに作用する外部環境からの力に対してリアルタイムに外部環境の剛性係数を推定し、ロボットのアームを駆動制御するようにしたインピーダンス制御装置などに関する。
【0002】
【従来の技術】
ロボットの動きを制御する方法の一つとしてインピーダンス制御なる方法が知られている。このインピーダンス制御は、ロボットのエンドエフェクタに発生する外力によってロボットに見かけ上の柔らかさを実現するものであり、その外力をF、エンドエフェクタの位置をpとした場合に、下記の式を用いて実現される。
【0003】
Mp”+Dp’+Kp=F …式(a)
【0004】
なお、ここでMは慣性係数、Dは粘性係数、Kは剛性係数を示すものであり、ロボットの各部を制御する際にあらかじめ定められるものである。また、p”は加速度、p’は速度を示すものである。
【0005】
一方、このロボットのエンドエフェクタに作用する外部環境の力Fは、簡素化した式ではフックの法則に従い、
【0006】
F=Kh(p−p0) …式(b)
【0007】
で表される。ここで、Khはエンドエフェクタに作用する外部環境の剛性係数、pはエンドエフェクタに接触する人間の手先などの外部環境の位置(すなわち、エンドエフェクタの位置)、p0はその外部環境の外力がゼロとなる平衡点を示すものである。そして、式(a)および式(b)より、
【0008】
Mp”+Dp’+Kp=Kh(p−p0) …式(c)
【0009】
が成り立ち、この式(c)からエンドエフェクタの位置pを算出して、その位置にエンドエフェクタを移動させるようにロボットの各部を制御する。
【0010】
ところで、例えば、ロボットと人間とが協働して重量物を運搬するような場合、外部環境である人間の外力とその力の平衡点は常に変化する。このため、式(c)だけでは、未知数が3つ(エンドエフェクタの位置p、平衡点の位置p0 、外部環境の弾性係数Kh)存在するためエンドエフェクタの位置pを算出することができない。
【0011】
このため、従来では、人間がエンドエフェクタを把持し、その手先位置を一定の位置に固定した状態でロボットを動かして手先のインピーダンス特性(Kh)の計測を行う方法や(「姿勢維持中の人間の手先インピーダンス推定」(計測自動制御学会論文集、30−3、1994、P319―328)、同様に人間がエンドエフェクタを把持し、人間とエンドエフェクタが等速度運動を行っている状態で、その手先のインピーダンス特性(Kh)を計測して式(c)のpを算出できるようにしている(「水平面における多間接運動中の人腕機会インピーダンスの計測」(計測自動制御学会論文集23−3、1996、P369―378)、「等尺性筋収縮における人間の手先インピーダンスの解析」(計測自動制御学会論文集32−2、1996、P271―280)。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの文献に記載された方法では、人間の手先を静止もしくは等速度運動させた状態でロボットを強制的に動かす必要があり、ロボットと人間とがリアルタイムで協働作業する場合は、そのロボットの強制的な動きが人間の作業の邪魔となる。
【0013】
また、これらの文献の方法では、外部環境の力Fを
【0014】
F=Mhp”+Dhp’+Khp
【0015】
と詳細に表し、この外部環境側の慣性係数Mh、粘性係数Dh、剛性係数Khを求める必要があるために位置の情報を2回微分しているが、多くの自由度を有するロボットを用いて位置情報を得る場合、自由度が多ければ多いほど、ノイズの影響が大きくなる。これは、ロボットのエンドエフェクタを求めるために、ロボットが有するすべての関節角度の情報を利用しなければならないからである。一般に、ノイズは微分を行う毎に増加するため、これらの文献の方法では、多自由度を有するロボットを使用した場合には適用できない。
【0016】
更に、これらの文献の方法では、外力と位置の計測を行った後にエンドエフェクタのインピーダンス特性を推定し、特に、計測後に強制的に加えた摂動部分のデータだけを取り出してKhの推定を行うようにしているため、人間とロボットとの協働作業中にリアルタイムでKh推定を行うことができない。
【0017】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、ロボットが強制的に人間の手先を動かすことなく、リアルタイムにその外部環境の剛性係数(Kh)を推定し、高精度にロボットの各部を制御できるようにしたインピーダンス制御装置を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、エンドエフェクタに作用する外部環境の力とその位置からアクチュエータを駆動制御する際、まず、エンドエフェクタに作用する外部環境の力変動の時間差分と、その外部環境の作用位置変動の時間差分を計測し、これらの差分値を用いて外部環境の剛性係数を算出する。そして、予め設定されたロボット側のインピーダンス特性である慣性係数および粘性係数および剛性係数と、前記算出された外部環境の剛性係数を用いてエンドエフェクタの移動位置を算出し、そのエンドエフェクタの位置に関する情報を出力してロボットのアクチュエータを駆動制御するようにしたものである。
【0019】
このように構成すれば、例えば、差分時間を短く設定することによって、外部環境の平衡点p0を無視することができ、式(a)を
【0020】
ΔFest(t)=KhΔpest(t)
【0021】
と近似して平衡点に関する項p0を無視することができる。そして、このF、pを差分時間毎にセンシングすることによってKhを求め、また、このKhと、あらかじめ設定されたロボット側の慣性係数M、粘性係数D、剛性係数Kを用いてエンドエフェクタの位置pを求めることができるようになる。
【0022】
また、エンドエフェクタの位置変動の時間差分を計測する場合、エンドエフェクタの移動速度を考慮して位置差分値を計測する。
【0023】
通常、エンドエフェクタが高速度域で移動している場合、外部環境の平衡点もこれに伴って高速移動するため、平衡点の項p0を無視することができなくなる。しかし、位置変動の時間差分計測の際にエンドエフェクタの移動速度を考慮した項を含めて演算するようにすれば、高速度域における平衡点の移動の問題を解決することができるようになる。
【0024】
更に、エンドエフェクタの位置変動の時間差分を計測する場合、ロボットのコンプライアンスを考慮して位置差分値を計測する。
【0025】
このように構成すれば、ロボットが有するコンプライアンスが原因となる位置誤差を補正することができ、より正確な位置変動の時間差分を計測することができるようになる。
【0026】
加えて、外部環境の剛性係数を算出する際、計測した力差分値、位置差分値をフィルタにかけ、ノイズを除去した後にその剛性係数を算出する。
【0027】
通常、ロボットの自由度が大きくなればなるほどセンサに作用するノイズが増えるが、このように構成すれば、ノイズをフィルタにより除去するため、より正確な剛性係数の算出が可能になる。
【0028】
また、このような発明において、算出された外部環境の剛性係数と相関関係をもってロボット側のインピーダンス特性を変化させ、これらの値を用いてエンドエフェクタの位置を算出する。
【0029】
このように構成すれば、外部環境から作用する力の大きさに対応してロボット側の動きの硬さやしなやかさを変化させることができ、より人間との協働作業に適した制御を行うことができるようになる。
【0030】
そして、好ましくは、この相関関係を、外部環境の剛性係数の増大に伴って粘性係数を大きくするようなものにする。
【0031】
このように構成すれば、例えば、人間とロボットとが協働して重量物を運搬するような場合、人間側の剛性係数(Kh)の増大に伴ってロボット側の動きを硬いものにすることができ、重量物をしっかりと運搬することができる。また、逆に、軽量物を迅速に運搬するような場合は、その人間側の剛性係数(Kh)の減少に伴ってロボット側の動きをしなやかにすることができ、より迅速な協働作業を実現することができるようになる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態におけるロボット1と、インピーダンス制御装置2のブロック図を示したものであり、図2はインピーダンス制御のブロック線図を示したものである。このインピーダンス制御装置2は、パーソナルコンピュータ2aおよびサーボドライバ2bなどによって構成され、このインピーダンス制御装置2およびロボット1を接続して全体としてロボットシステム100を構成している。
【0033】
このロボット1は、周知のように、先端部にエンドエフェクタ11(図2参照)を有するアーム10およびこのアーム10を駆動するアクチュエータであるモータ13aなどで構成される駆動手段13と、エンドエフェクタ11に作用する外部環境の力を計測する力覚センサ12と、モータ13aの回転角度を検出するためのエンコーダ14などを具備して構成される。
【0034】
一方、インピーダンス制御装置2は、力差分計測手段20と、位置差分計測手段21と、剛性係数算出手段22と、位置算出手段23と、制御手段24とを具備して構成される。
【0035】
力差分計測手段20は、エンドエフェクタ11近傍に設けられた力覚センサ12から得られる外力の値を微少時間毎にサンプリングし、次に示す式(1)で表現される力差分値ΔFest(t)を算出する。
【0036】
ΔFest(t)=FR(t)−FR(t−ts) …式(1)
【0037】
このサンプリング時間は、外部環境の平衡点の移動を無視できる程度に設定するのが好ましく、例えば、サンプリング時間ts=0.15secなどに設定する。
【0038】
位置差分計測手段21は、エンコーダ14から得られる回転角、もしくは、エンドエフェクタ11の位置を検出しうる位置検出センサなどが設けられている場合はその位置センサから得られる位置情報を微少時間毎にサンプリングし、式(2)で表わされる位置差分値Δpest(t)を算出する。
【0039】
Δpest(t)=pR(t)―pR(t−ts) …式(2)
【0040】
このサンプリング時間は、力差分計測手段で計測するサンプリング時間と同じ時間に設定するのが好ましく、ts=0.15secなどに設定する。
【0041】
なお、外部環境の位置の変動が高速度域における場合には、サンプリング時間における平衡点の移動を無視することができず、速度によって生じる平衡点の位置の変動補正を考慮する必要が生じる。このため、ロボット1のエンドエフェクタ11の位置補正を行う。まず、ロボット1のエンドエフェクタ11の速度をvR(t)とすると、時間差分tsの間に移動するエンドエフェクタ11の距離は、tsvR(t−ts)となる。そこで、式(2)について速度変動に対する補正を行い、
【0042】
Δpest(t)=pR(t)―pR(t−ts)―tsvR(t−ts) …式(3)
【0043】
とすることで、平衡点が移動する場合における問題の解決を行う。
【0044】
さらに、ロボット1のエンドエフェクタ11の位置(pR)には、ロボット1のコンプライアンスが原因となってエンドエフェクタ11の位置に誤差を生ずる。このためエンドエフェクタ11の位置誤差をリアルタイムに求め、これによってロボット1のエンドエフェクタ11の位置補正も行う。コンプライアンスから生じる位置誤差は、
【0045】
Δpc(t)=Cend(t)FR(t) …式(4)
【0046】
によって求められる。ここで、Δpcはロボット1のコンプライアンスによって生じる位置誤差を示し、また、Cend(t)は、ロボット1のエンドエフェクタ11におけるコンプライアンス行列を示す。この式(4)で求められる位置誤差を用いてロボット1のエンドエフェクタ11の位置補正を行い、補正を行った後の位置をp*R(t)とすると、
【0047】
p*R(t)=pR(t)+Δpc(t) …式(5)
【0048】
となる。そして、式(3)のpRについてもコンプライアンスの位置誤差を考慮してp*Rに置換すると、式(3)は、
【0049】
Δpest(t)=p*R(t)―p*R(t−ts)―tsvR(t−ts) …式(6)
【0050】
となる。そして、このような速度変動およびコンプライアンスを考慮して求められた式(6)のΔpest(t)を剛性係数算出手段22に渡して剛性計数Khを推定する。
【0051】
剛性係数算出手段22は、このようにして計測された力差分値ΔFest(t)(式(1))および位置差分値Δpest(t)(式(6))をもとに外部環境である人間の手先の剛性係数(Kh)を算出する。一般に、外部環境の平衡点(外力がゼロとなる位置)をp0とした場合、フックの法則に従い、外部環境の力FRとpRとは次式の関係を有する。
【0052】
FR(t)=Kh(pR(t)―p0(t)) …式(7)
【0053】
ところで、外部環境の位置の変動が低速度域における場合は、サンプリング時間内においては、平衡点の移動は微少範囲にとどまると仮定でき(p0(t)≒p0(t−ts))、隣接サンプリング時間における平衡点の移動を無視することができる。よって、時刻tにおける式(7)から時刻(t−ts)における式(7)を引くことにより、
【0054】
ΔFest(t)=KhΔpest(t) …式(8)
【0055】
が得られる。これにより、外部環境の平衡点の項p0(t)を消去することができ、外部環境の剛性係数を推定が可能となる。
【0056】
また、外部環境の位置の変動が高速度域における場合には、サンプリング時間における平衡点の移動を無視することができないため、速度変動項を考慮した式(4)もしくは、より正確にはロボットのコンプライアンスをも考慮した式(6)を用いる。なお、ロボット1の自由度が多いとセンサへ入り込むノイズが大きくなり正確な剛性係数の推定が困難になる。そこで、ローパスフィルタを用いて所定の周波数をカットオフし、逐次最小二乗法などを用いて外部環境の剛性係数を推定する。
【0057】
位置算出手段23は、このように推定された外部環境の剛性係数およびロボット1側に設定された慣性係数、粘性係数、剛性係数を用いてエンドエフェクタ11の位置を算出する。このロボット1側の慣性係数、粘性係数、剛性係数などのインピーダンス特性はパーソナルコンピュータ2aに設けられた図示しない入力手段によって予め設定される。本実施の形態においては、慣性係数および剛性係数を固定値とし、粘性係数を外部環境の剛性係数と相関関係をもった可変のものとする。具体的には、図3に示すように外部環境の剛性係数Khの増大に比例して粘性係数Dも増大しうるような関係をもたせる。このようにすれば、例えば、人間とロボット1とが協働して重量物を運搬するような場合に、人間がしっかりとその運搬物を持つことによってロボット1側もその動きに硬さを持たせることができるようになり、また、逆に、軽量物を運搬するような場合、人間側のしなやかな運動に伴ってロボット1側もしなやかに追従することができるようになる。
【0058】
制御手段24は、サーボドライバ2bなどのようにロボット1のモータ13aを駆動するための手段を具備して構成され、位置算出手段21によって算出された位置pにエンドエフェクタ11が位置するようフィードバック制御される。
【0059】
次に、ロボット1の制御方法について図2のブロック線図を用いて説明する。
【0060】
まず、パーソナルコンピュータ2aからの指令により、エンドエフェクタ11に取り付けられた力覚センサ12からサンプリング時間毎にセンシングデータを収集するとともに、ロボット1のモータ13aに取り付けられたエンコーダ14からサンプリング時間毎にセンシングデータを収集する。そして、これらのデータをもとに外部環境の力差分値およびエンドエフェクタ11の位置差分値を算出する。なお、この算出されたエンドエフェクタ11の位置については、補正ルーチンで、まず、平衡点の移動補正を行い(式(3))、さらに、ロボットのコンプライアンスによる位置誤差の補正処理も行う(式(6))。そして、ローパスフィルタを用いてこれらの力差分値および位置差分値からノイズを除去した後、逐次最小二乗法を用いて外部環境の剛性係数Khの推定を行う。そして、この算出された剛性係数Khおよび、予め固定されたロボット1側の慣性係数、剛性係数、および外部環境の剛性係数と比例して増大する粘性係数を用いてエンドエフェクタ11の目標位置pを算出する。そして、この目標位置にエンドエフェクタ11を移動させるべく、サーボドライバ2bにモータ13aの角速度(dθ/dt)を目標値として出力し、サーボドライバ2bはこれに基づいてロボット1に動作指令値を出力する。また、このロボット1の動作に基づいてエンドエフェクタ11の位置、あるいは関節角度がデータとしてフィードバックされ、これに基づいて更にエンドエフェクタ11の位置が制御される。
【0061】
このように本実施の形態によれば、エンドエフェクタ11に作用する外部環境の力変動の時間差分と、その外部環境の作用位置変動の時間差分とからその外部環境の剛性係数を算出するとともに、予めロボット1側に設定された慣性係数および粘性係数および剛性係数、および前記算出された外部環境の剛性係数を用いてエンドエフェクタ11の位置を算出してロボット1を駆動制御するようにしたため、人間とロボット1とが協働作業するような場合において、人間の動作に対応したリアルタイムなロボット1の制御が可能となる。
【0062】
また、位置の時間差分を計測する場合、エンドエフェクタ11の移動速度を考慮するようにしたので、サンプリング時間によって平衡点の移動を無視できないような場合であってもその移動速度を考慮した補正項によって正確に剛性係数を推定することができるようになる。
【0063】
さらに、位置の時間差分を計測する場合、ロボット1のコンプライアンスを考慮するようにしたので、より正確な剛性係数の算出が可能になる。
【0064】
加えて、外部環境の剛性係数を算出する場合、ローパスフィルタによって力差分値および位置差分値からノイズを除去して剛性係数を算出するようにしたため、自由度の増大に伴うノイズの影響を少なくして正確な剛性係数を算出することができるようになる。
【0065】
また、外部環境の剛性係数を算出する場合、ロボット1側の粘性係数を、その外部環境の剛性係数と相関関係をもって変化させるようにして算出するようにしたため、人間の力加減に対応したロボット1の駆動制御を実現することができるようになる。
【0066】
また、この粘性係数を、外部環境の剛性係数の増大に伴って粘性係数を大きくさせるように設定したため、人間とロボット1とが協働して重量物を運搬するような場合、外部環境の剛性係数の増大に伴ってロボット1側の動きを硬いものにすることができ、また、逆に、軽量物を迅速に運搬するような場合は、その人間側の剛性係数の減少に伴ってロボット1側の動きをしなやかにすることができる。
【0067】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々変更することができる。例えば、上記実施の形態においては、ロボット側のインピーダンス特性として粘性係数を外部環境側の剛性係数に比例して変化させるようにしたが、これに限らず、ロボット1側の慣性係数や剛性係数などについても相関関係を持たせて変化させ、これらに基づいて外部環境の剛性係数を算出するようにしても良い。また、その相関関係についても、比例関係だけに限らず、図4に示すような曲線状の相関関係を持たせるようにしても良い。
【0068】
さらに、上記実施の形態においては、外部環境として人間を用いて説明したが、人間だけに限らず、机や壁などの障害物も外部環境として捉え、例えば、人間とロボット1とが運搬物を協働して運んでいる最中に、その運搬物が障害物に接触した場合も外部環境からの力として取り込むことができる。
【0069】
【発明の効果】
本発明では、エンドエフェクタに作用する外部環境の力とその位置からアクチュエータを駆動制御する場合に、まず、エンドエフェクタに作用する外部環境の力の時間差分と、その外部環境の作用位置の時間差分とからその外部環境の剛性係数を算出し、そして、予め設定されたロボット側の慣性係数および粘性係数および剛性係数、および前記算出された外部環境の剛性係数を用いてエンドエフェクタの位置を算出してロボットのアクチュエータを駆動制御するようにしたので、差分時間を細かく設定することによって外部環境の平衡点に関する項を無視することができ、簡単にエンドエフェクタの位置を求めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態におけるインピーダンス制御装置の機能ブロック図
【図2】同形態におけるブロック線図
【図3】同形態における外部環境の剛性係数とロボット側の粘性係数の相関関係を示す図
【図4】第二の実施態における外部環境の剛性係数とロボット側の粘性係数の相関関係を示す図
【符号の説明】
1・・・ロボット
2・・・インピーダンス制御装置
11・・・エンドエフェクタ
20・・・力差分計測手段
21・・・位置差分計測手段
22・・・剛性係数算出手段
23・・・位置算出手段
24・・・制御手段
100・・・ロボットシステム
【発明の属する技術分野】
本発明は、インピーダンス制御を実現するロボットの制御装置に関し、特にロボットに作用する外部環境からの力に対してリアルタイムに外部環境の剛性係数を推定し、ロボットのアームを駆動制御するようにしたインピーダンス制御装置などに関する。
【0002】
【従来の技術】
ロボットの動きを制御する方法の一つとしてインピーダンス制御なる方法が知られている。このインピーダンス制御は、ロボットのエンドエフェクタに発生する外力によってロボットに見かけ上の柔らかさを実現するものであり、その外力をF、エンドエフェクタの位置をpとした場合に、下記の式を用いて実現される。
【0003】
Mp”+Dp’+Kp=F …式(a)
【0004】
なお、ここでMは慣性係数、Dは粘性係数、Kは剛性係数を示すものであり、ロボットの各部を制御する際にあらかじめ定められるものである。また、p”は加速度、p’は速度を示すものである。
【0005】
一方、このロボットのエンドエフェクタに作用する外部環境の力Fは、簡素化した式ではフックの法則に従い、
【0006】
F=Kh(p−p0) …式(b)
【0007】
で表される。ここで、Khはエンドエフェクタに作用する外部環境の剛性係数、pはエンドエフェクタに接触する人間の手先などの外部環境の位置(すなわち、エンドエフェクタの位置)、p0はその外部環境の外力がゼロとなる平衡点を示すものである。そして、式(a)および式(b)より、
【0008】
Mp”+Dp’+Kp=Kh(p−p0) …式(c)
【0009】
が成り立ち、この式(c)からエンドエフェクタの位置pを算出して、その位置にエンドエフェクタを移動させるようにロボットの各部を制御する。
【0010】
ところで、例えば、ロボットと人間とが協働して重量物を運搬するような場合、外部環境である人間の外力とその力の平衡点は常に変化する。このため、式(c)だけでは、未知数が3つ(エンドエフェクタの位置p、平衡点の位置p0 、外部環境の弾性係数Kh)存在するためエンドエフェクタの位置pを算出することができない。
【0011】
このため、従来では、人間がエンドエフェクタを把持し、その手先位置を一定の位置に固定した状態でロボットを動かして手先のインピーダンス特性(Kh)の計測を行う方法や(「姿勢維持中の人間の手先インピーダンス推定」(計測自動制御学会論文集、30−3、1994、P319―328)、同様に人間がエンドエフェクタを把持し、人間とエンドエフェクタが等速度運動を行っている状態で、その手先のインピーダンス特性(Kh)を計測して式(c)のpを算出できるようにしている(「水平面における多間接運動中の人腕機会インピーダンスの計測」(計測自動制御学会論文集23−3、1996、P369―378)、「等尺性筋収縮における人間の手先インピーダンスの解析」(計測自動制御学会論文集32−2、1996、P271―280)。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの文献に記載された方法では、人間の手先を静止もしくは等速度運動させた状態でロボットを強制的に動かす必要があり、ロボットと人間とがリアルタイムで協働作業する場合は、そのロボットの強制的な動きが人間の作業の邪魔となる。
【0013】
また、これらの文献の方法では、外部環境の力Fを
【0014】
F=Mhp”+Dhp’+Khp
【0015】
と詳細に表し、この外部環境側の慣性係数Mh、粘性係数Dh、剛性係数Khを求める必要があるために位置の情報を2回微分しているが、多くの自由度を有するロボットを用いて位置情報を得る場合、自由度が多ければ多いほど、ノイズの影響が大きくなる。これは、ロボットのエンドエフェクタを求めるために、ロボットが有するすべての関節角度の情報を利用しなければならないからである。一般に、ノイズは微分を行う毎に増加するため、これらの文献の方法では、多自由度を有するロボットを使用した場合には適用できない。
【0016】
更に、これらの文献の方法では、外力と位置の計測を行った後にエンドエフェクタのインピーダンス特性を推定し、特に、計測後に強制的に加えた摂動部分のデータだけを取り出してKhの推定を行うようにしているため、人間とロボットとの協働作業中にリアルタイムでKh推定を行うことができない。
【0017】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、ロボットが強制的に人間の手先を動かすことなく、リアルタイムにその外部環境の剛性係数(Kh)を推定し、高精度にロボットの各部を制御できるようにしたインピーダンス制御装置を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、エンドエフェクタに作用する外部環境の力とその位置からアクチュエータを駆動制御する際、まず、エンドエフェクタに作用する外部環境の力変動の時間差分と、その外部環境の作用位置変動の時間差分を計測し、これらの差分値を用いて外部環境の剛性係数を算出する。そして、予め設定されたロボット側のインピーダンス特性である慣性係数および粘性係数および剛性係数と、前記算出された外部環境の剛性係数を用いてエンドエフェクタの移動位置を算出し、そのエンドエフェクタの位置に関する情報を出力してロボットのアクチュエータを駆動制御するようにしたものである。
【0019】
このように構成すれば、例えば、差分時間を短く設定することによって、外部環境の平衡点p0を無視することができ、式(a)を
【0020】
ΔFest(t)=KhΔpest(t)
【0021】
と近似して平衡点に関する項p0を無視することができる。そして、このF、pを差分時間毎にセンシングすることによってKhを求め、また、このKhと、あらかじめ設定されたロボット側の慣性係数M、粘性係数D、剛性係数Kを用いてエンドエフェクタの位置pを求めることができるようになる。
【0022】
また、エンドエフェクタの位置変動の時間差分を計測する場合、エンドエフェクタの移動速度を考慮して位置差分値を計測する。
【0023】
通常、エンドエフェクタが高速度域で移動している場合、外部環境の平衡点もこれに伴って高速移動するため、平衡点の項p0を無視することができなくなる。しかし、位置変動の時間差分計測の際にエンドエフェクタの移動速度を考慮した項を含めて演算するようにすれば、高速度域における平衡点の移動の問題を解決することができるようになる。
【0024】
更に、エンドエフェクタの位置変動の時間差分を計測する場合、ロボットのコンプライアンスを考慮して位置差分値を計測する。
【0025】
このように構成すれば、ロボットが有するコンプライアンスが原因となる位置誤差を補正することができ、より正確な位置変動の時間差分を計測することができるようになる。
【0026】
加えて、外部環境の剛性係数を算出する際、計測した力差分値、位置差分値をフィルタにかけ、ノイズを除去した後にその剛性係数を算出する。
【0027】
通常、ロボットの自由度が大きくなればなるほどセンサに作用するノイズが増えるが、このように構成すれば、ノイズをフィルタにより除去するため、より正確な剛性係数の算出が可能になる。
【0028】
また、このような発明において、算出された外部環境の剛性係数と相関関係をもってロボット側のインピーダンス特性を変化させ、これらの値を用いてエンドエフェクタの位置を算出する。
【0029】
このように構成すれば、外部環境から作用する力の大きさに対応してロボット側の動きの硬さやしなやかさを変化させることができ、より人間との協働作業に適した制御を行うことができるようになる。
【0030】
そして、好ましくは、この相関関係を、外部環境の剛性係数の増大に伴って粘性係数を大きくするようなものにする。
【0031】
このように構成すれば、例えば、人間とロボットとが協働して重量物を運搬するような場合、人間側の剛性係数(Kh)の増大に伴ってロボット側の動きを硬いものにすることができ、重量物をしっかりと運搬することができる。また、逆に、軽量物を迅速に運搬するような場合は、その人間側の剛性係数(Kh)の減少に伴ってロボット側の動きをしなやかにすることができ、より迅速な協働作業を実現することができるようになる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態におけるロボット1と、インピーダンス制御装置2のブロック図を示したものであり、図2はインピーダンス制御のブロック線図を示したものである。このインピーダンス制御装置2は、パーソナルコンピュータ2aおよびサーボドライバ2bなどによって構成され、このインピーダンス制御装置2およびロボット1を接続して全体としてロボットシステム100を構成している。
【0033】
このロボット1は、周知のように、先端部にエンドエフェクタ11(図2参照)を有するアーム10およびこのアーム10を駆動するアクチュエータであるモータ13aなどで構成される駆動手段13と、エンドエフェクタ11に作用する外部環境の力を計測する力覚センサ12と、モータ13aの回転角度を検出するためのエンコーダ14などを具備して構成される。
【0034】
一方、インピーダンス制御装置2は、力差分計測手段20と、位置差分計測手段21と、剛性係数算出手段22と、位置算出手段23と、制御手段24とを具備して構成される。
【0035】
力差分計測手段20は、エンドエフェクタ11近傍に設けられた力覚センサ12から得られる外力の値を微少時間毎にサンプリングし、次に示す式(1)で表現される力差分値ΔFest(t)を算出する。
【0036】
ΔFest(t)=FR(t)−FR(t−ts) …式(1)
【0037】
このサンプリング時間は、外部環境の平衡点の移動を無視できる程度に設定するのが好ましく、例えば、サンプリング時間ts=0.15secなどに設定する。
【0038】
位置差分計測手段21は、エンコーダ14から得られる回転角、もしくは、エンドエフェクタ11の位置を検出しうる位置検出センサなどが設けられている場合はその位置センサから得られる位置情報を微少時間毎にサンプリングし、式(2)で表わされる位置差分値Δpest(t)を算出する。
【0039】
Δpest(t)=pR(t)―pR(t−ts) …式(2)
【0040】
このサンプリング時間は、力差分計測手段で計測するサンプリング時間と同じ時間に設定するのが好ましく、ts=0.15secなどに設定する。
【0041】
なお、外部環境の位置の変動が高速度域における場合には、サンプリング時間における平衡点の移動を無視することができず、速度によって生じる平衡点の位置の変動補正を考慮する必要が生じる。このため、ロボット1のエンドエフェクタ11の位置補正を行う。まず、ロボット1のエンドエフェクタ11の速度をvR(t)とすると、時間差分tsの間に移動するエンドエフェクタ11の距離は、tsvR(t−ts)となる。そこで、式(2)について速度変動に対する補正を行い、
【0042】
Δpest(t)=pR(t)―pR(t−ts)―tsvR(t−ts) …式(3)
【0043】
とすることで、平衡点が移動する場合における問題の解決を行う。
【0044】
さらに、ロボット1のエンドエフェクタ11の位置(pR)には、ロボット1のコンプライアンスが原因となってエンドエフェクタ11の位置に誤差を生ずる。このためエンドエフェクタ11の位置誤差をリアルタイムに求め、これによってロボット1のエンドエフェクタ11の位置補正も行う。コンプライアンスから生じる位置誤差は、
【0045】
Δpc(t)=Cend(t)FR(t) …式(4)
【0046】
によって求められる。ここで、Δpcはロボット1のコンプライアンスによって生じる位置誤差を示し、また、Cend(t)は、ロボット1のエンドエフェクタ11におけるコンプライアンス行列を示す。この式(4)で求められる位置誤差を用いてロボット1のエンドエフェクタ11の位置補正を行い、補正を行った後の位置をp*R(t)とすると、
【0047】
p*R(t)=pR(t)+Δpc(t) …式(5)
【0048】
となる。そして、式(3)のpRについてもコンプライアンスの位置誤差を考慮してp*Rに置換すると、式(3)は、
【0049】
Δpest(t)=p*R(t)―p*R(t−ts)―tsvR(t−ts) …式(6)
【0050】
となる。そして、このような速度変動およびコンプライアンスを考慮して求められた式(6)のΔpest(t)を剛性係数算出手段22に渡して剛性計数Khを推定する。
【0051】
剛性係数算出手段22は、このようにして計測された力差分値ΔFest(t)(式(1))および位置差分値Δpest(t)(式(6))をもとに外部環境である人間の手先の剛性係数(Kh)を算出する。一般に、外部環境の平衡点(外力がゼロとなる位置)をp0とした場合、フックの法則に従い、外部環境の力FRとpRとは次式の関係を有する。
【0052】
FR(t)=Kh(pR(t)―p0(t)) …式(7)
【0053】
ところで、外部環境の位置の変動が低速度域における場合は、サンプリング時間内においては、平衡点の移動は微少範囲にとどまると仮定でき(p0(t)≒p0(t−ts))、隣接サンプリング時間における平衡点の移動を無視することができる。よって、時刻tにおける式(7)から時刻(t−ts)における式(7)を引くことにより、
【0054】
ΔFest(t)=KhΔpest(t) …式(8)
【0055】
が得られる。これにより、外部環境の平衡点の項p0(t)を消去することができ、外部環境の剛性係数を推定が可能となる。
【0056】
また、外部環境の位置の変動が高速度域における場合には、サンプリング時間における平衡点の移動を無視することができないため、速度変動項を考慮した式(4)もしくは、より正確にはロボットのコンプライアンスをも考慮した式(6)を用いる。なお、ロボット1の自由度が多いとセンサへ入り込むノイズが大きくなり正確な剛性係数の推定が困難になる。そこで、ローパスフィルタを用いて所定の周波数をカットオフし、逐次最小二乗法などを用いて外部環境の剛性係数を推定する。
【0057】
位置算出手段23は、このように推定された外部環境の剛性係数およびロボット1側に設定された慣性係数、粘性係数、剛性係数を用いてエンドエフェクタ11の位置を算出する。このロボット1側の慣性係数、粘性係数、剛性係数などのインピーダンス特性はパーソナルコンピュータ2aに設けられた図示しない入力手段によって予め設定される。本実施の形態においては、慣性係数および剛性係数を固定値とし、粘性係数を外部環境の剛性係数と相関関係をもった可変のものとする。具体的には、図3に示すように外部環境の剛性係数Khの増大に比例して粘性係数Dも増大しうるような関係をもたせる。このようにすれば、例えば、人間とロボット1とが協働して重量物を運搬するような場合に、人間がしっかりとその運搬物を持つことによってロボット1側もその動きに硬さを持たせることができるようになり、また、逆に、軽量物を運搬するような場合、人間側のしなやかな運動に伴ってロボット1側もしなやかに追従することができるようになる。
【0058】
制御手段24は、サーボドライバ2bなどのようにロボット1のモータ13aを駆動するための手段を具備して構成され、位置算出手段21によって算出された位置pにエンドエフェクタ11が位置するようフィードバック制御される。
【0059】
次に、ロボット1の制御方法について図2のブロック線図を用いて説明する。
【0060】
まず、パーソナルコンピュータ2aからの指令により、エンドエフェクタ11に取り付けられた力覚センサ12からサンプリング時間毎にセンシングデータを収集するとともに、ロボット1のモータ13aに取り付けられたエンコーダ14からサンプリング時間毎にセンシングデータを収集する。そして、これらのデータをもとに外部環境の力差分値およびエンドエフェクタ11の位置差分値を算出する。なお、この算出されたエンドエフェクタ11の位置については、補正ルーチンで、まず、平衡点の移動補正を行い(式(3))、さらに、ロボットのコンプライアンスによる位置誤差の補正処理も行う(式(6))。そして、ローパスフィルタを用いてこれらの力差分値および位置差分値からノイズを除去した後、逐次最小二乗法を用いて外部環境の剛性係数Khの推定を行う。そして、この算出された剛性係数Khおよび、予め固定されたロボット1側の慣性係数、剛性係数、および外部環境の剛性係数と比例して増大する粘性係数を用いてエンドエフェクタ11の目標位置pを算出する。そして、この目標位置にエンドエフェクタ11を移動させるべく、サーボドライバ2bにモータ13aの角速度(dθ/dt)を目標値として出力し、サーボドライバ2bはこれに基づいてロボット1に動作指令値を出力する。また、このロボット1の動作に基づいてエンドエフェクタ11の位置、あるいは関節角度がデータとしてフィードバックされ、これに基づいて更にエンドエフェクタ11の位置が制御される。
【0061】
このように本実施の形態によれば、エンドエフェクタ11に作用する外部環境の力変動の時間差分と、その外部環境の作用位置変動の時間差分とからその外部環境の剛性係数を算出するとともに、予めロボット1側に設定された慣性係数および粘性係数および剛性係数、および前記算出された外部環境の剛性係数を用いてエンドエフェクタ11の位置を算出してロボット1を駆動制御するようにしたため、人間とロボット1とが協働作業するような場合において、人間の動作に対応したリアルタイムなロボット1の制御が可能となる。
【0062】
また、位置の時間差分を計測する場合、エンドエフェクタ11の移動速度を考慮するようにしたので、サンプリング時間によって平衡点の移動を無視できないような場合であってもその移動速度を考慮した補正項によって正確に剛性係数を推定することができるようになる。
【0063】
さらに、位置の時間差分を計測する場合、ロボット1のコンプライアンスを考慮するようにしたので、より正確な剛性係数の算出が可能になる。
【0064】
加えて、外部環境の剛性係数を算出する場合、ローパスフィルタによって力差分値および位置差分値からノイズを除去して剛性係数を算出するようにしたため、自由度の増大に伴うノイズの影響を少なくして正確な剛性係数を算出することができるようになる。
【0065】
また、外部環境の剛性係数を算出する場合、ロボット1側の粘性係数を、その外部環境の剛性係数と相関関係をもって変化させるようにして算出するようにしたため、人間の力加減に対応したロボット1の駆動制御を実現することができるようになる。
【0066】
また、この粘性係数を、外部環境の剛性係数の増大に伴って粘性係数を大きくさせるように設定したため、人間とロボット1とが協働して重量物を運搬するような場合、外部環境の剛性係数の増大に伴ってロボット1側の動きを硬いものにすることができ、また、逆に、軽量物を迅速に運搬するような場合は、その人間側の剛性係数の減少に伴ってロボット1側の動きをしなやかにすることができる。
【0067】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々変更することができる。例えば、上記実施の形態においては、ロボット側のインピーダンス特性として粘性係数を外部環境側の剛性係数に比例して変化させるようにしたが、これに限らず、ロボット1側の慣性係数や剛性係数などについても相関関係を持たせて変化させ、これらに基づいて外部環境の剛性係数を算出するようにしても良い。また、その相関関係についても、比例関係だけに限らず、図4に示すような曲線状の相関関係を持たせるようにしても良い。
【0068】
さらに、上記実施の形態においては、外部環境として人間を用いて説明したが、人間だけに限らず、机や壁などの障害物も外部環境として捉え、例えば、人間とロボット1とが運搬物を協働して運んでいる最中に、その運搬物が障害物に接触した場合も外部環境からの力として取り込むことができる。
【0069】
【発明の効果】
本発明では、エンドエフェクタに作用する外部環境の力とその位置からアクチュエータを駆動制御する場合に、まず、エンドエフェクタに作用する外部環境の力の時間差分と、その外部環境の作用位置の時間差分とからその外部環境の剛性係数を算出し、そして、予め設定されたロボット側の慣性係数および粘性係数および剛性係数、および前記算出された外部環境の剛性係数を用いてエンドエフェクタの位置を算出してロボットのアクチュエータを駆動制御するようにしたので、差分時間を細かく設定することによって外部環境の平衡点に関する項を無視することができ、簡単にエンドエフェクタの位置を求めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態におけるインピーダンス制御装置の機能ブロック図
【図2】同形態におけるブロック線図
【図3】同形態における外部環境の剛性係数とロボット側の粘性係数の相関関係を示す図
【図4】第二の実施態における外部環境の剛性係数とロボット側の粘性係数の相関関係を示す図
【符号の説明】
1・・・ロボット
2・・・インピーダンス制御装置
11・・・エンドエフェクタ
20・・・力差分計測手段
21・・・位置差分計測手段
22・・・剛性係数算出手段
23・・・位置算出手段
24・・・制御手段
100・・・ロボットシステム
Claims (12)
- エンドエフェクタに作用する外部環境の力とその位置からアクチュエータを駆動制御するロボットのインピーダンス制御装置において、
エンドエフェクタに作用する外部環境の力の時間差分を計測する力差分計測手段と、前記外部環境の作用位置の時間差分を計測する位置差分計測手段と、これら力差分計測手段および位置差分計測手段によって計測されたそれぞれの差分値から外部環境の剛性係数を算出する剛性係数算出手段と、予め設定されたロボット側の慣性係数および粘性係数および剛性係数、および前記算出された外部環境の剛性係数を用いてエンドエフェクタの移動位置を算出する位置算出手段と、この算出された位置にエンドエフェクタを移動させるようにアクチュエータを駆動制御する制御手段と、を具備してなることを特徴とするインピーダンス制御装置。 - 前記位置差分計測手段が、エンドエフェクタの移動速度を考慮して位置差分を計測するものである請求項1に記載のインピーダンス制御装置。
- 前記位置差分計測手段が、ロボットのコンプライアンスを考慮して位置差分を計測するものである請求項1に記載のインピーダンス制御装置。
- 前記剛性係数算出手段が、フィルタによりノイズを除去した力差分値および位置差分値を用いて剛性係数を算出するものである請求項1に記載のインピーダンス制御装置。
- 前記位置算出手段が、剛性係数算出手段によって算出された剛性係数と相関関係をもって変化するロボット側のインピーダンス特性、および、予め固定されたロボット側の慣性係数および剛性係数を用いてエンドエフェクタの移動位置を算出するものである請求項1に記載のインピーダンス制御装置。
- 前記相関関係が、外部環境の剛性係数の増大に伴って粘性係数を大きくするものである請求項5に記載のインピーダンス制御装置。
- エンドエフェクタに作用する外部環境の力とその位置からアクチュエータを駆動制御するロボットのインピーダンス制御プログラムにおいて、
エンドエフェクタに作用する外部環境の力の時間差分と、その外部環境の作用位置の時間差分とから外部環境の剛性係数を算出するとともに、予め設定されたロボット側の慣性係数および粘性係数および剛性係数、および前記算出された外部環境の剛性係数を用いてエンドエフェクタの位置を算出し、そのエンドエフェクタの移動位置情報をロボットのアクチュエータを駆動するために出力することを特徴とするインピーダンス制御プログラム。 - 前記位置の時間差分が、エンドエフェクタの移動速度を考慮したものである請求項7に記載のインピーダンス制御プログラム。
- 前記位置の時間差分が、ロボットのコンプライアンスを考慮したものである請求項7に記載のインピーダンス制御プログラム。
- 前記外部環境の剛性係数の算出が、フィルタによりノイズを除去した力差分値および位置差分値を用いて剛性係数を算出するものである請求項7に記載のインピーダンス制御プログラム。
- エンドエフェクタの移動位置の算出に際し、外部環境の剛性係数と相関関係をもって変化するロボット側のインピーダンス特性を用いてエンドエフェクタの移動位置を算出する請求項7に記載のインピーダンス制御プログラム。
- 前記相関関係が、外部環境の剛性係数の増大に伴って粘性係数を大きくするものである請求項11に記載のインピーダンス制御プログラム。
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