JP2004208548A - 免疫反応の抗原特異的抑制 - Google Patents

免疫反応の抗原特異的抑制 Download PDF

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昌平 堀
Yukifumi Sakaguchi
志文 坂口
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Abstract

【課題】自己免疫疾患や移植片拒絶反応の処置には、従来免疫反応全体を抑制する免疫抑制剤が使用されてきた。しかしながら、この方法には免疫低下などの副作用があった。本発明の技術的課題は、目的の抗原に対する免疫反応のみを抑制することである。
【解決手段】目的の抗原に特異的なT細胞にFoxp3タンパク質を発現させることにより、該細胞を制御性T細胞に変化させる。こうして作成された制御性T細胞は、哺乳動物の体内に移入されると、目的の抗原に対する反応性T細胞のみを抑制し、免疫反応の抗原特異的抑制が達成される。
【選択図】図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、免疫反応の抑制に関するものである。特に、本発明は、自己免疫疾患および移植片への拒絶反応を抑制するための形質転換体、医薬組成物および方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自己免疫疾患は、本来非自己抗原とのみ反応すべき免疫系が自己抗原に向かい、自己を攻撃・破壊するに至る疾患である。自己免疫疾患には、橋本病、悪性貧血、グットパスチャー症候群、重症筋無力症、慢性関節リウマチなどがある。これらの疾患の治療には各々適する方法を採用するが、症状が重篤な場合には、メトトレキサート、アザチオプリン、シクロホスファミドなどの免疫抑制剤を使用する。しかし、一般に、これらの薬物は免疫系の機能全体を抑制するので、危険な副作用を引き起こし得る。例えば、日和見感染症が生命を脅かしたり、通常は免疫系により排除される腫瘍が排除されなくなり、癌発症のリスクが高まったりする。そこで、自己抗原特異的に免疫を抑制する方法の開発が求められている。
【0003】
多くの自己免疫疾患の発症に、自己反応性T細胞が主役を演じる。自己反応性T細胞は、自己免疫疾患を発症した個体のみならず、正常個体中にも検出できる。自己免疫疾患の発症に関わる自己反応性T細胞の産生および活性化の機構は未解明である。正常個体中では、通常、自己反応性T細胞は何らかの制御を受け、自己免疫疾患が発症することはない。この免疫自己寛容の維持機構として、現在までにいくつかの説が提唱されてきた。例えば、(1)胸腺中で、自己主要組織適合抗原複合体と自己抗原に強く反応するT細胞には細胞死が誘導される。この負の選択を免れたT細胞は、自己抗原に対する親和性が低いため、自己抗原を無視する。(2)胸腺中あるいは末梢で自己抗原と遭遇した自己反応性T細胞は不活性化される。さらに、(3)これらの過程を逃れて末梢に放出された自己反応性T細胞に対して、T細胞による抑制的制御が働く。近年、このT細胞性制御が積極的に免疫自己寛容の成立・維持に関与している可能性、その異常が自己免疫疾患の直接的原因となり得る可能性が指摘され、報告されている(Modigliani Y., et al. Immunol Rev 1996; 146: 155−74、Fowell D., et al. Immunol Rev 1991; 123: 37−64、Sakaguchi S. Cell 2000; 101: 455−8、坂口志文、感染・炎症・免疫、2000年、第30巻、第4号(非特許文献1))。
【0004】
胸腺のクローン除去を逃れた自己反応性T細胞は、CD4制御性T細胞(T)によって末梢でその活性化と増殖が積極的に抑制され、Tの大部分は常にCD25(インターロイキン(IL)−2受容体α鎖)を発現している(S. Sakaguchi, Cell 101, 455 (2000)、K. J. Maloy, F. Powrie, Nat. Immunol. 2, 816 (2001)、A. Coutinho, et al., Immunol. Rev. 182, 89 (2001)、E. M. Shevach, Nat. Rev. Immunol. 2, 389 (2002). S. Sakaguchi, et al., J. Immunol.155, 1151 (1995))。CD25CD4細胞の少なくとも一部は、機能的な成熟T細胞の亜集団として胸腺で産生される(M. Itoh et al., J. Immunol. 162, 5317 (1999)、M. Asano, et al., J. Exp. Med. 184, 387 (1996))。CD25CD4細胞の減少または機能上の変化は、げっ歯類で自己免疫性甲状腺炎、胃炎およびI型糖尿病の発症・進行を導く(S. Sakaguchi, (1995)(前出)、M. Itoh et al.(前出)、M. Asano, et al.(前出)、E. Suri−Payer, et al., J. Immunol. 160, 1212 (1998))。さらに、CD25CD4細胞は、げっ歯類においてアレルギーや炎症性腸疾患(IBD)を防ぎ、環境に存在する無害な外来抗原に対する反応の均衡を維持すると考えられている(Readet al., J. Exp. Med. 192, 295 (2000), Curotto de Lafaille et al., J. Exp. Med. 194, 1349 (2001))。
【0005】
アレルギーおよびIBD、そして類似の多臓器自己免疫疾患は、X連鎖劣性遺伝疾患、IPEX(免疫制御異常、多発性内分泌障害、腸疾患、X連鎖症候群)またはXLAAD(X連鎖自己免疫−アレルギー制御異常症候群)において発症する(R. S. Wildin, et al., J. Med. Genet. 39, 537 (2002))。変異マウスであるscurfyもCD4T細胞の無制御な活性化/増殖の結果として、類似のX染色体連鎖劣性遺伝自己免疫/炎症疾患に罹患する(V. L. Godfrey, et al., Am. J. Pathol. 138, 1379 (1991). P. J. Blair et al., J. Immunol. 153, 3764 (1994). L. B. Clark et al., J. Immunol. 162, 2546 (1999))。最近、IPEX/XLAAD患者またはscurfyマウスにおける原因遺伝子として、Scurfinと称するフォークヘッド/ウイングドヘリックス型の転写因子をコードするFoxp3が同定された(M. E. Brunkow et al. Nat. Genet. 27, 68 (2001)(非特許文献2)、T. A. Chatila et al., J. Clin. Invest. 106, R75 (2000)、R. S. Wildin et al., Nat. Genet. 27, 18 (2001)(非特許文献3)、C. L. Bennett et al., Nat. Genet. 27, 20 (2001)(非特許文献4))。Foxp3に関して、その発現を調節する化合物のスクリーニング方法および免疫系の調節方法(特許文献1)、並びにその変異の検出方法(特許文献2)が開示されている。我々は、CD25CD4細胞の操作により引き起こされる自己免疫および炎症と、Foxp3の遺伝的欠陥により誘導されるものとの間に免疫学的類似性があることを見出し、制御性T細胞の発生または機能におけるFoxp3の関与に着目した。
【0006】
【特許文献1】
国際公開第02/090600号パンフレット
【特許文献2】
国際公開第02/16656号パンフレット
【非特許文献1】
坂口志文、「CD25CD4制御性T細胞−自己免疫との関連−」、感染・炎症・免疫、医学の門社、2000年12月15日、第30巻、第4号、p.20−26
【非特許文献2】
マリー・イー・ブランコウ(Mary E. Brunkow)、ほか9名、「ネイチャー・ジェネティックス(Nature Genetics)」、(英国)、2001年1月、第27巻、第1号、p.68−73
【非特許文献3】
アール・エス・ウィルディン(R. S. Wildin)、ほか15名、「ネイチャー・ジェネティックス(Nature Genetics)」、(英国)、2001年1月、第27巻、第1号、p.18−20
【非特許文献4】
シー・エル・ベネット(C. L. Bennett)、ほか9名、「ネイチャー・ジェネティックス(Nature Genetics)」、(英国)、2001年1月、第27巻、第1号、p.20−21
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、自己免疫疾患の処置には抗原特異的な免疫抑制が有効である。本発明の技術的課題は、免疫反応の抗原特異的抑制を可能にすることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決すべく種々研究を重ねた結果、目的の抗原に特異的なT細胞にFoxp3タンパク質を発現させると、該細胞が制御性T細胞に変化すること、そして該制御性T細胞が該抗原に特異的な反応性T細胞を抑制することを明らかにし、このメカニズムを利用して、抗原特異的に免疫を抑制する方法を開発した。
【0009】
即ち、本発明は、Foxp3タンパク質を発現している、制御性T細胞表現型を有する形質転換体を提供する。本発明はまた、Foxp3タンパク質をコードする核酸配列分子を含むベクター、特に自己免疫疾患の処置または移植片に対する免疫反応の抑制用の治療用ベクターを提供する。本発明はさらに、制御性T細胞表現型を有する形質転換体を含有する医薬組成物も提供する。
【0010】
また、本発明は、a)哺乳動物からある抗原に特異的なCD4CD25T細胞を単離すること、b)該細胞にFoxp3タンパク質を発現させて制御性T細胞表現型に変化させ本発明の形質転換体を調製すること、c)該哺乳動物に該形質転換体を移入すること、の各段階を含む、該抗原に対する免疫反応を抑制する方法を提供する。さらに、Foxp3遺伝子またはFoxp3タンパク質を使用する、制御性T細胞を検出するための方法も提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
「Foxp3」は、X染色体連鎖劣性遺伝自己免疫/炎症疾患に罹患するマウスの変異株、scurfyにおいて変異が発見された遺伝子であり、X染色体上にある。マウスFoxp3は、Scurfinと称する429アミノ酸のフォークヘッド/ウイングドヘリックス型の転写因子をコードする(上述)。ヒトにおいても、Foxp3遺伝子はX染色体上に位置し、431アミノ酸からなり、マウスFoxp3と86%と高い相同性を示す。Foxp3cDNAの塩基配列は、Genbank受託番号AF277991およびAF277992(マウス)、並びにAF277993(ヒト)として知られている。本発明における「Foxp3」は、哺乳動物におけるマウスFoxp3相同体および類似体を包含し、これらの遺伝暗号縮重体もFoxp3に含まれる。ある遺伝子がFoxp3相同体または類似体であるか否かは、BLASTプログラムのような当業者に周知の類似性測定プログラムを使用して推定でき、後述の方法により判定できる。
【0012】
Foxp3と類似性が高いと判断された候補Foxp3遺伝子の中から、本発明で使用し得るFoxp3を選択する方法は、次の通りである。a)候補Foxp3遺伝子を、哺乳動物から単離したCD4CD25反応性T細胞に導入し、該遺伝子からタンパク質を発現させる。b)抗原提示細胞および抗CD3モノクローナル抗体の存在下で、該細胞を新たに単離したCD4CD25反応性T細胞と共に培養する。c)遺伝子導入を実施する場合としない場合で比較し、実施した場合に有意に反応性T細胞の増殖が抑制されたならば、該候補Foxp3遺伝子を、本発明のFoxp3と判定する。実験条件は、実施例の記載を参酌して当業者が容易に設定できるものである。
【0013】
本明細書における「Foxp3タンパク質」は、上記Foxp3にコードされるタンパク質を意味する。Foxp3タンパク質のアミノ酸配列は、Genbank受託番号AAG53605およびAAG53606(マウス)、並びにAAG53607(ヒト)として知られている。本発明では、「Foxp3タンパク質」には、マウスまたはヒトFoxp3タンパク質に対して1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失および/または付加を有し、かつマウスまたはヒトFoxp3タンパク質と同等の活性を有する変異タンパク質も包含される。
【0014】
「制御性T細胞表現型」は、細胞接触が許容される条件でCD4CD25の反応性T細胞と共に培養し、T細胞受容体(TCR)を介する刺激を受けると、抗原非特異的に反応性T細胞の増殖およびサイトカイン産生を阻害する表現型を意味する。制御性T細胞表現型を有するT細胞を制御性T細胞と称する。通常、制御性T細胞はCD4CD25であり、CD4CD25T細胞は、他のT細胞のIL−2の転写レベルを直接または間接的に低下させることにより増殖抑制能を発揮する。本発明においては、抗原特異性を示す制御性T細胞表現型が好ましい。
【0015】
本発明の「形質転換体」は、外来Foxp3遺伝子を導入した細胞、好ましくはT細胞を意味する。外来遺伝子の導入方法は当分野で既知であり、本発明のベクターを使用して作成し得る。好ましくは、本発明の形質転換体は、抗原特異性を示す制御性T細胞表現型を有する形質転換体である。
【0016】
本発明のFoxp3をコードする核酸配列を含むベクターを作成するために、哺乳動物T細胞におけるタンパク質の発現に適するあらゆる発現ベクターを使用できる。そのような発現ベクターの例には、MSCV2.2、pcDNA3などがある。本発明のベクターを哺乳動物細胞に導入するには、レトロウイルス感染、アデノウイルス感染、レンチウイルス感染およびエレクトロポレーションなどの既知の方法から、適する方法を選択すればよい。
【0017】
本発明により、自己免疫疾患を処置するための治療用Foxp3発現ベクターが提供される。本発明における「自己免疫疾患」とは、免疫系が自己成分(共生細菌を含む)または環境から体内に取入れた通常は無害な成分に反応することを原因とする、あらゆる疾患を意味する。このような自己免疫疾患の例には、インシュリン依存性糖尿病、自己免疫性胃炎、炎症性腸疾患、橋本病、悪性貧血、グットパスチャー症候群、重症筋無力症、慢性関節リウマチ、アレルギー性疾患、多発性硬化症などが挙げられる。
【0018】
本発明により、移植片に対する免疫反応抑制のための治療用Foxp3発現ベクターも提供される。現在様々な臓器の移植が行われているが、ドナーとレピシエントが遺伝学的に同一でない限り、レピシエントの免疫系が移植片を非自己成分と認識し攻撃するので、自己免疫疾患と同様に、必要な臓器の機能不全に至る。本発明で提供される移植片に対する免疫反応抑制のためのFoxp3発現ベクターを使用すれば、移植片に対する免疫反応を特異的に抑制することが可能である。
【0019】
上記の自己免疫疾患の処置用のFoxp3発現ベクターおよび移植片に対する免疫反応抑制のための治療用Foxp3発現ベクターにはウイルス型ベクターまたは非ウイルス型ベクターが含まれ、例えば文献記載のMigR1、MFG vectorなどを利用できる(Riviere et al., PNAS 92, 6733 (1995))。
【0020】
本発明はさらに、医薬的に許容し得る(即ち、非毒性の、生理的に許容し得る)担体、賦形剤、添加物および/または他の薬剤(免疫抑制剤など)と共に、制御性T細胞表現型を有する形質転換体、または本発明の治療用ベクターを含有する、医薬組成物も提供する。好ましくは、抗原特異的制御性T細胞表現型を有する形質転換細胞の養子移入である。
【0021】
本発明によると、特定の抗原に対する免疫反応を抑制する方法には以下の段階が含まれる:a)哺乳動物からある抗原に特異的なCD4CD25T細胞を単離すること、b)該細胞にFoxp3タンパク質を発現させて制御性T細胞表現型に変化させ本発明の形質転換体を調製すること、c)該哺乳動物に該形質転換体を移入すること。a)は、抗原特異的レセプター、CD4およびCD25の発現を指標に、フローサイトメトリー、磁気分離などにより達成できる。b)は上記方法により、そしてc)はb)細胞を上記の医薬組成物に調製し、それを投与することにより達成できる。
【0022】
特に特定の理論にとらわれるものではないが、上記方法の基礎となるメカニズムは、次の通りであり、本発明の実施例で証明されている。即ち、CD4CD25T細胞は、Foxp3を発現させると、抗原特異性を保持したまま制御性T細胞に変化する。この制御性T細胞は、哺乳動物の体内に移入され、抗原提示細胞によりTCRを介して刺激されると、制御性T細胞と接触する反応性T細胞の増殖およびサイトカイン産生を抗原非特異的に抑制する。この抑制に抗原特異性はないが、抗原提示細胞が提示する抗原によって活性化される反応性T細胞が、近傍の制御性T細胞によって抑制される。従って、結果的に制御性T細胞と同じ抗原を認識する反応性T細胞を抑制することが可能になり、免疫反応の抗原特異的抑制を実行できる。
【0023】
実施例で証明した通り、Foxp3は制御性T細胞において支配的に発現している。従って、Foxp3遺伝子の発現またはFoxp3タンパク質の存在を指標にして、制御性T細胞を検出することができる。Foxp3遺伝子の発現は、マイクロアレイやDNAチップを使用して、あるいはRT−PCRやノザンブロットなどの方法により検出できる。Foxp3タンパク質の存在は、Foxp3特異的抗体を使用してフローサイトメトリー、ウエスタンブロットなどの方法で、あるいはFoxp3タンパク質が結合するプロモーター配列を使用して、サウス−ウエスタン法、ゲルシフトおよびフットプリントなどの方法で検出できる。上記の方法は当業者に周知であり、またこれらに限定されるものではなく、他の方法も使用できる。制御性T細胞の検出方法により、制御性T細胞が低レベルであると判定された患者に対し、本発明の抑制方法を適用する。
【0024】
以下の実施例は、本発明を詳細に理解するための例示説明であると共に、本発明の制御性T細胞が抗原特異的に免疫反応を抑制することを証明するものである。
【0025】
【実施例】
材料と方法
マウス
BALB/cおよびC.B−17SCIDマウスは、CLEA Japan (東京、日本)から購入した。RAG−2−欠損DO11.10TCRトランスジェニックマウス(K. M. Murphy, et, al., Science 250, 1720 (1990))は、我々の動物施設で飼育した。全マウスは6ないし12週齢で使用し、施設の動物保護ガイドラインに従い、病原体の無い特別な条件で維持した。
【0026】
抗体、試薬および培地
次の試薬を、PharMingen (サンディエゴ、CA)から購入した;CD3ε(145−2C11)、CD28(37.51)、IL−10受容体(1B1.3a)の精製mAb、抗IL−4(11B11)、抗IL−12(C17.8);CD4のFITC−結合mAb(RM4−5);CD4(H129.19)、CD8(53−6.7)、CD19(1D3)、CD45RB(16A)、CD103(M290)、CTLA−4(UC10−4F10−11)、IL−2(JES6−5H4)、IL−4(11B11)、IFN−γ(XMG1.2)のPE結合mAb;サイクロム(CyChrome)結合抗CD4mAb(RM4−5);CD25(7D4)およびCD44(IM7)のビオチン化mAb。
【0027】
抗TGF−β1(9016.2)および抗TGFβ1、β2、β3mAb(1D11)は、R&D systems (ミネアポリス、MN)から購入した。抗GITRmAb(DTA−1)は、我々の研究室で産生、精製およびビオチン化した。抗IL−10受容体およびTGF−βmAbは、製造者の指示および他のグループの結果(K. Nakamura, et al., J. Exp. Med. 194, 629 (2001)、C. A. Piccirillo et al., J. Exp. Med. 196, 237 (2002))に従って、IL−10受容体を阻害するか、またはTGFβを中和するのに十分な濃度である50または100μg/mlのいずれかで使用した。マウス組換えIL−2(rIL−2)は、塩野義製薬株式会社(大阪、日本)から譲渡された。マウスrIL−4およびrIL−12は、PeproTech (ロンドン、英国)および R&D systems から、各々購入した。
【0028】
T細胞は、10%FBS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、50μM2−ME、10mM HEPESおよび1mMピルビン酸ナトリウムを添加したRPMI−1640培地で培養した(全て Sigma、セントルイス、MOから購入)。パッケージ細胞株、Plat−E(S. Morita, et al., Gene Ther. 7, 1063 (2000))は、10%FBS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび10mM HEPESを添加したDMEM培地(Sigma)で培養した。
【0029】
リンパ球の調製、フローサイトメトリーおよび細胞分離
胸腺、脾臓およびリンパ節(鼡径、腋下、上腕、頚部および腸間膜)の器官を、2%FBSを添加したHBSSに100μmナイロンメッシュを通して押出し、洗浄して、リンパ球懸濁液を調製した。脾臓の赤血球を、ACK緩衝液で除去した。
【0030】
細胞表面染色用に、10個の細胞を蛍光またはビオチン化mAbと共に、4℃で30分間、次いでビオチン化抗体用の2次試薬としてストレプトアビジン(PharMingen)と共にインキュベートした。死細胞をヨウ化プロピジウム導入で除去し、細胞を Epics−XL フローサイトメーター(Beckman Coulter、マイアミ、FL)で分析した。細胞内のCTLA−4を検出するために、細胞を2%パラホルムアルデヒドで固定し、0.5%サポニンで透過性にし、0.5%サポニンオ存在下で、PE結合抗CTLA−4またはそのアイソタイプ適合対照mAbで染色した。
【0031】
末梢CD4T細胞亜集団を分離するために、第1に、記載された通り(M. Asano, et al., J. Exp. Med. 184, 387 (1996))、パニング法によってB細胞、CD8細胞および粘着細胞を除去して、CD4細胞の濃度を高めた。CD25またはCD25CD4CD8胸腺細胞を分離するために、抗CD8mAb(クローン3.155)およびウサギの補体(Cedarlane Laboratories、ホーンビー、カナダ)で処理してCD8細胞を除去した。蛍光抗体による染色後、細胞を Epics Altra cell sorter (Beckman Coulter)で分離した。分離した亜集団の純度は、再分析すると常に>98%であった。
【0032】
RT−PCR
分離した細胞5x10個にアイソゲン試薬 (株式会社ニッポンジーン、東京、日本)を使用して10μgのグリコーゲンを添加し、細胞の全RNAを抽出した。最終体積20μlで Superscript II 逆転写酵素およびオリゴ(dT)12−18プライマー (インビトロジェン株式会社、東京、日本)を使用し、RNAの総量を逆転写した。いくつかの実験では、逆転写の前にRNase不含DNaseI(インビトロジェン)でRNA試料を処理して、混入したゲノムDNAを除去した。
【0033】
HPRTについての準定量的PCRの後、まず各試料中のcDNAの相対量を標準化した。反応混合物(40μl)は、業者の緩衝液中に、1.5mM MgCl、0.2mM dNTP、0.5μM前方および後方プライマー、並びに1.0U TaqDNAポリメラーゼ (Promega、マディソン、WI) を含有した。PCRは、PTC−200(登録商標)Programmable Thermal Controler (MJ Research Inc.、ウォータータウン、MA)で実施した。HPRTの増幅では、PCRは2.5分間、94℃の変性段階に続いて、30秒間94℃、30秒間60℃、30秒間72℃の28サイクルで構成した。Foxp3では、アニーリング温度が57℃、サイクル数が32であることを除き、上記同様に実行した。プライマー配列は、次の通りであった;Foxp3:5’−CAG CTG CCT ACA GTG CCC CTA G−3’および5’−CAT TTG CCA GCA GTG GGT AG−3’(M. E. Brunkow et al.、前出);HPRT:5’−GT TGG ATA CAG GCC AGA CTT TGT TG−3’および5’−GAA GGG TAG GCT GGC CTA TAG GCT−3’。
【0034】
いくつかの実験では、ABI/PRISM 7700 sequence detection system (PE Applied Biosystems, フォスターシティ、CA)を使用して、Foxp3のmRNAレベルをリアルタイムPCRで定量した。分析は、プライマー、Foxp3またはHPRT特異的内側蛍光 TaqMan プローブおよび QuantiTect Probe PCR Kit (株式会社キアゲン、東京、日本)を使用して実施した。PCRは、0.4μMプライマーと、0.2μM TaqMan プローブを含有し、10分間、95℃の変性段階に続いて、15秒間95℃、60秒間60℃、30秒間72℃の40サイクルで構成した。
【0035】
プライマーおよび TaqMan プローブの配列は、次の通りであった。Foxp3プライマー:5’−CCC AGG AAA GAC AGC AAC CTT−3’および5’−TTC TCA CAA CCA GGC CAC TTG−3’;Foxp3プローブ:5’−FAM−ATC CTA CCC ACT GCT GGC AAA TGG AGT C−3’;HPRTプライマー:5’−TGA AGA GCT ACT GTA ATG ATC AGT CAA C−3’および5’−AGC AAG CTT GCA ACC TTA ACC A−3’;HPRTプローブ:5’−VIC−TGC TTT CCC TGG TTA AGC AGT ACA GCC C−3’。混入したゲノムDNAからの増幅を排除するために、これらのプライマーは、イントロン/エクソン境界をわたるように、従ってcDNAに特異的にアニーリングするように設計した。BALB/cCD25CD4T細胞由来cDNAの標準曲線を、各試料中のFoxp3およびHPRTのcDNA相対量への限界サイクルを較正するのに使用した。各試料中のFoxp3mRNA発現を標準化した値を、HPRT相対量で除したFoxp3相対量(x100)として算出した。全サンプルにつき3回実験した。
【0036】
T細胞の活性化および形質分化
レトロウイルス感染用に、12ウェルプレート(3.0ml/ウェル)中で、APC(1.0x10個/個ウェル)としてのT細胞除去とX線照射(18Gy)したBALB/cの脾臓細胞の存在下、分離したCD4T細胞(2.5x10個/ウェル)を0.5μg/ml抗CD3mAbおよび100U/mlrIL−2で活性化した。いくつかの実験では、PBS中の5μg/mlの抗CD3を4℃で一夜24ウェルプレート(0.5ml/ウェル)にコートし、PBSで2回洗浄し、100U/mlrIL−2または2.0μg/ml抗CD28と共に、T細胞を加えた(1x10細胞/ml)。
【0037】
Th1およびTh2分化を誘導するために、24ウェルプレート(2.0ml/ウェル)中で、5x10個のAPCおよび100U/mlrIL−2の存在下、0.3μMOVA323−339ペプチドにより、DO11.10/RAG−2−/−マウスから分離した2.5x10CD4T細胞を刺激した。Th1細胞の誘導には、培養に5ng/mlrIL−12および10μg/ml抗IL−4mAbを添加した。Th2細胞の誘導には、10ng/mlrIL−4および10μg/ml抗IL−12mAbを代りに添加した。最初の活性化から7日目までこれらのサイトカインを添加した培地中で細胞を増殖、維持し、次いで50ng/mlPMAおよび500ng/mlイオノマイシン(ionomycin)で4時間再刺激した。
【0038】
レトロウイルスコンストラクトおよび形質転換
マウスFOXP3(アミノ酸1−429)全長をコードするcDNAを、BALB/cCD25CD4細胞のcDNAから、特異的プライマー(5’−CTC CCG GCA ACT TCT CCT GAC−3’および5’−TCA AGG GCA GGG ATT GGA GCA CT−3’)を使用して増幅し、MSCV2.2由来ベクター、MIGR1(W. S. Pear et al., Blood 92, 3780 (1998))にクローニングした。フォークヘッドドメインを欠くFoxp3cDNA断片(アミノ酸1−336)は、プライマー(5’−CTC CCG GCA ACT TCT CCT GAC−3’および5’−TCA CAT ATT GTG GTA CTT GAA GTA−3’)を使用して同様に増幅し、MIGR1ベクターにクローニングした。パッケージ細胞株、Plat−Eへのトランスフェクションは、記載のように実施した(S. Morita, et al.、前出)。一次T細胞を上記のように活性化し、1:2体積のウイルス上清と6μg/mlの polybrene (Sigma) を使用して24時間後に感染させ、3,000rpmで60分間、32℃で遠心分離した。最初の活性化後7日目から10日目まで100U/mlrIL−2を添加した培地で細胞を増殖、維持し、GFP発現細胞を分離した。
【0039】
増殖アッセイ
精製したT細胞(ウェル当り2.5x10個、U底96ウェルプレート)を、5x10個のAPCと一緒に、0.5μg/ml抗CD3mAbまたは0.1μMOVA323−339ペプチドの存在下で72時間培養した。H−チミジン(1μCi/ウェル;Du Pont/NEN) を、培養の最後の6時間にわたって添加した。結果を3回の培養の平均で表し、各実験の平均のSDは15%以内であった。APC単独でのバックグラウンドのカウントは、常に<2,000cpmであった。
【0040】
ウェル通過実験は、培養に直接添加するか、もしくは Transwell inserts (孔サイズ0.4μm、Corning Costar、ケンブリッジ、MA)に添加した2.5x10個のFoxp3形質転換CD25CD4細胞の存在下または非存在下で、24ウェルプレート(0.8ml/ウェル)中で、2.5x10個の新鮮なCD25CD4細胞、2.5x10個のAPC、および0.5μg/mlの抗CD3を用いて実行した。
【0041】
サイトカインアッセイ
サイトカイン産生を測定するために、5x10個の精製したT細胞を、0.5μg/mlの抗CD3mAbの存在下で1x10個のAPCと一緒に72時間培養し、72時間の培養後に培養上清を回収した。IL−2、IFN−γ、IL−4およびIL−10の濃度を、ELISA (BioSource International, Inc.、カマリロ、CA)で測定した。
【0042】
いくつかの実験では、サイトカイン産生を細胞内の染色で評価した。細胞を1x10/mlで再懸濁し、50ng/mlPMAおよび500ng/mlイオノマイシンで4時間か、または2x10/mlAPCの存在下、0.5μg/ml抗CD3で24時間のいずれかで刺激した。細胞回収の2時間前に、ブレフェルジンA(brefeldin A)(10μg/ml)を添加した。細胞を洗浄し、PBS中の2%パラホルムアルデヒドで30分間固定し、0.5%サポニンの存在下で、抗サイトカインまたはアイソタイプ適合mAbで染色した。
【0043】
組織学
緩衝化した10%ホルマリン中で大腸と胃を固定し、6μmのパラフィン包埋切片をヘマトキシリンとエオシンで染色した。大腸炎および胃炎を、公表された基準に従って無作為に等級付けた(M. Asano, et al.、前出、C. Asseman, et al., J Exp Med 190, 995 (1999))。
【0044】
実施例1 CD25CD4T細胞集団は、Foxp3を発現する
最初に、我々は、正常マウスの胸腺および末端におけるFoxp3mRNAの発現をRT−PCRにより調べた。胸腺では、CD4CD8胸腺細胞の5%を構成するCD25CD4CD8胸腺細胞(M. Itoh et al.、前出)は、ほとんどがFoxp3を転写していた。一方、CD4CD8および他の未成熟な胸腺細胞の集団は、転写していなかった(図1A)。末梢リンパ組織では、CD4T細胞は、特異的に遺伝子を転写し、一方CD8T細胞およびCD19B細胞は転写しなかった(M. E. Brunkow et al.、前出)。CD4細胞の中では、正常ナイーブマウスのCD4T細胞の5−10%を構成するCD25のサブセットが、主に転写を示した(図1B)。リアルタイム定量的PCR分析により、CD25CD4細胞のFoxp3mRNAレベルは、CD25CD4細胞のものよりも100倍高いことが解明された(図1C)。CD25CD4細胞の内では、以前に制御活性を有すると報告されたCD45RBlow集団(L. A. Stephens, D. Mason, J. Immunol. 165, 3105 (2000)、O. Annacker et al., J. Immunol. 166, 3008 (2001))のみが低レベルで発現した。これらの結果は、胸腺と末梢の両方で、Foxp3の発現が主にCD25CD4集団に限られていることを示す。
【0045】
IL−2または抗CD28モノクローナル抗体(mAb)の存在下、抗CD3mAbによって試験管内で3日間CD25CD4細胞を刺激しても、Foxp3発現は誘導されなかったので、Foxp3の発現は、単にT細胞活性化によるものではない(図1D)。ナイーブT細胞から調製したエフェクターTh1とTh2細胞は、いずれもFoxp3を発現しなかった(図S1)。さらに、CD25CD4細胞を抗CD3とIL−2で刺激しても、そのFoxp3発現は変化しなかった。従って、活性化の方法や状態に関わらず、Foxp3発現はCD25CD4細胞で安定である。
【0046】
実施例2 Foxp3強制発現によるナイーブT細胞の制御性T細胞形質への転換
ナイーブT細胞におけるFoxp3の強制発現により、これらの細胞を制御性T細胞形質に転換できるか否かを判定した。Foxp3およびGFPの両者またはGFP単独を発現しているバイシストロン性(bicistronic)レトロウイルスベクター(それぞれFoxp3/MIGR1またはMIGR1)を作成した(図2A)。正常ナイーブマウス由来末梢CD25CD4細胞を抗CD3とIL−2で刺激し、いずれかのレトロウイルスに感染させた。感染の1週間後、T細胞受容体(TCR)刺激に対する増殖応答、サイトカイン産生、細胞表面分子の発現を調べた。
【0047】
レトロウイルスによる形質転換により、CD4細胞の30−60%がGFPを発現した。抗CD3でTCR刺激を与えると、MIGR1感染細胞対照または新たに調製したCD25CD4細胞が活発に増殖したのと対照的に、Foxp3/MIGR1感染培養由来のGFP細胞は、ほとんど増殖しなかった(図2B)。さらに、IL−2、INFγ、IL−4およびIL−10を大量に分泌したGFPMIGR1感染細胞と比較して、Foxp3/MIGR1感染GFP細胞のサイトカイン産生は、検出可能であるが非常に少なかった(図2C)。これらのFoxp3発現細胞は、新たに単離したCD25CD4細胞よりも多量のサイトカインを産生したが(図S2)、サイトカイン産生細胞は、主としてGFP(即ち、Foxp3)の発現レベルが低い細胞に限られた。
【0048】
自然発生のCD25CD4細胞は、CD25、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原−4(CTLA−4)、糖質コルチコイド依存性腫瘍壊死因子受容体ファミリー関連遺伝子(GITR)およびCD103(αインテグリン)を特徴的に発現する(S. Sakaguchi, (1995)(前出)、M. Itoh et al.(前出)、M. Asano, et al.(前出)、E. Suri−Payer, et al.(前出)、S. Read, et al. J.Exp. Med. 192, 295 (2000)、T. Takahashi et al., J. Exp. Med. 192, 303 (2000)、B. Salomon et al., Immunity 12, 431 (2000)、J. Shimizu, et al., Nat. Immunol. 3, 135 (2002)、R. S. McHugh et al., Immunity 16, 311 (2002)、J. Lehmann et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99, 13031 (2002))。レトロウイルス感染のためにCD25CD4細胞を活性化すると、Foxp3/MIGR1とMIGR1感染細胞の両者においてこれらの分子の発現が誘導されるが、前者のGFP細胞は、GFP細胞またはGFPMIGR1感染細胞よりも、CD25、GITRおよびCTLA−4を高レベルで発現した(図2Dおよび表1)。GFPのFoxp3形質転換細胞の中では、GFP(即ち、Foxp3)発現レベルが高いほど、これらの分子の発現が高かった(図2D)。さらに、Foxp3/MIGR1感染細胞の中では、GFPhigh(即ち、Foxp3high)のみがCD103を発現し、MIGR1感染細胞は全く発現しなかった。Foxp3で形質転換しても、CD4またはCD44のいずれの発現レベルも変化しなかったので、これらのT関連分子のFoxp3依存性高発現は特定の遺伝的プログラムによるものであり、単にFoxp3によって細胞が過剰に活性化した結果ではない可能性が高い。これらの実験から、我々は、Foxp3で形質転換すると、ナイーブT細胞はTCR刺激に対して低反応性になり、サイトカイン産生が阻害され、自然発生のCD25CD4細胞の制御機能(T. Takahashi et al., Int. Immunol. 10, 1969 (1998)、A. M. Thornton, E. M. Shevach, J. Exp. Med. 188, 287 (1998))と密接に関連する細胞表面分子の発現が上昇すると結論付ける。
【0049】
表1 Foxp3/MIGR1またはMIGR1で感染させたCD25CD4細胞における様々な細胞表面分子の平均蛍光強度
【表1】
Figure 2004208548
【0050】
実施例3 Foxp3形質転換T細胞の抑制活性
Foxp3形質転換T細胞の抑制活性を評価した。Foxp3/MIGR1感染CD25CD4T細胞は、抗CD3で刺激すると、新たに調製したCD25CD4反応性T細胞の増殖を特異的に低減させた(図3A)。この抑制は、自然のCD25CD4細胞と同様に、反応性集団によるIL−2産生の阻害を伴い(図3B)、感染集団中ではGFP(即ち、Foxp3)発現レベルに比例した(注1および図S3A)。これらのGFPhigh細胞は、CD25CD4反応性T細胞のIL−4分泌も抑制した(図S3B)。CD25CD4細胞は、Foxp3/MIGRまたはMIGR1のいずれに感染しても、同等の強度の抑制活性を示した(図3A)。
【0051】
次いで、異所性のFoxp3発現により、抗原特異的ナイーブT細胞を制御性T細胞に転換できるか否かを調べるために、我々は、RAG欠損DO11.10のCD4T細胞を使用した(M. Itoh et al.、前出)。この動物は、卵白アルブミン(OVA)ペプチド特異的なトランスジェニックTCRを発現し、CD25CD4細胞に欠損があり、Foxp3を殆ど発現しない(注2および図S4)。特異的抗原の非存在下では、これらの動物由来のT細胞は、ほぼ全てナイーブ状態にあった。Foxp3/MIGRを感染させたトランスジェニックCD4細胞は、特異的OVAペプチドで刺激すると、新たに調製した非感染トランスジェニックT細胞の増殖を抑制したが、MIGRを感染させたものは抑制しなかった(図3C)。これらの結果は、総合的に、Foxp3の異所性発現は、非制御性ナイーブT細胞を、おそらくIL−2の阻害を通じて他のT細胞の増殖を抑制できる制御性T細胞表現型に転換するのに十分であることを示す(注3および図S5)。
【0052】
Foxp3形質転換CD4T細胞は、自然発生CD25CD4細胞と同様の方法で、抑制活性を発揮すると考えられる(注4および図S6)。第1に、BALB/cCD25CD4細胞由来のFoxp3形質転換細胞は、OVAペプチドで刺激してもDO11.10TCRトランスジェニックCD4T細胞の増殖応答を抑制しなかったが、一方抗CD3によるポリクローナルな刺激は、抑制を誘導した(図3D)。このことは、Foxp3形質転換T細胞は、抑制を発揮するためにTCRを介する刺激を要することを示す(T. Takahashi et al.(前出)、A. M. Thornton, et al.(前出))。第2に、Foxp3感染T細胞は、細胞接触が許容されれば効果的な抑制を示すが、半透膜で分離されると他のT細胞を抑制しなかった(図3E)。これらの分離されたFoxp3感染T細胞は、おそらくそれらが産生したサイトカインを介して、膜を通してT細胞の応答を増強しさえした(図S2)。さらに、CD25CD4細胞で起こるように、TGFβの中和またはIL−10受容体の阻害は、単独でも両方でも、抑制を妨げなかった。これらの結果は、Foxp3形質転換T細胞によるインビトロでの抑制には、液性因子が介在するのではなく、細胞接触が必要であることを示す(T. Takahashi et al.(前出)、A. M. Thornton, et al.(前出))。
【0053】
実施例4 Foxp3発現T細胞による自己免疫疾患の抑制
T細胞制御の非存在下で進行する炎症および自己免疫疾患を、Foxp3/MIGR1感染T細胞が生体内で抑制できるか否かを調べた。そのために、我々は、重症複合型免疫不全(SCID)マウスに発症するIBDと自己免疫性胃炎のモデルを使用した。このマウスでは、これらの疾患は、正常BALB/cマウス由来CD25CD45RBhighCD4T細胞の移入により誘導でき、そしてCD25CD4細胞の共移入により防止できる(S. Read, et al.(前出)、S. Read,E. Suri−Payer, H. Cantor, J Autoimmun 16, 115 (2001))(図4)。BALB/cマウス由来CD25CD45RBhighCD4細胞をFoxp3/MIGR1またはMIGR1に感染させ、GFP細胞を新たに調製したCD25CD45RBhighCD4細胞と共移入した。GFPFoxp3形質転換細胞は、体重減少、下痢並びに大腸炎および胃炎の組織学的進行を、自然発生CD25CD4細胞と同程度に効果的に阻害した。対照的に、GFP単独で形質転換した細胞は、疾患を防止せず、むしろ体重減少と大腸炎の進行を促進した。従って、Foxp3の形質転換により、ナイーブT細胞は、胃の自己抗原に対する免疫応答調節異常に起因する自己免疫性胃炎と、共生細菌に対する免疫応答調節異常に起因するIBDを防止するようになることが示された(注5、M. E. Brunkow et al.、前出)。
【0054】
以上の実施例は、Foxp3が胸腺および末梢で自然に発生するCD25CD4集団において支配的に発現されていること、ナイーブT細胞でFoxp3を発現させると、これらの細胞がCD25CD4細胞と機能的に類似する制御性T細胞表現型に転換することを示す。このことは、Foxp3が、胸腺と末梢における制御性T細胞の細胞系統決定または発生分化のマスター制御遺伝子であることを示唆する。また、我々の結果は、Foxp3が自己免疫疾患および免疫病理の防止を担う自然発生CD4制御性T細胞の特異的マーカーになることを示す。これは、現在使用されている、制御性T細胞と活性化したエフェクターまたはメモリーT細胞との間を完全には区別できない細胞表面分子(例えば、CD25、CD45RB、CTLA−4およびGITR)よりも有用なマーカーであると期待される。
【0055】
Foxp3の突然変異は、ヒトとマウスの両方で、多臓器の病理を伴う致死的なリンパ球増殖異常を進行させる(R. S. Wildin, et al.(前出)、V. L. Godfrey, et al.(前出))。Foxp3は、ヒトでも、主にCD25CD4T細胞で発現している。さらに、scurfyマウスの突然変異Foxp3(M. E. Brunkow et al.(前出))と同様にフォークヘッドドメインを欠く突然変異Foxp3を形質転換しても、CD25CD4細胞に抑制活性を与えなかった(図S7)。従って、本結果は、Foxp3の突然変異がCD25CD4集団の発生的または機能的異常を介してこれらの疾患を引き起こす可能性を示す。
【0056】
また、ナイーブT細胞のFoxp3形質転換によるT細胞の発生は、自己免疫/炎症性疾患の処置および移植片寛容における処置に、新しい治療様式を提供し得る。
【0057】
注1 Foxp3形質転換T細胞の抑制活性は、Foxp3発現レベルに依存する
Foxp3/MIGR1感染細胞を、GFP発現レベルによってGFPhighまたはGFPlow細胞に分離し、新たに精製したCD25CD4細胞の増殖抑制活性について比較した。GFPhigh細胞は抑制活性を示したが、GFPlow細胞は示さなかった(図S3A)。これらのGFPhighFoxp3発現細胞は、CD25CD4反応性T細胞によるIL−4産生も抑制したが、MIGR1に感染したGFPhigh細胞は抑制しなかった(図S3B)。これらの結果は、Foxp3形質転換T細胞の抑制活性は、Foxp3発現レベルに依存することを示す。
【0058】
注2 TCRトランスジェニックマウスにおけるFoxp3発現
DO11.10TCRトランスジェニックマウスにはCD25CD4細胞が存在し、その大部分は内在性TCRα鎖を発現するが、RAG−欠損バックグラウンドのトランスジェニックマウスには存在しない(M. Itoh et al.、前出)。Foxp3発現は、DO11.10/RAG−2+/−マウス由来のCD25細胞とCD25CD4細胞の両方で検出されるが、BALB/cマウスと同様に、前者で100倍高いレベルで発現する(図S4)。さらに、Foxp3のmRNAは、DO11.10/RAG−2−/−マウス由来のCD4細胞ではほとんど検出されない。これらの結果は、Foxp3発現が胸腺のCD25CD4細胞選択と密接に関係しているという知見をさらに支持する(M. Itoh et al.、前出、M. S. Jordan et al., Nat. Immunol. 2, 301 (2001))。
【0059】
注3 BALB/cマウス由来のCD25CD45RBhighCD4細胞は、試験管内で抑制活性を示す
Foxp3mRNAをほとんど発現しない(図1C)BALB/cナイーブ(CD25CD45RBhigh)CD4細胞でも、Foxp3で形質転換するとインビトロで新鮮なBALB/cCD25CD4T細胞の増殖抑制活性を示す(図S5)。RAG−2−欠損DO11.10TCRトランスジェニックマウス由来ナイーブCD4細胞が抑制活性を獲得するという知見(図3C)と共に、この結果は、Foxp3の形質転換によって、Foxp3非発現ナイーブT細胞を制御性T細胞に変化させられることを示す。
【0060】
注4 Foxp3形質転換T細胞の低増殖状態に対するIL−2、CD28、またはGITR刺激の効果
Foxp3形質転換T細胞と自然発生のCD25CD4T細胞の免疫学的特性を比較するために、我々は、様々な用量のIL−2、抗CD28mAbまたは抗GITRmAbと共に抗CD3でこの2集団を刺激して、その効果を調べた(図S6)。CD25CD4細胞と同様に(T. Takahashi et al., (1998)、前出、A. M. Thornton, et al.、前出)、抗CD3で刺激したFoxp3形質転換CD25CD4T細胞は、用量依存的にIL−2に応答して増殖した。CD25CD4T細胞の増殖を引き起こすには不十分なほど低い抗CD3mAb濃度でも、抗CD28mAbの存在下で、Foxp3形質転換T細胞は抗CD3と抗CD28に応答して実質的な増殖を示した。同様に、抗GITR刺激は、Foxp3形質転換T細胞の増殖を引き起こしたが、CD25CD4T細胞の増殖は引き起こさなかった。これらの差異は、注1で論じたように、Tと非T細胞の両方を含有するFoxp3形質転換T細胞の不均一性に起因するか、またはFoxp3発現細胞が微量ながらも産生するIL−2が抗CD28や抗GITRmAbと共同作用してこれら細胞の増殖を促進しているためと考えられる(図S2)。新たに調製したCD25CD4T細胞との共培養でFoxp3形質転換T細胞自体が急激に増殖するので、これらの刺激がFoxp3形質転換T細胞による抑制を中和できるか否かは現時点では不明である。
【0061】
注5 Foxp3形質転換T細胞による疾患の防止は、抑制によるのか、または競合によるのか。
T細胞制御を説明するのに、Stockinger と共同研究者は、T細胞による抑制よりも、むしろMHCリガンドおよび/またはサイトカインなどに対するT細胞間の競合が、病原性T細胞のクローン増殖を制限して免疫病理を防止するという説を最近提唱した(B. Stockinger, et al., Nat Immunol 2, 757 (2001))。このモデルに基づけば、Foxp3形質転換T細胞がCD25CD45RBhighCD4細胞を競合阻害してIBDおよび自己免疫性胃炎を阻害するとも考えられる。しかしながら、可能性は低いと考えられる。なぜならば、我々は病原性のCD25CD45RBhighCD4細胞をFoxp3で形質転換したからであり、そして最も重要なことには、GFP単独で形質転換した同数の細胞を移植すると疾患の進行を防止できず、むしろ悪化させたからである。
【0062】
注6 Foxp3形質転換T細胞の抗原特異性
本実験では、正常ナイーブBALB/cマウス由来のCD25CD45RBhighCD4T細胞は、SCIDマウスにおいて細菌の抗原または胃の自己抗原を各々認識して反応し、大腸炎および胃炎を引き起こした。これらのT細胞は、Foxp3の遺伝子導入により制御性T細胞に変化し、かつ、抗体で刺激すると抑制を示した(図3D)。これらの知見は、Foxp3形質転換T細胞は、エフェクターT細胞のように、細菌の抗原および胃の自己抗原に対する特異性を十分に有し、抗原特異的様式で活性化されて抑制を発揮することを総合的に意味する。
【0063】
図の説明
図1 胸腺および末梢のCD4T細胞小集団におけるFoxp3の発現
(A)BALB/c胸腺細胞を、CD4CD8(DN)、CD4CD8(DP)、CD4(CD8)またはCD4(CD4)細胞に分離した(左)。CD4胸腺細胞を、さらにCD25またはCD25細胞に分離した(右)。各集団由来のcDNAに対し、Foxp3またはHPRT(ヒポキサンチン−グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ)特異的プライマーを用いて非飽和PCRを行った。
(B)BALB/c由来LNおよび脾臓細胞を、示した区画に分離し、非飽和RT−PCR分析を実行した。CD4細胞を、さらにCD25またはCD25細胞に分離した。
【0064】
(C)CD4T細胞サブセットにおける相対的Foxp3mRNAレベルの定量。Foxp3またはHPRT特異的プライマーおよび内側蛍光プローブを使用して、cDNA試料をリアルタイム定量PCR分析にかけた(O. Annacker et al.、前出)。
(D)IL−2(丸)または抗CD28mAb(四角形)の存在下、プレートに固相化した抗CD3mAbで、CD25CD4細胞(白い記号)またはCD25CD4細胞(黒い記号)を0−72時間活性化し、リアルタイム定量RT−PCRによりFoxp3発現を経時的に評価した。
【0065】
図2 ナイーブCD4T細胞へのレトロウイルス形質転換
(A)Foxp3cDNAをMIGRIレトロウイルスベクターに挿入した。このベクターは、インターナルリボソームエントリー部位(IRES)を使用して、同時に2つのcDNA、即ちFoxp3とGFPを発現する。
(B)新たに単離したCD25CD4細胞およびGFPのFoxp3/MIGR1−またはMIGR1−感染CD25CD4細胞の、抗CD3刺激による増殖応答。
【0066】
(C)GFPのFoxp3/MIGRI−またはMIGRI−感染CD25CD4細胞を抗CD3で刺激して培養した培養上清における、IL−2、IFN−γ、IL−4またはIL−10の濃度。
(D)CD25CD4細胞由来のFoxp3/MIGR1−またはMIGR1−感染T細胞を、CD25、GITR、CD103、CD4、CD44または無関係な抗原(対照)のPE標識mABで染色し、同時にGFPを検出した。細胞内CTLA−4分子を、PE標識抗CTLA−4またはアイソタイプ適合mABで検出した。
【0067】
図3 Foxp3形質転換ナイーブCD4T細胞の抑制活性
(A)BALB/cCD25CD4細胞(左)またはCD25CD4細胞(右)に、Foxp3/MIGR1(黒丸)またはMIGR1(白丸)の何れかを感染させ、GFP細胞の数に勾配をつけ、2.5x10個の新たに調製したCD25CD4細胞と、抗CD3および5.0x10個の抗原提示細胞(APC)と共に、72時間培養した。新たに調製したCD25CD25細胞も、アッセイに含めた(白い四角形)。
【0068】
(B)新たに調製したCD25CD4細胞のみ、または同数のGFPのFoxp3/MIGR1−(+Foxp3/MIGR1)感染CD25CD4細胞、MIGR1−感染CD25CD4細胞(+MIGR1)または新たに単離したCD25CD4細胞(+CD25)と混合したものを、抗CD3で刺激し、培養上清中のIL−2濃度を測定した。
【0069】
(C)Foxp3/MIGR1(黒丸)またはMIGR1(白丸)を感染させたDO11.10/RAG−2−/−CD4細胞由来のGFP細胞を、OVAペプチドおよび4.0x10個のAPCの存在下、新たに調製した2.0x10個のDO11.10CD4細胞と共に培養した。
【0070】
(D)BALB/cCD25CD4細胞を、Foxp3(黒丸)またはGFP単独(白丸)で形質転換し、GFPについて分離した。示した数のGFP細胞を、2.5x10個のDO11.10TCR形質転換CD4細胞と混合し、特異的OVAペプチド(左)または抗CD3(右)のいずれかで刺激した。
【0071】
(E)BALB/cCD25CD4由来のGFPのFoxp3/MIGR1−感染T細胞と、同数の新たに調製したCD25CD4細胞を、半透膜で分離するか、または分離しないで培養し、抗CD3および両側のAPCで刺激した(左)。抗IL−10受容体(IL−10R)mAb、抗TGF−βmAb、またはこれら2種類の混合物を、新たに調製したCD25CD4細胞の単独の培養(白バー)か、またはGFPのFoxp3/MIGR1−感染CD25CD4細胞(灰色バー)または新たに調製したCD25CD4細胞(黒バー)の存在下の培養に添加した(右)。
【0072】
図4 Foxp3形質転換T細胞によるIBDおよび自己免疫性胃炎の予防
(A)C.B−17scidマウスに、4x10個の新鮮なCD25CD45RBhighCD4細胞を単独で(n=6)(白丸)か、またはFoxp3/MIGR1(n=7)(黒丸)もしくはMIGR1(n=5)(白丸)に感染したCD25CD45RBhighCD4細胞由来のGFP分離細胞1.2x10個と共に移植した。体重を開始時体重のパーセントとして表した(平均±SD)。Mann−Whitney 試験によってFoxp3/MIGR1対他の2グループがp<0.01。
【0073】
(B)各グループおよび未処理SCIDマウス(無し)の大腸と胃の組織病理。
(C)大腸炎(左)と胃炎(右)を組織病理学的にスコア付けした。MIGR1−感染細胞を共移植したグループのマウス2匹と、CD25CD45RBhighCD4細胞を単独で移植したグループのマウス1匹は、組織学的試験の前に衰弱死した。
【0074】
図S1 Th1およびTh2エフェクター細胞におけるFoxp3の発現
IL−12と抗IL−4mAb(Th1発生用)またはIL−4と抗IL−12(Th2発生用)の存在下で、Foxp3mRNAをほとんど発現しない(注2および図S4も参照されたい)DO11.10TCRトランスジェニックRAG−2−/−マウス(DO.RAG)由来CD4T細胞を、特異的OVAペプチドで活性化して、Th1およびTh2細胞を得た。最初の刺激から7日後に、細胞をPMA+イオノマイシンで4時間再刺激し、細胞内の染色によってIFN−γとIL−4の産生を評価した。Th1およびTh2細胞中のIFN−γ分泌細胞の割合は、各々77%および<1%であり、一方Th1およびTh2細胞中のIL−4産生細胞の割合は、各々<1%および57%であった。PMA/イオノマイシンで再刺激するか、または刺激しないで、これらのTh1およびTh2細胞から、そして新たに単離したDO.RAGCD4細胞、BALB/cCD25CD4細胞およびCD25CD4細胞から、cDNAを調製した。Foxp3とHPRTについてリアルタイム定量的PCR分析を実行し、相対的Foxp3mRNAレベルを測定した。
【0075】
図S2 Foxp3−形質転換T細胞によるサイトカイン産生
(A)CD25CD4T細胞をFoxp3/MIGR1またはMIGR1に感染させ、GFP細胞を分離した。GFP細胞をAPCの存在下で24時間抗CD3で再刺激し、PE−結合抗サイトカインまたはアイソタイプ適合mAbで細胞内染色して、サイトカイン産生を評価した。
(B)感染させたCD25CD4細胞から、GFP発現が最大または最小の30%の細胞を選別し、GFPhighまたはGFPlow集団に分離した。これらの細胞並びに新たに単離したCD25CD4およびCD25CD4細胞を60時間(A)と同様に刺激し、培養上清中のサイトカイン濃度をELISAで評価した。
【0076】
図S3 Foxp3形質転換CD4T細胞における抑制活性のFoxp3発現依存性
(A)CD25CD4T細胞をFoxp3で形質転換し、GFP発現が最大または最小の30%の細胞を選別し、GFPhighまたはGFPlow集団に分離した。新たに単離したCD25CD4細胞を、同数の分離したGFP細胞の存在下または非存在下で、抗CD3とAPCで刺激し、それらの増殖応答を調べた。
(B)同数のGFPhighFoxp3/MIGR1−もしくはMIGR1−感染細胞または新たに調製したCD25CD4細胞の存在下または非存在下で、新たに単離したCD25CD4細胞を抗CD3で刺激し、培養上清中のIL−4濃度を測定した。
【0077】
図S4 TCRトランスジェニックCD4T細胞におけるFoxp3発現
DO11.10TCRトランスジェニックRAG−2−/−(DO.RAG)もしくは+/−(DO.RAG)、またはBALB/cマウス由来のCD25またはCD25CD4T細胞で、リアルタイム定量的RT−PCRを実施した。以前に報告されたように、DO.RAGマウスにはCD25CD4T細胞がほとんど存在しないことに注意されたい(M. Itoh et al.、前出)。
【0078】
図S5 Foxp3形質転換による末梢CD25CD45RBhighCD4T細胞における抑制活性の誘導
BALB/cマウスから精製した末梢CD25CD45RBhighCD4T細胞を、Foxp3(黒い記号)またはGFP単独(白い記号)で形質転換し、GFP細胞を分離した。各集団から分離した、示した数のGFP細胞を、抗CD3と5.0x10個のAPCのみで(菱形)、またはそれに加えて2.5x10個の新たに単離したCD25CD4細胞の存在下で(丸)刺激した。
【0079】
図S6 Foxp3−形質転換T細胞の低増殖状態に対するIL−2、抗CD28または抗GITRmAbの効果
新たに単離したCD25CD4細胞(黒丸)、GFPのCD25CD4細胞由来Foxp3/MIGR1−感染細胞(黒い四角形)、新たに精製したCD25CD4細胞(白い四角形)、同数のCD25CD4細胞とGFPのFoxp3−形質転換細胞の混合物(黒い三角形)、または同数のD25CD4細胞とCD25CD4細胞の混合物(白い三角形)を、抗CD3で刺激し、培養に様々な量のIL−2、抗CD28または抗GITRmAbを添加した。
【0080】
図S7 フォークヘッドドメインを欠く変異体Foxp3は、CD25CD4T細胞に抑制活性を与えられない
(A)scurfyマウスにおける変異体Foxp3に類似する、フォークヘッド(FKH)ドメインを欠く変異体Foxp3コンストラクト(ΔFKH)の模式図。上図は、アミノ酸1−443からなる野生型Foxp3(WT)を表す。核移行シグナル(NLS)はFKHドメインの内側に位置し、黒い四角形で示す。以前の研究によって、FKHドメインがFOXP3タンパク質の核移行とDNA結合に必要であると示された(L. A. Schubert, et al., J. Biol. Chem. 276, 37672 (2001))。
【0081】
(B)CD25CD4T細胞をWT(黒丸)、ΔFKH(白い四角形)、またはGFP単独(白丸)のいずれかをコードするレトロウイルスに感染させ、GFP発現について分離した。示した数の分離したGFP細胞の存在下または非存在下で、CD25CD4細胞(1.2x10個)を抗CD3および2.4x10個のAPCで刺激した。[H]チミジン取込みを培養3日目で測定した。
【0082】
【発明の効果】
本発明により、免疫反応を抗原特異的に抑制することが可能となる。このことは、自己成分に対する免疫系の過剰反応に起因する自己免疫疾患の処置や、移植片への免疫系の攻撃を防止するのに有用である。これらに対して従来使用されてきた免疫抑制剤が、免疫反応全体を低下させ、感染症のリスクを高める等の副作用を伴うのに比較して、本発明は、過剰反応している所望の免疫反応のみを選択的に抑制できるので、はるかに有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、胸腺および末梢のCD4T細胞小集団におけるFoxp3の発現を示す。
【図2】図2は、ナイーブCD4T細胞へのレトロウイルス形質転換を示す。
【図3】図3は、Foxp3形質転換ナイーブCD4T細胞の抑制活性を示す。
【図4】図4は、Foxp3形質転換T細胞によるIBDおよび自己免疫性胃炎の予防を示す。
【図5】図S1は、Th1およびTh2エフェクター細胞におけるFoxp3の発現を示す。
【図6】図S2は、Foxp3−形質転換T細胞によるサイトカイン産生を示す。
【図7】図S3は、Foxp3形質転換CD4T細胞における抑制活性のFoxp3発現依存性を示す。
【図8】図S4は、TCRトランスジェニックCD4T細胞におけるFoxp3発現を示す。
【図9】図S5は、Foxp3形質転換による末梢CD25CD45RBhighCD4T細胞における抑制活性の誘導を示す。
【図10】図S6は、Foxp3−形質転換T細胞の低増殖状態に対するIL−2、抗CD28または抗GITRmAbの効果を示す。
【図11】図S7は、フォークヘッドドメインを欠く変異体Foxp3は、CD25CD4T細胞に抑制活性を与えられないことを示す。

Claims (7)

  1. Foxp3タンパク質を発現している、制御性T細胞表現型を有する形質転換体。
  2. Foxp3タンパク質をコードする核酸配列分子を含むベクター。
  3. 自己免疫疾患の処置に使用する、請求項2に記載の治療用ベクター。
  4. 移植片への免疫反応を抑制するために使用する、請求項2に記載の治療用ベクター。
  5. 請求項1に記載の形質転換体または請求項2に記載のベクターを含有する医薬組成物。
  6. a)哺乳動物からある抗原に特異的なCD4CD25T細胞を単離すること、
    b)該細胞にFoxp3タンパク質を発現させて制御性T細胞表現型に変化させ請求項1の形質転換体を調製すること、
    c)該哺乳動物に該形質転換体を移入すること、
    の各段階を含む、該抗原に対する免疫反応を抑制する方法。
  7. 制御性T細胞を検出するための方法であって、Foxp3遺伝子またはFoxp3タンパク質を使用する方法。
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