JP2004203902A - 塗料組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋼材及び/又はアルミニム材の塗装において、以下の特徴を有する防錆剤、及び基体樹脂、硬化剤を含有することを特徴とする塗料組成物。
防錆剤:セリウム化合物、ランタン化合物、モリブデン酸塩化合物、グルコン酸誘導体塩類、多孔質基材、トリアゾール化合物、チアゾール系化合物、テトラサイクリン類、アスコルビン酸のリン酸金属塩化合物
基体樹脂:エポキシ当量が180〜2500のエポキシ樹脂にキシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物を反応させてなるキシレンホルムアルデヒド樹脂変性のアミノ基含有エポキシ樹脂
硬化剤:ブロック化ポリイソシアネート化合物
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼板、アルミニウム材、鋼板とアルミニウム材を混用してなる被塗物に対して、その塗料組成物中に鉛やクロムなどの有害金属を含まなくても、ソルトスプレー性、温塩水ディップ性などのウェットコロージョンと、耐暴露性、耐糸錆性などのドライコロージョンの両面の耐食性に優れる塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及びその課題】従来から鋼板、アルミニウム材、鋼板とアルミニウム材を混用してなる被塗物に塗装される塗料組成物は、耐食性や塗面平滑性などに優れ、自動車車体・部品などの防錆塗装などに広く利用されている。
【0003】
しかし、環境面から鉛やクロムなどの有害金属フリー化が図られそれに変る防錆剤が見出されている。しかしそのような防錆剤を配合した塗料組成物といえどもソルトスプレー性、温塩水ディップ性、耐暴露性耐糸錆性などの耐食性がバランスよく良好なのは困難である。
【0004】
従来の発明に、耐食性付与剤として2種以上の異なるヒドロキシカルボン酸セリウムを、塗料中のセリウム濃度が金属換算で0.005〜0.5重量%となる量で含有する無鉛性カチオン電着塗料組成物(特許文献1)。
ランタン化合物を少なくとも1種含有する電着塗料用組成物 (特許文献2)。 テトラサイクリン類を含有する塗料組成物(特許文献3)。アスコルビン酸のりん酸金属塩を含有する塗料組成物(特許文献4)。
鋼材及びアルミニウム被塗物に、アルカリ土類金属、亜鉛なる金属のケイ酸塩、ホウ酸塩、クロム酸塩、モリブデン酸塩及びタングステン酸塩並びにタングステン酸から選ばれる少なくとも1種以上の化合物を含有するカチオン電着塗料(特許文献5)。
【0005】
グルコン酸誘導体塩類を含む塗料組成物(特許文献6)。 グルコース誘導体化合物を含有する化合物(特許文献7)。
多孔質基材に、グルコン酸系化合物、グルコン酸塩系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、ポリリン酸系化合物、ポリリン酸塩系化合物などを、含浸や包接させた防錆剤(特許文献8)。
【0006】
りんモリブデン酸塩アルミニウムやりんモリブデン酸塩アルミニウムと酸化亜鉛の複合体を変性したエポキシ樹脂に反応し、カチオン化して得られる電着塗料組成物(特許文献9)。電着浴鉄配管の腐食を防止する目的で、ベンゾトリアゾール化合物を添加してなるカチオン電着塗料組成物(特許文献10)。 などが挙げられる。
【0007】
しかしこれらの発明では、例えば、ソルトスプレー性、温塩水ディプ性などのウェットコロージョンに効果が見られても、暴露耐食性、耐糸錆性などのドライコロージョンが不十分であったり、逆に暴露耐食性、耐糸錆性などに効果があってもソルトスプレー性、温塩水ディプ性などには不十分であった。
【0008】
被塗物においても冷延鋼板や亜鉛メッキ鋼板などの鋼板の耐食性向上に効果があっても、アルミニウム材には不十分であったり、逆にアルミニウム材に効果があっても、鋼板には不十分であることが見られた。
【0009】
そこで自動車ボディや部品などは、通常、鋼板(冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板)、アルミニウムなどが混用されているため、被塗物の影響を受けず、かつウェットコロージョンとドライコロージョンに関して、両面の耐食性に優れる塗料組成物が求められていた。
【0010】
【特許文献1】特開2002−249723号公報
【特許文献2】特開平5−239386号公報
【特許文献3】特開2002−285092号公報
【特許文献4】特開2002−294161号公報
【特許文献5】特開平6−340831号公報
【特許文献6】特開2001−262069号公報
【特許文献7】特開2001−354906号公報
【特許文献8】特開2002−212765号公報
【特許文献9】特開平9−124979号公報
【特許文献10】特開平9−53033号公報
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らはこれらの課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、特定の防錆剤と特定の基体樹脂、及び硬化剤により目的が達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
即ち、本発明は、
1.鋼材及び/又はアルミニム材の塗装において、以下の特徴を有する防錆剤(I)の中から選ばれる少なくとも1種類、及び基体樹脂(I)、硬化剤(I)を含有することを特徴とする塗料組成物、
防錆剤(I):セリウム化合物、ランタン化合物、モリブデン酸塩化合物、グルコン酸誘導体塩類、多孔質基材、トリアゾール化合物、チアゾール系化合物、テトラサイクリン類、アスコルビン酸のリン酸金属塩化合物
基体樹脂(I):エポキシ当量が180〜2500のエポキシ樹脂(1)にキシレンホルムアルデヒド樹脂(2)及びアミノ基含有化合物(3)を反応させてなるキシレンホルムアルデヒド樹脂変性のアミノ基含有エポキシ樹脂
硬化剤(I):ブロック剤によってポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロックしたブロック化ポリイソシアネート化合物
2.塗料組成物における基体樹脂として、以下の特徴を有する基体樹脂(II)を含有する請求項1に記載の塗料組成物、
基体樹脂(II):エポキシ当量が180〜2500のエポキシ樹脂(1)に、複数の活性水素基を含有する化合物にカプロラクトンを付加して得られるポリオール化合物(4)及びアミノ基含有化合物(3)を反応させてなるポリオール変性のアミノ基含有エポキシ樹脂
3.塗料組成物における基体樹脂として、以下の特徴を有する基体樹脂(III)を含有することを特徴とする1項に記載の塗料組成物、
基体樹脂(III):エポキシ当量が180〜2500のエポキシ樹脂(1)に、アルキルフェノール類(v1)及び/又はカルボン酸類(v2)、複数の活性水素基を含有する化合物にカプロラクトンを付加して得られるポリオール化合物(4)及びアミノ基含有化合物(3)を反応させてなるポリオール変性のアミノ基含有エポキシ樹脂(III)
4. 塗料組成物における硬化剤に、プロピレングリコールを含有する活性水素含有成分と芳香族ポリイソシアネート化合物を反応させてなるブロックポリイソシアネート硬化剤(II)を含有することを特徴とする1項〜3項のいずれか1項に記載の塗料組成物、
5. 塗料組成物がカチオン電着塗料である1項〜4項のいずれか1項に記載の塗料組成物、
6.1項〜5項のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装して得られた塗装物品、
に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明は、特定の防錆剤(I)に、より好ましい基体樹脂、硬化剤からなる塗料組成物であって、被塗物が鋼板及び/又はアルミニウムであっても、耐食性に優れる塗料組成物、及び該塗料組成物を塗装して得られる塗装物品に関する。
【0014】
防錆剤(I)
セリウム化合物としては、リン酸セリウム、酸化セリウム、グルコン酸セリウム;ランタン化合物としては、酸化ランタン、リン酸ランタン;モリブデン酸塩化合物としては、モリブデン酸マグネシム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸ナトリウム、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸アルミニウム;テトラサイクリン;アスコルビン酸のリン酸金属塩化合物としては、リン酸L−アスコルビルカルシウム、リン酸L−アスコルビルマグネシウム(ホスピタンC);
グルコン酸誘導体塩類としては、グルコン酸鉄、グルコン酸アルミニウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸セリウム;。
【0015】
多孔質基材としては、カルサイト型多孔質CaCO3(カルライトKT);
トリアゾール系化合物として、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール;チアゾール系化合物として、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−ベンゾチアゾリルチオプロピオン酸(4−メチルPBT)、2−ベンゾチアゾリルチオ酢酸(サンビットABT)、2−メルカプトベンゾチアゾール(サンセラ−M−G,サンセレントM−O);。
【0016】
その他の化合物としては、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキシド(HCA)、(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキシド)亜鉛塩(HCA−Zn)、3,5−ジ(α-メチルベンジル)サリチル酸、3,5−ジ((α-メチルベンジル)サリチル酸亜鉛、メタバナジン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、メタバナジン酸アンモニウム、ホウ酸カルシウム、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム・マグネシウム(NMC−4)、ヘキサメタリン酸ナトリウム、セバシン酸二ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム;IXE−100(Zr系)、IXE−600(Bi−Sb系)、(以上、東亜合成化学社製、商品名、IXEシリーズ防錆剤);などが挙げられる。
【0017】
防錆剤(I)の機能別の分類について
上記の防錆剤(I)を、腐食促進物質のグループ(i)、グループ(ii)、グループ(iii)に分類し、各々の中から少なくとも1種類を、グループ(i)−グループ(ii)、グループ(i)−グループ(iii)、グループ(ii)−グループ(iii)のように組み合せて塗料組成物中に含有させることにより「腐食の発生の抑制効果」と「腐食の進行の抑制効果」の両方の腐食抑制効果が得られ、各々の中から少なくとも1種類のみを使用した場合に比べ、さらに耐食性が向上することを見出した。
【0018】
腐食促進物質のグループ(i)とは、腐食により溶出した素材イオン(例えば、Fe2+、Zn2+、Al3+)、または腐食促進物質(酸素、水、Cl−)が塗膜を透過するのをトラップ(結合)作用、又はキレート化作用により安定物質(腐食抑制物質)を形成して腐食の進行と発生を抑制する。
【0019】
詳しくは、腐食により溶出した素材イオンとトラップ(結合)、又はキレート化で安定化物質を形成する場合には、初期の腐食が発生した後に起こる現象を抑制し、「腐食の進行」を抑制する。詳しくは、腐食促進物資が塗膜を透過するのをトラップ(結合)、又はキレート化作用によって腐食を遅延化する場合には、初期の腐食が発生する前に起こる現象を抑制し、「腐食の発生」の抑制する。即ち、「腐食の進行と発生」の両方に抑制効果がある防錆剤である。
【0020】
例えば、鋼材には、カルサイト型多孔質CaCO3(カルライトKT)、IXE−100、IXE−600(以上、東亜合成化学社製、商品名、IXEシリーズ防錆剤)、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキシド、(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキシド)亜鉛塩、3,5−ジ(α-メチルベンジル)サリチル酸、3,5−ジ((α-メチルベンジル)サリチル酸亜鉛、メタバナジン酸アンモニウム等が好ましい。
【0021】
例えば、アルミニム材には、カルサイト型多孔質CaCO3(カルライトKT)、IXE−100(Zr系防錆剤)、IXE−600(Bi−Sb系防錆剤)、以上、東亜合成化学工業社製、商品名、IXEシリーズ防錆剤が好ましい。
【0022】
グループ(ii)とは、電着塗装時に被塗物と塗膜の界面に析出して腐食に対して安定な保護皮膜を形成し、腐食の発生を抑制する防錆剤である。詳しくは、初期の腐食が発生する前に起こる現象を抑制することによって、「腐食の発生」に抑制効果がある防錆剤である。
【0023】
例えば、鋼材には、モリブデン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、メタバナジン酸ナトリウム、モリブデン酸マグネシウム、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2−ベンゾチアゾリルチオプロピオン酸、2−ベンゾチアゾリルチオ酢酸、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキシド、3,5−ジ(α-メチルベンジル)サリチル酸、2−メルカプトベンゾチアゾール等が好ましい。
【0024】
例えば、アルミニム材には、モリブデン酸ナトリウム、リンモリブデン酸、リン酸二水素ナトリウム、メタバナジン酸ナトリウム等が好ましい。
【0025】
グループ(iii)とは、初期の腐食が発生したことによって、被塗物と塗膜の界面のpH上昇部位(カソード部)やpH低下部位(アノード部)が生じ、そのことによって塗膜中から防錆剤が溶出し、腐食により溶出した被塗物のイオン(例えば、Fe2+、Zn2+、Al3+)、または腐食促進物質(酸素、水、Cl−)と反応して安定な保護皮膜を形成し、腐食を抑制する防錆剤である。詳しくは、初期の腐食が発生した後に起こる現象を抑制し、「腐食の進行」に抑制効果がある防錆剤である。
【0026】
例えば、鋼材には、グルコン酸鉄、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸アルミニウム、リン酸L−アルコルビルカルシウム、リン酸L−アルコルビルマグネシウム、メタバナジン酸アンモニウム、グルコン酸ナトリウム、リンモリブデン酸、トリポリリン酸ナトリウム、酸化ランタン、リン酸ランタン、リン酸ランタン、酸化セリウム、リン酸セリウム、ホウ酸カルシウム、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキシド、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキシド)亜鉛塩、3,5−ジ(α-メチルベンジル)サリチル酸、3,5−ジ((α-メチルベンジル)サリチル酸亜鉛、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸マグネシウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムが好ましい。
【0027】
例えば、アルミニム材には、リン酸ランタン、リン酸セリウム、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキシド、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキシド)亜鉛塩、3,5−ジ(α-メチルベンジル)サリチル酸、3,5−ジ((α-メチルベンジル)サリチル酸亜鉛、テトラサイクリン、セバシン酸二ナトリウム、リン酸L−アルコルビルカルシウム、リン酸L−アルコルビルマグネシウム(ホスピタンC)、ヘキサメタリン酸ナトリウム・マグネシウム(NMC−4)、ヘキサメタリン酸ナトリウム、モリブデン酸マグネシウムが好ましい。
【0028】
基体樹脂と硬化剤について
ここで上記に述べた、防錆剤(I)と組み合せることによって耐食性向上により好ましい基体樹脂、硬化剤を見出したので以下に述べる。
【0029】
従来からカチオン性塗料組成物における基体樹脂としては、通常、防食性の面からアミン付加エポキシ樹脂、硬化剤としては、環状構造のブロックポリイソシアネートが優れているため多く使用されている。
【0030】
基体樹脂に用いるエポキシ樹脂の平均分子量としては、特に通常と異ならず、平均分子量で1,000〜10,000、さらには2,000〜5,000が好ましく、基体樹脂の平均分子量が10,000を超える場合には樹脂粘度が高くなり、焼き付け時の熱流動性の低下により電着塗膜の仕上がり性において不具合を生じ、平均分子量が1,000未満の場合にはアミン付加量によるアミン価の調整が困難であり、エマルション分散性の低下の不具合を生じる。
【0031】
エポキシ樹脂に付加するアミン化合物としては、1級アミノ基を含有し、かつアミン価が30〜70mgKOH/g樹脂固形分の範囲、好ましくは40〜60mgKOH/g樹脂固形分以下とすることが好ましい。変性量としては可塑化に必要な最少量に留める必要があり、エポキシ樹脂100重量部に対し5〜50重量部、さらには10〜30重量部が好ましい。
【0032】
また基体樹脂は、疎水性の変性剤を用いて内部の分極化を図ることが好ましく、そのような変性剤を用いてエポキシ基と反応したキシレンホルムアルデヒド樹脂変性アミノ基含有エポキシ樹脂、ポリオール変性アミノ基含有エポキシ樹脂、アルキルフェノール類及び/又はカルボン酸類を付加したポリオール変性アミノ基含有エポキシ樹脂が挙げられる。
【0033】
基体樹脂(I):キシレンホルムアルデヒド樹脂変性のアミノ基含有エポキシ樹脂とは、エポキシ当量が180〜2500のエポキシ樹脂(1)にキシレンホルムアルデヒド樹脂(2)、及びアミノ基含有化合物(3)を反応させてなるアミノ基含有エポキシ樹脂である。(以下、基体樹脂(I)と略する場合がある。)
基体樹脂の出発材料として用いられるエポキシ樹脂(1)としては、塗膜の防食性等の観点から、特に、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリン、例えば、エピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂が好適である。
【0034】
該エポキシ樹脂の形成のために用い得るポリフェノール化合物としては、従来のものと同様のものが使用でき、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン(ビスフェノールA)、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等を挙げることができる。
【0035】
また、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂としては、中でも、ビスフェノールAから誘導される下記式
【0036】
【化1】
ここでn=0〜8で示されるものが好適である。
【0037】
エポキシ樹脂(1)は、一般に180〜2,500、好ましくは200〜2,000であり、さらに好ましくは400〜1,500の範囲内のエポキシ当量を有することができ、また、一般に少なくとも200、特に400〜4,000、さらに特に800〜2,500の範囲内の数平均分子量を有するものが適している。
【0038】
かかるエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)からエピコート828EL、同左1002、同左1004、同左1007なる商品名で販売されているものが挙げられる。
【0039】
キシレンホルムアルデヒド樹脂(2)は、上記、エポキシ樹脂(1)の内部可塑化(変性)に役立つものであり、例えば、キシレン、ホルムアルデヒド、及び場合によりフェノール類を酸性触媒の存在下に縮合反応させることにより製造することができる。
【0040】
上記のホルムアルデヒドとしては、工業的に入手容易なホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のホルムアルデヒドを発生する化合物などを例示することができる。なお、本明細書において、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等の重合体を用いる場合、その配合量の規定は、ホルムアルデヒド1分子を基準に規定するものとする。
【0041】
さらに、上記のフェノール類には2個又は3個の反応サイトを持つ1価もしくは2価のフェノール性化合物が包含され、具体的には、例えばフェノール、クレゾール類、パラ−オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビスフェノールプロパン、ビスフェノールメタン、レゾルシン、ピロカテコール、ハイドロキノン、パラ−tert−ブチルフェノール、ビスフェノールスルホン、ビスフェノールエーテル、パラ−フェニルフェノール等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上の組合わせて用いることができる。この中で特に、フェノール、クレゾール類が好適である。
【0042】
以上に述べたキシレン、ホルムアルデヒド、及び場合によりフェノール類の縮合反応に使用される酸性触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸等が挙げられるが、一般的には、特に硫酸が好適である。その使用量は、通常、ホルムアルデヒド水溶液中の水により希釈されるので、水溶液中の濃度として10〜50重量%の範囲内とすることができる。
【0043】
縮合反応は、例えば、反応系に存在するキシレン、フェノール類、水、ホルマリン等が還流する温度、通常、約80〜約100℃の温度に加熱することにより行うことができ、通常、2〜6時間程度で終了させることができる。
【0044】
上記の条件下に、キシレンとホルムアルデヒド、及び場合によりフェノール類を酸性触媒の存在下で加熱反応させることによって、キシレンホルムアルデヒド樹脂を得ることができる。
【0045】
かくして得られるキシレンホルムアルデヒド樹脂は、一般に、20〜50,000センチポイズ(25℃)、好ましくは30〜15,000センチポイズ(25℃)の範囲内の粘度を有することができ、そして一般に100〜50,000、特に200〜10,000の範囲内の水酸基当量を有していることが好ましい。
【0046】
アミノ基含有化合物(3)はエポキシ樹脂(1)にアミノ基を導入して、該エポキシ樹脂をカチオン化するためのカチオン性付与成分であり、エポキシ基と反応する活性水素を少なくとも1個含有するものが用いられる。
【0047】
そのような目的で使用されるアミノ基含有化合物(3)としては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミンなどのモノ−、もしくはジ−アルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、トリ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノール、モノエチルアミノエタノールなどのアルカノールアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアルキレンポリアミン及びこれらのポリアミンのケチミン化物;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのアルキレンイミン;ピペラジン、モルホリン、ピラジンなどの環状アミンなどが挙げられる。
【0048】
本発明の塗料組成物においてビヒクルとして使用される基体樹脂(I)は、前記のエポキシ樹脂(1)に、キシレンホルムアルデヒド樹脂(2)及びアミノ基含有化合物(3)をそれ自体既知の方法で反応させることにより製造することができる。
【0049】
エポキシ樹脂(1)に対するキシレンホルムアルデヒド樹脂(2)及びアミノ基含有化合物(3)の反応は任意の順序で行うことができるが、一般には、エポキシ樹脂(1)に対して、キシレンホルムアルデヒド樹脂(2)及びアミノ基含有化合物(3)を同時に反応させるのが好適である。
【0050】
上記の付加反応は、通常、適当な溶媒中で、約80〜約170℃、好ましくは約90〜約150℃の温度で1〜6時間程度、好ましくは1〜5時間程度行うことができる。上記の溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールなどのアルコール系;あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0051】
上記の付加反応における各反応成分の使用割合は、厳密に制限されるものではなく、塗料組成物の用途等に応じて適宜変えることができるが、エポキシ樹脂(1)、キシレンホルムアルデヒド樹脂(2)及びアミノ基含有化合物(3)の3成分の合計固形分重量を基準にして以下の範囲内が適当である。
【0052】
エポキシ樹脂(1):一般に50〜90重量%、好ましくは50〜85重量%、
キシレンホルムアルデヒド樹脂(2):一般に5〜45重量%、好ましくは6〜43重量%、
アミノ基含有化合物(3):一般に5〜25重量%、好ましくは6〜20重量%。この範囲をはずれると、
耐食性、仕上り性、安定性のいずれかが低下するので好ましくない。
【0053】
また、エポキシ樹脂(1)、キシレンホルムアルデヒド樹脂(2)及びアミノ基含有化合物(3)に加えてさらに、複数の活性水素基を含有する化合物にカプロラクトンを付加して得られるポリオール化合物(4)を反応させてなる樹脂成分として使用することもできる。
【0054】
ポリオール化合物(4)は、上記のエポキシ樹脂(1)の内部可塑化(変性)のために使用されるものであり、複数の活性水素基を含有する化合物にカプロラクトンを付加することにより製造される。
【0055】
活性水素基は少なくとも1個の活性水素を含有する原子団を意味し、例えば、アルコール性水酸基、第1級アミノ基、第2級アミノ基などが包含される。しかして、かかる活性水素基を1分子中に複数個含有する化合物としては、例えば、低分子量ポリオール、線状又は分枝状のポリエーテルポリオール、線状又は分枝状のポリエステルポリオール、第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を含有するアミノ化合物、或いは第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基と水酸基とを併用するヒドロキシアミン化合物などが挙げられる。
【0056】
これらの活性水素基含有化合物(a)は、一般に62〜5,000、好ましくは62〜4,000、さらに好ましくは62〜1,500の範囲内の数平均分子量を有することができる。また、活性水素基含有化合物(a)は、1分子あたり、平均して、少なくとも2個かつ30個未満、特に2〜10個の活性水素基を含有するものが好適である。
【0057】
上記の低分子量ポリオール(i)は、1分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を含有する化合物であり、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメチロール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールAなどのジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類;ペンタエリスリトール、α−メチルグルコキシドなどのテトロール類;ソルビトール、ジペンタエリスリトールなどのヘキソール類;シュークロースなどのオクトール類等が挙げられる。
【0058】
上記の線状又は分枝状のポリエーテルポリオールは、通常62〜10,000、好ましくは62〜2,000の範囲内の数平均分子量を有することができ、具体的には、例えば、アルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフランなど)の開環付加反応によって製造される、ポリエチレングルコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレン・プロピレン)グリコール、ビスフェノールAエチレングリコールエーテル、ビスフェノールAポリプロピレングリコールエーテルなどが挙げられる。
【0059】
上記の線状または分岐状のポリエステルポリオールは、通常200〜10,000、好ましくは200〜3,000の範囲内の数平均分子量を有することができ、具体的には、例えば、有機ジカルボン酸又はその無水物と有機ジオールとの、有機ジオール過剰の条件下での重縮合反応によって得られるものが挙げられる。
【0060】
ここで使用される有機ジカルボン酸としては、炭素数2〜44、特に4〜36の脂肪酸系、脂環式又は芳香族系ジカルボン酸、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、ヘキサクロロヘプタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラクロロフタル酸などが挙げられる。また、これらジカルボン酸に加えて、3個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸の無水物や不飽和脂肪酸の付加物などを少量併用することができる。
【0061】
また、有機ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコールや、ジメチロールシクロヘキサンなどが挙げられ、これらは場合により、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどのポリオールの少量と併有してもよい。
【0062】
上記の1級アミノ基及び/又は2級アミノ基を含有するアミン化合物、或いは第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基と水酸基を併有するアミン化合物としては、例えば、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどのアルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミンなどのアルカノールアミン類;1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサノン、イソホロンジアミンなどの脂環族ポリアミン類;キシリレンジアミン、メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミンなどの芳香族ポリアミン類;
エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアルキレンポリアミン類;さらに、ピペラジンやこれらのポリアミン類から誘導される、ポリアミド、ポリアミドアミン、エポキシ化合物とのアミンアダクト、ケチミン、アルジミンなどのその他のアミン化合物を挙げることができる。
【0063】
以上に述べた複数の活性水素基を含有する化合物のうち、特に、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレンゴリコール、水素化ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレン・プロピレン)グリコール、ビスフェノールAエチレングリコールエーテル、ビスフェノールAポリプロピレングリコールエーテル、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミンよりなる群から選ばれるものが好適である。
【0064】
他方、複数の活性水素基を含有する化合物に付加しうるカプロラクトンとしては、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−カプロラクトンなどが挙げられ、特にε−カプロラクトンが好適である。
【0065】
上記の複数の活性水素基を含有する化合物とカプロラクトンの付加反応はそれ自体既知の方法で行うことができる。具体的には、例えば、テトラブトキシチタン、テトラプロポキシチタン等のチタン化合物、オクチル酸錫、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ラウレート等の有機錫化合物;塩化第1錫などの金属化合物のような触媒の存在下に、複数の活性水素基を含有する化合物とカプロラクトンとを約100〜約250℃の温度で約1〜約15時間加熱することにより行うことができる。
【0066】
上記触媒は、一般に、複数の活性水素基を含有する化合物とカプロラクトンとの合計量に基づいて0.5〜1,000ppmの量で使用することができる。また、カプロラクトンは、複数の活性水素基を含有する化合物の活性水素基1当量あたり(すなわち、活性水素1個あたり、一般に1〜30モル、好ましくは1〜20モル、さらに好ましくは1〜15モルの範囲内で使用することができる。
【0067】
かくして得られるポリオール化合物(4)は、複数の活性水素基を有する化合物に基づく高い可塑化性能と、(ポリ)カプロラクトンに基づくエポキシ樹脂に対する高い相溶性と、末端水素基による高い反応性とを兼備しており、塗料用のエポキシ樹脂の内部可塑化剤として極めて有用である。
【0068】
ポリオール化合物(4)は、一般に、カプロラクトンに由来する単位を合計で20〜95重量%、好ましくは25〜90重量%の範囲内で含有することができ、また、一般に300〜10,000、好ましくは400〜5,000の範囲内の数平均分子量を有することができる。
【0069】
上記のポリオール化合物(4)を追加の反応成分として用いる樹脂の製造は、前記の場合と同様にして行うことができ、一般には、エポキシ樹脂(1)に、キシレンホルムアルデヒド樹脂(2)、アミノ基含有化合物(3)及びポリオール化合物(4)を同時に反応させるのが好適である。
【0070】
上記の反応における各反応成分の使用割合は、厳密に制限されるものではなく、カチオン性塗料組成物の用途等に応じて適宜変えることができるが、エポキシ樹脂(1)、キシレンホルムアルデヒド樹脂(2)、アミノ基含有化合物(3)及びポリオール化合物(4)の4成分の合計固形分重量を基準にして以下の範囲内が適当である。
【0071】
エポキシ樹脂(1):一般に50〜85重量%、好ましくは50〜80重量%、
キシレンホルムアルデヒド樹脂(2):一般に5〜45重量%、好ましくは6〜40重量%、
アミノ基含有化合物(3):一般に5〜25重量%、好ましくは6〜20重量%、
ポリオール化合物(4):一般に1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%。この範囲を外れると、耐食性、仕上がり性、安定性のいずれかが低下するので好ましくない。
【0072】
上記のアミノ基含有化合物(3)とキシレンホルムアルデヒド樹脂(2)及び/又はポリオール化合物(4)のエポキシ樹脂(1)への付加反応は、通常、適当な溶媒中で、約80〜約170℃、好ましくは約90〜約150℃の温度で1〜6時間程度、好ましくは1〜5時間程度で行なうことができる。
【0073】
上記の溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールなどのアルコール系;あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0074】
上記の変性剤の使用割合は、厳密に制限されるものではなく、塗料組成物の用途等に応じて適宜変えることができるが、エポキシ樹脂の固形分重量を基準にして5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%の範囲内が適当である。これより少ないと樹脂の中和剤の必要量が多くなり、またこれより多いと水分散安定性が劣り、本発明に不適となる。
【0075】
基体樹脂(II):塗料組成物における基体樹脂として、キシレンホルムアルデヒド樹脂変性のアミノ基含有エポキシ樹脂の他に、エポキシ当量が180〜2500のエポキシ樹脂(1)に、アミノ基含有化合物(3)、及び複数の活性水素基を含有する化合物にカプロラクトンを付加して得られるポリオール化合物(4)を反応させてなるポリオール変性のアミノ基含有エポキシ樹脂(以下、基体樹脂(II)と略すことあり。)を用いることができる。エポキシ樹脂(1)は、基体樹脂(I)の製造に用いたものと同様のものを用いることができる。
【0076】
ポリオール化合物(4)は、上記エポキシ樹脂(1)の内部可塑化(変性)のために使用されるものであり、複数の活性水素基を含有する化合物にカプロラクトンを付加することにより製造されるものであり、基体樹脂(I)の製造に用いたものと同様のものを用いることができる。
【0077】
ポリオール化合物(4)は、一般に、カプロラクトンに由来する単位を合計で20〜95重量%、好ましくは25〜90重量%の範囲内で含有することができ、また、一般に300〜10,000、好ましくは400〜5,000の範囲内の数平均分子量を有することができる。
【0078】
アミノ基含有化合物(3) 本発明において、前記エポキシ樹脂(1)に反応せしめられるアミノ基含有化合物(3)は、エポキシ樹脂基体にアミノ基を導入して、該エポキシ樹脂をカチオン化するためのカチオン性付与成分であり、エポキシ基と反応する活性水素を少なくとも1個含有するものが用いられ、基体樹脂(I)の製造に用いたものと同様のものを用いることができる。
【0079】
塗料組成物において基体樹脂(II)は、前記のエポキシ樹脂(1)に、アミノ基含有化合物(3)、及びカプロラクトン由来の末端水酸基を有するポリオール化合物(4)をそれ自体既知の方法で付加反応させることにより製造することができる。
【0080】
エポキシ樹脂(1)に対するアミノ基含有化合物(3)、及びポリオール化合物(4)の反応は任意の順序で行うことができるが、一般には、エポキシ樹脂(1)に対して、アミノ基含有化合物(3)、及びポリオール化合物(4)を同時に反応させるのが好適である。また、エポキシ樹脂(1)の骨格にポリオール化合物(4)の片末端が付加しているのが好ましい。
【0081】
上記の付加反応は、通常、適当な溶媒中で、約90〜約170℃、好ましくは約100〜約150℃の温度で1〜5時間程度、好ましくは2〜4時間程度行うことができる。上記の溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールなどのアルコール系;あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0082】
上記の付加反応における各反応成分の使用割合は、厳密に制限されるものではなく、塗料組成物の用途等に応じて適宜変えることができるが、エポキシ樹脂(1)、アミノ基含有化合物(3)及びポリオール化合物(4)の3成分の合計固形分重量を基準にして以下の範囲内が適当である。
【0083】
エポキシ樹脂(1):一般に60〜90重量%、好ましくは62〜85重量%、さらに好ましくは62〜80重量%、
アミノ基含有化合物(3):一般に5〜25重量%、好ましくは6〜19重量%、さらに好ましくは6〜18重量%、
ポリオール化合物(4):一般に5〜30重量%、好ましくは5〜20重量%、さらに好ましくは5〜18重量%。
【0084】
上記の範囲を外れると、耐食性、仕上り性、安定性のいずれかが低下するので好ましくない。
【0085】
基体樹脂(III):また上記に述べた基体樹脂(I)、又は基体樹脂(II)の他にカチオン性塗料組成物の基体樹脂として、エポキシ樹脂(1)にアルキルフェノール類(v1)及び/又はカルボン酸類(v2)、アミノ基含有化合物(3)、及び複数の活性水素基を含有する化合物にカプロラクトンを付加して得られるポリオール化合物(4)を反応させてなるアルキルフェノール類及び/又はカルボン酸類を付加したポリオール変性アミノ基含有エポキシ樹脂(以下、基体樹脂(III)と略することがある)を用いることができる。
【0086】
エポキシ樹脂(1)は、基体樹脂(I)や基体樹脂(II)の製造に用いたものと同様のものを用いることができる。
【0087】
アルキルフェノール類及び/又はカルボン酸類における、アルキルフェノール類は、以下の化学式(1)で示される。
【0088】
【化2】
化学式(1)
【0089】
(式中、Xは水素原子又は場合により−OH、−OR、−SH及び−SRよりなる群から選ばれる置換基を有してもよい炭素原子数1〜15の炭化水素基を表し、ここでRはアルキル基を表す)
上記、式(1)において、Xで表わされる炭素原子数1〜15の炭化水素基は直鎖状、分岐鎖状もしくは環状であることができ、中でも、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、ノニル基などの炭素原子数1〜15、特に1〜12のアルキル基が好適である。これらの基は場合により水酸基(−OH)、アルコキシ基(−OR)、メルカプト基(−SH)及びアルキルチオ基(−SR)よりなる群から選ばれる基により置換されていてもよい。
上記、式(1)の具体例としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、パラ−tert−ブチルフェノール、ノニルフェノールなどが挙げらる。
【0090】
カルボン酸類は、以下の化学式(2)で示される。
【0091】
【化3】
化学式(2)
(式中、Yは場合により−OH、−OR、−SH及び−SRよりなる群から選ばれる置換基を有していてもよい炭素原子数1〜15の炭化水素基を表わし、ここで、Rはアルキル基を表わす、で示されるカルボン酸類よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。)
また、上記、化学式(2)において、Yで表わされる炭素原子数1〜15の炭化水素基は直鎖状、分岐鎖状もしくは環状であることができ、具体的には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、ノニル基などのアルキル基;ビニル、オレイル基などのアルケニル基;フェニル基のようなアリール基などが包含される。これらの基は場合により水酸基、アルコキシ基、メルカプト基及びアルキルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1個、好ましくは1〜3個の基により置換されていてもよい。
【0092】
かかる基で置換された炭化水素基としては、例えば、1−ヒドロキシエチル、1,1−ジメチロールエチル、1,1−ジメチロールプロピル、3,4,5−トリヒドロキシフェニル基などが挙げられる。
【0093】
上記、化学式(2)の具体例としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、アクリル酸、オレイン酸、グリコール酸、グリセリン酸、乳酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、安息香酸、没食子酸などが挙げられ、中でも、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オレイン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸、安息香酸が好適である。
【0094】
ポリオール化合物(4)は、複数の活性水素基を含有する化合物にカプロラクトンを付加したポリオールであり、基体樹脂(I)や基体樹脂(II)に用いたものと同様のものを用いることができる。
【0095】
このようなポリオール化合物(4)は、末端がポリカプロラクトン性の水酸基を有し、ポリオールに基づく高い可塑性能とポリカプロラクトンに基づくエポキシ樹脂に対する高い相溶性と末端水酸基による高い反応性をもつので付着性や透過阻止能が向上し、耐食性の向上に寄与することができる。
【0096】
アミノ基含有化合物(3)は、基体樹脂(I)や基体樹脂(II)に用いたものと同様のものを用いることができ、具体的には、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジエチルアミノプロピルアミンなどのアルキルアミン類:モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、及びこれらのポリアミン化合物のケチミン化物を挙げることができる。
【0097】
基体樹脂(III)における各成分の配合割合は、各成分の固形分総合計量に対して、エポキシ樹脂(1):60〜85重量%の範囲、アルキルフェノール類及び/又はカルボン酸類:2〜15重量%の範囲、、アミノ基含有化合物(3):5〜25重量%の範囲、複数の活性水素基を含有する化合物にカプロラクトンを付加して得られるポリオール化合物(4):5〜20重量%の範囲である。これらの範囲を外れると、耐食性、仕上がり性、安定性のいずれかが低下する。
【0098】
硬化剤(I):カチオン性塗料組成物は、基体樹脂のほかに硬化剤として、ブロック剤によってポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロックしたブロック化ポリイソシアネート化合物を用いることができる。
【0099】
硬化剤としては芳香環、脂環式イソシアネートいずれのものでも使用できるが、1分子中に平均1.5ヶ以上、特に2〜3ヶの環構造を有するものが好ましい。特に好ましい原料イソシアネート化合物の例としてはジフェニルメタンジイソシアネートや水添ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
【0100】
そのようなポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタン−2,4および/または4,4−ジイソシアネート(通常「MDI」と呼ばれる)、クルードMDI、水添MDI、これらとポリオールとの付加物、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートやフェニレンジイソシアネートとポリオールとの付加物、イソホロンジイソシアネートやビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンとポリオールとの付加物、テトラメチレンジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネートなどのイソシアヌレート化合物が挙げられる。特に好ましいポリイソシアネート化合物の例としては、クルードMDIや水添MDIが挙げられる。
【0101】
ブロック剤種としては、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、そして付加によって生成するブロックポリイソシアネート化合物は常温において安定であるが、塗膜の焼付け温度(通常約100〜200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生しうるものであることが望ましい。
【0102】
例えば、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノールなどの脂肪族アルコール類;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール類;が挙げられる。
【0103】
硬化剤(II):またカチオン性塗料組成物には、活性水素含有成分と芳香族ポリイソシアネート化合物を反応させてなる硬化剤(II)を含有することもできる。
【0104】
活性水素含有成分としては、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチルー1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール等の1、2級または1,3級水酸基含有アルコール化合物を挙げることができる。
【0105】
この中でもブロック剤としては、低分子量で解離性の高いものが好ましく、特に好ましいものとしてジフェニルメタンジイソシアネートの場合は、1,2級水酸基含有アルコール化合物のプロピレングリコール、また水添ジフェニルメタンジイソシアネートの場合は、オキシム化合物のメチルエチルケトキシムが挙げられる。
【0106】
塗料組成物における基体樹脂と硬化剤との配合割合は、これら両成分の合計固形分重量を基準にして、基体樹脂は、一般に55〜90重量%、好ましくは65〜80重量%、硬化剤は一般に10〜45重量%、好ましくは20〜35重量%の範囲内とすることができる。
【0107】
上記、基体樹脂と硬化剤を含有する塗料組成物は、基体樹脂と硬化剤を十分に混合した後、通常水性媒体中において、水溶性有機カルボン酸で中和して該エポキシ樹脂を水溶化ないし水分散化することにより、カチオン電着塗料として調製することができる。
【0108】
中和のための有機カルボン酸としては、特に、酢酸、ギ酸又はこれらの混合物が好適であり、これらの酸の使用により、形成される塗膜の耐食性、仕上がり性、塗料安定性が向上する。
【0109】
カチオン電着塗料で用いる顔料は、従来から使用されている顔料であれば特に制限なく使用でき、例えば、酸化チタン、カ−ボンブラック、ベンガラ等の着色顔料;クレ−、マイカ、バリタ、炭酸カルシウム、シリカなどの体質顔料;
その他に、耐食性の向上を目的としてビスマス化合物を含有することができ、例えば、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、ケイ酸ビスマス、2種以上の有機酸と上記の如きビスマス化合物とを反応させることによって製造され且つ該有機酸の少なくとも1種が脂肪族ヒドロキシカルボン酸である有機酸ビスマスなどが挙げられる。これらの顔料類の配合量は、基体樹脂と硬化剤との合計固形分100重量部あたり、1〜100重量部、特に10〜50重量部の範囲内が好ましい。
【0110】
カチオン電着塗料には他に、硬化触媒、沈降防止剤などを適宜配合することができ、このうち、硬化触媒は、基体樹脂と硬化剤との架橋反応を促進するために有効であり、例えば、ジオクチル錫オキサイト、ジブチル錫オキサイト、錫オクトエ−ト、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジブチル錫ジベンゾエート、オクチル酸亜鉛、ギ酸亜鉛などがあげられ、その配合量は、基体樹脂と硬化剤との合計100重量部あたり、0.1〜10重量部の範囲内が適している。
【0111】
カチオン電着塗料は、上記の顔料分散ペーストをあらかじめ製造しておき、これを基体樹脂及び硬化剤などを分散したエマルションと混合して、塗料組成物を製造することが好ましい。
【0112】
上記のようにして得られたカチオン電着塗料を塗装する被塗物は、自動車ボディ、自動車部品などの冷延鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛−鉄二層めっき鋼板及び有機複合めっき鋼板、アルミニウム、及びこれらの混用品などを基材とするものを挙げることができる。
【0113】
【発明の効果】本発明は、特定の防錆剤、及び基体樹脂と硬化剤の組み合わせた塗料組成物であって、ソルトスプレー性、温塩水ディップ性などのウェットコロージョンと、耐暴露性、耐糸錆性などのドライコロージョンの両面の耐食性に優れる塗装物品を得ることができる。
特定の防錆剤としては、セリウム化合物、ランタン化合物、モリブデン酸塩化合物、グルコン酸誘導体塩類、グルコース誘導体、多孔質基材、チアゾール系化合物、テトラサイクリン類、アスコロビン酸のリン酸金属塩化合物等を挙げることができる。
また防錆剤を機能別に、グループ(i)、グループ(ii)、グループ(iii)に分類し、各々の中から少なくとも1種類を、グループ(i)−グループ(ii)、グループ(i)−グループ(iii)、グループ(ii)−グループ(iii)のように組み合せて塗料組成物中に用いることによって、「腐食の発生の抑制効果」と「腐食の進行の抑制効果」の両方の腐食抑制効果によって、防錆剤を1種類のみを使用した場合に比べ、さらに耐食性が向上することを見出した。
【0114】
【実施例】以下に、本発明に関する実施例及び比較例について説明をする。「部」及び「%」はいずれも重量を基準にしており、また本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではない。
【0115】
顔料分散ペーストの製造
製造例1 顔料分散ペーストNo.1
固形分60%のエポキシ系4級アンモニウム型分散用樹脂 5.83部(固形分3.5部)、リン酸セリウム 2.0部、酸化チタン14.5部、カーボンブラック0.4部、精製クレー7.0部、ジオクチル錫オキサイト 1.0部、脱イオン水20.87部を加え、ボールミルにて20時間分散したあと取出し、固形分55%の顔料ペーストNo.1を得た。
【0116】
製造例2〜11 顔料分散ペーストNo.2〜No.11
表1の配合内容とする以外は製造例1と同様にして、固形分55%の顔料分散ペーストNo.2〜No.11を得た。
【0117】
【表1】
【0118】
(注1)IXE−600(東亜合成化学工業社製、商品名、Bi−Sb系防錆剤)。
製造例12 キシレンホルムアルデヒド樹脂1の製造
温度計、還流冷却器及び撹拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに50%ホルマリン240g、フェノール55g、98%工業用硫酸101g及びメタキシレン212gを仕込み、84〜88℃で4時間反応させる。反応終了後、静置して樹脂相と硫酸水相とを分離した後、樹脂相を3回水洗し、20〜30mmHg/120〜130℃の条件で20分間未反応メタキシレンをストリッピングして、粘度1050センチポイズ(25℃)のキシレンホルムアルデヒド樹脂1を得た。
【0119】
基体樹脂の製造
製造例13 基体樹脂No.1の製造(基体樹脂(I)型)
フラスコに、エピコート828EL(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名、エポキシ樹脂、エポキシ当量190、分子量350)1000g、ビスフェノールA 400g及びジメチルベンジルアミン0.2gを加え、130℃でエポキシ当量750になるまで反応させた。
次に、製造例12で得たキシレンホルムアルデヒド樹脂1を300g、ジエタノールアミンを140g及びジエチレントリアミンのケチミン化物を65gを加え120℃で4時間反応させた後、ブチルセロソルブを420g加え、アミン価52、樹脂固形分80%のキシレンホルムアルデヒド樹脂変性アミノ基含有エポキシ樹脂である基体樹脂No.1を得た。
【0120】
製造例14 基体樹脂No.2の製造(基体樹脂(I)型)
PP−400(三洋化成社製、商品名、ポリプロピレングリコール、分子量400)400gにε−カプロラクトン300gを加えて、130℃まで昇温した。その後、テトラブトキシチタン 0.01gを加え、170℃に昇温した。この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外吸収スペクトル測定にて未反応のε−カプロラクトン量を追跡し、反応率が98%以上になった時点で冷却し、変性剤1を得た。
次に、別のフラスコにエピコート828EL(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名、エポキシ樹脂、エポキシ当量190、分子量350)1000g、ビスフェノールA 400g及びジメチルベンジルアミン0.2gを加え、130℃でエポキシ当量750になるまで反応させた。
次に、製造例12のキシレンホルムアルデヒド樹脂1を200g、上記の変性剤1を100g、ジエタノールを140g及びジエチレントリアミンのケチミン化物を65gを加え、120℃で4時間反応させた後、ブチルセロソルブを420g加え、アミン価52、樹脂固形分80%のキシレンホルムアルデヒド樹脂変性アミノ基含有エポキシである基体樹脂No.2を得た。
【0121】
製造例15 基体樹脂No.3(基体樹脂(II)型)
PP−400(三洋化成社製、商品名、ポリプロピレングリコール 分子量400)400gに、ε−カプロラクトン300gを加えて、130℃まで昇温した。その後、テトラブトキシチタン0.01gを加え、170℃に昇温した。この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外吸収スペクトル測定にて未反応のε−カプロラクトン量を追跡し、反応率が98%以上になった時点で冷却し、変性剤2を得た。
次に、別のフラスコに、エピコート828EL(油化シェルエポキシ社製、商品名、エポキシ樹脂 エポキシ当量190 分子量350)1000g、ビスフェノールA 400g及びジメチルベンジルアミン0.2gを加え、130℃でエポキシ当量750になるまで反応させた。
次に、変性剤2を200g、ジエタノールアミンを140g及びジエチレントリアミンのケチミン化物を65gを加え120℃で4時間反応させた後、ブチルセロソルブを400g加え、アミン価56、樹脂固形分80%のポリオール変性アミノ基含有エポキシ樹脂である基体樹脂No.3を得た。
【0122】
製造例16 基体樹脂No.4( 基体樹脂(III)型)
PP−400(三洋化成社製、商品名、ポリプロピレングリコール 分子量400)400gにε−カプロラクトン300gを加えて、130℃まで昇温した。その後、テトラブトキシチタン0.01gを加え、170℃に昇温した。この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外吸収スペクトル測定にて未反応のε−カプロラクトン量を追跡し、反応率が98%以上になった時点で冷却し、変性剤3を得た。
別に、エピコート828EL(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名、エポキシ樹脂 エポキシ当量190 分子量350)1000gにビスフェノールA400g及びジメチルベンジルアミン0.2gを加え、130℃でエポキシ当量750になるまで反応させた。
その中にノニルフェノール120gを加え、130℃でエポキシ当量1000になるまで反応させた。次いで変性剤3を200g、ジエタノールアミンを95g及びジエチレントリアミンのケチミン化物を65g加え、120℃で4時間反応させた後、ブチルセロソルブ414gを加え、アミン価40、樹脂固形分80%のノニルフェノールを付加したポリオール変性アミノ基含有エポキシ樹脂である基体樹脂No.4を得た。
【0123】
製造例17 基体樹脂No.5( 基体樹脂(III)型)
エピコート828EL(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名、エポキシ樹脂 エポキシ当量190 分子量350)1000gにビスフェノールA 400g及びジメチルベンジルアミン0.2gを加え、130℃でエポキシ当量750になるまで反応させた。
その中に安息香酸61gを加え、130℃でエポキシ当量1000になるまで反応させた。
次いで、製造例16と同様にして得られた変性剤3を200g、ジエタノールアミンを95g及びジエチレントリアミンのケチミン化物を65g加え、120℃で4時間反応させた後、ブチルセロソルブ400gを加え、アミン価41、樹脂固形分80%の安息香酸を付加したポリオール変性アミノ基含有エポキシ樹脂である基体樹脂No.5を得た。
【0124】
製造例18 基体樹脂No.6
エポン1004(油化シエルエポキシ社製、エポキシ当量約950を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂)1900部をブチルセロソルブ546部に溶解し、ジエチルアミン124部を80〜100℃で滴下後120℃で2時間保持して、アミン価47をもつエポキシ樹脂−アミン付加物を得た。
次にアミン価100をもつダイマー酸タイプポリアミド樹脂(商品名バーサミド460、ヘンケル白水(株)製)1000部をメチルイソブチルケトン210部に溶かし、130〜150℃に加熱還流し、生成水を留去して該アミド樹脂の末端アミノ基をケチミンに変えた。このものを150℃で約3時間保持し、水の留出が停止してから60℃に冷却する。次に、前記エポキシ樹脂−アミン付加物に加えて、100℃に加熱し、1時間保持後室温に冷却して、アミン価65、固形分80%のエポキシ樹脂−アミノ−ポリアミド付加樹脂のアミノ基含有エポキシ樹脂である基体樹脂No.6を得た。
【0125】
硬化剤の製造
製造例19 硬化剤No.1
反応容器中にコスモネートM−200 270部、及びメチルイソブチルケトン25部を加え70℃に昇温した。その中に2,2−ジメチロールブタン酸15部を徐々に添加し、ついでエチレングリコールモノブチルエーテル118部を滴下して加え、70℃で1時間反応させた後、60℃に冷却し、プロピレングリコール152部を添加した。
この温度を保ちながら、経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアナト基の吸収がなくなったことを確認し、固形分90%の硬化剤No.1を得た。
【0126】
製造例20 硬化剤No.2
イソホロンジイソシアネート 222部、メチルイソブチルケトン 44部に、50℃でメチルエチルケトオキシム 174部をゆっくり滴下し、固形分90%の硬化剤No.2を得た。
【0127】
カチオン性塗料組成物用のエマルションの製造
製造例21 エマルションNo.1
基体樹脂No.1 87.5部(樹脂固形分で70部)、硬化剤No.1 を33.3g(樹脂固形分で30g)、及び10%酢酸を13部を配合し、均一に攪拌した後、脱イオン水を強く攪拌しながら約15分間を要して滴下し、固形分34%のエマルションNo.1を得た。
【0128】
製造例22〜28
表2の配合内容として、製造例21と同様の操作にてエマルションNo.2〜No.8を得た。
【0129】
【表2】
【0130】
実施例及び比較例
実施例1
エマルションNo.1(基体樹脂No.1、硬化剤No.1) 297部(固形分100部)に、顔料分散ペーストNo.1を51.6部(固形分28.4部)、脱イオン水 294部を加え、固形分20%のカチオン性塗料No.1を製造した。
【0131】
実施例2〜9、及び比較例1〜4
表3、又は表4の配合内容とする以外は実施例1と同様にして、実施例2〜9のカチオン性塗料No.2〜No.9、及び比較例1〜4のカチオン性塗料No.10〜No.13を得た。塗料配合を表3(実施例)、及び表4(比較例)に示す。
【0132】
【表3】
【0133】
【表4】
【0134】
塗膜試験
カチオン性塗料No.1〜No.13を、70mm×150mmの冷延鋼板、70mm×150mmのアルミニウム板(#6000)の各々を、PB−LA−35(日本パーカライジング社製、商品名、アルミニウム・鋼板同時化成処理液)を用いて化成処理を施した。次に、膜厚が20μmとなるように塗装し、170℃で20分間焼き付けた。
【0135】
塗膜試験を、以下の内容に従って行った。
実施例の結果を表5に、比較例の結果を表6に示す。
【0136】
【表5】
【0137】
【表6】
【0138】
(注2)ソルトスプレー性:試験板にカッターナイフにてクロスカットを入れ、35℃ソルトスプレー試験にて840時間後、テープ剥離を行い評価した。
◎:テープ剥離幅が2mm未満(片側)
○:テープ剥離幅が2〜3mm(片側)
△:テープ剥離幅が3〜4mm(片側)
×:テープ剥離幅が4mm以上(片側)。
【0139】
(注3)温塩水ディップ性:試験板を50℃の塩水に浸漬し、試験840時間後、鋼板の全面をテープ剥離を行い評価した。
◎:塗板の面積に対して、塗膜が剥離した割合が5%未満
○:塗板の面積に対して、塗膜が剥離した割合が10%未満
△:塗板の面積に対して、塗膜が剥離した割合が10〜20%
×:塗板の面積に対して、塗膜が剥離した割合が20%を越えるもの。
【0140】
(注4)暴露耐食性:各試験板に、中塗り塗料TP−65−2を35μm塗装し、140℃−20分焼き付けた。次に、ネオアミラック6000(白)を35μm塗装し、140℃−20分焼き付けた。次に、カッターナイフにてクロスカットを入れ、千倉町(千葉県)にて1年間、暴露試験に供した。
◎:カット部からの錆、フクレ幅が2mm未満(片側)
○:カット部からの錆、フクレ幅が2〜3mm(片側)
△:カット部からの錆、フクレ幅が3〜4mm(片側)
×:カット部からの錆、フクレ幅が4mmを越えるもの(片側)。
【0141】
(注5)仕上り性(水平面):各カチオン性塗料を試験槽に満たし、化成処理を施した冷延鋼板を用いて、膜厚が20μmとなる条件で水平にて塗装した。水洗後、170℃で20分間焼き付け、その塗面状態を観察した。
○:ツヤ引け、ブツ、ハジキやヘコミなどなく良好
△:ツヤ引け、ブツ、ハジキやヘコミなどの仕上がり性の低下が見られる
×:ツヤ引け、ブツ、ハジキやヘコミなどの仕上がり性の低下が著しい
Claims (6)
- 鋼材及び/又はアルミニム材の塗装において、以下の特徴を有する防錆剤(I)の中から選ばれる少なくとも1種類、及び基体樹脂(I)、硬化剤(I)を含有することを特徴とする塗料組成物。
防錆剤(I):セリウム化合物、ランタン化合物、モリブデン酸塩化合物、グルコン酸誘導体塩類、多孔質基材、トリアゾール化合物、チアゾール系化合物、テトラサイクリン類、アスコルビン酸のリン酸金属塩化合物
基体樹脂(I):エポキシ当量が180〜2500のエポキシ樹脂(1)にキシレンホルムアルデヒド樹脂(2)及びアミノ基含有化合物(3)を反応させてなるキシレンホルムアルデヒド樹脂変性のアミノ基含有エポキシ樹脂
硬化剤(I):ブロック剤によってポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロックしたブロック化ポリイソシアネート化合物 - 塗料組成物における基体樹脂として、以下の特徴を有する基体樹脂(II)を含有する請求項1に記載の塗料組成物。
基体樹脂(II):エポキシ当量が180〜2500のエポキシ樹脂(1)に、複数の活性水素基を含有する化合物にカプロラクトンを付加して得られるポリオール化合物(4)及びアミノ基含有化合物(3)を反応させてなるポリオール変性のアミノ基含有エポキシ樹脂 - 塗料組成物における基体樹脂として、以下の特徴を有する基体樹脂(III)を含有することを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
基体樹脂(III):エポキシ当量が180〜2500のエポキシ樹脂(1)に、アルキルフェノール類(v1)及び/又はカルボン酸類(v2)、複数の活性水素基を含有する化合物にカプロラクトンを付加して得られるポリオール化合物(4)及びアミノ基含有化合物(3)を反応させてなるポリオール変性のアミノ基含有エポキシ樹脂(III) - 塗料組成物における硬化剤に、プロピレングリコールを含有する活性水素含有成分と芳香族ポリイソシアネート化合物を反応させてなるブロックポリイソシアネート硬化剤(II)を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
- 塗料組成物がカチオン電着塗料である請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗料組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装して得られた塗装物品。
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