JP2004202074A - 靴 - Google Patents
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Abstract
【課題】歩行時に靴が足に常にフィットし、足の屈曲蹴り出しが充分に可能で、履き心地がよく、疲労も少く、歩行状態における足先の締付けが小さく、これによって外反母趾などの症状を防止ないしは改善できる靴を提供。
【解決手段】自然状態において、靴底2,3,4を略逆への字状に弾性屈曲する形状とし、さらに、甲皮16の開口部前縁に沿って連続する伸縮体17を設け、これにより、靴の前部が後部方向に引っ張られて、自然状態において、靴全体が略逆への字状に弾性屈曲する形状としたことを特徴とする靴1。
【選択図】図1
【解決手段】自然状態において、靴底2,3,4を略逆への字状に弾性屈曲する形状とし、さらに、甲皮16の開口部前縁に沿って連続する伸縮体17を設け、これにより、靴の前部が後部方向に引っ張られて、自然状態において、靴全体が略逆への字状に弾性屈曲する形状としたことを特徴とする靴1。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に、パンプスタイプの靴に適用して好適な靴の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
女性用パンプスタイプの靴において、従来から各種課題が指摘されている。その課題一つを図5を用いて説明する。図において、従来一般に見られるパンプスaは、後部にヒールブロックb1を一体化した靴底bと、靴底bの上部を覆う甲皮cとから基本的に構成され、(a)に示す着地状態では、ヒールブロックb1の高さに応じてパンプスaに重心がかかった状態である。
この状態から(b)の矢印に示す蹴り出し状態では、通常では実線で示すように、靴が足先の屈曲に応じて変形し、靴底部bの前部底面が着地した状態で踵が上がり、靴底部bにおける前部底面の着地面積に応じた接地面積から順次重心を前部側に移動しつつ離陸し、この動作の左右交互繰返しにより、安定した歩行が可能となる。
【0003】
しかしながら実際には、甲皮cによって甲先が拘束され、靴底部bも比較的硬質の素材から構成されていると、比較的足の筋肉の弱い女性や年寄、あるいは新品の靴などでは、想像線に示すごとく、足先が充分に屈曲できず、着地形状を保ったまま前傾し、極端な場合にはつま先立ち状態で蹴り出しがなされるため、その接地面積は極めて小さく、歩行が不安定で、足先の筋肉疲労などの原因ともなっていた。また、屈曲踏み出し毎に、甲皮cの開口部前縁c1が着用者の甲に当るため擦過傷の原因となるおそれもあった。
【0004】
また、他の課題として指摘されていることは外反母趾である。外反母趾は靴先における足指の幅に対して靴の幅サイズが小さく、足先を踏出した際に靴の上部周囲を覆う甲皮が親指と小指間を強く締付けることによって生ずる足指の変形現象であり、かつこれに伴う足先の痛みや歩行困難が指摘されている。
この外反母趾を防止するための対策としては、受注により使用者の足の各部を計測した上で個別生産される靴を選択するか、または甲幅の広い靴や、あるいは自分の足よりもサイズが一回り大きな靴を選択するなどの手段がある。
しかし、受注生産品は高額商品であり一般的でない。甲幅の広い靴は足先のスタイルなどデザイン上の問題や、これを履いた状態でのフィット感がないなどの点において以外と敬遠されているのが実状であり、市場に出回っている種類数量ともに少なく、選択の余地がない。一回り大きな靴は、ルーズであるため脱げやすく、かえって歩きづらいうえに、足先幅の小さな同じデザインの靴を選択した場合には外反母趾を必ずしも解消できるものでないなどの課題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の事情に基づきなされたものであり、その目的とするところは、歩行時に靴が足に常にフィットし、足の屈曲蹴り出しが充分に可能で、履き心地がよく、疲労も少ない靴を提供するものである。また本発明の他の目的は、歩行状態における足先の幅方向の締付けが小さく、これによって外反母趾などの症状を防止ないしは改善するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明の靴1は、図の実施の形態に示すように、自然状態において、靴底を略逆への字状に弾性屈曲する形状とした。
【0007】
また自然状態において、靴底が略逆への字状に弾性屈曲するように、靴底を構成する中底3の前部と後部とを弾性帯14によって結合した。
【0008】
さらに、自然状態において、靴底が略逆への字状に弾性屈曲するように、靴底内に略逆への字状のプラスチックまたはゴムなどからなる弾性板を配置した構成とすることもできる。
【0009】
さらに、本発明の靴は、甲皮16の開口部前縁に沿って連続する伸縮体17を設け、これにより、靴の前部が後部方向に引っ張られて、自然状態において、靴全体が略逆への字状に弾性屈曲する形状とした。
【0010】
またさらに、靴底の少なくとも前部側に、縦方向に沿って1ないし複数のスリット5a,10aを形成し、靴を履いた状態で、前記スリットが広がることにより甲幅が広がるようにした。
【0011】
以上の靴、特にパンプスによれば、自然状態において靴先が屈曲方向に付勢されているため、蹴り出し時において、足先の屈曲がその付勢力により加勢され、安定した歩行が可能で、筋肉疲労なども解消できる。また、甲皮16の開口部前縁に対する甲の当りも緩和される。
【0012】
さらに、踏出し時及び着地時に靴底のスリット5a,10aが開き、幅が広がって足先が甲皮16により締付けを受けない一方で、足が上がるとスリット5a,10aが閉じて元の幅に復帰し、甲皮16に対するフィット感を継続できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。図1ないし図4は本発明の実施形態を示す。このうち、図1はパンプスタイプの靴の靴底部分を示す分解斜視図、図2、3は同靴底に甲皮を組付けて一体に完成した靴1を示している。
【0014】
図1において、靴底は本底2と、本底2の上面に積層配置される各種部品からなる中座3と、中座3の上面に敷設接着される中敷4とからなっている。
【0015】
前記本底2は、硬質ゴムなどパンプスとしての用途に適した硬度、弾性を備えた弾性素材から構成され、足形に形成された底板5と、底板5の後部下面に予め一体に貼着されたヒールブロック6とからなっており、底板5の足先側には切込みによりその長手方向に沿って複数のスリット5aが形成され、スリット5aを介して足先における幅方向の弾性変形を容易としている。
【0016】
前記中座3は、硬質紙などを踵下面周囲を包囲するようにして曲面状に成形した踵型材7と、踵型材7の上面に鳩目8を介して固定されるゴム製の踵クッション材9と、クッション材9の先端側に形成された段部9aの上面に後端を貼着され、かつ先端周縁を本底2および後述する甲皮の巻込み端縁に鋲打などによって連結される芯板10と、芯板10及びクッション材9の上面に貼着される表面材11とからなっている。
【0017】
前記芯板10にはその長手方向に沿って複数のスリット10aが形成され、前記本底2とともに、足先における幅方向の伸縮性を得られるようにしている。なお、最外周のスリット10aがジグザグ状なのは後述する甲皮に対する鋲うちしろを確保するためである。
【0018】
前記表面材11は、前記クッション材9の上面に貼着される踵パッド材12と、前記芯板10の表面に貼着される伸縮性織布13と、伸縮性織布13と踵パッド材12の双方に両端を縫合され、常時両者間を引張り付勢することにより、表面材11を略逆への字状に弾性屈曲させるゴムなどの弾性帯14と、伸縮性織布13の上面周囲に縫合され、弾性帯14の接合部分を覆うスポンジなどの材質からなる前部カバー15とからなっている。
【0019】
前記中敷4は、柔軟な皮革を踵形にカットしたものであり、その土踏まず内側位置の裏面には図示しないが、クッションパッドを一体に設けて張出させるとともに、パッド装着位置にパンチ加工などによる複数の通気孔4aを形成したもので、設置状態では、前部カバー15の後縁上面に重合して、前記弾性帯14を隠す機能も兼用している。
【0020】
以上において、本底2の周囲に予め縫合などにより甲部分及び踵部分の包囲展開形状に形成された後述する甲皮を取付け、次いで中座3を本底2の上面に配置し、後述する甲皮の本底2に対する巻き込み位置を中座3と本底2間に挟持固定して立体造形し、しかる後中敷4を中座3の上面に敷設することで、図2、3に示すように前述の甲皮16を一体化したパンプス1が完成する。以上の組立には、ゴム系接着剤、複数の鋲、鳩目、あるいはこれに加えて縫製などにより行われる。
【0021】
前記甲皮16は柔軟な皮革素材から構成されるもので、完成状態においては、特に図3に示すように、中座3に配置された弾性帯14の引張り力が常時作用し、仕上り状態でのパンプス1の先端は、自然状態では従来一般に示すパンプス(図4参照)に比べて先端部が略逆への字状に上がった形状となっており、またこれによって屈曲蹴り出し時における付勢力を加勢するようになっている。
【0022】
さらに、前記甲皮16の開口の前縁部16aの皮革間にはゴム紐などからなる伸縮体17が介装されることにより、前縁部16aを縮径させるとともに、靴の前部が後部方向に引っ張られて、自然状態において、靴全体が略逆への字状に弾性屈曲する。これにより、上記の屈曲蹴り出し時における付勢力が一層加勢され、使用者の甲に対するフィット性を増している。
【0023】
図4(a),(b)は以上のパンプス1を履いて歩行する場合を示すもので、(a)は着地状態、(b)は屈曲蹴り出し状態を示している。(a)の着地状態における自然状態ではパンプスの先端側は図示のごとく上がっているか、あるいは着用者の重心位置により弾性帯14の逆への字形の付勢力に抗して従来のパンプスのごとき着地形状となる。
【0024】
そして、この状態から(b)の屈曲蹴り出し状態では、使用者の足先の筋力に加えて、前記弾性帯14の引張り付勢力により足先が完全に屈曲し、順次重心を移動させながら蹴り出しがなされ、充分な接地面積を確保しつつ歩行が行われることになり、特に筋力の弱い人であってもつま先立ちなどの現象を防止でき安定した歩行ができ、筋肉疲労も防止できるのである。
また、屈曲毎に甲皮16の開口部前縁16aが伸縮するため、使用者の甲の部分に対する当りが緩和され、フィット感を生じ、繰返し当ることによる擦過傷なども生ずることもない。
【0025】
以上に加え、着地及び蹴り出し状態では甲皮16を幅方向に広げる力が加わり、通常はこの締付け力が強いと外反母趾などの原因となるが、前記本底2及び中座3の芯板10に形成されたスリット5a,10aがひろがることにより、締付けを緩和する一方、足をあげた状態では弾性力によりスリット5a,10aが閉じるため、フィット感を得ることができるものとなる。
【0026】
なお、以上の実施形態では、略逆への字状の付勢手段として、中座3のうち、表面材11に設けた弾性帯14の引張り力により行っているが、表面材11そのもの、あるいは中座3,本底2そのものを逆への字状に偏奇させたプラスチックまたはゴムなどの弾性体で構成してもよいことは勿論である。
【0027】
また、以上の実施形態では、本発明の最も好適な適用例として女性用のパンプスに適用した場合を示したが、紳士靴、スリッパ、サンダルなど履物一般に適用可能であることは言うまでもない。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明により明らかなように、本発明による靴にあっては、歩行時に靴が足に常にフィットし、足の屈曲蹴り出しが充分に可能で、履き心地がよく、疲労も少ない。また、歩行状態における足先の締付けが小さく、これによって外反母趾などの症状を防止ないしは改善できる。
【0029】
正常な足の裏は、横方向に緩やかに凹む横アーチ部が形成されているが、本発明の靴では、自然状態で、足先が上方に向くように形成されていることから、足裏の上記横アーチ部を弾性的に上方に押し上げ、バネの効果を高め、かつ、歩行時に足の先端部が上下に屈曲する、ほどよいマッサージ効果により血液の循環を良くし、体全体に好影響がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明にかかるパンプスの靴底部分の分解斜視図である。
【図2】
同靴底に甲皮を組合わせて完成したパンプスの斜視図である。
【図3】
同断面図である。
【図4】
(a),(b)は同パンプスを履いた人の着地状態と蹴り出し状態を示す側面図である。
【図5】
(a),(b)は従来のパンプスを履いた人の着地状態と蹴り出し状態を示す側面図である。
【符号の説明】
1 靴(パンプス)
2,3,4 靴底(2 本底、3 中座、4 中敷)
5 底板
6 ヒールブロック
5a,10a スリット
14 弾性帯
15 前部カバー
16 甲皮
17 伸縮帯
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に、パンプスタイプの靴に適用して好適な靴の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
女性用パンプスタイプの靴において、従来から各種課題が指摘されている。その課題一つを図5を用いて説明する。図において、従来一般に見られるパンプスaは、後部にヒールブロックb1を一体化した靴底bと、靴底bの上部を覆う甲皮cとから基本的に構成され、(a)に示す着地状態では、ヒールブロックb1の高さに応じてパンプスaに重心がかかった状態である。
この状態から(b)の矢印に示す蹴り出し状態では、通常では実線で示すように、靴が足先の屈曲に応じて変形し、靴底部bの前部底面が着地した状態で踵が上がり、靴底部bにおける前部底面の着地面積に応じた接地面積から順次重心を前部側に移動しつつ離陸し、この動作の左右交互繰返しにより、安定した歩行が可能となる。
【0003】
しかしながら実際には、甲皮cによって甲先が拘束され、靴底部bも比較的硬質の素材から構成されていると、比較的足の筋肉の弱い女性や年寄、あるいは新品の靴などでは、想像線に示すごとく、足先が充分に屈曲できず、着地形状を保ったまま前傾し、極端な場合にはつま先立ち状態で蹴り出しがなされるため、その接地面積は極めて小さく、歩行が不安定で、足先の筋肉疲労などの原因ともなっていた。また、屈曲踏み出し毎に、甲皮cの開口部前縁c1が着用者の甲に当るため擦過傷の原因となるおそれもあった。
【0004】
また、他の課題として指摘されていることは外反母趾である。外反母趾は靴先における足指の幅に対して靴の幅サイズが小さく、足先を踏出した際に靴の上部周囲を覆う甲皮が親指と小指間を強く締付けることによって生ずる足指の変形現象であり、かつこれに伴う足先の痛みや歩行困難が指摘されている。
この外反母趾を防止するための対策としては、受注により使用者の足の各部を計測した上で個別生産される靴を選択するか、または甲幅の広い靴や、あるいは自分の足よりもサイズが一回り大きな靴を選択するなどの手段がある。
しかし、受注生産品は高額商品であり一般的でない。甲幅の広い靴は足先のスタイルなどデザイン上の問題や、これを履いた状態でのフィット感がないなどの点において以外と敬遠されているのが実状であり、市場に出回っている種類数量ともに少なく、選択の余地がない。一回り大きな靴は、ルーズであるため脱げやすく、かえって歩きづらいうえに、足先幅の小さな同じデザインの靴を選択した場合には外反母趾を必ずしも解消できるものでないなどの課題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の事情に基づきなされたものであり、その目的とするところは、歩行時に靴が足に常にフィットし、足の屈曲蹴り出しが充分に可能で、履き心地がよく、疲労も少ない靴を提供するものである。また本発明の他の目的は、歩行状態における足先の幅方向の締付けが小さく、これによって外反母趾などの症状を防止ないしは改善するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明の靴1は、図の実施の形態に示すように、自然状態において、靴底を略逆への字状に弾性屈曲する形状とした。
【0007】
また自然状態において、靴底が略逆への字状に弾性屈曲するように、靴底を構成する中底3の前部と後部とを弾性帯14によって結合した。
【0008】
さらに、自然状態において、靴底が略逆への字状に弾性屈曲するように、靴底内に略逆への字状のプラスチックまたはゴムなどからなる弾性板を配置した構成とすることもできる。
【0009】
さらに、本発明の靴は、甲皮16の開口部前縁に沿って連続する伸縮体17を設け、これにより、靴の前部が後部方向に引っ張られて、自然状態において、靴全体が略逆への字状に弾性屈曲する形状とした。
【0010】
またさらに、靴底の少なくとも前部側に、縦方向に沿って1ないし複数のスリット5a,10aを形成し、靴を履いた状態で、前記スリットが広がることにより甲幅が広がるようにした。
【0011】
以上の靴、特にパンプスによれば、自然状態において靴先が屈曲方向に付勢されているため、蹴り出し時において、足先の屈曲がその付勢力により加勢され、安定した歩行が可能で、筋肉疲労なども解消できる。また、甲皮16の開口部前縁に対する甲の当りも緩和される。
【0012】
さらに、踏出し時及び着地時に靴底のスリット5a,10aが開き、幅が広がって足先が甲皮16により締付けを受けない一方で、足が上がるとスリット5a,10aが閉じて元の幅に復帰し、甲皮16に対するフィット感を継続できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。図1ないし図4は本発明の実施形態を示す。このうち、図1はパンプスタイプの靴の靴底部分を示す分解斜視図、図2、3は同靴底に甲皮を組付けて一体に完成した靴1を示している。
【0014】
図1において、靴底は本底2と、本底2の上面に積層配置される各種部品からなる中座3と、中座3の上面に敷設接着される中敷4とからなっている。
【0015】
前記本底2は、硬質ゴムなどパンプスとしての用途に適した硬度、弾性を備えた弾性素材から構成され、足形に形成された底板5と、底板5の後部下面に予め一体に貼着されたヒールブロック6とからなっており、底板5の足先側には切込みによりその長手方向に沿って複数のスリット5aが形成され、スリット5aを介して足先における幅方向の弾性変形を容易としている。
【0016】
前記中座3は、硬質紙などを踵下面周囲を包囲するようにして曲面状に成形した踵型材7と、踵型材7の上面に鳩目8を介して固定されるゴム製の踵クッション材9と、クッション材9の先端側に形成された段部9aの上面に後端を貼着され、かつ先端周縁を本底2および後述する甲皮の巻込み端縁に鋲打などによって連結される芯板10と、芯板10及びクッション材9の上面に貼着される表面材11とからなっている。
【0017】
前記芯板10にはその長手方向に沿って複数のスリット10aが形成され、前記本底2とともに、足先における幅方向の伸縮性を得られるようにしている。なお、最外周のスリット10aがジグザグ状なのは後述する甲皮に対する鋲うちしろを確保するためである。
【0018】
前記表面材11は、前記クッション材9の上面に貼着される踵パッド材12と、前記芯板10の表面に貼着される伸縮性織布13と、伸縮性織布13と踵パッド材12の双方に両端を縫合され、常時両者間を引張り付勢することにより、表面材11を略逆への字状に弾性屈曲させるゴムなどの弾性帯14と、伸縮性織布13の上面周囲に縫合され、弾性帯14の接合部分を覆うスポンジなどの材質からなる前部カバー15とからなっている。
【0019】
前記中敷4は、柔軟な皮革を踵形にカットしたものであり、その土踏まず内側位置の裏面には図示しないが、クッションパッドを一体に設けて張出させるとともに、パッド装着位置にパンチ加工などによる複数の通気孔4aを形成したもので、設置状態では、前部カバー15の後縁上面に重合して、前記弾性帯14を隠す機能も兼用している。
【0020】
以上において、本底2の周囲に予め縫合などにより甲部分及び踵部分の包囲展開形状に形成された後述する甲皮を取付け、次いで中座3を本底2の上面に配置し、後述する甲皮の本底2に対する巻き込み位置を中座3と本底2間に挟持固定して立体造形し、しかる後中敷4を中座3の上面に敷設することで、図2、3に示すように前述の甲皮16を一体化したパンプス1が完成する。以上の組立には、ゴム系接着剤、複数の鋲、鳩目、あるいはこれに加えて縫製などにより行われる。
【0021】
前記甲皮16は柔軟な皮革素材から構成されるもので、完成状態においては、特に図3に示すように、中座3に配置された弾性帯14の引張り力が常時作用し、仕上り状態でのパンプス1の先端は、自然状態では従来一般に示すパンプス(図4参照)に比べて先端部が略逆への字状に上がった形状となっており、またこれによって屈曲蹴り出し時における付勢力を加勢するようになっている。
【0022】
さらに、前記甲皮16の開口の前縁部16aの皮革間にはゴム紐などからなる伸縮体17が介装されることにより、前縁部16aを縮径させるとともに、靴の前部が後部方向に引っ張られて、自然状態において、靴全体が略逆への字状に弾性屈曲する。これにより、上記の屈曲蹴り出し時における付勢力が一層加勢され、使用者の甲に対するフィット性を増している。
【0023】
図4(a),(b)は以上のパンプス1を履いて歩行する場合を示すもので、(a)は着地状態、(b)は屈曲蹴り出し状態を示している。(a)の着地状態における自然状態ではパンプスの先端側は図示のごとく上がっているか、あるいは着用者の重心位置により弾性帯14の逆への字形の付勢力に抗して従来のパンプスのごとき着地形状となる。
【0024】
そして、この状態から(b)の屈曲蹴り出し状態では、使用者の足先の筋力に加えて、前記弾性帯14の引張り付勢力により足先が完全に屈曲し、順次重心を移動させながら蹴り出しがなされ、充分な接地面積を確保しつつ歩行が行われることになり、特に筋力の弱い人であってもつま先立ちなどの現象を防止でき安定した歩行ができ、筋肉疲労も防止できるのである。
また、屈曲毎に甲皮16の開口部前縁16aが伸縮するため、使用者の甲の部分に対する当りが緩和され、フィット感を生じ、繰返し当ることによる擦過傷なども生ずることもない。
【0025】
以上に加え、着地及び蹴り出し状態では甲皮16を幅方向に広げる力が加わり、通常はこの締付け力が強いと外反母趾などの原因となるが、前記本底2及び中座3の芯板10に形成されたスリット5a,10aがひろがることにより、締付けを緩和する一方、足をあげた状態では弾性力によりスリット5a,10aが閉じるため、フィット感を得ることができるものとなる。
【0026】
なお、以上の実施形態では、略逆への字状の付勢手段として、中座3のうち、表面材11に設けた弾性帯14の引張り力により行っているが、表面材11そのもの、あるいは中座3,本底2そのものを逆への字状に偏奇させたプラスチックまたはゴムなどの弾性体で構成してもよいことは勿論である。
【0027】
また、以上の実施形態では、本発明の最も好適な適用例として女性用のパンプスに適用した場合を示したが、紳士靴、スリッパ、サンダルなど履物一般に適用可能であることは言うまでもない。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明により明らかなように、本発明による靴にあっては、歩行時に靴が足に常にフィットし、足の屈曲蹴り出しが充分に可能で、履き心地がよく、疲労も少ない。また、歩行状態における足先の締付けが小さく、これによって外反母趾などの症状を防止ないしは改善できる。
【0029】
正常な足の裏は、横方向に緩やかに凹む横アーチ部が形成されているが、本発明の靴では、自然状態で、足先が上方に向くように形成されていることから、足裏の上記横アーチ部を弾性的に上方に押し上げ、バネの効果を高め、かつ、歩行時に足の先端部が上下に屈曲する、ほどよいマッサージ効果により血液の循環を良くし、体全体に好影響がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明にかかるパンプスの靴底部分の分解斜視図である。
【図2】
同靴底に甲皮を組合わせて完成したパンプスの斜視図である。
【図3】
同断面図である。
【図4】
(a),(b)は同パンプスを履いた人の着地状態と蹴り出し状態を示す側面図である。
【図5】
(a),(b)は従来のパンプスを履いた人の着地状態と蹴り出し状態を示す側面図である。
【符号の説明】
1 靴(パンプス)
2,3,4 靴底(2 本底、3 中座、4 中敷)
5 底板
6 ヒールブロック
5a,10a スリット
14 弾性帯
15 前部カバー
16 甲皮
17 伸縮帯
Claims (5)
- 自然状態において、靴底を略逆への字状に弾性屈曲する形状としたことを特徴とする靴。
- 自然状態において、靴底が略逆への字状に弾性屈曲するように、靴底を構成する中底の前部と後部とを弾性帯によって結合したことを特徴とする靴。
- 自然状態において、靴底が略逆への字状に屈曲するように、靴底内に略逆への字状のプラスチックまたはゴムなどからなる弾性板を配置したことを特徴とする靴。
- 甲皮の開口部前縁に沿って連続する伸縮体を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の靴。
- 靴底の少なくとも前部側に、縦方向に沿って1ないし複数のスリットを形成し、靴を履いた状態で、前記スリットが広がることにより甲幅が広がるようにしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の靴。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2002377071A JP2004202074A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | 靴 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002377071A JP2004202074A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | 靴 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004202074A true JP2004202074A (ja) | 2004-07-22 |
Family
ID=32814361
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002377071A Pending JP2004202074A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | 靴 |
Country Status (1)
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---|---|
JP (1) | JP2004202074A (ja) |
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- 2002-12-26 JP JP2002377071A patent/JP2004202074A/ja active Pending
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